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1. (WO2019044942) GREASE COMPOSITION, METHOD FOR PRODUCING SAME, AND ROLLING DEVICE
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明 細 書

発明の名称 グリース組成物およびその製造方法、並びに転動装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016   0017  

発明の効果

0018   0019   0020   0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

実施例

0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

産業上の利用可能性

0060  

符号の説明

0061  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : グリース組成物およびその製造方法、並びに転動装置

技術分野

[0001]
 本発明は所定のセルロースナノファイバーを増ちょう剤に利用したグリース組成物およびその製造方法に関する。また、このグリース組成物を封入する等した転動装置に関する。

背景技術

[0002]
 転動装置は、内方部材と、外方部材と、これらの間に転動自在に配された複数の転動体などから構成されるものである。このような転動装置としては、例えば、転がり軸受、等速ジョイント、リニアガイド装置、ボールねじなどが挙げられる。転がり軸受は、一般に機械部品として各種産業機械に数多く使用されている。所定の使用期間が終了すると、転がり軸受を取り外すことなく、産業廃棄物として装置ごと廃棄処分される場合が多い。この廃棄処分の方法としては、焼却処理、海洋廃棄、地中廃棄、山中放置などがほとんどである。
[0003]
 近年では、環境問題に対する意識が高まり、地球環境を悪くしない環境対応製品として生分解性を有する構造材を用いた転がり軸受などが開発されている。例えば、内輪、外輪および転動体を鋼から構成し、シールおよび保持器を生分解性であるポリエチレンテレフタレート-ブチレンアジペート共重合体から構成した転がり軸受が提案されている(特許文献1参照)。このような生分解性の部材を利用することで、化石資源由来のエンジニアリングプラスチックや合成ゴムのように自然環境中で分解されない部材を用いた場合と比較して、廃棄時における環境負荷を大幅に低減させ得る。
[0004]
 また、この特許文献1の転がり軸受では、潤滑剤に、基油として生分解性合成エステル油や植物油を用いた生分解性グリースを使用することが提案されている。転がり軸受などの転動装置の潤滑に使用されるグリース組成物は、使用時において、漏れ、飛散などが発生する場合がある。このため、生分解性グリースを使用することは、廃棄時のみならず、通常使用時も含めて環境保全の面から好ましい。
[0005]
 従来、耐熱性や耐久性を確保しつつ、生分解性を有するグリース組成物として、エステル油や植物油を基油とし、キトサンおよびキチンの少なくとも一方を増ちょう剤として含有するグリース組成物が提案されている(特許文献2参照)。キチンは天然資源である甲殻類の殻から単離でき、キトサンはこのキチンを強アルカリにより脱アセチル化して得られる。
[0006]
 また、基油に、セルロース、キチン、キトサンなどの親水性ナノファイバーであって所定の太さを有するものを分散してなるグリースが提案されている。親水性セルロースナノファイバーは、セルロース表面に水酸基を持っており、水中で水分子と水素結合することで分散が可能となっている。水から親水性セルロースナノファイバーを取り出した場合、繊維同士が凝集する。このため、特許文献3では、親水性セルロースナノファイバーの分散した水溶液を基油と混ぜ、機械的に分散し、その後水を飛ばすことでグリースの製造を行っている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許第3993377号公報
特許文献2 : 特開2013-116991号公報
特許文献3 : 国際公開第2016/175258号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 特許文献1の転がり軸受における生分解性グリースでは、基油成分の生分解率は高いものの、増ちょう剤成分によってはその生分解率は高くない。また、特許文献2のグリース組成物では、増ちょう剤として天然物由来のキトサンやキチンを使用するため、生分解性には優れるものの高価である。
[0009]
 また、特許文献2では、所定ちょう度を得るための基油に対する配合量は不明である。増ちょう剤量が多くなる場合、軸受などにおいてトルクが高くなり、また、相対的に基油量が少なく潤滑寿命の観点で不利となる。
[0010]
 また、特許文献3では、上記のとおり、水を最終的に飛ばすことでグリースを製造している。しかし、親水性セルロースナノファイバーの水酸基が水分と水素結合しているため、完全に水分を飛ばすことは困難である。このため、該グリースを鋼材部品を含む転がり軸受などの転動装置中に使用した場合、錆が発生するおそれがある。また、グリース中への水分の混入により、水素脆性剥離が起こりやすくなるおそれがある。
[0011]
 本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、高い生分解性を有しつつ、転がり軸受などに封入して使用した場合に、錆発生などの悪影響を与えず、低トルク化および長寿命化を図り得るグリース組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。また、このグリース組成物を潤滑に使用した転動装置を提供すること目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、上記増ちょう剤が、疎水性セルロース繊維であり、上記基油と上記増ちょう剤の合計質量に対して0.1~15質量%含まれることを特徴とする。特に、上記疎水性セルロース繊維は、該繊維でシートを作製し、該シート表面に水を滴下した際のシートと水との接触角が90度をこえることを特徴とする。
[0013]
 上記疎水性セルロース繊維が、平均繊維径4~500nmであるセルロースナノファイバーであることを特徴とする。
[0014]
 上記グリース組成物の混和ちょう度が、200~430であることを特徴とする。
[0015]
 上記基油が、植物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。また、上記基油が、パラフィン系鉱油およびエーテル油から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
[0016]
 本発明のグリース組成物の製造方法は、上記基油と上記疎水性セルロース繊維とを混合して懸濁液とし、該懸濁液中の上記疎水性セルロース繊維の凝集体を機械的に解繊してグリース化することを特徴とする。
[0017]
 本発明の転動装置は、転がり接触する2つの部材を含み、その転がり接触部を上記本発明のグリース組成物で潤滑してなることを特徴とする。また、該転動装置は、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、上記内輪軌道面と上記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体とを有する転がり軸受であることを特徴とする。

