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1. WO2020116557 - METAL FILM AND SPUTTERING TARGET

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明 細 書

発明の名称 金属膜、及び、スパッタリングターゲット

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051  

実施例

0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

産業上の利用可能性

0075  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3A   3B  

明 細 書

発明の名称 : 金属膜、及び、スパッタリングターゲット

技術分野

[0001]
 本発明は、例えば、反射膜、電極膜、配線膜として用いられる金属膜、及び、この金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
 本願は、2018年12月5日に、日本に出願された特願2018-228365号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、タッチパネル等の表示装置の反射膜、電極膜、配線膜として、例えば、特許文献1に示すように、Ag又はAg合金からなる金属膜を用いたものが提案されている。
 また、特許文献2-4においては、透明導電酸化物膜とAg又はAg合金からなる金属膜との積層構造とされた積層膜が提案されている。
[0003]
 上述の反射膜、電極膜、配線膜においては、上述の特許文献1-4に示すように、例えばエッチング液を用いたウェットエッチング処理(以下、エッチング処理と称す)によって、所定のパターン形状に形成されることがある。
 ここで、一般に、Ag又はAg合金からなる金属膜をエッチング処理する場合には、例えばPAN(リン酸+硝酸+酢酸)といった硝酸を含むエッチング液が用いられている。
[0004]
 ところが、Ag又はAg合金からなる金属膜を、硝酸を含むエッチング液でエッチング処理した場合には、Agの溶解速度が非常に速いため、エッチング状態を精度良く制御することが困難となる場合があった。
 また、透明導電酸化物膜と金属膜との積層膜を、硝酸を含むエッチング液でエッチング処理した場合には、透明導電酸化物膜と金属膜とでエッチングレートの差が大きく、金属膜がオーバーエッチングされてしまい、エッチング後のパターン形状を精度良く形成することができないといった問題があった。
[0005]
 ここで、特許文献2においては、シュウ酸エッチング液を用いることにより、金属膜のオーバーエッチングを抑制する方法が提案されている。
 また、特許文献3、4においては、透明導電酸化物膜の組成を規定することにより、透明導電酸化物膜と金属膜とのエッチングレートの差を小さくし、金属膜のオーバーエッチングを抑制する方法が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 日本国特開2006-028641号公報(A)
特許文献2 : 日本国特許第6020750号公報(B)
特許文献3 : 日本国特開2017-179594号公報(A)
特許文献4 : 日本国特開2017-183274号公報(A)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 ところで、Ag又はAg合金からなる金属膜をエッチング処理する工程においては、上述したように、従前からPAN等の硝酸を含むエッチング液が広く使用されていることから、硝酸を含むエッチング液を用いて精度良くエッチング処理することが求められることがある。
 また、積層膜に要求される特性によっては、特許文献3、4に記載された透明導電酸化物膜を適用できない場合がある。
 このため、PAN等の硝酸を含むエッチング液を用いた場合であっても、エッチングレートを抑えることが可能な金属膜が求められている。
[0008]
 この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、硝酸を含むエッチング液を用いた場合でもエッチングレートが抑えられ、精度良くエッチング処理することが可能な金属膜、及び、この金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
 硝酸を含むエッチング液を用いてAg又はAg合金からなる金属膜をエッチング処理する際には、Agの溶解反応と硝酸の還元反応が行われる。このとき、硝酸の還元反応が促進されると、Agの溶解反応も促進され、金属膜のエッチングレートが速くなる。そこで、硝酸の還元反応において触媒として作用するPd、Pt、Au、Rhといった元素の含有量を制限することによって、硝酸を含むエッチング液を用いても金属膜のエッチングレートを抑えることが可能となる。
[0010]
 本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の金属膜は、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなることを特徴としている。
[0011]
 この構成の金属膜においては、硝酸の還元反応において触媒として作用するPd、Pt、Au、Rhの含有量を上述のように制限しているので、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理した場合であっても、Agの溶解反応が必要以上に進行することを抑制でき、エッチングレートを抑えることができる。
 よって、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理しても、エッチング状態を安定して制御することができ、精度良くパターン形状を形成することが可能となる。
[0012]
 ここで、本発明の金属膜においては、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有していてもよい。
 Sb、Zn、Sn、Pb、Tiは、硝酸の還元反応を抑える触媒毒として作用することから、これらの添加元素を上述の範囲で含有することにより、さらに硝酸の還元反応を抑えることができ、金属膜のエッチングレートをさらに抑えることができる。
[0013]
 また、本発明のスパッタリングターゲットは、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなることを特徴としている。
[0014]
 この構成のスパッタリングターゲットにおいては、硝酸の還元反応において触媒として作用するPd、Pt、Au、Rhの含有量を上述のように制限しているので、成膜された金属膜においても、Pd、Pt、Au、Rhの含有量を制限することができ、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理しても、エッチングレートを抑えることが可能な金属膜を成膜することができる。
[0015]
 ここで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有していてもよい。
 この場合、硝酸の還元反応を抑える触媒毒として作用するSb、Zn、Sn、Pb、Tiを含有しているので、成膜された金属膜においても、これらの添加元素を上述の範囲で含有することになり、さらに硝酸の還元反応を抑えることができ、硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理しても、エッチングレートを抑えることが可能な金属膜を成膜することができる。
[0016]
 また、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面の複数の測定点におけるSb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から算出される分布D =(σ /μ )×100(%)が20%以下であることが好ましい。
 Sb、Zn、Sn、Pb、Tiといった添加元素を含む場合において、スパッタ面の複数の測定点における添加元素の合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から算出される分布D が20%以下に抑えられているので、スパッタ面において添加元素が均一に存在することになり、これらの添加元素が均一に分散した金属膜を安定して成膜することが可能となる。

