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1. (WO2018003636) BINDER COMPOSITION FOR NON-AQUEOUS SECONDARY CELL ELECTRODE, SLURRY COMPOSITION FOR NON-AQUEOUS SECONDARY CELL ELECTRODE, ELECTRODE FOR NON-AQUEOUS SECONDARY CELL, AND NON-AQUEOUS SECONDARY CELL
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明 細 書

発明の名称 非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池電極用スラリー組成物、非水系二次電池用電極および非水系二次電池

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

発明の効果

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082  

実施例

0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100  

産業上の利用可能性

0101  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池電極用スラリー組成物、非水系二次電池用電極および非水系二次電池

技術分野

[0001]
 本発明は、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池電極用スラリー組成物、非水系二次電池用電極および非水系二次電池に関するものである。

背景技術

[0002]
 リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、非水系二次電池の更なる高性能化を目的として、電極などの電池部材の改良が検討されている。
[0003]
 ここで、リチウムイオン二次電池などの二次電池用の電極は、通常、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを備えている。そして、電極合材層は、例えば、電極活物質と、結着材を含むバインダー組成物などとを分散媒に分散させてなるスラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成される。
[0004]
 そこで、近年では、二次電池の更なる性能向上を達成すべく、電極合材層の形成に用いられるバインダー組成物の改良が試みられている。具体的には、例えば特許文献1では、ブタジエン結合含量が40~98質量%、かつトルエンを用いて測定されるゲル含量が20~74重量%であるスチレンブタジエン共重合体ラテックスを主成分とする電池電極形成用水系バインダーが提案されている。そして特許文献1によれば、この電池電極形成用水系バインダーは、充放電回数が大きく、長期の使用と保存に耐える二次電池を得るために好適に用いることができる。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開平8-250123号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 ここで、二次電池の電極には、例えば二次電池製造時の捲き回しや、繰り返し充放電時の電極活物質の膨張・収縮に起因するクラック防止のため、耐屈曲性が求められる。それと共に、二次電池の電極には、二次電池作製時、例えば電極などの電池部材をその内部に包含する外装中に電解液を注入した際、電解液が当該電極に良好に浸透すること(即ち、良好な電解液注液性)が求められる。
 しかしながら、上記従来のバインダー組成物では、電極の優れた耐屈曲性と、二次電池作製時における良好な電解液注液性との双方を並立させることは困難であった。そのため、当該バインダー組成物を用いて製造される電極を備える二次電池に、十分に優れた電池特性を発揮させることができない場合があった。
[0007]
 そこで、本発明は、耐屈曲性に優れる電極を形成できると共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することも可能な非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
 また、本発明は、耐屈曲性に優れ、且つ二次電池作製時の電解液注入性を良好に確保しうる非水系二次電池用電極、および当該非水系二次電池用電極を備える非水系二次電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、脂肪族共役ジエン単量体単位を所定の割合で含む重合体を結着材として用いることにより、電極に優れた耐屈曲性を付与しうると共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することも可能な非水系二次電池電極用バインダー組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
[0009]
 即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、重合体Aを含有する非水系二次電池電極用バインダー組成物であって、前記重合体Aが、脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%以上95質量%以下の割合で含むことを特徴とする。このように、脂肪族共役ジエン単量体単位を上述の割合で含む重合体Aを含有するバインダー組成物を用いれば、耐屈曲性に優れる電極を形成可能である共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することもできる。
 なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
[0010]
 ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、前記重合体Aが、更にニトリル基含有単量体単位を1質量%以上14質量%以下の割合で含むことが好ましい。重合体Aがニトリル基含有単量体単位を上述の割合で含めば、電極作製の際、プレス処理を行い厚みが低減された電極が、プレス処理後にその厚みを復元してしまうこと(即ち、電極のスプリングバック)を抑制すると共に、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。
[0011]
 そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、前記重合体Aの体積平均粒子径が0.01μm以上0.15μm以下であることが好ましい。重合体Aの体積平均粒子径が上述の範囲内であれば、電極のスプリングバックを抑制すると共に、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。
 なお、本発明において、「体積平均粒子径」とは、レーザー回折法にて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を指す。
[0012]
 また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、更に重合体Bを含有し、前記重合体Bが、脂肪族共役ジエン単量体単位を20質量%以上80質量%以下の割合で含むことが好ましい。バインダー組成物が、重合体Aに加え、脂肪族共役ジエン単量体単位を上述の割合で含む重合体Bを含有すれば、電極合材層と集電体の密着強度(即ち、電極のピール強度)を高めると共に、電極の耐屈曲性および二次電池作製時の電解液注液性を更に向上させることができる。
[0013]
 ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、前記重合体Bの体積平均粒子径が0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。重合体Bの体積平均粒子径が上述の範囲内であれば、電極のピール強度を更に高めると共に、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。
[0014]
 そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、重合体BのTHF不溶解分量が80質量%以上96%質量以下であることが好ましい。重合体BのTHF(テトラヒドロフラン)に対する不溶解分量が上述の範囲内であれば、電極のピール強度を高めると共に、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。
 なお、本発明において、重合体の「THF不溶解分量」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
[0015]
 また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、前記重合体Bの含有量が、前記重合体Aと前記重合体Bとの合計含有量の20質量%以上80質量%以下であることが好ましい。重合体Aと重合体Bの合計中に占める重合体Bの割合が上述の範囲内であれば、電極の耐屈曲性および二次電池作製時の電解液注液性を更に向上させることができる。
[0016]
 また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、電極活物質と、上述した非水系二次電池電極用バインダー組成物の何れかとを含むことを特徴とする。このように、電極活物質と、上述した何れかのバインダー組成物とを含むスラリー組成物を用いれば、耐屈曲性に優れる電極を形成可能である共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することもできる。
[0017]
 また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用電極は、上述した非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した電極合材層を備えることを特徴とする。このように、上述した非水系二次電池電極用スラリー組成物を使用して電極合材層を形成すれば、耐屈曲性に優れ、且つ二次電池作製時の電解液注入性を良好に確保しうる非水系二次電池用電極が得られる。
[0018]
 そして、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、電解液およびセパレータを備え、前記正極および負極の少なくとも一方が上述した非水系二次電池用電極であることを特徴とする。このように、上述した非水系二次電池用電極を使用すれば、電池特性に優れる非水系二次電池が得られる。

