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1. WO2020110243 - LUBRICATING OIL COMPOSITION

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明 細 書

発明の名称 潤滑油組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068  

実施例

0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 潤滑油組成物

技術分野

[0001]
 本開示は、潤滑油組成物に関する。

背景技術

[0002]
 農業機械には、整地用作業機としてのトラクター、育成管理用作業機としての田植え機、収穫用作業機としてのバインダー及び、コンバイン等があり、トラクターは最も広く用いられている。
 トラクターは、油圧ポンプ部、変速装置部、パワー・テイク・オフ(PTO)クラッチ部、差動歯車装置部、湿式ブレーキ部等の金属同士の接触箇所を多く備えているのにも関わらず、これら接触箇所に対して、1種類の農業機械用潤滑油が使用されている場合が多い。
 このため、農業機械用潤滑油には摩擦特性、耐摩耗性、酸化安定性、さび止め性、有機材料適合性等の多機能の役割が要求されている。これらの性能を確保し、さらに性能を高める為に、現在のところ、選定された基油に種々の添加剤を配合し農業機械用潤滑油組成物として、例えば、特開昭59-25890号公報及び特開平3-20396号公報に記載された潤滑油組成物が開示されている。また、機能液のブレーキ能力とクラッチ能力を改善する方法に用いられる機能液として、例えば、特開2004-59930号公報に記載された機能液が開示されている。
 また、トラクターの高出力化に伴い、ギヤ部等における負荷が増しているため、このような農業機械用潤滑油は、より一層高い極圧性能を有することが望まれている。
[0003]
 さらに、農業機械は、水田等の水と接しやすい環境で使用されることもあり、使用過程において潤滑油中に水の混入がしばしば認められる。その為、水混入環境下においても、農業機械の機能が保持されることが求められる。
 特に、農業機械は水田での使用の際、又は、機械の洗浄等によって、オイルタンクに水が混入し易く、水の混入により潤滑油中にエマルジョンが生成されると、フィルターの目詰まりが生じる。このような観点から、例えば、特開2009-144098号公報及び特開2010-121063号公報には、潤滑油組成物において、金属型清浄剤、摩耗防止剤の配合量を最適化することにより、エマルジョンの生成の抑制の向上を行うことが開示されている。
[0004]
 上記の通り、農業機械用潤滑油組成物においては摩耗防止剤が配合され、その摩耗防止剤としてはしばしば酸性リン酸エステルアミン塩が配合されていることが知られている。例えば、特開2014-19735号公報には、潤滑油基油に金属型清浄剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合し、一般式(1)で表わされるアスパラギン酸エステル誘導体を特定量配合することでエマルションの生成を抑えることが可能な農業機械用潤滑油組成物が開示されている。
[0005]
[化1]


[0006]
 (式(1)中、R 、R 、R 及びR はそれぞれ炭素数が1~30のアルキル基を示し、全て同じアルキル基であってもよいし、互いに異なるアルキル基であってもよい。)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 近年、トラクターの高出力化に伴い、ギヤ部等における負荷が増しているため、開昭59-25890号公報、特開平3-20396号公報及び特開2004-59930号公報に記載の潤滑油組成物又は機能液において、より一層高い極圧性を有することが望まれている。特に、農業機械は水田での使用の際、又は、機械の洗浄等によって、オイルタンクに水が混入し易く、水の混入により潤滑油中にエマルジョンが生成されると、フィルターの目詰まりが生じる為、潤滑油はエマルジョンの生成の抑制に優れていることが望まれている。
 しかしながら、摩耗防止、及び、エマルジョンの生成の抑制を目的として、潤滑油組成物中に酸性リン酸エステルアミン塩が配合されると、潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛との相乗効果が得られにくく、特開2009-144098号公報、特開2010-121063号公報及び特開2014-19735号公報に記載の農業機械用潤滑油組成物において、極圧性能を維持しつつ、高いエマルジョンの抑制が得られにくいので潤滑油組成物の更なる開発が求められている。
[0008]
 本開示の一実施形態としては、上記に鑑みてなされたものであり、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れる潤滑油組成物を提供する。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の基油に、特定構造を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛と、特定構造を有する酸性リン酸エステルアミン塩とを、リン濃度換算量で特定の割合で配合した潤滑油組成物では、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れることを見出した。
[0010]
 すなわち、本開示には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 鉱物油系潤滑油、合成油系潤滑油及びこれらの混合油からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油と、
 下記一般式(1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛Xと、
 下記一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yと、を含有し、
 上記Xの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.06質量%~0.08質量%であり、上記Yの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.015質量%~0.025質量%である、潤滑油組成物。
[0011]
[化2]


