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1. (WO2018235939) OPHTHALMIC COMPOSITION CONTAINING CLATHRATED ANTIOXIDANT SUBSTANCE, AND USE THEREOF
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明 細 書

発明の名称 包接化された抗酸化物質を含む眼科用組成物ならびにその使用

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の概要

課題を解決するための手段

0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089  

実施例

0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156  

産業上の利用可能性

0157  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 包接化された抗酸化物質を含む眼科用組成物ならびにその使用

技術分野

[0001]
 本発明は、眼科治療の分野に関する。

背景技術

[0002]
 体内で発生する活性酸素・フリーラジカルは様々な物質に対して非特異的な化学反応をもたらし、細胞に損傷を与えると考えられており、そのため、体内には抗酸化酵素としてカタラーゼなどの活性酸素を無害化する酵素がある。そのような抗酸化作用を増強するために、抗酸化物質は、栄養補助食品等として広く使用されている。
[0003]
 例えば、アスタキサンチンを含めた脂溶性抗酸化物質は、栄養補助食品やサプリメントなどの特に経口で摂取する用途に用いられている。

発明の概要

課題を解決するための手段

[0004]
 本発明者らは、抗酸化物質を包接化して可溶化することが、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品または食品等において有用であることを見出した。特に、本発明者らは、抗酸化物質を包接化して可溶化することが、眼科における応用に有用であることを見出した。したがって、本発明の1つの実施形態は、包接化された抗酸化物質を含む、眼科用組成物である。
[0005]
 本発明の1つの実施形態は、涙液量を増加させるため、および/またはゴブレット細胞(杯細胞とも称される)数を増加させるための眼科用組成物である。本発明者らにより、本発明の組成物が、涙液量の増加、および/またはゴブレット細胞数の増加において有用であることが見出されている。本発明の一部の実施形態は、眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または予防するための組成物を提供し、眼科疾患、眼科障害または眼科症状としては、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症、白内障、または偽落屑症候群ならびにこれらの疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態では、手術、癌治療等の侵襲的な眼科処置後の眼表面回復のための組成物が提供される。1つの実施形態では、移植片対宿主病(GVHD)を含めた免疫疾患、ならびにかかる疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状もしくは合併症(例えば、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状)を治療または予防するための、組成物が提供される。好ましい実施形態では、ドライアイ又は類似の眼科疾患を治療または予防するための、眼科用組成物が提供される。例えば、本発明の眼科用組成物は、眼注射液、眼軟膏、点眼剤または眼灌流液として提供され得る。
[0006]
 抗酸化物質は、好ましくは、脂溶性抗酸化物質である。脂溶性抗酸化物質としては、カロテノイド(カロテン類、キサントフィル類等)、オメガ3脂肪酸(DHA、EPAなど)、ビタミンD(カルシフェロール類)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール類)、ポリフェノール(レスベラトロール等)等が挙げられる。脂溶性抗酸化物質は、例えば、共役二重結合を含む抗酸化物質である。脂溶性抗酸化物質は、好ましくはカロテノイドである。脂溶性抗酸化物質としては、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、β-カロテン、ルテイン、リコペン、レスベラトロール、メソゼアキサンチン、EPA、DHA、クルクミン、またはビタミンE等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい脂溶性抗酸化物質は、アスタキサンチンである。
[0007]
 本発明の1つの実施形態では、抗酸化物質が包接化されることを特徴とする。例えば、抗酸化物質は、当該抗酸化物質を可溶化することができるホスト化合物によって包接化される。ホスト化合物としては、環状多糖を用いることができる。ホスト化合物としては、シクロデキストリン、アラビノガラクタン、グリシリジン(グリチルリチン(glycyrrhizin))、ヒドロキシベータシクロデキストリン、β1,3-1,6-グルカン、カリックスアレーン、キャビタナール、クラウンエーテル、カリキセラン、スフェロンド、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ホスト化合物は、水溶性や包接の効率を調節するために、任意の誘導体を使用することができることが当業者には理解される。
[0008]
 好ましくは、ホスト化合物は、環状多糖類である。本明細書の実施例においては、環状多糖類であるシクロデキストリンや、アラビノガラクタンによって、脂溶性抗酸化物質の包接化が実証されている。
[0009]
 より好ましくは、ホスト化合物は、シクロデキストリンである。シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、当業者は、包接しようとする化合物のサイズ等に鑑みて、本明細書に記載されるものから適切なホスト化合物を選択して使用することが可能である。アスタキサンチンのような脂溶性抗酸化物質の包接化には、γ-シクロデキストリンのサイズが有用であり得る。
[0010]
 本発明の1つの局面では、脂溶性抗酸化物質および大環状化合物を含み、該脂溶性抗酸化物質の水溶性が、該脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性と比較して増大していることを特徴とする、眼科用組成物が提供される。脂溶性抗酸化物質は、水性溶液中に存在し得る。本明細書の実施例において、脂溶性抗酸化物質の水溶性を向上させ(可溶化)、水性溶液に溶解させることによって、眼科治療に有用に用いることができることが示されている。好ましくは、脂溶性抗酸化物質はアスタキサンチンであり、大環状化合物はγーシクロデキストリンである。このような組成物が、ドライアイもしくは類似の眼科疾患を治療または予防するために好適に用いられ得る。
[0011]
 例えば、本発明の好ましい実施形態において、以下の項目が提供される。
(項目1) 包接化された抗酸化物質を含む、眼科用組成物。
(項目2) 前記抗酸化物質が、脂溶性抗酸化物質である、前記項目に記載の眼科用組成物。
(項目3) 前記抗酸化物質が、該抗酸化物質を可溶化することができるホスト化合物によって包接化されている、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目4) 前記ホスト化合物が大環状化合物である、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目5) 脂溶性抗酸化物質および大環状化合物を含み、該脂溶性抗酸化物質の水溶性が、該脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性と比較して増大していることを特徴とする、眼科用組成物。
(項目6) 涙液量を増加させるための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目7) ゴブレット細胞数を増加させるための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目8) ムチンを増加させるための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目9) 涙液量を増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目10) ゴブレット細胞を増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目11) ムチンを増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目12) 侵襲的な眼科処置後の眼表面回復のための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目13) ドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症、白内障、または偽落屑症候群を治療または予防するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目14) 移植片対宿主病(GVHD)におけるドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または予防するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目15) 点眼剤または眼灌流液である、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目16) 前記脂溶性抗酸化物質が、共役二重結合を含む、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目17) 前記脂溶性抗酸化物質が、カロテノイドである、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目18) 前記脂溶性抗酸化物質が、アスタキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、βーカロテン、リコペン、レスベラトロール、メソゼアキサンチン、EPA、DHA、クルクミン、またはビタミンEである、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目19) 前記大環状化合物が環状多糖である、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目20) 前記大環状化合物が、シクロデキストリン、アラビノガラクタン、グリシリジン、ヒドロキシベータシクロデキストリン、β1,3-1,6-グルカン、カリックスアレーン、キャビタナール、クラウンエーテル、カリキセラン、スフェロンド、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンである、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目21) 前記大環状化合物がγ-シクロデキストリンである、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
(項目22) 前記脂溶性抗酸化物質がアスタキサンチンであり、前記大環状化合物がγ-シクロデキストリンである、ドライアイもしくは類似の眼科疾患を治療または予防するための、前記項目のいずれかに記載の眼科用組成物。
[0012]
 本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。

