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1. (WO2019026954) SPUTTERING TARGET, OXIDE SEMICONDUCTOR THIN FILM, THIN FILM TRANSISTOR, AND ELECTRONIC DEVICE
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明 細 書

発明の名称 スパッタリングターゲット、酸化物半導体薄膜、薄膜トランジスタおよび電子機器

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140  

実施例

0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172  

産業上の利用可能性

0173  

符号の説明

0174  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1A   1B   1C   1D   2   3   4   5   6   7A   7B   7C   7D   7E   8A   8B   8C   9   10   11   12   13   14   15  

明 細 書

発明の名称 : スパッタリングターゲット、酸化物半導体薄膜、薄膜トランジスタおよび電子機器

技術分野

[0001]
 本発明は、スパッタリングターゲット、酸化物半導体薄膜、薄膜トランジスタおよび電子機器に関する。

背景技術

[0002]
 従来、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という。)で駆動する方式の液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの表示装置では、TFTのチャネル層に非晶質シリコン膜または結晶質シリコン膜を採用したものが主流であった。
 一方で、近年では、ディスプレイの高精細化の要求に伴い、TFTのチャネル層に使用される材料として酸化物半導体が注目されている。
[0003]
 酸化物半導体のなかでも特に、特許文献1に開示されるインジウム、ガリウム、亜鉛、および酸素からなるアモルファス酸化物半導体(In-Ga-Zn-O、以下「IGZO」と略記する。)は、高いキャリア移動度を有するため、好ましく用いられている。しかしながら、IGZOは、原料としてInおよびGaを使用するため原料コストが高いといった欠点がある。
[0004]
 原料コストを安くする観点から、Zn-Sn-O(以下「ZTO」と略記する)(特許文献2)または、IGZOのGaの代わりにSnを添加したIn-Sn-Zn-O(以下「ITZO」と略記する)(特許文献3)が提案されている。なかでもITZOは、IGZOに比べ移動度も非常に高いことからIGZOに次ぐ材料として注目を集めている。
[0005]
 しかしながら、ITZOは、酸化物半導体に用いる材料のなかでも熱膨張係数が大きく、熱伝導率が低い。そのため、ITZOからなるスパッタリングターゲットは、CuまたはTi製のバッキングプレートへのボンディング時および、スパッタリング時に熱応力によりクラックを発生しやすかった。
[0006]
 そこで特許文献3では、酸化物焼結体中にIn (ZnO) で表される六方晶層状化合物とZn SnO で表されるスピネル構造化合物を含み、かつIn (ZnO) で表される六方晶層状化合物のアスペクト比を3以上とすることで、酸化物焼結体の強度を向上させるという提案がなされている。
[0007]
 一方、特許文献4には、六方晶層状化合物とスピネル構造化合物の他に、発明の効果を損なわない限り、アルミニウムを含むことができることが開示されている。
[0008]
 特許文献5には、インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)およびアルミニウム元素(Al)を含有する酸化物からなり、In (ZnO) (nは2~20である)で表わされるホモロガス構造化合物およびZn SnO で表されるスピネル構造化合物を含むスパタッリングターゲットが記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 国際公開第2012/067036号
特許文献2 : 特開2017-36497号公報
特許文献3 : 国際公開第2013/179676号
特許文献4 : 国際公開第2007/037191号
特許文献5 : 特開2014-98204号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 しかしながら、特許文献3~5のITZOスパッタリングターゲットには以下の問題があった。
 特許文献3に記載のスパッタリングターゲットはIn (ZnO) で表される六方晶層状化合物のアスペクト比を3以上にするために、原料粉末を混合粉砕する際に積算動力を200Wh以上にする必要がある。また、量産等、原料粉末量が多くなると、混合粉砕時に原料粉末全体に均一に動力が伝達されず、アスペクト比が3以上の六方晶層状化合物が焼結体中に均一に析出せず、スパッタリングターゲットの強度にムラが生じるといった欠点があった。
[0011]
 特許文献4、5は、高密度かつ低抵抗のターゲットの提供を目的としており、スパッタリングターゲットの強度については、示唆しない。そのため、特許文献4および5に記載のスパッタリングターゲットは、スパッタリング時にクラックの発生を抑制できる構造ではなかった。
[0012]
 本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッキングプレートへのボンディング時およびスパッタリング時にクラックの発生を抑制できる高強度のスパッタリングターゲットを提供することである。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明によれば、以下のスパッタリングターゲット、酸化物半導体薄膜、薄膜トランジスタおよび電子機器が提供される。
[0014]
[1].インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有し、各元素の原子比が下記式(1)を満たし、さらにZn SnO で表されるスピネル構造化合物を含む、酸化物焼結体を備える、スパッタリングターゲット。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1)
 (式(1)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物焼結体中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、Yb、およびGaから少なくとも1種以上が選択される。)
[0015]
[2].前記酸化物焼結体は、式(1)で示す原子比が0.003以上、0.03以下である、[1]に記載のスパッタリングターゲット。
[0016]
[3].さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(2)を満たす、[1]または[2]に記載のスパッタリングターゲット。
  0.40≦Zn/(In+Sn+Zn)≦0.80        ・・・(2)
[0017]
[4].さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(3)を満たす、[1]~[3]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
 0.15≦Sn/(Sn+Zn)≦0.40           ・・・(3)
[0018]
[5].さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(4)を満たす、[1]~[4]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
 0.10 ≦In/(In+Sn+Zn)≦0.35      ・・・(4)
[0019]
[6].前記酸化物焼結体は、In (ZnO) (mは2~7である)で表わされる六方晶層状化合物を含む、[1]~[5]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
[0020]
[7].前記酸化物焼結体は、平均抗折力が150MPa以上である、[1]~[6]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
[0021]
[8].前記酸化物焼結体は、平均抗折力のワイブル係数が7以上である、[1]~[7]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
[0022]
[9].前記酸化物焼結体は、平均結晶粒径が10μm以下であり、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下である、[1]~[8]のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
[0023]
[10].前記酸化物焼結体は、平均結晶粒径が10μm以下であり、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下である、
 [1]~[8]のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[0024]
[11].インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有し、各元素の原子比が下記式(1A)を満たす、酸化物半導体薄膜。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1A)
 (式(1A)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物半導体薄膜中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、Yb、およびGaから少なくとも1種以上が選択される。)
[0025]
[12].[11]に記載の酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタ。
[0026]
[13].[12]に記載の薄膜トランジスタを用いた電子機器。
[0027]
 本発明によれば、バッキングプレートへのボンディング時および、スパッタリング時にクラックの発生を抑制できる高強度のスパッタリングターゲットを提供できる。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1A] 本発明の一実施形態に係るターゲットの形状を示す斜視図である。
[図1B] 本発明の一実施形態に係るターゲットの形状を示す斜視図である。
[図1C] 本発明の一実施形態に係るターゲットの形状を示す斜視図である。
[図1D] 本発明の一実施形態に係るターゲットの形状を示す斜視図である。
[図2] 本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを示す縦断面図である。
[図3] 本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを示す縦断面図である。
[図4] 本発明の一実施形態に係る量子トンネル電界効果トランジスタを示す縦断面図である。
[図5] 量子トンネル電界効果トランジスタの他の実施形態を示す縦断面図である。
[図6] 図5において、p型半導体層とn型半導体層の間に酸化シリコン層が形成された部分のTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
[図7A] 量子トンネル電界効果トランジスタの製造手順を説明するための縦断面図である。
[図7B] 量子トンネル電界効果トランジスタの製造手順を説明するための縦断面図である。
[図7C] 量子トンネル電界効果トランジスタの製造手順を説明するための縦断面図である。
[図7D] 量子トンネル電界効果トランジスタの製造手順を説明するための縦断面図である。
[図7E] 量子トンネル電界効果トランジスタの製造手順を説明するための縦断面図である。
[図8A] 本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを用いた表示装置を示す上面図である。
[図8B] VA型液晶表示装置の画素に適用することができる画素部の回路を示す図である。
[図8C] 有機EL素子を用いた表示装置の画素部の回路を示す図である。
[図9] 本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを用いた固体撮像素子の画素部の回路を示す図である。
[図10] 実施例において、In:Sn:Zn=30:15:55の場合の酸化物焼結体のX元素含有量と平均抗折力の関係を示す図である。
[図11] 実施例において、In:Sn:Zn=30:15:55の場合の酸化物焼結体のX元素含有量と相対密度の関係を示す図である。
[図12] 実施例において、In:Sn:Zn=30:15:55の場合の酸化物焼結体のX元素含有量とバルク抵抗の関係を示す図である。
[図13] 実施例において、In:Sn:Zn=30:15:55の場合の酸化物焼結体のX元素含有量とワイブル係数の関係を示す図である。
[図14] 実施例において、In:Sn:Zn=30:15:55の場合の酸化物焼結体のX元素含有量と平均結晶粒径の関係を示す図である。
[図15] 実施例において、酸化物焼結体にX元素としてGeO 、SiO 、Y 、ZrO 、Al 、MgO、またはYb Oを0.1原子%含有させた場合、およびX元素を含有させなかった場合の平均抗折力を示す図である。

