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1. WO2020111212 - AGENT FOR IMPROVING CYTOKINE RELEASE SYNDROME, ETC.

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明 細 書

発明の名称 サイトカイン放出症候群等の改善剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

先行技術文献

特許文献

0013  

非特許文献

0014  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0015  

課題を解決するための手段

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

発明の効果

0031  

図面の簡単な説明

0032  

発明を実施するための形態

0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

実施例 1

0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26  

明 細 書

発明の名称 : サイトカイン放出症候群等の改善剤

技術分野

[0001]
本発明は、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症、又はランゲルハンス細胞組織球症の予防、治療又は改善剤に関する。

背景技術

[0002]
近年では、がんの治療のためにキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor:CAR)発現T細胞(CAR-T細胞)療法やT細胞受容体(TCR)遺伝子改変T細胞(TCR-T細胞)療法と呼ばれる治療法が試みられている。またこのT細胞活性化を介するがん治療は、免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療と、体内で起こっている免疫系の活性化との観点から共通性がある。CAR-T細胞等の細胞治療法は、患者から採取したT細胞に、標的能を持つCARや特定TCRを発現させる遺伝子改変技術を施した後、体内に戻す自家T細胞治療法である。CAR等を発現したT細胞は、標的を発現するがん細胞を含む腫瘍細胞を殺傷する(キラー活性)のみならず、抗原に繰り返し曝露されることで機能的T細胞の増殖を効率的に拡大する。さらに、殺傷された腫瘍細胞が破壊される際に遊離された抗原は、抗原提示細胞に提示されることで内因性のT細胞を刺激し、活性化を誘導する。従って、CAR-T細胞は、一度輸注すると患者体内に生着して増殖し、免疫監視を促進することができる。
[0003]
また、免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子若しくはそのリガンドに結合して免疫抑制シグナルの伝達を阻害することで、免疫チェックポイント分子によるがん細胞認識T細胞の活性化抑制を解除する薬剤である。臨床応用されている主な免疫チェックポイント阻害薬は、抗cytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4(CTLA-4)抗体、抗programmed cell death-1(PD-1)抗体、抗programmed death-1 ligand-1(PD-L1)抗体などである。
最近の研究の進展により、単球やマクロファージの異常活性化及びそれに伴う組織障害(MAS、マクロファージ活性化症候群ともいう)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)やランゲルハンス細胞組織球症(LCH)などと呼ばれる骨病変及び皮膚病変若しくは全身臓器病変がT細胞の活性化に伴って発症することが明らかとなった。
[0004]
CAR-T細胞療法には、サイトカイン放出症候群(cytokine-release syndrome:CRS)と呼ばれる問題(CRS毒性)が生じる。CRSは、発熱、低血圧、低酸素症、脳浮腫、神経変性などを伴い、血中のサイトカインレベルが著増する状態である。
CRS毒性は、CAR-T細胞のがん患者への移入によって必発するもので、CAR-T細胞の適応又は試行を広げる上で、その制御が極めて重要である 4)(非特許文献1)。
CAR-T細胞による血液がん細胞やがん組織の認識と破壊の機序は明確であるが、CRS毒性の機序については不明な点が多い。CAR-T細胞療法と同時に承認されたInterleukin(IL)-6R抗体(トシリズマブ)が、CRS毒性を許容域まで制御できることから、CRS毒性機序としてIL-6過剰産生による正常組織の炎症的障害機序が示唆されている 5)(非特許文献2)。
[0005]
同様に免疫チェックポイント阻害薬においても、自己免疫疾患関連副作用(irAEs)と呼ばれる免疫亢進に伴い皮膚、消化器系、内分泌系、神経系など、全身のあらゆる臓器に炎症性の免疫反応が発現することが報告されている(非特許文献10、11)。治療の基本は休薬とステロイド投与であるがこのirAEs予防及び治療薬はまだ途についたところで、既存薬剤を含めて各種検討されていると考えられる。
[0006]
トシリズマブ投与に耐性のCRS毒性を呈する患者におけるIL-6経路以外の炎症性サイトカイン類(TNF-α、IL-18、IL-1β、MCP-1等)の上昇や、脳浮腫併発における抗体薬の不適応などを背景として、CRS毒性に広く適応できる薬剤や新規CAR遺伝子の開発が望まれている。例えば、過剰なCAR-T細胞の活性化をコントロールすることによってCRS毒性を制御できるとの着想から、BTK阻害薬による過剰なCAR-T細胞活性化の抑制の試み 6)(非特許文献3)や、CAR遺伝子内に「薬剤感受性succide遺伝子」を組み込むことで過剰なCAR-T細胞の活性化を制御する試み 7)(非特許文献4)などがなされている。
[0007]
CRS毒性の抑制に、現在も使用されているステロイドを含めて、これらの薬剤候補は、CAR-T細胞機能の抑制を主眼とするものであり、一時的とは言え、CAR-T細胞によるがん退縮効果を打ち消す結果を導いてしまう重大な懸念がある。重篤なCRS毒性は致死性であることから、致し方ない選択肢として、それらの適応が検討されている。
[0008]
現状のCAR-T細胞療法が主に血液がんに限定され、固形癌では明確な奏功結果を得られていない状況から、より強力なCAR遺伝子や併用薬も検討されている。例えば、抗原の刺激に依存してサイトカインシグナルを活性化する新規のキメラ抗原受容体の開発 8)(非特許文献5)や、免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1/CTLA4抗体との併用 9)(非特許文献6)など、よりキラー活性を増強し長期持続を達成しようとの方策も試みられている。
その他にも、移入するCAR-T細胞数の増加や抗がん剤前処理によるCAR-T細胞のがん組織アクセスの改善なども、現実的ながん退縮効果増強の方策と考えられる。
そのようなCAR-T細胞療法の改良によって、今後はさらに、併発・必発するCRS毒性 14)の許容され得る適切な制御は重要な課題になると考えられる。
[0009]
ところで、JTE-607と呼ばれる化合物( ( - ) -エチル N-{3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]ベンゾイル}-L-フェニルアラニネート)2塩酸塩(特許文献1)は、炎症性サイトカイン産生を抑制する薬剤候補として創生された。
JTE-607は炎症性サイトカイン産生を抑制し、myeloid系細胞に選択性を有する化合物であり、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)患者を対象として第二相試験が実施された。第一相後期試験においては、JTE-607はLPS負荷におけるIL-6、IL-8等の炎症性サイトカイン産生を抑制し、C反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)上昇を投与量依存的に抑制することが明らかにされた。また、その後in vitro系で、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:AML)細胞株の自己増殖を選択的に抑制することも明らかにされた 1)(非特許文献7)。
[0010]
CAR-T細胞療法におけるCRS毒性や脳浮腫発症には、単球/マクロファージの異常活性化が関与する可能性が報告されている 2), 3)(非特許文献8、9)。しかしこれは、臨床上のサトカイン産生プロファイルにおいて、CRS毒性発現とIL-6等炎症性サイトカイン産生が同期していることやトシリズマブによるCRS毒性の改善効果により推定されている「仮説」にすぎない。この仮説を検証することは、CRS毒性の特徴を把握し適切な薬剤開発を促すことのみに留まらず、トシリズマブ耐性患者で使用されるステロイド(プレドニゾロン:PSL)処方で懸念されるCAR-T細胞抑制(免疫抑制)のないCRS毒性改善・予防薬の研究開発に繋がることが期待される。
[0011]
CAR-T細胞は、一旦体外で加工し増幅したT細胞を、「体内に大量移入する抗がん作用を有するTエフェクター細胞」と位置付けられる。
このTエフェクター細胞の過剰増殖は内生的にも起こる現象で、例えば免疫チェックポイント阻害薬投与による「内在性抗がん作用Tエフェクター細胞の過剰増幅」やウイルス感染・増幅時に惹起される「抗ウイルス性Tエフェクター細胞の過剰増幅」が挙げられる。これら治療及び疾患発症時に併発するirAEsやHLH及びMASにおけるマクロファージ異常活性化・サイトカイン過剰産生は、CAR-T細胞療法に併発するCRS毒性との共通事象として捉えることができる。事実、irAEsへのトシリズマブの効果が検討され、一定の効果が報告されている(非特許文献12)。
[0012]
これらの副作用及び疾患の共通事象を整理すると、Tエフェクター細胞の過剰増殖とそれに併発するマクロファージ等の異常活性化が、各々細胞群が相互に関連・影響し合っているのではないかとの仮説が浮かび上がってくる。従って、CRS毒性の解明と治療法開発は即ち、これらirAEsやHLH及びMAS症状への新たな理解と適切な治療薬の開発に繋がると考えられる。

