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1. WO2020116388 - COMPOUND AND THERMOELECTRIC CONVERSION MATERIAL

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明 細 書

発明の名称 化合物及び熱電変換材料

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155  

実施例

0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209  

産業上の利用可能性

0210  

符号の説明

0211  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35  

明 細 書

発明の名称 : 化合物及び熱電変換材料

技術分野

[0001]
 本発明は、化合物及び熱電変換材料に関する。
 本願は、2018年12月4日に出願された日本国特願2018-227569号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 近年、エネルギー資源の消費量を抑制する観点から、高い温度領域の熱源に相当する自動車の排熱や工場の排熱を利用する熱電変換デバイスの検討が行われている。
[0003]
 このような排熱を利用するため、熱電変換デバイスを構成する熱電変換材料は高い耐熱性が求められている。
[0004]
 熱電変換材料に含まれる化合物として、例えば、構成元素として、Sn、Te及びMnを含有する化合物が報告されている(非特許文献1)。

先行技術文献

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Energy & Environmental Science, volume 8, Issue 11, page 3298-3312(2015)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、非特許文献1で開示された化合物の耐熱性は十分ではなかった。
[0007]
 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、熱電変換特性を有し、耐熱性の高い化合物、及びこれを含有する熱電変換材料を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記の課題を解決するため、本発明は下記の態様を包含する。
[1]Sn、Te及びMnを含有し、SbとBiとのいずれか一方又は両方を更に含有する化合物。
[0009]
[2]SnTeを主相とし、SbとBiとのいずれか一方又は両方、及びMnを含有する[1]に記載の化合物。
[0010]
[3]前記化合物が、更に、Mg、In、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl、Pb、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含有する[1]または[2]に記載の化合物。
[0011]
[4]前記元素が、Cu、In及びSeからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である[3]に記載の化合物。
[0012]
[5]下記式(A)で表される[1]から[4]のいずれか1項に記載の化合物。
Sn 1+a-b-c1-c2-d-eMn Bi c1Sb c2In Te 1-f…(A)
(式(A)中、Mは、Mg、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl及びPbからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。
 Xは、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。
 a、b、c1、c2、d、e及びfは、-0.05≦a≦0.10、0<b≦0.15、0≦c1≦0.10、0≦c2≦0.10、0≦d≦0.03、0≦e≦0.20及び0≦f≦0.20を満たす数である。但し、0<c1+c2である。)
[0013]
[6][1]から[5]のいずれか1項に記載の化合物を含有する熱電変換材料。

発明の効果

[0014]
 本発明によれば、熱電変換特性を有し、耐熱性の高い化合物、及びこれを含有する熱電変換材料を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 本実施形態の熱電変換材料を形成材料とする熱電変換素子、熱電変換素子を有する熱電変換デバイスの概略断面図である。
[図2] 本実施形態の熱電変換デバイスを有する熱電変換モジュールの概略斜視図である。
[図3] 実施例1の化合物の粉末X線回折図形である。
[図4] 実施例1~10、比較例1~3の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図5] 実施例1~10、比較例1~3の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図6] 実施例1~10、比較例1~3の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図7] 実施例1~10、比較例1~3の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図8] 実施例1~10、比較例1~3の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図9] 実施例1,2の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図10] 実施例1,2の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図11] 実施例1,2の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図12] 実施例1,2の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図13] 実施例1,2の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図14] 実施例2,4の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図15] 実施例2,4の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図16] 実施例2,4の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図17] 実施例2,4の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図18] 実施例2,4の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図19] 実施例4,8,9、比較例1の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図20] 実施例4,8,9、比較例1の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図21] 実施例4,8,9、比較例1の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図22] 実施例4,8,9、比較例1の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図23] 実施例4,8,9、比較例1の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図24] 実施例2、比較例1の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図25] 実施例2、比較例1の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図26] 実施例2、比較例1の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図27] 実施例2、比較例1の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図28] 実施例2、比較例1の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図29] 実施例1,5~7、比較例1,3の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
[図30] 実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
[図31] 実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
[図32] 実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
[図33] 実施例1,5~7、比較例1,3の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[図34] 実施例4の化合物の耐熱性評価の結果を示すグラフである。
[図35] 比較例1の化合物の耐熱性評価の結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0016]
 本明細書において「熱電変換特性」とは、ゼーベック効果、熱磁気効果、又はスピンゼーベック効果などにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する性質を意味する。
[0017]
 本明細書において「熱電変換物性」とは、熱電変換材料の熱電変換性能である熱電変換性能指数と出力因子に関わる物性を意味する。より具体的には、「熱電変換物性」とは、ゼーベック係数、抵抗率、熱伝導率を意味する。
[0018]
 本明細書では、熱電変換材料の熱電変換性能の指標として、熱電変換性能指数と出力因子とを用いる。
[0019]
 熱電変換性能指数は、熱電変換材料による熱電変換の熱効率の指標である。上記熱効率は下記式で表される。詳細には、熱電変換材料で形成された物体を用いた熱電変換において、得られる最大の熱効率η optは下記式(1)で表される。
[0020]
[数1]


[0021]
 式(1)中、T は熱電変換材料で形成された物体の高温端の温度[単位:K]、T は熱電変換材料で形成された物体の低温端の温度[単位:K]、T aveはT とT の平均[単位:K]、Zは温度領域における熱電変換材料の熱電変換性能指数zの平均値[1/K]である。
 「高温端」とは、熱電変換材料で形成された物体において、熱電変換に用いる温度差を付与する2箇所のうち、相対的に高温の箇所を指す。
 「低温端」とは、熱電変換材料で形成された物体において、熱電変換に用いる温度差を付与する2箇所のうち、相対的に低温の箇所を指す。
[0022]
 ある温度Tにおける熱電変換材料の熱電変換性能指数z[1/K]は、下記式(2)で表される。
[0023]
[数2]


[0024]
 式(2)中、αはある温度Tにおける熱電変換材料のゼーベック係数[V/K]、ρはある温度Tにおける熱電変換材料の抵抗率[Ω・m]、κはある温度Tにおける熱電変換材料の熱伝導率[W/(m・K)]を示す。
[0025]
 式(1)及び式(2)より、式(2)で表す値zTが大きいほど、利用する温度領域におけるZT aveが大きくなり、熱電変換の熱効率η optが大きくなることが分かる。すなわち、熱電変換の熱効率η optを高めるため、熱電変換材料は、広い温度領域で高い熱電変換性能指数zを示すことが望まれる。
[0026]
 出力因子は、熱電変換材料で形成された物体を用いて熱電変換するときに、熱電変換で出力できる電力の指標である。上記式(2)のうち、下記式(3)で表すゼーベック係数の二乗と抵抗率の逆数との積は、熱電変換で出力できる電力を表す指標である。式(3)で表す指標を出力因子[W/(m・K )]と称する。出力因子は、Power Factorと呼ぶことがある。
[0027]
[数3]


