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1. (WO2019064829) POWER CONVERSION DEVICE, MOTOR MODULE, AND ELECTRIC POWER STEERING DEVICE
Document

明 細 書

発明の名称 電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

産業上の利用可能性

0098  

符号の説明

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10A   10B   10C   10D   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置

技術分野

[0001]
本開示は、電源からの電力を電動モータに供給する電力に変換する電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置に関する。

背景技術

[0002]
近年、電動モータ(以下、単に「モータ」と表記する。)およびECU(Electrical Control Unit)が一体化された機電一体型モータが開発されている。特に車載分野において、安全性の観点から高い品質保証が要求される。そのため、部品の一部が故障した場合でも安全動作を継続できる冗長設計が取り入れられている。冗長設計の一例として、1つのモータに対して2つのインバータを設けることが検討されている。他の一例として、メインのマイクロコントローラにバックアップ用マイクロコントローラを設けることが検討されている。 
[0003]
特許文献1は、制御部と、2つのインバータとを有し、電源からの電力を三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を開示している。2つのインバータの各々は電源およびグランド(以下、「GND」と表記する。)に接続される。一方のインバータは、モータの三相の巻線の一端に接続され、他方のインバータは、三相の巻線の他端に接続される。各インバータは、各々がハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子を含む3つのレグから構成されるブリッジ回路を有する。制御部は、2つのインバータにおけるスイッチ素子の故障を検出した場合、モータ制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。正常時の制御では、例えば、2つのインバータのスイッチ素子をスイッチングすることによりモータが駆動される。異常時の制御では、例えば、故障したインバータにおける巻線の中性点を用いて、故障していないインバータによってモータが駆動される。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2014-192950号公報
特許文献2 : 特開2017-063571号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
上記のような2つのインバータを用いてモータを駆動する装置において、インバータに故障が発生した場合、その故障箇所を可能な限り短い時間で特定することが求められる。 
[0006]
特許文献2は、Y結線された巻線を有するモータを1つのインバータで駆動する装置(以降、「シングルインバータタイプの装置」と表記する。)を開示している。特許文献2では、予め定められた通電パターンにおいて検出された信号を、予め定められた異常種類対応表に照合して、配線の断線および短絡を検出することが開示されている。 
[0007]
しかしながら、特許文献2の技術では、測定した電流値および電圧値を用いて、配線の断線などの故障検知がなされるため、故障検知および故障個所の特定に時間がより費やされることとなる。 
[0008]
本開示の実施形態は、インバータのスイッチ素子の故障をより短時間で検知することが可能な電力変換装置、当該電力変換装置を備えるモータモジュールおよび当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置を提供する。

課題を解決するための手段

[0009]
本開示の例示的な電力変換装置は、電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータであって、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を有するn個のレグを有する第1インバータと、前記モータの各相の巻線の他端に接続される第2インバータであって、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を有するn個のレグを有する第2インバータと、前記第1および第2インバータにおけるスイッチ素子のオープン故障を検知する故障検知装置と、前記故障検知装置が演算処理するデータを格納するメモリと、を備え、前記故障検知装置は、dq座標系において表現されるd軸電流および零相電流を故障検知の基準時刻で獲得し、獲得した前記d軸電流および零相電流のデータを前記メモリに書き込み、獲得した前記d軸電流および零相電流の差分の絶対値に基づいて、前記第1および第2インバータにおけるスイッチ素子のオープン故障を検知する。

発明の効果

[0010]
本開示の例示的な実施形態によると、故障検知の基準時刻よりも前に獲得した過去のデータ群を参照することにより、インバータのスイッチ素子の故障をより短時間で検知することが可能な電力変換装置、当該電力変換装置を備えるモータモジュールおよび当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置が提供される。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、例示的な実施形態1によるインバータユニット100の回路構成を示す回路図である。
[図2] 図2は、例示的な実施形態1によるモータモジュール2000のブロック構成を示し、主として電力変換装置1000のブロック構成を示すブロック構成図である。
[図3] 図3は、三相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、B相およびC相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示するグラフである。
[図4] 図4は、Hブリッジの構成を示す模式図である。
[図5] 図5は、A相Hブリッジのスイッチ素子L1がオープン故障した場合の三相電流Ia、IbおよびIcのシミュレーション結果の波形を例示するグラフである。
[図6] 図6は、故障検知装置340の内部レジスタ341に記録される三相電流のデータ群のテーブルを例示する図である。
[図7] 図7は、巻線M1が断線した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のB相、C相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示するグラフである。
[図8] 図8は、巻線M2が断線した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、C相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示するグラフである。
[図9] 図9は、巻線M3が断線した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、B相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示するグラフである。
[図10A] 図10Aは、A相Hブリッジのハイサイド側のスイッチ素子がオープン故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示すグラフである。
[図10B] 図10Bは、A相Hブリッジのハイサイド側のスイッチ素子がショート故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示すグラフである。
[図10C] 図10Cは、A相Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子がオープン故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示すグラフである。
[図10D] 図10Dは、A相Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子がショート故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示すグラフである。
[図11] 図11は、内部レジスタ341に記録される、d軸電流、q軸電流、零相電流およびq軸電圧のデータ群のテーブルを例示する図である。
[図12] 図12は、例示的な実施形態3による電動パワーステアリング装置3000の典型的な構成を示す模式図である。

発明を実施するための形態

[0012]
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。 
[0013]
本明細書において、電源からの電力を、三相(A相、B相、C相)の巻線を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、電源からの電力を、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。 
[0014]
(実施形態1)

