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1. WO2017135299 - ADHESIVE COATING AGENT FOR POLYETHYLENE, AND METHOD FOR PRODUCING POLYETHYLENE PRODUCT

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明 細 書

発明の名称 ポリエチレン用接着コート剤およびポリエチレン製品の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028  

発明の効果

0029   0030  

図面の簡単な説明

0031  

発明を実施するための形態

0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

実施例

0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

産業上の利用可能性

0091  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : ポリエチレン用接着コート剤およびポリエチレン製品の製造方法

技術分野

[0001]
 この発明は、ポリエチレン用接着コート剤およびこれを用いたポリエチレン製品の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体や、これらのオレフィンを主成分とし、オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体(以下、これらを総称して「ポリオレフィン」と記す)は、比較的安価で、かつ、良好な成形性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、機械的特性、外観等を有するため、多方面の分野で使用されている。しかしながら、ポリオレフィンは、主に飽和炭化水素で構成されているため、そのままでは化学反応性に乏しく極性も低いため、接着性、塗装性、印刷性等の特性が不十分である。ここで、ポリオレフィンのなかでも、ポリエチレンは、一般には「ポリエチ」等の呼称で包装フィルムや買い物袋、容器等に広く使用されるが、接着、塗装、印刷等を行うのが特に困難な素材である。
[0003]
 ところで、従来、ポリオレフィンへの接着、塗装、印刷等を行うときは、ポリオレフィンに対する密着性の主な発現理由となる粘着力を有する有機溶剤ワニスが密着剤として使用されていた。しかしながら、近年、有機ハロゲンや芳香族による環境問題が生じていることから、ポリオレフィンへの接着、塗装、印刷等を行うときに、有機溶剤ワニスに代えて変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体(エマルジョン)が使用されている。
[0004]
 このような変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンとしては、例えば特許文献1に開示された、ハロゲン等の極性基を持たせた変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンや、例えば特許文献2に開示された、不飽和カルボン酸や酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンなどが使用される。しかしながら、これらの変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンでは、ポリプロピレンへの密着強度は得られるが、ポリエチレンに対しては十分な密着性能が得られていない。
[0005]
 また、例えば特許文献3に開示された、ポリプロピレンに密着強度を有する変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンは、製造上、エマルジョンに界面活性剤や乳化剤が混入しているため、ポリエチレンへの密着強度が不十分である。また、密着性を向上させるため、このエマルジョンに、水性ブロックイソシアネート、水性エポキシ樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アミノ樹脂、水性アクリル樹脂、水性フェノール樹脂、水性ポリブタジエン、水性アルキド樹脂、水性塩化ゴム、水性塩素化ポリオレフィン、水性シリコン樹脂などの添加剤を添加することが提案されているが、ポリエチレンへの密着強度は不十分である。
[0006]
 また、例えば特許文献4では、ポリエチレンへの接着、塗装、印刷等に検討されている変性ポリオレフィン樹脂のエマルジョンとして、ポリエチレンとの密着性に悪影響を及ぼす添加物である水性化助剤を実質的に含まない、主にポリエチレンからなる重合体のエマルジョンが提案されている。しかしながら、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンに対する密着性は向上するが、ポリエチレンに対しての密着強度は十分に得られていない。また、この改良のため、例えば特許文献5,6では、ポリオレフィンへの密着性付与剤として知られているロジン類、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂等の密着性付与剤をエマルジョンに添加することが提案されているが、ポリエチレンに対しての密着性は十分に向上されていない。
[0007]
 また、例えば特許文献7では、ポリエチレンとの密着性に悪影響を及ぼす添加物である水性化助剤を実質的に含まないエマルジョンに、オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド系架橋剤、ポリビニルアルコールを添加した水性分散液(接着コート剤)をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、押出しラミネート法によりポリエチレンをポリエチレンテレフタレートフィルムに接着する方法が提案されている。また、例えば特許文献8では、水性化助剤を実質的に含まないエマルジョンに、オキサゾリン化合物やエポキシ化合物である架橋剤を添加した水性分散液(接着コート剤)を用いて液晶樹脂基材と他基材とを接着させる試みがなされている。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開平1-256556号公報
特許文献2 : 特開平6-80844号公報
特許文献3 : 特開平8-67726号公報
特許文献4 : 特開2007-31580号公報
特許文献5 : 特開2004-51884号公報
特許文献6 : 特開2010-65197号公報
特許文献7 : 特開2014-144570号公報
特許文献8 : 特開2009-235290号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 上記した従来の技術では、ポリエチレン上に塗膜や印刷膜を形成したり、ポリエチレン同士を接着したりすることについて実質的に検討が行われていなかった。したがって、ポリエチレン上に塗膜や印刷膜等のコート層を十分な密着強度で形成することができると共に、ポリエチレン同士を十分な接着強度で接着することができ、コート層や接着層の耐薬品性、耐水性を向上できる技術が要望されている。
[0010]
 本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、ポリエチレン上に塗膜や印刷膜等のコート層を十分な密着強度で形成することができると共に、ポリエチレン同士を十分な接着強度で接着することができ、コート層や接着層の耐薬品性、耐水性等の耐久性を向上できる技術を提供すると共に、高品質なポリエチレン製品を製造できる技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 上記した目的を達成するために、本発明のポリエチレン用接着コート剤は、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂と、水溶性強度付与架橋剤とを含み、前記水溶性強度付与架橋剤の添加量が、前記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部未満の範囲であることを特徴としている。
[0012]
 かかる構成によれば、塗膜や印刷膜等のコート層および接着層のこれまで難しかったポリエチレン(超高分子量ポリエチレンを含む)との密着強度を保持することができると共に、ポリエチレン同士を十分な接着強度で接着してポリエチレン同士の密着強度を保持することができ、ポリエチレン上のコート層や接着層の膜強度や耐薬品性および耐水性等の耐久性を向上させることができるポリエチレン用接着コート剤を提供することができる。これは、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンに多量に添加するとコート層および接着層の耐久性等の劣化原因となる水溶性強度付与架橋剤を、当該エマルジョンに少量(ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部未満)添加してポリエチレン用接着コート剤を調整することにより、ポリエチレン用接着コート剤が形成する塗膜や印刷膜等のコート層および接着層の膜強度(弾性率や破断応力など)が向上し、かつ、コート層および接着層の耐有機溶剤性や耐酸・耐アルカリ性、耐水性等の耐久性が保持されるからである。
