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1. (WO2019003981) THERMOPLASTIC RESIN COMPOSITION, MOLDED RESIN ARTICLE THEREOF, AND COATED ARTICLE
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明 細 書

発明の名称 熱可塑性樹脂組成物並びにその樹脂成形品及び塗装加工品

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005  

発明の効果

0006  

発明を実施するための形態

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017  

実施例

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036  

産業上の利用可能性

0037  

請求の範囲

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 熱可塑性樹脂組成物並びにその樹脂成形品及び塗装加工品

技術分野

[0001]
 本発明は、熱可塑性樹脂組成物並びにその樹脂成形品及び塗装加工品に関する。
 本願は、2017年6月26日に、日本に出願された特願2017-124632号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 ABS系樹脂からなる成形品は、耐衝撃性、機械強度、及び耐薬性が優れていることから、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電子・電気機器、家庭電化機器、自動車、又は建築等の幅広い分野に使用されている。
 また、ABS系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂を配合し、耐衝撃性、及び耐熱性を付与する手法も従来から広く行われている。これらABS系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂からなる組成物(以下『PC/ABS系樹脂』ともいう。)は、ABS系樹脂単独に比較し、耐衝撃性、及び耐熱性が向上する。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂単独に比較すると、流動性(成形加工性)、及び二次加工性に優れ、ABS樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂からなる樹脂組成物は、相互に不足している物性を補うことを目的に広く使用されている。
 例えば、近年、自動車分野ではPC/ABS系樹脂の優れた耐衝撃性、及び耐熱性と二次加工性(塗装性)に着目して、車輌内装部品(フロアシフト、及びスイッチパネル等々)、並びに車輌外装部品(スポイラー、及びアンテナカバー等々)への使用展開が図られている。
 しかし、二次加工性(塗装性)は樹脂組成物の特性や成形条件、塗料、塗装方法又は塗装環境等の因子による影響を受け易く、塗装不良が発生する可能性がある。特に塗装性は成形条件の影響を受けやすい。成形条件が悪い場合には、塗装面に微細な凹凸が発生して光沢ムラとなる吸い込み現象と呼ばれる不良現象が発生し、最終製品の商品価値を著しく損なわせることがある。
 この様な状況において、吸い込み現象の発生を抑制させたグラフト共重合体含有樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
 しかしながら、高速成形条件で製造を行った場合やアタック性の強い塗料を用いた場合には吸い込み現象が生じやすく、特許文献1に記載の樹脂組成物では吸い込み現象を十分に抑制できない場合があった。一方で、製品の多品種少量化等による生産体制の効率化のため、成形品の成形サイクルを短縮し高速成形条件で生産を行うことや生産性の観点から、アタック性が強い塗料を使用することが求められている。
 したがって、これらの条件においても吸い込み現象を十分抑制することができる樹脂組成物が求められている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2004-143287号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 本発明の目的は、塗装工程における吸い込み現象の発生を抑制することができ、耐衝撃性、耐熱性及び成形加工時の流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品及び塗装加工品を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0005]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成の樹脂組成物を用いることにより、樹脂成形品の塗装工程における吸い込み現象の発生を抑制することができ、耐衝撃性、耐熱性及び成形加工時の流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができることを見出し、以下の発明を完成させた。
 すなわち、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A):35~75質量部と、
 ゴム質重合体の存在下で芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物を共重合したゴム含有グラフト共重合体(B):15~35質量部と、
 硬質共重合体(C-I)及び硬質共重合体(C-II)を含有する硬質共重合体混合物(C):10~50質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
 硬質共重合体混合物(C)は、混合物中の硬質共重合体(C-II)の含有量が20%~80質量%であり、
 硬質共重合体(C-I)は、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位及びシアン化ビニル化合物由来の単量体単位を含む重合体であり、硬質共重合体(C-I)の総質量の20質量%以上かつ35質量%未満がシアン化ビニル化合物由来の単量体単位である硬質共重合体であり、
 硬質共重合体(C-II)は、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位及びシアン化ビニル化合物由来の単量体単位を含む重合体であり、硬質共重合体(C-II)の総質量の35~50質量%がシアン化ビニル化合物由来の単量体単位である硬質共重合体であり、
 熱可塑性樹脂組成物は、アセトン可溶成分を含み、該アセトン可溶成分の還元粘度(ηsp/c)が0.3~0.8dl/gかつ、
 該アセトン可溶成分のシアン化ビニル化合物成分含有率が25~40%である。
 ここで、ゴム含有グラフト共重合体(B)中のゴム質重合体由来成分の含有量が35~70質量%であることが望ましい。
 本実施形態の樹脂成形品、塗装加工品は上記熱可塑性樹脂組成物を用いて成形したものである。

