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1. (WO2018225830) LUNG CANCER DETECTION METHOD
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明 細 書

発明の名称 肺がんの検出方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

実施例

0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 肺がんの検出方法

技術分野

[0001]
 本発明は、肺がんの検出方法に関する。

背景技術

[0002]
 世界のがん年間死亡数において、最も多いものは肺がんである。2012年には、世界で160万人が肺がんにより死亡したと予測されている。我が国では、年間7万4000人が肺がんにより死亡し、がん死亡原因において、肺がんが第1位の疾患である。肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類され、肺がん患者全体の15%が小細胞肺がんであり、残りの85%が非小細胞肺がんである。さらに、非小細胞肺がんは、病理組織学的に、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん、多形がんやがん肉腫などの肉腫様がんなどのタイプに分けることができる。
[0003]
 肺がんの生存率は臨床病期の進行と共に低下する。例えば手術が可能な臨床病期IA、IB、IIA、IIBおよびIIIA期の非小細胞肺がんでは、5年生存率がそれぞれ82.0%、66.1%、54.5%、46.1%および42.8%であり(非特許文献1)、手術適応のない臨床病期IIIBおよびIV期の非小細胞肺がんでは、生存期間中央値はそれぞれ22.4か月(非特許文献2)および10.3か月(非特許文献3)である。
[0004]
 肺がんに対する既存の腫瘍マーカーとして、肺腺がんに対する血清Carcino embryonic antigen(CEA)、肺扁平上皮がんに対するcytokeratin 19 fragment(CYFRA 21-1)、肺小細胞がんに対するNeuron-specific enolase(NSE)などが臨床的な診断に用いられている。しかし、肺腺がん症例におけるCEAの陽性率は36.6~56.5%に過ぎず(非特許文献4 、5)、特にI期の早期肺腺がんでは陽性率が27%と低いため(非特許文献5)、CEAでは根治可能な病期で肺腺がんを診断することは困難である。また、肺扁平上皮がん症例におけるCYFRA 21-1の陽性率は57%(非特許文献6)、小細胞肺がん症例におけるNSEの陽性率は45%であり(非特許文献7)、既存の腫瘍マーカーより高感度に肺がんを検出することが可能なマーカーの開発が求められている。
[0005]
 臨床応用に向けて開発が進められている腫瘍マーカーとして、血清CYBP(特許文献1)、UBE2L3(特許文献2)等が上げられるが、患者の血液採取を必須条件とし、侵襲的である。このような検査ではより低侵襲であることが求められる。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特表2012-526976
特許文献2 : 特開2014-115186

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : Sawabata N、et al.、J Thorac Oncol. 6:1229-35、2011.
非特許文献2 : Atagi S、 et al.、 Lancet Oncol. 13:671-8、2012.
非特許文献3 : Scagliotti GV、 et al.、 J Clin Oncol. 26:3543-51、2008.
非特許文献4 : Molina R、 et al.、 Am J Respir Crit Care Med. 193:427-37、 2016
非特許文献5 : Matsuoka K、 et al.、 Eur J Cardiothorac Surg. 32:435-9、 2007.
非特許文献6 : Rastel D、et al.、Eur J Cancer. 30A:601-6、1994.
非特許文献7 : Stieber P、et al.、 Anticancer Res. 19(4A):2673-8、1999.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明は、肺がんの検出方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、肺がん患者に特異的に見られる、体液中のキニノーゲンIの断片化の増加や正常な構造を有するタンパク質の減少、タンパク質の不正常な位置での切れ目や中間位置の欠損による露出部を見出し、簡易で低侵襲性または非侵襲性の肺がん検出方法を確立すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
[0010]
 すなわち、本発明は以下の[1]~[12]を提供し得るものである。
[項1]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程を含む肺がんの検出方法。
[項2]
 前記キニノーゲンIの不正常な切断が、該キニノーゲンI中のペプチド結合に1以上の切れ目をもたらす切断および/または該キニノーゲンIの1以上の箇所に、1または2以上のアミノ酸残基の欠損をもたらす切断である、項1記載の肺がんの検出方法。
[項3]
 前記被検体由来試料中における、キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程が、以下の(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項1または2記載の肺がんの検出方法:
(1)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIの正常な構造を有するタンパク質の量の減少を検知すること;
(2)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのC末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質の量または存在を検知すること;
(3)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのN末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質の量または存在を検知すること;および
(4)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIについて、アミノ酸配列の任意の中間部位の切断又は欠損の量または存在を検知すること。
[項4]
 項1記載の肺がんの検出方法であって、
 前記キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程が、以下の(a)~(f)からなる群より選択される少なくともいずれか1種の量または存在を検知することを含む、肺腺がんの検出方法:
(a)ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;(b)IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;(c)TEHLASSSEDSTTPSAをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;(d)IYPTVNCQPLGMISをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(e)IYPTVNCQPLをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;および
(f)IYPTVNCQPをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片。

[項5]
 前記不正常な切断をインビトロで検知する工程が、
 被検体試料中に存在するキニノーゲンI由来の正常な構造を有するタンパク質の量の減少、および/またはキニノーゲンI由来のタンパク質断片の量または存在を検知することを含む、項1~4のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[項6]
 前記被検体由来試料が、尿または血液から選択される、項1~5のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[項7]
 質量分析測定法、免疫化学的測定法、およびクロマトグラフィー法からなる群より選択される少なくとも1種の方法を用いる工程を含む、項1~6のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[項8]
 上記肺がんが、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん、多形がん、およびがん肉腫からなる群より選択される1種の非小細胞がん;又は小細胞肺がんである、項1~7のいずれか1項記載のがんの検出方法。
[項9]
 項1記載の肺がんの検出方法であって、前記キニノーゲンIにおける不正常な切断の有無が、該キニノーゲンIの断片化率によって決定され、該断片化率が、
 キニノーゲンIタンパク質断片化率(Fn)=Cn/In
 Cn:各キニノーゲンIタンパク質断片の量
 In:キニノーゲンIタンパク質由来タンパク質全量
 で得られる、肺がんの検出方法。
[項10]
 前記肺がんの検出方法が、早期肺がんの診断補助の為の検出、肺がんの診断の為の検出、肺がんの進行の検出、肺がんの再発の有無の予測の為の検出、及び肺がんの治療効果の有無の為の検出からなる群より選択されるいずれか1つ以上である、項1~9のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[項11]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の不正常な切断に由来するタンパク質断片の発現レベルに基づくデータを正常な切断として検知されるキニノーゲンIの発現レベルデータと比較する比較工程を含み、比較により被検体由来試料のキニノーゲンIのタンパク質の不正常な切断に由来するペプチドの量が、正常値より高いことを基準として、肺がんを検出する、肺がん検出プログラム。
[項12]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の1つ以上のタンパク質分解酵素消化ペプチドの発現レベルデータを、正常値と比較する比較工程を含み、
 該ペプチドの量が正常値と比較して低いことを基準として、肺がんを検出する、肺がん検出プログラム。

発明の効果

[0011]
 本発明により、肺がんを尿や血液などの体液を用いて低侵襲の方法で検出することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、健常者と肺腺がん患者の被検体由来試料(尿)をインビトロで処理した後の、ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片の量比を示す図である。
[図2] 図2は、健常者と肺腺がん患者の被検体由来試料(尿)をインビトロで処理した後の、IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片の量比を示す図である。
[図3] 図3は、健常者と早期肺腺がん患者の被検体由来試料(尿)をインビトロで処理した後の、ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片の量比を示す図である。
[図4] 図4は、健常者と早期肺腺がん患者の被検体由来試料(尿)をインビトロで処理した後の、IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片の量比を示す図である。
[図5] 図5は、被検体由来試料(尿)のインビトロでの処理により、EYCGVPGDGDEELをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片が高値に見出された肺腺がん症例における胸部CT画像を示す図である。右肺上葉S1に胸膜の陥入と気管支透亮および周囲にすりガラス影を伴う約2cm大の原発巣を認める。
[図6] 図6は、図5と同じ患者におけるPET-CT胸部画像を示す図である。胸部CT検査で認められた原発巣に一致して、PETの異常集積を認める。
[図7] 図7は、図5と同じ患者における経気管支生検で採取した肺腺がん組織像(H-E染色および抗TTF-1抗体を用いた免疫組織化学発光)である。
[図8] 図8は、肺腺がん症例における、キニノーゲンI断片化率の経時的変化を示すグラフ(a)と同症例の胸部CT画像およびPET-CT画像を示す図(b)である。
[図9] 図9は、早期肺腺がん症例における手術前後の断片化率の変化を示すグラフである。
[図10] 図10は、epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性のIV期肺腺がん症例における、胸部CT画像を示す図である。