 〔1-1.インバータユニット100の構造〕

 図1は、本実施形態によるインバータユニット100の回路構成を模式的に示している。 
[0015]
インバータユニット100は、電源遮断回路110、第1インバータ120および第2インバータ130を備える。インバータユニット100は、電源101A、101Bからの電力を、モータ200に供給する電力に変換することができる。例えば、第1および第2インバータ120、130は、直流電力を、A相、B相およびC相の擬似正弦波である三相交流電力に変換することが可能である。 
[0016]
モータ200は、例えば、三相交流モータである。モータ200は、A相の巻線M1、B相の巻線M2およびC相の巻線M3を備え、第1インバータ120と第2インバータ130とに接続される。具体的に説明すると、第1インバータ120はモータ200の各相の巻線の一端に接続され、第2インバータ130は各相の巻線の他端に接続される。本明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」は、主に電気的な接続を意味する。 
[0017]
第1インバータ120は、各相に対応した端子A_L、B_LおよびC_Lを有する。第2インバータ130は、各相に対応した端子A_R、B_RおよびC_Rを有する。第1インバータ120の端子A_Lは、A相の巻線M1の一端に接続され、端子B_Lは、B相の巻線M2の一端に接続され、端子C_Lは、C相の巻線M3の一端に接続される。第1インバータ120と同様に、第2インバータ130の端子A_Rは、A相の巻線M1の他端に接続され、端子B_Rは、B相の巻線M2の他端に接続され、端子C_Rは、C相の巻線M3の他端に接続される。このようなモータ結線は、いわゆるスター結線およびデルタ結線とは異なる。 
[0018]
電源遮断回路110は、第1から第4スイッチ素子111、112、113および114を有する。インバータユニット100において、第1インバータ120は、電源遮断回路110によって電源101AとGNDとに電気的に接続可能である。第2インバータ130は、電源遮断回路110によって電源101BとGNDとに電気的に接続可能である。具体的に説明すると、第1スイッチ素子111は、第1インバータ120とGNDとの接続・非接続を切替える。第2スイッチ素子112は、電源101と第1インバータ120との接続・非接続を切替える。第3スイッチ素子113は、第2インバータ130とGNDとの接続・非接続を切替える。第4スイッチ素子114は、電源101と第2インバータ130との接続・非接続を切替える。 
[0019]
第1から第4スイッチ素子111、112、113および114のオン・オフは、例えばマイクロコントローラまたは専用ドライバによって制御され得る。第1から第4スイッチ素子111、112、113および114は、双方向の電流を遮断することが可能である。第1から第4スイッチ素子111、112、113および114として、例えば、サイリスタ、アナログスイッチIC、または寄生ダイオードが内部に形成された電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)などの半導体スイッチ、および、メカニカルリレーなどを用いることができる。ダイオードおよび絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの組み合わせを用いても構わない。本明細書の図面には、第1から第4スイッチ素子111、112、113および114として、MOSFETを用いる例を示す。以降、第1から第4スイッチ素子111、112、113および114を、SW111、112、113および114とそれぞれ表記する場合がある。 
[0020]
SW111は、内部の寄生ダイオードに順方向電流が第1インバータ120に向けて流れるよう配置される。SW112は、寄生ダイオードに順方向電流が電源101Aに向けて流れるよう配置される。SW113は、寄生ダイオードに順方向電流が第2インバータ130に向けて流れるよう配置される。SW114は、寄生ダイオードに順方向電流が電源101Bに向けて流れるよう配置される。 
[0021]
電源遮断回路110は、図示するように、逆接続保護用の第5および第6スイッチ素子115、116をさらに有していることが好ましい。第5および第6スイッチ素子115、116は、典型的に、寄生ダイオードを有するMOSFETの半導体スイッチである。第5スイッチ素子115は、SW112に直列に接続され、寄生ダイオードにおいて第1インバータ120に向けて順方向電流が流れるよう配置される。第6スイッチ素子116は、SW114に直列に接続され、寄生ダイオードにおいて第2インバータ130に向けて順方向電流が流れるよう配置される。電源101A、101Bが逆向きに接続された場合でも、逆接続保護用の2つのスイッチ素子によって逆電流を遮断することができる。 
[0022]
図示する例に限られず、使用するスイッチ素子の個数は、設計仕様などを考慮して適宜決定される。特に車載分野においては、安全性の観点から高い品質保証が要求されるので、各インバータ用として複数のスイッチ素子を設けておくことが好ましい。 
[0023]
電源は、第1インバータ120用の電源101Aおよび第2インバータ130用の電源101Bを備えることができる。電源101A、101Bは所定の電源電圧(例えば、12V)を生成する。電源として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源は、AC-DCコンバータおよびDC-DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であっても良い。また、電源101は、第1および第2インバータ120、130に共通の単一電源であってもよい。  
[0024]
電源101A、101Bと電源遮断回路110との間にコイル102が設けられている。コイル102は、ノイズフィルタとして機能し、各インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、または各インバータで発生する高周波ノイズを電源側に流出させないように平滑化する。 
[0025]
各インバータの電源端子には、コンデンサ103が接続される。コンデンサ103は、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサ103は、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。 
[0026]
第1インバータ120は、3個のレグを有するブリッジ回路を備える。各レグは、ローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を有する。A相レグは、ローサイドスイッチ素子121Lおよびハイサイドスイッチ素子121Hを有する。B相レグは、ローサイドスイッチ素子122Lおよびハイサイドスイッチ素子122Hを有する。C相レグは、ローサイドスイッチ素子123Lおよびハイサイドスイッチ素子123Hを有する。スイッチ素子として、例えばFETまたはIGBTを用いることができる。以下、スイッチ素子としてMOSFETを用いる例を説明し、スイッチ素子をSWと表記する場合がある。例えば、スイッチ素子121L、122Lおよび123Lは、SW121L、122Lおよび123Lと表記される。 
[0027]
第1インバータ120は、A相、B相およびC相の各相の巻線に流れる電流を検出するための電流センサ150(図3を参照)として、3個のシャント抵抗121R、122Rおよび123Rを備える。電流センサ150は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を含む。例えば、シャント抵抗121R、122Rおよび123Rは、第1インバータ120の3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチ素子とGNDとの間にそれぞれ接続される。具体的には、シャント抵抗121RはSW121LとSW111との間に電気的に接続され、シャント抵抗122RはSW122LとSW111との間に電気的に接続され、シャント抵抗123RはSW123LとSW111との間に電気的に接続される。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ~1.0mΩ程度である。 
[0028]
第2インバータ130は、第1インバータ120と同様に、3個のレグを有するブリッジ回路を備える。A相レグは、ローサイドスイッチ素子131Lおよびハイサイドスイッチ素子131Hを有する。B相レグは、ローサイドスイッチ素子132Lおよびハイサイドスイッチ素子132Hを有する。C相レグは、ローサイドスイッチ素子133Lおよびハイサイドスイッチ素子133Hを有する。また、第2インバータ130は、3個のシャント抵抗131R、132Rおよび133Rを備える。それらのシャント抵抗は、3個のレグに含まれる3個のローサイドスイッチ素子とGNDとの間に接続される。 
[0029]
各インバータに対し、シャント抵抗の数は3つに限られない。例えば、A相、B相用の2つのシャント抵抗、B相、C相用の2つのシャント抵抗、および、A相、C相用の2つのシャント抵抗を用いることが可能である。使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストおよび設計仕様などを考慮して適宜決定される。 
[0030]
上述したとおり、第2インバータ130は、第1インバータ120の構造と実質的に同じ構造を備える。図1では、説明の便宜上、紙面の左側のインバータを第1インバータ120と表記し、右側のインバータを第2インバータ130と表記している。ただし、このような表記は、本開示を限定する意図で解釈されてはならない。第1および第2インバータ120、130は、インバータユニット100の構成要素として区別なく用いられ得る。 
[0031]
〔1-2.電力変換装置1000およびモータモジュール2000の構造〕