[0012]
 一般式(1)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数10~20の第1級アルキル基を表す。
[0013]
[化3]


[0014]
 一般式(2)中、R、R 5及びR 6は、水素原子又は炭素数3~30の炭化水素基を表し、R 5及びR 6のうち、少なくとも1つは炭化水素基を表す。
[0015]
<2> 上記一般式(1)中、R 、R 、R 及びR が、それぞれ独立に、直鎖の炭素数10~12の第1級アルキル基である、<1>に記載の潤滑油組成物。
<3> 上記R 5及びR 6における炭化水素基は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキルアリール基及びアリールアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である、<1>又は<2>に記載の潤滑油組成物。
<4> 農業機械用潤滑油である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。

発明の効果

[0016]
 本開示の一実施形態によれば、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れる潤滑油組成物の提供することができる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は、実施例及び比較例において、組成物全質量に対するリン濃度換算でのジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P と、組成物全質量に対するリン濃度換算での酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量P と、の関係を表した図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本開示に係る一実施形態について詳細に説明する。
 なお、本明細書中、数値範囲を表す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
 本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。 また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
 本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
 本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
 本明細書において、「極圧性」とは、金属部材同士を潤滑油組成物を介して摺動させた場合に、摺動面の焼付を防止する性質を意味する。
[0019]
(潤滑油組成物)
 本開示に係る潤滑油組成物は、鉱物油系潤滑油、合成油系潤滑油及びこれらの混合油からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油と、
 下記一般式(1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛Xと、
 下記一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yと、を含有し、
 上記Xの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.06質量%~0.08質量%であり、上記Yの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.015質量%~0.025質量%である。
 本開示の潤滑油組成物は、特定の基油と、特定構造を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛Xと、特定構造を有する酸性リン酸エステルアミン塩Yと、を含み、リン濃度換算でのP 及びP の含有量が、それぞれ特定の範囲内であり、P 及びP を特定の割合で含有することにより、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れる。
 この理由は、明らかではないが、以下のように推測される。但し、下記の推測は、本開示の潤滑油組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
[0020]
 本開示に係る潤滑油組成物に含まれるジアルキルジチオリン酸亜鉛X及び酸性リン酸エステルアミン塩Yは、金属の酸化被膜表面に対してそれぞれ吸着することにより、潤滑油組成物に摩耗防止性能を付与する。すなわち、ジアルキルジチオリン酸亜鉛X及び酸性リン酸エステルアミン塩Yが吸着可能な金属表面は有限であり、ジアルキルジチオリン酸亜鉛X及び酸性リン酸エステルアミン塩Yの一方が多く吸着すると、他方はその添加量に対する金属表面に対する吸着量が不足する可能性がある。ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xが多い場合、酸性リン酸エステルアミン塩Yの不足により、エマルジョンの生成の抑制効果が得られにくいと考えられる。逆に酸性リン酸エステルアミン塩Yが多い場合、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの金属表面に対する吸着量が不足し、潤滑油組成物の極圧性能が得られにくくなると考えられる。
 よって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量と酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量とを所定範囲にすることで、極圧性の維持しつつ、エマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れると考えられる。
 以下、本開示の潤滑油組成物の各成分の詳細について説明する。
[0021]
<基油>
 本開示に係る潤滑油組成物は、鉱物油系潤滑油、合成油系潤滑油及びこれらの混合油からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油を含有する。
 基油は1種を単独であってもよく、又は2種以上を組み合わせて含んでもいてもよい。
 潤滑油基油としては、特に制限は無く、様々な製造方法により得られた潤滑油が使用できる。
 鉱物油系潤滑油としては、例えば、水素化精製油、触媒異性化油等に溶剤脱蝋又は水素化脱蝋等の処理を施した、高度に精製されたパラフィン系鉱油などが好ましく使用することができる。
[0022]
 水素化処理油としては、例えば、基油の原料を、フェノール、フルフラール等の芳香族抽出溶剤を用いた溶剤精製により得られるラフィネート、シリカ-アルミナを担体とするコバルト、モリブデン等の水素化処理触媒を用いた水素化処理により得られる水素化処理油等が挙げられる。
 特に、水素化分解工程又は異性化工程によって得られる高粘度指数の基油が好適な基油として挙げられる。
[0023]
 合成油系潤滑油としては、例えば、メタン等のガスを原料としてフィッシャー・トロプシュ反応により合成される基油、ポリ-α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリグリコールエステル、ポリエチレンプロピレン類、ヒンダードエステル類、二塩基酸エステルなどが挙げられる。
 なお、上記基油は、本開示に係る効果が得られる範囲において、リン酸エステル及び、シリコーン油を更に含有してもよい。
[0024]
 基油の100℃での動粘度としては、1.0mm /s~10.0mm /sであることが好ましく、2.0mm /s~8.0mm /sであることがより好ましく、2.0mm /s~7.0mm /sであることが更に好ましい。
 上記基油の動粘度は、後述の潤滑油組成物の動粘度と同様の方法により求めることができる。
[0025]
<ジアルキルジチオリン酸亜鉛X>
 本開示に係る潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛Xを含有する。
[0026]
[化4]