発明を実施するための形態

[0013]
[肺がんの検出方法]
 本発明の肺がんの検出方法は、本発明者らによる新たな発見に基づく。すなわち、本発明者らは、肺がん患者の体内では、キニノーゲン(Kininogen)Iが、健常者では切断されないような箇所で切断され、様々なタイプの欠損タンパク質または切れ目が生じた当該タンパク質が増加している場合があることを見出した。
[0014]
 すなわち、特定のタンパク質において、C末端部またはN末端部の欠損、不正常な位置でのペプチド結合の切れ目あるいはそれに伴う切れ目からのアミノ酸の欠損などのような不正常な切断という現象が見られることを見出した。
[0015]
 キニノーゲンIの不正常な切断は、肺がん特異的なプロテアーゼの存在による可能性もある。従って、本発明は、インビトロにおいて、そのような不正常な切断によるキニノーゲンIの切れ目や欠損を指標として健常者と肺がん患者を区別して評価することができる。一方、キニノーゲンIの不正常な切断の亢進を、正常タンパク質の量(相対的な量比を含む)の減少を指標として健常者と肺がん患者を区別して評価することも可能となる。
[0016]
 本発明は、被検体由来試料中におけるキニノーゲンIについて、不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程を含む肺がんの検出方法である。
[0017]
 本明細書において、キニノーゲンIの「不正常な切断」は、限定はされないが、キニノーゲンIの正常な構造とは異なる一次構造、二次構造、あるいは三次構造をもたらす。例えば、キニノーゲンIにおけるペプチド結合に1以上の切れ目をもたらす切断、キニノーゲンIの1以上の箇所に、1または2以上のアミノ酸残基の欠損をもたらす切断などが含まれる。
[0018]
 限定はされないが、「不正常な切断」によって、キニノーゲンIのC末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質、あるいは、キニノーゲンIのN末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質が生じ得る。あるいは、「不正常な切断」によって、タンパク質中のアミノ酸残基同士のペプチド結合の切れまたは任意の中間位置でのアミノ酸の欠損が生じる。
[0019]
 キニノーゲンIの「不正常な切断」の一態様では、ペプチド結合が切れて新たな切断部位のアミノ酸残基を露出するが、ジスルフィド結合などにより、もとのタンパク質からアミノ酸を失うことのない場合がある。このような場合では、生体から取り出した未処理の試料中では当該キニノーゲンIの欠損あるいは断片化が生じていない場合がある。本発明の不正常な切断は、このような切断も含む。あるいは、このように、例えば、ジスルフィド結合などにより、もとのタンパク質が結合状態を保持してはいるが、ペプチド結合が切れて、そこからさらに、1または2以上のアミノ酸残基が欠如することで、タンパク質中のアミノ酸残基が任意の中間位置で欠損している場合が生じる。
[0020]
 キニノーゲンIに関連して、本来の正常な翻訳後プロセシングは、ここでの不正常な切断ではない。
[0021]
 本明細書において、「被検体」とは、がんの検出対象となる哺乳動物を指し、限定はされないが、好ましくは、イヌ、ネコ、マウス、あるいはヒトである。
[0022]
 本明細書において、肺がんとは、肺のいずれかの組織に発生するがんをいう。肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん、多形がん、およびがん肉腫からなる群より選択される1種の非小細胞がん;又は小細胞肺がんであり得る。このうち、肺腺がんとは、肺の分泌腺組織に発生するがんをいう。
[0023]
 本願発明において、肺がんは、臨床病期IA、IB、IIA、IIBおよびIIIA期、臨床病期IIIBおよびIV期のいずれの段階のものであってもよい。早期肺がんというときには、臨床病期IA、IB、IIA、およびIIBのいずれかを指す。
[0024]
 本発明の「肺がんの検出」とは、肺がんの罹患の有無の診断補助の為の検出であり得る。さらには、「肺がんの検出」は、肺がんの進行の有無や程度の検出、再発の有無や程度の検出、又は肺がんの手術や抗がん剤治療などの治療効果の有無や効果奏功の程度の検出のいずれも含む。ここで、再発は、手術や抗がん剤治療後の再発を含む。また、治療効果の有無や治療奏功の程度は、典型的には、がんの縮小などで見出されるものである。本発明の方法によれば、簡易にこれらの検出を行うことができる。すなわち、本発明のキニノーゲンIの「不正常な切断」は、肺がんの罹患に伴い見出され得る。さらには、肺がんの進行に伴って、キニノーゲンIの不正常な切断の割合が増加し得る。さらには、肺がんの再発に伴って、キニノーゲンIの不正常な切断が見出されたり、増加したりし得る。さらには、肺がんの手術や抗がん剤治療の効果奏功に伴って、キニノーゲンIの不正常な切断は減少し得る。
[0025]
 本明細書において、「被検体由来試料」とは、被検体に由来する体液を指し、体液そのものの他、体液の濃縮液、希釈液、あるいはその他の適宜の処理済みの液体を指す。ここで、体液は、限定はされないが、例えば、尿、血液(全血、血漿、血清)、痰、汗、髄液、消化液、腹水、を指す。好ましくは、体液は、尿または血液であり、特に好ましくは尿である。ここで、尿は、早朝中間尿、蓄尿、随時尿のいずれでもあり得る。尿や血液などの体液の採取量は、10μl~200ml、好ましくは、100μl~100ml、さらに好ましくは、1ml~100mlである。
[0026]
 ここで、体液の処理は、より詳細には、濃縮、希釈、分画、脱塩等の前処理、グリセリン等の保存剤、プロテアーゼ阻害剤等の安定化剤、防腐剤を加えることなどを指す。冷蔵または冷凍処理した後に常温に戻すこと、冷蔵または冷凍処理前後のいずれかで適宜の処理を行うことなども含まれる。さらに、例えば体液が血液の場合には、適宜の処理として抗凝血剤処理を行うこともできる。これらの処理を組み合わせることも可能である。
[0027]
 体液が尿の場合には、測定前に前処理として濃縮を含む操作を行うことが好ましい。この濃縮方法は特に限定されないが、分画分子量の限外ろ過膜を用いた方法、凍結濃縮、減圧または真空濃縮、加熱などが挙げられる。分画分子量としては、限定はされず、例えば、3kD、10kD、30kD、50kDなど任意の値を用いることができる。
[0028]
 例えば、体液が尿の場合、原尿の総タンパク質量の濃度は、0.001g/dL~0.6g/dL程度であるため、濃縮は有用な前処理である。原尿を200~250倍に濃縮して分析に用いることができる。この濃縮液をそのまま測定に供することも可能であるが、さらに総タンパク質量を希釈して調整して測定に供することもできる。例えば、ウエスタンブロットなどの測定手法によっては、0.1μg~10μg/μl程度に調整して測定に供することもできる。
[0029]
 濃縮は、Vivaspin(登録商標、サルトリウス・ジャパン株式会社製)、アミコンウルトラ(メルクミリポア社製)などを使用して、製造者の指示に従って使用することもできる。
[0030]
 希釈は、蒸留水や緩衝液を用いて行うことができ、濃縮尿の調整にも利用することができる。
[0031]
 キニノーゲンIの欠損は、一次構造で比較した場合に、由来する全長タンパク質のC末端部、N末端部、あるいは中間位置のアミノ酸残基の欠損があれば特にその大きさや長さに限定はない。ここでC末端部、N末端部、あるいは中間位置に欠損があるとは、通常そのタンパク質が正常に機能する単位のタンパク質よりもC末端側、N末端側が短いか、中間位置に存在すべきアミノ酸残基が欠如していることを意味する。
[0032]
 本明細書において、タンパク質断片の配列が特定されている場合には、それぞれの表記記号は、アミノ酸残基の一文字表記として使用されている通常の文字を意味する。
 具体的には、
 A  Ala  Alanine アラニン  
 C  Cys  Cysteine システイン  
 D  Asp  Aspartic acid アスパラギン酸
 E  Glu  Glutamic acid グルタミン酸
 F  Phe  Phenylalanine フェニルアラニン
 G  Gly  Glycine グリシン
 H  His  Histidine ヒスチジン
 I  Ile  Isoleucine イソロイシン
 K  Lys  Lysine リシン
 L  Leu  Leucine ロイシン
 M  Met  Methionine メチオニン
 N  Asn  Asparagine アスパラギン
 P  Pro  Proline プロリン
 Q  Gln  Glutamine グルタミン
 R  Arg  Arginine アルギニン 
 S  Ser  Serine セリン
 T  Thr  Threonine トレオニン
 V  Val  Valine バリン
 W  Trp  Tryptophan トリプトファン
 Y  Tyr  Tyrosine チロシン
[0033]
 本発明において、被検体由来試料中のキニノーゲンIについて、不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程は、限定はされないが、好ましくは、以下の(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1つを含む工程であり得る。
[0034]
(1)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIの正常な構造を有するタンパク質の量の減少を検知すること;
(2)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのC末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質断片の量または存在を検知すること;
(3)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのN末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質断片の量または存在を検知すること;および
(4)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIについて、アミノ酸配列の任意の中間部位の切れ目又は欠損を有するタンパク質の量または存在を検知すること。
[0035]
 限定はされないが、本発明の肺がんの検出方法の1つの態様では、被検体由来試料における1または2以上のキニノーゲンIの正常な構造を有するタンパク質の量の減少を検知する。具体的には、例えば、正常な構造を有するキニノーゲンIの量を、当該キニノーゲンIのC末端部のアミノ酸配列および/またはN末端部のアミノ酸配列の有無によって測定し、正常な構造を有するタンパク質の量が健常者と比較して相対的に減少しているか否かを検出することができる。
[0036]
 限定はされないが、本発明の肺がんの検出方法の別の態様では、被検体由来試料を用いて、インビトロにおいて、キニノーゲンIのタンパク質断片を検知することを含む。このようなタンパク質断片の検知は、被検体由来試料中に断片化した状態で存在するタンパク質断片および/または例えば被検体由来試料を還元処理等に供した後に生じるタンパク質断片を検知することであり得る。
[0037]
 具体的には、キニノーゲンIのタンパク質断片の量をインビトロで測定する工程では、キニノーゲンIのタンパク質断片が、該タンパク質の全長と比較してC末端側に欠損があるタンパク質に由来する断片または中間部位に切れ目および/またはアミノ酸の欠損があるタンパク質に由来する断片であることが好ましい。
[0038]
