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1. (WO2018180123) COATED MAGNESIUM OXIDE PARTICLE AND METHOD FOR PRODUCING SAME, AND THERMALLY CONDUCTIVE RESIN COMPOSITION
Document

明 細 書

発明の名称 被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法並びに熱伝導性樹脂組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

実施例

0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 被覆酸化マグネシウム粒子及びその製造方法並びに熱伝導性樹脂組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、充填性及び大量生産性が高く、熱伝導性フィラーに好適な無機化合物粒子及びその中でも特に有用な被覆酸化マグネシウム粒子、それらの製造方法並びにそれらを用いた熱伝導性樹脂組成物及び電子機器に関する。

背景技術

[0002]
 電子機器に使用されるCPUやメモリー等のLSIチップは、高速化、小型化、高集積化に伴って大量の熱を発生するようになった。この熱はLSIチップ自身やその周辺の電子部品の誤動作や破壊を引き起こす。これを防止するために様々な放熱方法が提案されている。その1つとして、半導体封止材、基板等の樹脂組成物や放熱グリース、放熱パッド等のサーマルインターフェースに、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)や酸化アルミニウム(アルミナ)等の熱伝導性の高いフィラー(熱伝導性フィラー)を充填し、樹脂組成物やサーマルインターフェース等の熱伝導性、放熱性を向上させている。このような樹脂組成物を熱伝導性樹脂組成物という。
[0003]
 熱伝導性フィラーに求められる特性は、高熱伝導性、高絶縁性、化学的・熱的安定性、高充填性、高流動性、低硬度及び大量生産性(低コスト)等である。高熱伝導性は放熱のため、高絶縁性は電子機器のショートを防ぐため、化学的・熱的安定性は電子機器の破壊等を防ぐためにそれぞれ必須である。高充填性、高流動性は、流動性が向上すると樹脂への充填性を向上させることが可能になり、充填性が向上すると熱伝導性樹脂組成物の熱伝導性を向上させることが可能になるためである。低硬度は、熱伝導性フィラーを樹脂に充填する際の混練による設備の摩耗を低減するためである。大量生産性(低コスト)は競争力を高めるために必須であることはいうまでもない。
[0004]
 熱伝導性フィラーとして、酸化マグネシウム(マグネシア)が研究、開発、上市されている。酸化マグネシウムは酸化ケイ素(シリカ)や酸化アルミニウム(アルミナ)と比較して高熱伝導、高融点、低硬度であり、有用である。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開平6-171928号公報
特許文献2 : WO2005/033214号
特許文献3 : 特開2016-088838号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかし、酸化マグネシウムは空気中の水分を吸収して水酸化マグネシウムに変化し、酸化マグネシウムの特徴が失われる他、膨張して電子機器の破壊の原因になることもある。特許文献1には、酸化マグネシウムの表面をシランカップリング剤で処理することにより吸湿性を低減することが記載されている。しかし、この酸化マグネシウムは充填性、流動性が十分ではなった。
[0007]
 酸化マグネシウムの充填性、流動性を向上させる方法として、特許文献2には、表面を溶融球状化処理した球状化被覆酸化マグネシウム粉末が記載されている。また、特許文献3には、水酸化マグネシウムスラリーを噴霧乾燥して造粒した後、1000℃~1500℃で焼成した真球度が高い酸化マグネシウム粒子が記載されている。しかし、これらは大量生産に向かず、コスト高になってしまう問題があった。
[0008]
 本発明の幾つかの態様は、充填性及び大量生産性が高く、熱伝導性フィラーに好適な無機化合物粒子及びその中でも特に有用な被覆酸化マグネシウム粒子、それらの製造方法、並びにそれらを用いた熱伝導性樹脂組成物及び電子機器を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
(1)本発明の第1の態様は、無機化合物粒子の表面が脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆無機化合物粒子であって、粒子のXを、X=[前記粒子のBET比表面積から算出されるBET比表面積径]÷[前記粒子のD 50](但し、D 50は前記粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径)としたとき、前記無機化合物粒子はXが0.2未満、D 50が5~100μmであり、前記被覆無機化合物粒子はXが0.2以上、D 50が5~100μm及び吸油量が25mL/100g未満であることを特徴とする被覆無機化合物粒子に関する。
