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1. (WO2017131147) METHOD FOR PRODUCING COATED NICKEL-BASED LITHIUM-NICKEL COMPOSITE OXIDE PARTICLES
Document

明 細 書

発明の名称 被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010  

先行技術文献

特許文献

0011  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021   0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057  

実施例

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ニッケル含有量の高い被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に関し、大気雰囲気下の安定性を向上させた取り扱いしやすい被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子及びその製造方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 近年、携帯電話、ノートパソコン等の小型電子機器の急速な拡大とともに、充放電可能な電源として、リチウムイオン二次電池の需要が急激に伸びている。リチウムイオン二次電池の正極で充放電に寄与する正極活物質として、リチウム-コバルト酸化物(以下、コバルト系と明記することがある。)が広く用いられている。しかしながら、電池設計の最適化によりコバルト系正極の容量は理論容量と同等程度まで改善され、さらなる高容量化は困難になりつつある。
[0003]
 そこで、従来のコバルト系よりも理論容量の高いリチウム-ニッケル酸化物を用いたリチウム-ニッケル複合酸化物粒子の開発が進められている。しかしながら、純粋なリチウム-ニッケル酸化物は、水や二酸化炭素等に対する反応性の高さから安全性、サイクル特性等に問題があり、実用電池として使用することは困難であった。そこで上記問題の改善策として、コバルト、マンガン、鉄等の遷移金属元素又はアルミニウムを添加したリチウム-ニッケル複合酸化物粒子が開発されている。
[0004]
 リチウム-ニッケル複合酸化物には、ニッケル、マンガン、コバルトがそれぞれ当モル量添加されてなる、三元系と呼ばれる遷移金属組成Ni 0.33Co 0.33Mn 0.33で表される複合酸化物粒子(以下、三元系と明記することがある。)とニッケル系と呼ばれるニッケル含有量が0.65モルを超えるリチウム-ニッケル複合酸化物粒子(以下、ニッケル系と明記することがある。)がある。容量の観点からは三元系と比べ、ニッケル含有量の多いニッケル系に大きな優位性がある。
[0005]
 しかしながら、ニッケル系は、水や二酸化炭素等に対する反応性の高さからコバルト系や三元系と比べ環境により敏感であり、空気中の水分や二酸化炭素(CO )をより吸収しやすい特徴がある。水分、二酸化炭素は、粒子表面にそれぞれ水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li CO )といった不純物として堆積され、正極製造工程や電池性能に悪影響を与えることが報告されている。
[0006]
 ところで、正極の製造工程では、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子、導電助剤、バインダーと有機溶媒等を混合した正極合剤スラリーをアルミニウム等の集電体上に塗布・乾燥する工程を経る。一般的に水酸化リチウムは、正極合剤スラリー製造工程において、バインダーと反応しスラリー粘度を急激に上昇させる、またスラリーをゲル化させる原因となることがある。これらの現象は不良や欠陥、正極製造の歩留まりの低下を引き起こし、製品の品質に差を生じさせることがある。また、充放電時、これら不純物は電解液と反応しガスを発生させることがあり、電池の安定性に問題を生じさせかねない。
[0007]
 したがって、ニッケル系を正極活物質として用いる場合、上述した水酸化リチウム(LiOH)等の不純物の発生を防ぐため、その正極製造工程を脱炭酸雰囲気下におけるドライ(低湿度)環境下で行う必要がある。そのため、ニッケル系は理論容量が高くリチウムイオン二次電池の材料として有望であるにも関わらず、その製造環境を維持するために高額な設備導入コスト及びランニングコストが掛かるため、その普及の障壁となっているという問題がある。
[0008]
 このような問題を解決するために、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面上にコーティング剤を用いることにより被覆する方法が提案されている。このようなコーティング剤としては、無機系のコーティング剤と有機系のコーティング剤に大別され、無機系のコーティング剤としてはヒュームドシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸コバルト、フッ化リチウムなどの材料が、有機系のコーティング剤としてはカルボキシメチルセルロース、フッ素含有ポリマーなどの材料が提案されている。
[0009]
 例えば、特許文献1では、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面にフッ化リチウム(LiF)又はフッ素含有ポリマー層を形成する方法、また、特許文献2では、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子にフッ素含有ポリマー層を形成し、更に不純物を中和するためのルイス酸化合物を添加する方法が提案されている。いずれの処理もフッ素系材料を含有するコーティング層により、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子が疎水性へと改質され、水分の吸着を抑制し、水酸化リチウム(LiOH)などの不純物の堆積を抑制することが可能となる。
[0010]
 しかしながら、これらのコーティング方法に用いられる上記のフッ素系材料を含有するコーティング層は、静電引力のみによってリチウム-ニッケル複合酸化物粒子に付着しているに過ぎない。そのため、スラリー製造工程で溶剤として用いるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に再溶解してしまい、コーティング層がリチウム-ニッケル複合酸化物粒子から脱離しやすい。その結果、脱炭酸雰囲気下におけるドライ(低湿度)環境下で正極を保管しなければならず、ニッケル系において問題とされている不良や欠陥、歩留まりの低下を十分に抑制することができないばかりか、実質的に不純物の発生による電池の安定性の問題を十分に解決することができるものとはなっていなかった。

