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1. (WO2017150256) PHARMACEUTICAL PREPARATION CONTAINING CAMPTOTHECIN-BASED POLYMERIC DERIVATIVE
Document

明 細 書

発明の名称 カンプトテシン類高分子誘導体を含有する医薬製剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057  

実施例

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073  

請求の範囲

1   2  

明 細 書

発明の名称 : カンプトテシン類高分子誘導体を含有する医薬製剤

技術分野

[0001]
 本発明は、カンプトテシン誘導体を高分子担体に結合させた高分子化カンプトテシン誘導体の、製剤安定性を向上させた医薬製剤に関する。該高分子化カンプトテシン誘導体は、水溶液中において複数の該分子同士による会合性を有してナノ粒子を形成する物性を有する。このようなナノ粒子形成性を有する高分子化カンプトテシン誘導体を含有する医薬製剤において、保存安定性に優れた医薬製剤に関する技術である。

背景技術

[0002]
 医薬品の薬効を有効に発現させるためには、薬理活性化合物を生体内の適切な部位に適切な濃度及び時間で作用させることが求められる。特に殺細胞性抗腫瘍剤は、静脈内投与等によって全身投与された場合に、全身へ広範に分布して細胞増殖阻害作用を発揮する。この際、癌細胞と正常細胞の区別がなく薬理活性作用が発揮されるため、正常細胞に対する作用により重篤な副作用をもたらすと言われている。したがって、副作用の低減のためには、抗腫瘍剤を腫瘍患部へ送達する技術が重要である。そこで、抗腫瘍剤を腫瘍組織へ選択的に送達し、適切な薬剤濃度及び薬剤感作時間で作用させるための薬物動態の制御方法が求められている。
[0003]
 薬物動態を制御する方法として、分子量に基づく薬物動態特性を利用する方法が知られている。すなわち、生体適合性高分子物質を血中投与すると、腎排泄が抑制され、血中半減期が長く維持される。更に、腫瘍組織は高分子物質の組織透過性が高く、またその回収機構が十分に構築されていないことから、高分子物質は相対的に腫瘍組織内に高濃度に分布して蓄積することが知られている。そこで、生体適合性高分子物質に抗腫瘍剤を結合させた、高分子化抗腫瘍剤の開発が行われている。
 高分子化抗腫瘍剤として、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを連結させたブロック共重合体を高分子担体として、該ポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボン酸に、様々な抗腫瘍剤を結合させた高分子化抗腫瘍剤が報告されている。特許文献1には、該ブロック共重合体に7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンを結合させた医薬品が開示されている。また、他の抗腫瘍剤としてシチジン系抗腫瘍剤のブロック共重合体結合体(特許文献2)、コンブレタスタチンA4のブロック共重合体結合体(特許文献3)、HSP90阻害剤のブロック共重合体結合体(特許文献4)などが知られている。これらの高分子化抗腫瘍剤は、有効成分として用いられている低分子の抗腫瘍性化合物と比較して、抗腫瘍効果が増強されることが記載されている。
[0004]
 これら抗腫瘍剤のブロック共重合体結合体は、該抗腫瘍剤の水酸基と該ブロック共重合体の側鎖カルボン酸をエステル結合により結合させた高分子化抗腫瘍剤である。これらの高分子化抗腫瘍剤は、生体内に投与されると該エステル結合が一定速度で開裂して抗腫瘍剤を遊離させることで、抗腫瘍活性作用を発揮させるプロドラッグである。
 また、これらの抗腫瘍剤が結合したブロック共重合体は、該抗腫瘍剤が結合したブロック領域が疎水性である場合は、水溶液中において該抗腫瘍剤結合領域が疎水性相互作用に基づく会合性を示し、複数の該ブロック共重合体同士による会合性凝集体を形成する物性を有する。
 この会合性凝集体は、レーザー光等を用いた光散乱測定により、会合性凝集体の物性を測定することができる。すなわち、光散乱強度を測定値として会合性凝集体の物性規定ができる。
 これらの高分子化抗腫瘍剤は、生体内においてナノ粒子として挙動して、前記のような薬物動態を発揮して腫瘍組織へ高濃度で分布し、そこで抗腫瘍剤を遊離させることにより、高い抗腫瘍効果が発揮されるものである。したがって、これらの高分子化抗腫瘍剤は、ナノ粒子化される物性がその性能発揮のための重要因子である。
[0005]
 薬剤-高分子結合医薬品は、高分子担体の分子量に基づく薬物動態と、結合薬剤を活性体として徐放的に放出させることにより、高い薬理活性と副作用の低減を図る医薬品である。このため、このような薬剤-高分子結合医薬品は、製剤として保存した状態において高分子担体の分子量変化が少ない、すなわち低分子化を抑制した保存安定性に優れた製剤とする必要がある。
 薬剤-高分子結合医薬品において、保存安定性を考慮した製剤として、例えば、特許文献5及び6には、カルボキシル基を有する多糖類とカンプトテシン誘導体の結合体が、糖又は糖アルコール及びpH調整剤を含む医薬製剤とすることで、高分子担体の分子量変化やカンプトテシン誘導体の遊離を抑制することが開示されている。
 これらの薬剤-高分子結合医薬品は会合体を形成しないと考えられ、高分子担体の分子量が性能発揮因子であると考えられる。このため、該担体の化学結合の開裂等の化学的分解反応による低分子化が問題となり、その抑制が必要である。しかしながら、会合性凝集体によるナノ粒子化による高分子化を性能管理因子(性能発揮因子)とするブロック共重合体による高分子化抗腫瘍剤について、ナノ粒子形成能を制御することを課題とした安定な医薬製剤は知られていない。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 国際公開WO2004/39869号
特許文献2 : 国際公開WO2008/056596号
特許文献3 : 国際公開WO2008/010463号
特許文献4 : 国際公開WO2008/041610号
特許文献5 : 国際公開WO2002/005855号
特許文献6 : 特表2005-523329号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本発明は、カンプトテシン誘導体を高分子担体に結合させた高分子化カンプトテシン誘導体の、会合性凝集体形成性が制御された製剤的に安定性が向上された医薬製剤を提供することを課題とする。また、高分子担体に結合させたカンプトテシン誘導体の担体からの解離が抑制された化学的安定性に優れた医薬製剤を提供することを課題とする。
 このようなナノ粒子形成性の高分子化カンプトテシン誘導体を含有する医薬製剤において、その医薬製剤性能の重要因子であるナノ粒子形成性が維持され、分解生成物の生成が抑制された保存安定性に優れた医薬製剤を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明者はポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体である高分子化カンプトテシン誘導体において、特定の添加剤を用いることで、会合性凝集体形成によるナノ粒子の形成性を長期に亘り安定に維持し、且つカンプトテシン誘導体の遊離を抑制した保存安定性に優れた医薬製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。本願は以下の発明を要旨とする。
[0009]
[1] ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体、並びにアルギニン、ヒスチジン及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する医薬製剤であって、
前記ブロック共重合体が、一般式(1)
[化1]


