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1. WO2020110583 - TOXIC SUBSTANCE ANALYSIS SYSTEM AND PROGRAM FOR TOXIC SUBSTANCE ANALYSIS

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明 細 書

発明の名称 有害物質分析システム及び有害物質分析用プログラム

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010  

先行技術文献

非特許文献

0011  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034  

発明の効果

0035   0036  

図面の簡単な説明

0037  

発明を実施するための形態

0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081  

符号の説明

0082  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25  

明 細 書

発明の名称 : 有害物質分析システム及び有害物質分析用プログラム

技術分野

[0001]
 本発明は、試料に含まれる特定の有害物質を定量分析するための分析システム、及び、その分析の際に用いられる、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムに関し、さらに詳しくは、分析装置として液体クロマトグラフ質量分析装置を用いた分析システム及びコンピュータプログラムに関する。本発明は特に、原糸、中間繊維加工品、最終繊維加工品を含む、各種繊維製品中の有害物質の検査に好適である。

背景技術

[0002]
 私たちが日常的に着用する衣類等の繊維製品には様々な化学物質が含まれており、その中には、健康被害をもたらすような、人体に対し有害性を有する物質もある。本明細書では、人体に対し有害性が明らかである物質のほか、有害である可能性がある物質、化学反応等によって有害である物質を生成する可能性がある物質を含めて、有害物質という。
[0003]
 繊維製品中の有害物質としてよく知られているものの一つは、合成染料として使用されている物質である。合成染料は低価格でありながら発色性や定着性が良好であるため、繊維製品や皮革製品の着色に広く使用されている。現在、世界で使用されている合成染料の多くはアゾ化合物を主体とするアゾ染料である。アゾ化合物は、その構造中に、R-N=N-R’という二つ有機基を連結するアゾ基を一つ以上持つ有機化合物の総称であり、2000以上もの種類がある。その中の一部は、人の皮膚や腸内の細菌、或いは人体内の酵素などの働きにより還元され、発ガン性を有する又は発ガン性が疑われる芳香族第一級アミン(Primary Aromatic Amines、以下、慣用に従って「PAAs」という場合がある)を生成することが知られている。そのため、そうした発ガン性がある又は発ガン性が疑われるPAAs、及びそれを生成するアゾ化合物を含むアゾ染料は、EU(European Union)をはじめとする、各国や各地域で、繊維製品やそのほかの日用品等への使用が規制されている。例えばEUでは22物質、中国や日本ではさらに2つの物質を加えた24物質を特定PAAsとして指定し、その使用を規制している。
[0004]
 また、繊維製品に含まれる別の有害物質として、有機フッ素化合物(以下、慣用に従って「PFCs」という場合がある)がある。PFCsは撥水性や撥油性を有し、熱的及び化学的な安定性も良好であることから、撥水撥油剤として繊維製品に使用されている。PFCsには炭素鎖の長さが相違する複数の同族体が存在する。特に炭素数が8であるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とパーフルオロオクタン酸(PFOA)は自然環境中で分解されにくく、残留性や生物蓄積性を有する。一方で、PFCsは、実験動物を用いた投与実験において、発ガン性や発達障害等を生じることが報告されている。こうしたことから、PFOSやその塩、さらにその関連物質は、欧米諸国を中心に、近年、製造や使用が禁止されている。
[0005]
 また、繊維製品を洗浄する際に、界面活性剤としてアルキルフェノールエトキシレート(APEO)が用いられているが、APEOが分解されるとアルキルフェノール(AP)が生成される。APは、人体内に存在するエストロゲン受容体と相互作用して天然ホルモンと同じような作用を示し、内分泌撹乱を引き起こす(即ち、環境ホルモンである)ことが知られている。現在、繊維製品に対して使用されているAPEOの殆どがノニルフェノールエトキシレート(NPEO)であることから、EUでは、近年、NPEOが使用規制の対象に加えられている。
[0006]
 上述したように、繊維製品においては様々な有害物質の使用が規制されたり禁止されたりしており、その規制はますます強化される傾向にある。そのため、繊維製品中の有害物質の検査の重要性は近年、一段と増している。
[0007]
 EUでは、上記有害物質を含む化学物質の登録、評価、認可、及び制限に関する規則はREACH規則で定められており、EUへの輸入品はREACH規則に則ったものである必要がある。また、現在、繊維の原材料から最終繊維製品までを広く網羅した繊維製品中の有害物質の世界的な評価基準としては、OEKO-TEX(登録商標) Associationが推進している「STANDARD 100 by OEKO-TEX」がよく知られており(非特許文献1参照)、この基準に適合していることの認証を受けることが製造業者等に求められるようになってきている。
[0008]
 従来、上述したような有害物質の定量的な検査には、ガスクロマトグラフ装置(GC)、液体クロマトグラフ装置(LC)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)などが一般に利用されている(非特許文献2、3等参照)。
[0009]
 しかしながら、規制対象となっている特定PAAsやアゾ化合物(アゾ染料)に限っても、従来の分析手法では次のような問題がある。
 (1)全般的に検出感度が低いうえに、一部の物質については感度がかなり低い。
 (2)夾雑物質の影響が十分に除去できず、目的物質の分析の精度や感度が夾雑物質の影響を受け易い。
 (3)物質毎に分析装置や分析条件を変えてそれぞれ分析を行う必要があるために、分析時間が長くなり、非効率的である。
[0010]
 また、特定PAAsやアゾ化合物に加えて、PFCs、AP、APEOなども合わせて検査しようとすると、様々な種類の分析装置を用意し、物質毎に分析条件を最適化して何度も分析を繰り返す必要があり、非常に煩雑で手間が掛かる。このように、現状では、繊維製品に含まれる多くの種類の有害物質を、高い精度や感度で以て、且つ効率良く検査する手法が十分に確立されているとはいえない。

