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1. (WO2019044961) PIPE THREADED JOINT, AND METHOD FOR PRODUCING PIPE THREADED JOINT
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明 細 書

発明の名称 管用ねじ継手及び管用ねじ継手の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104  

実施例

0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121  

符号の説明

0122  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : 管用ねじ継手及び管用ねじ継手の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、管用ねじ継手及び管用ねじ継手の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 油田や天然ガス田の採掘のために、油井管が使用される。油井管は、井戸の深さに応じて、複数の鋼管を連結して形成される。鋼管の連結は、鋼管の端部に形成された管用ねじ継手同士をねじ締めすることによって行われる。油井管は、検査等のために引き上げられ、ねじ戻しされ、検査された後、再びねじ締めされて、再度使用される。
[0003]
 管用ねじ継手は、ピン及びボックスを備える。ピンは、鋼管の先端部の外周面に形成された雄ねじ部を含む。ボックスは、鋼管の先端部の内周面に形成された雌ねじ部を含む。ピン及びボックスはさらにねじ無し金属接触部を含む場合がある。ねじ無し金属接触部は、金属シール部及びショルダー部を含む。鋼管同士がねじ締めされる際、雄ねじ部及び雌ねじ部、金属シール部同士並びにショルダー部同士が接触する。
[0004]
 ピン及びボックスのねじ部及びねじ無し金属接触部は、鋼管のねじ締め及びねじ戻し時に強い摩擦を繰り返し受ける。これらの部位に、摩擦に対する十分な耐久性がなければ、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返した時にゴーリング(修復不可能な焼付き)が発生する。したがって、管用ねじ継手には、摩擦に対する十分な耐久性、すなわち、優れた耐焼付き性が要求される。
[0005]
 従来、耐焼付き性を向上するために、重金属入りのコンパウンドグリースが使用されてきた。管用ねじ継手の表面にコンパウンドグリースを塗布することで、管用ねじ継手の耐焼付き性を改善できる。しかしながら、コンパウンドグリースに含まれるPb等の重金属は環境に影響を与える可能性がある。このため、コンパウンドグリースを使用しない管用ねじ継手の開発が望まれている。
[0006]
 コンパウンドグリースの代わりに、重金属を含有しないグリース(グリーンドープと称される)を使用する管用ねじ継手が提案されている。たとえば、国際公開第2008/108263号(特許文献1)には、重金属を含有しないグリースを使用しても耐焼付き性に優れる管用ねじ継手について記載がある。
[0007]
 国際公開第2008/108263号(特許文献1)に記載されている管用ねじ継手は、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面が、Cu-Zn合金及びCu-Zn-M1合金(M1は、Sn、Bi及びInから選ばれた1種又は2種以上の元素)から選ばれたCu合金からなる第1のめっき層を有することを特徴とする。これにより、グリーンドープを塗布する場合、さらには無ドープの場合でも、十分な耐ゴーリング性を示す管用ねじ継手が得られる、と特許文献1には記載されている。
[0008]
 国際公開第2016/170031号(特許文献2)に記載されている管用ねじ継手は、ねじ切り部と第1シール表面とを備え、ねじ切り部及び第1シール表面は、重量で亜鉛(Zn)が主成分である、金属製の耐食及び耐焼付き層で被覆されていることを特徴とする。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 国際公開第2008/108263号
特許文献2 : 国際公開第2016/170031号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 特許文献1及び特許文献2に記載された技術によれば、管用ねじ継手の接触表面にめっき層を形成することで耐焼付き性を高めることができる。しかしながら、上述の技術を用いても、十分な耐焼付き性が得られない場合があった。
[0011]
 本発明の目的は、優れた耐焼付き性を有する管用ねじ継手及びその製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

[0012]
 本実施形態の管用ねじ継手は、ピンと、ボックスと、Zn-Ni合金めっき層とを備える。ピンは、ピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有する。ボックスは、ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有する。Zn-Ni合金めっき層は、ピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方の上に配置される。Zn-Ni合金めっき層はZn、Ni、微量Cr及び不純物からなる。Zn-Ni合金めっき層の微量Crの含有量は、照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析によるCr強度で5.0×10カウント/秒以上である。
[0013]
 本実施形態の管用ねじ継手の製造方法は、浸漬工程と、通電工程とを備える。浸漬工程では、はじめにピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有するピン、及び、ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有するボックスを準備する。次にピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方をめっき液に浸漬する。めっき液は、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有する。めっき液中のクロムイオンの濃度は30~2000ppmである。通電工程では、めっき液に浸漬したピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方に通電する。これにより、ピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方の上にZn-Ni合金めっき層を形成する。

発明の効果

[0014]
 本実施形態の管用ねじ継手は、優れた耐焼付き性を有する。本実施形態の管用ねじ継手はたとえば上述の製造方法によって得られる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 図1は、めっき液中の微量金属イオン濃度とZn-Ni合金めっき層の硬度との関係を示す図である。
[図2] 図2は、Crを含有しない場合の、Ni含有量とZn-Ni合金めっき層の硬度との関係を示す図である。
[図3] 図3は、図2に、微量のCrを含有するZn-Ni合金めっき層の硬度のデータを追加した図である。
[図4] 図4は、めっき液中のCr濃度と、Zn-Ni合金めっき層の表面の光沢度との関係を示す図である。
[図5] 図5は、本実施形態によるカップリング型の管用ねじ継手の構成を示す図である。
[図6] 図6は、本実施形態によるインテグラル型の管用ねじ継手の構成を示す図である。
[図7] 図7は、管用ねじ継手の一例の断面図である。
[図8] 図8は、金属シール部及びショルダー部を有さない場合の本実施形態による管用ねじ継手の構成を示す図である。
[図9] 図9は、本実施形態による管用ねじ継手の一例の断面図である。
[図10] 図10は、図9とは異なる他の実施形態による管用ねじ継手の一例の断面図である。
