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1. WO2017131022 - METHOD FOR DETECTING GLYCOPROTEIN

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明 細 書

発明の名称 糖タンパク質の検出方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010  

先行技術文献

特許文献

0011  

非特許文献

0012  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

発明の効果

0025  

発明を実施するための形態

0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064  

実施例

0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 糖タンパク質の検出方法

技術分野

[0001]
 本発明は、糖タンパク質の検出方法に関し、より詳細には、検出感度を向上させる糖タンパク質の検出方法に関する。

背景技術

[0002]
 タンパク質の半数以上が翻訳後に糖鎖修飾を受けている。糖鎖のタンパク質への結合様式は、アスパラギン残基のアミド基に結合するN結合型及びセリン又はスレオニン残基のヒドロキシル基に結合するO結合型に分けられる。いずれの糖鎖修飾も、タンパク質の活性、細胞間相互作用、接着等に重要な役割を果たしている。糖鎖修飾の変化が疾患と関連することが数多く報告されている。
[0003]
 例えば、血清に含まれるαフェトプロテイン(N結合型糖鎖)は、健康な成人の血清にほとんど存在しない。一方、良性の肝疾患を持つ患者血清にはαフェトプロテイン-L1型糖鎖(AFP-L1)が増加し、肝臓ガン患者にはさらにフコシル化したαフェトプロテイン-L3型糖鎖(fAFP又はAFP-L3)が検出される。レクチンで検出される糖鎖の違いが、肝疾患診断に利用されている。
[0004]
 ハプトグロビンは、β鎖に4個のN結合型糖鎖結合部位を有する糖タンパク質である。膵臓癌になると、ハプトグロビンにフコースが付加した病変ハプトグロビンが患者血清等から検出される。病変ハプトグロビンは、膵臓癌の病期の進行とともに増え、膵臓癌の腫瘍部摘出後には消失する。フコシル化ハプトグロビンの高精度かつ迅速な検出により、膵臓癌の早期発見が期待される。
[0005]
 チログロブリンは、甲状腺の上皮細胞で合成され濾胞に貯留し、一般に全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもつホルモンである。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症の代表例が、バセドウ病である。バセドウ病は、手足の震え、眼球突出、動悸、甲状腺腫脹、多汗、体重減少、高血糖、高血圧等の症状を引き起こす。甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症の例が慢性甲状腺炎(橋本病)である。橋本病は、全身倦怠感、発汗減少、体重増加、便秘等の症状を引き起こす。このタンパク質は、糖鎖の一種であるフコースを有する。チログロブリンに付加した糖鎖の検出感度を高めることで、チログロブリン含量の測定精度を上げることができる。
[0006]
 関節リウマチ患者では、血清中IgGの末端ガラクトースの付加率が減少し、末端にN-アセチルグルコサミンを持つ糖鎖の割合が増加する。ガラクトース欠損は、IgGの重要な生理機能である補体の活性化やFC受容体への結合能を著しく損なう。
[0007]
 トランスフェリン(TF)は、679個のアミノ酸を持ち、その413番目と611番目のアスパラギン酸残基が末端シアル酸を有する二個の分岐状糖鎖でN-グリコシル化されている糖タンパク質である。トランスフェリンには、570番目のアミノ酸残基がプロリンであるTFC1と、それがセリンで置換されたTFC2という多型が存在する。TFC1C2のヘテロ接合体の遺伝子型を持つアルツハイマー疾患(AD)患者は、6個のシアル酸を有するTFの相対強度が、TFC1C1ホモ接合体の遺伝子型を持つ患者よりも有意に減少している。
[0008]
 AD患者から採取したCSF糖タンパク質は、シアル酸付加率が有意に低下している。シアル酸量の変化は、AD以外にも、心臓血管疾患、アルコール依存症、糖尿病等について観察されている。
[0009]
 上記糖タンパク質を検出するために、糖結合化合物の一種であるレクチンの使用が公知である。レクチンは、シアル酸、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン等の糖残基に親和性を示すタンパク質の総称である。特定の糖残基に親和性を有する植物、動物あるいは菌類由来のレクチンが数多く発見されている。
[0010]
 レクチンを用いた糖タンパク質の検出方法として、レクチンELISA(酵素免疫測定法)やレクチンアフィニティクロマトグラフィーが知られている。レクチンELISAは、多数の検体を同時に測定できる、糖鎖を比較的簡便に測定することができる等の長所を有する。レクチンアフィニティクロマトグラフィーは、レクチンが特異的に糖鎖に結合する性質を利用したクロマトグラフィーであり、糖鎖構造のわずかな違いを見分けて分離する。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用のレクチンHPLCカラムを用いるレクチンアフィニティクロマトグラフィーは、糖鎖の分析だけでなく、精製にも有効である。

先行技術文献

特許文献

[0011]
特許文献1 : 特許4514163(フコースα1→6特異的レクチン)

非特許文献

[0012]
非特許文献1 : Yuka Kobayashi et al.,”A Novel Core Fucose-specific Lectin from the Mushroom Pholiota squarrosa”,J.Biol.Chem,2012,287,p33973-33982
非特許文献2 : Naoto Shibuya et al.,”The Elderberry (Sambucus nigra L.) Bark Lectin Recognizes the Neu5Ac(a2-6)Gal/GalNAc Sequence”,J.Biol.Chem,1987, 262, p 1596-1601
非特許文献3 : T.B NG et al.,”Isolation and characterization of a galactose binding lectin with insulinomimetic activities’’Int. J. Peptide Protein Res 28, 1986, p163-173
非特許文献4 : Yasuo Oda et al.,”A new agglutinin from the Tulipa gesneriana bulbs”,Eur. J. Biochem, 1087, 165, p297-302