先行技術文献

特許文献

[0013]
特許文献1 : WO97/08133(実施例2)

非特許文献

[0014]
非特許文献1 : Current concepts in the diagnosis and management of cytokine release syndrome. Lee DW, Gardner R, Porter DL, Louis CU, Ahmed N, Jensen M, Grupp SA, Mackall CL. Blood. 2014 Jul 10;124(2):188-95.
非特許文献2 : Severe Cytokine-Release Syndrome after T Cell-Replete Peripheral Blood Haploidentical Donor Transplantation Is Associated with Poor Survival and Anti-IL-6 Therapy Is Safe and Well Tolerated. Abboud R, Keller J, Slade M, DiPersio JF, Westervelt P, Rettig MP, Meier S, Fehniger TA, Abboud CN, Uy GL, Vij R, Trinkaus KM, Schroeder MA, Romee R. Biol Blood Marrow Transplant. 2016 Oct;22(10):1851-1860.
非特許文献3 : Kinase inhibitor ibrutinib to prevent cytokine-release syndrome after anti-CD19 chimeric antigen receptor T cells for B-cell neoplasms. bRuella M, Kenderian SS, Shestova O, Klichinsky M, Melenhorst JJ, Wasik MA, Lacey SF, June CH, Gill S. Leukemia. 2017 Jan;31(1):246-248.
非特許文献4 : A new insight in chimeric antigen receptor-engineered T cells for cancer immunotherapy. Zhang E, Xu H. J Hematol Oncol. 2017 Jan 3;10(1):1.
非特許文献5 : A novel chimeric antigen receptor containing a JAK-STAT signaling domain mediates superior antitumor effects. Kagoya Y, Tanaka S, Guo T, Anczurowski M, Wang CH, Saso K, Butler MO, Minden MD, Hirano N. Nat Med. 2018 Mar;24(3):352-359.
非特許文献6 : Immuno-oncologic Approaches: CAR-T Cells and Checkpoint Inhibitors. Gay F, D'Agostino M, Giaccone L, Genuardi M, Festuccia M, Boccadoro M、 Bruno B. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2017 Aug;17(8):471-478.
非特許文献7 : JTE-607, a multiple cytokine production inhibitor, induces apoptosis accompanied by an increase in p21waf1/cip1 in acute myelogenous leukemia cells. Tajima N, Fukui K, Uesato N, Maruhashi J, Yoshida T, Watanabe Y, Tojo A. Cancer Sci. 2010 Mar;101(3):774-81.
非特許文献8 : CAR T cell-induced cytokine release syndrome is mediated by macrophages and abated by IL-1 blockade. Giavridis T, van der Stegen SJC, Eyquem J, Hamieh M, Piersigilli A, Sadelain M. Nat Med. 2018 Jun;24(6):731-738.
非特許文献9 : New drugs, new toxicities: severe side effects of modern targeted and immunotherapy of cancer and their management. Kroschinsky F, Stolzel F, von Bonin S, Beutel G, Kochanek M, Kiehl M, Schellongowski P; Intensive Care in Hematological and Oncological Patients (iCHOP) Collaborative Group. Crit Care. 2017 Apr 14;21(1):89.
非特許文献10 : Toxicities of the anti-PD-1 and anti-PD-L1 immune checkpoint antibodies. J. Naidoo, D. B. Page, B. T. Li, L. C. Connell, K. Schindler, M. E. Lacouture, M. A. Postow & J. D. Wolchok. Annals of Oncology 26: 2375-2391、 2015
非特許文献11 : Immune-Related Adverse Events Associated with Anti-PD-1/PD-L1 Treatment for Malignancies: A Meta-Analysis. Wang PF, Chen Y, Song SY, Wang TJ, Ji WJ, Li SW, Liu N, Yan CX.Front Pharmacol. 2017 Oct 18;8:730.
非特許文献12 : Tocilizumab for the management of immune mediated adverse events secondary to PD-1 blockade. Stroud CR, Hegde A, Cherry C, Naqash AR, Sharma N, Addepalli S, Cherukuri S, Parent T, Hardin J, Walker P. J Oncol Pharm Pract. 2017 Jan 1:1078155217745144.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0015]
このような状況のもと、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHなどにおいてこれらの疾患又は症状を改善する方法の開発が望まれていた。

課題を解決するための手段

[0016]
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、JTE-607又はその誘導体が上記疾患又は症状を改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
[0017]
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 次式I:
[化1]


〔式中、R は、置換されていてもよい窒素含有非芳香族アルキル基又は置換されていてもよい窒素含有複素環基を表し、Aは、単結合、又は置換されていてもよく、かつ鎖中に1若しくは2以上の二重結合若しくは三重結合を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は置換されていてもよく、かつ直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20のアルキル基を表し(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、nは1~4の整数を表し、mは0又は1~6の整数を表し、R は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい炭素数3~10のシクロアルキル基、 置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換されていてもよい炭素数1~20のアリール基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
[0018]
(2)窒素含有非芳香族複素環基がピペラジニル基又はピペリジニル基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である、(1)に記載の医薬。
(3)窒素含有非芳香族アルキル基がアルキルアミノ基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である、(1)に記載の医薬。
[0019]
(4)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩が、次式II:
[化2]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、(1)~(3)のいずれか1項に記載の医薬。
[0020]
(5)式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式III:
[化3]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である(1)~(4)のいずれか1項に記載の医薬。
(6)式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式IIIで示される化合物の塩酸塩である、(1)~(5)のいずれか1項に記載の医薬。
(7)式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式IV:
[化4]


で示される化合物である(1)~(6)のいずれか1項に記載の医薬。
[0021]
(8)疾患又は症状が、免疫チェックポイント阻害薬の使用に起因するもの、キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するもの、改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するもの、又は感染症、がん及び自己免疫疾患からなる群から選ばれる少なくとも1つにより誘発されるものである、(1)~(7)のいずれか1項に記載の医薬。
(9)サイトカインの産生及びマクロファージの活性化の少なくとも1つを抑制する、(1)~(8)のいずれか1項に記載の医薬。
(10)サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α及びMIP-1βからなるから選ばれる少なくとも1つである、(1)~(9)のいずれか1項に記載の医薬。
[0022]
(11)サイトカインが、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(10)に記載の医薬。
(12)サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防又は改善のための、(1)~(11)のいずれか1項に記載の医薬。
[0023]
(13)さらに、本発明は、以下の態様を含む。
(13-1)次式I:
[化5]


〔式中、R は、置換されていてもよい窒素含有非芳香族アルキル基又は置換されていてもよい窒素含有複素環基を表し、Aは、単結合、又は置換されていてもよく、かつ鎖中に1若しくは2以上の二重結合若しくは三重結合を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は置換されていてもよく、かつ直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20のアルキル基を表し(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、nは1~4の整数を表し、mは0又は1~6の整数を表し、R は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい炭素数3~10のシクロアルキル基、 置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換されていてもよい炭素数1~20のアリール基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防剤、治療剤又は改善剤。
[0024]
(13-2)前記式I(R 、R 、R 、R 、R 、R 、m及びnの定義は前記と同じである。)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つを予防、治療又は改善する方法。
[0025]
(13-3)サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つを予防、治療又は改善する医薬を製造するための、前記式I(R 、R 、R 、R 、R 、R 、m及びnの定義は前記と同じである。)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
[0026]
(13-4)サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つを予防、治療又は改善における使用のための、前記式I(R 、R 、R 、R 、R 、R 、m及びnの定義は前記と同じである。)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[0027]
(14)上記(13)に記載の式Iの一態様では、窒素含有非芳香族複素環基はピペラジニル基又はピペリジニル基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である。
 また、別の態様では、窒素含有非芳香族アルキル基がアルキルアミノ基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である。
[0028]
 上記(13)に記載の式Iの別の態様では、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩が、次式II:
[化6]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、好ましくは、次式III:
[化7]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、さらに好ましくは、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式IIIで示される化合物の塩酸塩である。
[0029]
 上記(13)に記載の式Iのさらに別の態様では、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩は、次式IV:
[化8]