[0027]
 一般式(1)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数10~20の第1級アルキル基を表す。
 第1級アルキル基の炭素数が10~20であると、潤滑油組成物中に水が混入した後、更に、潤滑油組成物が高温環境下に晒された場合であっても、潤滑油組成物中でのエマルジョンの生成を抑制し、かつ、熱安定性にも優れる傾向がある。
[0028]
 加水分解に対する安定性の観点から、R 、R 、R 及びR で表される第1級アルキル基の炭素数としては、それぞれ独立に、好ましくは10~14であり、より好ましくは10~12であり、更に好ましくは12である。
[0029]
 水混入時のエマルジョン生成抑制の観点から、上記R 、R 、R 及びR で表される第1級アルキル基としては、全て直鎖の炭素数が10~20のアルキル基であることが好ましく、直鎖の炭素数が10~14のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数10~12のアルキル基であることが更に好ましく、直鎖の炭素数12のアルキル基であることが特に好ましい。
[0030]
 なお、本明細書において、第1級アルキル基とは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xにおいて、リン原子と結合する酸素原子に隣接したα位の炭素原子が1級炭素(すなわち、-CH -O-)であることを意味する。また、第2級アルキル基とは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xにおいてリン原子と結合する酸素原子に隣接したα位の炭素原子が2級炭素(すなわち、>CH-O-)であることを意味する。
[0031]
 ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P は、組成物全質量に対してリン濃度換算で0.06質量%~0.08質量%である。
 ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P が、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.06質量%~0.08質量%であることにより、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れる。
 また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xは1種を単独であってもよく、又は2種以上を組み合わせて含んでもいてもよい。
[0032]
 上記観点から、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P としては、潤滑油組成物の全質量に対して、好ましくは0.07質量%~0.08質量%である。
 なお、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xが、2種以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛Xを含む場合、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P は、総含有量を意味する。
[0033]
 ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P は、例えば、潤滑油組成物について誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析等を行うことにより求められ、より詳細には、ICP発光分光分析により求められたジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P (質量%)を、リンの原子量(=30.97)で除して算出することができる。
[0034]
<酸性リン酸エステルアミン塩Y>
 本開示に係る潤滑油組成物は、下記一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yを含有する。
[0035]
[化5]