発明の効果

[0006]
 本実施形態によれば、塗装工程における吸い込み現象の発生を抑制することができ、耐衝撃性、耐熱性及び成形加工時の流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品及び塗装加工品を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0007]
 以下、本実施形態を詳細に説明する。
 本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)及び硬質共重合体混合物(C)を含有するものである。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、2価フェノールより誘導されるものであって、粘度平均分子量(Mv)が10,000~100,000であることが好ましく、さらに好ましくは、15,000~30,000の範囲である。
 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)がこの範囲内であると、得られる成形品の耐衝撃性、耐熱性、及び成形性がより向上する。
 ここで、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレンを溶媒とした溶液で測定し、下記Schnellの粘度式を用いて算出される。
  [η]=1.23×10 -4Mv 0.83
(式中、ηは固有粘度を示し、Mvは粘度平均分子量を示す)
 このような芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法で反応させて製造される。ここで使用する2価フェノールとして、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を対象としてもよい。また、その一部又は全部を他の2価フェノールで置き換えてもよい。他の2価フェノールとしては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、又はビス(4-ヒドロキシルフェニル)スルフォン等が例示される。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル又はハロホルメート等が例示される。これらのカーボネート前駆体の具体例としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボーネート、2価フェノールのジハロホルメート又はこれらの混合物が挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に際しては、適当な分子量調整剤、分岐剤、又は反応を促進するための触媒等も使用できる。
 本実施形態では、このようにして製造される芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよく、例えば粘度平均分子量が互いに異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して上記の好適な粘度平均分子量に調整して用いることもできる。
 本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して35~75質量部であることが好ましく、より好ましくは45~65質量部、更に好ましくは50~60質量部である。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の含有量がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、耐熱性、及び成形性がより向上する。なお、耐吸い込み性とは吸い込み現象の発生を抑制される性質のことをいう。
[0008]
 ここで、吸い込み現象とは、塗装面に凹凸が発生して光沢ムラとなる現象である。吸い込み現象の発生、及び耐吸い込み性については、塗装面の凹凸や光沢の強弱を観察するなどの、従来知られた手段で確認することができる。本実施形態では、吸い込み現象の発生の有無については、目視によって塗装面の凹凸を確認することによって判定している。
[0009]
 耐衝撃性は、衝撃に対して破損や不可逆的な変形等を起こさない性質である。本実施形態では、目安としてISO 179に準拠したシャルピー衝撃強度により測定した値を指す。また、特にシャルピー衝撃強度が30KJ/m 以上であることが好ましく、40KJ/m 以上であることがより好ましい。
[0010]
 耐熱性は、熱に対して破損や不可逆的な変形等を起こさない性質である。本実施形態では、目安としてISO 75に準拠した値を指す。また、特にISO 75に準拠して測定荷重を1.8MPaで測定した際に、耐熱温度が88℃以上であることが好ましく、92℃以上であることがより好ましい。
[0011]
 成型性は、成形が行いやすい性質を指す。成形が行いやすいとは、例えば、硬化前において流動性が一定以上であること等を指す。本実施形態では、成形性の目安として流動性を用い、流動性としてはスパイラル流動長(mm)を測定した際の値を用いている。また、特にスパイラル流動長が270mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましい。
[0012]
[ゴム含有グラフト共重合体(B)]
 本実施形態に係るゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体の存在下で芳香族ビニル化合物、及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物を共重合したゴム含有グラフト共重合体である。すなわち、本実施形態に係るゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物がグラフト重合した硬質共重合体成分(B’)を含むものである。ゴム含有グラフト共重合体(B)は、硬質共重合体成分(B’)の他、芳香族ビニル化合物の単重合体、シアン化ビニル化合物の単重合体、又は芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体を含んでいてもよい。本発明に係るゴム含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体、芳香族ビニル化合物、又はシアン化ビニル化合物に加え、必要に応じて他の共重合可能な化合物を共重合させたものであってもよい。