[0010]
 Xが0.2未満、D 50が5~100μmの無機化合物粒子は球状の粒子と比較して比表面積が大きく、粒子同士の摩擦や粒子間の空隙も大きいため、通常、充填性、流動性が低い。そのような無機化合物粒子の表面を脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆して、Xが0.2以上、D 50が5~100μm及び吸油量が25mL/100g未満の被覆無機化合物粒子にすることにより、無機化合物粒子を球状化することなく、被覆無機化合物粒子の充填性、流動性を簡単に向上させることができる。なお、粒子はXが1に近いほど真球に近く、吸油量が小さいほど樹脂への充填性が高いことを意味する。
[0011]
(2)本発明の第1の態様では、前記無機化合物粒子が酸化マグネシウム粒子であることが好ましい。酸化マグネシウム粒子は高熱伝導性、高融点、低硬度であり、熱伝導性フィラーとして有用である。
[0012]
(3)本発明の第1の態様では、前記酸化マグネシウム粒子の原料がマグネシアクリンカーであることが好ましい。マグネシアクリンカーはセメント焼成用キルンや製鋼炉の耐火物原料として大量に使用されており、低コストである。ここでマグネシアクリンカーとは、水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムをロータリーキルンやシャフトキルンを用いて1600~2200℃で焼成して得られる酸化マグネシウム焼結体をいう。
[0013]
(4)本発明の第1の態様では、前記脂肪酸がステアリン酸であり、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。これらを用いて表面を被覆することにより、被覆無機化合物粒子の充填性、流動性をさらに向上させることができる。
[0014]
(5)本発明の第1の態様では、前記無機化合物粒子の表面がシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で表面処理することにより無機化合物粒子の吸湿性を低減することができる。
[0015]
(6)本発明の第1の態様では、前記シランカップリング剤は、充填する対象に応じて適宜選択することができるが、ビニル基、アミノ基及びフェニル基並びにそれら置換基の誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
[0016]
(7)本発明の第1の態様では、85℃-85%RH環境下で48時間後の質量増加率が1%以下であることが好ましい。
[0017]
(8)本発明の第2の態様は、第1の態様の被覆無機化合物粒子が樹脂に充填されていることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物に関する。無機化合物粒子を球状化することなく被覆無機化合物粒子の充填性を向上させることができるため、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導性を低コストで向上させることができる。
[0018]
(9)本発明の第3の態様は、第2の態様の熱伝導性樹脂組成物を含むことを特徴とする電子部品に関する。第2の態様の熱伝導性樹脂組成物を含むため、電子部品の熱伝導性を低コストで向上させることができる。
[0019]
(10)本発明の第4の態様は、第3の態様の電子部品を含むことを特徴とする電子機器に関する。第3の態様の電子部品を含むため、電子機器の熱伝導性を低コストで向上させることができる。したがって、その電子部品自身や周辺の電子部品の誤動作や破壊を低コストで防止することができる。
[0020]
(11)本発明の第5の態様は、粒子のXを、X=[前記粒子のBET比表面積から算出されるBET比表面積径]÷[前記粒子のD 50](但し、D 50は前記粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径)としたとき、Xが0.2未満、D 50が5~100μmの無機化合物粒子に、脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方を添加、100~200℃で混合して、前記無機化合物粒子の表面が前記脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆無機化合物粒子を得る被覆工程を有することを特徴とする被覆無機化合物粒子の製造方法に関する。本発明の第5の態様に係る製造方法によれば、本発明の第1の態様に係る被覆無機化合物粒子を好適に製造することができる。
[0021]
(12)本発明の第5の態様では、前記無機化合物粒子が酸化マグネシウム粒子であることが好ましく、前記酸化マグネシウム粒子の原料がマグネシアクリンカーであることがさらに好ましい。また、本発明の第5の態様では、前記脂肪酸がステアリン酸であり、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、本発明の第5の態様では、前記被覆工程の前に、前記無機化合物粒子にシランカップリング剤を添加、混合して前記無機化合物粒子の表面を前記シランカップリング剤で表面処理する表面処理工程をさらに有することが好ましい。さらに、本発明の第5の態様では、前記シランカップリング剤がビニル基、アミノ基及びフェニル基並びにそれら置換基の誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明の第5の態様に係る好ましい製造方法によれば、本発明の第1の態様に係る被覆無機化合物粒子を、上記した好ましい態様で製造することができる。
