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1. (WO2017131062) MEDIUM FOR DETECTING STAPHYLOCOCCUS AUREUS, SHEET FOR DETECTING S. AUREUS COMPRISING SAME, AND METHOD FOR DETECTING S. AUREUS USING SAME
Document

明 細 書

発明の名称 黄色ブドウ球菌を検出するための培地及び該培地を有する黄色ブドウ球菌検出シート、並びにそれらを用いる黄色ブドウ球菌の検出方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067  

実施例

0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

符号の説明

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 黄色ブドウ球菌を検出するための培地及び該培地を有する黄色ブドウ球菌検出シート、並びにそれらを用いる黄色ブドウ球菌の検出方法

技術分野

[0001]
 本発明は、黄色ブドウ球菌を検出するための培地及び該培地を有する黄色ブドウ球菌検出シート、並びにそれらを用いる黄色ブドウ球菌の検出方法に関する。

背景技術

[0002]
 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、様々な毒素を産生する細菌である。黄色ブドウ球菌はまた、敗血症、心内膜炎、及び肺又は骨関節症のような重篤な細菌感染症を引き起こす原因菌である。このため、食品若しくは飲料品を取り扱う施設(例えば、工場若しくは飲食店等)、及び医療施設等において、黄色ブドウ球菌を簡便且つ高精度で検出する手段が必要とされている。
[0003]
 例えば、特許文献1は、1種以上のバクテリアを含むサンプル内のブドウ球菌を同定及び測定するための方法であって、i)選択培地にサンプルの分割量を接種するステップであって、前記培地が、ブドウ球菌の増殖を促進するためのインヒビター、β-グルコシダーゼの存在下において観察可能な第1の色を形成することができる第1の基質、及びブドウ球菌の存在下において第2の色を形成することができる第2の基質を含むことを特徴とするステップと、ii)前記接種された培地をインキュベートして、該培地中の前記第1及び第2の基質の存在下においてバクテリアコロニーを見ることができる十分な大きさの前記バクテリアコロニーを形成するステップと、iii)前記第2の基質の前記第2の色の存在により同定された前記コロニーを測定して、前記サンプル内のブドウ球菌の数を供するステップと、を含むことを特徴とする方法を記載する。当該文献は、前記インヒビターがコリスチンメタンスルホネート、ナリジクス酸及び塩化リチウムからなる群から選択し得ることを記載する。また、当該文献は、前記第1の基質がβ-グルコシダーゼの存在下で視覚的な色の変化を供するインドリルグルコピラノシド基質であり、前記第2の基質がブドウ球菌の存在下で視覚的な色の変化を供することを記載する。
[0004]
 特許文献2は、黄色ブドウ球菌培養基と、α-グルコシダーゼ活性発現のための少なくとも1つの酵素基質とを含む黄色ブドウ球菌及び/又はコアグラーゼ陽性ブドウ球菌(Staphylococci)検出のための培養基を記載する。当該文献は、α-グルコシダーゼ活性発現のための少なくとも1つの酵素基質として、インドキシル系化合物を記載する。
[0005]
 特許文献1及び2に開示される培地又は培養基は、通常は、寒天のようなゲル化剤を用いて滅菌シャーレ中に形成された平板固体培地の形態で使用される。このような実施形態の場合、平板固体培地の調製、試料の分注及び微生物の培養等の操作に高度な技術を要する場合がある。
[0006]
 特許文献3は、基材シートと、前記基材シートの上に形成された培養層と、前記培養層を被覆するカバーシートと、を有する微生物培養シートであって、前記培養層は、ポリビニルピロリドンと、ゲル化剤、栄養成分、発色指示薬、選択剤及び基質からなる群から選択される少なくとも1種と、を含有する培地液がパターン形成されたものである微生物培養シートを記載する。当該文献は、前記微生物培養シートによって、使用者が簡便且つ安定して食品又は飲料品等の細菌菌数検査等を実施できると記載する。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特表平9-508279号公報
特許文献2 : 特表2004-524041号公報
特許文献3 : 国際公開第2011/007802号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 これまで、黄色ブドウ球菌を検出するためのいくつかの手段が知られている。しかしながら、これら公知の手段には改良の余地が存在した。例えば、特許文献1又は2に記載の培地を特定の実施形態に適用した場合、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌が偽陽性となる場合がある。
[0009]
 それ故、本発明は、黄色ブドウ球菌を高い精度で同定できる検出手段を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、黄色ブドウ球菌で発現する2種類の酵素に特異的な発色基質と高濃度の選択剤とを培地に添加することにより、該培地上に形成されるコロニーの色を指標に黄色ブドウ球菌を高い精度で検出し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
[0011]
 すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
 (1) 1種以上の栄養成分と、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤と、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤と、0.5 mg/cm 3以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムとを含む、黄色ブドウ球菌を検出するための培地。
 (2) α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートである、前記(1)に記載の培地。
 (3) α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートである、前記(1)に記載の培地。
 (4) 0.5~4.1 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の培地。
 (5) 0.5~2.8 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、前記(4)に記載の培地。
 (6) 2.3~2.8 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、前記(5)に記載の培地。
 (7) 基材と、前記基材の上面に配置された培養層とを有する黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材であって、
 前記培養層が、前記(1)~(6)のいずれかに記載の培地を含む、前記微生物培養基材。
 (8) シート形状の基材と、前記培養層を被覆するカバーシートとをさらに有し、前記培養層が、ポリビニルピロリドンと、1種以上のゲル化剤とをさらに含む、前記(7)に記載の微生物培養基材。
 (9) 黄色ブドウ球菌を検出する方法であって、
 前記(1)~(6)のいずれかに記載の培地又は前記(7)若しくは(8)に記載の微生物培養基材の培養層に微生物を含む試料を添加する、試料添加工程;
 試料を添加した培地又は微生物培養基材をインキュベートして微生物のコロニーを形成させる、コロニー形成工程;
 形成された微生物のコロニーの色に基づき黄色ブドウ球菌を同定する、菌株同定工程;を含む、前記方法。
 (10) 試料添加工程において、前記(7)若しくは(8)に記載の微生物培養基材の培養層に微生物を含む試料を添加し、該微生物培養基材の培養層が、微生物を含む試料の総体積に対して0.2 mg/ml以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、前記(9)に記載の方法。

発明の効果

[0012]
 本発明により、黄色ブドウ球菌を高い精度で同定できる検出手段を提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の一実施形態を示す図である。(a):本発明の一態様の微生物培養基材の上面図、(b):(a)におけるI-I’に沿った垂直断面模式図、(c):カバーシートを折り曲げて培養層を被覆した状態を示す垂直断面模式図。
[図2] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の別の一実施形態を示す図である。(a):本発明の一態様の微生物培養基材の上面図、(b):(a)におけるII-II’に沿った垂直断面模式図、(c):カバーシートを折り曲げて培養層を被覆した状態を示す垂直断面模式図。
[図3] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の別の一実施形態を示す垂直断面模式図である。
[図4] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の別の一実施形態を示す垂直断面模式図である。
[図5] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の一実施形態を示す外観斜視図である。
[図6] 本発明の一態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の別の一実施形態を示す外観斜視図である。
[図7] 実験5において発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を示す写真である。(a):黄色ブドウ球菌スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)ATCC25923菌株、(b):黄色ブドウ球菌NBRC100910菌株、(c):黄色ブドウ球菌NBRC12732菌株、(d):スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、(e):スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)、(f):スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)。
[図8] 実験5において発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を示す写真である。(a):腐生ブドウ球菌スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus subsp. saprophyticus)、(b):スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、(c):スタフィロコッカス・スキウリ(Staphylococcus sciuri)、(d):バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、(e):バチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)、(f):バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)。
[図9] 実験6において発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を示す写真である。(a):黄色ブドウ球菌ATCC25923菌株、(b):黄色ブドウ球菌NBRC100910菌株、(c):黄色ブドウ球菌NBRC12732菌株、(d):スタフィロコッカス・インターメディウス、(e):スタフィロコッカス・ハイカス、(f):スタフィロコッカス・エピダーミディス。
[図10] 実験6において発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を示す写真である。(a):腐生ブドウ球菌スタフィロコッカス・サプロフィティカス、(b):スタフィロコッカス・キシロサス、(c):スタフィロコッカス・スキウリ、(d):スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)、(e):スタフィロコッカス・ハエモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、(f):スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)。
[図11] 実験6において発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を示す写真である。(a):スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、(b):スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、(c):スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、(d):バチルス・セレウス、(e):バチルス・リチェニホルミス、(f):バチルス・スブチリス。