発明の効果

[0017]
 本発明によれば、硝酸を含むエッチング液を用いた場合でもエッチングレートが抑えられ、精度良くエッチング処理することが可能な金属膜、及び、この金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 矩形平板型のスパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の添加元素の含有量の測定位置を示す説明図である。
[図2] 円板型スパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の添加元素の含有量の測定位置を示す説明図である。
[図3A] 円筒型スパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の添加元素の含有量の測定位置を示す説明図であり、軸線に直交する断面図である。
[図3B] 円筒型スパッタリングターゲットにおけるスパッタ面の添加元素の含有量の測定位置を示す説明図であり、軸線に沿った断面図である。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下に、本発明の一実施形態である金属膜、及び、スパッタリングターゲットについて説明する。
 本実施形態である金属膜は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、タッチパネル等の表示装置の反射膜、電極膜、配線膜として使用されるものである。
[0020]
<金属膜>
 本発明の実施形態である金属膜においては、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなる組成とされている。
 本実施形態である金属膜においては、さらに添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有していてもよい。
[0021]
 ここで、本実施形態である金属膜において、成分組成を上述のように規定した理由について説明する。
[0022]
(Pd、Pt、Au、Rh)
 上述のPd、Pt、Au、Rhといった元素は、硝酸の還元反応において触媒として作用し、硝酸の還元反応を促進させる。これにともなって、Agの溶解反応が促進されるため、金属膜のエッチングレートが速くなる。
 そこで、Pd、Pt、Au、Rhの含有量を上述のように制限することにより、硝酸を含むエッチング液を用いても金属膜のエッチングレートを抑えることが可能となる。
[0023]
 ここで、Pdの含有量は10質量ppm以下とすることが好ましく、Ptの含有量は5質量ppm以下とすることが好ましく、Auの含有量は5質量ppm以下とすることが好ましく、Rhの含有量は2質量ppm以下とすることが好ましい。さらに、PdとPtとAuとRhの合計含有量は10質量ppm以下とすることが好ましい。
 特に限定はされないが、金属膜中のPd、Pt、Au及びRhのそれぞれの含有量の下限値は、0.1質量ppm超に設定されてもよい。また、PdとPtとAuとRhの合計含有量の下限値は、0.5質量ppm超に設定されてもよい。
[0024]
(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)
 上述の添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)は、硝酸の還元反応において触媒毒として作用し、硝酸の還元反応を抑制することから、必要に応じて適宜添加してもよい。
 ここで、Sb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量を0.05原子%以上とすることにより、硝酸の還元反応を十分に抑制することができ、硝酸を含むエッチング液を用いても金属膜のエッチングレートをさらに抑えることが可能となる。一方、Sb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量を5.00原子%以下とすることにより、金属膜の特性が大きく変化することを抑制できる。
 したがって、本実施形態において、上述の添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)を添加する場合には、添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量を0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲内とする。
[0025]
 ここで、上述の添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量の下限は0.10原子%以上とすることが好ましく、0.20原子%以上とすることがさらに好ましい。また、添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量の上限は4.00原子%以下とすることが好ましく、3.00原子%以下とすることがさらに好ましい。