発明を実施するための形態

[0029]
 以下、実施の形態について図面等を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。
[0030]
 また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
[0031]
 また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
 また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子(トランジスタなど)、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、およびその他の各種機能を有する素子などが含まれる。
[0032]
 また、本明細書等において、「膜」または「薄膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっては、互いに入れ替えることが可能である。
 また、本明細書等において、トランジスタが有するソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合又は回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる。
[0033]
(スパッタリングターゲット)
 本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲット(以下、単に本実施形態に係るスパッタリングターゲットと称する場合がある。)は、酸化物焼結体を含む。
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、例えば、酸化物焼結体のバルクを、スパッタリングターゲットとして好適な形状に切削、および研磨して得られる。また、酸化物焼結体のバルクを研削および研磨して得たスパッタリングターゲット素材を、バッキングプレートへボンディングすることによっても、スパッタリングターゲットを得ることができる。また、別の態様に係る本実施形態のスパッタリングターゲットとしては、酸化物焼結体のみからなるターゲットも挙げられる。
[0034]
 酸化物焼結体の形状は特に限定されないが、図1Aの符号1に示すような板状でもよく、図1Bの符号1Aに示すような円筒状でもよい。板状の場合、平面形状は、図1Aの符号1に示すような矩形でもよく、図1Cの符号1Bに示すように円形でもよい。酸化物焼結体は、一体成型でもよく、図1Dに示すように、複数に分割した酸化物焼結体(符号1C)をバッキングプレート3に各々固定した多分割式でもよい。
 バッキングプレート3は、酸化物焼結体の保持および冷却用の部材である。バッキングプレート3の材料は特に限定されないが、Cu,Ti,またはSUS等の材料が使用される。
[0035]
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有する。前記酸化物焼結体は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述したインジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素以外の他の金属元素を含有していてもよいし、実質的にインジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素のみ、又はインジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素のみからなっていてもよい。
 ここで、「実質的」とは、酸化物焼結体の金属元素の95質量%以上100質量%以下(好ましくは98質量%以上100質量%以下)がインジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、およびX元素であることを意味する。本実施形態に係る酸化物焼結体は、本発明の効果を損なわない範囲でIn、Sn、Zn及びAlの他に不可避不純物を含んでいてもよい。ここでいう不可避不純物とは、意図的に添加しない元素であって、原料又は製造工程で混入する元素を意味する。
 X元素は、ゲルマニウム元素(Ge)、シリコン元素(Si)、イットリウム元素(Y)、ジルコニウム元素(Zr)、アルミニウム元素(Al)、マグネシウム元素(Mg)、イッテルビウム元素(Yb)、およびガリウム元素(Ga)から少なくとも1種以上選択される。
[0036]
 不可避不純物の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属(Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba等など)、水素(H)元素、ホウ素(B)元素、炭素(C)元素、窒素(N)元素,フッ素(F)元素、および塩素(Cl)元素である。
[0037]
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、各元素の原子比が下記式(1)を満たす。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1)
 (式(1)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物焼結体中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、YbおよびGaから少なくとも1種以上選択される。)
[0038]
 本実施形態では、酸化物焼結体におけるX元素の含有割合を上記式(1)の範囲内とすることによって、酸化物焼結体の平均抗折力を充分に高くできる。
 X元素としては、好ましくは、シリコン元素(Si)、アルミニウム元素(Al)、マグネシウム元素(Mg)、イッテルビウム元素(Yb)、およびガリウム元素(Ga)であり、より好ましくは、シリコン元素(Si)、アルミニウム元素(Al)、およびガリウム元素(Ga)である。特にアルミニウム元素(Al)およびガリウム元素(Ga)は、原料としての酸化物の組成が安定しており、平均抗折力の向上効果が高いので、好ましい。
[0039]
 X/(In+Sn+Zn+X)が0.001以上であることにより、スパッタリングターゲットの強度低下を抑制できる。X/(In+Sn+Zn+X)が0.05以下であることにより、その酸化物焼結体を含むスパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物半導体薄膜は、シュウ酸等の弱酸によるエッチング加工を行うことが容易になる。さらには、TFT特性、特に移動度の低下を抑制できる。X/(In+Sn+Zn+X)は、好ましくは0.001以上、0.05以下であり、より好ましくは0.003以上、0.03以下であり、さらに好ましくは0.005以上、0.01以下であり、特に好ましくは0.005以上、0.01未満である。
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、X元素を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。X元素を2種以上含むときは、式(1)におけるXは、X元素の原子比の合計とする。
 酸化物焼結体中のX元素の存在形態は、特に規定されない。酸化物焼結体中のX元素の存在形態としては、例えば、酸化物として存在している形態、固溶している形態、および粒界に偏析している形態が挙げられる。
[0040]
 本実施形態に係る酸化物焼結体において、X元素の含有割合を上記式(1)の範囲内とすることによって、スパッタリングターゲットのバルク抵抗を充分に低くすることもできる。本発明のスパッタリングターゲットのバルク抵抗は、好ましくは50mΩcm以下であり、より好ましくは25mΩcm以下であり、さらに好ましくは10mΩcm以下であり、よりさらに好ましくは、5mΩcm以下であり、特に好ましくは3mΩcm以下である。バルク抵抗が50mΩcm以下であることにより、直流スパッタで安定した成膜を行うことができる。
 バルク抵抗値は、公知の抵抗率計を使用して四探針法(JIS R 1637:1998)に基づき測定できる。測定箇所は9箇所程度であり、平均値をバルク抵抗値とするのが好ましい。
 測定箇所は、酸化物焼結体の平面形状が四角形の場合には、面を等面積に9分割し、それぞれの四角形の中心点9箇所とするのが好ましい。
 なお、酸化物焼結体の平面形状が円形の場合は、円に内接する正方形を等面積に9分割し、それぞれの正方形の中心点9箇所とするのが好ましい。
[0041]
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、各元素の原子比が以下の式(2)~(4)の少なくとも1つを満たすのが、より好ましい。
 0.40≦Zn/(In+Sn+Zn)≦0.80      ・・・(2)
 0.15≦Sn/(Sn+Zn)≦0.40          ・・・(3)
 0.10 ≦In/(In+Sn+Zn)≦0.35      ・・・(4)
[0042]
 式(2)~(4)中、In、Zn、およびSnは、それぞれ酸化物焼結体中のインジウム元素、亜鉛元素、およびスズ元素の含有量を表す。
[0043]
 Zn/(In+Sn+Zn)が0.4以上であると、酸化物焼結体中にスピネル相が生じやすくなり、半導体としての特性を容易に得られる。Zn/(In+Sn+Zn)が0.80以下であることにより、酸化物焼結体においてスピネル相の異常粒成長による強度の低下を抑制できる。また、Zn/(In+Sn+Zn)が0.80以下であることにより、酸化物半導体薄膜の移動度の低下を抑制できる。Zn/(In+Sn+Zn)は、0.50以上0.70以下であることがより好ましい。
[0044]
 Sn/(Sn+Zn)が、0.15以上であると、酸化物焼結体においてスピネル相の異常粒成長による強度の低下を抑制できる。Sn/(Sn+Zn)が0.40以下であることにより、酸化物焼結体中において、スパッタ時の異常放電の原因となる酸化錫の凝集を抑制できる。また、Sn/(Sn+Zn)が、0.40以下であることにより、スパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物半導体薄膜は、シュウ酸等の弱酸によるエッチング加工を容易に行うことができる。Sn/(Sn+Zn)が0.15以上であることにより、エッチング速度が速くなり過ぎるのを抑制できエッチングの制御が容易になる。Sn/(Sn+Zn)は、0.15以上0.35以下であることがより好ましい。
[0045]
 In/(In+Sn+Zn)が、0.1以上であることにより、得られるスパッタリングターゲットのバルク抵抗を低くできる。また、In/(In+Sn+Zn)が、0.1以上であることにより、酸化物半導体薄膜の移動度が極端に低くなるのを抑制できる。In/(In+Sn+Zn)が0.35以下であることにより、スパッタリング成膜した際に、膜が導電体になるのを抑制でき、半導体としての特性を得ることが容易になる。In/(In+Sn+Zn)は、0.10以上0.30以下であることがより好ましい。
[0046]
 酸化物焼結体の各金属元素の原子比は、原料の配合量により制御できる。また、各元素の原子比は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)により含有元素を定量分析して求めることができる。
[0047]
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、Zn SnO で表されるスピネル構造化合物を含有することが好ましく、Zn SnO で表されるスピネル構造化合物、およびIn (ZnO) 〔式中、mは2~7の整数である。〕で表される六方晶層状化合物を含有することがさらに好ましい。式中のmは、2~7、好ましくは3~5の整数である。なお、本明細書において、スピネル構造化合物をスピネル化合物と称する場合がある。
 なお、mが2以上であることにより、化合物が六方晶層状構造をとる。mが7以下であることにより、酸化物焼結体のバルク抵抗が低くなる。
[0048]
 酸化インジウムと酸化亜鉛からなる六方晶層状化合物は、X線回折法による測定において、六方晶層状化合物に帰属されるX線回折パターンを示す化合物である。酸化物焼結体に含有される六方晶層状化合物は、In (ZnO) で表される化合物である。
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、Zn SnO で表されるスピネル構造化合物、およびIn で表されるビックスバイト構造化合物を含有しても良い。
[0049]
・(平均結晶粒径)
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均結晶粒径は、異常放電の防止および製造容易性の観点から、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下である。平均結晶粒径が10μm以下であることにより、粒界に起因する異常放電を防止できる。酸化物焼結体の平均結晶粒径の下限は、特に規定されないが、製造容易性の観点から1μm以上であることが好ましい。
 平均結晶粒径は、原料の選択および製造条件の変更により調整できる。具体的には、平均粒径が小さい原料、好ましくは平均粒径が1μm以下の原料を用いる。さらに、焼結の際、焼結温度が高い程、または焼結時間が長い程、平均結晶粒径が大きくなる傾向がある。
[0050]
 平均結晶粒径は以下のようにして測定できる。
 酸化物焼結体の表面を研磨し、平面形状が四角形の場合には、面を等面積に16分割し、それぞれの四角形の中心点16箇所において、倍率1000倍(80μm×125μm)の枠内で観察される粒子径を測定し、16箇所の枠内の粒子の粒径の平均値をそれぞれ求め、最後に16カ所の測定値の平均値を平均結晶粒径とする。
 酸化物焼結体の表面を研磨し、平面形状が円形の場合、円に内接する正方形を等面積に16分割し、それぞれの正方形の中心点16箇所において、倍率1000倍(80μm×125μm)の枠内で観察される粒子の粒径を測定し、16箇所の枠内の粒子の粒径の平均値を求める。
 粒径は、アスペクト比が2未満の粒子については、JIS R 1670:2006に基づき、結晶粒の粒径を円相当径として測定する。円相当径の測定手順としては、具体的には、微構造写真の測定対象グレインに円定規を当て対象グレインの面積に相当する直径を読み取る。アスペクト比が2以上の粒子については、最長径と最短径の平均値をその粒子の粒径とする。結晶粒は走査型電子顕微鏡(SEM)により観察できる。六方晶層状化合物、スピネル化合物、およびビックスバイト構造化合物は、後述する実施例に記載の方法により確認できる。
[0051]
 本実施形態に係る酸化物焼結体が、六方晶層状化合物とスピネル化合物とを含む場合、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径との差は、1μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径をこのような範囲とすることにより、酸化物焼結体の強度を向上させることができる。
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均結晶粒径が10μm以下であり、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下であることがより好ましい。
[0052]
 また、本実施形態に係る酸化物焼結体が、ビックスバイト構造化合物とスピネル化合物とを含む場合、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径との差は、1μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径をこのような範囲とすることにより、酸化物焼結体の強度を向上させることができる。
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均結晶粒径が10μm以下であり、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下であることがより好ましい。
[0053]
 本実施形態に係る酸化物焼結体の相対密度は、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上である。酸化物焼結体の相対密度が95%以上であることにより、スパッタリングターゲットの機械的強度が高く、かつ導電性に優れることから、このスパッタリングターゲットをRFマグネトロンスパッタリング装置またはDCマグネトロンスパッタリング装置に装着してスパッタリングを行う際の、プラズマ放電の安定性をより高めることができる。酸化物焼結体の相対密度は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫およびX元素の酸化物それぞれの固有の密度、およびこれらの組成比から算出される、理論密度に対する酸化物焼結体の実際に測定した密度を、百分率で示したものである。
[0054]
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均抗折力が150MPa以上であることで、バッキングプレートへのボンディング時およびスパッタリング時のような、高温の負荷による割れの発生を抑制できる。本明細書において、平均抗折力は、JIS R 1601:2008に基づき、30mmの間隔で設置された2つの支えに角柱の試験片を載せ、中央部に押し金を当てた状態で、押し金に荷重を加え、試験片が破断したときの荷重(3点曲げ強さ)の試験片30本の平均値である。
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均抗折力は、好ましくは180MPa以上であり、より好ましくは210MPa以上であり、さらに好ましくは230MPa以上であり、特に好ましくは250MPa以上である。
[0055]
 本実施形態に係る酸化物焼結体の平均抗折力のワイブル係数は、7以上であることが好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは15以上である。酸化物焼結体の平均抗折力のワイブル係数が7以上であることが好ましいのは、ワイブル係数が大きくなるほど強度のバラツキが小さくなるためである。ワイブル係数は、JIS R 1625:2010に規定されたワイブル統計解析法により、ワイブル確率軸上に抗折力をプロット(以下「ワイブルプロット」という)し、ワイブルプロットの傾きから求める。
[0056]
 本実施形態に係る酸化物焼結体は、インジウム原料、亜鉛原料、錫原料およびX元素原料を混合する混合工程、原料混合物を成形する成形工程、成形物を焼結する焼結工程、および必要に応じて焼結体をアニーリングする、アニーリング工程を経て製造できる。以下、各工程について具体的に説明する。
[0057]
(1)混合工程
 混合工程では、まず原料を用意する。
 In原料は、Inを含む化合物または金属であれば特に限定されない。
 Zn原料も、Znを含む化合物または金属であれば特に限定されない。
 Sn原料も、Znを含む化合物または金属であれば特に限定されない。
 X元素の原料も、X元素を含む化合物または金属であれば、特に限定されない。
 In原料、Zn原料、Sn原料、およびX元素の原料は、好ましくは酸化物である。
 酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、およびX元素酸化物等の原料は、高純度の原料を用いるのが望ましく、その純度が99質量%以上、好ましくは99.9質量%以上、さらに好ましくは99.99質量%以上の原料が好適に用いられる。高純度の原料を用いると緻密な組織の焼結体が得られ、その焼結体からなるスパッタリングターゲットの体積抵抗率が低くなるためである。
