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1. (WO2019004275) ORGANOFLUORINE COMPOUND, LUBRICANT, AND METHOD FOR TREATING MAGNETIC RECORDING MEDIUM
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明 細 書

発明の名称 有機フッ素化合物、潤滑剤および磁気記録媒体の処理方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

先行技術文献

特許文献

0016  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

課題を解決するための手段

0031   0032  

発明の効果

0033  

発明を実施するための形態

0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086  

実施例

0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122  

産業上の利用可能性

0123   0124  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : 有機フッ素化合物、潤滑剤および磁気記録媒体の処理方法

技術分野

[0001]
 本発明は、有機フッ素化合物、潤滑剤および磁気記録媒体の処理方法に関する。

背景技術

[0002]
 パーフルオロポリエーテル化合物は、耐熱性、耐薬品性、耐酸化性に優れるほか、粘度指数が大きいため、低温から高温までの広い温度領域で流動性(粘度)の変化が少なく、良好な潤滑性を発揮する。また、パーフルオロポリエーテル化合物は、不燃性であることに加え、ゴム・プラスチックなどの高分子系素材への影響も殆ど無く、低い蒸気圧と少ない蒸発損失、低い表面張力、高い電気絶縁性といった特性も有し、潤滑剤として、極めて広い範囲にわたり、高いパフォーマンスを示すことが知られている。このため、パーフルオロポリエーテル化合物は、潤滑油としての真空ポンプ油や、磁気ディスク/テープなどの潤滑剤、熱媒体、非粘着剤、その他の用途で幅広く利用されている。
[0003]
 パーフルオロポリエーテル基を有する有機フッ素化合物を潤滑剤として使用する例として、磁気記録媒体として用いられるディスク状の基板が挙げられる。
[0004]
 磁気記録媒体は、一般に、基板上に記録層等を積層した後、記録層上にカーボン等の保護層を形成し、さらに保護層上に潤滑剤層を形成したものである。保護層は、記録層に記録された情報を保護するとともに、データを読み取る磁気ヘッドの摺動性を高めるものである。
[0005]
 しかしながら、記録層上に保護層を形成しただけでは、磁気記録媒体の耐久性は十分に得られない。
[0006]
 このため、一般に、保護層上にパーフルオロポリエーテル基を有する有機フッ素化合物を、潤滑剤として塗布して潤滑剤層を形成する。これによって、磁気ヘッドと保護層とが直接接触するのを抑制することができることに加え、磁気記録媒体上を摺動する磁気ヘッドの摩擦力を著しく低減させることができ、耐久性が向上する。
[0007]
 磁気記録媒体に使用される潤滑剤として、例えば、化学式
 HOCH CF O(CF CF O) (CF O) CF CH OH・・・(3)
(ただし、p、qは、それぞれ1以上の整数である。)
で表される有機フッ素化合物が知られている。上記有機フッ素化合物としては、例えば、フォンブリン(登録商標)Zdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)などが挙げられる。
[0008]
 特許文献1には、上記の潤滑剤を保護層上に塗布した磁気記録媒体が開示されている。
[0009]
 また、特許文献2には、化学式
 HOCH CH(OH)CH OCH CF O(CF CF O) (CF O) CF CH OCH CH(OH)CH OH・・・(4)
(ただし、m、nは整数であり、化学式(4)で表される化合物の平均分子量は500~5000である。)
で表される有機フッ素化合物フォンブリンZtetraol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)よりなる潤滑剤層を有する磁気記録媒体が開示されている。
[0010]
 さらに、特許文献3には、化学式(5)
[0011]
[化1]


(ただし、pおよびqは、それぞれ1以上の整数である。)
で表される有機フッ素化合物と溶媒とを含む潤滑剤溶液を保護層上に塗布した磁気記録媒体が開示されている。
[0012]
 これら化学式(3)~(5)の潤滑剤に使われている有機フッ素化合物は、いずれも直鎖パーフルオロポリエーテル基を含むが、分子中に芳香環を含んでいない。
[0013]
 また、特許文献4には、化学式(6)
[0014]
[化2]


(ただし、pおよびqは、それぞれ1以上の整数である。)
で表される有機フッ素化合物フォンブリンAM2001(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)よりなる潤滑剤層を有する磁気記録媒体が開示されている。
[0015]
 これらの潤滑剤に使われている有機フッ素化合物は、直鎖パーフルオロポリエーテル基の末端に、分子中に置換基を有するフェニル基を含むが、フェニル基を構成する隣接する炭素原子に結合している酸素原子がメチレン基を介して環を形成している。

先行技術文献

特許文献

[0016]
特許文献1 : 特開昭62-66417号公報
特許文献2 : 特開平9-282642号公報
特許文献3 : 特開2008-75000号公報
特許文献4 : 米国特許第5055359号明細書

