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1. (WO2017131106) LOW-DENSITY GEL ARTICLE AND METHOD FOR PRODUCING LOW-DENSITY GEL ARTICLE
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明 細 書

発明の名称 低密度ゲル体および低密度ゲル体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081  

実施例

0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

産業上の利用可能性

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 低密度ゲル体および低密度ゲル体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、エアロゲルおよびキセロゲルをはじめとする低密度ゲル体と、その製造方法とに関する。

背景技術

[0002]
 エアロゲルおよびキセロゲルをはじめとする低密度ゲル体は、気孔率が高く、その名称に示されているように低密度の固相のゲル体である。気孔率の高さは、ゲル骨格と、孔径にしておよそ1000nm以下、好ましくは100nm以下の微細な細孔とが3次元的な網目構造を形成していることに基づく。低密度ゲル体は、このような網目構造に基づく特徴的な特性、例えば、透明性、小さな比重、高い比表面積、および極めて低い熱伝導率を示す。これらの特性により低密度ゲル体には、例えば、透光性断熱材、遮音材、担持体としての用途が期待される。
[0003]
 より具体的な低密度ゲル体の例は、シリカ(SiO 2)から骨格が構成されるシリカエアロゲルおよびシリカキセロゲル、ならびにシルセスキオキサン(RSiO 1.5)構造などの有機ポリシロキサンから骨格が構成される有機-無機ハイブリッドゲルであるエアロゲルおよびキセロゲルである。これらの低密度ゲルは、例えば、ゾル-ゲル法により形成できる。特許文献1,2には、ゾルーゲル法を用いた有機-無機ハイブリッドエアロゲルとその製造方法が、非特許文献1には、ゾル-ゲル法を用いた有機-無機ハイブリッドエアロゲルおよびキセロゲルとその製造方法が、それぞれ開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 国際公開第2005/110919号
特許文献2 : 国際公開第2007/010949号

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Kazuyoshi Kanamori et al., "New Transparent Methylsilsesquioxane Aerogels and Xerogels with Improved Mechanical Properties", Advanced Materials, 2007, vol. 19, pp. 1589-1593

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 低密度ゲル体は、その構造が故に上述した特徴的な特性を示す一方で、その構造が故に、脆く、必ずしも十分ではない機械的強度を有する。低密度ゲル体の特徴的な特性を活かした用途の拡大、例えば、シートなどのモノリス体である低密度ゲル体の透明性断熱材および/または遮音材としての使用のためには、機械的強度が不足しているのが実状である。
[0007]
 本発明の目的の一つは、機械的強度が向上した低密度ゲル体とその製造方法の提供である。

課題を解決するための手段

[0008]
 本開示の低密度ゲル体は、気相重合性モノマーの重合体から構成されるコーティング層を表面に有する。
[0009]
 本開示の低密度ゲル体の製造方法は、前駆体である低密度ゲル体を収容した系において気相重合性モノマーの気相重合を進行させることにより、前記モノマーの重合体から構成されるコーティング層を前記前駆体の表面に形成して、前記コーティング層を表面に有する低密度ゲル体を得る方法である。

