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1. WO2020110632 - METHOD FOR PRODUCING FLAME-PROOF FIBER BUNDLE, AND METHOD FOR PRODUCING CARBON FIBER BUNDLE

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明 細 書

発明の名称 耐炎化繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009   0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019  

発明の効果

0020  

図面の簡単な説明

0021  

発明を実施するための形態

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

実施例

0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

産業上の利用可能性

0073  

符号の説明

0074  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 耐炎化繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、耐炎化繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法に関するものである。更に詳しくは、高品質な耐炎化繊維束を操業トラブルなく効率よく生産することのできる耐炎化繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 炭素繊維は比強度、比弾性率、耐熱性、および耐薬品性に優れていることから、各種素材の強化材として有用であり、航空宇宙用途、レジャー用途、一般産業用途等の幅広い分野で使用されている。
[0003]
 一般に、アクリル系繊維束から炭素繊維束を製造する方法としては、アクリル系重合体の単繊維を数千から数万本束ねた繊維束を耐炎化炉に送入し、炉内に設置された熱風供給ノズルより供給される200~300℃に熱せられた空気等の酸化性雰囲気の熱風に晒すことにより加熱処理(耐炎化処理)した後、得られた耐炎化繊維束を炭素化炉に送入し、300~1,000℃の不活性ガス雰囲気中で加熱処理(前炭素化処理)した後に、さらに1,000℃以上の不活性ガス雰囲気で満たされた炭素化炉で加熱処理(炭素化処理)する方法が知られている。また、中間材料である耐炎化繊維束は、その燃え難い性能を活かして、難燃性織布向けの素材としても広く用いられている。
[0004]
 炭素繊維束製造工程中において処理時間が最も長く、消費されるエネルギー量が最も多くなるのは耐炎化工程である。このため、耐炎化工程での生産性向上が炭素繊維束の製造において最も重要となる。
[0005]
 耐炎化工程では、長時間の熱処理を可能とするため、耐炎化を行うための装置(以下、耐炎化炉という)は、耐炎化炉外部に配設した折り返しローラーによって、アクリル系繊維を水平方向に多数回往復させて耐炎化させながら処理するのが一般的である。この繊維束の走行方向に対して略平行方向に熱風を供給する方式を平行流方式と呼び、繊維束の走行方向に対して直行方向に熱風を供給する方式を直行流方式と一般的に呼ぶ。平行流方式には、熱風の供給ノズルを平行流炉の端部に設置し、その反対側の端部に吸引ノズルを設置するエンドトゥエンド(End To End、以下、ETE)熱風方式と、熱風の供給ノズルを平行流炉の中心部に設置し、その両端部に吸引ノズルを設置するセンタートゥエンド(Center To End、以下、CTE)熱風方式がある。
[0006]
 そこで、耐炎化工程での生産性向上のためには、同時に多数の繊維束を搬送することで耐炎化炉内の繊維束の密度を上げることと、繊維束の走行速度を上げることが有効である。
[0007]
 しかしながら、炉内の繊維束の密度を上げる場合、熱風から受ける抗力のバラツキなどの外乱影響により繊維束の揺れが生じ、隣接する繊維束間の接触頻度が増す。そのため、繊維束の混繊や、単繊維切れ等が頻繁に発生することによる耐炎化繊維の品質の低下等を招く。
[0008]
 また繊維束の走行速度を上げる場合については、同じ熱処理量を得るために、耐炎化炉のサイズを大きくする必要がある。特に高さ方向のサイズを大きくすることは、建屋階層を複数に分けたり、床面の単位面積あたりの耐過重を上げる必要があるため、設備費増大につながる。そこで設備費増大を抑えて耐炎化炉のサイズを大きくするには、水平方向1パスあたりの距離(以下、耐炎化炉長という)を大きくすることで高さ方向のサイズを小さくすることが有効である。ただし、耐炎化炉長を大きくすることで、走行する繊維束の懸垂量が大きくなり、ノズルとの接触による単繊維切れや、上記繊維束の密度を上げる場合と同じように、繊維束の揺れによる隣接する繊維束間の接触、繊維束の混繊や、単繊維切れ等が頻繁に発生することよって耐炎化繊維の品質の低下等を招く。従って、耐炎化工程での生産性向上のために繊維束の密度を上げる方法、もしくは繊維束の走行速度を上げる方法のいずれにおいても耐炎化炉内を走行する繊維束の揺れを低減させる必要があるという課題があった。