[0013]
 より詳細には、ポリエチレンとの密着性に悪影響を及ぼす添加物である水性化助剤を実質的に含まないエマルジョンを用いてポリエチレン(基材)への接着、塗装、印刷等を行った場合に、塗膜や印刷膜等のコート層および接着層のポリエチレンとの密着性の向上、膜強度の向上、耐薬品性および耐水性等の耐久性の向上について、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、水溶性強度付与架橋剤の添加量が多いと、塗膜や印刷膜等のコート層および接着層の耐薬品性、耐水性等の耐久性が劣化することを見出した。したがって、水性化助剤を実質的に含まないポリオレフィン樹脂のエマルジョン水溶液に少量の水溶性強度付与架橋剤を添加してポリエチレン用接着コート剤を調整することにより、ポリエチレン用接着コート剤が形成する塗膜や印刷膜等のコート層および接着層のポリエチレン(超高分子量ポリエチレンを含む)との密着性を確保しながら、コート層および接着層の膜強度および耐久性等を向上させることができる。
[0014]
 これは、次の理由によると考えられる。すなわち、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンにおけるポリエチレンとの接着は、主に融着により生じている。この際、例えば加熱によりポリエチレンとエマルジョンとが融着する際に、エマルジョンが球体であるため、加熱温度が融点以下の場合または加熱時間が不足してエマルジョンが十分に溶融していない場合には、エマルジョンが球体として残り、および/または、エマルジョンの水分の蒸発により空間が生じるため、密着強度を低下させると考えられる。したがって、エマルジョンの球体間の隙間、エマルジョンとポリエチレンの基材(成形体)との隙間を、ポリエチレンとの密着性が良い水溶性強度付与架橋剤を少量添加して埋めることにより、エマルジョン膜(コート層、接着層)の強度および耐久性を向上させることができると考えられる。
[0015]
 また、本発明において、塗膜や印刷膜等のコート層および接着層とポリエチレンとの密着性の発現理由は、有機溶剤ワニスのような粘着でなく接着であるため、ポリエチレン用接着コート剤が塗布されたコート面がべとつかない塗膜や印刷膜等のコート層または接着層を得ることができる。したがって、これまで困難であった、ポリエチレンフィルム、ポリエチレン糸、ポリエチレン管等の成形体同士の接着のみならず、本発明のポリエチレン用接着コート剤を、ポリエチレン製の電線の被覆膜、フィルム等の成形体(成型物)用の印刷インク並びに自動車・建材分野等のポリエチレン成形体(成型物)の塗装用プライマーなどに適用することができる。
[0016]
 また、前記水溶性強度付与架橋剤は、(1)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるカルボン酸基と反応性のある水溶性化合物、または、(2)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるエステル基およびポリエチレンに対して親和力のある水溶性高分子であるとよい。
[0017]
 ここで有機化合物の結合の種類としては、一般的に、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワ―ルス力等の結合が知られているが、「(1)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるカルボン酸基と反応性のある」とは、主に共有結合およびイオン結合により密着力を向上させるものを言い、「(2)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるエステル基およびポリエチレンに対して親和力のある」とは、主に水素結合およびファンデルワ―ルス力により密着力を向上させるものを言う。
[0018]
 したがって、(1)前記水溶性化合物が、アミン基含有ポリマー、オキサゾリン基含有ポリマー、または、塩化アルミであるとよく、(2)前記水溶性高分子が、水溶性ポリビニルメチルエーテル、または、グリオキサール樹脂、または、メラミンホルムアルデヒド、または、アクリル酸系水性高分子であるとよい。
[0019]
 また、ポリエチレン用接着コート剤が、前記ポリオレフィン樹脂と、前記水溶性強度付与架橋剤とを含む水性分散液から成る1液式であるとよい。
[0020]
 このようにすると、水性分散液によりポリエチレン用接着コート剤が形成されているため、有機溶剤ワニスに比べて、製品(接着コート剤)の製造時および製品の使用時の取り扱いが非常に容易であるので、本発明のポリエチレン用接着コート剤を、種々の作業現場における接着、塗装、印刷に使用することができる。また、ポリエチレン用接着コート剤を1液式にすることにより、輸送や保管料が安く、接着コート剤の使用に際して、作業現場で2液以上の液体を混合する必要が無いので、接着コート剤を使用する際の2液混合作業における混合比の間違い、混合の手順の間違いにより、接着性の効果に発現差が生じるのを防止することができ、接着コート剤の取り扱いを容易にすることができる。
[0021]
 例えば、水溶性変成ポリアミン系樹脂やオキサゾリン基含有ポリマーを水溶性強度付与架橋剤とする場合には、水溶性強度付与架橋剤と、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンのカルボン酸基とが反応する反応温度が高いことから、安定して長期保存できる1液式のポリエチレン用接着コート剤(水性分散液)を提供することができる。
[0022]
 また、ポリエチレン用接着コート剤が、前記ポリオレフィン樹脂を含みポリエチレンの成形体上に塗布される水溶液と、前記水溶性強度付与架橋剤を含み前記成形体上の前記ポリオレフィン樹脂に含浸される水溶液とから成る2液式であってもよい。
[0023]
 このようにすると、第1の水溶液がポリエチレンの成形体(基材)上に塗布されることにより形成されたポリオレフィン樹脂のエマルジョンの乾燥膜に、第2の水溶液を塗布することで少量の水溶性強度付与架橋剤を含浸させることにより、ポリエチレンの成形体上にポリエチレン用接着コート剤(塗膜や印刷膜等のコート層や接着層)を直接形成することができる。このように、ポリエチレンの成形体上に直接形成されたポリエチレン用接着コート剤により塗膜や印刷膜等のコート層および接着層を形成しても、コート層および接着層のポリエチレンとの密着性を確保しながら、コート層および接着層の膜強度および耐久性等を向上させることができる。
[0024]
 例えば、塩化アルミやポリ塩化アルミ、アミン基含有ポリマーであるアミノエチル化アクリルポリマーは、水溶液中で、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンと容易に反応する。このような場合に、ポリエチレン用接着コート剤を、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンの第1の水溶液と、塩化アルミやポリ塩化アルミ、アミン基含有ポリマーであるアミノエチル化アクリルポリマー等の水溶性強度付与架橋剤の第2の水溶液とからなる2液式に構成するとよい。このようにすると、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンのみから成る第1の水溶液を加熱乾燥した後に形成される成形(乾燥)膜に、塩化アルミ等の第2の水溶液を含浸させる処理を行うことにより、ポリエチレンの成形体(基材)上に、接着コート剤(コート層、接着層)を直接形成することができる。
[0025]
 また、本発明のポリエチレン製品の製造方法は、ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である一方の成形体と、ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である他方の成形体とを、請求項1ないし4のいずれかに記載の接着コート剤を用いて接着する接着工程を備えることを特徴としている。
[0026]
 かかる構成によれば、ポリエチレンの成形体同士を十分な接着強度で接着することができ、接着層の耐薬品性、耐水性等の接着性が向上された接着コート剤を用いて、ポリエチレンの成形体同士を接着することで、高品質なポリエチレン製品を製造することができる。
[0027]
 また、前記接着工程の前に、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂のみを含有するエマルジョンを用いて、前記一方の成形体および前記他方の成形体のうちの少なくともいずれか一方の表面に乾燥被膜を形成する前処理工程をさらに備えていてもよい。
[0028]
 かかる構成によれば、前処理工程において、ポリオレフィン樹脂のみを含有するエマルジョンを塗布したり含浸させたりすることにより、一方の成形体および他方の成形体のうちの少なくともいずれか一方の表面に乾燥被膜を形成した後に、少量の水溶性強度付与架橋剤を含む接着コート剤を乾燥被膜に含浸させる、または、塗布することで、コート層や接着層の膜強度および耐久性の向上を図ることができる。

