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1. (WO2018159631) NEAR-INFRARED FLUORESCENT PROBE FOR DETECTION OF PEPTIDASE ACTIVITY
Document

明 細 書

発明の名称 ペプチダーゼ活性検出用近赤外蛍光プローブ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

非特許文献

0006  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013   0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071  

実施例

0072   0073   0074   0075   0076  

実施例 1

0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091  

実施例 2

0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

実施例 3

0099   0100  

実施例 4

0101   0102   0103   0104  

実施例 5

0105   0106   0107  

実施例 6

0108   0109   0110   0111  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1 (R26)   2 (R26)   3 (R26)   4 (R26)   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : ペプチダーゼ活性検出用近赤外蛍光プローブ

技術分野

[0001]
 本発明は、ペプチダーゼ活性検出用の蛍光プローブに関する。より詳細には、アミノペプチダーゼ等のペプチダーゼ活性を近赤外領域の蛍光により検出することが可能な新規蛍光プローブ、当該プローブを含むがん診断用組成物、及び当該蛍光プローブを用いた検出方法に関する。

背景技術

[0002]
 がんの罹患者や死亡者が年々増加している現在、その治療方法の開発が期待され続けている。現時点で、最も確実と考えられているがん治療法の一つは、がんの早期発見とその確実な外科的摘出であるが、目視が完全には難しいがん組織を完全に除去することは難しく再発の原因となっている。
[0003]
 一方、がん細胞では、ペプチダーゼ(プロテアーゼ)であるγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)の発現亢進が認められ、この発現亢進が薬剤耐性に関連するとの報告がなされている。したがって、γ-グルタミルトランスフェラーゼを検出することによりがん細胞やがん組織を高精度に特定する診断方法の開発に繋がることが期待できる。
[0004]
 本発明者らは、これまでに、分子内スピロ環化平衡を示す蛍光色素を基に、γ-グルタミルトランスフェラーゼの活性を検出可能な蛍光プローブ群を開発している(非特許文献1等)。しかしながら、かかる従来の蛍光プローブの吸収・発光波長は、蛍光波長は550nm以下であり、組織表面に存在するがん細胞等に対しては高感度で検出可能であるものの、リンパ節転移などの生体組織下や臓器内部に存在するがん細胞には適用できないという制約があった。
[0005]
 一般的に、650nmから900nmの近赤外領域は「生体の窓」と呼ばれ、水による光の吸収や組織による光の散乱が少ないことが知られている。また、生体組織の自家蛍光は長波長で励起するほど減少するため、よりバックグラウンドが低く高コントラストなイメージングが可能であると考えれる。しかしながら、かかる近赤外領域の蛍光応答によりペプチダーゼ活性を検出でき、細胞透過にも優れた蛍光プローブは開発されていないのが現状である。

先行技術文献

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : Y.Uranoら、Sci. Transl. Med., 2011年、vol.3, pp.110ra119

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0007]
 そこで、本発明は、がん細胞で高発現しているペプチダーゼ活性をより長波長の蛍光応答で検出することができ、組織透過性に優れた新規蛍光プローブを提供することを課題とするものである。また、これにより、外科摘出手術等において生体組織化や臓器内部に存在するがん細胞を高感度で検出・可視化可能なシステムを提供することも課題とする。
[0008]
 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、シリコンローダミン骨格にペプチダーゼによって切断される基を導入した構造を有し、分子内スピロ環化特性を最適化した蛍光分子を用いることにより、標的ペプチダーゼとの接触前は無色・無蛍光だが、当該ペプチダーゼとの反応により近赤外領域の蛍光応答を示す蛍光プローブが得られることを見出した。また、当該蛍光プローブを臨床検体等に適用した結果、標的ペプチダーゼを発現するがん細胞及び組織を迅速に検出・可視化できることを見出した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
[0009]
 すなわち、本発明は、一態様において、
<1>以下の式(I)で表される化合物又はその塩を含む、ペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ:
[化1]


〔式中、
Xは、Si(R )(R )を表し(ここで、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、又はアルキル基を表す);
Yは、C -C アルキレン基を表し、当該アルキレン基はハロゲン原子又はハロアルキルで置換されていてもよく;
は、水素原子、シアノ基、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基、アミド基、及びアジド基よりなる群から独立に選択される1~4個の同一又は異なる置換基を表し;
は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成し;
は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成し;
、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルキル基、スルホ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はアジド基を表し;
10は、アミノ酸由来のアシル残基を表す。〕;
<2>R とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造が6員環であり、R とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造が6員環である、上記<1>に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;
<3>R 及びR が、いずれもC -C アルキル基である、上記<1>又は<2>に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;
<4>R 、R 、R 及びR が、いずれも水素原子である、上記<1>~<3>のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;
<5>前記ペプチダーゼが、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)、又はカルパインである、上記<1>~<4>のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;
<6>R 10が、γ-グルタミル基である、上記<1>に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;
<7>R 10が、プロリン残基を含む、上記<1>に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ;及び
<8>式(I)で表される化合物が以下の構造を有する、上記<1>に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ
[化2]


を提供するものである。
[0010]
 また、別の態様において、本発明は、
<9>上記<1>~<8>のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを含む、がん診断用組成物;
<10>がん外科治療又はがん検査に用いる上記<9>に記載のがん診断用組成物;及び
<11>前記がん外科治療又はがん検査が、開創手術、鏡視下手術、又は内視鏡検査である上記<10>に記載のがん診断用組成物
を提供するものである。
[0011]
 更なる態様において、本発明は、特定のペプチダーゼが発現している標的細胞を検出又は可視化する方法にも関し、具体的には、
<12>上記<1>~<8>のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを用いて、特定のペプチダーゼが発現している標的細胞を検出又は可視化する方法;
<13>前記蛍光プローブと前記標的細胞とを生体外において接触させる工程;及び、前記標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと前記蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測する工程を含むことを特徴とする、上記<12>に記載の方法;
<14>蛍光イメージング手段を用いて前記蛍光応答を観測することを含む、上記<13>に記載の方法;及び
<15>前記標的細胞が、癌細胞である、上記<12>に記載の方法
を提供するものである。
[0012]
 更なる態様において、本発明は、上記ペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブによる蛍光応答を観測する手段を備える装置にも関し、具体的には、
<16>標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと上記<1>~<8>のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測するための蛍光イメージング手段を備える、装置;
<17>前記装置が内視鏡又はin vivo蛍光イメージング装置である、上記<16>に記載の装置;及び
<18>請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを含むキット
を提供するものである。