 本明細書で、キニノーゲンIのタンパク質断片のC末端配列が記載されている場合には、例えば、「ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片」、「IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片」、「TEHLASSSEDSTTPSAをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片」などと表現される。例えば、「ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片」の場合、全長タンパク質では右端に示されるTよりもC末端部側に本来存在していたアミノ酸残基は欠損(欠如)していることを示しており、1番目のEよりN末端側へはアミノ酸残基は存在していても存在していなくてもよいことを意味する。
[0039]
 キニノーゲンIのタンパク質断片は、以下からなる群より選択される少なくとも1つ以上であることが好ましい。
(a)ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片(本明細書においてP1ともいう);
(b)IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片(本明細書において、P2ともいう);
(c)TEHLASSSEDSTTPSAをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;(d)IYPTVNCQPLGMISをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(e)IYPTVNCQPLをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;および
(f)IYPTVNCQPをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片。
[0040]
 さらに、このようなキニノーゲンIのタンパク質断片からなる群より選択される少なくとも1つ以上をインビトロで測定することによって、例えば早期肺腺がんなどの早期肺がんの検出が可能である。
[0041]
 ここで、キニノーゲンIのタンパク質断片におけるアミノ酸残基の数は特に限定はされないが、好ましくは少なくとも10残基以上、より好ましくは少なくとも50残基以上である。タンパク質断片のサイズの上限は特に限定はされず、それぞれのタンパク質断片の由来である全長タンパク質のサイズ未満である。例えば、限定はされないが、それぞれのタンパク質断片の由来である全長タンパク質と比較して、C末端側が欠損している構造のタンパク質断片である。タンパク質断片は、全長未満であれば特に上限はないが、場合によっては、200残基以下、好ましくは100残基以下のような短い断片で存在することも可能である。
[0042]
 さらに、被検体由来試料中におけるキニノーゲンIのN末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質の存在または相対量の増加を検知すること;または被検体由来試料中におけるキニノーゲンIについて、アミノ酸配列の任意の中間部位の切断又は欠損の存在または相対量の増加を検知するために、N末端側が欠如したC末端側の遊離したタンパク質断片を検出することも可能である。このような断片を検出することで、(a)~(f)のタンパク質断片を間接的に検出したり、N末端が生体内で欠損しているタンパク質断片の存在を検知したりすることもできる。
[0043]
 本発明のキニノーゲンIタンパク質断片の分子量は、全長タンパク質未満であれば限定はされない。但し、例えば尿などの検体を用いて肺がんを検出する方法によっては、例えば3kDa以上全長未満、好ましくは10kDa以上全長未満である。
[0044]
 さらには、これらのキニノーゲンIタンパク質断片は、それぞれ、上記配列を有してさえいれば、糖鎖付加やリン酸化等の翻訳後修飾を受けたものも含まれる。
[0045]
 以下、キニノーゲンIのタンパク質断片の配列を特定のデータベースに含まれる特定の配列(配列表の配列番号1又は2)で例示しながら説明する。当業者には明らかな通り、これらの配列や配列中におけるアミノ酸残基の位置およびアミノ酸残基数は、個人により変わる場合もあり、またデータベースによって掲載配列が異なる場合もある。配列は本発明の説明の為のものであり、本発明を限定するものではない。
[0046]
 ここで、キニノーゲンIは、カリクレイン-キニン系で重要な役割を果たすタンパク質である。この代謝系は、種々の生理活性を有するキニン類を生成させる一連の生体内反応系である。
[0047]
 カリクレイン-キニン系は、生体内において様々な酵素反応系、例えばレニン-アンジオテンシン‐アルドステロン系、血液凝固系等と関連をもって生体の機能調節に関わっている。生成物であるブラジキニン等のキニン類は、末梢血管拡張に伴う降圧、血管透過性の亢進、平滑筋の収縮或いは弛緩、発痛、白血球の遊走など種々の生理活性を示す。キニノーゲンIは、このキニンの前駆体となるタンパク質であり、内因系血液凝固因子の一つである。女性生殖器に非常に高濃度で存在し、ブラジキニンを放出することにより、カリクレイン-キニン系を介して妊娠分娩にも重要な役割を持つとされている。また、不育症との関係も示唆されている。
[0048]
 キニノーゲンIは、前駆体配列として、例えば、UniProtKB-P01042の配列(配列表の配列番号1)又はUniProtKB-P01042-2の配列(配列表の配列番号2)がある。
[0049]
 キニノーゲンIには、いくつかの代表的なアイソフォーム(高分子量型および低分子量型)がある。高分子量型は(配列表の配列番号1)、644アミノ酸からなる前駆体として合成されアミノ酸番号1位~18位がシグナルペプチドである。成熟体(アミノ酸番号19位~644位)はさらに、プロセッシングにより重鎖(アミノ酸番号19位~380位)と軽鎖(アミノ酸番号390位~644位)になり、ブラジキニン(アミノ酸番号381位~389位)を放出する。さらに、T-キニン(アミノ酸番号376位~389位)あるいはリジルブラジキニン(380位~389位)などへの切断、低分子量growth-promoting factor(GPF)(アミノ酸番号431位~434位)への切断があり得る。低分子量型は、主に3種類の配列が報告されており、配列表の配列番号2に示す配列は、重鎖とブラジキニン部分の配列は、高分子量型と同一であるが、軽鎖の配列が異なっており、配列表の配列番号3に示す配列は、配列表の配列番号2に示す配列の189位~224位の部位が欠損したもので、配列表の配列番号4に示す配列は、配列番号2に示す配列の1位~153位が17個のアミノ酸に置換し、さらに、177位のMetがThrに置換したものである。いずれの低分子量型も血液凝固系には関係していないことが知られている。本明細書では、配列表の配列番号1に高分子量型の例を開示し、配列表の配列番号2~4に低分子型の例を開示する。
[0050]
 本明細書でいう「キニノーゲンIの正常な構造を有するタンパク質」、「正常な構造のキニノーゲンI」は、成熟体(配列表の配列番号1における19位~644位のアミノ酸、配列表の配列番号2における19位から427位のアミノ酸、配列表の配列番号3における19位から391位のアミノ酸、配列表の配列番号4における1位から291位のアミノ酸)、重鎖(配列表の配列番号1又は2を基準とした場合、アミノ酸番号19位~380位のアミノ酸)、軽鎖(配列表の配列番号1のアミノ酸番号390位~644位のアミノ酸又は配列表の配列番号2のアミノ酸番号390位~427位のアミノ酸、あるいは配列表の配列番号3~4の対応箇所)、ブラジキニン(配列表の配列番号1又は2におけるアミノ酸番号381位~389位のアミノ酸、あるいは配列表の配列番号3~4の対応箇所)を放出する。さらに、T-キニン(配列表の配列番号1又は2におけるアミノ酸番号376位~389位のアミノ酸)あるいはリジルブラジキニン(配列表の配列番号1又は2におけるアミノ酸番号380位~389位のアミノ酸)などへの切断、低分子量growth-promoting factor(GPF)(配列表の配列番号1におけるアミノ酸番号アミノ酸番号431位~434位のアミノ酸)への切断があり得る。これらはいずれも正常な構造である。
[0051]
 本明細書でいう「不正常な位置での切断」とは、シグナルペプチドと成熟体への切断、重鎖、軽鎖、ブラジキニン、T-キニン、リジルブラジキニン、および低分子量growth-promoting factor(GPF)からなる群より選択される鎖以外への切断である。肺がんにおいて活性が亢進する酵素、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ群などにより切断を受けることで、本来は起らない切断部位での切断が生じ、副次的に断片化やアミノ酸の欠損が亢進し得ると考えられる。
[0052]
 本明細書でいう不正常な切断の一例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1又は2の配列で説明すると、331位のアミノ酸残基から342位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、343位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。さらに、本明細書でいう不正常な切断の別の例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1又は2の配列で説明すると364位のアミノ酸残基から374位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、375位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。また、別の態様では、本明細書でいう不正常な切断の例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1の配列で説明すると521位のアミノ酸残基から536位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、537位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。さらに別の態様では、本明細書でいう不正常な切断の別の例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1又は2の配列で説明すると364位のアミノ酸残基から377位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、378位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。さらに別の態様では、本明細書でいう不正常な切断の別の例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1又は2の配列で説明すると364位のアミノ酸残基から373位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、374位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。また、さらに別の態様では、本明細書でいう不正常な切断の別の例として検出され得るキニノーゲンIタンパク質断片は、配列表の配列番号1又は2の配列で説明すると364位のアミノ酸残基から372位のアミノ酸残基と一致するC末端部分を有し、373位以降からのC末端側が欠損しているタンパク質断片であってもよい。
[0053]
 本発明の不正常な切断を検知する方法において、正常な構造を有するキニノーゲンI量またはその存在、キニノーゲンIタンパク質断片の量またはその存在は、被検体由来試料である体液中に含まれるそれらの質量、分子量、または濃度などで検出することができる。さらには、蛍光強度、吸光度、MS/MSスペクトルの強度等で表わすことも可能である。
[0054]
 さらに、本発明における検出方法は、被検体由来試料中に含まれる、不正常な切断を検知する方法または正常な構造を有するタンパク質を検出する方法であれば特に制限されるものではない。例えば、質量分析により検出する方法の他、抗体を用いた免疫化学的測定法(ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、ウエスタンブロット法など)で検出する方法を挙げることができる。