発明の効果

[0010]
 本発明によれば、機械的強度が向上した低密度ゲル体が得られる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、本開示の低密度ゲル体の一例を模式的に示す断面図である。
[図2] 図2は、実施例において評価した、製造例1で作製したコーティング層を表面に有さない低密度ゲル体および実施例1で作製したコーティング層(厚さ0.50μm;厚さd2にして1.0μm)を表面に有する低密度ゲル体に対する3点曲げ試験の結果を示す図である。
[図3] 図3は、実施例において評価した、製造例1で作製したコーティング層を表面に有さない低密度ゲル体および実施例1で作製したコーティング層(厚さ1.0μmまたは2.0μm;厚さd2にして2.0μmまたは4.0μm)を表面に有する低密度ゲル体に対する3点曲げ試験の結果を示す図である。
[図4] 図4は、実施例において評価した、製造例2で作製したコーティング層を表面に有さない低密度ゲル体および実施例2で作製したコーティング層(厚さ1.0μmまたは2.0μm;厚さd2にして2.0μmまたは4.0μm)を表面に有する低密度ゲル体に対する3点曲げ試験の結果を示す図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 本開示の第1の態様は、気相重合性モノマーの重合体から構成されるコーティング層を表面に有する低密度ゲル体を提供する。
[0013]
 本開示の第2の態様は、第1の態様に加え、前記モノマーが、オレフィン、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である低密度ゲル体を提供する。
[0014]
 本開示の第3の態様は、第1の態様に加え、前記モノマーが、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である低密度ゲル体を提供する。
[0015]
 本開示の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に加え、前記コーティング層の厚さが0.1~10μmである低密度ゲル体を提供する。
[0016]
 本開示の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様に加え、モノリス体である低密度ゲル体を提供する。
[0017]
 本開示の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様に加え、前記低密度ゲル体の厚さd1(μm)に対する前記コーティング層の厚さd2(μm)の比d2/d1が0.001~1%である低密度ゲル体を提供する。
[0018]
 本開示の第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様に加え、エアロゲルまたはキセロゲルである低密度ゲル体を提供する。
[0019]
 本開示の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様に加え、有機-無機ハイブリッドゲルである低密度ゲル体を提供する。
[0020]
 本開示の第9の態様は、前駆体である低密度ゲル体を収容した系において気相重合性モノマーの気相重合を進行させることにより、前記モノマーの重合体から構成されるコーティング層を前記前駆体の表面に形成して、前記コーティング層を表面に有する低密度ゲル体を得る、低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0021]
 本開示の第10の態様は、第9の態様に加え、前記モノマーが、オレフィン、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0022]
 本開示の第11の態様は、第9の態様に加え、前記モノマーが、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0023]
 本開示の第12の態様は、第9から第11のいずれかの態様に加え、前記前駆体がモノリス体であり、モノリス体である、前記コーティング層を表面に有する低密度ゲル体を得る低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0024]
 本開示の第13の態様は、第9から第12のいずれかの態様に加え、前記前駆体および得られた前記低密度ゲル体がエアロゲルまたはキセロゲルである低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0025]
 本開示の第14の態様は、第9から第13のいずれかの態様に加え、前記前駆体および得られた前記低密度ゲル体が有機-無機ハイブリッドゲルである低密度ゲル体の製造方法を提供する。
[0026]
 [低密度ゲル体]
 図1に、本開示の低密度ゲル体の一例を示す。図1に示す低密度ゲル体1は、コーティング層3を表面に有する。より具体的には、低密度ゲル体であるゲル本体部2と、ゲル本体部2の表面に形成されたコーティング層3とを有する。コーティング層3は、気相重合性モノマーの重合体から構成される。
[0027]
 低密度ゲル体1では、上記重合体により構成されるコーティング層3が表面に存在することにより、機械的強度が向上している。機械的強度は、例えば、曲げ強度、剪断変形に対する強度、あるいは圧縮強度で表現できる。曲げ強度は、例えば、JIS K7171の規定に準拠した3点曲げ試験により評価できる。
[0028]
 エアロゲルおよびキセロゲルをはじめとする従来の低密度ゲル体は、その構造上、脆くて靱性および延性が低い。一方、低密度ゲル体1の曲げ強度は、従来の低密度ゲル体が示す曲げ強度よりも大きく、例えば、0.05MPa以上とすることができ、低密度ゲル体1(ゲル本体部2)の種類(例えば、骨格がシリカ(SiO 2)により構成される低密度ゲル体に比べて、シルセスキオキサン(RSiO 1.5)構造などの有機ポリシロキサンにより構成される有機-無機ハイブリッド低密度ゲル体の方が機械的強度が大きい)、およびコーティング層3の構成、例えばコーティング層3を構成する重合体の種類(組成)あるいはコーティング層の厚さ、によっては、0.1MPa以上、1MPa以上、さらには2MPa以上という、脆性が大幅に低下し、機械的強度が向上した特性を示しうる。なお、シルセスキオキサン構造のRは、水素原子、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、アルキルでありうる。また、「有機-無機ハイブリッド」とは、典型的にはシルセスキオキサンの構造式に示されているように、無機部(-Si-O-)と有機部(R-O-)とが分子レベルで複合化されていることを意味する。有機-無機ハイブリッドゲルでは、有機部により、無機部に特有の脆性の高さが改善されたり、有機部によるさらなる機能が得られたりする。
[0029]
 低密度ゲル体1の曲げ強度は、その形状および厚さによっても変化する。モノリス体、例えばシート、直方体またはディスクである低密度ゲル体1では、厚さ1μmのときの曲げ強度にして、例えば0.1MPa以上、低密度ゲル体1(ゲル本体部2)の種類およびコーディング層3の構成によっては、1MPa以上、さらには2MPa以上という、高い機械的強度を示す。
[0030]
 低密度ゲル体1の向上した機械的強度を、コーティング層3を有さない同一形状および同一厚さの従来の低密度ゲル体の機械的強度と比較すると、前者の曲げ強度は、後者の曲げ強度に比べて、例えば2倍以上であり、コーティング層3の構成によっては、10倍以上、さらには20倍以上を達成できる。これは、低密度ゲル体1の曲げ強度が、ゲル本体部2自身が示す曲げ強度に比べて、例えば2倍以上であり、コーティング層3の構成によっては、10倍以上、さらには20倍以上を達成できる、とも言い換えることができる。