発明を実施するための形態

[0014]
 本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。
[0015]
<1:黄色ブドウ球菌を検出するための培地>
 本発明の一態様は、黄色ブドウ球菌を検出するための培地に関する。
 本発明において、黄色ブドウ球菌は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を意味する。黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌属(スタフィロコッカス属)に分類されるグラム陽性菌である。一般に、黄色ブドウ球菌は、ベアードパーカー寒天培地又は卵黄加マンニット食塩寒天培地等の黄色ブドウ球菌用選択培地を用いた培養試験により、存在を確認することができる。これらの選択培地を用いた培養試験は、培地に添加された選択剤により黄色ブドウ球菌を選択的に発育させ、卵黄反応又はマンニット分解性等により黄色ブドウ球菌と判定するものである。しかしながら、これらの選択培地を用いた培養試験では、黄色ブドウ球菌以外の菌種が偽陽性として検出される場合がある。このため、通常は、前記培養試験の後、さらにコアグラーゼ活性を指標としたコアグラーゼ試験により、黄色ブドウ球菌の判定がなされる。コアグラーゼは、黄色ブドウ球菌で発現する血漿凝固作用を有する菌体外酵素である。コアグラーゼは、黄色ブドウ球菌によるヒト病原性に関連していることが知られている。それ故、コアグラーゼ活性を指標とすることにより、腸球菌(エンテロコッカス属菌)及び芽胞菌(バチルス属菌)のような非ブドウ球菌、並びに黄色ブドウ球菌以外の多くのブドウ球菌と区別して、ブドウ球菌を検出することができると考えられてきた。しかしながら、黄色ブドウ球菌以外のいくつかのブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌のようにコアグラーゼ産生能力を有する。このため、これらのブドウ球菌は、コアグラーゼ活性を指標とする黄色ブドウ球菌の検出試験において偽陽性として検出される可能性がある。
[0016]
 そこで、コアグラーゼ以外の酵素活性、例えば、α-グルコシダーゼ、ホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はβ-グルコシダーゼのような様々な菌体外酵素の酵素活性を指標とする黄色ブドウ球菌の検出手段が開発された(特許文献1及び2等)。しかしながら、これらの検出手段においても、使用される酵素の組み合わせ及び/又は培養条件等の要因により、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌が偽陽性となる場合がある。
[0017]
 例えば、α-グルコシダーゼ及びホスファターゼの組み合わせの場合、黄色ブドウ球菌は、前記酵素の両方を菌体外酵素として発現するのに対し、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌は、前記酵素のいずれかしか発現しないか、又は両酵素とも発現しないと考えられてきた。このため、α-グルコシダーゼ及びホスファターゼの2種類の酵素活性を指標とすることにより、黄色ブドウ球菌を特異的に検出し得ると考えられてきた(特許文献2)。しかしながら、本発明者らは、α-グルコシダーゼ及びホスファターゼの2種類の酵素活性を指標とする試験においても、黄色ブドウ球菌以外のいくつかのブドウ球菌が偽陽性として検出される場合があることを見出した。
[0018]
 本発明者らは、黄色ブドウ球菌で発現するコアグラーゼ以外の菌体外酵素であるα-グルコシダーゼ及びホスファターゼのそれぞれに特異的な2種類の発色基質に加えて、高濃度の選択剤を培地に添加することにより、該培地上に形成されるコロニーの色を指標に黄色ブドウ球菌を高い精度で検出し得ることを見出した。
[0019]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための培地は、1種以上の栄養成分と、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤と、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤と、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムとを含むことが必要である。前記2種類の発色基質に加えて、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む本態様の培地を用いることにより、ブドウ球菌以外の微生物だけでなく、黄色ブドウ球菌以外の他のブドウ球菌を偽陽性として検出することなく、黄色ブドウ球菌のみを高い精度で検出することができる。
[0020]
 本態様の培地において、1種以上の栄養成分としては、黄色ブドウ球菌の検出に使用される培地の栄養成分として当該技術分野で通常使用されるものを適宜選択することができる。栄養成分としては、限定するものではないが、例えば、ペプトン、トリプトン、ソイトン、肉エキス、酵母エキス、ピルビン酸ナトリウム及び卵黄混合物;D(-)-マンニトール等の糖又は糖アルコール;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の無機塩;並びにグリシン等のアミノ酸を挙げることができる。栄養成分の濃度は、本態様の培地及び/若しくは対象となる微生物を含む試料の使用時の状態、体積、並びに/又は培養条件等に基づき、当該技術分野で通常使用される範囲から当業者が適宜設定することができる。
[0021]
 本発明において、「選択剤」は、検出対象すなわち黄色ブドウ球菌ではない、特定の微生物の生育を抑制し得る抗菌活性を有する化合物を意味する。本明細書において、抗菌活性を有する化合物を「抗菌剤」と記載する場合がある。本態様の培地は、選択剤として0.5 mg/cm 3以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度は、0.5~4.1 mg/cm 3の範囲であることが好ましく、0.5~2.8 mg/cm 3の範囲であることがより好ましく、2.3~2.8 mg/cm 3の範囲であることがさらに好ましく、約2.5 mg/cm 3であることが特に好ましい。前記濃度は、本態様の培地の総体積に対する質量濃度として定義される。例えば、本発明の一態様が、以下において説明する基材と、基材の上面に配置され、本態様の培地を含む培養層とを有する、黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材である場合、前記濃度は、本態様の微生物培養基材において、本態様の培地を含む乾燥状態の培養層の総体積に対する質量濃度として定義される。この場合、乾燥状態の培養層に添加される試料の総体積に対する質量濃度として、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度は、通常は0.2 mg/ml以上であり、0.2~1.6 mg/mlの範囲であることが好ましく、0.2~1.1 mg/mlの範囲であることがより好ましく、0.9~1.1 mg/mlの範囲であることがさらに好ましく、約1 mg/mlであることが特に好ましい。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、グラム陰性菌に対する抗菌剤として知られる化合物であって、通常は0.1 mg/ml(100 μg/ml)以下、例えば1~20 μg/mlの濃度で使用される(日本化学療法学会雑誌, 第60巻第4号, p. 446-467, 2012年)。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、ブドウ球菌のようなグラム陽性菌に対する抗菌剤としては、通常は使用されない。本発明者らは、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムが、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌である腐生ブドウ球菌(スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus subsp. saprophyticus))に対して0.5 mg/cm 3以上の高濃度で、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)に対して1.3 mg/cm 3以上の高濃度で、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)及びスタフィロコッカス・スキウリ(Staphylococcus sciuri)に対して2.3 mg/cm 3以上の高濃度で、それぞれ生育抑制を示すことを見出した。それ故、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度が0.5 mg/cm 3(微生物培養基材の態様の場合、乾燥状態の培養層に添加される試料の総体積に対する質量濃度として、0.2 mg/ml)以上の場合、腐生ブドウ球菌の生育を実質的に抑制して、該菌株が偽陽性として検出されることを防止することができる。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度が2.3 mg/cm 3(微生物培養基材の態様の場合、乾燥状態の培養層に添加される試料の総体積に対する質量濃度として、0.9 mg/ml)以上の場合、腐生ブドウ球菌に加えて、スタフィロコッカス・カルノサス、スタフィロコッカス・キシロサス及びスタフィロコッカス・スキウリの生育を実質的に抑制して、該菌株が偽陽性として検出されることを防止することができる。また、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度が4.1 mg/cm 3(微生物培養基材の態様の場合、乾燥状態の培養層に添加される試料の総体積に対する質量濃度として、1.6 mg/ml)以下の場合、当該技術分野で検出対象とされる主要な黄色ブドウ球菌の生育を抑制することなく、該菌株を陽性として検出することができる。特に、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度が2.8 mg/cm 3(微生物培養基材の態様の場合、乾燥状態の培養層に添加される試料の総体積に対する質量濃度として、1.1 mg/ml)以下の場合、当該技術分野で検出対象とされる略全ての黄色ブドウ球菌の生育を抑制することなく、該菌株を陽性として検出することができる。それ故、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを前記の高濃度で含むことにより、本態様の培地において、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌が偽陽性として検出されることを実質的に防止することができる。
[0022]
 本態様の培地は、所望により1種以上のさらなる選択剤を含むことができる。1種以上のさらなる選択剤は、黄色ブドウ球菌を検出するための培地に添加する選択剤として当該技術分野で通常使用される抗菌活性を有する化合物から適宜選択することができる。1種以上のさらなる選択剤としては、限定するものではないが、例えば、塩化リチウム、硫酸リチウム、塩化ナトリウム、アジ化ナトリウム、亜テルル酸カリウム、ナリジクス酸、デフェロキサミン、アズトレオナム及びバシトラシンを挙げることができる。1種以上のさらなる選択剤は、塩化リチウム、アジ化ナトリウム及びナリジクス酸の組み合わせであることが好ましい。1種以上のさらなる選択剤の濃度は、本態様の培地及び/若しくは対象となる微生物を含む試料の使用時の状態、体積、並びに/又は培養条件等に基づき、当該技術分野で通常使用される範囲から当業者が適宜設定することができる。例えば、塩化リチウムの濃度は、1~40 mg/cm 3の範囲であることが好ましい。例えば、アジ化ナトリウムの濃度は、20~200 μg/cm 3の範囲であることが好ましい。例えば、ナリジクス酸の濃度は、10~40 μg/cm 3の範囲であることが好ましい。前記濃度は、本態様の培地の総体積に対する質量濃度として定義される。例えば、本発明の一態様が、黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材である場合、前記濃度は、本態様の微生物培養基材において、本態様の培地を含む乾燥状態の培養層の総体積に対する質量濃度として定義される。1種以上のさらなる選択剤を含むことにより、本態様の培地において、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌及び他の微生物が偽陽性として検出されることを実質的に防止することができる。
[0023]
 なお、本態様の培地に含まれるコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム等の選択剤の濃度は、例えば、一定の体積の培地に含まれる選択剤を、溶媒抽出、蒸留、再結晶、並びに吸着、分配及びゲル濾過等のクロマトグラフィー等の1種以上の分離手段を用いて精製した後、該選択剤を、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)等の分析手段を用いて定量分析することにより、決定することができる。
[0024]