先行技術文献

非特許文献

[0011]
非特許文献1 : "What is STANDARD 100 by OEKO-TEX?"、[online]、[2018年10月15日検索]、インターネット<URL: https://www.oeko-tex.com/en/consumer/what_is_standard100/what_is_standard100.xhtml>
非特許文献2 : "Developing a method for the analysis of Azo Dyes using the Agilent 1290 Infinity LC Method Development System and the Agilent Method Scouting Wizard software"、[online]、[2018年10月15日検索]、インターネット<URL: https://www.agilent.com/cs/library/applications/5990-7472EN.pdf>
非特許文献3 : "Excellent Resolution of EU-Regulated Azo Dye Aryl Amines by GC-MS on the Rxi-35Sil MS GC Column"、[online]、[2018年10月18日検索]、インターネット<URL: http://www.restek.com/Technical-Resources/Technical-Library/General-Interest/GN_GNAR2515-UNV>

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0012]
 近年、特に繊維製品の主要な輸入国・地域であるEU等では有害物質の使用規制がますます厳格化されており、繊維製品の輸出国では繊維製品中の有害物質の検査の必要性が高まっている。しかしながら、現状では、分析に時間が掛かるために検査に多大なコストが掛かり、繊維製品の価格が高くなる、或いは、十分な利益が得られなくなるという問題がある。また、精度や感度が低い分析では検査の信頼性が低下し、繊維製品の輸出が難しくなるという問題もある。
[0013]
 なお、上述した有害物質の多くは、工場排水、河川等の環境水、或いは繊維製品以外の各種の日用品や玩具類などにおいても、基準の差異はあるものの、概ね禁止や規制の対象である。そのため、そうしたものを対象とする有害物質の検査においても事情はほぼ同じである。
[0014]
 本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、繊維製品を始めとする、様々な試料に含まれる各種の有害物質を、高い精度及び感度で以て、且つ効率良く定量的に検査することができる有害物質分析システム、及び有害物質分析用プログラムを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 上記課題を解決するために成された本発明に係る有害物質分析システムは、分析装置を用いて試料中の有害物質を定量的に分析する有害物質分析システムであって、
 前記分析装置として、分析対象の試料に含まれる物質を分離する液体クロマトグラフと、該液体クロマトグラフで時間的に分離された試料中の物質をイオン化し、その中の特定のイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するタンデム型質量分析装置と、を組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を用い、
 a)次の6種類の測定メソッドのうちの2種類以上の測定メソッドに従った分析を実行するための制御情報として、少なくとも、前記液体クロマトグラフにおける複数の移動相についてのグラジエント条件と、前記タンデム型質量分析装置において各物質を検出するための保持時間及び多重反応モニタリングトランジションと、が格納されている情報格納部と、
  a1)芳香族第一級アミンである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第1の測定メソッド、
  a2)液体クロマトグラフの移動相として第1の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第2の測定メソッド、
  a3)液体クロマトグラフの移動相として前記第1の移動相とは異なる第2の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物であり、前記第2の測定メソッドによる分析対象の物質とは相違する特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第3の測定メソッド、
  a4)有機フッ素化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第4の測定メソッド、
  a5)アルキルフェノールエトキシレートである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第5の測定メソッド、
  a6)アルキルフェノールである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第6の測定メソッド、
 b)前記情報格納部に格納されている前記2種類以上の測定メソッドの識別子を表示部の画面上に表示し、そのうちの1種類の測定メソッドをユーザに選択させるメソッド選択支援部と、
 c)前記メソッド選択支援部によりユーザが選択した測定メソッドの制御情報を前記情報格納部から読み出し、その読み出された制御情報に従って、前記液体クロマトグラフ及び前記タンデム型質量分析装置の動作を制御する分析制御部と、
 を備える。
[0016]
 また本発明に係る有害物質分析用プログラムは、試料中の有害物質を定量的に分析するために、分析対象の試料に含まれる物質を分離する液体クロマトグラフと、該液体クロマトグラフで時間的に分離された試料中の物質をイオン化し、その中の特定のイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するタンデム型質量分析装置と、を組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置の動作を制御するとともに、該装置による分析により得られたデータを処理するコンピュータに搭載されるコンピュータプログラムであって、
 a)次の6種類の測定メソッドのうちの2種類以上の測定メソッドに従った分析を実行するための制御情報として、少なくとも、前記液体クロマトグラフにおける複数の移動相についてのグラジエント条件と、前記タンデム型質量分析装置において各物質を検出するための保持時間及び多重反応モニタリングトランジション、とが収録されているメソッドパッケージを含み、
  a1)芳香族第一級アミンである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第1の測定メソッド、
  a2)液体クロマトグラフの移動相として第1の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第2の測定メソッド、
  a3)液体クロマトグラフの移動相として前記第1の移動相とは異なる第2の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物であり、前記第2の測定メソッドによる分析対象の物質とは相違する特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第3の測定メソッド、
  a4)有機フッ素化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第4の測定メソッド、
  a5)アルキルフェノールエトキシレートである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第5の測定メソッド、
  a6)アルキルフェノールである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第6の測定メソッド、