発明の効果

[0013]
 本発明の蛍光プローブは、標的ペプチダーゼとの接触前は無色・無蛍光だが、当該ペプチダーゼとの反応により近赤外領域の蛍光応答を特異的にかつon/offで検出することができる。特に、従来の蛍光プローブに比べて約100nm程度長波長化した近赤外領域の蛍光応答を示すため、従来は困難であったリンパ節転移などの生体深部に存在するがん細胞を可視化することができるという効果を奏するものである。
[0014]
 また、本発明の蛍光プローブを術中または術前イメージングに適用することで種々のがんを正確、迅速、高感度に特定できる。これにより、がんの正確な診断が可能となり、比較的侵襲の小さい内視鏡検査時における微小がんを早期に発見でき、化学放射線治療での根治的治療に有益である。また、ESD施行時や開腹手術時等の外科手術時に適用することで切除断端の評価にも好適であり、遺残のない根治的な治療を行うことが可能となる。本発明の医療上、産業上の利用価値、経済効果は極めて大きいものといえる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 図1は、化合物1(HMJSiR)の吸収及び蛍光スペクトルである。図1(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図1(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
[図2] 図2は、本発明の蛍光プローブである化合物2(gGlu-HMJSiR)の吸収及び蛍光スペクトルである。図2(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図2(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。また、図2(d)は、化合物1の吸収スペクトルに対して規格化した化合物2の吸収スペクトルである。
[図3] 図3は、比較例の化合物3(HMSiR600)の吸収及び蛍光スペクトルである。図3(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図3(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
[図4] 図4は、比較例の化合物4(HMSiR620h)の吸収及び蛍光スペクトルである。図4(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図4(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
[図5] 図5は、本発明の蛍光プローブである化合物2にγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を添加した際の蛍光強度の時間変化、およびγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)と阻害剤(GGsTop)を添加した際の蛍光強度の時間変化を示すものである。
[図6] 図6は、本発明の蛍光プローブである化合物2を用いた生細胞におけるGGT活性の蛍光共焦点イメージング画像である。
[図7] 図7は、SHIN3細胞における化合物2の細胞内局在を示す2色イメージング画像である。
[図8] 図8は、本発明の蛍光プローブである化合物2を用いた腹膜転移を有するモデルマウスの腸間膜における蛍光イメージング画像である。
[図9] 図9は、本発明の蛍光プローブである化合物2を用いた皮下腫瘍のモデルマウスモデルの蛍光イメージング画像である。

発明を実施するための形態

[0016]
 以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
[0017]
1.定義
[0018]
 本明細書中において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を意味する。
[0019]
 本明細書中において、「アルキル」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数1~20個(C 1~20)、炭素数1~15個(C 1~15)、炭素数1~10個(C 1~10)である。炭素数を指定した場合は、その数の範囲の炭素数を有する「アルキル」を意味する。例えば、C 1~8アルキルには、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等が含まれる。本明細書において、アルキル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アルキル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アルキル部分を含む他の置換基(例えばアルコシ基、アリールアルキル基など)のアルキル部分についても同様である。
[0020]
 本明細書において、ある官能基について「置換されていてもよい」と定義されている場合には、置換基の種類、置換位置、及び置換基の個数は特に限定されず、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。これらの置換基にはさらに置換基が存在していてもよい。このような例として、例えば、ハロゲン化アルキル基、ジアルキルアミノ基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
[0021]
 本明細書中において、「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有している直鎖又は分枝鎖の炭化水素基をいう。例えば、その非限定的な例として、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタンジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタンジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル及び1,4-ヘキサンジエニル)を含む。二重結合についてシス配座またはトランス配座のいずれであってもよい。
[0022]
 本明細書中において、「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有している直鎖又は分枝鎖の炭化水素基をいう。例えば、その非限定的な例として、エチニル、プロピニル、2-ブチニルおよび3-メチルブチニルなどがあるを含む。
[0023]
 本明細書中において、「シクロアルキル」は、上記のアルキルよりなる単環または多環式の非芳香環系をいう。当該シクロアルキルは、置換されていないか同一もしくは異なっても良い1以上の置換基によって置換されていることができ、単環式シクロアルキルの非限定的な例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどがあり、多環式のシクロアルキルの非限定的な例には、1-デカリニル、2-デカリニル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。また、当該シクロアルキルは、環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子など)を1個以上含むヘテロシクロアルキルであってもよい。ヘテロシクロアルキル環中の任意の-NHは、例えば-N(Boc)基、-N(CBz)基および-N(Tos)基としてのように保護されていてもよく、環中の窒素原子または硫黄原子が対応するN-オキシド、S-オキシドまたはS,S-ジオキシドへ酸化されたものであってもよい。例えば、単環式ヘテロシクロアルキルの非限定的な例には、ジアザパニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4-ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクタムおよびラクトン等が挙げられる。
[0024]
 本明細書中において、「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、単環または多環式の非芳香環系をいう。当該シクロアルケニルは、置換されていないか同一もしくは異なっても良い1以上の置換基によって置換されていることができ、単環式のシクロアルケニルの非限定的な例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプタ-1,3-ジエニルなどがあり、多環式のシクロアルケニルの非限定的な例には、ノルボルニレニル等が挙げられる。また、当該シクロアルキルは、環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子など)を1個以上含むヘテロシクロアルケニルであってもよいヘテロシクロアルケニル環中の窒素原子または硫黄原子を、対応するN-オキシド、S-オキシドまたはS,S-ジオキシドへ酸化してもよい。
[0025]
 本明細書中において、「アルキレン」とは、直鎖状または分枝状の飽和炭化水素からなる二価の基であり、例えば、メチレン、1-メチルメチレン、1,1-ジメチルメチレン、エチレン、1-メチルエチレン、1-エチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1-ジエチルエチレン、1,2-ジエチルエチレン、1-エチル-2-メチルエチレン、トリメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、1,1-ジメチルトリメチレン、1,2-ジメチルトリメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、1-エチルトリメチレン、2-エチルトリメチレン、1,1-ジエチルトリメチレン、1,2-ジエチルトリメチレン、2,2-ジエチルトリメチレン、2-エチル-2-メチルトリメチレン、テトラメチレン、1-メチルテトラメチレン、2-メチルテトラメチレン、1,1-ジメチルテトラメチレン、1,2-ジメチルテトラメチレン、2,2-ジメチルテトラメチレン、2,2-ジ-n-プロピルトリメチレン等が挙げられる。
[0026]
 本明細書中において、「アリール」は単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子など)を1個以上含む芳香族複素環であってもよい。この場合、これを「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ぶ場合もある。アリールが単環および縮合環のいずれである場合も、すべての可能な位置で結合しうる。単環式のアリールの非限定的な例としては、フェニル基(Ph)、チエニル基(2-又は3-チエニル基)、ピリジル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピラゾリル基、2-ピラジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリダジニル基、3-イソチアゾリル基、3-イソオキサゾリル基、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル基又は1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基等が挙げられる。縮合多環式のアリールの非限定的な例としては、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-インデニル基、2-インデニル基、2,3-ジヒドロインデン-1-イル基、2,3-ジヒドロインデン-2-イル基、2-アンスリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、1,2-ジヒドロイソキノリル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ベンゾフラニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-1-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル基、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン-1-イル基、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン-2-イル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、フルオレニル基又はチオキサンテニル基等が挙げられる。本明細書において、アリール基はその環上に任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アリール基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アリール部分を含む他の置換基(例えばアリールオキシ基やアリールアルキル基など)のアリール部分についても同様である。
[0027]
 本明細書中において、「アルコキシ基」とは、前記アルキル基が酸素原子に結合した構造であり、例えば直鎖状、分枝状、環状又はそれらの組み合わせである飽和アルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、シクロブトキシ基、シクロプロピルメトキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロプロピルエチルオキシ基、シクロブチルメチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプロピルプロピルオキシ基、シクロブチルエチルオキシ基又はシクロペンチルメチルオキシ基等が好適な例として挙げられる。
[0028]
 本明細書中において用いられる「アミド」とは、RNR’CO-(R=アルキルの場合、アルカミノカルボニル-)およびRCONR’-(R=アルキルの場合、アルキルカルボニルアミノ-)の両方を含む。
[0029]
 本明細書中において用いられる「エステル」とは、ROCO-(R=アルキルの場合、アルコキシカルボニル-)およびRCOO-(R=アルキルの場合、アルキルカルボニルオキシ-)の両方を含む。
[0030]
 本明細書中において、「環構造」という用語は、二つの置換基の組み合わせによって形成される場合、複素環または炭素環を意味し、そのような環は飽和、不飽和、または芳香族であることができる。従って、上記において定義した、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、及びヘテロアリールを含むものである。
[0031]
 本明細書中において、「ヘテロ環構造」という用語は、複素環と同義であり、O、S及びNから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1以上有する単環のへテロ環を意味し、そのような環は飽和、不飽和、または芳香族であることができる。また、これらの単環のへテロ環にさらに例えば3~8員の環が1又は2個縮合した環(多環のへテロ環)を含むことができる。非芳香族のへテロ環として、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。また、芳香族のへテロ環として、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環等が挙げられる。その他、ジュロリジン、インドリン等も挙げられる。
[0032]
 本明細書中において、特定の置換基は、別の置換基と環構造を形成することができ、そのような置換基同士が結合する場合、当業者であれば、特定の置換、例えば水素への結合が形成されることを理解できる。従って、特定の置換基が共に環構造を形成すると記載されている場合、当業者であれば、当該環構造は通常の化学反応によって形成することができ、また容易に生成することを理解できる。かかる環構造およびそれらの形成過程はいずれも、当業者の認識範囲内である。また、当該ヘテロ環構造は、環上に任意の置換基を有していてもよい。
[0033]
2.本発明のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ
 本発明のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブは、一態様において、以下の式(I)で表される構造を有する化合物を含むものである。
[化3]