 本態様の培地は、黄色ブドウ球菌の菌体外酵素として知られるα-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤を含む。α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤としては、限定するものではないが、例えば、6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシド(ピンク)、6-ブロモ-3-インドキシル-α-D-グルコシド(赤)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシド(水色)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-N-メチル-α-D-グルコシド(緑)、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシド(赤紫)、5-ブロモ-3-インドキシル-α-D-グルコシド(青)を挙げることができる。前記発色剤は、いずれもα-グルコシダーゼの存在下で発色する酵素基質である。前記発色剤が6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドである場合を一例として説明すると、対象となる微生物がα-グルコシダーゼを発現している場合、微生物の生育に伴い、培地に含まれる6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドは、グルコース及びインドール化合物(6-クロロ-3-インドール)に加水分解される。形成されたインドール化合物は、さらに二量体化して、ピンク色に発色する。他の発色剤の場合も、同様に加水分解及び二量体化して、前記括弧内に示した色に発色する。
[0025]
 本態様の培地は、黄色ブドウ球菌の菌体外酵素として知られるホスファターゼの存在下で発色する発色剤を含む。ホスファターゼの存在下で発色する発色剤としては、限定するものではないが、例えば、5-ブロモ-3-インドキシルホスフェート(青色)、6-クロロ-3-インドキシルホスフェート(ピンク)、6-ブロモ-3-インドキシルホスフェート(赤)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルホスフェート(水色)、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェート(赤紫)を挙げることができる。前記発色剤は、いずれもホスファターゼの存在下で発色する酵素基質である。前記発色剤が5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートである場合を一例として説明すると、対象となる微生物がホスファターゼを発現している場合、微生物の生育に伴い、培地に含まれる5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートは、リン酸及びインドール化合物(5-ブロモ-3-インドール)に加水分解される。形成されたインドール化合物は、さらに二量体化して、青~濃青色に発色する。他の発色剤の場合も、同様に加水分解及び二量体化して、前記括弧内に示した色に発色する。
[0026]
 本態様の培地は、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤及びホスファターゼの存在下で発色する発色剤を含む。α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤は、6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤は、5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートであることが好ましい。或いは、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤は、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートであることが好ましい。黄色ブドウ球菌は、α-グルコシダーゼ産生能力及びホスファターゼ産生能力を有することから、例えば、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートである本態様の培地に黄色ブドウ球菌が存在する場合、該菌株が生育したコロニーは、α-グルコシダーゼ活性によるピンク色とホスファターゼ活性による青~濃青色との混合色、例えば紫色に発色すると予想された。しかしながら、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地に黄色ブドウ球菌が存在する場合、驚くべきことに、該菌株が生育してコロニーが青~濃青色に発色することが判明した。これに対し、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、α-グルコシダーゼ産生能力及びホスファターゼ産生能力の両方を有するスタフィロコッカス・インターメディウスが存在する場合、該菌株が生育してコロニーが紫色に発色する。また、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌、例えば腐生ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カルノサス、スタフィロコッカス・キシロサス又はスタフィロコッカス・スキウリが存在する場合、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムによって該菌株の生育が抑制されるため、α-グルコシダーゼ産生能力及び/又はホスファターゼ産生能力を発現することができず発色しない。さらに、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地にブドウ球菌以外のバチルス属菌が存在する場合、該菌株は生育が抑制されるか、又は場合により生育してコロニーがピンク色に発色する。或いは、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートである本態様の培地に黄色ブドウ球菌が存在する場合、該菌株が生育してコロニーが赤紫色に発色することが判明した。これに対し、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、α-グルコシダーゼ産生能力及びホスファターゼ産生能力の両方を有するスタフィロコッカス・インターメディウスが存在する場合、該菌株が生育してコロニーが灰色に発色する。また、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌、例えば腐生ブドウ球菌、スタフィロコッカス・キシロサス又はスタフィロコッカス・スキウリが存在する場合、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムによって該菌株の生育が抑制されるため、α-グルコシダーゼ産生能力及び/又はホスファターゼ産生能力を発現することができず発色しない。さらに、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地にブドウ球菌以外のバチルス属菌が存在する場合、該菌株は生育が抑制されるか、又は場合により生育してコロニーが灰色若しくは青色に発色する。それ故、2種類の発色剤に加えて高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含むことにより、本態様の培地は、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌及び他の微生物を偽陽性として検出することなく、黄色ブドウ球菌のみを高い精度で検出することができる。
[0027]
 本態様の培地は、所望により1種以上の溶媒を含むことができる。1種以上の溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)及びジメチルスルホキシド(DMSO)を挙げることができる。1種以上の溶媒は、水が好ましい。前記の溶媒、好ましくは水を用いることにより、本態様の培地が溶媒を含む場合であっても、検出対象となる黄色ブドウ球菌の生育を抑制することなく、該菌株を高い精度で検出することができる。
[0028]
 本態様の培地は、固体培地及び液体培地のいずれの形態でも使用することができる。本態様の培地が液体培地の実施形態の場合、本態様の培地は、当該技術分野で通常使用されるフラスコ、シャーレ、チューブ又はマルチウェルプレートのような培養容器に収容した状態で、液体培養用の培地として使用することができる。
[0029]
 本態様の培地が固体培地の実施形態の場合、本態様の培地は任意の形状で使用することができる。本実施形態の場合、本態様の培地は、例えば、当該技術分野で通常使用されるシャーレ又はマルチウェルプレートのような培養容器に収容した平板固体培地の状態、又は基材の上面に所定の形状で配置された培養基材の状態で使用することができる。固体培地の実施形態の場合、本態様の培地は、通常は1種以上のゲル化剤を含む。1種以上のゲル化剤は、黄色ブドウ球菌を検出するための培地を固化させるゲル化剤として当該技術分野で通常使用される化合物から適宜選択することができる。1種以上のゲル化剤としては、限定するものではないが、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、並びにゼラチンを挙げることができる。1種以上のゲル化剤は、サイリウムシードガム及びグアーガムの組み合わせであることが好ましい。1種以上のゲル化剤の濃度は、本態様の培地及び/又は対象となる微生物を含む試料の使用時の状態、体積、並びに/又は培養条件等に基づき、当該技術分野で通常使用される範囲から当業者が適宜設定することができる。
[0030]
 前記の特徴を備えることにより、本態様の培地は、共存するブドウ球菌及び他の微生物を偽陽性として検出することなく、黄色ブドウ球菌のみを高い精度で検出することができる。
[0031]
<2:黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材>
 本発明の一態様の培地は、任意の形状の固体培地として使用することができる。それ故、本発明の別の態様は、基材と、基材の上面に配置され、本発明の培地を含む培養層とを有する、黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材に関する。
[0032]
 本態様において、基材は、例えばシート状、フィルム状、板状又は容器状(例えば円形若しくは角形のシャーレ)等の当該技術分野で通常使用される各種形状から適宜選択することができる。
[0033]
 本態様において、培養層の形状は特に限定されない。基材の形状等に基づき、適宜選択することができる。また、本態様において、培養層は、本発明の一態様の培地を含む。本態様の微生物培養基材において、培養層に含まれる本発明の一態様の培地は、前記で説明した特徴を有する。それ故、本態様の微生物培養基材は、共存するブドウ球菌及び他の微生物を偽陽性として検出することなく、黄色ブドウ球菌のみを高い精度で検出することができる。
[0034]
 本態様の微生物培養基材は、シート形状の基材(以下、「基材シート」とも記載する)を有することが好ましい。基材シートを有する本態様の微生物培養基材(以下、「黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養シート」又は単に「微生物培養シート」とも記載する)は、基材シートと、前記基材シートの上面に配置された培養層と、前記培養層を被覆するカバーシートとを有することができる。この場合、前記培養層は、例えば、本発明の一態様の培地と、1種以上の固着剤と、1種以上のゲル化剤とを含む。
[0035]
 当該技術分野において、基材シートと、基材シートの上面に配置された固体培地を含む培養層とを有する微生物培養シートは公知である。このような微生物培養シートは、例えば国際公開第2011/007802号及び特開2014-90701号公報等に開示されている。前記文献に開示されているような当該技術分野で公知の任意の微生物培養シートの形態を、本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材に適用することができる。
[0036]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の一実施形態を図1に示す。図中、(a)は、本態様の微生物培養基材の上面図であり、(b)は、(a)におけるI-I’に沿った垂直断面模式図であり、(c)は、カバーシートを折り曲げて培養層を被覆した状態を示す垂直断面模式図である。本態様の微生物培養基材の一実施形態であるシート形状の基材を有する実施形態の微生物培養シートは、例えば図1に示すように、基材シート10と、前記基材シート10の上面に配置された培養層30と、前記培養層30を被覆するカバーシート40とを有する。基材シート10は、単層のシートであってもよく、同一又は異なる材料からなる複数のシートが積層された構造を有する多層のシートであってもよい。カバーシート40もまた、単層のシートであってもよく、同一又は異なる材料からなる複数のシートが積層された構造を有する多層のシートであってもよい。さらにまた、培養層30は、単層であってもよく、同一又は異なる組成を有する複数の層が積層された構造を有する多層であってもよい。培養層30が多層構造を有する場合、少なくとも1個の層が本態様の培地を含んでいればよい。