 ゴム含有グラフト共重合体(B)の原料であるゴム質重合体としては、例えばポリブタジエン、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、若しくはアクリル酸エステル/ブタジエン共重合体等のブタジエン系ゴム状重合体;イソプレン、クロロプレン、若しくはスチレン/イソプレン共重合体等の共役ジエン系ゴム状重合体;ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム状重合体;エチレン/プロピレン共重合体等のオレフィン系ゴム状重合体;ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系ゴム状重合体;又は、天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、若しくは多硫化ゴム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらゴム状重合体は、モノマーから使用することができ、ゴム状重合体の構造は複合ゴム構造やコア/シェル構造をとってもよい。ゴム含有グラフト共重合体(B)の原料であるゴム質重合体としては、ポリブタジエンが特に好ましい。
 ゴム含有グラフト共重合体(B)中の、ゴム質重合体由来成分の含有量は、35~70質量%であることが好ましく、さらに好ましくは45~60質量%の範囲である。ジエン系ゴム質重合体由来成分の含有量がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、及び流動性がより向上する。 ゴム含有グラフト共重合体(B)の原料である芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、又はブロムスチレン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でもスチレン、又はα-メチルスチレンが好ましい。
 ゴム含有グラフト共重合体(B)の原料として用いることができる他の共重合可能な化合物としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸若しくはアクリル酸エステル;N-フェニルマレイミド若しくはN-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;又は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、若しくはフマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。これらの他の共重合可能な化合物は、それぞれ1種単独でも用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 ゴム含有グラフト共重合体(B)中の、他の共重合可能な化合物由来成分の含有量は、0~10質量%であることが好ましい。
[0013]
[硬質共重合体混合物(C)]
 本実施形態の硬質共重合体混合物(C)は、特定構造を有する2種類の硬質共重合体、すなわち硬質共重合体(C-I)及び硬質共重合体(C-II)を含む。
 本実施形態の硬質共重合体混合物(C)に含まれる硬質共重合体(C-I)及び硬質共重合体(C-II)は、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物と、さらに必要に応じて用いられる共重合可能な他の化合物とを共重合した重合体である。ここで、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、及び必要に応じて用いられる共重合可能な他の化合物は、上記のゴム含有グラフト共重合体(B)にグラフトさせる化合物と同様な化合物を使用することができる。
 硬質共重合体(C-I)は、シアン化ビニル化合物由来の単量体単位が総質量の20質量%以上かつ35質量%未満である。
 硬質共重合体(C-II)は、シアン化ビニル化合物由来の単量体単位が総質量の35~50質量%である。
 硬質共重合体混合物(C)中の硬質共重合体(C-II)の含有量は、20~80質量%である。
 硬質共重合体(C-I)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、若しくはρ-メチルスチレン等のビニルトルエン類;ρ-クロルスチレン等のハロゲン化スチレン類;又は、ρ-t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン若しくはビニルナフタレン類等が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でもスチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。硬質共重合体(C-I)を構成する芳香族ビニル化合物としては、硬質共重合体(C-II)を構成する好ましい芳香族ビニル化合物と同様の化合物が好ましい。
 シアン化ビニル化合物しては、例えばアクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等が挙げられる。中でもアクリロニトリルが好ましい。硬質共重合体(C-I)を構成するシアン化ビニル化合物としては、硬質共重合体(C-II)を構成する好ましいシアン化ビニル化合物と同様の化合物が好ましい。
 硬質共重合体(C-I)中のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は、20質量%以上かつ35質量%未満であり、好ましくは25~32質量%の範囲である。硬質共重合体(C-I)のシアン化ビニル化合物の含有量がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、流動性がより有効に発揮されるようになる。
 硬質共重合体(C-II)中のシアン化ビニル化合物の含有量は、35~50質量%であり、好ましくは40~45質量%の範囲である。硬質共重合体(C-II)のシアン化ビニル化合物の含有量がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、流動性がより有効に発揮されるようになる。