先行技術文献

特許文献

[0009]
 この問題を解決するために、特許文献1では、平行流方式の耐炎化炉内に設置された空気偏向器により、熱風が走行する繊維束の平面を横切らせることで、低風速でも耐炎化処理をすることが可能となり、これにより、隣接繊維束の混繊を低減する方法が記載されている。また、特許文献2では、自重によって懸垂する繊維束の軌跡と平行になるよう、熱風供給ノズルや吸引ノズルを傾斜させることで、ノズルと繊維束との接触による単繊維切れを低減する方法が記載されている。
[0010]
 さらに、特許文献3では、前駆体アクリル繊維の交絡度を規定値以上とすることで、耐炎化炉長が長くなった場合での隣接繊維束の混繊を低減する方法が記載されている。
特許文献1 : 特表2013-542331号公報
特許文献2 : 特開2004-52128号公報
特許文献3 : 特開平11-61574号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 しかしながら、本発明者らの知見によると、特許文献1では、熱風が繊維束を横切る際に気流乱れが生じるため、低風速でも繊維束の揺れが大きくなる場合がある。また、走行する繊維束の平面に対して、熱風の傾斜角度を大きくすると、平行流方式の耐炎化炉では、繊維束の鉛直方向の繊維束ピッチが大きくなり、その結果、炉自体が大型化するため、設備費が増大する場合がある。
[0012]
 また、特許文献2では、繊維束の揺れを積極的に制御することができないため、繊維束の張力変動等の外乱が生じた場合には、瞬間的に大きな揺れが生じ、繊維束がノズルに接触して糸切れが生じる場合がある。また、熱風供給ノズルを傾斜させた構造としていることから、繊維束の鉛直方向の繊維束ピッチが大きくなり、その結果、炉自体が大型化するため、設備費が増大する場合がある。また、平行流方式のETE熱風方式に限定されており、炉内の温度制御性に優れたCTE熱風方式には適用できない。
[0013]
 また、特許文献3では繊維束間の混繊を防ぐことはできるが、交絡処理を施すことが前提であることから、これによる繊維束へのダメージが生じ、その結果、毛羽発生による品質低下が生じる場合がある。
[0014]
 よって、本発明が解決しようとする課題は、炉内における繊維束の揺れを抑制することで、品位の低下を防止できる耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 上記課題を解決するための本発明の耐炎化繊維束の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
 引き揃えたアクリル系繊維束を、熱風加熱式の耐炎化炉外の両端に設置されたガイドローラーで折り返しながら酸化性雰囲気中で熱処理する耐炎化繊維束の製造方法であって、耐炎化炉内を走行する繊維束の上方および/または下方に配置された供給ノズルから繊維束の走行方向に対して略平行方向に送風される第1の熱風の風速Vmと、繊維束が走行する繊維束通過流路を流れる第2の熱風の風速Vfとが、式1)を満足する耐炎化繊維束の製造方法、である。
[0016]
 0.2 ≦ Vf/Vm ≦ 2.0   1)。
[0017]
 ここで、本発明における「繊維束の走行方向に対して略平行方向」とは、熱処理室外側の両端に配置された対向する一組の折り返しローラーの頂点間の水平線を基準として±0.7°の範囲内の方向を指す。
[0018]
 また、本発明の炭素繊維束の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
上記の耐炎化繊維束の製造方法により得られた耐炎化繊維束を、不活性雰囲気中最高温度300~1,000℃で前炭素化処理して前炭素化繊維束を得た後、該前炭素化繊維束を不活性雰囲気中最高温度1,000~2,000℃で炭素化処理する炭素繊維束の製造方法、である。
[0019]
 ここで、本発明の「繊維束の通過流路」とは、耐炎化炉内を走行する繊維束の走行方向に沿って形成される繊維束周囲の空間であって、上下方向に隣接する熱風供給ノズルと熱風供給ノズルの間の空間、または熱風供給ノズルと熱処理室の上面の間の空間、もしくは熱風供給ノズルと熱処理室の底面の間の空間のことを指す。

発明の効果

[0020]
 本発明の耐炎化繊維束の製造方法によれば、耐炎化炉内を走行する繊維束の揺れを低減させることで、高品位の耐炎化繊維束および炭素繊維束を操業トラブルなく効率よく生産することができる。

図面の簡単な説明

[0021]
[図1] 本発明の第一の実施形態に用いられる耐炎化炉の概略断面図である。
[図2] 本発明の第一の実施形態に用いられる熱風供給ノズル周辺の部分拡大断面図である。
[図3] 本発明の第二の実施形態に用いられる耐炎化炉の概略断面図である。
[図4] 本発明の第三の実施形態に用いられる熱風供給ノズル周辺の部分拡大断面図である。
[図5] 本発明の第四の実施形態に用いられる熱風供給ノズル周辺の部分拡大断面図である。
[図6] 本発明の実施形態に用いられる熱風供給ノズル周辺の気流形態を示した模式図である。
[図7] 従来の熱風供給ノズル周辺の気流形態を示した模式図である。
[図8] 従来の熱風供給ノズル周辺の別の気流形態を示した模式図である。
[図9] 本発明の実施形態に用いられる熱風供給ノズルの第2の熱風の供給源から吹き出される熱風の概略図である。
[図10] 本発明の実施形態に用いられる熱風供給ノズルの第2の熱風の供給源の概略図である。
[図11] 本発明の第五の実施形態に用いられる熱風供給口周辺の気流形態を示した模式図である。
[図12] 従来の熱風供給口周辺の気流形態を示した模式図である。