で示される化合物である。
[0030]
(15)上記(13)において、疾患又は症状としては、免疫チェックポイント阻害薬の使用に起因するもの、キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するもの、改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するもの、又は感染症、がん及び自己免疫疾患からなる群から選ばれる少なくとも1つにより誘発されるものであり、式I~IVで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、サイトカインの産生及びマクロファージの活性化の少なくとも1つを抑制する。ここで、サイトカインとしては、TNF-α、IL-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、GM-CSF、M-CSF、IGF、IFN-γ、IP-10、MCP-1、VEGF、OPN、RANKL、サイトカイン受容体gp130、sIL-1R-1、sIL-1R-2、sIL-6R、sRAGE、sTNFR-1、sTNFR-2、MIG、MIP-1α及びMIP-1βからなるから選ばれる少なくとも1つが挙げられ、好ましくは、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つである。

発明の効果

[0031]
本発明により、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬が提供される。式Iに示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬は、炎症性サイトカインの放出を抑制しこれら症状を改善又は予防し、ひいてはCAR-T細胞療法や免疫チェックポイント阻害薬の効果を、相対的に増強できる可能性がある。

図面の簡単な説明

[0032]
[図1] CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図2] CD14 +細胞のLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図3] CD8 +T細胞からのIFN-γ産生とCD14 +細胞からのIL-6産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図4] 末梢血単核球(PBMC)のLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図5] PBMCのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるIL-6及びIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図6] PBMCのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図7] CD4 +T細胞欠如PBMCのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるIL-6及びIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図8] CD4 +T細胞欠如PBMCのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図9] PBMCのLPS刺激によるMCP-1産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図10] CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図11] CD14 +細胞のLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図12] PBMCのLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSL作用を示す図である。
[図13] PBMCのLPS刺激によるOPN産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図14] PBMCのLPS刺激によるIL-1β産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図15] LPS前処置CD14 +細胞のATP刺激によるIL-18産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図16] マクロファージのLPS刺激によるVEGF産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図17] CAR-T細胞のキラー活性に対するCD14 +細胞の作用を示す図である。
[図18] CAR-T細胞を用いた混合培養系のサイトカイン産生に対するCD14 +細胞の作用を示す図である。
[図19] CAR-T細胞のキラー活性に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図20] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのIL-6及びIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用を示す図である。
[図21] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのMCP-1産生に対するJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図22] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのIL-8産生に対するJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図23] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのTNF-α産生に対するJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図24] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのIL-1β産生に対するJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図25] CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのIL-18産生に対するJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用を示す図である。
[図26] 本発明の化合物の作用機序の概要を示す図である。

発明を実施するための形態

[0033]
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、次式I:
[化9]


で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群(CRS)、自己免疫疾患関連副作用(irAEs)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)及びランゲルハンス細胞組織球症(LCH)からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬であり、これらの疾患又は症状の予防又は改善剤として、また各種添加物を含む医薬組成物として使用することができる。
[0034]
式Iに示される化合物又はその薬学的に許容される塩(総称して「本発明の化合物」ともいう)において、本発明者は、CD19-CAR-T細胞の標的細胞認識及び抗CD3抗体及び抗CD28抗体を共有結合させた磁気ビーズ(T細胞刺激ビーズ)によるCD8 +T細胞活性化を介したCRS毒性を再現する評価系を構築し、当該化合物(例えばJTE-607)の作用を、既存薬であるPSLの作用と比較検討した。その結果、PSLではT細胞機能の抑制が優位(免疫抑制:CAR-T細胞機能やCD8 +機能の抑制)であるが、IL-6等の炎症性サイトカイン産生抑制作用が弱かったのに対して、JTE-607では、IL-6等の炎症性サイトカイン類の産生を用量依存的に強く抑制する特徴を示し、CAR-T細胞や、CD4 +機能、CD8 +機能への作用(標的がん細胞傷害能、IFN-γ産生能等)は限定的で用量依存性も認められなかった。またJTE-607は、IL-6産生抑制のみならず、IL-18及びOsteopontin(OPN)産生も用量依存的に抑制するものの、トシリズマブではこれらサイトカイン産生抑制作用は認められなかった。
[0035]
本発明の化合物の作用メカニズムを図26に示す。図26において内因性Tエフェクター細胞が過剰に反応すると、単球/マクロファージ活性化を伴う一連の疾患又は症状を誘導する(図26、破線部の下側)。本発明の化合物は、これらの疾患又は症状を予防又は改善(治療を含む)するために使用することができる。
以上より、本発明の化合物は、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状に対する医薬として、例えばCAR-T細胞療法に併発するCRS毒性の改善・予防に有効な治療ツールとなる。従って、本発明は、本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬を、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状を有する患者に投与する工程を含む、当該疾患又は症状の予防方法又は改善若しくは治療方法を提供する。
[0036]
また、T細胞の潜在機能の増強薬であるbi-specific抗体やPD1/CTLA4抗体等の免疫チェックポイント阻害薬投与に併発する高サイトカイン血症様症状においても、増強されたT細胞機能へ顕著な影響を与えることなくこれらCRS様症状であるirAEsを改善することができる。
[0037]
ここで、「予防」とは、上記疾患又は症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、上記疾患又は症状が起こることを抑制することを意味する。
「治療」とは、上記疾患又は症状を阻害すること、すなわち、これらの進行を阻止、遅延又は消失することを意味する。
「改善」とは、上記疾患又は症状を緩和すること、すなわち、上記疾患又は症状の後退、又は症状の進行の逆転を引き起こすことを意味する。
[0038]
2.化合物又はその薬学的に許容される塩
本発明において、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状に対する医薬(例えばこれらの疾患の予防、治療又は改善剤)として使用される有効成分となる化合物は、次式Iに示されるものである。本発明の化合物において、式Iに示すものを、「化合物(I)」ともいう。
[化10]