[式中、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1~C6)アルキレン基であり、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R は水酸基及び/または-N(R )CONH(R )を示し、前記R 及び前記R は同一でも異なっていてもよく三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1~C8)アルキル基を示し、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、tは45~450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6~60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1~100%、eの割合が0~99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR 基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体である医薬製剤。
 本発明の医薬製剤は、保存中において、前記ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性を安定に維持できる。また、高分子担体に結合しているカンプトテシン誘導体の解離を抑制し化学的安定に優れた医薬製剤を提供することができる。
[0010]
[2] 前記医薬製剤が凍結乾燥製剤である前記[1]に記載の医薬製剤。
 本発明は製剤形として凍結乾燥製剤とすることで、ナノ粒子形成性を安定に制御して維持しやすいことから望ましい製剤形である。また、凍結乾燥製剤とした場合、該医薬製剤を水溶液に再構成する際の溶解速度を高めることができることからより望ましい。

発明の効果

[0011]
 本発明に係るポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体は、会合凝集体によるナノ粒子形成が薬効発揮において必須の性能であり、特に所望の会合状態のナノ粒子を形成できることが重要である。また、保存中における分解物の生成量が低減されることも重要である。
 本発明の医薬製剤は、会合凝集体を形成する該ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤において、保存安定性に優れた医薬製剤を提供することができる。すなわち、該医薬製剤の保存下において、所望の会合状態が維持され、又はカンプトテシン誘導体の解離に伴う遊離が少ない、物理的安定性、化学的安定性に優れた医薬製剤を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0012]
 本発明は、ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体を有効成分とする保存安定性に優れた製剤を調製するに当たり、前記医薬製剤にヒスチジン、アルギニン又は塩化ナトリウムを添加剤として用いることで、前記医薬製剤を遮光下40℃で4週間保存した後において、前記医薬製剤の会合性凝集体の形成変化率及び遊離カンプトテシン誘導体の生成量が少なく、保存安定性に優れた該ブロック共重合体を含有する医薬製剤を調製することができた。以下に本発明について詳細に説明する。
[0013]
 本発明は、ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体であって、下記一般式(1)
[化2]