発明を実施するための形態

[0022]
 以下、図1~図5を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、これら図面は、本発明の要点を正確に伝えるための概念図であり、図を簡略化しており、本発明に用いられる耐炎化炉は、特に制限されるものでなく、その寸法などは実施の形態に合わせて変更できる。
[0023]
 本発明は、アクリル系繊維束を酸化性雰囲気中で熱処理する耐炎化繊維束の製造方法であって、酸化性気体が内部を流れる耐炎化炉において実施される。図1に示すように、耐炎化炉1は、多段の走行域を折り返されながら走行するアクリル系繊維束2に熱風を吹きつけて耐炎化処理する熱処理室3を有する。アクリル系繊維束2は、耐炎化炉1の熱処理室3側壁に設けた開口部(図示せず)から熱処理室3内に送入され、熱処理室3内を略直線的に走行した後、対面の側壁の開口部から熱処理室3外に一旦送出される。その後、熱処理室3外の側壁に設けられたガイドローラー4によって折り返され、再び熱処理室3内に送入される。このように、アクリル系繊維束2は複数のガイドローラー4によって走行方向を複数回折り返されることで、熱処理室3内への送入送出を複数回繰り返して、熱処理室3内を多段で、全体として図1の上から下に向けて移動する。なお、移動方向は下から上でもよく、熱処理室3内でのアクリル系繊維束2の折り返し回数は特に限定されず、耐炎化炉1の規模等によって適宜設計される。なおガイドローラー4は、熱処理室3の内部に設けてもよい。
[0024]
 アクリル系繊維束2は、折り返されながら熱処理室3内を走行している間に、熱風供給ノズル5から熱風排出口7に向かって流れる熱風によって耐炎化処理されて、耐炎化繊維束となる。この耐炎化炉は、前述の通り平行流方式のCTE熱風方式の耐炎化炉となる。なお、アクリル系繊維束2は、紙面に対して垂直な方向に複数本並行するように引き揃えられた幅広のシート状の形態を有している。
[0025]
 熱処理室3内を流れる酸化性気体は空気等でよく、熱処理室3内に入る前に加熱器8によって所望の温度に加熱され、送風器9によって風速が制御された上で、熱風供給ノズル5の熱風供給口6から熱処理室3内に吹き込まれる。熱風排出ノズル14の熱風排出口7から熱処理室3外に排出された酸化性気体は排ガス処理炉(図示せず)で有毒物質を処理した後に大気放出されるが、必ずしも全ての酸化性気体が処理される必要はなく、一部の酸化性気体が未処理のまま循環経路を通って再び熱風供給ノズル5から熱処理室3内に吹き込まれてもよい。
[0026]
 なお、耐炎化炉1に用いられる加熱器8としては、所望の加熱機能を有していれば特に限定されず、例えば電気ヒーター等の公知の加熱器を用いればよい。送風器9に関しても、所望の送風機能を有していれば特に限定されず、例えば軸流ファン等の公知の送風器を用いればよい。
[0027]
 また、ガイドローラー4のそれぞれの回転速度を変更することで、アクリル系繊維束2の走行速度、張力を制御することができ、これは必要とする耐炎化繊維束の物性や単位時間あたりの処理量に応じて固定される。
[0028]
 さらに、ガイドローラー4の表層に所定の間隔、数の溝を彫り込む、あるいは所定の間隔、数のコームガイド(図示せず)をガイドローラー4直近に配置することで、複数本並行して走行するアクリル系繊維束2の間隔や束数を制御することができる。
[0029]
 生産量を拡大するためには、耐炎化炉1の幅方向の単位距離あたりの繊維束数、すなわち糸条密度を大きくする、またはアクリル系繊維束2の走行速度を大きくすればよい。一方で、糸条密度を大きくすると、隣接する繊維束の間隔が小さくなるため、上述のとおり、繊維束の揺れによる繊維束間の混繊による品位の悪化が起きやすくなる。
[0030]
 また、アクリル系繊維束2の走行速度を大きくした場合、熱処理室3での滞留時間が小さくなり、熱処理量が不足するため、トータルの熱処理長を大きくする必要がある。そのためには、耐炎化炉1の高さを大きくしてアクリル系繊維束の折返し回数を増やすか、または耐炎化炉の1パスあたりの距離(以下、耐炎化炉長)Lを長くすればよいが、設備費を抑えるためには耐炎化炉長Lを大きくするほうが好ましい。ただし、それによってガイドローラー4間の水平距離L’も長くなり繊維束が懸垂しやすくなり、揺れによる繊維束間の接触、繊維束の混繊による品位の悪化が起きやすくなる。この揺れは走行するアクリル系繊維束2が熱風から受ける抗力のバラツキなどの外乱影響に起因するものであり、この外乱影響を小さくするためには熱処理室3内を流れる熱風の風速を均一にすることが一般的である。例えば、熱風供給ノズル5に多孔板等の抵抗体およびハニカム等の整流部材(ともに図示せず)を配して圧力損失を持たせるのが好ましい。整流部材により、熱処理室3内に吹き込む熱風を整流し、熱処理室3内により均一な風速の熱風を吹き込むことができる。
[0031]
 しかしながら、熱風供給ノズル5の熱風供給口6から供給される熱風の風速バラツキを小さくするだけでは、熱処理室3内に供給される熱風によって局所的に生じる外乱を抑えられず、耐炎化繊維束の生産効率向上において重要な繊維束の揺れを小さくすることが難しいことを本発明者らは見出した。
[0032]
 本発明の耐炎化繊維束の製造方法は、上記問題に関して鋭意検討を重ね、高品質の耐炎化繊維を操業トラブルなく、効率よく生産するものである。以降に、本発明の最も重要なポイントである、繊維束の揺れを抑制することで品位低下を防止できる原理について、詳細に説明する。