[0034]
 上記式(I)において、Xは、Si(R )(R )を表す。ここで、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、又はアルキル基を表す。当該アルキル基は、C -C アルキル基であることができる。R 及びR が、アルキル基である場合、それらは1以上の置換基を有することができ、そのような置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基などを1個又は2個以上有していてもよい。R 及びR は、好ましくは、いずれもC -C アルキル基であり、より好ましくは、いずれもメチル基である(その場合、Xは、Si(CH となる)。また、場合によっては、R 及びR は互いに結合して環構造を形成していてもよい。例えば、R 及びR がともにアルキル基である場合に、R 及びR が互いに結合してスピロ炭素環を形成することができる。形成される環は、例えば5ないし8員環程度であることが好ましい。
[0035]
 Yは、C -C アルキレン基を表す。当該アルキレン基はハロゲン原子又はハロアルキルで置換されていてもよい。C アルキレン基の場合、Yは直接結合を意味する。アルキレン基は直鎖状アルキレン基又は分枝鎖状アルキレン基のいずれであってもよい。例えば、メチレン基(-CH -)、エチレン基(-CH -CH -)、プロピレン基(-CH -CH -CH -)のほか、分枝鎖状アルキレン基として-CH(CH )-、-CH -CH(CH )-、-CH(CH CH )-なども使用することができる。これらのうち、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
[0036]
 R は、水素原子、シアノ基、又はそれぞれ置換されていてもよいアルキル基(例えば、「置換されていてもよいアルキル基」には、フルオロアルキル等のハロアルキルが含まれ得る)、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基、アミド基、及びアジド基よりなる群から独立に選択される1~4個の同一又は異なる置換基を表す。また、ベンゼン環上に2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。R としては、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であることがより好ましい。水素原子が特に好ましい。
[0037]
 R は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成する。すなわち、当該ヘテロ環構造は、R とR が連結することによって、R が結合している窒素原子及びR が結合している炭素原子を環員原子とするヘテロ環構造を形成する。好ましくは、当該ヘテロ環構造は6員環である。また、当該ヘテロ環構造は、R が結合している窒素原子以外のヘテロ原子をさらに含むことができるが、R が結合している窒素原子の環員原子がいずれも炭素原子であることが好ましい。
[0038]
 同様に、R は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成する。すなわち、当該ヘテロ環構造は、R とR が連結することによって、R が結合している窒素原子及びR が結合している炭素原子を環員原子とするヘテロ環構造を形成する。好ましくは、当該ヘテロ環構造は6員環である。また、当該ヘテロ環構造は、R が結合している窒素原子以外のヘテロ原子をさらに含むことができるが、R が結合している窒素原子の環員原子がいずれも炭素原子であることが好ましい。
[0039]
 好ましくは、R とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造及びR とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造が、いずれも6員環であることが好ましい。
[0040]
 R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルキル基、スルホ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はアジド基を表す。R 、R 、R 及びR が、いずれも水素原子であることが好ましい。
[0041]
 R 10は、アミノ酸由来のアシル残基を表す。当該アシル残基は、アミノ酸のカルボキシル基からヒドロキシル基を除去した残りの部分構造であるアシル基を意味する。すなわち、アミノ酸由来のアシル残基のカルボニル部分と式(I)のNHとがアミド結合を形成することでシリコンローダミン骨格と連結している。
[0042]
 本明細書において、「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基の両方を有する化合物であれば任意の化合物を用いることができ、天然及非天然のものを含む。中性アミノ酸、塩基性アミノ酸、又は酸性アミノ酸のいずれであってもよく、それ自体が神経伝達物質などの伝達物質として機能するアミノ酸のほか、生理活性ペプチド(ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドのほか、オリゴペプチドを含む)やタンパク質などのポリペプチド化合物の構成成分であるアミノ酸を用いることができ、例えばαアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸などであってもよい。アミノ酸としては、光学活性アミノ酸を用いることが好ましい。例えば、αアミノ酸についてはD-又はL-アミノ酸のいずれを用いてもよいが、生体において機能する光学活性アミノ酸を選択することが好ましい場合がある。
[0043]
 後述のようにR 10は、標的とするペプチダーゼとの反応によって切断される部位である。前記標的ペプチダーゼが、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)、又はカルパインであることができる。それゆえ、標的ペプチダーゼがγ-グルタミルトランスペプチダーゼである場合、R 10は、γ-グルタミル基であることが好ましい。また、標的ペプチダーゼがジペプチジルペプチダーゼIVである場合、R 10は、プロリン残基を含むアシル基であることが好ましい。標的ペプチダーゼがカルパインである場合、R 10は、例えば、システイン残基を含むアシル基であることができ、或いは、カルパイン基質として当該技術分野において公知のSuc-Leu-Leu-Val-Tyr(Suc-LLVY)やAcLMを用いることもできる。
[0044]
 本発明のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブとして代表的な式(I)の化合物の具体例としては、
[化4]


が挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
[0045]
 上記式(I)で表される化合物は、塩として存在する場合がある。そのような塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。もっとも、これらの塩に限定されることはない。
[0046]
 式(I)で表される化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
[0047]
 式(I)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
[0048]
 上記の蛍光プローブは、必要に応じて試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供され得る。
[0049]
 また、本発明の蛍光プローブを用いてペプチダーゼ活性を検出する場合或いは後述のようにがん診断用に用いる場合、当該蛍光プローブを含むキットの形態として用いることもできる。当該キットにおいて、通常、本発明の蛍光プローブは溶液として調製されているが、例えば、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供され、使用時に注射用蒸留水や適宜の緩衝液に溶解して適用することもできる。当該キットは、必要に応じて、上述の添加剤を配合してもよい。
[0050]
 本明細書の実施例には、式(I)で表される本発明の化合物に包含される代表的化合物についての製造方法が具体的に示されているので、当業者は本明細書の開示を参照することにより、及び必要に応じて出発原料や試薬、反応条件などを適宜選択することにより、式(I)に包含される任意の化合物を容易に製造することができる。
[0051]
3.本発明の蛍光プローブの蛍光発光機構
 以下、本発明のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブにおける蛍光発光機構について説明する。
[0052]
 以下のスキームに示すように、上記式(I)で示される化合物は、ローダミンの中心原子をOからSiに置換した構造を有するシリコンローダミン骨格の上部が閉環してスピロ環を形成した状態では、生理的pH(pH7.4付近)において当該蛍光プローブ自体は実質的に無吸収・無蛍光(蛍光応答がOffの状態)である。これに対し、R 10のアミノ酸由来のアシル残基がペプチダーゼにより加水分解されシリコンローダミン骨格から切断されると、式(II)の化合物が生じる。式(II)の化合物は、細胞内酸性小胞のリソソーム等(pH4.0~5.0)に集積することで、速やかにスピロ環が開環し強蛍光性を示す。
[0053]
[化5]


