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1. (WO2018043684) AQUEOUS INK COMPOSITION FOR INKJET PRINTING, AND SOLID FORMULATION
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明 細 書

発明の名称 インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

発明の効果

0022   0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071  

実施例

0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤

技術分野

[0001]
 本発明はインクジェット用水性インク組成物及び固体製剤に関し、より詳細には、医薬品や食品等の錠剤に対して、インクジェット方式で直接印刷することができ、乾燥性に優れたインクジェット用水性インク組成物及び固体製剤に関する。

背景技術

[0002]
 インクジェット方式での錠剤用印刷装置、及び薬事法等の基準に適合した水性インク組成物の登場により、これまで印刷が困難であった素錠やOD(口腔内崩壊)錠にも印刷が直接できるようになった。そのため、国内の医薬品メーカの生産現場には、インクジェット方式の錠剤用印刷装置が急速に普及した。このような状況の中、インクジェット印刷装置を保有する医薬品メーカでは、素錠やOD錠状だけでなくフィルムコート錠や糖衣錠等にも、印字画質に優れるインクジェット方式での印刷装置により印刷したいというニーズが生じている。
[0003]
 しかし、錠剤等の中でもフィルムコート錠や糖衣錠等は、水性インク組成物が浸透しにくい固体製剤である。そのため、これらの固体製剤に水性インク組成物を用いてインクジェット方式により直接印刷する場合、当該水性インク組成物を浸透させて乾燥させるのが困難なことから、水性インク組成物に含まれる水分及び湿潤剤については、これらを全て揮発させて乾燥させる必要がある。
[0004]
 しかし、これまで使用されてきたグリセリンやプロピレングリコール等の可食性多価アルコール類等の湿潤剤は、水に比べて沸点が非常に高いため揮発が十分に進まない(下記特許文献1及び特許文献2参照)。そのため、印刷画像の乾燥不良を引き起こすという課題がある。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2010-235765号公報
特許文献2 : 特開2014-159520号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、医薬品や食品等の固体製剤に対して、インクジェット方式で直接印刷することができ、乾燥性及び吐出安定性に優れたインクジェット用水性インク組成物及び固体製剤を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0007]
 本願発明者等は、前記問題点を解決すべく、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
[0008]
 即ち、本発明に係るインクジェット用水性インク組成物は、前記の課題を解決する為に、インクジェット記録に用いるインクジェット用水性インク組成物であって、水、少なくとも1種の着色剤及び固体湿潤剤を少なくとも含み、前記固体湿潤剤は、常温常圧下において単体で固体状であり、かつ、数平均分子量が10万以下の可食水溶性高分子化合物が、前記水に溶解した状態で存在するものであり、前記インクジェット用水性インク組成物中には、常温常圧下において単体で液体状である液体湿潤剤が含まれないことを特徴とする。
[0009]
 本発明のインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という場合がある。)中には、常温常圧下において単体で固体状である可食水溶性高分子化合物が、固体湿潤剤として溶解した状態で存在している。そのため、例えば、本発明の水性インク組成物を、錠剤等の固体製剤の表面にインクジェット方式により直接印刷した場合には、印刷された塗膜において、水性インク組成物中の水分のみが揮発し、可食水溶性高分子化合物は乾燥塗膜の一部となって残存する。すなわち、従来の液体湿潤剤の様に、水分と共に揮発させて乾燥させる必要がない。また、本発明の水性インク組成物は、そのような従来の液体湿潤剤を固体湿潤剤と併用もしないので、従来の水性インク組成物と比較して、印刷画像の乾燥のためのエネルギーを不要とし、乾燥時間の短縮化が図れ、乾燥性に優れた水性インク組成物を提供することができる。尚、「液体湿潤剤」とは、常温常圧下において単体で液体の形態をとり、かつ沸点が水よりも高いため、水性インク組成物のヘッド端面での蒸発を抑制する働きのある材料を意味する。
[0010]
 さらに、本発明は、可食水溶性高分子化合物として数平均分子量が10万以下のものを用いる。これにより、水性インク組成物の粘度が過度に大きくなったり、粘性がニュートニアンな状態から大きく外れるのを防止し、水性インク組成物をインクジェットノズルから安定して吐出させることができ、飛翔性の低下を抑制することができる。
[0011]
 ここで、前記可食水溶性高分子化合物における「可食」とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められている物質のみからなることを意味する。従って、本発明のインクジェット用水性インク組成物は、医薬品や食品等の錠剤等に対して直接印刷することを可能にしている。また、「水溶性」とは、常温常圧下において、水100gに対し1g以上溶解することを目安とする。
[0012]
 また、前記「インクジェット記録」とは、インクジェット用水性インク組成物を微細なインクジェットヘッドより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に定着させ、画像形成させる方式を意味し、記録媒体は紙等に限定されるものではなく、医薬品や食品等の固体製剤も含むものである。前記「常温」とは5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。前記「常圧」とは、大気の標準状態近傍における圧力(標準大気圧)のことを意味し、大気の標準状態とは、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことを意味する。また、「常圧」には、標準大気圧に対し僅かに陽圧又は陰圧の場合も含み得る。
[0013]
 前記の構成に於いては、前記可食水溶性高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩類、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
[0014]
 さらに前記構成に於いては、前記ポリエチレングリコールが一般式OHCH (CH OCH CH OH(但し、前記nは20~500の範囲の自然数である。)で表される化合物であることが好ましい。
[0015]
 また、前記構成に於いては、前記着色剤が食用合成色素、天然色素誘導体、天然系合成色素及び食用天然色素からなる群より選ばれる少なくとも1種の可食性の染料であってもよい。
[0016]
 さらに前記構成に於いては、前記可食性の染料の含有量が、前記インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.2質量%~20質量%の範囲内であることが好ましい。
[0017]
 また、前記構成に於いては、前記着色剤が顔料であり、さらに、前記顔料を分散させる顔料分散剤を任意に含んでもよい。
[0018]
 前記インクジェット用水性インク組成物は、可食性を有することが好ましい。尚、「可食性」とは、前記可食水溶性化合物における「可食」と同様の意味である。
[0019]
 本発明に係る固体製剤は、前記の課題を解決するために、インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、前記インクジェット用水性インクは、前記インクジェット用水性インク組成物を含むものであり、前記乾燥皮膜は、前記インクジェット用水性インク組成物に含まれていた着色剤と、当該インクジェット用水性インク組成物に溶解して含まれていた前記固体湿潤剤とにより少なくとも構成されていることを特徴とする。
[0020]
 インクジェット用インクは前記水性インク組成物を含むものであり、当該水性インク組成物中には、固体湿潤剤としての可食水溶性高分子化合物が溶解した状態で存在している。ここで、インクジェット方式の印刷により固体製剤の表面にインクジェット用インクが付着して塗膜が形成されると、その後、塗膜中の水分が揮発して乾燥し、着色剤を含む乾燥皮膜からなる印刷画像を形成する。一方、固体湿潤剤については、本来、常温常圧下において単体で固体状の可食水溶性高分子化合物からなるものであるため、固体湿潤剤が水分と共に揮発することはない。そのため、固体湿潤剤も、着色剤と共に、乾燥皮膜を構成する組成の一つとして残存する。
[0021]
 そして、固体湿潤剤としての可食水溶性高分子化合物を含む水性インク組成物は乾燥性に優れているため、例えば、フィルムコート錠や糖衣錠など水性インクが実質的に内部に浸透し難い固体製剤であっても、乾燥不良に起因したインク汚れの発生を低減することができる。すなわち、前記構成であると、乾燥不良に起因した印刷画像の汚れがなく、良好な印刷画像が乾燥皮膜により形成された固体製剤を提供することができる。その結果、例えば、製品情報等を固体製剤に直接表示することが可能になり、識別性を向上させ、調剤ミスや誤飲防止を図ることが可能な固体製剤を提供することができる。尚、本発明の固体製剤は、食品製剤及び医薬製剤を含む意味である。

