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1. WO2020111049 - ANTIBACTERIAL TWISTED YARN, AND ANTIBACTERIAL YARN AND ANTIBACTERIAL FABRIC PROVIDED WITH ANTIBACTERIAL TWISTED YARN

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明 細 書

発明の名称 抗菌撚糸、並びに抗菌撚糸を備える抗菌糸及び抗菌布

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063  

符号の説明

0064  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 抗菌撚糸、並びに抗菌撚糸を備える抗菌糸及び抗菌布

技術分野

[0001]
 本発明は、抗菌性を有する抗菌撚糸、並びに抗菌撚糸を備える抗菌糸及び抗菌布に関する。

背景技術

[0002]
 特許文献1には、抗菌性を有する糸について開示されている。特許文献1に開示された糸は、外部からのエネルギーにより電荷を発生する電荷発生繊維を備える。特許文献1に開示された糸は、発生する電荷の極性が異なる複数の電荷発生繊維を備えることにより、電荷発生繊維間で電荷を発生し、抗菌効果を発揮する。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2018-090950号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 繊維を固く撚った場合、繊維同士の間の空隙は小さくなる。繊維同士の間の空隙が小さくなると、繊維同士の間で発生した電荷が糸の外部に漏れにくくなる。
[0005]
 そこで、この発明は、従来の抗菌性を有する糸よりも抗菌効果が高い抗菌撚糸、並びに抗菌撚糸を備える抗菌糸及び抗菌布を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明の抗菌撚糸は、外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維又は普通繊維からなる長繊維と、前記長繊維が普通繊維からなる場合は圧電繊維からなり、前記長繊維が圧電繊維からなる場合は圧電繊維又は普通繊維からなる短繊維と、を備えることを特徴とする。
[0007]
 従来から、電場により細菌及び真菌等の増殖を抑制することができる事が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御-科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。また、この電場を生じさせている電位差により、湿気等で形成された電流経路、又は局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌が弱体化し菌の増殖を抑制することが考えられる。
[0008]
 本発明に係る抗菌撚糸は、外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維を備えているため、繊維と繊維との間、あるいは人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、電場を生じさせる。あるいは、本発明に係る抗菌撚糸は、汗等の水分を介して、繊維と繊維との間、あるいは人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、電流を流す。
[0009]
 従って、本発明に係る抗菌撚糸は、以下のような理由により抗菌効果を発揮する。人体等の所定の電位を有する物に近接して用いられる物(衣料、履物、又はマスク等の医療用品)に適用した場合に発生する電場又は電流の直接的な作用によって、菌の細胞膜や菌の生命維持のための電子伝達系に支障が生じ、菌が死滅する、或いは菌自体が弱体化する。さらに、電場もしくは電流によって水分中に含まれる酸素が活性酸素種に変化する場合がある、又は電場もしくは電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある、これらのラジカル類を含む活性酸素種の作用により菌が死滅する、又は弱体化する。また、上述の理由が複合して抗菌効果を生じている場合もある。なお、本発明で言う「抗菌」とは、菌の発生を抑制する効果、また菌を死滅する効果の両方を含む概念である。
[0010]
 なお、外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維は、例えば光電効果を有する物質、焦電効果を有する物質、又は圧電体等を用いた繊維を含むことが考えられる。また、圧電繊維に導電体を含ませ、これを絶縁体で巻き、該導電体に電圧を加えて電荷を発生させる構成も、圧電繊維として利用できる。
[0011]
 圧電体を用いた場合には、圧電により電場を生じさせるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。また、圧電体の寿命は、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、薬剤よりもアレルギー反応が生じるおそれは低い。
[0012]
 本発明に係る抗菌撚糸は、長繊維と、短繊維と、を備える。長繊維と短繊維とを共に撚ると、長繊維は所定の方向に沿って旋回され易い。この時、短繊維は、長繊維に対してランダムな方向に沿って旋回され易い。抗菌撚糸は、長繊維及び短繊維の全ての繊維が所定の方向に沿って旋回されていないため、長繊維間、短繊維間又は長繊維と短繊維との間に空隙が生じやすくなる。抗菌撚糸は各繊維の間に空隙を多く有するため、圧電繊維が発生する電場が、抗菌撚糸の外部へ漏れ易くなる。これにより、本発明に係る抗菌撚糸の抗菌効果が向上する。