[0054]
 すなわち、式(I)で表される化合物は、生体内のpH環境下において例えば500~650nm程度の励起光を照射した場合には、ほとんど蛍光を発しないが、ペプチダーゼとの反応によって生じた開環化合物(II)は、同じ条件下において極めて強い蛍光を発する性質を有している。したがって、式(I)で表される蛍光プローブを取り込んだ細胞が、R 10を加水分解して切断可能なペプチダーゼを発現していない場合には、開環化合物(II)は生成せず、蛍光物質が当該細胞内で生成することはないが、そのようなペプチダーゼが存在する場合には、開環化合物(II)が生じて強い蛍光発光が得られる。
したがって、標的とするペプチダーゼの存在を蛍光強度のon/off変化により観測し、それにより、該ペプチダーゼを発現するがん細胞等の存在を検出することが可能となる。
[0055]
 また、式(I)で表される化合物では、キサンテン環の10位元素であるXにケイ素原子を有し、また、当該環部位の一方をヘテロ環を有する構造を採用したことにより、スピロ環の開環による蛍光発光を、蛍光ピーク波長が650nmから900nmの近赤外領域の蛍光とすることができるという特徴を有するものである。これにより、従来は困難であったリンパ節転移などの生体深部に存在するがん細胞等の可視化が可能となる。
[0056]
 本発明の蛍光プローブを生体細胞内に適用した場合の特性としては、ペプチダーゼによって加水分解された開環化合物(II)は、細胞のリソソーム内に集積することになり、そして、1)最大吸収波長が100nm程度長波長化し、2)蛍光量子収率およびモル吸光係数が増大し、3)リソソーム内の低pHによってスピロ環化平衡が移動し閉環構造から開環構造へと変化し、蛍光応答が得られる。加えて、4)開環化合物(II)蛍光はリソソーム外では減少するため、細胞から漏出したプローブから発せられるバックグラウンドシグナルは抑制され、高感度の検出が可能であることが挙げられる。
[0057]
4.本発明の蛍光プローブを用いたペプチダーゼ活性検出方法
 かかる発光機構に従い、本発明の蛍光プローブを用いて特定のペプチダーゼが発現している標的細胞を特異的に検出又は可視化することができる。具体的には、
A)蛍光プローブと標的細胞とを生体内又は生体外において接触させる工程;及び、
B)前記標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと前記蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測する工程
を含むことによって、特定のペプチダーゼを発現している標的細胞のみを特異的に近赤外の蛍光シグナルとして検出又は可視化することができる。なお、本明細書において「検出」という用語は、定量、定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。
[0058]
 上述のように、特定のペプチダーゼは、好ましくは、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)、又はカルパインであることができる。ただし、これらに限定されるものではない。上記標的細胞は、好ましくは癌細胞である。
[0059]
 また、本発明の方法は、さらに蛍光イメージング手段を用いて前記蛍光応答を観測することを含むことができる。上記の蛍光応答を観測する手段は、広い測定波長を有する蛍光光度計を用いることができるが、前記蛍光応答を2次元画像として表示可能な蛍光イメージング手段を用いて可視化することもできる。蛍光イメージングの手段を用いることによって、蛍光応答を二次元で可視化できるため、ペプチダーゼを発現する標的細胞に瞬時に視認することが可能となる。蛍光イメージング装置としては、当該技術分野において公知の装置を用いることができる。なお、場合によって、紫外可視吸光スペクトルの変化(例えば、特定の吸収波長における吸光度の変化)によって上記ペプチダーゼと蛍光プローブの反応を検出することも可能である。
[0060]
 上工程A)において、本発明の蛍光プローブと、標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼとを接触させる手段としては、代表的には、蛍光プローブを含む溶液を試料添加、塗布、或いは噴霧することが挙げられるが、その用途に応じて適宜選択することが可能である。また、本発明の蛍光プローブを、動物個体における診断又は診断の補助、若しくは特定の細胞又は組織の検出に適用する際に、当該蛍光プローブと、標的細胞又は組織において発現するペプチダーゼとを接触させる手段としては、特に限定されることなく、例えば、静脈内投与等、当該分野において一般的な投与手段を用いることができる。
[0061]
 本発明の蛍光プローブの適用濃度は特に限定されないが、例えば0.1~100μM程度の濃度の溶液を適用することができる。
[0062]
 また、標的細胞に行う光照射は、当該細胞に対して光を直接或いは導波管(光ファイバー等)を介して照射することができる。光源としては、酵素切断を受けた後の、本発明の蛍光プローブの吸収波長を含む光を照射できるものであれば、任意の光源を用いることができ、本発明の方法を実施する環境等に応じて適宜選択され得る。
[0063]
 本発明の蛍光プローブとしては、上記一般式(I)で表される化合物又はその塩をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、一般的には、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供されるが、使用時に注射用蒸留水や適宜の緩衝液に溶解して適用することが可能である。
[0064]
5.本発明の蛍光プローブを含むがん診断用組成物等
 上述のように本発明の蛍光プローブを用いることで、特定のペプチダーゼを発現しているがん細胞やがん組織を検出可視化することができるため、別の態様において、本発明は、上記ペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを含むがん診断用組成物にも関する。
[0065]
 本明細書において、「がん組織」の用語はがん細胞を含む任意の組織を意味している。「組織」の用語は臓器の一部又は全体を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。本発明のがん診断用組成物は、がん組織において特異的に強発現しているペプチダーゼ、典型的にはγ-グルタミルトランスフェラーゼを検出する作用を有していることから、がん組織としてはγ-グルタミルトランスフェラーゼを高発現している組織が好ましい。また、本明細書において「診断」の用語は任意の生体部位においてがん組織の存在を肉眼的又は顕微鏡下に確認することを含めて最も広義に解釈する必要がある。
[0066]
 本発明のがん診断用組成物は、例えば手術中又は検査中に使用することができる。本明細書において「手術」の用語は、例えば開創を伴う開頭手術、開胸手術、若しくは開腹手術、又は皮膚手術などのほか、胃内視鏡、大腸内視鏡、腹腔鏡、又は胸腔鏡などの鏡視下手術などを含めて、がんの治療のために適用される任意の手術を包含する。また、「検査」の用語は、胃内視鏡や大腸内視鏡などの内視鏡を用いた検査及び検査に伴う組織の切除や採取などの処置のほか、生体から分離・採取された組織に対して行う検査などを包含する。
[0067]
 本発明のがん診断用組成物により診断可能ながんは特に限定されず、肉腫を含め任意の悪性腫瘍を包含するが、好ましくは固形がんの診断に用いることが好ましい。好ましい態様の一つとして、例えば、肉眼下又は鏡視下における手術野の一部又は全体に本発明のがん診断用組成物を噴霧、塗布、又は注入などの適宜の方法により適用し、数十秒から数分後に500 nm程度の波長の光を適用部位に照射することができる。その適用部位にがん組織が含まれる場合には、その組織が蛍光を発するようになるので、その組織をがん組織であると特定してそこを含めて周囲組織と共に切除する。例えば、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、肝臓癌、胆のう癌、膵臓癌などの典型的な癌腫の外科治療に際して、肉眼的に確認できる癌種組織に対して確定診断を行うほか、リンパ節などのリンパ組織並びに周囲臓器及び組織への浸潤及び転移などを診断することができ、術中迅速診断を行って切除範囲を確定することが可能になる。
[0068]
 また、その他の好ましい態様として、例えば、胃内視鏡又は大腸内視鏡検査において検査部位に本発明のがん診断用組成物を噴霧、塗布、又は注入などの適宜の方法により適用し、数十秒から数分後に500 nm程度の波長の光を適用部位に照射し、蛍光を発する組織が確認された場合にはそこをがん組織と特定することができる。内視鏡検査においてがん組織が確認できた場合には、その組織について検査切除や治療的な切除を行うこともできる。
[0069]
 本発明のがん診断用組成物は、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる上述の添加剤を配合してもよい。
[0070]
6.本発明の蛍光プローブを用いる装置
 本発明は、標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測するための蛍光イメージング手段を備える、装置にも関する。
[0071]
 好ましくは、前記装置が内視鏡又はin vivo蛍光イメージング装置であることができる。
実施例
[0072]
 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[0073]
[試薬、装置等]
 以下に示す反応に用いる有機溶媒は、すべて脱水グレードのものを用いた。市販の原料は試薬メーカー(和光純薬株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、Sigma-Aldrich Co. Ltd., Acros Co. Ltd.)より購入した。
[0074]
 高速液体クロマトグラフィーによる精製は、以下の装置およびカラムを用いた。
 ・ポンプ:PU-2080およびPU-2087(日本分光株式会社)
 ・検出器:MD-2010(日本分光株式会社)
 ・カラム:Inertsil ODS-3(10 x 250 mm or 20 x 250 mm, GL Science Inc.)
[0075]
 HPLCによる分離精製に際しては、特に断りがない限り以下の溶媒A、B及びCを用い、これらを任意の組成で混合して精製を行った。
  A: 精製水(1%アセトニトリル、0.1% トリフルオロ酢酸を含む)
  B: アセトニトリル(1%精製水を含む)
  C: 精製水(0.2M 酢酸-トリエチルアミンを含む)
 HPLC分離における送液は、それぞれ25 ml/min (ポンプ:PU-2087, カラム:20 x 250 mm)、5 ml/min (ポンプ:PU-2080, カラム:10 x 250 mm)、1 ml/min (ポンプ:PU-2080, カラム:4.6 x 200 mm)にて行った。中圧カラムクロマトグラフィーによる精製は、YFLC-Al580(山善株式会社)を用いて行った。
[0076]
 NMR測定は、AVANCE III 400 Nanobay (Bruker, Co. Ltd.) を用いて行った(400 MHz for 1H NMR, 101 MHz for 13C NMR)。質量分析測定は、MicrOTOF (ESI-TOF, Bruker, Co. Ltd.)を用いて行った。High-resolution MS (HRMS)測定に際しては、外部標準物質としてギ酸ナトリウムを用いた。
実施例 1
[0077]
1.蛍光プローブの合成
[0078]
[化合物1(母核化合物)の合成]
 本発明の蛍光プローブ分子の母核となる化合物1(HMJSiR)を以下のスキーム1に従って合成した。当該化合物1をベースにして、式(I)のR 10に相当する部位に標的ペプチダーゼで切断され得る特定のアシル残基(アミノ酸残基)を導入することで、標的とするペプチダーゼに応じて種々の蛍光プローブ分子を得ることができる。
[0079]
[化6]