発明の効果

[0022]
 本発明のインクジェット用水性インク組成物は、固体湿潤剤として、常温常圧下において単体で固体状の可食水溶性高分子化合物を溶解した状態で含有するものである。従って、例えば、本発明の水性インク組成物を用いて、錠剤等の固体製剤表面にインクジェット方式で直接印刷した場合には、固体湿潤剤を揮発させることなく、水分のみを揮発させるだけで、印刷画像を乾燥させることができる。これにより、本発明の水性インク組成物は、液体湿潤剤を用いた従来の水性インク組成物と比較して、印刷画像の乾燥時間を短くすることができ、乾燥性に優れたものにできる。その結果、乾燥不良によるインク汚れが印刷画像に発生するのを防止することができる。また、可食水溶性高分子化合物として、数平均分子量が10万以下のものを用いるので、水性インク組成物の粘度が過度に大きくなったり、粘性がニュートニアンな状態から大きく外れるのを防止し、飛翔性などの吐出安定性に優れたものにできる。その結果、良好な印刷画像が得られる。さらに、可食水溶性高分子化合物は薬事法等の基準に適合しているので、医薬品や食品等の固体製剤に対して直接印刷することが可能である。その結果、固体製剤本体にも直接製品情報を表示することが可能になり、識別性を向上させ、調剤ミスや誤飲防止などを図ることができる。
[0023]
 すなわち、本発明によれば、医薬品や食品等の固体製剤に対して、インクジェット方式で直接印刷することが可能であり、乾燥性及び吐出安定性に優れたインクジェット用水性インク組成物、及び当該インクジェット用水性インク組成物により印刷された固体製剤を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0024]
(インクジェット用水性インク組成物)
 本実施の形態に係るインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)について、以下に説明する。
 本実施の形態の水性インク組成物は、主溶媒としての水と、少なくとも1種の着色剤と、固体湿潤剤とを含む水性インクである。また、本実施の形態の水性インク組成物は、液体湿潤剤を含まない。本実施の形態の水性インク組成物は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した材料を用いることにより、可食性を有するものにすることができ、かつ、インクジェット記録用として好適に用いられるものである。
[0025]
 前記着色剤としては、例えば、可食性の染料が挙げられる。そのような染料としては特に限定されず、例えば、食用合成色素(合成タール色素)、天然色素誘導体、天然系合成色素、食用天然色素等が挙げられる。
[0026]
 前記食用合成色素0としては、アゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料及びインジゴイド系染料からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。さらに、前記アゾ系染料としては特に限定されず、例えば、食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色40号、食用黄色4号、食用黄色5号等が挙げられる。前記トリフェニルメタン系染料としては特に限定されず、例えば、食用青色1号、食用緑色3号等が挙げられる。前記キサンテン系染料としては特に限定されず、例えば、食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号等が挙げられる。前記インジゴイド系染料としては、食用青色2号が挙げられる。
[0027]
 前記天然色素誘導体としては特に限定されず、例えば、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
[0028]
 前記天然系合成色素としては特に限定されず、例えば、β-カロテン等が挙げられる。
[0029]
 前記食用天然色素としては特に限定されず、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、コチニール色素、銅クロロフィリンナトリウム、カカオ色素、カラメル色素等が挙げられる。
[0030]
 前記に例示した染料は、適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。また、これらの染料は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合したものである。
[0031]
 前記染料の含有量は特に限定されないが、通常は、水性インク組成物の全質量に対し、0.2質量%~20質量%の範囲内であり、好ましくは1質量%~10質量%である。染料の含有量を0.2質量%以上にすることにより、多くの染料で印刷画像の濃度の濃度が不十分となるのを防止することができる。その一方、染料の含有量を20質量%以下にすることにより、インクジェットヘッドのノズルにおいて、染料成分が析出するのを防止することができる。
[0032]
 前記固体湿潤剤は可食水溶性高分子化合物からなり、当該可食水溶性高分子化合物は、常温常圧下に於いて単独では固体状で存在するものである。また、可食水溶性高分子化合物は水溶性を示すものであり、水性インク組成物中では溶解した状態で存在する。インクジェット方式により、水性インク組成物からなる液滴を被印刷物表面に付着させて印刷した場合、当該液滴が乾燥すると、可食水溶性高分子化合物は水分と共に揮発することなく、着色剤と共に乾燥被膜を形成する。そのため、本実施の形態の水性インク組成物は乾燥性に優れたものにできる。また、可食水溶性高分子化合物は吸湿性や保水性を有し、湿潤剤として機能する。そのため、可食水溶性高分子化合物は、水性インク組成物に対し湿潤性の機能を付与ないしは向上させる。これにより、本実施の形態の水性インク組成物においては、例えば、インクジェットノズル先端において、水分が蒸発することにより乾燥して、目詰まりが発生するのを防止し、飛翔性等の吐出安定性に優れている。尚、前記「固体状」には、可食水溶性高分子化合物の存在形態が、例えば、結晶状、粉末状、粒子状等の形態で存在する場合を含む意味である。
[0033]
 また、本実施の形態の水性インク組成物中には、常温常圧下において単体では液体状である液体湿潤剤が含まれない。そのような液体湿潤剤が水性インク組成物中に含まれていると、例えば、フィルムコート錠や糖衣錠等の様に、水性インク組成物が浸透しにくい固体製剤に印刷した場合、水分と共に当該液体湿潤剤も揮発させて乾燥させることが必要になる。そのため、印刷された塗膜の乾燥時間を短縮することができず、水性インク組成物の乾燥性が低下し、これにより印刷画像にインク汚れ等が発生する場合がある。尚、液体湿潤剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。
[0034]
 前記可食水溶性高分子化合物の数平均分子量は10万以下であり、好ましくは2000~8000、より好ましくは3000~50000である。前記可食水溶性高分子化合物の数平均分子量を10万以下にすることにより、水性インク組成物の粘度が過度に増大したり、粘性がニュートニアンな状態から大きく外れ、当該水性インク組成物の液滴の飛翔性が低下するのを防止することができる。尚、可食水溶性高分子化合物の数平均分子量を2000以上にすることにより、可食水溶性高分子化合物の種類によっては、常温・常圧下において単体で液体状又はペースト状となるのを防止することができる。また、常温常圧下において単独では固体の形態をとる場合でも、印刷後の乾燥塗膜の硬さが、乾燥条件等によって不十分となるのを防止することができる。
[0035]
 尚、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。例えば、島津製作所製LC-6Aを用いた測定では、分離カラムPolymer Laboratries社製PLゲル5μmMIXEDーC:溶媒、ジメチルフォルムアミド(0.01molLiBr添加):カラム流量1.0ml/min:カラム温度50℃:サンプル濃度0.2%(W/V)の条件下で、RI検出器を用いて測定することができる。
