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1. (WO2017134804) SENSOR ELEMENT AND SENSOR DEVICE
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明 細 書

発明の名称 センサ素子およびセンサデバイス

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018  

実施例 1

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088  

符号の説明

0089  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12(a)   12(b)   12(c)   12(d)   13   14(a)   14(b)   14(c)   14(d)   14(e)   15(a)   15(b)   16   17   18   19  

明 細 書

発明の名称 : センサ素子およびセンサデバイス

技術分野

[0001]
 本発明は、センサ素子およびセンサデバイスに関し、特に高感度化、高寿命化が可能となるバイオFET(電界効果トランジスタ)を適用したセンサ素子およびセンサデバイスに関するものである。

背景技術

[0002]
 嗅覚センサ、味覚センサに適用可能な生体模倣の分子検出のセンサ素子は、補綴器官、ロボットの検知系、センサネットなどへの応用が期待されている。これらセンサを実現するデバイスの一つとしてBio-FET(Field Effect Transistor)が知られている。Bio-FETは、検出対象によって誘発される電位をトランジスタのゲート電極に印加できる構造となっている。対象の検出信号はトランジスタによってその信号強度に応じてアナログ的に増幅されるため、分子検出のセンサ素子として好適なデバイスである。
[0003]
 非特許文献1に開示されているように、Bio-FETは、誘発される電位の発生方法により複数の方式が提案されている。
[0004]
 例えば、分子選択性を有する抗体や受容体を、ゲート電極やゲート絶縁体に担持したデバイスが広く検討されている。この方式は、電解質中で抗体や受容体に捕獲された検出対象分子の分極により誘起された電位をセンスする方式、もしくは捕獲時の酸化還元作用で発生するH +、OH -を、ゲート電極、ゲート絶縁層に吸着しセンスする方式である。
[0005]
 前者の方式では、分極に伴う電荷分布が局所的なため、トランジスタのチャネルサイズに対し電荷が分布する範囲が小さいと、定量評価が困難になる。また、捕獲された分子が構造揺らぎを持つと、分極による誘起電位の絶対値も揺らぐため、定量評価が困難になる。さらに、検出対象分子の分極が電解質のデバイ長より大きくなると、電解質でのスクリーニングにより、誘発される電位が微小となり検出が困難になる。
[0006]
 後者の方式は、前者の方式における問題は発生しないが、検出対象分子の酸化還元作用を促す抗体、受容体の設計(探索)、担持に関する汎用的な手法がなく、解の有無も検出対象ごとに異なるために、対象が限定されていることが課題となっている。
[0007]
 上述の方式とは別に、検出対象分子をリガンドとする受容体を担持する脂質二重膜で構成された、生体の細胞膜あるいは人工脂質二重膜を電解質で挟み、対象分子が受容体に捕獲された際に誘発される電位を、ゲート電極に印加するFETが提案されている。生体の細胞膜は、ppm、ppb、pptオーダの微量な検出対象に対し、数十mVオーダの膜電位を誘起する。これはトランジスタで検知可能な電位であり、高感度の分子センサデバイスが実現可能となる。
[0008]
 この方式で誘起される電位は、対象分子が受容体に捕獲され発現するイオンチャネルを介し、電解質中のイオンが一定方向に移動した結果生ずる、脂質二重膜両側の二つの電解質のイオン濃度差に由来する。よって、対象分子の構造揺らぎや、電解質のスクリーニングの問題は発生しない。また、原理的には、検知する分子および検出感度は、生体で実現できているものに関しては実現可能である。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2015-40754号公報