 なお、上述の添加元素添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)を意図的に添加しない場合には、不純物として上述の添加元素を合計で0.05原子%未満を含有していてもよい。
[0026]
<スパッタリングターゲット>
 次に、本実施形態であるスパッタリングターゲットについて説明する。このスパッタリングターゲットは、上述した本実施形態である金属膜を成膜するために用いられるものである。
[0027]
 本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、Pdの含有量が20質量ppm以下、Ptの含有量が40質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなる組成とされている。
 特に限定はされないが、スパッタリングターゲット中のPd、Pt、Au及びRhのそれぞれの下限値は、0.1質量ppm超に設定されてもよい。
 本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、さらに、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有していてもよい。
[0028]
 なお、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいて、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有する場合には、スパッタ面の複数の測定点における添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から以下の式で算出される分布D が20%以下であることが好ましい。
 D =(σ /μ )×100(%)
[0029]
 ここで、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいて、成分組成、添加元素の分布を、上述のように規定した理由について説明する。
[0030]
(成分組成)
 本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、上述の金属膜を成膜するものであるから、上述した本実施形態である金属膜の成分組成に応じて設定される。
 よって、本実施形態であるスパッタリングターゲットは、上述したように、エッチングレートを抑制した金属膜を成膜するために、硝酸の還元反応において触媒として作用する元素であるPd、Pt、Au、Rhの含有量を制限している。
 また、硝酸の還元反応において触媒毒として作用する添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)を含有する場合には、これら添加元素の合計含有量を上述の範囲に規定している。
[0031]
(添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の分布)
 本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいて、上述の添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)を含有する場合には、成膜した金属膜においても上述の添加元素を含有することになる。
 ここで、スパッタ面の複数の測定点における添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から算出される分布D を20%以下とすることにより、スパッタ面において添加元素が均一に存在することになり、これらの添加元素が均一に分散した金属膜を成膜でき、金属膜全体にわたってエッチングレートが安定することになる。
 なお、添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から算出される分布D は15%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがさらに好ましい。
 特に限定されないが、分布D の下限値は0.2%超としてもよい。
[0032]
 なお、図1に示すように、スパッタ面が矩形状をなすスパッタリングターゲットの場合には、そのスパッタ面において、対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部(2)、(3)、(4)、(5)の5点を少なくとも含む複数の箇所で添加元素の含有量を測定し、算出することが好ましい。なお、角部(2)、(3)、(4)、(5)は、角部から内側に向かって対角線全長の10%以内の範囲内とする。
[0033]