[図11] 図11は、図9及び図10とは異なる他の実施形態による管用ねじ継手の一例の断面図である。
[図12] 図12は、固体潤滑被膜を備える場合の管用ねじ継手の断面図である。
[図13] 図13は、試験番号2、6、10、14、18及び22の二次イオン質量分析の測定結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0016]
 以下、図面を参照して、本実施形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[0017]
 本発明者らは、管用ねじ継手の耐焼付き性について検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
[0018]
 ねじ締め及びねじ戻し時の管用ねじ継手の耐焼付き性を高めるには、高硬度及び高融点を有するめっき層を、ねじ部を含む接触表面に形成することが有効である。めっき層の硬度が高ければ、管用ねじ継手のねじ締め及びねじ戻しの際にめっき層が損傷を受けにくい。さらに、めっき層の融点が高ければ、管用ねじ継手のねじ締め及びねじ戻しの際、局所的にめっき層が高温になった場合でも、めっき層の硬度の低下を抑制できる。その結果、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。
[0019]
 Zn合金であるZn-Ni合金は、十分な高硬度及び高融点を有する。したがって、Zn-Ni合金によりめっき層を構成すれば、管用ねじ継手の耐焼付き性を高めることができる。本明細書において、Zn-Ni合金及び不純物からなるめっき層を、Zn-Ni合金めっき層という。
[0020]
 本発明者らは、Zn-Ni合金めっき層の硬度を高める方法を検討した。
[0021]
 従来、めっき層の硬度を高める方法として、(1)有機添加剤、(2)合金化、及び(3)複合めっきの3種類が知られている。(1)有機添加剤を加える方法では、めっき液中に硬度を高める有機添加剤を加える。これにより、めっき層の硬度が高まる。硬度を高める有機添加剤は特に、硬化剤と呼ばれる。硬化剤は市販されている。たとえば、大和特殊株式会社の硫酸銅めっき液であるコスモG(商品名)は硬化剤のG-1を含む。他の硬化剤の例は、ポリアクリルアミドである。(2)合金化する方法では、数%~数十%の合金化元素を添加して、めっき層を合金化する。これにより、めっき層の硬度が高まる。合金化めっきはたとえば、Zn-Ni合金めっき、及び、Ni-Pめっきである。Ni-Pめっきは2~15質量%のP、及び、残部はNi及び不純物からなる。(3)複合めっきを形成する方法では、めっき層中に炭化珪素、アルミナ、及びダイヤ等の硬質粒子を共析させる。これにより、めっき層の硬度が高まる。
[0022]
 しかしながら、本発明者らは、Zn-Ni合金めっき層に微量の金属元素を含有させることにより、Zn-Ni合金めっき層の硬度を高めることができるという従来とは全く異なる知見を得た。
[0023]
 従来、Zn-Ni合金めっき層の金属成分(Zn及びNi)以外の金属イオンは、めっき液中では不純物であると考えられてきた。つまり、微量の金属元素は、Zn-Ni合金めっき層を形成するためのめっき液において不純物である。めっき液中の不純物は、めっき不良を引き起こす場合がある。めっき不良とはたとえば、外観不良及び物性不良である。外観不良はたとえば、ピット、ざらつき、くもり、色むら及び不めっき等である。物性不良はたとえば、めっき層の硬度低下、延展性低下、及び密着性低下等である。これまで、めっき不良を抑制するためにめっき液中の不純物の低減が試みられてきた。
[0024]
 本発明者らは、Zn-Ni合金めっき層中に、これまで不純物と考えられてきた微量の金属元素を含有させた場合の影響を調査した。その結果、以下の知見を得た。
[0025]
 図1は、めっき液中の微量金属イオン濃度とZn-Ni合金めっき層の硬度との関係を示す図である。ここで、めっき液とは、Zn-Ni合金めっき層を形成するためのめっき液であって、亜鉛イオン及びニッケルイオンを含有するめっき液をいう。図1の横軸は、めっき液中に含まれる微量金属イオンの濃度(ppm)である。ここで、微量金属イオンとは、亜鉛イオン及びニッケルイオン以外の金属イオンをいう。図1の縦軸は、Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さ(Hv)を示す。ビッカース硬さは、試験温度を常温(25℃)、試験力(F)を0.01NとしてJIS Z2244(2009)に準拠した方法で測定した。
[0026]
 図1を参照して、めっき液中に鉄イオン又は銅イオンが含まれる場合、Zn-Ni合金めっき層の硬度は大きく変化しない。加えて、鉄イオンの濃度が900ppmを超えると、Zn-Ni合金めっき層の硬度は低下する傾向にある。しかしながら、めっき液中にクロムイオンが微量に含まれる場合、Zn-Ni合金めっき層の硬度が顕著に高まる。つまり、従来は不純物と考えられてきた微量の金属元素を含有させることにより、Zn-Ni合金めっき層の硬度が高まることが分かった。さらに、金属元素の中でも特にCrが、Zn-Ni合金めっき層の硬度を高めるのに有効であることが分かった。
[0027]
 本発明者らは、クロムイオンを含有するめっき液を用いて製造されたZn-Ni合金めっき層を詳細に調査した。その結果、Zn-Ni合金めっき層に微量のCrが含有されることを知見した。つまり、本発明者らは、Crが微量に含まれることにより、Zn-Ni合金めっき層の硬度が高まることを初めて知見した。従来、Crは不純物であると考えられてきた。そのため本発明者らの知見は、従来とは全く異なるものである。
[0028]
 通常、Zn-Ni合金めっき層の硬度はNi含有量に依存する。図2は、クロムイオン濃度が0ppmのめっき液を用いて製造されたZn-Ni合金めっき層の硬度を示す。つまり、図2は、Crを含有しない場合の、Ni含有量とZn-Ni合金めっき層の硬度との関係を示す図である。図2の横軸は、Zn-Ni合金めっき層中のNi含有量(質量%)である。図2の縦軸は、Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さ(Hv)である。ビッカース硬さは、試験温度を常温(25℃)、試験力(F)を0.01NとしてJIS Z2244(2009)に準拠した方法で測定した。
[0029]
 図2を参照して、Zn-Ni合金めっき層の硬度はNi含有量に依存することが分かる。図2の範囲では、Zn-NI合金めっき層の硬度は、Ni含有量に比例して高くなることが分かる。
[0030]
 図3は、図2にさらに、微量のCrを含有するZn-Ni合金めっき層の硬度のデータを加えた図である。図3に追加したデータは後述する実施例から得られた。図3中、Zn-Ni合金めっき層中のCr強度を示す。ここで、Cr強度とは、照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析により検出されたCrの二次イオン数をいう。図3中、白い丸印(○)は、Cr強度が1.0×10 カウント/秒のZn-Ni合金めっき層の硬さを示す。図3中、バツ印(×)は、Cr強度が3.6×10 カウント/秒のZn-Ni合金めっき層の硬さを示す。
[0031]
 図3中、白い四角印(□)、黒三角印(▲)、白三角印(△)及び黒丸印(●)は、Cr強度が5.0×10カウント/秒以上のZn-Ni合金めっき層6の硬さを示す。図3を参照して、Zn-Ni合金めっき層のCr強度が5.0×10カウント/秒以上であれば、Zn-Ni合金めっき層の硬度が顕著に高まる。より具体的には、Zn-Ni合金めっき層のCr強度が5.0×10カウント/秒以上であれば、本実施形態のZn-Ni合金めっき層のビッカース硬さは、式(1)によって示される。
 ビッカース硬さ(Hv)>-300+55×Ni  (1)
 ここで、NiはZn-Ni合金めっき層中のNi含有量(質量%)を示す。
[0032]
 微量のCrがZn-Ni合金めっき層の硬度を高める理由は定かではない。Zn-Ni合金めっき層中に共析した微量のCrによって、Zn-Ni合金めっき層の結晶構造が変化している可能性がある。
[0033]
 通常、めっき液に多量のCrが含まれることは無い。上述のとおり、従来は亜鉛イオン及びニッケルイオン以外の金属イオンは不純物と考えられてきた。そのため、めっき液中に含まれないような対策が講じられてきた。具体的には、めっき液による腐食や溶解を抑制できる材質のめっき設備が用いられてきた。また、不純物、いわゆるコンタミネーションが多い場合には、めっき液の交換がされてきた。
