Some content of this application is unavailable at the moment.
If this situation persist, please contact us atFeedback&Contact
1. (WO2019004195) KIT FOR CHROMATOGRAPHY, DEVELOPING LIQUID FOR CHROMATOGRAPHY, AND CHROMATOGRAPHY
Document

明 細 書

発明の名称 クロマトグラフィー用のキット、クロマトグラフィー用の展開液、及びクロマトグラフィー

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057  

実施例

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : クロマトグラフィー用のキット、クロマトグラフィー用の展開液、及びクロマトグラフィー

技術分野

[0001]
 本発明はクロマトグラフィー用のキット、クロマトグラフィー用の展開液、及びクロマトグラフィーに関する。

背景技術

[0002]
 8-Oxo-2’-deoxyguanosine(8オキソ2’デオキシグアノシン、以下8OHdGと略すことがある)は活性酸素による生体への影響を反映する物質として知られており、広く用いられている酸化ストレスマーカーの一つである。体内で生成される8OHdGの量を測定する事で、病態把握、病気予防などに繋がると考えられている。8OHdGは化学的に安定な物質で2次代謝などを受けずに尿中に排出される事から、尿中の8OHdGの量を測定する事で非侵襲的に酸化ストレスマーカーを計測することが可能である。
[0003]
 特開2010-156639号公報(特許文献1)では8OHdGに特異的に反応する抗体を用いて酸化ストレス状態を判定するシステムが開示されている。具体的には、8OHdGに対して特異的に反応する抗体に金コロイドを結合させた結合体が固定された検査キットに試料を添加し、8OHdGと結合しなかった結合体の量を色で判定することで、8OHdGの検出を行っている。しかし、特許文献1のシステムでは、試料を展開する溶液を使用していないため、結合体の量を判定する位置に結合体が到達しにくく、精度の良い判定ができない可能性がある。
[0004]
 特開2007-121271号公報(特許文献2)では前処理によって濃縮された8OHdGを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量する方法および装置が開示されている。特許文献1ではHPLCによる定量の前処理として、シリカゲルやエタノールを用いて8OHdGを濃縮した溶液を用いた分離・濃縮を行うことが開示されている。
[0005]
 ここで、特許文献2の手法では課題が生じることを本発明者らは見出した。特許文献2では、8OHdGの分離・濃縮の際にエタノールを用いているが、試料が尿である場合、8OHdGと尿酸の分離が十分にできず、8OHdGを精度よく検出することが難しいことがわかった。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2010-156639号公報
特許文献2 : 特開2007-121271号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、従来に比べて尿中の8OHdGを精度よく検出することができるキットを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明に係るクロマトグラフィー用のキットは、8オキソ2’デオキシグアノシンと夾雑物を含む試料が導入される導入部と、前記試料のうち、前記8オキソ2’デオキシグアノシンと前記夾雑物を分離するための展開液と、前記試料が前記展開液によって展開されて得られる溶液に含まれる前記8オキソ2’デオキシグアノシンの量または濃度を検出するための検出部と、を有するクロマトグラフィー用のキットであって、前記展開液による前記8オキソ2’デオキシグアノシンの展開速度が、前記展開液による前記夾雑物の展開速度よりも速いことを特徴とする。
[0009]