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0017]
 パーフルオロポリエーテル基を含む有機フッ素化合物を、例えば、磁気記録媒体として用いられるディスク状の基板上で潤滑剤として使用するためには、保護層上に潤滑剤層を形成した上で、時間の経過に伴って、潤滑剤が散逸しないように、保護層上に潤滑剤を定着させる必要がある。
[0018]
 潤滑剤を保護層上に吸着させ、潤滑剤層を形成するために、一般に、保護層に対して、窒化処理が施されている。
[0019]
 特許文献1および2に記載されている有機フッ素化合物は、分子の末端にヒドロキシ基を有し、ヒドロキシ基が保護層に付与された窒素原子との間で水素結合を形成することが可能となるため、保護層上に吸着し、潤滑剤層が形成される。
[0020]
 一方、保護層に対して窒化処理を施さないことは、工程数が減少するため、生産コストの削減に有用であると考えられる。また、一般に、炭素原子と水素原子を主な構成要素とする保護層に、電気陰性度の大きい窒素原子が加わることによる極性の上昇を抑えることができる。このため、空気中の湿気などを原因とする腐食に対する耐性が向上するという利点があると考えられる。
[0021]
 しかしながら、窒化処理が施されていない保護層上に上述の潤滑剤を塗布した場合、保護層と潤滑剤の間に水素結合が形成されないため、潤滑剤は、高い粘度に基づいて、少量付着するものの、十分な厚さの潤滑剤層を形成することはできないという問題があった。
[0022]
 保護層は、炭素原子または炭素原子を含むダイヤモンドライクカーボン(DLC)で構成されている。DLC中の炭素原子の一部は、sp 混成軌道を有しており、グラファイト中の炭素原子同士の結合と同様の二重結合が含まれていることが知られている。
[0023]
 そこで、二重結合を利用して潤滑剤中の吸着部位とのπ-π相互作用により、窒化処理が施されていない保護層上に潤滑剤を吸着させることが考えられる。
[0024]
 特許文献3および4に記載されている有機フッ素化合物は、末端に、それぞれホスファゼン環基および1,3-ベンゾジオキソリル基という、単結合と二重結合を交互に含む環構造を含むため、一見すると、π-π相互作用により、窒化処理が施されていない保護層に吸着することが可能であると考えられる。
[0025]
 しかしながら、これらの環構造は、芳香環ではない環を含むため、環構造の平坦性が損なわれている。そのため、これらの潤滑剤は、窒化処理が施されていない保護層との間のπ-π相互作用が十分ではなく、十分な厚さの潤滑剤層を形成することは不可能であるという問題があった。
[0026]
 そのため、末端の環構造が芳香環のみで構成されており、ほぼ平坦と見なすことができる潤滑剤を用いれば、有効なπ-π相互作用により、窒化処理が施されていない保護層上に潤滑剤を吸着させることができると考えられる。
[0027]
 一方、磁気ディスク等の磁気記録媒体の保護層上に潤滑剤層を形成する場合、磁気ヘッドが飛ぶたびに保護層上の潤滑剤が幾らか取り除かれる。その結果、潤滑剤層が次第に薄くなり、最終的にはクラッシュにつながる危険がある。このような現象を抑制するためには、保護層に定着している潤滑剤の量が所定の割合よりも高い、すなわち、潤滑剤層のボンディドレシオが高い必要がある。
[0028]
 潤滑剤層のボンディドレシオは、潤滑剤層を形成した磁気ディスクを溶媒に浸漬し、保護層上に定着していない潤滑剤を洗い流した後に残存した潤滑剤の割合である。
[0029]
 このとき、末端の環構造が芳香環のみで構成されている潤滑剤が、窒化処理が施されていない保護層上に吸着する際に作用するπ-π相互作用だけでは、十分なボンディドレシオを得ることが困難であるという問題があった。
[0030]
 本発明の一態様は、上記のような事情を鑑み、窒化処理が施されていない保護層上に十分な厚さの潤滑剤層を形成することが可能であり、かつ、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることが可能な有機フッ素化合物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0031]
[1]一般式
 (R-π-E-CH -A-CH -E') -π'-G・・・(1B)
(ただし、nは2~5の整数であり、Aは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、πはアリーレン基または単結合であり、Rはアルケニル基またはアルキニル基であり、E及びE'は、それぞれ独立に、化学式
 -O-CH CH(OH)CH O-
で表される基、エーテル結合またはエステル結合であり、π'は、ベンゼンから水素原子がn+1個脱離した基であり、Gは、フラーレン骨格を含む有機基であり、n個の一般式
 R-π-E-CH -A-CH -E'-
で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、n個のπのうち、少なくとも1個はアリーレン基である。)
で表される有機フッ素化合物。
[2]前記Aが直鎖基である[1]に記載の有機フッ素化合物。
[3]複数の前記Rが同一である[1]または[2]に記載の有機フッ素化合物。
[4]複数の前記πが同一である[1]~[3]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[5]複数の前記Eが同一である[1]~[4]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[6]前記Aの炭素数が1~100である[1]~[5]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[7]前記Aが、一般式
 -(CF O-・・・(2)
(ただし、xは1~5の整数である。)
で表される基の少なくとも一つを有する[1]~[6]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[8]前記Aが、前記xが1または2である前記一般式(2)で表される基を1~50個含む[7]に記載の有機フッ素化合物。
[9]前記Aの平均式量が250~6000の範囲内である[1]~[8]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[10]前記Gのフラーレン骨格が、C 60骨格、C 70骨格、C 76骨格、C 78骨格、さらに高次のフラーレン骨格である[1]~[9]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[11]化学式
[0032]
[化3]


