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1. (WO2019008944) HEAT EXCHANGER
Document

明 細 書

発明の名称 熱交換器 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

0009   0010   0011   0012   0013   0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 熱交換器

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2017年7月7日に出願された日本国特許出願2017-133273号と、2018年5月9日に出願された日本国特許出願2018-090312号と、に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その特許出願の全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。

技術分野

[0002]
 本開示は熱交換器に関する。

背景技術

[0003]
 例えば車両用のラジエータとして用いられる熱交換器では、複数のチューブがタンクに接続されており、それぞれのチューブの内側にはインナーフィンが配置されている。熱交換器における熱交換が行われているときには、タンクからそれぞれのチューブに冷却水が供給される。それぞれのチューブでは、内側を通る冷却水と、外側を通る空気との間で熱交換が行われる。このような構成の熱交換器は、金属からなる複数の部材(例えば上記のチューブやインナーフィン等)が互いにろう接された構成となっている。
[0004]
 一般に、金属からなる部材同士をろう接する際には、部材の表面に形成された酸化被膜を予め除去するために、フラックスの塗布が行われる。しかしながら、熱交換器の用途によっては、チューブの内側にフラックスが残留してしまうことが好ましくない場合がある。
[0005]
 例えば、燃料電池システムにおいて冷却水の温度を下げるために用いられる熱交換器では、チューブの内側にフラックスが残留していると、循環する冷却水に当該フラックスが溶出し、冷却水の電気抵抗が低下してしまうことがある。燃料電池システムでは、高電圧のセルスタックにも冷却水が供給される。このため、フラックスの溶出に伴って冷却水の電気抵抗が低下すると、冷却水を介した漏電等の不具合が生じてしまう可能性がある。
[0006]
 尚、燃料電池システムには、循環する冷却水の純度を高めるためにイオン交換樹脂が設けられるのが一般的である。しかしながら、上記のように冷却水にフラックスが溶出してしまうと、これによりイオン交換樹脂の交換頻度が高くなってしまうという問題も生じ得る。
[0007]
 そこで、下記特許文献1に記載の燃料電池システム用ラジエータでは、ろう接の完了後において内部の洗浄を行い、チューブの内側に残留したフラックスを予め除去しておくこととしている。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2005-203201号公報

発明の概要

[0009]
 しかしながら、フラックスを完全に除去するための洗浄には時間と手間がかかってしまうので、コストの上昇、及び生産性の低下という問題が生じてしまう。一方、チューブの内側におけるろう接を、従来通りの構成においてフラックス用いることなく行った場合には、一部における接合不良が生じてしまう可能性もある。
[0010]
 本開示は、チューブの内側におけるろう接を、フラックス用いることなく行う構成としながらも、接合不良の生じることの無い熱交換器を提供することを目的とする。
[0011]
 本開示に係る熱交換器は、熱媒体の通る流路が内側に形成されたチューブと、チューブの内面にろう接された状態で、流路に配置されたインナーフィンと、を備える。チューブとインナーフィンとのうち少なくとも一方は、板状の心材層と、心材層の表面を覆うように形成されたろう材層と、を有している。心材層は、マグネシウムの含有量が0.1重量%以上0.3重量%未満のアルミニウム合金により形成されている。
[0012]
 以上のような熱交換器では、心材層として0.1重量%以上のマグネシウムを含有させたアルミニウム合金を用いている。このような構成においては、部材の表面に形成された酸化被膜がマグネシウムによって除去される。このため、少なくともチューブとインナーフィンとの接合部分(つまりチューブの内側)においては、フラックスを用いなくても良好な接合を行うことができる。
[0013]
 ただし、発明者らが検討したところによれば、心材層におけるマグネシウムの含有量が0.3重量%を超えた場合には、上記のように酸化被膜を除去するマグネシウムの効果が低減されてしまうことが判明している。これは、0.3重量%を超えて余剰となったマグネシウムが、その周囲に存在するフラックスと反応してしまうためと考えられる。このため、心材層におけるマグネシウムの含有量は、上記のように0.1重量%以上であり且つ0.3重量%未満であることが好ましい。
[0014]
 本開示によれば、チューブの内側におけるろう接を、フラックスを塗布することなく行う構成としながらも、接合不良の生じることの無い熱交換器が提供される。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 図1は、第1実施形態に係る熱交換器の全体構成を示す図である。
[図2] 図2は、図1の熱交換器が備えるチューブの内部構成を示す断面図である。
[図3] 図3は、図1の熱交換器が備えるインナーフィンの構成を示す断面図である。
[図4] 図4は、図1の熱交換器のうち、チューブとタンクとの接合部分における構成を示す断面図である。
[図5] 図5は、図4のチューブに拡大部を形成する方法を説明するための図である。
[図6] 図6は、第2実施形態に係るチューブの構成を示す断面図である。
[図7] 図7は、心材層の材料及びろう材層の材料と、接合率との関係を示す図である。
[図8] 図8は、心材層の材料及びろう材層の材料と、接合率との関係を示す図である。