発明の効果

[0018]
 本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含み、この増ちょう剤が、疎水性セルロース繊維(セルロースナノファイバー)であり、基油と増ちょう剤の合計質量に対して0.1~15質量%含まれるので、高い生分解性を有し、低環境負荷の潤滑剤となる。また、少量の添加で十分なちょう度(例えば200~430)の半固体状の物性のグリースが得られるので、増ちょう剤量が少なく、基油量が多くなり、転がり軸受などに封入して使用した場合に低トルク化および長寿命化を図り得る。
[0019]
 また、このような疎水性セルロース繊維の増ちょう剤に、植物油やエステル油などの生分解率の高い基油を組み合わせることで、環境負荷をより低減できる。また、基油に高温耐久性に優れるエーテル油を用いることで、増ちょう剤の面から環境負荷を低減しつつ、高温耐久性を向上できる。
[0020]
 本発明のグリース組成物の製造方法は、疎水性セルロース繊維を用いて、油中でこれを分散、解繊するので、水分散を利用せずに、油中でのセルロース繊維の凝集を防止でき、容易に均質なグリースを製造できる。また、グリース中に水が残存することがないので、転動装置のグリースとして利用した際に、錆発生などの悪影響を与えにくい。
[0021]
 本発明の転動装置は、転がり接触する2つの部材を含み、その転がり接触部を本発明のグリース組成物で潤滑してなるので、低トルクかつ長寿命でありながら、低環境負荷で環境にも優しい軸受となる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本発明の転動装置である転がり軸受の一例の断面図である。
[図2] トルクの経時変化を示す図である。
[図3] せん断速度と見掛け粘度の関係を示す図である。