 別の本発明に係るクロマトグラフィー用のキットは、検出対象物を含む試料が導入される導入部と、前記試料のうち前記検出対象物を分離するための展開液と、前記試料が前記展開液によって展開されて得られる溶液に含まれる前記検出対象物の量又は濃度を検出するための検出部と、を有するクロマトグラフィー用のキットであって、前記展開液は、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールの少なくともいずれかと、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれか一方とを含むことを特徴とする。
[0010]
 本発明に係るクロマトグラフィー用の展開液はアルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方と、無機電解質と、を含む。
[0011]
 本発明に係るクロマトグラフィーは、8オキソ2’デオキシグアノシンを検出するクロマトグラフィーであって、前記8オキソ2’デオキシグアノシンと夾雑物を含む試料を導入する工程と、前記試料に展開液を展開することによって、前記試料から8OHdGを分離抽出する工程と、分離抽出された前記8オキソ2’デオキシグアノシンの量または濃度を検出する工程と、を有する。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー用のキットを説明するための図。
[図2] 本発明の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー用のキットを用いて8OHdGを検出する方法を説明するための図。
[図3] 本発明に実施形態に係る薄層クロマトグラフィー用のキットを用いて8OHdGを定量した結果を表すグラフ。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、本発明の実施形態について説明するが本発明はこれらに限られない。
[0014]
 <クロマトグラフィー用のキット>
 本実施形態に薄層クロマトグラフィー用の検出キットの一例について図1を用いて説明する。図1は板状の支持体上に担体の薄層を有する薄層クロマトグラフィーの例である。本実施形態に係るキットは支持体104上に試料を導入するための導入部102と、試料中の検出対象物と、それ以外の物質の少なくとも一部とを分離するための分離部103と、検出対象物の量または濃度を検出するための検出部106を有する。本実施形態では、分離部103の一部に導入部102と検出部106が設けられている。
[0015]
 105の展開液導入部から後述する展開液Lを導入し、導入部102に導入された試料101は展開液Lによって検出部106に向けて移動を開始する。図1は、保持部110に展開液が保持された例を示すが、それに限定されず、外部から展開液導入部105に展開液を導入しても良い。
[0016]
 分離部103を移動する試料の速さは試料中の各成分の物性によって変化し、展開液が検出部106に達する頃には、試料中の各成分は分離部103から検出部106にかけての領域の異なる場所に分布する。定量を行う検出対象物109に対して検出用照明107を照射し、信号受信部108によって検出対象物を定量的に検出する。本明細書において検出対象物の定量的な検出とは、厳密には量や濃度がわかることが望ましいが、例えばA(0~10%)B(10%~30%)C(30%~50%)D(50%以上)のように複数の範囲のいずれかに属するかがわかることも含む概念である。または、本実施形態に係るキットを用いて検出対象物の量や濃度に関する情報を取得することができる。
[0017]
 このように本実施形態にかかるキットは、試料を付与し、展開液Lで試料101を展開できれば良く、構造が簡単であり、設計自由度も高い。
[0018]
 本実施形態に係るキットについてより詳細に説明する。本実施形態における定量を行う検出対象物は8OHdGであり、定量を行う検出対象物を含む試料としては尿を想定している。なお、本実施形態に係るキットは、8OHdGと同じようなグアニン骨格をもつ、8-oxo-Guanosine、DeoxyGuanosine等でも同様の効果を得られると考えられる。本明細書では、同様の効果が得られると考えられるものも含めて8OHdGと記載することがある。
[0019]
 尿中には様々な成分が存在し、特に尿酸は8OHdGと構造が似ている上に、尿中の尿酸の存在量は、8OHdGの存在量の数十から数千倍である事が知られている。8OHdGを精度よく検出し定量するためには尿酸との分離が必要である。
[0020]