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Analyst, (2002), 127, 1137-1151: Recent advances in biologically sensitive field-effect transistors (BioFETs)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 脂質二重膜で構成されたFETの課題は、FET上部の脂質二重膜の安定成膜と、成膜後の寿命である。これまでは、疎水性の樹脂基板に孔を開口し、孔部分に脂質二重膜を形成する方法が主流であった。この方法をBio-FETへ適用する場合、FETと脂質二重膜が異なる基板に作成され、その後、基板どうしを貼り合わせることになる。その結果、貼り合わせ工程の歩留まりを確保する必要性から、デバイスのサイズが大きくなってしまう。また、貼り合わせ工程の歩留まりが、完成品の歩留まりに乗算される結果、デバイスの歩留まりは低下する。さらにFETは一般に、シリコン基板などの樹脂基板とは熱膨張率が大きく異なる基板上に形成されることから、デバイスの信頼性も低下する。
[0012]
 樹脂基板ではなく、例えば特許文献1に記載の技術ように、ガラスなどの半導体基板と熱膨張率が近い材料基板に、アレイ状の微小孔を開口し、開口部分に脂質二重膜を形成する方法が提案されている。この方法をBio-FETへ適用する場合も、FETと脂質二重膜が異なる基板に作成されるため、貼合せ工程が必須となり、これに伴う上述した問題は依然として残る。さらに、開口孔底部と基板底部の距離が、FETのゲート絶縁層の膜厚として加算されるため、基板の薄膜化が必要になる。距離は10-100nm程度で、かつ均一である必要があり、そのような加工は、従来の加工技術ではほぼ不可能である。
[0013]
 これらとは別に、脂質二重膜の寿命の問題も大きな課題である。現在のところ、長くとも1週間程度までしかもたず、その後、機能を消失してしまう。長寿命化に向けた研究開発は現在も進行しているが、目覚しい成果は得られていない。
[0014]
 本発明の目的は、微小サイズの、高感度かつ高信頼のセンサ素子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記センサ素子を適用した長寿命のセンサデバイスを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 上記目的を達成するために、本発明は、絶縁基板上に形成された電界効果トランジスタ(FET)を備えるセンサ素子において、前記FETに含まれるチャネルの上方に形成される第1のチャンバと、前記第1のチャンバの上方に形成される第2のチャンバとを備え、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバは電解質溶液で満たされており、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの境界に脂質二重膜が形成される構成を採用する。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、デバイスサイズを縮小できる。また部品点数、工程数を削減でき、低コスト化が可能となる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 本実施形態におけるFETの一実施例を示す断面図である。
[図2] 図1のデバイスの微小チャンバより下部の平面図である。
[図3] 図1のデバイスの上部チャンバより下部の平面図である。
[図4] 本実施形態におけるデバイスの他の構成を示す、微小チャンバより下部の平面図である。
[図5] 図4のデバイスの上部チャンバより下部の平面図である。
[図6] 図4の断面X1に対応する断面図である。
[図7] 図4の断面X2に対応する断面図である。
[図8] 図4の断面Yに対応する断面図である。
[図9] 本実施形態におけるデバイスの他の構成を示す断面図である。
[図10] 本実施形態におけるデバイスの他の構成を示す断面図である。
[図11] 本実施形態におけるデバイスの他の構成を示す断面図である。
[図12(a)] 本実施形態におけるFETの脂質二重膜の構成プロセスを説明する図である。
[図12(b)] 本実施形態におけるFETの脂質二重膜の構成プロセスを説明する図である。
[図12(c)] 本実施形態におけるFETの脂質二重膜の構成プロセスを説明する図である。
[図12(d)] 本実施形態におけるFETの脂質二重膜の構成プロセスを説明する図である。
[図13] 本実施形態におけるFETの脂質二重膜の表面構造を説明する図である。
[図14(a)] 本実施形態におけるFETの作製プロセスを示す図である。
[図14(b)] 本実施形態におけるFETの作製プロセスを示す図である。
[図14(c)] 本実施形態におけるFETの作製プロセスを示す図である。
[図14(d)] 本実施形態におけるFETの作製プロセスを示す図である。
[図14(e)] 本実施形態におけるFETの作製プロセスを示す図である。
[図15(a)] 本実施形態におけるデバイスの他の構成を示す斜視図である。
[図15(b)] 図15(a)の断面図である。
[図16] 本実施形態のFETを適用したセンサデバイスの機能ブロック図である。
[図17] 図16の構成を持つセンサデバイスのタイミングチャートである。
[図18] 本実施形態のFETを適用したセンサデバイスの、他の構成例を示す機能ブロック図である。
[図19] 図18の構成を持つセンサデバイスのタイミングチャートである。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明を実施するための形態を、実施例を用いて説明する。
実施例 1
[0019]