[0037]
 本実施形態の微生物培養シートにおいて、基材シート及びカバーシートの形状は特に限定されない。例えば、図1に示すように、基材シート10及びカバーシート40の形状は四角形であってもよく、三角形等の他の多角形、真円形若しくは楕円形等の円形、又は不定形であってもよい。基材シート10及びカバーシート40の形状は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基材シート10及びカバーシート40の大きさは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、基材シート10及びカバーシート40は、互いに同一の形状及び大きさを有する。この場合、カバーシート40が、培養層30が配置された基材シート10の上面全体を被覆して培養層30を保護することができる。
[0038]
 本実施形態の微生物培養シートにおいて、培養層の形状は特に限定されない。例えば、図1に示すように、培養層30の形状は真円形若しくは楕円形等の円形であってもよく、正方形若しくは長方形のような四角形若しくは三角形等の多角形、又は不定形であってもよい。培養層30の大きさは、基材シート10の上面に配置できる範囲内で適宜設定することができる。好ましくは、培養層30は、円形である。この場合、試料を培養層30の中心付近に添加することにより、試料を培養層30の全体に亘って均質に拡散させることができる。
[0039]
 本実施形態の微生物培養シートにおいて、カバーシートは、基材シートに固定されていることが好ましい。カバーシートを固定する手段は特に限定されない。例えば、図1及び2に示すように、カバーシート40は、圧着等の任意の手段によって基材シート10に直接固定することができる。或いは、図3及び4に示すように、カバーシート40は、両面テープ又は接着剤のような固定部材25を介して基材シート10に固定することもできる。
[0040]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材は、所望により、培養層の外周を包囲するように配置された枠層を有することができる。本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の別の一実施形態を図2に示す。図中、(a)は、本態様の微生物培養基材の上面図であり、(b)は、(a)におけるII-II’に沿った垂直断面模式図であり、(c)は、カバーシートを折り曲げて培養層を被覆した状態を示す垂直断面模式図である。本態様の微生物培養基材の一実施形態であるシート形状の基材を有する実施形態の微生物培養シートは、例えば図2に示すように、基材シート10と、前記基材シート10の上面に配置された培養層30と、前記培養層30を包囲するように配置された枠層20と、前記培養層30を被覆するカバーシート40とを有する。枠層20を有する実施形態の場合、試料を培養層30に添加する際に、試料の拡散を培養層30の範囲に限定することができる。枠層20は、培養層30の外周と密着するように配置されていてもよく、離間するように配置されていてもよい。好ましくは、枠層20は、培養層30の外周と密着するように配置される。このような実施形態の場合、試料を培養層30に添加する際に、試料の拡散を培養層30の範囲により確実に限定することができる。枠層20の形状は特に限定されず、培養層30の形状に基づき当業者が適宜選択することができる。例えば、図2に示すように、枠層20の形状は真円形若しくは楕円形等の円形であってもよく、正方形若しくは長方形のような四角形若しくは三角形等の多角形、又は不定形であってもよい。枠層20は、好ましくは、円形であり、より好ましくは、円形であり且つ培養層30の外周と密着するように配置される。この場合、試料を培養層30の中心付近に添加することにより、試料を培養層30の全体に亘って均質に拡散させることができ、且つ試料の拡散を培養層30の範囲により確実に限定することができる。
[0041]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材において、培養層及び存在する場合枠層は、基材の上面に少なくとも1個配置される。すなわち、培養層及び存在する場合枠層は、基材の上面に複数個配置されてもよい。そのような実施形態の場合、複数個の培養層及び存在する場合枠層は、基材の上面の任意の位置に配置することができる。
[0042]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材の大きさは、検出対象となる微生物を含む試料の体積等を考慮して、当業者が適宜設定することができる。例えば、シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、基材シート10の形状が四角形の場合、基材シート10は、一辺の長さが、通常は50~100 mmの範囲であり、典型的には70~90 mmの範囲である。厚さは、通常は25~1500 μmの範囲であり、典型的には50~500 μmの範囲である。カバーシート40の形状及び大きさは、基材シート10と同一であることが好ましい。カバーシート40の厚さは、10~200 μmの範囲であることが好ましく、20~70 μmの範囲であることがより好ましい。この場合において、培養層30の形状が円形の場合、培養層30の直径は、20~80 mmの範囲であることが好ましく、30~70 mmの範囲であることがより好ましい。培養層30が円形以外の形状の場合、培養層30の外周によって画定される図形に内接する最大円の直径が前記範囲であることが好ましい。また、培養層30の厚さは、150~250 μmの範囲であることが好ましく、190~210 μmの範囲であることがより好ましい。培養層30の厚さは、本実施形態の微生物培養シートにおける乾燥状態の培養層30の下面、すなわち基材シート10と接する面から培養層30の上面までの距離の平均値として定義される。培養層30の厚さは、例えば、基材シート10の下面から上面までの距離と、基材シート10の下面から乾燥状態の培養層30の上面までの距離とを数箇所において測定し、両距離の差の平均値を算出することによって決定することができる。培養層30の大きさが前記範囲である場合、所定量の試料を確実に吸収し保持することができる。
[0043]
 本態様の黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材が枠層を有する場合、枠層の大きさは、培養層の大きさに基づき、当業者が適宜設定することができる。例えば、シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、枠層20の高さは、培養層30の厚さに対して100~1200 μm高いことが好ましく、200~1000 μm高いことがより好ましく、300~800 μm高いことがさらに好ましい。枠層20の幅は、0.5~5.0 mmの範囲であることが好ましく、1.0~3.0 mmの範囲であることがより好ましい。枠層20の高さは、本実施形態の微生物培養シートにおける枠層20の下面、すなわち基材シート10と接する面から枠層20の上面までの距離の平均値として定義される。枠層20の高さは、例えば、基材シート10の下面から上面までの距離と、基材シート10の下面から枠層20の上面までの距離とを数箇所において測定し、両距離の差の平均値を算出することによって決定することができる。また、枠層20の幅は、枠層20の側面間の距離の平均値として定義される。枠層20の大きさが前記範囲である場合、培養層30に試料を添加した際に試料が流出することを防止することができる。また、カバーシート40で培養層30を被覆した際に、カバーシート40及び培養層30の間に空隙が生じることを実質的に防止することができる。これにより、培養層30における試料の拡散を確実にすることができる。
[0044]
 本態様の微生物培養基材において、基材は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを主成分として含むことが好ましい。前記のプラスチックを主成分として含む基材は、耐水性及び耐溶媒性を有することから、該基材の上面に水及び/又は溶媒を含む培養層を配置することができる。また、前記のプラスチックを主成分として含む基材は、耐熱性及び印刷適性を有することから、印刷、塗布又は噴霧等の手段を用いて該基材の上面に培養層を形成させることができる。さらに、前記のプラスチックを主成分として含む基材は、透明性に優れることから、基材の透過光によって培養層で生育する微生物のコロニーを観察することができる。或いは、基材は、前記のプラスチックに着色剤又は発泡剤を加える等の手段によって着色された状態で使用することもできる。着色された基材を使用することにより、培養層で生育する微生物のコロニーの色をより明確に評価することができる。
[0045]
 シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、基材シートが多層構造を有する場合、該基材シートは、前記のプラスチックを主成分として含む同一のシートが積層された構造を有してもよく、異なるシートが積層された構造を有してもよい。或いは、多層構造を有する基材シートは、紙及び/又は合成樹脂を主成分として含むシートと前記のプラスチックを主成分として含む同一又は異なるシートとが積層された構造を有してもよい。紙及び合成樹脂を主成分として含むシートを含む多層構造の基材シートとしては、例えば、ユポ(商標)(ユポ・コーポレーション製)、及びクリスパー(商標)(東洋紡製)を挙げることができる。
[0046]
 本実施形態の微生物培養シートにおいて、カバーシートは、培養層の汚染防止、及び/又は培養層の水分蒸発防止のために使用される。カバーシートは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを主成分として含むことが好ましい。前記のプラスチックを主成分として含むカバーシートは、透明性に優れることから、カバーシートの透過光によって培養層で生育する微生物のコロニーを観察することができる。また、カバーシート40は、例えば図5及び6に示すように、観察の指標として一定の大きさの枡目模様を有してもよい。本実施形態の場合、枡目模様は、水に不溶性で且つ微生物の成育に実質的な影響を与えないインクを用いてカバーシートの表面に印刷することによって形成することができる。
[0047]
 本態様の微生物培養基材において、培養層は、1種以上の固着剤を含むことができる。本発明において、「固着剤」は、培養層に含まれる培地の粘度を調整し、且つ培養層を基材シートの表面に密着させるための化合物を意味する。シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、1種以上の固着剤は、ポリビニルピロリドンであることが好ましい。ポリビニルピロリドンを1種以上の固着剤として用いることにより、培養層に含まれる培地成分を均質に分散させることができる。また、本発明の一態様の培地の粘度を増大させることにより、本実施形態の微生物培養シートの製造時に、基材シートの上面の所望の位置に所望の大きさの培養層を形成させることができる。また、ポリビニルピロリドンは前記のプラスチックを主成分として含む基材シートとの密着性が高いので、接着剤等を用いることなく培養層を基材シートの表面に密着させることができる。1種以上の固着剤として使用されるポリビニルピロリドンの濃度は、15~20%の範囲であることが好ましい。前記濃度は、本実施形態の微生物培養シートにおける培養層の乾燥状態の総質量に対する最終濃度(質量百分率)として定義される。ポリビニルピロリドンを1種以上の固着剤として含むことにより、所望の特性を有する培養層を形成させることができる。
[0048]
 本態様の微生物培養基材において、培養層は、1種以上のゲル化剤を含むことができる。1種以上のゲル化剤としては、本発明の一態様の培地の成分として前記で例示したゲル化剤を使用することができる。シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、1種以上のゲル化剤は、サイリウムシードガム及びグアーガムの組み合わせであることが好ましい。1種以上のゲル化剤の濃度は、50~60%の範囲であることが好ましい。前記濃度は、本実施形態の微生物培養シートにおける培養層の乾燥状態の総質量に対する最終濃度(質量百分率)として定義される。1種以上のゲル化剤を含むことにより、所望の特性を有する培養層を形成させることができる。
[0049]
 本態様の微生物培養基材において、培養層は、所望により、1種以上の可塑剤を含む。1種以上の可塑剤としては、グリセリン、グリセリン誘導体系可塑剤、及びポリエチレングリコールを挙げることができる。シート形状の基材を有する微生物培養シートの実施形態において、1種以上の可塑剤は、グリセリンであることが好ましい。1種以上の可塑剤の濃度は、5~10%の範囲であることが好ましい。前記濃度は、本実施形態の微生物培養シートにおける培養層の乾燥状態の総質量に対する最終濃度(質量百分率)として定義される。1種以上の可塑剤を含むことにより、培養層の可塑性、柔軟性及び弾力性等を向上させることができる。
[0050]
