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1. WO2019049252 - ROTARY CUTTING TOOL

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明 細 書

発明の名称 回転切削工具

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

0004  

図面の簡単な説明

0005  

発明を実施するための形態

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052  

符号の説明

0053  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 回転切削工具

技術分野

[0001]
 本発明は、回転切削工具に関する。

背景技術

[0002]
 特開昭54-119198号公報(特許文献1)には、互いにねじれ方向の異なる切れ刃が設けられたルータ工具が記載されている。特開昭54-119198号公報に記載のルータ工具においては、有効刃長域において、切れ刃が複数の切れ刃領域に分断されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開昭54-119198号公報

発明の概要

[0004]
 本発明の一態様に係る回転切削工具は、本体部と、シャンク部とを備えている。本体部は、先端を有する。シャンク部は、先端とは反対側において本体部に連なる。本体部には、正のねじれ角を有する第1切れ刃と、負のねじれ角を有しかつ第1切れ刃から離間している第2切れ刃とが設けられている。第1切れ刃および第2切れ刃の各々は、先端からシャンク部まで連続的に設けられている。

図面の簡単な説明

[0005]
[図1] 図1は、本実施形態に係る回転切削工具の構成を示す斜視模式図である。
[図2] 図2は、本実施形態に係る回転切削工具を回転軸に垂直な方向から見た第1側面模式図である。
[図3] 図3は、本実施形態に係る回転切削工具を回転軸に垂直な方向から見た第2側面模式図である。
[図4] 図4は、本実施形態に係る回転切削工具を回転軸に平行な方向から見た正面模式図である。
[図5] 図5は、本実施形態に係る回転切削工具を図2のV-V線に沿った方向から見た断面模式図である。
[図6] 図6は、図5のVI領域の拡大模式図である。
[図7] 図7は、本実施形態に係る回転切削工具を用いた加工方法を示す一部断面模式図である。