 図1は、本実施例におけるFETの断面図である。シリコン基板1上に高濃度の不純物層で形成されたソース2、ドレイン3、及びこれらの領域に挟まれたFETチャネル層4が形成され、その上部にゲート絶縁層5、微小チャンバ6を規定する絶縁層7が形成されている。この絶縁層7には、孔もしくは溝が形成されており、微小チャンバ6を規定する。
[0020]
 微小チャンバ6を規定する孔もしくは溝の上面には、人工もしくは生体の脂質二重膜8が孔もしくは溝に蓋をするように形成され、微小チャンバ6と上部チャンバ9とを分離している。上部チャンバ9は別途設けられた絶縁層などからなるシース10で規定される。シース10はゲート絶縁層5、微小チャンバ6を規定する絶縁層と同じ材料の絶縁層で形成できれば、作製工程という観点では効率的であるが、上部チャンバ9は複数のFETで共有することが可能であるので、デバイスのサイズが小さくなったとしても、貼合わせの尤度を確保できる。そのため例えばアクリルなどの有機系樹脂で形成し、後の工程で貼合せる方法を用いても良い。
[0021]
 微小チャンバ6、および上部チャンバ9には電解質溶液が充填され、生体の細胞内(微小チャンバ6に相当)、細胞外(上部チャンバ9に相当)の環境を再現している。上部チャンバ9にはFETの動作安定化のために参照電極11が形成される。また、電解質溶液の廃液、充填のために、上部チャンバ9を規定するシース10には、マイクロ流路12が少なくとも2流路形成されている。
[0022]
 微小チャンバ6と上部チャンバ9とを分離する脂質二重膜8には、特定の分子に対してイオンチャネルとして働く受容体13が埋め込まれている。外部より上部チャンバ9に取り込まれた特定の分子が、受容体13に取り込まれると、これに応じてイオンチャネルが開き、電解質中の特定のイオンが、一方向に輸送される。これにより微小チャンバ6と上部チャンバ9との間にイオン濃度の差が生じ、脂質二重膜8の上下で電位差が生じる。この結果、FETのゲート絶縁層5の上部には、参照電極11の電位と、上記電位差の和が印加される。この電位差は通常、数十mVオーダとなり、従来のFETで充分検出可能な値である。微小チャンバ6はFETチャネル4の上部を覆うように形成されているため、上記電位差はFETチャネル4全域に印加され、電流経路となる反転層を形成する。
[0023]
 従来は、電解質溶液で満たされたチャンバを含む基板と、能動層(FETのソース、ドレイン、チャネルからなる)が形成された基板との貼り合わせの尤度を確保するため、デバイスのサイズは数十μm以下で形成することは技術的に困難であった。しかし、本実施例のデバイス構成を採用することで、少なくとも細胞膜下部の微小チャンバはFETの能動層と同一の基板で、かつ同一のスケールの精度で形成することが可能となる。したがってデバイスサイズを縮小できる。また部品点数、工程数を削減でき、低コスト化が可能となる。
[0024]
 またゲート絶縁層5の膜厚は、FETの作製工程の精度で薄膜化できる。ゲート絶縁層5の薄膜化により、FETの増幅率向上、シグナルノイズ低減が可能となり、検出感度が高いセンサデバイスが実現可能となる。
[0025]
 また、本実施例のデバイス構成では、微小チャンバ6の体積を、FETの作製工程において可能な精度の範囲内で、微小化することが可能である。例えば、典型的には、径もしくは幅が500から数千nm、深さが数千nm程度の孔もしくは溝が形成可能となるが、用途や必要な検知精度に応じて設計すればよい。微小チャンバとすることで、微小チャンバ6と上部チャンバ9間で交換されるイオン量に対する微小チャンバ6の濃度変動量が大きくなり、濃度平衡となるまでの時間が短くなる。その結果電位差が生じる時間も短くなる。そのため、時間応答の速いセンサデバイスが実現可能となる。
[0026]
 図2は、図1における微小チャンバ6より下部のデバイスの平面図である。図2では、説明のためにFETのソース2、ドレイン3、FETチャネル4の透視図としている。図1に示した、微小チャンバ6を規定する孔もしくは溝の領域は、FETチャネル4の上部を覆うように形成されており、FETチャネル4上部の絶縁層7の膜厚は、孔もしく溝が形成されない部分よりも薄くなるよう設計されている。つまりFETのゲート絶縁層7の膜厚は、孔もしくは溝の深さで規定される。
[0027]
 図3は、上部チャンバ9より下部のデバイスの平面図である。上部チャンバ9と微小チャンバ6を仕切る脂質二重膜8は省略している。上部チャンバ9を規定するシース10には、マイクロ流路12が少なくとも2流路形成されている。図1、図3では、マイクロ流路12の上部をシース10が覆う構成であるが、溝状に流路を形成した後、別の材料で蓋をするように被覆しても構わない。このマイクロ流路12の片側には、電解質溶液、脂質溶液、界面活性材などが適宜入れ替わり投入される。そしてもう片側からは、それぞれの溶液が廃棄される。
[0028]
 後で述べるように、このデバイス構成を適用すれば、脂質二重膜の溶解、廃棄、再形成が可能となり、デバイスの実効的な長寿命化を実現できる。
[0029]
 図4は、図1に示すデバイスとは異なる構成の、微小チャンバより下部の平面図である。図5は、図4に示すデバイスの上部チャンバ9より下部のデバイスの平面図である。図5では、図3と同様、上部チャンバ9と微小チャンバ6を仕切る脂質二重膜8は省略している。
[0030]
 図4に示すように、FETの電流が流れる方向、すなわち断面X1、断面X2の線と平行な方向に、微小チャンバ6を規定する複数個の溝が設けられている。さらに各溝は、少なくともソース2、ドレイン3それぞれの領域の一部を覆い、かつFETチャネル4の一部を覆っている。溝状の微小チャンバ6は、図1の例と比較し、開口面が小さいため、上端面に形成される脂質二重膜8にかかる表面張力が緩和できる。よって安定なデバイスが実現される。
[0031]