[式中、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1~C6)アルキレン基であり、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R は水酸基及び/又はN(R )CONH(R )を示し、前記R 及び前記R は同一でも異なっていてもよく三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1~C8)アルキル基を示し、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、tは45~450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6~60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1~100%、eの割合が0~99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR 基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を用いる。
 該ブロック共重合体は、ポリエチレングリコールセグメントと、カンプトテシン誘導体が側鎖にエステル結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが、適当な結合基を介して連結したブロック共重合体である。
[0014]
 前記R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基とは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C6)アルキル基が挙げられる。かかるアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-プロピル基、neo-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
 前記アルキル基が有していても良い置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でも良い。アミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ホルミル基が好ましい。
 該R として好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、2,2-ジメトキシエチル基、2,2-ジエトキシエチル基、2-ホルミルエチル基が挙げられる。無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C4)アルキル基が好ましい。特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が好ましい。
[0015]
 一般式(1)において、ポリエチレングリコールセグメントはエチレンオキシ基;(-OCH CH )基の単位繰り返し構造で示されており、そのセグメントにおけるポリエチレングリコール部分は分子量2キロダルトン~20キロダルトンのものを用いることが好ましく、4キロダルトン~15キロダルトンがより好ましい。すなわち、エチレンオキシ基;(-OCH CH )基の単位繰り返し構造数である一般式(1)のtは45~450の整数である。好ましくは、tは90~340の整数である。なお、ポリエチレングリコールセグメントの分子量は、ポリエチレングリコール標準品を用いたGPC法により求められるピークトップ分子量を用いる。
[0016]
 ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントをつなぐ結合基である一般式(1)におけるAは、炭素数(C1~C6)のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができる。中でも、好ましくはエチレン基又はトリメチレン基であり、特に好ましくはトリメチレン基である。
[0017]
 一般式(1)で表される本発明の高分子化合物のポリグルタミン酸セグメントは、グルタミン酸ユニットがα‐アミド結合型で重合した構造である。しかしながら、該グルタミン酸重合構造において、γ‐アミド結合型で重合したグルタミン酸ユニットが一部において含まれていても良い。該ポリグルタミン酸セグメントにおいて、各グルタミン酸ユニットはL体でもD体でも、それらが混在していてもよい。
 一般式(1)におけるグルタミン酸ユニット総数はd+eで表され、6~60の整数である。好ましくはd+eが8~40である。したがって、該ポリグルタミン酸セグメントの平均分子量は、後述する結合するカンプトテシン誘導体及びR 基の構造及び結合基量に依存するが、0.6キロダルトン~15キロダルトン、好ましくは0.8キロダルトン~10キロダルトンである。
[0018]
 前記ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸ユニット総数は、 H-NMRによるグルタミン酸ユニット数の算出法、アミノ酸分析法、側鎖カルボキシ基の酸-塩基滴定法等により求めることができる。側鎖にカンプトテシン誘導体及び前記R 基を結合させる前のポリグルタミン酸セグメントを用い、側鎖カルボキシ基を酸-塩基滴定法することにより求められるグルタミン酸ユニット数を採用することが好ましい。
[0019]
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アシル基ととして、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C6)アシル基が挙げられ、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等が挙げられる。
 置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アシル基として、好ましくは、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、等が挙げられる。置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C4)アシル基が好ましく、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基が好ましい。
[0020]
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基として、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
[0021]
 該R は、水素原子若しくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1~C4)アシル基を用いることが好ましい。R としては水素原子、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基が特に好ましい。
[0022]
 一般式(1)において、R は水酸基及び/又は-N(R )CONH(R )である。すなわち、側鎖カルボキシ基が該R であるグルタミン酸ユニットは、側鎖が未修飾のグルタミン酸ユニット及び/又は側鎖にウレア誘導体が結合したグルタミン酸ユニットである。
 該R 及びR は、同一でも異なっていてもよく三級アミノ基で置換されていても良い直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1~C8)アルキル基である。該R 及びR における炭素数(C1~C8)アルキル基とは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。
 三級アミノ基で置換されていても良い直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1~C8)アルキル基とは、2-ジメチルアミノエチル基、3-ジメチルアミノプロピル基等を挙げることができる。
 該R 及びR はとしては、好ましくはエチル基、イソプロピル基、シクロへキシル基、3-ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。より好ましくは、該R 及びR がいずれもイソプロピル基、該R 及びR がいずれもシクロへキシル基、又は該R 及びR がエチル基と3-ジメチルアミノプロピル基である場合を挙げることができる。
[0023]
 後述するように該R における-N(R )CONH(R )は、一般式(1)に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を合成する際に、カルボジイミド系縮合剤を用いることにより副生するグルタミン酸側鎖修飾基である。したがって、該R 及びR は用いたカルボジイミド系縮合剤のアルキル置換基と同一となる。すなわち、カルボジイミド縮合剤として、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いた場合、該R 及びR は何れもイソプロピル基となる。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、該R 及びR はエチル基及び3-ジメチルアミノプロピル基の混合置換基となる。この場合、該R がエチル基で該R が3-ジメチルアミノプロピル基である場合と、その逆である場合が存在し、これらが一分子中に混在した-N(R )CONH(R )基であっても良い。
[0024]
 一般式(1)において、R は水酸基であっても良い。すなわち、本発明におけるポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体及び前記-N(R )CONH(R )基の何れもが結合していない遊離型グルタミン酸ユニットが存在して良い。該R が水酸基である該グルタミン酸ユニットにおける側鎖カルボン酸は、遊離酸型で示されるが、医薬品として使用し得る塩の態様であってもよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の形態も本発明として含まれる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。本発明の医薬製剤が、抗癌剤として非経口投与にて供せられる場合、医薬品として許容される溶解液にて溶液調製される。その場合は、該遊離型グルタミン酸ユニットの態様は、その溶液のpH及び緩衝溶液等の塩の存在に依存し、任意のグルタミン酸塩の態様を取り得る。
[0025]
 一般式(1)で示されるブロック共重合体はポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基にエステル結合したカンプトテシン誘導体を具備している。該カンプトテシン誘導体は、10位に前記エステル結合に供せられる水酸基を有し、更に7位にR 基及び9位にR 基を備えているカンプトテシン誘導体である。R 及びR は何れも水素原子であっても良いが、該R 及びR は何れか一方が、水素原子以外の置換基であることが好ましい。
[0026]
 該R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基又は置換基を有していてもよいシリル基である。
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1~C6)アルキル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ベンジル基等が挙げられ、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1~C4)アルキル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。
 R における置換基を有していてもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。t-ブチルジメチルシリル基が好ましい。
[0027]
 該R としては、水素原子又は無置換の炭素数(C1~C6)アルキル基が好ましい。水素原子又はエチル基が特に好ましい。
[0028]