 図2は、本実施形態によるモータモジュール2000のブロック構成を模式的に示し、主として電力変換装置1000のブロック構成を模式的に示している。 
[0032]
モータモジュール2000は、インバータユニット100および制御回路300を有する電力変換装置1000と、モータ200とを備える。 
[0033]
モータモジュール2000は、モジュール化され、例えば、モータ、センサ、ドライバおよびコントローラを有する機電一体型モータとして製造および販売され得る。また、モータ200以外の電力変換装置1000もモジュール化されて製造および販売され得る。 
[0034]
制御回路300は、例えば、電源回路310と、角度センサ320と、入力回路330と、コントローラ340と、駆動回路350と、ROM360とを備える。制御回路300は、インバータユニット100に接続され、インバータユニット100を制御することによりモータ200を駆動する。 
[0035]
具体的には、制御回路300は、目的とするモータ200のロータの位置、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。なお、制御回路300は、角度センサ320に代えてトルクセンサを備えてもよい。この場合、制御回路300は、目的とするモータトルクを制御することができる。 
[0036]
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。角度センサ320は、例えばレゾルバまたはホールICである。または、角度センサ320は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ320は、ロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号をコントローラ340に出力する。 
[0037]
入力回路330は、電流センサ150によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取って、実電流値のレベルをコントローラ340の入力レベルに必要に応じて変換し、実電流値をコントローラ340に出力する。入力回路330は、例えばアナログデジタル変換回路である。 
[0038]
コントローラ340は、電力変換装置1000の全体を制御する集積回路であり、例えば、マイクロコントローラまたはFPGA(Field Programmable Gate Array)である。 
[0039]
コントローラ340は、インバータユニット100の第1および第2インバータ120、130における各SWのスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御する。コントローラ340は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路350に出力する。また、コントローラ340は、インバータユニット100の電源遮断回路110における各SWのオン・オフを制御することができる。 
[0040]
コントローラ340は、さらに、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知することができる。そのため、スイッチ素子の故障の有無を検知する動作を説明するとき、本明細書ではその動作の主体として「コントローラ340」を「故障検知装置340」と表記する場合がある。 
[0041]
駆動回路350は、典型的にはゲートドライバ(またはプリドライバ)である。駆動回路350は、第1および第2インバータ120、130における各SWのMOSFETのスイッチング動作を制御する制御信号(ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各SWのゲートに制御信号を与える。また、駆動回路350は、電源遮断回路110における各SWのオン・オフを制御する制御信号を、コントローラ340からの指示に従って生成することができる。駆動対象が低電圧で駆動可能なモータであるとき、ゲートドライバは必ずしも必要とされない場合がある。その場合、ゲートドライバの機能は、コントローラ340に実装され得る。 
[0042]
ROM360は、コントローラ340に電気的に接続される。ROM360は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)または読み出し専用のメモリである。ROM360は、コントローラ340に電力変換装置1000を制御させるための命令群、および、後述するスイッチ素子の故障検知を実行させるための命令群を含む制御プログラムを格納している。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。 
[0043]
〔1-3.スイッチ素子の故障検知〕