発明を実施するための形態

[0006]
 [本開示が解決しようとする課題]
 有効刃長域において切れ刃が複数の切れ刃領域に分断されている場合、切削加工時において、複数の切れ刃領域の各々が被削材に断続的に喰い付く。そのため、切削抵抗が大きくなり、被削材にバリが発生することを十分に抑制することが困難であった。
[0007]
 本発明の一態様の目的は、被削材にバリが発生することを抑制することである。
 [本開示の効果]
 本発明の一態様によれば、被削材にバリが発生することを抑制することができる。
[0008]
 [本開示の実施形態の概要]
 まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
[0009]
 (1)本発明の一態様に係る回転切削工具1は、本体部3と、シャンク部2とを備えている。本体部3は、先端7を有する。シャンク部2は、先端7とは反対側において本体部3に連なる。本体部3には、正のねじれ角を有する第1切れ刃11と、負のねじれ角を有しかつ第1切れ刃11から離間している第2切れ刃21とが設けられている。第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、先端7からシャンク部2まで連続的に設けられている。
[0010]
 上記(1)に係る回転切削工具1によれば、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、先端7からシャンク部2まで連続的に設けられている。そのため、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々が断続的に設けられている場合と比較して、上記(1)に係る回転切削工具1においては、滑らかに切削が進行し、断続的な喰い付きが防止される。結果として、切削抵抗が低減するため、被削材にバリが発生することを抑制することができる。
[0011]
 (2)上記(1)に係る回転切削工具1において、本体部3の芯厚D2は、本体部3の直径D1の0.4倍以上0.9倍以下であってもよい。上記のように、本実施形態に係る回転切削工具1においては、切削抵抗が低減されている。そのため、本体部3が折損することを抑制しつつ、本体部3の芯厚D2を小さくすることができる。芯厚D2を小さくすることで、本体部3の溝を深く形成することができる。結果として、切り屑の排出性能を向上することができる。また溝を深く形成することにより、溝の表面積を大きくすることができる。結果として、本体部3の放熱性を向上することができる。そのため、本体部3が高温になることで、たとえば樹脂などの融点の低い被削材が溶解することを抑制することができる。
[0012]
 (3)上記(1)または(2)に係る回転切削工具1において、本体部3は、基材4と、基材4を被覆する被膜5とを含んでいてもよい。被膜5は、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンの少なくともいずれかを有していてもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の耐摩耗性または摺動性が向上する。結果として、回転切削工具1の寿命を向上することができる。また第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。さらに第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が向上することにより、芯厚D2をさらに小さくした場合であっても、本体部3が折損することを抑制することができる。そのため、芯厚D2をさらに小さくして、切り屑の排出性能をさらに向上することができる。また本体部3の放熱性をさらに向上することができる。
[0013]
 (4)上記(3)に係る回転切削工具1において、被膜5は、ダイヤモンドであってもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の耐摩耗性が向上する。結果として、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。
[0014]
 (5)上記(4)に係る回転切削工具1において、被膜5の厚みは、6μm以上20μm以下であってもよい。
[0015]
 (6)上記(5)に係る回転切削工具1において、ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドであってもよい。
[0016]
 (7)上記(6)に係る回転切削工具1において、ダイヤモンドは、多結晶ダイヤモンドであってもよい。多結晶ダイヤモンドの表層5aの平均粒径は、0.1μm以上5μm以下であってもよい。
[0017]
 (8)上記(3)に係る回転切削工具1において、被膜5は、ダイヤモンドライクカーボンであってもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の摺動性が向上する。結果として、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。
[0018]
 (9)上記(8)に係る回転切削工具1において、被膜5の厚みは、0.2μm以上2μm以下であってもよい。
[0019]
