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1. WO2020111111 - METHOD FOR PRODUCING SEPARATION MEMBRANE

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明 細 書

発明の名称 分離膜の製造方法

技術分野

0001   0002  

背景技術

0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

0005  

図面の簡単な説明

0006  

発明を実施するための形態

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043  

実施例

0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

符号の説明

0066  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6A   6B   7A   7B   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 分離膜の製造方法

技術分野

[0001]
 本開示は、分離膜の製造方法に関する。
[0002]
 本出願は、2018年11月27日出願の日本出願第2018-221664号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。

背景技術

[0003]
 特許文献1には、分離膜の製造方法が開示されている。同文献では、無機酸化物多孔質支持体上に、ゼオライトの種結晶、及び構造規定剤を含有するアルカリ成分を形成し、これにより得られた形成体を加熱水蒸気雰囲気下で処理して、支持体上にゼオライト膜を形成している。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 国際公開第2018/131707号

発明の概要

[0005]
 本開示の一態様に係る分離膜の製造方法は、
 無機酸化物多孔質支持体上にゼオライト膜が形成された分離膜の製造方法であって、
 前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、シリカを90重量%以上含む表面層を形成する表面層形成工程と、
 ゼオライトの種結晶及び構造規定剤を含有する成分を、前記表面層の表面、内部またはその両方に担持する担持工程と、
 前記担持工程で得られた部材を、加熱水蒸気雰囲気で処理する水蒸気処理工程と、
を含む。