[0028]
 上記式(3)で表される出力因子は、熱電変換材料で形成された物体の両端に一定の温度差を付与したときに出力できる最大の電力の指標である。出力因子は、熱電変換材料を用いて構成される熱電変換デバイスを一定条件で作動させたときに出力できる最大の電力の目安となる。出力因子が大きいほど、熱電変換材料を用いて構成される熱電変換デバイスで得られる最大の電力出力が大きいことを示す。
[0029]
 本明細書において、熱電変換材料の耐熱性は、加熱冷却による熱電変換材料の抵抗率の変化率の絶対値を指標とする。熱電変換物性の中でも抵抗率は、加熱冷却による熱履歴を反映しやすい物性である。熱電変換材料は、加熱冷却による熱電変換材料の抵抗率の変化率の絶対値が小さいことが求められる。
[0030]
 本明細書において、「主相」とは、X線回折図形から同定される各相のメインピーク同士を比較したとき、最も強度の大きいメインピークを持つ相を意味する。
 X線回折図形には、複数のピークが含まれており、各ピークについて、ハナワルト法などの公知の方法により、対応する相を同定することができる。
 X線回折図形から、化合物が単一の相を有すること、または、複数の相を有することが分かる。同定された相には、それぞれメインピークが存在する。「メインピーク」とは、ある一つの相に帰属されるピーク群の中で最も強度が大きいピークのことを意味する。
[0031]
<化合物>
 本実施形態の化合物は、Sn、Te及びMnを含有し、SbとBiとのいずれか一方又は両方を更に含有する。
 本実施形態の化合物としては、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が小さい化合物となる点で、SnTeを主相とし、SbとBiとのいずれか一方又は両方を含有し、さらに、Mnを含有することが好ましい。
 以下、順に説明する。
[0032]
[化合物の結晶構造]
 本実施形態の化合物の結晶構造は、例えば,粉末X線回折測定装置を用いて得られる粉末X線回折図形から評価することができる。本実施形態の化合物は、SnTeの結晶構造を主相として有することが好ましい。SnTeの結晶構造は、25℃において空間群Fm-3mの立方晶である。
 本実施形態の化合物がSnTeの結晶構造を有し、SnTeを主相とする化合物となる場合、X線回折図形において、各相におけるメインピーク同士を比較すると、SnTeの空間群Fm-3mの立方晶の結晶構造のメインピークの強度が、各相のメインピークの中で最も強くなる。
 本実施形態の化合物としては、X線回折図形において、化合物の結晶構造に含まれる全ての相のメインピークのピーク強度の総和に対して、前記化合物の主相のメインピークのピーク強度の比が、50%より大きいことがより好ましく、70%以上であることが更により好ましく、90%以上であることがなお更に好ましい。このような化合物は、加熱冷却による抵抗率の変化率の絶対値が更に小さくなる。そのため、本実施形態の化合物を含有する熱電変換材料は耐熱性に優れる。
[0033]
[化合物の組成分布]
 化合物の組成は、例えばエネルギー分散形X線分光器を装備した走査型電子顕微鏡を用いて、評価試料の組成分布図を作成し、得られた組成分布図に基づいて評価することができる。詳しくは、化合物の組成の評価は、0.2μm以上の組成分布が明確に識別できる条件にて行う。以下、エネルギー分散形X線分光器は、EDXと略すことがある。また、走査型電子顕微鏡は、SEMと略すことがある。
 本実施形態の化合物は、化合物中に偏在する各元素の結晶の最長径が20μm以下であることが好ましい。本明細書において「結晶の最長径」は、SEM像から算出でき、化合物中に偏在する各元素の結晶の個々の2次元断面上の各部の径(長さ)のうち、最も長い径を意味する。
[0034]
[化合物の組成]
 上述のように、本実施形態の化合物は、Sn、Te及びMnを含有し、SbとBiとのいずれか一方又は両方を更に含有する。
[0035]
 化合物がSbとBiとのいずれか一方又は両方を含有することにより、化合物中のキャリア密度を適切に調整することができる。そのため、ゼーベック係数が向上する。
[0036]
 化合物がMnを含有することにより、化合物の価電子帯のバンド構造が調整され、化合物のゼーベック係数が向上する。
[0037]
 本発明の別の実施形態においては、SnTeを主相とし、SbとBiとのいずれか一方、及びMnを含有する化合物が好ましく、SnTeを主相とし、Bi及びMnを含有する化合物がより好ましい。このような化合物は、加熱冷却による抵抗率の変化率の絶対値が小さくなる。そのため、本実施形態の化合物を含有する熱電変換材料は耐熱性に優れる。
[0038]
 本実施形態の化合物は、更に、Mg、In、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl、Pb、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含有してもよい。
[0039]
 前記元素としては、Cu、In及びSeからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素が好ましい。
[0040]
 本実施形態の化合物において、前記元素は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
[0041]
 本実施形態の化合物は、下記式(A)で表される化合物が好ましい。下記式(A)で表される化合物は、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が小さい化合物となる。
 Sn 1+a-b-c1-c2-d-eMn Bi c1Sb c2In Te 1-f   …(A)
(式(A)中、Mは、Mg、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl及びPbからなる群より選ばれる少なくとも一つ元素を表す。
 Xは、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。
 a、b、c1、c2、d、e及びfは、0≦a≦0.10、0<b≦0.15、0≦c1≦0.10、0≦c2≦0.10、0≦d≦0.03、0≦e≦0.20及び0≦f≦0.20を満たす数である。但し、0<c1+c2である。)
[0042]
 前記式(A)で表される化合物において、aは0≦a≦0.10が好ましく、0.02≦a≦0.08がより好ましく、0.03≦a≦0.07がさらに好ましい。前記式(A)で表される化合物において、aがこれらの数値範囲に含まれることにより、本実施形態の化合物のゼーベック係数及び電気伝導性のいずれか一方又は両方が向上する。そのため、前記式(A)で表される化合物の熱電変換性能指数zが向上する。
 aの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0043]
 前記式(A)で表される化合物におけるMnの物質量は、上記式(A)において、bで表される。前記式(A)においてbは0<b≦0.15が好ましく、0.04≦b≦0.13がより好ましく、0.07≦b≦0.12がさらに好ましい。前記式(A)で表される化合物において、Mnの物質量(b)がこれらの数値範囲に含まれることにより、前記化合物のバンド構造が適切に調整されてゼーベック係数が増大する。そのため、前記化合物の熱電変換性能指数zが向上する。
 bの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0044]
 前記式(A)で表される化合物におけるBiの物質量は、上記式(A)においてc1で表される。前記式(A)においてc1は0≦c1≦0.10が好ましく、0≦c1≦0.07がより好ましく、0.005≦c1≦0.07がさらに好ましく、0.01≦c1≦0.06がよりさらに好ましい。前記式(A)で表される化合物において、Biの物質量(c1)がこれらの数値範囲に含まれることにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が小さい化合物を得ることができる。
 c1の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0045]
 前記式(A)で表される化合物におけるSbの物質量は、上記式(A)においてc2で表される。前記式(A)においてc2は0≦c2≦0.10が好ましく、0.005≦c2≦0.07がより好ましく、0.01≦c2≦0.06がさらに好ましい。また、前記式(A)においてc2は0≦c2≦0.07であってもよく、0≦c2≦0.06であってもよい。前記式(A)で表される化合物において、Sbの物質量(c2)がこれらの数値範囲に含まれることにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が小さい化合物を得ることができる。
 c2の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0046]
 前記式(A)で表される化合物は、Inを含有することよって、ゼーベック係数が向上するため出力因子が向上する。前記式(A)で表される化合物におけるInの物質量は、上記式(A)においてdで表される。前記式(A)においてdは0≦d≦0.03が好ましく、0.002≦d≦0.02がより好ましく、0.004≦d≦0.015がさらに好ましい。また、前記式(A)においてdは0≦d≦0.02であってもよく、0≦d≦0.015であってもよい。
 dの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0047]
 前記式(A)で表される化合物において、元素Mは、前記式(A)で表される化合物の熱電変換性能指数zが向上する観点から、Mg、Cu及びAgからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であることが好ましく、Cuがより好ましい。
[0048]
 本実施形態の化合物は、SnTeを主相とし、Bi、Mn及びCuを含有することが好ましい。このような化合物は、加熱冷却による抵抗率の変化率の絶対値が小さくなる。そのため、本実施形態の化合物を含有する熱電変換材料は耐熱性に優れる。
[0049]
 前記式(A)で表される化合物における元素Mの物質量としては、物性制御が適切である範囲という観点から、前記式(A)においてeは0≦e≦0.10が好ましく、0.005≦e≦0.07がより好ましく、0.005≦e≦0.05がさらに好ましい。また、前記式(A)においてeは0≦d≦0.07であってもよく、0≦d≦0.05であってもよい。
 eの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0050]
 前記式(A)で表される化合物において、元素MとしてMgが含まれる場合、化合物中のMgの物質量は、化合物中のMnの物質量以下である。
[0051]
 前記式(A)で表される化合物における元素Mの物質量としては、熱電変換性能指数zが向上する観点から、上記式(A)においてeは0≦e≦0.10が好ましく、0.005≦e≦0.07がより好ましく、0.005≦e≦0.05がさらに好ましい。
 eの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0052]
 前記式(A)で表される化合物において、元素Mは、1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
[0053]
 前記式(A)で表される化合物において、元素Xとしては、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素が挙げられる。前記式(A)においてfは0≦f≦0.20が好ましく、0.02≦f≦0.15がより好ましく、0.04≦f≦0.10がさらに好ましい。
[0054]
 前記式(A)で表される化合物における元素Xの物質量が上記範囲であることにより、後述するキャリア密度が適切な範囲に制御することができるため熱電変換性能指数zが向上する。
 fの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0055]
 前記式(A)で表される化合物は、元素XとしてSe及びSのいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。前記式(A)で表される化合物が元素XとしてSe又はSを含有することで、前記化合物の熱伝導率を下げる効果があり、前記化合物の熱電変換性能指数zを向上させることが可能となる。
[0056]
 前記式(A)で表される化合物において、元素Xは、1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
[0057]
 前記式(A)で表される化合物について、a,b,c1,c2,d,e,fの数値範囲の好ましい組み合わせの一例は、0.02≦a≦0.08、0.04≦b≦0.13、0≦c1≦0.07、0≦c2≦0.10、0≦d≦0.03、0≦e≦0.10、0≦f≦0.20である。
[0058]
 [キャリア密度]
 本明細書においてキャリアとは、電子又は正孔(ホール)である。キャリア密度とは、化合物中の電子又は正孔(ホール)の単位体積当たりの存在量を示す。
[0059]
 本実施形態の化合物のキャリア密度は、前記化合物を含有する熱電変換材料の抵抗率が増大しすぎない範囲でゼーベック係数を高め、前記化合物の出力因子及び熱電変換性能指数zを向上させるため、8.0×10 20cm -3以下が好ましい。熱電変換性能指数zが向上するため、前記式(A)で表される化合物のキャリア密度は、0.5×10 20cm -3以上4.0×10 20cm -3以下がより好ましく、0.8×10 20cm -3以上2.5×10 20cm -3以下がさらに好ましい。
[0060]
 化合物のキャリア密度は、その化合物に含まれる元素の組成比を変えることによって制御することができる。また、化合物のキャリア密度は、その化合物に含まれる元素をその他の元素によって置き換えることによって制御することができる。
 化合物のキャリア密度制御に際し、化合物に含まれる元素の組成比を変えることと、化合物に含まれる元素をその他の元素に置き換えることとは、組み合わせてもよい。
[0061]
 本実施形態においては、例えば、化合物中のSnの一部をBi又はSbで置き換えることによって、キャリア密度を更に下げることができる。他の例として、本実施形態の化合物中のTeの一部をS、Se、Cl、Br、又はIで置き換えることによってキャリア密度を更に下げることができる。