先行技術文献

特許文献

[0011]
特許文献1 : 特開2013-179063号公報
特許文献2 : 特表2011-511402号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0012]
 本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、大気雰囲気下で取り扱うことができ、且つ電池特性に悪影響がないリチウムイオン伝導体の被覆膜を得ることのできる、被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子及びその製造方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明は、上述した従来技術における問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭素数が8以下の有機化合物をラジカル化することでラジカル化有機化合物を得る工程と、重合体又は共重合体の有機化合物をニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面上に被覆する被覆工程と、を含む製造方法により製造された被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子であれば、大気安定性が向上し、且つ正極活物質としての電池特性に悪影響は与えることはないことを見出し、本発明を完成するに至った。
[0014]
 第一の発明は、大気圧下でプラズマ化された反応中に、炭素数が8以下の有機化合物をキャリアガスとともに導入し、該有機化合物をラジカル化することでラジカル化有機化合物を得る有機化合物ラジカル化工程と、前記ラジカル化有機化合物とニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面とを接触させることにより、該ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜を被覆する被覆工程と、を備える被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
[0015]
 第二の発明は、前記炭素数が8以下の有機化合物は、炭素数が4以下の脂肪族化合物及び脂環式化合物からなる群より選択される少なくとも1種類以上からなる有機化合物である第一の発明に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
[0016]
 第三の発明は、前記炭素数が8以下の有機化合物は、炭素数が5以上8以下の脂肪族化合物、脂環式化合物及び芳香族化合物からなる群より選択される少なくとも1種類以上からなる有機化合物である第一の発明に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
[0017]
 第四の発明は、前記反応ガスが、アルゴン、ヘリウム、窒素、及び酸素からなる群より選択される少なくとも1種類以上のガスを含む第一から第三のいずれかの発明に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
[0018]
 第五の発明は、前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種類以上のガスを含む第一から第四のいずれかの発明に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
[0019]
 第六の発明は、前記ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子が下記一般式(1)で表される第一から第五のいずれかの発明に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
 Li Ni (1-y-z) ・・・(1)
 (式中、xは0.80~1.10、yは0.01~0.20、zは0.01~0.15、1-y-zは0.65を超える値であって、Mは、Co又はMnより選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、NはAl、In又はSnより選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。)
[0020]
 第七の発明は、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に、重合体又は共重合体の脂肪族化合物又は脂環式化合物が被覆されているリチウムイオン電池正極活物質用の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子である。

発明の効果

[0021]
 本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法により製造された被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、水分、炭酸ガスの透過を抑制できる被覆膜で被覆されており、大気安定性に優れた被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子である。又、本発明に関する被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の被覆膜は分子レベルで強固に結合している。そのため、本発明に関する被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は更に大気安定性に優れる。したがって、炭酸ガス濃度、水分濃度が厳しく管理された正極製造設備に替えて、コバルト系、三元系で用いられてきた製造設備も流用して製造することができる。
[0022]
 更に、この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の被覆膜は、良好なリチウムイオン伝導性を有する。そのため、被覆膜によって正極活物質としての電池特性に悪影響は与えることはない。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、これまでできる、高容量リチウムイオン電池用複合酸化物正極活物質として提供できる。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] 実施例1~3及び比較例1の1週間静置した場合における粒子質量当たりの変化率(%)である。
[図2] 実施例4~6及び比較例1の1週間静置した場合における粒子質量当たりの変化率(%)である。
[図3] 実施例1~3及び比較例1のサイクル試験前のインピーダンス試験によるCole-Coleプロットである。
[図4] 実施例4~6及び比較例1のサイクル試験前のインピーダンス試験によるCole-Coleプロットである。