[0033]
 まず、従来技術と本発明の違いを明確にするために、従来技術にて構成される熱風供給ノズル5を用いた場合の速度ベクトルについて、図7、図8を用いて説明する。図7では、引き揃えたアクリル系繊維束2を、熱風加熱式の耐炎化炉1内に走行させながら熱処理する耐炎化繊維束の製造方法において、耐炎化炉1内を走行するアクリル系繊維束2の上方および/または下方に配置された熱風供給ノズル5から繊維束の走行方向に対して略平行方向に送風される第1の熱風の風速Vmと、繊維束が走行する繊維束通過流路10を流れる第2の熱風の風速Vfとが、特に制御されておらず、第2の熱風と第1の熱風とが合流する位置である合流面13において、第2の風速Vfが、第1の熱風の風速Vmよりも非常に小さい(Vf<<Vm)場合を示している。この場合、合流面13において、第1の熱風と第2の熱風との速度差が発生し、第1の熱風が第2の熱風を巻き込むことで渦が形成され、アクリル系繊維束2の揺れが増大する。また、図8では、第2の熱風と第1の熱風とが合流する位置である合流面13において、第2の風速Vfが、第1の熱風の風速Vmよりも非常に大きい(Vf>>Vm)場合を示しており、図7に示す場合と同様に、合流面13において、第1の熱風と第2の熱風との速度差が発生し、第2の熱風が第1の熱風を巻き込むことで渦が形成され、アクリル系繊維束2の揺れが増大する。更には、第2の熱風の供給源から供給される時の風速Vnが増大すると、繊維束通過流路10において、気流の乱れが発生することから、アクリル系繊維束2の揺れが増大する。
[0034]
 これらに対し、本発明の実施形態(第一の実施形態)では、図2に示すように、引き揃えたアクリル系繊維束2を、熱風加熱式の耐炎化炉1外の両端に設置されたガイドローラー4で折り返しながら酸化性雰囲気中で熱処理する耐炎化繊維束の製造方法において、耐炎化炉内を走行するアクリル系繊維束2の上方および/または下方に配置された熱風供給ノズル5からアクリル系繊維束2の走行方向に対して略平行方向に送風される第1の熱風の風速Vmと、繊維束が走行する繊維束通過流路10を流れる第2の熱風の風速Vfとが、式1)を満足するように設定される。
[0035]
 0.2 ≦ Vf/Vm ≦ 2.0   1)。
[0036]
 ここでいう繊維束通過流路10とは、耐炎化炉1内を走行するアクリル系繊維束2の走行方向に沿って形成される繊維束周囲の空間であって、上下方向に隣接する熱風供給ノズル5と熱風供給ノズル5の間の空間、または熱風供給ノズル5と熱処理室3の上面の間の空間、もしくは熱風供給ノズル5と熱処理室3の底面の間の空間のことを指す。
[0037]
 本発明の熱風供給ノズル5を用いた場合の熱風の速度ベクトルを図6に示す。従来技術とは異なり、第1の熱風と、第2の熱風とが合流する位置である合流面13での合流形態を高精度に制御することが特徴となる。この場合、従来技術で問題であった、Vf<<Vm、もしくはVf>>Vmの際に第1の熱風と、第2の熱風の合流面13で生じる速度差に起因する渦の発生を抑えることが可能となり、繊維束の揺れを小さくすることができる。更に、第2の熱風が供給源から供給される時の風速Vnを適切な範囲とすることにより、繊維束通過流路10内での気流乱れを抑えることが可能となり、繊維束の揺れを小さくすることができる。特に、CTE熱風方式では、ガイドローラー4間の中央に供給ノズル5を配置することから、アクリル系繊維束2の懸垂量が最大となるため、耐炎化炉長の中で、最も繊維束の揺れが大きくなることが予想されるが、この位置でのアクリル系繊維束2の揺れを小さくすることが可能となる。すなわち、本発明の耐炎化方法においては、従来技術では全く考慮されていなかった第1の熱風の風速Vmと、繊維束が走行する繊維束通過流路10を流れる第2の熱風の風速Vfとの関係が上記式1)を満足した条件とすることが極めて重要となる。
[0038]
 更に、アクリル系繊維束2の揺れを極小化させるためには、第1の熱風の風速Vmと、第2の熱風の風速Vfとが、式2)を満足することが好ましい。
[0039]
 0.2 ≦ Vf/Vm ≦ 0.9   2)。
[0040]
 これにより繊維束通過流路10において生じる気流の外乱影響を極小化することができ、生産効率が向上する。
[0041]
 ここで、第2の熱風の風速Vfの調整方法は2種類あり、1つ目は第2の熱風の供給源11から送風される第2の熱風の体積流量を調整する方法、2つ目は繊維束通過流路10における供給ノズル間の距離Hを調整する方法である。ノズル間距離Hが小さすぎる場合、懸垂するアクリル系繊維束2と供給ノズルが接触し、単繊維切れが生じるおそれがある。また、ノズル間の距離Hが大きすぎる場合は、耐炎化炉1の高さ方向のサイズが大きくなってしまう。これにより建屋階層を複数に分けたり、床面の単位面積あたりの耐過重を上げたりする必要があるため、設備費増大に繋がる。加えて、ノズル間の距離Hが大きすぎる場合は、第2の熱風の風速Vfを一定の値を維持するために、多くの熱風供給量が必要となり、そのためにファンが大型化し、設備費の増大に繋がる。したがって、第2の熱風の風速Vfの調整には、1つ目の第2の熱風の供給源11から送風される熱風の体積流量を調整する方法の方が好ましい。
[0042]