[0031]
 低密度ゲル体1における機械的強度について、コーティング層3の構成によっては破断歪みを、また指標とすることができる。破断歪みは、例えば、上述の3点曲げ試験により評価できる。
[0032]
 エアロゲルおよびキセロゲルをはじめとする低密度ゲル体は、その構造上、脆くて靱性および延性が低い。一方、低密度ゲル体1の破断歪みは、コーティング層3の構成によっては従来の低密度ゲル体が示す破断歪みよりも大きく、例えば、8%以上とすることができ、低密度ゲル体1(ゲル本体部2)の種類およびコーティング層3の構成によっては、10%以上、20%以上、さらには30%以上という、脆性が大幅に低下し、機械的強度が向上した特性を示しうる。
[0033]
 脆性が改善された低密度ゲル体として、従来、繊維などの強度向上材を混入したゲル体がある(例えば、特開平5-49910号公報を参照)。しかし、このようなゲル体では、混入した強度向上材によって低密度ゲル体に特有の構造が乱れたり失われたりして、必ずしも上記特徴的な特性(透明性、低密度、低熱伝導率など)を十分に得ることができないし、特性自体が失われることがある。より具体的な例として、低密度ゲル構造の均質性が低下することで透明性および/または気孔率が低下したり、熱伝導率および/または密度が上昇したり(すなわち重量が増加したり)する。一方、低密度ゲル体1では、コーティング層3はゲル本体部2の表面に配置されており、ゲル本体部2は低密度ゲル体に特有の構造を保持している。このため、従来の脆性が改善されたゲル体とは異なり、低密度ゲル体に特有の構造が基本的に失われておらず、上記特徴的な特性を得ることができる。もっとも、このような特性の低下が問題ない用途においては、上記強度向上材が混入された低密度ゲル体1およびゲル本体部2であってもよい。なお、低密度ゲル体の一種に、カーボンナノファイバー、アルミナナノファイバーといったナノファイバーを骨格に含ませた低密度ゲル体がある(例えば、Gen Hayase et al., "Ultralow-Density, Transparent, Superamphiphobic Boehmite Nanofiber Aerogels and Their Alumina Derivatives", Chem. Mater., 27(1), pp.3-5 (2015)を参照)が、この低密度ゲル体は、特開平5-49910号公報に開示されているような強度向上材を混入したゲル体、より具体的には、骨格および細孔を問わずに強度向上材が混入されているゲル体とは異なる。骨格にナノファイバーを含ませた上記低密度ゲル体では、低密度ゲル体に特有の構造が保持されている。もちろんこのような低密度ゲル体が、低密度ゲル体1のゲル本体部2であってもよい。
[0034]
 低密度ゲル体1の機械的強度が向上していることから、従来の低密度ゲル体に比べて、低密度ゲル体1の形状の自由度は高く、また、取扱性も向上している。低密度ゲル体1は、例えば、シート、直方体およびディスクのようなモノリス体でありうるし、そのサイズも大きくすることができる。
[0035]
 ゲル本体部2は、低密度ゲル体である限り限定されず、公知の低密度ゲル体でありうる。低密度ゲル体は、孔径にしておよそ1000nm以下の微細な孔径、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下の孔径を有する細孔と、ゲル骨格とが3次元的な網目構造を形成しているゲル体であって、密度が0.5g/cm 3以下、好ましくは0.2g/cm 3以下、より好ましくは0.15g/cm 3以下のゲル体である。細孔の孔径は、例えば、窒素ガス吸着法による細孔分布測定により求めることができる。低密度ゲル体の細孔の平均孔径(細孔分布測定により求めた孔径分布においてD 50に相当する孔径)は、例えば、10~1000nmである。
[0036]
 ゲル本体部2および低密度ゲル体1は、典型的には、エアロゲルまたはキセロゲルである。ゲル本体部2がエアロゲルまたはキセロゲルである場合、低密度ゲル体1は、コーティング層3を表面に有するエアロゲルまたはキセロゲルである。
[0037]
 ゲル本体部2および低密度ゲル体1の骨格を構成する材料は限定されず、公知の低密度ゲル体の骨格を構成する材料でありうる。骨格を構成する材料は、例えばシリカ(SiO 2)、有機ポリマー、カーボン、アルミナ(Al 23)およびチタニア(TiO 2)などの金属酸化物、または有機ポリシロキサン、例えばシルセスキオキサン(RSiO 1.5)構造(材料としては、ポリシルセスキオキサン)である。シルセスキオキサン構造のRは、水素原子、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、アルキルでありうる。アルキルであるRは、例えば、メチル基、エチル基であり、メチル基でありうる。アルケニルであるRは、例えば、ビニル基である。有機ポリシロキサンから構成される骨格を有するゲル体は、一般に、有機-無機ハイブリッドゲルと呼ばれる。すなわち、ゲル本体部2および低密度ゲル体1は、有機-無機ハイブリッドゲルであってもよい。ゲル本体部2が有機-無機ハイブリッドゲルである場合、低密度ゲル体1は、コーティング層3を表面に有する有機-無機ハイブリッドゲルである。有機-無機ハイブリッドゲルは、例えば、特許文献1,2および非特許文献1に開示がある。これら文献に開示の方法では、モノリス体を含む任意の形状を有する有機-無機ハイブリッドゲルを形成できる。
[0038]
 コーティング層3は、気相重合性モノマーの重合体により構成される。気相重合性モノマーとは、気相重合性(気体の状態での重合性)を有するモノマーである。気相重合性モノマーは、気相重合が可能である。
[0039]
 気相重合性モノマーは限定されないが、その重合体(当該モノマーのホモポリマー)が常温(20℃)でガラスである、すなわち当該重合体のガラス転移温度(Tg)が常温を超えるモノマーが、低密度ゲル体1の機械的強度がより向上する観点から好ましい。このとき、コーティング層3はガラス状高分子層である。気相重合性モノマーは、その重合体のTgが50℃以上のモノマーが好ましく、100℃以上のモノマーがより好ましい。
[0040]
 コーティング層3を構成する重合体は、1種類の気相重合性モノマーのホモポリマーでありうるし、2種以上の気相重合性モノマーのコポリマーでありうる。気相重合が可能である限り、コーティング層3を構成する重合体は、気相重合性モノマーと他の物質とのコポリマー、例えば気相重合性モノマーと二酸化炭素(CO 2)とのコポリマーであってもよい。本明細書では、このようなコポリマーも気相重合性モノマーの重合体とする。コーティング層3を構成する重合体がホモポリマーであるかコポリマーであるかを問わず、当該重合体およびコーティング層3のTgは常温を超えることが好ましく、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上である。
[0041]
 気相重合性モノマーは、例えば、オレフィン、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である。重合体のTgが高く、低密度ゲル体1の機械的強度をより向上できることから、気相重合性モノマーは、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
[0042]
 オレフィンは、例えば、エチレンおよびプロピレンから選ばれる少なくとも1種である。
[0043]
 パラキシリレンは、以下の式(1)に示す単量体である。
[0044]
[化1]