 硬質共重合体混合物(C)中の硬質共重合体(C-II)の含有量は、20~80質量%であり、好ましくは30質量%~70質量%であり、更に好ましくは40~60質量%である。硬質共重合体混合物(C)中の硬質共重合体(C-II)の含有量がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、及び流動性がより有効に発揮されるようになる。
 硬質共重合体(C-I)と硬質共重合体(C-II)の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合又はこれらを複合した公知の重合方法をいずれも適用できる。
[0014]
[その他の成分]
 本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、必須成分である上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、及び硬質共重合体混合物(C)の他、更に任意成分として各種の添加剤やその他の樹脂を配合することができる。この場合、各種添加剤としては、公知の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、安定剤、エステル交換反応抑制剤、加水分解抑制剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤(顔料若しくは染料等)、充填剤(炭素繊維、ガラス繊維、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ若しくはタルク等)、臭素系難燃剤若しくはリン系難燃剤等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、フッ素樹脂等のドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤、シリコーンオイル、又は、カップリング剤等を用いることができる。これらの添加剤は、単独で、或いは2種以上組み合わされて用いることができる。
 また、その他の樹脂としては、HIPS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、若しくはAES樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂、その他に、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。また、これらを2種類以上ブレンドしたものでも良く、さらに、相溶化剤や官能基等により変性された上記樹脂を配合してもよい。
 なお、本実施形態で用いられる必須成分や任意成分には、何れも、品質に問題がなければ、重合工程や加工工程、成形時等の工程回収品、又は、市場から回収されたリサイクル品等を用いることが出来る。
[0015]
 本熱可塑性樹脂組成物は、アセトン可溶成分を含み、該アセトン可溶成分の還元粘度(ηsp/c)が0.3~0.8dl/gである。好ましくは0.4~0.7dl/gである。該アセトン可溶成分の還元粘度がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、及び流動性がより有効に発揮されるようになる。
 また、該アセトン可溶成分のシアン化ビニル化合物成分含有率は25~40%である。
好ましくは30~40%である。該アセトン可溶成分のシアン化ビニル化合物成分含有率がこの範囲内であると、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、及び流動性がより有効に発揮されるようになる。
[0016]
[熱可塑性樹脂組成物の製造]
 本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)と、硬質共重合体混合物(C)と、必要に応じて用いられる各種任意成分とを混合・混練して製造される。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成形品の成形材料として使用される。熱可塑性樹脂組成物の各成分を混合・混練する方法は特に制限はなく、一般的な混合・混練方法を何れも採用することができ、例えば、押出機、バンバリーミキサー、又は混練ロール等にて混練した後ペレタイザー等で切断しペレット化する方法等が挙げられる。
[0017]
[樹脂成形品]
 本実施形態の樹脂成形品、及び、表面に塗装が施された塗装加工品は、上述の本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形されたものである。その成形方法は、従来知られた技術から適宜選択可能であり、これらの技術のうち何等限定されるものではない。成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、インサート成形法、真空成形法、又はブロー成形法等が挙げられる。
 本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本実施形態の樹脂成形品は、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃性、及び流動性に優れたものである。
 このような本実施形態の樹脂成形品は、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電子・電気機器、家庭電化機器、自動車、及び建築をはじめとする多種多様な用途に好適に用いることができる。
実施例
[0018]
  以下に、合成例、実施例、および比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
 なお、以下において、「部」は「質量部」を意味するものとする。
[0019]
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
 芳香族ポリカーボネート(A)として、市販品(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「S-2000F」)を準備した。この芳香族ポリカーボネート「S-2000F」の粘度平均分子量(Mv)は22,000であった。