発明の効果

[0013]
 この発明によれば、従来の抗菌性を有する糸よりも抗菌効果が高い抗菌撚糸、並びに抗菌撚糸を備える抗菌糸及び抗菌布を実現することができる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 図1(A)は、第1実施形態に係る抗菌撚糸の構成を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のI-I線における断面図である。図1(C)は、第1実施形態に係る抗菌撚糸の構成を示す図であり、図1(D)は、図1(C)のII-II線における断面図である。
[図2] 図2(A)及び図2(B)は、ポリ乳酸のフィルムにおける一軸延伸方向と、電場方向と、ポリ乳酸フィルムの変形と、の関係を示す図である。
[図3] 図3(A)及び図3(B)は、抗菌撚糸に張力が加わった時に各圧電繊維に生じるずり応力(せん断応力)を図示したものである。
[図4] 図4は、抗菌撚糸における抗菌メカニズムを説明するための抗菌撚糸の一部を模式的に示した断面図である。
[図5] 図5は、第2実施形態に係る抗菌撚糸の構成を示す図である。
[図6] 図6(A)は、第3実施形態に係る抗菌撚糸の構成を示す図であり、図6(B)は、図6(A)のIII-III線における断面図である。
[図7] 図7は、抗菌糸の構成を示す一部分解図である。
[図8] 図8は、抗菌布の構成を示す図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 図1(A)は、第1実施形態に係る抗菌撚糸10の構成を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のI-I線における断面図である。図1(C)は、第1実施形態に係る抗菌撚糸20の構成を示す図であり、図1(D)は、図1(C)のII-II線における断面図である。なお、図1(A)~図1(D)においては、一例としてI-I線又はII-II線の断面において7本の糸の断面が示されているが、抗菌撚糸10を構成する糸の本数はこれに限られず、実際には用途等を鑑みて、適宜設定される。また、図1(B)においては、I-I線で切断した切断面のみを、また、図1(D)においては、II-II線で切断した切断面のみを、それぞれ示している。
[0016]
 抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20はそれぞれ、長繊維11及び短繊維12を備える。長繊維11は、外部からのエネルギー、例えば伸縮により電荷を発生する圧電繊維である。短繊維12は、圧電性を有しない普通繊維である。長繊維11は普通繊維でもよい。その場合、短繊維12は圧電繊維である。
[0017]
 長繊維11は、伸縮により電荷を発生する圧電繊維(電荷発生糸)の一例である。長繊維11は、機能性高分子、例えば圧電性ポリマーからなる。圧電性ポリマーとしては、例えばPVDF又はポリ乳酸(PLA)が挙げられる。また、ポリ乳酸(PLA)は、焦電性を有していない圧電性ポリマーである。ポリ乳酸は、一軸延伸されることで圧電性が生じる。ポリ乳酸には、L体モノマーが重合したPLLAと、D体モノマーが重合したPDLAと、がある。なお、長繊維11は、機能性高分子の機能を阻害しないものであれば、機能性高分子以外のものをさらに含んでいてもよい。
[0018]
 ポリ乳酸は、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。ポリ乳酸は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を発現する。さらに熱処理を加えて結晶化度を高めると圧電定数が高くなる。一軸延伸されたポリ乳酸からなる長繊維11は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸及び第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd 14及びd 25のテンソル成分を有する。従って、ポリ乳酸は、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に、最も効率よく電荷を発生する。
[0019]
 図2(A)及び図2(B)は、ポリ乳酸フィルム200における一軸延伸方向と、電場方向と、ポリ乳酸フィルム200の変形と、の関係を示す図である。図2(A)及び図2(B)は、ポリ乳酸をフィルム形状としたポリ乳酸フィルム200におけるモデルケースを示したものである。図2(A)に示すように、ポリ乳酸フィルム200は、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びると、紙面の裏側から表側に向く方向に電場を生じる。すなわち、ポリ乳酸フィルム200は、紙面表側では、負の電荷が発生する。ポリ乳酸フィルム200は、図2(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も、電荷を発生するが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電場を生じる。すなわち、ポリ乳酸フィルム200は、紙面表側では、正の電荷が発生する。