図面の簡単な説明

[0006]
[図1] 本開示の実施形態に係る分離膜の構成を示す図である。
[図2] 本開示の実施形態に係る製造方法のフローを示す図である。
[図3] 本開示の実施形態に係る分離膜が製造される過程を示す模式図である。
[図4] 例1における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の断面を示す電子顕微鏡写真である。
[図5] 多孔質シリカ支持体表面を示す電子顕微鏡写真である。
[図6A] 例2における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の表面を示す電子顕微鏡写真である。
[図6B] 例2における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の断面を示す電子顕微鏡写真である。
[図7A] 例3における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の表面を示す電子顕微鏡写真である。
[図7B] 例3における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の断面を示す電子顕微鏡写真である。
[図8] 分離膜の分離透過性能を評価する装置の一例を示す模式図である。
[図9] 例1~例12の分離膜の、浸透気化試験により測定された透過流束および分離係数の関係を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0007]
[本開示が解決しようとする課題]
 従来の水熱合成法では、溶液側からゼオライト成分が供給されて、種結晶を核としてその表面よりゼオライト結晶が成長するので、配向結晶膜が成長する。このような、高い配向性を有するゼオライト分離膜では、粒子界面におけるリークにより分離係数が低くなるため、分離係数を高めるために膜厚を厚くする必要がある。一方、膜厚を厚くすると透過流束が低下する。また、従来の水熱合成による分離膜形成では、構造規定剤を含む未反応溶液を廃棄しなくてはならないため、製造コストの面でも課題がある。
[0008]
 特許文献1に開示される方法では、あらかじめ支持体にゼオライトの種結晶および構造規定剤を含有するアルカリ成分を形成して、加熱水蒸気雰囲気下で処理することで、緻密質の非配向膜を形成している。当該方法によって、製造コストの面で有利になり、ゼオライト膜の膜厚が薄くても分離能に優れ、透過流束の大きい分離膜を製造できた。一方、当該方法ではゼオライト膜の形成に必要な原料が支持体からのみ供給されているため、ゼオライト膜の緻密性の向上に限界があり、高い分離係数を持つゼオライト膜が形成できない問題があった。また、物質の分離・精製の効率の観点から、更なる分離能の向上が求められていた。
[0009]
 本開示は、製造コストの面で優れていると共に、透過流束が大きく、分離性能に優れる分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
[0010]
[本開示の効果]
 本開示によれば、製造コストの面で優れていると共に、透過流束が大きく、分離性能に優れる分離膜の製造方法を提供することができる。
[0011]
[本開示の実施形態の説明]
 最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
 本開示の実施形態に係る分離膜の製造方法は、
(1)無機酸化物多孔質支持体上にゼオライト膜が形成された分離膜の製造方法であって、
 前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、シリカを90重量%以上含む表面層を形成する表面層形成工程と、
 ゼオライトの種結晶及び構造規定剤を含有する成分を、前記表面層の表面、内部またはその両方に担持する担持工程と、
 前記担持工程で得られた部材を、加熱水蒸気雰囲気で処理する水蒸気処理工程と、
を含む。
 当該製造方法によれば、製造コストの面で優れていると共に、透過流束が大きく、分離性能に優れる分離膜を製造することができる。
(2)上記(1)の分離膜の製造方法は、
 前記表面層形成工程において、前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、シリカを主成分とする粒子を積層させることにより、前記表面層を形成してもよい。
 当該構成によれば、支持体表面にシリカを主成分とする粒子を積層させることで、より簡便に疎水性ゼオライト膜の成長に必要な原料を供給することができる。
(3)上記(2)の分離膜の製造方法は、
 前記表面層形成工程において、粒子径が5nm以上500nm以下の粒子を前記支持体に塗布することにより、前記表面層を形成してよい。
 当該構成によれば、粒子を塗布する方法を採用することで、さらに簡便に表面層を形成することができる。また、粒子径を500nm以下とすることで、粒子が溶解しやすくなり、原料の供給を増加させることができる。また5nm以上であると粒子が支持体の内部に進入することが抑制されて、透過率の低下を抑制できる。