発明を実施するための形態

[0023]
 本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含み、この増ちょう剤として疎水性セルロース繊維を用いていることを特徴としている。また、この疎水性セルロース繊維の含有量は、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにおいて、該ベースグリース全体質量に対して0.1~15質量%である。
[0024]
 本発明のグリース組成物で使用する疎水性セルロース繊維は、その繊維径(直径)がナノサイズである微細セルロース繊維である。セルロース分子が複数本集まって、ナノサイズの径の繊維を形成しており、セルロース分子間は水素結合により連結されている。本発明では、このようなセルロース繊維として、セルロースナノファイバー(CNF)やセルロースナノクリスタル(CNC)を使用できる。
[0025]
 セルロースナノファイバー(CNF)は、例えば、平均繊維径が4~500nm、好ましく30~300nm、さらに好ましくは30~100nmであり、平均繊維長が1μm以上、好ましくは5μm以上である。また、平均繊維長/平均繊維径のアスペクト比が10以上であることが好ましい。セルロースナノクリスタル(CNC)は、例えば、平均繊維径が4~100nm、好ましくは10~50nmであり、平均繊維長が100~500nmである。なお、本発明における繊維径および繊維長さは、本分野において通常使用される電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などにより測定できる。また、平均繊維径と平均繊維長は、上記測定に基づき数平均繊維径、数平均繊維長として算出できる。
[0026]
 基油に対する増ちょう効果が高く、少量の配合量でも所望の混和ちょう度を達成しやすいことから、特にセルロースナノファイバー(平均繊維径が4~500nm、平均繊維長1μm以上、アスペクト比10以上)を用いることが好ましい。
[0027]
 セルロースナノファイバーの原料(セルロース)としては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、コットンパルプなどから得られる植物由来セルロース、低酸溶紡糸による高重合度の再生セルロース(ポリノジックレーヨン)、アミン・オキサイド系有機溶剤を用いた溶剤紡糸レーヨンなどの再生セルロース、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、電界紡糸法によるナノセルロースなどが挙げられる。
[0028]
 植物由来セルロースよりセルロースナノファイバーを製造する方法としては、物理的方法と化学的方法があり、本発明ではいずれの方法で得られたものでも使用できる。物理的方法(解繊)としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、ボールミル粉砕法、およびグラインドミル粉砕法などが挙げられる。化学的方法としては、TEMPO酸化法などが挙げられる。
[0029]
 本発明で使用する疎水性セルロース繊維は、上記セルロースナノファイバーなどの表面を化学修飾処理したもの(修飾パルプ)である。具体的には、疎水化するために、セルロース繊維の水酸基がエステル化およびエーテル化から選ばれる少なくとも1種の方法により修飾された繊維である。本発明において「疎水性セルロース繊維」は、その繊維でシートを作製し、該シート表面に水を滴下した際のシートと水との接触角が90度をこえるものである。より好ましくは100度以上であり、さらに好ましくは120度以上である。
[0030]
 上記接触角が90度以下の場合、親水性セルロース繊維となる。親水性セルロース繊維は、水分散と油分散とを組み合わせて、水を最終的に飛ばすことで油中に分散した後も、セルロース繊維同士の水素結合により、油中に分散している繊維が凝集する可能性がある。これに対して、本発明のグリース組成物では、疎水性セルロース繊維を用いることで、基油中での繊維の凝集を防止でき、グリース性質を維持できる。
[0031]
 また、本発明で使用する疎水性セルロース繊維は、リグニンやヘミセルロースが一部残存しているものであってもよい。また、疎水性セルロース繊維の断面形状は、異方形状(扁平など)、等方形状(真円、正多角形など)のいずれであってもよい。
[0032]
 本発明のグリース組成物で使用する基油として、生分解率が高い油を使用してもよい。例えば、その生分解率が60%以上のものが好ましい。生分解率は生分解性を計る指標であり、OECD301法に従い測定した値をいう。このOECD301法は、経済協力開発機構(OECD)の「化学品テストガイドライン」に記載された方法である。
[0033]
 このような生分解率が高い基油としては、例えば、植物油またはエステル油が挙げられる。植物油の具体例としては、菜種油、ひまし油、コーン油、大豆油、ひまわり油、パーム油、ごま油、米ぬか油などが挙げられる。
[0034]
 エステル油としては、二塩基酸と分岐アルコールの反応から得られるジエステル油、芳香族系三塩基酸と分岐アルコールの反応から得られる芳香族エステル油、多価アルコールと一塩基酸の反応から得られるポリオールエステル油などが挙げられる(特に生分解率が60%以上のもの)。
[0035]
 ジエステル油の具体例としては、ジオクチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。また、芳香族エステル油の具体例としては、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。
[0036]
 ポリオールエステル油において、多価アルコールに反応させる一塩基酸は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。一塩基酸としては、炭素数4~18の1価の脂肪酸が挙げられる。例えば、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。ポリオールエステル油の具体例としては、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなどが挙げられる。
[0037]
 本発明のグリース組成物で使用する基油として、上記以外にパラフィン系の鉱油やエーテル油が挙げられる。鉱油は、その分子構造の相違によりパラフィン系やナフテン系に分類されるが、パラフィン系はナフテン系に対して生分解率が高く、本発明においては好適に利用できる。