で表される化合物である[1]~[10]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[12][1]~[11]のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物を含有する潤滑剤。
[13][12]に記載の潤滑剤を磁気記録媒体に塗布することと、該磁気記録媒体に塗布された潤滑剤に紫外線を照射することを含む磁気記録媒体の処理方法。

発明の効果

[0033]
 本発明の一態様によれば、窒化処理が施されていない保護層上に、十分な厚さの潤滑剤層を形成することが可能であり、かつ、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることが可能な有機フッ素化合物を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0034]
 (有機フッ素化合物)
 本実施形態の有機フッ素化合物は、一般式
 (R-π-E-CH -A-CH -E') -π'-G・・・(1B)
(ただし、nは2~5の整数であり、Aは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、πはアリーレン基または単結合であり、Rはアルケニル基またはアルキニル基であり、E及びE'は、それぞれ独立に、化学式
 -O-CH CH(OH)CH O-
で表される基、エーテル結合またはエステル結合であり、π'は、ベンゼンから水素原子がn+1個脱離した基であり、Gは、フラーレン骨格を含む有機基であり、複数の一般式
 R-π-E-CH -A-CH -E'-
で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、n個のπのうち、少なくとも1個はアリーレン基である。)
で表される化合物である。
[0035]
 一般式(1B)で表される化合物は、合成のしやすさから、πがすべてアリーレン基であることが好ましい。また、一般式(1B)で表される化合物は、合成のしやすさから、nが3であることが好ましい。
[0036]
 なお、パーフルオロポリエーテル基は、複数のフッ化炭素基がエーテル結合で結合された基である。
[0037]
 以下、特に断りのない限り、複数のπがいずれもアリーレン基である有機フッ素化合物を用いて、本実施形態の有機フッ素化合物を説明する。
[0038]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、2価のパーフルオロポリエーテル基と、芳香環上に、アルケニル基またはアルキニル基が直接結合しているアリール基とが、一般式
 -E-CH
で表される連結基を介して、結合している構造を分子中に有する。
[0039]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、ほぼ平坦と見なすことができる芳香環を含むため、π-π相互作用に基づき、窒化処理が施されていない保護層上に吸着することができ、十分な厚さの潤滑剤層を形成することができる。さらに、芳香環上に、アルケニル基またはアルキニル基が直接結合しているため、紫外線を照射することによって、アルケニル基またはアルキニル基に含まれる不飽和結合と、保護層を構成する材料(例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC))とのsp 混成炭素原子間の強固な結合の形成が促進される。その結果、保護層上の潤滑剤層を十分に定着することができ、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることができる。芳香環も不飽和結合を含むため、同様のボンディドレシオを高める効果が存在するが、芳香環のみでは、ボンディドレシオを高める効果は不十分である。
[0040]
 Aは、直鎖基および分枝鎖基のいずれであってもよいが、直鎖基であることが好ましい。Aが直鎖基であることにより、潤滑性やフッ素系溶媒への溶解性が向上する。
[0041]
 Aの炭素数は、1~100であることが好ましく、5~40であることがより好ましい。Aの炭素数が1以上であると、有機フッ素化合物のフッ素系溶媒に対する溶解性が向上するため、有機フッ素化合物の塗布が容易となる。また、Aの炭素数が100以下であると、有機フッ素化合物の一般的な有機溶媒に対する溶解性が向上するため、有機フッ素化合物の有機反応による構造変換が容易となる。
[0042]
 Aは、一般式
 -(CF O-・・・(2)
(ただし、xは1~5の整数である。)
で表される基の少なくとも一つを有することが好ましい。これにより、有機フッ素化合物のフッ素系溶媒に対する溶解性が向上し、その結果、より均一に有機フッ素化合物を塗布することが可能になる。
[0043]
 また、Aは、xが1または2である一般式(2)で表される基を1~50個含むことがより好ましい。このような構造を含むパーフルオロポリエーテル基は、工業的に合成されており、容易に入手することができるため、産業上利用しやすい。
[0044]
 Aの平均式量は、250~6000の範囲内であることが好ましく、280~3000の範囲内であることがより好ましい。Aの平均式量が250以上であると、有機フッ素化合物のフッ素系溶媒に対する溶解性が向上するため、有機フッ素化合物の塗布が容易となる。また、Aの平均式量が6000以下であると、有機フッ素化合物の一般的な有機溶媒に対する溶解性が向上するため、有機フッ素化合物の有機反応による構造変換が容易となる。
[0045]
 Rは、炭素数2~4のアルケニル基または炭素数2~4のアルキニル基であることが好ましい。
[0046]
 Rの具体例としては、ビニル基、アリル基、3-ブテン-1-イル基、プロパルギル基などが挙げられ、その中でも、ビニル基、アリル基またはプロパルギル基が特に好ましい。
[0047]
 EおよびE'は、それぞれ独立に、化学式
 -O-CH CH(OH)CH O-
で表される基、エーテル結合またはエステル結合であるが、合成が容易であることから、エステル結合であることが好ましい。ここで、エステル結合の向きは、特に限定されないが、合成が容易であることから、一般式
 R-π-COO-CH
で表される基となる向きであることが好ましい。
[0048]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、複数のRが同一であることが好ましい。これにより、合成に要する工程数を削減することができる。
[0049]
 πとしては、特に限定されないが、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられ、その中でも、1,4-フェニレン基、1,2-ナフチレン基が特に好ましい。
[0050]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、複数のπが同一であることが好ましい。これにより、合成に要する工程数を削減することができる。
[0051]
 π'としては、特に限定されないが、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられ、その中でも、2,4,6-フェニレン基が特に好ましい。
[0052]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、複数のEが同一であることが好ましい。これにより、合成に要する工程数を削減することができる。
