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1. (WO2017138444) WORKING VEHICLE
Document

明 細 書

発明の名称 作業車両

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014  

発明の効果

0015   0016   0017   0018   0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151  

符号の説明

0152  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24  

明 細 書

発明の名称 : 作業車両

技術分野

[0001]
 本願発明は、例えばトラクタやコンバイン等の農作業機やクレーン車やバックフォー等の特殊作業機のような作業車両に関するものである。

背景技術

[0002]
 従来、トラクタ、コンバインといった農作業車やクローラクレーンなどの建設機械といった作業車両の中には、エンジンからの動力が伝達される2つの油圧式無段変速機(HST)を備えており、2つの油圧式無段変速機それぞれからエンジン出力に基づき直進動力と旋回動力を出力させるものがある。本願出願人は以前に、2つの油圧式無段変速機それぞれから出力させた直進動力と旋回動力を左右の遊星ギヤ機構で合成させることで旋回可能とした作業車両を、特許文献1において提案している。
[0003]
 また、従来の作業車両の中には、エンジンから動力伝達されるミッションケースに、油圧式無段変速機よりも伝達効率の高い油圧機械式変速機(HMT)を備えたものがある。本願出願人は以前に、油圧ポンプの入力軸と油圧モータの出力軸とが同心状に位置するように油圧ポンプと油圧モータとを直列に配置した直列型(インライン型)の油圧機械式変速機を、特許文献2において提案している。
[0004]
 直列型の油圧機械式変速機では、エンジンから動力伝達される入力軸に、出力軸を相対回転可能に被嵌している。更に、入力軸には、油圧ポンプとシリンダブロックと油圧モータとを被嵌している。シリンダブロックは単独で油圧ポンプ用と油圧モータ用とを兼ねていて、油圧モータから出力軸に動力伝達される。このため、直列型の油圧機械変速機では、一般的な油圧機械式変速機とは異なり、遊星ギヤ機構を介在させずに油圧による変速動力とエンジンの動力とを合成して出力でき、高い動力伝達効率が得られるという利点を有している。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2002-059753号公報
特許文献2 : 特開2005-083497号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 ところで、特許文献2における油圧機械式変速機を中型又は大型の作業車両に搭載するには、油圧機械式変速機の高出力化を図る必要がある。油圧機械式変速機の高出力化のためには、例えば油圧機械式変速機を大容量化することが挙げられる。しかし、単に油圧機械式変速機を大容量化しただけでは、油圧機械式変速機自体が大型化して製造コストが嵩むだけでなく、動力伝達効率(特に低負荷域での効率)が犠牲になるという問題があった。
[0007]
 また、特許文献1における機構を大型の作業車両に搭載する場合においても、油圧式無段変速機の高出力化に伴って機構が大型化するため、作業車両重量が嵩むだけでなく、動力伝達効率が油圧機械式変速機に比べて低いことから、直進方向の変速域(主変速域)が制限されてしまう。更に、作業車両が信地旋回を実行した際に、左右の走行部が地面から受ける摩擦力が互いに逆方向となるため、信地旋回を長時間継続するなど、オペレータの予期せぬ動作となる場合がある。
[0008]
 そして、走行動作を制御するコントローラは、主変速、前後進、旋回それぞれの操作具からの信号を統合して、2つの油圧式無段変速機の斜板角度を制御する必要があり、複雑な制御フローをコントローラで実行しなければならない。そのため、コントローラは、走行動作の制御フローにおける演算負荷が高くなることから、オペレータの操作性に違和感を生じることがある。

課題を解決するための手段

[0009]
 本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した作業車両を提供することを技術的課題としている。
[0010]
 本願発明の作業車両は、走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行部を駆動する作業車両において、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力とを連動的に制御する制御部と、前記直進系伝動経路からの動力伝達を継断する動力継断機構とを備えており、前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断された場合、前記旋回系伝動経路の出力を制限して、前記左右の走行部による相互の逆転動作を禁止するものである。
[0011]
 上記作業車両において、前記直進系伝動経路の出力を指定する変速用操作具と、前記直進系伝動経路の出力を検出する検出器とを備え、前記制御部は、前記変速用操作具からの指令値及び前記検出器からの実測値を択一的に選択して前記旋回系伝動経路の出力を設定するものであって、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断された場合、前記検出器からの実測値に基づいて、前記旋回系伝動経路の出力を設定するものとしてもよい。
[0012]
 上記作業車両において、前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断されている際、前記走行部の一方の進行方向が前記走行機体の進行方向と逆方向となることを認識したとき、前記検出器からの実測値に乗算する係数を制限することで前記旋回系伝動経路の出力を制限するものとしてもよい。
[0013]
 上記作業車両において、回転操作可能な操縦ハンドルを備え、前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断されている際、前記操縦ハンドルの操舵角が所定角を超えたとき、前記検出器からの実測値に乗算する係数を制限することで前記旋回系伝動経路の出力を制限するものとしてもよい。
[0014]
 上記作業車両において、前記制御部が、前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部とで構成されており、前記第1制御部で設定された前記直進系伝動経路の出力を前記第2制御部が受けることで、前記旋回系伝動経路の出力を設定するものとしてもよい。

発明の効果

[0015]
 本願発明によると、動力継断機構により直進系伝動経路からの動力伝達が遮断された場合、左右の走行部による相互の逆転動作を禁止するため、直進系伝動経路が慣性で動作している際に、旋回系伝動経路からの差動出力が制限される。従って、直進系伝動経路の出力側に制動作用が作用していない場合であっても、走行機体の走行状態に最適な旋回系伝動経路の出力を常に設定することができる。これにより、直進系伝動経路の出力側に制動作用が作用していない場合に、走行機体が連続して信地旋回を実行することを防止するとともに、走行部に対する地面からの摩擦力などの反力による制動作用を作用させて、安全に走行できる。
[0016]
 本願発明によると、変速用操作具からの指令値及び検出器からの実測値を択一的に選択して旋回系伝動経路の出力を設定するように構成することで、走行機体の走行状態に最適な旋回系伝動経路の出力を常に設定することができる。従って、オペレータは、走行機体の旋回時においても安定して操縦することができ、その操縦性を向上させるとともに、安定した運転動作を実行できる。
[0017]
 本願発明によると、動力継断機構が切れているときには、実測値にて旋回系伝動経路の出力を設定するため、変速用操作具に基づく指令値と実測値とが大きく異なる場合でも、現状の走行機体の走行状態に応じた旋回中心及び旋回半径で旋回できる。従って、オペレータは違和感なく走行機体を操作でき、オペレータに円滑な操縦性を寄与できる。また、オペレータは、走行機体の旋回時においても安定して操縦することができ、その操縦性を向上させるとともに、安定した運転動作を実行できる。
[0018]
 本願発明によると、操縦ハンドルの切れ角に基づいて旋回時の左右の走行部の速度比を決定するものとすることで、操縦ハンドルの操作量に合わせて走行機体を旋回させることができ、操作性の向上に寄与できる。また、直進系伝動経路の出力と旋回系伝動経路の出力とを連動させることから、旋回時の車速がオペレータの操縦感覚に近いものとなるだけでなく、走行機体の挙動が安定化できる。
[0019]
 本願発明によると、第1及び第2制御部それぞれで分散して制御できるため、それぞれの演算量を低減でき、応答性の良い走行制御を実行できる。第2制御部においては、第1制御部からの出力を受けて、旋回系伝動経路の出力を設定するため、その演算が複雑化することなく、より円滑に走行制御が実行されることとなる。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] トラクタの左側面図である。
[図2] トラクタの右側面図である。
[図3] トラクタの平面図である。
[図4] 走行機体の右側面図である。
[図5] 走行機体の左側面図である。
[図6] 走行機体の平面図である。
[図7] 操縦座席部の平面説明図である。
[図8] 操縦ハンドル周辺の構成を示す斜視図である。
[図9] ブレーキ機構とブレーキペダルの連結構造を示す斜視図である。
[図10] 油圧機械式変速機の作動油吐出量と車速との関係を示す説明図である。
[図11] トラクタの動力伝達系統のスケルトン図である。
[図12] トラクタの油圧回路図である。
[図13] トラクタの制御系統の構成を示すブロック図である。
[図14] トラクタの走行制御系統の構成を示すブロック説明図である。
[図15] 減速率テーブル及び旋回/直進比テーブルに記憶されたパラメータの関係を示す説明図である。
[図16] トラクタの走行制御動作を示すフロー図である。
[図17] スピンターンモードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。
[図18] ブレーキターンモードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。
[図19] 緩旋回ターンモードにおける操縦ハンドルの操舵角とトラクタの車速との関係を示す説明図である。
[図20] 旋回目標値の設定動作を示すフロー図である。
[図21] 操向感度設定制御の動作を示すフロー図である。
[図22] 操向感度設定制御に基づいて設定される減速率と旋回/直進比の関係を示す図である。
[図23] 旋回目標値の設定動作の別例(第2例)を示すフロー図である。
[図24] 旋回目標値の設定動作の別例(第3例)を示すフロー図である。