[0058]
 また、原料としての金属酸化物の1次粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上5μm以下である。平均粒径が0.01μm以上であると凝集し難くなり、平均粒径が10μm以下であると混合性が充分になり、緻密な組織の焼結体が得られる。平均粒径は、BET法により測定する。
[0059]
 原料には、ポリビニルアルコール、または酢酸ビニル等のバインダーを添加することができる。
 原料の混合は、ボールミル、ジェットミル、およびビーズミル等の通常の混合機を用いて行うことができる。
[0060]
 混合工程で得られた混合物は、直ちに成形してもよいが、成形前に仮焼処理を施してもよい。仮焼処理は、通常、700℃以上900℃以下で、1時間以上5時間以下、混合物を焼成する。
[0061]
 仮焼処理をしない原料粉末の混合物、または仮焼処理済の混合物は、造粒処理することによって、その後の成形工程での流動性および充填性が改善される。造粒処理はスプレードライヤー等を用いて行うことができる。造粒処理によって形成される2次粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。なお、仮焼処理済の混合物は粒子同士が結合しているため、造粒処理を行う場合は、処理前に粉砕処理を行う。
[0062]
(2)成形工程
 原料の粉末または造粒物は、成形工程において金型プレス成形、鋳込み成形、または射出成形等の方法により成形する。スパッタリングターゲットとして、焼結密度の高い焼結体を得る場合には、成形工程において金型プレス成形等により予備成形した後に、冷間静水圧プレス成形等によりさらに圧密化することが好ましい。
[0063]
(3)焼結工程
 焼結工程においては、常圧焼結、ホットプレス焼結、または熱間静水圧プレス焼結等の通常行われている焼結方法を用いることができる。焼結温度は、好ましくは1200℃以上1600℃以下であり、より好ましくは1250℃以上1550℃以下であり、さらに好ましくは1300℃以上1500℃以下である。焼結温度を1200℃以上とすることにより、充分な焼結密度が得られ、スパッタリングターゲットのバルク抵抗も低くできる。焼結温度を1600℃以下とすることにより、焼結時の酸化亜鉛の昇華を抑制できる。焼結に際しての昇温速度は、室温から焼結温度までを0.1℃/分以上3℃/分以下とすることが好ましい。また、昇温の過程において、700℃以上800℃以下で一旦温度を1時間以上10時間以下保持し、再度焼結温度まで昇温してもよい。
[0064]
 焼結時間は、焼結温度によって異なるが、好ましくは1時間以上50時間以下、より好ましくは2時間以上30時間以下、さらに好ましくは3時間以上20時間以下である。焼結時の雰囲気は、空気または酸素ガスでもよいし、これらに、水素ガス、メタンガス、または一酸化炭素ガス等の還元性ガス、あるいは、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
[0065]
(4)アニーリング工程
 アニーリング工程は必須でないが、行う場合は、通常、700℃以上1100℃以下で1時間以上5時間以下、温度を保持する。本工程は、一旦焼結体を冷却後、再度昇温しアニーリングしてもよいし、焼結温度から降温する際にアニーリングしてもよい。アニーリング時の雰囲気は、空気または酸素ガスでもよいし、これらに、水素ガス、メタンガス、または一酸化炭素ガス等の還元性ガス、あるいは、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
[0066]
 上記(1)~(4)の工程で得られた焼結体を、適当な形状に切削加工し、必要に応じて表面を研磨することによりスパッタリングターゲットが完成する。
 具体的には、焼結体をスパッタリング装置への装着に適した形状に切削加工することで、スパッタリングターゲット素材(ターゲット素材と称する場合もある。)とし、該ターゲット素材をバッキングプレートに接着することで、スパッタリングターゲットが得られる。
[0067]
 焼結体をターゲット素材として用いる場合には、焼結体の表面粗さRaは、0.5μm以下であることが好ましい。焼結体の表面粗さRaを調整する方法としては、例えば、焼結体を平面研削盤で研削する方法が挙げられる。
[0068]
 スパッタリングターゲット素材の表面は200番~1,000番のダイヤモンド砥石により、仕上げを行うことが好ましく、400番~800番のダイヤモンド砥石により仕上げを行うことが特に好ましい。200番以上、又は1,000番以下のダイヤモンド砥石を使用することにより、スパッタリングターゲット素材の割れを防ぐことができる。
 スパッタリングターゲット素材の表面粗さRaが0.5μm以下であり、方向性のない研削面を備えていることが好ましい。スパッタリングターゲット素材の表面粗さRaが0.5μm以下であり、方向性のない研磨面を備えていれば、異常放電およびパーティクルの発生を防ぐことができる。
[0069]
 最後に、得られたスパッタリングターゲット素材を清浄処理する。清浄処理にはエアーブロー又は流水洗浄等を使用できる。エアーブローで異物を除去する際には、エアーブローのノズルの向い側から集塵機で吸気を行なうことで、より有効に異物を除去できる。
 尚、以上のエアーブローおよび流水洗浄では清浄処理の効果に限界があるので、さらに超音波洗浄等を行なうこともできる。超音波洗浄は、周波数25kHz以上300kHz以下の間で多重発振させて行なう方法が有効である。例えば周波数25kHz以上300kHz以下の間で、25kHz刻みに12種類の周波数を多重発振させて超音波洗浄を行なうのが好ましい。
[0070]
 スパッタリングターゲット素材の厚みは、通常2mm以上20mm以下であり、好ましくは3mm以上12mm以下であり、より好ましくは4mm以上9mm以下であり、特に好ましくは4mm以上6mm以下である。
[0071]
 上記の工程および処理を経て得られたスパッタリングターゲット素材を、バッキングプレートへボンディングすることによって、スパッタリングターゲットを得ることができる。また、複数のスパッタリングターゲット素材を1つのバッキングプレートに取り付け、実質1つのスパッタリングターゲットとしてもよい。
[0072]
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、上記の製造方法により、相対密度が98%以上かつバルク抵抗が5mΩcm以下とすることができ、スパッタリングする際には、異常放電の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、高品質の酸化物半導体薄膜を、効率的に、安価に、且つ省エネルギーで成膜することができる。
[0073]
 このように、本実施形態によれば、スパッタリングターゲットが、In、Sn、Zn、X、および酸素を含有し、残部が不可避不純物からなり、各元素の原子比が式(1)を満たす酸化物焼結体を備える。
 そのため、スパッタリングターゲットは、バッキングプレートへのボンディング時およびスパッタリング時にクラックの発生を抑制できる。
[0074]
(酸化物半導体薄膜)
 次に、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜について、説明する。
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有し、各元素の原子比が下記式(1A)を満たす。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1A)
 (式(1A)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物半導体薄膜中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、Yb、およびGaから少なくとも1種以上が選択される。)
[0075]
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、本実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ法により製造できる。スパッタ法によって得られる酸化物半導体薄膜の原子比組成は、スパッタリングターゲットにおける酸化物焼結体の原子比組成を反映する。
[0076]
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いて成膜すれば、ターゲット強度が向上しているので、安定して酸化物半導体薄膜を製造でき、さらには、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜が前記式(1A)を満たすことにより、TFT特性へ及ぶ影響を少なくすることができる。具体的には、X元素の量が増えることによりスパッタリングターゲットの強度が向上するが、増えすぎるとTFT特性の低下を招くおそれがあり、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜において、前記式(1A)の範囲を満たすようにスパッタリングターゲットを用いて酸化物半導体薄膜を成膜することで、ターゲット強度の向上とTFT特性の低下の抑制という効果をバランスよく得ることができる。
[0077]
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜のX/(In+Sn+Zn+X)が0.05以下であることにより、酸化物半導体薄膜は、シュウ酸等の弱酸によるエッチング加工を行うことが容易になる。さらには、TFT特性、特に移動度の低下を抑制できる。本実施形態に係る酸化物半導体薄膜のX/(In+Sn+Zn+X)は、好ましくは0.001以上、0.05以下であり、より好ましくは0.003以上、0.03以下であり、さらに好ましくは0.005以上、0.01以下であり、特に好ましくは0.005以上、0.01未満である。
[0078]
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、各元素の原子比が以下の式(2A)~(4A)の少なくとも1つを満たすのが、より好ましい。
 0.40≦Zn/(In+Sn+Zn)≦0.80      ・・・(2A)
 0.15≦Sn/(Sn+Zn)≦0.40          ・・・(3A)
 0.10 ≦In/(In+Sn+Zn)≦0.35      ・・・(4A)
[0079]
 Zn/(In+Sn+Zn)が0.4以上であると、酸化物半導体薄膜中にスピネル相が生じやすくなり、半導体としての特性を容易に得られる。Zn/(In+Sn+Zn)が0.80以下であることにより、酸化物半導体薄膜においてスピネル相の異常粒成長による強度の低下を抑制できる。また、Zn/(In+Sn+Zn)が0.80以下であることにより、酸化物半導体薄膜の移動度の低下を抑制できる。Zn/(In+Sn+Zn)は、0.50以上0.70以下であることがより好ましい。
[0080]
 Sn/(Sn+Zn)が、0.15以上であると、酸化物半導体薄膜においてスピネル相の異常粒成長による強度の低下を抑制できる。Sn/(Sn+Zn)が、0.40以下であることにより、スパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物半導体薄膜は、シュウ酸等の弱酸によるエッチング加工を容易に行うことができる。Sn/(Sn+Zn)が0.15以上であることにより、エッチング速度が速くなり過ぎるのを抑制できエッチングの制御が容易になる。Sn/(Sn+Zn)は、0.15以上0.35以下であることがより好ましい。
[0081]
 In/(In+Sn+Zn)が、0.1以上であることにより、酸化物半導体薄膜の移動度が極端に低くなるのを抑制できる。In/(In+Sn+Zn)が0.35以下であることにより、スパッタリング成膜した際に、膜が導電体になるのを抑制でき、半導体としての特性を得ることが容易になる。In/(In+Sn+Zn)は、0.10以上0.30以下であることがより好ましい。
[0082]
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、スパッタリングによって成膜されたときにアモルファスの状態であり、加熱処理(アニール処理)後もアモルファス状態の薄膜であることが好ましい。
[0083]
(薄膜トランジスタ)
 本実施形態に係る薄膜トランジスタとしては、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜を含む薄膜トランジスタが挙げられる。
[0084]
 薄膜トランジスタのチャネル層として、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜を用いることが好ましい。
[0085]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタが、本実施形態に係る酸化物半導体薄膜をチャネル層として有している場合、薄膜トランジスタにおける他の素子構成は特に限定されず、公知の素子構成を採用することができる。
[0086]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、電子機器に好適に用いることができる。
 具体的には、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の表示装置に好適に用いることができる。
[0087]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタにおけるチャネル層の膜厚は、通常10nm以上300nm以下であり、好ましくは20nm以上250nm以下である。
[0088]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタにおけるチャネル層は、通常、N型領域で用いられるが、P型Si系半導体、P型酸化物半導体、P型有機半導体等の種々のP型半導体と組合せてPN接合型トランジスタ等の各種の半導体デバイスに利用することができる。
[0089]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、電界効果型トランジスタ、論理回路、メモリ回路、および差動増幅回路等各種の集積回路にも適用できる。さらに、電界効果型トランジスタ以外にも静電誘起型トランジスタ、ショットキー障壁型トランジスタ、ショットキーダイオード、および抵抗素子にも適応できる。
[0090]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタの構成は、ボトムゲート、ボトムコンタクト、およびトップコンタクト等公知の構成から選ばれる構成を制限なく採用することができる。
 特にボトムゲート構成が、アモルファスシリコン又はZnOの薄膜トランジスタに比べ高い性能が得られるので有利である。ボトムゲート構成は、製造時のマスク枚数を削減しやすく、大型ディスプレイ等の用途の製造コストを低減しやすいため好ましい。
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、表示装置に好適に用いることができる。
[0091]
 大面積のディスプレイ用の薄膜トランジスタとしては、チャンネルエッチ型のボトムゲート構成の薄膜トランジスタが特に好ましい。チャンネルエッチ型のボトムゲート構成の薄膜トランジスタは、フォトリソ工程時のフォトマスクの数が少なく低コストでディスプレイ用パネルを製造できる。中でも、チャンネルエッチ型のボトムゲート構成及びトップコンタクト構成の薄膜トランジスタが移動度等の特性が良好で工業化しやすいため特に好ましい。
[0092]
 具体的な薄膜トランジスタの例を図2および図3に示す。
 図2に示すように、薄膜トランジスタ100は、シリコンウエハ20、ゲート絶縁膜30、酸化物半導体薄膜40、ソース電極50、ドレイン電極60、および層間絶縁膜70、70Aを備える。
[0093]
 シリコンウエハ20はゲート電極である。ゲート絶縁膜30はゲート電極と酸化物半導体薄膜40の導通を遮断する絶縁膜であり、シリコンウエハ20上に設けられる。
 酸化物半導体薄膜40はチャネル層であり、ゲート絶縁膜30上に設けられる。酸化物半導体薄膜40には本実施形態に係る酸化物半導体薄膜が用いられる。
[0094]
 ソース電極50およびドレイン電極60は、ソース電流およびドレイン電流を酸化物半導体薄膜40に流すための導電端子であり、酸化物半導体薄膜40の両端近傍に接触するように、各々設けられる。
 層間絶縁膜70は、ソース電極50およびドレイン電極60と、酸化物半導体薄膜40の間の接触部分以外の導通を遮断する絶縁膜である。
 層間絶縁膜70Aは、ソース電極50およびドレイン電極60と、酸化物半導体薄膜40の間の接触部分以外の導通を遮断する絶縁膜である。層間絶縁膜70Aは、ソース電極50とドレイン電極60の間の導通を遮断する絶縁膜でもある。層間絶縁膜70Aは、チャネル層保護層でもある。
[0095]
 図3に示すように、薄膜トランジスタ100Aの構造は、薄膜トランジスタ100と同様であるが、ソース電極50およびドレイン電極60を、ゲート絶縁膜30と酸化物半導体薄膜40の両方に接触するように設けている点が異なる。ゲート絶縁膜30、酸化物半導体薄膜40、ソース電極50、およびドレイン電極60を覆うように、層間絶縁膜70Bが一体に設けられている点も異なる。
[0096]
 ドレイン電極60、ソース電極50およびゲート電極を形成する材料に特に制限はなく、一般に用いられている材料を任意に選択することができる。図2および図3で挙げた例では、シリコンウエハを基板として用いており、シリコンウエハが電極としても作用するが、電極材料はシリコンに限定されない。
 例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ZnO、およびSnO 等の透明電極や、Al、Ag、Cu、Cr、Ni、Mo、Au、Ti、およびTa等の金属電極、またはこれらを含む合金の金属電極や積層電極を用いることができる。
 また、図2および図3において、ガラス等の基板上にゲート電極を形成してもよい。
[0097]
 層間絶縁膜70、70A、70Bを形成する材料にも特に制限はなく、一般に用いられている材料を任意に選択できる。層間絶縁膜70、70A、70Bを形成する材料として、具体的には、例えば、SiO 、SiN 、Al 、Ta 、TiO 、MgO、ZrO 、CeO 、K O、Li O、Na O、Rb O、Sc 、Y 、HfO 、CaHfO 、PbTiO 、BaTa 、SrTiO 、Sm 、およびAlN等の化合物を用いることができる。
[0098]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタがバックチャネルエッチ型(ボトムゲート型)の場合、ドレイン電極、ソース電極およびチャネル層上に保護膜を設けることが好ましい。保護膜を設けることにより、TFTを長時間駆動した場合でも耐久性が向上しやすくなる。なお、トップゲート型のTFTの場合、例えばチャネル層上にゲート絶縁膜を形成した構造となる。
[0099]
 保護膜または絶縁膜は、例えばCVDにより形成することができるが、その際に高温度によるプロセスになる場合がある。また、保護膜または絶縁膜は、成膜直後は不純物ガスを含有していることが多く、加熱処理(アニール処理)を行うことが好ましい。加熱処理で不純物ガスを取り除くことにより、安定した保護膜または絶縁膜となり、耐久性の高いTFT素子を形成しやすくなる。
[0100]
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜を用いることにより、CVDプロセスにおける温度の影響、およびその後の加熱処理による影響を受けにくくなるため、保護膜または絶縁膜を形成した場合であっても、TFT特性の安定性を向上させることができる。