[0034]
 以上のとおり、本発明者らは、従来とは全く異なる方法でZn-Ni合金めっき層の硬度を高めることに成功した。Zn-Ni合金めっき層の硬度が高まれば、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。
[0035]
 ところで、管用ねじ継手には、優れた外観が要求される場合がある。外観の良否は、管用ねじ継手の表面で反射する光の量(光沢度)を基準に判断される。光沢度が高ければ、外観が良いと判断する。
[0036]
 図4は、めっき液中のクロムイオンの濃度と、そのめっき液を用いて電気めっきにより形成したZn-Ni合金めっき層の表面の光沢度との関係を示す図である。縦軸のめっき層表面の光沢度とは、Zn-Ni合金めっき層表面の、JIS Z8741(1997)に準拠した鏡面光沢度を意味する。横軸に示す、めっき液中のCr濃度(ppm)とは、めっき液に含まれるクロムイオンの濃度(ppm)を意味する。図4は、後述する実施例から得られた。図4では、めっき液中のクロムイオンの濃度、電流密度及びめっき液の流速を変えてZn-Ni合金めっき層を形成した結果を示す。電流密度及び流速が同一条件の場合、同一の印を付した。たとえば、図2中、白丸印(○)は、電流密度:4A/dm 、流速:0.5m/sでZn-Ni合金めっき層を形成したことを意味する。
[0037]
 図4を参照して、めっき液中のクロムイオンの濃度が0ppmから100ppmへと高まるのに伴って、電流密度及び流速にかかわらずZn-Ni合金めっき層表面の光沢度も高まる。しかしながら、めっき液中のクロムイオンの濃度が100ppmより多くなると、Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度は、めっき液中のクロムイオンの濃度の増加に伴って低下する。Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度は、めっき液中のクロムイオンの濃度が1000ppmに到達した時点で20~40程度になる。これは、めっき液中のクロムイオンの濃度が0ppmであった場合のZn-Ni合金めっき層表面の光沢度60~120程度と比較して低い。
[0038]
 めっき液中のクロムイオンの濃度を一定以下にすれば、Zn-Ni合金めっき層の表面の光沢度を高めることができることが分かった。この場合、管用ねじ継手は、優れた耐焼付き性に加えて、優れた外観を有する。
[0039]
 以上の知見に基づいて完成した本実施形態の管用ねじ継手は、ピンと、ボックスと、Zn-Ni合金めっき層とを備える。ピンは、ピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有する。ボックスは、ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有する。Zn-Ni合金めっき層は、ピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方の上に配置される。Zn-Ni合金めっき層はZn、Ni、微量Cr及び不純物からなる。Zn-Ni合金めっき層の微量Crの含有量は、照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析によるCr強度で5.0×10カウント/秒以上である。
[0040]
 本実施形態の管用ねじ継手は、Zn-Ni合金めっき層を備える。Zn-Ni合金めっき層は微量のCrを含有する。微量のCrにより、Zn-Ni合金めっき層の硬度が高まる。これにより、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。
[0041]
 上記Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度は100以上であってもよい。
[0042]
 Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度が高ければ、管用ねじ継手は、優れた耐焼付き性に加えて優れた外観を有する。
[0043]
 上記Zn-Ni合金めっき層の厚さは1~20μmであってもよい。
[0044]
 上記Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さHvは600以上であってもよい。
[0045]
 Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さHvが600以上であれば、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。
[0046]
 上記Zn-Ni合金めっき層は、6.0~16.0質量%のNiを含有し、γ相を含み、γ相の(411)面の間隔が2.111Å以上であってもよい。
[0047]
 この場合、Zn-Ni合金めっき層の硬さがさらに高まる。
[0048]
 管用ねじ継手はさらに、ピン側接触表面、ボックス側接触表面、及び、Zn-Ni合金めっき層の少なくとも1つの上に潤滑被膜を備えてもよい。
[0049]
 管用ねじ継手が潤滑被膜を備える場合、管用ねじ継手の潤滑性が高まる。
[0050]
 上記管用ねじ継手において、ピン側接触表面はさらに、ピン側金属シール部及びピン側ショルダー部を含んでもよい。ボックス側接触表面はさらに、ボックス側金属シール部及びボックス側ショルダー部を含んでもよい。
[0051]
 本実施形態の管用ねじ継手の製造方法は、浸漬工程と、通電工程とを備える。浸漬工程では、はじめにピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有するピン、及び、ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有するボックスを準備する。次にピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方をめっき液に浸漬する。めっき液は、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有する。めっき液中のクロムイオンの濃度は30~2000ppmである。通電工程では、めっき液に浸漬したピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方に通電する。これにより、ピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方の上にZn-Ni合金めっき層を形成する。
[0052]
 上記製造方法により、微量のCrを含有するZn-Ni合金めっき層を備える管用ねじ継手が製造できる。Zn-Ni合金めっき層の硬度は高い。そのため、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。
[0053]
 上記めっき液のクロムイオンの濃度は30~800ppmであってもよい。
[0054]
 めっき液のクロムイオンの濃度の上限が800ppmの場合、管用ねじ継手は優れた耐焼付き性に加え、優れた外観を有する。
[0055]
 上記製造方法で製造される管用ねじ継手において、ピン側接触表面はさらに、ピン側金属シール部及びピン側ショルダー部を含んでもよい。ボックス側接触表面はさらに、ボックス側金属シール部及びボックス側ショルダー部を含んでもよい。
[0056]
 以下、本実施形態による管用ねじ継手及びその製造方法について詳述する。
[0057]
 [管用ねじ継手]
 管用ねじ継手は、ピン及びボックスを備える。図5は、本実施形態による管用ねじ継手1の構成を示す図である。図5を参照して、管用ねじ継手1は、鋼管2とカップリング3とを備える。鋼管2の両端には、外面に雄ねじ部を有するピン4が形成される。カップリング3の両端には、内面に雌ねじ部を有するボックス5が形成される。ピン4とボックス5とをねじ締めすることによって、鋼管2の端に、カップリング3が取り付けられる。図示していないが、相手部材が装着されていない鋼管2のピン4及びカップリング3のボックス5には、それぞれのねじ部を保護するため、プロテクターが装着される場合がある。