[0038]
 エーテル油としては、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、ジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油、ジアルキルジフェニルエーテル油などが挙げられる。これらのエーテル油は、酸価安定性に優れ、高温耐久性に優れる。また、増ちょう剤成分の生分解率が高いため、これらのエーテル油を用いた場合であってもグリース全体としては生分解率を高めることができる。
[0039]
 本発明のグリース組成物で使用する基油の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)としては、40℃において10~200mm /sが好ましい。より好ましくは20~150mm /sであり、さらに好ましくは20~80mm /sである。
[0040]
 基油に増ちょう剤(疎水性セルロース繊維)を配合してベースグリースが得られる。疎水性セルロース繊維は、例えば、任意の溶媒に分散して調整した分散体(ゲル状など)を基油に添加し、加熱混練などにより該溶媒を除去しつつ、基油中に繊維を均一に分散させてグリース化できる。なお、転動装置において、特に悪影響を与えない場合には、分散溶媒が一部残存していてもよい。
[0041]
 また、基油中で原料パルプなどを解繊してグリースを調整してもよい。例えば、基油と疎水性セルロース繊維とを混合して懸濁液とし、該懸濁液中の疎水性セルロース繊維の凝集体を機械的に解繊してグリース化する方法が挙げられる。懸濁液の作製にはミキサーなどが、懸濁液中の凝集体の解繊にはグラインドミルなどが使用できる。疎水性セルロース繊維を用いることから、基油中での繊維同士の凝集を防止でき、機械的な解繊も容易となる。この方法では、グリース化までの製造工程に分散溶媒として水を使用していない。このため、グリース中に水が残存することがなく、転動装置のグリースとして利用した際に、錆発生や水素脆性剥離発生率向上などの悪影響を与えにくい。
[0042]
 また、グリース組成物には、必要に応じて、その他の添加剤として、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、金属不活性化剤、耐摩耗添加剤、防錆剤界面活性剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
[0043]
 基油と増ちょう剤からなるベースグリース中に占める増ちょう剤の含有量は、0.1~15質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。増ちょう剤である疎水性セルロース繊維の含有量が0.1質量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となる。一方、15質量%をこえると、相対的に基油量が少なくなり、所望の効果が得られないおそれがある。
[0044]
 本発明のグリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220:60回混和ちょう度)は、200~430の範囲にあり、好ましくは350~430である。このような範囲(350~430)とすることで、低トルク化を図りつつ、増ちょう剤に疎水性セルロース繊維を用いることで軸受外への漏出も抑制できる。
[0045]
 増ちょう剤として疎水性セルロース繊維を用いることで、上記のような少量の添加で十分なちょう度の半固体状の物性のグリースが得られる。このため、基油割合が高くなり、潤滑寿命を延長できる。また、セルロースは、天然由来で生分解率が高い。このため、低環境負荷で生活環境に優しい軸受を提供できる。
[0046]
 本発明のグリース組成物は、転動装置の潤滑に使用されるものである。転動装置は、転がり接触する2つの部材を含む装置であり、内方部材と、外方部材と、これらの間に転動自在に配された複数の転動体などから構成される。転動装置の具体的としては、例えば、転がり軸受、等速ジョイント、リニアガイド装置、ボールねじなどが挙げられる。
[0047]
 本発明の転動装置である転がり軸受を図1に基づいて説明する。図1は深溝玉軸受の断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この転動体4は、保持器5により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部がシール部材6によりシールされ、少なくとも転動体4の周囲に上述のグリース組成物7が封入される。グリース組成物7が、内輪2および外輪3と、転動体4との転がり接触部を潤滑している。
[0048]
 転がり軸受1において、内輪2、外輪3、転動体4、保持器5などの軸受部材を構成する材料は特に限定されず、軸受材料として一般的に用いられる任意の材料を使用できる。例えば、高炭素クロム軸受鋼、浸炭鋼、ステンレス鋼、高速度鋼、冷間圧延鋼などの鋼材が挙げられる。また、シール部材6は、金属製またはゴム成形体単独でよく、あるいはゴム成形体と金属板、プラスチック板、またはセラミック板との複合体であってもよい。以上の軸受部材のうち、特に保持器とシール部材を公知の生分解性材料(樹脂など)とすることで、上述のグリース組成物と併せて、環境負荷を大きく低減した転がり軸受とできる。
[0049]
 図1では軸受として玉軸受について例示したが、本発明の転動装置である転がり軸受は、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などとしても使用できる。
実施例
[0050]
 実施例の増ちょう剤として使用した疎水性セルロースナノファイバー(修飾パルプ:表1および表2中の「化学修飾CNF」)について説明する。この修飾パルプは、セルロース繊維の水酸基を化学修飾(エステル化および/またはエーテル化)したものであり、水との接触角を表1に示す。対比として、同セルロース繊維を修飾していないセルロースナノファイバー(表1中の「未処理CNF」)の水との接触角を表1に併記する。接触角は、それぞれの繊維でシートを作製し、該シート表面に水を滴下した際のシートと水との接触角として測定した。より詳細には、室温23℃、湿度50%の雰囲気下で、シート表面に純水3μlを滴下し、滴下1秒後、3秒後、5秒後の接触角を、ゴニオメーター式測定器(エルマ光学社製:接触角測定器G-1)を用いて測定した値である。
[0051]
[表1]