発明の効果

[0029]
 本発明によれば、これまで難しかった、塗膜や印刷膜等のコート層および接着層のポリエチレンとの密着強度を保持することができると共に、ポリエチレン同士を十分な接着強度で接着してポリエチレン同士の密着強度を保持することができ、ポリエチレン上のコート層や接着層の膜強度や、耐薬品性および耐水性等の耐久性を向上させることができるポリエチレン用接着コート剤を提供することができる。
[0030]
 また、上記したように、耐久性および接着性が改善されたポリエチレン用接着コートを用いてポリエチレンの成型体同士を接着することにより、高品質なポリエチレン製品を製造することができる。

図面の簡単な説明

[0031]
[図1] 本発明の接着コート剤の一例を示す図である。
[図2] 本発明の接着コート剤の一例を示す図であって、図1に続く図である。
[図3] 本発明の接着コート剤の一例を示す図であって、図2に続く図である。
[図4] 本発明の接着コート剤の一例を示す図である。
[図5] 本発明の接着コート剤の一例を示す図であって、図4に続く図である。
[図6] 本発明の接着コート剤の一例を示す図である。

発明を実施するための形態

[0032]
 本発明のポリエチレン用接着コート剤の一実施形態について説明する。
[0033]
 本発明のポリエチレン用接着コート剤は、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンの水溶液に少量の水溶性強度付与架橋剤が添加されることにより調整されており、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂と、水溶性強度付与架橋剤とを含み、水溶性強度付与架橋剤の添加量が、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部未満の範囲である水性分散液により構成されている。
[0034]
 ポリオレフィン樹脂のエマルジョンは、炭素数2~12の不飽和炭化水素の含有量が75質量%以上、99.5質量%未満であり、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満である水性分散体である。
[0035]
 ここで、不飽和カルボン酸とは、不飽和カルボン酸や、その無水物により導入され、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物を用いることができる。中でもポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
[0036]
 炭素数2~12の不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられ、樹脂の製造のし易さ、水性化のし易さ、ポリエチレン及び各種材料に対する接着性、ブロッキング性等の点から、エチレンを主成分とするのが好ましい。
[0037]
 また、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンには、水性化助剤を0.1%以上含まないことが必要である。水性化助剤を実質的に含まないことから塗膜特性、特に耐水性、ポリオレフィン基材との接着性、ヒートシール性が優れており、これらの性能は長期的に殆ど変化しない。特に接着の難しいポリエチレンの接着に関しては、水性化助剤を実質的に含まないことが必要である。
[0038]
 ここで、水性化助剤とは、ポリマーから水性分散体であるエマルジョンを製造する際に用いられる助剤であり、一般には界面活性剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス、高酸化の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。
[0039]
 保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス、高酸化の酸変性化合物、水溶性高分子等としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン-プロピレンワックス等の重量平均分子量が通常は5,000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が20質量%以上のカルボキシル基含ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
[0040]
 具体的には、ユニチカ株式会社製の商品名アローベースSB1200およびSD1200が例として挙げられる。本発明の水性分散液(ポリエチレン用接着コート剤)は、上記のポリオレフィン樹脂のエマルジョンが水性媒体中に分散もしくは溶解されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
[0041]
 水溶性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノ―ル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-メチレングリセリン、1,3-メチレングリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセトニトリル、アセトン、ホロン、イソホロン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。
[0042]
 塩基性化合物は、この塩基性化合物によってポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基の一部または全部が中和され、生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集を防ぎ、水性分散液に安定性を付与する。塩基性化合物としては、特に限定されないが、アンモニアまたは沸点が200℃以下の有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましい。
[0043]
 水溶性強度付与架橋剤は、(1)ポリオレフィン樹脂の活性基であるカルボン酸基と反応性のある水溶性化合物、または、(2)ポリオレフィン樹脂の活性基であるエステル基およびポリエチレンに対して親和力のある水溶性高分子であるとよい。