 また、図5に示すとおり、マイクロ流路12は、溝の2本の短辺に対向する2面のシース10の壁面に2個設置されている。本構造とすることで、脂質二重膜形成の際、脂質溶液は、微小チャンバを規定する溝の短辺に平行に流入し、膜面も脂質溶液の流入する先端面に沿って形成される。膜面形成時に膜にかかる表面張力起因の反発力は、長辺で引っ張るよりも短辺で引っ張る方が小さくなるため、本構造を採用することで、脂質二重膜がより安定に成膜可能となる。
[0032]
 図6は、図4および図5における断面X1に対応する断面図、図7は、図4および図5における断面X2に対応する断面図、図8は、図4および図5における断面Yに対応する断面図である。図6、図7ではFETチャネル4の記載を省略している。これらの図に示すように、脂質二重膜8の間に電位差が生じた場合、FETチャネル4のうち、上部に微小チャンバ6が存在する領域のみに、電流経路となるFETチャネル4が形成される。
[0033]
 図8に示すように、参照電極11は、上部チャンバ9の上面を被覆するように形成されており、溝状に開口した開口部14を備える。開口部14は、微小チャンバ6の上部に形成される。つまり、開口部14は、シリコン基板1に対し投影関係となるよう加工されている。開口部14は外環境につながっており、検出対象の分子は、この開口部14を介して上部チャンバ9の電解質溶液に溶込む。上述のとおり、検出のためには、対象分子は受容体13まで運ばれる必要がある。
[0034]
 本実施例に示すデバイス構造を採用すると、参照電極12は開口部14を除いて上部チャンバ9を覆うように形成されているので、各微小チャンバ6に対する距離などの位置関係は均一に近づく。また、対象分子が開口部14から受容体13まで移動する距離が最短となるレイアウトであるため、均一でかつ応答が早いデバイスを提供することが可能となる。
[0035]
 上記の例では、シリコン基板1上に作成したバルクFET(図6、図8に示す)を例に示したが、例えば図9に示すような、SOI基板60に作成したFETを採用すると、さらに性能の高いFETを提供できる。図9の例では、シリコン基板1上に作成されたSOI基板60を能動層に適用している。これにより寄生ダイオードやシリコン基板との間の浮遊容量を抑えられるとともに、デバイスの高速応答、リーク電流抑制が可能になる。
[0036]
 また基板に電圧を印加できるように構成しておけば、FETの特性調整が可能となる(つまり、バックゲートバイアスを印加できるようになる)ため、デバイスのばらつきを補正することが可能なデバイスが提供可能となる。図9は、図1から図3で示したデバイスへの適用例を示しているが、図4から図8で示したデバイスへも適用可能である。
[0037]
 図10は、図1および図4に示すデバイスとは異なる構成のデバイスの断面図である。図10では、上部チャンバ9の下部に、少なくとも2個以上のFETが形成され、かつ各FETの上部には、それぞれ微小チャンバ6が形成されており、かつ微小チャンバ6の体積が互いに異なっている。
[0038]
 前述のとおり、微小チャンバ6を設ける効果の一つは、対象分子が受容体13に捕捉され、特定イオンチャネルが開くことによる電解質溶液中の濃度変動の時間応答が速くなることであるが、微小チャンバ6の体積が異なると、その応答速度も異なる。定性的には、対象分子の濃度が小さい場合、微小チャンバ6の体積が小さいFETでその応答は良好となり、微小チャンバの体積が大きいFETでは応答は鈍感となる。一方、対象分子の濃度が大きい場合、微小チャンバ6の体積が小さいFETではその応答は飽和状態となり、微小チャンバ6の体積が大きいFETで応答は良好となる。
[0039]
 図10に示す構成では、微小チャンバ6の体積が異なる、少なくとも2個以上のFETでデバイスが構成されている。微小チャンバ6の体積は、FETの作製工程の範囲内で自由に設定することができる。したがって極めて検出可能な濃度範囲が広い分子検出デバイスを提供することが可能になる。
[0040]
 また本実施例に示す構成では、脂質二重膜再構成のために用いられるマイクロ流路対と同一の流路対、あるいは別組のマイクロ流路対を設け、上部チャンバの電解質溶液を循環させる機能を付加することができる。
[0041]
 図11は、図1で示したFETを適用した場合のデバイスの断面図である。なお、図11の構成は、図1~10に示した全てのFETに対し適用可能である。上部チャンバ9の電解質溶液を循環させる機能を果たす流路対を、脂質二重膜再構成のための流路対と同一にする場合は、流入側の上流、流出側の下流に選択バルブを設け、流路を分岐すればよい。電解質溶液は、電解質の循環装置20によって上部チャンバ9と取り込みチャンバ21の間を循環する。電解質の循環装置20には、μ-TAS技術などで採用されているマイクロポンプや、MEMSなどを採用することができる。
[0042]
 本構成を採用した場合、取り込みチャンバ21の設計位置や設計面積は、FET、微小チャンバ、及び上部チャンバの位置やサイズとは独立に、自由に設計することが可能となる。とくに気相中の分子を検出する場合に、取り込み口22の面積拡大や、効率の良い形状レイアウトが可能となり、検出感度が極めて高いデバイスが実現可能となる。
[0043]
 図12は、脂質二重膜の再構成の手順を説明する図である。
[0044]
 空の状態のデバイス(図12(a))に、マイクロ流路12を介して、微小チャンバ6に充填する電解質溶液23を導入する(図12(b))。続いて、マイクロ流路12を介して、脂質二重膜を構成する脂質、受容体たんぱく質を含有する脂質性溶液24を上部チャンバ9に導入する(図12(c))。このとき、微小チャンバ6の内部には電解質溶液23が残留し、電解質溶液23と脂質性溶液24との間に脂質一重膜25が形成される。脂質一重膜25は、親水基を電解質溶液23側に、疎水基を脂質性溶液24側に向けて配列する。電解質溶液23と脂質性溶液24の境界部、すなわち脂質性一重膜25の形成位置は、系の界面エネルギーが最小となることから、微小チャンバ開口面のエッジ部を起点に開口面に沿って安定に形成される(図12(c))。