[0045]
 パラキシリレン誘導体は、例えば、以下の式(2)または(3)に示す単量体である。
[0046]
[化2]


[0047]
[化3]


[0048]
 式(2)のXは、芳香環の骨格を構成する炭素原子に結合した水素原子の置換基である。式(2)では、4つ存在する当該水素原子の少なくとも1つが置換基Xにより置換されている。複数の水素原子が置換基Xにより置換されている場合、置換基Xの種類は全て同一であっても、一部のみ同一であっても、全て互いに異なっていてもよい。置換基Xは、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基から選ばれる少なくとも1種であり、ハロゲン原子でありうる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種であり、塩素原子でありうる。式(2)のY 1およびY 2は、互いに独立してH 2、HFまたはF 2であり、双方ともH 2またはF 2でありうるしH 2でありうる。式(3)のY 3およびY 4は、互いに独立してHFまたはF 2である。
[0049]
 パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体の重合膜は、その誘電率の低さに着目して、電子部品、半導体素子、センサーなどの絶縁膜として使用されることがある。しかし、これら従来の使用では、重合膜を形成する電子部品自体が高い強度を有しており、重合膜によってこれらの部品の強度が向上することはない。また、重合膜の形成により部品自体の形状の自由度が向上することもない。少なくともこれらの点で、低密度ゲル体1におけるコーティング層3は、従来の重合膜とは全く異なる層である。
[0050]
 低密度ゲル体1において上述した曲げ強度の向上を達成できる点が、とりわけ、コーティング層3が従来の重合膜とは全く異なる層であることを支持している。曲げ強度の向上は、ゲル本体部2とコーティング層3とが一体の材料として変形しながらなされるためである。また、低密度ゲル体について、これまで長年、曲げ強度をはじめとする機械的強度を向上させる適切な手段が存在しなかった。このことからも、低密度ゲル体1におけるコーティング層3の劇的な効果が理解される。
[0051]
 スチレン誘導体は、例えば、メチルスチレンおよびクロロスチレンから選ばれる少なくとも1種である。
[0052]
 (メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、ブチル(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種である。有機ポリシロキサンとの接着性が高い観点からは、(メタ)アクリル変性シリコーンが好ましい。
[0053]
 コーティング層3は、気相重合性モノマーの重合体により構成されていることから、非常に薄くすることが可能である。コーティング層3の厚さは、例えば0.1~10μmであり、低密度ゲル体1の機械的強度の向上とゲル本体部2に由来する特性を得ることとのバランスの観点、例えば、低密度ゲル体1の機械的強度を向上しながら、低密度ゲル体であるゲル本体部2が有する特性をコーティング層3を含む低密度ゲル体1の状態においてもできるだけ保持する観点からは、0.1~5μmが好ましく、0.2~5μmがより好ましい。また、非常に薄いながらもゲル本体部2からの剥離が抑制されたコーティング層3とすることができる。
[0054]
 低密度ゲル体1では、ゲル本体部2の厚さに対するコーティング層3の厚さが小さい場合においても、その機械的強度を向上できる。具体的な一例として、低密度ゲル体1の厚さd1(μm)に対するコーティング層3の厚さd2の比d2/d1は、例えば0.001~1%であり、上記バランスの観点からは、0.001~0.5%が好ましく、0.002~0.5%がより好ましい。低密度ゲル体1では、このような薄いコーティング層3であっても、例えば、その曲げ強度を上述した状態とすることが可能である。このとき、低密度ゲル体1は、典型的にはシート、直方体またはディスクである。シート、直方体またはディスクである低密度ゲル体1の双方の主面にコーティング層3が形成されている場合、比d2/d1における厚さd2は、双方のコーティング層3の厚さの合計である。低密度ゲル体1がその他の形状である場合についても、例えば、当該ゲル体1の重心を通過するとともにゲル体1自体を通過する距離が最も小さくなる直線を想定し、当該最小の距離を低密度ゲル体1の厚さd1とすることができる。そして、当該直線が通過するコーティング層3の厚さの合計を、比d2/d1におけるコーティング層3の厚さd2とすることができる。
[0055]
 コーティング層3は、気相重合性モノマーの重合体により構成されていることから、非常に均質性の高い層、例えば、コーティング層としての欠陥の発生が抑制された層とすることが可能である。また、同じ理由から、厚さの均一性の高い層とすることが可能である。そしてこれらの利点を、ゲル本体部2の形状(例えば表面の形状)が複雑な場合、あるいはゲル本体部2のサイズが大きい場合にも得ることができる。このような点も、コーティング層3の厚さが薄いながらも機械的強度が向上した低密度ゲル体1を達成できること、および低密度ゲル体1の形状の自由度を高くできることに寄与している。また、このようなコーティング層3であるが故に、低密度ゲル体1の表面における傷の発生と、発生した傷を起点とする低密度ゲル体1の破壊を抑制できる。
[0056]
 コーティング層3は、低密度ゲル体1の外部からゲル本体部2に物質が侵入することを抑制する機能を有しうる。外部物質の侵入を抑制することを目的としてコーティング層3が、例えばゲル本体部2の表面の全部または一部に、具体的な例としてシート、直方体またはディスクであるゲル本体部2の一方または双方の主面に、形成されていてもよい。外部物質の一例は水蒸気である。水蒸気が低密度ゲル体の内部に侵入すると、当該ゲル体の特性が低下、例えば熱伝導率が上昇、する。
[0057]
 図1に示す低密度ゲル体1は、その全表面(ゲル本体部2の全表面)にコーティング層3を有する。本開示の低密度ゲル体では、少なくとも一部の表面(ゲル本体部2の少なくとも一部の表面)にコーティング層3を有していればよい。コーティング層3の具体的な配置の一例は、シート、直方体またはディスクである低密度ゲル体1(ゲル本体部2)の一方または双方の主面の全体または一部への配置である。
[0058]
 本開示の低密度ゲル体は、ゲル本体部2の表面のみにコーティング層3が形成されている状態でありうる。換言すれば、本開示の低密度ゲル体は、ゲル本体部2の内部にコーティング層3が形成されていない(ゲル本体部2の内部にコーティング層3を有さない)状態でありうる。このため、本開示の低密度ゲル体の構造の均一性を高くでき、当該構造に基づく特性をより確実に得ることができる。
[0059]