 尚、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレンを溶媒とした溶液で測定し、下記のSchnellの粘度式を用いて算出した。
  [η]=1.23×10 -4Mv 0.83
(式中、ηは固有粘度を示し、Mvは粘度平均分子量を示す)
[0020]
<合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(B-1)>
 反応器に水175部、牛脂脂肪酸カリウム0.3部、水酸化カリウム0.055部及びポリブタジエンラテックス50部を仕込み、60℃に加熱した。その後、硫酸第一鉄0.003部、ピロリン酸ナトリウム0.075部、及び結晶ブドウ糖0.173部を添加し、60℃に保持したまま、さらにスチレン36.5部、アクリロニトリル11.5部、t-ドデシルメルカプタン0.08部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.25部を2時間かけて連続添加した。その後、70℃に昇温して1時間保って反応を完結した。かかる反応によって得られたラテックスに酸化防止剤を添加し、その後硫酸により凝固し、十分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(B-1)を得た。
[0021]
<合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(B-2)>
 ポリブタジエンラテックスの量を35部、スチレンの量を49部、アクリロニトリルの量を16部に変更したこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、ゴム含有グラフト共重合体(B-2)を得た。
[0022]
<合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(B-3)>
 ポリブタジエンラテックスの量を70部、スチレンの量を23部、アクリロニトリルの量を7部に変更したこと以外は合成例1と同様にして重合を行い、ゴム含有グラフト共重合体(B-3)を得た。
[0023]
<合成例4:硬質共重合体(C-I-1)>
 反応器に水125部、リン酸カルシウム0.38部、アルケニルコハク酸カリウム塩0.0025部、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.04部、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン0.06部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート0.03部、及びt-ドデシルメルカプタン0.48部と、スチレン68部、アクリロニトリル32部からなる単量体混合物とを仕込み、反応させた。反応は、水、アクリロニトリル、及びスチレンの一部を逐次添加しながら開始温度65℃から6.5時間昇温加熱後、125℃に到達させて行った。更に、125℃で1時間反応した後、重合物を取り出し、硬質共重合体(C-I-1)を得た。
 得られた硬質共重合体(C-I-1)の組成比率は表1に示す。硬質共重合体(C-I-1)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は32.0質量%であった。
[0024]
<合成例5:硬質共重合体(C-I-2)>
 t-ドデシルメルカプタンの量を1.5部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-I-2)を得た。得られた硬質共重合体(C-I-2)シアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は31.9質量%であった。
<合成例6:硬質共重合体(C-I-3)>
 t-ドデシルメルカプタンの量を0.15部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-I-3)を得た。得られた硬質共重合体(C-I-3)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は31.7質量%であった。
<合成例7:硬質共重合体(C-I-4)>
 スチレンの量を80部、アクリロニトリルの量を20部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-I-4)を得た。得られた硬質共重合体(B-I-4)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は20.1質量%であった。
<合成例8:硬質共重合体(C-I-5)比較品>
 スチレンの量を55部、アクリロニトリルの量を45部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-I-5)を得た。得られた硬質共重合体のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は44.0質量%であった。
<合成例9:硬質共重合体(C-II-1)>
 スチレンの量を58部、アクリロニトリルの量を42部、t-ドデシルメルカプタンの量を1.00部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-II-1)を得た。得られた硬質共重合体(C-II-1)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は41.2質量%であった。
[0025]
<合成例10:硬質共重合体(C-II-2)比較品>
 スチレンの量を58部、アクリロニトリルの量を42部、t-ドデシルメルカプタンの量を1.5部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-II-2)を得た。得られた硬質共重合体(B-II-2)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は40.8質量%であった。
<合成例11:硬質共重合体(C-II-3)比較品>
