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1. WO2020116635 - DELIVERY OF CYCLIC COMPOUND BY USING CARRIER

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明 細 書

発明の名称 輸送担体を用いた環状化合物の送達

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066  

実施例

0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108  

産業上の利用可能性

0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3A   3B   3C   3D   3E   4   5   6   7   8   9   10A   10B   10C   10D   10E   11A   11B   11C   11D   11E   12A   12B   12C   12D   12E   13A   13B   13C   13D   13E   13F   14A   14B   14C   14D   14E  

明 細 書

発明の名称 : 輸送担体を用いた環状化合物の送達

技術分野

[0001]
 本発明は、環状化合物と該環状化合物を担持するための軸部を有する輸送担体との複合体に関する。

背景技術

[0002]
 従来、薬物の徐放、血中安定性の向上、可溶化、副作用の低減等を目的として、種々の薬物送達システム(DDS)が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
[0003]
 また近年、タンパク質に結合して不活性化する阻害能を有する環状化合物が薬物として研究されている。環状化合物は、直鎖状化合物と比べて立体的に構造が決定されることから、タンパク質の結合部位に作用しやすく、その結果、タンパク質に対する高い選択性及び阻害能を示すとの報告がなされている(非特許文献1)。また、環状化合物は、一般に、低分子薬物と生体分子薬物との中間である500~2000の分子量を有し、低分子薬物の特徴である膜透過性及び生体分子薬物であるタンパク質の選択的結合性の2つを併せ持つことから、広い適用範囲が期待される。その一方で、環状化合物は水に難溶であり、また、従来の輸送担体との結合に適した官能基を有さない場合が多い。
[0004]
 よって、環状化合物を可溶化し、非共有結合によりその薬理活性を抑制しつつ、目的の細胞又は組織まで送達する薬物送達システムの開発が求められている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : WO2006/085664 A1
特許文献2 : WO2009/157279

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : F. Albericio, et al. Future Med. Chem., 4(2012)1527-1531

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、環状化合物を、その薬理活性を抑制しつつ、目的の細胞又は組織まで送達する薬物送達システムを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明の1つの局面によれば、環状化合物と該環状化合物を担持するための軸部を有する輸送担体との複合体であって、該軸部が該環状化合物に包接されることによって複合体化している、複合体が提供される。
 1つの実施形態においては、上記輸送担体が、側鎖を有するポリマーであり、少なくとも1つの側鎖が、上記軸部を有する。
 1つの実施形態においては、上記ポリマーが、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有し、該疎水性ポリマーセグメントの側鎖が、上記軸部を有する。
 1つの実施形態においては、上記軸部と上記ポリマー主鎖との間に、生体内で開裂し得る結合が存在している。
 1つの実施形態においては、上記輸送担体が、上記軸部と、その両端に配置されて上記環状化合物が上記軸部から脱離することを防止する蓋部と、を有する。
 1つの実施形態においては、上記蓋部が、親水性ポリマーを含む。
 1つの実施形態においては、上記軸部と上記蓋部との間に、生体内で開裂し得る結合が存在している。
 1つの実施形態においては、上記軸部が、ヒドララジン、ジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジンおよびジエチレントリアミンから選択される少なくとも1種の残基である。
 1つの実施形態においては、上記環状化合物が、バリノマイシン、バシトラシンおよびエリスロマイシンから選択される少なくとも1種である。
 本発明の別の局面によれば、上記複合体を含む、ポリマー粒子組成物が提供される。

発明の効果

[0009]
 本発明においては、環状化合物を担持するための軸部を有する輸送担体を用い、環状化合物に該軸部を包接させて複合体化することによって、環状化合物を、その薬理活性を抑制しつつ、目的の細胞又は組織まで送達することができる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 第1の実施形態における複合体を説明するイメージ図である。
[図2] 第2の実施形態における複合体を説明するイメージ図である。
[図3A] H-NMRによるバリノマイシンとヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図3B] H-NMRによるバリノマイシンとヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図3C] H-NMRによるバリノマイシンとヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図3D] H-NMRによるバリノマイシンとヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図3E] H-NMRによるバリノマイシンとヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図4] バリノマイシン内包高分子ミセルの安定性試験の結果を示すグラフである。
[図5] バリノマイシン内包高分子ミセルのバリノマイシン放出率の評価結果を示すグラフである。
[図6] バリノマイシン内包高分子ミセルの血中滞留性及び組織透過性の評価結果を示すグラフである。
[図7] バリノマイシン内包高分子ミセルの生体内分布の評価結果を示すグラフである。
[図8] バリノマイシン内包高分子ミセルの抗腫瘍効果の評価結果を示すグラフである。
[図9] 培養細胞に対するuHGCの毒性試験の結果を示すグラフである。
[図10A] H-NMRによるエリスロマイシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図10B] H-NMRによるエリスロマイシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図10C] H-NMRによるエリスロマイシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図10D] H-NMRによるエリスロマイシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図10E] H-NMRによるエリスロマイシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図11A] H-NMRによるバシトラシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図11B] H-NMRによるバシトラシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図11C] H-NMRによるバシトラシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図11D] H-NMRによるバシトラシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図11E] H-NMRによるバシトラシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図12A] H-NMRによるバシトラシンと1-ナフチルヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図12B] H-NMRによるバシトラシンと1-ナフチルヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図12C] H-NMRによるバシトラシンと1-ナフチルヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図12D] H-NMRによるバシトラシンと1-ナフチルヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図12E] H-NMRによるバシトラシンと1-ナフチルヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13A] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13B] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13C] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13D] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13E] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図13F] H-NMRによるバシトラシンとジエチレントリアミンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図14A] H-NMRによるバリノマイシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図14B] H-NMRによるバリノマイシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図14C] H-NMRによるバリノマイシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図14D] H-NMRによるバリノマイシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。
[図14E] H-NMRによるバリノマイシンとジヒドララジンのホストゲスト相互作用の評価結果を示すチャートである。