[0020]
 ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDF等の他の圧電性ポリマー又は圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5pC/N以上30pC/N以下程度であり、高分子の中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
[0021]
 長繊維11は、断面が円形状の繊維である。長繊維11は、例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法(例えば、紡糸工程と延伸工程を分けて行う紡糸・延伸法、紡糸工程と延伸工程を連結した直延伸法、仮撚り工程も同時に行うことのできるPOY-DTY法、又は高速化を図った超高速紡糸法などを含む)、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸(例えば、溶媒に原料となるポリマーを溶解してノズルから押し出して繊維化するような相分離法もしくは乾湿紡糸法、溶媒を含んだままゲル状に均一に繊維化するようなゲル紡糸法、又は液晶溶液もしくは融体を用いて繊維化する液晶紡糸法、などを含む)により繊維化する手法、又は圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等により製造される。なお、長繊維11の断面形状は、円形に限るものではない。例えば、長繊維11の断面形状は、異形断面、中空、サイド・バイ・サイド、2層以上の複数層のいずれでもよく、又はこれらの複合でもよい。長繊維11の単糸繊度は、0.3dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
[0022]
 短繊維12は、長繊維11と同様に断面が円形状の繊維である。短繊維12の繊維長は、800mm以下であることが好ましく、500mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。
[0023]
 短繊維12の単糸繊度は、0.3dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
[0024]
 短繊維12の断面形状は、特に限定は無い。例えば、短繊維12の断面形状は、丸断面、異形断面、中空、サイド・バイ・サイド、2層以上の複数層のいずれでもよく、又はこれらの複合でもよい。
[0025]
 短繊維12のクリンプ数は0個/インチ以上20個/インチ以下であり、クリンプの大きさ(捲縮率)が0%以上20%以下であることが好ましい。
[0026]
 これにより、以下で詳細に述べるように、短繊維12は、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の側面から外部へ露出し易くなる。
[0027]
 短繊維12は、普通繊維である。普通繊維は、圧電性のない糸である。普通繊維としては、例えば、綿又は麻等の天然繊維、ポリエステル、ポリウレタン等の化学繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、又はこれらを撚ってなる撚糸が挙げられる。短繊維12の強度や伸縮度合いは、短繊維12の素材の選択により使用態様に応じて調節することができる。
[0028]
 抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20はそれぞれ、このような、PLLAの長繊維11及び短繊維12を複数撚ってなる糸(マルチフィラメント糸)を構成する。抗菌撚糸10は、長繊維11及び短繊維12を右旋回して撚られた右旋回糸(以下、S糸と称する。)である。抗菌撚糸20は、長繊維11及び短繊維12を左旋回して撚られた左旋回糸(以下、Z糸と称する。)である。長繊維11は、所定の方向に沿って旋回され易い。従って、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20に含まれる全ての長繊維11は、同一の方向に対して沿って旋回する。
[0029]
 各長繊維11の延伸方向900は、それぞれの長繊維11の軸方向に一致している。抗菌撚糸10においては、長繊維11の延伸方向900は、抗菌撚糸10の軸方向101に対して、左に傾いた状態となる。抗菌撚糸20においては、長繊維11の延伸方向900は、抗菌撚糸20の軸方向101に対して、右に傾いた状態となる。抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の軸方向101に対する延伸方向900の傾きの角度は、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の撚り回数に依存する。抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の撚り回数が多くなるほど、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の軸方向101に対する延伸方向900の傾きの角度が大きくなる。従って、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20は、撚り回数を調整することにより、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20の軸方向101に対する長繊維11の傾きの角度を調整することができる。