発明を実施するための形態

[0024]
 以下に本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子とその製造方法、及びニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に被覆される被覆膜について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の詳細な説明によって限定的に解釈されるものではない。本発明において、一次粒子が凝集した二次粒子をニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子と呼ぶ場合がある。
[0025]
 <被覆膜>
 本発明に関する被覆膜は、炭素数が8以下の有機化合物を被覆材料として、所定条件の大気圧プラズマ重合処理によって、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面上に形成される被覆膜である。本発明に関する被覆膜は、良好なリチウムイオン伝導性を有する。そのため、リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に被覆される被覆膜が正極活物質の電池特性に悪影響を与えることはない。又、本発明に関する被覆膜は、後述するように所定条件の大気圧プラズマ重合処理によって共重合体を形成することにより被覆されるため、薄膜であるにもかかわらず、非常に強固で安全性も高い。そして、当該重合体又は共重合体からなる被覆膜がニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子のコーティング層として働くことにより、被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は大気安定性に優れる。したがって、コバルト系、三元系で用いられてきた製造設備も流用して製造することができる。そのため、本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法は、優れた大気安定性を備えた被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を製造することのできる製造方法である。以下、本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法について説明する。
[0026]
[ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子]
 ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、球状粒子であって、その平均粒径は、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として良好な電池性能を有するとともに、且つ良好な電池の繰り返し寿命(サイクル特性)の両立ができるため好ましい。
[0027]
 また、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
[0028]
 Li Ni (1-y-z)・・・(1)
 式中、xは0.80~1.10、yは0.01~0.20、zは0.01~0.15、1-y-zは0.65を超える値であって、Mは、Co又はMnから選ばれる少なくとも1種類の元素を示し、NはAl、In又はSnから選ばれる少なくとも1種類の元素を示す。
[0029]
 尚、1-y-zの値(ニッケル含有量)は、容量の観点から、好ましくは0.70を超える値であり、更に好ましくは0.80を超える値である。
[0030]
 コバルト系(LCO)、三元系(NCM)、ニッケル系(NCA)の電極エネルギー密度(Wh/L)は、それぞれ2160Wh/L(LiCoO )、2018.6Wh/L(LiNi 0.33Co 0.33Mn 0.33Co 0.33)、2376Wh/L(LiNi 0.8Co 0.15Al 0.05)となる。そのため、当該ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子をリチウムイオン電池の正極活物質として用いることで、高容量の電池を作製することができる。
[0031]
 <被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法>
 本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法は、ラジカル化有機化合物を得る有機化合物ラジカル化工程と、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜を被覆する被覆工程と、を含む製造方法である。具体的には、大気圧プラズマ重合処理によって、炭素数が8以下の有機化合物をラジカル化させ、その後、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面上でラジカル化有機化合物同士を反応させる。以下、有機化合物ラジカル化工程及び被覆工程について各々説明する。
[0032]
 [有機化合物ラジカル化工程]
 有機化合物ラジカル化工程とは、大気圧下でプラズマ化された反応ガス中に、炭素数が8以下の有機化合物をキャリアガスとともに導入し、該有機化合物をラジカル化することでラジカル化有機化合物を得る工程である。
[0033]
 大気圧プラズマとしては、コロナ放電、誘電体バリア放電、RF放電、マイクロ波放電、アーク放電などを挙げることができるが、本発明では、特に制限されることなく、いずれも適用可能である。このため、プラズマ化するために使用する装置としては、大気圧下で反応ガスをプラズマ化することができるものであれば、特に制限されることなく、公知のプラズマ発生装置を使用することができる。尚、本明細書において、大気圧とは、大気圧(1013.25hPa)及びその近傍の気圧を含み、通常の大気圧の変化の範囲内の気圧も含まれる。
[0034]
 又、有機化合物ラジカル化工程では、予めプラズマ化された反応ガス中に、炭素数が8以下の有機化合物をキャリアガスを介して導入する。このような構成を採ることにより、有機化合物の基本骨格(炭素骨格)を維持したまま、緻密な被覆膜をニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面を全体にわたって満遍なく形成することができる。
[0035]
 (プラズマ化条件)
 反応ガスをプラズマ化するための条件は、炭素数が8以下の有機化合物を効率よくラジカル化し、緻密な被覆膜を形成する観点から、ジェネレータ出力電圧を150V以上350V以下とすることが好ましく、200V以上330V以下とすることがより好ましい。ジェネレータ出力電圧が150V未満では、反応ガスが十分にプラズマ化できず、炭素数が8以下の有機化合物を効率よくラジカル化することができない場合がある。ジェネレータ出力電圧が350V超では、プラズマ発生装置の破損といった問題が生じる場合がある。