 導入部102に導入された尿は分離部103に進む。試料はこの段階で一度乾燥させた方が好ましい。分離部103の試料はこの段階では8OHdGや尿酸等、多数の成分を含む。なお、本実施形態において試料を乾燥する方法としては特に限定されないが、所定の時間放置して水分を自然に蒸発させる方法や、水分を吸収する材料を接触させる方法、加熱して水分を蒸発させる方法等が挙げられる。
[0021]
 105の展開液導入部から後述する展開液を導入し、展開液が導入部102を通過すると、試料の展開が開始される。展開液中の試料成分は固相である分離部103と吸脱着を繰り返し、検出部に向けて展開される。この際、後述する展開液を用いることで、夾雑物としての尿酸は固相である分離部103に強く吸着し、展開液によって展開されにくい。一方、8OHdGは展開液と共に展開される。すなわち、展開液に対する8OHdGの展開速度を、尿酸やクレアチニンといった夾雑物の展開速度よりも速くすることができる。その他の夾雑物に関しては8OHdGとの構造の差から、8OHdGとは異なる場所に展開される。
[0022]
 このようにして、導入部102に導入された試料は分離部103上で成分ごとに異なる場所に展開され、分離される。
[0023]
 次に、本実施形態にかかるキットが、試料中の検出対象物を定量的に検出する原理について、一例を挙げて説明する。本例では、分離部103が担体を含み構成され、その担体が、オクタデシル基が結合したシリカゲルである場合について説明する。
[0024]
 分離部103上で分離された8OHdGは無色である為、基本的に目視では確認できない。分離部103を構成するシリカゲルに予め蛍光物質を混合しておくと、紫外光(UV光)によって分離部103が蛍光する。8OHdGを含む多くの有機化合物はUV光を吸収する為、8OHdGが存在する領域は蛍光の強度が弱くなる。つまり、8OHdG濃度が高い領域ほど、UV光による蛍光の強度は弱くなるため、検出される蛍光強度によって8OHdG濃度を測定する事が出来る。
[0025]
 次に、本実施形態に係る検査キットを構成する各部位、及びそれらを構成する各部材の材料等の具体例について説明する。
[0026]
 (試料)
 検出対象物を含有する試料としては尿、血液、汗、涙およびこれらをもとにする、液体状の試料が挙げられる。また、含有する水の量を増減させた希釈、濃縮液が挙げられる。8OHdGの試料としては尿が使われる事が多い。尿中8OHdG量は酸化ストレスのマーカーとして有用である事が知られている。尿中には8OHdGの他、尿酸、クレアチニン、尿素、各種塩等が含まれている。
[0027]
 (支持体)
 支持体104の材質は、ガラス、プラスチック、アルミ等が用いられ、試料の種類、展開液の種類等により適宜選択できる。支持体104の寸法や形状については、取り扱いの簡便さからは試料が移動する方向の長さ3cm~15cm、幅1cm~5cmの方形が好ましい。すなわち、支持体は、使いやすさの観点から、手の平サイズのスティック形状であることが好ましい。また、支持体104は円筒状であっても構わない。円筒状の支持体の場合、後述する分離部を内部に充填させる事ができ分離部の堅牢性が向上する。但し、後述する検出部を支持体内に配置したい場合は円筒状の支持体の材質としてはUV光を吸収しないものが好ましい。円筒状の内径は0.5mm~10mmが好ましく、1mm~3mmがより好ましい。
[0028]
 (導入部)
 導入部102は試料101が導入される部位である。試料101を導入部102上に導入する管状のものが付随していても良いし、スポイトのようなもので試料101を分離部103上に滴下することで試料を導入しても良い。
[0029]
 導入部の大きさは小さい方が好ましい。試料が小さいスポットにまとまっていると、分離能が向上する。ここで言う分離能とは、各成分の分離精度を意味しており、分離能が高い場合は分離後の成分に他成分が混ざらない。
[0030]
 導入部の形状は円形であっても矩形であってもよい。円形の場合は直径5mm以下が好ましく、直径3mm以下がより好ましい。また矩形が正方形でない場合、長手方向は展開液が流れる方向に対して垂直方向に5mm以上の長さであることが好ましく、10mm以上の長さがであることより好ましい。短手方向の幅は3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。導入部が矩形である場合、展開液の進行方向において、試料が添加される領域の幅を狭くしやすいため、試料中の検出対象物と夾雑物との展開速度の差が見やすくなる。
[0031]