[0044]
 ここで、(1)ポリオレフィン樹脂の活性基であるカルボン酸基と反応性のある水溶性化合物が、アミン基含有ポリマー、オキサゾリン基含有ポリマー、または、塩化アルミであるとよい。
[0045]
 具体的には、アミン基含有ポリマーの例としては水溶性変成ポリアミン系樹脂(星光PMC株式会社製CP8982)が挙げられる。一般的なアミン基含有ポリマーであるポリエチレンイミンではコート層や接着層の強度の向上は見られていないので、アミン基含有ポリマーはポリエチレンとの密着力を有する特定の構造である必要がある。
[0046]
 また、オキサゾリン基含有ポリマーとは、分子内にオキサゾリン基を有する高分子をいい、具体的には、株式会社日本触媒製の商品名エポクロスWSシリーズとK2000シリーズとが例として挙げられる。また、塩化アルミは、塩化アルミやポリ塩化アルミを言う。
[0047]
 ところで、塩化アルミやポリ塩化アルミ、アミン基含有ポリマーであるアミノエチル化アクリルポリマー(例えば、株式会社日本触媒製:商品名「ポリメント」)は、水溶液中で、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンと容易に反応する。このような場合には、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンの第1の水溶液と、塩化アルミやポリ塩化アルミ、アミン基含有ポリマーであるアミノエチル化アクリルポリマー等の水溶性強度付与架橋剤の第2の水溶液とからなる2液式にポリエチレン用接着コート剤を準備するとよい。このように、ポリエチレン用接着コート剤を2液式に構成した場合には、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンのみから成る第1の水溶液を加熱乾燥した後に形成される成形(乾燥)膜に、塩化アルミ等の第2の水溶液を含浸させる処理を行うことにより、ポリエチレンの成形体(基材)上に、接着コート剤(コート層、接着層)を直接形成することができる。
[0048]
 ここで、(2)ポリオレフィン樹脂の活性基であるエステル基およびポリエチレンに対して親和力のある水溶性高分子が、水溶性ポリビニルメチルエーテル、または、グリオキサール樹脂、または、メラミンホルムアルデヒド、または、アクリル酸系水性高分子であるとよい。
[0049]
 水溶性ポリビニルメチルエーテル(PVME)としては、センカ株式会社製のポリビニルエチルエーテルが例として挙げられる。また、グリオキサール樹脂としてはDIC北日本ポリマ株式会社製NS11およびNS210Lが例として挙げられる。また、メラミンホルムアルデヒドとしてはDIC北日本ポリマ株式会社製M3が例として挙げられる。
[0050]
 また、アクリル酸系水性高分子としては、大明化学工業株式会社製のアクリル酸塩・アクリルアミド共重合体TA934およびサンノプコ株式会社製のポリアクリル酸SN615が例として挙げられる。ここでも、一般的なアクリル酸系水性高分子の全てでコート層や接着層の強度の向上が見られる訳ではないので、アクリル酸系水性高分子は、ポリエチレンとの密着力を有する特定の構造である必要がある。
[0051]
 また、本発明のポリエチレン製品を製造する製造方法は、ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である一方の成形体と、ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である他方の成形体とを、上記した接着コート剤を用いて接着する接着工程を備えている。
[0052]
 ポリエチレン用接着コート剤を構成する水性分散液を塗布する基材が、ポリエチレン以外のポリオレフィン、例えばポリプロピレンでも効果は認められるが、従来、特に接着剤がなかったポリエチレンの成形体(基材)同士を接着するのに本発明のポリエチレン用接着コート剤を使用するのが有効である。ここでポリエチレンとは、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)である。
[0053]
 一般的なポリエチレンである直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)は、安価であることから多方面で利用されている。例えば、これらのポリエチレンは、包装袋、農業フィルム、水道の配管、容器、建築材料、ロープ等のポリエチレン製品に使用される。そして、本発明による水性分散液(ポリエチレン用接着コート剤)は、ポリエチレン製の例えば農業フィルム同士の接着剤、水道配管の接合部分のシール材、包装袋、容器、建築材料等の印刷インクなどに利用することができる。
[0054]
 また、超高分子量ポリエチレン(UHPE)は、その引張強度が非常に強いことから糸(フィラメント)分野で利用されており、具体的には、釣糸、魚網、ロープ等に使用される。超高分子量ポリエチレン(UHPE)からなるモノフィラメントは非常に細いことから、高強度を達成するには束状に束ねることによるマルチフィラメント化が必要であるが、そのマルチフィラメントの安価な製造方法として、上記した接着コート剤(水性分散液)を、モノフィラメントを束ねる際の集束剤として利用することもできる。
[0055]
 また、一般的にポリエチレンは、ポリプロピレンより比重が低いため軽量化や低価格化が可能である。しかしながら、自動車や建築材料等の分野でポリエチレンを多方面に利用できないのは、一般的に安価な塗料をポリエチレン表面に塗装できないためである。これに対してポリプロピレンは一般的に安価な塗料を塗装するための専用プライマーがあるため、自動車や建築材料等の多方面での利用が進んでいる。
[0056]
 また、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)については、10質量%未満の他のモノマーとの共重合体および他のポリマーとのアロイ(混合物)も含まれる。他のモノマーの例としては、無水マレイン酸等のカルボン酸基を有するジエンモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびその誘導体等を挙げることができるが、ポリエチレンと共重合するモノマーであれば良い。また他のポリマーの例としては、前述のポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピレン等を挙げることができるが、ポリエチレンとポリマーアロイを形成するポリマーであれば良い。