[0039]
式中、R は、窒素含有非芳香族アルキル基又は置換されていてもよい窒素含有複素環基を表す。
Aは、単結合、又は置換されていてもよく、かつ鎖中に1若しくは2以上の二重結合若しくは三重結合を有していてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。Aは、炭素数1~6の直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表す。
は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は置換されていてもよく、かつ直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20のアルキル基を表す。但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。
nは1~4の整数を表し、3であることが好ましく、そのうちの2つがハロゲン原子、他の1つが水酸基であることがさらに好ましい。
[0040]
は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。mは0又は1~6の整数を表し、2であることが好ましい。
は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、-COO-で示される基であることが好ましい。
は、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を表すが、炭素数1~6の直鎖状アルキル基が好ましく、エチル基であることがさらに好ましい。
[0041]
「窒素含有非芳香族アルキル基」とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、炭素数1~10のアルキル基であり、例えばメチルアミノ基が挙げられる。
「窒素含有非芳香族複素環基」とは、少なくとも1 個の窒素原子を有し、硫黄原子又は酸素原子を有していてもよい3~7員の非芳香族複素環基を意味し、これらはベンゼン環と縮合していてもよい。具体的にはアジリジニル基、チアゼチジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、オキサジニル基、チアジニル基、ピペラジニル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ジオキサゼピニル基、チアゼピニル基、ジアゼピニル基、パーヒドロジアゼピニル基、アゼピニル基、パーヒドロアゼピニル基、インドリニル基、イソインドリニル基等が挙げられる。好ましくはアジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、ピペラジニル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、パーヒドロアゼピニル基であり、特に好ましくはピペラジニル基、ピペリジル基である。
[0042]
「アルキレン基」とは、直鎖又は分岐状の鎖中に1又は2以上の二重結合又は三重結合を有していてもよいアルキレン基を意味し、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルエチレン基、イソプロピルエチレン基、メチルペンタメチレン基、エチルヘキサメチレン基、ジメチルエチレン基、メチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ペンタジエニレン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基、ヘキサトリエニレン基、ヘプテニレン基、ヘプタジエニレン基、ヘプタトリエニレン基、オクテニレン基、オクタジエニレン基、オクタトリエニレン基、オクタテトラエニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、メチルプロピニレン基等が挙げられる。
[0043]
好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ペンタジエニレン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基、ヘキサトリエニレン基、ヘプテニレン基、ヘプタジエニレン基、ヘプタトリエニレン基、オクテニレン基、オクタジエニレン基、オクタトリエニレン基、オクタテトラエニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基等の直鎖のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1~6個の直鎖のアルキレン基である。
[0044]
「アルキル基」は、直鎖状、分枝鎖状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基であり、炭素数1~20個であり、好ましくは炭素数1~10個又は1~6個である。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3、3-ジメチルブチル基、2、2-ジメチルブチル基、1、1-ジメチルブチル基、1、2-ジメチルブチル基、1、3-ジメチルブチル基、2、3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-リデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ナデシル基、n-エイコシル基などを挙げることができる。アルコキシ基は炭素数1~20個のアルコキシ基であり、アルコキシ基のアルキル部分は上記に説明したアルキル基と同様である。
[0045]
炭素数6~20のアリール基としては、例えばフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
複素環基は、少なくとも1個の窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を有していてもよい3~7員の非芳香族複素環基を意味し、具体的置換基は、「窒素含有非芳香族複素環基」の項で説明した内容と同様である。
炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
[0046]
本明細書において、ある官能基について「置換基を有していてもよい」又は「置換されていてもよい」という場合には、特に言及する場合を除き、その官能基が化学的に可能な位置に1個又は2個以上の「置換基」を有する場合があることを意味する。官能基に存在する置換基の種類、置換基の個数、及び置換位置は特に限定されず、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。官能基に存在する「置換基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子、オキソ基、チオキソ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、チオシアナト基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、スルファニルカルボニル基、オキサロ基、メソオキサロ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィノ基、スルフィナモイル基、スルフェノ基、スルフェナモイル基、ホスホノ基、ヒドロキシホスホニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環-オキシ基、アルキルスルファニル基、アシル基、アミノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ジアゼニル基、ウレイド基、チオウレイド基、グアニジノ基、アミジノ基、アジド基、イミノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、アミノオキシ基、ジアゾ基、セミカルバジノ基、セミカルバゾノ基、アロファニル基、ヒダントイル基、ホスファノ基、ホスホロソ基、ホスホ基、ボリル基、シリル基、スタニル基、セラニル基、オキシド基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
[0047]
 化合物(I)の塩としては、無機酸又は有機酸との塩(酸付加塩)が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸などが挙げられ、有機酸としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、吉草酸、マロン酸、ニコチン酸、プロピオン酸などが挙げられる。
本発明の好ましい酸付加塩は、塩酸との塩であり、さらに好ましくは二塩酸塩である。
[0048]
化合物(I)には、不斉炭素に基づく1又は2以上の立体異性体が存在し得る。本発明は、当該異性体及びその混合物をも包含する。さらに、化合物(I)又はその薬学的に許容される塩の水和物、薬理的に許容される有機溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物、並びにプロドラッグも本発明に包含される。
[0049]
「プロドラッグ」とは、化学的又は代謝的に分解し得る基を有し、生体に投与された後、元の化合物に復元して本来の薬効を示す本発明化合物の誘導体であり、共有結合によらない複合体及び塩を含む。
化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のカルボキシル基が、エチル基、ピバロイルオキシメチル基、1-(アセチルオキシ)エチル基、1-(エトキシカルボニルオキシ)エチル基、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル基、カルボキシルメチル基、(5-メチル-2-オキソ-1、3-ジオキソール-4-イル)メチル基、フェニル基、o-トリル基等で修飾された化合物などが挙げられる。また、化合物(I)の水酸基が、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、ジメチルカルバモイル基、スルホ基で修飾された化合物等が挙げられる。
[0050]
本発明において、化合物(I)は、好ましくは次式III:
[化11]


で示される(-)-エチル N-{3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]ベンゾイル}-L-フェニルアラニネート(すなわち、N-{3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]ベンゾイル}-L-フェニルアラニンエチルエステル)又はその薬理学的に許容される塩が挙げられる。
[0051]
さらに好ましくは、本発明において使用される化合物は、上記式IIで示される化合物の酸付加塩(例えば二塩酸塩)であり、さらに好ましくは式IV
[化12]