[0036]
 前記可食水溶性高分子化合物としては薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであることが好ましく、具体的には、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩類、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの可食水溶性高分子化合物のうち、本実施の形態においては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
[0037]
 前記ポリエチレングリコールは一般式OHCH (CH OCH CH OH(前記nは自然数である。)で表され、本実施の形態において前記nは20~500の範囲内であることが好ましく、30~220の範囲内であることがより好ましく、59~84の範囲内であることが特に好ましい。また前記ポリエチレングリコールとしては市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、マクロゴール(登録商標)4000(商品名、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量約3000)等が挙げられる。
[0038]
 前記ポリビニルピロリドンはN-ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性の高分子化合物であり、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-4-ピペリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)や、これらの共重合体が挙げられる。
[0039]
 また前記ポリビニルピロリドンとしては市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、ポリビニルピロリドンK12(商品名、BASFジャパン(株)製、数平均分子量約4000)、ポリビニルピロリドンK17(商品名、BASFジャパン(株)製、数平均分子量約10000)、ポリビニルピロリドンK30(商品名、BASFジャパン(株)製、数平均分子量約40000)等が挙げられる。
[0040]
 本実施の形態の可食水溶性高分子化合物は、前記に例示した化合物を一種単独で、又は複数種を併用することができる。
[0041]
 固体湿潤剤の添加量は、使用目的等に応じて、水性インク組成物の粘度が後述の数値範囲内となる様に設定されるのが好ましい。特に、固体湿潤剤の添加量の上限値は、水性インク組成物の粘度が過度に大きくなり過ぎない様に設定するのが好ましい。一方、固体湿潤剤の添加量の下限値については、水性インク組成物の粘度が適性となる範囲内であって、インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まりを防止し、吐出性能の一層の向上が図れる様な値以上であることが好ましい。
[0042]
 また、本実施の形態の水性インク組成物には、表面張力調整剤が含有されていてもよい。当該表面張力調整剤は、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、例えば、カプリル酸デカグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリンエステル、オレイン酸ヘキサグリセリンエステル、縮合リノレン酸テトラグリセリンエステル、脂肪酸エステルヤシパーム、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリル、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
[0043]
 前記カプリル酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステル CE19D(商品名、三菱化学フーズ(株)製、HLB値15)、SYグリスターMCA750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値16)等が挙げられる。
 尚、前記HLBの値は、グリフィン法によるHLB値であり、下記式によって得られる値を意味する。
 HLB値=20×(親水基の式量の和/分子量)
HLB値は0~20の範囲内の値となり、HLB値が大きいほど親水性が強くなり、HLB値が小さいほど疎水性が強くなる。
[0044]
 前記ラウリン酸デカグリセリルとしては、HLBが15以下のものを用いることができる。HLBが15を超えるラウリン酸デカグリセリルであると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。HLBの下限は、水溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1-L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML-750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値14.8)等が挙げられる。
[0045]
 前記オレイン酸デカグリセリルとしては、HLBが13未満のものを用いることができる。HLBが13以上であると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。尚、HLBの下限は、水溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1-OV(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値12)、SYグリスターMO-7S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値12.9)等が挙げられる。
[0046]
 前記ラウリン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) HEXAGLYN 1-L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML-500(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値13.5)等が挙げられる。
[0047]
 前記オレイン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターMO-5S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値11.6)等が挙げられる。
[0048]
 前記縮合リノレン酸テトラグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターCR-310(商品名、阪本薬品工業(株)製)等が挙げられる。
[0049]
 脂肪酸エステルヤシパームとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、チラバゾールW-01(商品名、太陽化学(株)製)等が挙げられる。
[0050]
 表面張力調整剤の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し、0.5質量%~5質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%~3質量%の範囲内であることがより好ましい。表面張力調整剤の含有量が0.5質量%以上であると、インクジェット方式で印刷を行った場合に、インクジェットヘッドにおけるノズルでのメニスカス面形成不良等による吐出不良を防止し、当該ノズルの目詰まりや印刷画像にかすれが発生するのを防止することができる。その結果、吐出安定性の向上が図れる。その一方、表面張力調整剤の含有量が5質量%以下であると、表面張力調整剤の不溶分や乳化不良による吐出への悪影響を防止することができる。