 先ず、電力変換装置1000の正常時の制御方法の具体例を説明する。正常とは、第1インバータ120、第2インバータ130および電源遮断回路110の各SWは故障しておらず、かつ、モータ200の三相の巻線M1、M2およびM3のいずれも故障していない状態を指す。本明細書では、電源遮断回路110の逆接続保護用のSW115、116は常時オン状態であるとする。 
[0044]
正常時において、制御回路300は、電源遮断回路110のSW111、112、113および114を全てオンする。これにより、電源101Aと第1インバータ120とが電気的に接続され、かつ、電源101Bと第2インバータ130とが電気的に接続される。また、第1インバータ120とGNDとが電気的に接続され、かつ、第2インバータ130とGNDとが電気的に接続される。この接続状態において、制御回路300は、第1および第2インバータ120、130の両方を用いて巻線M1、M2およびM3を通電することによりモータ200を駆動する。本明細書において、三相の巻線を通電することを「三相通電制御」と呼び、二相の巻線を通電することを「二相通電制御」と呼ぶこととする。 
[0045]
図3は、三相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、B相およびC相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。図3の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。I pkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。 
[0046]
図3に示される電流波形において、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に「0」となる。ただし、電力変換装置1000の回路構成によれば、三相の巻線に流れる電流を独立に制御することができるため、電流の総和が「0」とはならない制御を行うことも可能である。例えば、制御回路300は、図3に示される電流波形が得られるPWM制御によって第1および第2インバータ120、130の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する。 
[0047]
故障検知装置(つまりコントローラ)340は、モータ200の三相電流およびdq座標系(dqz回転座標系とも表記され得る。)において表現される電流・電圧の少なくとも1つに基づいて、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知することができる。dq座標系の電流・電圧とは、例えば零相電流であり、その詳細は後述する。 
[0048]
故障検知装置340は、例えばベクトル制御に基づいてモータ200を駆動しながら、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知することが可能である。例えば、電力変換装置1000に電源が投入されモータ制御が開始すると、故障検知装置340は、その開始に応答してスイッチ素子の故障の検知を開始する。例えば、故障検知装置340は、モータ200を制御する期間中はスイッチ素子の故障の検知を継続してもよいし、指定された期間においてのみ(例えば定期的に)スイッチ素子の故障の検知を実施してもよい。 
[0049]
スイッチ素子の故障を説明する。スイッチ素子の故障とは、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障を意味する。スイッチ素子の故障には、大きく分けて「オープン故障」と「ショート故障」とがある。「オープン故障」は、FETのソース-ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース-ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース-ドレイン間が短絡する故障を指す。 
[0050]
電力変換装置1000を長期間使用すると、2つのインバータの複数のSWのうちの少なくとも1つが故障する可能性がある。これらの故障は、製造時に発生し得る製造故障とは異なる。複数のスイッチ素子のうちの1つでも故障すると、正常時の三相通電制御は不可能となる。故障検知装置340は、そのスイッチ素子の故障を検知する。 
[0051]
スイッチ素子の故障検知の概要は下記のとおりである。 
[0052]
故障検知装置(コントローラ)340は、モータ200の三相電流およびdq座標系において表現される電流・電圧の少なくとも1つを所定の周期毎に獲得し、獲得した電流・電圧のデータを例えばコントローラ内部のレジスタ341(図2を参照)に書き込む。内部レジスタ341は、故障検知装置340が演算処理するデータを格納する。故障検知装置340は、故障検知の基準時刻で獲得した電流・電圧のデータと、その基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数の電流・電圧のデータを含む過去のデータ群との比較結果に基づいて第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知する。所定の周期は、モータの電気角の一周期および一周期の間に電流・電圧のデータを獲得するポイント数から決定される。所定の周期は、例えば、100μsである。 
[0053]
<A.三相電流に基づくスイッチ素子の故障検知>