[0053]
 Gは、フラーレン骨格を含み、π'と結合することが可能であれば、特に限定されないが、フラーレン骨格上にピロリジン環が形成されている基などが挙げられる。
[0054]
 フラーレン骨格としては、例えば、C 60骨格、C 70骨格、C 76骨格、C 78骨格、さらに高次のフラーレン骨格などが挙げられる。その中でも、C 60骨格が好ましい。
[0055]
 C 60骨格は、他のフラーレン骨格よりも純度の高いものを工業的に容易に得ることができる。このため、本実施形態の有機フッ素化合物は、純度を高くすることができ、潤滑性や平滑性を良好にすることができる。
[0056]
 (有機フッ素化合物の合成方法)
 本実施形態の有機フッ素化合物は、例えば、下記の合成方法に従って、合成することができる。
[0057]
 (一般式(1B')で表される化合物)
 まず、一般式
 R-π-E-CH -A-CH -OH・・・(1B')
(ただし、Aは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、πはアリーレン基であり、Rはアルケニル基またはアルキニル基であり、Eは、化学式
 -O-CH CH(OH)CH O-
で表される基、エーテル結合またはエステル結合である。)
で表される化合物を合成する。
[0058]
 [Eがエーテル結合である場合]
 例えば、既存の末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、塩基によって脱プロトンすることで生成するアルコキシド種を、銅触媒の存在下で、ハロゲン化アリールとクロスカップリング反応させることによって、一般式(1B')で表される化合物を合成することができる。この反応は、溶媒を用いずに、適宜加熱攪拌しながら、実施することができる。
[0059]
 塩基としては、一般に知られているイオン性塩基を用いることができ、例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム、カリウムt-ブトキシドなどが挙げられる。
[0060]
 また、銅触媒としては、例えば、ヨウ化銅(I)と、2-シクロヘキサノンカルボン酸エチルとから生成する触媒種を用いることができる。
[0061]
 ハロゲン化アリールは、あらかじめアリール基を構成する芳香環上に、アルケニル基またはアルキニル基が直接結合していることが好ましい。
[0062]
 ハロゲン化アリールとしては、例えば、ヨウ化アリールなどが挙げられ、その中でも、4-アリルヨードベンゼンが特に好ましい。
[0063]
 [Eがエステル結合である場合]
 例えば、既存の末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、塩基の存在下で、酸塩化物(例えば、カルボン酸塩化物)とエステル化反応させることによって、一般式(1B')で表される化合物を合成することができる。この反応は、溶媒中で実施することができる。
[0064]
 あるいは、既存の末端に塩化カルボニル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、ヒドロキシ基を有する化合物と、同様にエステル化反応させてもよい。
[0065]
 溶媒としては、上記のパーフルオロポリエーテル化合物を溶解させることが可能であれば、特に限定されないが、ジクロロメタンなどの含塩素溶媒、AK-225(旭硝子社製)などの含フッ素溶媒などが挙げられる。
[0066]
 塩基としては、一般に知られている無機塩基および有機塩基を用いることができ、例えば、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどが挙げられる。
[0067]
 [Eが-O-CH CH(OH)CH -O-である場合]
 例えば、既存の末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、塩基の存在下で、アリール基を構成する芳香環上に、グリシジルオキシ基が直接結合している化合物と開環付加反応させることによって、一般式(1B')で表される化合物を合成することができる。この反応は、溶媒中で実施することができる。
[0068]
 溶媒としては、ヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル化合物とイオン性塩基を溶解させることが可能であれば、特に限定されないが、メタノール、t-ブチルアルコールなどのアルコール、N,N-ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。
[0069]
 塩基としては、一般に知られているイオン性塩基を用いることができ、例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム、カリウムt-ブトキシドなどが挙げられる。
[0070]
 (一般式(1B'')で表される化合物)
 次に、一般式(1B')で表される化合物をトリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf O)と反応させて、ヒドロキシ基をOTfに変換し、一般式
 R-π-E-CH -A-CH -OTf・・・(1B'')
で表される化合物を合成することができる。
[0071]
 (一般式(1B)で表される化合物)
 次に、一般式(1B'')で表される化合物を、塩基の存在下で、2,4,6-トリヒドロキシベンズアルデヒドと、N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒中でS 2反応させた後、N-メチルグリシンおよびC 60フラーレンと反応させることで、一般式(1B)で表される化合物を合成することができる。
[0072]
 [粗生成物]
 いずれの反応においても、反応混合物に水あるいは希塩酸を加え、必要に応じて、AK-225(旭硝子社製)などの含フッ素溶媒を抽出溶媒として加えて分液し、有機層を乾燥させた後で、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮することによって、粗生成物が得られる。
[0073]
 [精製]
 粗生成物は、そのまま潤滑剤として使用することが可能である。より高い純度が必要とされる場合には、例えば、粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや二酸化炭素超臨界流体抽出法により精製した後、潤滑剤として使用することができる。
[0074]
 二酸化炭素超臨界流体抽出法を用いる場合、例えば、粗生成物を圧力容器内に入れた後、圧力容器内の圧力及び温度を保ちながら、液化二酸化炭素を圧力容器内に流入することで、二酸化炭素を超臨界流体状態にし、目的の化合物を抽出することで精製する。
[0075]
 圧力容器内の温度は、31℃以上80℃以下であることが好ましい。圧力容器内の温度が31℃未満であると、液化二酸化炭素が超臨界状態にならず、80℃を超えると、超臨界二酸化炭素の抽出力が弱くなる。
[0076]
 また、圧力容器内の圧力は、7.38MPa以上30MPa以下であることが好ましい。圧力容器内の圧力が7.38MPa未満であると、液化二酸化炭素が超臨界状態にならず、30MPaを超えると、装置の耐圧性能が要求されるために、装置の価格が高くなり、その結果、製造コストが高くなる。