 本態様において、シート形状の基材を有する微生物培養シートは、例えば国際公開第2011/007802号及び特開2014-90701号公報等に開示されている、当該技術分野で公知の任意の微生物培養シートの製造方法に基づき、製造することができる。本実施形態の微生物培養シートは、例えば、基材シートを準備する工程、基材シートの上面に培養層をパターン形成する工程、基材シートとカバーシートとを固定する工程を含む方法によって製造することができる。また、本実施形態の微生物培養シートが枠層を有する実施形態の場合、前記製造方法は、基材シートの上面に枠層を形成する工程をさらに含むことが好ましい。
[0051]
 本実施形態の微生物培養シートの製造方法において、基材シートの上面に培養層をパターン形成する工程は、培養層に含まれる各成分を1種以上の溶媒に懸濁させた培地液を調製する工程、培地液を基材シートの上面に適用する工程、適用された培地液を乾燥させて、所定の形状の培養層を形成させる工程をさらに含む。培地液の調製において、例えば粘度調整のために使用される1種以上の溶媒は、本発明の一態様の培地の成分として前記で例示した溶媒から適宜選択することができる。培地液の調製に使用される1種以上の溶媒は、低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール又は2-プロパノール(イソプロピルアルコール)がより好ましく、メタノールがさらに好ましい。培地液は、通常は、調製工程の時点で培養層に含まれるすべての成分を含む。しかしながら、培地液は、調製工程の時点で培養層に含まれる一部の成分を含んでいなくてもよい。この場合、残りの成分は、培地液を基材シートの上面に適用する工程と同時に又は該工程の後の任意の時点で、塗布された培地液又は形成された培養層に添加すればよい。
[0052]
 培地液を基材シートの上面に適用する工程は、例えば、印刷、塗布又は噴霧等の手段によって実施することができる。その後、適用された培地液を乾燥させる工程において、培地液に含まれる溶媒を蒸発除去させて、所定の形状の培養層を形成させることができる。培養層に含まれるポリビニルピロリドンは、前記のプラスチックを主成分として含む基材シートとの密着性が高い。このため、培地液を基材シートの上面に適用する工程及びその後の乾燥工程を実施することにより、接着剤等を用いることなく培養層を基材シートの表面に密着させることができる。
[0053]
 本実施形態の微生物培養シートの製造方法は、得られた微生物培養シートを滅菌する工程をさらに含んでもよい。微生物培養シートを滅菌する手段としては、例えば、ガンマ線等の放射線照射滅菌、又はエチレンオキサイドガス等を用いる化学滅菌を挙げることができる。
[0054]
 前記の工程を含む方法を実施することにより、シート形状の基材を有する微生物培養シートを製造することができる。
[0055]
<3:黄色ブドウ球菌を検出する方法>
 本発明の一態様の培地及び微生物培養基材は、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌を含む多数の微生物が存在する試料から、黄色ブドウ球菌のみを高精度で検出するために使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材を用いる黄色ブドウ球菌を検出する方法に関する。本態様の黄色ブドウ球菌を検出する方法は、試料添加工程、コロニー形成工程及び菌株同定工程を含む。
[0056]
[3-1:試料添加工程]
 本工程は、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材の培養層に微生物を含む試料を添加する工程である。
[0057]
 本工程で使用される試料は、通常は、黄色ブドウ球菌及び場合により黄色ブドウ球菌以外のさらなる微生物を含む。すでに説明したように、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材は、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のようなさらなる微生物が存在する試料から、黄色ブドウ球菌のみを高精度で検出することができる。それ故、試料に含まれるさらなる微生物は、特に限定されない。試料に含まれるさらなる微生物としては、限定するものではないが、例えば、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌に加えて、大腸菌、腸球菌及びバチルス属菌のような非ブドウ球菌を挙げることができる。本態様の方法により、前記で例示した多数の微生物を含む試料から、黄色ブドウ球菌のみを高精度で検出することができる。
[0058]
 微生物を含む試料は、黄色ブドウ球菌が存在する可能性のある製品(例えば、食品、飲料品、医薬品若しくは動物飼料等)、器具、装置及び場所等の任意の対象から調製することができる。
[0059]
 本工程において、微生物を含む試料は、通常は液体の形態で使用される。この場合、試料の溶媒は、通常は滅菌水である。溶媒は、所望により、無機塩、緩衝成分及び培地成分等を含むことができる。
[0060]
 本工程において、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材の培養層に添加される試料の体積は、使用される本発明の一態様の培地及び微生物培養基材の培養層の大きさ等に基づき、当業者が適宜設定することができる。例えば、図1に示すシート形状の基材を有する本発明の一態様の微生物培養基材、すなわち微生物培養シートの実施形態の場合、約1 mlの試料を添加することが好ましい。前記体積で試料を添加することにより、添加された試料を培養層に確実に吸収し保持することができる。
[0061]
 本工程において、本発明の一態様の微生物培養基材、例えば微生物培養シートを使用する場合、微生物培養基材の培養層は、微生物を含む試料の総体積に対して0.2 mg/ml以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含むことが好ましい。この場合において、微生物培養基材の培養層に含まれるコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度は、0.2~1.6 mg/mlの範囲であることが好ましく、0.2~1.1 mg/mlの範囲であることがより好ましく、0.9~1.1 mg/mlの範囲であることがさらに好ましく、約1 mg/mlであることが特に好ましい。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを前記の高濃度で含む微生物培養基材を使用することにより、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌が偽陽性として検出されることを実質的に防止することができる。
[0062]
 本態様の方法では、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材の培養層に形成されたコロニーの色に基づき、黄色ブドウ球菌を同定する。このため、試料に含まれる微生物の菌密度が高い場合、形成されたコロニーを複数の単一コロニーとして分離・識別することが困難となる可能性がある。それ故、微生物を含む試料は、適切な菌密度となるように予め溶媒で希釈することが好ましい。試料に含まれる微生物の菌密度は、添加される試料の体積、並びに使用される本発明の一態様の培地及び微生物培養基材の培養層の大きさ等に基づき、当業者が適宜設定することができる。例えば、図1に示すシート形状の基材を有する本発明の一態様の微生物培養基材、すなわち微生物培養シートの実施形態の場合、試料に含まれる微生物の菌密度は、1~500 cfu/mlの範囲であることが好ましい。試料に含まれる微生物の菌密度が前記範囲の場合、約1 mlの試料を培養層に添加することにより、試料に含まれるすべての微生物を、培養層において単一コロニーとして分離・識別することができる。
[0063]
[3-2:コロニー形成工程]
 本工程は、試料を添加した培地又は微生物培養基材をインキュベートして微生物のコロニーを形成させる工程である。
[0064]
 本工程において、試料を添加した培地又は微生物培養基材をインキュベートする条件は、当該技術分野で通常使用される黄色ブドウ球菌等の微生物の培養条件に基づき、当業者が適宜設定することができる。
[0065]
[3-3:菌株同定工程]
 本工程は、形成された微生物のコロニーの色に基づき黄色ブドウ球菌を同定する工程である。
[0066]
 すでに説明したように、例えば、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートである本発明の一態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌が存在する場合、該菌株が生育したコロニーは青~濃青色に発色する。これに対し、前記発色剤の組み合わせを含む本発明の一態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、α-グルコシダーゼ産生能力及びホスファターゼ産生能力の両方を有するスタフィロコッカス・インターメディウスが存在する場合、該菌株が生育したコロニーは紫色に発色する。また、前記発色剤の組み合わせを含む本発明の一態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌、例えば腐生ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カルノサス、スタフィロコッカス・キシロサス又はスタフィロコッカス・スキウリが存在する場合、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムによって該菌株の生育が抑制されるため、α-グルコシダーゼ産生能力及び/又はホスファターゼ産生能力を発現することができず発色しない。さらに、前記発色剤の組み合わせを含む本発明の一態様の培地又は微生物培養基材の培養層にブドウ球菌以外のバチルス属菌が存在する場合、該菌株は生育が抑制されるか、又は場合により生育してコロニーがピンク色に発色する。或いは、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートである本態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌が存在する場合、該菌株が生育したコロニーは赤紫色に発色する。これに対し、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、α-グルコシダーゼ産生能力及びホスファターゼ産生能力の両方を有するスタフィロコッカス・インターメディウスが存在する場合、該菌株が生育してコロニーが灰色に発色する。また、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地又は微生物培養基材の培養層に黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のうち、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌、例えば腐生ブドウ球菌、スタフィロコッカス・キシロサス又はスタフィロコッカス・スキウリが存在する場合、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムによって該菌株の生育が抑制されるため、α-グルコシダーゼ産生能力及び/又はホスファターゼ産生能力を発現することができず発色しない。さらに、前記発色剤の組み合わせを含む本態様の培地又は微生物培養基材の培養層にブドウ球菌以外のバチルス属菌が存在する場合、該菌株は生育が抑制されるか、又は場合により生育してコロニーが灰色若しくは青色に発色する。それ故、形成された微生物のコロニーの色に基づき、黄色ブドウ球菌を高い精度で同定することができる。
[0067]
 以上、詳細に説明したように、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材は、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌を偽陽性として検出することなく、黄色ブドウ球菌のみを検出することができる。それ故、本発明の一態様の培地及び微生物培養基材を用いることにより、様々な対象に存在する黄色ブドウ球菌を高い精度で迅速に検出することができる。
実施例
[0068]
 以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[0069]
<I:微生物培養シートの作製>
 基材シート10として、合成樹脂を主原料とした合成紙(ユポ・コーポレーション製、ユポ)を準備した。基材シート10の形状は、長方形であった。基材シート10の厚みは270 μmであり、基材シート10の長辺長さは90 mmであり、基材シート10の短辺長さは72 mmであった。
[0070]
 基材シート10の上面に、エチレン酢酸ビニル系のホットメルト樹脂からなる円形状の枠層20を設けた。枠層20の幅(枠層20の外縁と内縁との間の間隔)は1 mmであり、枠層20の内径(内縁によって形成される円の直径)は50 mmであり、枠層20の高さは750 μmであった。
[0071]
 基材シート10の上面であって、枠層20によって囲まれた領域内に、培養層30を形成するための培地液を塗布した。培地液は、栄養成分、発色剤、選択剤、固着剤、ゲル化剤及び可塑剤を含む固形成分と、粘度調整のための溶媒(メタノール)とを含む。栄養成分としては、トリプトン、ソイトン、酵母エキス、ピルビン酸ナトリウム、D(-)-マンニトール、リン酸水素二カリウム及びグリシンを使用した。培地液に含まれる固形成分を表1に示す。
[0072]
[表1]