 前記コンピュータを、
 b)前記メソッドパッケージに収録されている前記2種類以上の測定メソッドの識別子を表示部の画面上に表示し、そのうちの1種類の測定メソッドをユーザに選択させるメソッド選択支援機能部と、
 c)前記メソッド選択支援機能部によりユーザが選択した測定メソッドの制御情報を前記メソッドパッケージから取得し、取得した制御情報に従って、前記液体クロマトグラフ及び前記タンデム型質量分析装置の動作を制御する分析制御機能部と、
 して動作させるものである。
[0017]
 ここで、「1回の分析」とは、液体クロマトグラフのインジェクタで液体試料を移動相中に注入したあと、該試料中の種々の物質を検出するための液体クロマトグラフィ質量分析が終了するまでの、一連の分析のことである。
[0018]
 本発明に係る有害物質分析用プログラムは、MS/MS分析が可能である液体クロマトグラフ質量分析装置の動作を制御するとともにデータ処理を行うコンピュータ(汎用パーソナルコンピュータ又は装置に組み込まれた専用のコンピュータ)を動作させるプログラムである。こうしたプログラムは、一般に、CD-ROM、DVD-ROM、メモリカード、USBメモリ(ドングル)などの記録媒体に収録されてユーザに提供されるか、或いは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザに提供される。もちろん、ユーザがシステムを新規に購入する場合、該システムに含まれるコンピュータに本発明に係る有害物質分析用プログラムを予め組み込んでおくこともできる。
[0019]
 本発明において、第2の測定メソッド及び第3の測定メソッドは、EU等の各国、地域で使用が規制されているアゾ染料を網羅的に分析することが主たる目的のメソッドである。第2の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図4及び図5に列挙されている44種類の成分(アゾ染料)を含むものとすることができる。また、第3の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図6に列挙されている7種類の成分(アゾ染料)を含むものとすることができる。場合によっては、これら44種類及び7種類の成分の幾つかは分析対象から外れていてもよい。
[0020]
 第1の測定メソッドは、上記アゾ染料に含まれるアゾ化合物から生成される芳香族第一級アミンのうち、EU等の各国、地域で使用が規制されている特定の芳香族第一級アミンを網羅的に分析することが主たる目的のメソッドである。第1の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図3に列挙されている24種類の成分を含むものとすることができる。
[0021]
 第4の測定メソッドは、EU等の各国、地域で使用が規制又は禁止されている特定の有機フッ素化合物を網羅的に分析することが主たる目的のメソッドである。第4の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図7に列挙されている24種類の成分を含むものとすることができる。
[0022]
 第5の測定メソッドは、EU等の各国、地域で使用が規制されている特定のアルキルフェノールエトキシレートを網羅的に分析することが主たる目的のメソッドである。第5の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図9に示されている2種類の成分を含むものとすることができる。
[0023]
 第6の測定メソッドは、アルキルフェノールエトキシレートが分解されることで生成されるアルキルフェノールを網羅的に分析することが主たる目的のメソッドである。第6の測定メソッドにおける分析の対象である特定の複数の物質は、図8に列挙されている4種類の成分を含むものとすることができる。
[0024]
 本発明では、上記6種類の測定メソッドのうちの2種類以上の測定メソッドが予め情報格納部に格納されている。メソッド選択支援部は、その2種類以上の測定メソッドのメソッド名などの一覧を表示部の画面上に表示し、ユーザは分析目的等に応じて、そのうちの1種類の測定メソッドを選択する。なお、測定メソッド毎に、液体クロマトグラフに使用する移動相の種類が指定されており、また、場合によっては、カラムの種類も測定メソッドによって異なる。そこで、ユーザは、分析対象の試料を用意するほか、各測定メソッドに対応して指定されている移動相を用意すると共に、必要に応じてカラムを付け替える。
[0025]
 こうした分析準備が整った状態でユーザが所定の操作を行うと、分析制御部は、選択された測定メソッドの制御情報、具体的には、グラジエント溶離のプログラムや、物質毎の保持時間と多重反応モニタリング(MRM)トランジション(プリカーサイオンのm/z値、プロダクトイオンのm/z値)、コリジョンエネルギなどを取得し、その制御情報に従って、液体クロマトグラフ及びタンデム型質量分析装置の動作をそれぞれ制御する。それにより、選択された測定メソッドで分析対象としている複数の成分が試料中に含まれる場合、それら成分は液体クロマトグラフのカラムを通過する間に適宜に分離され、タンデム型質量分析装置において順次検出される。
[0026]
 これにより、選択された測定メソッドで分析対象としている複数の成分にそれぞれ対応する抽出イオンクロマトグラム(慣用的に「マスクロマトグラム」ともいう)が作成される。試料中に或る成分が含まれる場合、抽出イオンクロマトグラムにはピークが現れるから、そのピークの面積を算出し、予め作成しておいた検量線を参照して、ピーク面積から成分の含有濃度又は量を計算することができる。例えば、使用量が規制されている成分の場合には、算出された成分量を規制値と比較することで、その成分が許容範囲内であるか否かを判定することができる。一方、使用が禁止されている成分の場合には、該成分が検出されたか否かを判定すればよい。
[0027]
 本発明では、好ましくは、少なくとも第2及び第3の測定メソッドについての制御情報を情報格納部に格納しておき、メソッド選択支援部は、第2又は第3の測定メソッドのいずれか一つを選択することができる構成とするとよい。
[0028]
 この構成によれば、EU等の各国、地域で使用が規制されているアゾ染料を、2回の分析の実行によって網羅的に調べることができる。
[0029]
 また、さらに第1の測定メソッドについての制御情報も情報格納部に格納しておき、メソッド選択支援部は、第1乃至第3の測定メソッドのいずれか一つを選択することができる構成とすると、より好ましい。
[0030]
 この構成によれば、発ガン性がある又は発ガン性が疑われる特定の芳香族第一級アミンとそれを生成するアゾ染料との両方、つまりは合成染料に関連する殆どの有害物質を、3回の分析の実行によって網羅的に調べることができる。
[0031]
 また、繊維製品を対象とする有害物質の検査を目的とする場合、上記6種類の測定メソッドの全てについての制御情報を情報格納部に格納しておき、メソッド選択支援部は、該6種類の測定メソッドのいずれか一つを選択することができる構成とすると、さらに好ましい。
[0032]
 この構成によれば、繊維製品に、合成染料、撥水撥油剤、若しくは界面活性剤として使用される、又は使用される可能性がある様々な有害物質を、同じ分析装置を用いた6回の分析の実行によって、網羅的に調べることができる。
[0033]
 なお、本発明に係る有害物質分析システムの一態様として、
 前記タンデム型質量分析装置はトリプル四重極型質量分析装置であり、
 前記情報格納部に格納される制御情報は、物質毎に定められた一つ以上のMRMトランジションに対応するコリジョンエネルギを含む構成とすることができる。
 コリジョンエネルギをMRMトランジション毎に最適化することで、高い感度で目的の物質を検出することができる。
[0034]
 また、トリプル四重極型質量分析装置に代えて四重極-飛行時間(Q-TOF)型質量分析装置を使用し、得られたプロダクトイオンスペクトルデータの中から特定のm/z値を有するプロダクトイオンの強度データを抽出することで、MRM測定と同様の、特定のMRMトランジションに対するイオン強度データを取得してもよい。