[0077]
 (潤滑剤)
 本実施形態の潤滑剤は、本実施形態の有機フッ素化合物を含有する。
[0078]
 本実施形態の潤滑剤は、本実施形態の有機フッ素化合物であっても良いし、本実施形態の有機フッ素化合物に加えて、他の有機フッ素化合物をさらに含んでいても良い。
[0079]
 他の有機フッ素化合物としては特に限定されないが、例えば、従来から潤滑剤として知られている有機フッ素化合物を使用することができる。
[0080]
 他の有機フッ素化合物の市販品としては、例えば、フォンブリン(登録商標)シリーズ(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)などが挙げられる。
[0081]
 潤滑剤中の本実施形態の有機フッ素化合物の含有量は、より良好な吸着性を発現するために、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
[0082]
 本実施形態の潤滑剤は、必要に応じて、溶媒に溶解または分散媒に分散させて、溶液または分散液とした後、磁気ディスク等の磁気記録媒体の表面に塗布して使用することができる。
[0083]
 潤滑剤(の溶液または分散液)の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディップ法などを用いることができる。
[0084]
 ディップ法を用いて磁気記録媒体の表面に潤滑剤(の溶液または分散液)を塗布する場合、例えば、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑剤(の溶液または分散液)中に磁気記録媒体を浸漬した後、浸漬槽から磁気記録媒体を所定の速度で引き上げる。
[0085]
 潤滑剤の溶液または分散液中の本実施形態の有機フッ素化合物の含有量は、0.005質量%以上であることが好ましい。
[0086]
 ここで、前述したように、本実施形態の潤滑剤(の溶液または分散液)を塗布した後、紫外線を照射することが好ましい。これにより、窒化処理が施されていない保護層上に、十分な厚さの潤滑剤層を形成することができ、かつ、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることができる。
実施例
[0087]
 以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
[0088]
 ( H-NMR)
 試料(約10mg~30mg)をCDCl /ヘキサフルオロベンゼン混合溶媒(約0.5mL)に溶解させ、直径5mmのNMR試料管に入れた後、フーリエ変換核磁気共鳴装置JNM-EX270(日本電子社製)を用いて、室温で、 H-NMRスペクトルを測定した。このとき、CDCl /ヘキサフルオロベンゼン混合溶媒に、基準物質として、テトラメチルシランを添加した。
[0089]
 (実施例1)
 本実施形態の有機フッ素化合物を下記合成例に従って合成した。
[0090]
 (合成例1)
 化合物1(C1)および化合物2(C2)の合成:[反応式(7)]
 数平均分子量(Mn)約1300の有機フッ素化合物フォンブリンZdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(3.9g、3mmol)、ヨウ化銅(I)(72mg、0.38mmol)、2-シクロヘキサノンカルボン酸エチル(0.12g、0.71mmol)、4-アリルヨードベンゼン(0.62g、2.6mmol)を混合した後、攪拌しながら、炭酸セシウム(3.7g、11mmol)を加え、100℃で18時間攪拌した。次に、反応混合物を希塩酸(20mL)とフッ素系溶媒AK-225(旭硝子社製)(20mL)で分液した後、水層をフッ素系溶媒AK-225(旭硝子社製)(20mL)で二度抽出した。次に、有機層を水洗した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過した。次に、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することで、粗生成物(4.5g)を橙褐色油状物質として得た。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(9:1~5:1))で精製することで、化合物2(C2)を無色油状物質(0.96g、0.68mmol、収率22%)として得た。
[0091]
[化4]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
 無色油状物質は、 H-NMRスペクトルのピークより、化合物2であることが確認された。
[0092]
 (化合物2)
  H-NMRスペクトルのピーク δ[ppm]:2.01(s、1H)、3.34(d、2H)、3.93(br、2H)、4.31(br、2H)、5.02-5.08(m、2H)、5.87-6.02(m、1H)、6.86(d、2H)、7.13(d、2H)。
[0093]
 (合成例2)
 化合物3(C3)の合成:[反応式(8)]
 合成例1で得た化合物2(0.32g、0.23mmol)、ピリジン(36mg、0.46mmol)を、ジクロロメタン(25mL)に加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(86mg、0.30mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下し、室温で15時間攪拌した。次に、反応混合物を純水(30mL)と飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)で一度ずつ洗浄した後、有機層を濾過した。次に、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することで、化合物3(C3)(0.35g、0.22mmol、収率96%)を無色油状物質として得た。
[0094]
[化5]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
 無色油状物質は、 H-NMRスペクトルのピークより、化合物3(C3)であることが確認された。
[0095]
  H-NMRスペクトルのピーク δ[ppm]:3.34(d、2H)、4.31(br、2H)、4.66(br、2H)、5.02-5.08(m、2H)、5.86-6.02(m、1H)、6.86(d、2H)、7.13(d、2H)。
[0096]
 (合成例3)
 化合物4(C4)の合成:[反応式(9)]
 合成例2で得た化合物3(0.30g、0.19mmol)、2,4,6-トリヒドロキシベンズアルデヒド(12mg、78μmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(15mL)に加えた後、炭酸セシウム(88mg、0.27mmol)を加え、70℃で16時間攪拌した。次に、反応混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、純水(20mL)とフッ素系溶媒AK-225(旭硝子社製)(20mL)を用いて分液した。次に、水層をフッ素系溶媒AK-225(旭硝子社製)(20mL)で二度抽出した。次に、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、濾過した。次に、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(0.35g)を得た。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(9:1))で精製することで、化合物4(C4)を無色油状物質(0.11g、25μmol、収率39%)として得た。