[0045]
 次に、マイクロ流路12を介して、上部チャンバ9に充填する電解質溶液26を充填する。このとき微小チャンバ6の開口面では、脂質性一重膜25の疎水基を被覆するように、二層目脂質分子が配列し、脂質二重膜8が形成される(図12(d))。
[0046]
 脂質二重膜8に埋め込まれる受容体分子などのタンパク質は、その分子構造、界面エネルギーの安定度にしたがって、脂質一重層25が形成されるタイミングから、脂質二重層8が形成されるタイミングの間に随時取り込まれる。このように、受容体分子が自然に埋め込まれる現象を利用する以外に、界面活性材や熱振動を用いて、受容体分子を積極的に埋め込む方法もある。
[0047]
 一旦形成された脂質二重膜8を除去する際には、マイクロ流路12を介して、界面活性剤を導入する。これにより脂質二重膜8を構成する脂質分子は、電解質溶液中に溶出する。その後、微小チャンバ6に充填する電解質溶液23を導入し、既充填の溶液を、もう片方のマイクロ流路12を介して廃液することで脂質分子を除去する。ここで、脂質分子の溶出を加速するために、熱振動を与えてもよい。
[0048]
 図11における構成において、図13(a)に示すように、上部チャンバ9の下に、シリコン基板1側から親水性絶縁層27、疎水性絶縁層28、及び親水性絶縁層29の順に積層した構造を採用することで、微小チャンバ6の開口面に、より安定に、再現性よく脂質二重膜8を形成することができるようになる。ここで、疎水性絶縁層28及び親水性絶縁層29を、1から2nmの膜厚で形成することが望ましい。
[0049]
 図13(b)は、微小チャンバ6の端部を拡大した図である。図13(b)に示すように、脂質二重膜8は、微小チャンバ6の端部を起点に形成されるが、図13(a)に示す積層構造を適用することで、脂質分子30中の脂質疎水基31は疎水性絶縁層28に、脂質親水基32は親水性絶縁層27、29に引き寄せられ、脂質二重膜8の起点となる。脂質分子30は鎖状分子であり、その多くは数nmの長さとなるので、上述したとおり、疎水性絶縁層28及び親水性絶縁層29の膜厚を1から2nmで積層することが望ましい。
[0050]
 図13の構成において、親水性絶縁材料としては例えばシリコン酸化膜などが、疎水性絶縁材料としては例えばモノシランと窒素を原料とした化学気相成長法を適用したシリコン窒化膜などがある。材料の選択により、図13に示す構造は実現できるが、積層膜に一般的な表面処理を適用するか、もしくは積層膜の原料や成膜条件を制御することで、同一構成材料を用いた薄膜においても、膜の疎水化、親水化は比較的容易に制御できる。また数nm単位の膜厚制御は、例えば化学気相成長法や物理気相成長法において成膜時間を制御することで可能となり、一般的なFET形成工程においては特に困難な工程ではない。
[0051]
 次に、本実施例のデバイス構造の形成方法を、図1に示したデバイスの例を形成する工程例で説明する。FET形成工程の詳細は、公知のMOS形成プロセスに準拠したものであり、よく知られている技術である。シリコン基板表面のFET能動層の形成方法の詳細は多くの文献があるため、それらを参照されたい。下記ではその形成法の一例を示す。
[0052]
 まず、シリコン基板1の表面に、必要に応じてウェルを形成する。続いてLOCOS(Local Oxidation of Silicon)工程もしくはSTI(Shallow Trench Isolation)工程を用いて素子分離を行う。以下、図14では、ウェル層、および素子分離の絶縁層に関しては表記を省略する。
[0053]
 次に、熱酸化もしくは化学気相成長法を用いて、ソース・ドレイン形成用酸化膜33を成膜する(図14(a))。この後、必要に応じて、FETの閾値制御用の不純物をイオン注入法により基板表面に導入する。ソース・ドレイン形成用酸化膜33の厚さは、イオン注入法を用いた不純物導入が最適となるように設定される。
[0054]
 次に、ホト工程を用いて、ソース・ドレイン領域を除いた領域を、ホトレジスト34で被覆する(図14(b))。その後イオン注入法により、ソース・ドレイン領域に不純物を導入し、不純物導入層35を形成する。N型のFETの場合、導入する不純物は、例えばリン、ヒ素などの元素であり、P型のFETの場合、導入する不純物は、例えばボロン、アルミなどの元素である。
[0055]
 次に、ホトレジスト34、ソース・ドレイン形成用酸化膜33を除去した後、厚い絶縁層7を形成する(図14(c))。この膜は成膜時間を短縮するために、例えば、化学気相成長法などが用いられる。膜厚は微小チャンバの大きさに合わせて制御するが、典型的な値としては1μmから10μmである。
[0056]
 絶縁層7の膜質(緻密度、欠陥密度など)は、緻密すなわち高密度であって、かつ欠陥密度が小さい高品質なものであることが望ましい。特にFETのゲート絶縁層として使用される場合、膜質はFETのスイッチ特性に敏感に作用するため、高品質であることは必須である。しかし、膜厚が1μmから10μmと厚い場合、成膜時間は長くなるため、コストや製造時間の観点から、絶縁層7全体を高品質とすることは現実的ではない。
[0057]
 そこで、コストや製造時間を考慮した場合、絶縁層7を、膜質が均質ではない膜として成膜してもよい。例えば、ゲート絶縁膜の機能を担う絶縁層7の下層部を高密度(緻密)で欠陥密度の小さな高品質な膜で構成し、絶縁層の7上層部を成膜速度が速い(下層部よりも低密度な)膜で構成する。
[0058]
 一般に、成膜時間が短い酸化膜は膜質が悪く、FETのゲート絶縁層として適当ではない。したがって、厚い絶縁層を形成する前に、FETのゲート絶縁層用に10nm程度の熱酸化膜を形成しておくことが望ましい。このように形成することにより、FETのチャネルが接する部分の絶縁層は、高密度で良好な絶縁層となる。また、良好なゲート絶縁層が得られるだけではなく、後述する微小チャンバの加工の際の、加工レート差すなわち選択比を確保できることにもなり、ゲート絶縁層の膜厚の精度確保が可能になる。