発明の効果

[0035]
 本発明では、試料に含まれる、アゾ染料などの構造が比較的類似した物質を液体クロマトグラフで分離したうえで、さらに高いイオン選択性を示すMS/MS分析により検出している。それにより、試料に含まれる夾雑物質の影響を除去して、目的とする有害物質を、高い精度及び感度で検出することができる。また、合成染料、撥水撥油剤、界面活性剤などの同じ用途の複数の化合物を、同じ測定メソッドの下で一斉に分析することができ、また、それら様々な有害物質を1台の分析装置を用い測定メソッドを変更するだけで分析することができる。それにより、例えば繊維製品中の主要な有害物質を網羅的に分析する場合でも、従来の分析手法に比べて、総合的な分析時間を短縮することができ、効率的な検査が可能である。
[0036]
 さらにまた本発明によれば、同じ分析装置を用い、ユーザが所望する特定の種類の有害物質に限った分析も選択的に行うことができる。それにより、様々な種類の分析装置を用意する必要がなく、総合的な分析コストの引き下げに有利である。また、検査対象の物質によって分析装置を変える必要もないので、分析装置の操作が煩雑になるのを避けることができる。それにより、装置のオペレータの負担を軽減することができ、また操作のミス等も減らすことができる。

図面の簡単な説明

[0037]
[図1] 本発明の一実施例である有害物質分析システムの概略構成図。
[図2] 本実施例の有害物質分析システムにおけるコンピュータに搭載される制御・処理ソフトウェアの内容を示す概略図。
[図3] 特定芳香族アミン一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図4] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図5] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図6] アゾ染料第2群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図7] PFCs一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図8] AP一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図9] APEO一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図10] 特定芳香族アミン一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図11] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図12] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図13] アゾ染料第2群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図14] PFCs一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図15] AP一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図16] APEO一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図17] APEO一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図18] 特定芳香族アミン一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図19] アゾ染料第1群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図20] アゾ染料第2群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図21] PFCs一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図22] AP一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図23] APEO一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図24] APEO一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図25] APEO一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。