[0101]
 トランジスタ特性において、On/Off特性はディスプレイの表示性能を決める要素である。液晶のスイッチングとして薄膜トランジスタを使用する場合は、On/Off比は6ケタ以上であることが好ましい。OLEDの場合は電流駆動のためOn電流が重要だが、On/Off比に関しては同様に6ケタ以上であることが好ましい。
[0102]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、On/Off比が1×10 以上であることが好ましい。
 On/Off比は、Vg=-10VのIdの値をOff電流値とし、Vg=20VのIdの値をOn電流値として、比[On電流値/Off電流値]を決めることにより、求められる。
 また、本実施形態に係るTFTの移動度は、5cm /Vs以上であることが好ましく、10cm /Vs以上であることが好ましい。
 飽和移動度は、ドレイン電圧を20V印加した場合の伝達特性から求められる。具体的に、伝達特性Id-Vgのグラフを作成し、各Vgのトランスコンダクタンス(Gm)を算出し、飽和領域の式により飽和移動度を求めることにより、算出できる。Idはソース・ドレイン電極間の電流、Vgはソース・ドレイン電極間に電圧Vdを印加したときのゲート電圧である。
[0103]
 閾値電圧(Vth)は、-3.0V以上、3.0V以下が好ましく、-2.0V以上、2.0V以下がより好ましく、-1.0V以上、1.0V以下がさらに好ましい。閾値電圧(Vth)が-3.0V以上であると、高移動度の薄膜トランジスタが得られる。閾値電圧(Vth)が3.0V以下であると、オフ電流が小さく、オンオフ比の大きな薄膜トランジスタが得られる。
[0104]
 閾値電圧(Vth)は、伝達特性のグラフよりId=10 -9AでのVgで定義できる。
 On/Off比は10 以上、10 12以下が好ましく、10 以上、10 11以下がより好ましく、10 以上、10 10以下がさらに好ましい。On/Off比が10 以上であると、液晶ディスプレイの駆動ができる。On/Off比が10 12以下であると、コントラストの大きな有機ELの駆動ができる。また、On/Off比が10 12以下であると、オフ電流を10 -11A以下にでき、薄膜トランジスタをCMOSイメージセンサーの転送トランジスタまたはリセットトランジスタに用いた場合、画像の保持時間を長くしたり、感度を向上させたりできる。
[0105]
<量子トンネル電界効果トランジスタ>
 本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、量子トンネル電界効果トランジスタ(FET)に用いることもできる。
[0106]
 図4に、一実施形態に係る、量子トンネル電界効果トランジスタ(FET)の模式図(縦断面図)を示す。
 量子トンネル電界効果トランジスタ501は、p型半導体層503、n型半導体層507、ゲート絶縁膜509、ゲート電極511、ソース電極513、およびドレイン電極515を備える。
[0107]
 p型半導体層503、n型半導体層507、ゲート絶縁膜509、およびゲート電極511は、この順番に積層されている。
 ソース電極513は、p型半導体層503上に設けられる。ドレイン電極515はn型半導体層507上に設けられる。
 p型半導体層503は、p型のIV族半導体層であり、ここではp型シリコン層である。
 n型半導体層507は、ここでは上記実施形態に係るn型の酸化物半導体薄膜である。ソース電極513およびドレイン電極515は導電膜である。
[0108]
 図4では図示していないが、p型半導体層503上には絶縁層が形成されてもよい。この場合、p型半導体層503とn型半導体層507は、絶縁層を部分的に開口した領域であるコンタクトホールを介して接続されている。図4では図示していないが、量子トンネル電界効果トランジスタ501は、その上面を覆う層間絶縁膜を備えてもよい。
[0109]
 量子トンネル電界効果トランジスタ501は、p型半導体層503とn型半導体層507により形成されたエネルギー障壁をトンネリングする電流を、ゲート電極511の電圧により制御する、電流のスイッチングを行う量子トンネル電界効果トランジスタ(FET)である。この構造では、n型半導体層507を構成する酸化物半導体のバンドギャップが大きくなり、オフ電流を小さくすることができる。
[0110]
 図5に、他の実施形態に係る量子トンネル電界効果トランジスタ501Aの模式図(縦断面図)を示す。
 量子トンネル電界効果トランジスタ501Aの構成は、量子トンネル電界効果トランジスタ501と同様であるが、p型半導体層503とn型半導体層507の間に酸化シリコン層505が形成されている点が異なる。酸化シリコン層が有ることにより、オフ電流を小さくすることが出来る。
 酸化シリコン層505の厚みは、10nm以下であるのが好ましい。10nm以下とすることにより、トンネル電流が流れなかったり、形成されるエネルギー障壁が形成しにくかったり障壁高さが変化したりするのを防止でき、トンネリング電流が低下したり、変化したりするのを防げる。酸化シリコン層505の厚みは、好ましくは、8nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下、更により好ましくは1nm以下である。
 図6にp型半導体層503とn型半導体層507の間に酸化シリコン層505が形成された部分のTEM写真を示す。
[0111]
 量子トンネル電界効果トランジスタ501及び501Aにおいても、n型半導体層507はn型酸化物半導体である。
[0112]
 n型半導体層507を構成する酸化物半導体は、非晶質でもよい。n型半導体層507を構成する酸化物半導体が非晶質であることにより、蓚酸などの有機酸でエッチング可能となり、他の層とのエッチング速度の差が大きくなり、配線などの金属層への影響もなく、良好にエッチングできる。
[0113]
 n型半導体層507を構成する酸化物半導体は、結晶質でもよい。結晶質であることにより、非晶質の場合よりもバンドギャップが大きくなり、オフ電流を小さくできる。仕事関数も大きくできることから、p型のIV族半導体材料とn型半導体層507により形成されるエネルギー障壁をトンネリングする電流を制御しやすくなる。
[0114]
 量子トンネル電界効果トランジスタ501の製造方法は、特に限定しないが、以下の方法を例示できる。
 まず、図7Aに示すように、p型半導体層503上に絶縁膜505Aを形成し、絶縁膜505Aの一部をエッチング等で開口してコンタクトホール505Bを形成する。
 次に、図7Bに示すように、p型半導体層503および絶縁膜505A上にn型半導体層507を形成する。この際、コンタクトホール505Bを介してp型半導体層503とn型半導体層507を接続する。
[0115]
 次に、図7Cに示すように、n型半導体層507上に、ゲート絶縁膜509およびゲート電極511をこの順番に形成する。
 次に、図7Dに示すように、絶縁膜505A、n型半導体層507、ゲート絶縁膜509およびゲート電極511を覆うように、層間絶縁膜519を設ける。
[0116]
 次に、図7Eに示すように、p型半導体層503上の絶縁膜505Aおよび層間絶縁膜519の一部を開口してコンタクトホール519Aを形成し、コンタクトホール519Aにソース電極513を設ける。
 さらに、図7Eに示すように、n型半導体層507上のゲート絶縁膜509および層間絶縁膜519の一部を開口してコンタクトホール519Bを形成し、コンタクトホール519Bにドレイン電極515を形成する。
 以上の手順で量子トンネル電界効果トランジスタ501を製造できる。
[0117]
 なお、p型半導体層503上にn型半導体層507を形成した後で、150℃以上、600℃以下の温度で熱処理を行うことで、p型半導体層503とn型半導体層507の間に酸化シリコン層505を形成できる。この工程を追加することにより、量子トンネル電界効果トランジスタ501Aを製造できる。
[0118]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、チャネルドープ型薄膜トランジスタであることが好ましい。チャネルドープ型トランジスタとは、チャネルのキャリヤーを、雰囲気および温度等外界の刺激に対して変動しやすい酸素欠損ではなく、n型ドーピングにより適切に制御したトランジスタであり、高移動度と高信頼性を両立する効果が得られる。
[0119]
<薄膜トランジスタの用途>
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、電界効果型トランジスタ、論理回路、メモリ回路、および差動増幅回路等の各種の集積回路にも適用でき、それらを電子機器等に適用することができる。さらに、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、電界効果型トランジスタ以外にも静電誘起型トランジスタ、ショットキー障壁型トランジスタ、ショットキーダイオード、および抵抗素子にも適応できる。
 本実施形態に係る薄膜トランジスタは、表示装置及び固体撮像素子等に好適に用いることができる。
 以下、本実施形態に係る薄膜トランジスタを表示装置および固体撮像素子に用いる場合について、説明する。
[0120]
 まず、本実施形態に係る薄膜トランジスタを表示装置に用いる場合について、図8を参照して説明する。
 図8Aは、本実施形態に係る表示装置の上面図である。図8Bは、本実施形態に係る表示装置の画素部に、液晶素子を適用する場合の画素部の回路を説明するための回路図である。また、図8Bは、本実施形態に係る表示装置の画素部に、有機EL素子を適用する場合の画素部の回路を説明するための回路図である。
[0121]
 画素部に配置するトランジスタは、本実施形態に係る薄膜トランジスタを用いることができる。本実施形態に係る薄膜トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、nチャネル型トランジスタで構成できる駆動回路の一部を、画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。画素部や駆動回路に本実施の形態に示す薄膜トランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供できる。
[0122]
 アクティブマトリクス型表示装置の上面図の一例を図8Aに示す。表示装置の基板300上には、画素部301、第1の走査線駆動回路302、第2の走査線駆動回路303、および信号線駆動回路304が形成される。画素部301には、複数の信号線が信号線駆動回路304から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路302、および第2の走査線駆動回路303から延伸して配置される。走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられる。表示装置の基板300は、FPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続される。
[0123]
 図8Aでは、第1の走査線駆動回路302、第2の走査線駆動回路303、信号線駆動回路304は、画素部301と同じ基板300上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板300外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板300上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、または歩留まりの向上を図ることができる。
[0124]
 また、画素の回路構成の一例を図8Bに示す。ここでは、VA型液晶表示装置の画素部に適用することができる画素部の回路を示す。
[0125]
 この画素部の回路は、一つの画素に複数の画素電極を有する構成に適用できる。それぞれの画素電極は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素電極に印加する信号を、独立して制御できる。
[0126]
 トランジスタ316のゲート配線312と、トランジスタ317のゲート配線313には、異なるゲート信号を与えられるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極またはドレイン電極314は、トランジスタ316とトランジスタ317で共通に用いられる。トランジスタ316とトランジスタ317は、本実施形態に係るトランジスタを用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示装置を提供できる。
[0127]
 トランジスタ316には、第1の画素電極が電気的に接続され、トランジスタ317には、第2の画素電極が電気的に接続される。第1の画素電極と第2の画素電極とは分離されている。第1の画素電極と第2の画素電極の形状は、特に限定しない。例えば、第1の画素電極は、V字状とすればよい。
[0128]
 トランジスタ316のゲート電極はゲート配線312と接続され、トランジスタ317のゲート電極はゲート配線313と接続されている。ゲート配線312とゲート配線313に異なるゲート信号を与えて、トランジスタ316とトランジスタ317の動作タイミングを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
[0129]
 また、容量配線310と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極または第2の画素電極と電気的に接続する容量電極とで、保持容量を形成してもよい。
[0130]
 マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子318と第2の液晶素子319を備える。第1の液晶素子318は第1の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成され、第2の液晶素子319は第2の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成される。
[0131]
 画素部は、図8Bに示す構成に限定されない。図8Bに示す画素部にスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサー、または論理回路を追加してもよい。
[0132]
 画素の回路構成の他の一例を図8Cに示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示装置の画素部の構造を示す。
[0133]
 図8Cは、適用可能な画素部320の回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。本実施形態に係る酸化物半導体薄膜は、nチャネル型のトランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。当該画素部の回路は、デジタル時間階調駆動を適用できる。
[0134]
 スイッチング用トランジスタ321および駆動用トランジスタ322には、本実施形態に係る薄膜トランジスタを用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL表示装置を提供することができる。
[0135]
 画素部の回路の構成は、図8Cに示す構成に限定されない。図8Cに示す画素部の回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサー、トランジスタまたは論理回路を追加してもよい。
 以上が本実施形態に係る薄膜トランジスタを表示装置に用いる場合の説明である。
[0136]
 次に、本実施形態に係る薄膜トランジスタを固体撮像素子に用いる場合について、図9を参照して説明する。
[0137]
 CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーは、信号電荷蓄積部に電位を保持し、その電位を、増幅トランジスタを介して、垂直出力線に出力する固体撮像素子である。CMOSイメージセンサーに含まれるリセットトランジスタ、および/または転送トランジスタにリーク電流があると、そのリーク電流によって充電または放電が起こり、信号電荷蓄積部の電位が変化する。信号電荷蓄積部の電位が変化すると、増幅トランジスタの電位も変わってしまい、本来の電位からずれた値となり、撮像された映像が劣化してしまう。
[0138]
 本実施形態に係る薄膜トランジスタをCMOSイメージセンサーのリセットトランジスタ、および転送トランジスタに適用した場合の動作の効果を説明する。増幅トランジスタは、薄膜トランジスタまたはバルクトランジスタのどちらを適用しても良い。
[0139]
 図9は、CMOSイメージセンサーの画素構成の一例を示す図である。画素は光電変換素子であるフォトダイオード3002、転送トランジスタ3004、リセットトランジスタ3006、増幅トランジスタ3008および各種配線で構成されており、マトリクス状に複数の画素が配置されてセンサーを構成する。増幅トランジスタ3008と電気的に接続される選択トランジスタを設けても良い。トランジスタ記号に記してある「OS」は酸化物半導体(Oxide Semiconductor)を、「Si」はシリコンを示しており、それぞれのトランジスタに適用すると好ましい材料を表している。以降の図面についても同様である。
[0140]
 フォトダイオード3002は、転送トランジスタ3004のソース側に接続されており、転送トランジスタ3004のドレイン側には信号電荷蓄積部3010(FD:フローティングディフュージョンとも呼ぶ)が形成される。信号電荷蓄積部3010にはリセットトランジスタ3006のソース、および増幅トランジスタ3008のゲートが接続されている。別の構成として、リセット電源線3110を削除することもできる。例えば、リセットトランジスタ3006のドレインをリセット電源線3110ではなく、電源線3100または垂直出力線3120につなぐ方法がある。
 なお、また、フォトダイオード3002に本実施形態に係る酸化物半導体薄膜を用いても良く、転送トランジスタ3004、リセットトランジスタ3006に用いられる酸化物半導体薄膜と同じ材料を用いてよい。
 以上が、本実施形態に係る薄膜トランジスタを固体撮像素子に用いる場合の説明である。
実施例
[0141]
 以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
 X元素を含有させたITZO系酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットを作製した。X元素を含有させたITZO系酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットの特性と、X元素を含有させないITZO系酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットの特性と、を比較した。具体的な手順は以下の通りである。
[0142]
 まず、原料として表1に示す原子比となるように、以下の粉末を秤量した。
 ・In原料:純度99.99質量%の酸化インジウム粉末
 ・Sn原料:純度99.99質量%の酸化錫粉末
 ・Zn原料:純度99.99質量%の酸化亜鉛粉末
 ・X元素 :純度99.9質量%の酸化アルミニウム(Al )、純度99.9質量%の酸化ゲルマニウム(GeO )、純度99.9質量%の酸化ケイ素(SiO )、純度99.9質量%の酸化イットリウム(Y )、純度99.9質量%の酸化ジルコニウム(ZrO )、純度99.9質量%の酸化マグネシウム(MgO)、純度99.9質量%の酸化イッテルビウム(Yb O)
[0143]
[表1]