発明の効果

[0019]
 本発明によれば、耐屈曲性に優れる電極を形成できると共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することも可能な非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物を提供することができる。
 また、本発明によれば、耐屈曲性に優れ、且つ二次電池作製時の電解液注入性を良好に確保しうる非水系二次電池用電極、および当該非水系二次電池用電極を備える非水系二次電池を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
 ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、非水系二次電池電極用スラリー組成物を調製する際に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池電極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の電極を形成する際に用いることができる。更に、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した非水系二次電池用電極を用いたことを特徴とする。
 なお、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物は、非水系二次電池の負極を形成する際に特に好適に用いることができる。
[0021]
(非水系二次電池電極用バインダー組成物)
 本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、重合体Aを含有し、任意に、重合体Bおよび二次電池の電極に配合され得るその他の成分を更に含有する。また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、通常、水などの分散媒を更に含有する。そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、重合体Aが、脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%以上95質量%以下の割合で含む。
[0022]
 本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、脂肪族共役ジエン単量体単位を所定の割合で含む重合体Aを含有しているので、電極の電極合材層の形成に用いた際に(即ち、電極合材層用として用いた際に)、電極に優れた耐屈曲性を付与することができると共に、二次電池作製時の電解液注液性を高めることもできる。
 ここで、上述した割合で脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体Aを結着材として用いることで、電極の耐屈曲性および二次電池作製時の電解液注液性を高めることができる理由は、以下の通りであると推察される。まず、脂肪族共役ジエン単量体単位は、柔軟性に優れる繰り返し単位である。そのため、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が86質量%以上であれば、重合体A自体の柔軟性が十分に高まり、電極に優れた耐屈曲性を付与することができる。一方、脂肪族共役ジエン単量体単位は、電解液に良好になじむとはいえず、そのため、例えば脂肪族共役ジエン単量体単位のみからなる重合体は電解液との親和性が確保されにくい。しかしながら、重合体Aは、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が95質量%以下であり、必然的に脂肪族共役ジエン単量体単位以外の繰り返し単位を含む。よって、脂肪族共役ジエン単量体単位により重合体Aの電解液との親和性が過度に損なわれることもなく、重合体Aを含む電極合材層には、電解液が良好に浸透することができる。
[0023]
<重合体A>
 重合体Aは、バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池電極用スラリー組成物を使用して集電体上に電極合材層を形成することにより製造した電極において、電極合材層に含まれる成分が電極合材層から脱離しないように保持する(即ち、結着材として機能する)。
[0024]
<<重合体Aの組成>>
 重合体Aは、繰り返し単位として脂肪族共役ジエン単量体単位を含み、そして、脂肪族共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含む。脂肪族共役ジエン単量体単位以外の単量体単位としては、ニトリル基含有単量体単位が好適に挙げられるが、重合体Aは、脂肪族共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体以外の単量体単位(その他の単量体単位)を更に含むことができる。
[0025]
[脂肪族共役ジエン単量体単位]
 脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、特に限定されることなく、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。中でも、脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。なお、脂肪族共役ジエン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0026]
 そして、重合体A中の脂肪族共役ジエン単量体単位の割合は、重合体Aの全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、86質量%以上95質量%以下であることが必要であり、88質量%以上であることが好ましく、89質量%以上であることがより好ましく、91質量%以上であることが更に好ましく、93質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましい。脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が86質量%未満であると、電極の耐屈曲性が低下する。一方、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が95質量%超であると、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することができない。
[0027]
[ニトリル基含有単量体単位]
 ニトリル基含有単量体単位を形成し得るニトリル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。具体的には、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。中でも、ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。なお、ニトリル基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0028]
 そして、重合体A中のニトリル基含有単量体単位の割合は、重合体Aの全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが特に好ましく、8質量以上であることが最も好ましい。14質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。ニトリル基含有単量体単位の含有割合が1質量%以上であれば、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。なお、重合体A中のニトリル基含有単量体単位の含有割合を1質量%以上とすることにより、電極表面での金属析出が抑制される理由は以下の通りであると推察される。即ち、ニトリル基含有単量体単位の含有割合を1質量%以上とすることにより、重合体Aの電解液との親和性が確保される。そのため電極合材層中でリチウムイオンの拡散が妨げられず、リチウム等の金属が電極表面(電極合材層表面)に析出するのを抑制することができる。一方、ニトリル基含有単量体単位の含有割合が14質量%以下であれば、重合体Aが過度な弾性を有することもなく、電極のスプリングバックを抑制することができる。
[0029]
[その他の単量体単位]
 重合体Aが含み得る、上述した脂肪族共役ジエン単量体単位およびニトリル基含有単量体単位以外のその他の単量体単位としては、特に限定されることなく、上述した脂肪族共役ジエン単量体およびニトリル基含有単量体単位と共重合可能な既知の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。具体的には、その他の単量体単位としては、特に限定されることなく、例えば、芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、親水性基含有単量体単位などが挙げられる。
 なお、これらの単量体は一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
[0030]
 芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、スチレン、スチレンスルホン酸およびその塩、α-メチルスチレン、ブトキシスチレン、並びに、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
[0031]
 また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。
[0032]