[0062]
 本実施形態において、化合物のキャリア密度の測定には、例えば、物理特性測定装置PPMS(Quantum Design社製)及び専用のDC抵抗サンプルパックによる5端子ホール測定を用いることができる。ホール測定は、測定対象とする試料の温度を安定させて、試料の1表面に垂直に磁場を印加してホール抵抗を測定することにより行うことができる。磁場に対するホール抵抗の傾きよりホール係数を算出することができ、さらにホール係数よりキャリア密度を算出することができる。
[0063]
 [ゼーベック係数]
 式(2)で表す値である熱電変換性能指数z及び出力因子が向上する観点から、本実施形態の化合物の各温度におけるゼーベック係数は、以下の範囲であることが好ましい。
[0064]
 100℃におけるゼーベック係数[μV/K]は60以上が好ましい。より好ましくは70以上である。
[0065]
 200℃におけるゼーベック係数[μV/K]は90以上が好ましい。より好ましくは100以上、さらに好ましくは110以上である。
[0066]
 300℃におけるゼーベック係数[μV/K]は120以上が好ましい。より好ましくは130以上、さらに好ましくは140以上である。
[0067]
 400℃におけるゼーベック係数[μV/K]は150以上が好ましい。より好ましくは170以上、さらに好ましくは180以上である。
[0068]
 500℃におけるゼーベック係数[μV/K]は180以上が好ましい。より好ましくは190以上、さらに好ましくは200以上である。
[0069]
 ゼーベック係数は、本実施形態の化合物に含まれる元素をその他の元素によって置き換えることで制御することができる。
[0070]
 例えば、本実施形態の化合物中のSnの一部をMnで置き換えることによって、SnTeの価電子帯のバンド構造を調整することができる。その際、Snの一部を適切な量でMnと置き換えることにより、価電子帯のバンド構造が調整され、フェルミ準位近傍の状態密度が高まり、本実施形態の化合物のゼーベック係数が向上する。「適切な量」とは、例えばSnの物質量の10%である。
[0071]
 また、本実施形態の化合物中のSnの一部をInで置き換えることによって、本実施形態の化合物の共鳴準位をフェルミ準位近傍に形成させることができる。これにより、フェルミ準位近傍の状態密度が高まり、本実施形態の化合物のゼーベック係数が向上する。Inによる置き換え量は、例えばSnの物質量の1%である。
[0072]
 また、本実施形態の化合物中のSnの一部をBi又はSbで置き換えることによって、キャリア密度を制御し、前記化合物のゼーベック係数を向上させることができる。
[0073]
 本実施形態の化合物において、ゼーベック係数を向上させるためには、前記化合物中のSnの一部をSbとBiとのいずれか一方又は両方で置き換え、さらに本実施形態の化合物中のSnの一部をMnとInとのいずれか一方又は両方で置き換えることが好ましい。
[0074]
<化合物の製造方法>
 次に、本実施形態の化合物の製造方法を説明する。
[0075]
(第1実施形態)
 第1実施形態における化合物の製造方法は、Sn,Mn及びTe、並びにSbとBiとのいずれか一方又は両方の元素を含有する原料を混合し、780℃以上で加熱し溶融させ、溶融体を得る工程と、溶融体を50℃未満の液体を用いて急冷する工程と、を含む。以下の説明では、溶融体を得る工程を「溶融工程」、急冷する工程を「急冷工程」と称する。
[0076]
[溶融工程]
 溶融工程で用いられる原料としては、金属、金属塩、及び非金属などが挙げられる。原料の形状は、粉末状、粒子状及び鋳塊(インゴット)などが挙げられる。
[0077]
 前記金属としては、Sn、Mg、Bi、Sb、Mn、In、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl及びPbが挙げられる。これらの金属は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0078]
 前記金属塩としては、前記金属を金属カチオンとする金属塩が挙げられる。金属塩のカウンターアニオンは、特に制限はないがBr 、Cl 、I 又はF のハロゲン化物イオンや、S 2-、Se 2-又はTe 2-の16族のアニオンが挙げられる。
[0079]
 前記非金属としては、S、Se又はTeの単体が挙げられる。
[0080]
 最終生成物である化合物の組成比に応じて、原料に含まれる各元素の組成比(モル比)を制御する。
[0081]
 溶融工程における加熱時の最高温度は780℃以上である。得られる溶融体の組成分布が均一に近づきやすいため、加熱時の最高温度は900℃以上が好ましい。
[0082]
 溶融工程において、溶融方法は特に限定されず、例えば、抵抗発熱体による加熱、高周波誘導炉による加熱、アーク溶解、電子ビーム溶解などが挙げられる。
[0083]
 溶融時に用いる「るつぼ」の材料は、加熱方法に応じて、グラファイト、アルミナ、コールドクルーシブルなどが用いられる。
[0084]
 上述の原料や、溶融工程で得られる溶融体が変質することを防止するため、溶融工程では、原料をアルゴン、窒素、真空などの不活性雰囲気で加熱することが好ましい。溶融工程では、内部を不活性雰囲気に置き換えたアンプル管に原料を詰めて、加熱してもよい。溶融工程でアンプル管を用いる場合、原料がアンプル管と反応することを防ぐために、アンプル管の内壁をカーボンコートしてもよい。
[0085]
[急冷工程]
 本実施形態の急冷工程では、溶融工程で得られた溶融体を、急激に100℃以下に冷却することが好ましい。詳しくは、冷却工程では、溶融体を100℃以下まで10分以内に冷却することが好ましく、5分以内に冷却することがより好ましく、1分以内に冷却することがさらに好ましい。
[0086]
 上記の液体としては、水、液体空気、液体窒素など、沸点が100℃以下である液体を用いることができる。安価で安全性が高いことから、水が好ましい。
[0087]
 第1実施形態の化合物の製造方法においては、急冷工程を有することにより、主相であるSnTeの結晶格子中に、過飽和状態でMn、Bi、Sbを固溶させることができる。その結果、前記化合物を含有する熱電変換材料の出力因子が向上する。
[0088]
(第2実施形態)
 第2実施形態における化合物の製造方法は、上述の溶融工程で得られた溶融体を急冷することなく冷却し、少なくともSn,Mn及びTe、並びにSbとBiとのいずれか一方又は両方を含有する材料を得る工程と、得られた材料を粉末化し、材料粉末を得る工程と、プラズマ焼結法を用いて400℃以上で材料粉末を焼結する工程と、を含む。以下の説明では、材料を得る工程を「材料製造工程」、材料粉末を得る工程を「粉末化工程」、材料粉末を焼結する工程を「プラズマ焼結工程」と称する。
[0089]
[材料製造工程]
 材料製造工程では、溶融工程で得られた溶融体を、上記液体を用いずに、100℃以下まで10分よりも長い時間をかけて冷却する。
[0090]
[粉末化工程]
 粉末化工程では、材料製造工程で得られた材料をボールミルなどで粉砕して粉末化する。粉末化した微粒子の粒径は特に限定されないが、150μm以下が好ましい。
[0091]
[プラズマ焼結工程]
 プラズマ焼結工程では、粉末化工程で得られた材料粉末を加圧しながら、材料粉末にパルス状の電流を通電させる。これにより、材料粉末間で放電が生じ、材料粉末を加熱させて焼結させることができる。
[0092]
 得られる化合物が空気と触れて変質することを防止するために、プラズマ焼結工程は、アルゴン、窒素、真空などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
[0093]
 プラズマ焼結工程における加圧圧力は、0MPaを超え100MPa以下の範囲が好ましい。高密度の化合物を得るため、プラズマ焼結工程における加圧圧力は10MPa以上とすることが好ましく、30MPa以上とすることがより好ましい。
[0094]
 プラズマ焼結工程の加熱温度は、目的物である化合物の融点よりも十分に低いことが好ましく、700℃以下が好ましい。プラズマ焼結工程の加熱温度は、650℃以下がより好ましい。プラズマ焼結工程の加熱温度は、焼結を促進するため400℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましい。
 プラズマ焼結工程の加熱温度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0095]
 プラズマ焼結工程では、通電を止めると加熱が止まり、材料粉末は急激に冷却される。プラズマ焼結工程では、得られる化合物において、得られる化合物に含まれる元素の偏在を抑制するため、上記加熱温度で加熱した後に、通電を止めて冷却することが好ましい。
[0096]
 第2実施形態の化合物の製造方法においては、プラズマ焼結工程を有することにより、材料が急激に冷却され、主相であるSnTeの結晶格子中に、過飽和状態でMn、Bi、Sbを固溶させることができる。
[0097]
(第3実施形態)
 第3実施形態における化合物の製造方法は、Sn,Mn及びTe、並びにSbとBiとのいずれか一方又は両方の元素を含有する原料を混合し、780℃以上で加熱し溶融させ、溶融体を得る工程(溶融工程)と、溶融体を50℃未満の液体を用いて急冷する工程(急冷工程)と、得られた材料を粉末化し、材料粉末を得る工程(粉末化工程)と、プラズマ焼結法を用いて400℃以上で材料粉末を焼結する工程(プラズマ焼結工程)と、を含む。
[0098]
 本実施形態における、溶融工程、急冷工程、粉末化工程、及びプラズマ焼結工程に関する説明は、前記化合物の製造方法の第1実施形態における溶融工程、急冷工程、及び前記化合物の製造方法の第2実施形態における粉末化工程、及びプラズマ焼結工程における説明と同様である。
[0099]
 化合物の製造方法としては、第3実施形態の化合物の製造方法が好ましい。第3実施形態の製造方法は、急冷工程と、プラズマ焼結工程とを併用しているため、得られる化合物の主相であるSnTeの結晶格子中に、十分に過飽和状態でMn、Bi、Sbを固溶させることができる。その結果、化合物の製造方法で得られる化合物の電気伝導率が向上し、得られる化合物の出力因子が向上する。
[0100]
 以上のような化合物は、高温領域において高い出力因子を有する化合物となる。
[0101]
<熱電変換材料>
 本実施形態における熱電変換材料は、上述した本実施形態の化合物を含み、熱電変換特性を有する材料である。
 本実施形態における熱電変換材料は、上述した本実施形態の化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
[0102]
 熱電変換材料中の、上述した本実施形態の化合物の含有率としては、50質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下がよりさらに好ましい。熱電変換材料において、上述した本実施形態の化合物の含有率が上記範囲内であれば、高い熱電変換性能指数zを有する熱電変換材料となる。
[0103]
 熱電変換材料は、上述した本実施形態の化合物以外に、例えば、高分子化合物、ガラス及びセラミックスなどを含むことができる。
[0104]
 熱電変換材料が含むことができる高分子化合物としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、テレフタレート樹脂、エンジニアリングプラスチック、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びメラミン樹脂などが挙げられる。
[0105]
 熱電変換材料が含むことができるガラスとしては、特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス及び無アルカリガラスなどが挙げられる。
[0106]
 熱電変換材料が含むことができるセラミックスとしては、特に限定されないが、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、コージェライト、フェライト、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フォルステライト、ジルコン、ムライト、窒化アルミニウム、マイカ、窒化ホウ素、炭化チタン及び酸化亜鉛などが挙げられる。
[0107]
 以上のような熱電変換材料は、加熱冷却の前後における抵抗率の変化が小さい化合物を用いているため、高温領域において熱効率に優れた熱電変換材料となる。
[0108]
<熱電変換素子、熱電変換デバイス>
 図1は、上述した熱電変換材料を形成材料とする熱電変換素子、及び熱電変換素子を有する熱電変換デバイスの概略断面図である。
[0109]
 本明細書において「熱電変換素子」とは、ゼーベック効果、熱磁気効果、スピンゼーベック効果などを利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。
[0110]
 図1に示す熱電変換デバイス10は、p型熱電変換素子11、n型熱電変換素子12、高温側電極15及び低温側電極16を有する。低温側電極16は、電極161及び電極162を含む。
[0111]
 以下の説明では、熱電変換デバイス10において高温側電極15が配置された側を「上」、低温側電極16が配置された側を「下」として、各部材の相対位置を説明することがある。例えば、「上方」の「上」や、「下端」の「下」も同じ意味である。
 また、以下の説明では、p型熱電変換素子11とn型熱電変換素子12とを総称する際に、単に「熱電変換素子」と称することがある。
[0112]
 p型熱電変換素子11は、熱電変換層111を有する。また、図に示すように、p型熱電変換素子11は、接合層112、拡散防止層113を有していてもよい。
[0113]
 熱電変換層111は、素子内に温度差を生じたとき、温度の高い箇所から温度の低い箇所に正電荷を帯びた正孔(h )が移動し、熱起電力を生じる素子である。熱電変換層111は、p型の電子物性を有し、ゼーベック係数が正の熱電変換材料を用いて形成される。例えば、熱電変換層111は、上述した本実施形態の熱電変換材料を、所望の形状に機械加工することによって得られる。例えば、熱電変換層111は柱状である。
[0114]
 接合層112は、熱電変換層111と高温側電極15との間に設けられている。接合層112は、熱電変換層111と高温側電極15とを電気的及び機械的に良好に接合する。これにより、接合層112は、熱電変換層111と高温側電極15との接触抵抗を低減する。
[0115]