[0051]
 また、本実施の形態の水性インク組成物においては、その他の添加剤が配合されていてもよい。但し、医薬品等の固体製剤に対するインクジェット用インクとして用いる場合には、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであることが好ましい。前記添加剤としては、水溶性樹脂、有機アミン、界面活性剤、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
[0052]
 本実施の形態の水性インク組成物に於いては、水(主溶媒としての水)を含有する。前記水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
[0053]
 水性インク組成物の粘度は、インクジェットノズルからの吐出安定性を考慮すると、インクジェットノズル吐出時において、2mPa・s~6mPa・sが好ましく、3mPa・s~5mPa・sがより好ましい。水性インク組成物の粘度を前記数値範囲内にすることにより、インクジェットノズルでの目詰まりの発生を抑制して良好な吐出安定性の維持が図れ、飛翔性の低下を抑制することができる。尚、水性インク組成物の粘度は、例えば、粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM-10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で測定することにより得られる。
[0054]
 本実施の形態の水性インク組成物は、前述の各成分を適宜な方法で混合することよって製造することができる。混合方法及び添加順序は特に限定されない。混合後は、十分に撹拌し、必要に応じて目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するための濾過を行う。これにより、本実施の形態に係る水性インク組成物を得ることができる。
[0055]
 各材料の混合方法としては特に限定されず、例えば、ディスパー、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合を行うことができる。また、濾過方法としては特に限定されず、例えば、遠心濾過、フィルター濾過等を採用することができる。
[0056]
 本実施の形態の水性インク組成物は、インク及び塗料に適用することができる。また、本実施の形態の水性インク組成物は、インクジェット方式での印刷に用いた場合には、吐出安定性に優れているので、インクジェット用インクに好適に使用することができる。特に、本実施の形態の水性インク組成物は、薬事法等で定められている医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した着色剤及び固体湿潤剤等を用いているので、可食性を有しており、医薬品又はサプリメント等の錠剤やカプセル剤からなる固体性剤の表面に直接印刷することが可能である。また、素錠及びOD錠など表面の平滑性が悪い錠剤に対しても、インクジェット方式による非接触印刷を可能にする。
[0057]
 (固体製剤)
 本実施の形態の固体製剤は、例えば錠剤又はカプセル剤からなり、また当該固体性剤の表面には、前記水性インク組成物からなるインクジェット用水性インクを用いて、インクジェット記録方法により直接印刷された乾燥皮膜からなる印刷画像が形成されている。
[0058]
 乾燥皮膜は、水性インク組成物中に含まれていた着色剤と、当該水性インク組成物中に溶解して含まれていた固体湿潤剤とにより少なくとも構成されている。固体湿潤剤は、前述の通り、常温常圧下において単独では固体状のものである。そのため、インクジェット記録方法により固体製剤表面に印刷されたインクジェット用水性インクが、当該固体製剤表面で乾燥した後においては、固体湿潤剤がインクジェット用水性インク中に含まれていた水分と共に揮発することがない。そのため、固体湿潤剤は、着色剤と共に固化し、固体成分として乾燥皮膜の一部を構成している。
[0059]
 また、固体製剤表面に印刷されたインクジェット用水性インクの乾燥は、水分のみを揮発することで足りるので、乾燥時間を短くすることができ、乾燥性に優れている。その結果、本実施の形態においては、従来のインクジェット用水性インクで印刷した固体製剤と比較して、乾燥不良に起因するインク汚れを低減した固体製剤を提供することができる。これにより、本実施の形態の固体製剤は、製品情報など使用者に対し識別性を向上させるための各種情報を印刷することが可能であり、調剤ミスや誤飲の防止が可能になる。
[0060]
 前記錠剤は常温下において固体状であり、例えば、有効成分を含む錠剤材料を一定の形状に圧縮及び/又は成形により製造されたものが好ましい。また、カプセル剤は、粉末状、顆粒状、液状等の医薬品等を、ゼラチンやセルロース誘導体等からなるカプセルに充填され、又はカプセル基剤で被包成形して製造されたものが好ましい。錠剤及びカプセル剤の形状は特に限定されず、任意の形状を採用することができる。本実施の形態の水性インク組成物は、従来のものと比較して乾燥性に優れているので、特に、フィルムコート錠や糖衣錠など、水性インク組成物が浸透し難い錠剤やカプセル剤にも好適に適用可能である。尚、錠剤は、医薬品用途の錠剤であってもよく、食品用途の錠剤であってもよい。食品用途の錠剤の例としては、錠菓やサプリメント等の健康食品が挙げられる。
[0061]
 固体製剤の表面にインクジェット用水性インクの乾燥皮膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、インクジェット記録方法により形成可能である。具体的には、例えば、微細なノズルより、水性インク組成物を含むインクジェット用水性インクを液滴として吐出し、その液滴を固体製剤表面に付着させることにより行うことができる。水性インク組成物中には可食水溶性高分子化合物が固体湿潤剤として含まれているので、インクジェットノズルでの目詰まりの発生は抑制される。吐出方法として特に限定されず、例えば、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方法を採用することができる。
[0062]
 その後、固体製剤表面に付着した液滴を乾燥させる。本実施の形態のインクジェット用水性インクは、常温常圧下において単独では固体状の可食水溶性高分子化合物を固体湿潤剤として含有するものであるので、液滴の乾燥はインクジェット用水性インク中に含まれる水分のみを揮発させることで足りる。そのため、液滴の乾燥は、従来の液体湿潤剤を用いたインクジェット用水性インクと比較して短時間で終了する。これにより、固体製剤表面には、着色剤と固体湿潤剤により少なくとも構成された乾燥皮膜からなる印刷画像が形成される。
[0063]
 (その他の事項)
 本実施の形態に於いては、着色剤として染料を用いる場合を例にして説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、顔料を用いることも可能である。この場合、必要に応じて、顔料分散剤等の他の公知の添加剤を添加してもよい。
[0064]