[0036]
 (反応ガス)
 本発明に関する反応ガスは、プラズマ化が容易なものであれば特に制限されることはなく、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素、及び空気などを使用することができる。これらの反応ガスは、単独で使用してもよく、2種以上を所定の割合で混合して使用してもよい。中でも、入手容易性から、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素からなる群より選択される少なくとも1種類以上を含む反応ガス用いることが好ましい。特に、安価な窒素、酸素、又は、空気を用いることがより好ましく、空気を用いることが更に好ましい。
[0037]
 (キャリアガス)
 本発明に関するキャリアガスとしては、有機化合物を円滑に搬送することができるものであれば特に制限されることはなく、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、及び酸素などを使用することができる。これらの反応ガスは、単独で使用してもよく、2種以上を所定の割合で混合して使用してもよい。中でも、入手容易性から、アルゴン、ヘリウム、窒素及び酸素の群より選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましく、窒素を用いることがより好ましい。
[0038]
[有機化合物]
 本発明に関する被覆膜を形成することのできる炭素数が8以下の有機化合物としては、キャリアガスと均一な混合を行える気体又は揮発性を有する液体の炭化水素系化合物であることが好ましい。本発明に関する被覆膜を形成することのできる最適な炭素数が8以下の有機化合物としては、炭素数が4以下の炭化水素系ガスや炭素数が5以上8以下の炭化水素系溶剤を好適に用いることができる。尚、炭化水素系ガスには、常態で気体であり、炭素数が4以下の炭化水素化合物、及び、この炭化水素化合物の水素原子の一部を他の原子や官能基で置換した化合物が含まれる。また、炭化水素系溶剤には、常態で液体であり、炭素数が5以上8以下の炭化水素化合物、及び、この炭化水素化合物の水素原子の一部を他の原子や官能基で置換した化合物が含まれる。これらの有機化合物は、常態で気体又は適度な揮発性を有する液体であるため、キャリアガスとの均一な混合が容易である。そのため、工業規模の生産においても、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面上に緻密な被覆膜を、容易且つ満遍なく形成することができる。
[0039]
 尚、本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法では、有機化合物として、上述の炭化水素系ガス又は炭化水素系溶剤のいずれか一方を用いることを前提としているが、取扱性や安全性を確保することができる限り、炭化水素系ガスと炭化水素系溶剤を混合して用いることも可能である。また、有機化合物(炭化水素系ガス、炭化水素系溶剤)を導入する際、必ずしも有機化合物のみで導入する必要はなく、有機化合物を主成分とする限り、安定化剤や酸化防止剤などの添加剤と混合した状態で導入してもよい。
[0040]
 尚、有機化合物の導入量は、使用する有機化合物の種類、被覆対象となるニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の形状や大きさ、プラズマ化条件などを考慮の上、被覆膜の厚さが上述した範囲になるように適宜調整することが好ましい。
[0041]
 (炭化水素系ガス)
 炭化水素系ガスは、常態で気体であり、キャリアガスや反応ガスとの均一な混合を容易に行うことができ、且つ、その混合状態を比較的長時間にわたって維持することができる。このため、本発明に関する被覆膜を形成することのできる有機化合物として炭化水素系ガスを用いることにより、有機化合物ラジカル化工程において均一に有機化合物をラジカル化(活性化)することが容易となるため、きわめて緻密な被覆膜をニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子材料表面の全体にわたって満遍なく形成することができる。
[0042]
 このような炭化水素系ガスとしては、炭素数が4以下の脂肪族化合物及び/又は脂環式化合物を用いることが好ましい。
[0043]
 例えば、炭素数が4以下の脂肪族化合物としては、アルカン、アルケン及びアルキンなどを使用することができる。具体的には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、メチルアセチレン、エチルアセチレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、イソブテン及び1,3-ブタジエンなどから選択される少なくとも1種類を用いることができる。
[0044]
 また、炭素数が4以下の脂環式化合物としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブテンなどから選択される少なくとも1種類を用いることができる。ただし、これらの炭化水素系ガスは人体に有害であるため、取扱時(特に、キャリアガスとの混合時)には、局所排気装置などを設置することにより飛散を防止し、安全性を確保することが好ましい。
[0045]
 (炭化水素系溶剤)
 炭化水素系溶剤は、常態で液体であり、且つ、適度な揮発性を有するため、安全性に優れるばかりでなく、キャリアガスや反応ガスとの均一な混合が可能である。このため、本発明に関する被覆膜を形成することのできる有機化合物として炭化水素系溶剤を用いることにより、上述した炭化水素系ガスと同様に、有機化合物ラジカル化工程において均一に有機化合物をラジカル化(活性化)することが容易となるため、きわめて緻密な被覆膜をニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子材料表面の全体にわたって満遍なく形成することができる。
[0046]
 このような炭化水素化合物としては、炭素数が5以上8以下の脂肪族化合物、脂環式化合物又は芳香族化合物を好適に用いることができる。
[0047]
 例えば、炭素数が5以上8以下の脂肪族化合物としては、アルカン、アルケン及びアルキンのほか、アルコールやカルボン酸なども用いることができる。これらの中でも、被覆膜の熱分解性のしやすさを考慮すると、アルカンが好ましい。具体的には、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの直鎖状のもののほか、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2-エチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2-メチルヘプタン、2,3-ジメチルヘキサン、3-エチルヘキサンなどの分岐を有するものを好適に用いることができる。