[0036]
 一般式(2)中、R、R 5及びR 6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数3~30の炭化水素基を表し、R 5及びR 6のうち、少なくとも1つは炭化水素基を表す。
[0037]
 R 5及びR 6における炭素数3~30の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。脂環族炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
 また、炭素数3~30の炭化水素基は、ハロゲン原子を含む炭化水素基であってもよい。
[0038]
 上記炭素数3~30の炭化水素基は、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、フィルターろ過性及び極圧性の両立に優れる観点から、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキルアリール基及びアリールアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
[0039]
 一般式(2)中、Rにおける炭素数3~30の炭化水素基としては、既述のR 5及びR 6における炭素数3~30の炭化水素基が挙げられる。
 これらの中でも、Rにおける炭素数3~30の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6~20の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数12~14の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数12~14の分岐状の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
[0040]
 一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yとしては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェートアミン塩、ジイソデシルアシッドホスフェートアミン塩、ジラウリルアシッドホスフェートアミン塩、ジオレイルアシッドホスフェートアミン塩、ジフェニルアシッドホスフェートアミン塩、ジクレジルアシッドホスフェートアミン塩、S-オクチルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩、およびS-ドデシルチオエチルアシッドホスフェートアミン塩などが挙げられる。
 これらの中でも、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェートアミン塩及びジイソデシルアシッドホスフェートアミン塩が好ましい。
[0041]
 極圧性の観点から、一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yとしては、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェートオレイルアミン塩又はジイソデシルアシッドホスフェートオレイルアミン塩が好ましい。
[0042]
 酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量P は、組成物全量に対してリン濃度換算で0.015質量%~0.025質量%であり、好ましくは0.016質量%~0.024質量%であり、より好ましくは0.018質量%~0.022質量%である。
 酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量P が、組成物全質量に対してリン濃度換算で0.015質量%~0.025質量%であると、摩耗防止性と酸化防止とを十分に確保し、かつ、エマルジョン生成の抑制に優れる。
 また、酸性リン酸エステルアミン塩Yは1種を単独であってもよく、又は2種以上を組み合わせて含んでもいてもよい。
 なお、酸性リン酸エステルアミン塩Yが、2種以上の酸性リン酸エステルアミン塩Yを含む場合、酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量P は、総含有量を意味する。
[0043]
 酸性リン酸エステルアミン塩Yの含有量P は、既述のジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの含有量P と同様の方法により測定することができる。
[0044]
 本開示に係る潤滑油組成物において、上記Xの含有量P 及びYの含有量P は、下記式(A)の関係を満たすことが好ましい。