 更に、親水性基含有単量体単位を形成し得る親水性基含有単量体としては、親水性基を有する重合可能な単量体が挙げられる。具体的には、親水性基含有単量体としては、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体が挙げられる。
[0033]
 そして、カルボン酸基を有する単量体としては、モノカルボン酸およびその誘導体や、ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
 モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
 モノカルボン酸誘導体としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸、β-ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
 ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
 ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステルが挙げられる。
 ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
 また、カルボン酸基を有する単量体としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
 その他、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどのα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸のモノエステルおよびジエステルも挙げられる。
[0034]
 スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
 なお、本発明において「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
[0035]
 リン酸基を有する単量体としては、リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
 なお、本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
[0036]
 水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ-2-ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ-4-ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式:CH 2=CR 1-COO-(C q2qO) p-H(式中、pは2~9の整数、qは2~4の整数、R 1は水素またはメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2-ヒドロキシエチル-2’-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2-ヒドロキシエチル-2’-(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル-2-ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-3-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-3-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-4-ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル-6-ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル-2-クロロ-3-ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシ-3-クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲンおよびヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテルおよびそのハロゲン置換体;(メタ)アリル-2-ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル-2-ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
[0037]
 そして、重合体Aのその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは0質量%以上10質量%未満、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
[0038]
<<重合体Aの調製>>
 重合体Aは、例えば上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより製造することができる。単量体組成物中の各単量体の含有割合は、通常、所望の重合体における各単量体単位の割合と同様とする。
 水系溶媒は、重合体Aが分散可能なものであれば格別限定されず、水を単独で使用してもよいし、水と他の溶媒の混合溶媒を使用してもよい。
 重合様式は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの様式も用いることができる。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いることができる。
 そして、重合に使用される分子量調整剤、乳化剤、重合開始剤などは、特に限定されないが、例えば、特許第5861698号公報に記載されたものを使用することができる。
[0039]
 特に、重合体Aの調製に用いる分子量調整剤としては、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマーが好ましく、t-ドデシルメルカプタンがより好ましい。そして、分子量調整剤の使用量は、重合体Aの調製に使用する単量体組成物中の全単量体を100質量部とした場合、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることが更に好ましく、1.2質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが更に好ましい。ここで、重合体Aは脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%以上95質量%以下の高い割合で含むハイジエン重合体である。このようなハイジエン重合体は、一般に、重合反応の際、脂肪族共役ジエン単量体の存在により架橋構造が形成されやすく、また分子量が高くなり易い傾向があるため、後述するTHF不溶解分量が上昇し易い。しかしながら、分子量調整剤を上述の範囲内の量で使用すれば、重合体Aの高分子量化や脂肪族共役ジエン単量体単位による高架橋化を抑制することが可能となり、重合体AのTHF不溶解分量の過度な上昇を防ぐことができる。
[0040]
 また、重合体Aの調製条件は、特に限定されないが、比較的低温下において長時間重合反応を行うことが好ましい。具体的には、反応温度は、0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、15℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、8時間以上であることが好ましく、12時間以上であることがより好ましく、24時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましい。上述のような反応温度および反応時間を採用すれば、反応効率を確保すると共に、重合体Aの高分子量化や脂肪族共役ジエン単量体単位による高架橋化を抑制して、重合体AのTHF不溶解分量の過度な上昇を防ぐことができる。
[0041]
<<THF不溶解分量>>
 重合体Aは、THF不溶解分量が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、23質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、43質量%以下であることが特に好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。重合体AのTHF不溶解分量が10質量%以上であれば、接着に寄与する重合体Aの強度が向上し、電極の屈曲時の変位に対する強度が増す。すなわち電極の耐屈曲性を更に高めることができる。一方、重合体AのTHF不溶解分量が60質量%以下であれば、重合体Aの電解液に対する親和性が確保され、二次電池作製時の電解液注液性を一層向上させることができる。
 なお、重合体AのTHF不溶解分量は、重合体Aを調製するための単量体組成物中の単量体に占める脂肪族共役ジエン単量体の含有割合、並びに、上述した分子量調整剤の使用量、反応温度および反応時間などの重合条件を変更することにより調整することができる。
[0042]
<<体積平均粒子径>>
 また、重合体Aは、少なくとも本発明のバインダー組成物中で粒子形状を呈していることが好ましい。すなわち、重合体Aは、粒子状重合体であることが好ましい。そして重合体Aは、体積平均粒子径が0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることが更に好ましく、0.15μm以下であることが好ましく、0.13μm以下であることがより好ましく、0.12μm以下であることが更に好ましい。重合体Aの体積平均粒子径が0.01μm以上であれば、電極合材層が均一な多孔質構造を保持して金属イオンの偏在が抑制されるため、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。一方、重合体Aの体積平均粒子径が0.15μm以下であれば、重合体Aが過度な弾性を有することもなく、電極のスプリングバックを抑制することができる。