[0055]
 質量分析による方法としては、被検体由来試料中の正常な構造を有するキニノーゲンIまたは不正常な切断に由来するキニノーゲンIのタンパク質断片を検出する方法であれば特に制限されるものではない。具体的には、例えば、試料を採取し、前処理および/または還元処理後に酵素消化し、同位体等で標識した後、MS/MSによってC末端由来のペプチドのみの量を測定する方法がある。より具体的には、限定はされないが、被検体由来試料が尿である場合、尿を採取し、前処理として尿検体を濃縮した検体を得て、この濃縮検体を還元アルキル化した後に、H 18O存在下でトリプシン消化することで、トリプシン消化断片由来のペプチドを安定同位体標識することができる。その後、脱塩、イオン交換クロマトグラフィーによる精製後、Nano-LC-MALDI-MS/MSにより、C末端由来のトリプシン消化ペプチドのみを測定する。このペプチド情報を解析することで、正常な構造を有するタンパク質または不正常な切断に由来するキニノーゲンIタンパク質断片を区別して検出することができる。この他に、例えば、濃縮試料中のタンパク質をLys-Cで酵素消化した後、すべての消化ペプチドのN末端をイソシアン酸フェニルやTMPP試薬(N-Succinimidyloxycarbonyl-methyl)tris(2、4、6-trimethoxyphenyl)phosphonium bromide)といった試薬でブロックし、リジン以外のC末端を有するペプチドを得て、質量分析器によるMS/MS分析を行うことで、キニノーゲンIタンパク質断片を測定する方法なども採用できる。
[0056]
 MRM(Multiple Reaction Monitoring;多重反応モニタリング)によりキニノーゲンIのタンパク質断片量を測定する場合には、例えば、高速液体クロマトグラフィー/3連四重極質量分析装置(QTRAP(R) 5500 System(エービーサイエックス社))やLCMS-8030(島津製作所株式会社製)を用いることもできる。
[0057]
 ラジオイムノアッセイおよびエンザイムイムノアッセイによる方法としては、不正常な切断由来のアミノ酸露出部、キニノーゲンIのタンパク質断片のC末端部、または特定のアミノ酸欠損部を特異的に認識し、対応する正常な構造を有するタンパク質と区別することができる抗体を用いることが望ましい。
[0058]
 被検体由来試料中の正常な構造を有するキニノーゲンIの量またはキニノーゲンIタンパク質断片の量を、試料中に共存するキニノーゲンI由来のすべてのタンパク質の存在量と比較し、相対比で表すこともできる。あるいは、被検体由来試料中のタンパク質断片の存在量を、被検体由来試料中の総蛋白量と比較し、断片の量と総蛋白量の相対比で表すこともできる。
[0059]
 いずれの測定方法を用いた場合でも、キニノーゲンIにおける不正常な切断の有無は、被検体試料中におけるキニノーゲンIの断片化率を算出して、その値が閾値を超えているか否かで判断することができる。すなわち、キニノーゲンIのタンパク質断片化率が閾値を超えている場合には、由来する被検体が肺腺がんであることが把握できる。
[0060]
 より具体的には、限定はされないが、例えば、キニノーゲンIの断片化率(F )を以下の計算式により求め、健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.5倍以上高いものを陽性とすることができる。
[式1]タンパク質断片化率(F )=C /I
 C :各キニノーゲンIタンパク質断片の量
 I :キニノーゲンIタンパク質由来のタンパク質全量
[0061]
 ここで、C における各キニノーゲンIの断片の量とは、1つのキニノーゲンIタンパク質断片の量(例えば(a)~(f)のいずれか1つのタンパク質断片の量)を指す。
 I における元のタンパク質の量とは、(a)~(f)のいずれか1つのタンパク質断片、正常な構造を有する全長タンパク質を含む、試料中のキニノーゲンI由来タンパク質の全量を指す。ここで、C またはI における量は、いずれも、例えばトリプシン消化ペプチドの量の測定によって検知することができる。I は、キニノーゲンIタンパク質断片にも正常な構造を有するキニノーゲンIにも共通に含まれるトリプシン消化ペプチドの量によって示すことができる。測定方法は、実施例5記載の条件に準ずる。
[0062]
 ここで、共通に含まれる配列は限定はされないが、以下の配列を使用することができる。
 YFIDFVAR(配列表の配列番号1の317~324位)
[0063]
 被検体由来試料において、正常な構造を有するタンパク質の量が、健常者の検体試料(健常試料)と比較し、有意に減少した場合、対象者は肺がん患者と判定される。ここで、有意な減少とは、健常者検体と比較して、例えば、上記正常な構造を有する上記蛋白質の相対比として、0.9倍以下、好ましくは、0.8倍以下、より好ましくは、0.6倍以下になることをいう。あるいは、抗体を用いる場合、標識の強度等から認識できる量の減少が健常者検体と比較して、0.8倍以下、好ましくは、0.6倍以下程度になることをいう。
[0064]
 被検体由来試料におけるキニノーゲンIタンパク質断片の量を、健常者の検体試料(健常試料)と比較し、タンパク質断片の有意な増加を検出した場合、対象者は肺がん患者と判定される。ここで、有意な増加とは、健常者検体と比較して、例えば、MS/MSスペクトル面積として、1.25倍以上、好ましくは、1.5倍以上、より好ましくは、2.0倍以上の強度になることをいう。あるいは、抗体を用いる場合、標識の強度等から認識できるタンパク質断片の量の増加が健常者検体と比較して、1を超える値、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは、1.5倍以上程度になることをいう。
[0065]
 なお、ここでの比較の数値は、内部標準等を用いた補正後の値を指すものとする。
[0066]
 健常者被検体由来試料における正常な構造を有するキニノーゲンIの量またはキニノーゲンIタンパク質断片の量などは、被検体由来試料の調製と測定方法に準じて決定することができる。
[0067]
 本発明における特に好ましい態様では、不正常な切断をインビトロで検知する工程が、被検体試料中に存在するキニノーゲンI由来の正常な構造を有するタンパク質の量の減少、および/またはキニノーゲンI由来のタンパク質断片の量または存在を検知することを含む。ここで、例えば、(a)ESNEELTESCETをC末端部アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部;(b)IYPTVNCQPLGをC末端部アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部、(c)TEHLASSSEDSTTPSAをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部、(d)IYPTVNCQPLGMISをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部、(e)IYPTVNCQPLをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部、および(f)IYPTVNCQPをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片のC末端部を認識する抗体を好適に使用することができる。
[0068]
[抗体]
 本発明ではまた、被検体由来試料中のキニノーゲンIタンパク質断片を測定することができる抗体を含む、肺がん検出用抗体組成物が提供され得る。キニノーゲンIタンパク質断片を測定する抗体は、キニノーゲンIタンパク質断片を認識できる抗体であれば限定はされないが、好ましくは、キニノーゲンIタンパク質断片のC末端側の切断を特異的に認識することができ、かつ全長タンパク質などのその他のタンパク質を認識しない抗体である。抗体は、キニノーゲンIタンパク質断片を特異的に認識することができる抗体であれば、ポリクロ-ナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。これらの抗体は固相に固定化していてもよい。
[0069]
[プログラム]
 本発明はまた、肺がん検出プログラムに関する。肺がん検出プログラムは、被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の不正常な切断に由来するタンパク質断片の発現レベルに基づくデータを正常な切断として検知されるキニノーゲンIの発現レベルデータと比較する比較工程を含み、比較により被検体由来試料のキニノーゲンIのタンパク質の不正常な切断に由来するペプチドの量が、正常値より高いことを基準として、肺がんを検出することができる。
[0070]
 本発明はまた、別の態様の肺がん検出プログラムに関する。1つの態様の肺がん検出プログラムでは、被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の1つ以上のタンパク質分解酵素消化ペプチドの発現レベルデータを、正常値と比較する比較工程を含み、該ペプチドの量が正常値と比較して低いことを基準として、肺がんを検出する、肺がん検出プログラムであり得る。ここで、タンパク質分解酵素は、限定はされず、例えばトリプシンであり得る。詳細には、該消化ペプチドの発現レベルデータを、正常値と比較する比較工程を含み、被検体由来試料のキニノーゲンIのタンパク質の不正常な切断が、上記のタンパク質分解酵素消化ペプチド内で起きている場合、そのペプチドの量が正常値と比較して低いことを基準として、肺がんを検出することができる。ここで、限定はされないが、例えばトリプシンなどのタンパク質分解酵素による消化ペプチドの発現レベルデータは、内部標準に用いるトリプシン消化ペプチドの発現レベルデータとの比で表すこともできる。
[0071]
 さらに別の態様では、キニノーゲンI由来の2つ又は3つ以上のタンパク質分解酵素消化ペプチドの発現レベルデータを相互に比較する比較工程を含み、被検体由来試料のキニノーゲンIのタンパク質の不正常な切断が、上記のいずれかのタンパク質分解酵素消化ペプチド内で起きている場合、そのペプチドの量が他のペプチドの量と比較して低いことを基準として、肺がんを検出することができる。ここで、限定はされないが、例えばトリプシンなどのタンパク質分解酵素による消化ペプチドの発現レベルデータは、内部標準に用いるトリプシン消化ペプチドの発現レベルデータとの比で表すこともできる。あるいは、消化ペプチドのうちの少なくとも1つは、内部標準に用いるペプチドであってもよい。
[0072]
 本プログラムにおける、キニノーゲンI由来の不正常な切断に由来するタンパク質断片の定義を始めとする各要素は、上記[肺がんの検出方法]で述べた内容に準じる。
実施例
[0073]
 次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0074]
 〔実施例1〕体液の採取
 胸部画像検査にて原発性肺がんを疑う肺内結節影または腫瘤影が存在する患者のうち、手術、経気管支生検、リンパ節生検または細胞診により、肺腺がんと診断した患者を選定した。選定した肺腺がん患者および健常者から早朝中間尿を、滅菌コップを用いて採取した。採取した尿試料は解析までの間‐80℃で保存した。
[0075]
 肺腺がん124例と健常者66名の尿のC末端タンパク質断片を網羅的に解析した。肺腺がん症例の臨床病期の内訳はIA期46例、IB期15例、IIA期1例、IIB期1例、IIIA期8例、IIIb期8例およびIV期45例であった。臨床病期は、日本肺学会編「肺がん取扱い規約 第7版」(金原出版株式会社)に記載された基準に従って判定した。IA期およびIB期の肺腺がん症例を早期肺腺がん症例と定義した。
[0076]
 〔実施例2〕質量分析による検出
 尿試料(~50mL)を採取し、前処理、分析データの取得、統計解析の手順でマーカー探索を行った。肺腺がん診断マーカーおよび早期肺腺がん診断マーカーとして計2種(表1および表2)を同定した。
[0077]
[表1]