[0052]
実施例
 基油となるエーテル油1860gと、上記修飾パルプ140gとを計量し、ラボミキサーを用いて均一な修飾パルプ懸濁液を作製した。この修飾パルプ懸濁液を、グラインドミルに通し、該懸濁液中のパルプの解繊を行なった。これにより、基油であるエーテル油中に、増ちょう剤である疎水性セルロースナノファイバーが分散した状態のグリース組成物を得た。なお、基油としたエーテル油はアルキルジフェニルエーテル油であり、基油の動粘度は表2に示すとおりである。このグリース組成物について、混和ちょう度(JIS K 2220:60回混和ちょう度)を測定した。結果を表2に併記する。 また、このグリース組成物を6204転がり軸受(深溝玉軸受)の軸受内空間に静止空間体積比で100体積%(1.6g)封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。この試験軸受を下記のトルク測定試験に供し、回転トルクの経時変化を調べた。結果を図2に示す。また、下記のグリース漏れ試験に供した。
[0053]
比較例
 実施例と同種の基油を用い、脂肪族ウレア化合物を増ちょう剤とするグリース組成物を得た。増ちょう剤の含有量は表2のとおりである。なお、脂肪族ウレア化合物としては、ジイソシアネートである4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートと、この2倍当量となるモノアミンであるオクチルアミンとを基油中で反応させて得られたものを用いた。このグリース組成物について、混和ちょう度(JIS K 2220:60回混和ちょう度)を測定した。結果を表2に併記する。 また、このグリース組成物を6204転がり軸受(深溝玉軸受)の軸受内空間に静止空間体積比で100体積%(1.6g)封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。この試験軸受を実施例と同じ下記のトルク測定試験に供し、回転トルクの経時変化を調べた。結果を図2に示す。また、実施例と同じ下記のグリース漏れ試験に供した。
[0054]
<トルク測定試験>
 試験軸受を固定し、回転数3600rpm、室温(25℃)雰囲気、外輪にアキシャル荷重20Nを負荷してロードセルで拘束し、内輪回転として、軸受で発生するトルク(Nmm)を算出した。
[0055]
<グリース漏れ試験>
 試験軸受を固定し、回転数10000rpm、室温(25℃)雰囲気、外輪にアキシャル荷重67N、ラジアル荷重67Nを負荷してロードセルで拘束し、内輪回転として、試験前に対する100時間運転後のグリース残存率を測定した。なお、試験前は、軸受内空間に静止空間体積比で100体積%相当の1.6gを封入している。
[0056]
[表2]