 また、第2の熱風が供給源から供給される時の風速Vnは0.5m/s以上15m/s以下とすることが好ましい。この熱風の風速Vnの調整には供給源11の開口面積を調整すればよい。これにより繊維束通過流路10に生じる外乱影響を小さくすることができるため、更なる生産効率の向上が期待できる。
[0043]
 次に、本発明の耐炎化繊維束の製造方法の第二の実施形態を図3に示す。第二の実施形態において、耐炎化炉の端部に供給ノズルを設置するETE熱風方式を採用してもよい。この場合、CTE熱風方式と比べ、アクリル系繊維束2の揺れ量そのものが小さくなるが、有効炉長さを拡大した場合には、本発明の効果がより顕著となる。
[0044]
 次に、本発明の耐炎化繊維束の製造方法の第三の実施形態を図4にて説明する。熱風供給ノズル5において第2の熱風を供給する補助供給面12は、繊維束通過流路10の上下に配置されていてもよい。この場合、繊維束通過流路10に供給する風量を同等としたとき、補助供給面12が繊維束通過流路10の上方もしくは下方のいずれか片側に設置されている場合と比較し、風速を半減することができるため、アクリル系繊維束2周りの気流の乱れを少なくすることができる。
[0045]
 この第2の熱風を供給する補助供給面12の位置について、より好ましくは走行する繊維束の上方のみに配置することで、更なる繊維束の揺れを低減効果が期待できる。補助供給面が走行するアクリル系繊維束2の下方に存在する場合、繊維束が懸垂する重力方向と反対向きから熱風が繊維束に当たり、抗力を生じさせるため張力変動が大きくなるが、補助供給面を繊維束の上方とし、抗力を重力と同方向とすることで張力変動を小さくし、繊維束の揺れを小さくする効果が期待できる。
[0046]
 次に、本発明の耐炎化繊維束の製造方法の第四の実施形態を図5にて説明する。第2の熱風の供給源11は、繊維束通過流路10内に熱風供給ノズル5とは異なる新たな補助供給ノズルとしても良い。この場合、熱風供給ノズル5とは別制御となるため、風速や風向き、熱風の温度を制御しやすくなる。一方、機器費用の増大や繊維束通過流路10が狭くなることにより、補助供給ノズルと繊維束との接触が生じる懸念があるため、第一の実施形態のように、第1の熱風の供給源と第2の熱風の供給源とが同一の供給源となることがより好ましい。
[0047]
 また、本発明の第1の熱風の供給源と第2の熱風の供給源とが同一となる場合、熱風供給ノズル5から吹き出される第2の熱風の供給面は、図9に示すように、熱風供給ノズル5の底面および上面の一部、もしくは全面であってもよく、また第1の熱風供給口6の反対の面であってもよい。
[0048]
 また、本発明の第1の熱風の供給源と第2の熱風の供給源とが異なる場合、第2の熱風の供給源の設置位置は、図10で示すように、繊維束通過流路10の上方もしくは下方、あるいは第1の熱風供給口6の反対の面であってもよい。また、供給される風向きは第1の熱風と平行もしくは垂直のいずれであってもよく、複数の方向に吹出す構造としてもよい。
[0049]
 次に、本発明の耐炎化繊維束の製造方法の第五の実施形態を図11に示す。熱風供給口6の下流側の空間と繊維束通過流路とを区切る整流板16を配置し、第1の熱風と第2の熱風の合流面13の位置を熱風供給口6よりも下流側にずらしてもよい。一般的に、熱風供給口6には、熱処理室3内を流れる熱風の風速を均一にすることを目的に、パンチングメタルやハニカムなど流路の一部を封止する整流部材で構成されている。このとき、従来の技術においては図12に示すように熱風は整流部材の開口部からのみ送風され、封止部の気流を引き込みながら流れようとするため、封止部近傍には気流乱れとなる渦が形成される。この気流の乱れが、合流面13において第2の熱風に伝播し、アクリル系繊維束2周りの気流が乱れるため繊維束の揺れが増大する。
[0050]
 これに対して、図11のように整流板16を設けた場合は、熱風供給口6通過後に生じる気流乱れが均された後に合流面13に到達するため、合流面での気流乱れが低減される。
[0051]
 この気流乱れが均されるために必要な熱風供給口から合流面までの距離Sは設置されている整流部材の開口率や風速にもよるが、本発明者らの検討によれば20mm以上、300mm以下にすることが好ましい。なお、本実施形態では整流板を用いているが、合流面13の位置が熱風供給口6よりも下流側であればどのような整流部材を用いてもよく、その効果は何ら変わりない。
[0052]
 また、本発明の耐炎化繊維束の製造方法において、アクリル系繊維束の単繊維繊度が0.05~0.22texであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.17texである。この好ましい範囲とすることで、隣接する繊維束が接触した際に単繊維が絡みにくく、繊維束間の混繊を有効に防止する一方、耐炎化炉内にて単繊維内層にまで熱を十分に行き渡らせることができ、繊維束の毛羽立ちにくく、大きな混繊を有効に防止することができるので、耐炎化繊維束の品位や操業性はより優位になる。
[0053]
 上述の方法で製造した耐炎化繊維束は、不活性雰囲気中最高温度300~1,000℃で前炭素化処理して前炭素化繊維束を製造し、不活性雰囲気中最高温度1,000~2,000℃で炭素化処理して炭素繊維束が製造される。
[0054]
 前炭素化処理における不活性雰囲気の最高温度は550~800℃が好ましい。前炭素化炉内を満たす不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が好ましい。