[0048]
 炭素数が5以上8以下の脂環式化合物としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シス-1,3-ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ノルボルナン、シクロヘキセンなどを用いることができる。
[0049]
 炭素数が5以上8以下の芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを用いることができる。
[0050]
 これらの中でも、取扱いの容易性や被覆膜の熱分解性を考慮すると、直鎖状のn-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンが好ましく、n-ヘキサンが特に好ましい。
[0051]
 ただし、炭化水素系溶剤は、キャリアガスとの混合時又はラジカル化する際の条件によっては、揮発状態を長時間にわたって維持することができない場合がある。この場合、炭化水素系溶剤が液体状となり、その分布に偏りが生じ、被覆膜の組成や厚さにばらつきが生じるおそれがある。このため、有機化合物ラジカル化工程において、キャリアガスとの混合時やラジカル化する際の条件を適切に制御することが好ましい。
[0052]
 [被覆工程]
 被覆工程とは、ラジカル化有機化合物とニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面とを接触させることにより、該ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜を被覆する工程である。
[0053]
 有機化合物ラジカル化工程において、ラジカル化されたラジカル化有機化合物は、ラジカル化有機化合物同士による重合化反応が進行することにより、単量体、半重合体及び重合体といった種々の形態で存在している。したがって、ラジカル化有機化合物は、
 (i)ラジカル化有機化合物同士が、重合する態様、
 (ii)ラジカル化有機化合物が重合しながら、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に堆積する態様、又は、
 (iii)ラジカル化有機化合物が重合した後に、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に堆積する態様、
の(i)から(iii)の態様が考えられる。本発明の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法では、上述した被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を得ることができる限り、いずれかの態様に制限されることはない。
[0054]
 本発明では、被覆膜の厚さは、4nm以上200nm以下の範囲とすることが好ましい。被覆膜の厚さが4nm未満では、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の水分、炭酸ガスの透過を十分に抑制することができず、短時間で正極合剤スラリーがゲル化するため好ましくない。一方、被覆膜の厚さが200nmを超えると、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面の水分、炭酸ガスの透過を抑制することはできるが、この被覆膜の影響により、イオン伝導性が低下し、正極活物質としての電池特性に悪影響を与えるおそれがある。
[0055]
 尚、正極合剤スラリーのゲル化を防止し、且つ、より優れた正極活物質としての電池特性を実現するためには、被覆膜の厚さの下限値を6nm以上とすることが好ましく、8nm以上とすることがより好ましく、10nm以上とすることが更に好ましい。また、その上限値を100nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましく、25nm以下とすることが更に好ましい。この厚さは、使用するプラズマ重合処理装置の条件設定により適宜調整することができる。
[0056]
 例えば、プラズマ重合処理装置として、プラズマトリート株式会社製の大気圧プラズマ重合処理装置(プラズマポリマーラボシステム PAD-1型)を使用する場合、ノズル部では生成されたプラズマに有機化合物を導入しラジカル有機化合物を得る、更にノズル下部よりニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を導入することで粒子表面を被覆することができる。
[0057]
 被覆膜の制御は、導入する有機化合物の量、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の導入回数に由来する。
実施例
[0058]
 以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は以下実施例によってのみ限定されるものではない。
[0059]
 実施例1~6として、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子(遷移金属組成がLi 1.03Ni 0.82Co 0.15Al 0.03で表される複合酸化物粒子15g)の表面に、大気圧プラズマ重合処理装置(プラズマトリート株式会社製、プラズマポリマーラボシステム PAD-1型)を用い、既存ノズル下部に粒子を導入する機構を組み込み作製した被覆膜を形成したサンプルをそれぞれ用意した。尚、これらの実施例及び比較例では、キャリアガスとしてN (窒素)を使用し、被覆材料の導入量を20g/時間に調整するとともに、プラズマ化条件を下記のように設定した。また、粒子表面の被覆膜は分析が難しいことから、ノズルから噴霧される被覆材料をガラス基板上に析出させ、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)及びTOF-MS(飛行時間型質量分析法)を用いて炭素数が8以下の有機化合物が開環重合又はラジカル重合したポリマーとしてガラス基板上に析出されていることを確認した。
[0060]
  プラズマ発生装置の発信周波数  :21kHz
  ジェネレータの出力電圧     :280V
  圧力              :大気圧(1013.25hPa)
[0061]
 得られた被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の被覆膜の厚さならびにその最大値及び最小値は、被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を断面観察可能な状態とした上で、TEM(株式会社日立ハイテクノロジース製、透過型電子顕微鏡HF-2000)を用いて、任意の3箇所において、被覆膜の厚さを測定することにより算出した。