[0078]
[表2]


[0079]
〔実施例3〕肺腺がんの評価方法
 胸部画像検査にて原発性肺がんを疑う肺内結節影または腫瘤影が存在する患者のうち、手術、肺生検、リンパ節生検または骨生検などの組織診断や、喀痰や胸水などの細胞診により、肺腺がんの診断を行った。肺腺がんの臨床病期の決定については、PET-CT検査による集積強度、頭部MRI検査および胸部CT検査による画像検査の他、骨生検、リンパ節穿刺吸引細胞診または胸水細胞診検査を用いた。尿中におけるキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片が実施例2で高値を示した肺腺がん症例において、胸部CT検査では右上葉に2cm大の結節影を認め(図5)、同部はPET-CT検査で異常な集積を認めた(図6)。経気管支生検で得た組織からThyroid transcription factor-1 (TTF-1)が陽性である肺腺がんを検出した(図7)。この症例におけるキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片のスペクトル面積は健常者の平均値の11.46倍であった。
[0080]
〔実施例4〕肺腺がんの診断におけるCEAとの有用性の比較
 肺腺がんと診断した124例(実施例1)のうち、血中CEA値が確認できた肺腺がん116例において、CEAと尿中タンパク質断片での有用性を比較した。例えば、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片が、実施例2で、健常者の平均値の1.5倍を示すものを陽性とするとした場合、肺腺がん116例中61例が陽性であると判断できた。一方、血中CEA値の基準値を8.0 ng/mlとした場合、肺腺がん116例中45例のみが陽性の結果であった。
[0081]
〔実施例5〕スクリーニング 検体を調製し、MRM法に供することで、肺腺がん患者のスクリーニングを行った。尿試料(~50mL)を採取し、前処理および分析データの取得と解析を実行した。具体的には、前処理により、尿試料をアミコンウルトラ‐15(10kDa分子量カット)、及びアミコンウルトラ‐4(10kDa分子量カット)(メルクミリポア社)を用いて200~250倍に濃縮し、低分子を洗浄により除去後、濃縮検体を得た。この濃縮検体のタンパク質定量を行い、全ての検体について、全タンパク質量10mg/mLの濃度に緩衝液を用いて調整して、その後の分析工程に用いた。続いて、試料を還元アルキル化の後に、緩衝液中でトリプシン消化した。脱塩、精製後、タンパク質断片由来のトリプシン消化ペプチドをイオン交換クロマトグラフィーにより分画し(LCカラム:PolySULFOETHYL A TM(PolyLC Inc. USA)、内径4.6mm、長さ50mm;流速:0.4mL/分;溶媒:20%アセトニトリル/リン酸水溶液(pH2.55)に対して20%アセトニトリル/5mMリン酸第1カリウム、0.5M NaCl水溶液(pH2.55)の濃度を段階的に上昇(0-100%)させて分離)、タンパク質断片のC末端ペプチドを含むトリプシン消化ペプチド混合物を得た。このようにして得られる各試料を別々に高速液体クロマトグラフィー/3連四重極質量分析装置(QTRAP(R)5500 System(エービーサイエックス社)、或いは、Agilent社 6470 LC/MS/MS System )に供し、混合物の分離と同時にペプチドの定量をMRM法(Multiple Reaction Monitoring:多重反応モニタリング)により行った。各タンパク質の断片化率(F )を以下の計算式により求め、健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.5倍以上高いものを陽性とした。
[0082]
 [式1]タンパク質断片化率(F )=C /I
 C :各タンパク質断片の量((a)~(f)のタンパク断片配列にあるペプチドの量)