 この例では、故障検知装置340は、モータ200の三相電流を所定の周期毎に獲得し、内部レジスタ341に書き込む。故障検知装置340は、基準時刻で獲得した三相電流のデータと、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数の三相電流のデータ群との比較結果に基づいて第1および第2インバータ120,130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知する。換言すると、故障検知装置340は、内部レジスタ341に記録された三相電流に関する過去のデータ群に基づいてスイッチ素子の故障の有無を検知する。 
[0054]
図4は、各相のHブリッジを模式的に示している。各相のHブリッジは、第1インバータ120のハイサイド側のスイッチ素子H1、ローサイド側のスイッチ素子L1、第2インバータ130のハイサイド側のスイッチ素子H2、ローサイド側のスイッチ素子L2および巻線Mを有する。 
[0055]
本発明者は、Hブリッジのスイッチ素子に故障が生じた後の三相電流Ia、IbおよびIcの挙動を検証するためにシミュレーションを実施した。A相Hブリッジのスイッチ素子L1(図1のSW121Lに相当)がオープン故障する時刻を0.01msとした条件下で本シミュレーションを実施した。 
[0056]
図5は、A相Hブリッジのスイッチ素子L1がオープン故障した場合の三相電流Ia、IbおよびIcのシミュレーション結果の波形を例示している。図5の上下のグラフの横軸は時間〔s〕を示し、縦軸は電流〔A〕を示している。上側のグラフは、0s~0.02sまでの三相電流Ia、IbおよびIcの波形を例示しており、下側のグラフは、上側のグラフの三相電流Ia、IbおよびIcの波形の9.6msから11msまでの部分の波形を拡大して示している。 
[0057]
図5に示す三相電流の波形は、0.1msの周期で獲得される三相電流Ia、IbおよびIcのデータに基づいている。例えば、A相Hブリッジのスイッチ素子L1がオープン故障したとすると、図示するように、A相の相電流Iaは変動して特異な挙動を示す期間が生じる。より具体的には、Hブリッジのローサイドまたはハイサイドスイッチ素子がオープン故障すると、相電流はゼロになり変化しない期間を観測することができる。これは、例えばベクトル制御におけるPI(Proportional-Integral)制御の目標電流または目標電圧に対し、A相の実電流または実電圧が追従できなくなったことに起因する。なお、B相、C相ブリッジは故障していないので、相電流Ib、Icに特異な変化は見られない。 
[0058]
図6は、故障検知装置340の内部レジスタ341に記録される三相電流のデータ群のテーブルを例示している。図6のテーブルには、図5のグラフの9.6msから11msの間に獲得した14ポイント分のA相、B相の相電流Ia、Ibの値を示している。なお、C相の相電流Icの値は示していない。 
[0059]
故障検知装置340は、例えば、モータの電気角の一周期の間に0.1ms毎に獲得する三相電流の最新のデータ群を内部レジスタ341に書き込み、内部レジスタ341に記録されるデータ群を電気角の一周期毎に更新する。例えば、故障検知装置340として、データ幅8ビットの内部レジスタを有するマイクロコントローラを用いることができる。または、内部レジスタ341に代えて専用バッファ(不図示)を用いることができる。そのバッファは、電気角の一周期の間に獲得する三相電流の最新のデータ群を記録できる容量を有していればよい。 
[0060]
故障検知装置340は、例えば、モータの電気角の一周期のうちの一部の期間に獲得する三相電流のデータ群を最新のデータ群として内部レンジスタに書き込んでも構わない。その場合、所定の周期は、その一部の期間およびその期間に電流・電圧のデータを獲得するポイント数から決定される。 
[0061]
基準時刻は、最新のデータ群の中の最新のデータを獲得または算出する時刻である。換言すると、基準時刻は、スイッチ素子の故障検知において最新のデータを獲得または算出する最新の時刻であり、時間の経過と共に変化する。ただし、基準時刻は、最新のデータ群の中において任意に設定することができる。最新のデータ群の中のあるデータを獲得した時刻を基準時刻とし、その基準時刻よりも前の時刻で獲得したデータ群を過去のデータ群として扱うことができる。 
[0062]
例えば、故障検知の基準時刻は時刻11ms(ポイントNo.13に相当)にあるときを見てみる。その基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数の電流・電圧のデータを含む過去のデータ群は、ポイントNo.0~12(9.6ms~10.9ms)までの合計13ポイントにおいて獲得された三相電流のデータ群から構成される。この過去のデータ群は、上述した最新のデータ群(電気角の一周期分のデータ群)に含まれている。換言すると、過去のデータ群は最新のデータ群の一部である。 
[0063]
故障検知装置340は、基準時刻(ポイントNo.13)のデータと、過去(ポイントNo.0~12)のデータ群とを比較する。図6のテーブルにおいて、基準時刻から過去7ポイントまでの8ポイントの期間にA相の相電流にゼロが連続することが観測される。故障検知装置340は、基準時刻から遡る所定ポイント(例えば8ポイント)の期間にA相の相電流にゼロが連続する場合、A相のHブリッジの故障を特定する。Hブリッジの故障は、4つのスイッチ素子H1、L1、H2およびL2のうちの少なくとも1つがオープン故障することを指す。 
[0064]
故障検知装置340は、A相のHブリッジのローサイドスイッチ素子121Lにオープン故障が発生してから、基準時刻(11ms)においてその故障を確定することができる。これに対し、故障検知装置340は、過去のデータ群の中のB相、C相(不図示)のデータ群に基づいて、B相、C相のHブリッジの故障は発生していないと基準時刻では判定する。 
[0065]
従来のスイッチ素子の故障検知では、例えば、スイッチ素子の故障検知の開始を知らせるトリガーに応答してスイッチ素子の故障検知がなされていた。その場合、そのトリガーに応答してスイッチ素子の故障検知に必要なデータが取得され、取得したデータに基づいてスイッチ素子の故障検知がなされることとなる。そのため、スイッチ素子の故障検知により多くの時間が費やされていた。モータを制御している期間中に、スイッチ素子の故障検知を同時並行的に行う場合、モータ制御に影響を与えないよう、検知時間を可能な限り短くすることが望ましい。 
[0066]
本実施形態によれば、故障検知の基準時刻よりも前の時刻で取得した過去のデータ群に基づいてスイッチ素子の故障検知を行う。スイッチ素子の故障を検知するためにデータを新たに取得しなくてもよい。そのため、新たなデータ取得が不要となり、スイッチ素子の故障検知をより短時間で行うことが可能となる。その結果、例えば、モータ制御を三相通電制御から後述する二相通電制御に迅速に切替えることが可能となる。 
[0067]
故障検知装置340は、スイッチ素子のオープン故障を検知すると、モータの制御モードを正常時の三相通電制御から異常時の二相通電制御に切替えることができる。本明細書において、三相の巻線を通電することを「三相通電制御」と呼び、二相の巻線を通電することを「二相通電制御」と呼ぶこととする。 
[0068]
例えば、故障検知装置340は、A相のHブリッジの故障を検知すると、A相以外のB相、C相のHブリッジを用いて巻線M2、M3を通電する二相通電制御を行うことができる。故障検知装置340は、B相のHブリッジの故障を検知すると、B相以外のA相、C相のHブリッジを用いて巻線M1、M3を通電する二相通電制御を行うことができる。故障検知装置340は、C相のHブリッジの故障を検知すると、C相以外のA相、B相のHブリッジを用いて巻線M1、M2を通電する二相通電制御を行うことができる。 
[0069]
図7は、A相Hブリッジが故障した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のB相、C相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示している。図8は、B相Hブリッジが故障した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、C相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示している。図9は、C相Hブリッジが故障した場合、二相通電制御に従って電力変換装置1000を制御したときにモータ200のA相、B相の各巻線に流れる電流値をプロットして得られる電流波形を例示している。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。図7から図9の電流波形において、電気角30°毎に電流値をプロットしている。Ipkは各相の通電制御時の各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。
[0070]
<B.dq座標系の電流・電圧に基づくスイッチ素子の故障検知>