 R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示す。
 R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1~C6)アルキル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。R における置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、ジメチルアミノメチル基等が挙げられる。
 該R としては、水素原子又はアミノ基を有する炭素数(C1~C6)アルキル基が好ましい。水素原子又はジメチルアミノメチル基が特に好ましい。
[0029]
 一般式(1)において結合しているカンプトテシン誘導体としては、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン及び/又はノギテカン(9-ジメチルアミノメチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)であることが好ましい。すなわち、前記R がエチル基であり、前記R が水素原子である7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの10位の水酸基が、ポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基とエステル結合した態様であることが好ましい。若しくは、前記R が水素原子であり、前記R がジメチルアミノメチル基であるノギテカン(9-ジメチルアミノメチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の10位の水酸基がエステル結合した態様であることが好ましい。特に好ましくは、前記R がエチル基であり、前記R が水素原子である7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの10位の水酸基が、ポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基とエステル結合した態様である。
[0030]
 本発明の一般式(1)に記載のブロック共重合体は、好ましくは複数のカンプトテシン誘導体を具備するものである。その場合、該ブロック共重合体の同一分子鎖に結合する該カンプトテシン誘導体は、同一であっても、複数種類の誘導体が混在していても良い。しかしながら、該ブロック共重合体の同一分子鎖において結合するカンプトテシン誘導体は、同一であることが好ましい。
[0031]
 一般式(1)において、前記ポリグルタミン酸セグメントにおいて、側鎖カルボキシ基にカンプトテシン誘導体が結合しているグルタミン酸ユニット、及び側鎖カルボキシ基に前記R 基が結合しているグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムな配置にて存在する。該R 基は水酸基及び/又は-N(R )CONH(R )であっても良いことから、本発明のポリグルタミン酸セグメントにおいて、カンプトテシン誘導体が結合しているグルタミン酸ユニット、前記-N(R )CONH(R )が結合しているグルタミン酸ユニット、及び側鎖が遊離カルボキシ基またはその塩であるグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムな配置にて存在する。
[0032]
 本発明において、前記カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットは必須のセグメント構成である。一般式(1)において該カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットはdでその存在量が表され、グルタミン酸セグメントの総重合数における1~100%を占める。該dのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率は、20~70%であることが好ましい。該カンプトテシン誘導体の結合量は、当該ブロック共重合体の医薬品としての使用の際において、有効成分の含有量を決定し、且つ投与後の生体内における薬物動態に大きく影響して薬効や副作用の発現に関わる。
 一方、前記R 基結合グルタミン酸ユニットは任意のセグメント構成である。すなわち、前記カンプトテシン誘導体が結合していないグルタミン酸ユニットが当該R 基結合グルタミン酸ユニットである。一般式(1)において該R 基結合グルタミン酸ユニットはeでその存在量が表され、該グルタミン酸セグメントの総重合数における0~99%を占める。該eのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率は、30~80%であることが好ましい。
 該R 基は水酸基及び/又は-N(R )CONH(R )である。該-N(R )CONH(R )は任意の置換基であり、前記カンプトテシン誘導体が結合していないグルタミン酸ユニットは、水酸基が主な置換基であることが好ましい。ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸総重合数(d+e)において、R が水酸基であるグルタミン酸ユニットの存在比率は15~80%であることが好ましく、R が-N(R )CONH(R )であるグルタミン酸ユニットの存在比率は0~65%であることが好ましい。
[0033]
 なお、本発明の一般式(1)に係る前記ブロック共重合体は、水溶液中で会合性凝集体を形成する物性である。安定な会合性凝集体形成能を得るために、前記ポリエチレングリコールセグメントの親水性と、前記ポリグルタミン酸セグメントの疎水性のバランスを適宜設定することができる。好ましくは、一般式(1)におけるポリエチレングリコールセグメントのtが90~340の整数であり、グルタミン酸ユニット総数の(d+e)が8~40の整数である該ブロック共重合体を用い、前記カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットの存在量であるdのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率が20~70%である該ブロック共重合体を用いることである。
[0034]
 すなわち、一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体は、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニット含量が20~70%であり、前記R が水酸基を必須成分として含み、ポリグルタミン酸セグメントの総重合数における前記R が水酸基であるグルタミン酸ユニット含量が15~80%を占め、前記R が前記-N(R )CONH(R )基であるグルタミン酸ユニット含量が0~65%を占める該ブロック共重合体であることが好ましい。該R が水酸基の場合、側鎖カルボキシ基が遊離型グルタミン酸ユニットであるが、この側鎖カルボン酸は、遊離酸型で示されるが、医薬品として使用し得る塩の形態であってよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の形態も本発明として含まれる。該アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は、後述する医薬製剤用添加剤に由来する塩である事が好ましい。
[0035]
 次に、本発明における一般式(1)で示されるブロック共重合体の製造方法について、例を挙げて説明する。
 当該ブロック共重合体は、「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」に、10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体をエステル化反応により結合させることで調製することができる。任意に、R に係る-N(R )CONH(R )基を結合反応させることで、本発明に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を調製することができる。この10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体と、任意の該-N(R )CONH(R )基の結合反応方法は特に限定されるものではなく、先に10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体を結合反応させ、その後、該-N(R )CONH(R )基を結合反応させても、その逆工程でも良く、同時に結合反応させても良い。
[0036]
 前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」の構築方法は、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを結合させる方法、ポリエチレングリコールセグメントにポリグルタミン酸を遂次重合させる方法、のいずれの方法であっても良い。
[0037]
 本発明における一般式(1)で示されるブロック共重合体の合成方法を、カンプトテシン誘導体が7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンであって、該カンプトテシン誘導体の10位水酸基と該ブロック共重合体のグルタミン酸セグメントのカルボキシ基をエステル結合した例にて説明する。なお、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、国際公開WO2004/039869号に開示される方法により製造することができる。以下に、この文献に記載の製造方法を概説する。
[0038]
 前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」の合成方法として、片末端にアルコキシ基、他方片末端にアミノ基が修飾されたポリエチレングリコール化合物に、N-カルボニルグルタミン酸無水物を順次反応させ、ポリエチレングリコールセグメントの方末端側にポリグルタミン酸構造部位を構築させる方法を挙げることができる。この場合、N-カルボニルグルタミン酸無水物において、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基は適当なカルボン酸保護基で修飾したグルタミン酸誘導体であることが好ましい。当該カルボン酸保護基としては、特に限定されるものではないが、エステル保護基が好ましい。
 より具体的には、片末端にメトキシ基、他方片末端にアミノ基を修飾したポリエチレングリコール化合物に対し、γ-ベンジル-N-カルボニルグルタミン酸無水物を順次反応させ、遂次重合により、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを有するブロック共重合体を調製する方法を挙げることができる。この際、γ-ベンジル-N-カルボニルグルタミン酸無水物の使用当量を調整することで、ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸重合数を制御することができる。
 その後、適当な方法により、ポリグルタミン酸セグメントのベンジル基を脱保護することにより、該「ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」を調製できる。ベンジル基の脱保護反応としては、アルカリ条件による加水分解反応、水素添加還元反応が挙げられる。
[0039]
 次に、前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」に、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンを、カルボジイミド縮合剤の共存下で縮合反応させる。この方法を用いることにより、該ブロック共重合体に、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンと-N(R )CONH(R )基を同時に結合させることができるため、有利な反応である。なお、当該縮合反応において、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの使用当量を調整することにより、該カンプトテシン誘導体の結合量を制御することができる。また、カルボジイミド縮合剤の使用当量を調整することにより、-N(R )CONH(R )基の導入量を制御することができる。