発明を実施するための形態

[0038]
 本発明の一実施例である有害物質分析システムについて、添付図面を参照して説明する。
 図1は本実施例の有害物質分析システムの概略構成図である。この有害物質分析システムは、原則として、繊維製品中の有害物質を検査するためのシステムであるが、繊維製品以外の、例えば日用品、玩具、河川水などの環境水などを対象とする検査に利用することもできる。
[0039]
 図1に示すように、この有害物質分析システムは、測定部10として、液体クロマトグラフ(LC)部11とトリプル四重極型質量分析(MS/MS)部12とから成る液体クロマトグラフ質量分析装置を備える。また、LC部11とMS/MS部12の動作をそれぞれ制御する制御部22と、MS/MS部12で取得されたデータを処理するデータ処理部21と、ユーザインターフェイスである入力部27及び表示部28と、を含む。
[0040]
 図示しないものの、LC部11は、それぞれ異なる移動相が収容された複数の移動相容器、2種類の移動相を所定の混合比率で混合するミキサ、ミキサで混合された移動相を送給する送液ポンプ、移動相に所定量の液体試料を注入するインジェクタ、液体試料中の物質を時間方向に分離するカラム、及び、カラムを温調するカラムオーブン、などを含む。
[0041]
 また、MS/MS部12は、同じく図示しないものの、導入された液体試料中の物質をエレクトロスプレーイオン化(ESI)法によりイオン化するESIイオン源、特定のm/z値を有するイオンをプリカーサイオンとして選択的に通過させる前段四重極マスフィルタ、プリカーサイオンを衝突誘起解離(CID)により解離するコリジョンセル、CIDにより生成された各種のプロダクトイオンの中で特定のm/z値を有するプロダクトイオンを選択的に通過させる後段四重極マスフィルタ、及び、イオンを検出するイオン検出器、などを含む。
[0042]
 制御部22は、機能ブロックとして、LC制御部23、MS制御部24、分析条件設定部25、メソッド記憶部26などを含む。また、データ処理部21は、MS/MS部12で得られたデータに基づいて、既定の複数の有害物質それぞれについて定量値(含有量又は濃度値)を算出する。また、その定量値が予め決められている規制値を超えているか否かを判定し、その判定結果を定量値と共に出力する。
[0043]
 なお、制御部22及びデータ処理部21の実体はパーソナルコンピュータであるので、図1では、これを符号20で示している。パーソナルコンピュータにインストールされた所定の制御・処理用プログラムが該コンピュータにおいて実行されることにより、データ処理部21や制御部22の各機能が達成される。
[0044]
 図2は、本システムを構成するパーソナルコンピュータ20にインストールされるアプリケーションソフトウェア及びメソッドパッケージの内容を示す概略図である。上記アプリケーションソフトウェア及びメソッドパッケージは、一般に、CD-ROM、DVD-ROM、メモリカード、USBメモリ(ドングル)などの記録媒体に収録されてユーザに提供されるか、或いは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザに提供される。また、ユーザがシステムを新規に購入する場合には、該システムに含まれるコンピュータに上記アプリケーションソフトウェア及びメソッドパッケージを予め組み込んでおくこともできる。
[0045]
 分析基本制御プログラム100は、測定部10における分析動作を実施するための基本的な制御、及びデータ処理部21で実施されるデータ処理を、コンピュータに実行させるための基本的なソフトウェアである。この分析基本制御プログラム100は、分析に際して必要である様々なパラメータや分析条件をユーザに入力させる機能を有する分析条件設定プログラム110を含む。なお、分析基本制御プログラム100は、分析対象の試料の種類が何であるのかに拘わらず、分析に際して常に使用されるプログラムである。
[0046]
 本実施例のシステムでは、繊維製品中の主要な有害物質を網羅的に定量分析するのに特化された測定メソッドを集めた、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200が、パーソナルコンピュータ20に導入される。このメソッドパッケージ200はメソッド記憶部26に格納される。メソッドパッケージ200に含まれる各分析メソッドは、特定の複数の物質を定量分析するために好適である分析条件やパラメータを制御情報として含む。
[0047]
 具体的には、各分析メソッドは、LC部11における分析条件・パラメータとして、カラムの種類、移動相の種類、グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム)、移動相流量(又は流速)、カラムオーブン温度、試料注入量、などの情報を含む。また、各分析メソッドは、MS/MS部12における分析条件・パラメータとして、イオン源の種類(イオン化法の種類)、イオン化モード(正イオン化モード又は負イオン化モードのいずれか)、イオン源や脱溶媒管等の温度、イオン源におけるネブライズガス等のガス流量、検出対象である物質毎の保持時間、検出対象である物質毎の定量イオン及び確認イオンのMRMトランジション(プリカーサイオンとプロダクトイオンのm/z値)、各MRMトランジションに対応するコリジョンエネルギや、四重極マスフィルタ等の各部へ印加される直流バイアス電圧、などの情報を含む。
[0048]
 本実施例において、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200は、特定芳香族アミン一斉分析メソッド210、アゾ染料第1群一斉分析メソッド220、アゾ染料第2群一斉分析メソッド230、PFCs一斉分析メソッド240、及び、AP一斉分析メソッド250、APEO一斉分析メソッド260、という6種類の分析メソッドを含む。
 以下に、各分析メソッドにおける分析対象の物質又は化合物の種類、及び、主要な分析条件・パラメータを説明する。
[0049]
 [1]特定芳香族アミン一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は主要な芳香族第一級アミンであり、具体的には、図3に示す24種類の化合物である。これらは、現在、EUで使用が規制されている22種類と、日本、中国で規制に加えられている2種類とを含む。図3には、各化合物の、化合物名、分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0050]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件・パラメータは以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、150 mmL×2 mm I.D.)
  ・移動相A:Water with 5mM Ammonium Acetate(pH3.0)、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:13 min、
  ・グラジエント溶離条件:2%移動相B(0.00 min~1.00 min)→100%移動相B(6.00 min~9.00min)→35%移動相B(9.01 min~13.00 min)、
[0051]
 また、この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図10に示すとおりである。原則として、化合物毎に、1個の定量イオンのMRMトランジションと、2個の確認イオン(定量イオンのイオン強度とのイオン強度比に基づいて定量イオンが目的物質であるのか否かを確認するために用いるイオン)のMRMトランジションを定めている。なお、イオン化モードは全て正イオン化モードである。
[0052]
 [2]アゾ染料第1群一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記芳香族第一級アミンを生成する元となるアゾ化合物を含むアゾ染料の一部であり、具体的には、図4及び図5に示す合計で44種類の染料である。有害物質として使用が規制されている多種類のアゾ染料は、同じ分析条件の下での1回の分析で全てを検出することが難しい。そのため、第1群の44種類と第2群の7種類とに分け、それぞれ異なる分析条件で検出するようにしている。図4及び図5には、各染料の、染料名(カラーインデックス名)、含まれるアゾ化合物の分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0053]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mmL×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・移動相B:Acetonitrile:Water(9:1) with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・分析時間:20 min、