 スチレンの量を58部、アクリロニトリルの量を42部、t-ドデシルメルカプタンの量を0.12部に変更したこと以外は合成例4と同様にして重合を行い、硬質共重合体(C-II-3)を得た。得られた硬質共重合体(C-II-3)のシアン化ビニル化合物由来の単量体単位の含有量は40.6質量%であった。
[0026]
<硬質共重合体(C-I)及び(C-II)の組成比率>
 硬質共重合体(C-I)及び(C-II)の組成比率は、反応終了後の残存モノマー量を島津製作所GC-2014にて定量し、仕込み値からこの値から逆算し固定量を求めた。
[0027]
[実施例1~11及び比較例1~10]
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、硬質共重合体(C-I)、及び硬質共重合体(C-II)、を表1及び表2に示す割合で混合して、それぞれ熱可塑性樹脂組成物を調製した。
 実施例1~11の熱可塑性樹脂組成物と比較例1~10の熱可塑性樹脂組成物を、それぞれ、30mm二軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30α」)を用いて、240℃の温度で溶融混練して、それぞれをペレット化し、実施例1~11の熱可塑性樹脂組成物のペレットと比較例1~10の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
[0028]
<熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分の還元粘度(ηsp/c)>
 熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分を抽出し、次いで遠心分離により不溶成分を沈殿させてアセトン可溶成分の固形分を得た。得られた固形分0.2gを2-ブタノン100mlにて溶解させ該溶液を25℃でウベローデ型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。
<熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分のシアン化ビニル化合物含有率(%)>
 熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分を抽出し、次いで遠心分離により不溶成分を沈殿させてアセトン可溶成分の固形分を得た。得られた固形分を元素分析装置(CHN測定)にて測定し、窒素量からシアン化ビニル化合物の含有率を算出した。
[0029]
<塗装性(吸い込み性)の評価>
 実施例1~11の熱可塑性樹脂組成物のペレットと比較例1~10の熱可塑性樹脂組成物のペレットを、それぞれ85トン射出成形機((株)日本製鋼所製「J85AD-110H)を用いて射出成形した。射出成形は、塗装評価用金型(縦200mm×横60mm×厚さ3mm)を用いて、シリンダ温度230℃、金型温度30℃、射出速度は低速(10mm/sec)、中速(25mm/sec)、高速(50mm/sec)の3水準の条件で、行った。
 得られた試験片にウレタン系塗料をスプレー塗装し、成形品に現れる吸い込み現象を目視にて観察し、下記基準で塗装性(吸い込み性)を判定した。その結果を表1、2に示す。
 A:成形品表面に凹凸は全く発生せず、非常に優れている。
 B:成形品表面に凹凸は一部発生するが、実用上問題ない。
 C:成形品表面に凹凸が全体に発生し、実用レベルに達していない。
[0030]
<シャルピー衝撃強度の評価>
 実施例1~11の熱可塑性樹脂組成物のペレットと比較例1~10の熱可塑性樹脂組成物のペレットとを、それぞれ75トン射出成形機((株)日本製鋼所製「J75EII-P」)を用いて射出成形した。射出成形は、成形温度250℃、金型温度60℃の条件で行って、それぞれ試験片(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)を成形した。
 得られた各試験片を用いて、シャルピー衝撃強度を下記の方法で測定した。それらの結果を表1、2に示す。
 シャルピー衝撃強度:ISO 179に準拠し、測定温度23℃で測定し、下記基準で判定した。
 A:シャルピー衝撃強度40KJ/m 以上であり非常に優れている。
 B:シャルピー衝撃強度30KJ/m 以上40KJ/m 未満で実用上問題無い。
 C:シャルピー衝撃強度30KJ/m 未満で実用レベルに達していない。
[0031]
<耐熱性の評価>
 得られた各試験片を用いて、耐熱性を下記の方法で測定した。それらの結果を表1、2に示す。
 耐熱性:ISO 75に準拠し、測定荷重1.8MPaで測定し、下記基準で判定した。
 A:耐熱温度が92℃以上であり非常に優れている。
 B:耐熱温度が88℃以上であり92℃未満で実用上問題無い。
 C:耐熱温度が88℃未満で実用レベルに達していない。
[0032]
<流動性(スパイラルフロー)の評価>
 スパイラルフロー金型(幅15mm×厚さ2mm)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度60℃、射出圧力100MPaの条件で、実施例1~11の熱可塑性樹脂組成物のペレットと比較例1~10の熱可塑性樹脂組成物のペレットとをそれぞれ85トン射出成形機((株)日本製鋼所製「J85AD-110H)から射出成形した。得られた成形品のスパイラル流動長(mm)を測定し、下記基準で流動性(スパイラルフロー)を判定した。その結果を表1、2に示す。
  A:スパイラル流動長300mm以上であり材料的に優れている。
  B:スパイラル流動長270mm以上であり300mm未満で実用上問題無い。
  C:スパイラル流動長270mm未満で実用レベルに達していない。
[0033]
<総合判定>
 上記評価結果において、塗装性(吸い込み性)、シャルビー衝撃強度、耐熱性、及び流動性(スパイラルフロー)の評価がすべて「A」であった熱可塑性樹脂組成物を総合判定において「AA」と判定した。また、すべての評価が「A」もしくは「B」であり、「A」が3個以上であったものを総合判定において「A」と判定した。また、すべての評価が「A」もしくは「B」であり、「A」が2個以下であったものを総合判定において「B」と判定した。一項目でも「C」判定を含むものは総合判定「C」と判定した。その結果を表1及び表2に示す。
[0034]
[表1]