で示される化合物である。
[0052]
当該、式IVで示される化合物は、(-)-エチル N-{3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]ベンゾイル}-L-フェニルアラニネート2塩酸塩(すなわち、N-{3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]ベンゾイル}-L-フェニルアラニンエチルエステル2塩酸塩)であり、別名「JTE-607」ともいう。
[0053]
本発明の化合物は、動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、サル、ヒト等の哺乳動物)において産生される各種炎症性サイトカインの産生を抑制する。
特に、本発明においては、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHのうち1つ又は複数の疾患又は症状に対する医薬として有効である。
[0054]
例えば、ヒトのサイトカイン放出症候群では、特に、CAR-T細胞療法におけるCRS及び脳浮腫において有効である。従って、本発明の化合物は、CAR-T細胞療法と組み合わせて使用することができる。「組み合わせて」とは、本発明の化合物をCAR-T細胞療法と併用することを意味するが、組み合わせて使用する時期は特に限定されるものではなく、CAR-T細胞療法の前、CAR-T細胞療法中及びCAR-T細胞療法後のいずれの時期であってもよい。irAEs、HLH、MAS及びLCHについてもCRSと同様に、これらの疾患又は症状の治療に使用される薬剤又は治療法と併用して本発明の化合物を使用することができる。
[0055]
本発明の化合物は、サイトカインの産生抑制、マクロファージの活性化の抑制又はサイトカインの産生及びマクロファージの活性化の両者を抑制することができる。ここで、「マクロファージの活性化」とは、各種サイトカイン、細胞傷害性プロテアーゼや活性酸素種などの過剰放出、さらにはオプソニン作用や貪食能の亢進などを意味する。
「サイトカイン」としては、例えば腫瘍壊死因子(TNF)-α、IL-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α、MIP-1βなどが挙げられる。
[0056]
irAEsとは、主に免疫チェックポイント阻害薬の投与により免疫全般が過剰に活性化されることで、自分自身を攻撃し、様々な自己免疫疾患の症状が引き起こされることをいう。主な症状としては、間質性肺疾患、大腸炎、甲状腺機能低下症、肝障害、発心、下垂体炎、糖尿病、腎機能障害、末梢神経障害、重症筋無力症など全身のあらゆる臓器で報告されている。
[0057]
HLHは、殺細胞顆粒及びその放出に関わる遺伝子の異常により発症する疾患をいう。高サイトカイン血症に伴う組織傷害及びマクロファージの増殖等の病理像を特徴とする。HLHにかかわる炎症性サイトカインはIFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-18、TNF-αなどが報告されている。
[0058]
MASとは、外因子(ウイルス、細菌、真菌などの感染因子や薬剤)や内因子(自己細胞のapoptosis/necrosisにより生じる破砕物など)、例えばウイルス反応性T細胞エフェクターの増殖・活性化に伴い、マクロファージの異常活性化による炎症性サイトカインの過剰状態による致死的な病態をいう。MASにかかわる炎症性サイトカインはIFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-18、TNF-αなどが報告されている。HLHとMASは類似しており、HLHが病理学的診断により確定されるのに対し,MASは生理学的診断により確定される。いずれの病態においてもマクロファージの活性化が重要なポイントとなる。
[0059]
LCH 13)とは、ランゲルハンス細胞が、皮膚や骨・リンパ節などで異常に増える病態をいう。病変部位にはランゲルハンス細胞以外に好酸球やリンパ球、マクロファージ、破骨細胞様巨細胞などの炎症細胞浸潤があり、これらが互いに活性化し合い、OPN、RANKL、IL-18、CCモチーフケモカイン2(CCL2)などを代表とする炎症性サイトカイン/ケモカインが多量に分泌され、組織破壊が生じることが知られている。
[0060]
これらの疾患又は症状は、免疫チェックポイント阻害薬の使用、キメラ抗原受容体発現T細胞療法、改変T細胞受容体発現T細胞療法などにより起因するものであり、あるいは、感染症、がん及び自己免疫疾患のいずれか又は組み合わせにより誘発される。
免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫チェックポイント分子(自己に対する免疫応答を抑制するとともに過剰な免疫反応を抑制する分子群)又はそのリガンドに結合して免疫抑制シグナルの伝達を阻害することで、免疫チェックポイント分子によるT細胞の活性化抑制を解除する薬剤であり、例えば抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などが挙げられる。
[0061]
CAR-T細胞療法は、患者から採取したT細胞に標的能を持つキメラ抗原受容体(CAR)を発現させる遺伝子改変を施した後、体内に戻すという、自家T細胞治療法である。
改変T細胞受容体発現T(TCAR-T)細胞療法は、例えばがん抗原エピトープを特定ヒト白血球抗原(HLA)拘束性に認識する特定TCR遺伝子を、体外でエフェクターT細胞に遺伝子導入し、増幅した後に体内に投与する療法であり、CAR-T細胞療法に類似の細胞療法である。
[0062]
上記(1)に記載の医薬の好ましい態様として、以下が例示される。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因する、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するマクロファージ活性化症候群に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因する血球貪食性リンパ組織球症に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法と組み合わせて使用するための、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
[0063]
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因する、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するマクロファージ活性化症候群に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因する血球貪食性リンパ組織球症に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法と組み合わせて使用するための、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
[0064]
ここで、「キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬」及び「改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬」として、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IFN-γ及びMCP-1 からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
[0065]
・マクロファージ活性化症候群に対する医薬。
ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-18、IFN-γ及びMCP-1からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
[0066]
・血球貪食性リンパ組織球症に対する医薬。
ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ及びMCP-1からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
[0067]
・免疫チェックポイント阻害薬の使用に起因する自己免疫疾患関連副作用に対する医薬。ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-18及びIFN-γからなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
・自己免疫疾患により誘発されるランゲルハンス細胞組織球症に対する医薬。ここで、IL-18、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
[0068]
・また、「式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬」として、IL-18、MCP-1及びOPN からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
[0069]
本発明の化合物は、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬(例えば予防、治療又は改善剤)としてそのまま投与することもできるが、本発明の一態様においては、医薬組成物として投与される。本発明の化合物を有効成分として含有する医薬組成物として用いる場合には、当該医薬組成物は、通常、薬理学的に許容される添加剤、例えば薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤及び/又はその他の添加剤(例えば、水、植物油、アルコール(例えばエタノール又はベンジルアルコール)、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、ラクトース、炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラノリン、白色ワセリン等)と混合して、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、坐剤、注射剤、点眼剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、エアゾール剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の剤形とすることができる。
[0070]
経口投与では、微紛又は顆粒の形態で、希釈剤、分散剤及び/又は表面活性剤を含んでいてもよく、例えば、水中、シロップ中、乾燥状態でのカプセル若しくは分包中、懸濁剤を含んでもよい非水性溶液若しくは懸濁液中、又は結合剤及び滑剤を含んでいてもよい錠剤中に存在していてもよい。甘味剤、矯味剤、保存剤(例えば、抗菌性保存剤)、懸濁剤、粘稠剤及び/又は乳化剤も医薬組成物中に存在していてもよい。
[0071]
非経口投与では、医薬組成物は液剤又は懸濁剤の剤形であり、本発明の化合物(例えば化合物(III))及び精製水を含有することが出来る。液剤又は懸濁剤に含まれていてもよい成分としては、保存剤(例えば、抗菌性保存剤)、緩衝剤、それらの溶液及び混合物が挙げられる。医薬組成物の成分は、1以上の機能を発揮してもよい。医薬組成物は、一用量又は複数用量の容器、例えば、シールされたバイアル及びアンプルに入れ凍結乾燥状態で保存することができ、使用前に殺菌された液状担体(例えば、水や生理食塩水)に添加すればよい。好ましい態様としては、本発明の化合物(例えば化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)は、D-マンニトールと共に含有する凍結乾燥製剤として製剤される。凍結乾燥製剤は、好ましくは使用前に生理食塩水で希釈される。
[0072]
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、医薬分野で周知の方法、例えば、ガナロ(Gennaro)ら、「レミントンの製薬科学」1990年、第18版、マック出版(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., MackPublishing CO., 1990)、特に第8章「医薬製剤とその製造(P art 8: Pharmaceutical Preparation and their Manufacture)に記載の方法によって、調製することができる。当該方法は本発明の化合物を医薬組成物の他の成分と共に会合させる工程を含む。
[0073]
本発明の医薬は、適当な方法で投与することができ、投与ルートは特に限定されるものではない。例えば、経口、口腔内、鼻腔内、経皮、注射、徐放、制御放出、イオン導入(iontophoresis)、超音波導入(sonophoresis)が挙げられる。注射は特に限定されないが、静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、皮下(subcutaneous)、腹腔内(intraperitoneal)、髄腔内(intraspinal)、クモ膜下内(intrathecal)、脳室内( intracerebroventricular)、動脈(intraarterial)内、その他の注射ルート等の非経口ルートが挙げられる。非経口投与では、医薬組成物を液状又は非液状の殺菌した注射製剤とすることができ、好ましくは、静脈内注射製剤である。
[0074]
本発明の化合物の適切な投与量は、患者のタイプや症状、投与経路、性差、体重等により変化する。成人の経口投与の場合、例えば、本発明の化合物(特に化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)の1日の用量として、通常約0.01~1,000 mg(例えば、0.05~900 mg、好ましくは0.1~100 mg)である。
本発明の化合物(特に化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)が成人に静脈内投与される場合、例えば、1日の用量として、通常、約0.01~100 mg/kg (例えば、約0.01~95 mg/kg、好ましくは約0.01~50 mg/kg)であり、一回又は数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又はそれ以上)に分けて投与することができる。あるいは、本発明の化合物 (特に化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)は、期間(例えば、数時間から一日又はそれ以上)を選択して、持続静脈内投与してもよい。持続投与の一日総投与量は、通常、非持続静脈内投与で使用される一日投与量と同じである。
[0075]
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例 1
[0076]
1.方法
1.1 材料
1.1.1 細胞
Cryopreserved Human PBMC(PBMC):BIOPREDIC
CD3/CD28シグナル配列含有CD19-CAR-T細胞(CAR-T細胞):東京大学医科学研究所分子療法分野より提供
CD19発現K562細胞株(標的細胞):東京大学医科学研究所分子療法分野より提供
Human Monocyte(単球): BIOPREDIC
Lenti-X293T 細胞:Clontech
[0077]
1.1.2 試薬
RPMI1640 medium:Thermo fisher (Gibco)
Fetal Bovine Serum (FBS):Thermo fisher (Gibco)
D-PBS(-):和光純薬工業
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物(EDTA):純正化学
Albumin from bovine serum(BSA):SIGMA
Dimethyl Sulfoxide(DMSO):SIGMA
Penicillin-Streptomycin-Glutamine:Thermo fisher
2-Mercaptoethanol:SIGMA
Trypan Blue Stain 0.4%(トリパンブルー溶液):Thermo fisher (Gibco)
1 mol/L HEPES Buffer Solution:ナカライテスク
1 mol/L Sodium Hydroxide Solution:FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation
CD4 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
CD8 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
CD14 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
MACS BSA Stock Solution:Miltenyi Biotec
AutoMACS Rinsing Solution:Miltenyi Biotec
Dynabeads Human T-Activator CD3/28(T細胞刺激ビーズ):Thermo fisher (Gibco)
Recombinant Human M-CSF:Pepro Tech
Recombinant Human IFN-γ:Pepro Tech
JTE-607 dihydrochloride(カタログ名としての記載):Tocris Cat. No. 5185
プレドニゾロン(PSL):和光純薬工業 Cat. No.165-11491