発明を実施するための形態

[0021]
 以下に、本願発明を具体化した実施形態について、農作業用トラクタを図面に基づき説明する。図1~図6に示す如く、トラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の走行クローラ3で支持されている。走行機体2の前部にディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)を搭載し、走行クローラ3をエンジン5で駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン7が設置される。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、走行クローラ3を操向操作する操縦ハンドル9とが配置されている。キャビン7の左右外側には、オペレータが乗降するステップ10が設けられている。キャビン7の左右側方下側に、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられており、燃料タンク11は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。キャビン7の左側方には、燃料タンク11前方に電力供給するバッテリ817が設けられており、燃料タンク11と共に左のリヤフェンダー21によって覆われている。
[0022]
 走行機体2は、前バンパー12及び旋回用ミッションケース(ドライブアクスル)13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。旋回用ミッションケース13の左右両端側から外向きに、車軸16を回転可能に突出させており、車軸16を覆う車軸ケース90を旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けている。旋回用ミッションケース13の左右両端側に車軸16を介して駆動スプロケット62を取り付けている。機体フレーム15の後部は、エンジン5からの回転動力を適宜変速して駆動スプロケット62に伝達するための直進用ミッションケース17と連結している。
[0023]
 図1~図4に示す如く、走行機体2の下面側に左右のトラックフレーム61を配置する。トラックフレーム61は前後方向に延設されて左右一対設けられて、エンジンフレーム14及び機体フレーム15の両外側に位置している。左右のトラックフレーム61は左右方向に延設するロアフレーム67によりエンジンフレーム14及び機体フレーム15と連結される。左右のトラックフレーム61それぞれの前端は、旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けた車軸ケース90と連結している。左右のトラックフレーム61それぞれの外側には、オペレータが乗降するステップ10aが設けられている。
[0024]
 ロアフレーム67の左右中央部は、連結ブラケット72を介して、エンジンフレーム14の後部側面に固設されている。左右のトラックフレーム61の前後中途部分に、左右方向に延設させた梁フレーム68の左右両端が連結されている。また、梁フレーム68の中央は、前後方向に設けた補強フレーム70を介してロアフレーム67中央と連結されている。左右のトラックフレーム61後部で内方向に突設したリヤビーム73を、直進用ミッションケース17の左右側面に固設したリヤハウジング74に連結して、トラックフレーム61後部を直進用ミッションケース17左右側面で固定させる。
[0025]
 トラックフレーム61には、走行クローラ3にエンジン5の動力を伝える駆動スプロケット62と、走行クローラ3のテンションを維持するテンションローラ63と、走行クローラ3の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ64と、走行クローラ3の非接地側を保持する中間ローラ65とを設けている。駆動スプロケット62によって走行クローラ3の前側を支持し、テンションローラ63によって走行クローラ3の後側を支持し、トラックローラ64によって走行クローラ3の接地側を支持し、中間ローラ65によって走行クローラ3の非接地側を支持する。テンションローラ63はトラックフレーム61の後端より後方に伸縮可能に構成したテンションフレーム69の後端に回転自在に支持される。トラックローラ64はトラックフレーム61の下部に前後揺動自在に支持したイコライザフレーム71の前後に回転自在に支持される。
[0026]
 また、トラクタ1の前部にはフロントドーザ80を装着可能に構成している。左右一対のドーザブラケット81が、エンジンフレーム14の前部側面と車軸ケース90とロアフレーム67に固定されており、フロントドーザ80の平面視U字状(コ字状)の支持アーム83が左右のドーザブラケット81の外側(機外側)に着脱可能に枢支される。左右ドーザブラケット81は、前端内側(機内側)が左右エンジンフレーム14側面に連結されており、後端下側がロアフレーム67中途部の上面に連結されており、中途部が車軸ケース90中途部を上下で狭持するように連結されている。ドーザブラケット81は、エンジンフレーム14と車軸ケース90とロアフレーム67の3体に強固に固定されることで、フロントドーザ80による重作業に耐えられる強度を確保できる。
[0027]
 直進用ミッションケース17の後部には、例えばロータリ耕耘機などの対地作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取付けている。前記対地作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構111を介して直進用ミッションケース17の後部に連結される。直進用ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
[0028]
 図4~図6に示す如く、エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a後端には、フライホイル26を直結するように取付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28とを連結している。直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した直進用出力軸30には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸31を介して、旋回用ミッションケース13から後向きに突出した直進用入力カウンタ軸508を連結している。エンジン5の前側面から前向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a前端には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸711を介して、旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出した旋回用入力カウンタ軸712を連結している。
[0029]
 図1~図6に示すように、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、直進用ミッションケース17の上面蓋体にリフト支点軸を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
[0030]
 次に、図7~図9等を参照しながら、キャビン7内部の構造を説明する。キャビン7内における操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、キャビン7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸921の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。そして、ステアリングコラム32内のハンドル軸921下端に、操縦ハンドル9の操舵角度を検出する操舵角センサ821を備えた操舵角(ハンドル切れ角)検出機構880を連結している。
[0031]
 ステアリングコラム32の右側には、走行機体2を制動操作するためのブレーキペダル35を配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用の油圧クラッチ537,539,541を遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。ステアリングコラム32の背面側には、ブレーキペダル35を踏み込み位置に保持するための駐車ブレーキレバー43が配置されている。
[0032]
 ステアリングコラム32の左側で前後進切換レバー36の下方には、前後進切換レバー36に沿って延びる誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。接触防止具である誤操作防止体38を前後進切換レバー36下方に配置することによって、トラクタ1に乗降する際に、オペレータが前後進切換レバー36に不用意に接触するのを防止している。ダッシュボード33の背面上部側には、液晶パネルを内蔵した操作表示盤39を設けている。
[0033]
 キャビン7内にある操縦座席8前方の床板40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度または車速などを制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、直進用ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構の出力範囲を切換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。
[0034]
 操縦座席8と右サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、操縦座席8とは別体に構成すると共に、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機といった対地作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。また、本実施形態においては、主変速レバー50を前傾操作したとき、走行機体2の車速が増加する一方、主変速レバー50を後傾操作したとき、走行機体2の車速が低下する。更に、アームレスト49は、主変速レバー50の前後傾動を検出するポテンショメータ(可変抵抗器)型の主変速センサ822(図13参照)を備える。
[0035]
 右サイドコラム42には、前側から順に、タッチパネル機能を有してトラクタ1各部への指令操作が可能な操作用モニタ55と、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、直進用ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ430を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)と、リヤハウジング74前面に配置する複動バルブ機構431を切換操作するための単複動切換スイッチ56を配置している。ここで、油圧外部取出バルブ430は、トラクタ1に後付けされるフロントローダといった別の作業機の油圧機器に作動油を供給制御するためのものである。複動バルブ機構431は、直進用ミッションケース17の上面側に配置する昇降バルブ機構652とともに動作することで油圧リフトシリンダ117を複動式で作動させるためのものである。
[0036]
 次に、主として図8及び図9を参照しながら、ブレーキペダル35とブレーキ機構751との関係について説明する。ステアリングコラム32前方において、ブレーキペダル軸755を軸支するブレーキペダル支持ブラケット916がボード支持板(エアカットプレート)901背面(操縦座席8側)に固定されている。ブレーキペダル軸755にはブレーキペダル35の基端ボス部35aを被嵌しており、ブレーキペダル35の基端ボス部35aをブレーキペダル軸755と一体回動するように連結している。
[0037]
 ブレーキペダル軸755の両端部には、前向きに突出するペダル軸アーム756を固着しており、ペダル軸アーム756はブレーキペダル軸755と共に回動する。なお、ブレーキペダル軸755には、クラッチペダル37の基端ボス部も回動可能に被嵌している。そして、ブレーキペダル軸755の左右両端それぞれに、クラッチ位置センサ829(図13参照)及びブレーキ位置センサ828を固定している。また、ブレーキペダル35のペダルアーム35bに対向する位置にブレーキスイッチ851を配置する一方、クラッチペダル37のペダルアーム37bに対向する位置にクラッチスイッチ852(図13参照)を配置する。
[0038]
 ボード支持板(エアカットプレート)901の左右下部側には、左右一対で横向きのブレーキ操作軸757を支持させている。左のブレーキ操作軸757には、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結するリンクボス体758を回動可能に被嵌している。リンクボス体758外周面に突設させたリンクアーム759に、左側ペダル軸アーム756と連結した上下長手のリンクロッド762の下端と、ブレーキ機構751の制動動作を段階的なものとする二段階伸縮リンク体763の上端とが連結されている。二段階伸縮リンク体763の下端が、ブレーキロッド766後端のリンクアーム767の先端と連結している。ブレーキロッド766は、エンジンフレーム14に固定されたリンク支持ブラケット764,765に支持されるとともに前後方向に延設されている。そして、ブレーキロッド766前端のリンクアーム768が、連結プレート753を介して、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。
[0039]
 すなわち、ブレーキペダル軸755左端は、リンクロッド762、二段階伸縮リンク体763、及びブレーキロッド766を介して、ブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。従って、ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキペダル軸755が回動することで、制動アーム752を回動させることができ、ブレーキ機構751による制動動作を実行できる。このとき、二段階伸縮リンク体763が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
[0040]
 右のブレーキ操作軸757には、リンクアーム761を有するリンクボス体760を回動可能に被嵌している。右側ペダル軸アーム756に、ブレーキペダル35への踏み込みを段階的なものとする二段階伸縮リンク体769の上端が連結され、リンクボス体760外周面に突設させたリンクアーム761に、二段階伸縮リンク体769の下端が連結されている。ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキ操作軸757を回動させたとき、二段階伸縮リンク体769が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
[0041]
 駐車ブレーキレバー43は、駐車ブレーキアーム770を介して係止部材771の一端と連結している。側面視弓形の係止部材771は、ブレーキペダル支持ブラケット916に軸止されている。ブレーキペダル35のペダルアーム35bの左側面には、係止部材771の係止爪に係合させる係止板775を設けている。これにより、ブレーキペダル35を踏み込んだ状態で駐車ブレーキレバー43を操作することで、係止部材771を係止板775に係止させて、トラクタ1の制動状態(駐車状態)を維持させる。
[0042]