[0022]
(13)本発明の第5の態様では、前記被覆工程の前に、無機化合物原料を粉砕、分級して前記無機化合物粒子を準備する準備工程をさらに有することが好ましい。一般的に粉砕によって得られる粒子は真球からかけ離れた形状となるため、Xが0.2未満、D 50が5~100μmの無機化合物粒子を容易に準備することができる。準備工程と表面処理工程とが併存する場合は、準備工程の後に表面処理工程を行うことが好ましい。準備工程の粉砕によって露出した酸化マグネシウム粒子の粉砕面をシランカップリング剤で表面処理することにより、被覆酸化マグネシウム粒子の吸湿性を低減することができる。

発明を実施するための形態

[0023]
 無機化合物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)粒子、酸化マグネシウム(マグネシア)粒子及び酸化アルミニウム(アルミナ)粒子を含む酸化物粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子及び炭酸ストロンチウム粒子を含む炭酸塩粒子、水酸化マグネシウム粒子及び水酸化アルミニウム粒子を含む水酸化物粒子、窒化ケイ素粒子及び窒化アルミニウム粒子を含む窒化物粒子並びに炭化ケイ素粒子を含む炭化物粒子等が挙げられる。以下、無機化合物粒子のうち、本発明の好適な実施形態(本実施形態)である酸化マグネシウム粒子について詳細に説明する。
[0024]
 なお、以下に説明する本実施形態は、請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また、被覆の態様としては、粒子の表面の少なくとも一部が被覆されていればよい。また、D 50とは粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径をいい、平均粒子径、メジアン径ともいう。本実施形態のD 50は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定した。
[0025]
(1)被覆酸化マグネシウム粒子
 本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粒子の表面が脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子であって、粒子のXを、X=[前記粒子のBET比表面積から算出されるBET比表面積径]÷[前記粒子のD 50](但し、D 50は前記粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径)としたとき、酸化マグネシウム粒子はXが0.2未満、D 50が5~100μmであり、被覆酸化マグネシウム粒子はXが0.2以上、D 50が5~100μm及び吸油量が25mL/100g未満である。Xが0.2未満、D 50が5~100μmの酸化マグネシウム粒子は球状の粒子と比較して比表面積が大きく、粒子同士の摩擦や粒子間の空隙も大きいため、通常、充填性、流動性が低い。そのような酸化マグネシウム粒子の表面を脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆して、Xが0.2以上、D 50が5~100μm及び吸油量が25mL/100g未満の被覆酸化マグネシウム粒子にすることにより、酸化マグネシウム粒子を球状化することなく、被覆酸化マグネシウム粒子の充填性、流動性を簡単に向上させることができる。なお、粒子はXが1に近いほど真球に近く、吸油量が小さいほど樹脂への充填性が高いことを意味する。
[0026]
 酸化マグネシウム粒子のXは0.2未満であって、0.05~0.15の範囲が好ましく、0.05~0.12の範囲がより好ましく、0.05~0.1の範囲がさらに好ましい。この範囲の酸化マグネシウムは通常用いられる粉砕方法により容易に得る事ができるので経済性が高い。また、酸化マグネシウム粒子のD 50は10~80μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。これにより酸化マグネシウム粒子の流動性、充填性を向上させることができる。さらに、酸化マグネシウム粒子の原料がマグネシアクリンカーであることが好ましい。マグネシアクリンカーはセメント焼成用キルンや製鋼炉の耐火物原料として大量に使用されており、低コストである。
[0027]
 被覆酸化マグネシウム粒子のXは0.25以上が好ましく、0.3~0.7の範囲がより好ましく、0.3~0.5の範囲がさらに好ましい。この範囲であれば通常用いられる粉砕方法によって酸化マグネシウム粒子を得ることができるため、経済的に大量生産性を維持、向上させることができる。被覆酸化マグネシウム粒子は、Xが真球の1に近づくほど、流動性、充填性を向上させることができる。また、被覆酸化マグネシウム粒子のD 50は10~80μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。さらに、被覆酸化マグネシウム粒子の吸油量は23mL/100g以下が好ましく、22mL/100g以下がより好ましく、21mL/100g以下がさらに好ましい。被覆酸化マグネシウム粒子は、給油量が少ないほど樹脂に多量に充填することができ、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導性を向上させることができる。