[0097]
[化6]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
 無色油状物質は、 H-NMRスペクトルのピークより、化合物4(C4)であることが確認された。
[0098]
  H-NMRスペクトルのピーク δ(ppm):3.34(d、6H)、4.28-4.46(m、12H)、5.00-5.08(m、6H)、5.88-6.01(m、3H)、6.82-6.91(m、6H)、7.17-7.22(m、6H)、10.34(s、1H)。
[0099]
 (合成例4)
 化合物5(C5)の合成:[反応式(10)]
 合成例4で得た化合物4(0.11g、25μmol)、N-メチルグリシン(15mg、0.17mmol)を、ヘキサフルオロテトラクロロブタン(6mL)に加えた後、C 60フラーレン(11mg、15μmol)のo-ジクロロベンゼン(12mL)溶液を速やかに加えた。次に、ジムロート冷却管を取り付けた後、180℃に設定した湯浴で加熱し、3時間攪拌しながら還流した。次に、反応混合物を室温まで冷却した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。次に、適量のテトラデカフルオロヘキサンに溶解させた後、濾過した。次に、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(0.19g)を得た。
[0100]
 次に、入口および出口を有するステンレス鋼製の圧力容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れた後、圧力容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界相クロマトグラフィーポンプPU2086-CO2(日本分光社製)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分で圧力容器に送液した。次に、圧力容器内の圧力を9~16MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上に3個以上のピロリジン環が形成されている副生成物を抽出して除去した。次に、圧力容器内の圧力を24MPaに上げ、化合物5(C5)を黒色油状物質39mg(収率27%)として抽出した。なお、この条件で、フラーレン骨格上に1個のピロリジン環が形成されている化合物は抽出されなかった。
[0101]
[化7]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
 黒色油状物質は、H-NMRスペクトルのピークより、化合物5であることが確認された。
[0102]
  H-NMRスペクトルのピーク δ(ppm):2.72(brs、6H)、3.31(brd、12H)、4.30(br、12H)、4.44(br、12H)、4.99-5.08(m、12H)、5.88-6.03(m、6H)、6.90(br、12H)、7.15(br、12H)。
[0103]
 (実施例2)
 Arガス雰囲気中で、カーボンをターゲットとして用いた高周波マグネトロンスパッタ法により、磁気ディスク用2.5インチガラスプランク上にDLC(Diamond-Like Carbon)からなる保護層を形成し、模擬ディスクを作製した。
[0104]
 ここで、模擬ディスクの保護層中の窒素原子の含有量は、走査型X線光電子分光分析装置(XPS/ESCA)PHI Quantera II TM(アルバック・ファイ社製)を用いて測定し、保護層中の窒素原子の含有量が1原子%であることが保証されている模擬ディスクのみを用いた。
[0105]
 次に、潤滑剤としての、化合物5をPF-5060(テトラデカフルオロヘキサン)(スリーエム社製)に溶解させ、0.01質量%の潤滑剤溶液を調製した。
[0106]
 次に、ディップ法を用いて、模擬ディスクの保護層上に潤滑剤溶液を塗布した。すなわち、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑剤溶液中に、模擬ディスクを浸漬した後、浸漬槽から模擬ディスクを引き上げることにより、潤滑剤溶液を模擬ディスクの保護層上に塗布した。次に、潤滑剤溶液の塗布された表面を乾燥させた後、低圧水銀灯EUV200US-A2(SEN特殊光源社製)を用いて、波長が185nmおよび254nmの紫外線を2秒間照射し、潤滑剤層を形成した。
[0107]
 (潤滑剤層の平均厚さ)
 フーリエ変換赤外分光装置Nicolet iS50(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、高感度反射法により、赤外吸収スペクトルのC-F結合の伸縮振動エネルギーに相当する吸収ピークの強度を測定し、潤滑剤層の平均厚さを求めた。このとき、潤滑剤層の厚さを4点測定し、その平均値を平均厚さとした。
[0108]
 (潤滑剤層のボンディドレシオ)
 潤滑剤層の平均厚さを測定した模擬ディスクを、バートレル(登録商標)XF(1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン)(三井デュポンフロロケミカル社製)を入れた浸漬槽中に10分間浸漬した後、模擬ディスクを引き上げることにより、模擬ディスクの保護層に定着していない潤滑剤を洗い流した。次に、模擬ディスクを乾燥させた後、上記と同様にして、潤滑剤層の平均厚さを求めた。
[0109]
 上記の処理前後の潤滑剤層の平均厚さの比をボンディドレシオとした。
[0110]
 (比較例1)
 化合物5に代えて、数平均分子量(Mn)約2000の有機フッ素化合物フォンブリンZtetraol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(化学式(4)参照)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、潤滑剤層の平均厚さおよびボンディドレシオを評価した。
[0111]
 (比較例2)
 化合物5に代えて、化学式
[0112]
[化8]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
で表される化合物13(C13)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、潤滑剤層の平均厚さおよびボンディドレシオを評価した。
[0113]
 なお、化合物13は、数平均分子量(Mn)約1300の有機フッ素化合物フォンブリンZdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(化学式(3)参照)および臭化アリルから、S 2反応を用いて合成した。
[0114]
 (比較例3)
 化合物5に代えて、化学式
[0115]
[化9]