発明を実施するための形態

[0016]
 以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
[0017]
 第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る熱交換器10は、不図示の燃料電池車両に搭載されるラジエータとして構成されている。熱交換器10は、燃料電池車両が備える不図示のセルスタックを通り高温となった冷却水を、空気との熱交換によって冷却するためのものである。このように、本実施形態では、熱交換器10を通る熱媒体として冷却水が用いられる。
[0018]
 図1に示されるように、熱交換器10は、一対のタンク100、200と、チューブ300と、アウターフィン400と、一対のサイドプレート510、520とを備えている。
[0019]
 タンク100は、外部から熱交換器10に供給された冷却水を内部に貯留し、当該冷却水を後述のチューブ300に供給するための容器である。タンク100は、細長い棒状の容器として形成されている。タンク100は、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。
[0020]
 タンク100は、タンクプレート110と、ヘッダプレート120とを有している。タンクプレート110は、樹脂によって形成された容器であって、その一方側(図1では右側)の部分が開放された形状となっている。当該部分は、次に述べるヘッダプレート120によって塞がれている。
[0021]
 ヘッダプレート120は、タンクプレート110のうち上記のように開放された部分を覆う板状の部材である。ヘッダプレート120は金属によって形成されている。ヘッダプレート120は、その一部が加締められることにより、タンクプレート110に対して固定されている。ヘッダプレート120とタンクプレート110との間には、樹脂によって形成された不図示のシール部材が挟み込まれている。これにより、タンク100の外側に冷却水が漏出してしまうことが防止されている。
[0022]
 タンク100のタンクプレート110には供給ポート101が形成されている。供給ポート101は、熱交換器10の外部から供給される冷却水の入口となる部分であって、タンクプレート110のうち下方側部分に形成されている。
[0023]
 タンク200は、タンク100と略同一形状の容器である。タンク200は、タンク100から後述のチューブ300を通って来た冷却水を受け入れて、当該冷却水を外部に向けて排出するためのものである。タンク200は、タンク100と同様に、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。
[0024]
 タンク200は、タンクプレート210と、ヘッダプレート220とを有している。タンクプレート210は、樹脂によって形成された容器であって、その一方側(図1では左側)の部分が開放された形状となっている。当該部分は、次に述べるヘッダプレート220によって塞がれている。
[0025]
 ヘッダプレート220は、タンクプレート210のうち上記のように開放された部分を覆う板状の部材である。ヘッダプレート220は金属によって形成されている。ヘッダプレート220は、その一部が加締められることにより、タンクプレート210に対して固定されている。ヘッダプレート220とタンクプレート210との間には、樹脂によって形成された不図示のシール部材が挟み込まれている。これにより、タンク200の外側に冷却水が漏出してしまうことが防止されている。
[0026]
 タンク200のタンクプレート210には排出ポート201が形成されている。排出ポート201は、熱交換器10から外部に排出される冷却水の出口となる部分であって、タンクプレート210のうち上方側部分に形成されている。
[0027]
 チューブ300は、扁平形状の断面を有する細長い配管であって、熱交換器10に複数備えられている。それぞれのチューブ300はアルミニウム合金によって形成されている。チューブ300の内側には、その長手方向に沿った流路FP(図2を参照)が形成されている。
[0028]
 それぞれのチューブ300は互いに平行となっており、上下方向に沿って並ぶように積層されている。以下では、チューブ300が積層されている方向のことを「積層方向」とも称する。
[0029]
 それぞれのチューブ300は、その一端がタンク100に接続されており、その他端がタンク200に接続されている。このような構成により、タンク100の内部に形成された空間と、タンク200の内部に形成された空間とは、それぞれのチューブ300の流路FPによって連通されている。
[0030]
 アウターフィン400は、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。アウターフィン400はアルミニウム合金によって形成されている。アウターフィン400は複数設けられており、それぞれのチューブ300の間に配置されている。波状に形成されたアウターフィン400のそれぞれの頂部は、その上下両側に配置された一対のチューブ300のそれぞれに対して当接しており、且つろう接されている。
[0031]
 熱交換器10のうち、複数のチューブ300及びアウターフィン400が積層されている部分は、空気と冷却水との間で熱交換が行われる部分である。以下では、当該部分のことを「コア部CR」とも称する。