(4)上記(1)または(2)の分離膜の製造方法は、
 前記表面層形成工程において、前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、化学蒸着法により前記表面層を形成してもよい。
 当該構成によれば、化学蒸着法を利用することにより、支持体の製造時に連続して表面層を形成することができる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの分離膜の製造方法は、
 前記支持体が、シリカを90重量%以上含有する非晶質体からなってもよい。
 当該構成によれば、シリカを90重量%以上含有する非晶質体を支持体とすることで、ゼオライト膜合成中の、アルミニウム元素またはその他成分の溶出を抑制することができ、良好な疎水性膜を得ることができる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの分離膜の製造方法は、
 前記成分が、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、またはテトラプロピルアンモニウムハロゲン塩および塩基を含んでもよい。
 当該構成によれば、当該成分を用いることでMFI型ゼオライトを形成することができる。さらに塩基性であることから表面層を適度に溶解させることができ、ゼオライト膜の形成に必要な原料の供給を促進させて、好適なゼオライト膜を形成することができる。
[0012]
[本開示の実施形態の詳細]
 以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。
1.分離膜
 図1は、本開示の一実施形態に係る分離膜20の断面を示す図である。分離膜20は略円筒形状であり、中心孔24を持つ無機酸化物多孔質支持体21を有している。支持体21の外周にはゼオライト膜22が製膜されている。なお、分離膜20の形状は、平面状等、任意の形状とすることもできるが、分離効率の点から流体との接触面積をより広くするために、本実施形態では管状としている。
[0013]
 分離膜20は、分子ふるい効果や親水/疎水性を活用したガス分離膜、パーベーパレーション膜、膜分離反応器などに使用することができ、とくにエタノール/水分離用の分離膜として好適に使用することができる。
[0014]
1-1.無機酸化物多孔質支持体
 本実施形態において用いられる無機酸化物多孔質支持体21としては、シリカ、アルミナ、ムライト、セリア、チタニア等で構成される支持体が挙げられる。また、前記支持体21は、シリカを90重量%以上含有する非晶質体からなると好ましく、シリカを99重量%以上含有する非晶質体からなるとさらに好ましい。シリカを90重量%以上含有する非晶質体を支持体とすることで、ゼオライト膜合成中の、アルミニウム元素またはその他成分の溶出を抑制することができ、良好な疎水性膜を得ることができる。
[0015]
 支持体21は、ゼオライト膜22における流体の透過をほぼ干渉することなく該薄膜を支持するために、気孔率が35~70%、平均細孔径が250nm~600nmであるとよい。なお、「気孔率」は、単位体積当たりの気孔容積が占める割合として算出できる。
 さらに、支持体21の厚さは、特に限定されるものではないが、機械的強度とガス透過性のバランスから0.2mm~5mmであることが好ましく、0.5mm~3mmであることがより好ましい。また、支持体21の表面部分(後述する表面層23が形成される部分)の比表面積は、特に限定されるものではないが、5m /g以上400m /g以下であると好ましい。
[0016]
1-2.ゼオライト膜
 本実施形態におけるゼオライト膜22は、後述する表面層23が形成された支持体21の上に形成されている。なお、ゼオライト膜22の形成は、例えば、BRUKER社粉末X線回折装置 D8 ADVANCEを使用したX線回折測定(加速電圧を40KV、電流を40mA、光源をCuKα、計測角度を5~80°)によって、確認することができる。
[0017]
 ゼオライト膜22の厚さは、特に限定されるものではないが、0.5μm~30μmであることが好ましい。厚さが0.5μm未満では、ゼオライト膜22にピンホールが発生しやすく、十分な分離性能を得ることができないおそれがあり、また、厚さが30μmを超えると流体の透過速度が小さくなりすぎ、実用上十分な透過性能が得られにくくなる場合がある。
[0018]
2.分離膜の製造方法
 続いて、分離膜20の製造方法を説明する。図2は、本実施形態に係る分離膜20の製造方法のフローを示す図である。図3は、本実施形態に係る分離膜20が製造される過程を示す模式図である。分離膜20は、図2に示すように、表面層形成工程(第一工程)S1と、担持工程S2(第二工程S22および第三工程S23)と、水蒸気処理工程(第四工程)S3と、を含む製造方法によって製造される。
[0019]
2-1.表面層形成工程(第一工程)S1
 表面層形成工程S1は、支持体21の表面、および支持体21の表面付近の支持体21の内部、の少なくとも一方(以下、単に支持体21の表面等とする)に、シリカを90重量%以上含む表面層23を形成する工程である(図3)。当該工程は、具体的には例えば下記の方法によって実施される。