 次に、主として図4~図6、図10、及び図11を参照しながら、直進用ミッションケース17及び旋回用ミッションケース13の内部構造とトラクタ1の動力伝達系統について説明する。直進用ミッションケース17の前室内には、直進用の油圧機械式無段変速機500と、後述する前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503とを配置している。直進用ミッションケース17の中間室内には、油圧機械式無段変速機500からの回転動力を正転又は逆転方向に切り換える前後進切換機構501を配置している。直進用ミッションケース17の後室内には、エンジン5からの回転動力を適宜変速してPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。クリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503は、前後進切換機構501経由の変速出力を多段変速する走行変速ギヤ機構に相当するものである。直進用ミッションケース17の右外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取り付けている。
[0043]
 エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸5aにはフライホイル26を直結している。フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27に、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28を連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由して直進用ミッションケース17の入力カウンタ軸28に伝達され、油圧機械式無段変速機500とクリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503とによって適宜変速される。クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した変速動力は、直進用出力軸30、動力伝達軸31及び直進用入力カウンタ軸508を介して、旋回用ミッションケース13内のギヤ機構に伝達される。
[0044]
 直進用の油圧機械式無段変速機(HMT)500は、主変速入力軸511に主変速出力軸512を同心状に配置し且つ油圧ポンプ部521とシリンダブロックと油圧モータ部522とを直列状に配置した直列型(インライン型)のものである。入力カウンタ軸28の後端側には主変速入力ギヤ513を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の後端側には、主変速入力ギヤ513に常時噛み合う入力伝達ギヤ514を固着している。従って、入力カウンタ軸28の回転動力は、主変速入力ギヤ513、入力伝達ギヤ514及び主変速入力軸511を介して油圧機械式無段変速機500に伝達される。主変速出力軸512には、走行出力用として、主変速高速ギヤ516、主変速逆転ギヤ517及び主変速低速ギヤ515を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の入力側と主変速出力軸512の出力側とは、同一側(油圧機械式無段変速機500から見ていずれも後方側)に位置している。
[0045]
 油圧機械式無段変速機500は、可変容量形の油圧ポンプ部521と、当該油圧ポンプ部521から吐出する高圧の作動油によって作動する定容量形の油圧モータ部522とを備えている。油圧ポンプ部521には、主変速入力軸511の軸線に対して傾斜角を変更可能して作動油供給量を調節するポンプ斜板523を設けている。ポンプ斜板523には、主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角を変更調節する主変速油圧シリンダ524を連動連結している。実施形態では、油圧機械式無段変速機500に主変速油圧シリンダ524を組み付けていて、一つの部材としてユニット化している。
[0046]
 主変速レバー50の操作量に比例して主変速油圧シリンダ524を駆動させると、これに伴い主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角が変更される。実施形態のポンプ斜板523は、傾斜略ゼロ(ゼロを含むその前後)の中立角度を挟んで一方(正)の最大傾斜角度と他方(負)の最大傾斜角度との間の範囲で角度調節可能であり、且つ、走行機体2の車速が最低のときにいずれか一方に傾斜した角度(この場合は負で且つ最大付近の傾斜角度)に設定している。
[0047]
 ポンプ斜板523の傾斜角が略ゼロ(中立角度)のときは、油圧ポンプ部521では入力側プランジャ群が押し引きされない。シリンダブロックが主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するものの、油圧ポンプ部521からの作動油供給がないため、シリンダブロックの出力側プランジャ群ひいては油圧モータ部522が駆動せず、主変速入力軸511と略同一回転速度にて主変速出力軸512が回転する。
[0048]
 次に、前後進切換機構501を介して実行する前進と後進との切換構造について説明する。入力カウンタ軸28の後部側に、前進高速ギヤ機構である遊星ギヤ機構526と、前進低速ギヤ機構である低速ギヤ対525とを配置している。遊星ギヤ機構526は、入力カウンタ軸28に回転可能に軸支した入力側伝動ギヤ529と一体的に回転するサンギヤ531、複数の遊星ギヤ533を同一半径上に回転可能に軸支したキャリア532、並びに内周面に内歯を有するリングギヤ534を備えている。サンギヤ531及びリングギヤ534は入力カウンタ軸28に回転可能に被嵌している。キャリア532は入力カウンタ軸28に相対回転不能に被嵌している。サンギヤ531はキャリア532の各遊星ギヤ533と半径内側から噛み合っている。また、リングギヤ534の内歯は各遊星ギヤ533と半径外側から噛み合っている。入力カウンタ軸28には、リングギヤ534と一体回転する出力側伝動ギヤ530も回転可能に軸支している。低速ギヤ対525を構成する入力側低速ギヤ527と出力側低速ギヤ528とは一体構造になっていて、入力カウンタ軸28のうち遊星ギヤ機構526と主変速入力ギヤ513との間に回転可能に軸支している。
[0049]
 直進用ミッションケース17には、入力カウンタ軸28、主変速入力軸511及び主変速出力軸512と平行状に延びる走行中継軸535並びに走行伝動軸536を配置している。伝達軸としての走行中継軸535に前後進切換機構501を設けている。すなわち、走行中継軸535には、湿式多板型の前進高速油圧クラッチ539で連結される前進高速ギヤ540と、湿式多板型の後進油圧クラッチ541で連結される後進ギヤ542と、湿式多板型の前進低速油圧クラッチ537で連結される前進低速ギヤ538とを被嵌している。走行中継軸535のうち前進高速油圧クラッチ539と後進ギヤ542との間には、走行中継ギヤ543を相対回転不能に被嵌している。走行伝動軸536には、走行中継ギヤ543と常時噛み合う走行伝動ギヤ544を相対回転不能に被嵌している。主変速出力軸512の主変速低速ギヤ515が入力カウンタ軸28側にある低速ギヤ対525の入力側低速ギヤ527と常時噛み合い、出力側低速ギヤ528が前進低速ギヤ538と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速高速ギヤ516が入力カウンタ軸28側にある遊星ギヤ機構526の入力側伝動ギヤ529と常時噛み合い、出力側伝動ギヤ530が前進高速ギヤ540と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速逆転ギヤ517が後進ギヤ542と常時噛み合っている。
[0050]
 前後進切換レバー36を前進側に操作すると、前進低速油圧クラッチ537又は前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進低速又は前進高速の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。前後進切換レバー36を後進側に操作すると、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
[0051]
 なお、前後進切換レバー36の前進側操作によって、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のどちらが動力接続状態になるかは、主変速レバー50の操作量に応じて決定される。また、前後進切換レバー36が中立位置のときは、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略ゼロ(主クラッチ切りの状態)になる。ここで、図10は、油圧機械式無段変速機500の作動油吐出量(ポンプ斜板523の傾斜角度)とトラクタ1の車速との関係を示している。実施形態において、前後進切換レバー36の操作状態に拘らず主変速レバー50を中立操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)となり(白抜き丸印参照)、主変速出力軸512や走行中継軸535は最低速回転状態(略ゼロ)になる。ひいてはトラクタ1の車速が略ゼロになる。
[0052]
 前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から中間速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し(白抜き四角印参照)、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、前進低速油圧クラッチ537が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525を介して走行中継軸535に、前進低速の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から前進中間速回転状態まで変化する(前進低速域FL参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
[0053]
 前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中間速から最高速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によって正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)からゼロを介して負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)まで変化し、ポンプ斜板523が油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を高速から略ゼロまで減速させる。このとき、前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進高速の回転動力が伝達される。すなわち、遊星ギヤ機構526においてエンジン5からの動力と主変速出力軸512への減速動力とが合成されてから、当該合成動力によって走行中継軸535が前進中間速回転状態から前進最高速回転状態まで変化する(前進高速域FH参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。走行機体2は最高速となる。
[0054]
 前後進切換レバー36を後進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から後進高速回転状態まで変化する(後進域R参照)。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
[0055]
 次に、走行変速ギヤ機構であるクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を介して実行する超低速と低速と高速との切換構造について説明する。直進用ミッションケース17内には、前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503と、走行伝動軸536と同軸状に延びる走行カウンタ軸545と、走行カウンタ軸545と平行状に延びる副変速軸546とを配置している。
[0056]
 走行カウンタ軸545の後部側には伝達ギヤ547とクリープギヤ548とを設けている。伝達ギヤ547は、走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌すると共に、走行伝動軸536に一体回転するように連結している。クリープギヤ548は走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌している。走行カウンタ軸545のうち伝達ギヤ547とクリープギヤ548との間には、クリープシフタ549を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。超低速レバー44を入り切り操作することによって、クリープシフタ549がスライド移動して、伝達ギヤ547及びクリープギヤ548が走行カウンタ軸545に択一的に連結される。副変速軸546のうち前室内の箇所には、減速ギヤ対550を回転可能に被嵌している。減速ギヤ対550を構成する入力側減速ギヤ551と出力側減速ギヤ552とは一体構造になっていて、走行カウンタ軸545の伝達ギヤ547が副変速軸546の入力側減速ギヤ551に常時噛み合い、クリープギヤ548が出力側減速ギヤ552に常時噛み合っている。
[0057]
 走行カウンタ軸545の前部側には低速中継ギヤ553と高速中継ギヤ554とを設けている。低速中継ギヤ553は走行カウンタ軸545に固着している。高速中継ギヤ554は走行カウンタ軸545に相対回転不能に被嵌している。副変速軸546のうち減速ギヤ対550よりも前部側には、低速中継ギヤ553に噛み合う低速ギヤ555と、高速中継ギヤ554に噛み合う高速ギヤ556とを回転可能に被嵌している。副変速軸546のうち低速ギヤ555と高速ギヤ556との間には、副変速シフタ557を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。副変速レバー45を操作することによって、副変速シフタ557がスライド移動して、低速ギヤ555及び高速ギヤ556が副変速軸546に択一的に連結される。なお、低速ギヤ555と高速ギヤ556との中間位置が、低速ギヤ555及び高速ギヤ556と副変速シフタ557とを非連結とする副変速中立位置となる。
[0058]
 更に、走行カウンタ軸545や副変速軸546と平行状に延びる直進用中継軸568及び直進用出力軸30を配置している。副変速軸546の前端側に相対回転不能に被嵌した主動ギヤ569に、直進用中継軸568に相対回転不能に被嵌した従動ギヤ570を常時噛み合わせている。直進用中継軸568の後端側に相対回転不能に被嵌した直進用中継ギヤ582に、直進用出力軸30に相対回転不能に被嵌した直進用出力ギヤ583を常時噛み合わせている。
[0059]
 副変速軸546の主動ギヤ569と、直進用中継軸568の従動ギヤ570及び直進用中継ギヤ582と、直進用出力軸30の直進用出力ギヤ583とが、副変速軸456の回転を直進用出力軸30に動力伝達させる直進用出力ギヤ機構509を構成している。直進用出力ギヤ機構509に、直進用ピックアップ回転センサ(直進車速センサ)823を設けて、直進用ピックアップ回転センサ823によって、直進出力の回転数(直進車速)を検出するように構成している。例えば、直進用中継ギヤ582に直進用ピックアップ回転センサ823を対向させて配置し、直進用中継ギヤ582の回転数により、直進出力の回転数(直進車速)を検出する。
[0060]
 実施形態では、超低速レバー44を入り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、クリープギヤ548が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を高速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、高速ギヤ556が副変速軸546に相対回転不能に連結され、直進用出力軸30より高速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。また、副変速レバー45を中立位置に操作すると、副変速軸546と低速ギヤ555及び高速ギヤ556それぞれとが非連結となり、走行伝動軸536からの動力が走行副変速ギヤ機構503で遮断される。