トシリズマブ:absolute antibody Cat. No.L6529-1MG
Lipopilysaccharides from Escherichia coli 055:B55(LPS):SIGMA
アデノシン 5'-三リン酸 二ナトリウム塩 水和物(ATP):SIGMA
Human IFN-γ DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-6 DuoSet ELISA:R&D systems
Human CCL2/MCP-1 DuoSet ELISA:R&D systems
Human TNF-α DuoSet ELISA:R&D systems
Human OPN DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-1β DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-18 DuoSet ELISA:R&D systems
Human VEGF DuoSet ELISA:R&D systems Human IL-8 DuoSet ELISA:R&D systems
DuoSet ELISA Ancillary Reagent Kit 2:R&D systems
HQPlex Premixed Analyte Kit(マルチプレックスアッセイ):Bay bioscience
In-Fusion HDクローニングキット:タカラバイオ
[0078]
1.1.3 器材
MidiMACS Separator:Miltenyi Biotec
MidiMACS - LS columns(分離用カラム):Miltenyi Biotec
ポリプロピレンコニカルチューブ(チューブ):FALCON
Tissue Culture Plate, 96 well, Flat Bottom with Low Evaporate Lid(96 well plate):FALCON
[0079]
1.1.4 試液
10% FBS RPMI (medium):
RPMI1640に、非働化FBS 50 mL、Penicillin-Streptomycin-Glutamine 5 mL、0.1 M 2-Mercaptoethanol 250 μLを添加し、全量を500 mLとした。4℃で保存し、使用前に恒温槽で37℃に加温して使用した。
2 mM EDTA, 0.5%BSA-PBS(MACS Buffer):
D-PBS(-) 44 mLに、5%BSA溶液5 mL及び100 mM EDTA溶液1 mLを添加した。調製後は4℃で保存した。
[0080]
1.1.5 機器
恒温槽:Thermal ROBO TR-1A、AS ONE
遠心機:AX-320、TOMY
CO 2インキュベーター:MCO-170AICUVH、PANASONIC
プレートリーダー:SPECTRAmax 384plus、Molecular Devices
FACSVerse TM フローサイトメーター:Becton, Dickinson and Company
EnSpire 2300:パーキンエルマージャパン
[0081]
1.2 方法
1.2.1 CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温、300g、10分間)を行い、上清を除去後、mediumに懸濁し、一部をトリパンブルー溶液と混合し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、細胞1×10 7 cellsあたりMACS Buffer 80 μLを加え懸濁後、さらにHuman CD8 MicroBeads 20 μLを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Buffer 2 mLを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
[0082]
ここにMACS Buffer 500 μLを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD8 +細胞を分離した。CD8 +細胞の画分にmediumを加え、15 mLとし遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。1×10 6 cells/mLになるようmediumを加えた細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×10 5 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置させた。
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を50 μL/well添加し、T細胞刺激ビーズ10 μL/well(T細胞刺激ビーズ原液2 μL相当)及びmedium 40 μL/wellを加えCO 2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISAを用いてIFN-γの定量を行った。
[0083]
1.2.2 CD14 +細胞のLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用
 凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14 +細胞を分離した。CD14 +細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×10 5又は3×10 5 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×10 4 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置した。
[0084]
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度 0.03, 0.3, 3, 30 μM)を添加し、さらにLPS溶液(最終濃度3 ng/mL)を添加、CO 2インキュベーター内に3日間静置後、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IL-6 DuoSet ELISAを用いてIL-6の定量を行った。
[0085]
1.2.3 PBMCのLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、1×10 6 cells/mLになるようmediumを加え、細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×10 5 cells/well)した。0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を30 μL/well添加し、LPS溶液を5 μL/well添加した(最終濃度3 ng/mL)。CO 2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IL-6 DuoSet ELISAを用いてIL-6の定量を行った。
[0086]
1.2.4 PBMCでのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、1×10 6 cells/mLになるようmediumを加え、細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×10 5 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置させた。
[0087]
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を50 μL/well添加し、T細胞刺激ビーズ10 μL/well(T細胞刺激ビーズ原液2 μL相当)及びLPS溶液(最終濃度3 ng/mL)40 μL/wellを加えた。CO 2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISA及びHuman IL-6 DuoSet ELISAを用いてIFN-γ及びIL-6の定量を行った。
[0088]
1.2.5 CD4 +T細胞欠如PBMCでのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結human PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計数を行った。残りの細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、細胞1×10 7 cellsあたりMACS Buffer 80 μL及びHuman CD4 MicroBeads 20 μLを添加し懸濁を行った。氷上で15分間静置させ、MACS Buffer 2 mLを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。MACS Buffer 500 μLを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD4 -細胞(CD4 +細胞の素通り画分)を分離した。CD4 -細胞の画分にmediumを加え、15 mLとし遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。1×10 6 cells/mLになるようmediumを加えた細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×10 5 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置させた。
[0089]
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を50 μL/well添加し、T細胞刺激ビーズ10 μL/well(T細胞刺激ビーズ原液2 μL相当)及びLPS溶液(最終濃度3 ng/mL)40 μL/wellを加えCO 2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISA及びHuman IL-6 DuoSet ELISAを用いてIFN-γ及びIL-6の定量を行った。
[0090]
1.2.6 CD14 +細胞のLPS刺激によるMCP-1産生に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14 +細胞を分離した。CD14 +細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×10 5又は3×10 5 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×10 4 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置した。
[0091]
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度 0.03, 0.3, 3, 30 μM)を添加し、さらにLPS溶液(最終濃度3 ng/mL)を添加、CO 2インキュベーター内に3日間静置後、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human CCL2/MCP-1 DuoSet ELISAを用いてMCP-1の定量を行った。
[0092]
1.2.7 CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
1.2.1で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
[0093]
1.2.8 CD14 +細胞のLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
1.2.2で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
[0094]
1.2.9 PBMCのLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
1.2.2で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
[0095]
1.2.10 CD14 +細胞のLPS刺激によるOPN産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14 +細胞を分離した。CD14 +細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×10 5又は3×10 5 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×10 4 cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置した。
[0096]
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)、PSL溶液(最終濃度 0.03, 0.3, 3, 30 μM) 又はトシリズマブ(最終濃度10, 100, 1000 ng/mL)を添加し、さらにLPS溶液(最終濃度500 ng/mL)を添加、CO 2インキュベーター内に3日間静置後、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human OPN DuoSet ELISAを用いてOPNの定量を行った。
[0097]
1.2.11 CD14 +細胞のLPS刺激によるIL-1β産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
1.2.10で回収した培養上清を、Human IL-1β DuoSet ELISAを用いてIL-1βの定量を行った。
[0098]
1.2.12 LPS前処置CD14 +細胞からのATP刺激によるIL-18産生でのJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
[0099]
ここにMACS Buffer を添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14 +細胞を分離した。CD14 +細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2×10 6 cells/mLに調製した細胞懸濁液を96 well plateに播種(1×10 5cells/well)し、CO 2インキュベーター内に1~2時間静置した。CD14 +細胞(1x10 5 cells/well)を96 well flat bottom plateに播種し、0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)、PSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)又はトシリズマブ(最終濃度10, 100, 1000 ng/mL)を添加し30分間、37℃でインキュベートした。その後、LPS(最終濃度500 ng/mL)で6時間、37℃で刺激し、ATP溶液(最終濃度5 mM)を添加し、さらにCO 2インキュベーター内に2時間静置し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IL-18 DuoSet ELISAを用いてIL-18の定量を行った。
[0100]
1.2.13 マクロファージのLPS刺激によるVEGF産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
CD14 +細胞を20 ng/mL M-CSF入りのRPMI培地で37℃で5日間培養し、マクロファージへ分化誘導した(その間,2日に1回 20 ng/mL M-CSF入りRPMI培地を追加した)。マクロファージを5×10 5cells/mLで96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)、PSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)又はトシリズマブ(最終濃度10, 100, 1000 ng/mL)を添加しを添加後37℃で30分間インキュベートした。その後,RPMI培地のみ,又はLPS(最終濃度100 ng/mL)で37℃で3日間刺激し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human VEGF DuoSet ELISAを用いてVEGFの定量を行った。
[0101]
1.2.14 CAR-T細胞のキラー活性に対するCD14 +細胞の作用
FMC63 scFv、CD28のヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン及びCD3-ζ細胞質ドメインを用いて、Kochenderferらの方法 15)に基づいて抗CD19 CARの構築を行った。配列はGenBank(HM852952)から入手し、IDTコドン最適化ツール(http://sg.igtdna.com/CodonOpt)を用いてFMC63内部のBamHI認識配列を除いた。最適化したFMC63-28z配列を化学合成し、以下のプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。
 5'‐CGCTACCGTCGTCGAATTCGCCGCCACCATGCTTC‐3'(配列番号1)
 5'‐GAAGTTCGTGCTCCGGGATCCCGCGAGGGGGCAG‐3'(配列番号2)