[0020]
2-1-1.化学蒸着法(CVD法)
 表面層23は、化学蒸着法(CVD法)によって、シリカを主成分とする粒子を支持体21の表面等に積層させることにより、形成することができる。本明細書において、シリカを主成分とするとは、シリカを90重量%以上含む(例えば純粋なシリカ)粒子であることを指す。なお、支持体21自体もCVD法によって形成することができるが、表面層23を構成する粒子を堆積させる際の条件は、支持体21を製造するためのCVD法の条件と異なる条件とすることで、表面層23を構成するシリカ粒子の粒径が小さくすることができ、支持体21とは構成する粒子の粒子径、細孔径等で異なる表面層23を形成できる。
[0021]
 CVD法を用いる利点は、支持体21をCVD法で作製する場合に、支持体21の作製プロセスと連続的に表面層23の形成を実施することが可能となることにある。連続的な工程を採用することで、生産性が向上し、コストを低減し得る。また、表面層23を構成する粒子の粒子径が小さくなることで、ゼオライト膜22の形成時に表面層23の溶解が促進されて、ゼオライト膜22の形成のための原料が供給されやすくなる。
[0022]
2-1-2.粒子塗布法
 また、表面層23は、粒子塗布法によって、シリカを主成分とする粒子を支持体21の表面等に積層させることにより、形成することもできる。粒子を塗布する方法は特に限られないが、ラビング法、ディップ法、スプレー法、電気泳動法等を用いることができる。当該方法において使用される粒子の粒子径は、5nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下であるとより好ましい。粒子径の小さい粒子を採用することで、ゼオライト膜22の形成時に溶解が促進されて、ゼオライト膜22の形成のための原料が供給されやすくなる。また粒子径を5nm以上にすることにより、粒子が支持体21の内部に進入することが抑制されて、透過率の低下を抑制できる。
 粒子塗布後に粒子の支持体への密着性を高めるため熱処理を行っても良い。その場合、500℃以上の熱処理を行うことが望ましく、さらに好ましくは800℃以上の熱処理を行うことが望ましい。
[0023]
 塗布する粒子は、シリカ粒子であるとさらに好ましい。支持体21の表面等にシリカ粒子を塗布することにより、支持体21の材料を選ばず表面層23を形成することが可能となる。また、シリカ粒子としては、分散性シリカ粒子、凝集性シリカ粒子等を採用し得る。分散性シリカ粒子としては、コロイダルシリカ、球状シリカが挙げられる。凝集性シリカ粒子としては、フュームドシリカが挙げられる。凝集性シリカ粒子の場合は、一次粒子径が小さいものであっても凝集により二次粒子を形成し得るため、支持体21の内部に粒子が侵入することが抑制される。
[0024]
 なお、支持体21がアルミナ、ムライト他でシリカの含有率が50重量%以下の場合は、表面層23と熱膨張率その他が異なり、構造規定剤の燃焼等熱処理時において破損する懸念がある。そのため、表面層23の厚みはCVD法および粒子塗布法のいずれの場合でも、支持体21の厚みの1/10以下若しくは100μm以下とすることが好ましく、支持体21の厚みの1/50若しくは20μm以下とすることがさらに好ましい。
[0025]
2-2.担持工程S2
 担持工程S2は、ゼオライトの種結晶及び構造規定剤を含有する成分を、表面層23の表面、および内部の少なくとも一方(以下、表面層23の表面等とする)に担持する工程である(図3)。なお、図3において符号25が付されている層は、ゼオライトの種結晶及び構造規定剤を含有する成分を含む層を模式的に表したものである。担持工程S2は、第二工程S22と、第三工程S23と、を含む。
[0026]
2-2-1.第二工程S22
 第二工程S22は、表面層23の表面等にゼオライト種結晶を担持する工程である。ゼオライトの種結晶は、通常のゼオライト粒子の製造方法で作られたゼオライト粒子である。ゼオライト種結晶の粒子径は特に限定されないが、例えば5μm以下、好ましくは3μm以下である。ゼオライト種結晶の担持は、例えばゼオライト種結晶の水分散液に、支持体21を浸漬し、引き揚げる方法によって行える。この際、構造規定剤を含有する成分をゼオライト種結晶の水分散液に加えることで、種結晶と同時に当該成分を表面層23の表面等に塗布して担持する(第三工程S23)ことも可能である。
[0027]
 また、ゼオライト種結晶の担持は、ゼオライトを分散させたポリマーフィルムを調製し、ゼオライト分散フィルムを支持体21の外表面(表面層23の表面)上に巻きつけたのち、ポリマー部分を焼成除去することでも、可能である。この場合、クロロホルムまたはアセトン溶媒に乾燥したゼオライト粉末を分散させた後、ポリメタクリル酸メチルを添加攪拌後、キャスト法でゼオライト種結晶を分散させたポリマーフィルムを調製する。このフィルムを支持体21上に巻き付け接着した後に、550℃にて大気中で焼成することで、表面層23の表面等に種結晶を担持できる。