 (10)上記(3)~(9)のいずれかに係る回転切削工具1において、基材4の表面粗さは、0.2μm以上2.0μm以下であってもよい。これにより、被膜5と基材4との密着性が向上する。
[0020]
 (11)上記(3)~(10)のいずれかに係る回転切削工具1において、被膜5は、鉄、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくともいずれかの元素を含んでいてもよい。鉄、モリブデンおよびタングステンの各々は、炭素と反応して炭化物を形成する。そのため、被膜5と基材4との密着性がさらに向上する。
[0021]
 (12)上記(11)に係る回転切削工具1において、基材4に接する被膜5の部分において、少なくともいずれかの元素の総含有量は、1.0×10 15atoms/cm 3以上1.0×10 18atoms/cm 3以下であってもよい。
[0022]
 (13)上記(1)~(12)のいずれかに係る回転切削工具1において、先端7において、第1切れ刃11から第2切れ刃21までの周方向の位相角は、第2切れ刃21から第1切れ刃11までの周方向の位相角と異なっていてもよい。第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、ねじれ方向が異なるため、それぞれの切れ刃の軸方向切削力は互いに打消し合う。また第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切削周期が異なる。これにより、加工中のビビリが抑制される。
[0023]
 (14)上記(1)~(13)のいずれかに係る回転切削工具1において、正のねじれ角および負のねじれ角の各々の絶対値は、3°以上10°以下であってもよい。
[0024]
 [本開示の実施形態の詳細]
 次に、図に基づいて本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
[0025]
 まず、本実施形態に係る回転切削工具1の構成について説明する。
 図1、図2および図3に示されるように、本実施形態に係る回転切削工具1は、たとえばCFPR(Carbon Fiber Reinforced Plastic)などの繊維強化樹脂を加工するためのエンドミルであって、本体部3と、シャンク部2とを主に有している。回転切削工具1は、回転軸A(図2参照)の周りを回転可能に構成されている。本体部3は、先端7を有している。シャンク部2は、先端7とは反対側において本体部3に連なっている。シャンク部2は、後端6を有している。シャンク部2は、たとえばフライス盤の主軸に取り付けられる部分である。本体部3は、たとえば、第1すくい面13と、第1底面15と、第1逃げ面14と、第2すくい面23と、第2底面25と、第2逃げ面24とを有している。第1すくい面13は、第1底面15および第1逃げ面14の各々に連なっている。第2すくい面23は、第2底面25および第2逃げ面24の各々に連なっている。第1すくい面13と、第1逃げ面14との稜線は、第1切れ刃11を構成する。第1すくい面13と、第1底面15との稜線は、第1底刃12を構成する。第2すくい面23と、第2逃げ面24との稜線は、第2切れ刃21を構成する。第2すくい面23と、第2底面25との稜線は、第2底刃22を構成する。
[0026]
 本体部3には、第1切れ刃11と、第2切れ刃21とが設けられている。第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、本体部3の外周に設けられた外周切れ刃である。第1切れ刃11と、第2切れ刃21とは、周方向において交互に間隔を隔てて設けられている。第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、回転軸Aの周りを螺旋状に延在している。第2切れ刃21は、第1切れ刃11から離間している。第1切れ刃11は、第2切れ刃21と交差しない。第1切れ刃11は、正のねじれ角を有する。第2切れ刃21は、負のねじれ角を有している。別の観点から言えば、第1切れ刃11と第2切れ刃21とは、ねじれ方向が異なっている。第1切れ刃11が右ねじれの場合には、第2切れ刃21は左ねじれである。反対に、第1切れ刃11が左ねじれの場合には、第2切れ刃21は右ねじれである。
[0027]
 第1切れ刃11の数は、特に限定されないが、たとえば2以上である。第2切れ刃21の数は、特に限定されないが、たとえば2以上である。本体部3には、第1底刃12と、第2底刃22とが設けられていてもよい。第1底刃12は、第1切れ刃11と連なっていてもよい。第2底刃22は、第2切れ刃21と連なっていてもよい。第1底刃12と、第2底刃22とは、周方向において交互に設けられている。第1底刃12の数は、特に限定されないが、たとえば2以上である。第2底刃22の数は、特に限定されないが、たとえば2以上である。本体部3には、第1溝16と、第2溝26と、第3溝17と、第4溝27とが設けられていてもよい。第1溝16は、第3溝17よりも後端側に位置する。第2溝26は、第4溝27よりも後端側に位置する。第1溝16は、第1すくい面13と連なっている。第2溝26は、第2すくい面23と連なっている。シャンク部2には、第1切れ刃11および第2切れ刃11の各々に連なる切れ刃が設けられていない。
[0028]