 また、図2に示すように、スパッタ面が円形状をなすスパッタリングターゲットの場合には、そのスパッタ面において、円の中心(1)、及び、円の中心を通過するとともに互いに直交する2本の直線上の外周部分(2)、(3)、(4)、(5)の5点を少なくとも含む複数の箇所で添加元素の含有量を測定することが好ましい。なお、外周部分(2)、(3)、(4)、(5)は、外周縁から内側に向かって直径の10%以内の範囲内とする。
[0034]
 さらに、図3A及び図3Bに示すように、スパッタ面が円筒面となる円筒型スパッタリングターゲットにおいては、軸線方向の一端部、中央部、他端部でそれぞれ外周方向に90°間隔の(1)、(2)、(3)、(4)の合計12点を少なくとも含む複数の箇所で、添加元素の含有量を測定することが好ましい。なお、軸線方向の一端部及び他端部は、軸線方向端部から内側に向かって軸線方向の全長の10%以内の範囲内とする。
[0035]
<スパッタリングターゲットの製造方法>
 次に、本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
[0036]
 まず、Pd、Pt、Au、Rhの含有量を低減したAg原料を準備する。
 本実施形態では、純度99.9質量%以上のAgに対して電解精錬を実施して電析Agを作製し、得られた電析Agを再度電解のアノードとして鋳込み再電解を実施した。これを繰り返すことでAg内の不純物濃度を低減した。また、電解精錬を実施する毎にICP発光分光分析法によって成分分析を実施した。
[0037]
 これにより、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下に制限されたAg原料を得る。
 また、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiを含有する場合には、それぞれ純度99.9質量%以上のSb原料、Zn原料、Sn原料、Pb原料、Ti原料を準備する。なお、原料として、Sb、Zn、Sn、Pb、Tiを含有するAg母合金を用いてもよい。
[0038]
 次に、溶解炉を用いて、Ag原料を、高真空下又は不活性ガス雰囲気下で溶解し、得られたAg溶湯に、必要に応じて、Sb原料、Zn原料、Sn原料、Pb原料、Ti原料を添加する。その後、高真空下又は不活性ガス雰囲気下で溶解する。ここで、インゴット中の添加元素濃度を均一にするため、高周波で溶湯を撹拌できる高周波誘導加熱炉で溶解することが好ましい。
[0039]
 また、Ag原料の溶解は、溶解炉内部を一度高真空にした後、Arで置換した雰囲気下で行い、溶解後、Ar雰囲気下で副原料を投入することが好ましい。
 そして、Ag溶湯を所定形状の鋳型に流しこみ、Agインゴットを作成する。Ag溶湯を鋳込む際には、添加元素の偏析をできるだけ無くすために、水冷した鋳型に流し込むことによってAg溶湯を急冷することが好ましい。
[0040]
 続いて、得られたAgインゴットを鍛造・圧延する。圧延は、熱間圧延もしくは冷間圧延で実施する。
 熱間圧延を用いる場合、圧延開始前の均質化熱処理工程として、600℃以上700℃以下の温度で1時間以上10時間以下保持する条件の熱処理を行うことが好ましい。600℃未満だと均質化が不十分となるおそれがあり、700℃を超えるとインゴット中に液相が出現し、ターゲットが軟化・溶解するおそれがある。また、熱処理時間は、1時間以未満だと均質化が不十分となるおそれがあり、10時間を超えると内部酸化が生じるおそれがある。
 なお、上述の均質化熱処理工程における雰囲気に特に制限はなく、例えば、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気であってもよい。
[0041]
 均質化熱処理工程の後に熱間圧延を行うが、圧延終了時温度は400℃以上700℃以下であることが好ましく、場合に応じて中間焼鈍を入れることが好ましい。
 圧延の際には、累計圧下率は70%以上であることが好ましく、また少なくとも圧延の最後1パスの圧下率は20%以上であることが好ましい。圧下率が20%未満だと結晶粒径の微細化が十分でなく、また内部の結晶粒径も均一化が不十分となる。なお、圧延機の能力の関係で、実質的に1パス当たり50%以上の圧下率は現実的ではない。
[0042]
 圧延の後、ターゲット材の結晶組織の均一化及び加工硬化除去のため、熱処理を実施する。熱処理温度は500℃以上700℃以下の範囲で1時間以上5時間以下保持の条件で実施するのが好ましい。500℃未満だと加工硬化除去の効果が十分でなく、700℃を超えると結晶粒が粗大化、あるいは、液相が出現してターゲットが溶解・軟化するおそれがある。また、熱処理時間が1時間未満だと均一化が不十分となる。熱処理後は空冷又は水冷で急冷する。
 なお、上述の熱処理時における雰囲気に特に制限はなく、例えば、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気であってもよい。
[0043]
 そして、所定の形状寸法となるように、切削加工等を実施する。
 上述した工程によって、本実施形態であるスパッタリングターゲットが製造されることになる。
[0044]
<金属膜の製造方法>