[0055]
 前炭素化処理によって得られた前炭素化繊維は、次いで炭素化炉に送入されて炭素化処理される。炭素繊維の機械的特性を向上させるためには、不活性雰囲気中最高温度1,200~2,000℃で炭素化処理するのが好ましい。
[0056]
 炭素化炉内を満たす不活性雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウム等の公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が好ましい。
[0057]
 このようにして得られた炭素繊維束は、取り扱い性や、マトリックス樹脂との親和性を向上させるため、サイジング剤を付与してもよい。サイジング剤の種類としては、所望の特性を得ることができれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を主成分としたサイジング剤が挙げられる。サイジング剤の付与は公知の方法を用いることができる。
[0058]
 さらに炭素繊維束には、必要に応じて、繊維強化複合材料マトリックス樹脂との親和性および接着性の向上を目的とした電解酸化処理や酸化処理を行ってもよい。
[0059]
 本発明の耐炎化繊維束の製造方法において被熱処理繊維束として使用するアクリル系繊維束は、アクリロニトリル100%のアクリル繊維、又はアクリロニトリルを90モル%以上含有するアクリル共重合繊維からなるのが好適である。アクリル共重合繊維における共重合成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム金属塩、アクリルアミド、アクリル酸メチル等が好ましいが、アクリル系繊維束の化学的性状、物理的性状、寸法等は特に制限されるものではない。
実施例
[0060]
 以下に、実施例によって図面を参照しながら本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。なお、各実施例、比較例での風速および糸揺れ測定量は下記に記載の方法で行った。
(1)アクリル系繊維束の単繊維繊度の測定方法
 耐炎化炉に送入前の繊維束を採取し、JIS L 1013に準拠して行った。
(2)風速の測定方法
 日本カノマックス(株)製アネモマスター高温用風速計Model6162を用いて、1秒毎の測定値30点の平均値を用いた。熱処理室3の側面の測定孔(図示せず)から測定プローブを挿入し、熱風供給口6において、幅方向中央を含む幅方向に3点の測定値の平均値をVm、第1の熱風および第2の熱風の合流面13と繊維束が交差するライン上において、幅方向中央を含む幅方向に3点の測定値の平均値をVf、第2の熱風の供給源11において、幅方向中央を含む幅方向に3点の測定値の平均値をVnとして測定した。
(3)繊維束の振幅の測定方法
 走行する繊維束の振幅が最大になる耐炎化炉1の両側のガイドローラー4の中央に当たる位置で測定を行った。具体的には、(株)キーエンス製レーザー変位計LJ-G200を、走行する繊維束の上方あるいは下方に設置して特定の繊維束にレーザーを照射した。その繊維束の幅方向の両端の距離を糸幅とし、幅方向の一端の幅方向変動量を振幅とした。それぞれ、1回/60秒以上の頻度、0.01mm以下の精度で5分間測定し、繊維束の幅の平均値Wyおよび振幅の標準偏差σを取得して、下記式で定義される隣接繊維束間の接触率Pを算出した。
[0061]
 P=[1-p(x){-t<x<t}]×100
 ここで、Pは隣接繊維束間の接触率(%)、p(x)は正規分布N(0、σ2)の確率密度関数、xは糸揺れの中央をゼロとする確率変数である。また、tは隣接する繊維束間の隙間(mm)であり、下記式で表すことができる。
[0062]
 t=(Wp-Wy)/2
 ここで、Wpはガイドローラー等で物理的に規制されるピッチ間隔、Wyは走行する繊維束の幅である。
[0063]
 ここで、本発明における「隣接繊維束間の接触率P」とは、複数の繊維束を隣接するよう並列して走行させた時に、繊維束の幅方向の振動により、隣接する繊維束間の隙間がゼロになる確率を指す。上記繊維束の幅方向の振動の振幅は、繊維束の振幅平均を0、振幅の標準偏差をσとした時の、正規分布Nに従うと仮定している。
[0064]
 実施例、比較例における操業性、品質の判定基準はそれぞれ次のとおりとした。
(操業性)
 優:混繊や繊維束切れ等のトラブルが1日あたり平均ゼロ回であり、極めて良好なレベル。
[0065]
 良:混繊や繊維束切れ等のトラブルが1日あたり平均数回程度で、十分に連続運転を継続できるレベル。
[0066]
 不可:混繊や繊維束切れ等のトラブルが、1日あたり平均数十回起こり、連続運転を継続できないレベル。
(品質)
 優:耐炎化工程を出た後に目視で確認できる繊維束上の10mm以上の毛羽の数が平均数個/m以下であり、毛羽品位が工程での通過性や製品としての高次加工性に全く影響しないレベル。
[0067]
 良:耐炎化工程を出た後に目視で確認できる繊維束上の10mm以上の毛羽の数が平均10個/m以下であり、毛羽品位が工程での通過性や製品としての高次加工性にほとんど影響しないレベル。
[0068]
 不可:耐炎化工程を出た後に目視で確認できる繊維束上の10mm以上の毛羽の数が平均数十個/m以上であり、毛羽品位が工程での通過性や製品としての高次加工性に悪影響を与えるレベル。
[実施例1]