  ・グラジエント溶離条件:35%移動相B(0.00 min~0.50 min)→100%移動相B(12.00 min~17.00 min)→35%移動相B(17.10 min~20.00 min)、
 よく知られているように、移動相A、Bの両方に添加されているAmmonium Acetateは酸性を示す。したがって、移動相の混合条件に拘わらず、分析時間の全範囲に亘り、移動相は弱酸性である。
[0054]
 また、この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図11及び図12に示すとおりである。原則として、化合物毎に、1個の定量イオンのMRMトランジションと、2個の確認イオンのMRMトランジションを定めているが、2個以上の適切な確認イオンを選定できない物質については確認イオンは1個のみである。また、この分析メソッドでは、図11、図12において番号が1~37までの37種類の物質については正イオン化モードでの分析を行い、番号が38以降の7種類の物質については負イオン化モードでの分析を行う、というようにイオン化モードを分析の途中で切り替える。
[0055]
 [3]アゾ染料第2群一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記アゾ染料第1群一斉分析メソッドでは分析できないアゾ化合物を含むアゾ染料であり、具体的には、図6に示す7種類の染料である。図4、図5と同様に、図6には、各染料の、染料名、含まれるアゾ化合物の分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0056]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mmL×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Bicarbonate、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:10 min、
  ・グラジエント溶離条件:2%移動相B(0.00 min~0.50 min)→90%移動相B(6.00 min~7.50 min)→2%移動相B(7.51 min~10.00 min)、
 移動相Aに添加されているAmmonium BicarbonateはAmmonium Acetateに比べてpHが高く、移動相のpHを中性付近(中性~弱アルカリ性)に調整する際に用いられる添加物である。したがって、この分析メソッドでは、アゾ染料第1群一斉分析メソッドで用いられている移動相とは異なり、分析時間の全体に亘り、移動相は中性又は弱塩基性である。
[0057]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図13に示すとおりである。ここでは、Acid red 26、Direct Red 28、Direct black 38の3種類の染料については、正イオン化モードと負イオン化モードの両方のイオン化モードでの分析を行うため、物質の種類は7種類であるが、検出するのは10種類である。上記3種類の染料では、装置の器差やイオン化モード以外の条件によって、正イオン化モードのほうが感度が良い場合と、負イオン化モードのほうが感度が良い場合とがあり得る。そこで、正イオン化モードでの分析と負イオン化モードでの分析とを両方実施し、いずれか感度が良好であるほうの結果を採用する。一方、それ以外の4種類の染料については、通常、正イオン化モードに比べて負イオン化モードのほうが感度が高いため、負イオン化モードのみの分析を行う。
[0058]
 [4]PFCs一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、EU、Oeko-Tex等で使用が禁止又は制限されている有機フッ素化合物であり、具体的には、図7に示す24種類の化合物である。図7には、各化合物の、化合物名、略称、分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0059]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mmL×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:13 min、
  ・グラジエント溶離条件:10%移動相B(0.00 min~0.50 min)→85%移動相B(8.50 min)→95%移動相B(8.60 min~10.00 min)→10%移動相B(10.10 min~13.00 min)、
[0060]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図14に示すとおりである。イオン化モードは全て負イオン化モードである。
[0061]
 [5]AP一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、EU等で使用が規制されているアルキルフェノールであり、具体的には、図8に示す4種類の化合物である。図8には、各化合物の、化合物名、略称、分子式、及び精密質量を示している。
[0062]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mmL×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:11 min、
  ・グラジエント溶離条件:50%移動相B(0.00 min~0.50 min)→95%移動相B(7.00 min~9.00 min)→50%移動相B(9.10 min~11.00 min)、
[0063]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図15に示すとおりである。イオン化モードは全て負イオン化モードである。この場合、NP、4-n-OPの2種類の化合物は適切な確認イオンが一つしか選定できず、4-n-NP、4-t-OPの2種類の化合物は適切な確認イオンを1個も選定することができず確認イオンを用いない。
[0064]
 [6]APEO一斉分析メソッド
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記アルキルフェノールを生成するおそれがあるアルキルフェノールエトキシレートであり、具体的には、図9に示す2種類の化合物である。但し、NPEO、OPEOのいずれも、C2H4Oの数nが異なる多くの同族体が存在し、それぞれ質量が相違する。そのため、NPEOではn=3~17、OPEOではn=3~16の範囲の各同族体を検出対象とし、それぞれ異なるMRMトランジションを定めている。
[0065]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mmL×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:10 mM Ammonium Acetate - Water(pH 3.6)、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:7 min、
  ・グラジエント溶離条件:70%移動相B(0.00 min~1.00 min)→95%移動相B(1.01 min~5.00 min)→70%移動相B(5.10 min~7.00 min)、
[0066]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図16及び図17に示すとおりである。イオン化モードは全て正イオン化モードである。
[0067]
 上述した6種類の分析メソッドにおいて、カラムはいずれもODSカラムであるが、特定芳香族アミン一斉分析メソッドではカラム長が150mmでありそれ以外の分析メソッドではカラム長が75mmである。したがって、作業者は、特定芳香族アミン一斉分析メソッドによる分析の際にはカラムを交換する、又は、カラムを複数並列に選択可能に配置した構成で、使用するカラムを切り替える必要がある。また、作業者は各分析メソッドに対応した移動相を用意する必要がある。