[0028]
 脂肪酸はステアリン酸が好ましく、脂肪酸金属塩はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
[0029]
 酸化マグネシウム粒子の表面はシランカップリング剤、さらには、ビニル基、アミノ基及びフェニル基並びにそれら置換基の誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。また、85℃-85%RH環境下で48時間後の被覆酸化マグネシウム粒子の質量増加率は1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.25%以下が特に好ましい。
[0030]
(2)被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法
 本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法は、粒子のXを、X=[前記粒子のBET比表面積から算出されるBET比表面積径]÷[前記粒子のD 50](但し、D 50は前記粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径)としたとき、Xが0.2未満、D 50が5~100μmの酸化マグネシウム粒子に、脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方を添加、100~200℃で混合して酸化マグネシウム粒子の表面が脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子を得る被覆工程を有する。本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法により、本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子を好適に製造することができる。
[0031]
 酸化マグネシウム粒子のX及びD 50の好ましい範囲並びに脂肪酸の好ましい材料は「(1)被覆酸化マグネシウム粒子」で説明したとおりである。酸化マグネシウム粒子と脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方との混合には、公知の混合機を用いることができるが、ヘンシェルミキサー等の撹拌羽根が高速回転する装置が好ましい。撹拌羽根の周速は5m/秒以上が好ましく、5~30m/秒がより好ましい。周速が5m/秒未満の場合は十分に混合できないため、均一な被覆を得ることができず、周速が30m/秒を超える場合は粒子同士の摩擦によって粒子や被覆層が摩耗し均一な被覆が得られなくなる。混合温度は120~180℃が好ましく、130~170℃がより好ましく、140~160℃がさらに好ましい。混合時間は3分以上が好ましい。混合温度は混合機のジャケットを電熱や熱媒体を用いて加温することにより調整することができる。これらの方法により、酸化マグネシウム粒子の表面を脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で均一に被覆することができる。
[0032]
 本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法では、被覆工程の前に、酸化マグネシウム粒子にシランカップリング剤を添加、混合して酸化マグネシウム粒子の表面をシランカップリング剤で表面処理する表面処理工程をさらに有することが好ましい。シランカップリング剤の好ましい材料は「(1)被覆酸化マグネシウム粒子」で説明したとおりである。酸化マグネシウム粒子とシランカップリング剤との混合に用いられる装置は、酸化マグネシウム粒子と脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方との混合に用いられる装置と同じでよい。混合温度は室温がよい。混合時間は3分~60分が好ましく、3分~30分がより好ましく、3分~15分が更に好ましい。混合時間が3分未満の場合は十分な混合を行うことが難しく、均一な被覆を得ることができない。また、混合時間が60分を超えると粒子同士の摩擦による粒子や被覆層の摩耗が顕著になり、均一な被覆を得ることができない。これらの工程により、酸化マグネシウム粒子の吸湿性を低減することができる。
[0033]
 本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法では、被覆工程の前に、酸化マグネシウム原料を粉砕、分級して酸化マグネシウム粒子を準備する準備工程をさらに有することが好ましい。酸化マグネシウム原料の粉砕、分級に用いられる装置は、必要な粒度分布を得ることができれば特に制限はなく、公知の粉砕機、分級機を用いることができる。粉砕機としては、例えば、ハンマー粉砕機、ロール粉砕機、ボールミル等を用いることができる。粉砕機はメディアやライナーにジルコニア等のセラミックを用いた装置がコンタミネーション低減の見地から好ましい。分級機としては、例えば、振動篩機、空気式分級機等を用いることができる。これらの工程により、Xが0.2未満、D 50が5~100μmの酸化マグネシウム粒子を容易に準備することができる。