[0057]
 図2に示すように、軸受で発生するトルクは、実施例は比較例の半分程度であり、低トルクであることが分かる。また、グリース漏れ試験において、実施例は100時間運転後に試験前の95%のグリースが軸受内に存在することが確認でき、比較例は100時間運転後に試験前の94%のグリースが軸受内に存在することが確認できた。この結果より、実施例のグリース組成物は、ちょう度が大きいものでありながら、比較例のグリース組成物と同等にグリース漏れを抑制でき、十分な長寿命が期待できる。
[0058]
 また、実施例と比較例のグリース組成物について以下のようにレオロジー特性を評価した。レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製HAAKE RheoWin MARS1)において、直径20mm先端角度178°のコーンプレート型のセルを用いて測定した。レオロジー測定条件は、一定温度・一定方向回転であり、温度は25℃である。せん断速度を0.01から8000(単位:1/s)まで増速し、各せん断速度で45秒後の粘度変化を計測した。結果を図3に示す。
[0059]
 図3に示すように、実施例は、比較例と比較して少ない増ちょう剤量でありながら、同等の増粘効果が得られていることが分かる。このため、相対的に基油量を多くでき、長寿命化を図り得る。

産業上の利用可能性

[0060]
 本発明のグリース組成物は、高い生分解性を有しつつ、錆発生などの悪影響を与えず、低トルク化および長寿命化を図り得るので、転がり軸受、等速ジョイント、リニアガイド装置、ボールねじなどの転動装置の潤滑に使用する組成物として好適に利用できる。

符号の説明

[0061]
 1 転がり軸受
 2 内輪
 3 外輪
 4 転動体
 5 保持器
 6 シール部材
 7 グリース組成物

請求の範囲

[請求項1]
 基油と増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、
 前記増ちょう剤が、疎水性セルロース繊維であり、前記基油と前記増ちょう剤の合計質量に対して0.1~15質量%含まれることを特徴とするグリース組成物。
[請求項2]
 前記疎水性セルロース繊維は、該繊維でシートを作製し、該シート表面に水を滴下した際のシートと水との接触角が90度をこえることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
[請求項3]
 前記疎水性セルロース繊維が、平均繊維径4~500nmであるセルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
[請求項4]
 前記グリース組成物の混和ちょう度が、200~430であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
[請求項5]
 前記基油が、植物油およびエステル油から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
[請求項6]
 前記基油が、パラフィン系鉱油およびエーテル油から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
[請求項7]
 請求項1記載のグリース組成物の製造方法であって、
 前記基油と前記疎水性セルロース繊維とを混合して懸濁液とし、該懸濁液中の前記疎水性セルロース繊維の凝集体を機械的に解繊してグリース化することを特徴とするグリース組成物の製造方法。
[請求項8]
 転がり接触する2つの部材を含み、その転がり接触部をグリース組成物で潤滑してなる転動装置であって、
 前記グリース組成物が請求項1記載のグリース組成物であることを特徴とする転動装置。
[請求項9]
 前記転動装置は、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体とを有する転がり軸受であることを特徴とする請求項8記載の転動装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]