 また、接合層112は、熱電変換層111と電極161(低温側電極16)との間に設けられている。接合層112は、熱電変換層111と電極161とを電気的及び機械的に良好に接合する。これにより、接合層112は、熱電変換層111と電極161との接触抵抗を低減する。
[0116]
 接合層112の形成材料としては、熱電変換素子のキャリア密度を高める元素が挙げられ、銀、金及び白金が好ましい。
[0117]
 接合層112の厚みは、特に限定されないが、0.001μm以上20μm以下が好ましく、0.005μm以上10μm以下がより好ましい。拡散防止層113の厚みの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0118]
 拡散防止層113は、熱電変換層111と接合層112との間に設けられている。熱電変換層111が接合層112、高温側電極15、電極161(低温側電極16)などの他の金属材料を含有する部材と接触すると、熱電変換材料を構成する元素が接合層112や電極(高温側電極15、低温側電極16)に拡散、又は接合層112や電極を構成する元素が熱電変換層111に拡散することがある。拡散防止層113は、上述の拡散を抑制し、上述の拡散に起因した熱電変換層111の劣化を抑制する。
[0119]
 拡散防止層113の形成材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀及びタンタルからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素が好ましく、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素がより好ましい。
[0120]
 拡散防止層113の形成材料としては、前記形成材料を2種以上組み合わせた複合材料が好ましく、前記形成材料の中でも、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン及びタンタルからなる群より選ばれる2種以上を組み合わせた複合材料がより好ましい。
[0121]
 拡散防止層113の厚みは、特に限定されないが、0.5μm以上100μm以下が好ましく、0.1μm以上50μm以下がさらに好ましい。拡散防止層113の厚みの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
[0122]
 n型熱電変換素子12は、熱電変換層121を有する。また、図に示すように、n型熱電変換素子12は、接合層122、拡散防止層123を有していてもよい。
[0123]
 熱電変換層121は、素子内に温度差を生じたとき、温度の高い箇所から温度の低い箇所に負電荷を帯びた電子(e )が移動し、熱起電力を生じる素子である。熱電変換層121は、n型の電子物性を有し、ゼーベック係数が負の熱電変換材料を用いて形成される。例えば、熱電変換層121は、上述した本実施形態の熱電変換材料を、所望の形状に機械加工することによって得られる。例えば、熱電変換層121は柱状である。
[0124]
 本実施形態の化合物は、化合物に含まれるSb又はBiの含有量を変化させキャリア密度を制御することで、p型の電子物性を有する化合物にもn型の電子物性を有する化合物にもなり得る。熱電変換材料の電子物性は、熱電変換材料の材料として、所望の電子物性を有する化合物の電子物性を用いることで制御することができる。
[0125]
 接合層122は、熱電変換層121と高温側電極15との間に設けられている。接合層122は、熱電変換層121と高温側電極15とを電気的及び機械的に良好に接合する。これにより、接合層122は、熱電変換層121と高温側電極15との接触抵抗を低減する。
[0126]
 接合層122は、熱電変換層121と電極162(低温側電極16)との間に設けられている。接合層122は、熱電変換層121と電極162とを電気的及び機械的に良好に接合する。これにより、接合層122は、熱電変換層121と電極162との接触抵抗を低減する。
[0127]
 接合層122の形成材料、及び接合層122の厚みは、上述の接合層112と同様の構成を採用することができる。
[0128]
 拡散防止層123は、熱電変換層121と接合層122との間に設けられている。拡散防止層123は、熱電変換材料を構成する元素が接合層122や電極(高温側電極15、低温側電極16)に拡散、又は接合層122や電極を構成する元素が熱電変換層121に拡散することを抑制し、拡散に起因した熱電変換層121の劣化を抑制する。
[0129]
 拡散防止層123の形成材料、及び拡散防止層123の厚みは、上述の拡散防止層113と同様の構成を採用することができる。
[0130]
 p型熱電変換素子11及びn型熱電変換素子12は、熱電変換素子の面であって、熱電変換素子がおかれた環境中の気体と接触しうる面に保護膜を有してもよい。熱電変換素子が、上記保護膜を有することにより、熱電変換素子が有する熱電変換材料と、熱電変換素子がおかれた環境中の気体との反応を抑制し、熱電変換材料から発生しうる物質の拡散を抑制することができる。保護膜に含まれる元素としては、ケイ素及び酸素が挙げられる。保護膜の厚みは、特に限定されないが、0.5μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましい。
[0131]
 高温側電極15及び低温側電極16は、例えば、電気伝導性及び熱伝導性の高い銅を形成材料とする。
[0132]
 熱電変換デバイス10は、高温側電極15を覆う絶縁板17を有する。絶縁板17は、熱電変換デバイス10を補強する機能を有する。絶縁板17の形成材料としては、アルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック板を挙げることができる。
[0133]
 熱電変換デバイス10は、低温側電極16を覆う放熱板18を有する。放熱板18は、熱電変換デバイス10を補強するとともに、熱電変換素子からの放熱を促進する機能を有する。熱電変換デバイス10は、放熱板18を有することにより、熱電変換素子内の温度差(温度勾配)を形成しやすく、熱起電力を生じやすくなる。
[0134]
 放熱板18の形成材料としては、アルミナや窒化アルミニウムなどの絶縁性を有するセラミック板を挙げることができる。
[0135]
 次に、熱電変換デバイス10の動作を説明する。
 まず、熱電変換デバイス10の上方に配置した熱源(不図示)から、熱電変換デバイス10に熱Hが伝わる。熱電変換デバイス10の内部では、絶縁板17から高温側電極15に伝わった熱Hが、さらに高温側電極15を介して、熱電変換素子の上部に熱Hが伝わる。
[0136]
 また、熱電変換デバイス10の内部では、低温側電極16を介して、熱電変換素子の熱Hが放熱板18に伝わる。
[0137]
 その結果、p型熱電変換素子11及びn型熱電変換素子12は、上端部と下端部との間に温度勾配が生じる。
[0138]
 p型熱電変換素子11では、温度の高い上端部から温度の低い下端部に正孔(h )が移動することで、熱起電力が発生する。一方、n型熱電変換素子12では、温度の高い上端部から温度の低い下端部に電子(e )が移動することで、熱起電力が発生する。p型熱電変換素子11における電位差と、n型熱電変換素子12における電位差とは、上下方向で逆になっている。そのため、p型熱電変換素子11及びn型熱電変換素子12両者の上端部を高温側電極15で電気的に接続することにより、p型熱電変換素子11とn型熱電変換素子12とを直接に接続した熱電変換デバイスとすることができる。
[0139]
 熱電変換デバイス10において、電極161と電極162の間の起電力は、p型熱電変換素子11の熱起電力とn型熱電変換素子12の熱起電力の和となる。熱電変換デバイス10の上方から熱Hを入力すると、電極162から電極161に向けた電流Iが生じる。
[0140]
 このような熱電変換デバイス10は、電極161と電極162とを外部負荷50に接続することで、外部負荷50の電源として用いることができる。外部負荷50の例としては、電気装置の一部であるバッテリー、コンデンサー、モーターなどが挙げられる。
[0141]
 以上のような熱電変換デバイス10では、熱電変換素子の材料として本実施形態の熱電変換素子を用いているため、高温領域において熱効率に優れた熱電変換デバイスとなる。
[0142]
 なお、本実施形態の化合物及び熱電変換材料は、従来型のゼーベック効果を用いた熱電変換デバイスに加えて、ネルンスト効果、リーギ=ルデュック効果及びマギー=リーギ=ルデュック効果などの熱磁気効果を用いた熱電変換デバイス、又は、スピンポンピング効果及び逆スピンホール効果などによるスピンゼーベック効果を用いた熱電変換デバイスに採用することもできる。
[0143]
<熱電変換モジュール>
 図2は、上述した熱電変換デバイスを有する熱電変換モジュールの概略斜視図である。
[0144]
 熱電変換モジュール100は、複数の熱電変換デバイス10をユニット化した構造物である。熱電変換モジュール100は、複数の熱電変換デバイス10を有している。複数の熱電変換デバイス10は、絶縁板17と放熱板18との間に格子状に配列している。
[0145]
 詳しくは、熱電変換モジュール100では、図に示すA方向及びB方向に、複数のp型熱電変換素子11と複数のn型熱電変換素子12とが互いに交互に配列している。熱電変換モジュール100中のp型熱電変換素子11の数(P)とn型熱電変換素子12の数(N)との関係は、P=N+1、P=N、又はN=P+1となる。
[0146]
 全てのp型熱電変換素子11とn型熱電変換素子12とは、高温側電極15及び低温側電極16を用いて電気的に直列に接続されている。図に示す熱電変換モジュールは、二点鎖線αで示したように直列に接続されている。
[0147]
 なお、図において二点鎖線で示した接続は一例であり、接続の仕方に特に制限はない。全てのp型熱電変換素子11とn型熱電変換素子12とが、互いに交互かつ直列に金属電極を介して接続されていることが好ましい。
[0148]
 熱電変換モジュール100の出力は、p型熱電変換素子11の出力にp型熱電変換素子11の使用数を乗じた値と、n型熱電変換素子12の出力にn型熱電変換素子12の使用数を乗じた値と、の和にほぼ等しくなる。熱電変換モジュール100の出力を高めるためには、熱電変換素子の出力を高める、又は熱電変換素子の使用数を増やすことが有効である。
[0149]
 熱電変換モジュール100中のp型熱電変換素子11の数とn型熱電変換素子12の数の和は、熱電変換モジュール100の大きさ、求める起電力などの条件によって適宜変更することができる。一例として、熱電変換モジュール100中のp型熱電変換素子11の数とn型熱電変換素子12の数の和は、50個以上1000個以下が好ましく、50個以上500個以下がより好ましく、50個以上250個以下がさらに好ましい。
[0150]
 二点鎖線αの一端側に配置されたp型熱電変換素子11には、下端部に外部接続電極31が接続されている。また、二点鎖線αの他端側に配置されたn型熱電変換素子12には、下端部に外部接続電極32が接続されている。
[0151]
 熱電変換モジュール100においては、隣り合う熱電変換素子の間の空間を、絶縁材料で充填してもよい。このような絶縁材料は、熱電変換モジュール100を補強し、熱電変換モジュール100の耐久性を向上させることができる。補強の効果を高めるため、絶縁材料は、隣り合う熱電変換素子の間の空間全てに充填されていることが好ましい。
[0152]
 また、熱電変換モジュール100においては、隣り合う熱電変換素子の間の空間を絶縁材料で充填することなく、隣り合う熱電変換素子が離間していてもよい。隣り合う熱電変換素子が離間することにより、熱電変換モジュール100に入力された熱Hが絶縁板17から放熱板18に伝わる際の伝熱経路が、p型熱電変換素子11及びn型熱電変換素子12に限られる。そのため、熱電変換素子に入力されることなく放熱される熱Hが生じにくく、結果として高い熱起電力を得ることができる。
[0153]
 熱電変換モジュール100の上方から熱Hを入力すると、外部接続電極31から外部接続電極32に向けた電流Iが生じる。
[0154]
 以上のような熱電変換モジュール100では、上述の熱電変換デバイス10を用いているため、高温領域において熱効率に優れた熱電変換モジュールとなる。
[0155]
 以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求などに基づき種々変更可能である。
実施例
[0156]
 以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[0157]
 化合物の各物性値及び構造の評価は以下に示す方法を用いた。
[0158]
1.ゼーベック係数
 ゼーベック係数α[V/K]は、JIS R1650-1に準拠し、熱電特性評価装置ZEM-3(アドバンス理工株式会社製)による測定値から算出した。
[0159]
 測定に用いる化合物の試料は、ダイヤモンドカッターを用いて切り出した。ゼーベック係数を測定する試料の寸法は、4mm×2mm×2mmとした。温度測定及び電圧測定に用いるR型熱電変換対を、試料の長軸方向に2.7mm又は1.3mmの間隔で接触させて試料を固定した。
[0160]
 ヘリウムガス雰囲気(0.01MPa)中で、試料を所定の温度に加熱した。さらに試料の片端を加熱することで試料の高さ方向に温度差をつけた。このときのR型熱電変換対間の温度差(ΔT)と電圧差(ΔV)とを測定した。温度差(ΔT)は0.5℃以上10℃以下の範囲に調整した。
[0161]
 3点の異なる温度差(ΔT)を与えたときの電圧差(ΔV)を測定した。温度差(ΔT)に対する電圧差(ΔV)の傾きからゼーベック係数αの値を算出した。
[0162]
 ゼーベック係数の測定は、下記基準により試料の温度が安定したと判断できた場合に実施した。
(判断基準)
 熱電特性評価装置において10秒毎に試料の温度測定を行い、直近の5測定について5点の移動平均を算出した。その際に、ある時刻の5点移動平均の値がその時刻の10秒前における直近の5測定の5点移動平均と比較して0.5℃よりも差が小さい場合に、試料の温度が安定したと判断した。
[0163]
2.抵抗率
 抵抗率ρ[Ω・m]は、熱電特性評価装置(型番ZEM-3、アドバンス理工株式会社製)を用い、直流四端子法にて測定した。
[0164]
 抵抗率の測定は、上記判断基準により試料の温度が安定したと判断できた場合に実施した。
[0165]
3.出力因子(Power Factor)
 出力因子[W/(m・K )]は、上述の方法で測定されたゼーベック係数α[V/K]、及び抵抗率ρ[Ω・m]から、下記式(3)を用いて算出した。
[0166]
[数4]