 該カンプトテシン誘導体及び該-N(R )CONH(R )基の結合したグルタミン酸ユニットを除く、側鎖カルボキシ基が化学修飾されていない残部グルタミン酸ユニットが、前記R が水酸基であるグルタミン酸ユニットとなる。カンプトテシン誘導体及びカルボジイミド縮合剤の使用当量により、該R が水酸基であるグルタミン酸ユニット量を制御することができる。
[0040]
 なお、用いられるカルボジイミド縮合剤は、前記カンプトテシン誘導体をグルタミン酸ユニットの側鎖カルボキシ基にエステル結合させることができる縮合剤であれば、特に限定することなく用いることができる。好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を挙げることができる。上記縮合反応の際に、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。なお、カルボジイミド縮合剤としてDCCを用いた場合、該R 及びR はシクロヘキシル基であり、DIPCIを用いた場合、該R 及びR はイソプロピル基であり、WSCを用いた場合、該R 及びR はエチル基と3-ジメチルアミノプロピル基の混合物となる。
[0041]
 上記反応により、「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」のグルタミン酸側鎖に対し、適当量の7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン、並びにR として任意の置換基である-N(R )CONH(R )基を結合させた後、適宜、精製工程を経由することにより、本発明に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を合成することができる。精製工程として、陽イオン交換樹脂等により残存アミン成分を除去するとともに、ポリグルタミン酸の側鎖水酸基体を遊離酸型に調製することが好ましい。
[0042]
 一般式(1)で示されるカンプトテシン誘導体を結合したブロック共重合体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で徐々にカンプトテシン誘導体を解離し、放出し続ける性能を有する。例えば、該カンプトテシン誘導体が7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンであって、10位の水酸基によるエステル結合体である場合、これを生体内に投与すると、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンを徐放的に放出させる物性を備える。
 一般的に臨床に用いられている低分子薬剤は、投与直後に薬剤の最高血中濃度を示し、その後比較的速やかに体外に排出される。これに対し、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、有効成分である7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンを徐放的に解離させるため、投与後の血中において有効成分の血中濃度をあまり上げず、持続的な血中濃度推移を示すことを特徴とする製剤である。
[0043]
 また、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、ポリグルタミン酸セグメントが疎水性のカンプトテシン誘導体を具備するため、水溶液中で該ポリグルタミン酸セグメント同士の疎水性相互作用に基づく会合性を有する。一方、該ブロック共重合体におけるポリエチレングリコールセグメントは親水性である。このため、該ブロック共重合体の水溶液は、疎水性のポリグルタミン酸セグメントが会合性凝集体によるコア部を形成し、その周りを親水性のポリエチレングリコールセグメントが覆って外殻をなしてシェル層を形成したコア-シェル型のミセル様会合体を形成する。
[0044]
 該ミセル様会合体は、レーザー光等を用いた光散乱強度測定により会合体形成性を評価することができる。例えば、光散乱強度をそのまま用いて会合性凝集体の形成性の物性値として用いることができる。該ブロック共重合体の水溶液は、通常、光散乱強度値として数万~数10万cpsを示し、会合性凝集体であることが認められる。
 また、光散乱強度から、ポリエチレングリコール等の高分子量標準品を基準とした該会合性凝集体の総分子量を概算することができる。該ブロック共重合体は水溶液において会合凝集体を形成させた場合、該会合凝集体は、光散乱強度分析の結果から、総分子量として数100万以上の会合性凝集体であることを算出することができる。したがって、ミセル様会合体は数10~数100分子の複数の該ブロック共重合体が会合して形成されると考えられる。 
 また、該ブロック共重合体の水溶液は、動的光散乱分析による粒径分析によると、数ナノメートル~数100ナノメートルの粒子径を有するナノ粒子体を形成する物性である。
[0045]
 水溶液中で会合性凝集体としてナノ粒子を形成する前記ブロック共重合体は、生体内に投与されると、血中において前記の会合性ナノ粒子の状態で体内を分布する。高分子量の化合物やナノ粒子状物体は、従来用いられている低分子薬剤と比較して、生体内における薬物動態挙動や、組織分布が大きく異なる。したがって、会合性ナノ粒子を形成する前記カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、ナノ粒子の会合分子量や粒径に応じて体内滞留性や組織内分布が決定され、特に腫瘍組織において滞留して分布することが知られている。このことから、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、従来の低分子カンプトテシン製剤とは薬学的に薬効発現特性及び、副作用発現特性が全く異なり、カンプトテシン誘導体の臨床上の新しい治療方法を提供できる抗腫瘍性製剤である。
 したがって、当該ブロック共重合体は、特定の会合性により形成される所望の会合分子量及び粒径に制御されたナノ粒子であることで、抗腫瘍剤として好ましい体内動態及び組織内分布を得ることが肝要であり、所望の会合分子量及び粒径のナノ粒子形成が、その性能発揮のための重要な品質管理項目として挙げられる。また、該ブロック共重合体からのカンプトテシン誘導体の結合開裂に伴う遊離カンプトテシン誘導体の生成を抑制することが副作用発現の低減に寄与し、同様に重要な品質管理項目として挙げられる。
 当該ブロック共重合体は、会合性凝集体の形成性に係る物理的安定性、並びに遊離カンプトテシン誘導体の生成抑制に係る化学的安定性が、品質管理項目として重要である。
[0046]
 本発明は、前記一般式(1)で示されるブロック共重合体を有効成分として、これにアルギニン、ヒスチジン及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1種以上を添加剤として含有する医薬製剤に関する。本発明は、医薬製剤用添加剤として、アルギニン、ヒスチジン及び塩化ナトリウムを用いることで、医薬製剤の保存下において該ブロック共重合体の会合性凝集体形成性を維持し、及び/又はカンプトテシン誘導体の結合開裂を抑制した物理的及び化学的安定性を確保した医薬製剤を提供することができる。
 用いられるヒスチジン、アルギニン及び塩化ナトリウムは、医薬品製剤として用いられる純度であれば特に制限されることなく用いることができる。ヒスチジン及びアルギニンは、L体であっても良く、D体であって良く、これらの混合物であっても良い。また、ヒスチジン、アルギニン及び塩化ナトリウムは単独で用いても良く、これらを2種以上で混合して用いても良い。
[0047]
 前記添加剤として用いるヒスチジン、アルギニン及び塩化ナトリウムは、一般式(1)で示されるブロック共重合体におけるカンプトテシン誘導体含有量が1質量部に対し、10質量部以上で500質量部以下である事が好ましい。該添加剤が結合カンプトテシン誘導体含有量に対して10倍質量部より低用量であると、該ブロック共重合体の会合性維持及び/又は化学的安定性の効果が十分に得られない懸念がある。一方、安定化効果の点で、該添加剤の使用量に上限は特に制限はないものの、医薬製剤としての用量の妥当性から500質量部程度にすることが好ましい。前記添加剤は、結合カンプトテシン誘導体含有量1質量部に対して、25~100質量部で用いることがより好ましい。
 本発明の医薬製剤は、添加剤として前記ヒスチジン、アルギニン及び塩化ナトリウムを用いることで、遮光下、40℃で4週間保存しても該水溶液で分析される会合体形成率において安定性に優れ、及び/又は結合開裂に伴う遊離カンプトテシン誘導体生成が抑制された医薬製剤を提供することができる。
[0048]
 本発明のカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0~5.0であることが望ましい。
 本発明の医薬製剤の前記水溶液のpHを3.0~5.0にするためには、該医薬製剤にpH調整剤を使用することが挙げられる。pH調整剤としては、医薬品添加剤として用いることができる酸であれば、特に限定されることなく用いることができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、メシル酸、トシル酸、ベシル酸等を挙げることができる。これらの酸性添加剤を主成分として、これにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を含んだ緩衝剤を用いても良い。好ましくは、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸であり、該医薬製剤の水溶液としてpHが3.0~5.0に設定されるよう適当な添加量にて用いることが好ましい。pH調整剤として塩酸、リン酸、クエン酸又は酒石酸を用いpH3.0~5.0に調整された医薬製剤がより好ましい。
[0049]
 本発明の医薬製剤は、注射用又は点滴用の血管内投与される製剤であることが好ましく、静脈内投与できる注射用製剤であることが好ましい。製剤形としては、凍結乾燥製剤、用時に希釈して注射溶液を調製できる注射液製剤、そのまま投与可能な希釈溶液製剤等の製剤型であることが好ましい。本発明の医薬製剤を医薬品として投与する場合には、通常、水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール水溶液、水溶性有機溶媒等を用いて当該医薬製剤の溶液として使用される。水溶性有機溶媒としては、例えばグリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等の単一溶媒又はこれらの混合溶媒を例示することができる。
 本発明の医薬製剤は、一般式(1)で示されるブロック共重合体の会合体形成安定性及び化学的安定性を考慮すると、凍結乾燥製剤であることが好ましい。
[0050]
 本発明の医薬製剤には、通常使用されている薬学的に許容される他の添加剤を含有しても良い。他の添加剤としては、例えば結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料が使用できる。
 本発明の医薬製剤の他の添加剤として、糖類、ポリオール類、ポリエチレングリコール類、他のアミノ酸類、無機塩類等を用いることが好ましい。
 医薬製剤における糖類は、一般に賦形剤としても機能するものであり、本発明における糖類も賦形剤として用いられる。
 糖類としては、アラビノース、イソマルトース、ガラクトサミン、ガラクトース、キシロース、グルコサミン、グルコース、ゲンチオビオース、コージビオース、ショ糖、セロビオース、ソホロース、チオグルコース、ツラノース、デオキシリボース、トレハロース、ニゲロース、パラチノース、フコース、フルクトース、マルトース、マンノース、メリビオース、ラクトース、ラムノース、ラミナリビオースが挙げられる。
 ポリオール類としては、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、メグルミン等が挙げられる。
 ポリエチレングリコール類としては、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール4000等が挙げられる。
 他のアミノ酸類としてはグリシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、リジン塩酸塩等が挙げられる。