[0080]
[A1の合成]
 文献(M. W. Kryman, G. a. Schamerhorn, J. E. Hill, B. D. Calitree, K. S. Davies, M. K. Linder, T. Y. Ohulchanskyy, M. R. Detty, Organometallics 2014, 33, 2628-2640)に従って合成した8-Bromo-1,2,3,5,6,7- hexahydropyrido[3,2,1-ij]quinolone(14.1 g、49.8 mmol、1.0当量)および文献(K. Umezawa, M. Yoshida, M. Kamiya, T. Yamasoba, Y. Urano, Nat. Chem. 2016, DOI 10.1038/nchem.2648)に従って合成した (2-bromo-4-(N,N- diallylamino)phenyl)methanol(14.8 g、58.7 mmol、1.2当量)をアルゴン雰囲気下で40mlの脱水ジクロロメタンに溶解した。 溶液を0 ℃に冷却し、20.0 ml(160 mmol、3.2当量)の三ふっ化ほう素ジエチルエーテル錯体を滴下した。 反応混合物を室温で69時間撹拌し、次いで飽和重曹水でクエンチした。 ジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧除去して得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ノルマルヘキサン/ジクロロメタン)により精製して、17.99 gの黄色油状物(34.8 mmol、70.0 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl 3): δ 7.05 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.67-6.64 (m, 2H), 5.99-5.90 (m, 2H), 5.32-5.27 (m, 4H), 4.10 (s, 2H), 3.99-3.98 (m, 4H), 3.21-3.15 (m, 4H), 2.95 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.75 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.13-2.01 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, CDCl 3): δ 148.0, 143.0, 133.6, 130.6, 128.7, 127.1, 126.8, 125.6, 125.5, 121.1, 120.7, 116.2, 115.9, 111.6, 77.4, 52.7, 50.0, 49.5, 40.9, 29.4, 27.5, 22.3, 21.9; HRMS (ESI +): Calcd for [M+H] + 515.06689, Found, 515.06920 (+2.3 mmu).
[0081]
[A2の合成]
 化合物A1 250.0mg(484.2 μmol、1.0当量)を15 mlの脱水テトラヒドロフラン中に溶解し、アルゴン雰囲気下で-78 ℃に冷却した。 sec-ブチルリチウムを1.2 ml(1.1 M、1.21 mmol、2.5当量)滴下し、アルゴン雰囲気下、-78 ℃で5分間攪拌した。この溶液に、88 μl (0.726 mmol、1.5当量)のジクロロジメチルシランを加え、0 ℃で2時間撹拌を続けた。 1 M 希塩酸で反応を停止させ、飽和重曹水で中和した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた残渣をアミノ化シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ノルマルヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、無色の液体を得た。これをアセトン10 mlに溶解し、-15 ℃に冷却し、過マンガン酸カリウム 153.0 mg(0.968 mmol、2.0当量)を6回に分けて60分にわたって添加した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト濾過し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ノルマルヘキサン/ 酢酸エチル)で精製して33.0 mgの淡黄色固体(77.0 μmol、2段階で15.9 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl 3): δ 8.31 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.09 (s, 1H), 6.82-6.79 (m, 2H), 5.93-5.84 (m, 2H), 5.23-5.19 (m, 4H), 4.03-4.02 (m, 4H), 3.30-3.26 (m, 4H), 2.92 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.82 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.06-1.93 (m, 4H), 0.49 (s, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl 3): δ 185.4, 150.3, 145.3, 141.5, 135.3, 133.3, 131.3, 130.2, 129.7, 129.1, 124.7, 122.9, 116.7, 114.7, 113.5, 52.8, 50.6, 50.0, 29.0, 283.3, 22.0, 21.7, -0.1; HRMS (ESI +): Calcd for [M+H] + 429.23567, Found 429.23595 (+0.3 mmu).
[0082]
[化合物A3及び化合物1の合成]
 10 mlの脱水テトラヒドロフランに1-ブロモ-2- [(1,1-ジメチルエトキシ)メチル]-ベンゼン106.1 mg(0.436 mmol、11.0当量)を溶解し、アルゴン雰囲気下で-78 ℃に冷却した。 sec-ブチルリチウム 357 μl(1.0 M、0.357 mmol、9.0当量)を滴下し、-78 ℃でアルゴン雰囲気下で5分間攪拌した。この溶液に、5 mlの脱水テトラヒドロフラン中に溶解した17.0 mgの化合物 A2(40.0 μmol、1.0当量)を滴下し、-78 ℃で60分間撹拌を続けた。 1M 希塩酸で反応を停止させ、飽和重曹水で中和した。水層をジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を10 mlのメタノールに溶解し、0 ℃に冷却した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(1.8 mg、48 μmol、1.2当量)を加え、0 ℃で10分間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、水を加え、水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた残渣に、1,3-ジメチルバルビツール酸(92.8 mg、0.595 mmol、15.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9.2 mg、8.0 μmol、0.2当量)および脱酸素ジクロロメタン(2 ml)を加え、混合物をアルゴン雰囲気下で1時間加熱還流した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和硫酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。得られた残渣を10mlのジクロロメタンに溶解し、38.7 mgのクロラニル(0.157 mmol、3.9当量)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物を短いシリカクロマトグラフィーで精製してクロラニルを除去し、減圧濃縮し、中間体である化合物A3を得た。残渣にトリフルオロ酢酸とジクロロメタンの1:1混合物4 mlを加え、室温で9時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、溶媒を減圧除去した。次いでメタノールと水の1:1混合物4 mlに溶解した。反応液を室温で12時間撹拌し、メタノールを減圧除去し残った溶液を濾過し、分取HPLCで精製して、5.4 mgの青色粉末(12.3 μmol、4段階で30.8 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, (CD 3) 2CO): δ 7.30 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.15 (dt, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.08 (dt, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.77 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.57 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 5.46 (s, 2H), 3.16-3.09 (m, 4H), 2.97-2.93 (m, 2H, partially overlapped with the H 2O peak), 2.62-2.49 (m, 2H), 2.02-1.94 (m, 2H), 1.86-1.81 (m, 2H), 0.64 (s, 3H), 0.48 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, (CD 3) 2CO): δ 150.6, 147.3, 142.2, 141.0, 140.8, 137.7, 134.6, 129.1, 129.0, 128.0, 127.7, 127.3, 126.8, 124.2, 123.9, 122.1, 118.6, 117.0, 94.1, 74.6, 50.9, 50.4, 30.1, 29.1, 23.2, 22.7, 1.6, 1.5; HRMS (ESI +): Calcd for [M] + 439.22002, Found, 439.21920 (-0.8 mmu).
[0083]
[化合物2(蛍光プローブ分子)の合成]
 上記化合物1から本発明の蛍光プローブ分子である化合物2(gGlu-HMJSiR)を以下のスキーム2に従って合成した。なお、化合物2は、式(I)のR 10に相当する部位にγ-グルタミル基を導入した化合物であるが、上述のように標的とするペプチダーゼに応じて任意のアシル基を導入することでその他の蛍光プローブを同様に合成することができる。
[0084]
[化7]