[0167]
4.熱伝導率
 熱伝導率κ[W/(m・K)]は、熱拡散率λ[m /s]、熱容量C [J/g]、密度d[g/m ]から、下記式(4)を用いて算出した。
[0168]
[数5]


[0169]
 熱拡散率λの測定に用いる化合物の試料は、ダイヤモンドカッターを用いて切り出した。熱拡散率を測定する試料の寸法は、4mm×4mm×0.5mmとした。
[0170]
5.熱拡散率
 熱拡散率λは、レーザーフラッシュアナライザーLFA457MicroFlach(NETZSCH社製)を用いて測定した。測定時には、試料の表面は、カーボンスプレーGraphite33(CRC industries Europe社製)にて黒色にコーティングした。
[0171]
6.熱容量
 熱容量C は、EXSTAR DSC 7020(SIIナノテクノロジー社製)を用いて測定した。熱容量を測定する試料の寸法は、4mm×4mm×0.5mmとした。
[0172]
7.密度
 密度dは、水を用いたアルキメデス法を測定原理とし、室温にて密度測定キット(メトラー・トレド社製)を用いて測定した。密度を測定する試料の寸法は、7mm×4mm×4mmとした。
[0173]
8.熱電変換性能指数z
 熱電変換性能指数z[1/K]は、zTとして絶対温度Tにおけるゼーベック係数α[V/K]、抵抗率ρ[Ω・m]、熱伝導率κ[W/(m・K)]より、下記式(2)を用いて算出した。
[0174]
[数6]