[0034]
 本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法では、準備工程と表面処理工程とが併存する場合、準備工程の後に表面処理工程を行うことが好ましい。準備工程の粉砕によって露出した酸化マグネシウム粒子の粉砕面をシランカップリング剤で表面処理することにより、被覆酸化マグネシウム粒子の吸湿性を低減することができる。
[0035]
(3)被覆酸化マグネシウム粒子の応用
 本実施形態の熱伝導性樹脂組成物は、本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子が樹脂に充填される。本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粒子を球状化することなく酸化マグネシウム粒子の充填性を向上させることができるため、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導性を低コストで向上させることができる。樹脂は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ナイロン樹脂等、用途に応じて公知の樹脂から適宜選択することができる。また、本実施形態のサーマルインターフェースは、本実施形態の被覆酸化マグネシウム粒子を含むため、サーマルインターフェースの熱伝導性を低コストで向上させることができる。サーマルインターフェースは、例えば、放熱グリース、放熱パッド等を挙げることができる。
[0036]
 本実施形態の電子部品は、本実施形態の熱伝導性樹脂組成物を含むため、電子部品の熱伝導性を低コストで向上させることができる。電子部品は、例えば、LSIチップ、基板等を挙げることができる。
[0037]
 本実施形態の電子機器は、本実施形態の電子部品を含むため、電子機器の熱伝導性を低コストで向上させることができる。このため、電子部品自身や周辺の電子部品の誤動作や破壊を低コストで防止することができる。電子機器は、例えば、パソコン、スマートフォン、デジタルカメラ、LED電球等を挙げることができる。
実施例
[0038]
 以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、それらは本発明の目的を限定するものではない。
[0039]
(1)実施例
(1-1)実施例1
 酸化マグネシウム原料として宇部マテリアルズ株式会社のマグネシアクリンカーUBE995S(MgO純度99.5%)を用いた。マグネシアクリンカーをロールクラッシャーにて破砕し、ジルコニアボールを用いた振動ミルにて粉砕して粉砕粉を得た。粉砕粉を目開き45μmで篩別し、風力分級機にて分級点20μmで分級し、粗粉側を回収して酸化マグネシウム粒子を準備した(準備工程)。酸化マグネシウム粒子のD 50は26μmであった。酸化マグネシウム粒子200gを混合機に投入し、ステアリン酸マグネシウムを1g加え、周速10m/秒で混合しながら150℃に昇温し、10分間保持した。その後冷却して、酸化マグネシウム粒子の表面がステアリン酸マグネシウムで被覆された被覆酸化マグネシウム粒子を得た(被覆工程)。
[0040]
(1-2)実施例2
 実施例1の準備工程で得られた酸化マグネシウム粒子200gを混合機に投入した後、ビニルシラン1gを加え、周速10m/秒で5分間混合して、酸化マグネシウム粒子の表面をビニルシランで表面処理した(表面処理工程)。その後実施例1と同様の被覆工程を行った。
[0041]
(1-3)実施例3
 被覆処理工程のステアリン酸マグネシウムをステアリン酸カルシウムに変更した以外は実施例2と同様に実施した。
[0042]
(1-4)実施例4
 被覆処理工程のステアリン酸マグネシウムをステアリン酸亜鉛に変更した以外は実施例2と同様に実施した。
[0043]
(1-5)実施例5
 被覆処理工程のステアリン酸マグネシウムをステアリン酸に変更した以外は実施例2と同様に実施した。
[0044]
(1-6)実施例6
 宇部丸善ポリエチレン株式会社のエチレンエチルアクリレート(EEA)樹脂ZE708と、50体積%の実施例2で得られた被覆酸化マグネシウム粒子との混合物を、株式会社東洋精機製作所のラボプラストミルを用いて160℃で10分間混練して、EEA樹脂に50体積%の被覆酸化マグネシウム粒子が充填された熱伝導性樹脂組成物を得た。
[0045]
(2)比較例
(2-1)比較例1
 実施例1の準備工程で得られた酸化マグネシウム粒子をそのまま用いた。即ち、準備工程を実施し、表面処理工程及び被覆工程を実施しなかった。
[0046]
(2-2)比較例2
 被覆工程を実施しなかった以外は実施例2と同様に実施した。即ち、準備工程と表面処理工程を実施した。
[0047]
(2-3)比較例3
 実施例2で得られた被覆酸化マグネシウム粒子を、比較例2で得られた酸化マグネシウム粒子に変更した以外は実施例6と同様に実施した。
[0048]
(3)評価方法
(3-1)被覆酸化マグネシウム粒子