[0085]
 中間体 A3 (10.8 mg、21.8 μmol、1.0当量)、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-グルタミン酸1-tert-ブチル(660.6 mg、2.18 mmol、100.0当量)、HATU(827.9 mg、2.18 mmol、100.0当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(378.5 μl、2.18 mmol、100.0当量)を5 mlの脱水N,N-ジメチルホルムアミドに添加した。 混合物を室温でアルゴン雰囲気下で23時間撹拌した。反応溶媒を減圧除去し、残渣をトリフルオロ酢酸とジクロロメタンの4:1混合物5 mlに溶解し、溶液を8時間撹拌した。 溶媒を減圧除去し、残渣を分取HPLCで精製して、1.5 mgの赤色粉末(2.6 μmol、12.1 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD 3OD + TFA): δ8.13 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 7.73-7.65 (m, 3H), 7.57 (dd, 1H, J = 9.0, 2.0 Hz), 7.31-7.29 (m, 1H), 6.85-6.82 (m, 2H), 5.15 (q, 2H, J = 11.5 Hz), 4.08 (t, 1H, J = 6.6 Hz), 3.84-3.78 (m, 4H), 3.12-3.09 (m, 2H), 2.77-2.73 (m, 2H), 2.55-2.51 (m, 2H), 2.34-2.22 (m, 2H), 2.20-2.14 (m, 2H), 2.00-1.94 (m, 2H), 0.69 (s, 3H), 0.65 (s, 3H); HRMS (ESI +): Calcd for [M+H] + 568.26261, Found, 568.26163 (-1.0 mmu).
[0086]
[化合物3(比較例)の合成]
 比較例である化合物3(HMSiR600)を以下のスキーム3に従って合成した。
[0087]
[化8]


[0088]
 N、N、N '、N'-テトラアリルジアミノ-Si-キサントンA4を文献(T. Egawa, Y. Koide, K. Hanaoka, T. Komatsu, T. Terai, T. Nagano, Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)に従って合成した。乾燥テトラヒドロフラン10 ml中の1-ブロモ-2 - [(1,1-ジメチルエトキシ)メチル] - ベンゼン70 μl(0.360 mmol、5.0当量)をアルゴン雰囲気下で-78 ℃に冷却した。 0.35 ml(1.0 M、0.350 mmol、4.9当量)のsec-ブチルリチウムを滴下し、-78 ℃でアルゴン雰囲気下で10分間撹拌した。この溶液に、10 mlの乾燥テトラヒドロフラン中27.8 mg(72.1 μmol、1.0当量)の化合物 A4を滴下し、-78 ℃で30分間撹拌を続けた。次いで、反応混合物を室温まで温め、アルゴン雰囲気下で15時間撹拌した。 1 M 希塩酸で反応を停止させ、ジクロロメタンで希釈し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を8 mlのメタノールに溶解し、0 ℃に冷却した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(3.3 mg、86.5 μmol、1.2当量)を加え、0 ℃で10分間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、水を加え、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。得られた緑色残渣に、1,3-ジメチルバルビツール酸(135.1 mg、0.865 mmol、12.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(8.3 mg、7.21 μmol、0.1当量)および脱酸素ジクロロメタン(20 ml) アルゴン雰囲気下、室温で15時間攪拌した。次いで、反応混合物に19.5 mgのクロラニル(79.3 μmol、1.1当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物を短いカラムでのシリカクロマトグラフィーで精製してクロラニルを除去し、減圧濃縮した。残渣に2 mlのトリフルオロ酢酸を加え、室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、次いでメタノールと水の1:1混合液10 mlに溶解した。溶液を室温で17時間撹拌し、メタノールを蒸
発させ、残った溶液を濾過し、分取HPLCで精製して、4.24 mgの青色粉末(8.95 μmol、4段階で12.4 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, (CD 3) 2CO, closed form): δ 7.34 (d, 1H, J = 7.4 Hz), 7.25-7.22 (m, 1H), 7.19-7.16 (m, 1H), 6.94-6.89 (m, 5H), 6.56 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 6.54 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 5.31 (s, 2H), 0.52 (s, 3H), 0.41 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, CD 3OD + TFA): δ 152.1, 146.6, 139.0, 136.9, 131.9, 130.4, 129.3, 128.9, 128.3, 125.2, 124.3, 123.1, 93.3, 75.4, -0.1, -0.7; HRMS (ESI +) Calcd for [M] +, 359.15742, Found, 359.15690 (-0.52 mmu).
[0089]
[化合物4(比較例)の合成]
 比較例である化合物4(HMSiR620h)を以下のスキーム4に従って合成した。
[0090]
[化9]