 図1は本発明の熱処理炉を、炭素繊維製造用の耐炎化炉として使用する場合の一例を示す概略構成図である。耐炎化炉1の両側のガイドローラー4の中央に第1および第2の熱風の供給源となる熱風供給ノズル5が耐炎化炉1内を走行するアクリル系繊維束2を挟んで上下に設置されている。熱風供給ノズル5には繊維束の走行方向もしくは繊維束の走行方向と反対の方向とに、第1の熱風を供給する熱風供給口6と第2の熱風を供給するための補助供給面12を各熱風供給ノズル5の上面に設けた。また、熱風供給口6および補助供給面12には幅方向の風速が均一になるよう、開口率30%の多孔板を設けた。
[0069]
 炉内を走行するアクリル系繊維束2については単繊維繊度0.11texである単繊維20,000本からなる繊維束を100本引き揃え、耐炎化炉1で熱処理することにより耐炎化繊維束を得た。また、耐炎化炉1の熱処理室3両側のガイドローラー4間の水平距離L’は15mとし、ガイドローラー4は溝ローラーとし、ピッチ間隔Wpは8mmとした。この時の耐炎化炉1の熱処理室3内の酸化性気体の温度は240~280℃とし、酸化性気体の水平方向の風速を6m/sとした。繊維束の走行速度は、耐炎化処理時間が十分に取れるよう、耐炎化炉長Lに合わせて1~15m/分の範囲で調整し、工程張力は0.5~2.5g/texの範囲で調整した。
[0070]
 得られた耐炎化繊維束を、その後、前炭素化炉において最高温度700℃で焼成した後、炭素化炉において最高温度1,400℃で焼成し、電解表面処理後サイジング剤を塗布して、炭素繊維束を得た。
[0071]
 この時に耐炎化炉1の熱処理室3内の最上段を走行する繊維束の熱処理室中央での繊維束の幅Wyと振幅の標準偏差σを実測した。結果は表1に記載の通り、Vf/Vm=1.5、補助供給面12での風速が16.0m/sのとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは16.4%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は少なく、良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が少ない良好な品質であった。
[実施例2]
 補助供給面12の風速を2.8m/sとした以外は実施例1と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは10.3%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[実施例3]
 補助供給面12を熱風供給ノズル5の上面ではなく下面に設け、それ以外は実施例2と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは5.6%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[実施例4]
 Vf/Vm=0.7とした以外は実施例3と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは3.1%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[実施例5]
 Vf/Vm=0.5とした以外は実施例3および4と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは0.1%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[実施例6]
 Vf/Vm=0.25とした以外は実施例3および4、5と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは1.0%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[実施例7]
 熱風供給口6の下流側に整流板を配置し、熱風供給口から合流面13までの距離Sを100mmとし、それ以外は実施例3と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは2.2%であった。上記の条件において、アクリル繊維束の耐炎化処理中には、繊維束間の接触による混繊や繊維束切れ等は一切発生せず、極めて良好な操業性で耐炎化繊維束を取得した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が無い極めて良好な品質であった。
[比較例1]
 比較例1としてVf/Vm=2.5、補助供給面12での風速が15.0m/sとし、それ以外は実施例1と同様にした。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは21.2%となり、繊維束の耐炎化処理中に、繊維束間の接触による混繊や、単繊維切れが多発した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が多く劣悪な品質であった。
[比較例2]
 比較例2として補助供給面12を塞ぎ、Vf/Vm=0.0とし、繊維束振幅の実測を行った。このとき、統計的に算出した隣接繊維束間の接触率Pは20.7%となり、繊維束の耐炎化処理中に、繊維束間の接触による混繊や、単繊維切れが多発した。また、得られた耐炎化繊維束ならびに炭素繊維束を目視確認した結果、毛羽等が多く劣悪な品質であった。
[0072]
[表1]