 I :各タンパク質断片由来の元のタンパク質の量
[0083]
 ここで、C における各タンパク質のC末端断片の量とは、キニノーゲンIタンパク質断片の量を指す。I における元のタンパク質の量とは、タンパク質断片あるいは全長タンパク質に共通に含まれるトリプシン消化ペプチドの量を指す。(共通に含まれるトリプシン消化ペプチドとしては、YFIDFVAR)。
[0084]
 肺腺がん124例と健常者66名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をESNEELTESCETとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者8例が陽性、肺腺がん61例が陽性であった。断片化率が健常者群の平均値に対して1.5倍を基準とした場合、健常者8例が陽性、肺腺がん53例が陽性であり、当該基準値における感度は42.74%、特異度は87.88%、ROC-AUC値は0.766であった。
[0085]
 別途、肺腺がん124例と健常者66名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者7例が陽性、肺腺がん78例が陽性であった。断片化率が健常者群の平均値に対して1.5倍を基準とした場合、健常者5例が陽性、肺腺がん68例が陽性であり、当該基準値における感度は当該基準値における感度は54.84%、特異度は92.42%、ROC-AUC値は0.814であった。
[0086]
 IA期およびIB期の早期肺腺がん61例と健常者66名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をESNEELTESCETとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者8例が陽性、早期肺腺がん21例が陽性であった。断片化率が健常者群の平均値に対して1.5倍を基準とした場合、健常者8例が陽性、早期肺腺がん18例が陽性であり、当該基準値における感度は29.51%、特異度は87.88%、ROC-AUC値は0.676であった。
[0087]
 別途、IA期およびIB期の早期肺腺がん61例と健常者66名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者7例が陽性、早期肺腺がん32例が陽性であった。断片化率が健常者群の平均値に対して1.5倍を基準とした場合、健常者5例が陽性、早期肺腺がん26例が陽性であり、当該基準値における感度は当該基準値における感度は42.62%、特異度は92.42%、ROC-AUC値は0.766であった。
[0088]
 〔実施例6〕質量分析による検出
 尿試料(~50mL)を採取し、前処理、分析データの取得、統計解析の手順でキニノーゲン1由来のマーカー探索を行った。前処理は、尿試料をアミコンウルトラ‐15(10kDa分子量カット)、及びアミコンウルトラ‐4(10kDa分子量カット)(メルクミリポア社)を用いて200~250倍に濃縮し、100mM NaClを含む炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液3mLを用いて3回洗浄して、低分子を除去後、濃縮検体を得た。この濃縮検体のタンパク質定量を行い、全ての検体について、全タンパク質量10mg/mLの濃度に緩衝液を用いて調整して、その後の分析行程に用いた。続いて、試料を還元アルキル化の後に、一定濃度のH 18Oを用いて調製した緩衝液中でトリプシン消化した(ペプチドC末端の安定同位体標識法)。脱塩、精製後、iTRAQ(8-plex、エービーサイエックス社)によるラベル化を行い、8検体を混合、脱塩、精製した後、タンパク質断片由来のC末端トリプシン消化ペプチドのみをイオン交換クロマトグラフィーにより分画した(LCカラム:PolySULFOETHYL A TM(PolyLC Inc. USA)、内径4.6mm、長さ50mm;流速:0.4mL/分;溶媒:20%アセトニトリル/リン酸水溶液(pH2.55)に対して20%アセトニトリル/5mMリン酸第1カリウム、0.5M NaCl水溶液(pH2.55)の濃度を段階的に上昇(0-100%)させて分離)。その画分を脱塩、精製後、Nano-LC(LCカラム:内径75μm、長さ100mm、充填剤Inertsil C18(粒子径3μm);流速:250nL/分;溶媒:0.1%トリフルオロ酢酸水中でアセトニトリル濃度勾配(3-80%)により分離)/MALDI-MS/MS(エービーサイエックス社)により測定を行い、C末端トリプシン消化ペプチドのみを選別、抽出した(独自開発プログラム“iSpec“;文献:Fernandez-de-Cossio J.、Takao T.et al.Rapid Commun. Mass Spectrom.18、2465-2472(2004))。アッセイ間の比較は、MS/MSスペクトル中に含まれる比較定量に関わるレポーターピーク(m/z 113~119、121)の内のコントロールピーク(m/z 113、各アッセイに等量スパイクした)の強度で他のレポーターピークを規格化した後に行った。具体的な評価基準として、定性については、一定強度以上のピークの本数が5個以上のMS/MSスペクトルを選択し、かつ、それらのMS/MSスペクトルを基に同定されたタンパク質の数が50個以上のアッセイを採用した。定量については、基準のレポーターピーク(m/z113)のピーク強度が10より大きく、かつ、MS/MSスペクトル数が300個以上のアッセイのみの定量値を用いた。
[0089]
 〔実施例7〕統計解析
 肺腺がん58例(IA期5例、IB期1例、IIIA期3例、IIIb期8例およびIV期41例)、良性呼吸器疾患30例(気管支喘息、膿胸、肺吸虫症、非結核性抗酸菌症、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、サルコイドーシス症、炎症性偽腫瘍、細菌性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)および健常者25例の尿試料 から得られた、MS/MSスペクトルの各C末端トリプシン消化ペプチドのピーク強度(実施例6)について、コントロール検体のピーク強度に対する相対比をそれぞれ算出し、肺腺がん群と非肺腺がん群(良性呼吸器疾患および健常者)の間で比較検討した。肺腺がん58例と非肺腺がん群55例におけるキニノーゲン1由来の尿中タンパク質断片のピーク検出率をFisher’s exact testで検定し、p値が0.01未満であるものを抽出した。統計解析はJMP12(SAS Institute Inc、Cary、NC)を使用した。キニノーゲン1由来のC末端アミノ酸配列をTEHLASSSEDSTTPSAとするタンパク質断片は、肺腺がん58例中26例と非肺腺がん群55例中2例で検出され、上記の基準を満たした(p値<0.0001)。非肺腺がん群の健常者で検出されたピーク強度を基準とした場合、該当基準値における感度、特異度およびROC-AUC値は37.93%、96.36%および0.708であった。
[0090]
 〔実施例8〕
 早期肺腺がん25例(IA期18例、IB期5例、およびIIA期1例)および健常者25例の尿試料から得られた、MS/MSスペクトルの各C末端トリプシン消化ペプチドのピーク強度(実施例6)について、コントロール検体のピーク強度に対する相対比をそれぞれ算出し、早期肺腺がん群と健常者の間で比較検討した。キニノーゲン1由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGMISとするタンパク質断片は、健常者で検出されたピーク強度の1.25倍を基準値とした場合、早期肺腺がん24例中10例が陽性の結果であった。当該基準値における感度は41.7%、特異度は72%、ROC-AUC値は0.644であった。
[0091]
 〔実施例9〕
 実施例8とは別に、肺腺がん37例(IA期15例、IB期3例、IIA期4例、IIIA期2例、IIIB期3例、IV期10例)と健常者55名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値(0.005)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者12例が陽性、肺腺がん23例が陽性であった。当該基準値における感度は当該基準値における感度は63.2%、特異度は78.2%、ROC-AUC値は0.757であった。
[0092]
 〔実施例10〕
 別途、早期肺腺がん22例(IA期15例、IB期3例、IIA期4例)と健常者55名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値(0.005)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者12例が陽性、肺腺がん16例が陽性であった。当該基準値における感度は72.7%、特異度は78.2%、ROC-AUC値は0.842であった。
[0093]
 〔実施例11〕
 別途、肺腺がん37例(IA期15例、IB期3例、IIA期4例、IIIA期2例、IIIB期3例、IV期10例)と健常者55名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値(0.044)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者11例が陽性、肺腺がん29例が陽性であった。当該基準値における感度は当該基準値における感度は73.7%、特異度は80%、ROC-AUC値は0.865であった。
[0094]
 〔実施例12〕
 別途、早期肺腺がん22例(IA期15例、IB期3例、IIA期4例)と健常者55名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。健常者群の平均値(0.044)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者11例が陽性、肺腺がん16例が陽性であった。当該基準値における感度は72.3%、特異度は80%、ROC-AUC値は0.842であった。
[0095]
 〔実施例13〕
 経気管支生検または外科的肺生検により病理組織学的診断を得た、肉腫様がん2例(多形がん1例、癌肉腫1例)、大細胞がん1例および健常者55名の尿検体をそれぞれMRMに供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。各肺がん症例における断片化率は、多形がんが0.125、癌肉腫が0.162、大細胞がんが0.135であり、各肺がん症例における断片化率は、健常者群の平均値(0.044)の1.25倍(0.055)の基準値より高値であった。
[0096]
 〔実施例14〕