[0091]
 N、N-ジアリル-N '、N'-ジメチルアミノ-Si-キサントン(A5)は、WO2014/106957の実施例1にしたがって合成した。脱水テトラヒドロフラン 10 ml中の1-ブロモ-2 - [(1,1-ジメチルエトキシ)メチル] -ベンゼン1000 μl(5.14 mmol、25.7当量)をアルゴン雰囲気下で-78 ℃に冷却した。 sec-ブチルリチウム 5.0 ml(0.99 M、4.95 mmol、24.8当量)を滴下し、-78 ℃でアルゴン雰囲気下で5分間攪拌した。この溶液に、10 mlの脱水テトラヒドロフラン中75.4 mg(200 μmol、1.0当量)の化合物 A5を滴下し、-78 ℃で30分間撹拌を続けた。次いで、反応混合物を室温まで温め、アルゴン雰囲気下で21時間撹拌した。 1 M 希塩酸で反応を停止させ、飽和重曹水で中和した。水層をジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を15 mlのメタノールに溶解し、0 ℃に冷却した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(52.8 mg、1.40 mmol、14.3当量)を加え、0 ℃で10分間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、水を加え、水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。得られた残渣に、1,3-ジメチルバルビツール酸(316.0 mg、2.02 mmol、20.7当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(45.4 mg、39.3 μmol、0.4当量)および脱気したジクロロメタン(10 ml)を加え、混合物をアルゴン雰囲気下、室温で41時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、飽和硫酸ナトリウム水を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。得られた残渣を10 mlのジクロロメタンに溶解し、154.7 mgのクロラニル(0.629 mmol、3.1当量)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を短いカラムでのシリカクロマトグラフィーで精製してクロラニルを除去し、減圧濃縮した。残渣に4 mlのトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、真空中で濃縮した。残りの残渣を分取HPLCで精製して、20.3 mgの青色粉末(52.4 μmol、3段階で26.2%)を得た。
1H NMR (400 MHz, (CD 3) 2CO): δ 7.36 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.24 (dt, J = 7.2, 1.2 Hz, 1H), 7.18 (dt, J = 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 6.97-6.95 (m, 2H), 6.90 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.65 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 6.57 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 5.34 (s, 2H), 2.92 (s, 6H), 0.57 (s, 3H), 0.45 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, (CD 3) 2CO): δ 149.7, 148.9, 147.3, 140.8, 140.5, 139.3, 135.0, 134.8, 129.4, 129.3, 128.0, 127.7, 124.5, 122.2, 119.1, 117.1, 116.6, 114.8, 93.4, 73.7, 40.53, 0.4, -0.3; HRMS (ESI +): Calcd for [M] + 387.18879, Found, 387.18872 (-0.1 mmu).
実施例 2
[0092]
2.化合物1~4の吸収・蛍光スペクトル測定
 実施例1で合成した化合物1~4の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをそれぞれ測定した。
[0093]
[化合物1]
 共溶媒として0.5%DMSOを含む、様々なpHの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解した化合物1(HMJSiR)の吸収・蛍光スペクトルを取得した。結果を図1に示す。図1(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図1(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
実験条件:
蛍光スペクトルの励起波長:580 nm、励起・蛍光スリット幅:2.5 nm、光電子増倍管電圧:700V
[0094]
[化合物2]
 共溶媒として0.1%DMSOを含む、様々なpHの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解した化合物2(gGlu-HMJSiR)の吸収・蛍光スペクトルを取得した。結果を図2に示す。図2(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図2(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。また、図2(d)は、化合物1の吸収スペクトルに対して規格化した化合物2の吸収スペクトルである。
実験条件:
蛍光スペクトルの励起波長:500 nm、励起・蛍光スリット幅:5.0 nm、光電子増倍管電圧:700V
[0095]
[化合物3]
 共溶媒として0.8%DMSOを含む、様々なpHの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解した化合物3(HMSiR600)の吸収・蛍光スペクトルを取得した。図3(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図3(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
実験条件:
蛍光スペクトルの励起波長:596 nm、励起・蛍光スリット幅:2.5 nm、光電子増倍管電圧:700V
[0096]
[化合物4]
 共溶媒として0.12%以下のアセトニトリルおよび0.68%DMSOを含む、様々なpHの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解した化合物4(HMSiR620h)の吸収・蛍光スペクトルを取得した。図4(a)及び(b)はそれぞれ吸収スペクトル及び蛍光スペクトルであり、図4(c)は吸光度及び蛍光強度のpH依存性を示したグラフである。
実験条件:蛍光スペクトルの励起波長:600 nm、励起・蛍光スリット幅:2.5 nm、光電子増倍管電圧:700V
[0097]
 化合物1~4について得られた吸収極大波長(λ abs)、蛍光極大波長(λ fl)、量子収率(Φ fl)、及びスピロ環化平衡定数(pK cycl)を表1に示す。なお、表中、HMSiR(650)は、以下の構造を有する化合物であり、各値はS. Uno, M. Kamiya, T. Yoshihara, K. Sugawara, K. Okabe, M. C. Tarhan, H. Fujita, T. Funatsu, Y. Okada, S. Tobita, et al., Nat. Chem. 2014, 6, 681-9に基づくものである。
[表1]


[化10]