発明を実施するための形態

[0011]
 以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。
[0012]
A.複合体
 本発明の1つの実施形態による複合体は、環状化合物と該環状化合物を担持するための軸部を有する輸送担体との複合体であって、該軸部が該環状化合物に包接されることによって複合体化している。
[0013]
A-1.第1の実施形態における複合体
 図1は、本発明の第1の実施形態における複合体を説明するイメージ図である。図1に示されるとおり、複合体100は、側鎖に軸部12を有するポリマー(輸送担体)10と環状化合物20との複合体であり、環状化合物20が軸部12を包接することによって両者が複合体化している。
[0014]
 上記複合体100において、1分子のポリマー10に担持される環状化合物20の分子数は、例えば1~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~60であり得る。
[0015]
 なお、上記図示例においては、ポリマー10は、親水性ポリマーセグメント10aと疎水性ポリマーセグメント10bとを有するブロックコポリマーであり、疎水性ポリマーセグメント10bのみが側鎖に軸部12を有するが、本発明は、当該実施形態に限定されない。例えば、側鎖に軸部を有するポリマーセグメント(例えば、後述する疎水性ポリマーセグメント)のみからなるポリマーを輸送担体として用いてもよい。
[0016]
 また、上記図示例においては、軸部12とポリマー主鎖との間に、生体内で開裂し得る結合14が存在しているが、本発明は、当該実施形態に限定されない。具体的には、軸部は、生体内で開裂し得る結合を介して又は介することなく側鎖に導入されることができる。
[0017]
 上記図示例の複合体においては、ポリマーの側鎖末端に設けられた軸部を環状化合物が包接している。このような構成を有する複合体によれば、従来のDDSへの適用が困難であった環状化合物を、その薬理活性を抑制しつつ、目的の細胞又は組織まで送達することができる。さらに、ポリマーとして、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有するブロックコポリマーを用いることにより、極性媒体中で、薬物を担持する疎水性ポリマーセグメントを内側に向け、親水性ポリマーセグメントを外側に向けた高分子ミセル(Polymeric micelles)を形成し得る。このような構成を有する高分子ミセルは、生体適合性及び血中安定性に優れることから、DDSとして有用である。
[0018]
A-1-1.環状化合物
 上記環状化合物としては、所望の薬理活性を有する任意の適切な化合物が用いられ得る。環状化合物が有する環は、軸部を包接し得る寸法と形状を有し、例えば8員以上、好ましくは10員以上、より好ましくは12員以上、さらに好ましくは16員~50員の単素環又は複素環であり得る。複素環が含むヘテロ原子は、例えば酸素又は窒素であり得る。これらのヘテロ原子は、軸部との間で非共有結合的な相互作用(例えば、水素結合、配位結合、イオン結合、ファンデルワールス力、XH/π相互作用(X=C、N、O)等)を発揮する観点から、有用である。
[0019]
 上記環状化合物の具体例としては、バリノマイシン、アウレオバシジンA、HUN-7293、ノナクチン、ラパマイシン、タクロリムス、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、ジョサマイシン、ロキタマイシン、キタサマイシン、アセチルスピラマイシン、テリスロマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、リファブチン、リファンピシン、リファペンチン、リファキシミン、タクロリムス、ピメクロリムス、パクリチニブ、テムシロリムス、ゾタロリムス、エベロリムス、リファラジル、リダフォロリムス、テリスロマイシン、シメプレビル、ダノプレビル、バニプレビル等のマクロライド;シクロスポリン、ミクロシスチン、バシトラシン、ボクロスポリン、リノプリスチン、フロプリスチン等の環状ポリペプチド;クラウンエーテル;ポルフィリン;シアノスター、シクロデキストリン等が挙げられる。環状化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0020]
A-1-2.側鎖に軸部を有するポリマー
 上記側鎖に軸部を有するポリマーとしては、任意の適切なポリマーが用いられ得る。上記ポリマーが、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとが直列に連結されたブロックコポリマーである場合、親水性ポリマーセグメントを構成するポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられ、ポリエチレングリコールが好ましく用いられ得る。親水性ポリマーセグメントは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
[0021]
 上記親水性ポリマーセグメントを構成するポリマーにおけるモノマー単位の繰り返し数(分岐鎖の場合は、各鎖における繰り返し数)は、例えば20~20,000であり得る。
[0022]
 疎水性ポリマーセグメントを構成するポリマーとしては、ブロックコポリマーが極性溶媒中で親水性ポリマーセグメントを外側に向け、疎水性ポリマーセグメントを内側に向けた状態のミセルを形成可能な程度に親水性ポリマーセグメントよりも低い親水性度を有するポリマーが選択される。このようなポリマーとしては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)及びその共重合体(PLGA)、ポリアミノ酸、ポリエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリアミノ酸が好ましく用いられ得る。
[0023]
 上記ポリアミノ酸としては、ポリ(アスパラギン酸)及び/又はその誘導体(例えば、ポリ(アルキルアスパルテート)、ポリ(アリールアスパルテート)、ポリ(アラルキルアスパルテート)、及びこれらとポリ(アスパラギン酸)とのコポリマー等)、ポリ(グルタミン酸)及び/又はその誘導体(例えば、ポリ(アルキルグルタメート)、ポリ(アリールグルタメート)、ポリ(アラルキルグルタミド)、及びこれらとポリ(グルタミン酸)とのコポリマー)並びにポリ(リジン)及び/又はその誘導体であって、少なくとも1つの側鎖に軸部が導入されているものが挙げられる。