 図2に示されるように、回転軸Aに対して垂直な方向から見て、第1切れ刃11の延在方向に沿った直線18は、回転軸Aに対して正のねじれ角θ1で傾斜している。正のねじれ角θ1は、たとえば3°以上10°以下である。正のねじれ角θ1とは、図2に示す側面視において、回転軸Aに対して時計回りに傾斜する角度である。先端7から後端6を見る視野において、第1切れ刃11は時計回りの方向にねじれている。図3に示されるように、回転軸Aに対して垂直な方向から見て、第2切れ刃21の延在方向に沿った直線28は、回転軸Aに対して負のねじれ角θ2で傾斜している。負のねじれ角θ2とは、図3に示す側面視において、回転軸Aに対して反時計回りに傾斜する角度である。先端7から後端6を見る視野において、第2切れ刃21は反時計回りの方向にねじれている。負のねじれ角θ2は、たとえば-10°以上-3°以下である。つまり、正のねじれ角および負のねじれ角の各々の絶対値は、たとえば3°以上10°以下である。正のねじれ角θ1の絶対値は、負のねじれ角θ2の絶対値とほぼ同じであってもよい。具体的には、正のねじれ角θ1の絶対値と、負のねじれ角θ2の絶対値との差の絶対値は、たとえば0.5°以下であってもよい。
[0029]
 第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、先端7からシャンク部2まで連続的に設けられている。別の観点から言えば、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、軸方向において、本体部3の一端から他端(本体部3とシャンク部2との境界)まで連続的に設けられている。さらに別の観点から言えば、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、有効刃長間において連続的に構成されている。つまり、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、途中で分断されていない。回転切削工具1の先端7は、回転軸Aに沿った方向において、本体部3の外周面の先端である。
[0030]
 図4において、第1周方向Bおよび第2周方向Cは、それぞれ回転方向前方および回転方向後方である。図4に示されるように、回転切削工具1の先端7において、第1切れ刃11から第2切れ刃21までの第2周方向Cの位相角φ1は、第2切れ刃21から第1切れ刃11までの第2周方向Cの位相角φ2と異なっていてもよい。具体的には、回転切削工具1の先端7において、第1切れ刃11から回転方向後方における第2切れ刃21までの位相角φ1は、第2切れ刃21から回転方向後方における第1切れ刃11までの位相角φ2と異なっていてもよい。位相角φ1は、たとえば位相角φ2よりも大きい。反対に、位相角φ1は、位相角φ2よりも小さくてもよい。回転方向後方とは、回転方向前方とは反対側の方向である。第1切れ刃11は、先端7において第1底刃12に連なっていてもよい。同様に、第2切れ刃21は、先端7において第2底刃22に連なっていてもよい。
[0031]
 図5に示されるように、本体部3の芯厚D2は、回転軸Aに対して垂直な断面で本体部3を切断した場合における、本体部3の内接円の直径である。本実施形態において、本体部3の芯厚D2は、たとえば本体部3の直径D1の0.4倍以上0.9倍以下である。本体部3の芯厚D2は、たとえば本体部3の直径D1の0.5倍以上であってよいし、0.6倍以上であってもよい。本体部3の芯厚D2は、たとえば本体部3の直径D1の0.8倍以下であってよいし、0.7倍以下であってもよい。
[0032]
 図5に示されるように、本体部3は、たとえば基材4と、被膜5とを有している。被膜5は、基材4を被覆する。基材4の材料は、たとえばWC(炭化タングステン)などの粉末と、Co(コバルト)などの結合剤とを含む超硬合金である。なお、基材4は、超硬合金に限られるものではなく、たとえば多結晶ダイヤモンド、サーメットまたはセラミックスなどであってもよい。被膜5は、たとえばダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンの少なくともいずれかを有していている。被膜5は、たとえば本体部3の有効刃長全体において設けられている。
[0033]
 被膜5がダイヤモンドの場合、被膜5の厚みT(図6参照)は、たとえば6μm以上20μm以下である。被膜5の厚みTは、たとえば6μm以上であってもよいし、9μm以上であってもよい。被膜5の厚みTは、たとえば20μm以下であってもよいし、18μm以下であってもよい。なお、被膜5の組織および厚みは、膜成長方向に沿った被膜5の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより測定することができる。
[0034]
 ダイヤモンドは、たとえば単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドである。なお、ダイヤモンドの結晶性は、ラマン分光分析法を用いて特定することができる。ラマン分光分析法によって、ダイヤモンドの特徴である1333cm -1にピークが存在することを確認し、スペクトルの半値幅により、単結晶ダイヤモンドであるか多結晶ダイヤモンドであるかを確認する。スペクトルの半値幅が10cm -1よりも大きい場合は、多結晶ダイヤモンドであるとする。スペクトルの半値幅が、10cm -1以下の場合は、単結晶ダイヤモンドであるとする。
[0035]