産業上の利用可能性

[0073]
 本発明は、耐炎化繊維束の製造方法ならびに炭素繊維束の製造方法に関するもので、航空機用途、圧力容器・風車等の産業用途、ゴルフシャフト等のスポーツ用途等に応用できるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。

符号の説明

[0074]
1 耐炎化炉
2 アクリル系繊維束
3 熱処理室
4 ガイドローラー
5 熱風供給ノズル
6 熱風供給口
7 熱風排出口
8 加熱器
9 送風器
10 繊維束通過流路
11 第2の熱風の供給源
12 補助供給面
13 合流面
14 熱風排出ノズル
15 第1の熱風の供給源
16 整流板
L 耐炎化炉長(1パスの耐炎化有効長)
L’ガイドローラー間の水平距離
H ノズル間の距離
Wp 物理的に規制されるピッチ間隔
Wy 走行する繊維束の幅
t 隣接する繊維束間の隙間
S 熱風供給口から合流面までの距離

請求の範囲

[請求項1]
 引き揃えたアクリル系繊維束を、熱風加熱式の耐炎化炉外の両端に設置されたガイドローラーで折り返しながら酸化性雰囲気中で熱処理する耐炎化繊維束の製造方法であって、耐炎化炉内を走行する繊維束の上方および/または下方に配置された供給ノズルから繊維束の走行方向に対して略平行方向に送風される第1の熱風の風速Vmと、繊維束が走行する繊維束通過流路を流れる第2の熱風の風速Vfとが、式1)を満足する耐炎化繊維束の製造方法。
 0.2 ≦ Vf/Vm ≦ 2.0   1)
[請求項2]
 第1の熱風の風速Vmと、第2の熱風の風速Vfとが、式2)を満足する請求項1に記載の耐炎化繊維束の製造方法。
 0.2 ≦ Vf/Vm ≦ 0.9   2)
[請求項3]
 前記第2の熱風が供給源から供給される時の風速Vnが0.5m/s以上15m/s以下の範囲にある請求項1または2に記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項4]
 前記第2の熱風の供給源が、前記繊維束が走行する繊維束通過流路の上方のみに存在する請求項1~3のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項5]
 第1の熱風の供給源と、第2の熱風の供給源とが同一である請求項1~4のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項6]
 前記供給ノズルが、繊維束走行方向における耐炎化炉内の中央に配置され、耐炎化炉内の両端の方向に向けてそれぞれ第1の熱風を供給する請求項1~5のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項7]
 前記供給ノズルから供給される第1の熱風と第2の熱風の合流面の位置が第1の熱風供給口よりも下流側となる請求項1~6のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項8]
 熱処理前のアクリル系繊維束の単繊維繊度が0.05~0.22texである、請求項1~7のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法。
[請求項9]
 請求項1~8のいずれかに記載の耐炎化繊維束の製造方法により得られた耐炎化繊維束を、不活性雰囲気中最高温度300~1,000℃で前炭素化処理して前炭素化繊維束を得た後、該前炭素化繊維束を不活性雰囲気中最高温度1,000~2,000℃で炭素化処理する炭素繊維束の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]