[0030]
 抗菌撚糸10においては、抗菌撚糸10の軸方向101に対する長繊維11の傾きの角度は左45度に傾く。抗菌撚糸20においては、抗菌撚糸20の軸方向101に対する長繊維11の傾きの角度は右45度に傾く。すなわち、長繊維11の延伸方向900は、抗菌撚糸10の軸方向101に対して、左45度に傾いた状態であり、抗菌撚糸20の軸方向101に対して、右45度に傾いた状態である。なお、長繊維11の傾きの角度は、45度に限られない。例えば、長繊維11の傾きの角度は、抗菌撚糸10の軸方向101に対して10度以上あればよく、55度を超えない範囲であればよい。なお、通常、抗菌撚糸には様々な方向から応力が加わるため、抗菌撚糸10の軸方向101に対する長繊維11の傾きの角度は、10度未満又は55度を超える範囲であっても電荷を生じる限りはこれらの角度に限定されない。
[0031]
 図3(A)は、抗菌撚糸10に張力が加わった時に各長繊維11に生じるずり応力(せん断応力)を図示したものである。図3(B)は、抗菌撚糸20に張力が加わった時に各長繊維11に生じるずり応力(せん断応力)を図示したものである。
[0032]
 図3(A)に示すように、抗菌撚糸10に外力(張力)が掛かると、長繊維11は、図2(A)に示した状態のようになり、表面に負の電荷を生じる。抗菌撚糸10は、外力が掛かった場合に、表面に負の電荷を生じ、内側に正の電荷を生じる。一方、図3(B)に示すように、抗菌撚糸20に外力(張力)が掛かると、長繊維11は、図2(B)に示した状態のようになり、表面に正の電荷を生じる。抗菌撚糸20は、外力が掛かった場合に、表面に正の電荷を生じ、内側に負の電荷を生じる。
[0033]
 抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20の表面に生じたそれぞれの電位は、表面同士の近接個所では同電位になろうとする。それに応じて、糸の内部の電位が変化して、糸の表面と内部の電位差を保とうとする。そのため、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20は、この電荷により生じる電位差によって電場を生じる。それぞれの糸において、糸の内部と表面との間に形成される電場が空気中に漏れ出て、この電場同士が結合し、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20の近接部分には強い電場が形成される。また、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20に生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、抗菌撚糸10と該物との間に電場を生じさせる。
[0034]
 従来から、電場により細菌及び真菌の増殖を抑制することができる旨が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御-科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。また、この電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路、又は局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌が弱体化し菌の増殖を抑制することが考えられる。なお、本実施形態で言う菌とは、細菌、真菌又はダニやノミ等の微生物を含む。
[0035]
 従って、抗菌撚糸10の近傍に形成される電場によって、あるいは人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に発生する電場によって、直接的に抗菌効果を発揮する。あるいは、抗菌撚糸10は、汗等の水分を介して、近接する他の繊維又は人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に電流を流す。この電流によっても、直接的に抗菌効果を発揮する場合がある。あるいは、電流又は電圧の作用により水分に含まれる酸素が変化した活性酸素種、さらに繊維中に含まれる添加材との相互作用又は触媒作用によって生じたラジカル種、又はその他の抗菌性化学種(アミン誘導体等)によって間接的に抗菌効果を発揮する場合がある。あるいは、電場又は電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある、これにより抗菌撚糸10が、間接的に抗菌効果を発揮する場合がある。ラジカルとしては、スーパーオキシドアニオンラジカル(活性酸素)又はヒドロキシラジカルの発生が考えられる。なお、本実施形態で言う「抗菌」とは、菌の発生を抑制する効果、また菌を死滅する効果の両方を含む概念である。また、抗菌撚糸20も、抗菌撚糸10と同様に直接的又は間接的に抗菌効果を発揮する。以下、本実施形態においては、抗菌撚糸20については抗菌撚糸10と同様であるため、抗菌撚糸10についてのみ説明を行う。