 図6に示されるように、多結晶ダイヤモンドは、表層5aと、深層5dとを有していてもよい。深層5dは、表層5aと基材4との間に位置する。多結晶ダイヤモンドの表層5aとは、多結晶ダイヤモンドの表面から基材4に向かって8μm以内の領域である。多結晶ダイヤモンドの表層5aにおける結晶粒の平均粒径は、多結晶ダイヤモンドの深層5d(表層5a以外の部分)における結晶粒の平均粒径よりも小さくてもよい。
[0036]
 被膜5が多結晶ダイヤモンドの場合、多結晶ダイヤモンドの表層5aの平均粒径は、たとえば0.1μm以上5μm以下である。多結晶ダイヤモンドの表層5aの平均粒径は、たとえば0.1μm以上であってもよいし、0.5μm以上であってもよい。多結晶ダイヤモンドの表層5aの平均粒径は、たとえば3μm以下であってもよいし、2μm以下であってもよい。多結晶ダイヤモンドの表層5aにおいて、結晶粒の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。具体的には、膜成長方向に沿った被膜5の断面を、透過型電子顕微鏡により5000倍以上1000000倍以下の倍率で観察する。この際、観察視野中に少なくとも20個の結晶粒が含まれるように倍率を調整する。次に、観察視野中、無作為に選んだ10個の結晶粒について、外接円相当径を計測する。このようにして得られた外接円相当径の計測値のうち、最大値と最小値を除いた計測値の算術平均値を「結晶粒の粒径」とする。
[0037]
 被膜5が、ダイヤモンドライクカーボンの場合、被膜5の厚みT(図6参照)は、たとえば0.2μm以上2μm以下である。被膜5の厚みTは、たとえば0.5μm以上であってもよいし、0.7μm以上であってもよい。被膜5の厚みTは、たとえば1.8μm以下であってもよいし、1.5μm以下であってもよい。
[0038]
 基材4の表面粗さは、たとえば0.2μm以上2.0μm以下である。表面粗さは、最大高さ粗さ(Rz)である。基材4の表面粗さは、走査型白色干渉技術を用いた3次元表面構造解析装置(ZYGO社製)を用いて測定することができる。具体的には、基材4から被膜5を除去した後、基材4の表面を3次元表面構造解析装置により測定することにより、基材4の表面粗さが求められる。
[0039]
 被膜5は、鉄、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくともいずれかの元素を含んでいてもよい。具体的には、被膜5は、鉄、モリブデンおよびタングステンの中のいずれか1種の元素を含んでいてもよいし、2種類以上の元素を含んでいてもよいし、3種類全ての元素を含んでいてもよい。被膜5は、炭化鉄、炭化モリブデンおよび炭化タングステンの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
[0040]
 図6に示されるように、被膜5の深層5dは、基材4に接する被膜5の部分5cと、中層5bとを有していてよい。基材4に接する被膜5の部分5cとは、基材4の表面から3μm以内の部分である。基材4に接する被膜5の部分において、少なくともいずれかの元素の総含有量は、1.0×10 15atoms/cm 3以上1.0×10 18atoms/cm 3以下であってもよい。少なくともいずれかの元素の総含有量とは、上記3種類の元素(鉄、モリブデンおよびタングステン)の総含有量である。総含有量は、たとえば1.0×10 15atoms/cm 3以上であってもよいし、3.0×10 15atoms/cm 3以上であってもよい。総含有量は、たとえば1.0×10 18atoms/cm 3以下であってもよいし、5.0×10 17atoms/cm 3以下であってもよい。鉄、モリブデンおよびタングステンなどの元素の含有量は、二次イオン質量分析(SIMS)により測定することができる。
[0041]
 次に、本実施形態に係る回転切削工具の被膜の形成方法について説明する。
 まず、基材4の表面に対してエッチング処理が行われる。具体的には、たとえば過酸化水素水(H )または塩酸(HCl)、硝酸(HNO )等を用いて、超硬合金製の基材4の表面がエッチング処理される。これにより、基材4の表面が荒れて、表面粗さが大きくなる。
[0042]
 次に、基材4上に被膜5が形成される。被膜5がダイヤモンドの場合、被膜5はたとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。被膜5がダイヤモンドカーボンの場合、被膜5はたとえばPVD(Physical Vapor Deposition)法により形成される。上記エッチング処理により、基材4の表面が荒れている。そのため、基材4の表面積が大きくなる。結果として、基材4の表面上に被膜5が形成された際、基材4と被膜5との密着性が向上する。また基材4の表面には、鉄、モリブデン、タングステン等の金属元素が付着する。金属元素は、炭素と反応し炭化物を形成する。これにより、基材4と被膜5との密着性が向上する。
[0043]
 次に、本実施形態に係る回転切削工具を用いた加工方法について説明する。
 図7に示されるように、本実施形態に係る回転切削工具1を用いてCFRPなどの被削材30を加工する場合、被削材30の上側の表面においては、第1切れ刃11によって上向きの切削力が作用する。そのため、被削材30の上側の表面には、第1切れ刃11の切削によってバリ31が発生しやすい。一方、第2切れ刃21は、第1切れ刃11とは反対のねじれ方向を有する。そのため、被削材30の上側の表面においては、第2切れ刃21によって下向きの切削力が作用する。第2切れ刃21の切削によってバリ31が除去される。第1切れ刃11は主として切削を担当しつつ、第2切れ刃21によってバリの除去を行うことにより、被削材30にバリが発生することを抑制することができる。