[0028]
 本実施形態において、ゼオライト種結晶は、電気泳動法によって表面層23の表面等に形成してもよい。この方法によれば、種結晶の位置および密度が制御され、最終的に得られるゼオライト膜22の緻密性を向上させることが出来る。電気泳動法は、上下をシールした支持体21内部に有機溶媒、例えばアセトン、を充填し、外部にゼオライト種結晶を分散させた有機溶媒を満たし、支持体21内部電極と容器側電極に電圧をかけることで、種結晶を表面層23の表面等に付着させることにより行う。電気泳動法は、例えば電圧50Vを5分間かけることで行う。種結晶の付着後、溶液から支持体21を引き上げ、乾燥後、例えば、300℃で6時間加熱処理することで、表面層23への種結晶の担持は完了する。
[0029]
2-2-2.第三工程S23
 第三工程S23は、ゼオライト種結晶が担持された表面層23の表面等に構造規定剤を含む成分を担持する工程である。ただし、前述のように、第二工程S22と第三工程S23は同時に実施されてもよい。
[0030]
 構造規定剤は、ゼオライトの孔を構築する有機化合物の型剤であり、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩、トリメチルアダマンタンアンモニウム塩などが用いられる。
[0031]
 構造規定剤を含む成分とは、構造規定剤を含む水溶液を表し、好適には、アルカリ性の水溶液を表す。アルカリ性であることで、表面層を適度に溶解させることができ、ゼオライト膜の形成に必要な原料の供給を促進させて、好適なゼオライト膜を形成することができる。さらに好適には、前記成分は、有機アンモニウム水酸化物並びに/または、有機アンモニウムハロゲン塩およびアルカリ金属水酸化物を含有する水溶液である。
[0032]
 有機アンモニウム水酸化物としては、例えばテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)が挙げられ、有機アンモニウムハロゲン塩としては、例えばテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)が挙げられ、アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが挙げられる。これらの構造規定剤(および塩基であるアルカリ金属水酸化物)を用いることで、MFI型ゼオライトを形成することができる。
[0033]
 前記成分として、有機アンモニウム水酸化物を含有する水溶液を用いた場合、ゼオライト膜22がシリカ成分と有機アンモニウムのみから形成されるので不純物成分のきわめて少ない分離膜20を形成可能であり、支持体21やゼオライト膜22からの不純物溶出を抑制することができる。また、前記成分として、有機アンモニウムハロゲン塩及びアルカリ金属水酸化物を含有する水溶液を用いた場合、有機アンモニウム水酸化物を用いる場合よりも前記成分が安定し、かつアルカリ濃度をアルカリ金属水酸化物の濃度によって調製可能であるため、過剰なアルカリによる支持体の破壊などが生じにくいプロセスを構築することができる。
[0034]
 また、前記成分中の構造規定剤の濃度は、0.05M以上であることが結晶成長を進行させるために好ましい。さらに、前記成分中の構造規定剤の濃度が、0.3M以下であることが支持体21の消耗を抑制するため有効であり好ましい。
[0035]
 種結晶が担持された支持体21の上下に封をし、構造規定剤を含む成分に浸した後引き上げることで、表面層23の表面等に当該成分を塗布形成することができる。TPAOH水溶液を使用する場合、TPAOHの濃度は、0.05M以上0.5M以下が好ましく、例えば0.1MTPAOH水溶液を用いることができる。また、表面層23上の前記成分を乾燥させると、前記成分の厚みおよび濃度むらを抑制でき、好ましい。
[0036]
2-3.水蒸気処理工程(第四工程)S3
 水蒸気処理工程(第四工程)S3は、担持工程S2で得られた部材(図3)を、加熱水蒸気雰囲気で処理する工程である。
[0037]
 容器容積あたり0.5~5体積%の水を含む水熱処理容器中に担持工程S2で得られた部材を設置し、140℃~180℃で所定時間、例えば24時間、熱処理を行うことで、種結晶周辺にゼオライト膜を形成することができる。
[0038]
 また、水熱処理容器中に入れられて加熱水蒸気雰囲気下とするために用いられる水の量は、飽和水蒸気量の2倍以上であると、成膜領域への水蒸気供給が十分行われるため好ましい。ただし、水熱処理容器中に入れられる水の量が飽和水蒸気量の20倍より大きいと、膜構造に欠陥が生じやすくなるおそれがある。飽和水蒸気量(W H2O-S)は、単位体積(1m )での加熱処理温度(T)における飽和水蒸気圧(Ps)での水蒸気質量であり、単位はg/m である。容器容積(V)内の質量とする場合W H2O-S×V(g)となる。飽和水蒸気量は、近似式より所定の温度における飽和水蒸気圧(P(t))を求め、気体の状態方程式から水蒸気量に換算することで得られる。
 飽和水蒸気圧の近似式としては、Wagner式があり、下記のようになる。
[0039]
[数1]