 実施例1~5で得られた被覆酸化マグネシウム粒子及び比較例1~2で得られた酸化マグネシウム粒子について、D 50、BET比表面積、BET比表面積径、X(BET比表面積径/D 50)、ゆるみ比重、かため比重、安息角、吸油量、吸湿性及び流動性を評価した。D 50はマイクロトラック・ベル株式会社の粒子径分布測定装置MT3300EX型を用いて測定した。BET比表面積は1点法により求めた。安息角はホソカワミクロン株式会社のパウダーテスターを用いて測定した。吸油量は株式会社あさひ総研の吸油量測定装置S-500を用いて測定した。吸湿性は85℃-85%RH環境下での48時間後の質量増加率(以下、「質量増加率」という。)(%)を測定した。流動性は、三菱化学株式会社の液状エポキシ樹脂828ELに50体積%の被覆酸化マグネシウム粒子が充填された熱伝導性樹脂組成物5gを、50℃、10MPaで加圧圧延したときの延伸直径を測定した。
[0049]
(3-2)熱伝導性樹脂組成物
 実施例6及び比較例3で得られた熱伝導性樹脂組成物について、混練性(流動性)と熱伝導性を評価した。混練性(流動性)は、混練完了時点の混練トルクを測定した。熱伝導性は、ホットプレスを用いて160℃で1mm厚に圧延成形した熱伝導性樹脂組成物について、京都電子工業株式会社の熱物性測定装置TPS2500Sを用いて熱伝導率を測定した。
[0050]
(4)評価結果
(4-1)被覆酸化マグネシウム粒子
 実施例1~5及び比較例1~2の実施条件と評価結果を表1に示す。
[表1]


[0051]
 表面処理工程及び被覆工程を実施する前の酸化マグネシウム粒子(比較例1)のBET比表面積(BET比表面積径)は0.44m /g(3.8μm)であった。表面処理工程のみを行った比較例2のBET比表面積(BET比表面積径)は0.90m /g(1.9μm)に増加(減少)したのに対し、被覆工程を行った実施例1~5のBET比表面積(BET比表面積径)は0.18~0.27m /g(6.2~9.3μm)に減少(増加)した。これに伴い、X(BET比表面積径/D 50)は比較例1の0.15から表面処理工程のみを行った比較例2は0.07に減少したのに対し、被覆工程を行った実施例1~5は0.24~0.36に増加した。粒子はXが1に近いほど真球に近いことから、酸化マグネシウム粒子を球状化することなく、被覆酸化マグネシウム粒子は被覆工程の影響を受け、真球に近づくことがわかる。
[0052]
 比較例1のゆるみ比重及びかため比重はそれぞれ1.31、1.84で、増加率(かため比重/ゆるみ比重)は140%であった。被覆工程のみを行い、表面処理工程を行わなかった実施例1のゆるみ比重及びかため比重はそれぞれ1.36、1.94で、増加率は143%と、同じく表面処理工程を行わなかった比較例1に非常に近い値を示した。これに対し、表面処理工程のみを行った比較例2のゆるみ比重及びかため比重はそれぞれ1.58、2.05で、増加率は130%であった。また、表面処理工程と被覆工程を行った実施例2~5のゆるみ比重及びかため比重はそれぞれ1.62~1.71、2.06~2.13で、増加率は123~129%と、比較例2に近い値を示した。以上より、ゆるみ比重、かため比重及びその増加率は表面処理工程の影響を強く受けることがわかる。
[0053]
 比較例1及び比較例2の安息角はそれぞれ38°、32°であり、表面処理工程によって安息角が減少した。また、被覆処理工程のみを行った実施例1と表面処理工程と被覆工程を行った実施例2~5の安息角はそれぞれ48°、43~46°であり、比較例1及び比較例2と同様に表面処理工程によって安息角が減少した。一方、比較例1及び比較例2に対して、それぞれ実施例1及び実施例2~5は安息角が大きく増加した。以上より、安息角は表面処理工程の影響を受けるものの、被覆工程の影響をより強く受けることがわかる。
[0054]
 比較例1及び比較例2の吸油量はそれぞれ27mL/100g、25mL/100gであり、表面処理工程によって7%程度減少した。また、被覆処理工程のみを行った実施例1と表面処理工程と被覆工程を行った実施例2~5の吸油量はそれぞれ22mL/100g、21mL/100gであり、表面処理工程によって吸油量が5%程度減少した。一方、比較例1及び実施例1の吸油量を比較すると、被覆処理工程によって20%程度減少した。また、比較例2及び実施例2~5の吸油量を比較すると、被覆処理工程によって16%程度減少した。吸油量の減少は、粒子間に充填される樹脂量の減少、即ち、被覆酸化マグネシウム粒子の樹脂への充填性の向上を意味する。以上より、被覆工程によって吸油量が低減され、被覆酸化マグネシウム粒子の樹脂への充填性を向上させることがわかる。
[0055]
 比較例1の質量増加率は1.25%と大きく、吸湿性がよくないことがわかる。また、被覆工程のみを行い、表面処理工程を行わなかった実施例1の質量増加率は1.24%と大きく、比較例1と同様に吸湿性がよくないことがわかる。これに対し、表面処理工程を行った比較例2及び実施例2~5の質量増加率はそれぞれ0.11%、0.21~0.30%と小さい。以上より、表面処理工程によって吸湿性が低減されることがわかる。
[0056]
 比較例1及び比較例2の延伸直径はそれぞれ56mm、63mmであり、表面処理工程によって13%程度増加した。一方、被覆工程を行った実施例1~5の延伸直径は126~137mmであり、被覆処理工程によって100%程度増加した。以上より、被覆工程によって被覆酸化マグネシウム粒子が充填された熱伝導性樹脂組成物の流動性を向上させることがわかる。