[0036]
 短繊維12は長繊維11と比べて短いため、短繊維12は長繊維11とともに撚られると、短繊維12は長繊維11に比べてランダムな方向に沿って旋回され易い。すなわち、図1(A)に示すように、短繊維12は軸方向101に対して、ランダムな角度をなしている。
[0037]
 繊維のような紐状の物は、軸方向に垂直に切断された場合の断面積が最も小さく、切断面が軸方向に平行に近づくほど断面積が大きくなる。図1(B)に示すように、抗菌撚糸10の断面において、長繊維11の断面積は比較的均一であり、短繊維12の断面積は多様である。例えば、短繊維122の断面積は、長繊維11の断面積より大きい。これは、短繊維122が、軸方向101に対して45度以上の角度をなしているからである。
[0038]
 抗菌撚糸10は、長繊維11及び短繊維12の全ての繊維が所定の方向に沿って旋回されていない。このため、長繊維11同士、短繊維12同士又は長繊維11と短繊維12との間に空隙41が生じ易い。抗菌撚糸10は、各繊維同士の間に空隙41を多く有するため、長繊維11が発生する電場が、抗菌撚糸10の外部へ漏れ易くなる。これにより、抗菌撚糸10の抗菌効果が向上する。なお、水分の有無に関わらず、抗菌撚糸10の各繊維同士の間に生じる空隙41において、抗菌効果は奏される。
[0039]
 図4は、抗菌撚糸10における抗菌メカニズムを説明するための抗菌撚糸10の一部を模式的に示した断面図である。図4に示すように抗菌撚糸10は、長繊維11又は短繊維12間に生じる空隙41に、抗菌撚糸10付近の水分を吸収することができる。水分とともに抗菌撚糸10に吸収された菌等の微粒子42は、抗菌撚糸10の内部に保持されやすくなる。また、抗菌撚糸10内部の空隙41がより大きくなるほど、吸収できる水分量が増加するため、抗菌撚糸10の内部に保持される微粒子42も増加する。これにより抗菌撚糸10は、微粒子42の捕集性能に優れる。また、抗菌撚糸10の内部に保持され、かつ拡散された微粒子42に対して、長繊維11は局所的で極大な電場を与える。従って、抗菌撚糸10は、長繊維11が発生する電荷によって吸着した菌等に対して効率よく抗菌効果を生じさせることができる。
[0040]
 また、抗菌撚糸10は複数の短繊維12を備える。短繊維12は長繊維11と比べて短いため、各短繊維12は抗菌撚糸10の軸線方向の一部分にのみ存在する。概ね、各短繊維12は、抗菌撚糸10において抗菌撚糸10の軸線方向の途中で途切れている。短繊維12の端部(例えば、図1(A)及び図1(B)に示す先端121)は、抗菌撚糸10の側面から周囲へ露出している。多数の短繊維12の端部が、抗菌撚糸10の側面に露出しているため、抗菌撚糸10の側面はいわゆる毛羽立った構造となる。これにより、抗菌撚糸10は、肌触りや外観にバリエーションを持たせることができる。また、抗菌撚糸10は、毛羽立ちにより表面積が増えるため、抗菌撚糸10の側面に水分や微粒子を吸着し易くなる。これにより、抗菌撚糸10は、微粒子の捕集性能に優れ、長繊維11が発生する電荷によって吸着した菌等に対して効率よく抗菌効果を生じさせることができる。
[0041]
 短繊維12の素材である普通繊維は、長繊維11である圧電繊維よりも親水性が高い素材からなることが好ましい。すなわち、短繊維12は、PLLAより親水性が高い素材からなる。このため、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20は、PLLAのみからなる繊維よりも親水性が高くなる。抗菌撚糸10の親水性が高くなると抗菌撚糸10の内部に水分が染み込み易くなる。従って、抗菌撚糸10の捕集性能が高くなり、抗菌撚糸10の側面や空隙41に水分や微粒子を吸着し易くなる。
[0042]
 また、抗菌撚糸10の親水性が高くなると抗菌撚糸10の内部に水分が濡れ広がり易くなる。抗菌撚糸10の内部において広範囲に広がった水分は、表面積が大きくなるため気化し易い。一般的に、親水性の繊維集合体は、乾燥性が高いことが知られている。また、水が抗菌撚糸10の空隙41に入り込むと、抗菌撚糸10は膨潤する。逆に、水が気化して抗菌撚糸10の空隙41から外部へ排出されるとき、抗菌撚糸10は収縮する。抗菌撚糸10が膨潤又は収縮すると、抗菌撚糸10内部の長繊維11が伸縮する。長繊維11が伸縮するため、抗菌撚糸10の内部に局所的な高電界空間が発生する。抗菌撚糸10の内部に取り込まれた菌は、高電界空間において死滅、又は失活する。従って、抗菌撚糸10は、微粒子の捕集性能に優れ、長繊維11が発生する電荷によって吸着した菌等に対して効率よく抗菌効果を生じさせることができる。
[0043]
 なお、長繊維11及び短繊維12の太さは、それぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。また、長繊維11の太さは必ずしも均一である必要もなく、短繊維12の太さは、必ずしも均一である必要もない。
[0044]