[0175]
9.結晶構造解析
 化合物の結晶構造は、粉末X線回折測定装置X′Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて、下記の条件で粉末X線回折測定し、得られた粉末X線回折図形を解析して求めた。
[0176]
 測定装置:  粉末X線回折測定装置X′Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)
 X線発生器: CuKα線源 電圧45kV、電流40mA
 スリット:  スリット幅10mm
 X線検出器: X′Celerator
 測定範囲:  回折角2θ=10°以上90°以下
 試料準備:  乳鉢粉砕による粉末化
 試料台 :  専用のガラス基板 深さ0.2mm
[0177]
10.組成分布の評価
 化合物の組成分布は、エネルギー分散形X線分光器 JED-2300(日本電子社製)を装備した走査型電子顕微鏡 JEOL JSM-5500(JEOL社製)を用いて下記の条件で測定することで求めた。
 SEM:   JEOL JSM-5500(JEOL社製)
        加速電圧20kV、電流65μA
 EDX:   JED-2300(日本電子社製)
 解析ソフト: Analysis station
[0178]
11.キャリア密度
 キャリア密度p[cm -3]は、物理特性測定装置PPMS(Quantum Desig社製)及び専用のDC抵抗サンプルパックを用いた5端子ホール測定により求めた。ゼーベック係数を測定する試料の寸法は、6mm×2mm×0.4mmとした。
[0179]
12.耐熱性の評価
 化合物の加熱冷却前後における抵抗率の変化率を、上述の抵抗率の測定方法にて測定し、下記の手順により評価した。
(1)加熱試験前の抵抗率ρ(Before)として、化合物の抵抗率を100℃で測定した。
(2)(1)の後、化合物を昇温させ、500℃まで50℃おきに抵抗率測定を実施した。
(3)(2)の後、化合物を降温させ、100℃まで100℃おきに抵抗率測定を実施した。加熱試験後の抵抗率ρ(After)として、抵抗率を100℃で測定した。
(4)加熱試験後の抵抗率ρ(After)を加熱試験前の抵抗率ρ(Before)で除することにより、加熱冷却前後における抵抗率の変化率Δρ(%)を算出した。加熱冷却による抵抗率の変化率Δρの絶対値が小さいほど、熱電変換材料の耐熱性が高いと言える。
 具体的には、加熱冷却の前後における抵抗率の変化率Δρ(%)は、下記計算式により算出した。
Δρ(%)=100×((ρ(After)-ρ(Before))/ρ(Before))
[0180]
 抵抗率測定において、典型的な昇温・降温レートは±50℃/分とした。100℃から500℃までの昇温過程での測定に要した典型的な時間は3時間、500℃から100℃までの降温過程での測定に要した典型的な時間は2時間であった。
[0181]
<実施例1~10、比較例1~3>
 実施例1~10、比較例1~3の化合物は、上述した第3実施形態の製造方法により製造した。
[0182]
 原料として、以下の金属材料を用いた。
Sn:フルウチ化学社製、Shot 3-5mm、純度99.999%以上
Te:大阪アサヒメタル社製、粒状、6NS-2 GRADE
Mn:大阪アサヒメタル社製、フレーク状、 5N GRADE
Bi:大阪アサヒメタル社製、粒状、6N GRADE
Sb:大阪アサヒメタル社製、粒状、6NS-2 GRADE
Cu:高純度化学研究所社製、粉末850μmパス、純度99.999%以上
In:高純度化学研究所社製、粒状、純度99.999%以上
[0183]
 下記表1に示す組成比(モル比)で各原料を秤量し、混合して混合物を得た。次いで、3.0gの混合物を石英アンプル(半球底型、内径6mm、外径8mm)に入れ、1×10 -3Pa以下の減圧下で封入した。石英アンプルを電気炉中にて950℃まで加熱し、混合物を溶融させた。
[0184]
 急冷工程では、950℃の電気炉内から石英アンプルを取り出し、直後に室温の水中に投入した。この操作により、石英アンプル中の溶融体は急冷されて固化した。急冷工程では、950℃の溶融体を100℃以下になるまで1分以内で冷却した。石英アンプルから溶融体が固化した固化材料を回収した。
[0185]
 得られた固化材料を乳鉢粉砕し、材料粉末を得た。材料粉末を専用のカーボン製ダイに詰めて、下記の条件にて放電プラズマ焼結した。焼結した材料粉末は、プラズマ放電を止めることで急冷され、目的とする化合物を得た。
[0186]
 装置 :   ドクターシンターラボSPS-511S(富士電波工機社製)
 試料 :   材料粉末 2.5g
 ダイ :   装置専用のカーボン製ダイ 内径10mmφ
 雰囲気:   アルゴン0.05MPa
 圧力 :   40MPa(3.1kN)
 加熱 :   600℃、10分間
[0187]
 実施例1~10、比較例1~3の化合物の組成を表1に示す。
[0188]
[表1]