発明の効果

[0013]
 本発明により、眼科疾患、眼科障害または眼科症状としては、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症または白内障ならびにこれらの疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状などが顕著に改善する医薬が提供される。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 図1は、アスタキサンチンの可溶化を示す図である。アスタキサンチンが可溶化していない場合には、濾過により濾液から除去され、濾液が無色になる。
[図2] 図2は、アスタキサンチンの抗酸化能を示す図である。DCFDA試薬を用いて活性酸素群の検出を行い、示される試験物質(Neg-con:(非処理群・・・全く処理をしていない)、Posi-con:(過酸化水素刺激下で活性酸素の産生を検出)、Water sol:シクロデキストリン包接化によって可溶化したアスタキサンチン、DMSO sol:DMSOに溶解させたアスタキサンチン)の抗酸化能を調べた。蛍光が少ないことは、過酸化水素によって誘導した酸化ストレスに対する試験物質の抗酸化能力が高いことが示される。
[図3] 図3は、アスタキサンチン点眼によるドライアイマウス涙液量変化を示す図である。縦軸は、正常涙液量に対する相対値である。各処置群について、14日目(BACでの処置を2週間受けた時点)と、28日目(各処置を2週間行った時点)との涙液量が示される。図中、「wsControl」は、水溶性対照(water-soluble control)(ビヒクル)であり、「wsAsx」は、水溶化アスタキサンチン(ASX)であり、「BAC」は塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)である。
[図4] 図4は、ドライアイモデルマウスの眼表面ゴブレット細胞に対するアスタキサンチン点眼の効果を示す図である。上部のパネルは、各処置群の組織切片を示す。下部のパネルは、各切片においてPAS染色により赤く染まった細胞数をカウントすることによって求めた各処置群でのゴブレット細胞数を示す。
[図5] 図5は、アスタキサンチン点眼および経口投与によるドライアイマウス涙液量変化を示す図である。縦軸は、正常涙液量に対する相対値である。各処置群について、14日目(BACでの処置を2週間受けた時点)と、28日目(各処置を2週間行った時点)との涙液量が示される。図中、「wsControl」は、水溶性対照(water-soluble control)(ビヒクル)であり、「wsAsx」は、水溶化アスタキサンチン(ASX)であり、「oControl」は経口摂取コントロール(oral intake control(水))であり、「oAsx」は経口摂取アスタキサンチン(oral intake astaxanthin)であり、「BAC」は塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)である。
[図6] 図6は、水溶化アスタキサンチン点眼、DMSO溶解アスタキサンチン点眼およびアスタキサンチン経口投与による、ゴブレット細胞数への効果を示す図である。上部のAのパネルは、各処置後の組織切片を示す。下部のBのパネルは、各切片においてPAS染色により赤く染まった細胞数をカウントすることによって求めた各処置群でのゴブレット細胞数を示す。
[図7] 図7は、マウスDBT細胞において様々な溶媒に溶解したASXが細胞増殖に及ぼす影響を示す図である。縦軸は、マウスDBT細胞数の増加倍率を示す。
[図8] 図8は、水溶化アスタキサンチン点眼、DMSO溶解アスタキサンチン点眼およびアスタキサンチン経口投与によるドライアイマウス涙液量変化を示す図である。縦軸は、正常涙液量に対する相対値である。各処置群について、14日目(BACでの処置を2週間受けた時点)と、28日目(各処置を2週間行った時点)との涙液量が示される。
[図9] 図9は、異なるホスト化合物を用いた際のアスタキサンチン水溶化物の細胞増殖への影響を示す図である。縦軸は、マウスDBT細胞の増加倍率を示す。
[図10] 図10は、異なるホスト化合物を用いた際のアスタキサンチン水溶化物の抗酸化能を示す図である。DCFDA試薬を用いて活性酸素群の検出を行い、示される試験物質(Neg-con:非処理群、Posi-con:(過酸化水素刺激下で活性酸素の産生を検出)、Asx/DMSO:DMSOに溶解させたアスタキサンチン(5μg/mL)、wsAsx:シクロデキストリン包接化によって可溶化したアスタキサンチン(0.27μg/mL)、wsAGAsx:アラビノガラクチン包接化によって可溶化したアスタキサンチン(0.24μg/mL)の抗酸化能を調べた。蛍光が少ないことは、過酸化水素によって誘導した酸化ストレスに対する試験物質の抗酸化能力が高いことを示す。
[図11] 図11は、γ-シクロデキストリンを用いたリコペンの包接化、および包接化されたリコペンの抗酸化能を示す図である。図中、「wsControl」は、水溶性対照(water-soluble control)(ビヒクル)であり、「wsAsx」は、水溶化アスタキサンチン(ASX)であり、「wsLP」は、水溶化リコペンである。
[図12] 図12は、γ―シクロデキストリンを用いたカンタキサンチンの包接化を示す図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
[0016]
 以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
[0017]
 <1.定義>
 本明細書において、「包接」(または包摂)とは、ある化合物によって作られた空間内に別の化合物が取り込まれ共有結合によらずに安定な物質として存在していることをいう。このとき、別の化合物を取り込む化合物を「ホスト化合物」と称し、取り込まれる化合物を「ゲスト化合物」と称する場合がある。包接している化合物を、包接体、クラスレート等とも呼称し、また、包接を生じさせることを「包接化する」とも称する。
[0018]
 本明細書において、「抗酸化物質」とは、酸素が関与する酸化反応を阻害する物質を指す。
[0019]
 本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
[0020]
 <2.抗酸化物質>
 本発明の1つの実施形態は、抗酸化物質を含む組成物を提供する。抗酸化物質は、酸素が関与する酸化反応を阻害する物質であり、活性酸素種等による酸化ストレスから細胞を保護するように機能し得る。本明細書の実施例では、包接化した抗酸化物質の点眼による投与によって、マウスモデルにおいて涙液量の増加や、ゴブレット細胞数の増加を達成することができたことが示されており、涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを有意に増加させることができること、ならびにこれらに基づく眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または改善もしくは予防することができることが実証されている。
[0021]
 抗酸化物質としては、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸、システイン、グルタチオン、リノール酸、トコフェロール類、トコトリエノール類、カロテノイド類、フラボノイド、リボフラビン、ビリルビン、尿酸、リポ酸、ユビキノール、メラトニン、ウロビリノーゲン、キサントフィル類、ポリフェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗酸化物質は、脂溶性抗酸化物質と水溶性抗酸化物質とに大きく分けられる。一般に、水溶性抗酸化物質は細胞質基質と血漿中の酸化物質と反応し、脂溶性抗酸化物質は細胞膜の脂質過酸化反応を防止している。
[0022]
 1つの実施形態において、抗酸化物質は脂溶性抗酸化物質である。脂溶性抗酸化物質としては、カロテノイド(カロテン類、キサントフィル類等)、オメガ3脂肪酸(DHA、EPAなど)、ビタミンD(カルシフェロール類)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール類)等が挙げられる。脂溶性抗酸化物質は、包接によって可溶化することにより、医薬等に有利に利用することができる。
[0023]
 カロテノイド(カロチノイド)は、天然に存在する色素で、化学式C 40H 56の基本構造を持つ化合物の誘導体である。特に、炭素と水素のみでできているものはカロテンと称され、炭素と水素以外の酸素、窒素などを含むものはキサントフィルと称される。カロテンやキサントフィルは二重結合を多く含むために、大きな抗酸化作用を有する。本発明の1つの好ましい実施形態において、抗酸化物質はカロテノイドである。本明細書の実施例において、包接化したカロテノイドを用いて、涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを有意に増加させることができること、ならびに成功裡にドライアイ処置を行うことが可能であることが実証されているからである。
[0024]
 カロテン類に含まれるカロテノイドとしては、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン、ε-カロテン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。キサントフィル類に含まれるカロテノイドとしては、アスタキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、メソゼアキサンチン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[0025]
 脂溶性抗酸化物質は、例えば、共役二重結合を含む抗酸化物質である。本願明細書の実施例においては、共役二重結合を含む抗酸化物質であるアスタキサンチンの投与によってマウスモデルにおいて涙液量の増加や、ゴブレット細胞数の増加を達成することができたことが示されている。アスタキサンチンを含めたカロテノイドの高い抗酸化能力は、分子内の共役二重結合鎖に由来するものであると考えられており、同様の共役二重結合を有するポリエン類や、共役不飽和脂肪酸(共役リノール酸等)も本発明において用いることが可能である。
[0026]
 本発明の特に好ましい実施形態において、脂溶性抗酸化物質はアスタキサンチンである。アスタキサンチンは高い抗酸化作用を持ち、紫外線や脂質過酸化反応から生体を防御する因子として働いていると考えられている。
[0027]
 本発明の1つの局面では、脂溶性抗酸化物質の水溶性が、該脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性と比較して増大していることを特徴とする、組成物が提供される。かかる組成物において、脂溶性抗酸化物質と、本明細書に記載されるようなホスト化合物として用いられ得る任意の化合物が含まれる。ホスト化合物として用いられ得る化合物は、本明細書に記載される大環状化合物、本明細書に記載される環状多糖、または本明細書に記載されるシクロデキストリンもしくはその誘導体等であり得る。好ましくは、脂溶性抗酸化物質はアスタキサンチンである。好ましくは、大環状化合物はγーシクロデキストリンである。
[0028]
 脂溶性抗酸化物質は、水性溶液中に存在し得る。脂溶性抗酸化物質は、水性溶媒に溶解させた状態で存在し得る。本明細書の実施例において、脂溶性抗酸化物質の水溶性を向上させ(可溶化)、水性溶液に溶解させることによって、眼科治療に有用に用いることができることが示されている。水性溶媒は、水を主成分とする任意の溶媒であり、例えば、精製水、滅菌水、緩衝液または生理食塩水を含め、本明細書に記載される任意の添加物を含んでもよい。
[0029]