[0144]
 次に、これらの原料に成形用バインダーとしてポリビニルアルコールを加えて、湿式ボールミルにて72時間、混合および造粒した。
[0145]
 次に、この造粒物を内径120mm×120mm×7mmの金型へ均一に充填し、コールドプレス機にて加圧成形した後、冷間等方圧加圧装置(CIP)で196MPaの圧力で成形した。このようにして得た成形体を、焼結炉にて酸素雰囲気下で780℃まで昇温後、780℃で5時間保持、さらに1400℃まで昇温し、この温度(1400℃)で20時間保持し、その後、炉冷して酸化物焼結体を得た。なお、昇温速度は2℃/分で行った。
[0146]
 得られた酸化物焼結体を切削加工し、表面研磨し、X線回折測定装置(XRD)により結晶構造を調べた。その結果、試料番号1~17、19、20、22、23、24、27については、In (ZnO) (式中、m=2~7の整数)で表される六方晶層状化合物および、Zn SnO で表されるスピネル化合物が存在することを確認した。試料番号18、21については、Zn SnO で表されるスピネル化合物の単一相であった。試料番号25、26については、ビックスバイト構造化合物、およびZn SnO で表されるスピネル化合物が存在することを確認した。XRDの測定条件は以下の通りである。
・装置:(株)リガク製Smartlab
・X線:Cu-Kα線(波長1.5418×10 -10m)
・平行ビーム、2θ-θ反射法、連続スキャン(2.0°/分)
・サンプリング間隔:0.02°
・発散スリット(Divergence Slit、DS):1.0mm
・散乱スリット(Scattering Slit、SS):1.0mm
・受光スリット(Receiving Slit、RS):1.0mm
[0147]
 さらに、得られた酸化物焼結体について以下の特性を測定した。
(1)平均抗折力
 得られた酸化物焼結体から、厚さ3mm×幅4mm×全長36mm、断面が長方形の角柱の試験片を30本切り出し、JIS R 1601:2008に基づき、材料試験機(島津製作所製EZ Graph)にて3点曲げ強さを測定し、試験片30本の3点曲げ強さ測定値の平均値を平均抗折力とした。
[0148]
(2)相対密度
 酸化物焼結体の相対密度をアルキメデス法に基づき測定した。具体的には、酸化物焼結体の空中重量を、体積(=焼結体の水中重量/計測温度における水比重)で除し、下記式(5)に基づく理論密度ρ(g/cm 3)に対する百分率の値を相対密度(単位:%)とした。
 相対密度={(酸化物焼結体の空中重量/体積)/理論密度ρ}×100
[0149]
 ρ=(C /100/ρ +C /100/ρ ・・・+C /100/ρ -1 …(5)
 なお、式(5)中で、C ~C はそれぞれ酸化物焼結体または酸化物焼結体の構成物質の含有量(質量%)を示し、ρ ~ρ はC ~C に対応する各構成物質の密度(g/cm )を示す。
 尚、各構成物質の密度は、密度と比重はほぼ同等であることから、化学便覧 基礎編I日本化学編 改定2版(丸善株式会社)に記載されている酸化物の比重の値を用いた。
[0150]
(3)バルク抵抗値(mΩcm)
 スパッタリングターゲットの導電性を示す指標として、バルク抵抗値を抵抗率計(三菱化学(株)製、製品名ロレスタGP MCP-T610)を使用して四探針法(JIS R 1637:1998)に基づき測定した。試料の厚みを5mmとし、測定箇所は9箇所とし、9箇所の測定値の平均値をバルク抵抗値とした。
 酸化物焼結体の平面形状が四角形であったため、測定箇所は、面を等面積に9分割し、それぞれの四角形の中心点9箇所とした。
[0151]
(4)ワイブル係数
 平均抗折力のワイブル係数は、JIS R 1625:2010に規定されたワイブル統計解析法により、ワイブル確率軸上に、抗折力をプロット(以下「ワイブルプロット」という)し、ワイブルプロットの傾きから求めた。
[0152]
(5)平均結晶粒径
 六方晶層状化合物の平均結晶粒径、スピネル化合物の平均結晶粒径、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径をそれぞれ求め、平均結晶粒径の差の絶対値を求めた。平均結晶粒径は、前述の実施形態中に記載した方法と同様にして測定した。
[0153]
(6)六方晶層状化合物粒子の確認
 酸化物焼結体が六方晶層状化合物の粒子を含むことは、SEM-EPMAにより、結晶粒子がIn元素とZn元素を含んでいることから判断した。
[0154]
(7)スピネル化合物粒子の確認
 酸化物焼結体がスピネル化合物の粒子を含むことは、SEM-EPMAにより、結晶粒子がZn元素とSn元素を含んでいることから判断した。
[0155]
(8)ビックスバイト構造の確認
 酸化物焼結体がビックスバイト構造化合物の粒子を含むことは、SEM-EPMAにより、結晶粒子が、In元素および酸素原子のみを含むか、またはIn元素、Sn元素および酸素原子を含むがIn元素およびSn元素の原子%比(In元素:Sn元素)で、In元素が90原子%以上であることから判断した。
[0156]
 以上の結果を表2に示す。表2において、In:Sn:Zn=30:15:55(原子%)における、平均抗折力、相対密度、バルク抵抗、ワイブル係数、および平均結晶粒径と、Al含有量、またはSi含有量との関係(試料番号1~5、8~12、19)を図10~図14に示す。X元素として、Al、Si、G、Si、Y、Mg、およびYbのいずれか一種を0.1原子%含有させた場合(試料番号1、8、13~17)、およびX元素を含有させなかった場合(試料番号19)の比較を図15に示す。
[0157]
[表2]