[0057]
 ここで、本発明の接着コート剤(水性分散液)を、ポリエチレンに一般的に安価な塗料を塗装するためのポリエチレン用の専用プライマーとして利用することも可能である。したがって、本発明の接着コート剤の利用を進めることにより、ポリプロピレン製の成型製品をポリエチレン製の成型製品へ変更することも可能である。
[0058]
 また、ポリエチレンの基材(成形体)同士を接着する際には、本発明の接着コート剤を、接着対象であるポリエチレンの基材のいずれか一方、または、両方の基材の接着面に塗布して乾燥させる。その後、接着させたい面同士を張り合わせ、ポリエチレンの融点以下で加熱することによりポリエチレンの基材同士が接着する。
[0059]
 また、ポリエチレンの基材同士の接着方法としては、さらに多様な接着方法を利用することができる。例えば、本発明の接着コート剤は、主剤であるポリオレフィン樹脂のエマルジョンとポリエチレンとが融着することで接着することから、加熱温度が80℃以上であることが好ましい。また一部の水溶性強度付与架橋剤と、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンのカルボン酸基との反応温度が約80℃以上であることから、この2つの条件を考慮すれば、加熱温度が80℃以上であることが好ましい。また、本発明の接着コート剤を用いて、塗膜や印刷インクをポリエチレンの基材に定着させる場合にも、同様の理由で加熱温度が80℃以上であることが好ましい。
[0060]
 また、本発明の接着コート剤(水性分散液)は、塗膜形成性能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、接着コート剤を各種基材表面にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、接着コート剤の樹脂塗膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。
[0061]
 また、接着工程の前に、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂のみを含有するエマルジョンを用いて、接着対象であるポリエチレンの成形体のうち、一方の成形体および他方の成形体のうちの少なくともいずれか一方の表面に、前処理工程により乾燥被膜を形成してもよい。
[0062]
 そして、前処理工程において形成した乾燥被膜に本発明の接着コート剤を塗布または含浸させることにより、ポリエチレンの成形体同士をより確実に十分な接着力で接着することができる。
[0063]
 また、例えば、水溶性強度付与架橋剤が、塩化アルミやポリ塩化アルミ、アミン基含有ポリマーであるアミノエチル化アクリルポリマー(例えば、株式会社日本触媒製:商品名「ポリメント」)である場合は、水溶液中でポリオレフィン樹脂のエマルジョンと容易に反応するため、保存安定性の高いエマルジョンと水溶性強度付与架橋剤とを含む1液式の水性分散液(ポリエチレン用接着コート剤)を安定して保管するのが難しい。この場合に、2液式のポリエチレン用接着コート剤を構成するとよい。具体的には、ポリオレフィン樹脂のエマルジョンのみの第1水溶液を風乾または加熱乾燥して形成したコート層(膜)に、塩化アルミ等の第2の水溶液を含浸させる処理方法(後処理法)により、本発明の2液式のポリエチレン用接着コート剤によるコート層(接着層)をポリエチレンの成形体(基材)上に直接形成してもよい。この場合、後処理法により、水溶性強度付与架橋剤を含浸させた後のコート層(接着層)を風乾または加熱乾燥させる必要がある。
[0064]
 この後処理法は、本発明の2液式の接着コート剤を、印刷インクや塗装用プライマーとしてのコート剤等として使用する場合に有効である。本発明の接着コート剤を印刷インクとして使用する場合、水性分散液(第1の水溶液)に顔料等を添加するため、添加された顔料等が水溶性強度付与架橋剤と伴って印刷インクの保存安定性や接着性等に悪影響を及ぼす可能性もあるが、このような場合に後処理法は特に有効である。
[0065]
 さらに、後処理法により、本発明の2液式の接着コート剤をポリエチレンの塗装用プライマーとして利用する場合には、水溶性強度付与架橋剤を含む含浸用の水溶液に、塗料との密着性を良くするための接着成分を追加することができる。接着成分として、例えば水溶性ウレタン化合物、水溶性エポキシ化合物等を追加することができるが、塗装用プライマーと上塗りする塗料との間の密着力を向上するものであれば特に限定されない。
実施例
[0066]
 具体的な実施例とその比較例について、図1~図6を参照して説明する。図1~図3は、実施例および比較例の、(1)保存安定性、(2)密着性、(3)塗膜の耐水性(1週間)、(4)塗膜の耐薬品性(1週間)、(5)ピール強度、について示す図である。図4および図5は、実施例および比較例の、(6)弾性率(N/mm )、(7)破断ひずみ(%)、(8)破断応力(N/mm )、について示す図である。図6は、後処理法による接着コート剤により形成されたコート層(接着層)の、(6)弾性率(N/mm )、(7)破断ひずみ(%)、(8)破断応力(N/mm )、について示す図である。なお、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。
[0067]
 (ポリエチレン用接着コート剤(水性分散液)の調製)
 以下に示す、(a)ポリオレフィン樹脂(エマルジョン)の固形成分重量と、(b)水溶性強度付与架橋剤の固形成分重量とを、図1~図5に示すように所定量の水に添加して水性分散液を調整することにより、図1~図3の実施例A1~A26、図4および図5の実施例B1~B21のポリエチレン用接着コート剤を得た。また、(a)ポリオレフィン樹脂の水溶液に、(b)水溶性強度付与架橋剤を多量に添加して調整することにより、図1~図3の比較例CP1~CP8、図4および図5の比較例CP10~CP15を得た。また、(a)ポリオレフィン樹脂のみを含む水性分散液から成る、図3の比較例CP9、図5の比較例CP16,CP17を調整した。