[0073]
 基材シート10に塗布した培地液を乾燥させてメタノールを蒸発除去させて、基材シート10の上面に培養層30を形成させた。培養層30の厚さは200 μmであった。なお、培養層30の厚さは、基材シート10の下面から上面までの距離と、基材シート10の下面から乾燥状態の培養層30の上面までの距離とを5箇所において測定し、両距離の差の平均値を算出することによって決定した。
[0074]
 基材シート10の上面に、基材シート10の一方の短辺に沿って、長さ6 mm、幅72 mmの両面テープを固定部材25として貼付した。次に、カバーフィルム40として、基材層、印刷層及び撥水層を有するカバーフィルム40を準備した。基材層は、厚さ40 μmの透明な配向ポリプロピレンで形成された。印刷層には、10 mm間隔の枡目線を配置した。撥水層は、ポリアミドを主成分とする樹脂で形成された。カバーフィルム40の長辺長さは95 mmであり、短辺長さは72 mmであった。次に、カバーフィルム40の一方の短辺近傍の部分を、固定部材25を介して基材シート10に接合した。このようにして、微生物培養シートを作製した。
[0075]
<II:微生物の検出>
[実験1:α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤を含む培地を用いる微生物の検出試験]
 所定の試験用微生物菌株を液体培地(SCDブイヨン培地)に植菌し、35℃で24時間培養して、試験用微生物懸濁液を調製した。この試験用微生物懸濁液を、約1~500 cfu/mlの菌密度となるようにリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。得られた試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、表1に記載の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。試料を接種した微生物培養シートを、インキュベーターに静置し、35℃で24又は48時間培養した。培養終了後、微生物培養シートをインキュベーターから取り出した。各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態及び色を表2に示す。
[0076]
[表2]