 なお、表面に負の電荷を生じる糸としては、PLLAを用いたS糸の他にも、PDLAを用いたZ糸も考えられる。また、表面に正の電荷を生じる糸としては、PLLAを用いたZ糸の他にも、PDLAを用いたS糸も考えられる。
[0045]
 以下、第2実施形態に係る抗菌撚糸50について説明する。図5は、第2実施形態に係る抗菌撚糸50の構成を示す図である。抗菌撚糸50の説明においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明を行い、同様の点については説明を省略する。
[0046]
 図5に示すように、抗菌撚糸50は、短繊維52を備える。短繊維52は、伸縮により電荷を発生する圧電繊維である。抗菌撚糸50において、短繊維52は、長繊維11の旋回される向きに対してランダムな方向へ沿って旋回されている。
[0047]
 長繊維11の延伸方向900は、抗菌撚糸50の軸方向101に対して右に傾いた状態である。これに対して、短繊維52の延伸方向901は、抗菌撚糸50の軸方向101に対して左に傾いた状態である。このため、抗菌撚糸50に外力(張力)が係ると、長繊維11は、図2(A)に示した状態のようになり、表面に負の電荷を生じる。短繊維52は、図2(B)に示した状態のようになり、表面に正の電荷を生じる。
[0048]
 抗菌撚糸50において、正の電荷及び負の電荷が発生する。このため、長繊維11と短繊維52との間に比較的強い電場を生じさせることができる。長繊維11及び短繊維52を近接させた場合、これらの電場が空気中に漏れ出て結合し、長繊維11及び短繊維52の間で電場が形成される。すなわち、各所の電位差は、繊維同士が複雑に絡み合うことにより形成される電場、又は水分等で糸の中に偶発的に形成される電流パスで形成される回路により定義される。
[0049]
 以下、第3実施形態に係る抗菌撚糸60について説明する。図6(A)は、第3実施形態に係る抗菌撚糸60の構成を示す図であり、図6(B)は、図6(A)のIII-III線における断面図である。抗菌撚糸60の説明においては、第1実施形態の抗菌撚糸10と異なる点についてのみ説明を行い、同様の点については説明を省略する。
[0050]
 図6(A)及び図6(B)に示すように、抗菌撚糸60は、短繊維62を備える。短繊維62は、複数の繊維63からなる撚糸であり、繊維63を左旋回して撚られた左旋回糸である。繊維63は、伸縮により電荷を発生する圧電繊維である。繊維63の延伸方向903は、繊維63の軸方向に対して左に傾いた状態である。繊維63はランダムな方向に沿っている。このため、繊維63の延伸方向903は、抗菌撚糸60の軸方向101に対して様々な方向に傾いた状態である。繊維63の一部は、抗菌撚糸60の軸方向101に対して右に傾いた状態であるため、伸張されると繊維63は表面に正の電荷を生じる。従って、長繊維11と繊維63との間に比較的強い電場を生じさせることができる。
[0051]
 なお、短繊維62は、複数の圧電繊維を撚り合わせたものに限らず、芯糸又は軸芯となる空間に圧電フィルムが巻かれたカバリング糸であっても良い。これによっても同様の効果を得ることができる。この場合、芯糸は、必須の構成ではない。芯糸が無くても、圧電フィルムを螺旋状に旋回して圧電繊維(旋回糸)とすることは可能である。芯糸が無い場合には、旋回糸は、中空糸となり、保温能力が向上する。また、旋回糸そのものに接着剤を含侵させると強度を増すことができる。さらに、長繊維11として芯糸又は軸芯となる空間に圧電フィルムが巻かれたカバリング糸を用いてもよい。
[0052]
 以下、抗菌糸70について説明する。図7は、抗菌糸70の構成を示す一部分解図である。
[0053]
 図7に示すように、抗菌糸70は、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20を含む。抗菌糸70は、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が互いに左旋回して撚られた糸(Z糸)である。第1実施形態の抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20において、長繊維11の延伸方向900はそれぞれの軸方向101に対して45度傾いているが、抗菌糸70はさらに抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が撚られる。抗菌撚糸10、抗菌撚糸20、及び抗菌糸70の撚り回数を調節することにより、最終的にそれぞれの長繊維11の延伸方向900が抗菌糸70の軸方向102に対して45度傾くように調節できる。
[0054]
 なお、抗菌撚糸20はPLLAを用いたZ糸であるが、抗菌撚糸20はPDLAを用いたS糸であってもよい。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が同じS糸であるため、抗菌糸70を製造する際に糸同士の角度が調節し易くなる。
[0055]