 前記顔料としては、例えば、カーボンブラックなど、インクジェット用水性インク組成物に通常用いられているものを使用することができる。前記カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。また、本実施の形態のカーボンブラックとしては市販品を用いることも可能であり、そのような市販品としては、例えば、#900、#970、#100、#2200、#2300、#2350、#2600、MA-7、MA-8、MA-100、MA-11、MCF88、#45L、#50、#10、#33、#40、#4000、#52、CF9等(商品名、いずれも三菱化学株式会社製)、ニテロン、HTC(商品名、いずれも新日鉄住金化学社製)、旭#55、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル(商品名、いずれも旭カーボン社製)、Raven700、5750、5250、5000、3500、1255(商品名、いずれもコロンビア社製)、REGAL400R、330R、660R、MogulL、Monarch700、800、880、900、1000、1100、1300、Monarch1400(商品名、いずれもキャボット社製)、Color Black FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170(商品名、いずれもデグッサ社製)、PRINTEX35、U、V、140U、140V(商品名、いずれもデグッサ社製)、Special Black6、5、4A、4(商品名、いずれもデグッサ社製)、TOKABLACK #8500、#8300、#7550、#7400、#7350、#7240、#7100、#7050、#5500、#4500、#4400、#4300(商品名、いずれも東海カーボン社製)等を例示できる。これらの顔料は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。但し、本実施の形態の顔料組成物を医薬品やサプリメント等の固体製剤表面への印刷用として用いる場合、カーボンブラックは、薬事法で定める医薬添加物又は食品衛生法で定める食品添加物であることが好ましい。
[0065]
 また、前記顔料としては、例えば、酸化鉄を用いることもできる。前記酸化鉄としては、例えば、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、ベンガラ、黒色酸化鉄等が挙げられる。さらに、前記顔料としては自己分散型顔料を用いてもよい。これらの顔料は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。但し、本実施の形態の顔料組成物を医薬品やサプリメント等の錠剤表面への印刷用として用いる場合、酸化鉄は、薬事法で定める医薬添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであることが好ましい。
[0066]
 前記顔料の含有量は画像濃度に直接影響するものであり、水性インク組成物の保存性や粘度、pH、錠剤等に印刷する場合はその印刷濃度等に影響を及ぼすものであることから、これらの点を考慮して適宜設定すればよい。通常は、顔料組成物の全質量に対し0.5質量%~40質量%の範囲が好ましく、1質量%~25質量%の範囲内がより好ましい。顔料の含有量を0.5質量%以上にすることにより、画像濃度の低下を抑制することができる。その一方、顔料の含有量を40質量%以下にすることにより、光沢性の低下やノズルの目詰まり、吐出安定性の低下を防止することができる。
[0067]
 前記顔料分散剤としては、インクジェット用水性インク組成物に通常用いられるものを使用することができる。具体的には、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート、オレイン酸デカグリセリル等が挙げられる。前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。また、顔料として自己分散型顔料を用いる場合には、顔料分散剤の添加を省略してもよい。但し、本実施の形態の顔料組成物を医薬品や食品等の錠剤表面への印刷用として用いる場合、薬事法で定める医薬添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものを用いるのが好ましい。
[0068]
 顔料と顔料分散剤との含有比は、質量基準で1:0.2~1:4であることが好ましく、1:0.5~1:1であることがより好ましい。前記含有比が1:0.2以上であると、顔料の分散性の低下を防止することができる。その一方、前記含有比が1:4以下であると、例えば、インクジェット用水性インク組成物に用いた場合に、ノズルプレートの付着に起因する吐出安定性の低下を防止することができる。
[0069]
 前記顔料組成物に於いては、顔料を分散させるための分散媒が含まれる。分散媒としては水が挙げられ、より詳細には、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものが挙げられる。分散媒の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
[0070]
 また、前記分散媒としては、前記水と水溶性有機溶剤の混合溶液を用いてもよい。前記水溶性有機溶剤としては特に限定されず、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフランなどのエーテル類等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、これらの水溶性有機溶剤のうち、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に該当するものとして、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトンが好ましい。さらに、分散媒に水溶性有機溶剤を用いる場合の配合量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
[0071]
 前記顔料組成物の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し顔料分換算で0.5質量%~20質量%の範囲が好ましく、1質量%~15質量%の範囲がより好ましい。顔料組成物の含有量を0.5質量%以上にすることにより、着色力を向上させることができる。その一方、顔料組成物の含有量を20質量%以下にすることにより、分散性を向上させることができる。
実施例
[0072]
 以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
[0073]
(実施例1)
 本実施例の水性インク組成物においては、染料として食用赤色102号、食用黄色5号及び食用緑色3号、固体湿潤剤である可食水溶性高分子化合物としてポリエチレングリコール(マクロゴール(登録商標)4000、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量約3000)、並びに表面張力調整剤としてカプリル酸デカグリセリルを用いた。水性インク組成物の調製については、下記表1に示す配合組成となる様に容器中に入れ、ディスパーにて撹拌することにより行った。
[0074]
 尚、下記表1中の数値は、特に記載がない限り全て質量%で表したものである。このことは、後述するその他の表中の数値についても同様である。また、各材料は何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
[0075]
(比較例1~3)
 比較例1~3においては、湿潤剤として、下記表1に示すものに変更した。また、各組成の配合量についても、それぞれ下記表1に示す値に変更した。それ以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1~3の水性インク組成物をそれぞれ作製した。
[0076]
 作製後の水性インク組成物についてそれぞれ確認したところ、比較例1及び2の水性インク組成物については、各染料が当該水性インク組成物中に完全に溶解していたが、比較例3の水性インク組成物については全ての染料を溶解させることはできず、不溶分が発生した。そのため、比較例3の水性インク組成物については、後述の飛翔性の評価は行わなかった。
[0077]
[表1]