[0061]
 旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出する直進用入力カウンタ軸508と、直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出する直進用出力軸30とを、動力伝達軸31によって連結している。旋回用ミッションケース13は、エンジン5からの回転動力を適宜変速する旋回用の油圧式無段変速機(HST)701と、油圧式無段変速機701からの出力回転を左右の走行クローラ3(駆動スプロケット62)に伝達する差動ギヤ機構702と、差動ギヤ機構702からの回転動力と直進用ミッションケース17からの回転動力とを合成する左右一対の遊星ギヤ機構703とを備える。
[0062]
 油圧式無段変速機701は、1対の油圧ポンプ部704及び油圧モータ部705を並列に配置しており、ポンプ軸706に伝達された動力にて、油圧ポンプ部704から油圧モータ部705に向けて作動油が適宜送り込まれる。なお、ポンプ軸706には、油圧ポンプ部704及び油圧モータ部705に作動油を供給するためのチャージポンプ707が取付けられている。旋回用油圧式無段変速機701は、油圧ポンプ部704におけるポンプ斜板708の傾斜角度を変更調節して、油圧モータ部705への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、油圧モータ705から突出したモータ軸709の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
[0063]
 旋回用ミッションケース13は、旋回用入力カウンタ軸712を油圧ポンプ部704のポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力カウンタ軸712に旋回用入力ギヤ713を相対回転不能に被嵌している。旋回用入力カウンタ軸712とポンプ軸706の間には、旋回用中継軸714を旋回用入力カウンタ軸712及びポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力ギヤ713と常時噛合させた旋回用中継ギヤ715を旋回用中継軸714に対して相対回転不能に被嵌している。ポンプ軸706には、旋回用中継ギヤ715と常時噛合させたポンプ入力ギヤ710を相対回転不能に被嵌しており、旋回用入力カウンタ軸712に伝達されたエンジン5からの回転動力が、旋回用中継軸714を介してポンプ軸706に伝達される。
[0064]
 旋回用ミッションケース13内において、モータ軸709後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ716の両側に左右一対のサイドギヤ717を噛合させたベベルギヤ機構にて、差動ギヤ機構702を構成している。また、差動ギヤ機構702は、一端にサイドギヤ717を相対回転不能に被嵌させた左右一対の旋回用出力軸718を左右側方に向けて延設している。左右一対の旋回用出力軸718それぞれの他端に、左右一対の遊星ギヤ機構703に動力伝達させる旋回出力ギヤ719を、相対回転不能に被嵌させている。
[0065]
 モータ軸709から出力される油圧モータ部705からの回転動力(旋回回転動力)は、差動ギヤ機構702により、正逆回転動力に分岐して左右一対の旋回用出力軸718を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。すなわち、差動ギヤ機構702において、左サイドギヤ717を被嵌させた左旋回用出力軸718を介して逆転回転動力として、左遊星ギヤ機構703に伝達される一方、右サイドギヤ717を被嵌させた右旋回用出力軸718を介して正転回転動力として、右遊星ギヤ機構703に伝達される。
[0066]
 旋回用油圧式無段変速機701の油圧モータ部705に、旋回用ピックアップ回転センサ(旋回車速センサ)824を設けて、旋回用ピックアップ回転センサ824によって、旋回出力の回転数(旋回車速)を検出するように構成している。例えば、モータ軸709上に旋回用パルス発生回転輪体を設け、旋回用パルス発生回転輪体に旋回用ピックアップ回転センサ824を対向させて配置し、旋回用パルス発生回転輪体の回転数により、直進出力の回転数(旋回車速)を検出する。
[0067]
 旋回用ミッションケース13内において、直進用ミッションケース17からの回転動力が伝達される直進用入力カウンタ軸508上に、ブレーキペダル35の動作にあわせて連動するブレーキ機構751を設けている。そして、直進用入力カウンタ軸508前端に、直進用入力ギヤ720を相対回転不能に被嵌させている。また、直進用中継軸721を直進用入力カウンタ軸508と平行に配置しており、直進用入力ギヤ720と常時噛合させた直進用中継ギヤ722を直進用中継軸721に対して相対回転不能に被嵌している。
[0068]
 直進用中継軸721後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ723にリングギヤ724を噛合させたベベルギヤ機構を設けており、左右に延設させた直進用出力軸725にリングギヤ724を相対回転不能に被嵌させている。直進用出力軸725の両端がそれぞれ、左右一対の遊星ギヤ機構703それぞれと連結している。直進用入力カウンタ軸508に入力される直進用ミッションケース17からの回転動力(直進回転動力)は、直進用出力軸725を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。また、ブレーキペダル35の操作に応じてブレーキ機構751が制動作動することで、直進用出力軸725の回転動力を減衰又は停止させる。
[0069]
 左右各遊星ギヤ機構703は、1つのサンギヤ726と、サンギヤ726に噛合する複数の遊星ギヤ727と、旋回出力ギヤ719に噛合させたリングギヤ728と、複数の遊星ギヤ727を同一円周上に回転可能に配置するキャリア729とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構703のキャリア729は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右の各サンギヤ726は、中途部にリングギヤ724を被嵌させた直進用出力軸725の両端に固着している。
[0070]
 左右の各リングギヤ728は、直進用出力軸725に回転可能に被嵌しているとともに、その外周面の外歯を左右の各旋回出力ギヤ719に噛合させて、旋回用出力軸718と連結している。リングギヤ728に固定されたキャリア729は、遊星ギヤ727を回転可能に軸支している。左右の各キャリア729が、左右の各差動出力軸730に回転可能に被嵌している。また、左右の各遊星ギヤ727と一体回転する左右の各出力側伝動ギヤ731は、左右の各差動出力軸730に対して回転不能に被嵌している左右の差動入力ギヤ732に噛合している。左右の差動出力軸730が、中継ギヤ733,734を介して左右の中継軸735と連結しており、左右の中継軸735が、ファイナルギヤ736,737を介して左右の車軸16に連結している。
[0071]
 左右の各遊星ギヤ機構703は、直進用中継軸721及び直進用出力軸725を介して、直進用ミッションケース17からの回転動力を受けて、サンギヤ726を同方向の同一回転数にて回転させる。即ち、左右のサンギヤ726は、直進用ミッションケース17からの回転動力を直進回転として受け、遊星ギヤ727及び出力側伝道ギヤ731を介して、差動出力軸730に伝達する。従って、直進用ミッションケース17から左右の遊星ギヤ機構703に伝達された回転動力は、左右の車軸16から各駆動スプロケット62に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ3を同方向の同一回転数にて駆動して、走行機体2を直進(前進、後退)移動させる。
[0072]
 一方、左右の各遊星ギヤ機構703は、差動ギヤ機構702及び旋回用出力軸718を介して、油圧モータ部705からの回転動力を受けて、リングギヤ728を同一回転数にて互いに逆方向で回転させる。即ち、左右のリングギヤ728は、油圧モータ部705からの回転動力を旋回回転として受け、キャリア729によりサンギヤ726からの直進回転に旋回回転を重畳させ、遊星ギヤ727及び出力側伝道ギヤ731を回転させる。これにより、左右の差動出力軸730の一方には、遊星ギヤ727及び出力側伝道ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を加算させた回転動力が伝達され、左右の差動出力軸730の他方には、遊星ギヤ727及び出力側伝道ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を減算させた回転動力が伝達される。
[0073]
 直進用入力カウンタ軸508及びモータ軸709からの変速出力は、左右の各遊星ギヤ機構703を経由して、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62にそれぞれ伝達され、走行機体2の車速(走行速度)及び進行方向が決定される。すなわち、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を停止させて左右リングギヤ728を静止固定させた状態で、直進用ミッションケース17からの回転動力が直進用入力カウンタ軸508に入力されると、直進用入力カウンタ軸508の回転が左右サンギヤ726に左右同一回転数で伝達され、左右の走行クローラ3が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体2が直進走行する。
[0074]
 逆に、直進用ミッションケース17の直進用出力軸30による回転が停止して左右サンギヤ726が静止固定した状態で、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を駆動させると、モータ軸709からの回転動力にて、左のリングギヤ728が正回転(逆回転)し、右のリングギヤ728は逆回転(正回転)する。その結果、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体2はその場で方向転換(信地旋回スピンターン)される。
[0075]
 また、直進用ミッションケース17からの直進回転によって左右サンギヤ726を駆動しながら、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705の旋回回転によって左右リングギヤ728を駆動することによって、左右の走行クローラ3の速度に差が生じ、走行機体2は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ3の速度差に応じて決定される。
[0076]
 次に、PTO変速機構505を介して実行するPTO軸25の駆動速度の切換構造(正転三段及び逆転一段)について説明する。直進用ミッションケース17には、エンジン5からの動力をPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。この場合、主変速入力軸511の後端側に、動力伝達継断用のPTO油圧クラッチ590を介して、主変速入力軸511と同軸状に延びるPTO入力軸591を連結している。また、直進用ミッションケース17には、PTO入力軸591と平行状に延びるPTO変速軸592、PTOカウンタ軸593及びPTO軸25を配置している。PTO軸25は直進用ミッションケース17後面から後方に突出している。
[0077]
 PTOクラッチスイッチ53を動力接続操作すると、PTO油圧クラッチ590が動力接続状態となって、主変速入力軸511とPTO入力軸591とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速入力軸511からPTO入力軸591に向かって回転動力が伝達される。PTO入力軸591には、前側から順に、中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595、高速入力ギヤ596及び逆転シフタギヤ598を設けている。中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595及び高速入力ギヤ596は、PTO入力軸591に相対回転不能に被嵌している。逆転シフタギヤ598は、PTO入力軸591に相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。
[0078]
 一方、PTO変速軸592には、中速入力ギヤ597に噛み合うPTO中速ギヤ601、低速入力ギヤ595に噛み合うPTO低速ギヤ599、及び高速入力ギヤ596に噛み合うPTO高速ギヤ600を回転可能に被嵌している。PTO変速軸592には、前後一対のPTO変速シフタ602,603を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。第一PTO変速シフタ602はPTO中速ギヤ601とPTO低速ギヤ599との間に配置している。第二PTO変速シフタ603はPTO高速ギヤ600よりも後端側に配置している。前後一対のPTO変速シフタ602,603は、PTO変速レバー46の操作に伴い連動して軸線方向にスライド移動するように構成している。PTO変速軸592のうちPTO低速ギヤ599とPTO高速ギヤ600との間にPTO伝動ギヤ604を固着している。
[0079]
 PTOカウンタ軸593には、PTO伝動ギヤ604に噛み合うPTOカウンタギヤ605と、PTO軸25に相対回転不能に被嵌したPTO出力ギヤ608に噛み合うPTO中継ギヤ606と、PTO逆転ギヤ607とを相対回転不能に被嵌している。PTO変速レバー46を中立操作した状態で副PTOレバー48を入り操作することによって、逆転シフタギヤ598がスライド移動して、逆転シフタギヤ598とPTOカウンタ軸593のPTO逆転ギヤ607とが噛み合うように構成している。
[0080]
 PTO変速レバー46を変速操作すると、前後一対のPTO変速シフタ602,603がPTO変速軸592に沿ってスライド移動し、PTO低速ギヤ599、PTO中速ギヤ601、及びPTO高速ギヤ600がPTO変速軸592に択一的に連結される。その結果、低速~高速の各PTO変速出力が、PTO変速軸592からPTO伝動ギヤ604及びPTOカウンタギヤ605を介してPTOカウンタ軸593に伝達され、更に、PTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
[0081]
 副PTOレバー48を入り操作すると、逆転シフタギヤ598がPTO逆転ギヤ607と噛み合い、PTO入力軸591の回転動力が、逆転シフタギヤ598及びPTO逆転ギヤ607を介してPTOカウンタ軸593に伝達される。そして、逆転のPTO変速出力が、PTOカウンタ軸593からPTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
[0082]
 次に、図12を参照しながら、トラクタ1の油圧回路620構造について説明する。トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を備えている。実施形態では、直進用ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油が作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482に供給される。走行用油圧ポンプ482は、直進用の油圧機械式無段変速機500における油圧ポンプ部521と油圧モータ部522とをつなぐ閉ループ油路623に接続している。エンジン5の駆動中は、走行用油圧ポンプ482からの作動油が閉ループ油路623に常に補充される。
[0083]
 また、走行用油圧ポンプ482は、油圧機械式無段変速機500の主変速油圧シリンダ524に対する主変速油圧切換弁624と、PTO油圧クラッチ590に対するPTOクラッチ電磁弁627及びこれによって作動する切換弁628とに接続している。更に、走行用油圧ポンプ482は、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632と、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633と、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634と、前記各クラッチ電磁弁632~634への作動油供給を制御するマスター制御電磁弁635とに接続している。