 無機塩類としては塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
[0051]
 用いられる他の添加剤としては、医薬品製剤として用いられる純度であれば特に制限されることなく用いることができる。これらを1種のみ用いても良く、これらの混合物として用いても良い。他の添加剤としてはイノシトール、グルコース、トレハロース、フルクトース、マルトース、マンニトール、ラクトース、スクロースを用いることが好ましい。
 本発明の医薬製剤において、任意の他の添加剤を用いる場合、前記ブロック共重合体における結合カンプトテシン誘導体含有量が1質量部に対して0.1~50質量部で用いることが好ましい。より好ましくは0.5~30質量部で用いることが望ましい。1~25質量部で用いることが特に好ましい。
[0052]
 本発明の医薬製剤は、注射剤、点滴剤等の血管内投与される製剤であることが好ましく、凍結乾燥製剤、注射液製剤等の製剤型であることが好ましい。
 凍結乾燥製剤とする場合は、医薬有効成分であるカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を、任意の製剤用添加剤と共に水溶液を調製し、該水溶液のpHを調整された薬液とする。これを好ましくは濾過滅菌を施した後、製剤バイアルに分注し、凍結乾燥することで凍結乾燥製剤を作成することができる。pHの調整には、pH調整剤を用いても良く、有効成分として側鎖が遊離カルボン酸のグルタミン酸ユニットを含む該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を用いて、有効成分自体でpH調整を行っても良い。
 一方、注射液製剤とする場合は、該ブロック共重合体に任意の製剤用添加剤と共に水溶液を調製する。その後、pHを調整した薬液として、これを好ましくは濾過滅菌を施した後、製剤容器に分注することで、注射液製剤を作成することができる。pHの調整には、pH調整剤を用いても良く、有効成分自体でpH調整を行っても良い。
[0053]
 本発明は、前記カンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を有効成分として含有する医薬製剤であり、該ブロック共重合体を、任意の含有量で所定の製剤形に充填された医薬単位製剤に関する発明である。
 医薬製剤を調製する場合、通常、医薬品として許容される添加剤を用い、有効成分の化学安定性を考慮して長期保存に耐用できるような製剤処方が検討される。本発明の前記カンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を有効成分とした医薬製剤の場合、水溶液とした際のナノ粒子形成性が重要品質管理項目であることから、ナノ粒子形成性の安定性も考慮した製剤化の処方を行う必要がある。
[0054]
 本発明の医薬製剤のカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体の会合体形成性は、例えば、レーザー散乱光強度を計測できる測定機器により、その散乱光強度を指標に該会合体の形成性を評価することができる。通常、本発明の医薬製剤は静的光散乱強度の測定方法により散乱強度値として数万~数10万cpsの測定値が得られ、会合性凝集体であることが認められる。
 散乱光強度分析の測定機器としては、例えば、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS-8000DLを用いて測定することができる。
[0055]
 本発明の医薬製剤の安定性の評価方法として、該医薬製剤を遮光下、40℃で4週間保存した場合において、会合体形成性の変化率を指標とすることができる。光散乱強度分析を用いる評価方法において、光散乱強度を保存試験前の初期値と比較することにより会合体の形成変化率として評価することができる。当該医薬製剤は、遮光下、40℃で4週間保存した場合において、会合体分子量を指標とした会合体形成変化比率が10%以下である。すなわち、製剤保存中に会合体形成性が著しく低下して、当初の会合性ナノ粒子が形成できない場合、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の有効性が低下する問題が生じる。このため、医薬品製剤として、保存状態下で会合体形成性が低下しない製剤であることが望ましい。前記試験方法において、会合体分子量を指標とした会合体形成変化率が10%以下であることが好ましい。なお、会合体分子量の変化率は、イニシャル値に対する40℃で4週間保存した後の値の変化率の絶対値で表す。
[0056]
 また、本発明の医薬製剤の安定性の評価方法として、該医薬製剤を遮光下、40℃で4週間保存した場合において、グルタミン酸側鎖に結合したカンプトテシン誘導体が開裂した遊離カンプトテシン誘導体の生成量を指標とすることができる。遊離カンプトテシン誘導体生成量は、HPLC法により定量分析することができる。遊離カンプトテシン誘導体は有効成分として作用するため、その生成量が多いとブロック共重合体に基づく薬物動態が得られず、所望の薬効が発揮されない懸念がある。このため、遊離カンプトテシン誘導体の生成量の抑制は、当該医薬品の重要な管理項目である。
 当該ブロック共重合体のカンプトテシン誘導体の遊離を指標としたカンプトテシン誘導体遊離率変化比率を評価した場合、該医薬製剤を遮光下、40℃で4週間保存した場合において、該ブロック共重合体のカンプトテシン誘導体結合変化比率が7.0倍以下であることが好ましく,5.0倍以下であることがより好ましい。なお、前記カンプトテシン誘導体遊離比率はイニシャル時のカンプトテシン誘導体遊離率に対する40℃で4週間保存した後のカンプトテシン誘導体遊離率の比率で表す。
[0057]
 本発明の医薬製剤は、結合させたカンプトテシン誘導体を有効成分とする医薬品として利用できる。特に癌化学療法のための抗腫瘍剤として用いることが好ましい。
 本発明の医薬製剤の用途は、該カンプトテシン誘導体が治療効果を奏する癌腫であれば特に限定されないが、具体的には小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、乳癌、有棘細胞癌、悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍、膵臓癌、多発性骨髄腫等が挙げられる。
 本発明の医薬製剤の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更されうるが、非経口的に、通常、成人1日当たり、該カンプトテシン誘導体として0.01~500mg/m (体表面積)、好ましくは0.1~250mg/m を投与する。注射による投与は、静脈、動脈、患部(例えば、腫瘍組織)等に行われることが好ましい。
実施例
[0058]
[合成例1]
 一般式(1)においてR =メチル基、R =アセチル基、A=トリメチレン基、R =R =イソプロピル基、d+e=24、t=273、d+eに対するdの割合が44%、eの割合が56%(R が水酸基であるグルタミン酸ユニット含有率が30%、-N(R )CONH(R )であるグルタミン酸ユニット含有率が26%)である7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン結合ブロック共重合体(化合物1)の合成。
 国際公開WO2004/39869号の記載に基づき化合物1を合成した。すなわち、メトキシポリエチレングリコール-ポリグルタミン酸ブロック共重合体(分子量12キロダルトンの片末端がメチル基、他片末端がアミノプロピル基であるメトキシポリエチレングリコール構造部分とN末端がアセチル基で修飾された重合数が24のポリグルタミン酸構造部分であり、結合基がトリメチレン基であるブロック共重合体に、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(EHC)をジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いて反応させ、次いでイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H )にて処理し、凍結乾燥することで化合物1を得た。
 得られた化合物1を、水酸化ナトリウム水溶液を用い、室温にて10分間加水分解した後、遊離するEHCをHPLC法により定量分析してEHC含量を求めたところ、21.0質量%であった。
[0059]
[実施例1]
 注射用水を用いて、化合物1をEHC含量として1mg/mL、アルギニン含量として50mg/mLの薬液を調製した。その液にリン酸を用いてpHを4に調整した後、滅菌濾過し、ガラスバイアルに3mLずつ充填して凍結乾燥した。その後、ゴム栓にて密栓し、実施例1とした。
[0060]
[実施例2]
 実施例1の調製方法において、アルギニンに換わりヒスチジンを含量50mg/mLとして、それ以外は同様の操作により薬液を調製し、凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤をゴム栓にて密栓し、実施例2とした。
[0061]
[実施例3]
 実施例1の調製方法において、アルギニンに換わり塩化ナトリウムを含量50mg/mLとして、それ以外は同様の操作により薬液を調製し、凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤をゴム栓にて密栓し、実施例3とした。
[0062]
[比較例1]
 注射用水を用いて、化合物1をEHC含量として1mg/mLの薬液を調製した。その液にリン酸を用いてpHを4に調整した後、滅菌濾過し、ガラスバイアルに3mLずつ充填して凍結乾燥した。その後、ゴム栓にて密栓し、比較例1とした。
[0063]
[比較例2]
 実施例1の調製方法において、アルギニンに換えてグリシンを含量50mg/mLとして、それ以外は同様の操作により薬液を調製し、凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤をゴム栓にて密栓し、比較例2とした。
[0064]
[比較例3]
 実施例1の調製方法において、アルギニンに換えてプロリンを含量50mg/mLとして、それ以外は同様の操作により薬液を調製し、凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤をゴム栓にて密栓し、比較例3とした。
[0065]
[比較例4]
 実施例1の調製方法において、アルギニンに換えてポリエチレングリコール4000を含量50mg/mLとして、それ以外は同様の操作により薬液を調製し、凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤をゴム栓にて密栓し、比較例4とした。
[0066]
試験例1:40℃/4週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の光散乱強度変化
 実施例1~3及び比較例1~4の凍結乾燥直後の製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の散乱光量を静的光散乱法(SLS法)により測定した。これをイニシャル時の散乱光量とした。測定機器及び測定条件を以下に示した。
 別に、実施例1~3及び比較例1~4の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で4週間保存した。その後、各実施例及び比較例に注射用水3mLを加え,溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の散乱光量を測定した。
 イニシャル時の溶液pH及び散乱光量、並びに40℃/4週間保存後の溶液pH及び散乱光量の測定結果と、それぞれの試料の散乱光量変化率を表1にまとめた。
[0067]
 測定機器及び測定条件
 光散乱光度計:DLS-8000DL(大塚電子社製)
 コントラローラ:LS-81(大塚電子社製)
ポンプコントラローラ:LS-82(大塚電子社製)
 高感度示差屈折計:DRM-3000(大塚電子社製)
 循環恒温槽:LAUDA E200
 波長:632.8nm(He-Ne)
 角度:90°
 Ph1:OPEN
 Ph2:SLIT
 ND Filter:10%
 ダストカット設定:10
[0068]
[表1]