 2.5≦P /P ≦5.0  式(A)
[0045]
 Xの含有量P 及びYの含有量P が式(A)の関係を満たすと、極圧性に優れ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制及びフィルターろ過性により優れる傾向がある。
 上記観点から、組成物全質量に対するYのリン濃度換算での含有量(P )に対する、Xの組成物全質量に対するリン濃度換算での含有量(P )の比(P /P )は、好ましくは3.0~6.0であり、より好ましくは3.2~5.5であり、更に好ましくは2.5~5.0である。
[0046]
-金属型清浄剤-
 本開示に係る潤滑油組成物は、金属型清浄剤を更に含有していてもよい。潤滑油組成物が金属型清浄剤を含むと、湿式クラッチの摩擦特性を確保することが可能となる。
 金属型清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
 金属型清浄剤は、1種単独で用いてもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
 エマルジョン生成の抑制と湿式クラッチに求められる摩擦特性とを両立する観点から、金属型清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネートを好適に使用することができる。
[0047]
 金属型清浄剤中に含まれるアルカリ土類金属としては、特に制限はなく、カルシウム、ナトリウム、バリウム等を用いることができる。これらの中でも、アルカリ土類金属としては、カルシウムが好適である。金属型清浄剤としては、炭酸又はホウ酸で過塩基化されたアルカリ土類金属塩であることが好ましい。
[0048]
 金属型清浄剤の塩基価としては、JIS K2501(2003)の過塩素酸法による塩基価で、好ましくは150mgKOH/g~500mgKOH/gであり、より好ましくは200mgKOH/g~450mgKOH/gであり、更に好ましくは250mgKOH/g~450mgKOH/gである。
 金属型清浄剤の含有量は、アルカリ土類金属の量として、組成物全質量基準で0.05質量%~0.50質量%であり、好ましくは0.15質量%~0.45質量%である。
 金属型清浄剤の含有量が、アルカリ土類金属の量として、組成物全質量基準で上記範囲であると、良好な摩擦特性が得られ、かつエマルジョン生成の抑制に優れる。
[0049]
-粘度指数向上剤-
 本開示に係る潤滑油組成物は、粘度指数向上剤を含んでいてもよい。
 粘度指数向上剤としては特に制限はなく、ポリアルキル(メタ)アクリレート、オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、スチレン-ブタジエン水素化共重合体、スチレン-イソプレン水素化共重合体、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体及び、それらに分散基を含有する化合物等の公知の各種粘度指数向上剤が挙げられる。
 これらの中でも、低温で良好な粘度特性の観点から、潤滑油組成物は、粘度指数向上剤としてポリアルキル(メタ)アクリレートを好適に使用できる。
[0050]
 なお、上記スチレン-ブタジエン水素化共重合体とは、スチレン-ブタジエン共重合体を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えた共重合体を指し、上記スチレン-イソプレン水素化共重合体は、スチレン-イソプレン共重合体を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えた共重合体を指す。
[0051]
 粘度指数向上剤としてのポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、10万~60万であることが好ましく、より好ましくは10万~55万、更に好ましくは10万~50万である。粘度指数向上剤としてのポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量が上記範囲内にあることにより、低温始動性及びせん断安定性に優れる傾向がある。
[0052]
 本開示に係る潤滑油組成物が、粘度指数向上剤を含む場合、粘度指数向上剤の含有量としては、組成物全質量に対して、0.5質量%~20.0質量%であることが好ましく、1.0質量%~12.0質量%であることがより好ましい。
[0053]
-その他の添加剤-
 更に本開示に係る潤滑油組成物は、本開示に係る効果が得られる範囲において、上記の成分の他に必要に応じて公知の添加剤、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛X及び酸性リン酸エステルアミン塩Y以外の摩擦調整剤、摩耗防止剤、油性剤、極圧剤、錆止め剤、無灰型分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、着色剤、農機用作動油パッケージ添加剤、又は、これらの添加剤を少なくとも1種を含有する各種潤滑油用パッケージ添加剤などを添加することができる。
られる。
[0054]
 摩擦調整剤としては、有機モリブテン化合物、多価アルコール部分エステル化合物、アミン化合物、アミド化合物、エーテル化合物、硫化エステル、リン酸エステル、ジオール化合物などが挙げられる。
[0055]
 摩耗防止剤としては、硫黄化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステルなどが挙げられる。
[0056]
 油性剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、高級アルコール、アミン化合物、アミド化合物、硫化油脂、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステルなどが挙げられる。
[0057]
 極圧剤としては、炭化水素硫化物、硫化油脂、リン酸エステル、亜リン酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニルなどが挙げられる。
[0058]
 錆止め剤としては、カルボン酸やそのアミン塩、エステル化合物、スルホン酸塩、ホウ素化合物などが挙げられる。
[0059]
無灰型分散剤としては、ポリアルケニル基を有するコハク酸イミド及び、そのホウ素誘導体が挙げられる。
[0060]
 酸化防止剤としては、アミン化合物、フェノール化合物、硫黄化合物などが挙げられる。
[0061]
 金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、アルケニルコハク酸エステルなどが挙げられる。
[0062]
 流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、アルキル化ポリスチレンなどが挙げられる。