 経気管支生検または外科的肺生検により病理組織学的診断を得た、扁平上皮がん4例(IB期2例、IIIA期1例、IIIB期1例)および健常者55名の尿検体をそれぞれMRMに供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。扁平上皮がん症例におけるキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率は、IB期が0.098と0.090、IIIA期が0.19、IIIB期が0.44であり、扁平上皮がん4例すべてが、健常者群の平均値(0.044)の1.25倍(0.055)の基準値より高値であった。
[0097]
 〔実施例15〕
 経気管支生検または外科的肺生検により病理組織学的診断を得た、小細胞肺がん4例および健常者55名の尿検体をそれぞれMRMに供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。扁平上皮がん症例におけるキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率は、それぞれ0.069、0.131、0.747、0.754であり、小細胞肺がん4例すべてが、健常者群の平均値(0.044)の1.25倍(0.055)の基準値より高値であった。
[0098]
 〔実施例16〕ELISAによる検出および血清CEAとの有用性の比較
 IA期およびIB期の早期肺腺がん25例と健常者35名の血清検体(10μL)をELISA法に供し、血清中のキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLGとするタンパク質断片濃度を測定した。血清中のキニノーゲンI由来の断片の濃度測定には、調製した免疫原溶液をニワトリに投与して免疫することにより、ニワトリ血清中から回収したC末端アミノ酸配列をCQPLGとするキニノーゲンI由来の断片を特異的に認識する抗体を用いた。健常者平均の1.2倍を陽性とした場合、早期肺腺がん25例中13例が陽性であると判断できた。当該基準値における感度は52%、特異度は82.9%、ROC-AUC値は0.706であった。一方、血清CEA値の基準値を5.0 ng/mlとした場合、早期肺腺がん25例中7例のみが陽性の結果であった。当該基準値における感度は28%、特異度は74.29%、ROC-AUC値は0.534であった。
[0099]
 〔実施例17〕肺腺がんの進行に伴う尿中マーカーの変動
 胸部CT検査にて、右下葉末梢に肺腺がんが疑われる1.4cm大のすりガラス状結節影を認めた症例の尿を経時的に採取し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率と結節影のサイズを、外科的肺生検により肺腺がんの診断を得た時点と比較した。本症例における術後病期はT1bN0M0、pStageIAであった。手術24か月前と手術時点の胸部CT検査を比較した結果、手術時点では結節影のサイズが1.9cmへ増大していた。また、同部の結節はPET-CT検査において、FDGの高度な集積を認めた(図8)。手術24か月前、18か月前、12か月前、6か月前、手術時において、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率はそれぞれ、0.468、0.565、0.58、0.956、1.08であり、腺がんの増大に伴い増加していた。
[0100]
 〔実施例18〕肺腺がん切除後の尿中マーカーの変動
 早期肺腺がん11例(IA期5例、IB期2例、IIA期4例)において、肺がん切除術の前後で回収した尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を測定した。手術後の尿検体の解析には、手術後14日以降に回収した尿を用いた。早期肺腺がん11例中8例の尿検体において、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率が低下していた。11例全体の平均値では、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率が、0.378から0.205へ、45.77%低下した(図9)。
[0101]
 〔実施例19〕肺腺がんの治療による尿中マーカーの変動
 epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性のIV期肺腺がん1例において回収した尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率を、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療前と治療開始2か月後で比較した。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療効果は、37.1%の腫瘍縮小率を認め(図10)、Response Evaluation Criteria In Solid Tumors(RECIST)におけるPartial Responseの基準を満たした。治療2か月後のキニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化率は、治療前と比較して、0.0783から0.0648へ、17.2%の低下を認めた。
[0102]
 〔実施例20〕
 キニノーゲンIタンパク質の切断を効率的に検知するため、アミノ酸配列IYPTVNCQPまたはアミノ酸配列IYPTVNCQPLをC末端とするトリプシン消化ペプチドの存在量(Cx)と、C末端をIYPTVNCQPLGMISLMとするタンパク質断片の存在量(Ix)の2種を用いて、キニノーゲンIタンパク質の断片化指数(Fx)を以下の計算式により求めた。健常者の平均値に対して、患者試料で断片化指数が1.25倍以上高いものを陽性とした。
[式2]タンパク質断片化指数(Fx)=Cx/Ix
[0103]
 〔実施例21〕
 肺腺がん27例(IA期13例、IB期2例、IIA期4例、IIIA期2例、IV期6例)と健常者49名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化指数(Fx)を測定した。健常者群の平均値(4.82)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者14例が陽性、肺腺がん14例が陽性であり、当該基準値における感度は71.4%、特異度は71.4%、ROC-AUC値は0.829であった。
[0104]
 〔実施例22〕
 早期肺腺がん19例(IA期13例、IB期2例、IIA期4例)と健常者49名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPとするタンパク質断片の断片化指数(Fx)を測定した。健常者群の平均値(4.82)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者14例が陽性、肺腺がん14例が陽性であり、当該基準値における感度は73.7%、特異度は71.4%、ROC-AUC値は0.815であった。
[0105]
 〔実施例23〕
 肺腺がん27例(IA期13例、IB期2例、IIA期4例、IIIA期2例、IV期6例)と健常者49名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLとするタンパク質断片の断片化指数(Fx)を測定した。健常者群の平均値に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者12例が陽性、肺腺がん21例が陽性であり、当該基準値における感度は75%、特異度は75.5%、ROC-AUC値は0.848であった。
[0106]
 〔実施例24〕
 早期肺腺がん19例(IA期13例、IB期2例、IIA期4例)と健常者49名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端アミノ酸配列をIYPTVNCQPLとするタンパク質断片の断片化指数(Fx)を測定した。健常者群の平均値(0.437)に対して、患者試料で断片化率が1.25倍以上高いものを陽性とした場合、健常者11例が陽性、肺腺がん13例が陽性であり、当該基準値における感度は68.4%、特異度は75.5%、ROC-AUC値は0.860であった。
[0107]
 〔実施例25〕
 進行期肺腺がん15例(IIIA期2例、IIIB期3例、IV期10例)と健常者55名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のC末端をIYPTVNCQPLGMISLMとするタンパク質断片とC末端をYFIDFVARとするトリプシン消化ペプチドの存在量を測定し、正常なキニノーゲンI由来の蛋白質断片であるC末端をIYPTVNCQPLGMISLMの存在比を比較した。健常者群の平均値(0.0075)に対して、患者試料で断片の存在比が40%以上低いものを陽性とした場合、健常者15例が陽性、肺腺がん11例が陽性であった。当該基準値における感度は73.3%、特異度は72.73%であった。
[0108]
 〔実施例26〕
 肺腺がん34例(IA期14例、IB期3例、IIA期3例、IIIA期2例、IIIB期3例、IV期9例)と健常者53名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のアミノ酸345位から362位までのトリプシン消化ペプチド(LGQSLDCNAEVYVVPWEK)に対するアミノ酸331位から343位までのトリプシン消化ペプチド(ESNEELTESCETK)のピーク強度比(前者ペプチドに対する後者ペプチドの存在度を反映する)を算出したところ、健常者群の平均値(0.353)に対して、肺がん患者試料では0.150と低値であった。患者試料において、トリプシン消化ペプチドESNEELTESCETKに対するトリプシン消化ペプチドLGQSLDCNAEVYVVPWEKのピーク強度比が、健常者平均より40%以上低いものを陽性とした場合、健常者6例が陽性、肺腺がん24例が陽性であった。当該基準値における感度は70.6%、特異度は88.68%、ROC-AUC値は0.9であった。
[0109]
 〔実施例27〕
 肺腺がん34例(IA期14例、IB期3例、IIA期3例、IIIA期2例、IIIB期3例、IV期9例)と健常者53名の尿検体をMRM法に供し、キニノーゲンI由来のアミノ酸345位から362位までのトリプシン消化ペプチド(LGQSLDCNAEVYVVPWEK)に対するアミノ酸209位から219位までのトリプシン消化ペプチド(ENFLFLTPDCK)のピーク強度比(前者ペプチドに対する後者ペプチドの存在度を反映する)を算出したところ、健常者群の平均値(5.423)に対して、肺がん患者試料では2.0と低値であった。患者試料において、トリプシン消化ペプチドESNEELTESCETKに対するトリプシン消化ペプチドENFLFLTPDCKのピーク強度比が、健常者平均より40%以上低いものを陽性とした場合、健常者3例が陽性、肺腺がん31例が陽性であった。当該基準値における感度は91.2%、特異度は94.34%、ROC-AUC値は0.972であった。