(ただし、p及びqは平均重合度であり、R 中の(CF O)と(CF CF O)との順序は任意である。)
で表される化合物14(C14)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、潤滑剤層の平均厚さおよびボンディドレシオを評価した。
[0116]
 なお、化合物14は、数平均分子量(Mn)約1300の有機フッ素化合物フォンブリンZdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(化学式(3)参照)およびヨードベンゼンから、合成例1と同様の方法を用いて合成した。
[0117]
 表1に、潤滑剤層の平均厚さおよびボンディドレシオの評価結果を示す。
[0118]
[表1]


 表1から、実施例2で用いた化合物5は、窒化処理が施されていない保護層上に、十分な厚さの潤滑剤層を形成することが可能であり、かつ、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることが可能であることがわかる。このとき、アルケニル基またはアルキニル基を有する化合物に紫外線を照射することにより、潤滑剤層の定着を促進していると考えられる。
[0119]
 これに対して、比較例1および2で用いた化学式(4)で表される化合物および化合物13は、分子中に芳香環を有さないため、窒化処理が施されていない保護層上に、十分な厚さの潤滑剤層を形成することができない。
[0120]
 なお、比較例1と比較例2の潤滑剤層のボンディドレシオから、アリル基を有する化合物13に紫外線を照射することにより、潤滑剤層の定着を促進していることが示唆される。
[0121]
 比較例3で用いた化合物14は、アルケニル基またはアルキニル基がフェニル基に直接結合していないため、潤滑剤層のボンディドレシオが低い値となる。
[0122]
 この結果は、実施例2で用いた化合物5に含まれる、芳香環上にアルケニル基またはアルキニル基が直接結合しているアリール基を含む分子構造の、窒化処理が施されていない保護層への吸着、および、紫外線を照射することによる潤滑剤層の定着に対する効果を示すものである。