[0058]
 一方で、カップリング3を使用せず、鋼管2の一方の端をピン4とし、他方の端をボックス5とした、インテグラル形式の管用ねじ継手1を用いてもよい。図6は、本実施形態によるインテグラル型の管用ねじ継手1の構成を示す図である。図6を参照して、管用ねじ継手1は、鋼管2を備える。鋼管2の一方の端には、外面に雄ねじ部を有するピン4が形成される。鋼管2の他方の端には、内面に雌ねじ部を有するボックス5が形成される。ピン4とボックス5とをねじ締めすることによって、鋼管2同士を連結できる。本実施形態の管用ねじ継手1は、カップリング方式及びインテグラル形式の両方の管用ねじ継手1に使用できる。
[0059]
 図7は、管用ねじ継手1の断面図である。図7では、ピン4は、ピン側ねじ部41、ピン側金属シール部42及びピン側ショルダー部43を備える。図7では、ボックス5は、ボックス側ねじ部51、ボックス側金属シール部52及びボックス側ショルダー部53を備える。ピン4とボックス5とをねじ締めした時に接触する部分を、接触表面40,50という。具体的には、ピン4とボックス5とをねじ締めすると、ねじ部同士(ピン側ねじ部41及びボックス側ねじ部51)、金属シール部同士(ピン側金属シール部42及びボックス側金属シール部52)、及び、ショルダー部同士(ピン側ショルダー部43及びボックス側ショルダー部53)が互いに接触する。図7では、ピン側接触表面40は、ピン側ねじ部41、ピン側金属シール部42及びピン側ショルダー部43を含む。図7では、ボックス側接触表面50は、ボックス側ねじ部51、ボックス側金属シール部52及びボックス側ショルダー部53を含む。
[0060]
 図7では、ピン4においては、鋼管2の端から、ピン側ショルダー部43、ピン側金属シール部42及びピン側ねじ部41の順で配置される。また、ボックス5においては、鋼管2又はカップリング3の端から、ボックス側ねじ部51、ボックス側金属シール部52及びボックス側ショルダー部53の順で配置される。しかしながら、ピン側ねじ部41及びボックス側ねじ部51、ピン側金属シール部42及びボックス側金属シール部52、及び、ピン側ショルダー部43及びボックス側ショルダー部53の配置は図7の配置に限定されず、適宜変更できる。たとえば、ピン4においては、鋼管2の端から、ピン側ショルダー部43、ピン側金属シール部42、ピン側ねじ部41、ピン側金属シール部42、ピン側ショルダー部43、ピン側金属シール部42及びピン側ねじ部41の順で配置されてもよい。ボックス5においては、鋼管2又はカップリング3の端から、ボックス側ねじ部51、ボックス側金属シール部52、ボックス側ショルダー部53、ボックス側金属シール部52、ボックス側ねじ部51、ボックス側金属シール部52及びボックス側ショルダー部53の順に配置されてもよい。
[0061]
 図5及び図6では、金属シール部(ピン側金属シール部42及びボックス側金属シール部52)及びショルダー部(ピン側ショルダー部43及びボックス側ショルダー部53)を備える、いわゆるプレミアムジョイントを図示した。しかしながら、金属シール部(ピン側金属シール部42及びボックス側金属シール部52)及びショルダー部(ピン側ショルダー部43及びボックス側ショルダー部53)は無くてもよい。金属シール部42,52及びショルダー部43,53を有さない管用ねじ継手1を図8に例示する。本実施形態の管用ねじ継手1は、金属シール部42,52及びショルダー部43,53が無い管用ねじ継手1にも好適に適用可能である。金属シール部42,52及びショルダー部43,53無しの場合、ピン側接触表面40は、ピン側ねじ部41を含み、ボックス側接触表面50は、ボックス側ねじ部51を含む。
[0062]
 図9は、本実施形態の管用ねじ継手1の断面図である。図9を参照して、管用ねじ継手1は、ピン側接触表面40及びボックス側接触表面50の少なくとも一方の上に、Zn-Ni合金めっき層6を備える。図9では、管用ねじ継手1は、ピン側接触表面40及びボックス側接触表面50の両方の上にZn-Ni合金めっき層6を備える。しかしながら、管用ねじ継手1は、図10に示すように、ピン側接触表面40上のみに、Zn-Ni合金めっき層6を備えてもよい。また、管用ねじ継手1は、図11に示すように、ボックス側接触表面50上のみに、Zn-Ni合金めっき層6を備えてもよい。
[0063]
 また、Zn-Ni合金めっき層6は、ピン側接触表面40又はボックス側接触表面50上の全体に配置されてもよいし、一部にのみ配置されてもよい。Zn-Ni合金めっき層6を、ピン側ねじ部41上にのみ配置してもよい。Zn-Ni合金めっき層6を、ボックス側ねじ部51上にのみ配置してもよい。ピン側接触表面40がピン側金属シール部42及びピン側ショルダー部43を有する場合、Zn-Ni合金めっき層6を、ピン側金属シール部42上にのみ配置してもよいし、ピン側ショルダー部43上のみに配置してもよい。ボックス側接触表面50がボックス側金属シール部52及びボックス側ショルダー部53を有する場合、Zn-Ni合金めっき層6を、ボックス側金属シール部52上にのみ配置してもよいし、ボックス側ショルダー部53上のみに配置してもよい。
[0064]
 [Zn-Ni合金めっき層]
 Zn-Ni合金めっき層6は、ピン側接触表面40及びボックス側接触表面50の少なくとも一方の上に配置される。Zn-Ni合金めっき層6は、Zn-Ni合金及び不純物からなる。Zn-Ni合金は、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、微量のクロム(Cr)及び不純物からなる。ここで、Zn-Ni合金めっき層6の不純物、及び、Zn-Ni合金の不純物とは、Zn、Ni及びCr以外の物質で、管用ねじ継手の製造中等にZn-Ni合金めっき層6に含有され、本発明の効果に影響を与えない範囲の含有量で含まれる物質を含む。不純物とはたとえば、Fe及びCuである。
[0065]
 [Zn-Ni合金めっき層の組成]
 Zn-Ni合金めっき層6の化学組成全体を100質量%とした場合に、Ni含有量は6.0~20.0質量%である。この場合、Zn-Ni合金はη相及びγ相の混相となる場合がある。Zn-Ni合金めっき層6のNi含有量の下限が10.0質量%であれば、Zn-Ni合金はγ相単相となる。この場合、Zn-Ni合金めっき層6の硬度がさらに高まる。したがって、好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6のNi含有量の下限は10.0質量%であり、より好ましくは12.0質量%であり、さらに好ましくは14.0質量%である。好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6のNi含有量の上限は18.0質量%であり、より好ましくは17.0質量%であり、さらに好ましくは16.0質量%である。
[0066]
 Zn含有量は80.0~94.0質量%である。Zn-Ni合金めっき層6には、微量のCrが含有される。しかしながら、Crの含有量は微量であるため、Zn-Ni合金めっき層6の組成は、主にZnとNiとからなる。Zn含有量の下限は好ましくは82.0質量%であり、より好ましくは83.0質量%であり、さらに好ましくは84.0質量%である。Zn含有量の上限は好ましくは90.0質量%であり、より好ましくは88.0質量%であり、さらに好ましくは86.0質量%である。
[0067]
 [Zn-Ni合金めっき層6の組成の測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6のNi含有量は次の方法で測定する。ハンドヘルド蛍光X線分析装置(日本電子株式会社製DP2000(商品名DELTA Premium))を用いて測定する。測定は、Zn-Ni合金めっき層6の表面の4箇所(管用ねじ継手の管周方向0°、90°、180°、270°の4箇所)を組成分析する。Alloy PlusモードによりZn及びNiの測定含有量を求める。求めたZn及びNiの測定含有量の総量でNiの測定含有量を除したものをNi含有量(質量%)とする。Ni含有量(質量%)は、組成分析した4箇所の測定結果の算術平均とする。Zn含有量についても同様に測定する。
[0068]
 [Cr含有量]