 なお、重合体Aの体積平均粒子径は、乳化剤の使用量などの重合条件を変更することにより調整することができる。
[0043]
<重合体B>
 本発明のバインダー組成物は、重合体Aに加え、重合体Bを含有することが好ましい。ここで重合体Bは、バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池電極用スラリー組成物を使用して集電体上に電極合材層を形成することにより製造した電極において、電極合材層に含まれる成分が電極合材層から脱離しないように保持する(即ち、上述した重合体Aと共に結着材として機能する)。結着材として、重合体Aと重合体Bを併用すれば、電極のピール強度を高めると共に、電極の耐屈曲性および二次電池作製時の電解液注液性を更に向上させることができる。
[0044]
<<重合体Bの組成>>
 重合体Bは、繰り返し単位として脂肪族共役ジエン単量体単位を含み、そして、脂肪族共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含む。脂肪族共役ジエン単量体単位以外の単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位が好適に挙げられるが、重合体Aは、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位(その他の単量体単位)を更に含むことができる。
[0045]
[脂肪族共役ジエン単量体単位]
 ここで、重合体Bの脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、上述した重合体Aの脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体と同様のものが挙げられる。中でも、重合体Bの脂肪族共役ジエン単量体単位を形成する脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。なお、脂肪族共役ジエン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0046]
 そして、重合体B中の脂肪族共役ジエン単量体単位の割合は、重合体B中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、20質量%以上80質量%以下であることが必要であり、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、32.5質量%以上であることが更に好ましく、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が20質量%以上であれば、重合体Bの柔軟性が確保されるため、重合体Aのみならず重合体Bを含む電極の耐屈曲性を更に高めることができる。一方、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が80質量%以下であれば、重合体Bの電解液に対する親和性が確保され、二次電池作製時の電解液注液性を一層向上させることができる。
[0047]
[芳香族ビニル単量体単位]
 ここで、重合体Bの芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、上述した重合体Aのその他の単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体と同様のものが挙げられる。中でも、重合体Bの芳香族ビニル単量体単位を形成する芳香族ビニル単量体としては、スチレンが好ましい。なお、芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0048]
 そして、重合体B中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、25.5質量%以上であることが特に好ましく、70質量%以下であることが好ましく、68質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有割合が10質量%以上であれば、電極の剛性を確保することができる。一方、芳香族ビニル単量体単位の含有割合が70質量%以下であれば、電極のピール強度を向上させることができる。
[0049]
[その他の単量体単位]
 重合体Bが含み得る、上述した脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外のその他の単量体単位としては、特に限定されることなく、上述した脂肪族共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体と共重合可能な既知の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。具体的には、その他の単量体単位としては、特に限定されることなく、例えば(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、親水性基含有単量体単位などが挙げられる。
 なお、これらの単量体は一種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0050]
 ここで、重合体Bの(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および親水性基含有単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体および親水性基含有単量体としては、上述した重合体Aのその他の単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体および親水性基含有単量体と同様のものが挙げられる。中でも、重合体Bの(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。また、親水性基含有単量体単位を形成する親水性基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体および水酸基を有する単量体が好ましく、イタコン酸および2-ヒドロキシエチルアクリレート(アクリル酸-2-ヒドロキシエチル)がより好ましい。
[0051]
 そして、重合体Bのその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは0質量%以上10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
[0052]
 重合体Bは、特に限定されることなく、上述した単量体を含む単量体組成物を重合することにより調製することができる。ここで、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、通常、所望の重合体における各単量体単位の割合と同様とする。そして、重合体Bの重合様式は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。そして、重合に使用される分子量調整剤、乳化剤、重合開始剤、などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とすることができる。
[0053]
<<THF不溶解分量>>
 重合体Bは、THF不溶解分量が80質量%以上であることが好ましく、82質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、96質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが更に好ましい。重合体BのTHF不溶解分量が80質量%以上であれば、重合体Bの引張破断強度が向上し、電極のピール強度を高めることができる。一方、重合体BのTHF不溶解分量が96質量%以下であれば、重合体Bの引張破断強度が確保され、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。
 なお、重合体BのTHF不溶解分量は、重合体Bを調製するための単量体組成物中の単量体に占める脂肪族共役ジエン単量体の含有割合、並びに分子量調整剤の使用量、反応温度および反応時間などの重合条件を変更することにより調整することができる。
[0054]
<<体積平均粒子径>>
 また、重合体Bは、少なくとも本発明のバインダー組成物中で粒子形状を呈していることが好ましい。すなわち、重合体Bは、粒子状重合体であることが好ましい。そして、重合体Bは、体積平均粒子径が0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが更に好ましい。重合体Bの体積平均粒子径が0.01μm以上であれば、電極合材層が均一な多孔質構造を保持して金属イオンの偏在が抑制されるため、二次電池の充放電後にリチウムなどの金属が電極表面に析出するのを抑制することができる。一方、重合体Bの体積平均粒子径が0.5μm以下であれば、重合体Bの比表面積を確保して、電極のピール強度を高めることができる。
 なお、重合体Bの体積平均粒子径は、乳化剤の使用量などの重合条件を変更することにより調整することができる。
[0055]
<重合体Aと重合体Bの配合割合>