 次に、本実施形態である金属膜の製造方法について説明する。
 本実施形態である金属膜は、上述した本実施形態であるスパッタリングターゲットを用いてスパッタすることで成膜することができる。
 上述したスパッタリングターゲットを、例えば無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けして、スパッタ装置に装着し、基板の表面にスパッタ成膜されることになる。
 ここで、使用するスパッタ装置においては、金属膜を成膜する基板を静止してスパッタする静止対向式であってもよいし、基板を搬送しながらスパッタする基板搬送式(インライン式)であってもよい。
 また、スパッタ装置の電源としては、例えば、直流(DC)電源、高周波(RF)電源、中周波(MF)電源又は交流(AC)電源を用いることが可能である。
[0045]
 以上のような構成とされた本実施形態である金属膜によれば、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなる組成とされているので、硝酸の還元反応において触媒として作用するPd、Pt、Au、Rhといった元素の含有量が制限されており、PAN等の硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理した場合であっても、Agの溶解反応が必要以上に進行することを抑制でき、エッチングレートを抑えることが可能となる。よって、エッチング状態を安定して制御することができ、精度良くパターン形状を形成することが可能となる。
[0046]
 さらに、本実施形態の金属膜において、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有する場合には、上述の添加元素が硝酸の還元反応を抑える触媒毒として作用することになり、さらに硝酸の還元反応を抑えてAgの溶解反応が必要以上に進行することを抑制でき、エッチングレートをさらに抑えることが可能となる。
[0047]
 本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなる組成とされているので、上述したように、PAN等の硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理した場合であっても、エッチングレートを抑えることが可能な金属膜を成膜することができる。
[0048]
 さらに、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有する場合には、PAN等の硝酸を含むエッチング液を用いてエッチング処理した場合であっても、さらにエッチングレートを抑えることが可能な金属膜を成膜することができる。
[0049]
 そして、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有し、スパッタ面の複数の測定点におけるSb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から算出される分布D を20%以下とした場合には、スパッタ面において添加元素が均一に存在することになり、これらの添加元素が均一に分散した金属膜を成膜でき、金属膜全体にわたってエッチングレートを安定させることが可能となる。
[0050]
 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
 本発明の金属膜は、単膜として用いてもよいし、導電酸化物膜等の他の膜との積層膜として使用してもよい。
[0051]
 また、本実施形態では、Agインゴットを熱間圧延及び冷間圧延することによってスパッタリングターゲットを製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、熱間鍛造等の他の加工方法を適用してもよい。加工方法は、製造されるスパッタリングターゲットの形状に応じて、既知の方法を適宜選択することが好ましい。
実施例
[0052]
 以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
[0053]
 電解精錬を繰り返し実施するとともにICP発光分光分析法によって成分分析を実施することにより、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下に制限されたAg原料を得た。なお、比較例1~6については上述の元素の含有量が制限されていないAg原料を用いた。
[0054]
 このAg原料を真空雰囲気下で溶解し、Arガスに置換した後、必要に応じて、純度99.9質量%以上のSb原料、Zn原料、Sn原料、Pb原料、Ti原料を添加し、所定の組成のAg溶湯を溶製した。そして、このAg溶湯を、鋳造してAgインゴットを製造した。
[0055]
(成分組成)
 得られたAgインゴットから分析用サンプルを採取して、ICP発光分光分析法によって成分組成を測定した。この測定結果をAgスパッタリングターゲットの成分組成として表1に示す。