[0062]
 (実施例1)
 有機化合物にアセチレン(C  炭素数が4以下の脂肪族化合物)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは10nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例1に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0063]
 (実施例2)
 有機化合物にメタン(CH  炭素数が4以下の脂肪族化合物)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは8nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例2に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0064]
 (実施例3)
 有機化合物にプロパン(C  炭素数が4以下の脂肪族化合物)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは12nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例3に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0065]
 (実施例4)
 有機化合物にブタン(C 10 炭素数が4以下の脂肪族化合物)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは16nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例4に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0066]
 (実施例5)
 有機化合物にn-ヘキサン(C 12 炭素数が5以上8以下の脂肪族化合物の炭化水素系溶剤)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは20nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例5に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0067]
 (実施例6)
 有機化合物にシクロオクタン(C 16 炭素数が5以上8以下の脂環式化合物の炭化水素系溶剤)を用いた。ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子表面の被腹膜の厚さは22nmとなった。この被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物を実施例6に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、サイクル試験)を行った。
[0068]
 (比較例1)
 処理を施さないニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を用いたこと以外、実施例1~実施例6と同様に大気安定性、ゲル化試験、電池特性試験を行った。
[0069]
 <大気安定性試験>
 実施例及び比較例のニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子をそれぞれ2.0gガラス瓶に詰め、温度30℃・湿度70%の恒湿恒温槽に1週間静置し初期質量からの増加質量を測定し、粒子質量当たりの変化率を算出した。比較例1に係るニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の1週間後の粒子質量当たりの変化率を100として実施例1~実施例6及び比較例1の1日ごとの変化率を図1及び図2に示す。
[0070]
 図1及び図2から分かるように、実施例1から実施例6のそれぞれアセチレン、メタン、プロパン、ブタン、n-ヘキサン、シクロオクタンの被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、前記被覆膜が被覆されていない比較例1のニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子と比べ、質量当たりの変化率が小さい。本結果から、前記被覆膜が被覆されていることで、大気中の水分、炭酸ガスの透過を抑制できることが確認された。
[0071]
 <ゲル化試験>
 正極合剤スラリーの粘度の経時変化の測定を、以下の順序により正極合剤スラリー(以下、単にスラリーと表記する。)を作製し、粘度増加及びゲル化の観察を行った。
[0072]
 配合比として、実施例及び比較例に係るニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子:導電助剤:バインダー:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のそれぞれの質量比が、45:2.5:2.5:50となるように秤量し、更に1.5質量%の水を添加後、自転・公転ミキサーで撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーを25℃のインキュベーター内で保管し、経時変化をスパチュラでかき混ぜ粘度増加、ゲル化度合いを、実施例及び比較例についてそれぞれ確認し、完全にゲル化するまで保管を行った。
[0073]
 実施例1及び実施例2に係るスラリーが完全にゲル化するまでに5日を要し、実施例3及び実施例5に係るスラリーが完全にゲル化するまでに8日を要し、実施例4及び実施例6に係るスラリーが完全にゲル化するまでに14日以上を要した。これに対し、比較例1に係るスラリーが完全にゲル化するまでには1日を要した。このことから、実施例1から実施例6に係るスラリーは、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜が被覆されていることで、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li CO )といった不純物の生成が抑えられ、これら不純物のスラリー中への溶解を抑制し、バインダーと反応することによるスラリーのゲル化及びスラリー粘度の上昇させることを妨げることができることが確認された。
[0074]