 導入部で導入した試料は、その場で乾燥させる事が好ましい。試料中の水分を除く事で展開液による展開の再現性が向上し、試料も濃縮される為検出感度も向上する。試料導入時に別途、濃縮する工程を行っても良い。
[0032]
 (分離部)
 分離部103はクロマトグラフィーに用いられる担体(固定相)を含み構成されている。担体は、例えば、数十から数百ミクロン程度の粒子状シリカゲルまたはセルロースで構成されている。また、担体がギプス剤や有機高分子等によって結着していても良い。
[0033]
 シリカゲルは表面に有機物を修飾していても良く、例えばオクタデシル基が結合したシリカゲルを用いても良い。未修飾のシリカゲルは表面が強い親水性であるが、オクタデシル基を修飾する事で疎水性表面を得る事が出来る。疎水性表面のシリカゲルはアルコール中の尿酸を吸着し易く、8OHdGとの分離能を向上させることが出来る。なお、担体は、互いに疎水性が異なる複数のシリカゲルを含み構成されていてもよい。
[0034]
 分離部103には蛍光あるいは燐光を発する物質、または発色物質が含まれていても良い。蛍光物質(蛍光剤)が含まれているとUV光で分離部103上の有機物の一部を視認する事が出来る。8OHdGはその構造中に炭素の環状構造を有しUV光を吸収する。その為、蛍光物質を含む分離部上ではUV光で黒い影として視認できる。
[0035]
 分離部103に8OHdGと反応し蛍光を発する成分が含まれていても良い。また、8OHdGと反応し呈色する成分でも良い。これらの成分によって検出部106で検出する事が出来るようになる。
[0036]
 (検出部)
 検出部106は8OHdGの量または濃度を測定する場所である。検出部106では8OHdG濃度を可視化する必要があり、可視化するための手段として以下の例が挙げられる。
[0037]
 (可視化手段1)
 分離部103にUV光を吸収して蛍光を発する蛍光物質を含有させ、UV光を照射する。8OHdG濃度が高い程、黒い影として可視化される。この場合、検出用照明107はUV光源になる。
[0038]
 (可視化手段2)
 展開後、8OHdGと反応し呈色する試薬を分離部103に散布する。散布する試薬によって発色の様子は変化するが、基本的に8OHdG濃度に従った発色が起こる。この場合、検出用照明107は無くても構わない。
[0039]
 (可視化手段3)
 展開後、8OHdGと反応し蛍光する試薬を分離部103に散布する。UV光によって8OHdG濃度に従った強度の蛍光が得られる。この場合、検出用照明107はUV光源になる。
[0040]
 (信号受信部)
 8OHdGの量の計測のための信号受信部108の例として以下の手段がある。
[0041]
 (計測手段1)
 CCDやCMOSセンサーを有するデジタルカメラ等により8OHdG濃度の分布を画像として解析する。
[0042]
 (計測手段2)
 フォトダイオード等で光の反射量、蛍光量を計測する。
[0043]
 (計測手段3)
 目視にて8OHdG濃度を判断する。ここでは可視化手段1と計測手段1を用いた場合の例を具体的に説明する。
[0044]
 (検出部での8OHdG定量)
 検出部上部に254nmのUV光源を用意し、UV光を照射して8OHdGの影をデジタルカメラを用いて撮影する。
[0045]
 UV光を照射して8OHdGの影を撮影すると、8OHdG量が多い程暗い影として記録される。図3は撮影した画像の例であり、201は導入部、202は分離部、203は検出部である。205には予め既知の濃度の8OHdG水溶液(例えば1mg/mlを2μl)を滴下、乾燥させてある。203には201にサンプルを導入し、展開した後のサンプル中の8OHdGの影が写っている。204は8OHdGを含まない領域で何の影も写っていない。まず204の領域の各画素のR、G、B値其々を平均化し、平均R、平均G、平均Bの値を得る。次に、前記画像全体の各画素のRGB値から其々平均R、平均G、平均Bの値を減算し差分を得る。この段階で前記画像は8OHdGを含まない領域では画素のR、G、Bの値がほぼ0となり、8OHdGを含む領域ではマイナスの値を取る。さらに203の領域の画素のRGB値を積算し、RGBの平均値((R^2+G^2+B^2)^(1/2))を算出する(以下、このRGB平均値をサンプル輝度と表記する)。同様に205の領域の画素のRGB平均値を算出する(以下、このRGB平均値をリファレンス輝度と表記する)。サンプル輝度値をリファレンス輝度値で除算し、205に付与した8OHdG量を乗算すればサンプル中の8OHdGの濃度に関する情報が得られる。