[0059]
 さらに、例えば熱酸化膜で形成したゲート絶縁層の上部に、シリコン窒化膜を数nmから数十nm追加成膜することで、選択比をさらに大きく確保できる。上記では、ソース・ドレイン形成用酸化膜を除去することとしたが、この酸化膜が熱酸化などで形成され、FETのゲート絶縁層として充分適用できる場合には、この酸化膜を除去せず、その上に厚い絶縁層を形成してもよい。
[0060]
 次に、リソグラフィー工程を用いて、微小チャンバ6を加工する(図14(d))。図14(d)では、ホトレジスト36で加工形状を制御している。ホトレジストで被覆されない領域を異方性のドライエッチングで加工し、孔もしくは溝を形成する。必要に応じて、より選択比が取れる保護膜をホトレジストの下部に形成、加工してもよい。ゲート絶縁層の膜質、膜厚は、FETの制御性と均一性を決める因子となるため、これらを制御することは極めて重要になる。
[0061]
 上述したとおり、シリコン基板と厚い絶縁層との間に高品質な絶縁層や、加工の際の選択比が取れる材料を成膜しておくことにより、ゲート絶縁層の膜質、微小チャンバ形成後のゲート絶縁層の膜厚制御性は向上する。
[0062]
 次に、ホトレジスト36や、保護膜を除去した後、本基板に、別工程で加工されたマイクロ流路12、参照電極11、マイクロポンプや、MEMSが組込まれた筐体部37を貼り合せる(図14(e))。マイクロ流路12は、筐体側壁38に少なくとも1対、2本形成されている。筐体蓋部39には参照電極11が埋め込まれ、外部から上部チャンバ側電解質溶液26に電圧を印加できるよう構成されている。
[0063]
 上部チャンバ9に外界より分子を導入する方法としては、上述のように循環系で導入する方法と、直接上部チャンバ9に引き込む方法とがある。後者の場合は、分子導入のための微細孔が筐体蓋部39に多数形成される。
[0064]
 筐体を構成する材料は、微小チャンバと同じ厚膜の酸化膜や、アクリルなどの有機系の絶縁材料などがある。前者の材料(微小チャンバと同じ厚膜の酸化膜)を採用すると、FET形成工程で筐体の側壁まで一括加工が可能となり、貼合わせ精度の問題から解放される。この場合、上部チャンバも含めた微細化が可能となり、複数種の検出対象を検知可能な微小センサモジュールの提供が可能となる。また、後者の材料(アクリルなどの有機系の絶縁材料)を採用し、貼合わせ尤度を考慮して、大きめに上部チャンバを形成したとしても、本実施例で実現できる主要な効果は、微小チャンバの存在によってもたらされるため、本実施例で得られる利益を享受することができる。
[0065]
 例えばセンサアレイのように複数のFETで構成されるセンサモジュールの場合には、例えば図15(a)のように、1個の大きな上部チャンバ9でまとめて被覆することが可能である。図15(a)は、上部チャンバ9の筐体部を仮想的に開いて、デバイスを俯瞰した図である。1個の大きな上部チャンバに対応して18個の微小チャンバ6が開口し、それぞれの下部にFETが形成されている。
[0066]
 図15(b)は、図15(a)に示す破線に沿った面に対するデバイス断面図である。STI40で素子分離されたFETが6個配置され、それぞれのFETの上部に微小チャンバ6が形成されている。FETのソース、ドレインは、それぞれソース側ビア41、ドレイン側ビア42を介して、上部に形成される配線に電気的に接続される。上部チャンバ9は共通で、マイクロ流路12、参照電極11とともに筐体部37に形成されている。筐体部37は、例えばアクリル樹脂などの有機系絶縁材料で構成され、FETが形成されたシリコン基板と貼り合わされている。参照電極11は、筐体蓋部39に形成された配線を介し、例えばソース側配線と電気的に接続されている。アレイを構成するFETの数は、上部チャンバ9の占有面積に収まる限り自由に設定できる。
[0067]
 また、図15では参照電極11を筐体蓋部39の中央に設ける例を示したが、上部チャンバ9の上面全面に設けたり、メッシュ形状になるよう設けたりすることも可能である。このようにすることで電界分布がセンサアレイ領域で均一となり、感度分布が小さいセンサ群で構成されるセンサアレイを提供することが可能となる。
[0068]
 図16は、図1、図6、図8~10、図15等に示したFETを適用したセンサデバイスの機能ブロック図である。FETもしくはFETアレイに形成されたマイクロ流路12に、微小チャンバ6を満たす電解質溶液A(図12(b)における電解質溶液23)を供給する供給部50、上部チャンバ9を満たす電解質溶液B(図12(b)における電解質溶液26)を供給する供給部51と、脂質二重膜の構成成分となる脂質溶液(図12(c)における脂質性溶液24)を供給する供給部52と、脂質二重膜を溶出する界面活性剤溶液を供給する供給部53と、溶出された脂質二重膜を含む廃棄液体を回収(再生)する廃液部54と、供給または廃棄すべき液体の種類、および流経路を制御するためのバルブ群と、これらの各部を制御するための制御部55で構成されている。
[0069]
 図16ではこれに加えて、電解質溶液Bに検出対象の分子を外環境から取込み、FETへ誘導するための循環部56が付加されているが、これは必要に応じて付加される。
[0070]
 センサデバイスを図16に示す構成にすると、脂質二重膜を適時に廃棄または再構成できるため、劣化耐性のよい長寿命なデバイスを提供できるようになる。
[0071]
 図17は、図16に示す機能ブロック図を有するセンサデバイスの動作を示すタイミングチャートである。縦軸は、機能動作と機能停止をそれぞれ1値と0値で表したもので、横軸に時間をとり、経時推移を表している。
[0072]