[0044]
 上記においては、被削材30がCFPRの場合について説明したが、被削材30はCFPRに限定されない。被削材30は、たとえばGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)、セルロースナノファイバーまたはセラミックスなどであってもよい。また上記においては、回転切削工具1がエンドミルの場合について説明したが、回転切削工具1はエンドミルに限定されない。回転切削工具1は、たとえばルータ工具などであってもよい。
[0045]
 次に、本実施形態に係る切削工具の作用効果について説明する。
 本実施形態に係る回転切削工具1によれば、回転切削工具1によれば、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、先端7からシャンク部2まで連続的に設けられている。そのため、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々が断続的に設けられている場合と比較して、本実施形態に係る回転切削工具1においては、滑らかに切削が進行し、断続的な喰い付きが防止される。結果として、切削抵抗が低減するため、被削材にバリが発生することを抑制することができる。
[0046]
 また本実施形態に係る回転切削工具1によれば、本体部3の芯厚D2は、本体部3の直径D1の0.4倍以上0.9倍以下である。上記のように本実施形態に係る回転切削工具1においては、切削抵抗が低減されている。そのため、本体部3が折損することを抑制しつつ、本体部3の芯厚D2を小さくすることができる。芯厚D2を小さくすることで、本体部3の溝を深く形成することができる。結果として、切り屑の排出性能を向上することができる。また溝を深く形成することにより、溝の表面積を大きくすることができる。結果として、本体部3の放熱性を向上することができる。そのため、本体部3が高温になることで、たとえば樹脂などの融点の低い被削材が溶解することを抑制することができる。
[0047]
 さらに本実施形態に係る回転切削工具1によれば、本体部3は、基材4と、基材4を被覆する被膜5とを含んでいる。被膜5は、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンの少なくともいずれかを有していてもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の耐摩耗性または摺動性が向上する。結果として、回転切削工具1の寿命を向上することができる。また第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。さらに第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が向上することにより、芯厚D2をさらに小さくした場合であっても、本体部3が折損することを抑制することができる。そのため、芯厚D2をさらに小さくして、切り屑の排出性能をさらに向上することができる。また本体部3の放熱性をさらに向上することができる。
[0048]
 さらに本実施形態に係る回転切削工具1によれば、被膜5は、ダイヤモンドであってもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の耐摩耗性が向上する。結果として、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。
[0049]
 さらに本実施形態に係る回転切削工具1によれば、被膜5は、ダイヤモンドライクカーボンであってもよい。これにより、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の摺動性が向上する。結果として、第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切れ味が劣化することを抑制することができる。そのため、被削材の切削面の面性状が良好になる。
[0050]
 さらに本実施形態に係る回転切削工具1によれば、被膜5は、鉄、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくともいずれかの元素を含んでいてもよい。鉄、モリブデンおよびタングステンの各々は、炭素と反応して炭化物を形成する。そのため、被膜5と基材4との密着性がさらに向上する。
[0051]
 さらに本実施形態に係る回転切削工具1によれば、先端7において、第1切れ刃11から第2切れ刃21までの周方向の位相角θ1は、第2切れ刃21から第1切れ刃11までの周方向の位相角θ2と異なっていてもよい。第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々は、ねじれ方向が異なるため、それぞれの切れ刃の軸方向切削力は互いに打消し合う。また第1切れ刃11および第2切れ刃21の各々の切削周期が異なる。これにより、加工中のビビリが抑制される。
[0052]
 今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