[0158]
 表2に示すように、X元素を含有する試料(試料番号1~18、22~27)は、含有しない試料(試料番号19、20、21)と比べて、平均抗折力、およびワイブル係数が大きく、平均結晶粒径が小さかった。
 バルク抵抗は、X元素を含有する試料(試料番号1~18、22~27)と、含有しない試料(試料番号19、20、21)とで同程度であったか、X元素を含有する試料(試料番号1~18、22~27)の方がやや小さかった。
 相対密度は、X元素を含有する試料(試料番号1~18、22~27)と、含有しない試料(試料番号19、20、21)とで同程度であった。
 具体的には、X元素を含有する試料(試料番号1~18、22~27)は、平均抗折力が150MPa以上、バルク抵抗が2.69mΩcm以下、ワイブル係数が7以上、平均結晶粒径が10μm以下であった。
 X元素を含有する試料(試料番号1~17、22~24)においては、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径との差が1μm以下であった。また、X元素を含有する試料(試料番号25、26)においては、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径との差が1μm以下であった。X元素を含有しない試料(試料番号19、20)においては、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径との差が1μm超であった。この結果から、X元素を含有させることにより、平均抗折力、およびワイブル係数が大きく、バルク抵抗、相対密度、および平均結晶粒径が好ましい範囲にある酸化物焼結体が得られることが分かった。
[0159]
 図10に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのAl元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Al含有量が増えると平均抗折力も大きくなったが、含有量が0.5原子%を超えると平均抗折力の上昇が緩やかになった。
 また、図10に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのSi元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Si含有量が増えると平均抗折力も大きくなった。X元素の含有量が同じ試料で比べると、Alを含有させた試料の方が、Siを含有させた試料よりも、平均抗折力は大きくなった。
[0160]
 図11に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのAl元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Al含有量が増えると相対密度も大きくなったが、0.5原子%を超えると密度の上昇効果が飽和した。
 また、図11に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのSi元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Si含有量が増えると相対密度も大きくなったが、0.1原子%を超えると密度の上昇効果が飽和した。
[0161]
 図12に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのAl元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Al含有量が増えると、バルク抵抗が小さくなった。
 また、図12に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのSi元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Si含有量が増えると、1原子%まではバルク抵抗が小さくなったが、3原子%を超えると僅かに大きくなった。
[0162]
 図13に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのAl元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Al含有量が増えるとワイブル係数は上昇したが、Al含有量が3原子%を超えると、上昇効果が飽和した。
 また、図13に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのSi元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Si含有量が増えるとワイブル係数は上昇したが、Si含有量が3原子%を超えると、上昇効果が飽和した。
[0163]
 図14に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのAl元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Al含有量が増えると平均結晶粒径は小さくなった。
 また、図14に示すように、In、Sn、およびZn含有量が一定であって、X元素としてのSi元素の含有量が異なる複数の試料で比較すると、Si含有量が増えると平均結晶粒径は小さくなった。
 Al含有させた試料およびSiを含有させた試料は、平均結晶粒径が同程度であった。
[0164]
 図15に示すように、In、Sn、Zn、およびX元素の含有量が一定であって、X元素の種類が異なる複数の試料およびX元素を含有しない試料で比較すると、X元素を含有させなかった試料に比べて、X元素を含有させた試料の方がは、平均抗折力が大きくなった。
[0165]
[薄膜トランジスタの製造]
 以下の工程で薄膜トランジスタを製造した。
(1)成膜工程
 各試料番号に係る酸化物焼結体を研削研磨して、4インチφ×5mmtのスパッタリングターゲットを製造した。具体的には、切削研磨した焼結体をバッキングプレートにボンディングすることによって作製した。すべてのターゲットにおいて、ボンディング率は、98%以上であった。酸化物焼結体のバッキングプレートへのボンディング時に酸化物焼結体にクラックは発生せず、スパッタリングターゲットを良好に製造することができた。ボンディング率(接合率)は、X線CTにより確認した。
 作製したスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングによって、表3に示す成膜条件で熱酸化膜(ゲート絶縁膜)付きのシリコンウエハ20(ゲート電極)上に、メタルマスクを介して50nmの薄膜(酸化物半導体層)を形成した。この際、スパッタガスとして高純度アルゴン及び高純度酸素20%の混合ガスを用いてスパッタリングを行った。この際、スパッタリングターゲットにクラックは発生しなかった。
[0166]
(2)ソース・ドレイン電極の形成
 次に、ソース・ドレインのコンタクトホール形状のメタルマスクを用いてチタン金属をスパッタリングし、ソース・ドレイン電極としてチタン電極を成膜した。チャネル部のL/Wは、200μm/1000μmとした。得られた積層体を大気中にて350℃で60分間加熱処理し、保護絶縁膜形成前の薄膜トランジスタを製造した。
[0167]
[表3]