[0189]
 図3は、実施例1の化合物の粉末X線回折図形である。測定の結果、実施例1~10、比較例1~3の化合物の結晶構造は、いずれもFm-3mに帰属され、立方晶であることが分かり、主相はSnTeであった。
[0190]
 図4は、実施例1~10、比較例1~3の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図5は、実施例1~10、比較例1~3の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図6は、実施例1~10、比較例1~3の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図7は、実施例1~10、比較例1~3の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図8は、実施例1~10、比較例1~3の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0191]
 図9は、実施例1,2の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図10は、実施例1,2の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図11は、実施例1,2の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図12は、実施例1,2の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図13は、実施例1,2の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0192]
 実施例1と実施例2と比較すると、SnをInに置き換えることによりゼーベック係数が向上していることが分かる。特に、400℃以下でのゼーベック係数の向上が顕著である。また、SnをInに置き換えることにより熱伝導率が低減していることが分かる。
[0193]
 図14は、実施例2,4の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図15は、実施例2,4の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図16は、実施例2,4の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図17は、実施例2,4の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図18は、実施例2,4の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0194]
 実施例2と実施例4とを比較すると、SnをCuに置き換えることにより熱伝導率が低下していることが分かる。
[0195]
 図19は、実施例4,8,9、比較例1の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図20は、実施例4,8,9、比較例1の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図21は、実施例4,8,9、比較例1の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図22は、実施例4,8,9、比較例1の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図23は、実施例4,8,9、比較例1の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0196]
 実施例4,8,9と比較例1とを比較すると、SnをBiに置き換えることにより熱伝導率が低下していることが分かる。
[0197]
 図24は、実施例2、比較例1の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図25は、実施例2、比較例1の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図26は、実施例2、比較例1の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図27は、実施例2、比較例1の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図28は、実施例2、比較例1の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0198]
 実施例2と比較例1とを比較すると、SnをBi及びCuに置き換えることにより熱伝導率が低下し、熱電変換性能指数zが向上していることが分かる。
[0199]
 図29は、実施例1,5~7、比較例1,3の化合物のゼーベック係数αの温度依存性を示すグラフである。
 図30は、実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の抵抗率ρの温度依存性を示すグラフである。
 図31は、実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の熱伝導率κの温度依存性を示すグラフである。
 図32は、実施例1,5~7、比較例1,3の化合物の出力因子(Power Factor)の温度依存性を示すグラフである。
 図33は、実施例1,5~7、比較例1,3の化合物のzTの温度依存性を示すグラフである。
[0200]
 実施例1、5、6、7と比較例1、3とを比較すると、SnをMn,In,Bi及びCuに置き換えることにより、顕著に熱伝導率が低下し、熱電変換性能指数zが向上していることが分かる。
[0201]
 実施例1~10、比較例1~3の化合物の加熱前の抵抗率、500℃加熱後の抵抗率、抵抗率の変化率を表2に示す。また、実施例1,2,5~7の化合物のキャリア密度を表3に示す。
[0202]
[表2]