 図1に示すような2つのインバータが巻線の一端および他端にそれぞれ接続される構成、すなわち、相毎のHブリッジを備える回路構成では、三相の巻線に流れる電流を独立に制御することが可能となり、その場合、零相電流が流れ得る。零相電流は、z相電流とも呼ばれる。なお、dq座標系において、零相に対応する軸をz軸として表している。故障検知装置340は、例えば零相電流を監視し、その電流の変化に応じて第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障を検知することができる。 
[0071]
故障検知装置340は、dq座標系で表現される電流・電圧を監視の対象とし得る。dq座標系の電流・電圧は、d軸電流、q軸電流、零相電流、d軸電圧、q軸電圧およびz相電圧の少なくとも1つを指す。監視の対象とされるdq座標系の電流・電圧は、零相電流を含んでいることが好ましい。本実施形態では、dq座標系の電流・電圧として、主に零相電流を利用する実施例を説明する。 
[0072]
故障検知装置(つまりコントローラ)340は、dq座標系で表現される電流・電圧を所定の周期毎に獲得する。所定の周期は、例えば0.1msである。故障検知装置340は、例えば、故障検知を行う故障検知ユニットを有する。例えば、故障検知ユニットは、変換行列を用いて、電流Ia、IbおよびIcを、dqz回転座標系における、d軸電流Id、q軸電流Iqおよび零相電流Izに変換する。または、コントローラ340は、典型的に、ベクトル制御を行う制御ユニットを有する。故障検知ユニットは、d軸電流、q軸電流、零相電流、d軸電圧、q軸電圧およびz相電圧のうちの必要なデータを制御ユニットから受け取ることも可能である。このように、故障検知装置340は、dq座標系のこれらの電流・電圧の少なくとも1つを獲得する。 
[0073]
本発明者は、Hブリッジのスイッチ素子に故障が生じた後の三相電流Ia、Ib、Ic、d軸電流、q軸電流および零相電流の挙動を検証するためにシミュレーションを実施した。A相Hブリッジのスイッチ素子H1またはL1(図1のSW121Hまたは121Lに相当)がオープンまたはショート故障する時刻を0.015sとした条件下で本シミュレーションを実施した。 
[0074]
図10Aは、A相Hブリッジのハイサイド側のスイッチ素子がオープン故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示している。図10Bは、A相Hブリッジのハイサイド側のスイッチ素子がショート故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示している。図10Cは、A相Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子がオープン故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示している。図10Dは、A相Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子がショート故障した場合に得られる、三相電流、d軸電流、q軸電流および零相電流のシミュレーション結果の波形を示している。グラフの横軸は時間(s)を示し、縦軸は電流(A)を示す。 
[0075]
本シミュレーションにおいて、スイッチ素子が故障した後、三相電流のうちの相電流Iaは変動して特異な挙動を示す期間が生じることが分かる。特にオープン故障の場合に、相電流はゼロになり変化しない期間を観測することができる。これは既に説明したとおりである。ショート故障の場合においても、相電流Iaの変動を確認できる。 
[0076]
dq座標系におけるd軸電流、q軸電流および零相電流に着目する。dq座標系における電流は、DC成分と見なすことができるので、正常時の三相通電制御において変化しない。しかし、スイッチ素子が故障すると、d軸電流、q軸電流および零相電流の変動を観測することができる。これは、A相の相電流Iaの変動に起因している。この現象は、A相の相電流Iaの変動に限られず、B相の相電流IbまたはC相の相電流Icの変動に起因しても観測される。このように、dq座標系における電流(または電圧)の変化を監視することにより、2つのインバータにおける少なくとも1つのスイッチ素子の故障を検知することができる。なお、dq座標系におけるd軸電圧、q軸電圧は、abc相電圧に基づいて算出される。 
[0077]
故障検知装置340は、例えば、dq座標系におけるd軸電流、q軸電流、零相電流およびq軸電圧を三相電流に基づいて獲得し、獲得したそれらのデータを内部レジスタ341に書き込む。故障検知装置340は、基準時刻で獲得したデータと、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のデータ群との比較結果に基づいて、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障の有無を検知する。 
[0078]
図11は、内部レジスタ341に記録される、d軸電流、q軸電流、零相電流およびq軸電圧のデータ群のテーブルを例示している。テーブルには、獲得した最新のデータ群の中の5ポイント分のデータを示している。故障検知装置340は、そのテーブルを参照して、dq座標系の電流・電圧の変動を監視し、例えば零相電流の変動を監視する。故障検知装置340は、基準時刻のポイントの値が過去のデータ群の値から外れている場合、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子の故障を検知する。 
[0079]
故障検知の基準時刻はポイントT+3にあるとき、故障検知装置340は、基準時刻のIz値「20」は、基準時刻よりも前の時刻に取得された過去のデータ群:ポイントT、T+1、T+2におけるIz値「6.8」、「5」、「7」から外れていると判定する。この判定には、例えばROM360に予め保持された閾値を用いることができる。基準時刻のIz値と過去のデータ群に含まれる各Iz値との差分がいずれも閾値以下である場合、故障検知装置340は、スイッチ素子の故障を検知しない。一方、その差分が閾値よりも大きい場合、故障検知装置340は、第1および第2インバータ120、130における少なくとも1つのスイッチ素子がオープン故障またはショート故障していると判定することができる。 
[0080]
例えば閾値として値「3」を用いた場合、故障検知装置340は、基準時刻はポイントT+2にあるとき、スイッチ素子の故障を検出せず、基準時刻はポイントT+3に移ってスイッチ素子の故障を初めて確定することができる。このように、故障検知装置340は、DC成分であるdq座標系の電流・電圧の変動を監視することにより、スイッチ素子の故障を検知できる。 
[0081]
コントローラ340の故障検知ユニットは、スイッチ素子のショート故障またはオープン故障を検知すると、例えば、モータ制御シャットダウン信号を生成し、制御ユニットに出力してもよい。制御ユニットは、その信号に応答して三相通電制御をシャットダウンしてもよい。これにより、例えば電動パワーステアリング(EPS)装置において、制御モードをトルクのアシストモードからマニュアルステアリングモードに切替えることができる。 
[0082]
本実施例によれば、DC成分であるdq座標系における信号変化を監視することにより、基準時刻で獲得したデータと、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のデータ群との比較がよりし易くなる。そのため、例えばマイクロコントローラへの実装において回路規模またはメモリサイズの縮小といった利点が得られる。さらに、過去のデータ群に基づいて故障検知を行うことにより、故障検知をより短い時間で行うことが可能となる。 
[0083]
(実施形態2)