 本開示の低密度ゲル体の形状は限定されない。低密度ゲル体1は、ゲル本体部2が取りうる形状をとることができる。このため、機械的強度が向上していることと相まって、本開示の低密度ゲル体は、従来の低密度ゲル体の用途を超えた種々の用途への使用が期待される。本開示の低密度ゲル体の形状は粒子でありうるが、粒子だけではなく、例えば、図1に示すようなシート、または直方体、ディスクのようなバルク(塊状)でありうる。すなわち、本開示の低密度ゲル体は、シートおよびバルクのようなモノリス体でありうる。モノリス体である低密度ゲル体1は、その機械的強度が向上していることと相まって、従来の粒子状の低密度ゲル体に比べて取扱が容易である。また、粒子を凝集、成形することで特定の形状とした低密度ゲル体に比べて、特性および/または特性の均一性が高い低密度ゲル体、例えば透明性が高く、熱伝導率が低い低密度ゲル体とすることができる。また、サイズの大きなモノリス体とすることもできる。このような低密度ゲル体1は、各種の用途、例えば断熱材および/または遮音材への使用に適している。一例として、シート、直方体またはディスクである低密度ゲル体1を一対のガラス板により挟持することにより、透明性が高く、熱伝導率が低い複層断熱ガラスユニットを構成することが期待される。
[0060]
 本開示の低密度ゲル体の形状の自由度の高さは、コーティング層3が気相重合性モノマーの重合体により構成される、すなわち気相重合により形成されうることにも基づいている。例えば、樹脂の表面への塗布または付着、およびその後の樹脂の溶融によるコーティング層の形成では、溶融樹脂の粘度が高いために、薄いあるいは大面積のコーティング層を形成できない。また、溶融樹脂によるゲル本体部2の細孔構造の破壊も十分に想定される。一方、コーティング層3は、高い均一性および/または大面積の形成が可能であるし、気相重合ではゲル本体部2の細孔構造の破壊を抑制したコーティング層3の形成が可能である。また、コーティング層3では、例えば酢酸ビニルポリマーエマルジョンなどの水性エマルジョンを塗布するときのような、ゲル体表面への展開塗布が困難といった事情もない。
[0061]
 本開示の低密度ゲル体は、高い透明性を有しうる。例えば、厚さ10mmのシート、直方体またはディスクとしたときに、JIS K7361の規定に準拠して測定した全光線透過率が70%以上でありうるし、ゲル本体部2およびコーティング層3の構成によっては、80%以上、85%以上、さらには90%以上でありうる。なお、ゲル本体部2の透明性も同様であり、すなわち低密度ゲル体1では、ゲル本体部2の高い透明性を保つことが可能といえる。
[0062]
 本開示の低密度ゲル体は、高い気孔率を有しうる。低密度ゲル体1は、例えば、70~90%の気孔率を有しうる。低密度ゲル体の気孔率は、窒素吸着法あるいはピクノメトリーの手法により評価することができる。なお、ゲル本体部2の気孔率も同様であり、すなわち低密度ゲル体1では、ゲル本体部2の高い気孔率を保つことが可能といえる。
[0063]
 本開示の低密度ゲル体は、低い密度(比重)を有しうる。低密度ゲル体1は、例えば、0.5g/cm 3以下の密度を有しうるし、ゲル本体部2およびコーティング層3の構成によっては、0.2g/cm 3以下、0.15g/cm 3以下、さらには0.1g/cm 3以下の密度を有しうる。なお、ゲル本体部2の密度も同様であり、すなわち低密度ゲル体1では、ゲル本体部2の低い密度を保つことが可能といえる。
[0064]
 本開示の低密度ゲル体は、低い熱伝導率を有しうる。低密度ゲル体1は、例えば、20mWm -1-1以下の熱伝導率を有しうるし、ゲル本体部2およびコーティング層3の構成によっては、15mWm -1-1以下、さらには12mWm -1-1以下の熱伝導率を有しうる。低密度ゲル体の熱伝導率は、JIS A1412(定常法)の規定に準拠して評価することができる。なお、ゲル本体部2の熱伝導率も同様であり、すなわち低密度ゲル体1では、ゲル本体部2の低い熱伝導率を保つことが可能といえる。
[0065]
 本開示の低密度ゲル体は、必要であれば、ゲル本体部2およびコーティング層3以外の部材を有しうる。もちろん、本開示の低密度ゲル体は、ゲル本体部2およびコーティング層3のみからなってもよい。他の部材は、例えば、ゲル本体部2を構成する材料とコーティング層3を構成する材料との間の接合性が低い場合などに、ゲル本体部2とコーティング層3との間に配置された、双方の部材間の接合性を向上させるカップリング剤層、プライマー(例えばシリコーン系プライマー)層である。カップリング剤層およびプライマー層は、例えば、コーティング層3を気相重合により形成する前に、ゲル本体部2におけるコーティング層3を形成する表面に予め形成しておくことで、双方の部材の間に配置できる。
[0066]
 本開示の低密度ゲル体の用途は限定されず、従来の低密度ゲル体と同様の用途に使用できる。また、本開示の低密度ゲル体は、その機械的強度が高く、とりうる形状の自由度も高い。このため本開示の低密度ゲル体は、従来の低密度ゲル体では適用が困難であるか、または適用できるとしても上記特徴的な特性の低下が余儀なくされる用途にも、当該特性をより確実に保ったまま適用することができる。このような用途は、例えば、透光性断熱材、とりわけ住宅、輸送機関などの断熱窓構造に使用する、面積が大きな透光性断熱材シートである。
[0067]
 本開示の低密度ゲル体は、例えば、以下に示す本開示の低密度ゲル体の製造方法により製造できる。
[0068]
 [低密度ゲル体の製造方法]
 本開示の製造方法では、前駆体である低密度ゲル体(以下、単に「前駆体」)を収容した系において気相重合性モノマーの気相重合を進行させる。そして、この気相重合により、当該モノマーの重合体から構成されるコーティング層3を前駆体の表面に形成して、コーティング層3を表面に有する低密度ゲル体1を得る。この気相重合によるコーティング層3の形成プロセスを経て、前駆体はゲル本体部2となる。
[0069]
 前駆体は、低密度ゲル体である限り、その形状、骨格を構成する材料、特性などは限定されない。本開示の低密度ゲル体の説明において上述したゲル本体部2と同様であればよい。
[0070]
 前駆体は、例えばエアロゲルまたはキセロゲルでありうるし、有機-無機ハイブリッドゲルでありうる。前駆体がエアロゲルまたはキセロゲルである場合、本開示の製造方法により得た低密度ゲル体もエアロゲルまたはキセロゲルとなる。前駆体が有機-無機ハイブリッドゲルである場合、本開示の製造方法により得た低密度ゲル体も有機-無機ハイブリッドゲルとなる。
[0071]
 本開示の製造方法では、前駆体の形状に変化を与えることなくコーティング層3を形成できる。例えば、コーティング層3の形成に、前駆体である低密度ゲル体の粉砕は必須ではない。前駆体はモノリス体でありうるし、この場合、本開示の製造方法により得た低密度ゲル体は、コーティング層3を表面に有するモノリス体である低密度ゲル体1でありうる。さらにその形状も前駆体と同一でありうる。
[0072]
 前駆体の形成方法は限定されず、公知の低密度ゲル体の製造方法、例えば公知のエアロゲルおよび/またはキセロゲルの製造方法に従って形成できる。一例として、特許文献1,2および非特許文献1に記載の製造方法によれば、形状の自由度が高く、例えば粒子である前駆体、またはシートもしくは直方体、ディスクなどのバルクといったモノリス体である前駆体を形成できる。
[0073]
 気相重合性モノマーを気相重合して、当該モノマーの重合体から構成されるコーティング層3を前駆体の表面に形成する方法は限定されず、従来の気相重合法を含む方法を採用できる。例えば、前駆体を収容した成膜チャンバー内に、気体の状態にある気相重合性モノマーを導入し、当該チャンバー内で気相重合性モノマーの重合を進行させる方法を採用できる。成膜チャンバーは、チャンバー内の雰囲気を気相重合に適した雰囲気に保持する機構、例えば、温度制御機構、圧力制御機構、チャンバー内における気相重合性モノマーの濃度制御機構などを有しうる。成膜チャンバーには、気相重合性モノマーと気相重合可能な他の物質をさらに導入してもよい。他の物質は、例えば上述した二酸化炭素である。