[0077]
 表1に示すように、実験1の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートは、培養層の培地に、発色剤としてα-グルコシダーゼの存在下で発色する6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドのみを含み、且つ選択剤としてコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含まない。例えば、特表2004-524041号公報(特許文献2)では、α-グルコシダーゼの存在下で発色する酵素基質を発色剤として含む培養基を用いることで、黄色ブドウ球菌を他のブドウ球菌と識別して検出できると記載する。
[0078]
 表2に示すように、実験1の微生物培養シートを用いた場合、黄色ブドウ球菌以外の数種のブドウ球菌のコロニーがピンク色に発色した。また、2種のバチルス属菌のコロニーもピンク色に発色した。以上の結果より、発色剤として6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドのみを含み、且つ選択剤としてコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含まない培養層を有する微生物培養シートでは、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌及びバチルス属菌が偽陽性として検出される可能性があることが明らかとなった。
[0079]
[実験2:ホスファターゼの存在下で発色する発色剤を含む培地を用いる微生物の検出試験]
 実験1と同様の手順で試験用微生物試料を調製した。試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、表1に記載の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。実験1と同様の手順で、試料を接種した微生物培養シートをインキュベートして、各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態及び色を表3に示す。
[0080]
[表3]


[0081]
 表1に示すように、実験2の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートは、培養層の培地に、発色剤としてホスファターゼの存在下で発色する5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートのみを含み、且つ選択剤としてコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含まない。
[0082]
 表3に示すように、実験2の微生物培養シートを用いた場合、黄色ブドウ球菌以外の数種のブドウ球菌のコロニーが濃青~薄青色に発色した。また、2種のバチルス属菌のコロニーも濃青色に発色した。以上の結果より、発色剤として5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートのみを含み、且つ選択剤としてコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含まない培養層を有する微生物培養シートでは、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌及びバチルス属菌が偽陽性として検出される可能性があることが明らかとなった。
[0083]
[実験3:2種類の発色剤を含む培地を用いる微生物の検出試験]
 実験1と同様の手順で試験用微生物試料を調製した。試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、表1に記載の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。実験1と同様の手順で、試料を接種した微生物培養シートをインキュベートして、各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態及び色を表4に示す。
[0084]
[表4]


[0085]
 表1に示すように、実験3の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートは、培養層の培地に、発色剤としてα-グルコシダーゼの存在下で発色する6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシド及びホスファターゼの存在下で発色する5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートを含み、且つ選択剤としてコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含まない。
[0086]
 実験3の微生物培養シートの培養層の培地に黄色ブドウ球菌が存在する場合、該菌株が生育したコロニーは、α-グルコシダーゼ活性によるピンク色とホスファターゼ活性による青~濃青色との混合色、例えば紫色に発色すると予想された。しかしながら、表4に示すように、実験3の微生物培養シートを用いた場合、驚くべきことに、黄色ブドウ球菌は、コロニーが濃青色に発色した。これに対し、スタフィロコッカス・インターメディウス及びスタフィロコッカス・スキウリ以外の他のブドウ球菌は、コロニーを形成しないか、コロニーが発色しないか、又はコロニーがピンク色に発色した。スタフィロコッカス・インターメディウスは、コロニーが紫色に発色した。この発色パターンは、スタフィロコッカス・インターメディウスがα-グルコシダーゼ及びホスファターゼの両方を発現していることに起因すると推測される。それ故、濃青色のコロニーを形成した試料を陽性と、コロニーを形成しないか、コロニーが発色しないか、又はコロニーがピンク色に発色した試料を陰性と判定することにより、黄色ブドウ球菌を特異的に検出することができる。しかしながら、スタフィロコッカス・スキウリのコロニーは薄青色に発色したことから、該菌株は偽陽性として検出される可能性があることが明らかとなった。
[0087]
[実験4:コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む培地を用いる微生物の検出試験]
 実験1と同様の手順で試験用微生物試料を調製した。また、実験1と同様の手順で微生物培養シートを作製した。微生物培養シートの作製に使用した培地液は、表1に記載の実験3の場合と同様の固形成分と、表5に記載の最終の質量濃度となる所定量のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムと、粘度調整のための溶媒(メタノール)とを含む。試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。実験1と同様の手順で、試料を添加した微生物培養シートをインキュベートして、24時間培養後、各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態を表5に示す。表中、空欄は、通常の生育状態でコロニーが形成されたことを、「抑制」は、生育抑制された状態であったことを、それぞれ示す。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの濃度のうち、上段の濃度は、試料を接種する前の乾燥状態の培養層の総体積に対する質量濃度(mg/cm 3)であり、下段の濃度は、使用時に培養層に接種された試料の溶液の総体積に対する質量濃度(mg/ml)である。
[0088]
[表5]