[0024]
 疎水性ポリマーセグメントを構成するポリマーがポリアミノ酸である場合、アミノ酸残基の繰り返し数は、例えば5~300であり、好ましくは10~250であり、より好ましくは20~200である。また、軸部の導入率(軸部を有する側鎖の数/疎水性ポリマーセグメント中の側鎖の総数×100)は、例えば5%~100%、好ましくは10%~90%、より好ましくは30%~70%であり得る。
[0025]
 1分子のポリマーが有する軸部の数は、1以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15~150、さらにより好ましくは20~100である。
[0026]
 上記軸部は、環状化合物によって包接される部分であり、環状化合物の環内に包接され得る寸法と形状とを有する。好ましくは、軸部は、環状化合物と非共有結合的に、例えば、疎水性相互作用や水素結合等により、相互作用し得る基をさらに有する。当該軸部と環状化合物との非共有結合的な相互作用は、いわゆるホストゲスト相互作用とも称され得る。軸部は、環状化合物の環の大きさ、環内の電気的雰囲気等に対応した構造を有し、環状化合物に分子認識され得る。
[0027]
 上記軸部は、代表的には、軸部を有する化合物とポリマー側鎖との反応により、ポリマー側鎖に導入される。軸部を有する化合物としては、軸部及びポリマー側鎖との反応に利用可能な官能基を有する化合物が選択される。
[0028]
 ホストゲスト相互作用に着目して軸部を有する化合物(ゲスト分子)を決定する方法の一例を以下に説明する。
[ゲスト分子の決定方法]
(工程1)送達対象の環状化合物(ホスト分子)の構造を解析する(例:化学構造、立体構造、環の大きさ等)。
(工程2)ゲスト分子候補を探索する(条件:化学構造、立体構造、分子の大きさ、分子内に窒素原子のような非共有電子対をもつドナー原子があること、ポリマー側鎖に導入するための官能基を有すること、等)。
(工程3)分子モデリングプログラム「Maestro」(Schrodinger社製)等を用いて、ゲスト分子がホスト分子内に入るかどうか検討する。
(工程4)実際に、水または有機溶媒においてゲスト分子(またはゲスト分子がコンジュゲートされたポリマー)とホスト分子を単純混合することによりホストゲスト相互作用を起こし、安定化するホストゲスト複合体の組み合わせを見つける。
[0029]
 上記安定化するホストゲスト複合体を形成する組み合わせは、例えば、以下の工程AおよびBを含む方法によって決定することができる。
(工程A)互いに分子認識する官能基が存在することを H-NMRスペクトルにおけるピークシフトにより確認する。
(工程B)結合定数(K)をUVスペクトルから算出し、結合定数の大きい組み合わせ(例えば、結合定数(会合定数)が、10M -1~1000M -1である組み合わせ、また例えば10M -1~100M -1である組み合わせ)を探索する。
[0030]
 なお、上記では、軸部を有する化合物(ゲスト分子)の決定方法として、分子モデリングプログラム「Maestro」(Schrodinger社製)を用いた方法を例示したが、当該方法に限定されず、ホストゲスト化学に基づく種々の分子認識技術、分子設計技術等を利用して目的の環状化合物(ホスト分子)に包接され得る軸部を有する化合物(ゲスト分子)を決定することができる。
[0031]
 ホストゲスト相互作用によって包接体を形成可能な環状化合物と軸部(軸部を有する化合物)との組合せとしては、バリノマイシンとヒドララジン、バリノマイシンとジヒドララジン、シクロスポリンとジヒドララジン、エリスロマイシンとヒドララジン、ロルラチニブとヒドララジン、β-ベンジル-L-アスパラギン酸とリファンピシン、1,5-ジアミノペンタンとエリスロマイシン、ジアミノペンタンとロルラチニブ、ジエチレントリアミンとバリノマイシン、ジエチレントリアミンとリファンピシン、ジエチレントリアミンとエリスロマイシン、バシトラシンとジエチレントリアミン、バシトラシンとジヒドララジン、バシトラシンと1-ナフチルヒドララジン等が挙げられる。
[0032]
 上記軸部は、好ましくは生体内で開裂し得る結合を介して上記側鎖の末端に導入される。生体内で開裂し得る結合としては、DDSにおいて利用可能な任意の適切な化学結合が採用され得る。このような結合の代表例としては、ジスルフィド結合、アセタール結合、ケタール結合、ヒドラゾン結合、エノールエーテル結合、エノールエステル結合、アミド結合、イミン結合、イミニウム結合、エナミン結合、シリルエーテル結合、シラザン結合、シリルエノールエーテル結合、ジオール結合、ジアゾ結合、エステル結合、スルホン結合、及びケイ素-炭素結合が挙げられる。好ましくは、ジスルフィド結合、アセタール結合、ヒドラゾン結合である。
[0033]
 上記ジスルフィド結合(-S-S-)は、還元的環境下において容易に開裂する。このような特性を利用することにより、細胞への効率的な薬物送達を達成することができる。具体的には、生体内においては、グルタチオンの濃度差に起因して、細胞外では非還元的環境であり(約10μM)、細胞内では還元的環境である(約10mM)。したがって、上記複合体は、細胞に達するまでは環状化合物に軸部を包接させた形態を維持することができ、細胞に取り込まれた後は、ジスルフィド結合におけるイオウ原子間の結合が開裂することにより、軸部と環状化合物との包接体を細胞内にスムーズかつ効率的に放出することができる。その後、細胞内において当該包接体から軸部が脱離することにより、環状化合物がその薬理活性を発揮することができる。
[0034]
 上記アセタール結合及びヒドラゾン結合は、細胞内外のpHの差により容易に開裂する。具体的には、生体内においては、細胞外のpHは約7であるのに対し、細胞内後期エンドソーム内のpHは4~5である。アセタール結合及びヒドラゾン結合は、細胞外では結合を維持し、細胞内後期エンドソーム内では容易に開裂する。その結果、ジスルフィド結合の場合と同様に、上記複合体は、細胞に達するまでは環状化合物に軸部を包接させた形態を維持することができ、細胞に取り込まれた後は、軸部と環状化合物との包接体を細胞内にスムーズかつ効率的に放出することができる。
[0035]
 上記ポリマー複合体の具体例を以下の式(I)又は(II)に示す。
[化1]