[0068]
 上述したように、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200に含まれる各分析メソッド210~260には、それぞれ異なるLC分析条件やMS/MS分析条件、或いは、それら分析条件に従ったパラメータ値が収録されているから、分析基本制御プログラム100は、分析を実行する際に、上述した分析メソッド210~260に収録されている分析条件やパラメータ値に従って、各部の動作を制御する。
 なお、図10~図17には記載していないが、各MRMトランジションにはそれぞれに対応して、コリジョンエネルギ(実際には、コリジョンセル内に配置されるイオンガイドに印加される直流バイアス電圧など)や四重極マスフィルタに印加される直流バイアス電圧などの最適値が規定されている。
[0069]
 次に、本実施例の有害物質分析システムを用いて、繊維製品中の有害物質の検査を実施する際の手順及び処理について説明する。
[0070]
 作業者は、分析対象である繊維製品からサンプルである液体試料を調製する。この試料調製方法は従来から行われているごく一般的な手順である。即ち、まず、作業者は分析対象の繊維製品を所定の大きさ(重さ)に切断し、その小片を遠沈管中に投入する。そして、遠沈管に所定量のメタノールを注入し、所定温度で所定時間だけ超音波振動を加えることで繊維小片に含まれる成分の抽出を促す。そのあと、遠心分離を行い、抽出物を一旦乾燥させたあと、所定の溶媒に溶解させ溶液を再構成する。最後に、溶液をフィルタで濾過して微細な混入物を除去し、サンプルを取得する。
[0071]
 上述したように調製されたサンプルを、本実施例の有害物質分析システムにより分析する。即ち、作業者は、上述した6種類の分析メソッドのうちのいずれの分析メソッドによる分析を行うのかを決め、その分析メソッドに対応する移動相を用意してLC部11にセットする。また、カラムを交換する必要があれば、カラムを分析メソッドに対応したものに交換する。そして、入力部27で所定の操作を行い、パーソナルコンピュータ20において分析基本制御プログラム100を立ち上げる。分析基本制御プログラム100に含まれる分析条件設定プログラム110が実行されると、分析条件設定部25が機能し、メソッド記憶部26に格納されている6種類の分析メソッドの選択指示画面を表示部28に表示する。この選択指示画面上には、6種類の分析メソッドの名称が一覧表示され、作業者は実行したい分析メソッドを選択したうえで、測定の開始を指示する。
[0072]
 測定開始が指示されると、LC制御部23、MS制御部24はそれぞれ、選択された分析メソッドに規定されている分析条件やパラメータ値を読み込み、そのパラメータ値等に従ってLC部11とMS/MS部12の各部を制御する。
[0073]
 例えばアゾ染料第1群一斉分析メソッドが選択されていれば、LC制御部23は、当初、LC部11において、移動相Aが65%、移動相Bが35%の混合比率で両移動相が混合されてカラムに送給されるようにミキサを制御する。そして、インジェクタからサンプルを移動相中に注入した時点(0.00 min)から0.50 minが経過するまで、その混合比率を維持する。0.50 minが経過した時点から12.00 minまでの間は、移動相Bの混合比率が35%から100%まで直線的に増加するようにミキサを制御し、12.00 minから17.00 minが経過するまでの間は、その混合比率(移動相B:100%)を維持する。さらに、サンプル注入時点から17.00 minが経過した時点から17.10 minまでの間は、移動相Bの混合比率が100%から35%まで直線的に減少するようにミキサを制御し、17.10 min以降はその混合比率(移動相B:35%)を維持する。
[0074]
 このように、移動相を弱酸性に保ちつつ、移動相A、Bの混合比率を時間経過に伴って変化させることで、サンプルに図4、図5に示した44種類のアゾ染料に対応するアゾ化合物の少なくとも一つが含まれる場合に、該アゾ化合物はその保持時間に応じて他の物質と分離される。
[0075]
 一方、MS制御部24は、選択された分析メソッドにおいて物質毎に規定されている保持時間を中心として、所定の時間幅を確保した検出時間範囲を物質毎に定める。そして、サンプル注入時点以降、各物質の検出時間範囲において、その物質に規定されている定量イオン及び確認イオンのMRMトランジションに対応するMRM測定を実行するように、MS/MS部12の各部を制御する。また、MRMトランジションに対応して定められているコリジョンエネルギ等に応じて各部に印加する電圧を変化させる。なお、周知のように、トリプル四重極型質量分析装置では同じ時間帯に複数の異なるMRMトランジションのMRM測定を実質的に並行して(厳密には時間分割で以て)行うことができるから、異なる物質に対する検出時間範囲の一部が重なっていても、或いは、同じ検出時間範囲に定量イオンと確認イオンという複数のイオンについてのMRM測定を実施する必要があっても、何ら問題はない。
[0076]
 図18は、特定芳香族アミン一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図19は、アゾ染料第1群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図20は、アゾ染料第2群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図21は、PFCs一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図22は、AP一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図23~図25は、APEO一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。
[0077]
 図19~図21では、各クロマトグラムのカーブがいずれの物質に対応するのかの記載を省略しているが、図11~図14に示した各物質の保持時間から、物質とクロマトグラムカーブとの対応は明白である。また、図20では、一つの物質について濃度の相違する複数のサンプルの分析結果を重ねて示しているので、同一保持時間にピーク強度が相違する複数のクロマトグラムカーブが描かれている。
[0078]
 これらクロマトグラムから、各分析メソッドで検出対象としている物質が比較的十分な強度で観測されていることが分かる。また、異なる物質に由来する一部のピークは時間的に重なるものの、MRMトランジションの相違によって十分に分離することができる。したがって、データ処理部21では、こうして作成したクロマトグラム上で検出対象の物質に対応するピークの面積を計算し、そのピーク面積を検量線に照らして定量値(含有量)を算出することができる。
[0079]
 繊維製品中の主要な有害物質の網羅的な検査を行いたい場合、作業者は、実行する分析メソッドの選択と、その分析メソッドに対応する移動相やカラムの用意と、を繰り返す。6種類の分析メソッドの全てについて分析を実施することにより、繊維製品中の主要な有害物質についての検査を完遂することができる。また、例えばアゾ染料のみの検査を行いたい場合には、アゾ染料第1群一斉分析メソッドとアゾ染料第2群一斉分析メソッドとの二つについての分析のみを実行すればよい。また、特定の有害物質の検査結果に疑義がある、或いは特定の有害物質についての検査を行いたいような場合には、6種類の分析メソッドのうちの所望の分析メソッドを選択して、該分析メソッドによる分析を実行すればよい。このように、作業者のニーズや目的に応じて、適宜の一以上の分析メソッドによる分析を実行すればよいので、網羅的な分析の際に係る分析時間を抑えつつ、特定の種類の有害物質の検査の際にも分析時間を抑えることができる。
[0080]
 なお、繊維製品中の主要な有害物質の網羅的な検査を目的とする場合には、6種類の分析メソッドの全てが揃っていることが望ましいものの、例えば一部の有害物質、例えばAP/APEOは他の手法で又は別の分析装置で分析したい、という場合には、必ずしも6種類の分析メソッドの全てが揃っていなくてもよい。
[0081]
 また、上記実施例はあくまでも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で、適宜変更や修正を行えることは明らかである。