 また、フッ素化合物によってニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子を被覆させた場合には、フッ素化合物は一般的にNMPに溶解するため、フッ素系化合物が被覆されても、スラリー混合時、被覆膜が溶解すると考えられる。そのため、実施例に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子とは異なり、製造された正極を通常保管する際、不純物生成を抑制することが困難と考えられる。したがって、正極保管時に生成した不純物が原因となる電池駆動時のガス発生を伴う電解液との反応の抑制が難しく、高額な保管設備が必要となる。
[0075]
 <電池特性評価>
 以下の手順にて、評価用非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製し、電池特性評価を行った。
[0076]
 [二次電池の製造]
 本発明のニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の電池特性評価は、コイン型電池とラミネート型電池を作製し、コイン型電池で充放電容量測定を行い、ラミネートセル型電池で充放電サイクル試験と抵抗測定を行った。
[0077]
 (a)正極
 得られた実施例1~6に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子及び比較例に係るニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子に、導電助剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とをこれらの材料の質量比が85:10:5となるように混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に溶解させ、正極合剤スラリーを作製した。この正極合剤スラリーを、コンマコーターによりアルミ箔に塗布し、100℃で加熱し、乾燥させることにより正極を得た。得られた正極をロールプレス機に通して荷重を加え、正極密度を向上させた正極シートを作製した。この正極シートをコイン型電池評価用に直径がφ9mmとなるように打ち抜き、またラミネートセル型電池用に50mm×30mmとなるように切り出し、それぞれを評価用正極電極として用いた。
[0078]
 (b)負極
 負極活物質としてグラファイトと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これらの材料の質量比が92.5:7.5となるように混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に溶解させて、負極合剤ペーストを得た。
[0079]
 この負極合剤スラリーを、正極と同様に、コンマコーターにより銅箔に塗布し、120℃で加熱し、乾燥させるとことにより負極を得た。得られた負極をロールプレス機に通して荷重を加え、電極密度を向上させた負極シートを作製した。得られた負極シートをコイン型電池用にφ14mmとなるように打ち抜き、またラミネートセル型電池用に54mm×34mmとなるように切り出し、それぞれを評価用負極として用いた。
[0080]
 (c)コイン電池及びラミネートセル型電池
 作製した評価用電極を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極を用いて2032型コイン電池とラミネートセル型電池を、露点が-80℃に管理されたアルゴン雰囲気のグローブボックス内で作製した。電解液には、1MのLiPF を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7(富山薬品工業株式会社製)、セパレーターとしてガラスセパレーターを用いてそれぞれの評価用電池を作製した。
[0081]
 <充放電試験>
 作製したコイン型電池について、組立から24時間程度静置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、25℃の恒温槽内で、0.2Cレートの電流密度でカットオフ電圧4.3Vになるまで充電した。1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行った。
[0082]
 実施例に係るコイン型電池の初期放電容量は、実施例1:191.88mAh/g、実施例2:192.01mAh/g、実施例3:191.79mAh/g、実施例4:191.85mAh/g、実施例5:190.98mAh/g、実施例6:191.32mAh/g、であったのに対し、比較例1に係るコイン型電池の初期放電容量は、191.93mAh/gであった。
[0083]
 <サイクル試験>
 作製したラミネート型電池について、コイン型電池と同様に、組立から24時間程度静置し、開回路電圧が安定した後、25℃の恒温槽内で、0.2Cレートの電流密度でカットオフ電圧4.1Vになるまで充電した。1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電した。次にこの電池を、60℃の恒温槽内で2.0Cレートの電流密度で4.1V-CC充電、3.0V-CC放電を繰り返すサイクル試験を行い、500サイクル後の容量維持率を確認するサイクル試験を行った。1サイクル目を100%とするサイクル試験後の容量維持率は、実施例1:85.9%、実施例2:88.0%、実施例3:87.0%、実施例4:86.9%、実施例5:87.6%、実施例6:87.0%、であったのに対し、比較例1に係るサイクル試験後の容量維持率は80.7%であった。
[0084]
 図3及び図4のサイクル試験前のインピーダンスにおけるCole-Coleプロットでは、実施例及び比較例に係るラミネート電池はほぼ同等であった。これは、実施例のラミネート電池に使用されたニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子には重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜となったアセチレン、メタン、プロパン、ブタン、n-ヘキサン、シクロオクタンが充放電容量、電池抵抗、サイクル特性ともに被覆処理のないニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子と同等又は優れることが確認された。
[0085]
 以上より、本発明に係る被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子は、ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の課題とされていた環境安定性に優れ、且つニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の高い放電容量と同等以上の特性を有する優れたリチウムイオン電池正極活物質用のニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子であることが分かる。