[0035]
[表2]


[0036]
 表1及び表2より、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、ゴム含有グラフト共重合体(B)と、硬質共重合体混合物(C)とを規定される範囲内で含む熱可塑性樹脂組成物は、塗装工程における耐吸い込み性、耐衝撃、耐熱性、及び成形加工時の流動性に優れた樹脂成形品を与えることが分かる。

産業上の利用可能性

[0037]
 本実施形態によれば、塗装工程における吸い込み現象の発生を抑制することができ、耐衝撃性、耐熱性及び成形加工時の流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品及び塗装加工品を提供することができる。したがって、本実施形態は産業上極めて重要である。

請求の範囲

[請求項1]
 芳香族ポリカーボネート樹脂(A):35~75質量部と、
 ゴム質重合体の存在下で芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物を共重合したゴム含有グラフト共重合体(B):15~35質量部と、
 硬質共重合体(C-I)及び硬質共重合体(C-II)を含有する硬質共重合体混合物(C):10~50質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
 前記硬質共重合体混合物(C)は、混合物中の硬質共重合体(C-II)の含有量が20~80質量%であり、
 硬質共重合体(C-I)は、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位及びシアン化ビニル化合物由来の単量体単位を含む重合体であり、硬質共重合体(C-I)の総質量の20質量%以上かつ35質量%未満がシアン化ビニル化合物由来の単量体単位である硬質共重合体であり、
 硬質共重合体(C-II)は、芳香族ビニル化合物由来の単量体単位及びシアン化ビニル化合物由来の単量体単位を含む重合体であり、硬質共重合体(C-II)の総質量の35~50質量%がシアン化ビニル化合物由来の単量体単位である硬質共重合体であり、
 前記熱可塑性樹脂組成物は、アセトン可溶成分を含み、該アセトン可溶成分の還元粘度(ηsp/c)が0.3~0.8dl/g、かつ、
 該アセトン可溶成分のシアン化ビニル化合物成分含有率が25~40%である熱可塑性樹脂組成物。
[請求項2]
 前記ゴム含有グラフト共重合体(B)中のゴム質重合体由来成分の含有量が35~70質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[請求項3]
 請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形品。
[請求項4]
 請求項3に記載の樹脂成形品からなる塗装加工品。