[0078]
(実施例2)
 実施例2の水性インク組成物においては、染料として食用赤色102号、食用黄色4号及び食用緑色3号、固体湿潤剤である可食水溶性高分子化合物としてポリビニルピロリドンK12(BASFジャパン(株)製、数平均分子量約4000)、並びに表面張力調整剤としてカプリル酸デカグリセリルを用いた。水性インク組成物の調製については、下記表2に示す配合組成となる様に容器中に入れ、ディスパーにて撹拌することにより行った。尚、本実施例で用いた各材料は、何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
[0079]
(実施例3、4)
 実施例3及び4においては、固体湿潤剤としてそれぞれポリビニルピロリドンK17(BASFジャパン(株)製、数平均分子量約1万)と、ポリビニルピロリドンK30(BASFジャパン(株)製、数平均分子量約4万)を用いた(下記表2参照)。また、各組成の配合量についても、インクジェット用の水性インク組成物として粘度をある程度適正化するために、それぞれ下記表2に示す値に変更した。それ以外は、前記実施例2と同様にして、実施例3及び4の水性インク組成物をそれぞれ作製した。
[0080]
(比較例4、5)
 比較例4及び5においては、固体湿潤剤としてそれぞれポリビニルピロリドンK80(東京化成工業(株)製、数平均分子量約16万)と、ポリビニルピロリドンK90(BASFジャパン(株)製、数平均分子量約36万)を用いた(下記表2参照)。また、各組成の配合量についても、それぞれ下記表2に示す値に変更した。それ以外は、前記実施例2と同様にして、比較例4及び5の水性インク組成物をそれぞれ作製した。
[0081]
[表2]