 本実施形態による故障検知装置340は、獲得したd軸電流および零相電流の差分の絶対値に基づいて、第1および第2インバータ120、130におけるスイッチ素子のオープン故障を検知する。本実施形態による、インバータユニット、制御回路および電力変換装置は、例えば図1、2に示す構造を備える。以下、実施形態1との差異点を主に説明する。 
[0084]
再び、図10Aから図10Dを参照する。 
[0085]
上述したとおり、例えばA相Hブリッジの第1インバータ120側のSW121Hまたは121Lがオープン故障(またはショート故障)すると、dq座標系の電流・電圧の信号に変動が観測される。図10Aまたは図10CのIdqzの波形に見られるように、スイッチ素子のオープン故障が発生するとd軸電流Idと零相電流Izの差分の絶対値は、故障発生の前と比べて増加する。故障検知装置340は、その挙動を観測することにより、スイッチ素子のオープン故障を検知できる。 
[0086]
故障検知装置340は、d軸電流および零相電流を例えば0.1ms毎に獲得し、獲得したd軸電流および零相電流のデータを内部レジスタ341に書き込む。故障検知装置340は、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のd軸電流および零相電流のデータを含む過去のデータ群に基づいて、スイッチ素子のオープン故障を検知する。具体的に説明すると、故障検知装置340は、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のd軸電流のデータを含む過去の第1データ群と、基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数の零相電流のデータを含む過去の第2データ群との差分の絶対値に基づいて、スイッチ素子のオープン故障を検知する。 
[0087]
ここで、2つのデータ群の差分の絶対値を説明する。例えば、第1データ群は、ポイントNo.1~20までの間に獲得した過去の20個のd軸電流のデータから構成され、第2データ群は、ポイントNo.1~20までの間に獲得した過去の20個の零相電流のデータから構成されるとする。その場合、第1および第2データ群の差分の絶対値は、それぞれのポイントにおけるd軸電流および零相電流の差分の絶対値(20ポイント分)を含むデータ群を意味する。 
[0088]
例えば、故障検知装置340は、基準時刻で獲得したd軸電流と零相電流の差分の絶対値、または、第1および第2データ群の差分の絶対値が所定の閾値を超える場合、スイッチ素子のオープン故障を検知する。所定の閾値は、例えばROM360に予め格納されている。例えば電流の変動幅が10Aである場合、所定の閾値は、10Aである。 
[0089]
一例において、故障検知装置340は、スイッチ素子のオープン故障の検知を開始した後、ある基準時刻において獲得したd軸電流と零相電流の差分の絶対値が閾値を最初に超えるとき、Hブリッジのスイッチ素子のオープン故障を検知する。このように、スイッチ素子のオープン故障の検知が開始された後の絶対値の最初の変動が観測される。この検知手法によれば、故障検知装置340は、獲得したデータを内部レジスタ341に書き込まなくてもよい。三相のHブリッジの中でオープン故障したスイッチ素子を含むHブリッジを特定することが可能となる。 
[0090]
他の一例として、故障検知装置340は、スイッチ素子のオープン故障の検知を開始した後、第1データ群と第2データ群の差分の絶対値が閾値を最初に超えるとき、Hブリッジのスイッチ素子のオープン故障を検知する。第1データ群と第2データ群の差分の絶対値が閾値を超えるとは、上述した、各ポイントにおけるd軸電流および零相電流の差分の絶対値が閾値を超えることを指す。換言すると、d軸電流および零相電流の差分の絶対値が閾値を超える期間が継続することを意味する。故障検知装置340は、例えば20ポイントに相当する期間中にそのような挙動を確認し、スイッチ素子のオープン故障を検知する。 
[0091]
故障検知装置340は、オープン故障が、Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子またはハイサイド側のスイッチ素子において発生しているかを特定することができる。故障検知装置340は、スイッチ素子のオープン故障の検知を開始した後、絶対値が所定の閾値を最初に超え、かつ、そのときのd軸電流が零相電流よりも大きい場合に、Hブリッジのハイサイド側のスイッチ素子のオープン故障を検知する(図10Aを参照)。一方、故障検知装置340は、スイッチ素子のオープン故障の検知を開始した後、絶対値が所定の閾値を最初に超え、かつ、そのときのd軸電流が零相電流未満である場合に、Hブリッジのローサイド側のスイッチ素子のオープン故障を検知する(図10Cを参照)。 
[0092]
本実施形態によれば、d軸電流と零相電流の差分の絶対値を監視することにより、Hブリッジのスイッチ素子のオープン故障を検知することが可能となる。d軸電流と零相電流の大小関係をさらに監視することにより、オープン故障がHブリッジのローサイド側のスイッチ素子またはハイサイド側のスイッチ素子において発生しているかを特定することができる。 
[0093]
(実施形態3)