 ホスト化合物として用いられ得る化合物とともに組成物中に含まれる脂溶性抗酸化物質の水溶性は、該脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性と比較して、例えば、少なくとも約10%、約30%、約50%、約70%、もしくは約100%増大するか、または少なくとも約1.5倍、約2倍、約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、約100倍、約150倍、約200倍、約300倍、約500倍もしくは約1000増大するか、または、約10 倍、約10 倍、約10 倍、約10 倍、約10 倍、約10 倍、約10 10倍、約10 11倍、もしくは約10 12倍増大し得る。
[0030]
 脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性は、化合物の溶解度データとして当業者に公知である。例えば、アスタキサンチンの溶解度は、25℃で、7.9×10 -10mg/L=(μg/ml)である(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/5281224#section=Solubility)。
[0031]
 1つの実施形態では、ホスト化合物として用いられ得る化合物とともに組成物中に含まれるアスタキサンチンの水溶性は、少なくとも約1×10 -9μg/ml、約1×10 -8μg/ml、約1×10 -7μg/ml、約1×10 -6μg/ml、約1×10 -5μg/ml、約1×10 -4μg/ml、約1×10 -3μg/ml、約1×10 -2μg/ml、約1×10 -1μg/ml、約1μg/ml、約5μg/ml、約10μg/ml、約15μg/mlもしくは約20μg/mlであり得る。
[0032]
 <3.包接化>
 本発明の1つの実施形態では、抗酸化物質が包接化されることを特徴とする。例えば、抗酸化物質は、当該抗酸化物質を可溶化することができるホスト化合物によって包接化される。本明細書の実施例においては、包接化によって可溶化した抗酸化物質が、有機溶媒に溶解させた同一の抗酸化物質と比較し、予想外にドライアイ症状を改善したことが示されており、涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを有意に増加させることができること、ならびにこれらに基づく眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または改善もしくは予防することができることが実証されている。
[0033]
 脂溶性の抗酸化物質を用いる場合に、界面活性物質を用いて乳化させることによって可溶化することも可能である。しかしながら、例えば、点眼剤として用いられる組成物において、界面活性剤が含まれていることは細胞にとってはリスクとなるため、この点からも包接による可溶化には利点が存在する。
[0034]
 包接には、環状多糖類、クラウンエーテル、またはカリックスアレーン等の大環状分子が用いられる。包接に用いられる化合物の例としては、β1,3-1,6-グルカン、キャビタナール、カリキセランまたはスフェロンド等も挙げることができる。ホスト化合物としては、内側が親油性を示し、外側が親水性を示すものが、脂溶性抗酸化物質の可溶化において望ましい。
[0035]
 理論に拘束されることを望まないが、ホスト化合物は、ゲスト分子と何らかの相互作用をすることによって、ゲスト分子を取り込む。ホスト化合物とゲスト分子との相互作用は、主に疎水性結合及び分子間力結合が想定されるが、一部水素結合の関与も想定される。
[0036]
 本明細書において「大環状化合物」とは、環状巨大分子、または分子(例えば、配位子に配位可能な2個以上の潜在的なドナー原子を好ましくは含む9個以上の原子の環を含む分子)の巨大分子環状部分のことである。
[0037]
 大環状化合物は、使用を意図される環境において可溶性を有する。大環状化合物は、pH5.5~8の範囲内に可溶化されるpH範囲を有する。医薬組成物、例えば、眼科用の水性組成物は、かかるpH範囲で用いられることが一般であると考えられ、ホスト化合物は、その範囲内でゲスト化合物を可溶化できることが望ましい。大環状化合物は、好ましくは、中性域から弱アルカリ性域(pH7~8)で可溶性を有する。
[0038]
 大環状化合物は、理論に拘束されることを望まないが、分子内に空洞を有することによりホスト化合物として好適であり得る。一部の場合、ホスト化合物とゲスト分子は、一定の組成比で包接体を形成する。一部の場合、ホスト化合物の空洞径は、ゲストの分子径とほぼ同等のサイズであることが好ましい。ゲスト分子のサイズに応じてホスト化合物を選択することが可能である。例えば、ビタミンEの平均分子径は0.45nmであり、空洞径が約0.45nmであるα-シクロデキストリンとの組み合わせが好ましいが、空洞径よりも大きなゲスト分子でも部分的に疎水性の強い部分が存在する分子であれば包接されることがある。
[0039]
 本明細書において「環状多糖類」とは、環状構造をとる任意の多糖をいう。
[0040]
 好ましくは、ホスト化合物は、環状多糖類である。本明細書の実施例においては、環状多糖類であるシクロデキストリンや、アラビノガラクタンによって、脂溶性抗酸化物質の包接化が実証されている。環状多糖類としては、シクロデキストリン、アラビノガラクタンに加えて、それらの任意の誘導体も挙げることができ、シクロデキストリン誘導体の例には、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリン等が含まれる。
[0041]
 包接によって、ゲスト化合物の安定化を図ることが可能である。紫外線や熱などに弱い物質や、酸化、加水分解されやすい不安定な物質などを包接することで、安定化させることが可能であり、有効成分の変質を防ぎ、保存性を高めることができる。抗酸化物質は、その性質上、酸化によって分解されやすい場合があるため、包接による安定化が有用であり得る。
[0042]
 また、包接によって、生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)の向上を図ることが可能である。有効成分が分子間力によって、凝集した形態で存在する場合、包接により分子間力を断ち切ることによって、有効成分の分子レベルでの作用部位への吸収性や、吸収の持続性が向上され得る。また、分子間力を断ち切ることによって、粘度の高い物質を包接する場合に粘度を調節し、利用しやすくすることが可能である。
[0043]
 1つの実施形態では、ホスト化合物として、環状多糖を用いることができる。ホスト化合物としては、シクロデキストリン、アラビノガラクタン、グリシリジン(グリチルリチン(glycyrrhizin))、ヒドロキシベータシクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
[0044]
 ホスト化合物は、水溶性や包接の効率を調節するために、任意の誘導体を使用することができることが当業者には理解される。例えば、シクロデキストリンの誘導体としては、ヒドロキシ-シクロデキストリン、アミノ-シクロデキストリン、アジド-シクロデキストリン、メルカプト-シクロデキストリン、スクシニック-シクロデキストリン、O-(p-Tos)-シクロデキストリン、エチレンジアミノ-シクロデキストリン、ポリプロピレンジアミノ-シクロデキストリン、ブタンジアミノ-シクロデキストリン、PEG化シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[0045]
 好ましくは、ホスト化合物は、シクロデキストリンである。シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、当業者は、包接しようとする化合物のサイズ等に鑑みて、本明細書に記載されるものから適切なホスト化合物を選択して使用することが可能である。アスタキサンチンのような脂溶性抗酸化物質の包接化には、γ-シクロデキストリンのサイズが有用であり得る。本明細書の実施例においては、シクロデキストリンによる包接化によって可溶化した抗酸化物質が、有機溶媒に溶解させた同一の抗酸化物質と比較し、予想外にドライアイ症状を改善したことが示されており、涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを有意に増加させることができること、ならびにこれらに基づく眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または改善もしくは予防することができることが実証されている。
[0046]
 また、シクロデキストリンは、空洞が円錐台様の形状をとるため、各種のサイズのシクロデキストリンが包接することができる化合物のサイズは、比較的幅広い。α-シクロデキストリンは、6個のブドウ糖分子が結合しており、約0.5~0.6nmの空洞内径、約0.7~0.8nmの空洞深さ、および0.176nm の空洞内容量を有する。一般的に、直鎖状分子程度のサイズの分子を包接することができる。β-シクロデキストリンは、7個のブドウ糖分子が結合しており、約0.7~0.8nmの空洞内径、約0.7~0.8nmの空洞深さ、および0.346nm の空洞内容量を有する。一般的に、フェノール基1個程度のサイズの分子を包接することができる。γ-シクロデキストリンは、8個のブドウ糖分子が結合しており、約0.9~1.0nmの空洞内径、約0.7~0.8nmの空洞深さ、および0.510nm の空洞内容量を有する。一般的に、フェノール基2個程度のサイズの分子を包接することができる。
[0047]
 化学修飾などによって、ホスト化合物の包接特性を調整する方法は当技術分野で公知である(藤原章司. "分子構造および包接特性調節を目的としたシクロデキストリンの化学修飾;親水性基と疎水性基のバランス依存性."(2013).)。
[0048]
 天然型シクロデキストリンではないシクロデキストリンまたはその誘導体を用いることには、天然型シクロデキストリンと比較して、水溶液として用いる場合に溶解度を増加させることができる、細胞透過性を向上させることができるなどの利点がある。さらに、眼細胞への選択的吸収を可能にするための誘導体生成は、本発明の有効的利用法へとつながる。例えば、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンの水溶性は、天然型よりも非常に優れていることが知られているところ、高い水溶性を示す誘導体を用いることは、本発明の有効性をより向上させるのに好ましい。
[0049]
 「シクロデキストリン誘導体」は、シクロデキストリン中の官能基のいずれかを置換基で修飾したものをいう。シクロデキストリンの場合にはヒドロキシル基が修飾されることが通常であり、シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンを構成する糖において、第一級水酸基である6位水酸基、第二級水酸基である2位及び3位水酸基からなる群から選択される1以上の水酸基を、置換基で修飾することで得られる。
[0050]
 前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、メチル基、N,N-ジメチルアミノエチル基(「DMAE」基と称することもある)、カルボキシル基、一級アミノ基、若しくはポリエチレングリコールなどの水溶性高分子やペプチド分子などが挙げられる。前記水酸基の修飾は、前記置換基で直接修飾されていてもよいし、リンカーを介して修飾されていてもよい。前記リンカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバミン酸エステル結合(-O-CO-NH-)、エステル結合(-O-CO-)、カルボネート結合(-O-CO-O-)、エーテル結合(-O-)などが挙げられる。
[0051]
 化合物が包接化していることは、HPLC分析によって確認することが可能である。その他にもFT-IR(フーリエ変換赤外線分析)、Differential thermal analysis(示差熱分析)、X-ray diffractometry(X線回折分析)、Differential pulse voltammetry(微分パルスボルタメトリー)、NMR(核磁気共鳴)などによる解析でも包接化を確認することができる。