[0098]
 この結果、リソソーム内pHに相当するpH 4.0-5.0の範囲で化合物1は100%開環体を示すため大きな吸収を持ち強蛍光性を示すが、一方、化合物3や化合物4は2つのpK cyclが近接していることから100%開環体で存在するpHが存在せず、比較的弱い蛍光しか示さないことがわかった。また、化合物2は生理的pH7.4付近では無色無蛍光の閉環構造で存在するが、それに加え最大吸収波長が大きく短波長化しているため、化合物1の最大吸収波長で励起した場合、より蛍光が抑制されることが示された。
実施例 3
[0099]
3.蛍光プローブの酵素アッセイ
 本発明の蛍光プローブである化合物2にγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を添加して蛍光強度変化を測定した。結果を図5に示す。図中の矢印はGGTの添加時間を示す。
実験条件:
 共溶媒として0.1 %のDMSOを含む2.5 mlの0.2 M リン酸ナトリウム緩衝液に化合物2(gGlu-HMJSiR)を1μMになるよう溶解し、阻害剤を加えた実験においてはさらに10μMのGGsTopを添加した。37 ℃に保った溶液をマグネチックスターラーで攪拌し、蛍光強度を測定した。ネガティブコントロール以外の実験では、測定開始から30秒後に5 mUのGGTを添加した。662 nmでの蛍光強度を合計1800秒間測定し、経過時間の関数としてプロットした。 励起波長は637 nmで、スリット幅は、励起・蛍光ともに5.0 nm、光電子増倍管電圧は700 Vであった。GGTのみを加えた実験終了後に濃塩酸を数滴加えてpHを5に調整し、蛍光強度を再度測定しpH変化による蛍光増大率を算出した。
[0100]
 その結果、化合物2はGGTの基質となり、この反応はGGTの阻害剤であるGGsTopの存在によって抑制されることが示された。pH 7.4の系中では蛍光増大率は145倍程度だったが、30分間酵素と反応させた後系のpHを5に下げたところ、蛍光はさらに5倍程度増大し、合計での蛍光増大率は700倍以上に達した。この結果は、本発明の蛍光プローブである化合物2は、近赤外領域である662nmの蛍光応答として生細胞におけるGGTの存在を検出できることを示すものである。
実施例 4
[0101]
4.生細胞イメージング
 γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性が異なる4種のがん細胞に化合物2(gGlu-HMJSiR)を適用し、生細胞イメージングを行った。具体的にはGGT活性が高いとの報告があるSHIN3 ヒト卵巣がん由来細胞、A549 ヒト肺がん由来細胞、およびGGT活性が低いとの報告があるH226 ヒト肺がん由来細胞、NMuMG正常マウス乳腺上皮細胞を用いた。結果を図6に示す。スケールバーは100 μmを表す。
[0102]
 化合物2の適用5分後に共焦点蛍光顕微鏡で観察したところ、SHIN3とA549から強い蛍光が観察され、H226とNMuMGからはかなり弱い蛍光しか観察されなかった。また、SHIN3とA549から観察された蛍光はGGT阻害剤であるGGsTopを同時に適用することで抑制されたことから、蛍光応答は、これら細胞において発現したGGTと本発明の蛍光プローブである化合物2との反応に基づくものであることが示された。
[0103]
 次に、化合物2がGGTと反応した際に、γ-グルタミル基されて生成する化合物1の細胞内局在を調べるため、LysoTracker Greenとの共染色実験を行った。結果を図7に示す。スケールバーは5 μmを表す。
実験条件:
1 μMの化合物2を適用後5分間インキュベートしたSHIN3細胞に、50 nMのLysoTracker Greenを添加し、直ちに共焦点蛍光顕微鏡により2色で蛍光画像を取得した。
[0104]
 2色イメージングの結果、緑・赤の両チャンネルにおいて観察された蛍光はよく共局在した。これは、化合物2がGGTと反応することで化合物1を生成し、化合物1は細胞内ではリソソーム内に集積することで低pH環境において、蛍光強度がさらに増大することを示している。
実施例 5
[0105]
5.卵巣がん腹膜播種モデルマウスを用いたin vivoイメージング
 化合物2を用いて、腹膜転移を有するモデルマウスの腸間膜における蛍光スペクトルイメージングを行った。
[0106]
実験条件:
 蛍光スペクトルイメージングは、SHIN3細胞を腹腔内播種したマウスモデルを用いて行った。SHIN3播種モデルマウスは、7~8週齢の雌のヌードマウスに300μlのPBS(-) 中に懸濁した2×10 6個のSHIN3細胞を腹腔内注射することによって樹立した。 腹膜播種が約1 mmの大きさに達する、注射7~10日後に実験を行った。ケタミン(2 mg/匹)およびキシラジン(0.2 mg/匹)の腹腔内注射によってマウスを麻酔し、腹部の皮膚を1 cm程度切開した。腸を切開部から引き出し、黒いゴム板に載せ腸間膜を広げた。 100 μlのPBS(-) に溶解した化合物2の溶液(100μM)を広げた腸間膜に滴下した。蛍光画像は、Maestro TM Ex In-Vivo Imaging System (CRi Inc.) を用いて、blue-filter setting (excitation, 435 to 480 nm; emission, 490 nm long-pass) と yellow-filter setting (excitation, 576 to 621 nm; emission, 635 nm long-pass)を用い、プローブ滴下前後に撮影した。660 nmの波長を切り出した。
[0107]
 結果を図8に示す。化合物2の滴下5分後には腸間膜上の微小がんが蛍光描出できており、蛍光強度は60分間上昇を続けた。投与5分後でも、腸間膜上の小さな腫瘍は、バックグラウンドから十分なコントラストを持って観察できた。なお、バックグラウンドは、主に腸内に残っていたアルファルファを含む糞便からの自己蛍光であり、ヒトへの適用においては問題とならない。
実施例 6
[0108]
6.皮下腫瘍モデルマウスを用いたを用いたin vivoイメージング
 化合物2が生体のより深部に存在する腫瘍をイメージング可能であること、またin vivoにおいて異なるGGT活性強度を区別可能であることを検証するため、皮下腫瘍のモデルマウスモデルを作成して蛍光イメージングを行った。モデルマウスにはGGT活性が強いA549細胞と、GGT活性が弱いH226細胞の二種類のがん細胞を注射し、異なるGGT活性を持つ腫瘍を一個体に作成した。
[0109]
実験条件:
皮下腫瘍モデルマウスは、7週齢の雌ヌードマウスにPBS(-)100 μl中に懸濁した5×10 6個のA549細胞および1.5×10 7個のH226細胞を皮下注射することによって作成した。A549細胞をマウスの左腹頭側に注射し、H226細胞を約1 cm尾側に離れた場所に注射した。両方の腫瘍の長辺が約5 mmに達した注射7日後に実験を行った。マウスをケタミン(2 mg /匹)およびキシラジン(0.2 mg /匹)の腹腔内注射で麻酔した。 PBS(-)で希釈した1 mM の化合物2溶液40 μlを各腫瘍に腫瘍内注射し、IVIS Lumina XR in vivo imagerを用いて、化合物2注射前、注射直後、注射後5分後から75分まで5分おき、および120分後に蛍光画像を取得した。
[0110]
  結果を図9に示す。各々の腫瘍内に化合物2を腫瘍内注射したところ、蛍光シグナルは、A549細胞由来の腫瘍においては注射直後でも既に検出可能であり、実験時間の間増加し続けた。H226細胞由来の腫瘍からの蛍光は比較的弱く、注射15分後に初めて検出が可能となった。この結果は、培養細胞イメージングにおいて検出されたGGT活性の差異とよく一致した。
[0111]
 以上の結果は、本発明の蛍光プローブによって、生体内においてもペプチダーゼを発現する微小がんを高感度かつ速やかに近赤外領域の蛍光応答として検出できること実証するものである。

請求の範囲

[請求項1]
 以下の式(I)で表される化合物又はその塩を含む、ペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ:
[化1]


〔式中、
Xは、Si(R )(R )を表し(ここで、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、又はアルキル基を表す);
Yは、C -C アルキレン基を表し、当該アルキレン基はハロゲン原子又はハロアルキルで置換されていてもよく;
は、水素原子、シアノ基、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基、アミド基、及びアジド基よりなる群から独立に選択される1~4個の同一又は異なる置換基を表し;
は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成し;
は、R と一緒になって、それらが結合する窒素原子及び炭素原子を含む5~8員のヘテロ環構造を形成し;
、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルキル基、スルホ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、又はアジド基を表し;
10は、アミノ酸由来のアシル残基を表す。〕
[請求項2]
 R とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造が6員環であり、R とR が一緒になって形成する前記ヘテロ環構造が6員環である、請求項1に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項3]
 R 及びR が、いずれもC -C アルキル基である、請求項1又は2に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項4]
 R 、R 、R 及びR が、いずれも水素原子である、請求項1~3のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項5]
 前記ペプチダーゼが、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)、又はカルパインである、請求項1~4のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項6]
 R 10が、γ-グルタミル基である、請求項1に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項7]
 R 10が、プロリン残基を含む、請求項1に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[請求項8]
 式(I)で表される化合物が以下の構造を有する、請求項1に記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブ。
[化2]


[請求項9]
 請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを含む、がん診断用組成物。
[請求項10]
 がん外科治療又はがん検査に用いる請求項9に記載のがん診断用組成物。
[請求項11]
 前記がん外科治療又はがん検査が、開創手術、鏡視下手術、又は内視鏡検査である請求項10に記載のがん診断用組成物。
[請求項12]
 請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを用いて、特定のペプチダーゼが発現している標的細胞を検出又は可視化する方法。
[請求項13]
 前記蛍光プローブと前記標的細胞とを生体外において接触させる工程;及び、前記標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと前記蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測する工程を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
 蛍光イメージング手段を用いて前記蛍光応答を観測することを含む、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
 前記標的細胞が、癌細胞である、請求項12に記載の方法。
[請求項16]
 標的細胞において特異的に発現するペプチダーゼと請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブとの反応による蛍光応答を観測するための蛍光イメージング手段を備える、装置。
[請求項17]
 前記装置が内視鏡又はin vivo蛍光イメージング装置である、請求項16に記載の装置。
[請求項18]
 請求項1~8のいずれかに記載のペプチダーゼ活性検出用蛍光プローブを含むキット。

図面

[ 図 1]   [規則26に基づく補充 11.04.2018] 

[ 図 2]   [規則26に基づく補充 11.04.2018] 

[ 図 3]   [規則26に基づく補充 11.04.2018] 

[ 図 4]   [規則26に基づく補充 11.04.2018] 

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]