[化2]


(式(I)又は(II)中、
 R 及びR は、相互に独立して、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1~12の直鎖又は分枝状のアルキル基を表し、
 R は、水素原子、未置換又は置換された直鎖もしくは分枝の炭素数1~12のアルキル基あるいは未置換又は置換された直鎖もしくは分枝の炭素数1~24のアルキルカルボニル基を表し、
 R 3a、R 3b、R 4a及びR 4bは、相互に独立して、メチレン基又はエチレン基を表し、
 R 5a、R 5b、R 7a及びR 7bは、相互に独立して、-O-又はNH-を表し、
 R 6a及びR 6bは、相互に独立して、水素原子又は疎水性有機基を表し、
 R 8a及びR 8bは、相互に独立して、直鎖もしくは分枝の炭素数1~12のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基又はこれらの組合せからなる基を表し、
 R 10は、水酸基、オキシベンジル基、-O-R 10a又は‐NH-R 10b基を表し、ここでR 10a又はR 10bはそれぞれ独立して、未置換又は置換された直鎖もしくは分枝の炭素数1~12アルキル基を表し、
 L 及びL はそれぞれ独立して、二価の連結基を表し、
 Bは、生体内で開裂し得る結合を表し、
 Aは、軸部を表し、
 kは、20~20,000の整数を表し、
 a、b、c及びdは、それぞれ独立して、0~300の整数であり、
 ただし、5≦a+b+c+d≦300の関係を満たし、
 1≦c+dの関係を満たし、
 上記各アミノ酸繰り返し単位の結合順は任意であり、
 R 6a、R 6b、R 8a及びR 8bは、ポリマー分子内のアミノ酸繰り返し単位毎に任意に選択可能である。)
[0036]
 上記R 、R 、R 、R 10a及びR 10bの基で定義する、炭素数1~12の直鎖又は分枝状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、デシル基、及びウンデシル基等を挙げることができる。
[0037]
 R の基で定義する、炭素数1~24の直鎖又は分枝状のアルキルカルボニル基の内の炭素数1~12の直鎖又は分枝状のアルキル部分は上述した例示を参考にでき、炭素数13以上のアルキル部分は、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、ドコサニル基及びテトラコシル基等を挙げることができる。
[0038]
 上記アルキル基又はアルキル部分について、「置換された」場合の置換基としては、限定されるものでないが、C 1-6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC 1-3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C 1-6アルコキシカルボニル基、C 2-7アシルアミド基、トリ-C 1-6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基を示すか、又はアセタール化ホルミル基、ホルミル基、塩素又はフッ素等のハロゲン原子を挙げることができる。ここで、例えば、C 1-6のごとき表示は、炭素数1~6を意味する。
[0039]
 上記R 及びR の基は、標的結合部位を含む基によって置換されていてもよい。標的結合部位を親水性ポリマーセグメントの末端に導入することにより、標的となる所望の部位への到達性を向上できる。標的結合部位を含む基としては、標的となる組織に対する指向性又は機能性を有する限りにおいて任意の適切な基であり得、例えば、抗体もしくはその断片、又はその他の機能性もしくは標的指向性を有するタンパク質、ペプチド、アプタマー、ラクトース等の糖、葉酸といった生理活性物質及びその誘導体に由来する基であり得る。
[0040]
 上記R 6a及びR 6bの基で定義する疎水性有機基は、例えば、炭素数6~27の飽和もしくは不飽和の直鎖又は分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6~27のアリール基又はアラルキル基、あるいはステロールに由来する残基である。疎水性有機基の代表例としては、ベンジル基又はフェニル基が挙げられる。
[0041]
 上記R 8a及びR 8bの基で定義する直鎖もしくは分枝の炭素数1~12のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基又はこれらの組合せからなる基としては、例えば、C 1-10アルキレン基、C 6-12アリーレン基、C 1-6アルキレン-C 6-12アリーレン基又はC 1-6アルキレン-C 6-12アリーレン-C 1-6アルキレン基、好ましくはC 1-8アルキレン基、C 6-10アリーレン基、C 1-4アルキレン-C 6-10アリーレン基又はC 1-4アルキレン-C 6-10アリーレン-C 1-4アルキレン基が挙げられる。
[0042]
 上記L は、例えば、-NH-、-O-、-O-L 1a-NH-、-CO-、-CH -、及びO-L 1a-S-L 1a-NH-(ここで、L 1aは独立して炭素数1~6のアルキレン基である)から選ばれる連結基であり得る。
[0043]
 上記L は、例えば、-OCO-L 2a-CO-、及びNHCO-L 2a-CO-(ただし、L 2aは炭素数1~6のアルキレン基である)から選ばれる連結基であり得る。
[0044]
 上記Bは、好ましくはアセタール結合、ヒドラゾン結合又はジスルフィド結合であり、より好ましくはヒドラゾン結合である。
[0045]
 各アミノ酸残基の繰り返し数を表すa、b、c及びdは、それぞれ独立して好ましくは0~200の整数、より好ましくは0~100の整数である。また、ポリアミノ酸の重合度(a+b+c+d)は、好ましくは10~250の整数、より好ましくは20~200の整数である。また、軸部を有する側鎖の総数(c+d)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15~150、さらにより好ましくは20~100である。
[0046]
 エチレングリコールの繰り返し数を表すkは、好ましくは50~2,000、より好ましくは100~1,000の整数を表す。
[0047]
 上記式(I)又は(II)に示されるポリマーは、任意の適切な方法によって合成され得る。一例として、少なくとも1つの側鎖にヒドラゾン結合を介して軸部が導入されたポリエチレングリコール-ポリ(ベンジルアスパルテート)ブロックコポリマーの合成方法を以下に説明する。最初に、末端に一級アミノ基を有するポリエチレングリコールを開始剤として、β-ベンジル-L-アスパルテート-N-カルボン酸無水物を重合させてポリエチレングリコール-ポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)ブロックコポリマーを合成する。次いで、ヒドロキシル基又はアミノ基とカルボニル基とを有する化合物を用いてエステル交換又はアミノリシスを行って、側鎖にカルボニル基を導入する。代替的に、ヒドロキシル基又はアミノ基とアセタール基とを有する化合物を用いてエステル交換又はアミノリシスを行い、次いで、酸触媒下でアセタール基をカルボニル基に変換してもよい。その後、当該カルボニル基と軸部を有する化合物としてのヒドララジン誘導体とを反応させる。これにより、少なくとも1つの側鎖にヒドラゾン結合を介して軸部が導入されたブロックコポリマーが得られ得る。
[0048]
A-1-3.複合体の調製方法
 上記複合体は、例えば、上記側鎖に軸部を有するポリマーに該ポリマーを溶解可能な水溶性有機溶媒を加えて溶解後、環状化合物を添加し、次いで、水又は緩衝液等の水性媒体に対して透析することによって調製することができる。ここで、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。側鎖に軸部を有するポリマーと環状化合物との混合割合は、目的に応じて適切に設定され得る。該混合割合は、例えば、Jobs-plot法を用いて軸部と環状化合物とが効率よく複合体を形成し得る割合に設定され得る。混合物中における軸部に対する環状化合物のモル比は、例えば軸部のモルを1とすると0.1~5.0、好ましくは0.2~2.0となるように設定され得る。
[0049]
 上記調製方法における環状化合物の担持割合(1分子のポリマーに担持される環状化合物の分子数/1分子のポリマー中の軸部の数×100)は、例えば10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは40%~100%であり得る。
[0050]
A-2.第2の実施形態における複合体
 図2は、本発明の第2の実施形態における複合体を説明するイメージ図である。図2に示されるとおり、複合体200は、軸部32とその両端側に配置された蓋部34a、34bとを有する輸送担体30と、環状化合物20と、の複合体であり、環状化合物20が軸部32を包接するとともに、蓋部34a、34bが環状化合物20の軸部32からの脱離を防止することによって両者が複合体化している。