[0082]
(実施例5)
 実施例5の水性インク組成物においては、着色剤としてカーボンブラックからなる顔料、顔料分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、固体湿潤剤である可食水溶性高分子化合物としてポリエチレングリコール(マクロゴール(登録商標)4000、三洋化成工業株式会社製、数平均分子量約3000)、及び表面張力調整剤としてカプリル酸デカグリセリルを用いた。水性インク組成物の作製にあたっては、先ず顔料組成物を作製した。顔料組成物の作製は、カーボンブラック、顔料分散剤及びイオン交換水を容器に混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温で16時間分散させることにより行った。続いて、下記表3に示す配合組成となる様に、顔料組成物に、表面張力調整剤、湿潤剤及びイオン交換水を添加した。これにより、実施例5の水性インク組成物を作製した。尚、本実施例で用いた各材料は、何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
[0083]
(比較例6)
 比較例6においては、湿潤剤として、下記表3に示すものに変更した。また、各組成の配合量についても、それぞれ下記表3に示す値に変更した。それ以外は、前記実施例5と同様にして、比較例6の水性インク組成物を作製した。
[0084]
[表3]


[0085]
(数平均分子量の測定)
 ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンの数平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記の条件で求めた値である。
 測定装置:LC-6A(株式会社島津製作所製)
 分離カラム:PLゲル5μmMIXEDーC(Polymer Laboratries社製)
 溶離液:ジメチルフォルムアミド(0.01molLiBr添加)
 カラム流量:1.0ml/min
 検出器:RI検出器
 カラム温度:50℃
 サンプル濃度:0.2%(W/V)
 分子量標準:標準ポリスチレン
[0086]
(粘度の測定)
 実施例1~5、及び比較例1~6の水性インク組成物について、それぞれ粘度を測定した。粘度の測定には、粘度計(VISCOMATE MODEL VM-10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で行った。結果を前記表1~表3に示す。
[0087]
(吐出安定性(飛翔性))
 記録媒体としてマット紙(商品名:スーパーファイン紙、エプソン(株)製)を用意し、実施例1~4、比較例1、2、4、5の水性インク組成物をそれぞれ用いて印刷を行った。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いて、シングルパス(ワンパス)方式にて行った。
[0088]
 水性インク組成物の飛翔性の評価は、ヘッドから水性インク組成物を吐出させた後、インクジェットプリンタを停止させ、その後、再度印刷したときの印刷画像にノズル欠けがどれくらい増加したか、及び寝ぼけが観察されたか否かにより行った。尚、ノズル欠けとは目詰まりが発生したノズルから水性インク組成物からなるインク滴が吐出されないことを意味する。寝ぼけとは、印刷の初期において、インクの不吐出が起こり、印刷画像の書き出し部分が掠れて不鮮明となることを意味する。
[0089]
 飛翔性の評価は、下記の基準を用いて行った。結果を前記表1及び表2に示す。
 ○:寝ぼけ量が1cm未満かつノズル詰まり増加数が0本
 ×:寝ぼけ量が2cm以上、又はノズル詰まり増加数が10本以上
 △:飛翔性の評価が前記○及び×の何れにも該当しない場合
 尚、飛翔性の評価は、15分のオープンタイム(最初にヘッドから水性インク組成物を吐出させた後に停止し、その後、再度印刷させるまでの時間間隔)後の印字について行った。また、寝ぼけ量とは、シングルパス印刷画像においてインク不吐出による書き出しの掠れが解消されるまでの長さ(cm)を意味する。ノズル詰まり増加数とは、インクジェットプリンタ停止中に、ヘッド端面でのインクの乾燥固着などにより、インク吐出が不可能になったノズルの本数のことを意味する。
[0090]
(乾燥性の評価)
 実施例1、5、及び比較例1、2、6の水性インク組成物を用いて、インクジェット記録方法により、フィルムコート錠への印刷を行った。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いて、シングルパス(ワンパス)方式にて行った。
[0091]
 また、乾燥性(乾燥速度)の評価は、フィルムコート錠の印刷面への綿布での擦過試験を行うことにより行った。より具体的には、フィルムコート錠の表面に、インクジェットヘッドから水性インク組成物を吐出し、5秒、10秒、20秒、30秒、60秒、90秒及び120秒間自然乾燥を行った。その後、それぞれの印刷面を綿布で擦り、未乾燥インクによる印字の掠れの有無を確認した。印字の掠れの確認は、電子ルーペを用いて擦過面を写真撮影し、その写真を観察することにより行った。
[0092]
 乾燥性の評価は、下記の基準を用いて行った。結果を下記表4に示す。
 ○:印字に掠れが無い
 ×:印字に掠れが有り
[0093]
[表4]