符号の説明

[0053]
1 回転切削工具
2 シャンク部
3 本体部
4 基材
5 被膜
5a 表層
5b 中層
5c 部分
5d 深層
6 後端
7 先端
11 第1切れ刃
12 第1底刃
13 第1すくい面
14 第1逃げ面
15 第1底面
16 第1溝
17 第3溝
18,28 直線
21 第2切れ刃
22 第2底刃
23 第2すくい面
24 第2逃げ面
25 第2底面
26 第2溝
27 第4溝
30 被削材
31 バリ
A 回転軸
B 第1周方向
C 第2周方向
D1 直径
D2 芯厚
T 厚み

請求の範囲

[請求項1]
 先端を有する本体部と、
 前記先端とは反対側において前記本体部に連なるシャンク部とを備え、
 前記本体部には、正のねじれ角を有する第1切れ刃と、負のねじれ角を有しかつ前記第1切れ刃から離間している第2切れ刃とが設けられており、
 前記第1切れ刃および前記第2切れ刃の各々は、前記先端から前記シャンク部まで連続的に設けられている、回転切削工具。
[請求項2]
 前記本体部の芯厚は、前記本体部の直径の0.4倍以上0.9倍以下である、請求項1に記載の回転切削工具。
[請求項3]
 前記本体部は、基材と、前記基材を被覆する被膜とを含み、
 前記被膜は、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンの少なくともいずれかを有する、請求項1または請求項2に記載の回転切削工具。
[請求項4]
 前記被膜は、ダイヤモンドである、請求項3に記載の回転切削工具。
[請求項5]
 前記被膜の厚みは、6μm以上20μm以下である、請求項4に記載の回転切削工具。
[請求項6]
 前記ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドである、請求項5に記載の回転切削工具。
[請求項7]
 前記ダイヤモンドは、多結晶ダイヤモンドであり、
 前記多結晶ダイヤモンドの表層の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下である、請求項6に記載の回転切削工具。
[請求項8]
 前記被膜は、ダイヤモンドライクカーボンである、請求項3に記載の回転切削工具。
[請求項9]
 前記被膜の厚みは、0.2μm以上2.0μm以下である、請求項8に記載の回転切削工具。
[請求項10]
 前記基材の表面粗さは、0.2μm以上2.0μm以下である、請求項3~請求項9のいずれか1項に記載の回転切削工具。
[請求項11]
 前記被膜は、鉄、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくともいずれかの元素を含む、請求項3~請求項10のいずれか1項に記載の回転切削工具。
[請求項12]
 前記基材に接する前記被膜の部分において、前記少なくともいずれかの元素の総含有量は、1.0×10 15atoms/cm 3以上1.0×10 18atoms/cm 3以下である、請求項11に記載の回転切削工具。
[請求項13]
 前記先端において、前記第1切れ刃から前記第2切れ刃までの周方向の位相角は、前記第2切れ刃から前記第1切れ刃までの前記周方向の位相角と異なっている、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の回転切削工具。
[請求項14]
 前記正のねじれ角および前記負のねじれ角の各々の絶対値は、3°以上10°以下である、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の回転切削工具。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]