[0051]
 上記複合体200において、1分子の輸送担体30に担持される環状化合物20の分子数は、1又は2以上であってよい。
[0052]
 上記図示例においては、軸部32と蓋部34aとの間及び軸部32と蓋部34bとの間にそれぞれ、生体内で開裂し得る結合36a、36bが存在しているが、本発明は、当該実施形態に限定されない。例えば、いずれか一方の軸部と蓋部との間にのみ生体内で開裂し得る結合が存在していてもよい。あるいは、蓋部は、生体内で開裂し得る結合を介することなく直接軸部と結合していてもよい。
[0053]
 第2の実施形態における複合体においては、軸部を環状化合物が包接し、当該環状化合物の軸部からの脱離を蓋部が防止することができる。このような構成を有する複合体によれば、従来のDDSへの適用が困難であった環状化合物を、その薬理活性を抑制しつつ、目的の細胞又は組織まで送達することができる。また、このような構成を有する複合体によれば、嵩高い蓋部を採用することにより、二次会合してミセル等の凝集体を構成することなく、複合体単体で血中に安定的に存在することができ、その小さいサイズに起因して、優れた組織浸透性を示すことが期待される。なお、第2の実施形態における複合体において、環状化合物による軸部の包接は、第1の実施形態における複合体と同様に、環状化合物をホスト分子とし、軸部をゲスト分子とするホストゲスト相互作用を利用して行われ得る。
[0054]
A-2-1.環状化合物
 上記環状化合物としては、A-1-1項に記載の環状化合物が挙げられる。
[0055]
A-2-2.輸送担体
 上記輸送担体は、軸部と、好ましくはその両端に直接又は生体内で開裂し得る結合を介して結合された蓋部とを有する。
[0056]
 蓋部は、環状化合物が軸部から脱離することを防止可能な程度の嵩高さを有することが好ましい。蓋部を構成する材料としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等の親水性ポリマーが挙げられる。なかでも、生体適合性に優れること、極性溶媒中における分子鎖の広がりが大きいこと等の観点から、ポリエチレングリコールが好ましく用いられ得る。親水性ポリマーは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
[0057]
 上記親水性ポリマーセグメントを構成するポリマーにおけるモノマー単位の繰り返し数(分岐鎖の場合は、各鎖における繰り返し数)は、例えば20~20,000、好ましくは200~2,000、より好ましくは400~1,000である。
[0058]
 上記軸部は、環状化合物によって包接される部分であり、環状化合物の環内に包接され得る寸法と形状を有する。好ましくは、軸部は、環状化合物と非共有結合的に、例えば、疎水性相互作用や水素結合等により、相互作用し得る基をさらに有する。当該軸部と環状化合物との非共有結合的な相互作用は、いわゆるホストゲスト相互作用とも称され得る。軸部は、環状化合物の環の大きさ、環内の電気的雰囲気等に対応した構造を有し、環状化合物に分子認識され得る。
[0059]
 上記軸部は、代表的には、軸部を有する化合物と蓋部を構成する材料(例えば、上記親水性ポリマー)との反応により輸送担体に導入される。軸部を有する化合物としては、軸部及び軸部を介在する2か所に蓋部を構成する材料との反応に利用可能な官能基を有する化合物が選択される。軸部を有する化合物を決定する方法としては、A-1-2項で記載した方法と同様の方法を用いることができる。
[0060]
 上記生体内で開裂し得る結合については、A-1-2項で記載したとおりである。
[0061]
A-2-3.複合体の調製方法
 上記複合体は、任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、軸部とその両末端にヒドラゾン結合を介して結合しているポリエチレングリコールとを有する輸送担体と、環状化合物と、の複合体は、水溶性有機溶媒に、環状化合物と、片末端にアルデヒド基を有するポリエチレングリコールと、軸部を有する化合物としてのジヒドララジン化合物とを添加及び混合して反応させた後、水又は緩衝液等の水性媒体に対して透析することによって調製することができる。上記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。上記軸部を有する化合物と環状化合物とポリエチレングリコールとの混合割合は、目的に応じて適切に設定され得る。該混合割合は、例えば、混合物中における軸部を有する化合物に対する環状化合物のモル比が軸部のモルを1とすると0.1~5.0、好ましくは0.2~2.0となるように、また、軸部を有する化合物に対するポリエチレングリコールのモル比が1.0~5.0、好ましくは1.0~2.0となるように、設定され得る。
[0062]
B.ポリマー粒子組成物
 本発明の1つの実施形態によるポリマー粒子組成物は、上記A-1項に記載の複合体を含む。上記複合体は、極性媒体中で会合して好適にポリマー粒子を形成し得る。例えば、複合体を形成する輸送担体が、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有するブロックコポリマーである場合、当該複合体は、環状化合物を担持する疎水性ポリマーセグメントを内側に向け、親水性ポリマーセグメントを外側に向けた高分子ミセルを形成し得る。なお、本発明においては、複数の複合体が粒子状に集合した集合体も粒子に含めるものとし、このような集合体もポリマー粒子と称する。
[0063]
 上記ポリマー粒子の平均粒子径は、例えば1000nm以下、好ましくは400nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下又は80nm以下であり、例えば20nm以上又は30nm以上である。当該粒子の平均粒子径は、市販の動的光散乱(DLS)測定装置を用いて測定することができる。
[0064]
 上記ポリマー粒子組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、A-1項に記載の複合体に加えて他のポリマーを含み得る。このような他のポリマーとしては、例えば、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有するブロックコポリマーが挙げられる。このようなブロックコポリマーは、極性媒体中で好適に会合して安定なポリマー粒子(例えば、高分子ミセル)を形成し得るので、これらを共存させることにより安定性に優れたポリマー粒子組成物が得られ得る。このような効果は親水性ポリマー鎖セグメントを有さないポリマーを輸送担体として用いた複合体を含むポリマー粒子組成物において、特に好適に奏され得る。上記他のブロックコポリマーとしては、例えばWO2007/099660、WO2007/099661、WO2010/093036、WO2012/096399、WO2014/133172、WO2015/170757等に記載のポリマーが挙げられる。
[0065]
 上記ポリマー粒子組成物は、任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、側鎖に軸部を有するポリマーと環状化合物と任意成分である上記他のポリマーとを、水溶性有機溶媒に添加及び混合して会合させた後、水又は緩衝液等の水性媒体に対して透析することによって調製することができる。上記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
[0066]
C.使用方法
 上記A項に記載の複合体及びB項に記載のポリマー粒子組成物は、担持する環状化合物を用いた処置を必要とする個体に対して投与される。投与対象の個体としては、例えばヒト又はヒト以外の哺乳動物が挙げられる。投与方法は、好ましくは非経口投与であり、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与等が例示できる。
実施例
[0067]
 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[0068]
[実験例1] H-NMRによるバリノマイシン(Val)とヒドララジン(Hyd)の相互作用の評価
 環状化合物として、Valを選択し、分子モデリングプログラム「Maestro」(Schrodinger社製)を用いてその構造を解析したところ、環の径は6Åであった。分子径が6Å未満であること、分子内に窒素原子のような非共有電子対をもつドナー原子があること、疎水性相互作用のための疎水性官能基があること、ポリマー側鎖にpH応答性の官能基を介して導入するための1級アミンを有することを条件として、Valとホストゲスト相互作用を生じ得るゲスト分子(軸部)候補を探索したところ、Hydが選択された。
[化3]