請求の範囲

[請求項1]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程を含む肺がんの検出方法。
[請求項2]
 前記キニノーゲンIの不正常な切断が、該キニノーゲンI中のペプチド結合に1以上の切れ目をもたらす切断および/または該キニノーゲンIの1以上の箇所に、1または2以上のアミノ酸残基の欠損をもたらす切断である、請求項1記載の肺がんの検出方法。
[請求項3]
 前記被検体由来試料中における、キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程が、以下の(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2記載の肺がんの検出方法:
(1)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIの正常な構造を有するタンパク質の量の減少を検知すること;
(2)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのC末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質の量または存在を検知すること;
(3)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIのN末端側にアミノ酸残基の欠損があるタンパク質の量または存在を検知すること;および
(4)該被検体由来試料中における該キニノーゲンIについて、アミノ酸配列の任意の中間部位の切断又は欠損の量または存在を検知すること。
[請求項4]
 請求項1記載の肺がんの検出方法であって、
 前記キニノーゲンIの不正常な切断の有無をインビトロで検知する工程が、以下の(a)~(f)からなる群より選択される少なくともいずれか1種の量または存在を検知することを含む、肺腺がんの検出方法:
(a)ESNEELTESCETをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(b)IYPTVNCQPLGをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(c)TEHLASSSEDSTTPSAをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(d)IYPTVNCQPLGMISをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;
(e)IYPTVNCQPLをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片;および
(f)IYPTVNCQPをC末端アミノ酸配列とするタンパク質断片。
[請求項5]
 前記不正常な切断をインビトロで検知する工程が、
 被検体試料中に存在するキニノーゲンI由来の正常な構造を有するタンパク質の量の減少、および/またはキニノーゲンI由来のタンパク質断片の量または存在を検知することを含む、請求項1~4のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[請求項6]
 前記被検体由来試料が、尿または血液から選択される、請求項1~5のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[請求項7]
 質量分析測定法、免疫化学的測定法、およびクロマトグラフィー法からなる群より選択される少なくとも1種の方法を用いる工程を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[請求項8]
 前記肺がんが、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん、多形がん、およびがん肉腫からなる群より選択される1種の非小細胞がん;又は小細胞肺がんである、請求項1~7のいずれか1項記載のがんの検出方法。
[請求項9]
 請求項1記載の肺がんの検出方法であって、前記キニノーゲンIにおける不正常な切断の有無が、該キニノーゲンIの断片化率によって決定され、該断片化率が、
 キニノーゲンIタンパク質断片化率(F )=C /I
 C :各キニノーゲンIタンパク質断片の量
 I :キニノーゲンIタンパク質由来タンパク質全量
 で得られる、肺がんの検出方法。
[請求項10]
 前記肺がんの検出方法が、早期肺がんの診断補助の為の検出、肺がんの診断の為の検出、肺がんの進行の検出、肺がんの再発の有無の予測の為の検出、及び肺がんの治療効果の有無の為の検出からなる群より選択されるいずれか1つ以上である、請求項1~9のいずれか1項記載の肺がんの検出方法。
[請求項11]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の不正常な切断に由来するタンパク質断片の発現レベルに基づくデータを正常な切断として検知されるキニノーゲンIの発現レベルデータと比較する比較工程を含み、比較により被検体由来試料のキニノーゲンIのタンパク質の不正常な切断に由来するペプチドの量が、正常値より高いことを基準として、肺がんを検出する、肺がん検出プログラム。
[請求項12]
 被検体由来試料中における、キニノーゲンI由来の1つ以上のタンパク質分解酵素消化ペプチドの発現レベルデータを、正常値と比較する比較工程を含み、
 該ペプチドの量が正常値と比較して低いことを基準として、肺がんを検出する、肺がん検出プログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]