 Zn-Ni合金めっき層6には、微量のCrが含まれる。具体的には、Cr含有量は、照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析によるCr強度で5.0×10カウント/秒以上である。ここで、照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析により検出されたCrの二次イオン数をCr強度(カウント/秒)という。Cr強度が5.0×10カウント/秒以上であれば、Zn-Ni合金めっき層6の硬度が高まる。
[0069]
 Zn-Ni合金めっき層6中のCr含有量は微量である。Zn-Ni合金めっき層6中のCrは一般的な測定方法では検出できない場合がある。Zn-Ni合金めっき層6中のCrは蛍光X線分析では検出できない。したがって、Cr含有量は二次イオン質量分析(SIMS)により測定し、Cr強度(カウント/秒)として表現する。Cr強度の下限は5.0×10カウント/秒であり、より好ましくは1.0×10 カウント/秒であり、さらに好ましくは1.0×10 カウント/秒である。Cr強度の上限は特に限定されないが、たとえば1.0×10 10カウント/秒である。
[0070]
 [Cr強度の測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6のCr強度は次の方法で測定する。アルバックファイ株式会社製、四重極型二次イオン質量分析装置PHI ADEPT-1010 TMを用いる。測定条件は以下のとおりである。Zn-Ni合金めっき層6の表面から深さ方向分析を行う。Cr強度は、Zn-Ni合金めっき層6の表面から1.5~2.0μm深さの測定値の算術平均値とする。
 真空度:5×10 -7Pa以下
 照射イオン:O
 加速電圧:6.0kV
 測定範囲:64μm角(64μm×64μm)
 測定頻度:深さ方向に20nmごと
[0071]
 深さは、測定時間、つまりスパッタ時間を深さに換算した数値とする。測定時間と深さとの換算は次のとおりに行う。測定後、測定によって生じたクレーターの深さを測定する。クレーターの深さは、KLA Tencor株式会社製、触針式プロファイラー、P-17 Stylus Profilerを用いて測定する。クレーターを含めた表面形状を測定し、クレーターによる段差を計測し、クレーターの深さとする。クレーターの深さと測定時間との関係式を作成する。この関係式と、測定時間とから、測定箇所の深さ(μm)を換算する。
[0072]
 Zn-Ni合金めっき層6がその上に1μm以上の厚さの他の被膜を備えている場合は、被膜を除去した後に二次イオン質量分析を実施する。この場合、Zn-Ni合金めっき層6の表面とは、被膜を除去した後のZn-Ni合金めっき層6の表面を意味する。被膜はたとえば、リン酸塩被膜及び潤滑被膜である。Zn-Ni合金めっき層6がその上にリン酸塩被膜を備えている場合は、リン酸塩被膜を溶解して除去する。リン酸塩被膜の溶解は、市販の剥離液を用いる。市販の剥離液はたとえば、クロム酸溶液である。クロム酸溶液は、インヒビターを含有する。剥離液により、リン酸塩被膜のみを溶解させる。Zn-Ni合金めっき層6がその上に潤滑被膜を備える場合は、潤滑被膜を除去する。潤滑被膜の除去は、溶剤による溶解、拭き取り、高圧洗浄又はドライアイスブラスト等の周知の方法で実施できる。Zn-Ni合金めっき層6がその上にクロメート被膜を備える場合は、クロメート被膜を除去せずに二次イオン質量分析を実施する。その場合、Zn-Ni合金めっき層6の表面とは、クロメート被膜の表面を意味する。
[0073]
 [Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さ]
 本実施形態のZn-Ni合金めっき層6は、Cr強度が5.0×10カウント/秒以上である。そのため、ビッカース硬さが顕著に高まる。本実施形態のZn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さは、式(1)によって示される。
 ビッカース硬さ(Hv)>-300+55×Ni  (1)
 ここで、NiはZn-Ni合金めっき層6中のNi含有量(質量%)を示す。
[0074]
 Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの下限は好ましくは-250+55×Niであり、より好ましくは-200+55×Niである。Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの上限は高い程好ましい。Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの上限はたとえば、300+55×Niである。
[0075]
 より具体的には、Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの下限は好ましくは400であり、より好ましくは500であり、さらに好ましくは600であり、さらに好ましくは650であり、さらに好ましくは700である。Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの上限は高い程好ましい。Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvの上限はたとえば、1200である。
[0076]
 [Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さ測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さは次の方法で測定する。Zn-Ni合金めっき層6を備えるピン4又はボックス5を準備する。Zn-Ni合金めっき層6を備えるピン4又はボックス5を軸方向に垂直に切断する。現れたZn-Ni合金めっき層6の断面の任意の5点に対して、JIS Z2244(2009)に準拠した方法でビッカース硬さを測定する。測定には、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製微小硬度計Fischer scope HM2000を用いる。試験温度は常温(25℃)、試験力(F)は0.01Nとする。得られた測定結果5点の内、最大値及び最小値を除いた3点の算術平均を、Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHv(Hv0.001)とする。
[0077]
 [Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度]
 好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度は100以上である。ここで、光沢度とは、JIS Z8741(1997)に定義される、屈折率が可視波長範囲全域にわたって一定値1.567であるガラス表面において、入射角60°での鏡面光沢度(鏡面反射率ρ (θ)=0.1001)を100%とした場合の鏡面光沢度をいう。Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度が100以上であれば、管用ねじ継手は優れた外観を有する。好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度の下限は、105であり、さらに好ましくは、110である。Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度の上限は高い程好ましい。Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度はたとえば、200である。
[0078]
 [Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度の測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度は次の方法で測定する。Zn-Ni合金めっき層6表面の任意の2点に対して、BYK-Gardner GmbH製micro-TRI-gloss(ポータブル光沢度計)を用いて、JIS Z8741(1997)に準拠した方法で鏡面光沢度を測定する。得られた測定値の算術平均を、Zn-Ni合金めっき層6表面の光沢度とする。
[0079]