 図12は、本実施形態による電動パワーステアリング装置3000の典型的な構成を模式的に示している。 
[0094]
自動車等の車両は一般に、電動パワーステアリング装置を有する。本実施形態による電動パワーステアリング装置3000は、ステアリングシステム520、および補助トルクを生成する補助トルク機構540を有する。電動パワーステアリング装置3000は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリングシステムの操舵トルクを補助する補助トルクを生成する。補助トルクにより、運転者の操作の負担は軽減される。 
[0095]
ステアリングシステム520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522、自在軸継手523A、523B、回転軸524、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪529A、529Bを備える。 
[0096]
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、自動車用電子制御ユニット(ECU)542、モータ543および減速機構544を備える。操舵トルクセンサ541は、ステアリングシステム520における操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541の検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータ543は、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成する。モータ543は、減速機構544を介してステアリングシステム520に、生成した補助トルクを伝達する。 
[0097]
ECU542は、例えば、実施形態1または2によるコントローラ340および駆動回路350などを有する。自動車ではECUを核とした電子制御システムが構築される。電動パワーステアリング装置3000では、例えば、ECU542、モータ543およびインバータ545によって、モータ駆動ユニットが構築される。そのユニットに、実施形態1によるモータモジュール2000を好適に用いることができる。

産業上の利用可能性

[0098]
本開示の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。

符号の説明

[0099]
100  :インバータユニット  110  :電源遮断回路  120  :第1インバータ  130  :第2インバータ  150  :電流センサ  200  :モータ  300  :制御回路  310  :電源回路  320  :角度センサ  330  :入力回路  340  :コントローラ  350  :駆動回路  360  :ROM  1000  :電力変換装置  2000  :モータモジュール  3000  :電動パワーステアリング装置

請求の範囲

[請求項1]
電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、



 前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータであって、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を有するn個のレグを有する第1インバータと、



 前記モータの各相の巻線の他端に接続される第2インバータであって、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を有するn個のレグを有する第2インバータと、



 前記第1および第2インバータにおけるスイッチ素子のオープン故障を検知する故障検知装置と、



 前記故障検知装置が演算処理するデータを格納するメモリと、を備え、



 前記故障検知装置は、



  dq座標系において表現されるd軸電流および零相電流を故障検知の基準時刻で獲得し、獲得した前記d軸電流および零相電流のデータを前記メモリに書き込み、



  獲得した前記d軸電流および零相電流の差分の絶対値に基づいて、前記第1および第2インバータにおけるスイッチ素子のオープン故障を検知する、電力変換装置。
[請求項2]
前記故障検知装置は、



  前記dq座標系において表現されるd軸電流および零相電流を所定の周期毎に獲得し、獲得した前記d軸電流および零相電流のデータを前記メモリに書き込み、



  前記基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のd軸電流および零相電流のデータを含む過去のデータ群に基づいて、前記スイッチ素子のオープン故障を検知する、請求項1に記載の電力変換装置。
[請求項3]
前記故障検知装置は、前記基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数のd軸電流のデータを含む過去の第1データ群と、前記基準時刻よりも前の時刻で獲得した複数の零相電流のデータを含む過去の第2データ群との差分の絶対値に基づいて、前記スイッチ素子のオープン故障を検知する、請求項2に記載の電力変換装置。
[請求項4]
前記故障検知装置は、前記絶対値が所定の閾値を超える場合、前記スイッチ素子のオープン故障を検知する、請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。
[請求項5]
前記故障検知装置は、前記スイッチ素子のオープン故障の検知を開始した後、



  前記絶対値が前記所定の閾値を超え、かつ、d軸電流が零相電流よりも大きい場合、前記第1インバータのn個のレグ、前記第2インバータのn個のレグおよび前記n相の巻線を有するn個のHブリッジにおけるハイサイド側のスイッチ素子のオープン故障を検知し、



  前記絶対値が前記所定の閾値を超え、かつ、d軸電流が零相電流未満である場合、前記n個のHブリッジにおけるローサイド側のスイッチ素子のオープン故障を検知する、請求項4に記載の電力変換装置。
[請求項6]
前記所定の周期は、前記モータの電気角の一周期および前記一周期の間に前記d軸電流および零相電流のデータを獲得するポイント数から決定される、請求項2または3に記載の電力変換装置。
[請求項7]
前記第1インバータとグランドとの接続・非接続を切替える第1スイッチ素子と、



 前記第1インバータと前記電源との接続・非接続を切替える第2スイッチ素子と、



 前記第2インバータと前記グランドとの接続・非接続を切替える第3スイッチ素子と、



 前記第2インバータと前記電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子と、



をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。
[請求項8]
モータと、



 請求項1から7のいずれかに記載の電力変換装置と、



を備える、モータモジュール。
[請求項9]
請求項8に記載のモータモジュールを備える電動パワーステアリング装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10A]

[ 図 10B]

[ 図 10C]

[ 図 10D]

[ 図 11]

[ 図 12]