産業上の利用可能性

[0123]
 本実施形態の有機フッ素化合物は、窒化処理が施されていない保護層を有する基板に対し、ディップ法により十分な厚さの潤滑剤層を形成することが可能であり、かつ、潤滑剤層に紫外線を照射することによって、潤滑剤層の定着を促進し、その結果、潤滑剤層のボンディドレシオを高めることが可能である。
[0124]
 本国際出願は、2017年6月30日に出願された日本国特許出願2017-128567号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2017-128567号の全内容を本国際出願に援用する。

請求の範囲

[請求項1]
 一般式
 (R-π-E-CH -A-CH -E') -π'-G・・・(1B)
(ただし、nは2~5の整数であり、Aは2価のパーフルオロポリエーテル基であり、πはアリーレン基または単結合であり、Rはアルケニル基またはアルキニル基であり、E及びE'は、それぞれ独立に、化学式
 -OCH CH(OH)CH O-
で表される基、エーテル結合またはエステル結合であり、π'は、ベンゼンから水素原子がn+1個脱離した基であり、Gは、フラーレン骨格を含む有機基であり、n個の一般式
 R-π-E-CH -A-CH -E'-
で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、n個のπのうち、少なくとも1個はアリーレン基である。)
で表される有機フッ素化合物。
[請求項2]
 前記Aが直鎖基である請求項1に記載の有機フッ素化合物。
[請求項3]
 複数の前記Rが同一である請求項1または2に記載の有機フッ素化合物。
[請求項4]
 複数の前記πが同一である請求項1~3のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項5]
 複数の前記Eが同一である請求項1~4のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項6]
 前記Aの炭素数が1~100である請求項1~5のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項7]
 前記Aが、一般式
 -(CF O-・・・(2)
(ただし、xは1~5の整数である。)
で表される基の少なくとも一つを有する請求項1~6のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項8]
 前記Aが、前記xが1または2である前記一般式(2)で表される基を1~50個含む請求項7に記載の有機フッ素化合物。
[請求項9]
 前記Aの平均式量が250~6000の範囲内である請求項1~8のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項10]
 前記Gのフラーレン骨格が、C 60骨格、C 70骨格、C 76骨格、C 78骨格、さらに高次のフラーレン骨格である請求項1~9のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項11]
 化学式
[化10]


で表される化合物である請求項1~10のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物。
[請求項12]
 請求項1~11のいずれか一項に記載の有機フッ素化合物を含有する潤滑剤。
[請求項13]
 請求項12に記載の潤滑剤を磁気記録媒体に塗布することと、
 該磁気記録媒体に塗布された潤滑剤に紫外線を照射することを含む磁気記録媒体の処理方法。