 Zn-Ni合金めっき層6は、後述するめっき層形成工程で形成される。このとき、好ましくは、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有し、クロムイオンの濃度が30~800ppmであるめっき液を用いためっき処理により、Zn-Ni合金めっき層6が形成される。この場合、Zn-Ni合金めっき層6の光沢度が高まり、管用ねじ継手は、優れた耐焼付き性に加えて、優れた外観を有する。
[0080]
 [Zn-Ni合金めっき層の厚さ]
 Zn-Ni合金めっき層6の厚さは特に限定されない。Zn-Ni合金めっき層6の厚さはたとえば、1~20μmである。Zn-Ni合金めっき層6の厚さが1μm以上であれば、十分な耐焼付き性を安定して得ることができる。Zn-Ni合金めっき層6の厚さが20μmを超えても、上記効果は飽和する。
[0081]
 [Zn-Ni合金めっき層の厚さの測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6の厚さは、次の方法で測定する。Zn-Ni合金めっき層6を形成した接触表面34及び44の4箇所に対して、Helmut Fischer GmbH製、渦電流位相式膜厚計PHASCOPEPM910を用いて、Zn-Ni合金めっき層6の厚さを測定する。測定は、ISO(International Organization for Standardization)21968(2005)に準拠する方法で行う。測定箇所は、管用ねじ継手の管周方向の4箇所(0°、90°、180°、270°の4箇所)である。測定結果の算術平均を、Zn-Ni合金めっき層6の厚さとする。
[0082]
 [Zn-Ni合金めっき層の結晶構造]
 めっきにより形成されたZn-Ni合金には、η相、γ相及びα相が含まれる。η相は、化学式Zn、格子定数a=0.267nm及びc=0.495nmの六方晶の結晶構造を有する相である。γ相は、化学式Ni Zn 21、格子定数α=0.890nmの立方晶の結晶構造を有する相である。α相は、化学式Ni、格子定数a=0.352nmの面心立方晶の結晶構造を有する相である。Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造は、これらの相の混相であってもよい。しかしながら、Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造が、γ相単相であれば、硬度がさらに高まる。したがって、好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造は、γ相単相である。
[0083]
 [Zn-Ni合金めっき層の結晶構造の同定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造は、次の方法で同定する。Zn-Ni合金めっき層6表面に対して、以下の測定条件でX線回折測定を実施する。得られた実測プロファイルとASTMカードに記載された値とを比較して相を同定する。
 ・装置:株式会社リガク製 RINT-2500
 ・X線管球:Co‐Kα線
 ・スキャンレンジ:2θ=10~110°
 ・スキャンステップ:0.02°
[0084]
 Zn-Ni合金めっき層6は組成に応じてγ相、ε相、及びη相を含む。以下、Zn-Ni合金めっき層6に含まれるγ相の(411)面の間隔を、Zn-Ni合金めっき層6の面間隔という。Zn-Ni合金めっき層6の面間隔が広がれば、Zn-Ni合金めっき層6に歪が付与され、Zn-Ni合金めっき層6の硬度が高まると推測される。したがって、Zn-Ni合金めっき層6の面間隔は2.111Å以上であってもよい。
[0085]
 上述のとおり、Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造は、組成に依存する。そのため、Zn-Ni合金めっき層6の面間隔はNi含有量に大きく影響を受ける。Zn-Ni合金めっき層6の面間隔は、微量のCrにも影響を受ける。Zn-Ni合金めっき層6の面間隔は、6.0~16.0質量%のNiを含有し、かつ、微量のCrを含有する場合、2.111Å以上になる。
[0086]
 Zn-Ni合金めっき層6の面間隔が2.111Å以上であれば、Zn-Ni合金めっき層6のビッカース硬さHvが600以上になる。この場合、管用ねじ継手の耐焼付き性がさらに高まる。好ましくは、Zn-Ni合金めっき層6の面間隔の下限は、2.112Åであり、さらに好ましくは、2.113Åである。Zn-Ni合金めっき層6の面間隔の上限は、特に限定されない。しかしながら、Zn-Ni合金めっき層6の面間隔の上限はたとえば、2.116Åである。
[0087]
 [Zn-Ni合金めっき層中のγ相の(411)面の間隔の測定方法]
 Zn-Ni合金めっき層6に含まれるγ相の(411)面の間隔は、次の方法で測定する。上述の、Zn-Ni合金めっき層6の結晶構造の同定方法と同じ条件で、X線回折測定を実施する。得られた実測プロファイル中、(411)面に対応する2θ=49.0~52.0°の回折データをローレンツ関数でフィッティングする。ローレンツ関数は式(2)で与えられる。
 回折強度(cps)=PH/(1+(2θ-PP) /FH )+BG  (2)
 ここで、PH;ピーク高さ(cps)、PP;ピーク位置(deg)、FH;半値幅(deg)、BG;バックグラウンド(cps)及び2θ;回折角度である。
 実測プロファイルの回折強度とローレンツ関数で算出した強度との差の二乗を2θ=49.0~52.0°にわたって積算し、その総和が最小となるようにPH、PP、FHおよびBGの各変数を最適化する。変数の最適化にはエクセルソフトのソルバーを用いる。(411)面の間隔を最適化したピーク位置PP(deg)からブラッグの法則に従い算出する。得られた値を、Zn-Ni合金めっき層6に含まれるγ相の(411)面の間隔(Å)とする。
[0088]
 [潤滑被膜]
 上記管用ねじ継手はさらに、ピン側接触表面40、ボックス側接触表面50、及び、Zn-Ni合金めっき層6の少なくとも1つの上に潤滑被膜7を備えてもよい。この場合、管用ねじ継手の潤滑性が高まる。潤滑被膜7は、たとえば図12に示すように、ピン側接触表面40上のZn-Ni合金めっき層6及びボックス側接触表面50上のZn-Ni合金めっき層6の両方の上に配置されてもよい。潤滑被膜7は、ピン側接触表面40上のZn-Ni合金めっき層6上のみに配置されてもよい。潤滑被膜7は、ボックス側接触表面50上のZn-Ni合金めっき層6上のみに配置されてもよい。潤滑被膜7は、ピン側接触表面40上又はボックス側接触表面50上に直接配置されてもよい。たとえば、ピン側接触表面40上又はボックス側接触表面50上にZn-Ni合金めっき層6が配置されない場合、潤滑被膜7は、ピン側接触表面40上又はボックス側接触表面50上に直接配置されてもよい。
[0089]
 潤滑被膜7は、固体であってもよいし、半固体状及び液体状であってもよい。潤滑被膜7は、周知の潤滑剤を使用できる。潤滑被膜7はたとえば、潤滑性粒子及び結合剤を含有する。潤滑被膜7は、必要に応じて、溶媒及び他の成分を含有してもよい。
[0090]
 潤滑性粒子は、潤滑性を有する粒子であれば特に限定されない。潤滑性粒子はたとえば、黒鉛、MoS (二硫化モリブデン)、WS (二硫化タングステン)、BN(窒化ホウ素)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、CFx(フッ化黒鉛)及びCaCO (炭酸カルシウム)からなる群から選択される1種又は2種以上である。溶媒以外の成分の合計を100質量%とした場合、潤滑性粒子の含有量はたとえば、1~50質量%であり、好ましくは5~30質量%である。
[0091]
 結合剤はたとえば、有機結合剤及び無機結合剤からなる群から選択される1種又は2種である。有機結合剤はたとえば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される1種又は2種である。熱硬化性樹脂はたとえば、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上である。無機系結合剤はたとえば、アルコキシシラン及びシロキサン結合を含有する化合物からなる群から選択される1種又は2種である。溶媒以外の成分の合計を100質量%とした場合、結合剤の含有量はたとえば、10~80質量%であり、好ましくは20~70質量%である。
[0092]