[0052]
 <4.用途>
 本発明の1つの実施形態は、包接化された抗酸化物質の特定の用途への使用、または包接化された抗酸化物質を含む特定の用途のための組成物を提供する。本明細書の実施例において、抗酸化物質を包接化して可溶化することで、涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを有意に増加させることができることが実証されており、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品または食品等において有用であることが示されている。
[0053]
 本発明の1つの好ましい実施形態は、包接化された抗酸化物質を含む、眼科用組成物である。本明細書の実施例において、抗酸化物質を包接化して可溶化することが、眼科における応用に特に有用であることが示されている。
[0054]
 本発明の1つの実施形態は、涙液量を増加させるため、および/またはゴブレット細胞数を増加させるための眼科用組成物である。本発明者らにより、本発明の組成物が、涙液量の増加、および/またはゴブレット細胞数、および/またはムチンの増加において有用であることが見出されている。
[0055]
 涙液は眼球の表面を物理的に保護する他、目の乾燥を防ぐこと(涙は目の表面を覆うことで乾燥を防ぐ)、目に酸素や栄養を供給すること(目の表面には血管がないため、涙によって目の表面の細胞に酸素や栄養が運ばれる)、感染を防ぐこと(目に入った異物は涙によって洗い流される。涙にはリゾチームが含まれており、微生物の侵入や感染を予防する)、目の表面の傷を治すこと(涙には目の表面の傷を治癒する成分が含まれる)、目の表面を滑らかにすること(目の表面を涙が潤して滑らかにすることで光が正しく屈折する)に寄与している。そのため、涙液量を増加させることは、眼科用の応用において有効である。
[0056]
 ゴブレット細胞(杯細胞とも称される)は、ムチンを分泌する働きがあり、目のムチンの役割としては、涙液を保持すること、眼表面を潤滑にすること、眼球のスムーズな球面を形成し、良好な視力を獲得すること、眼表面を保護すること、病原体やデブリスを捕獲し取り除くことが挙げられる。そのため、ゴブレット細胞を増加させることは、眼科用の応用において有効である。
[0057]
 本発明の組成物は、このような2つの目的を同時に達成し得る。理論に拘束されるものではないが、涙液量を増加させるのみの作用では、涙液を保持するムチンが増加せず、ドライアイまたは類似の眼科疾患において有用でない場合があるところ、本願発明の組成物は、涙液量の増加およびゴブレット細胞数(および/またはムチン)の増加の2つ以上の作用を同時に達成することができる点で有利であり得る。
[0058]
 かかる特徴を有する包接化した抗酸化物質を含む本発明の組成物は、ドライアイ(乾性角結膜炎)、涙液分泌減少症、眼球乾燥症、シェーグレン症候群(全身性自己免疫疾患)、またはスティーブンス・ジョンソン症候群などの、涙液量の減少を症状とする眼科疾患の治療または予防において有用であると考えられる。また、偽落屑症候群において、ゴブレット細胞の形態変化が生じてドライアイ症状が呈されることが報告されており(Vassilios P. Kozobolis et al., "Study of conjunctival goblet cell morphology and tear film stability in pseudoexfoliation syndrome" Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol(2004) 242:478-483)、本発明の組成物は、そのようなゴブレット細胞の変性を特徴とする疾患、ならびにそのような疾患の症状(例えば、ドライアイ症状)を処置、改善または予防するのに有用であると考えられる。
[0059]
 さらに、本発明の組成物は、眼における涙液の状態を正常化することに用いることができるため、眼における感染、炎症、細胞変性を病因とする眼疾患の治療または予防に有用であると考えられる。また、本発明の抗酸化物質は、水晶体タンパク質中のSH基が酸化によってジスルフィド結合を形成するのを阻害するため、白内障の処置または予防に有用であると考えられる。本発明の一部の実施形態は、眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または予防するための組成物を提供し、眼科疾患、眼科障害または眼科症状としては、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症または白内障などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の組成物は、眼科疾患における眼の乾燥もしくは涙液量の減少の症状の処置または予防において使用され得る。
[0060]
 いかなる理論に拘束されることを望むものでもないが、加齢黄斑変性症や、白内障においては、ルテインやアスタキサンチンなどのカロテノイドを経口的に摂取することで血中から網膜に取り込まれ効果的であることが知られており、体の内側からの物質の取り込みとは異なった形で外部からでも効果が見込めると考えられる。
[0061]
 本発明の組成物を、侵襲的な眼科処置の後の、術後処置としての眼表面回復のために用いることが可能である。例えば、白内障手術後に、ゴブレット細胞密度(GCD)が減少し、ドライアイ症状が生じることが報告されている(Taehoon Oh et al., "Changes in the tear film and ocular surface after cataract surgery" Jpn J Ophthalmol (2012) 56:113-118)。さらに、角膜切除術やレーシック(laser in situ keratomileusis、LASIK)術の後にも、同様に、ゴブレット細胞の減少が報告されている(Ocular surface management of photorefractive keratectomy and laser in situ keratomileusis Albietz, Julie M, PhD;McLennan, Suzanne G, BAppSc(Optom);Lenton, Lee M, FRANZCO, FRACS Journal of Refractive Surgery; Nov/Dec 2003; 19, 6; Health & Medical Collection)。加えて、網膜手術や、放射線療法を含めた眼科癌治療の後にゴブレット細胞の減少が生じてドライアイ症状が呈されることが報告されている(Ocular surface management of photorefractive keratectomy and laser in situ keratomileusis Albietz, Julie M, PhD;McLennan, Suzanne G, BAppSc(Optom);Lenton, Lee M, FRANZCO, FRACS Journal of Refractive Surgery; Nov/Dec 2003; 19, 6; Health & Medical Collection)。本発明の組成物は、本明細書の実施例において実証されているようなゴブレット細胞数の回復効果によって、このような処置の後の眼表面回復のために好適に用いることができると考えられる。侵襲的な眼科処置としては、眼科手術が挙げられ、例えば、白内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(角膜屈折矯正手術)などが含まれる。
[0062]
 また、免疫疾患においてドライアイ症状が合併する場合、本発明の組成物は、免疫疾患、ならびにこれらの疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状(例えば、ドライアイ症状)を処置、改善または予防するために用いることができる。例えば、移植片対宿主病(GVHD)において、ゴブレット細胞が減少し、ドライアイ症状が呈されることが報告されており(Claudia Auw-Haedrich et al., "Histological and immunohistochemical characterisation of conjunctival graft vs host disease following haematopoietic stem cell transplantation" Graefe`s Arch Clin Exp Ophthalmol (2007) 245:1001-1007:Edgar M. Espana et al., "Graft versus host disease: clinical evaluation, diagnosis and management" Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2013) 251:1257-1266)、本発明の組成物は、移植片対宿主病(GVHD)を含めた免疫疾患、ならびにかかる疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状もしくは合併症(例えば、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状)を治療または予防する有用であると考えられる。
[0063]
 涙液量の増加およびゴブレット細胞数および/またはムチンの増加は、ドライアイ又は類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状の治療または予防に関して非常に有効であり、好ましい実施形態では、ドライアイ又は類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または予防するための、眼科用組成物が提供される。
[0064]
 <5.製剤化>
 本発明の組成物は、その適用に合わせた形態に製剤化されて提供され得る。例えば、本発明における組成物は、眼科用組成物である場合に、眼注射液、眼軟膏、点眼剤または眼灌流液として提供され得る。
[0065]
 組成物は、エアゾール、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏、散剤、錠剤、溶液、懸濁液、エマルジョン等の任意の剤形に製剤化することができる。組成物は、当技術分野で公知の任意の薬学的に許容される添加物および/または賦形剤を含んでよい。添加剤としては、張度調整剤、緩衝剤、防腐剤、共溶媒、および増粘剤が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、眼科用組成物は、水性の溶媒(例えば、水)に有効成分を溶解させた液剤の形態で提供され得る。
[0066]
 本発明の組成物は、当業者によって決定される任意の適切な経路によって投与することができ、限定されるものではないが、眼注射、局所適用(眼への適用を含む)、点眼、静脈注射、点滴、経口、非経口、経皮などから選択される投与経路による投与に適するように製剤化され得る。
[0067]