[0040]
 ここで、Pc=221200[hPa]:臨界圧、Tc=647.3[K]:臨界温度、x=1-(t+273.15)/Tc、A=-7.76451、B=1.45838、C=-2.7758、D=-1.23303(A~D:係数)である。
 得られた飽和水蒸気圧P(t)から気体の状態方程式:P/RT=n/Vにより単位体積あたりの水蒸気モル数が求まり、水の分子量より、飽和水蒸気量が得られる。
[0041]
 また、水蒸気処理工程S3における加熱水蒸気雰囲気下での処理時間は4時間以上であることが、結晶成長の観点で好ましい。さらに8時間以上であると、ゼオライト結晶構造が安定化してより好ましい。ただし、処理時間が36時間より長いと、結晶成分の溶出などの要因で結晶性が悪くなることおよび、製造時間が増加するおそれがある。
[0042]
 第一工程~第四工程を通して得られた形成体を、洗浄後乾燥したのち、350℃~600℃で所定時間、例えば12時間焼成することで、構造規定剤を燃焼除去し(第五工程)、分離膜20を形成することができる。
[0043]
 ところで、支持体の上にゼオライトの種結晶および構造規定剤を含有する成分を形成する方法は、ゼオライトの種結晶および構造規定剤を含有する溶液中でゼオライト膜の合成を行う水熱合成法と比較して、製造コストの面で有利であるが、ゼオライト膜の成長に必要となる原料の供給量が制限されてしまう。これに対し、本実施形態の製造方法では、支持体21の表面の近傍に、シリカを90重量%以上含む表面層23を形成する。この表面層23が疎水性のゼオライト膜22の成長に必要な原料の供給源として機能する。表面層23からのシリカの供給によりゼオライト膜22の成長が促進され、緻密性の高いゼオライト膜22が形成される。当該製造方法により得られた分離膜20は、大きい透過流束を備えつつ、優れた分離性能を発揮する。
実施例
[0044]
 以下、本開示に係る実施例を用いた評価試験の結果を示し、本開示をさらに詳細に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0045]
(例1)
 まず、例1の分離膜を次の方法に従って作製した。
[0046]
(多孔質シリカ支持体)
 外付けCVD法により、外径10mm、内径8.4mm、長さ300mm、気孔率64%、平均細孔径500nmの多孔質シリカ管を作製し、これを長さ40mmに切断した管を、多孔質シリカ支持体として使用した。
[0047]
(表面層の形成)
 多孔質シリカ支持体の作製時の外付けCVD法とは異なる条件で多孔質シリカ支持体上に表面層を形成した。図4は、例1における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の断面の構造を示す電子顕微鏡写真である。図4に示すように、表面層の構成粒子の粒子径は、支持体の構成粒子の粒子径(150-300nm)と比較して小さい(50-200nm)。
[0048]
(種結晶の調製)
 原料としてコロイダルシリカ、TPABr、水酸化ナトリウム、蒸留水を用い、SiO :TPABr:NaOH:H Oのモル比が1:0.1:0.2:40となるように混合し、室温で60分撹拌することにより種結晶生成用ゾルを得た。このゾルをポリプロピレン製容器内で100℃、144時間撹拌条件下で反応させ、MFI型ゼオライト結晶(Silicalite-1)を合成した。このゼオライト結晶を吸引濾過により回収し、熱水で洗浄後、60℃、10時間の乾燥処理を行い、粒子径約1μmのハイシリカゼオライト種結晶を得た。なお、コロイダルシリカは触媒化成工業株式会社製 Cataloid SI-30(登録商標)(SiO  30.17wt%,Na O 0.4wt%,H O 69.43wt%)を使用した。
[0049]
(種結晶担持)
 ハイシリカゼオライト種結晶0.5gをアセトン溶媒100mL中に加え30分間超音波分散させた。上下をシールした多孔質シリカ支持体内部にアセトン溶媒のみを充填し、外部にハイシリカゼオライト種結晶を分散させたアセトン溶媒を満たし、支持体内部電極と容器側電極に50Vの電圧を5分間かけることで、種結晶を支持体表面に担持させた。これを溶液から引き上げ、大気中で30分間乾燥後、300℃で6時間加熱処理し、種結晶担持多孔質シリカ支持体を作製した。
[0050]
(構造規定剤塗布、水蒸気処理)
 種結晶担持多孔質シリカ支持体の上下に封をし、0.1MのTPAOH水溶液に支持体全体を浸した後引き上げ、60℃で一時間乾燥した。その後支持体を、水が3gの範囲で入れられた水熱処理容器(容器内容積120ml)中に、水に触れないようにして設置して、160℃で24時間熱処理を行い、支持体表面にゼオライト膜を形成した。熱処理後、形成体を洗浄し、60℃で10時間乾燥した後、375℃で40時間焼成することで構造規定剤を除去し、例1の分離膜を得た。
[0051]