 そして、本発明のバインダー組成物が重合体Bを含む場合、バインダー組成物中の重合体Bの含有量は、重合体Aと重合体Bとの合計含有量の20質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。重合体Aと重合体Bとの合計含有量に対する重合体Bの含有量の割合が20質量%以上であれば、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保しつつ電極の耐屈曲性を更に高めることができる。一方、重合体Aと重合体Bとの合計含有量に対する重合体Bの含有量の割合が80質量%以下であれば、二次電池作製時の電解液注液性を一層向上させることができる。
 なお、本発明のバインダー組成物は、上述した重合体Aおよび重合体B以外の任意の重合体を結着材として含有していてもよい。
[0056]
<分散媒>
 本発明のバインダー組成物が含有する分散媒としては、特に限定されることなく、水が挙げられる。なお、分散媒は、任意の化合物の水溶液や、少量の有機溶媒と水との混合溶液であってもよい。
[0057]
<その他の成分>
 本発明のバインダー組成物は、上記成分の他に、補強材、レベリング剤、粘度調整剤、電解液添加剤等の成分を含有していてもよい。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0058]
<バインダー組成物の調製方法>
 そして、本発明のバインダー組成物の調製方法は、特に限定されることない。例えば、重合反応により得られた重合体Aを含む分散液をそのままバインダー組成物とすることができ、また例えば、重合体Aを含む分散液と、重合体Bを含む分散液と、任意のその他の成分とを混合してバインダー組成物を調製することもできる。なお、重合体を含む分散液を用いてバインダー組成物を調製する場合には、分散液が含有している液分をそのままバインダー組成物の分散媒として利用してもよい。
[0059]
(非水系二次電池電極用スラリー組成物)
 本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、電極活物質と、上述したバインダー組成物とを含み、任意にその他の成分を更に含有する。即ち、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、通常、電極活物質と、上述した重合体Aと、分散媒とを含有し、任意に、重合体Bおよびその他の成分を更に含有する。そして、本発明のスラリー組成物は、上述したバインダー組成物を含んでいるので、電極の電極合材層の形成に用いた際に、電極に優れた耐屈曲性を付与することができると共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することもできる。そして、上記重合体Aを含有するバインダー組成物を用いて形成した電極を使用すれば、非水系二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
 なお、以下では、一例として非水系二次電池電極用スラリー組成物がリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
[0060]
<電極活物質>
 電極活物質は、二次電池の電極において電子の受け渡しをする物質である。そして、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
[0061]
 具体的には、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、およびこれらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
[0062]
 ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいい、炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料と黒鉛質材料とが挙げられる。
[0063]
 そして、炭素質材料としては、例えば、易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
 ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
 また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
[0064]
 更に、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
 ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
[0065]
 また、金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが用いられる。これらの中でも、金属系負極活物質としては、ケイ素を含む活物質(シリコン系負極活物質)が好ましい。シリコン系負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池を高容量化することができるからである。
[0066]
 シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiO x、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
[0067]
<バインダー組成物>
 バインダー組成物としては、重合体Aを含み、任意に重合体Bを含む本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いることができる。
 なお、スラリー組成物中における、バインダー組成物由来の重合体Aの含有量は、電極活物質100質量部当たり、固形分換算で、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。また、スラリー組成物中における、バインダー組成物由来の重合体Bの含有量は、電極活物質100質量部当たり、固形分換算で、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
[0068]
<その他の成分>
 スラリー組成物に配合し得るその他の成分としては、特に限定することなく、本発明のバインダー組成物に配合し得るその他の成分と同様のものが挙げられる。また、スラリー組成物は、カーボンブラック等の導電材を更に含有していてもよい。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0069]
<スラリー組成物の調製>
 上述したスラリー組成物は、上記各成分を水などの分散媒中に分散または溶解させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と分散媒とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。なお、上記各成分と分散媒との混合は、通常、室温~80℃の範囲で、10分~数時間行うことができる。また、スラリー組成物の調製に用いる分散媒としては、バインダー組成物と同様のものを用いることができる。そして、スラリー組成物の調製に用いる分散媒には、バインダー組成物が含有していた分散媒も含まれ得る。
[0070]
(非水系二次電池用電極)
 本発明の非水系二次電池用電極は、上記非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成された電極合材層を備えるものであり、通常は、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを有している。そして、電極合材層は、少なくとも、電極活物質と、重合体Aに由来する重合体とを含有し、任意に、重合体Bに由来する重合体およびその他の成分を含有する。なお、電極合材層中に含まれている各成分は、上記非水系二次電池電極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。また、重合体Aおよび重合体Bがスラリー組成物中において粒子形状で存在していた場合、スラリー組成物を用いて形成された電極合材層中では、重合体Aおよび重合体Bは、粒子形状であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
[0071]
 そして、本発明の非水系二次電池用電極は、本発明のバインダー組成物を含むスラリー組成物を使用して作製されているため、耐屈曲性に優れる。また、本発明の非水系二次電池用電極を用いて二次電池を作製すれば、電解液注液性を良好に確保することもできる。そのため、当該電極を用いれば、電池特性に優れる二次電池が得られる。
[0072]
<電極の製造方法>
 なお、本発明の非水系二次電池用電極は、例えば、上述したスラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥して集電体上に電極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
[0073]
<<塗布工程>>
 上記スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
[0074]
 ここで、スラリー組成物を塗布する集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0075]
<<乾燥工程>>
 集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備える二次電池用電極を得ることができる。
[0076]
 なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、電極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、電極のピール強度を向上させることができる。また、電極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、電極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