 一般的に、本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤等は、治療有効量の治療剤または有効成分、および薬学的に許容しうるキャリアもしくは賦形剤を含む。本明細書において「薬学的に許容しうる」は、動物、そしてより詳細にはヒトにおける使用のため、政府の監督官庁に認可されたか、あるいは薬局方または他の一般的に認められる薬局方に列挙されていることを意味する。本明細書において使用される「キャリア」は、治療剤を一緒に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。医薬を経口投与する場合は、水が好ましいキャリアである。医薬組成物を静脈内投与する場合は、生理食塩水および水性デキストロースが好ましいキャリアである。好ましくは、生理食塩水溶液、並びに水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、注射可能溶液の液体キャリアとして使用される。適切な賦形剤には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が含まれる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有することも可能である。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることも可能である。伝統的な結合剤およびキャリア、例えばトリグリセリドを用いて、組成物を座薬として配合することも可能である。経口配合物は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的キャリアを含むことも可能である。適切なキャリアの例は、E.W.Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)に記載される。このような組成物は、患者に適切に投与する形を提供するように、適切な量のキャリアと一緒に、治療有効量の療法剤、好ましくは精製型のものを含有する。配合物は、投与様式に適していなければならない。これらのほか、例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含んでいてもよい。
[0068]
 種々の張度調整剤が、組成物の張度を調整するために使用され得る。眼科用組成物である場合、好ましくは天然の涙の張度に調整するために使用され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロースおよび/またはマンニトールが、生理学的な張度に近づけるために組成物に加えられ得る。
[0069]
 適切な緩衝剤系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酪酸ナトリウムまたはホウ酸)が、保存条件下でのpH変動を防ぐために組成物に加えられ得る。
[0070]
 眼科用組成物は、包接化された抗酸化物質に加えて、眼への投与によってドライアイ症状およびドライアイ状態を一時的に緩和するように選択される他の成分を含んでもよい。他の成分としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:モノマー性ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール);ポリマー性ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、デキストラン(例えば、デキストラン70));水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);およびビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンおよびカーバメート(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974P))。
[0071]
 組成物は、保存のために防腐剤を含んでもよく、適切な防腐剤としては、以下:塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム-1、または当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。加えて、本発明の組成物は滅菌され得る。
[0072]
 本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、ドライアイなど)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
[0073]
 本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、ドライアイなどの眼科疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。
[0074]
 本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、ドライアイ)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、ドライアイなど等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
[0075]
 本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、ドライアイなど等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
[0076]
 本発明の一実施形態において「患者」または「被験体」は、ヒト、またはヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、またはチンパンジー等の1種以上)を含む。
[0077]
 本発明の医薬組成物または治療剤もしくは予防剤はキットとして提供することができる。特定の実施形態では、本発明は、本発明の組成物または医薬の1以上の成分が充填された、1以上の容器を含む、薬剤パックまたはキットを提供する。場合によって、このような容器に付随して、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形で、政府機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を示す情報を示すことも可能である。
[0078]
 本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、治療薬、予防薬、それらの各々の成分、説明書など)が提供されるユニットをいう。本発明は、有効成分と、包接化用の成分とを別々に提供するようなキットとして提供されていてもよい。キットは、安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、治療薬、予防薬)をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、治療薬、予防薬等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
[0079]
 本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、眼への投与(例えば、点眼、眼軟膏または注入などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
[0080]
 本発明の治療剤の量は、障害または状態の性質によって変動しうるが、当業者は本明細書の記載に基づき標準的臨床技術によって決定可能である。さらに、場合によって、in vitroアッセイを使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助することも可能である。配合物に使用しようとする正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重大性によっても変動しうるため、担当医の判断および各患者の状況に従って、決定すべきである。しかし、投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、1、5、10、15、100、または1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、または28日あたりに1または2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1または2回投与してもよい。投与量、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択してもよい。また治療薬は、治療有効量、または所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。悪性腫瘍マーカーが、投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量-反応曲線から推定可能である。
[0081]
 <6.好ましい実施形態>
 本発明の好ましい実施形態では、以下の抗酸化物質:
アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、β-カロテン、ルテイン、リコペン、レスベラトロール、メソゼアキサンチン、EPA、DHA、クルクミン、およびビタミンE
から選択される1つ以上の抗酸化物質を、
 以下のホスト化合物:
シクロデキストリン、アラビノガラクタン、グリシリジン、ヒドロキシベータシクロデキストリン、β1,3-1,6-グルカン、カリックスアレーン、キャビタナール、クラウンエーテル、カリキセラン、スフェロンド、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンおよびカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリン
から選択される1つ以上のホスト化合物で包接化して含む組成物が提供される。
[0082]
 現在までに、様々な組み合わせの包接化合物が作製され、食品、飲料、家庭用品、化粧品等として用いられており、当業者は、ゲスト化合物に合わせて、構造情報などを利用して適切なホスト化合物を選択することが可能である(藤原隆二、日本結晶学会誌 Vol.24 (1982) No.1 P54-64;シクロデキストリンの応用技術 シーエムシー出版、監修:寺尾啓二、小宮山真、2008年2月発行)。
[0083]
 本発明の好ましい実施形態において、上記組成物は、涙液量の増加、ゴブレット細胞数の増加、ムチンの増加、あるいは、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症、白内障、偽落屑症候群、GVHDを含めた免疫性疾患ならびにこれらの疾患における涙液量および/またはゴブレット細胞および/またはムチンを増加させることで改善される症状の治療または予防のためのものである。また、上記組成物は、レーシック術や白内障などの手術を含めた侵襲的な眼科処置後の眼表面回復のためのものであり得る。
[0084]
 本発明の1つの実施形態は、環状多糖類によって包接化した脂溶性抗酸化物質を含む組成物である。本発明のさらなる実施形態は、環状多糖類によって包接化した、カロテノイドを含む組成物である。本発明のさらなる実施形態は、環状多糖類によって包接化したキサントフィルを含む組成物である。本発明のさらなる実施形態は、環状多糖類によって包接化した、アスタキサンチンを含む組成物である。
[0085]
 シクロデキストリンによって包接化したアスタキサンチンを含む組成物は、本明細書の実施例において、眼科疾患(特に、ドライアイ)の治療に特に有用であることが示されており、特に好ましい。
[0086]
 本発明の別の実施形態では、抗酸化物質を包接化する工程を含む、抗酸化物質を含む組成物の製造方法が提供される。抗酸化物質として本明細書の他の箇所に記載されている任意のものを用いて、そして、ホスト化合物として本明細書の他の箇所に記載されている任意のものを用いて包接化を行うことができる。製造する組成物は、本明細書の他の箇所に記載されている任意の特徴を備えることができ、例えば、本明細書の他の箇所に記載されている任意の用途(例えば、涙液量の増加、ゴブレット細胞数の増加、ムチンの増加、眼科疾患の治療または予防)のための組成物であり得る。眼科疾患としては、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症または白内障などが挙げられる。