[0074]
 気相重合性モノマーは、本開示の低密度ゲル体の説明において上述した気相重合性モノマーと同一である。
[0075]
 前駆体を収容した系に気相重合性モノマーを導入する方法は、気相重合時に当該モノマーが気体の状態である限り限定されない。例えば、気体の状態にあるモノマーを系(例えば、成膜チャンバー)に供給しても、液体または固体のモノマーを系に供給し、その供給経路および/または系内において当該モノマーを気化させて気体としてもよい。また例えば、気相重合性モノマー自体を系に導入しても、より取扱性に優れるなどの理由により、モノマー前駆体、例えば当該モノマーのダイマーあるいはオリゴマーを系に供給し、その供給経路および/または系内においてこれらを気体状のモノマーに変換し、気相重合を進行させてもよい。一例として、気相重合性モノマーがパラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体である場合、室温で固体であるダイマーが取扱性に優れていることからダイマーを系に供給し、その供給経路においてダイマーを気体状のモノマーに熱分解する方法をとることができる。なお、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体のダイマーは、熱分解によって気体状のモノマーとバイラジカルとの平衡状態となる。そして、バイラジカルは気相で安定であり、そのまま気相重合が進行する。
[0076]
 気相重合の際には、必要に応じて、重合触媒、連鎖移動剤、安定ラジカルなどを系に加えてもよい。
[0077]
 気相重合の条件は、気相重合性モノマーの種類およびコーティング層3の形成効率に応じて選択できる。例えば、気相重合の温度は、気相重合性モノマーがパラキシリレンおよびパラキシリレンの誘導体である場合、コーティング層3の形成効率が高くなることから150℃程度以下が好ましい。
[0078]
 本開示の製造方法では、気相重合によりコーティング層3を形成しているため、均質性および/または厚さの均一性が高いコーティング層3を形成できる。また、コーティング層3を形成する表面の面積が大きい場合、例えば前駆体のサイズが大きい場合においても、均質性および/または厚さの均一性が高いコーティング層3を形成できる。さらに、コーティング層3を形成する表面の形状が複雑な場合、例えば前駆体の形状が複雑な場合においても、均質性および/または厚さの均一性が高いコーティング層3を形成できる。
[0079]
 本開示の製造方法では、非常に微細な細孔と骨格との3次元網目構造を有する前駆体に対して気相重合によりコーティング層3を形成しているため、前駆体の表面にのみコーティング層3を形成することができる。このことは、本開示の製造方法において、コーティング層3形成時における、前駆体が有する細孔構造の破壊を抑制できることを意味する。
[0080]
 本開示の製造方法では、前駆体の表面の一部をマスキングした状態で気相重合を進行させることにより、前駆体の一部の表面にのみコーティング層3を形成してもよい。このようにして、一部の表面にのみコーティング層3を有する低密度ゲル体1を形成できる。一部の表面は、例えば、シート、直方体またはディスクである前駆体の一方または双方の主面の一部または全部である。
[0081]
 本開示の製造方法は、気相重合性モノマーの重合体から構成されるコーティング層を表面に有する低密度ゲル体が得られる限り、上述した以外の任意の工程を有することができる。
実施例
[0082]
 以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
[0083]
 (製造例1:前駆体の作製)
 製造例1では、前駆体として、有機-無機ハイブリッドゲルであるキセロゲルのモノリス体を作製した。
[0084]
 界面活性剤として臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(東京化成工業製、H0081)0.40gを、酸性水溶液である濃度0.005mol/Lの酢酸水溶液10gに溶解させた後、さらに加水分解性化合物として尿素(林純薬工業製、21000095)3.0gを加えて溶解させた。得られた酸性水溶液にシリコーン化合物としてメチルトリメトキシシラン(MTMS;信越化学工業製、LS-530)5mLを加え、室温で30分間全体を撹拌してMTMSの加水分解を進行させた後、内部の空間の形状が直方体状である密閉容器内(恒温槽により60℃に保持)で240分間静置することによりMTMS加水分解物のゾル-ゲル反応を進行させた。次に、そのまま60℃で96時間静置してゲルを熟成させた後、生成したゲルを取り出してメタノールにより溶媒置換した。溶媒置換は5回実施し、各回とも、新しいメタノールにより60℃で24時間の溶媒置換を行った。次に、低表面張力溶媒(n-ヘキサン、林純薬工業製、08000389)によりゲルをさらに溶媒置換した後、乾燥により溶媒を除去して、シルセスキオキサン構造の一種であるPMSQ構造(RがCH 3)により骨格が構成された直方体であるキセロゲルモノリス(サイズ:幅10mm×長さ30mm×厚さ4.7mmおよび幅20mm×長さ30mm×厚さ4.0mm)を得た。なお、乾燥は、溶媒の沸点以下の温度にて、ゲル1cm 3あたりの溶媒蒸発速度を乾燥開始直後から開始4時間後までは0.2g/(時・cm 3)に制御し、その後、徐々に溶媒蒸発速度を低下させて行った。ゲルの重量が一定となった時点で乾燥を終了した。
[0085]
 (製造例2:前駆体の作製)
 製造例2では、前駆体として、シリカエアロゲルのモノリス体を作製した。
[0086]
 テトラメトキシシラン(TMOS;信越化学工業製、LS-540)4mLにメタノール(キシダ化学製、000-48665)7.2mLを加え、撹拌して均一にした。その溶液を撹拌しながら、濃度100mMのアンモニア水2.0mLを加え、30秒間さらに撹拌した。次に、撹拌を止め、反応溶液を、内部の空間の形状が直方体状である密閉容器内(恒温槽により60℃に保持)で5分間静置することによりゲル化させた。そのまま60℃で4日間放置してゲルを熟成させた後、メタノールで3回、および2-プロパノール(IPA、キシダ化学製、01G-64786)で3回、それぞれ溶媒置換を行った。最後に、圧力14MPa、温度80℃の超臨界二酸化炭素を用いて10時間乾燥を行い、直方体であるエアロゲルモノリス(サイズ:10mm×30mm×厚さ5mm)を得た。
[0087]
 (実施例1)
 実施例1では、製造例1で作製したキセロゲルモノリスの表面に、ポリ(モノクロロ)パラキシリレンにより構成されるコーティング層3を気相重合により形成し、当該コーティング層を表面に有する直方体状の低密度ゲルモノリスを作製した。具体的に、低密度ゲルモノリスは以下のように作製した。
[0088]
 最初に、製造例1で作製したキセロゲルを成膜チャンバーに収容し、当該チャンバーを密閉して減圧した。次に、チャンバー内の圧力を約50mTorr(約6.7Pa)、温度を室温に保持した状態で、チャンバー内に気体状のモノクロロパラキシリレンモノマーを導入した。モノクロロパラキシリレンモノマーを以下の式(4)に示す。
[0089]
[化4]