[0068]
 (a)ポリオレフィン樹脂(エマルジョン)
 ユニチカ株式会社製のアローベースSB1200またはSD1200
[0069]
 (b)水溶性強度付与架橋剤
 (b-1)アミン基含有ポリマー
 星光PMC株式会社製のCP8982(水溶性変成ポリアミン系樹脂)
 (b-2)オキサゾリン基含有ポリマー
 株式会社日本触媒製のエポクロスWSシリーズ
 (b-3)水溶性ポリビニルメチルエーテル
 センカ株式会社製のポリビニルエチルエーテル(PVME)
 (b-4)グリオキサール樹脂
 DIC北日本ポリマ株式会社製のNS11、NS210L
 (b-5)メラミンホルムアルデヒド
 DIC北日本ポリマ株式会社製のM3
 (b-6)アクリル酸系水性高分子
 大明化学工業株式会社製のアクリル酸塩・アクリルアミド共重合体TA934
 サンノプコ株式会社製のポリアクリル酸SN615
[0070]
 (後処理(含浸)法によるポリエチレン用接着コート剤(コート層、接着層)の形成)
 以下に示す(a)ポリオレフィン樹脂(エマルジョン)をポリエチレンの基材上に塗布して乾燥させることにより形成した乾燥被膜に、以下に示す(b)水溶性強度付与架橋剤を含む含浸液を含浸させることにより、図6の実施例C1~C3のポリエチレン用接着コート剤(コート層、接着層)をポリエチレンの基材上に形成した。また、(a)ポリオレフィン樹脂のみを用いてポリエチレンの基材上に形成した乾燥被膜から成る図5の比較例CP18を形成した。
[0071]
 (a)ポリオレフィン樹脂(エマルジョン)
 ユニチカ株式会社製のアローベースSD1200
[0072]
 (b)水溶性強度付与架橋剤
 (b-1)アミン基含有ポリマー
 株式会社日本触媒製の商品名「ポリメントNK100PM」(アミノエチル化アクリルポリマー)
 (b-2)塩化アルミ(塩化アルミニウム)
 キシダ化学試薬(塩化アルミ)
 大明化学工業株式会社製の商品名「タイパック」(ポリ塩化アルミ)
 (b-3)アクリル酸系水性高分子
 荒川化学工業株式会社製の商品名「ポリストロン1280」(分岐型両性ポリアクリルアミド)
[0073]
 (評価方法)
 (1)保存安定性
 水性分散液(接着コート剤)の希釈液を室温で30日放置したときの外観を、次の3段階で評価した。
 ○ : 外観に変化なし
 △ : 増粘がみられる
 × : 固化、凝集や沈殿物の発生が見られる
[0074]
 図1~図3に示すように、各実施例A1~A26、比較例CP1~CP9は、良好な保存安定性を有している。
[0075]
 (2)塗膜の密着性
 水性分散液(接着コート剤)を、ポリエチレンフィルム(大倉工業株式会社製の低密度ポリエチレンLDPE、厚み100μm)のコロナ処理のない表面に、乾燥後の塗膜厚みが約3μmになるようにバーコートし、90℃で10分間、乾燥させた。得られた塗布面(乾燥膜)に粘着テープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した後の塗布面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
 ○ : 全く剥がれがなかった
 □ : 一部に剥がれが生じた
 × : 全て剥がれた
[0076]
 図1~図3に示すように、各実施例A1~A26、比較例CP1~CP9は、良好な密着性を有している。
[0077]
 (3)塗膜の耐水性
 水性分散液(接着コート剤)を、ポリエチレンフィルム(大倉工業株式会社製の低密度ポリエチレンLDPE、厚み100μm)のコロナ処理のない表面に、乾燥後の塗膜厚みが約3μmになるようにバーコートし、90℃で10分間、乾燥させた。得られたコートフィルムを水道水に1週間、浸漬した後、塗膜の溶解、あるいは剥離の有無を目視で観察して、以下のように評価した。
 ○ : 外観に変化なし
 × : 塗膜が溶解、あるいは剥離する
[0078]
 図1~図3に示すように、各実施例A1~A26、比較例CP1~CP9は、良好な耐水性を有している。
[0079]
 (4)塗膜の耐薬品性
 水性分散液(接着コート剤)を、ポリエチレンフィルム(大倉工業株式会社製の低密度ポリエチレンLDPE、厚み100μm)のコロナ処理のない表面に、乾燥後の塗膜厚みが約3μmになるようにバーコートし、90℃で10分間、乾燥させた。得られたコートフィルムを、メタノール、酢酸エチル、5%水酸化ナトリウム水溶液、5%硫酸水溶液に1週間、浸漬した後、塗膜の溶解、あるいは剥離の有無を目視で観察して、以下のように評価した。また、得られた塗布面に粘着テープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した後の塗布面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
 ○ : 外観に変化なし
 △ : 部分的に白化
 ▲ : 白化
 □ : 一部剥がれる(テープ剥離)
 × : 塗膜が溶解、あるいは剥離する(テープ剥離)
[0080]
 図1~図3に示すように、水溶性強度付与架橋剤が大量に添加された比較例CP1~CP8では、耐薬品性が大きく劣化している。また、境界値である5質量%の水溶性強度付与架橋剤が添加された実施例A5,A10,A15,A21では、耐薬品性が劣化している。
[0081]
 (5)ピール強度
 ポリエチレンフィルムに、図1~図3の各水性分散液(接着コート剤)を、バーコーターで30g/m (乾燥後)の量を塗布して風乾後、当該ポリエチレンフィルムの塗布面に他のポリエチレンフィルムを貼り合わせた後、90℃で20分間、加熱乾燥した。このサンプルを25mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(島津製作所製オートグラフAGS-1kNX)を用いて、引張り速度50mm/分、引張り角度180度(T型剥離)でピール強度を測定した。
[0082]