 まず、電解質溶液Aを、マイクロ流路12を介して微小チャンバ6と上部チャンバ9に充填する。充填の際、廃液部54のバルブは閉止するが、あえて開放することにより、廃液をしながら充填を行ってもよい。そうすることで、チャンバ内を電解質溶液Aでパージ、洗浄できる。続いて脂質溶液24を導入する。この際、微小チャンバ6に充填された電解質溶液Aは残存し、脂質溶液24との界面に脂質一重膜25を形成する。
[0073]
 次に、電解質溶液Bを上部チャンバ9に導入する。この際、電解質溶液Bは脂質溶液24を押し出しながら廃液系54側へ進むが、その境界面と脂質一重膜25の接線上では、脂質一重膜25の疎水基と、脂質溶液24を構成する脂質分子の疎水基が向かい合うように配列し、接線の移動方向とは反対側に脂質二重膜を形成していく。
[0074]
 電解質溶液Bが上部チャンバ9に充填された後、供給部50~53と廃液部54のバルブを閉止し、FET49、および循環部56(設置している場合)を動作させ、分子センシングを行う。設定した分子センシング時間を経た後、FET49、および循環部56(設置している場合)を停止させ、循環部56のバルブを全て閉止する。その後、界面活性剤溶液を供出する供給部53と廃液部54のバルブを開放し、電解質溶液A、B、脂質二重膜を溶出、廃棄する。
[0075]
 次に、再び電解質溶液Aを導入、同じシーケンスを経て脂質二重膜を再構成する。
[0076]
 電解質溶液A、Bのチャンバへの充填、残留や、脂質一重膜、二重膜の形成、脂質膜の廃棄に関しては、原料溶液、廃液の流量制御が重要になる。これらの制御は、制御部によって、例えば配管に設置されたMFC(Mass Flow Controller)で溶液の流量を制御される。バルブ群も同様に、制御部によって開放、閉止を制御される。
[0077]
 図16に示す構成のセンサデバイスでは、電解質溶液A、B、脂質二重膜の溶出、廃棄と、脂質二重膜再構成を行っている間は、分子センシングができない。この場合、センサデバイスを図18に示す構成とすることによって、常にセンシングが可能なデバイスを提供することが可能となる。
[0078]
 図18では、供給部、廃棄部、制御部の機能ブロックは図16と同様であるが、同一構造のFETセンサが2個(AとB)、選択バルブが2種(選択バルブ1と2)追加されている。適宜、選択バルブを作動させ流路を切り替えることで、各FETのセンシング、及び脂質二重膜の再構成のシーケンスを、異なるタイミングで実行させることによって、センサデバイスが常にセンシングを行うことが可能である。
[0079]
 図19は、図18に示す機能ブロック図を有するセンサデバイスの動作を示すタイミングチャートである。選択バルブ1の切り換えによって、動作させるFETを選択し、選択バルブ2の切り換えによって、脂質二重膜の再構成を行うFETを選択する。選択バルブ1と2とは、互いに異なるFETへ繋がるマイクロ流路を選択しており、同一周期で位相が反転する形で選択する流路を切り替えるため、常にセンシングが可能になる。
[0080]
 脂質二重膜は劣化するため、図19では、可能な限りFETセンサ動作の直前で膜の再構成を行う例としたが、別のFETセンサの動作中の時間であれば、どのタイミングで膜の再構成を行ってもよい。また、ここではFETセンサが2個で構成されている例を示したが、2個以上のFETセンサでも、選択バルブを適宜追加すれば、同様の構成を実現できる。
[0081]
 図16と図18では、微小チャンバに充填する電解質溶液Aと、上部チャンバに充填する電解質溶液Bは、異なる種類の電解質溶液をそれぞれFETに供給する構成を採用したが、同じ種類の電解質溶液を微小チャンバと上部チャンバに充填する構成でもよい。その場合は、電解質溶液を供給する供給部は一つでよい。
[0082]
 本実施例のFETでは、脂質二重膜で隔てられた微小チャンバと上部チャンバを満たす電解質溶液の特定イオンもしくはイオン群に対する濃度差を生じさせる必要がある。微小チャンバに充填する電解質溶液Aと、上部チャンバに充填する電解質溶液Bのように、異なる種類の電解質溶液をFETのそれぞれのチャンバに供給する構成は、これを実現することができる。
[0083]
 しかしながら、溶液充填後に脂質二重膜両側の二つの電解質溶液にイオン濃度差を生じさせることができるのであれば、微小チャンバと上部チャンバに充填する電解質溶液が同じ種類であってもよい。採用する脂質二重膜は、一般の生体細胞膜と同様に、イオンチャネルの機能を有することを想定している。したがって、例えば、充填後に上部チャンバの溶液へ特定イオンを補充する機構や、イオンチャネル自身に能動的な機能を付加できれば、脂質二重膜で隔てられた微小チャンバと上部チャンバの電解質溶液に濃度差を生じさせることができる。
[0084]
 本実施例によれば、補綴器官、ロボットの検知系へ応用可能な、嗅覚センサ、味覚センサに適用できる脂質二重膜を用いた生体模倣の分子検出センサ素子およびセンサデバイスを提供することができる。
[0085]
 また、本実施例に示すデバイス構造を採用することにより、以下の効果を得ることができる。
[0086]
 (1)FETのチャネルと脂質二重膜を同一の基板上に構成するため、従来のように基板貼合わせ、貼合わせのための尤度を確保する必要がない。そのため、デバイスサイズを縮小できる。また部品点数、工程数を削減でき、低コスト化が可能となる。
[0087]
 (2)微小チャンバをFET作製工程と同様にリソグラフィー工程で形成することが可能となる。そのため、微小チャンバの密度、位置、形状を、自由に高精度に形成することが可能となり、その結果デバイスの検出感度向上が可能になる。
[0088]
 (3)デバイスのマイクロ流路に、電解質溶液、脂質溶液、界面活性剤を適宜投入することにより、微小チャンバ表面に脂質二重膜の平面膜を再現性良く形成することが可能になる。これにより、脂質二重膜の人工的な新陳代謝を実現することができ、デバイスの寿命を延ばすことが可能となる。