[0090]
 より具体的に、モノクロロパラキシリレンモノマーのチャンバー内への導入は、室温で固体であるモノクロロパラキシリレンダイマーを成膜チャンバーとは別に設けた気化炉(炉内温度180℃)に供給して当該炉内で気体とした後、さらにこのダイマーの気体を分解炉(炉内温度650~700℃)に供給して熱分解し、熱分解により生成した気体状のモノマーを成膜チャンバーに供給することで行った。成膜チャンバーに供給されたモノマーは、当該モノマーの芳香環に結合しているCH 2基にラジカルが生じた状態(バイラジカル体)と平衡関係にあり、このラジカル体の重合により気相重合が進行する。この気相重合の進行により、モノリス体の全表面にコーティング層を形成し、ポリ(モノクロロ)パラキシリレンにより構成されるコーティング層を表面に有するキセロゲルモノリスを得た。得られた低密度ゲルモノリスの形状およびサイズは、コーティング層を形成する前のモノリス、すなわち製造例1で作製した直方体状のモノリスと同一であった。また、気相重合の時間を変更することにより、コーティング層の厚さを0.50μm、1.0μmおよび2.0μmとした。それぞれ、上述の厚さd2では、1.0μm、2.0μmおよび4.0μmとなる。コーティング層の厚さが0.50μmである低密度ゲルモノリスの作製には、製造例1で作製した幅20mmのモノリスを使用し、コーティング層の厚さが1.0μmおよび2.0μmである各低密度ゲルモノリスの作製には、製造例1で作製した幅10mmのモノリスを使用した。
[0091]
 実施例1で作製したコーティング層を有するキセロゲルモノリス、および製造例1で作製したコーティング層を有さないキセロゲルモノリスに対して3点曲げ試験を実施した。その際、幅が20mmのモノリスについては、支点間距離を40mmとし、試験中、支点間の中点近傍でモノリスの厚さ方向に押し当てられるクロスヘッドの速度を0.25mm/分とした。幅が10mmのモノリスについては、支点間距離を20mmとし、クロスヘッドの速度を0.25mm/分とした。また、各モノリスに対してn=5~10回の試験を実施して、その平均値を各モノリスのヤング率、曲げ強度および破断歪みとした。3点曲げ試験の結果を、図2,3に示す。
[0092]
 図2,3に示すように、厚さ0.50μmのコーティング層を形成することにより、ヤング率が0.72MPaから1.4MPaへと、曲げ強度が0.030MPaから0.065MPaへと向上した。また、破断歪みも上昇した。厚さ1.0μmのコーティング層を形成した場合、ヤング率が0.57MPaから1.0MPaへと、曲げ強度が0.050MPaから0.11MPaへと向上し、破断歪みが10%から12%へと増大した。厚さ2.0μmのコーティング層を形成した場合、ヤング率が0.57MPaから1.2MPaへと、曲げ強度が0.050MPaから0.16MPaへと向上した。一方、破断歪みは、モノリスが降伏を示すようになったため明確に判別できなかった。このように、低密度ゲル体の厚さd1に対するコーティング層の合計厚さd2の比d2/d1にしてわずか0.025%のコーティング層(気相重合性モノマーの重合体により構成されるコーティング層)の形成により、低密度ゲル体の機械的強度が大きく向上することが確認された。
[0093]
 また、実施例1で作製したキセロゲルモノリスの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により確認したところ、コーティング層は前駆体モノリスの表面にのみ形成されており、その内部には形成されていなかった。
[0094]
 (実施例2)
 実施例2では、製造例2で作製したエアロゲルモノリスの表面に、ポリ(モノクロロ)パラキシリレンにより構成されるコーティング層3を気相重合により形成し、当該コーティング層を表面に有する直方体状の低密度ゲルモノリスを作製した。具体的には、前駆体として製造例1で作製したキセロゲルモノリスの代わりに製造例2で作製したエアロゲルモノリスを使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリ(モノクロロ)パラキシリレンにより構成されるコーティング層を全表面に有するエアロゲルモノリスを得た。得られた低密度ゲルモノリスの形状およびサイズは、コーティング層を形成する前のモノリス、すなわち製造例2で作製した直方体状のモノリスと同一であった。また、気相重合の時間を変更することにより、コーティング層の厚さを1.0μmおよび2.0μmとした。それぞれ、上述の厚さd2では、2.0μmおよび4.0μmとなる。
[0095]
 実施例2で作製したコーティング層を有するエアロゲルモノリス、および製造例2で作製したコーティング層を有さないエアロゲルモノリスに対して3点曲げ試験を実施した。支点間距離は20mmとし、クロスヘッドの速度は0.25mm/分とした。各モノリスに対してn=5~10回の試験を実施して、その平均値を各モノリスのヤング率、曲げ強度および破断歪みとした。3点曲げ試験の結果を、図4に示す。
[0096]
 図4に示すように、厚さ1.0μmのコーティング層を形成することにより、ヤング率が0.85MPaから1.98MPaへと、曲げ強度が0.049MPaから0.15MPaへと向上し、破断歪みが6.4%から11%へと増大した。厚さ2.0μmのコーティング層を形成した場合、ヤング率が0.85MPaから1.74MPaへと、曲げ強度が0.049MPaから0.20MPaへと向上し、破断歪みが6.4%から15%へと増大した。このように、低密度ゲル体の厚さd1に対するコーティング層の合計厚さd2の比d2/d1にしてわずか0.04%のコーティング層(気相重合性モノマーの重合体により構成されるコーティング層)の形成により、低密度ゲル体の機械的強度が大きく向上することが確認された。
[0097]
 また、実施例2で作製したエアロゲルモノリスの断面をSEMにより確認したところ、コーティング層は前駆体モノリスの表面にのみ形成されており、その内部には形成されていなかった。
[0098]
 本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。