[0203]
[表3]


[0204]
 表2に示すように、実施例1~10の化合物は、500℃に加熱した後の抵抗率の変化率の絶対値が、比較例1~3の化合物よりも小さいことが分かる。
[0205]
 実施例3、4、8~10と比較例1とを比較すると、SnTeのSnをBiで置き換える、又はSbで置き換えることにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が低下することが分かる。
[0206]
 実施例2と比較例2とを比較すると、SnTeのSnをMn及びCuで置き換えた化合物は、さらにSnをBiで置き換えることにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が低下することが分かる。
[0207]
 実施例1、5、6、7と比較例3とを比較すると、SnTeのSnをMn及びInで置き換えた化合物は、さらにSnをBi及びCuで置き換えることにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が低下することが分かる。
[0208]
 実施例1と実施例2とを比較すると、SnTeのSnをMn,Bi及びCuで置き換えた化合物(実施例2)は、さらにSnをInで置き換える(実施例1)ことにより、加熱冷却における抵抗率の変化率の絶対値が低下することが分かる。
[0209]
 また、代表例として、実施例4と比較例1については、加熱冷却における抵抗率の変化を示すグラフを示す。図34は、実施例4の化合物の抵抗率の熱履歴の評価の結果を示すグラフである。図35は、比較例1の化合物の抵抗率の熱履歴の評価の結果を示すグラフである。

産業上の利用可能性

[0210]
 本発明の化合物は、加熱冷却の前後における抵抗率の変化率の絶対値が小さいため、車載用用途など、種々の分野に応用することができる。

符号の説明

[0211]
10…熱電変換デバイス、11…p型熱電変換素子、12…n型熱電変換素子、15…高温側電極、16…低温側電極、17…絶縁板、18…放熱板、31…外部接続電極、32…外部接続電極、50…外部負荷、100…熱電変換モジュール、111,121…熱電変換層、112,122…接合層、113,123…拡散防止層、161…電極(低温側電極)、162…電極(低温側電極)

請求の範囲

[請求項1]
 Sn、Te及びMnを含有し、SbとBiとのいずれか一方又は両方を更に含有する化合物。
[請求項2]
 SnTeを主相とし、SbとBiとのいずれか一方又は両方、及びMnを含有する請求項1に記載の化合物。
[請求項3]
 前記化合物が、更に、Mg、In、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl、Pb、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含有する請求項1または2に記載の化合物。
[請求項4]
 前記元素が、Cu、In及びSeからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である請求項3に記載の化合物。
[請求項5]
 下記式(A)で表される請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
 Sn 1+a-b-c1-c2-d-eMn Bi c1Sb c2In Te 1-f   …(A)
(式(A)中、Mは、Mg、Na、Al、Si、K、Ca、Sr、Ba、Cu、Ag、Au、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、As、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Hg、Tl及びPbからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。
 Xは、S、Se、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。
 a、b、c1、c2、d、e及びfは、-0.05≦a≦0.10、0<b≦0.15、0≦c1≦0.10、0≦c2≦0.10、0≦d≦0.03、0≦e≦0.20及び0≦f≦0.20を満たす数である。但し、0<c1+c2である。)
[請求項6]
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物を含有する熱電変換材料。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34]

[ 図 35]