[0084]
 また、作業機用油圧ポンプ481が、直進用ミッションケース17の上面後部側にある油圧式昇降機構22の上面に積層配置した複数の油圧外部取出バルブ430と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する複動制御電磁弁432と右リフトロッド121に設けた水平シリンダ122への作動油供給を制御する傾斜制御電磁弁647と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と、上昇油圧切換弁648を切換作動させる上昇制御電磁弁650と、下降油圧切換弁649を作動させる下降制御電磁弁651とに接続している。なお、複動バルブ機構431が、複動制御電磁弁432を含む油圧回路で構成されており、昇降バルブ機構652が、上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と上昇制御電磁弁650及び下降制御電磁弁651による油圧回路で構成される。
[0085]
 傾斜制御電磁弁647を切換駆動させると、水平シリンダ122が伸縮動して、前部側にあるロワーリンクピンを支点にして右側のロワーリンク23が上下動する。その結果、左右両ロワーリンク23を介して対地作業機が走行機体2に対して左右に傾動して、対地作業機の左右傾斜角度が変化する。複動制御電磁弁432を切換制御することにより、油圧リフトシリンダ117の駆動方式として、単動式又は複動式のいずれかを選択できる。すなわち、単複動切換スイッチ56の切換動作に従って、複動制御電磁弁432を切り換えることで、油圧リフトシリンダ117の駆動方式が設定される。
[0086]
 油圧リフトシリンダ117を単動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると、油圧リフトシリンダ117が伸縮動し、リフトアーム120及び左右両ロワーリンク23が共に上下動する。その結果、対地作業機が昇降動し、対地作業機の昇降高さ位置が変化する。一方、油圧リフトシリンダ117を複動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると同時に複動制御電磁弁432を切換駆動させて、油圧リフトシリンダ117を伸縮動させる。これにより、対地作業機が昇降動させることができるとともに、対地作業機を下降させたときに地面に向かって加圧し、対地作業機を下降位置に保持できる。
[0087]
 また、トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動するチャージポンプ707を備え、チャージポンプ707が、旋回用の油圧式無段変速機701における油圧ポンプ部704と油圧モータ部705とをつなぐ閉ループ油路740に接続している。実施形態では、直進用ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油がチャージポンプ707に供給される。また、エンジン5の駆動中は、チャージポンプ707からの作業油が閉ループ油路740に常に補充される。トラクタ1の油圧回路620は、油圧式無段変速機701における油圧ポンプ部704のポンプ斜板708の角度を変更させる旋回油圧シリンダ741と、旋回油圧シリンダ741に対する旋回油圧切換弁742とを備える。
[0088]
 トラクタ1の油圧回路620は、前述の作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482以外に、エンジン5の回転動力で駆動する潤滑油ポンプ518も備えている。潤滑油ポンプ518には、PTO油圧クラッチ590の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給するPTOクラッチ油圧切換弁641と、油圧機械式無段変速機500を軸支する主変速入力軸511の潤滑部と、前進低速油圧クラッチ537の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進低速クラッチ油圧切換弁642と、前進高速油圧クラッチ539の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進高速クラッチ油圧切換弁643と、後進油圧クラッチ541の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する後進クラッチ油圧切換弁644とに接続している。なお、油圧回路620には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
[0089]
 次に、図13~図16を参照しながら、トラクタ1の走行制御を実行するための構成について説明する。図13に示す如く、トラクタ1は、エンジン5の駆動を制御するエンジンコントローラ811と、ダッシュボード33搭載の操作表示盤(メーターパネル)39の表示動作を制御するメータコントローラ812と、走行機体2の速度制御等を行う直進コントローラ813及び旋回コントローラ814とを備えている。
[0090]
 上記コントローラ811~814及び操作用モニタ55はそれぞれ、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM、時間計測用のタイマ、及び入出力インターフェース等を備えており、CAN通信バス815を介して相互に通信可能に接続されている。エンジンコントローラ811及びメータコントローラ812は、電源印加用キースイッチ816を介してバッテリ817に接続されている。
[0091]
 エンジンコントローラ811による制御に基づき、エンジン5では、燃料タンクの燃料が燃料ポンプによってコモンレールに圧送され、高圧の燃料としてコモンレールに蓄えられる。そして、エンジンコントローラ811が、各燃料噴射バルブをそれぞれ開閉制御(電子制御)することで、不図示のコモンレール内の高圧の燃料が、噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を高精度にコントロールされた上で、各インジェクタ(図示せず)からエンジン5の各気筒に噴射される。
[0092]
 メータコントローラ812の出力側には、メータパネル39における液晶パネルや各種警報ランプなどを接続している。そして、メータコントローラ812は、メータパネル39に各種信号を出力し、警報ランプの点消灯動作及び点滅動作、液晶パネルの表示動作、警報ブザーの発報動作などを制御する。
[0093]
 直進コントローラ813の入力側には、主変速レバー50の操作位置を検出する主変速センサ(主変速ポテンショ)822、直進出力の回転数(直進車速)を検出する直進用ピックアップ回転センサ(直進車速センサ)823、前後進切換レバー36の操作位置を検出する前後進センサ(前後進ポテンショ)825、副変速レバー45の操作位置を検出する副変速センサ826、超低速レバー44の操作位置を検出するクリープセンサ827、ブレーキペダル35の踏み込み量を検出するブレーキ位置センサ828、クラッチペダル37の踏み込み量検出するクラッチ位置センサ829、ブレーキペダル35の踏み込みを検出するブレーキスイッチ851、クラッチペダル37の踏み込みを検出するクラッチスイッチ852、及び、駐車ブレーキレバー43の操作を検出する駐車ブレーキスイッチ853を接続している。
[0094]
 直進コントローラ813の出力側には、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634、及び、主変速レバー50の傾動操作量に応じて主変速油圧シリンダ524を作動させる主変速油圧切換弁624を接続している。
[0095]
 旋回コントローラ814の入力側には、操縦ハンドル9の回動量(操舵角度)を検出する操舵角センサ(操舵ポテンショ)821、及び、旋回出力の回転数(旋回車速)を検出する旋回用ピックアップ回転センサ(旋回車速センサ)824を接続している。一方、旋回コントローラ814の出力側には、操縦ハンドル9の回転操作量に応じて旋回油圧シリンダ741を作動させる旋回油圧切換弁742を接続している。
[0096]
 図14に示す如く、直進コントローラ813は、油圧機械式無段変速機(第1無段変速機)500を有する直進系伝動経路の出力を制御する直進走行演算部831と、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速の減速率を格納した減速率テーブルTAを記憶するメモリ832と、CAN通信バス815と接続する通信インターフェース833とを備える。メモリ832内の減速率テーブルTAは、図15に示す如く、後述する「スピンターンモード(第1モード)」、「ブレーキターンモード(第2モード)」、「緩旋回モード(第3モード)」、及び「走行モード(第4モード)」の4モードに対して、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速の減速率TA1~TA4を記憶している。
[0097]
 なお、図15に示す減速率テーブルTAは、各モードにおける操縦ハンドル9を右側に回転させたとき(トラクタ1の右旋回時)の減速率を示しているが、操縦ハンドル9を左側に回転させたとき(トラクタ1の左旋回時)の減速率についても同様である。即ち、操縦ハンドル9を左右方向それぞれに回転させたとき(トラクタ1を左右旋回させたとき)、指定されたモードによる減速率を、操縦ハンドル9の中立位置(0°)から回転させた操舵角により減速率テーブルTAから読み取って、直進車速の減速率を設定する。また、減速率は、直進速度に乗算される比率であり、減速率が100%のときは、直進速度は減速されず、減速率が低くなるほど、直進速度が減速される。また、操縦ハンドル9は、操舵角検出機構(ステアリングボックス)880により、中立位置となる0°から左右にθe(例えば、250°)以上の回転が規制されている。
[0098]
 図15に示す如く、減速率テーブルTAは、操縦ハンドル9の操舵角が0°(中立位置)からθmi(例えば、15°)であるとき、操縦ハンドル9の中立領域(いわゆる遊びの領域であり、不感帯)とし、各モードの減速率TA1~TA4を100%とする。そして、操縦ハンドル9の操舵角がθmiからθma(例えば、245°)であるとき、操縦ハンドル9の操作領域とし、スピンターンモード、ブレーキターンモード、及び走行モードそれぞれの減速率TA1,TA2,TA4を操舵角に応じて単調減少させる一方、緩旋回モードの減速率TA3を100%で一定とする。すなわち、操舵角θmiが制御上における中立位置(0°)であり、操舵角θmaが制御上における最大操舵角となる。このとき、走行モード、ブレーキターンモード、スピンターンモードの順で、操舵角に対する減速率の変化率が大きくなっている。また、操縦ハンドル9の操舵角がθmaからθeであるとき、操縦ハンドル9の最大領域とし、スピンターンモード、ブレーキターンモード、及び走行モードにおいては、減速率TA1,TA2,TA4が最小値De1~De3(0<De1<De2<De3<100)%となる。
[0099]
 図14に示す如く、旋回コントローラ814は、油圧式無段変速機(第2無段変速機)701を有する旋回系伝動経路の出力を制御する旋回走行演算部841と、操縦ハンドル9の操舵角に対する直進車速と旋回車速との旋回/直進比を格納した旋回/直進比テーブルTB(図17参照)を記憶するメモリ842と、CAN通信バス815と接続する通信インターフェース843とを備える。メモリ842内の旋回/直進比テーブルTBは、図15に示す如く、後述する「スピンターンモード(第1モード)」、「ブレーキターンモード(第2モード)」、「緩旋回モード(第3モード)」、及び「走行モード(第4モード)」の4モードに対して、操縦ハンドル9の操舵角に対する旋回/直進比TB1~TB4を記憶している。
[0100]
 なお、図15に示す旋回/直進比テーブルTBは、各モードにおける操縦ハンドル9を右側に回転させたとき(トラクタ1の右旋回時)を正とするものとした旋回/直進比を示している。また、旋回/直進比は、減速率により減速された直進速度に乗算される比率であり、旋回/直進比が0のときは、旋回速度がなく、左右の走行クローラ3がともに同一の直進速度で駆動し、旋回/直進比が高くなるほど、旋回速度が大きくなるため、左右の走行クローラ3の速度差が大きくなる。以下では、主に、操縦ハンドル9を右側に回転させた場合(右旋回時)の旋回/直進比について説明するものとし、操縦ハンドル9を左側に回転させた場合(左旋回時)の旋回/直進比については、括弧書きで補足する。
[0101]
 図15に示す如く、旋回/直進比テーブルTBは、操縦ハンドル9の操舵角が0°~θmi(-θmi~0°)となる中立領域では、各モードの旋回/直進比TB1~TB4を0とする。そして、操縦ハンドル9の操舵角がθmi~θma(-θma~-θmi)となる操縦ハンドル9の操作領域では、スピンターンモード、ブレーキターンモード、緩旋回モード、及び走行モードそれぞれの旋回/直進比TB1~TB4を操舵角に応じて単調増加させる。このとき、緩旋回モード、走行モード、ブレーキターンモード、スピンターンモードの順で、操舵角に対する旋回/直進比の変化率が大きくなっている。
[0102]
 また、操縦ハンドル9の操舵角がθma~θe(-θe~-θma)となる最大領域では、各モードにおいて、旋回/直進比が最大値Ra1~Ra4(最小値-Ra1~-Ra4)となる。なお、図15に示す如く、最大旋回/直進比Ra1~Ra4(-Ra1~-Ra4)は、0<Ra1<Ra2<Ra3<Ra4(-Ra4<-Ra3<-Ra2<-Ra1<0)の関係となっており、操縦ハンドル9の操舵角を最大領域としたとき、緩旋回モードにおいて最大旋回/直進比Ra1(-Ra1)となり、走行モードにおいて最大旋回/直進比Ra2(-Ra2)となり、ブレーキターンモードにおいて最大旋回/直進比Ra3(-Ra3)となり、スピンターンモードにおいて最大旋回/直進比Ra4(-Ra4)となる。
[0103]
 直進コントローラ813において、図16に示す如く、直進走行演算部831は、前後進センサ825からの信号を受けて、「前進」「中立」「後進」のいずれが指定されているかを認識し、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号を受けて、「高速」「低速」「超低速」「中立」のいずれが指定されているかを認識する(STEP1)。直進走行演算部831は、主変速センサ822からの信号を受けて、直進状態(操舵角が0°の状態)における直進車速の目標値(以下、「直進基準目標値」とする。)を算出する(STEP2)。
[0104]
 直進コントローラ813は、旋回コントローラ814を通じて、操舵角センサ821からの信号を通信インターフェース833で受信し、直進走行演算部831に操舵角センサ821からの信号を与える(STEP3)。直進走行演算部831は、操舵角センサ821からの信号を受けて、操縦ハンドル9の操舵角を認識すると、メモリ832内の減速率テーブルTAを参照して、指定されたモードにおける操縦ハンドル9の操舵角に応じた直進車速の減速率を読み出す(STEP4)。
[0105]
 そして、直進走行演算部831は、主変速センサ822からの信号に基づく直進基準目標値に、読み出した減速率を乗算することにより、操舵角に応じた直進車速の目標値(以下、「直進目標値」とする。)を算出する(STEP5)。なお、直進基準目標値及び直進目標値における「直進車速」は、エンジン5の回転速度に対する直進用ミッションケース17における走行伝動軸536の回転速度の相対速度とする。
[0106]
 直進走行演算部831は、ブレーキ位置センサ828、クラッチ位置センサ829からの信号を受けて、ブレーキペダル35及びクラッチペダル37それぞれの踏み込みの有無を確認する(STEP6)。そして、直進走行演算部831は、ブレーキペダル35への機体停止操作の有無、クラッチペダル37への操作の有無、前後進切換レバー36又は副変速レバー45が中立位置にあるか否かを確認する(STEP7)。
[0107]