産業上の利用可能性

[0099]
 本開示の低密度ゲル体は、従来の低密度ゲル体と同様の用途に使用できる。また、本開示の低密度ゲル体は、従来の低密度ゲル体よりも機械的強度が向上し、さらに形状の自由度が高いため、従来の低密度ゲル体では適用が困難であった用途、あるいは従来の低密度ゲル体では低密度ゲル体として特徴的な特性を大きく損なわなければ適用できなかった用途、への使用も期待される。

請求の範囲

[請求項1]
 気相重合性モノマーの重合体から構成されるコーティング層を表面に有する低密度ゲル体。
[請求項2]
 前記モノマーが、オレフィン、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項3]
 前記モノマーが、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項4]
 前記コーティング層の厚さが0.1~10μmである請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項5]
 モノリス体である請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項6]
 前記低密度ゲル体の厚さd1(μm)に対する前記コーティング層の厚さd2(μm)の比d2/d1が0.001~1%である請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項7]
 エアロゲルまたはキセロゲルである請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項8]
 有機-無機ハイブリッドゲルである請求項1に記載の低密度ゲル体。
[請求項9]
 前駆体である低密度ゲル体を収容した系において気相重合性モノマーの気相重合を進行させることにより、前記モノマーの重合体から構成されるコーティング層を前記前駆体の表面に形成して、前記コーティング層を表面に有する低密度ゲル体を得る、低密度ゲル体の製造方法。
[請求項10]
 前記モノマーが、オレフィン、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
[請求項11]
 前記モノマーが、パラキシリレンおよびパラキシリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
[請求項12]
 前記前駆体がモノリス体であり、
 モノリス体である、前記コーティング層を表面に有する低密度ゲル体を得る請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
[請求項13]
 前記前駆体および得られた前記低密度ゲル体がエアロゲルまたはキセロゲルである請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
[請求項14]
 前記前駆体および得られた前記低密度ゲル体が有機-無機ハイブリッドゲルである請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]