[0069]
 次いで、以下のようにして、ValとHydの相互作用を評価した。Val(10mg/mL)とHyd(1.44mg/mL)を重DMSO中で混合し、 H-NMRにより化学シフトを測定し、各ピークを帰属させた。コントロールとしてバリノマイシン(10mg/mL)単体とヒドララジン(1.44mg/mL)単体の化学シフトもそれぞれ測定し、各ピークを帰属させた。さらに、バリノマイシン単体の場合とヒドララジンと共存している場合との比較において、化学シフトが変化したものについては、その変化量を求めた。結果を図3A-3E及び表1に示す。
[0070]
[表1]


[0071]
 表1に示されるとおり、バリノマイシンが単体で存在している場合とヒドララジンと共存している場合とでは0ppm~0.01ppmの化学シフト変化がみられた。このことから、バリノマイシンがヒドララジンによって影響を受けており、バリノマイシンとヒドララジンとが相互作用していることがわかる。また、化合物間の近接したプロトンを検出するROESY(Rotating frame nuclear Overhauser effect spectroscopy)測定を行ったところ、バリノマイシンのアミンの水素とヒドララジンeのベンゼン環の水素が近接していることによる交差したピークが見られた。
[0072]
[実験例2]UV-Vis法によるValとHydの混合比の最適化
 Val(10mg/mL)とHyd(1.44mg/mL)をアセトニトリルに溶解し、種々の混合比([Val]:[Hyd]=9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9)で混合した。その後、UV-Vis法による溶液のスペクトルを測定し、272nmにおける吸光度からJobs-plot法によりValとHydとが最も効率的に相互作用する混合比を決定した。具体的には、溶液の吸光度とコントロール溶液(バリノマイシン溶液)の吸光度の差分をとり、溶液中のバリノマイシンのモル分率をかけたものが最大値になる時のモル分率を計算した。その結果、ValとHydとが最も効率的に相互作用する混合比([Val]:[Hyd])は、1:1.22であった。
[0073]
[実験例3]poly(ethylene glycol)-poly(β-benzyl-L-aspartate)(PEG-PBLA)の合成
 PEG-NH (PEG分子量:12kDa)をジクロロメタン(DCM、66mg/mL)に溶解し、DCM/N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)混合溶媒 ([DCM]/[DMF]=10、66mg/mL)に溶解したβ-ベンジル-L-アスパラギン酸-N-カルボン酸無水物(BLA-NCA、60当量)を添加した。35℃で3日間の反応後、反応溶液をジエチルエーテルに添加し、減圧乾燥によりPEG-PBLA(PBLA重合度:40)を得た。重DMSO中での H-NMRから、収率は68%であった。
[0074]
[実験例4]PEG-PBLA-Acetyl(PEG-PBLA-Ac)の合成
 PEG-PBLAをDMF(10mg/mL)に溶解し、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP、10当量)、トリエチルアミン(TEA、1当量)、無水酢酸(10当量)を添加した。室温で3時間の反応後、反応溶液をジエチルエーテルに添加し、減圧乾燥によりPEG-PBLA-Acを得た。重DMSO中での H-NMRから、収率は81%であった。
[0075]
[実験例5]PEG-poly(aspartate-benzyl aldehyde)(PEG-P(Asp-BA))の合成
 PEG-PBLA-AcをDMF(60mg/mL)に溶解し、4,4-ジメトキシメチルフェニルメタンアミンを添加した。35℃で4日間の反応後、反応溶液に1M HCl溶液(100μL)を添加し、室温で1時間反応した。その後、反応溶液を純水に対して透析(MWCO:6,000-8,000)し、凍結乾燥によりPEG-P(Asp-BA)を得た。重DMSO中での H-NMRから、BAの導入率は63%であった。
[0076]
[実験例6]PEG-poly(Asp-benzyl hydralazine)(PEG-P(Asp-BH))の合成
 PEG-P(Asp-BA)をDMSO(20mg/mL)に溶解し、トリエチルアミン(170当量)及びHyd(170当量)を添加した。35℃で4日間の反応後、反応溶液をメタノールに対して透析(MWCO:6,000-8,000)し、減圧乾燥及び凍結乾燥により、以下に示すPEG-P(Asp-BH)を得た。重DMSO中での H-NMRから、Hydの導入率は63%であった。
[化4]


(式中、m2=15、m3=25)
[0077]
[実験例7]PEG-P(Asp-aliphatic ketone)(PEG-P(Asp-AK))の合成
 PEG-PBLA-AcをDMF(60mg/mL)に溶解し、4,4-ジメトキシペンタン-1-アミンを添加した。35℃で4日間の反応後、反応溶液に1M HCl溶液(100μL)を添加し、室温で1時間反応した。その後、反応溶液を純水に対して透析(MWCO:6,000-8,000)し、凍結乾燥によりPEG-P(Asp-AK)を得た。重DMSO中での H-NMRから、AKの導入率は87%であった。
[0078]
[実験例8]PEG-P(Asp-aliphatic hydralazine)(PEG-P(Asp-AH))の合成
 PEG-P(Asp-AK)をDMSO(20mg/mL)に溶解し、トリエチルアミン(170当量)及びHyd(170当量)を添加した。35℃で4日間の反応後、反応溶液をメタノールに対して透析(MWCO:6,000-8,000)し、減圧乾燥及び凍結乾燥により、以下に示すPEG-P(Asp-AH)を得た。重DMSO中での H-NMRから、AHの導入率は88%であった。
[化5]


(式中、n2=10、n3=28)
[0079]
[実験例9]Val内包高分子ミセルの調製
 PEG-PBLA、PEG-P(Asp-BH)又はPEG-P(Asp-AH)をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc、0.5mg/mL)に溶解し、Val([Val]/[AH]=0、0.3、0.5、1.0又は[Val]/[BH]=0、0.25、0.75)を添加した。室温で24時間撹拌後、10mMリン酸緩衝液(pH8.0)に対して透析(MWCO:6,000-8,000)し、フィルターにより精製した。得られた高分子ミセルの粒径及び多分散度を動的光散乱(DLS)法により評価した。結果を表2に示す。
[0080]
[実験例10]Val内包高分子ミセルの薬物担持量の評価
 実験例9で得られた高分子ミセル溶液(1mL、0.5mg/mL)からミセルを凍結乾燥により回収し、アセトニトリル(0.5mg/mL)に溶解した。30分間の超音波破砕後、溶液をジエチルエーテルに添加し、濾液の減圧乾燥によりValを得た。次いで、PEG-P(Asp-BH)を用いた高分子ミセル試料については、 H-NMRによって薬物担持量(ポリマー1mgあたりのVal担持量(mg))を算出した。一方、PEG-P(Asp-AH)を用いた高分子ミセル試料については、アセトニトリル中での220nmにおけるUVの吸光度から薬物担持量(ポリマー1mgあたりのVal担持量(mg))を算出した。また、ミセル調製時のValの添加量に対するポリマーに担持されたValの量の割合を薬物担持効率(%)として算出した。結果を表2に示す。
[0081]
[表2]