[0087]
 本発明のさらなる実施形態では、包接化された抗酸化物質を投与する工程を含む、涙液量を増加させるか、ゴブレット細胞数を増加させるか、ムチンを増加させるか、眼科疾患を治療または予防する、方法が提供される。眼科疾患は、ドライアイもしくは類似の眼科疾患、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症または白内障であり得る。包接化された抗酸化物質の投与は、本明細書に記載される任意の剤形の組成物の形態での投与を包含する。投与経路は、眼注射、局所適用(眼への適用を含む)、点眼、静脈注射、点滴、経口、非経口、経皮などから選択され得る。
[0088]
 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
[0089]
 以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
実施例
[0090]
 (製造例1:CD包接化ASXの調製)
 [調製]
 γ-シクロデキストリン(東京化成)を用いて、以下の手順によって、アスタキサンチン(Sigma-aldrich)を包接化し、可溶化した。以下にその手順を示す。
[0091]
 γ-シクロデキストリン及びアスタキサンチンの混合質量モル比を2:1として必要量を測り取り、よく混和した。次に、1mgのアスタキサンチンに対して1mLのMilliQを添加し、超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌した。さらに、シェーカーまたはスターラーで(100-150 rpm)にて室温で4時間から一晩処理した。その後、超音波水槽または超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌し、20℃、5000-7000rpmで20分間遠心して不溶物の除去を行った。最終包接物は、水系0.45μmフィルターで濾過することにより得た。
[0092]
 [可溶化の確認]
 アスタキサンチンを懸濁または溶解させた液体を、以下の手順で濾過することによって、アスタキサンチンが可溶化されているかを確認した。アスタキサンチンは、可視領域で呈色するため、溶液から除去される(溶解していない)場合には、液体が無色となり判別することができる。また、吸光(光度)計を用いて波長478nmの吸光度を測定し、濾液中のアスタキサンチン濃度を測定できる。
[0093]
 アスタキサンチンは脂溶性物質であるため、DMSOなどの有機溶媒に溶解させることができるが、有機溶媒を用いない水性溶媒では溶解させることができず、濾過によってアスタキサンチンが除去され、濾液は無色となる(図1)。しかし、γ-シクロデキストリンを用いて包接化したアスタキサンチンは、フィルター濾過後も水溶液中にとどまっており、可溶化されていることを確認した。
[0094]
 水溶化したアスタキサンチンの濃度は、以下の方法で測定した。DMSOにアスタキサンチンを溶解し、Milli Q水で最終濃度を6.25、12.5、25、50、100μg/mlに調整した。溶媒で0点補正したのち、各アスタキサンチン溶液の480nm吸光度を測定して検量線を引き、これをもとに水溶化アスタキサンチン溶液の480nm吸光度測定値から水溶化アスタキサンチン溶液の濃度を明らかにした。
[0095]
 目視での液色の確認に加えて、吸光度測定や、HPLC解析によって、包接化を確認・定量することも可能である。
[0096]
 (製造例2:アラビノガラクチン包接化アスタキサンチンの調製)
 アラビノガラクチンをホストとして用いて、アスタキサンチンを以下の手順で包接化した。
[0097]
 アラビノガラクチン及びアスタキサンチンの混合質量比を4:1として必要量を測り取り、よく混和した。次に、1mgのアスタキサンチンに対して1mLのMilliQを添加し、超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌した。さらに、シェーカーまたはスターラーで(100-150 rpm)にて室温で4時間から一晩処理した。その後、超音波水槽または超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌し、20℃、5000-7000rpmで20分間遠心して不溶物の除去を行った。最終包接物は、水系0.45μmフィルターで濾過することにより得た。
[0098]
 (製造例3:異なる組み合わせの包接化合物の調製)
 グリシリジンをホストとして用いて、ルテインを以下の手順で包接化する。
[0099]
 グリシリジン及びルテインの混合質量比を4:1として必要量を測り取り、よく混和する。次に、1mgのルテインに対して1mLのMilliQを添加し、超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌する。さらに、シェーカーまたはスターラーで(100-150 rpm)にて室温で4時間から一晩処理する。その後、超音波水槽または超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌し、20℃、5000-7000rpmで20分間遠心して不溶物の除去を行う。最終包接物は、水系0.45μmフィルターで濾過することにより得られる。
[0100]
 ヒドロキシベータシクロデキストリンをホストとして用いて、カンタキサンチンを以下の手順で包接化する。
[0101]
 ヒドロキシベータシクロデキストリン及びカンタキサンチンの混合質量比を2:1として必要量を測り取り、よく混和する。次に、1mgのカンタキサンチンに対して1mLのMilliQを添加し、超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌する。さらに、シェーカーまたはスターラーで(100-150 rpm)にて室温で4時間から一晩処理する。その後、超音波水槽または超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌し、20℃、5000-7000rpmで20分間遠心して不溶物の除去を行う。最終包接物は、水系0.45μmフィルターで濾過することにより得られる。
[0102]
 ヒドロキプロピルガンマシクロデキストリンをホストとして用いて、アスタキサンチンを以下の手順で包接化する。
[0103]
 ヒドロキシプロピルガンマシクロデキストリン及びアスタキサンチンの混合質量比を3:1として必要量を測り取り、よく混和する。次に、1mgのアスタキサンチンに対して1mLのMilliQを添加し、超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌する。さらに、シェーカーまたはスターラーで(100-150 rpm)にて室温で4時間から一晩処理する。その後、超音波水槽または超音波ホモジナイザー(振幅20%、2秒間隔1秒間パルス発振)で、4℃、30分間の条件で混合液を撹拌し、20℃、5000-7000rpmで20分間遠心して不溶物の除去を行う。最終包接物は、水系0.45μmフィルターで濾過することにより得られる。
[0104]
 (実施例1:アスタキサンチン点眼によるドライアイ症状の治癒効果)
 [概要]
 本実施例は、アスタキサンチンを点眼した際のドライアイ症状の改善の効果を検討することを目的とした。
[0105]
 [材料および方法]
 アスタキサンチンを、製造例1にしたがってγ-シクロデキストリンで包接化することによって可溶化し、水溶化アスタキサンチン(water-soluble astaxanthin、wsAsxとも表記)として用いた。
[0106]
 予備的に、水溶化アスタキサンチンの抗酸化能を培養細胞(マウス脳腫瘍由来SR-CDF1 DBT細胞、JCRB細胞バンク)において調べた。培養細胞において300μM H 2O 2で酸化ストレスを誘導し、DCFDA試薬を用いて活性酸素群の検出を行った。より詳細には、2.5×10 4のDBT細胞を8ウェルカルチャースライドに播種し、同時にwsAsxを添加した。42~48時間後、DCFDA試薬を100μMの最終濃度で添加して細胞内に取り込ませ、300μMのH 2O 2でROSの産生を誘導した。
[0107]
 ドライアイマウスモデルは、塩酸ベンザルコニウム(塩化ベンザルコニウム、benzalkonium chlorideまたはBACとも表記)の点眼処置によって作製した。
[0108]
 マウスに対してBAC処置を2週間継続した後に、さらなるBAC処置、水溶化アスタキサンチン、または水溶化コントロール(ビヒクル、γ-シクロデキストリンのみ)による点眼処置を2週間継続した。マウスに対してPBSのみを点眼した群をポジティブコントロールとして用いた。
[0109]
 マウスモデルにおける涙液量の変化を、シルマーテストによって測定した。涙液量を、通常涙液量を100とした時の相対涙液量(通常の涙液量(ろ紙移動距離):7.17±1.35mm)として求めた。統計処理:ANOVA、Student t-検定。
[0110]
 さらに、ドライアイモデルマウスの眼表面ゴブレット細胞に対するアスタキサンチン点眼の効果を調べるため、2週間のアスタキサンチン点眼後、組織学解析を行い、PAS染色により赤く染まった細胞数をカウントすることによって、ゴブレット細胞数をカウントした。
[0111]
 [結果]
 図2に示されるように、シクロデキストリンによって包接化したアスタキサンチンは十分な抗酸化能を有していた(図2)。
[0112]
 マウスモデルにおける結果を、図3および図4に示す。図3に示されるように、ドライアイモデルマウス(BAC + 0.02% BAC)では、涙液量が約半分まで減少しているが、2週間のアスタキサンチン点眼によりドライアイマウスの涙液量が正常量に回復した。Day14: BACドライモデルを作製した直後(処置前);Day28: ドライアイモデルにアスタキサンチンを14日間毎日点眼後)a、b:Day 14 vs Day28 Student t検定:P<0.05;c:wsControl at Day28 vs wsAsx Day28 Student t検定:P<0.05。
[0113]
 さらに、図4に示されるように、ドライアイモデルではゴブレット細胞数が著しく減少するものの、アスタキサンチン点眼により、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復した(**Student t-検定 P<0.01)。ゴブレット細胞は、涙の構造を作り出すために必須のムチンを産生する細胞であり、ゴブレット細胞から分泌される粘液のムチン(分泌型ムチン)は、涙を目の表面に均一に分布させ、かつ目の表面に保持することによって、涙の安定性に重要な役割を果たしている。
[0114]
 これらの結果から、脂溶性抗酸化物質であるアスタキサンチンを点眼剤として用いることは、涙液量の増加や、ゴブレット細胞数の増加において有用であることが示される。また、それゆえ、脂溶性抗酸化剤であるアスタキサンチンの眼科用薬としての使用は、ドライアイ又は類似の眼科疾患の治療または予防に有用であることが示される。
[0115]
 (実施例2:ドライアイ症状に対するアスタキサンチン点眼とアスタキサンチンサプリメントの比較検討)
 [概要]
 本実施例は、アスタキサンチンを点眼した場合と、経口投与した場合とのドライアイ症状の改善の効果を検討することを目的とした。
[0116]
 [材料および方法]
 実施例1に記載されるのと同様に、ドライアイモデルマウスを作製し、その後2週間のアスタキサンチン点眼液処置またはアスタキサンチンの経口投与(経口摂取アスタキサンチン、またはoral intake astaxanthin、oAsxとも表記)を行い、涙液量の変化を実施例1と同様にシルマーテストによって測定した。また、実施例1と同様にゴブレット細胞数をカウントした。
[0117]
 [結果]