[0032]
 サイドプレート510、520は、いずれも、金属板を曲げ加工することによって形成された板状部材である。サイドプレート510、520は、コア部CRの剛性を高めるために、コア部CRを上下に挟み込むように設けられている。
[0033]
 サイドプレート510は、その長手方向をチューブ300の長手方向に沿わせた状態で、コア部CRのうち積層方向における一端部(具体的には上端部)となる位置に配置されている。同様に、サイドプレート520は、その長手方向をチューブ300の長手方向に沿わせた状態で、コア部CRのうち積層方向における他端部(具体的には下端部)となる位置に配置されている。
[0034]
 チューブ300のうち最も上方側に配置されたものと、サイドプレート510との間にも、アウターフィン400が配置されている。同様に、チューブ300のうち最も下方側に配置されたものと、サイドプレート520との間にも、アウターフィン400が配置されている。
[0035]
 冷却水の流れる経路について説明する。不図示のセルスタックを通り高温となった冷却水は、供給ポート101からタンク100の内部に流入し貯留される。その後、冷却水はそれぞれのチューブ300の流路FPを流れてタンク200の内部に到達し、排出ポート201から外部に排出される。
[0036]
 熱交換器10の近傍には不図示の送風ファンが備えており、当該送風ファンによって車外から導入された空気が熱交換器10に向けて送り込まれる。空気は、各チューブ300の間を通過する。このとき、チューブ300の流路FPを通る冷却水の熱が空気に伝達されて(空気と冷却水との熱交換が行われて)、冷却水の温度が低下する。
[0037]
 また、冷却水の熱はアウターフィン400を介しても空気に伝達される。つまり、通過する空気との接触面積がアウターフィン400によって大きくなっており、冷却水と空気との熱交換が効率よく行われる構成となっている。
[0038]
 熱交換器10の更に具体的な構成について説明する。図2には、チューブ300を、その長手方向に対して垂直な面で切断した場合の断面が示されている。同図に示されるように、チューブ300の内側に形成された流路FPには、インナーフィン320が配置されている。インナーフィン320は、アウターフィン400と同様に、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。波状に形成されたインナーフィン320のそれぞれの頂部は、チューブ300の内面に対して当接しており、且つろう接されている。つまり、インナーフィン320は、チューブ300の内面にろう接された状態で流路FPに配置されている。このようなインナーフィン320が設けられていることにより、流路FPを通る冷却水の熱が、チューブ300の外側を通る空気へと効率よく伝えられる。
[0039]
 図3には、インナーフィン320の断面が拡大して示されている。インナーフィン320は、心材層321と、ろう材層322と、ろう材層323とからなる3層構造の板状部材を折り曲げることによって形成されている。
[0040]
 心材層321は、インナーフィン320の大部分を占める層であって、上記3つの層のうち中央となる位置に形成された板状の層である。本実施形態の心材層321は、マグネシウムを含有するアルミニウム合金により形成されている。当該アルミニウム合金におけるマグネシウムの含有量は、0.1重量%以上であり、且つ0.3重量%未満となっている。
[0041]
 ろう材層322は、心材層321のうち一方側(図3では上方側)の表面の全体を覆うように形成された層である。本実施形態のろう材層322は、アルミニウムにシリコンを含有させたアルミニウム合金により形成されている。また、ろう材層322にはビスマスも含有されている。ろう材層322におけるビスマスの含有量は0.1重量%以下となっている。
[0042]
 ろう材層323は、心材層321のうち、上記のろう材層322が形成されている側とは反対側(図3では下方側)の表面の全体を覆うように形成された層である。本実施形態のろう材層323は、ろう材層322と同一の材料によって形成されている。
[0043]
 尚、本実施形態では、ろう材層322、323はマグネシウムを含有していないのであるが、ろう材層322、323のそれぞれが微量のマグネシウムを含有する層として形成されていてもよい。ただし、その含有量は、心材層321におけるマグネシウムの含有量よりも少ないことが好ましい。
[0044]
 図4は、チューブ300とタンク200との接続部分における構造を示す断面図である。同図に示されるように、タンク200のヘッダプレート220には、それぞれのチューブ300に対応して貫通穴221が形成されている。チューブ300は、その一端を貫通穴221からタンク200の内部に挿通させた状態で、ヘッダプレート220に対してろう接されている。図4においてヘッダプレート220よりも右側の空間SPは、タンク200の内側に形成された空間である。図4において符号「OP」が付されているのは、チューブ300の端部に形成された開口である。以下では、当該開口のことを「開口OP」とも表記する。
[0045]
 チューブ300のうち、貫通穴221からタンク200の内部に挿通されている部分には拡大部310が形成されている。拡大部310では、チューブ300の外形が、チューブ300のうちそれ以外の部分の外形よりも大きくなっている。
[0046]