[0082]
 表2に示されるとおり、Val内包高分子ミセルは、粒径45nm~60nm程度の単峰性の粒子であった。また、0.3等量のValを添加した高分子ミセルが最も効率よくValを担持していることが確認された。一方で、Hyd残基を側鎖構造に有さないPEG-PBLAから調製したミセル([Val]/[Asp]=0.3:1)においては、バリノマイシンの内包が確認されなかった。このことから、Hyd残基とバリノマイシンの相互作用によるミセルへの内包が示唆された。
[0083]
[実験例11]生理条件下におけるVal内包高分子ミセルの安定性試験
 PEG-P(Asp-BH)に対して0.3等量のValを添加して調製したVal内包高分子ミセル溶液(1mg/mL)を10mMリン酸緩衝液(pH7.4、5.5、3.0)に対して透析(MWCO:3,500)し、各時間(1、3、6、24時間後)におけるポリマー由来の散乱強度をDLS法により測定した。結果を図4に示す。
[0084]
 図4に示されるとおり、Val内包高分子ミセルは、pH7.4及びpH5.5の条件下で高い安定性を示した。
[0085]
[実験例12]Val内包高分子ミセルのVal放出率の評価
 PEG-P(Asp-AH)に対して0.3等量のValを添加して調製したVal内包高分子ミセル溶液(2mL、0.5mg/mL)を10mMリン酸緩衝液(pH7.4、5.0)に対して透析(MWCO:3,500)し、各時間(1、3、6、24時間後)における外液中のVal量をHPLC法により測定した。ミセルに担持されたVal量に対する外液中に放出されたVal量の割合を放出率として算出した。結果を図5に示す。
[0086]
 図5に示されるとおり、Val内包高分子ミセル溶液は、生理的pH(7.4)においてValを安定に担持する一方で、エンドソーム内pH(5.0)でValを放出した。
[0087]
[実験例13]培養細胞に対するVal内包高分子ミセルの毒性試験
 ヒトすい腺がん細胞(BxPC3細胞、Panc-1細胞、MiaPaCa細胞)を96ウェルプレートに播種(5,000cells/well)した。24時間後にPEG-P(Asp-BH)に対して0.3等量のValを添加して調製したVal内包高分子ミセル溶液又はVal単体を種々のVal濃度となるように添加した。48時間後にPBSにより細胞を洗浄し、培地を添加した。その後、Cell Counting Kit-8(CCK-8、10μL/well)を培地に添加し、30分後に450nmにおけるUVの吸光度を測定した。薬物の代わりにバッファーのみを添加した群を100%、無細胞群を0%として、吸光度から細胞生存率を算出し、IC 50(Val濃度)を求めた。結果を表3に示す。
[0088]
[表3]


[0089]
 表3に示されるとおり、Valを高分子ミセルに内包することにより、バリノマイシンの放出が制御され、その毒性が抑制されたことがわかる。
[0090]
[実験例14]Val内包高分子ミセルの血中滞留性及び組織透過性の評価
 Cy5により蛍光標識したPEG-P(Asp-BH)-Cy5と0.3等量のValを用いて調製したVal内包高分子ミセル溶液を皮下腫瘍モデルマウス(BxPC3)の尾静脈から静脈投与し(Valの投与量:1.5mg/kg)、生体共焦点レーザー顕微鏡(IV-CLSM)法により静脈及び腫瘍組織における蛍光強度を測定した。ミセル投与前の蛍光強度を0、投与直後の蛍光強度を100として、血中滞留性を評価した。結果を図6に示す。
[0091]
 図6に示されるとおり、Val内包高分子ミセルは高い血中安定性を示し、時間の経過とともに組織に浸透していくことがわかる。
[0092]
[実験例15]Val内包高分子ミセルの生体内分布の評価
 Cy5により蛍光標識したPEG-P(Asp-BH)-Cy5と0.3等量のValを用いて調製したVal内包高分子ミセル溶液を皮下腫瘍モデルマウス(BxPC3)の尾静脈から静脈投与し(Valの投与量:1.5mg/kg)、IV-CLSM法により腫瘍内の蛍光強度を経時的に観察した。また、投与24時間後に臓器(肝臓、腎臓、脾臓、心臓、肺)及び腫瘍を摘出し、回収した臓器及び腫瘍内の蛍光強度をIVIS法により測定した。腫瘍内の経時的な蛍光強度を図7(a)に示し、回収した臓器及び腫瘍内の蛍光強度を図7(b)に示す。
[0093]
 図7(a)に示されるとおり、Val内包高分子ミセルは経時的に腫瘍内に集積していくことがわかる。また、図7(b)に示されるとおり、投与24時間後において、腫瘍へのミセルの集積が確認された。
[0094]
[実験例16]担がんマウスに対するVal内包高分子ミセルの抗腫瘍効果の評価
 PEG-P(Asp-BH)を用いて調製したVal内包高分子ミセル溶液(Valの投与量:1.5mg/kg)、バリノマイシン溶液(1.5mg/kg)、ゲムシタビン溶液(80mg/kg)を、0日目、2日目及び4日目に皮下腫瘍モデルマウス(BxPC3)の尾静脈から静脈投与(バリノマイシン溶液のみ腹腔内投与)し、各時間後における腫瘍のサイズ及びマウスの体重を測定した(n=4)。結果を図8に示す。
[0095]
 図8に示されるとおり、Val内包高分子ミセル溶液投与群では、コントロール群(生理食塩水投与群)及びゲムシタビン溶液投与群に比べて腫瘍の増大が顕著に抑制されていた一方で、体重の大きな変化は認められなかった。なお、バリノマイシン溶液投与群はすべて、初回投与後24時間以内に死亡した。
[0096]
[実験例17]ユニットホストゲスト複合体(uHGC)の調製
 ValをDMSO(10mg/mL)に溶解し、2kDaのPEG-CHO(10当量)及びジヒドララジン(5当量)を添加した。室温で24時間反応後、メタノールに対して透析(MWCO:1,000)し、減圧乾燥により以下に示す輸送担体とValとの複合体(uHGC)を得た。重DMSO中での H-NMRから、Val導入率(Hyd量に対する輸送担体に担持されたValの量の割合)を算出したところ、63%であった。
[化6]