[0168]
 製造した薄膜トランジスタ(TFT番号:A1~A27)について下記評価を行った。結果を表4に示す。
[0169]
(半導体膜の結晶特性)
 シリコンウエハー上に成膜した酸化物半導体膜について、スパッタ後(膜堆積直後)の加熱していない膜及び成膜後の加熱処理をした後の膜の結晶性をX線回折(XRD)測定によって評価したところ、加熱前はアモルファスであり、加熱後もアモルファスであった。
[0170]
<TFTの特性評価>
 飽和移動度、S値及び閾値電圧の評価を行った。結果を表4の「加熱処理後SiO 2膜形成前のTFTの特性」に示す。
 飽和移動度は、ドレイン電圧に20V印加した場合の伝達特性から求めた。具体的に、伝達特性Id-Vgのグラフを作成し、各Vgのトランスコンダクタンス(Gm)を算出し、線形領域の式により飽和移動度を導いた。尚、Gmは∂(Id)/∂(Vg)によって表され、Vgは-15V~25Vまで印加し、その範囲での最大移動度を飽和移動度と定義した。本発明において特に断らない限り、飽和移動度はこの方法で評価した。上記Idはソース・ドレイン電極間の電流、Vgはソース・ドレイン電極間に電圧Vdを印加したときのゲート電圧である。
 S値は、ドレイン電流が10pAから100pAになるときのゲート電圧差である。
 閾値電圧(Vth)は、伝達特性のグラフよりId=10 -9AでのVgと定義した。
 また、得られたTFTサンプルの酸化物半導体層について誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES、島津製作所社製)で分析した結果、得られた酸化物半導体薄膜の原子比が酸化物半導体薄膜の製造に用いた酸化物焼結体の原子比と同じであることを確認した。
[0171]
[表4]