 結果を図5および図6に示す。図5に示すように、2週間のアスタキサンチン点眼(1μg/ml)によりドライアイマウスの涙液量が正常値に回復したが、経口摂取群(200mg/kg)では涙液量は微増にとどまり有意な変化は認められなかった。
[0118]
Day14: 処置開始前(BACによるドライモデルを作成した直後;Day28: ドライアイモデルにアスタキサンチンを14日間毎日点眼後)a: wsAsx at Day 14 vs wsAsx at Day 28 Student t検定 P<0.01; b: oAsx at Day 14 vs oAsx at Day 28 Student t検定 P<0.05; c: wsControl at Day 28 vs ws Asx at Day 28 P<0.05; d: wsAsx at Day 28 vs oAsx at Day 28 P<0.01。またゴブレット細胞の組織学解析においても、水溶化アスタキサンチン点眼により、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復していた。一方、経口投与群では、ゴブレット細胞数の回復が認められなかった(統計処理:ANOVA、Student t-検定、a、b、c、d、e:P<0.001)(図6)。
[0119]
 本実施例の結果から、水溶化アスタキサンチンを含めた水溶化した脂溶性抗酸化物質を経口ではなく、直接眼に適用することが、涙液量の増加や、ゴブレット細胞数の増加において有利であり、それゆえ、ドライアイ又は類似の眼科疾患の治療または予防に有利であることが理解される。
[0120]
 (実施例3:水溶化アスタキサンチンの優位性の検討)
 [概要]
 本実施例は、アスタキサンチンを水溶化して用いた場合と、乳化もしくは有機溶媒に溶解させた場合との、ドライアイ症状の改善における有用性を検討することを目的とした。
[0121]
 [材料および方法]
 水溶化アスタキサンチンは、実施例1と同様にγ-シクロデキストリンに包接化することによって調製した。アスタキサンチンの乳化物は、tween80を界面活性剤として用いて調製した。有機溶媒としてDMSOを用いて、アスタキサンチンを溶解させた。
[0122]
 予備実験として、これら検体をマウスDBT細胞の増殖に及ぼす影響について検討を行なった。DMSOに溶解、乳化または水溶化したアスタキサンチンを4×10 4のDBT細胞に添加し、48時間の細胞増殖試験を行った。4×10 4を基準として48時間後の細胞数が何倍に増殖したかを測定した。
[0123]
 実施例1に記載されるのと同様に、ドライアイモデルマウスを作製し、その後2週間の水溶化アスタキサンチン点眼処置またはDMSO溶解アスタキサンチン点眼処置を行い、涙液量の変化を実施例1と同様にシルマーテストによって測定した。また、実施例1と同様にゴブレット細胞数をカウントした。乳化アスタキサンチンでは、極端に細胞増殖が抑制された(図7)ためドライアイマウスモデルでの検討は行わなかった。
[0124]
[結果]
 結果を、図7および8に示す。また、ゴブレット細胞数についての結果は、実施例2の結果と併せて図6に示した。
[0125]
 図7に示されるように、乳化アスタキサンチンでは極端に細胞増殖が抑制されたが、水溶化アスタキサンチンおよびDMSO溶解アスタキサンチンは、細胞増殖への影響を示さなかった。
[0126]
 図8に示されるように、水溶化アスタキサンチンまたはDMSO(0.1%)に溶解したアスタキサンチンの点眼により、水溶化アスタキサンチンではドライアイ改善効果が認められたが、ドライアイ改善効果はDMSO溶解アスタキサンチンでは認められなかった。統計処理:ANOVA及びstudent t検定、a: wsAsx at Day 14 vs wsAsx at Day 28 P<0.05; b: wsControl at Day 28 vs wsAsx at Day 28 P<0.05; c: wsAsx at Day 28 vs Asx / DMSO at Day 28 P<0.05。
[0127]
 ゴブレット細胞の組織学解析においても、水溶化アスタキサンチン点眼により、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復していた。一方、DMSO溶解アスタキサンチンでは、ゴブレット細胞数の回復が認められなかった(統計処理:ANOVA、Student t-検定、a、b、c、d、e: P<0.001)(図6)。
[0128]
 理論に拘束されるものではないが、この結果からは、アスタキサンチン単体ではなく、γ-シクロデキストリン等を用いて包接化することが、予想外に、ドライアイの改善において有用であることが示されると考えられる。
[0129]
 (実施例4:アラビノガラクチン包接体の検討)
 [概要]
 本実施例は、アスタキサンチンをアラビノガラクチンを用い水溶化して用いた場合の有用性を検討することを目的とした。
[0130]
 [材料および方法]
 本実施例では、製造例2に記載されるように、アスタキサンチンをアラビノガラクタン(Arb)を用いて包接化することによって水溶化した。
[0131]
 実施例3と同様に、Arbを用いて包接化したアスタキサンチンを4×10 4のDBT細胞に添加し、48時間の細胞増殖試験を行った。4×10 4を基準として48時間後の細胞数が何倍に増殖したかを測定した。
[0132]
 次に、実施例1と同様に、アラビノガラクチンによって包接化したアスタキサンチンを用いて、実施例1と同様に抗酸化力を試験した。より詳細には、Arbを用いて包接化したアスタキサンチンをDBT培養細胞に添加し、300μM H 2O 2で酸化ストレスを誘導し、DCFDA試薬を用いて活性酸素群の検出を行った。
[0133]
 [結果]
 結果を図9に示す。Arbを用いて包接化した場合も、γ-シクロデキストリンを用いて包接化した場合と同様に、細胞増殖に悪影響を及ぼさないことが実証された。また、図10に示すようにArbで包接化したアスタキサンチンは、十分な抗酸化能を有していることが明らかとなった。
[0134]
 したがって、脂溶性抗酸化物質を、Arbを用いて包接化することによっても、γ-シクロデキストリンを用いた場合と同様にドライアイ又は類似の眼科疾患の治療または予防に有用であると考えられる。
[0135]
 (実施例5:他の抗酸化物質の包接化の検討)
 [概要]
 本実施例においては、アスタキサンチン以外の脂溶性抗酸化物質の包接化について検討した。
[0136]
 [材料および方法]
 製造例1に記載されるのと同様に、リコペンおよびカンタキサンチンをγーシクロデキストリンによって包接化した。0.45μmフィルター濾過により、リコペンおよびカンタキサンチンの可溶化を確認した。
[0137]
 包接化リコペンについて、実施例1に記載されるのと同様に抗酸化能を有することを確認した。より詳細には、培養細胞において200μM H で酸化ストレスを誘導し、DCFDA試薬を用いて活性酸素群の検出を行った。
[0138]
 [結果]
 結果を図11および図12に示す。フィルター濾過後の溶液は、リコペンにより呈色しており、リコペンが水溶化されていることが確認された(図11b)。さらに、水溶化されたリコペンは、水溶化アスタキサンチンよりも弱いものの、抗酸化能を有することが確認された(図11c)。カンタキサンチンについても、濾過後の溶液の呈色により、カンタキサンチンの水溶化の成功が目視で確認された(図12)。
[0139]
 アスタキサンチン以外の脂溶性抗酸化物質についても、γーシクロデキストリンによる包接化によって、水溶化することが可能であること、そして水溶化後にも抗酸化能が維持されることが示された。したがって、他の脂溶性抗酸化物質をアスタキサンチンに代えて使用した場合も、アスタキサンチンを用いた場合と同様にドライアイ又は類似の眼科疾患の治療または予防に有用であると考えられる。
[0140]
 (実施例6:他の包接化合物のドライアイ症状に対する効果)
 [概要]
 製造例2および3において作製した包接体を用いて、実施例1と同様にドライアイ症状に対する効果を試験する。
[0141]
 ドライアイマウスモデルは、塩酸ベンザルコニウムの点眼処置によって作製する。
[0142]
 マウスに対してBAC処置を2週間継続した後に、さらなるBAC処置、各ホスト化合物によって包接化した各抗酸化物質、または水溶化コントロール(ホスト化合物のみ)による点眼処置を2週間継続する。マウスに対してPBSのみを点眼した群をポジティブコントロールとして用いる。
[0143]
 マウスモデルにおける涙液量の変化を、シルマーテストによって測定する。涙液量を、通常涙液量を100とした時の相対涙液量(通常の涙液量(ろ紙移動距離):7.17±1.35mm)として求める。統計処理:ANOVA、Student t-検定。さらに、ドライアイモデルマウスの眼表面ゴブレット細胞に対するアスタキサンチン点眼の効果を調べるため、2週間のアスタキサンチン点眼後、組織学解析を行い、PAS染色により赤く染まった細胞数をカウントすることによって、ゴブレット細胞数をカウントする。
[0144]
 [結果]
 アラビノガラクチンをホスト化合物として包接化したアスタキサンチンの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0145]
 カリックスアレーンをホスト化合物として包接化したレスベラトロールの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0146]
 グリシリジンをホスト化合物として包接化したルテインの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0147]
 ヒドロキシベータシクロデキストリンをホスト化合物として包接化したカンタキサンチンの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0148]
 カリックスアレーンをホスト化合物として包接化したレスベラトロールの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0149]
 β1,3-1,6-グルカンをホスト化合物として包接化したゼアキサンチンの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0150]
 ヒドロキプロピルガンマシクロデキストリンをホスト化合物として包接化したアスタキサンチンの点眼によって、マウスモデルの涙液量が正常量に回復する。また、ゴブレット細胞数が正常数と同レベルに回復する。
[0151]
 (実施例7:製剤の調製例)
 点眼剤の調製例
 各濃度の被験物質の組成を以下に示す。
 包接化アスタキサンチン(包接化アスタキサンチンは、上記製造例で使用される方法またはその改変法にて製造する)    0.1g(アスタキサンチン重量)
 塩化ナトリウム          0.85g
 リン酸二水素ナトリウム二水和物  0.1g
 塩化ベンザルコニウム       0.005g
 水酸化ナトリウム         適量
 精製水              適量
                  全量100ml(pH7.0)。
[0152]
 有効成分含量は、抗酸化物質の重量で表示しているが、同様に、包接化抗酸化物質の重量で表示してもよい。
[0153]
 点眼剤は、基剤で希釈することも出来る。
[0154]
 基材の組成は以下のとおり。
 塩化ナトリウム          0.85g
 リン酸二水素ナトリウム二水和物  0.1g
 塩化ベンザルコニウム       0.005g
 水酸化ナトリウム         適量
 精製水              適量
                  全量100ml(pH7.0)。
[0155]
 (注記)
 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
[0156]
 関連出願
 本出願は、2017年6月23日に出願された特願2017-123224号の優先権を主張する。当該出願の内容は、その全体が全ての目的のために本明細書において参考として援用される。