 チューブ300に拡大部310を形成する方法について、図5を参照しながら説明する。先ず、拡大部310が形成されていない状態のチューブ300を、ヘッダプレート220の貫通穴221に挿通させた状態とする。その後、尖った先端部601を有する治具600を、図5に示される矢印に沿って開口OPに押し当てる。このとき、治具600の先端部601が開口OPの内側に入り込むことで、開口OPが内側から押し広げられていく。
[0047]
 その結果、最終的には図4に示されるように、開口OPの近傍に拡大部310が形成される。拡大部310がこのように形成されることにより、チューブ300外面は、貫通穴221の内面に対して強く押し付けられた状態となっている。
[0048]
 尚、チューブ300とタンク100との接続部分における構成は、以上に説明したチューブ300とタンク200との接続部分における構成と同じである。このため、その具体的な図示や説明については省略する。
[0049]
 熱交換器10を組み立てる方法について簡単に説明する。先ず、積層方向に沿って積層された複数のチューブ300、アウターフィン400、及びサイドプレート510、520を、いずれもヘッダプレート120とヘッダプレート220との間に挟み込まれた状態とする。このとき、それぞれのチューブ300は、ヘッダプレート220に形成された貫通穴221にその一端が挿通されており、ヘッダプレート120に形成された不図示の貫通穴(貫通穴221と同形状のもの)にその他端が挿通された状態となっている。上記のような組み立て体が形成された後、それぞれのチューブ300両端に、図4、5を参照しながら説明した拡大部310が形成される。
[0050]
 尚、アウターフィン400の表面全体には、予めろう材層が形成された状態となっている。このろう材層は、ろう材層322、323と同様に、アルミニウムにシリコンを含有させたアルミニウム合金により形成されている。また、アウターフィン400の外側にあるろう材層の表面には、酸化被膜を除去するためのフラックスが予め塗布されている。一方、チューブ300の内側にはフラックスは一切塗布されていない。
[0051]
 尚、チューブ300の外側におけるフラックスは、熱交換器10の組み立て前の段階でアウターフィン400等の各部品の外側表面に塗布されていてもよいのであるが、組み立て後に塗布されることとしてもよい。
[0052]
 例えば、積層方向に沿って積層された複数のチューブ300、アウターフィン400、及びサイドプレート510、520を、いずれもヘッダプレート120とヘッダプレート220との間に挟み込むことによって先ず組み立て体を作成する。その後、当該組み立て体を、その積層方向を水平面に沿わせた状態とした後、その上方側に配置された複数のノズルから、組み立て体に向けてフラックスを噴射する。このとき、ノズルの位置を固定し、組み立て体の位置を例えばベルトコンベアによって徐々に変化させて行けば、組み立て体の全体にフラックスを塗布することができる。
[0053]
 尚、ノズルから噴射されるフラックスは、液体状のものであってもよく、粉末状のものであってもよい。フラックスの塗布方法としては、以上のようなもののほか、従来と同様の様々な方法を採用することができる。
[0054]
 フラックスの塗布が完了した後、上記の組み立て体の全体を加熱炉の内部で加熱する。これにより、アウターフィン400の表面に形成されたろう材層は溶融する。アウターフィン400の近傍にあるチューブ300の外表面、及びサイドプレート510、520の表面は、溶融したろう材層によって濡れた状態となる。
[0055]
 同様に、インナーフィン320の表面に形成されたろう材層322、323も溶融する。これにより、チューブ300の内表面は、溶融したろう材層322、323によって濡れた状態となる。
[0056]
 加熱炉による加熱が完了すると、溶融したそれぞれのろう材層は再び凝固した状態となる。これにより、チューブ300、アウターフィン400、サイドプレート510、520、及びヘッダプレート120、220の全体が、ろう接され一体となる。その後、ヘッダプレート120がタンクプレート110に加締め固定され、ヘッダプレート220がタンクプレート210に加締め固定される。
[0057]
 チューブ300の内側におけるろう接、すなわち、チューブ300の内面とインナーフィン320との間のろう接は、上記のようにフラックスを用いることなく行われる。ただし、インナーフィン320の心材層321はマグネシウムを含有しているので、ろう接部分の表面(例えばろう材層322の表面)に形成されていた酸化被膜は、マグネシウムとの反応によって除去される。つまり、本実施形態では、心材層321が含有するマグネシウムがフラックスと同様の働きをするので、フラックスを用いなくても接合不良が生じることなく、良好な接合を行うことが可能となっている。
[0058]
 尚、心材層321におけるマグネシウムの含有量が0.1重量%を下回ってしまうと、上記のような酸化被膜の除去が十分には行われなくなる。このため、心材層321におけるマグネシウムの含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。
[0059]
 一方、心材層321におけるマグネシウムの含有量が0.3重量%を超えた場合には、上記のような酸化被膜の除去がやはり十分には行われなくなる。これは、0.3重量%を超えて余剰となったマグネシウムが、ろう接の加熱炉において空間を漂う微量のフラックスや、アウターフィン400の部分から移動してきたフラックスと反応してしまうためと考えられる。