(例2)
 表面層の形成方法が異なる以外は、例1と同様の方法に従って、例2の分離膜を作製した。
[0052]
(表面層の形成)
 球状シリカ(堺化学工業製、Sciqasシリーズ、粒子径:100nm)を乾燥させたものを、1.2wt%の濃度で、純水中に超音波により分散させた。この分散液を不織布に含浸させて、多孔質シリカ支持体に当該不織布を密着させる、若しくはこすり付けることにより(ラビング)、シリカ粒子を担持した。その後、当該支持体を550℃で2時間熱処理して、多孔質シリカ支持体上に表面層を形成した。図5は、多孔質シリカ支持体の表面を示す電子顕微鏡写真である。図6Aおよび図6Bは、例2における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の表面及び断面を示す電子顕微鏡写真であり、図6Aが表面を、図6Bが断面を、それぞれ示す。図6Aおよび図6Bが示すように、例2において形成された表面層は支持体表面近傍の支持体中に主に形成されており、その厚みは1~7μmとなっている。
[0053]
 この多孔質シリカ支持体に、例1と同様の方法で、種結晶を担持し、構造規定剤を塗布した。次いで、例1と同様の方法で、水蒸気処理をして、最後に構造規定剤を除去して、例2の分離膜を得た。
[0054]
(例3)
 表面層の形成方法と水蒸気処理における熱処理時間とが異なる以外は、例1と同様の方法に従って、例3の分離膜を作製した。
[0055]
(表面層の形成)
 ヒュームドシリカ(日本アエロジル社、AEROSIL(登録商標) 380、粒子径:7nm)を、1.2wt%の濃度で、純水中に超音波により分散させた。この分散液を不織布に含浸させて、多孔質シリカ支持体に当該不織布をこすり付けることにより(ラビング)、シリカ粒子を担持した。その後、当該支持体を550℃で2時間熱処理して、多孔質シリカ支持体上に表面層を形成した。図7Aおよび図7Bは、例3における多孔質シリカ支持体上に表面層が形成された部材の表面及び断面を示す電子顕微鏡写真であり、図7Aが表面を、図7Bが断面を、それぞれ示す。図7Aおよび図7Bが示すように、例3において形成された表面層は支持体表面近傍の支持体中に主に形成されており、その厚みは0.5~1.5μmとなっている。
[0056]
 この多孔質シリカ支持体に、例1と同様の方法で、種結晶を担持し、構造規定剤を塗布した。次いで、水熱処理容器(容器内容積120ml)中での熱処理時間を16時間に変更した以外は、例1と同様の方法で水蒸気処理をして、最後に例1と同様の方法で構造規定剤を除去して、例3の分離膜を得た。
[0057]
(例4)
 表面層を形成しなかったこと以外は、例1と同様の方法に従って、例4の分離膜を作製した。
[0058]
(例5~例8)
 水蒸気処理における熱処理時間を変更したこと以外は、例4と同様の方法に従って、例5~例8の分離膜を作製した。例5~例8の分離膜はそれぞれ、熱処理時間が4時間、12時間、16時間、48時間であった分離膜を表す。
[0059]
(例9~例12)
 例9~例12は、水熱合成法に関する例である。原料としてコロイダルシリカ、TPABr、水酸化ナトリウム、蒸留水を用い、SiO :TPABr:NaOH:H Oのモル比が1:0.05:0.05:75となるよう混合し、室温で60分撹拌することにより膜形成用ゾルを得た。この膜形成用ゾルに、表面層を形成していない種結晶担持多孔質シリカ支持体(例1で説明した種結晶担持方法により作製した物)を浸漬し、水熱処理容器(容器内容積120ml)にて、160℃で4~24時間処理し、支持体上の種結晶を核としてゼオライト膜の合成を行った。熱処理後、形成体を洗浄し、60℃で10時間乾燥した後、375℃で60時間焼成することで構造規定剤を除去し、例9~例12の分離膜を得た。なお、例9~例12の分離膜はそれぞれ、熱処理時間が4時間、8時間、16時間、24時間であった分離膜を表す。
[0060]
(浸透気化試験(PV:Pervaporation))
 例1~例12で得られた分離膜の性能を浸透気化試験により評価した。浸透気化試験は、図8の模式図に示す評価系100により行った。評価系100は、ウォーターバス102と、供給液104と、マグネチックスターラー106と、真空計108と、サンプリングコールドトラップ110と、コールドトラップ112と、真空ポンプ114と、分離膜120と、により構成されている。エタノール10wt%水溶液(供給液104)を、ウォーターバス102中で50℃に加熱し、その中に片端封止、逆端を真空ポンプに接続した分離膜120を入れ、内部を減圧して所定時間毎にサンプリングコールドトラップ110にて透過液体を採取した。得られた減圧側の液体組成を、液体クロマトグラフィーにて測定して、エタノールの分離濃縮の状態を評価した。浸透気化試験の結果を表1および図9に示す。
[0061]
[表1]