 図1~図3に示すように、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP9と比較すると、少量の水溶性強度付与架橋剤が添加された各実施例(A1~A15,A17~A25)、各比較例(CP1,CP2,CP7,CP8)においてピール強度が向上している。以上のように、これらの結果は、接着コート剤に水溶性強度付与架橋剤が添加されると、ピール強度は向上するが、水溶性強度付与架橋剤が多量(5質量%以上)に添加されると、ピール強度が劣化することを明らかにしている。
[0083]
 (6)弾性率
 図4~図6の各サンプルにおいて、図4および図5については、各水性分散液(各実施例および各比較例の接着コート剤)にメタノールを添加して希釈溶液を調製した後、乾燥後の塗膜厚みが約10μmになるように各分散液をテフロン加工が施された容器に展開し、100℃で5分乾燥させることを10回繰り返すことで測定用のフィルムを形成した。また、図6の各実施例C1~C3および比較例CP18のフィルムについては、上記と同様にして各実施例および比較例の水性分散液からなるフィルムを得た。さらに各実施例の含浸液に室温で4時間浸漬し、純水で洗浄、風乾することで測定用のフィルムを形成した。これらの測定用のサンプルを10mm幅で切り出し、引張り試験機(島津製作所製オートグラフAGS-1kNX)を用いて、引張り速度300mm/分、標線間距離30mmで試験を行い、応力ひずみ曲線内弾性域での曲線の傾きを弾性率とした。
[0084]
 図4~6に示すように、アローベースSD1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP16,CP18と比較すると、弾性率が維持または向上している。また、図5に示すように、アローベースSB1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP17と比較すると、弾性率が維持または向上している。以上のように、これらの結果は、接着コート剤に水溶性強度付与架橋剤が添加されると、弾性率が維持または向上することを明らかにしている。
[0085]
 (7)破断ひずみ
 図4~図6の各サンプルにおいて、図4および図5については、各水性分散液(各実施例および各比較例の接着コート剤)にメタノールを添加して希釈溶液を調製した後、乾燥後の塗膜厚みが約10μmになるように各分散液をテフロン加工が施された容器に展開し、100℃で5分乾燥させることを10回繰り返すことで測定用のフィルムを形成した。また、図6の各実施例C1~C3および非アック例CP18のフィルムについては、上記と同様にして各実施例および比較例の水性分散液からなるフィルムを得た。さらに各実施例の含浸液に室温で4時間浸漬し、純水で洗浄、風乾することで測定用のフィルムを形成した。これらの測定用のサンプルを10mm幅で切り出し、引張り試験機(島津製作所製オートグラフAGS-1kNX)を用いて、引張り速度300mm/分、標線間距離30mmで試験を行い、フィルムが破断した時のひずみ(伸び)を破断ひずみとした。
[0086]
 図4~6に示すように、アローベースSD1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP16,CP18と比較すると、各実施例は、破断ひずみが維持されている。また、図5示すように、アローベースSB1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP17と比較すると、破断ひずみが維持されている。以上のように、これらの結果は、接着コート剤に水溶性強度付与架橋剤が添加されても、破断ひずみが維持されることを明らかにしている。
[0087]
 (8)破断応力
 図4~図6の各サンプルにおいて、図4および図5については、各水性分散液(各実施例および各比較例の接着コート剤)にメタノールを添加して希釈溶液を調製した後、乾燥後の塗膜厚みが約10μmになるように各分散液をテフロン加工が施された容器に展開し、100℃で5分乾燥させることを10回繰り返すことで測定用のフィルムを形成した。また、図6の各実施例C1~C3および比較例18のフィルムについては、上記と同様にして各実施例および比較例の水性分散液からなるフィルムを得た。さらに各実施例の含浸液に室温で4時間浸漬し、純水で洗浄、風乾することで測定用のフィルムを形成した。これらの測定用のサンプルを10mm幅で切り出し、引張り試験機(島津製作所製オートグラフAGS-1kNX)を用いて、引張り速度300mm/分、標線間距離30mmで試験を行い、フィルムが破断した時の応力(強度)を破断応力とした。
[0088]
 図4~図6に示すように、アローベースSD1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP16,CP18と比較すると、破断応力が維持または向上している。また、図5に示すように、アローベースSB1200を基本材料とした各接着コート剤において、水溶性強度付与架橋剤が添加されていない比較例CP17と比較すると、破断応力が維持または向上している。以上のように、これらの結果は、接着コート剤に水溶性強度付与架橋剤が添加されると、破断応力が維持または向上することを明らかにしている。
[0089]
 上述のように、図1~図6の結果より、接着コート剤に水溶性強度付与架橋剤が添加されることにより、接着コート剤の塗膜のピール強度(図1~図3参照)は向上するが、添加量が増えることによりピール強度が劣化する傾向が見られる。また、水溶性強度付与架橋剤が添加されることにより、弾性率、破断ひずみ、破断応力(図4~図6参照)は維持または向上する。一方、水溶性強度付与架橋剤の添加量が、ポリオレフィン樹脂(100重量部)に対して5質量%(5重量部)を超える範囲で添加されると、接着層(塗膜)の耐久性が劣化し、水溶性強度付与架橋剤の添加量が、ポリオレフィン樹脂(100重量部)に対して5質量%未満(5重量部)である場合に、良好な耐久性を得ることができる。なお、図示省略するが、本願発明者は、少量の水溶性強度付与架橋剤が接着コート剤に添加されていれば、接着層の耐久性が向上すると共に接着強度等が増大することを見出しており、少なくとも、ポリオレフィン樹脂(100重量部)に対して0.01質量%(0.01重量部)以上であって5質量%(5重量部)未満の範囲の水溶性強度付与架橋剤が接着コート剤に添加されていればよい。
[0090]
 なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。