[0097]
[実験例18]培養細胞に対するuHGCの毒性試験
 ヒトすい腺がん細胞(BxPC3細胞)を96ウェルプレートに播種(5,000cells/well)し、24時間後にuHGCを添加した。48時間後にPBSにより細胞を洗浄し、培地を添加した。その後、Cell Counting Kit-8(CCK-8、10μL/well)を培地に添加し、30分後に450nmにおけるUVの吸光度を測定した。バッファーのみを添加した群を100%、無細胞群を0%として、吸光度から細胞生存率を算出した。結果を図9に示す。
[0098]
 図9に示されるとおり、uHGC添加群は1μMのVal濃度で約70%の細胞生存率を示し、このことから、複合体化することによってValの毒性を抑制できることがわかる。一方で、高濃度のuHGCの添加により細胞生存率の低下がみられたことから、内包されたバリノマイシンの放出による細胞死の誘導が示唆された。
[0099]
[実験例19]ホスト-ゲスト相互作用を生じる組み合せの検証1
 環状化合物として、エリスロマイシンを選択した。エリスロマイシンの化学構造および H-NMR測定結果を以下に示す。
[化7]


[0100]
 エリスロマイシンの環の径は3Åであるため、分子径が3Å未満であること、および、エリスロマイシンの分子内に窒素原子のような非共有電子対をもつドナー原子があることを条件として、エリスロマイシンとホストゲスト相互作用を生じ得るゲスト分子(軸部)候補を探索したところ、ジエチレントリアミン(DET)が選択された。DETの化学構造および H-NMR測定結果を以下に示す。
[化8]


[0101]
 次いで、以下のようにして、エリスロマイシンとDETの相互作用を評価した。エリスロマイシン(10mg/mL)とDET(1.41mg/mL)を重DMSO中で混合し、 H-NMRにより化学シフトを測定し、各ピークを帰属させた。コントロールとしてエリスロマイシン(10mg/mL)単体とDET(1.41mg/mL)単体の化学シフトもそれぞれ測定し、各ピークを帰属させた。結果を図10A~10Eに示す。
[0102]
 図10A~10Eに示されるとおり、DETと共存している場合には、エリスロマイシンの環内の化学シフトに変化が生じており、このことから、DETがエリスロマイシンの環構造に分子間相互作用を及ぼしていることが分かる。
[0103]
[実験例20]ホスト-ゲスト相互作用を生じる組み合せの検証2
 環状化合物として、バシトラシンを選択した。バシトラシンの化学構造および H-NMR測定結果を以下に示す。
[化9]


[0104]
 バシトラシンの環の径は8Åであるため、分子径が8Å未満であること、および、分子内に窒素原子のような非共有電子対をもつドナー原子があることを条件として、バシトラシンとホストゲスト相互作用を生じ得るゲスト分子(軸部)候補を探索したところ、ジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジン、DETが選択された。ジヒドララジンおよび1-ナフチルヒドララジンの化学構造ならびに H-NMR測定結果を以下に示す。
[化10]


[化11]


[0105]
 次いで、実験例19と同様にして、バシトラシンとジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジンまたはDETとの相互作用を、 H-NMR測定における化学シフトの変化に基づいて評価した。結果をそれぞれ、図11A~11E、図12A~12Eおよび図13A~13Fに示す。
[0106]
 図11A~11E、図12A~12Eおよび図13A~13Fに示されるとおり、ジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジンまたはDETと共存している場合には、バシトラシンの環内の化学シフトに変化が生じており、このことから、ジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジンまたはDETがバシトラシンの環構造に分子間相互作用を及ぼしていることが分かる。
[0107]
[実験例21]Valとジヒドララジン間のホスト-ゲスト相互作用の検証
 Val(10mg/mL)とジヒドララジン(2.6mg/mL)を重DMSO中で混合し、 H-NMRにより化学シフトを測定し、各ピークを帰属させた。コントロールとしてVal(10mg/mL)単体とジヒドララジン(2.6mg/mL)単体の化学シフトもそれぞれ測定し、各ピークを帰属させた。結果を図14A~14Eに示す。
[0108]
 図14A~14Eに示されるとおり、ジヒドララジンと共存している場合にはヒドララジンと共存している場合と同様に、Valの水素のピークに変化が生じており、このことから、Valとヒドララジンとの間に分子間相互作用が生じていることが分かる。

産業上の利用可能性

[0109]
 本発明は、例えば、DDS分野において好適に用いられ得る。

請求の範囲

[請求項1]
 環状化合物と該環状化合物を担持するための軸部を有する輸送担体との複合体であって、
 該軸部が該環状化合物に包接されることによって複合体化している、複合体。
[請求項2]
 前記輸送担体が、側鎖を有するポリマーであり、
 少なくとも1つの側鎖が、前記軸部を有する、請求項1に記載の複合体。
[請求項3]
 前記ポリマーが、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有し、
 該疎水性ポリマーセグメントの側鎖が、前記軸部を有する、請求項2に記載の複合体。
[請求項4]
 前記軸部と前記ポリマー主鎖との間に、生体内で開裂し得る結合が存在している、請求項2又は3に記載の複合体。
[請求項5]
 前記輸送担体が、前記軸部と、その両端に配置されて前記環状化合物が前記軸部から脱離することを防止する蓋部と、を有する、請求項1に記載の複合体。
[請求項6]
 前記蓋部が、親水性ポリマーを含む、請求項5に記載の複合体。
[請求項7]
 前記軸部と前記蓋部との間に、生体内で開裂し得る結合が存在している、請求項5又は6に記載の複合体。
[請求項8]
 前記軸部が、ヒドララジン、ジヒドララジン、1-ナフチルヒドララジンおよびジエチレントリアミンから選択される少なくとも1種の残基である、請求項1から7のいずれかに記載の複合体。
[請求項9]
 前記環状化合物が、バリノマイシン、バシトラシンおよびエリスロマイシンから選択される少なくとも1種である、請求項1から8のいずれかに記載の複合体。
[請求項10]
 請求項2から4のいずれかに記載の複合体を含む、ポリマー粒子組成物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3A]

[ 図 3B]

[ 図 3C]

[ 図 3D]

[ 図 3E]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10A]

[ 図 10B]

[ 図 10C]

[ 図 10D]

[ 図 10E]

[ 図 11A]

[ 図 11B]

[ 図 11C]

[ 図 11D]

[ 図 11E]

[ 図 12A]

[ 図 12B]

[ 図 12C]

[ 図 12D]

[ 図 12E]

[ 図 13A]

[ 図 13B]

[ 図 13C]

[ 図 13D]

[ 図 13E]

[ 図 13F]

[ 図 14A]

[ 図 14B]

[ 図 14C]

[ 図 14D]

[ 図 14E]