[0046]
 (保持部、展開液導入部)
 本実施形態におけるキットは、例えば保持部を押すなどして圧力をかけると、保持部に保持された展開液が展開液導入部に流入して、導入部へと流れていく構成とすることができる。
[0047]
 <展開液>
 本実施形態に係る展開液はクロマトグフィーにおける移動相であり、試料中の検出対象物を展開させる役割を担う。本実施形態に係る展開液は、その展開液による8OHdGの展開速度が、夾雑物の展開速度よりも速くなるようなものを選ぶ。
[0048]
 例えば、展開液に対する8OHdGの溶解度が、夾雑物の溶解度よりも高くなるように展開液を選べば、上記のような展開速度の関係を実現することができる。そのような展開液として例えばアルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方と、無機電解質を含む溶液が挙げられる。
[0049]
 (展開液の主成分)
 本実施形態において、展開液の主成分はアルコール及びエーテルである。アルコールの例はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールのうち少なくともいずれか一種が挙げられる。エーテルの例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルのうち少なくともいずれか一種である。
[0050]
 これらのアルコールは尿中の8OHdG以外の物質(以下、夾雑物)、特に尿酸の溶解度が低い。一方8OHdGは溶解させる為、分離に最適である。
[0051]
 (無機電解質)
 これまで、展開液中に無機電解質を含有させても、多くの無機電解質は固相中のシリカゲルに吸着してしまい、展開結果に影響を及ぼさないと考えられていた。その為、一般的には薄層クロマトグラフィーの展開液に無機電解質は使用されてこなかった。
[0052]
 ところが、本発明者らが検討したところ無機電解質は尿中の夾雑物、特にクロマトグラフィーにおける尿酸の展開を抑える効果がある事が分かった。詳細なメカニズムは不明であるが、展開液の主成分中に僅かに残存する水分を無機電解質が保持したまま固相中のシリカゲルに吸着し、尿酸に水分が関与する事を抑えていると考えられる。また、尿酸が無機電解質によって電離し、固相中のシリカゲルに吸着し易い形態になっているとも考えられる。この効果によって、8OHdGと尿酸を分離しやすく出来る。無機電解質は水分を保持し易い潮解性である事が好ましい。なお、潮解性であるとはその物質を空気中においたときに、空気中の水分を取り込んで水溶液になるものである。
[0053]
 無機電解質として例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムが挙げられる。無機電解質の濃度は0.09mol/l以上である事が好ましい。
[0054]
 (水分)
 展開液が水分を含有すると尿酸が溶解するようになる為、分離能が低下する。そのため、展開液の主成分中の水分量は展開液重量に対して1.5%以下が好ましい。より好ましくは1%以下で、0.5%以下が更に好ましい。また、水のモル濃度が、無機電解質のモル濃度の3.2倍以下であることが好ましい。この濃度以下であれば水分を含有していても8OHdGと尿酸を分離する事が出来る。
[0055]
 (クロマトグラフィー)
 本実施形態に係る、8オキソ2’デオキシグアノシンを検出する薄層クロマトグラフィーは、以下の各工程を含む。
(1)8オキソ2’デオキシグアノシンと夾雑物を含む試料を導入する工程。
(2)試料に展開液を展開することによって、試料から8OHdGを分離抽出する工程。(3)分離抽出された8オキソ2’デオキシグアノシンの量または濃度を検出する工程。
[0056]
 また、支持体が板状の薄層クロマトグラフィーであっても、支持体が円筒状のカラムクロマトグラフィーであっても良い。
[0057]
 なお、展開液を展開する前に、試料に含まれる水分を除去する工程を含んでいても良い。水分を除去することで、前述のように、8OHdGと尿酸を分離しやすくなる。また、試料を濃縮する工程をさらに有していても良い。なお、試料が尿である場合、夾雑物は、クレアチニン及び尿酸の少なくともいずれか一方を含む。
実施例
[0058]
 (サンプルの調製)
 下記表1に記載の含有量となるように各材料を混合し、1N水酸化ナトリウム溶液を含有させて1mlに調整した。各サンプルは使用直前に1N硫酸溶液を等量入れて中和した。
[0059]
[表1]