産業上の利用可能性

[0091]
 そして、ポリエチレン用接着コート剤およびこれを用いたポリエチレン製品の製造方法に本発明を広く適用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂と、水溶性強度付与架橋剤とを含み、前記水溶性強度付与架橋剤の添加量が、前記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部未満の範囲であることを特徴とするポリエチレン用接着コート剤。
[請求項2]
 前記水溶性強度付与架橋剤は、(1)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるカルボン酸基と反応性のある水溶性化合物、または、(2)前記ポリオレフィン樹脂の活性基であるエステル基およびポリエチレンに対して親和力のある水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン用接着コート剤。
[請求項3]
 前記水溶性化合物が、アミン基含有ポリマー、オキサゾリン基含有ポリマー、または、塩化アルミであることを特徴とする請求項2に記載のポリエチレン用接着コート剤。
[請求項4]
 前記水溶性高分子が、水溶性ポリビニルメチルエーテル、または、グリオキサール樹脂、または、メラミンホルムアルデヒド、または、アクリル酸系水性高分子であることを特徴とする請求項2に記載のポリエチレン用接着コート剤。
[請求項5]
 前記ポリオレフィン樹脂と、前記水溶性強度付与架橋剤とを含む水性分散液から成る1液式であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエチレン用接着コート剤。
[請求項6]
 前記ポリオレフィン樹脂を含みポリエチレンの成形体上に塗布される第1の水溶液と、前記水溶性強度付与架橋剤を含み前記成形体上の前記ポリオレフィン樹脂に含浸される第2の水溶液とから成る2液式であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエチレン用接着コート剤。
[請求項7]
 ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である一方の成形体と、ポリエチレンフィルムまたはポリエチレン糸またはポリエチレン管である他方の成形体とを、請求項1ないし6のいずれかに記載の接着コート剤を用いて接着する接着工程を備えるポリエチレン製品の製造方法。
[請求項8]
 前記接着工程の前に、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.5質量%以上、25質量%未満のポリオレフィン樹脂のみを含有するエマルジョンを用いて、前記一方の成形体および前記他方の成形体のうちの少なくともいずれか一方の表面に乾燥被膜を形成する前処理工程をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載のポリエチレン製品の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]