[0063]
 消泡剤としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン化合物、フルオロシリコン化合物、エステル化合物などが挙げられる。
[0064]
 本開示に係る潤滑油組成物の調製方法としては、基油、ジアルキルジチオリン酸亜鉛X及び酸性リン酸エステルアミン塩Y、並びに必要に応じて各種添加剤を適宜混合すればよい。これらの各成分の混合順序は特に制限されるものではなく、基油に順次混合してもよいし、予め各種添加剤を基油に予め添加しておいてもよい。
[0065]
 本開示に係る潤滑油組成物は、特に動粘度に制限はないが、低温及び高温時の安定性及び始動性を考慮すると、100℃における動粘度が6.0mm /s~15.0mm /sであることが好ましく、7.0mm /s~13.0mm /sであることがより好ましく、7.5mm /s~11.0mm /sであることが更に好ましく、7.5mm /s~9.0mm /sであることが特に好ましい。
[0066]
 潤滑油組成物の100℃での動粘度及び粘度指数が上記範囲を満たすと、潤滑性を保持し、かつ、低温始動性にも優れた潤滑油組成物を得ることができる。
[0067]
 また、潤滑油組成物の粘度指数は、150以上であることが好ましく、170以上であることがより好ましく、190以上であることが更に好ましい。
 潤滑油組成物の100℃での動粘度及び粘度指数が上記範囲を満たすと、潤滑性を保持し、かつ、低温始動性にも優れた潤滑油組成物を得ることができる。
[0068]
 以上のような本開示に係る潤滑油組成物は、農業機械である整地用作業機のトラクター、育成管理用作業機の田植え機、収穫用作業機のバインダー、コンバイン等の農業機械用潤滑油として使用することが可能である。潤滑油組成物は、中でも、トラクターに好適に使用することができ、油圧ポンプ部、変速装置部、PTOクラッチ部、差動歯車装置部、湿式ブレーキ部等の共用潤滑油として使用することが可能である。
実施例
[0069]
 次に、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
 実施例及び比較例では、基油と各成分の添加剤を表1又は表2に記載の配合量で調製して潤滑油組成物を得た。
 得られた潤滑油組成物をそれぞれ用いて下記の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
 なお、実施例及び比較例において、潤滑油組成物の調製に用いた基油及び添加剤各成分は以下の通りであり、得られた潤滑油組成物の性能は下記の方法で求めた。
[0070]
(1)基油
 下記の基油1と基油2とを潤滑油組成物の温度100℃における動粘度が8.0mm /s~8.5mm /sとなるように混合した混合油。
・基油1:100℃の動粘度が3.1mm /sで、粘度指数が102の水素化精製鉱油(鉱物油系潤滑油)
・基油2:100℃の動粘度が5.8mm /sで、粘度指数が109の水素化精製鉱油(鉱物油系潤滑油)
[0071]
(2)ジアルキルジチオリン酸亜鉛X 1
・式(1)におけるアルキル基(R 、R 、R 及びR )がいずれも第1級アルキル基であり、かつ、アルキル基の炭素数が12のもの。リン濃度:6.1質量%
(3)ジアルキルジチオリン酸亜鉛X 2
・式(1)におけるアルキル基(R 、R 、R 及びR )がいずれも第1級アルキル基であり、かつ、アルキル基の炭素数が8のもの。リン濃度:7.4質量%
[0072]
(4)酸性リン酸エステルアミン塩Y
・式(2)におけるアルキル基(R 5及びR 6)は、炭素数が8、若しくは、炭素数10、又は、炭素数8及び10が組み合わされたものであり、炭素数12又は炭素数14の分岐状のアルキルアミン塩。リン濃度:8.2質量%
[0073]
(5)パッケージ添加剤
 パッケージ添加剤とは、下記添加剤の混合物である。
・金属型清浄剤(過塩基化されたカルシウムスルホネート)
・摩擦調整剤
・シリコ-ン系消泡剤
 また、パッケージ添加剤の主要元素量は次の通りである。
 カルシウム:7.3質量%、硫黄:1.4質量%、窒素:0.035質量%、
 シリコーン:80質量ppm
[0074]
(6)粘度指数向上剤
・粘度指数向上剤A;ポリアルキルメタクリレート(重量平均分子量(Mw);14万)
・粘度指数向上剤B;ポリアルキルメタクリレート(重量平均分子量(Mw);44万)
[0075]
〔評価方法〕
-フィルターろ過性-
(1)水分離性試験
 SAE Paper972788に記載の方法のフィルタビリティー評価で示される水混合法を実施した。具体的には、潤滑油組成物99mLに対し水1mLを加え、10分間、攪拌した後、遠心管に移し変えて、10℃で168時間静置し、試験サンプルとした。静置後に生成したエマルジョン量(mL)を目視で測定した。
 さらに、上記静置後のサンプルを1分間、遠心管を上下に攪拌し、孔径10μmのフィルタ(ミリポア社製)を用いて、320mmHg(42663.04Pa)の減圧度にてフィルターろ過を行い、試験サンプルのろ過時間(秒)を測定した。
 生成したエマルジョン量が2.0mL以下であれば、水混入後のエマルジョン生成の抑制に優れていると判断した。さらに、50mLをろ過するのにかかる時間が300秒以下である場合、フィルターの閉塞が抑制されて、フィルタビリティー性能(フィルターろ過性)に優れていると判断した。
 なお、50mLのろ過時間が300秒を超える場合、最終のろ過時間が計測できない程、フィルターが閉塞される場合があり、この場合を「ろ過不能」とした。
[0076]
-極圧性-
(2)曾田四球試験
 JIS K 2519(1995)に記載の方法に準拠して、実施例及び比較例の潤滑油組成物の回転数200rpm(revolutions per minute)における荷重を測定することにより、極圧性(耐荷重性)を評価した。
 本試験では、1分毎に0.049MPaづつ荷重を増やしていき、試験用鋼球間の摺動面におけるスティックスリップが生じた荷重(焼付き荷重)を測定し、得られた焼付き荷重から0.049MPa引いた値を合格限界荷重(耐荷重)とし、この操作を3回繰り返した。
 得られた焼付き荷重と合格限界荷重との差が0.049MPaを超えない合格限界荷重について、平均値を求めた。更に、合格限界荷重の値は、JIS Z 8401(1999)の規定によって、0.05MPa単位に丸めた。合格限界荷重が1.00MPa以上であれば、極圧性に優れると判断した。
[0077]
(3)シェル四球極圧試験
 ASTM D2783に記載の方法に準拠して、回転数1800rpmにおける融着荷重(WL)を測定して、極圧性を評価した。
 融着荷重は1570N以上であれば、極圧性に優れると判断した。
[0078]
 本開示において、曾田四球試験及びシェル四球極圧試験のそれぞれの試験において、極圧性に優れる場合を、極圧性に優れると判断した。
[0079]
 表2中、「NA]は値を算出できなかったことを意味する。
[0080]
[表1]