[0057]
(4-2)熱伝導性樹脂組成物
 実施例6及び比較例3の実施条件と評価結果を表2に示す。
[表2]


[0058]
 実施例6及び比較例3の混練トルクはそれぞれ38N・mと57N・mであり、被覆工程により33%程度減少した。混練トルクの減少は酸化マグネシウム粒子の樹脂への混練性(流動性)の向上を意味する。以上より、被覆工程によって混練トルクが低減され、被覆酸化マグネシウム粒子の樹脂への混練性(流動性)を向上させることがわかる。
[0059]
 実施例6及び比較例3の熱伝導率はそれぞれ、2.0W/m・K、1.9W/m・Kであり被覆工程によって5%程度増加した。以上より、被覆酸化マグネシウム粒子(被覆工程)によって熱伝導性樹脂組成物の熱伝導性を向上させることがわかる。
[0060]
 なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義の異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。

請求の範囲

[請求項1]
 酸化マグネシウム粒子の表面が脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子であって、
 粒子のXを、X=[前記粒子のBET比表面積から算出されるBET比表面積径]÷[前記粒子のD 50](但し、D 50は前記粒子の累積粒度分布の累積50%における粒子径)としたとき、
 前記酸化マグネシウム粒子はXが0.2未満、D 50が5~100μmであり、
 前記被覆酸化マグネシウム粒子はXが0.2以上、D 50が5~100μm及び吸油量が25mL/100g未満であることを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
[請求項2]
 請求項1に記載の被覆酸化マグネシウム粒子において、
 前記脂肪酸がステアリン酸であり、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載の被覆酸化マグネシウム粒子において、
 前記酸化マグネシウム粒子の表面がシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
[請求項4]
 請求項3に記載の被覆酸化マグネシウム粒子において、
 前記シランカップリング剤がビニル基、アミノ基及びフェニル基並びにそれら置換基の誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
[請求項5]
 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子において、
 85℃-85%RH環境下で48時間後の質量増加率が1%以下であることを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子。
[請求項6]
 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被覆酸化マグネシウム粒子が樹脂に充填されていることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
[請求項7]
 請求項1に記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法であって、
 Xが0.2未満、D 50が5~100μmの酸化マグネシウム粒子に、脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方を添加、100~200℃で混合して前記酸化マグネシウム粒子の表面が前記脂肪酸及び脂肪酸金属塩の少なくとも一方で被覆された被覆酸化マグネシウム粒子を得る被覆工程を有することを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
[請求項8]
 請求項7に記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法において、
 前記脂肪酸がステアリン酸であり、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
[請求項9]
 請求項7又は8に記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法において、
 前記被覆工程の前に、前記酸化マグネシウム粒子にシランカップリング剤を添加、混合して前記酸化マグネシウム粒子の表面を前記シランカップリング剤で表面処理する表面処理工程をさらに有することを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。
[請求項10]
 請求項9に記載の被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法において、
 前記シランカップリング剤がビニル基、アミノ基及びフェニル基並びにそれら置換基の
誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする被覆酸化マグネシウム粒子の製造方法。