 PCR産物を、In-Fusion HDクローニングキットを用いて、レンチウイルスプラスミドCSII-EF-MCS-2A-eGFPのマルチクローニングサイト(EcoRI及びBamHI)に挿入し、CSII-EF-FMC63-28z-2A-eGFPを得た。レンチウイルスベクターは、CSII-EF-FMC63-28z-2A-eGFPとパッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE、pRSV-rev及びpMD.G)をLenti-X293T 細胞に共トランスフェクションして作製した。作製したレンチウイルスベクターを抗CD3抗体、抗CD28抗体及びIL-2で刺激した末梢血単核球に感染させ、CD3陽性及びeGFP陽性分画をFACSソーティングしてCAR-T細胞とした。
Kochenderferらの方法 15)に基づいてヒトCD19のオープンリーディングフレームを合成し、以下のプライマーを用いるPCRによって増幅した。

 5'-ccggttcgaattcgccatATGCCACCTCCCGCCTC-3'(配列番号3)
 5'-cgatgttaactctagatcaCCTGGGTGCTCCAGGTGC-3'(配列番号4)

 PCR産物を、In-Fusion HDクローニングキットを用いて、EcoRI及びXbaI部位を用いてレンチウイルス骨格プラスミドCSII-EF-MCSに挿入し、CSII-EF-hCD19を得た。また、ホタルルシフェラーゼ(fLuc)発現プラスミドは、fLuc cDNAを以下のプライマーセットを用いpmirGLOプラスミド(Promega社)を鋳型としてPCRにより増幅した。

 5'-GAATTCGCCACCATGGAAGATGCCAA -3'(配列番号5)
 5'-GGATCCCACGGCGATCTTGCCGCC-3'(配列番号6)

 PCR産物をEcoRI及びBamHIで切断後、CSII-EF-MCS-2A-eGFPのマルチクローニングサイトに挿入してCSII-EF-fLuc-2A-eGFPを得た。レンチウイルスベクターは、CSII-EF-hCD19又はCSII-EF-fLuc-2A-eGFPとパッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE, pRSV-rev及びpMD.G)をLenti-X293T細胞に共トランスフェクションして作製した。作製したレンチウイルスベクターはK562細胞に感染させ、CD19及びeGFP陽性分画をFACSソーティングし標的細胞とした。
標的細胞(3×10 3cells/well)を96 well plateに播種し、そこにE/T比が0,0.1,0.3,1,3及び10になるようにCAR-T細胞を加えた培養系に、CD14 +細胞(1.5×10 4 cells/well)を添加又は非添加の条件で3日間インキュベートした。その後、ルシフェラーゼ活性をEnSpire 2300を用いて発光強度を検出した。
[0102]
1.2.15 CAR-T細胞を用いた混合培養系のサイトカイン産生に対するCD14 +細胞の作用
CAR-T細胞(5×10 4 cells/well)及び標的細胞(1×10 4 cells/well)を96 well plateに播種したところに、CD14 +細胞 (1×10 4 cells/well)を添加又は非添加の条件でインキュベートした。培養開始後,0,4,24,48及び72時間後の上清を回収し、上清中のIFN-γ,TNF-α,MCP-1,IL-6及びIL-4をFACSのマルチプレックスアッセイで測定した。
[0103]
1.2.16 CAR-T細胞のキラー活性に対するJTE-607及びPSLの作用
CAR-T細胞(5×10 4cells/well)、標的細胞(1×10 4cells/well)及びCD14 +細胞(5×10 4 cells/well)を96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100, 1000 nM)、PSL溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μM)を添加し2日間インキュベートした。その後、ルシフェラーゼ活性を、EnSpire 2300を用いて発光強度により検出した。
[0104]
1.2.17 CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのJTE-607,PSL及びトシリズマブの作用
CAR-T細胞(1.5×10 4cells/well)、標的細胞(3×10 3cells/well)と単球(1.5×10 4cells/well)を96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度1, 10, 100, 1000 nM)、PSL溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μM)又はトシリズマブ溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μg/mL)を添加しインキュベートした。培養開始72時間後に上清を回収し、上清中の各種サイトカインをFACSのマルチプレックスアッセイにて測定した。
[0105]
1.3 結果
1.3.1 CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるIFN-γ等産生に対するJTE-607及びPSLの作用
JTE-607はT細胞刺激ビーズによるCD8 +T細胞からのIFN-γ産生に対し顕著な抑制作用を示さなかった(IC 50値= >300 nM)。一方、PSLは当該IFN-γ産生を濃度依存的に抑制した(IC 50値= 0.1494 μM)。JTE-607はCD8 +T細胞に対する直接的な作用は弱いことが明らかとなった(図1、図3及び表1)。
[表1]