[0062]
 表中、J totalは透過流束、α EtOHは分離係数、PSIは浸透気化分離指数を表す。J total、α EtOHおよびPSIは下記式より算出される。
[0063]
[数2]


[0064]
 この結果から、例1~例3のように、表面層を形成し、尚且つ蒸気処理を行うことで、高い分離係数と透過流束を兼ね備える分離膜を製造することができることが確認された。
[0065]
 本開示を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本開示の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。

符号の説明

[0066]
20,120:分離膜
21:無機酸化物多孔質支持体
22:ゼオライト膜
23:表面層
24:中心孔
100:評価系
102:ウォーターバス
104:供給液
106:マグネチックスターラー
108:真空計
110:サンプリングコールドトラップ
112:コールドトラップ
114:真空ポンプ
S1:表面層形成工程(第一工程)
S2:担持工程
S22:第二工程
S23:第三工程
S3:水蒸気処理工程(第四工程)

請求の範囲

[請求項1]
 無機酸化物多孔質支持体上にゼオライト膜が形成された分離膜の製造方法であって、
 前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、シリカを90重量%以上含む表面層を形成する表面層形成工程と、
 ゼオライトの種結晶及び構造規定剤を含有する成分を、前記表面層の表面、内部またはその両方に担持する担持工程と、
 前記担持工程で得られた部材を、加熱水蒸気雰囲気で処理する水蒸気処理工程と、
を含む、分離膜の製造方法。
[請求項2]
 前記表面層形成工程において、前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、シリカを主成分とする粒子を積層させることにより、前記表面層を形成する、請求項1に記載の分離膜の製造方法。
[請求項3]
 前記表面層形成工程において、粒子径が5nm以上500nm以下の粒子を前記支持体に塗布することにより、前記表面層を形成する、請求項2に記載の分離膜の製造方法。
[請求項4]
 前記表面層形成工程において、前記支持体の表面、および前記支持体の表面付近の前記支持体の内部、の少なくとも一方に、化学蒸着法により前記表面層を形成する、請求項1または請求項2に記載の分離膜の製造方法。
[請求項5]
 前記支持体が、シリカを90重量%以上含有する非晶質体からなる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。
[請求項6]
 前記成分が、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、またはテトラプロピルアンモニウムハロゲン塩および塩基を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 7A]

[ 図 7B]

[ 図 8]

[ 図 9]