[0077]
(非水系二次電池)
 本発明の非水系二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極および負極の少なくとも一方として本発明の非水系二次電池用電極を用いたものである。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用電極を備えているので、電池特性に優れている。
 なお、本発明の二次電池は、本発明の二次電池用電極を負極として用いたものであることが好ましい。また、以下では、一例として二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
[0078]
<電極>
 上述のように、本発明の非水系二次電池用電極が、正極および負極の少なくとも一方として用いられる。即ち、リチウムイオン二次電池の正極が本発明の電極であり負極が他の既知の負極であってもよく、リチウムイオン二次電池の負極が本発明の電極であり正極が他の既知の正極であってもよく、そして、リチウムイオン二次電池の正極および負極の両方が本発明の電極であってもよい。
 なお、本発明の非水系二次電池用電極以外の既知の電極としては、既知の製造方法を用いて集電体上に電極合材層を形成してなる電極を用いることができる。
[0079]
<電解液>
 電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池の支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF 6、LiAsF 6、LiBF 4、LiSbF 6、LiAlCl 4、LiClO 4、CF 3SO 3Li、C 49SO 3Li、CF 3COOLi、(CF 3CO) 2NLi、(CF 3SO 22NLi、(C 25SO 2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF 6、LiClO 4、CF 3SO 3Liが好ましく、LiPF 6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
[0080]
 電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましい。
 なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5~15質量%することが好ましく、2~13質量%とすることがより好ましく、5~10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチルメチルスルホンなどを添加することができる。
[0081]
<セパレータ>
 セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば特開2012-204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
[0082]
<二次電池の製造方法>
 本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
実施例
[0083]
 以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
 そして、実施例および比較例において、重合体のTHF不溶解分量および体積平均粒子径、二次電池作製時の電解液注液性、負極の耐屈曲性、耐スプリングバック性およびピール強度、並びに、負極上へのリチウム析出量は、下記の方法で測定および評価した。
[0084]
<THF不溶解分量>
 得られた重合体の水分散液を、50%湿度、23℃~25℃の環境下で乾燥させて、厚み3±0.3mmのフィルムを作製した。作製したフィルムを5mm角に裁断して複数のフィルム片を用意し、これらのフィルム片を約1g精秤した。精秤されたフィルム片の重量をW0とした。次いで、精秤されたフィルム片を、100gのテトラヒドロフラン(THF)に25℃で24時間浸漬した。その後、THFからフィルム片を引き揚げ、引き揚げたフィルム片を105℃で3時間真空乾燥して、その重量(不溶解分の重量)W1を計測した。そして、下記式に従って、THF不溶解分量(%)を算出した。
 THF不溶解分量(%)=W1/W0×100
<体積平均粒子径>
 得られた重合体の水分散液の固形分濃度0.1質量%に調整し、固形分濃度調整後の重合体の水分散液について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS-230」)により粒子径分布(体積基準)を測定した。そして、得られた粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を求め、重合体(粒子状重合体)の体積平均粒子径(D50)とした。
<電解液注液性>
 作製した負極(プレス後)の負極合材層側の面に、電解液(溶媒:プロピレンカーボネート、電解質:濃度1MのLiPF 6)を1μL滴下し、滴下してから電解液が負極合材層中へ浸透し表面の液がなくなるまでの時間(浸透時間)を測定し、以下の基準により評価した。浸透時間が短いほど、当該負極を用いて二次電池を作製した際の電解液注液性に優れることを示す。
 A:浸透時間が300秒未満
 B:浸透時間が300秒以上350秒未満
 C:浸透時間が350秒以上400秒未満
 D:浸透時間が400秒以上
<耐屈曲性>
 作製した負極(プレス後)を、直径が3mmのステンレス鋼製の円柱に巻き付け、巻き付けた際の負極合材層表面におけるクラック生成の有無を目視で確認した。クラック生成が確認できない場合は、ステンレス鋼製の円柱の直径を2mm、1mmと順に小さくし、同様の操作を行った。そして、当該負極の負極合材層表面に初めてクラックが確認された際の円柱の直径(クラック生成時の円柱直径)を記録し、下記の基準で評価した。クラック生成時の円柱直径が小さいほど、負極が耐屈曲性に優れることを示し、そして直径が1mmの円柱を用いた場合でもクラックが生成しない場合、負極が耐屈曲性に非常に優れることを示す。
 A:円柱直径が1mmでもクラック生成が確認されなかった。
 B:クラック生成時の円柱直径が1mm
 C:クラック生成時の円柱直径が2mm
 D:クラック生成時の円柱直径が3mm
<耐スプリングバック性>
 作製した負極(プレス後)の厚みを計測しT1とした。この厚み計測後の負極を、露点温度が-40℃以下で管理されたドライルーム内に3日間放置し、再度厚みを計測しT2とした。負極の厚み変化率(%)=T2/T1×100を算出し、以下の基準により評価した。厚み変化率が小さいほど、負極が耐スプリングバック性に優れることを示す。
 A:負極の厚み変化率が105%未満
 B:負極の厚み変化率が105%以上108%未満
 C:負極の厚み変化率が108%以上
<ピール強度>
 作製した負極(プレス後)を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とした。この試験片を、負極合材層の表面を下にして、負極合材層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、その平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。ピール強度が大きいほど、負極合材層と集電体の密着強度が大きいことを示す。
 A:ピール強度が24N/m以上
 B:ピール強度が19N/m以上24N/m未満
 C:ピール強度が19N/m未満
<リチウム析出量>
 作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、25℃環境下で5時間静置した。静置後、25℃環境下で0.2Cの定電流法によってセル電圧3.65Vまで充電し、その後60℃環境下で12時間エージング処理を行った。次いで、25℃環境下で0.2Cの定電流法によってセル電圧3.00Vまで放電を行った。更に、0.2Cの定電流にてCC-CV充電(上限セル電圧4.30V)を行い、0.2Cの定電流にてCC放電(下限電圧3.00V)を実施した。
 その後、上記リチウムイオン二次電池を、25℃環境下で、4.30-3.00V間で0.5Cの定電流充放電を10回実施した。更に、25℃環境下で、0.5Cの定電流にて、CC-CV充電(上限セル電圧4.30V)を行った。そして、不活性雰囲気下でリチウムイオン二次電池を分解し、負極を取り出した。取り出した負極をジエチルカーボネートで洗浄した後、リチウムが析出している面積の負極面積(合材層面)に対する割合(%)を測定し、以下の基準で評価した。
A:面積割合が0%(リチウムが析出していない。)
B:面積割合が0%超50%未満
C:面積割合が50%以上100%
[0085]
(実施例1)
<重合体Aの調製>
 反応器に、イオン交換水180部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)25部、ニトリル基含有単量体としてのアクリロニトリル8部、カルボン酸基を有する単量体としてのメタクリル酸1部、および、分子量調整剤としてのt-ドデシルメルカプタン0.25部を、この順に投入した。次いで、反応器内部の気体を窒素で3回置換した後、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエン91部を投入した。10℃に保った反応器に、重合開始剤としてのクメンハイドロパーオキサイド0.1部を投入して重合反応を開始し、攪拌しながら16時間重合反応を継続した。次いで、重合停止剤としてのハイドロキノン水溶液(濃度10%)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、重合体A(粒子状重合体)の水分散液を得た。この重合体AのTHF不溶解分量および体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