[0094]
(結果)
 表1及び表2に示す通り、実施例1~4の水性インク組成物は何れも飛翔性が良好であり、吐出性能に優れていることが確認された。その一方、比較例3の水性インク組成物においては、全ての染料を溶解させることができなかった。また、比較例4及び5の水性インク組成物においては、固体湿潤剤を用いたものの、数平均分子量が10万を超えるものであったため、飛翔性に劣ることが確認された。
[0095]
 また、表4に示す通り、固体湿潤剤を用いた実施例1及び5においては、水性インク組成物が浸透しにくいフィルムコート錠に対し印刷したにも関わらず、印刷してから10秒経過後には、印字面の擦れがなくなり、当該水性インク組成物が乾燥していることが確認された。これにより、実施例1及び5の水性インク組成物の乾燥性が優れていることが確認された。その一方、液体湿潤剤を用いた比較例1、2及び6においては、印刷してから30秒ないしは60秒経過しても、印字面に擦れが観察された。特に、比較例1については、固体湿潤剤と液体湿潤剤を併用したものであったが、乾燥性の大幅な改善は確認できなかった。

請求の範囲

[請求項1]
 インクジェット記録に用いるインクジェット用水性インク組成物であって、
 水、少なくとも1種の着色剤及び固体湿潤剤を少なくとも含み、
 前記固体湿潤剤は、常温常圧下において単体で固体状であり、かつ、数平均分子量が10万以下の可食水溶性高分子化合物が、前記水に溶解した状態で存在するものであり、
 前記インクジェット用水性インク組成物中には、常温常圧下において単体で液体状である液体湿潤剤が含まれないインクジェット用水性インク組成物。
[請求項2]
 前記可食水溶性高分子化合物が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩類、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項3]
 前記ポリエチレングリコールが一般式OHCH (CH OCH CH OH(但し、前記nは20~500の範囲の自然数である。)で表される化合物である請求項2に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項4]
 前記着色剤が食用合成色素、天然色素誘導体、天然系合成色素及び食用天然色素からなる群より選ばれる少なくとも1種の可食性の染料である請求項1~3の何れか1項に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項5]
 前記可食性の染料の含有量が、前記インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.2質量%~20質量%の範囲内である請求項4に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項6]
 前記着色剤が顔料であり、
 さらに、前記顔料を分散させる顔料分散剤を任意に含む請求項1~3の何れか1項に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項7]
 前記インクジェット用水性インク組成物の粘度が2mPa・s~6mPa・sの範囲内である請求項1~6に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項8]
 可食性を有する請求項1又は2に記載のインクジェット用水性インク組成物。
[請求項9]
 インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、
 前記インクジェット用水性インクは、請求項1~8の何れか1項に記載のインクジェット用水性インク組成物を含むものであり、
 前記乾燥皮膜は、前記インクジェット用水性インク組成物に含まれていた着色剤と、当該インクジェット用水性インク組成物に溶解して含まれていた前記固体湿潤剤とにより少なくとも構成されている固体製剤。