 抗菌糸70は、表面に負の電荷を生じる抗菌撚糸10と表面に正の電荷を生じる抗菌撚糸20とが交差してなるため、糸単体で電場を生じさせることができる。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20のそれぞれの糸において、糸の内部と表面との間に形成される電場は空気中に漏れ出る。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が発生させる電場同士は結合する。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20の近接部分に、強い電場が形成される。これにより、抗菌糸70は抗菌効果を奏する。
[0056]
 撚糸の構造は複雑であり、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20の近接個所は一様ではない。また、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20に張力が加わると、近接個所も変化する。これにより、それぞれの部分において電場の強度には変化があり、対称形が崩された電場が生じることとなる。なお、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が互いに右旋回して撚られた糸(S糸)も、同様に糸単体で電場を生じさせることができる。抗菌撚糸10の撚り数、抗菌撚糸20の撚り数、又はこれらの糸を撚り合わせた抗菌糸70の撚り数は、抗菌効果を鑑みて決定される。
[0057]
 以下、抗菌布80について説明する。図8は、抗菌布80の構成を示す図である。
[0058]
 図8に示すように、抗菌布80は、複数本の抗菌撚糸10と複数本の抗菌撚糸20とを備える。抗菌布80において、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20以外の部分は、非圧電繊維である。ここで、非圧電繊維とは、一般的に糸として使用される木綿や羊毛等の天然繊維又は合成繊維等から成る電荷を発生させないものを含む。なお、非圧電繊維は、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20と比べて微弱な電荷を発生させるものを含めていてもよい。抗菌布80において、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20は、平行に交互に並んで配置された状態で、非圧電繊維と共に織り込まれている。
[0059]
 抗菌布80において、経糸が抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20、及び非圧電繊維であり、緯糸が非圧電繊維である。なお、経糸には必ずしも非圧電繊維を織り込む必要はなく、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20のみであってもよい。また、緯糸は非圧電繊維に限られず、抗菌撚糸10又は抗菌撚糸20を含んでいてもよい。
[0060]
 抗菌布80が経糸に平行な方向へ伸張されると、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20から電荷が発生する。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20のそれぞれの糸において、糸の内部と表面との間に形成される電場が空気中に漏れ出る。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20が発生させる電場同士は結合する。抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20の近接部分に、強い電場が形成される。これにより、抗菌布80は抗菌効果を奏する。
[0061]
 なお、抗菌布80としては、織物に限定されない。抗菌布80としては、例えば、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20を編糸として用いて編んだ編物、抗菌撚糸10及び抗菌撚糸20を備える不織布などが挙げられる。
[0062]
 以上の様な、抗菌撚糸10、抗菌撚糸20、抗菌撚糸50、抗菌撚糸60、抗菌糸70、又は抗菌布80は、各種の衣料、又は医療部材等の製品に適用可能である。例えば、抗菌撚糸10、抗菌撚糸20、抗菌撚糸50、抗菌撚糸60、抗菌糸70、又は抗菌布80は、マスク、肌着(特に靴下)、タオル、靴及びブーツ等の中敷き、スポーツウェア全般、帽子、寝具(布団、マットレス、シーツ、枕、枕カバー等を含む。)、歯ブラシ、フロス、浄水器、エアコン又は空気清浄機のフィルタ等、ぬいぐるみ、ペット関連商品(ペット用マット、ペット用服、ペット用服のインナー)、各種マット品(足、手、又は便座等)、カーテン、台所用品(スポンジ又は布巾等)、シート(車、電車又は飛行機等のシート)、オートバイ用ヘルメットの緩衝材及びその外装材、ソファ、包帯、ガーゼ、縫合糸、医者及び患者の服、サポーター、サニタリ用品、スポーツ用品(ウェア及びグローブのインナー、又は武道で使用する籠手等)、空調機若しくは空気清浄機等のフィルタ、あるいは包装資材、網戸等に適用することができる。
[0063]
 最後に、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