<重合体Bの調製>
 反応器に、イオン交換水150部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)25部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン63部、カルボン酸基を有する単量体としてのイタコン酸3.5部、水酸基を有する単量体としての2-ヒドロキシエチルアクリレート1部、および、分子量調整剤としてのt-ドデシルメルカプタン0.5部を、この順に投入した。次いで、反応器内部の気体を窒素で3回置換した後、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエン32.5部を投入した。60℃に保った反応器に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を投入して重合反応を開始し、撹拌しながら重合反応を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、重合停止剤としてのハイドロキノン水溶液(濃度10%)0.1部を加えて重合反応を停止した。その後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、重合体B(粒子状重合体)の水分散液を得た。この重合体BのTHF不溶解分量および体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
<バインダー組成物の調製>
 重合体Aの水分散液と重合体Bの水分散液とを、重合体Aと重合体Bとが、固形分比率で、重合体A:重合体B=50:50になるように容器へ投入した。そして、スリーワンモーターにより1時間撹拌して、バインダー組成物を得た。
<スラリー組成物の調製>
 ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(日立化成社製、製品名「MAG-E」)70部および天然黒鉛(日本カーボン社製、製品名「604A」)25.6部、導電材としてのカーボンブラック(TIMCAL社製、製品名「Super C65」)1部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製、製品名「MAC-350HC」)の1%水溶液を固形分相当で1部加えて混合物を得た。得られた混合物をイオン交換水で固形分濃度58%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、更に25℃で15分間混合して混合液を得た。得られた混合液に、非水系二次電池電極用バインダー組成物を固形分相当で1部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が48%となるように調整した。更に10分間混合した後、減圧下で脱泡処理することにより、流動性の良い非水系二次電池負極用スラリー組成物を得た。
<負極の作製>
 得られた非水系二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の負極合材層の単位面積当たりの重量が11mg/cm 2、密度が1.05g/cm 3となるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の密度が1.65g/cm 3のプレス後の負極を得た。
 そして、二次電池作製時の電解液注液性、並びに、負極の耐屈曲性、耐スプリングバック性およびピール強度を評価した。結果を表1に示す。
<正極の作製>
 正極活物質としての体積平均粒子径12μmのLiCoO 2を100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS-100」)を2部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部と、溶媒としてのN-メチルピロリドンとを混合して全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、非水系二次電池正極用スラリー組成物を得た。
 得られた非水系二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。
 そして、得られた正極原反を、ロールプレス機を用いて圧延することにより、正極合材層を備える正極を得た。
<セパレータの準備>
 単層のポリプロピレン製セパレータ(セルガード社製、製品名「セルガード2500」)を、120cm×5.5cmに切り抜いた。
<二次電池の作製>
 得られたプレス後の正極を49cm×5cmの長方形に切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その正極合材層上に120cm×5.5cmに切り出したセパレータを、正極がセパレータの長手方向左側に位置するように配置した。更に、得られたプレス後の負極を50cm×5.2cmの長方形に切り出し、セパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように、かつ、負極がセパレータの長手方向右側に位置するように配置した。そして、得られた積層体を捲回機により捲回し、捲回体を得た。この捲回体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF 6)を空気が残らないように注入し、更にアルミ包材外装の開口を150℃のヒートシールで閉口して、容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。そして、負極上へのリチウム析出量を評価した。結果を表1に示す。
[0086]
(実施例2)
 重合体Aの調製時に、1,3-ブタジエンの量を86部に変更し、アクリロニトリルの量を13部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0087]
(実施例3)
 重合体Aの調製時に、1,3-ブタジエンの量を93部に変更し、アクリロニトリルの量を6部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0088]
(実施例4)
 重合体Aの調製時に、1,3-ブタジエンをイソプレンに変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0089]
(実施例5、6)
 重合体Aの調製時に、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)の量をそれぞれ、40部(実施例5)、15部(実施例6)に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。
[0090]
(実施例7)
 重合体Bの調製時に、1,3-ブタジエンの量を22部に変更し、スチレンの量を73.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0091]
(実施例8)
 重合体Bの調製時に、1,3-ブタジエンの量を70部に変更し、スチレンの量を25.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0092]
(実施例9、10)
 重合体Bの調製時に、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)の量をそれぞれ、15部(実施例9)、40部(実施例10)に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。
[0093]
(実施例11、12)
 バインダー組成物の調製時に、重合体Aの水分散液と重合体Bの水分散液との混合比率を、それぞれ、重合体A:重合体B=20:80(実施例11)、重合体A:重合体B=65:35(実施例12)になるように変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0094]
(実施例13)
 重合体Bを調製せず、バインダー組成物として、重合体Aの水分散液を使用した以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。
[0095]
(比較例1)
 重合体Aの調製時に、1,3-ブタジエンの量を85部に変更し、アクリロニトリルに替えてスチレンを14部使用し、そして分子量調整剤としてのt-ドデシルメルカプタンの量を0.35部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0096]
(比較例2)
 重合体Aの調製時に、1,3-ブタジエンの量を96部に変更し、アクリロニトリルに替えてスチレンを3部使用し、そして分子量調整剤としてのt-ドデシルメルカプタンの量を0.35部に変更した以外は実施例1と同様にして、バインダー組成物、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0097]
(比較例3)
 重合体Bを調製せず、バインダー組成物として、重合体Aの水分散液を使用した以外は比較例1と同様にして、スラリー組成物、負極、正極、セパレータおよび二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。
[0098]
 なお、以下に示す表1中、
「BD」は、1,3-ブタジエン単位を示し、
「IP」は、イソプレン単位を示し、
「AN」は、アクリロニトリル単位を示し、
「MAA」は、メタクリル酸単位を示し、
「ST」は、スチレン単位を示し、
「IA」は、イタコン酸単位を示し、
「2-HEA」は、2-ヒドロキシエチルアクリレート単位を示し、
「TDM」は、t-ドデシルメルカプタンを示す。
[0099]
[表1]