請求の範囲

[請求項1]
 大気圧下でプラズマ化された反応ガス中に、炭素数が8以下の有機化合物をキャリアガスとともに導入し、該有機化合物をラジカル化することでラジカル化有機化合物を得る有機化合物ラジカル化工程と、
 前記ラジカル化有機化合物とニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面とを接触させることにより、該ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に重合体又は共重合体の有機化合物を含む被覆膜を被覆する被覆工程と、を備える被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
[請求項2]
 前記炭素数が8以下の有機化合物は、炭素数が4以下の脂肪族化合物及び脂環式化合物からなる群より選択される少なくとも1種類以上からなる有機化合物である請求項1に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
[請求項3]
 前記炭素数が8以下の有機化合物は、炭素数が5以上8以下の脂肪族化合物、脂環式化合物及び芳香族化合物からなる群より選択される少なくとも1種類以上からなる有機化合物である請求項1に記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
[請求項4]
 前記反応ガスが、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素及び空気からなる群より選択される少なくとも1種類以上のガスを含む請求項1から3のいずれかに記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
[請求項5]
 前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、及び窒素からなる群より選択される少なくとも1種類以上のガスを含む請求項1から4のいずれかに記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
[請求項6]
 前記ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子が下記一般式(1)で表される請求項1から5のいずれかに記載の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
 Li Ni (1-y-z) ・・・(1)
 (式中、xは0.80~1.10、yは0.01~0.20、zは0.01~0.15、1-y-zは0.65を超える値であって、Mは、Co又はMnより選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、NはAl、In又はSnより選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。)
[請求項7]
 ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子の表面に、重合体又は共重合体の脂肪族化合物又は脂環式化合物が被覆されているリチウムイオン電池正極活物質用の被覆ニッケル系リチウム-ニッケル複合酸化物粒子。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]