 なお、表1において、硝酸の還元反応において触媒として作用するPd、Pt、Au、Rhといった元素(触媒元素)の含有量は質量比で、添加元素(Sb、Zn、Sn、Pb、Ti)の含有量は原子比で表示した。
[0056]
 得られたAgインゴットに対して、熱間圧延を実施した。圧延開始温度を650℃、圧延終了温度を400℃とし、累計圧下率を80%とした。
 熱間圧延後に、600℃、1時間の条件で熱処理を行った。熱処理後は水冷にて急冷した。
 以上により、長さ2000mm、幅200mm、厚さ8mmの板材を得た。
[0057]
(添加元素の分布)
 得られた板材において、スパッタ面おける添加元素の合計含有量の平均値μ と標準偏差σ 及び分布D を以下のように測定した。
 図1に示す位置より測定試料を採取し、各測定試料を用いてICP-MS分析することにより、添加元素の合計含有量を測定した。
 各5箇所の測定試料から得られた添加元素の合計含有量からスパッタリングターゲット全体としての添加元素の合計含有量の平均値μ と標準偏差σ を算出した。そして、これら平均値μ と標準偏差σ を用いて、分布D =(σ /μ )×100(%)を算出した。この測定結果を表1に示す。
[0058]
 次に、上述の板材を切断して機械加工することにより、所定寸法(126mm×178mm×厚さ6mm)のスパッタリングターゲットを製作した。
[0059]
 上述のようにして得られたスパッタリングターゲットを、無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これをスパッタ装置に装着した。本実施形態では、マグネトロンDCスパッタ装置を用いた。また、本実施形態では、基板を搬送しながらスパッタする基板搬送式のスパッタ装置を用いた。
[0060]
 そして、以下の条件でスパッタを行い、ガラス基板(コーニング社製のEAGLE XG)の上に金属膜を成膜した。
 成膜開始真空度:1.0×10 -4Pa以下
 スパッタガス:高純度アルゴン
 チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
 直流電力:100W
[0061]
(金属膜の組成)
 上述の条件で、ガラス基板上に金属膜を厚さ1000nmで成膜し、これをICP発光分光分析法によって成分組成を測定した。その結果、スパッタリングターゲットの組成と同等であり、本発明例1~23についてはPdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下であること、及び、本発明例6~23についてはSb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量が0.05原子%以上5.00原子%以下であることを確認した。
[0062]
(膜厚測定)
 上述の条件で、ガラス基板上に厚さ100nmの金属膜を成膜した。スパッタリングによって成膜する場合、一定時間成膜した際の膜厚を段差測定計(DEKTAK-XT)によって測定することでスパッタリングレートを測定し、その値を元に成膜時間を調整して、目標厚さとなるように成膜した。
 実際の金属膜については、透過電子顕微鏡(TEM)によって金属膜の断面を観察することで確認し、狙い値通りの膜厚が成膜されていることを確認した。TEM観察のための試料作製には、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)や、集束イオンビーム(FIB)を用いることができる。
[0063]
 そして、上述のようにして成膜された金属膜について、以下のようにして、電気特性、エッチング特性について評価した。
[0064]
(電気特性評価)
 金属膜のシート抵抗を、三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPによる四探針法により測定した。
[0065]
(エッチング特性評価)
 まず、ガラス基板上に成膜された厚さ100nmの金属膜に、フォトリソグラフィーによって配線パターンを形成した。
 フォトレジスト剤(東京応化工業株式会社製OFPR-8600)をスピンコーターにより塗布し、110℃でプリベーク後に露光し、その後現像液(東京応化工業株式会社製NMD-W)によりパターンを現像し、150℃でポストベークを行った。これにより、Ag合金膜上に幅100μm、間隔100μmの櫛形配線パターンを形成した。
 上述の膜に対してウェットエッチングを行った。エッチング液としては、関東化学社製SEA-2を用い、液温40℃、浸漬時間30秒にてエッチングを行った。
[0066]
 以上のようにして得られた配線膜について、配線断面を観察するために基板を劈開し、その断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。そして、SEMにより観察されたAg膜端部とフォトレジスト端部の平行な位置の差分をAg膜のオーバーエッチング量として測定した。
[0067]
[表1]