[0081]
[表2]


[0082]
 表1及び表2並びに図1に示すとおり、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xと酸性リン酸エステルアミン塩Yとを所定割合にて含有する実施例の潤滑油組成物は、比較例の潤滑油組成物と比べて、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れていることが分かる。特に、実施例の潤滑油組成物は、生成したエマルジョン量が比較例1、8及び10に比べて少なく、フィルターろ過に要する時間も短く、かつ、極圧性に優れていた。
 表2に示すとおり、P /P が2.5未満である比較例6及び9並びにP /P が5.0を超える比較例3及び比較例10は、実施例の潤滑油組成物と比べて極圧性に劣っていた。
 また、潤滑油組成物においてP /P が所定の範囲内である場合であっても、ジアルキルジチオリン酸亜鉛Xの組成物全質量に対するリン濃度換算で0.08質量%以上含有している比較例8では、実施例の潤滑油組成物と比べて生成したエマルジョン量が多くフィルターろ過性能が劣っており、かつ、極圧性も劣っていた。
 比較例11の潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛X 2が上記一般式(1)におけるR 、R 、R 及びR で表されるアルキル基の炭素数が8であるので、実施例の潤滑油組成物に比べて極圧性に劣っていた。
[0083]
 以上より、本開示に係る潤滑油組成物は、極圧性を維持しつつ、水混入後のエマルジョンの生成を抑制し、かつ、フィルターろ過性に優れる。このため、農業機械用の潤滑油組成物として好適に用いることができる。

請求の範囲

[請求項1]
 鉱物油系潤滑油、合成油系潤滑油及びこれらの混合油からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油と、
 下記一般式(1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛Xと、
 下記一般式(2)で表される酸性リン酸エステルアミン塩Yと、を含有し、
 前記Xの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.06質量%~0.08質量%であり、前記Yの含有量P は、組成物全質量に対するリン濃度換算で0.015質量%~0.025質量%である、潤滑油組成物。
[化1]



 [一般式(1)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数10~20の第1級アルキル基を表す。]
[化2]



 [一般式(2)中、R、R 5及びR 6は、水素原子又は炭素数3~30の炭化水素基を表し、R 5及びR 6のうち、少なくとも1つは炭化水素基を表す。]
[請求項2]
 前記一般式(1)中、R 、R 、R 及びR が、それぞれ独立に、直鎖の炭素数10~12の第1級アルキル基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
[請求項3]
 前記R 5及びR 6における炭化水素基は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキルアリール基及びアリールアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
[請求項4]
 農業機械用潤滑油である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。

図面

[ 図 1]