[0106]
1.3.2 CD14 +細胞のLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用
CD14 +細胞からのIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC 50値は52.9 nM、0.151 μMであった。JTE-607はこれまで報告されていた通りmyeloid系細胞に対し作用を示すことが明らかとなった(図2、図3及び表1)。
[0107]
1.3.3 PBMCのLPS刺激によるIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用
PBMCからのIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC 50値は17.7 nM、0.176 μMであった(図4及び表1)。
[0108]
1.3.4 PBMCでのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用
T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激によるPBMCからのIL-6及びIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607は、共刺激によるIL-6及びIFN-γ産生を濃度依存的に抑制し、そのIC 50値はIL-6が40.4 nM、IFN-γが50.1 nMであった。また、IL-6とIFN-γのIC 50値に対する比(ratio)は0.81であった。一方、PSLはIL-6産生よりもIFN-γ産生を強く抑制した。JTE-607は、T細胞機能に強く作用するPSLとは異なることが明らかとなった(図5、図6及び表1)。
[0109]
1.3.5 CD4 +T細胞欠如PBMCでのT細胞刺激ビーズ及びLPS刺激によるCRS毒性評価系に対するJTE-607及びPSLの作用
T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激系におけるCD4 +T細胞の関与を明らかにするためPBMCからCD4 +T細胞を除去したCD4 +T細胞欠如PBMCを用いてJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607は、共刺激によるIL-6及びIFN-γ産生を濃度依存的に抑制し、そのIC 50値は同程度(IL-6 IC 50値= 42.2 nM、IFN-γ IC 50値= 80.9 nM)であった。また、IL-6とIFN-γのIC 50値に対する比(ratio)は0.52であり、JTE-607はIL-6産生阻害作用に偏った作用を示した。一方、PSLはIFN-γ産生を濃度依存的に抑制(IC 50値=0.042 μM)したが、IL-6産生は抑制しなかった(図7、図8及び表1)。PBMCとCD4 +T細胞欠如PBMCを用いた検討において同様の結果を取得出来たため、T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激系においてCD4 +T細胞の関与は低いものであると考えられた。
[0110]
1.3.6 CD14 +細胞のLPS刺激によるMCP-1産生に対するJTE-607及びPSLの作用
CD14 +細胞からのMCP-1産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC 50値はそれぞれ21.3 nM、6.598 μMであった。JTE-607はMCP-1産生阻害を介して強いマクロファージ活性化阻害作用を示すことが示唆された(図9及び表1)。
[0111]
1.3.7 CD8 +T細胞のT細胞刺激ビーズによるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
T細胞刺激ビーズによるCD8 +T細胞からのTNF-α産生に対し、PSLの抑制作用(IC 50値= 0.0348 μM)と比較し、JTE-607の抑制作用(IC 50値= 231.4 nM)は弱いことが明らかとなった(図10及び表1)。
[0112]
1.3.8 CD14 +細胞のLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
LPS刺激によるCD14 +細胞からのTNF-α産生に対し、PSLは抑制作用が認められた(IC 50値= 0.0417 μM)。一方、JTE-607は添加濃度に依存して抑制作用を示すもののIC 50値の算出には至らなかった。一般的にCD14 +細胞からのTNF-α産生は刺激直後より一過性に上昇することが知られている。今回測定に使用した培養上清はIL-6のように漸増するサイトカインの至適評価条件下で実施しており、TNF-αは産生量が低下している条件での評価であったためJTE-607の明確な抑制が認められなかったものと考えられた(図11及び表1)。
[0113]
1.3.9 PBMCのLPS刺激によるTNF-α産生に対するJTE-607及びPSLの作用
JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、そのIC 50値は30.7 nM、0.073 μMであった(図12及び表1)。種々の細胞が混在しているPBMCにおいては相互的に刺激し合うことで持続的な産生が認められるためJTE-607は抑制作用を示したと考えられた。
[0114]
1.3.10 CD14 +細胞のLPS刺激によるOPN産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
CD14 +細胞からのOPN産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を評価した。JTE-607は抑制活性を示し、IC 50値は132.1 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはOPN産生抑制作用は認められなかった(図13及び表1)。JTE-607は、OPN産生阻害を介して、LCH病変に見られる破骨細胞活性化を阻害することが示唆された。
[0115]
1.3.11 CD14 +細胞のLPS刺激によるIL-1β産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
JTE-607はIL-1β産生抑制活性を示し、IC 50値は3.45 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはIL-1β産生抑制作用は認められなかった(図14及び表1)。JTE-607にはPSL及びトシリズマブなどの既存薬とは異なる作用があることが示唆された。
[0116]
1.3.12 LPS前処置CD14 +細胞からのATP刺激によるIL-18産生でのJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
LPS前処置CD14 +細胞からのIL-18産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を評価した。JTE-607は抑制活性を示し、IC 50値は2.40 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはIL-18産生抑制作用は認められなかった(図15及び表1)。JTE-607は、IL-18産生を阻害することにより、高いIL-18産生を特徴とする疾患群の病態を改善することが示唆された。IL-18は、IL-6に独立して高産生が維持される炎症性サイトカインであり、トシリズマブ投与で隠される炎症性病態へのJTE-607作用が示唆された。
[0117]
1.3.13 マクロファージのLPS刺激によるVEGF産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用
マクロファージからのVEGF産生に対しPSLは強い作用を示し,最低評価濃度の30nMにおいても50%以上の抑制率であったためIC 50値の算出には至らなかった。一方、JTE-607は抑制傾向は認められるもののその作用はマージナルであった。トシリズマブにおいてはVEGF産生抑制作用は認められなかった(図16及び表1)。
[0118]
1.3.14 CAR-T細胞のがん細胞認識を起点とするCRS毒性のin vitro評価系
CRS毒性に繋がるサイトカイン遊離を検出するために、CAR-T細胞の標的細胞認識(キラー活性)の培養系と、それに末梢血CD14 +細胞を添加した培養系を比較した。標的細胞へのキラー活性については、CD14 +細胞共存培養ではCD14 +非添加培養に比べて上昇した(図17)。
次に、CD14 +細胞非添加及び添加培養における各種サイトカイン産生を経時的に定量した。CAR-T細胞に由来するサイトカインのIFN-γ産生は大きく違わなかった。一方で、IL-6やMCP-1産生は、数倍から10倍以上の産生が認められ、CD14 +細胞の活性化状態が著しいことを反映する結果と考えられた(図18)。ちなみに、IL-6及びMCP-1ともCRS毒性の重症化を予測かつ判定するバイオマーカーとして報告 16)されている。以上、3種類の細胞「CAR-T細胞、標的細胞及びCD14 +細胞」混合培養系は、CAR-T細胞療法における“標的がん細胞キラー活性”と“CRS毒性”を同時に評価することが可能なin vitro培養系であると考えられた。
[0119]
1.3.15 CAR-T細胞のキラー活性に対するJTE-607及びPSLの作用
CAR-T細胞のキラー活性に対し、PSLは濃度に応じて抑制作用を示すものの、JTE-607は影響を及ぼさなかった(図19)。
[0120]
1.3.16 CAR-T細胞を用いたCRS毒性評価系でのJTE-607、PSL及びトシリズマブ作用
キラー活性評価時の培養上清中の各サイトカインに対する評価を実施した。IFN-γ産生に対し、JTE-607とPSLは同程度の抑制活性が認められた。IL-6産生に対し、JTE-607のIC 50値は187.5 nMであった。一方、PSLは抑制作用を示さなかった(図20及び表2)。MCP-1産生に対し、JTE-607は濃度依存的な抑制作用を示し、そのIC 50値は37.6 nMであった。またPSLのIC 50値は71.8 μMであった。一方、トシリズマブは抑制作用を示さなかった(図21及び表2)。IL-8産生に対し、JTE-607は抑制作用を示し、そのIC 50値は153.8 nMであった。一方でPSL及びトシリズマブは抑制作用を示さなかった(図22及び表2)。TNF-α及びIL-1βに対して、JTE-607は抑制作用を示し、そのIC 50値はそれぞれ413.1 nM、358.9 nMであった。一方でPSL及びトシリズマブは抑制作用を示さなかった(図23、図24及び表2)。IL-18については今回評価した条件では殆ど産生が認められず評価には至らなかった(25及び表2)。
[表2]


[0121]
「内在性Tエフェクター細胞の過剰活性化に伴う各種副作用・症状(irAEs、HLH、MAS等)発症の概念図」を図26に示した。
免疫チェックポイント阻害薬やウイルス感染等によって過剰増幅するTエフェクター細胞は、共存する組織常在性マクロファージや抗原提示細胞等と相互に影響し合い、抗がん作用・抗ウイルス作用に加えて自己免疫疾患関連副作用等を引き起こす。プレドニゾロン(PSL)による免疫抑制作用は、それらの副作用及び症状を改善するが、同時に抗がん・抗ウイルス作用Tエフェクター機能も全面的に阻害する。
[0122]
一方、トシリズマブがマクロファージ活性化による過剰産生されるIL-6の阻害を目的として使用され、自己免疫疾患関連副作用の軽減・改善が期待される。JTE-607は、より幅広くマクロファージ異常活性化を阻害することが期待され、かつTエフェクター細胞の抑制が限定的であることを示した。この図提示の背景となる発見は、T細胞反応(CD3+CD28刺激反応系)と単球・マクロファージ反応(LPS等の刺激反応系)の単独培養及び新規な組合せ培養系の結果に示されている。
以上より図26では、JTE-607が主要なTエフェクター細胞機能に大きく影響を与えず、マクロファージ活性化を抑制し臓器傷害を改善する効果が期待されることを示している。
[0123]
参考文献
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[0124]
 配列番号1~6:合成DNA

請求の範囲

[請求項1]
次式I:
[化13]


〔式中、R は、置換されていてもよい窒素含有非芳香族アルキル基又は置換されていてもよい窒素含有複素環基を表し、Aは、単結合、又は置換されていてもよく、かつ鎖中に1若しくは2以上の二重結合若しくは三重結合を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は置換されていてもよく、かつ直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20のアルキル基を表し(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、nは1~4の整数を表し、mは0又は1~6の整数を表し、R は、置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい炭素数3~10のシクロアルキル基、 置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、R は、酸素原子、又は-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-O-CO-O-で示される基を表し、R は、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換されていてもよい炭素数1~20のアリール基を表す。〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
[請求項2]
窒素含有非芳香族複素環基がピペラジニル基又はピペリジニル基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である、請求項1に記載の医薬。
[請求項3]
窒素含有非芳香族アルキル基がアルキルアミノ基であり、Aが炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であり、R が酸素原子であり、R が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R がフェニル基であり、R が-COO-で示される基を表し、R が炭素数1~10の直鎖状のアルキル基である、請求項1に記載の医薬。
[請求項4]
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩が、次式II:
[化14]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項5]
式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式III:
[化15]


で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項6]
式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式IIIで示される化合物の塩酸塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項7]
式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式IV:
[化16]


で示される化合物である(1)~(6)のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項8]
疾患又は症状が、免疫チェックポイント阻害薬の使用に起因するもの、キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するもの、改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するもの、又は感染症、がん及び自己免疫疾患からなる群から選ばれる少なくとも1つにより誘発されるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項9]
サイトカインの産生及びマクロファージの活性化の少なくとも1つを抑制する、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項10]
サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α及びMIP-1βからなるから選ばれる少なくとも1つである、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬。
[請求項11]
サイトカインが、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項10に記載の医薬。
[請求項12]
サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防、治療又は改善のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]