[0068]
[表2]


[0069]
 Pdの含有量が55.0質量ppmである比較例1のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例101、Ptの含有量が26.0質量ppmである比較例2のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例102、Auの含有量が25.0質量ppmである比較例3のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例103、Rhの含有量が15.0質量ppmである比較例4のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例104においては、オーバーエッチング量が1.6~1.8μmと大きく、エッチング特性が不十分であった。
[0070]
 また、PdとPtとAuとRhの合計含有量が56.0質量ppmである比較例5のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例105、及び、PdとPtとAuとRhの合計含有量が205.0質量ppmである比較例6のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例106においては、オーバーエッチング量が3.0~3.3μmとさらに大きく、エッチング特性が不十分であった。
[0071]
 さらに、添加元素であるSb、Zn、Sn、Pb、Tiの合計含有量が5.00原子%を超える比較例7~11のスパッタリングターゲットを用いて成膜された比較例107~111においては、いずれもシート抵抗が高くなり、金属膜の電気特性を確保することができなかった。
[0072]
 これに対して、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物とされた組成の本発明例1~5のスパッタリングターゲットを用いて成膜された本発明例101~105においては、オーバーエッチング量が低く抑えられており、エッチング特性に優れていた。また、シート抵抗も十分に低く、金属膜の電気特性を確保することができた。
[0073]
 また、Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされ、さらに、添加元素としてSb、Zn、Sn、Pb、Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有する本発明例6~23のスパッタリングターゲットを用いて成膜された本発明例106~123においては、オーバーエッチング量がさらに低く抑えられており、エッチング特性に優れていた。シート抵抗も低く、金属膜の電気特性を確保することができた。
[0074]
 以上のことから、本発明例によれば、硝酸を含むエッチング液を用いた場合でもエッチングレートが抑えられ、精度良くエッチング処理することが可能な金属膜、及び、この金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供可能であることが確認された。

産業上の利用可能性

[0075]
 本発明によれば、硝酸を含むエッチング液を用いた場合でもエッチングレートが抑えられ、精度良くエッチング処理することが可能な金属膜、及び、この金属膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供することが可能となる。

請求の範囲

[請求項1]
 Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなることを特徴とする金属膜。
[請求項2]
 添加元素としてSb,Zn,Sn,Pb,Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の金属膜。
[請求項3]
 Pdの含有量が40質量ppm以下、Ptの含有量が20質量ppm以下、Auの含有量が20質量ppm以下、Rhの含有量が10質量ppm以下、かつ、PdとPtとAuとRhの合計含有量が50質量ppm以下とされており、残部がAgと不可避不純物からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
[請求項4]
 添加元素としてSb,Zn,Sn,Pb,Tiのうち少なくとも1種又は2種以上を合計で0.05原子%以上5.00原子%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項5]
 スパッタ面の複数の測定点におけるSb,Zn,Sn,Pb,Tiの合計含有量値の平均値μ と標準偏差σ から以下の式で算出される分布D が20%以下であることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリングターゲット。
 D =(σ /μ )×100(%)

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3A]

[ 図 3B]