[0100]
 表1より、脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%以上95質量%以下の割合で含む重合体Aを含有するバインダー組成物を用いた実施例1~13では、耐屈曲性に優れた負極が得られると共に、二次電池作製時の電解液注液性も良好に確保できていることが分かる。加えて、実施例1~13の負極は、ピール強度に優れると共にスプリングバックが十分に抑制されており、リチウム析出量も少ないことが分かる。一方、表1より、脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%未満の割合で含む重合体Aを含有するバインダー組成物を用いた比較例1および3では、特に負極の耐屈曲性が低下していることがわかる。そして、表1より、脂肪族共役ジエン単量体単位を95質量%超の割合で含む重合体Aを含有するバインダー組成物を用いた比較例2では、特に二次電池作製時の電解液注液性を十分に確保できていないことが分かる。

産業上の利用可能性

[0101]
 本発明によれば、耐屈曲性に優れる電極を形成できると共に、二次電池作製時の電解液注液性を良好に確保することも可能な非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物を提供することができる。
 また、本発明によれば、耐屈曲性に優れ、且つ二次電池作製時の電解液注入性を良好に確保しうる非水系二次電池用電極、および当該非水系二次電池用電極を備える非水系二次電池を提供することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 重合体Aを含有する非水系二次電池電極用バインダー組成物であって、
 前記重合体Aが、脂肪族共役ジエン単量体単位を86質量%以上95質量%以下の割合で含む、非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項2]
 前記重合体Aが、更にニトリル基含有単量体単位を1質量%以上14質量%以下の割合で含む、請求項1に記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項3]
 前記重合体Aの体積平均粒子径が0.01μm以上0.15μm以下である、請求項1または2に記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項4]
 更に重合体Bを含有し、
 前記重合体Bが、脂肪族共役ジエン単量体単位を20質量%以上80質量%以下の割合で含む、請求項1~3の何れかに記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項5]
 前記重合体Bの体積平均粒子径が0.01μm以上0.5μm以下である、請求項4に記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項6]
 前記重合体BのTHF不溶解分量が80質量%以上96%質量以下である、請求項4または5に記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項7]
 前記重合体Bの含有量が、前記重合体Aと前記重合体Bとの合計含有量の20質量%以上80質量%以下である、請求項4~6の何れかに記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物。
[請求項8]
 電極活物質と、請求項1~7の何れかに記載の非水系二次電池電極用バインダー組成物とを含む、非水系二次電池電極用スラリー組成物。
[請求項9]
 請求項8に記載の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した電極合材層を備える、非水系二次電池用電極。
[請求項10]
 正極、負極、電解液およびセパレータを備え、
 前記正極および負極の少なくとも一方が請求項9に記載の非水系二次電池用電極である、非水系二次電池。