 直進走行演算部831は、機体停止操作があった場合、又は、クラッチペダル37に踏み込み操作がある場合、又は、前後進切換レバー36又は副変速レバー45が中立位置にある場合(STEP7でYes)、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号(以下、「直進実測値」とする)を、通信インターフェース833から旋回コントローラ814に送信する(STEP8)。その後、直進走行演算部831は、前進の場合は、前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速クラッチ電磁弁633、及び、後進クラッチ電磁弁634の動作を制御して、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び後進油圧クラッチ541を切断する(STEP9)。
[0108]
 一方、直進走行演算部831は、機体停止操作がなく、且つ、クラッチペダル37両方に踏み込み操作がなく、且つ、前後進切換レバー36が前進位置又は後進位置にあり、且つ、副変速レバー45が超低速位置、低速位置又は高速位置のいずれかにある場合(STEP7でNo)、算出した直進目標値を、通信インターフェース833から旋回コントローラ814に送信する(STEP10)。その後、直進走行演算部831は、算出した直進目標値に基づき、前進の場合は、前進低速クラッチ電磁弁632、前進高速クラッチ電磁弁633、及び主変速油圧切換弁624の動作を制御する一方、後進の場合は、後進クラッチ電磁弁634、及び主変速油圧切換弁624の動作を制御する(STEP11)。これにより、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略ゼロ(主クラッチ切りの状態)になる。
[0109]
 すなわち、STEP11において、直進走行演算部831は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)と直進目標値とに基づき、直進系伝動経路の出力(直進用出力軸30による回転速度)をフィードバック制御(主変速制御)する。なお、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号により指定される変速ギヤ比に基づき、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号から走行伝動軸536の回転速度を確認し、直進目標値と比較することで、直進系伝動経路の出力を制御する。
[0110]
 旋回コントローラ814において、図16に示す如く、旋回走行演算部841は、操舵角センサ821からの信号を受けて、操縦ハンドル9の操舵角を認識する(STEP51)。旋回走行演算部841は、メモリ842内の旋回/直進比テーブルTBを参照して、指定されたモードにおける操縦ハンドル9の操舵角に応じた旋回/直進比を読み出す(STEP52)。
[0111]
 また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813を通じて、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号を通信インターフェース843で受信し、旋回走行演算部841に与える(STEP53)。旋回走行演算部841は、副変速センサ826及びクリープセンサ827からの信号により、副変速として「高速」「低速」「超低速」のいずれが指定されているかを認識する。旋回走行演算部841は、指定された副変速に基づいて旋回/直進比の補正値をメモリ842から読み出し、指定された副変速に基づいて旋回/直進比を補正する(STEP54)。
[0112]
 また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813で算出された直進目標値又は直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)を、通信インターフェース843で受信し、旋回走行演算部841に与える(STEP55)。旋回走行演算部841は、直進目標値又は直進実測値より直進車速を確認し、当該直進車速に補正後の旋回/直進比を乗算することで、旋回車速となる旋回目標値を算出する(STEP56)。なお、旋回目標値における「旋回車速」は、エンジン5の回転速度に対する旋回用ミッションケース13におけるモータ軸709の回転速度の相対速度とする。
[0113]
 旋回走行演算部841は、旋回目標値を算出すると、旋回油圧切換弁742の動作を制御する。このとき、旋回走行演算部841は、旋回用ピックアップ回転センサ824からの信号(以下、「旋回実測値」とする)と旋回目標値とに基づき、旋回系伝動経路の出力(モータ軸709による回転速度)をフィードバック制御(旋回制御)する(STEP57)。
[0114]
 直進コントローラ813は、主変速制御を実行している際に、前後進センサ825からの信号が「前進から後進」又は「後進から前進」に切り換えられたとき、前進低速クラッチ電磁弁632及び後進クラッチ電磁弁634を制御して、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541を切り換える。このように、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541を切り換える際、直進コントローラ813は、前進低速油圧クラッチ537及び後進油圧クラッチ541のいずれか一方が必ずつながっているように制御する。
[0115]
 このとき、直進基準目標値(又は直進目標値)を変化させることで、主変速油圧切換弁624を制御して、主変速出力軸512や走行中継軸535は最低速回転状態にした後に、再び、元の回転数となるように、主変速出力軸512や走行中継軸535の回転数を増速させる。従って、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813からの直進目標値を受けることによって、旋回目標値を直進目標値と同様に変化させることができる。これにより、旋回コントローラ814は、走行機体2の前進時と後進時で操縦ハンドル9の操作に対する旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を逆転させて、オペレータに円滑な操縦性を寄与できる。
[0116]
 直進コントローラ813は、主変速制御を実行している際に、前後進センサ825からの信号が「前進」の状態で主変速レバー50により高速側又は低速側に操作された場合、前進低速クラッチ電磁弁632及び前進高速クラッチ電磁弁633を制御して、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539を切り換える。このように、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539を切り換える際、直進コントローラ813は、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のいずれか一方が必ずつながっているように制御する。
[0117]
 このとき、直進コントローラ813は、直進目標値に合わせて、主変速油圧切換弁624を制御する。また、旋回コントローラ814は、直進コントローラ813からの直進目標値を受けることによって、操縦ハンドル9の操作に対する旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定させるため、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539の切換に影響なく、複雑な演算を行うことなく、直進系伝動経路の出力(直進車速)に応じた旋回系伝動経路の出力(旋回車速)をできる。
[0118]
 直進コントローラ813は、クラッチペダル37等が踏み込まれるなどして、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541のそれぞれを切った状態に制御する場合、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)を旋回コントローラ814に送信する。そして、旋回コントローラ814は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定する。従って、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541の全てが切れており、直進系伝動経路の出力(直進車速)が直進目標値に対応していない場合でも、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を最適に設定できるため、オペレータは違和感なく車両を操作できる。
[0119]
 直進コントローラ813は、ブレーキペダル35が踏み込まれて、急ブレーキ操作などによる機体停止操作がなされたとき、走行速度(直進車速)が所定速度以上の高速領域では、前進低速油圧クラッチ537、前進高速油圧クラッチ539、及び、後進油圧クラッチ541のそれぞれを切った状態に制御する。このとき、旋回コントローラ814は、直進実測値(直進用ピックアップ回転センサ823からの信号)により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定する。従って、ブレーキペダル35操作による制動制御が実行されている際に、直進系伝動経路の出力(直進車速)が直進目標値に対応していない場合でも、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を直進系伝動経路の出力(直進車速)に合わせて減速できるため、オペレータは違和感なく車両を操作できる。
[0120]
 一方で、ブレーキペダル35に対して機体停止操作がなされた状態であっても、走行速度(直進車速)が所定速度未満の低速領域となる場合は、直進コントローラ813は、車両の前後進に合わせて、前進低速油圧クラッチ537又は後進油圧クラッチ541を繋いだ状態で、油圧機械式無段変速機500のポンプ斜板523が中立状態(0°)となるように直進目標値を設定し、主変速制御(フィードバック制御)を実行する。このとき、旋回コントローラ814は、直進実測値により旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を設定するものとしてもよいし、直進目標値により旋回系伝動経路の出力を設定するものとしてもよい。
[0121]
 旋回コントローラ814は、直進系伝動経路の出力(直進車速)の減速に伴って旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を減速させる。そして、操縦ハンドル9が操作された場合、旋回コントローラ814が、旋回系伝動経路の出力(旋回車速)を増速させ、旋回コントローラ814が、直進系伝動経路(直進車速)の出力を減速させて、操縦ハンドル9の切れ角(操舵角)に基づいて旋回時の左右の走行クローラ3の速度比を決定する。
[0122]
 また、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、ハンドル切れ角が大きい場合に旋回内側を逆転させて小回り(スピンターン)ができる「スピンターンモード(第1モード)」と、スピンターンモードに比べて切れが鈍くハンドル切れ角が最大近くとなったときに旋回内側を停止させるブレーキターンまで実行できる「ブレーキターンモード(第2モード)」と、ブレーキターンモードに比べて更に切れが鈍い「緩旋回モード(第3モード)」と、高速車速に対応可能な「走行モード(第4モード)」とを選択できる。なお、超低速レバー44及び副変速レバー45により超低速走行又は低速走行が指定されている場合、「スピンターンモード」、「ブレーキターンモード」、及び「緩旋回モード」のいずれかによる旋回動作が許可される。一方、超低速レバー44により高速走行が指定される場合、「走行モード」による旋回動作のみが許可される。
[0123]
 更に、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、旋回時の旋回力を複数段階に調節できる。従って、オペレータは、操作用モニタ55を操作することにより、複数のモードから択一的に選択できる上、段階的な調節も可能なため、圃場状況等に見合った適切な走行特性(旋回特性)を手軽に選定できる。
[0124]
 「スピンターンモード」を指定した場合、図18に示すように、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1(θmi<θt1<θma)となったときに、内側の走行クローラ3を停止させて、走行機体2をブレーキターンにより旋回させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1を超えると、内側の走行クローラ3を逆回転させて、走行機体2をスピンターンにより旋回させる。すなわち、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1未満の場合、内側の走行クローラ3を減速させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1の場合、内側の走行クローラ3を停止させ、操縦ハンドル9の切れ角が角度θt1を超える場合、内側の走行クローラ3を逆回転させる。これにより、操縦ハンドル9の操作量に合わせて、走行機体2の旋回中心及び旋回半径を変えることができる。従って、操縦ハンドル9への操作感覚に近い状態で走行機体2を旋回させることができ、結果、走行機体2を安定して走行させることができる。
[0125]
 また、「ブレーキターンモード」を指定した場合、図19に示すように、操縦ハンドル9の切れ角を制御上の最大角θmaに近い角度θt2(θt1<θt2<θma)となったとき、走行機体2をブレーキターンにより旋回させる。「緩旋回モード」を指定した場合、図19に示すように、操縦ハンドル9の切れ角を制御上の最大角θma以上としても、内側の走行クローラ3は停止にいたらず、走行機体2を緩旋回させる。また、「走行モード」においても、ブレーキターン及びスピンターンによる旋回動作を実行できない。
[0126]
 旋回コントローラ814は、STEP56で旋回目標値を算出する際、直進用ミッションケース17(直進系伝動経路)内の動力継断機構により油圧機械式無段変速機500からの出力が遮断されている場合、内側の走行クローラ3による逆回転動作を禁止する。これにより、直進用ミッションケース17内での動力伝達が遮断された際に、旋回用ミッションケース13から走行クローラ3へ出力される反転動力を制限でき、走行機体2による信地旋回が連続して実行されることを防止できる。以下に、旋回コントローラ814における旋回目標値の設定動作(図16におけるSTEP56の動作)について、図20のフローチャートを参照して説明する。
[0127]
 図20に示す如く、旋回コントローラ814は、STEP55で直進コントローラ813からの信号を受信すると、クラッチペダル37への操作の有無、前後進切換レバー36又は副変速レバー45が中立位置にあるか否かを確認する(STEP301~STEP303)。そして、クラッチペダル37が踏み込まれている場合(STEP301でYes)、又は、前後進切換レバー36が中立位置にある場合(STEP302でYes)、又は、副変速レバー45が中立位置にある場合(STEP303でYes)、旋回コントローラ814は、直進実測値と旋回/直進比とにより内側の走行クローラ3の進行速度Vinを算出する(STEP304)。
[0128]
 そして、算出した内側走行クローラ3の進行速度Vinが、直進実測値に基づく直進車速と逆方向(走行機体2の進行方向)となる場合(STEP305でYes)、旋回コントローラ814は、旋回/直進比を制限値±Ralimに置換する(STEP306)。なお、旋回/直進比の制限値±Ralimは、1より小さい値に設定され、旋回目標値(旋回速度)の絶対値が、直進実測値(直進速度)の絶対値より小さくなるように設定される。一方、クラッチペダル37の踏み込みがなく、且つ、前後進切換レバー36及び副変速レバー45が共に中立位置にない場合(STEP301~STEP303それぞれでNo)、旋回コントローラ814は、ブレーキペダル35への操作の有無を確認する(STEP307)。
[0129]