[0089]
 表1及び5に示すように、実験4の成分を含む培地液を用いて作製された微生物培養シートは、培養層の培地に、発色剤としてα-グルコシダーゼの存在下で発色する6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシド及びホスファターゼの存在下で発色する5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートを含み、且つ選択剤として表5に記載の濃度でコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む。
[0090]
 表5に示すように、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、黄色ブドウ球菌ATCC25923株及びNBRC100910株に対しては、試験した0.3~4.1 mg/cm 3(すなわち0.1~1.6 mg/ml試料溶液)の範囲の濃度で生育抑制を示さなかった。黄色ブドウ球菌NBRC12732株のみは、3.1 mg/cm 3(すなわち1.2 mg/ml試料溶液)のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育抑制を示した。これに対し、腐生ブドウ球菌(スタフィロコッカス・サプロフィティカス)は、グラム陽性菌であるにもかかわらず、0.5 mg/cm 3(すなわち0.2 mg/ml試料溶液)以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育抑制を示した。同様に、スタフィロコッカス・キシロサス及びスタフィロコッカス・スキウリは、2.3 mg/cm 3(すなわち0.9 mg/ml試料溶液)以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育抑制を示した。また、スタフィロコッカス・カルノサスは、1.3 mg/cm 3(すなわち0.5 mg/ml試料溶液)以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育抑制を示した。以上の結果から、高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、特定の種類のブドウ球菌に対して抑制効果を示す選択剤として使用できることが明らかとなった。
[0091]
[実験5:2種類の発色剤及び高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む培地を用いる微生物の検出試験(1)]
 実験1と同様の手順で試験用微生物試料を調製した。また、実験1と同様の手順で微生物培養シートを作製した。微生物培養シートの作製に使用した培地液は、表1に記載の実験3の場合と同様の固形成分と、2.5 mg/cm 3(すなわち1 mg/ml試料溶液)の最終の質量濃度となる所定量のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムと、粘度調整のための溶媒(メタノール)とを含む。試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。実験1と同様の手順で、試料を添加した微生物培養シートをインキュベートして、各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態及び色を表6に示す。また、発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を図7及び8に示す。図中、図7(a)は、黄色ブドウ球菌ATCC25923菌株を、図7(b)は、黄色ブドウ球菌NBRC100910菌株を、図7(c)は、黄色ブドウ球菌NBRC12732菌株を、図7(d)は、スタフィロコッカス・インターメディウスを、図7(e)は、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus)を、図7(f)は、スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)を、それぞれ示す。図8(a)は、腐生ブドウ球菌を、図8(b)は、スタフィロコッカス・キシロサスを、図8(c)は、スタフィロコッカス・スキウリを、図8(d)は、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)を、図8(e)は、バチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)を、図8(f)は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)を、それぞれ示す。
[0092]
[表6]


[0093]
 表6に示すように、実験5の微生物培養シートを用いた場合、黄色ブドウ球菌のコロニーは、実験3の場合と同様に、濃青色に発色した(図7(a)~(c))。これに対し、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌は、コロニーを形成しなかった。特に、実験1~3ではコロニー形成が確認されたスタフィロコッカス・スキウリは、2.5 mg/cm 3(すなわち1 mg/ml試料溶液)のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育が抑制され、コロニーを形成しなかった。スタフィロコッカス・インターメディウスのコロニーは、紫色に発色した(図7(d))。2種のバチルス属菌のコロニーは、ピンク色に発色した(図8(d)及び(e))。それ故、濃青色のコロニーを形成した試料を陽性と、コロニーを形成しないか、又はコロニーが紫色若しくはピンク色に発色した試料を陰性と判定することにより、試料中に他のブドウ球菌及びバチルス属菌が存在する場合であっても、偽陽性を検出することなく、黄色ブドウ球菌を特異的に検出することができることが明らかとなった。
[0094]
[実験6:2種類の発色剤及び高濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む培地を用いる微生物の検出試験(2)]
 実験1と同様の手順で試験用微生物試料を調製した。また、実験1と同様の手順で微生物培養シートを作製した。微生物培養シートの作製に使用した培地液は、表1に記載の実験3の場合の固形成分において、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドに、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤を5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートに、それぞれ変更した固形成分を含む。さらに、培地液は、2.5 mg/cm 3(すなわち1 mg/ml試料溶液)の最終の質量濃度となる所定量のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムと、粘度調整のための溶媒(メタノール)とを含む。試験用微生物試料を、マイクロピペットを用いて、微生物培養シートの培養層に1 ml接種した。実験1と同様の手順で、試料を添加した微生物培養シートをインキュベートして、各微生物培養シートの培養層に形成されたコロニーの色及び着色強度を目視で確認した。前記実験を試験用微生物菌株のそれぞれについて実施した。実験に用いた試験用微生物菌株の名前、並びに各菌株コロニーの形成状態及び色を表7に示す。また、発色後の各菌株コロニーの形成状態及び色を図9~11に示す。図中、図9(a)は、黄色ブドウ球菌ATCC25923菌株を、図9(b)は、黄色ブドウ球菌NBRC100910菌株を、図9(c)は、黄色ブドウ球菌NBRC12732菌株を、図9(d)は、スタフィロコッカス・インターメディウスを、図9(e)は、スタフィロコッカス・ハイカスを、図9(f)は、スタフィロコッカス・エピダーミディスを、それぞれ示す。図10(a)は、腐生ブドウ球菌スタフィロコッカス・サプロフィティカスを、図10(b)は、スタフィロコッカス・キシロサスを、図10(c)は、スタフィロコッカス・スキウリを、図10(d)は、スタフィロコッカス・シムランス(Staphylococcus simulans)を、図10(e)は、スタフィロコッカス・ハエモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)を、図10(f)は、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)を、それぞれ示す。図11(a)は、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)を、図11(b)は、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)を、図11(c)は、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)を、図11(d)は、バチルス・セレウスを、図11(e)は、バチルス・リチェニホルミスを、図11(f)は、バチルス・スブチリスを、それぞれ示す。
[0095]
[表7]


[0096]
 表7に示すように、実験6の微生物培養シートを用いた場合、黄色ブドウ球菌のコロニーは、赤紫色(マゼンタ)に発色した(図9(a)~(c))。これに対し、スタフィロコッカス・インターメディウス以外の他のブドウ球菌は、コロニーを形成しなかった。特に、実験1~3ではコロニー形成が確認されたスタフィロコッカス・スキウリは、2.5 mg/cm 3(すなわち1 mg/ml試料溶液)のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む微生物培養シートで生育が抑制され、コロニーを形成しなかった。スタフィロコッカス・インターメディウスのコロニーは、灰色に発色した(図9(d))。2種のバチルス属菌のコロニーは、青色又は灰色に発色した(図11(d)及び(e))。それ故、赤紫色のコロニーを形成した試料を陽性と、コロニーを形成しないか、又はコロニーが灰色若しくは青色に発色した試料を陰性と判定することにより、試料中に他のブドウ球菌及びバチルス属菌が存在する場合であっても、偽陽性を検出することなく、黄色ブドウ球菌を特異的に検出することができることが明らかとなった。
[0097]
 本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2016-016378号及び2016-113278号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
[0098]
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

符号の説明

[0099]
10…基材シート
20…枠層
25…固定部材
30…培養層
40…カバーシート

請求の範囲

[請求項1]
 1種以上の栄養成分と、α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤と、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤と、0.5 mg/cm 3以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムとを含む、黄色ブドウ球菌を検出するための培地。
[請求項2]
 α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が6-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-3-インドキシルホスフェートである、請求項1に記載の培地。
[請求項3]
 α-グルコシダーゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-α-D-グルコシドであり、ホスファターゼの存在下で発色する発色剤が5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシルホスフェートである、請求項1に記載の培地。
[請求項4]
 0.5~4.1 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の培地。
[請求項5]
 0.5~2.8 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項4に記載の培地。
[請求項6]
 2.3~2.8 mg/cm 3の範囲のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項5に記載の培地。
[請求項7]
 基材と、前記基材の上面に配置された培養層とを有する黄色ブドウ球菌を検出するための微生物培養基材であって、
 前記培養層が、請求項1~6のいずれか1項に記載の培地を含む、前記微生物培養基材。
[請求項8]
 シート形状の基材と、前記培養層を被覆するカバーシートとをさらに有し、前記培養層が、ポリビニルピロリドンと、1種以上のゲル化剤とをさらに含む、請求項7に記載の微生物培養基材。
[請求項9]
 黄色ブドウ球菌を検出する方法であって、
 請求項1~6のいずれか1項に記載の培地又は請求項7若しくは8に記載の微生物培養基材の培養層に微生物を含む試料を添加する、試料添加工程;
 試料を添加した培地又は微生物培養基材をインキュベートして微生物のコロニーを形成させる、コロニー形成工程;
 形成された微生物のコロニーの色に基づき黄色ブドウ球菌を同定する、菌株同定工程;を含む、前記方法。
[請求項10]
 試料添加工程において、請求項7若しくは8に記載の微生物培養基材の培養層に微生物を含む試料を添加し、該微生物培養基材の培養層が、微生物を含む試料の総体積に対して0.2 mg/ml以上のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項9に記載の方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]