産業上の利用可能性

[0157]
 本発明は、眼科疾患における治療のための新規な医薬として利用可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 包接化された抗酸化物質を含む、眼科用組成物。
[請求項2]
 前記抗酸化物質が、脂溶性抗酸化物質である、請求項1に記載の眼科用組成物。
[請求項3]
 前記抗酸化物質が、該抗酸化物質を可溶化することができるホスト化合物によって包接化されている、請求項1または2に記載の眼科用組成物。
[請求項4]
 前記ホスト化合物が大環状化合物である、請求項3に記載の眼科用組成物。
[請求項5]
 脂溶性抗酸化物質および大環状化合物を含み、該脂溶性抗酸化物質の水溶性が、該脂溶性抗酸化物質が単独で存在する場合の水溶性と比較して増大していることを特徴とする、眼科用組成物。
[請求項6]
 涙液量を増加させるための、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項7]
 ゴブレット細胞数を増加させるための、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項8]
 ムチンを増加させるための、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項9]
 涙液量を増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項10]
 ゴブレット細胞を増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項11]
 ムチンを増加させることで治療、改善または状況の反転が達成される眼科疾患、眼科障害または眼科状態を処置するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項12]
 侵襲的な眼科処置後の眼表面回復のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項13]
 ドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状、結膜炎、角膜潰瘍、加齢黄斑変性症、白内障、または偽落屑症候群を治療または予防するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項14]
 移植片対宿主病(GVHD)におけるドライアイもしくは類似の眼科疾患、眼科障害または眼科症状を治療または予防するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項15]
 点眼剤または眼灌流液である、請求項1~14のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項16]
 前記脂溶性抗酸化物質が、共役二重結合を含む、請求項2~15のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項17]
 前記脂溶性抗酸化物質が、カロテノイドである、請求項16に記載の眼科用組成物。
[請求項18]
 前記脂溶性抗酸化物質が、アスタキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、βーカロテン、リコペン、レスベラトロール、メソゼアキサンチン、EPA、DHA、クルクミン、またはビタミンEである、請求項17に記載の眼科用組成物。
[請求項19]
 前記大環状化合物が環状多糖である、請求項4~18のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項20]
 前記大環状化合物が、シクロデキストリン、アラビノガラクタン、グリシリジン、ヒドロキシベータシクロデキストリン、β1,3-1,6-グルカン、カリックスアレーン、キャビタナール、クラウンエーテル、カリキセラン、スフェロンド、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、ランダムリーメチレーティッド-β-シクロデキストリン、ヒドロキシ-γ-シクロデキストリン、エピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンまたはカルボキシメチルエピクロロヒドリン-β-シクロデキストリンである、請求項4~19のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
[請求項21]
 前記大環状化合物がγ-シクロデキストリンである、請求項20に記載の眼科用組成物。
[請求項22]
 前記脂溶性抗酸化物質がアスタキサンチンであり、前記大環状化合物がγ-シクロデキストリンである、ドライアイもしくは類似の眼科疾患を治療または予防するための、請求項4~21のいずれか1項に記載の眼科用組成物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]