 ブレーキペダル35への操作がない場合は(STEP307でNo)、旋回コントローラ814は、STEP54で補正した旋回/直進比を直進目標値による直進車速に乗算することで、旋回車速となる旋回目標値を算出する(STEP308)。また、左右の走行クローラ3の進行速度が直進速度と同一方向となる場合(STEP305でNo)、又は、ブレーキペダル35への操作がある場合(STEP307でYes)、旋回コントローラ814は、STEP54で補正した旋回/直進比を直進実測値による直進車速に乗算することで、旋回車速となる旋回目標値を算出する(STEP309)。更に、左右の走行クローラ3の進行速度が互いに逆方向となり(STEP305でYes)、旋回コントローラ814が、旋回/直進比を制限値に設定すると(STEP306)、制限値となる旋回/直進比を直進実測値による直進車速に乗算することで、旋回車速となる旋回目標値を算出する(STEP310)。
[0130]
 本実施形態では、直進用ミッションケース17(直進系伝動経路)内の動力継断機構である油圧クラッチ537,539,541又は副変速シフタ557が非連結とされて、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が遮断される。このように、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が遮断された場合には、旋回コントローラ814が、旋回/直進比を制限値で制限することによって、左右の走行クローラ3による逆転動作を禁止できる。従って、直進用出力軸30が慣性で回転動作している際に、旋回用ミッションケース13からの差動出力が制限される。そのため、ブレーキターンモードやスピンターンモードで操縦ハンドル9の操舵角度が大きい場合であっても、走行機体2の旋回半径を大きくして(旋回曲率を小さくして)、走行機体2が連続して信地旋回することを防止できる。
[0131]
 また、本実施形態では、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が遮断された状態であっても、左右の走行クローラ3が互いに逆方向に回転する場合にのみ、旋回/直進比を制限値で制限している。すなわち、左右の走行クローラ3が逆方向に回転し、左右の走行クローラ3が互いに逆方向となる摩擦力を地面から受ける場合に、旋回/直進比を制限値で制限している。更に、ブレーキ機構751による制動動作が実行されるときには、旋回/直進比を制限することなく、直進実測値に基づく旋回目標値の算出を実行している。従って、走行機体2の走行状態に最適な旋回用ミッションケース13への旋回目標値を常に設定することができる。これにより、直進系伝動経路の出力側(直進用出力軸30)に制動作用が機能していない場合に、走行機体2が連続して信地旋回を実行することを防止するとともに、走行クローラ3に対する地面からの摩擦力などの反力による制動作用を機能させて、安全に走行できる。
[0132]
 旋回コントローラ814は、減速率を100%とするとともに旋回/直進比を0とする操縦ハンドル9の不感帯幅(中立領域)-θmi~θmiを変更可能とすべく、メモリ842に複数記憶している。以下では、旋回コントローラ814における不感帯幅の切換による操向感度設定制御について、図21及び図22などを参照して説明する。図21は、操向感度設定制御の動作を示すフローチャートであり、図22は、不感帯幅の変更に基づいて設定される減速率及び旋回/直進比の関係を示す図である。
[0133]
 なお、本実施形態では、メモリ842に記憶される不感帯幅(中立領域)は、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1と広い不感帯幅-θmi2~θmi2の2種類が記憶されるものとするがが、3種類以上の不感帯幅が記憶されるものとしてもよい。また、メモリ842に記憶される不感帯幅は、オペレータが、例えば、操作用モニタ55を操作することにより、オペレータの希望する値に変更できる。これにより、走行機体2の走行状態、圃場や道路などの路面状態などに最適な不感帯幅を複数メモリ842に記憶させることができるだけでなく、個々のオペレータの運転操作に最適な操向操作が可能となる。
[0134]
 図21に示す如く、旋回コントローラ814は、直進用ピックアップ回転センサ823からの信号(直進実測値)を受けて、直進車速を確認するとともに(STEP601)、前後進センサ825からの信号を受けて、走行機体2の走行方向(前後進)を確認する(STEP602)。そして、走行機体2の直進車速が所定速度未満であり、走行機体2が低速走行中であり(STEP603でNo)、走行機体2が前進走行中であり(STEP604でNo)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がない場合(STEP606でNo)、旋回コントローラ814は、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1に設定する(STEP608)。
[0135]
 一方、走行機体2の直進車速が所定速度以上であり、走行機体2が高速走行中である場合に(STEP603でYes)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がないとき(STEP609でNo)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅-θmi2~θmi2に設定する(STEP609)。また、走行機体2が後進走行中である場合(STEP603でYes)、旋回コントローラ814は、まず、旋回半径を大きくする設定を行った後(STEP605)、操作用モニタ55などへの操作による感度変更の要求がないとき(STEP609でNo)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅-θmi2~θmi2に設定する(STEP609)。
[0136]
 また、STEP606で感度変更の要求がなされている場合は(Yes)、旋回コントローラ814は、広い不感帯幅-θmi2~θmi2に設定する一方(STEP609)、STEP607で感度変更の要求がなされている場合は(Yes)、旋回コントローラ814は、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1に設定する(STEP608)。なお、感度変更の要求については、運転中の操作に限らず、走行機体2の停止時に、オペレータが圃場や路面の状態や作業の種類に応じて、操作用モニタ55などにより入力操作し、予め、旋回コントローラ814にメモリ832内のフラグなどで記憶させているものとしてもよい。
[0137]
 旋回コントローラ814は、不感帯幅を設定すると(STEP608又はSTEP609)、メモリ832の減速率テーブルTA及び旋回/直進比テーブルTBそれぞれを参照して、設定後の不感帯幅に合わせて、現在指定されているモードに応じた減速率及び旋回/直進比をそれぞれ設定する(STEP610~STEP611)。
[0138]
 本実施形態では、図22に示す如く、例えば、スピンターンモードを選択されている場合、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1に設定した際には、操舵角θma1(-θma1)に減速率が最小値De1となるように減速率テーブルTA11が設定される一方、操舵角θma1(-θma1)に旋回/直進比が最大値Ra4となるように旋回/直進比テーブルTB12が設定される。一方、広い不感帯幅-θmi2~θmi2に設定した際には、操舵角θma2(-θma2)に減速率が最小値De1となるように減速率テーブルTA12が設定される一方、操舵角θma2(-θma2)に旋回/直進比が最大値Ra4となるように旋回/直進比テーブルTB12が設定される。なお、θmi1、θmi2、θma1、θma2はそれぞれ、0<θmi1<θmi2<θma1<θma2<θeの関係となる。
[0139]
 すなわち、広い不感帯幅-θmi2~θmi2の減速率テーブルTA12は、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1の減速率テーブルTA11に対して、正転側(操舵角が正の値であり右旋回)については、θmi2-θmi1だけ正の方向へオフセット(平行移動)させる一方、逆転側(操舵角が負の値であり左旋回)については、θmi2-θmi1だけ負の方向へオフセットさせるようにして設定される。また、広い不感帯幅-θmi2~θmi2の旋回/直進比テーブルTB12についても、狭い不感帯幅-θmi1~θmi1の旋回/直進比テーブルTB11に対して、正転側(操舵角が正の値であり右旋回)については、θmi2-θmi1だけ正の方向へオフセット(平行移動)させる一方、逆転側(操舵角が負の値であり左旋回)については、θmi2-θmi1だけ負の方向へオフセットさせるようにして設定される。
[0140]
 上述の操向感度設定制御を実行することで、走行状態に応じて操縦ハンドル9の回転に対する不感帯幅を変更できるため、走行機体2の姿勢や振動などにより、ハンドル操作に影響があったとしても、意図しない旋回動作を防ぐことができ、操作性を向上できる。また、走行路面(圃場)条件またはオペレータの希望走行フィーリングに適応した操向または変速制御を容易に得ることができ、運転操作性の向上などを容易に図ることができる。
[0141]
 また、上述の操向感度設定制御を実行することで、高速走行時や後進走行時に不感帯幅を広く設定できるため、オペレータの意図しない旋回動作を防止でき、操作性の向上を図れるだけでなく、高速走行時や後進走行時の不用意な旋回による事故を防止できる。また、後進走行時の旋回半径と前進走行時の旋回半径とを変更できるものとすることで、オペレータが後方を向くことにより運転動作が困難となる後進走行時においても操作性を向上できる。
[0142]
 本実施形態では、図22に示すように、走行機体2の直進車速(直進系伝動経路の出力)の減速を開始する操縦ハンドル9の操舵角(以下、「直進減速開始操舵角」とする)と、走行機体2の旋回車速(旋回系伝動経路の出力)の増速を開始する操縦ハンドル9の操舵角(以下、「旋回増速開始操舵角」とする)とをθmi1に設定することで、操縦ハンドル9の不感帯幅を狭く設定する。一方、操縦ハンドル9における直進減速開始操舵角と旋回増速開始操舵角とをθmi2に設定することで、操縦ハンドル9の不感帯幅を広く設定する。
[0143]
 (旋回目標値の設定動作の第2例)
 上述したように、旋回コントローラ814による旋回目標値の設定動作について、図20のフローチャートによる動作例を、本実施形態における第1例として説明したが、当該第1実施例以外の動作例によるものとしても構わない。以下では、図23のフローチャートを参照して、旋回コントローラ814による旋回目標値の設定動作の第2例について説明する。なお、図23のフローチャートにおける動作ステップにおいて、図20のフローチャートと同一の動作ステップについては、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
[0144]
 図23に示す如く、旋回コントローラ814は、STEP55で直進コントローラ813からの信号を受信すると、ブレーキペダル35への操作の有無を確認する(STEP307A)。そして、ブレーキペダル35への踏み込みがない場合に(STEP307AでNo)、クラッチペダル37への操作の有無や、前後進切換レバー36及び副変速レバー45の操作位置を確認する(STEP301~STEP303)。一方、ブレーキペダル35への踏み込みが確認されると(STEP307AでYes)、直進実測値と旋回/直進比とにより旋回目標値を算出する(STEP309)。
[0145]
 ブレーキペダル35への操作がなく、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が遮断されている場合に(STEP301~STEP303のいずれかでYes)、旋回コントローラ814は、左右の走行クローラ3が互いに逆方向に回転することを確認すると(STEP304、STEP305でYes)、旋回/直進比を制限値に置換して、直進実測値から旋回目標値を算出する(STEP306、STEP310)。一方、旋回コントローラ814は、左右の走行クローラ3が同一方向に回転することを確認すると(STEP304、STEP305でNo)、直進実測値と旋回/直進比とにより旋回目標値を算出する(STEP309)。また、油圧クラッチ537,539,541のいずれかと副変速シフタ557が連結されている場合(STEP301~STEP303それぞれでNo)、直進目標値と旋回/直進比とにより旋回目標値を算出する(STEP308)。
[0146]
 本例では、ブレーキペダル35への操作がある場合、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達の継断に関わらず、直進実測値と旋回/直進比とにより旋回目標値を設定する。すなわち、直進用出力軸30への制動作用が機能している場合には、直進用出力軸30の回転数に対応する直進実測値に基づいて旋回目標値を設定するため、制動作用による直進速度の減速に合わせて旋回速度も減速し、走行機体2が連続して信地旋回することがない。一方、直進用出力軸30に慣性により回転している際に、走行機体2が信地旋回する可能性がある場合、旋回/直進比を制限することで、信地旋回を禁止することができ、オペレータの予期せぬ挙動を防止でき、運転安全性を向上できる。
[0147]
 (旋回目標値の設定動作の第3実施例)
 次いで、図24のフローチャートを参照して、旋回コントローラ814による旋回目標値の設定動作の第3例について説明する。なお、図24のフローチャートにおける動作ステップにおいて、図20のフローチャートと同一の動作ステップについては、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
[0148]
 図24に示す如く、旋回コントローラ814は、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が遮断されている場合に(STEP301~STEP303のいずれかでYes)、スピンターンモード又はブレーキターンモードのいずれかを選択されているか否かを確認する(STEP351)。スピンターンモード又はブレーキターンモードのいずれかが選択されている場合(STEP351でYes)、旋回コントローラ814は、選択されているモードの旋回/直進比テーブルTBと不感帯幅に応じて、旋回/直進比の制限値±Ralimとなる操縦ハンドル9の操舵角(閾値角)±θlimを算出する(STEP352)。そして、旋回コントローラ814は、操舵角センサ821からの信号に基づいて操縦ハンドル9の操舵角θが閾値角範囲外(θ≦-θlim又はθlim≦θ)であると(STEP353でNo)、旋回/直進比を制限値に置換して、直進実測値から旋回目標値を算出する(STEP306、STEP310)。
[0149]
 緩旋回モード又は走行モードのいずれかが選択されている場合(STEP351でNo)、又は、スピンターンモード又はブレーキターンモードのいずれかであって、操縦ハンドル9の操舵角θが閾値角範囲内(-θlim<θ<θlim)であると(STEP353でYes)、直進実測値と旋回/直進比とにより旋回目標値を算出する(STEP309)。なお、本例において、第2例と同様に、ブレーキペダル35への操作を確認した後に、クラッチペダル37への操作の有無や、前後進切換レバー36及び副変速レバー45の操作位置を確認するものとしても構わない。
[0150]
 本例では、信地旋回が実行されるモードを選択している場合に、油圧機械式無段変速機500から直進用出力軸30への動力伝達が切断されると、操縦ハンドル9の操舵角に基づいて旋回/直進比を制限するため、操縦ハンドル9の操作に合わせて信地旋回を禁止でき、その操作応答性が良好なものとなる。また、走行クローラ3の走行方向を予測することなく、旋回/直進比の制限の可否を設定できるため、旋回コントローラ814での演算量を低減できることから、旋回制御における電気的応答性も高くなり、オペレータの予期せぬ挙動を早期に防止でき、運転安全性を向上できる。
[0151]
 また、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。