 潤滑被膜7は、必要に応じて、他の成分を含有できる。他の成分はたとえば、防錆剤、腐食抑制剤、界面活性剤、ワックス、摩擦調整剤及び顔料等である。溶媒以外の成分の合計を100質量%とした場合、他の成分の含有量はたとえば、合計で3~45質量%であり、好ましくは10~40質量%である。潤滑性粒子、結合剤、溶媒及びその他の成分のそれぞれの含有量は、適宜設定される。
[0093]
 潤滑剤はたとえば、JET-LUBE株式会社製、SEAL-GUARD TMECF TMである。他の潤滑剤はたとえば、ロジン、金属石鹸、ワックス及び潤滑性粉末を含有する潤滑剤である。ピン側接触表面40上に配置される潤滑被膜7の化学組成と、ボックス側接触表面50上に配置される潤滑被膜7の化学組成と、Zn-Ni合金めっき層6上に配置される潤滑被膜7の化学組成とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
[0094]
 潤滑被膜7の厚さは特に限定されない。潤滑被膜7の厚さはたとえば、30~300μmである。潤滑被膜7の厚さが30μm以上であれば、管用ねじ継手のねじ締めの際に、ショルダー部43,53同士が接触する際のトルク値を低下する効果が高い。そのため、ねじ締めの際のトルク値の調整が容易になる。潤滑被膜7の厚さが300μmを超えても、ねじ締め時に過剰分の潤滑被膜7が接触表面40,50上から排除されるため、上記効果は飽和する。
[0095]
 潤滑被膜7の厚さは、次の方法で測定する。潤滑被膜7を備えたピン4又はボックス5を準備する。ピン4又はボックス5を管の軸方向に垂直に切断する。潤滑被膜7を含む断面に対して顕微鏡観察を行う。顕微鏡観察の倍率は500倍とする。これにより、潤滑被膜7の膜厚を求める。
[0096]
 [管用ねじ継手の母材]
 管用ねじ継手の母材の化学組成は、特に限定されない。母材はたとえば、炭素鋼、ステンレス鋼及び合金鋼等である。合金鋼はたとえば、Ni合金、及び、Cr、Ni及びMo等の合金元素を含んだ二相ステンレス鋼である。
[0097]
 [製造方法]
 本実施形態の管用ねじ継手の製造方法は、上記管用ねじ継手の製造方法である。管用ねじ継手の製造方法は、準備工程と、めっき層形成工程とを備える。
[0098]
 [浸漬工程]
 浸漬工程では、はじめに、ピン4、ボックス5及びめっき液を準備する。次に、ピン側接触表面及びボックス側接触表面の少なくとも一方をめっき液に浸漬する。ピン4は、ピン側ねじ部41を含むピン側接触表面40を有する。ボックス5は、ボックス側ねじ部51を含むボックス側接触表面50を有する。めっき液は、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有する。クロムイオンの濃度は30~2000ppmである。めっき液がクロムイオンを含有することによって、Zn-Ni合金めっき層6に微量のクロムが取り込まれる。この場合、Zn-Ni合金めっき層6の硬度が高まり、管用ねじ継手の耐焼付き性が高まる。めっき液には、好ましくは、亜鉛イオン:1~100g/L、ニッケルイオン:1~100g/Lが含有される。
[0099]
 めっき液中の金属イオンの種類及びクロムイオンの濃度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(iCAP6300)を用いて測定する。
[0100]
 [通電工程]
 通電工程では、めっき液に浸漬したピン側接触表面40及びボックス側接触表面50の少なくとも一方に通電する。これにより、ピン側接触表面40及びボックス側接触表面50の少なくとも一方の上にZn-Ni合金めっき層6を形成する。つまり、Zn-Ni合金めっき層6は、電気めっきにより形成される。電気めっきの条件は適宜設定できる。電気めっきの条件はたとえば、めっき液pH:1~10、めっき液温度:10~60℃、電流密度:1~100A/dm 、及び、処理時間:0.1~30分である。
[0101]
 上記めっき液のクロムイオンの濃度は30~800ppmであってもよい。この場合、Zn-Ni合金めっき層6は、硬度が高まるだけでなく、表面の光沢度が100以上になる。そのため、管用ねじ継手は、優れた耐焼付き性に加えて、優れた外観を有する。
[0102]
 [成膜工程]
 上述のZn-Ni合金めっき層をピン側接触表面40上又はボックス側接触表面50上の少なくとも一方に形成した後に、成膜工程を実施してもよい。成膜工程では、ピン側接触表面40上、ボックス側接触表面50上、及び、Zn-Ni合金めっき層6上からなる群から選択される少なくとも1つに、潤滑被膜7を形成する。
[0103]
 上述のピン側接触表面40上、ボックス側接触表面50上、及び、Zn-Ni合金めっき層6上からなる群から選択される少なくとも1つに、上述の潤滑性粒子及び結合剤を含有する組成物を塗布することで、潤滑被膜7が形成できる。塗布方法は特に限定されない。塗布方法はたとえば、スプレー塗布、刷毛塗り及び浸漬である。スプレー塗布を採用する場合、組成物を加熱して、流動性を高めた状態で噴霧してもよい。潤滑被膜7は、接触表面の一部に形成してもよいが、接触表面全体に均一に形成することが好ましい。成膜工程は、ピン4及びボックス5の両方に実施してもよいし、片方のみに実施してもよい。
[0104]
 [下地処理工程]
 上記製造方法は、必要に応じて、浸漬工程の前に下地処理工程を備えてもよい。下地処理工程はたとえば、酸洗及びアルカリ脱脂である。下地処理工程では、接触表面上に付着した油分等を除去する。下地処理工程はさらに、サンドブラスト及び機械研削仕上げ等の研削加工を備えてもよい。これらの下地処理は、1種のみ実施してもよく、複数の下地処理を組み合わせて実施してもよい。
実施例
[0105]
 以下、実施例を説明する。実施例において、ピンの接触表面をピン表面、ボックスの接触表面をボックス表面という。また、実施例中の%は、質量%を意味する。
[0106]
 [準備工程]
 本実施例においては、ねじ継手の母材を想定して、市販の冷延鋼板を使用した。冷延鋼板は縦150mm、横100mm、厚さ0.8mmであった。冷延鋼板表面の、縦100mm×横100mmの領域にめっきを施した。鋼種は、極低炭素鋼であった。
[0107]
 続いて、めっき液を準備した。めっき液は、大和化成株式会社製、商品名ダインジンアロイN2(商品名)を使用した。めっき液中に塩化クロム(III)六水和物(CrCl ・6H O)を溶解して、各試験番号のめっき液のクロムイオン濃度を調整した。なお、表1中の「めっき液中Cr濃度(ppm)」とは、めっき液中のクロムイオンの濃度(ppm)をいい、その数値は狙い値である。「めっき液中Cr濃度(ppm)」の値が0とは、めっき液中に前述の塩化クロム(III)六水和物を添加しなかったことを意味する。
[0108]
 [めっき層形成工程]
 各試験番号の冷延鋼板に、準備しためっき液を用いてZn-Ni合金めっき層を形成した。Zn-Ni合金めっき層の形成は、電気めっきにより実施した。めっき液pH:3~6、めっき液温度:30~40℃、処理時間:5~20分であった。その他の各試験番号の試験条件を表1に示す。表1中、「めっき液流速(m/s)」は、めっき液の攪拌速度であり、めっき液をポンプで循環させた場合の循環量を、めっき液の線速で示した値である。
[0109]
[表1]


[0110]
 [Zn-Ni合金めっき層の組成の測定試験]
 Zn-Ni合金めっき層の組成を次の方法で測定した。ハンドヘルド蛍光X線分析装置(日本電子株式会社製DP2000(商品名DELTA Premium))を用いて測定した。測定は、Zn-Ni合金めっき層を形成した冷延鋼板の表面の任意の4箇所を組成分析した。Alloy PlusモードによりZn及びNiの測定含有量を求めた。求めたZn及びNiの測定含有量の総量でNiの測定含有量を除したものをNi含有量(質量%)とした。結果を表1に示す。同様に、Cr含有量を測定した。しかしながら、蛍光X線による分析では、全ての実施例でCrは検出限界以下であった。
[0111]
 [Zn-Ni合金めっき層のCr強度の測定試験]
 試験番号2、試験番号6、試験番号10、試験番号14、試験番号18及び試験番号22のZn-Ni合金めっき層のCr強度を次の方法で測定した。アルバックファイ株式会社製、四重極型二次イオン質量分析装置PHI ADEPT-1010 TMを用いた。測定条件は以下のとおりであった。Zn-Ni合金めっき層の表面から深さ方向分析を行った。Zn-Ni合金めっき層の表面から1.5~2.0μm深さのCr強度の測定値の算術平均値を表1に示す。