[0069]
 試料溶液の静的光散乱測定は、それぞれの水溶液中のブロック共重合体(化合物1)が自己会合して会合性凝集体を形成していることを計測するものであり、その散乱光量はその会合性凝集体の形成程度を示すものである。
 試験例1に従い各サンプルを40℃/4週間保存した後に各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の散乱光量を測定した結果、実施例1~3は溶液中の40℃/4週間保存の保存を経過しても散乱光量に変化が少なく、会合性凝集体の形成性に変化が生じていないことが明らかとなった。一方、比較例1~4は、40℃/4週間の保存後において、散乱光量が13.1~29.6%と変化しており、会合性凝集体の形成性に変化が生じていることが示唆される。
 これより、ブロック共重合体(化合物1)を有効成分とする医薬製剤において、アルギニン、ヒスチジン又は塩化ナトリウムを添加剤として用いることで、製剤保存下において有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性に変化が少なく安定な製剤を調製できることが認められた。
[0070]
試験例2;製剤安定性試験(カンプトテシン誘導体遊離比率)
 実施例1~3及び比較例1~4の凍結乾燥製剤を遮光下、40℃で4週間保存した。その後、各医薬組成物の遊離EHCをHPLC法により定量分析し、製剤安定性を評価した。結果を表2にまとめた。なお遊離EHCの度合いは40℃で4週間保存した後の遊離EHC量をイニシャル時の値で割った遊離EHC変化比率として表した。測定結果を表2にまとめた。
[0071]
[表2]