符号の説明

[0152]
2 走行機体
3 走行クローラ
5 ディーゼルエンジン
8 操縦座席
9 操縦ハンドル
13 旋回用ミッションケース
17 直進用ミッションケース
500 油圧機械式変速機
501 前後進切換機構
502 クリープ変速ギヤ機構
503 副変速ギヤ機構
511 主変速入力軸
512 主変速出力軸
521 油圧ポンプ部
522 油圧モータ部
523 ポンプ斜板
524 主変速油圧シリンダ
526 遊星ギヤ機構
535 走行中継軸
537 前進低速油圧クラッチ
539 前進高速油圧クラッチ
541 後進油圧クラッチ
624 主変速油圧切換弁
642 前進低速クラッチ油圧切換弁
643 前進高速クラッチ油圧切換弁
644 後進クラッチ油圧切換弁
701 油圧式無段変速機(HST)
702 差動ギヤ機構
703 遊星ギヤ機構
704 油圧ポンプ部
705 油圧モータ部
706 ポンプ軸
707 チャージポンプ
708 ポンプ斜板
709 モータ軸
741 旋回油圧シリンダ
742 旋回油圧切換弁
813 直進コントローラ
814 旋回コントローラ
821 操舵角センサ
822 主変速センサ
823 直進用ピックアップ回転センサ
824 旋回用ピックアップ回転センサ
825 前後進センサ
826 副変速センサ
827 クリープセンサ
828 ブレーキ位置センサ
829 クラッチ位置センサ
831 直進走行演算部
832 メモリ
833 通信インターフェース
841 旋回走行演算部
842 メモリ
843 通信インターフェース
880 操舵角(ハンドル切れ角)検出機構
881 ハンドル軸連結用ボス
882 操向入力軸(第1軸)
883 操向入力ギヤ(第1ギヤ)
884 操向出力軸(第2軸)
885 操向出力ギヤ(第2ギヤ)
886 ハンドル操作規制用カム
887 デテントローラ
888 デテントアーム
889 コイルバネ
890 凹部
891 凸部
892 筐体
893 天板
894 壁板
895 底板
896 ボルト
897 スペーサ
916 ブレーキペダル支持ブラケット
917 テレスコ機構
918 チルト機構
919 固定ブラケット
921 ハンドル軸
931 可動ブラケット
TA 減速率テーブル
TB 旋回/直進比テーブル

請求の範囲

[請求項1]
 走行機体に搭載するエンジンと、第一無段変速装置を有する直進系伝動経路と、第二無段変速装置を有する旋回系伝動経路を備え、前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力を合成して左右の走行部を駆動する作業車両において、
 前記直進系伝動経路の出力と前記旋回系伝動経路の出力とを連動的に制御する制御部と、前記直進系伝動経路からの動力伝達を継断する動力継断機構とを備えており、
 前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断された場合、前記旋回系伝動経路の出力を制限して、前記左右の走行部による相互の逆転動作を禁止することを特徴とする作業車両。
[請求項2]
 前記直進系伝動経路の出力を指定する変速用操作具と、前記直進系伝動経路の出力を検出する検出器とを備え、
 前記制御部は、前記変速用操作具からの指令値及び前記検出器からの実測値を択一的に選択して前記旋回系伝動経路の出力を設定するものであって、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断された場合、前記検出器からの実測値に基づいて、前記旋回系伝動経路の出力を設定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
[請求項3]
 前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断されている際、前記走行部の一方の進行方向が前記走行機体の進行方向と逆方向となることを認識したとき、前記検出器からの実測値に乗算する係数を制限することで前記旋回系伝動経路の出力を制限することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
[請求項4]
 回転操作可能な操縦ハンドルを備え、
 前記制御部は、前記動力継断機構により前記直進系伝動経路からの動力伝達が遮断されている際、前記操縦ハンドルの操舵角が所定角を超えたとき、前記検出器からの実測値に乗算する係数を制限することで前記旋回系伝動経路の出力を制限することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
[請求項5]
 前記制御部が、前記直進系伝動経路の出力を制御する第1制御部と、前記旋回系伝動経路の出力を制御する第2制御部とで構成されており、前記第1制御部で設定された前記直進系伝動経路の出力を前記第2制御部が受けることで、前記旋回系伝動経路の出力を設定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]