符号の説明

[0064]
10,20,50,60…抗菌撚糸
11…長繊維
12…短繊維
70…抗菌糸
80…抗菌布

請求の範囲

[請求項1]
 外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維又は普通繊維からなる長繊維と、
 前記長繊維が普通繊維からなる場合は圧電繊維からなり、前記長繊維が圧電繊維からなる場合は圧電繊維又は普通繊維からなる短繊維と、を備える、
 抗菌撚糸。
[請求項2]
 前記長繊維は、圧電繊維であり、
 前記短繊維は、普通繊維である、
 請求項1に記載の抗菌撚糸。
[請求項3]
 前記普通繊維は、前記圧電繊維よりも親水性が高い素材からなる、
 請求項1又は請求項2に記載の抗菌撚糸。
[請求項4]
 前記長繊維及び前記短繊維は、圧電繊維である、
 請求項1に記載の抗菌撚糸。
[請求項5]
 前記圧電繊維は、キラル高分子を含む、
 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の抗菌撚糸。
[請求項6]
 前記キラル高分子はポリ乳酸である、
 請求項5に記載の抗菌撚糸。
[請求項7]
 前記長繊維は、抗菌撚糸の軸方向に対し所定角度で旋回する、
 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の抗菌撚糸。
[請求項8]
 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の抗菌撚糸を複数備え、
 前記抗菌撚糸は、第1の抗菌撚糸と第2の抗菌撚糸とを含み、
 前記第1の抗菌撚糸と前記第2の抗菌撚糸とで生じる電荷の極性は互いに異なる、
 抗菌糸。
[請求項9]
 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の抗菌撚糸を備える、
 抗菌布。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]