[0072]
 試験例2の結果、実施例1~3は遊離EHCの生成が2.41~4.38倍であった。これに対し、比較例1~4は遊離EHCの生成が7.24~30.67倍と多く、ブロック共重合体に結合したEHCが、保存条件下において開裂して遊離していることが示された。これより、ブロック共重合体(化合物1)を有効成分とする医薬製剤において、アルギニン、ヒスチジン又は塩化ナトリウムを添加剤として用いることで、EHC解離を抑制して化学的に安定な高分子化カンプトテシン誘導体を含む医薬製剤を提供できることが示された。
[0073]
 試験例1及び2の結果から、カンプトテシン誘導体を結合させたブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤において、アルギニン、ヒスチジン又は塩化ナトリウムを添加剤として用いることで、会合性凝集体形成性及び化学的安定性に優れた医薬製剤を提供できることが示された。

請求の範囲

[請求項1]
 ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体、並びにアルギニン、ヒスチジン及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する医薬製剤であって、
前記ブロック共重合体が、一般式(1)
[化1]


[式中、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1~C6)アルキレン基であり、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R は水酸基及び/または-N(R )CONH(R )を示し、前記R 及び前記R は同一でも異なっていてもよく三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1~C8)アルキル基を示し、R は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、R は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1~C6)アルキル基を示し、tは45~450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6~60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1~100%、eの割合が0~99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR 基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体である、医薬製剤。
[請求項2]
 前記医薬製剤が凍結乾燥製剤である請求項1に記載の医薬製剤。