[0172]
 表4より、インジウムに対するX元素の添加量が増加するにつれ移動度が低下し、また、Vthがプラス側にシフトすることが分かった。

産業上の利用可能性

[0173]
 本発明のスパッタリングターゲットは、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの表示装置を駆動する、薄膜トランジスタの酸化物半導体層を形成するために使用できる。また、本発明のスパッタリングターゲットを用いて、受光素子、表示素子、タッチパネルにおける電極、または防曇用透明発熱体等に使用される透明導電膜を製造できる。

符号の説明

[0174]
1 :酸化物焼結体
3 :バッキングプレート
20 :シリコンウエハ
30 :ゲート絶縁膜
40 :酸化物半導体薄膜
50 :ソース電極
60 :ドレイン電極
70 :層間絶縁膜
70A :層間絶縁膜
70B :層間絶縁膜
100 :薄膜トランジスタ
100A :薄膜トランジスタ
300 :基板
301 :画素部
302 :第1の走査線駆動回路
303 :第2の走査線駆動回路
304 :信号線駆動回路
310 :容量配線
312 :ゲート配線
313 :ゲート配線
314 :ドレイン電極
316 :トランジスタ
317 :トランジスタ
318 :第1の液晶素子
319 :第2の液晶素子
320 :画素部
321 :スイッチング用トランジスタ
322 :駆動用トランジスタ
3002 :フォトダイオード
3004 :転送トランジスタ
3006 :リセットトランジスタ
3008 :増幅トランジスタ
3010 :信号電荷蓄積部
3100 :電源線
3110 :リセット電源線
3120 :垂直出力線

請求の範囲

[請求項1]
 インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有し、各元素の原子比が下記式(1)を満たし、さらにZn SnO で表されるスピネル構造化合物を含む、酸化物焼結体を備える、
 スパッタリングターゲット。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1)
 (式(1)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物焼結体中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、Yb、およびGaから少なくとも1種以上が選択される。)
[請求項2]
 前記酸化物焼結体は、式(1)で示す原子比が0.003以上、0.03以下である、
 請求項1記載のスパッタリングターゲット。
[請求項3]
 さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(2)を満たす、
 請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
  0.40≦Zn/(In+Sn+Zn)≦0.80  ・・・(2)
[請求項4]
 さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(3)を満たす、
 請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
 0.15≦Sn/(Sn+Zn)≦0.40  ・・・(3)
[請求項5]
 さらに、前記酸化物焼結体が、下記式(4)を満たす、
 請求項1~4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
 0.10 ≦In/(In+Sn+Zn)≦0.35 ・・・(4)
[請求項6]
 前記酸化物焼結体は、In (ZnO) (mは2~7である)で表わされる六方晶層状化合物を含む、
 請求項1~5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項7]
 前記酸化物焼結体は、平均抗折力が150MPa以上である、
 請求項1~6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項8]
 前記酸化物焼結体は、平均抗折力のワイブル係数が7以上である、
 請求項1~7のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項9]
 前記酸化物焼結体は、平均結晶粒径が10μm以下であり、六方晶層状化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下である、
 請求項1~8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項10]
 前記酸化物焼結体は、平均結晶粒径が10μm以下であり、ビックスバイト構造化合物の平均結晶粒径と、スピネル化合物の平均結晶粒径の差が1μm以下である、
 請求項1~8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
[請求項11]
 インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)、亜鉛元素(Zn)、X元素、および酸素を含有し、各元素の原子比が下記式(1A)を満たす、
 酸化物半導体薄膜。
 0.001≦X/(In+Sn+Zn+X)≦0.05 ・・・(1A)
 (式(1A)中、In、Zn、SnおよびXは、それぞれ酸化物半導体薄膜中のインジウム元素、亜鉛元素、スズ元素およびX元素の含有量を表す。X元素は、Ge、Si、Y、Zr、Al、Mg、Yb、およびGaから少なくとも1種以上が選択される。)
[請求項12]
 請求項11に記載の酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタ。
[請求項13]
 請求項12に記載の薄膜トランジスタを用いた電子機器。

図面

[ 図 1A]

[ 図 1B]

[ 図 1C]

[ 図 1D]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7A]

[ 図 7B]

[ 図 7C]

[ 図 7D]

[ 図 7E]

[ 図 8A]

[ 図 8B]

[ 図 8C]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]