[0060]
 以上のような理由により、心材層321におけるマグネシウムの含有量は、本実施形態のように0.1重量%以上であり且つ0.3重量%未満であることが好ましい。
[0061]
 ところで、加熱炉での加熱中に、インナーフィン320やチューブ300の表面が周囲の酸素と反応すると、新たな酸化被膜が形成されてしまうので好ましくない。しかしながら、本実施形態ではろう材層322、323のそれぞれにビスマスを含有させているので、上記のような新たな酸化被膜の形成はビスマスによって抑制される。このような効果を得るためには、本実施形態のようにビスマスの含有量を0.1重量%以下としておくことが好ましい。
[0062]
 本実施形態では、インナーフィン320のうちマグネシウムを含有している部分が、内側に配置された心材層321となっている。このため、加熱時の部材表面においてマグネシウムの濃度が高くなってしまうことが無く、マグネシウムと、例えば周囲を漂うフラックスとの反応が抑制される。更に、心材層321にマグネシウムを含有させることにより、インナーフィン320の強度が高くなり熱交換器10の耐久性が良くなるという利点も得られる。
[0063]
 心材層321及びろう材層322の材料を上記のように選定することの効果について説明する。図7、8のそれぞれに示される表のうち最も左側の列は、心材層321におけるマグネシウムの含有量を重量%の単位で示すものである。図7、8のそれぞれに示される表のうち中央の列は、ろう材層322におけるビスマスの含有量を重量%の単位で示すものである。
[0064]
 図7、8のそれぞれに示される表のうち最も右側の列は、心材層321及びろう材層322の材料を左列及び中央列のように選定した場合における接合率である。「接合率」とは、インナーフィン320とチューブ300の内面とが互いに当接している部分(チューブ300の長手方向に沿って直線状に伸びる接合部分)について、その長手方向に沿って本来接合されるべき長さに対する、実際に接合されている長さの割合のことである。
[0065]
 図7に示される例では、ろう材層322におけるビスマスの含有量を0.02重量%に固定した上で、心材層321におけるマグネシウムの含有量を変化させている。同図に示されるように、心材層321におけるマグネシウムの含有量が0.1重量%から0.3重量%までの範囲では、接合率は概ね100%となっており、インナーフィン320とチューブ330との間で良好な接合が行われている。一方、心材層321におけるマグネシウムの含有量を0.05重量%まで少なくすると、接合率は僅かに低下して86%となっている。このように、本発明者らが行った実験によれば、接合率を高くするためには、心材層321におけるマグネシウムの含有量を0.1重量%から0.3重量%までの範囲とすることが有効であることが確認された。
[0066]
 図8に示される例では、心材層321におけるマグネシウムの含有量を0.2重量%に固定した上で、ろう材層322におけるビスマスの含有量を変化させている。同図に示されるように、ろう材層322におけるビスマスの含有量が0.1重量%以下の範囲では、接合率は概ね100%となっており、インナーフィン320とチューブ330との間で良好な接合が行われている。このように、本発明者らが行った実験によれば、接合率を高くするためには、ろう材層322におけるビスマスの含有量を0.1重量%以下することが有効であることが確認された。
[0067]
 ただし、ろう材層322におけるビスマスの含有量を極端に少なくしてほぼ0重量%とすると、接合率は80%まで低下する。図8に示されるように、ろう材層322におけるビスマスの含有量は、0.005重量%以上であり、且つ0.1重量%以下の範囲とすることが好ましい。
[0068]
 以上に説明したように、本実施形態に係る熱交換器10では、熱媒体である冷却水が通る部分、すなわちチューブ300の内側におけるろう接が、フラックスを用いることなく行われている。このため、チューブ300の内側からフラックスを除去するための洗浄を簡略化しても(又は全く行わなくても)、冷却水に溶出したフラックスによって冷却水の電気抵抗が低下してしまうような事態を防止することができる。このため、フラックス除去のためのコストや手間を低減しながらも、冷却水を介してセルスタックから漏電してしまうような事態を防止することができる。
[0069]
 従来行われていた、チューブ300の内側へのフラックスの塗布方法について簡単に説明する。先ず、積層方向に沿って積層された複数のチューブ300、アウターフィン400、及びサイドプレート510、520を、いずれもヘッダプレート120とヘッダプレート220との間に挟み込むことによって先ず組み立て体を作成する。その後、ヘッダプレート120に治具を接続する。当該治具は、タンクプレート110と同様の形状の容器であって、その内部にフラックスを供給するための供給用配管が接続されたものである。
[0070]
 上記のように治具を接続した後、供給用配管から治具にフラックスを供給する。当該フラックスは、治具からそれぞれのチューブ300の内部へと供給される。フラックスは、治具側の端部から各チューブ300の内部へと流入し、チューブ300の内部を通った後、チューブ300の他端から外部へと排出される。これにより、チューブ300の内面全体及びインナーフィン320の表面全体にフラックスが塗布される。