[0060]
 (展開液の調製)
 無水エタノールに水および水酸化カリウムを含有させて展開液を調製した。無水エタノールはモレキュラーシーブ3Aを含有させ撹拌し、24時間静置して充分に含有水分を除去したものを使用した。水および水酸化カリウムの含有量は下記表2の通りである。何れも単位はmol/lである。
[0061]
[表2]


[0062]
 (実施例1)
 分離部として2cm×5cmに切断したシリカゲルプレート(PLCシリカゲルRP-18F254 メルク社製)を用いた。このシリカゲルプレートは支持体がガラスで分離部のシリカゲル層にはUVを吸収する蛍光物質(蛍光剤)が含まれている。シリカゲルプレートの短辺の一方を底辺とし、底辺から10mmの位置を導入部とし、ガラス管のスポイトにてサンプル1を2μl付与した。サンプルは60℃のホットプレート上で乾燥させた。TLC用展開層(アズワン社製)の底部に2mm程度の深さとなるように展開液1を入れ、展開層に蓋をして10分静置した。その後、展開層中にシリカゲルプレートの底辺が下になるように入れ、展開液が導入部から20mm上に上がるまで静置した。シリカゲルプレートを取り出し、底辺と対になるもう一つの短辺から5mmの所にガラス管のスポイトにてサンプル1を2μl付与した(リファレンス)。サンプル1展開液が上がった部分から底辺に向かって10mmの範囲を検出部とし、254nmのUV光源(アズワン社製 ハンディUVランプ)を照射して、デジタルカメラで撮影した。撮影した画像を上記検出部での8OHdG定量の方法に従い数値化した。
[0063]
 (実施例2)
 展開液2を用いること以外は実施例1と同様の実験を行った。
[0064]
 (実施例3)
 展開液3を用いること以外は実施例1と同様の実験を行った。
[0065]
 サンプル2から7についてもサンプル1と同様に8OHdG量を定量した。リファレンスは全てサンプル1とした。図3横軸にサンプル調製時に含有させた8OHdG量を、縦軸に定量した8OHdG量をとり、サンプル1から7までをプロットした。調製時に含有させた8OHdGとほぼ同等の量が定量できており、本手法により簡易に8OHdGを定量できた。
[0066]
 (実施例4)
 展開液4を用いること以外は実施例1と同様の実験を行った。
[0067]
 (実施例5)
 展開液5を用いること以外は実施例1と同様の実験を行った。
[0068]
 (比較例1)
 展開液6を用いること以外は実施例1と同様の実験を行った。
[0069]
 (評価)
 各サンプルの8OHdG検出量と、サンプル調製時に仕込んだ8OHdG量が全てのサンプルで10%以内の差であった場合はA(好ましいレベル)、10%を超える差のサンプルが多数あった場合はC(許容できないレベル)、それ以外をBとした。評価結果を表3に示す。
[0070]
 展開液6のように水酸化カリウムが含まれない場合、8OHdGを精度よく検出できないことがわかった。また、展開液中の水酸化カリウムを適切な範囲とすることで、8OHdGの定量的な検出を精度よくできた。
[0071]
[表3]