符号の説明

[0082]
10…測定部
11…液体クロマトグラフ(LC)部
12…トリプル四重極型質量分析(MS/MS)部
20…パーソナルコンピュータ
21…データ処理部
22…制御部
23…LC制御部
24…MS制御部
25…分析条件設定部
26…メソッド記憶部
27…入力部
28…表示部
100…分析基本制御プログラム
110…分析条件設定プログラム
200…繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ
210…特定芳香族アミン一斉分析メソッド
220…アゾ染料第1群一斉分析メソッド
230…アゾ染料第2群一斉分析メソッド
240…PFCs一斉分析メソッド
250…AP一斉分析メソッド
260…APEO一斉分析メソッド

請求の範囲

[請求項1]
 分析装置を用いて試料中の有害物質を定量的に分析する有害物質分析システムであって、
 前記分析装置として、分析対象の試料に含まれる物質を分離する液体クロマトグラフと、該液体クロマトグラフで時間的に分離された試料中の物質をイオン化し、その中の特定のイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するタンデム型質量分析装置と、を組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を用い、
 a)次の6種類の測定メソッドのうちの2種類以上の測定メソッドに従った分析を実行するための制御情報として、少なくとも、前記液体クロマトグラフにおける複数の移動相についてのグラジエント条件と、前記タンデム型質量分析装置において各物質を検出するための保持時間及び多重反応モニタリングトランジション、とが格納されている情報格納部と、
  a1)芳香族第一級アミンである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第1の測定メソッド、
  a2)液体クロマトグラフの移動相として第1の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第2の測定メソッド、
  a3)液体クロマトグラフの移動相として前記第1の移動相とは異なる第2の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物であり前記第2の測定メソッドによる分析対象の物質とは相違する特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第3の測定メソッド、
  a4)有機フッ素化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第4の測定メソッド、
  a5)アルキルフェノールエトキシレートである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第5の測定メソッド、
  a6)アルキルフェノールである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第6の測定メソッド、
 b)前記情報格納部に格納されている前記2種類以上の測定メソッドの識別子を表示部の画面上に表示し、そのうちの1種類の測定メソッドをユーザに選択させるメソッド選択支援部と、
 c)前記メソッド選択支援部によりユーザが選択した測定メソッドの制御情報を前記情報格納部から読み出し、その読み出された制御情報に従って、前記液体クロマトグラフ及び前記タンデム型質量分析装置の動作を制御する分析制御部と、
 を備える、有害物質分析システム。
[請求項2]
 請求項1に記載の有害物質分析システムであって、
 少なくとも前記第2の測定メソッド及び前記第3の測定メソッドについての制御情報を前記情報格納部に格納しておき、前記メソッド選択支援部は、それらのいずれか一つを選択することができる、有害物質分析システム。
[請求項3]
 請求項2に記載の有害物質分析システムであって、
 さらに前記第1の測定メソッドについての制御情報も前記情報格納部に格納しておき、前記メソッド選択支援部は、前記第1乃至第3の測定メソッドのいずれか一つを選択することができる、有害物質分析システム。
[請求項4]
 請求項3に記載の有害物質分析システムであって、
 繊維製品中の有害物質を分析するものであり、前記6種類の測定メソッドの全てについての制御情報を前記情報格納部に格納しておき、前記メソッド選択支援部は、該6種類の測定メソッドのいずれか一つを選択することができる、有害物質分析システム。
[請求項5]
 請求項1に記載の有害物質分析システムであって、
 前記タンデム型質量分析装置はトリプル四重極型質量分析装置であり、
 前記情報格納部に格納される制御情報は、物質毎に定められた一つ以上の多重反応モニタリングトランジションに対応するコリジョンエネルギを含む、有害物質分析システム。
[請求項6]
 試料中の有害物質を定量的に分析するために、分析対象の試料に含まれる物質を分離する液体クロマトグラフと、該液体クロマトグラフで時間的に分離された試料中の物質をイオン化し、その中の特定のイオンを解離させて生成したプロダクトイオンを検出するタンデム型質量分析装置と、を組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置の動作を制御するとともに、該装置による分析により得られたデータを処理するコンピュータに搭載されるコンピュータプログラムであって、
 a)次の6種類の測定メソッドのうちの2種類以上の測定メソッドに従った分析を実行するための制御情報として、少なくとも、前記液体クロマトグラフにおける複数の移動相についてのグラジエント条件と、前記タンデム型質量分析装置において各物質を検出するための保持時間及び多重反応モニタリングトランジション、とが収録されているメソッドパッケージを含み、
  a1)芳香族第一級アミンである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第1の測定メソッド、
  a2)液体クロマトグラフの移動相として第1の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第2の測定メソッド、
  a3)液体クロマトグラフの移動相として前記第1の移動相とは異なる第2の移動相を用いた条件の下で、アゾ化合物であり前記第2の測定メソッドによる分析対象の物質とは相違する特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第3の測定メソッド、
  a4)有機フッ素化合物である特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第4の測定メソッド、
  a5)アルキルフェノールエトキシレートである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第5の測定メソッド、
  a6)アルキルフェノールである特定の複数の物質を1回の分析で検出するための第6の測定メソッド、
 前記コンピュータを、
 b)前記メソッドパッケージに収録されている前記2種類以上の測定メソッドの識別子を表示部の画面上に表示し、そのうちの1種類の測定メソッドをユーザに選択させるメソッド選択支援機能部と、
 c)前記メソッド選択支援機能部によりユーザが選択した測定メソッドの制御情報を前記メソッドパッケージから取得し、取得した制御情報に従って、前記液体クロマトグラフ及び前記タンデム型質量分析装置の動作を制御する分析制御機能部と、
 して動作させる、有害物質分析用プログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]