[0071]
 本実施形態では、チューブ300に拡大部310が形成されているので、チューブ300外面が貫通穴221の内面に対して強く押し付けられた状態となっている。このため、空中を漂っているフラックスや、アウターフィン400に塗布されたフラックスが、貫通穴221から侵入して開口OPに到達してしまうことが防止される。これにより、チューブ300の内面にフラックスが付着してしまうことが更に防止される。
[0072]
 第2実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6には、チューブ300の断面が拡大して示されている。本実施形態では、チューブ300が、心材層301と、ろう材層302と、ろう材層303とからなる3層構造の板状部材によって形成されている。一方、本実施形態におけるインナーフィン320は、心材層321のみを有する1層構造の板状部材によって形成されている。ただし、当該心材層321にはマグネシウムは含有されていない。
[0073]
 心材層301は、チューブ300の大部分を占める層であって、上記3つの層のうち中央となる位置に形成された板状の層である。本実施形態の心材層301は、第1実施形態における心材層321と同一の材料により形成されている。つまり、マグネシウムの含有量が0.1重量%以上であり且つ0.3重量%未満のアルミニウム合金により形成されている。
[0074]
 ろう材層302は、心材層301のうち一方側(図6では上方側)の表面の全体を覆うように形成された層である。当該表面は、チューブ300の内側の面であり、インナーフィン320がろう接される面となっている。本実施形態のろう材層302は、第1実施形態におけるろう材層322と同一の材料に対し、更に亜鉛を含有させた材料より形成されている。亜鉛の犠牲防食作用により、ろう材層302の電位が心材層301の電位よりも高くなってしまうことが防止される。このような犠牲防食作用を有するろう材層302は、「ろう犠材」ともいうことができる。
[0075]
 ろう材層303は、心材層301のうち、上記のろう材層302が形成されている側とは反対側(図6では下方側)の表面の全体を覆うように形成された層である。当該表面は、チューブ300の外側の面であり、アウターフィン400がろう接される面となっている。本実施形態のろう材層303は、第1実施形態におけるろう材層323と同一の材料によって形成されている。
[0076]
 本実施形態では、チューブ300を上記のような3層構造の板状部材で形成することにより、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する構成となっている。つまり、本実施形態でも、チューブ300の内側におけるろう接を、フラックスを用いることなく行うことが可能となっている。
[0077]
 このように、ろう材層と心材層とを有する材料は、第1実施形態のようにインナーフィン320の材料として用いられてもよく、本実施形態のようにチューブ300の材料として用いられてもよい。また、インナーフィン320及びチューブ300の両方が、ろう材層と心材層とを有する材料によって形成された態様としてもよい。いずれの場合であっても、心材層は、マグネシウムの含有量が0.1重量%以上0.3重量%未満のアルミニウム合金により形成されていることが好ましい。
[0078]
 ところで、心材層301の電位をV1とし、ろう材層302の電位をV2とし、インナーフィン320の電位をV3とすると、チューブ300における腐食を防止するためには、V1>V2>V3の関係としておく必要が有る。しかしながら、心材層301にマグネシウムを含有させると、心材層301の電位V1は低下する傾向があるため、上記の関係が崩れてしまう可能性がある。
[0079]
 そこで、V1>V2の関係が保たれるように、ろう材層302における亜鉛の含有量が調整されることが好ましい。更に、V1>V2>V3の関係が保たれる様に、心材層301におけるマグネシウムの含有量、及びろう材層302における亜鉛の含有量が、それぞれ調整されることが好ましい。
[0080]
 本実施形態では、チューブ300のうちアウターフィン400と当接する方の面にろう材層303が形成されている。ただし、アウターフィン400の表面に予めろう材層が形成されている場合には、チューブ300にろう材層303が形成されないこととしてもよい。
[0081]
 以上に説明した例では、チューブ300とインナーフィン320とが互いに接合されているろう接部、とは異なるろう接部の全部が、フラックスを用いることによりろう接されている。このような態様に替えて、チューブ300とインナーフィン320とが互いに接合されているろう接部、とは異なるろう接部の一部又は全部が、フラックスを用いることなく接合されるような態様としてもよい。例えば、チューブ300とアウターフィン400との間のろう接、チューブ300とヘッダプレート120との間のろう接、チューブ300とヘッダプレート220との間のろう接についても、フラックスを用いることなく行われる態様としてもよい。この場合、熱交換器10のろう接を、フラックスを一切用いることなく行うことができるので、チューブ300の内側にフラックスが残留する可能性を更に小さくすることができる。
[0082]
 以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。