[0072]
 本発明に係るクロマトグラフィー用のキットによれば、従来に比べて尿中の8OHdGを精度よく検出することができる。
[0073]
 本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。
[0074]
 本願は、2017年6月30日提出の日本国特許出願特願2017-129352を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てをここに援用する。

請求の範囲

[請求項1]
 8オキソ2’デオキシグアノシンと夾雑物を含む試料が導入される導入部と、
 前記試料のうち、前記8オキソ2’デオキシグアノシンと前記夾雑物を展開するための展開液と、
 前記試料が前記展開液によって展開されて得られる溶液に含まれる前記8オキソ2’デオキシグアノシンの量または濃度を検出するための検出部と、を有するクロマトグラフィー用のキットであって、
 前記展開液による前記8オキソ2’デオキシグアノシンの展開速度が、前記展開液による前記夾雑物の展開速度よりも速いことを特徴とするキット。
[請求項2]
 前記展開液に対する前記8オキソ2’デオキシグアノシンの溶解度が、前記展開液に対する前記夾雑物の溶解度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のキット。
[請求項3]
 前記夾雑物に尿酸及びクレアチニンの少なくとも何れか一方が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のキット。
[請求項4]
 前記展開液が、アルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方と、無機電解質と、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキット。
[請求項5]
 前記展開液が、潮解性の無機電解質を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のキット。
[請求項6]
 前記展開液が、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキット。
[請求項7]
 前記展開液が、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のキット。
[請求項8]
 検出対象物を含む試料が導入される導入部と、
 前記試料のうち前記検出対象物を展開するための展開液と、
 前記試料が前記展開液によって展開されて得られる溶液に含まれる前記検出対象物の量又は濃度を検出するための検出部と、を有するクロマトグラフィー用のキットであって、
 前記展開液は、アルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方と、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれか一方とを含むことを特徴とするキット。
[請求項9]
 前記アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールのうち少なくともいずれか一種を含み、前記エーテルが、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルのうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする請求項8に記載のキット。
[請求項10]
 前記検出対象物が8オキソ2’デオキシグアノシンであることを特徴とする請求項9に記載のキット。
[請求項11]
 前記展開液を保持する保持部を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のキット。
[請求項12]
 前記導入部と前記検出部との間に前記夾雑物を吸着させるための担体が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のキット。
[請求項13]
 前記導入部と前記検出部との間に担体が設けられていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載のキット。
[請求項14]
 前記担体は、シリカゲル及びセルロースの少なくともいずれか一方を含み構成されることを特徴とする請求項12または13に記載のキット。
[請求項15]
 前記担体は、オクタデシル基が結合したシリカを含み構成されることを特徴とする請求項12または13に記載のキット。
[請求項16]
 前記担体は、互いに疎水性が異なる複数のシリカゲルを含み構成されていることを特徴とする請求項12または13に記載のキット。
[請求項17]
 前記検出部には、紫外光を吸収する蛍光物質が設けられていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のキット。
[請求項18]
 前記検出部には、前記8オキソ2’デオキシグアノシンと反応して蛍光あるいは燐光を発する物質、または発色物質が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のキット。
[請求項19]
 前記検出部には、前記検出対象物と反応して蛍光あるいは燐光を発する物質、または発色物質が設けられていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載のキット。
[請求項20]
 アルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方と、無機電解質と、を含むクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項21]
 前記無機電解質が潮解性である事を特徴とする請求項20に記載のクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項22]
 前記アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールの少なくともいずれかである事を特徴とする請求項20または21に記載のクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項23]
 前記無機電解質が水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項24]
 前記展開液に含まれる水のモル濃度が、前記無機電解質のモル濃度の3.2倍以下であることを特徴とする請求項20乃至23のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項25]
 前記展開液に含まれる前記無機電解質の濃度が0.09mol/l以上であることを特徴とする請求項20乃至24のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー用の展開液。
[請求項26]
 8オキソ2’デオキシグアノシンを検出するクロマトグラフィーであって、前記8オキソ2’デオキシグアノシンと夾雑物を含む試料を導入する工程と、前記試料に展開液を展開することによって、前記試料から8OHdGを分離抽出する工程と、分離抽出された前記8オキソ2’デオキシグアノシンの量または濃度を検出する工程と、を有することを特徴とするクロマトグラフィー。
[請求項27]
 前記夾雑物がクレアチニン及び尿酸の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項26に記載のクロマトグラフィー。
[請求項28]
 前記試料を濃縮する工程をさらに有することを特徴とする請求項26または27に記載のクロマトグラフィー。
[請求項29]
 検出対象物を含む試料が導入される導入部と、
 前記試料のうち前記検出対象物を展開するための展開液と、
 前記試料が前記展開液によって展開されて得られる溶液に含まれる前記検出対象物の量又は濃度を検出するための検出部と、を有するクロマトグラフィー用のキットであって、
 前記展開液は、アルコール及びエーテルの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とするキット。
[請求項30]
 前記アルコールがイソプロパノールであることを特徴とする請求項29に記載のキット。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]