 照射イオン:O
 加速電圧:6.0kV
 測定範囲:64μm
 測定頻度:深さ方向に20nmごと
 測定元素:Zn、Ni、Cr
[0112]
 二次イオン質量分析の結果を図13に示す。図13において、横軸は深さである。深さとは、上述の方法で測定時間から換算した深さ(μm)である。縦軸は、二次イオン強度である。図13のデータは、試験番号2、試験番号6、試験番号10、試験番号14、試験番号18及び試験番号22のZn-Ni合金めっき層の上にさらにクロメート被膜を形成した後に測定した結果である。そのため、各データの表層付近(深さ0μm~約0.4μmまで)は、クロメート被膜のCrを検出し、Cr強度が高かった。
[0113]
 [Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さ測定試験]
 Zn-Ni合金めっき層を形成した冷延鋼板を表面に対して垂直に切断し、現れたZn-Ni合金めっき層の断面に対して、上述の方法でビッカース硬さ(Hv)を測定した。結果を表1の硬度(Hv)の欄に示す。また、式(1)の欄に、上述の式(1)とNi含有量とから算出されるビッカース硬さ(Hv)を示す。
[0114]
 [Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度測定試験]
 Zn-Ni合金めっき層を形成した冷延鋼板の表面に対して、上述の方法で光沢度を測定した。結果を表1に示す。
[0115]
 [Zn-Ni合金めっき層の厚さ測定試験]
 Zn-Ni合金めっき層を形成した冷延鋼板の表面の任意の4箇所に対して、上述の方法により測定試験を実施し、Zn-Ni合金めっき層の厚さ(μm)を測定した。結果を表1に示す。
[0116]
 [Zn-Ni合金めっき層のX線回折測定試験]
 Zn-Ni合金めっき層を形成した冷延鋼板の表面に対して、上述の測定条件でX線回折測定を実施した。得られた実測プロファイルとASTMカードに記載された値とを比較して相を同定した。その結果、全ての実施例でγ相単相であった。また、得られた実測プロファイルから、(411)面に対応するピーク位置PP(deg)を上述の方法で算出した。そして、Zn-Ni合金めっき層に含まれるγ相の(411)面の間隔(Å)を求めた。結果を表1の面間隔(Å)の欄に示す。
[0117]
 [評価結果]
 Zn-Ni合金めっき層の硬度と耐焼付き性とは相関する。そのため、Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さHvが高ければ、耐焼付き性に優れる。表1を参照して、試験番号1~試験番号16の冷延鋼板では、30ppm以上の濃度のクロムイオンを含有するめっき液でZn-Ni合金めっき層を形成した。そのため、Zn-Ni合金めっき層のCr強度が5.0×10カウント/秒以上であり、ビッカース硬さHvが高まった。具体的には、ビッカース硬さが、式(1)及びNi含有量から算出されるビッカース硬さよりも高くなった。つまり、試験番号1~試験番号16は、優れた耐焼付き性を示した。
[0118]
 さらに、試験番号1~試験番号12の冷延鋼板では、800ppm以下のクロムイオン濃度のめっき液でZn-Ni合金めっき層を形成した。その結果、光沢度が100.0以上となり、優れた耐焼付き性に加え、優れた外観を示した。
[0119]
 さらに、試験番号1~試験番号16の冷延鋼板では、γ相の(411)面の面間隔が2.111Å以上になった。その結果、ビッカース硬さHvが600以上となり、さらに優れた耐焼付き性を示した。
[0120]
 一方、試験番号17~試験番号22の冷延鋼板では、30ppm未満のクロムイオン濃度のめっき液でZn-Ni合金めっき層を形成した。そのため、Zn-Ni合金めっき層のCr強度が5.0×10未満となった。その結果、ビッカース硬さが式(1)及びNi含有量から算出されるビッカース硬さよりも低くなり、耐焼付き性が悪かった。
[0121]
 以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

符号の説明

[0122]
 1     管用ねじ継手
 2     鋼管
 3     カップリング
 4     ピン
 5     ボックス
 6     Zn-Ni合金めっき層
 7     潤滑被膜
 40    ピン側接触表面
 41    ピン側ねじ部
 42    ピン側金属シール部
 43    ピン側ショルダー部
 50    ボックス側接触表面
 51    ボックス側ねじ部
 52    ボックス側金属シール部
 53    ボックス側ショルダー部

請求の範囲

[請求項1]
 管用ねじ継手であって、
 ピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有するピンと、
 ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有するボックスと、
 前記ピン側接触表面及び前記ボックス側接触表面の少なくとも一方の上に、Zn、Ni、微量Cr及び不純物からなり、前記微量Crの含有量が照射イオンとしてO を用いた二次イオン質量分析によるCr強度で5.0×10カウント/秒以上であるZn-Ni合金めっき層とを備える、管用ねじ継手。
[請求項2]
 請求項1に記載の管用ねじ継手であって、
 前記Zn-Ni合金めっき層表面の光沢度が100以上である、管用ねじ継手。
[請求項3]
 請求項1又は請求項2に記載の管用ねじ継手であって、
 前記Zn-Ni合金めっき層の厚さは1~20μmである、管用ねじ継手。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれか1項に記載の管用ねじ継手であって、
 前記Zn-Ni合金めっき層のビッカース硬さHvが600以上である、管用ねじ継手。
[請求項5]
 請求項1~3のいずれか1項に記載の管用ねじ継手であって、
 前記Zn-Ni合金めっき層は、6.0~16.0質量%のNiを含有し、γ相を含み、前記γ相の(411)面の間隔が2.111Å以上である、管用ねじ継手。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれか1項に記載の管用ねじ継手であってさらに、
 前記ピン側接触表面、前記ボックス側接触表面、及び、前記Zn-Ni合金めっき層の少なくとも1つの上に潤滑被膜を備える、管用ねじ継手。
[請求項7]
 請求項1~6のいずれか1項に記載の管用ねじ継手であって、
 前記ピン側接触表面はさらに、ピン側金属シール部及びピン側ショルダー部を含み、前記ボックス側接触表面はさらに、ボックス側金属シール部及びボックス側ショルダー部を含む、管用ねじ継手。
[請求項8]
 管用ねじ継手の製造方法であって、
 ピン側ねじ部を含むピン側接触表面を有するピン、及び、ボックス側ねじ部を含むボックス側接触表面を有するボックスを準備し、前記ピン側接触表面及び前記ボックス側接触表面の少なくとも一方を亜鉛イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有し、前記クロムイオンの濃度が30~2000ppmであるめっき液に浸漬する工程と、
 前記めっき液に浸漬した前記ピン側接触表面又は前記ボックス側接触表面の少なくとも一方に通電して、前記ピン側接触表面及び前記ボックス側接触表面の少なくとも一方の上にZn-Ni合金めっき層を形成する工程とを備える、管用ねじ継手の製造方法。
[請求項9]
 請求項8に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
 前記めっき液の前記クロムイオンの濃度が30~800ppmである、管用ねじ継手の製造方法。
[請求項10]
 請求項8又は請求項9に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
 前記ピン側接触表面はさらに、ピン側金属シール部及びピン側ショルダー部を含み、前記ボックス側接触表面はさらに、ボックス側金属シール部及びボックス側ショルダー部を含む、管用ねじ継手の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]