符号の説明

[0089]
 1:シリコン基板、2:ソース、3:ドレイン、4:FETチャネル、5:ゲート絶縁層、6:微小チャンバ、7:絶縁層、8:脂質二重膜、9:上部チャンバ、10:シース、11:参照電極、12:マイクロ流路、13:受容体

請求の範囲

[請求項1]
 絶縁基板上に形成された電界効果トランジスタ(FET)を備えるセンサ素子において、
 前記FETに含まれるチャネルの上方に形成される第1のチャンバと、
 前記第1のチャンバの上方に形成される第2のチャンバとを備え、
 前記第1のチャンバと前記第2のチャンバは電解質溶液で満たされており、
 前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの境界に脂質二重膜が形成されることを特徴とするセンサ素子。
[請求項2]
 前記第1のチャンバは、前記第2のチャンバよりも容量が小さいことを特徴とする請求項1記載のセンサ素子。
[請求項3]
 前記第1のチャンバは溝形状であり、前記溝形状の長軸方向は、前記FETチャネル内の電流方向と平行になるように溝が形成されることを特徴とする請求項1記載のセンサ素子。
[請求項4]
 前記第1のチャンバは、前記FETチャネルの上方に複数形成されることを特徴とする請求項3記載のセンサ素子。
[請求項5]
 前記第2のチャンバの下部に、複数のFETが形成され、かつ前記各FETと前記第2のチャンバとの間に、それぞれ第1のチャンバが形成されることを特徴とする請求項4記載のセンサ素子。
[請求項6]
 前記複数の第1のチャンバの体積が互いに異なることを特徴とする請求項4記載のセンサ素子。
[請求項7]
 前記センサ素子は、前記第1のチャンバを規定する絶縁層を備え、
 前記絶縁層は、前記絶縁層の前記第二のチャンバ側に、前記絶縁基板側から親水性絶縁層、疎水性絶縁層、及び親水性絶縁層の順で積層された構造であることを特徴とする請求項1記載のセンサ素子。
[請求項8]
 前記センサ素子は、前記第1のチャンバを規定する絶縁層を備え、
 前記絶縁層は、前記絶縁基板側の密度が、前記第2のチャンバ側の密度に比べ高いことを特徴とする請求項1記載のセンサ素子。
[請求項9]
 前記センサ素子は、前記第1のチャンバを規定する絶縁層を備え、
 前記絶縁層は、前記絶縁基板側から、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜の順番で積層された多層構造になっており、
 前記絶縁基板側のシリコン酸化膜の密度が、前記第2のチャンバ側のシリコン酸化膜の密度に比べ高いことを特徴とする請求項1記載のセンサ素子。
[請求項10]
 前記センサ素子のFETは、ソースおよびドレインを含み、
 前記FETのチャネル、ソースおよびドレインは、SOI基板に形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ素子。
[請求項11]
 請求項1に記載したセンサ素子と、
 前記第一のチャンバに充填する電解質溶液を供給する第1の供給部と、
 前記第二のチャンバに充填する電解質溶液を供給する第2の供給部と、
 前記第一のチャンバおよび前記第二のチャンバの境界に形成される脂質二重膜を構成する成分を含む脂質溶液を前記センサ素子に供給する第3の供給部と、
 前記脂質二重膜を分解する界面活性剤を前記センサ素子に供給する第4の供給部と、
 前記センサ素子に供給された液体を排出する廃液部と、
 前記各供給部および前記廃液部を制御する制御部とを備えることを特徴とするセンサデバイス。
[請求項12]
 前記センサデバイスは、前記センサ素子を複数備え、
 前記複数のセンサ素子は、前記各供給部および廃液部と、選択バルブを介して接続されることを特徴とする請求項11記載のセンサデバイス。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12(a)]

[ 図 12(b)]

[ 図 12(c)]

[ 図 12(d)]

[ 図 13]

[ 図 14(a)]

[ 図 14(b)]

[ 図 14(c)]

[ 図 14(d)]

[ 図 14(e)]

[ 図 15(a)]

[ 図 15(b)]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]