請求の範囲

[請求項1]
 熱交換器(10)であって、
 熱媒体の通る流路(FP)が内側に形成されたチューブ(300)と、
 前記チューブの内面にろう接された状態で、前記流路に配置されたインナーフィン(320)と、を備え、
 前記チューブと前記インナーフィンとのうち少なくとも一方は、
 板状の心材層(321,301)と、前記心材層の表面を覆うように形成されたろう材層(322,323,302,303)と、を有しており、
 前記心材層は、マグネシウムの含有量が0.1重量%以上0.3重量%未満のアルミニウム合金により形成されている熱交換器。
[請求項2]
 前記ろう材層におけるマグネシウムの含有量は、前記心材層におけるマグネシウムの含有量よりも少ない、請求項1に記載の熱交換器。
[請求項3]
 前記前記ろう材層は、ビスマスの含有量が0.1重量%以下のアルミニウム合金により形成されている、請求項1又は2に記載の熱交換器。
[請求項4]
 前記チューブと前記インナーフィンとが互いに接合されているろう接部、とは異なるろう接部のうちの少なくとも一部は、フラックスを用いることによりろう接されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器。
[請求項5]
 前記チューブが接続されたタンク(100,200)を更に備え、
 前記チューブのうち前記タンクの内側に挿通されている部分(310)の外形が、前記チューブのうちそれ以外の部分の外形よりも大きくなっている、請求項4に記載の熱交換器。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]