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0013]
 レクチンELISAやレクチンクロマトグラフィー等の糖タンパク質の検出方法において、糖タンパク質とレクチンとの反応によるシグナルが低いと、糖タンパク質の正確な検出が困難である。糖鎖量の変化と関連するような疾患を早期に精度高く診断するためには、レクチン反応に基づくシグナルの増大が望ましい。
[0014]
 そこで、本発明の目的は、糖タンパク質を高精度に検出するために、糖タンパク質とレクチンをはじめとする糖結合化合物との反応物に基づくシグナル(反応値)を増大させる方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、糖結合化合物反応前に糖タンパク質をプロテアーゼ処理することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、糖タンパク質の検出方法であって、
該糖タンパク質を含む試料をプロテアーゼ処理する工程、
前記プロテアーゼ処理された糖タンパク質に、前記糖タンパク質の有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を作用させて、該糖タンパク質と該糖結合化合物反応物を検出する工程
を含む、前記糖タンパク質の検出方法を提供する。
[0016]
 本明細書において、「糖タンパク質」という用語は、糖ペプチドを含む意味で用いられる。「糖鎖」の用語は、本明細書において、単糖を含む意味で用いられる。また、「糖結合化合物」とは、本明細書において、糖に結合する化合物を意味する。前記糖結合化合物は、好ましくは糖結合タンパク質である。
[0017]
 前記プロテアーゼ処理は、例えばペプシン処理、パパイン処理又はアクチナーゼ処理である。
[0018]
 前記試料は、例えば血清である。
[0019]
 前記糖結合化合物は、例えばフコース、シアル酸、マンノース、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンからなる群から選ばれる少なくとも一種に親和性を有する。
[0020]
 前記糖タンパク質は、担体に固定化されていることが好ましい。
[0021]
 前記糖タンパク質は、その抗体を介して前記担体に固定化されていることが好ましい。
[0022]
 前記糖結合化合物及び/又は前記糖結合化合物を検出するプローブは、標識されていることが好ましい。
[0023]
 前記糖鎖は、例えば複合型糖鎖、高マンノース型糖鎖又はO結合型糖鎖である。
[0024]
 前記糖タンパク質は、例えばハプトグロビン、フコシル化ハプトグロビン、トランスフェリン、γ-グルタミルトランスペプチターゼ、イムノグロブリンG、イムノグロブリンA、イムノグロブリンM、α1-酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フコシル化αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、フコシル化前立腺特異抗原、チログロブリン、フェツイン、及びアシアロフェツインからなる群から選ばれる。

発明の効果

[0025]
 本発明の糖タンパク質の検出方法によれば、プロテアーゼ処理された糖タンパク質と糖結合化合物との反応物に基づくシグナル(反応値)が、プロテアーゼ未処理のものより増大する。糖鎖の欠損や付加が疾患と関連することが知られている糖タンパク質では、シグナルの増大は、疾患の早期の発見、診断や治療につながる。また、疾患の発症機構の解明、治療や予防に関する医学や生化学の研究に役立つことも期待される。

発明を実施するための形態

[0026]
 以下に、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。本発明の糖タンパク質の検出方法は、該糖タンパク質を含む試料をプロテアーゼ処理する工程、及び
前記プロテアーゼ処理された糖タンパク質に、前記糖タンパク質の有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を作用させて、該糖タンパク質と該糖結合化合物との反応物を得る工程、及び、前記反応物を検出する工程を含む。本発明の方法は、糖タンパク質を含む試料をプロテアーゼ処理する工程を必須に含む以外は、糖結合化合物を用いた従来の糖タンパク質の検出方法と同様である。
[0027]
 本発明の測定対象となる糖タンパク質は、糖鎖を有するタンパク質であれば、特に限定されない。糖鎖には、N結合型糖鎖及びO結合型糖鎖が含まれる。N結合型糖鎖には、下記式:
[化1]


 〔式中、Manはマンノース、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンを意味する〕
で示されるコア構造に、
フコース、シアル酸、ガラクトース及びN-アセチルグルコサミンで構成される側鎖(N-アセチルラクトサミン構造、ポリN-アセチルラクトサミン構造)が1~6本付加した複合型糖鎖;
前記コア構造にマンノースのみにより構成されるオリゴ糖が付加された高マンノース型糖鎖;
;並びに
前記複合型と前記高マンノース型とが混成した混成型糖鎖; 
が含まれる。また、前記N結合型糖鎖には、前記コア構造の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが付加した糖鎖も含まれる。
[0028]
 本発明の検出対象となる糖残基には、シアル酸(Sia)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、フコース(Fuc)等が含まれる。これらの糖残基は、健常者が通常有する糖鎖構造に対して付加するものであっても、又は欠損するものであってもよい。
[0029]
 糖タンパク質の具体例には、ハプトグロビン(HP)、フコシル化ハプトグロビン(fHP)、トランスフェリン(TF)、γ-グルタミルトランスペプチターゼ(γ-GTP)、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンA(IgA)、イムノグロブリンM(IgM)、α1-酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン(AFP)、フコシル化αフェトプロテイン(fAFP、AFP-L3)、フィブリノーゲン、hCG(ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン)、CEA(癌胎児性抗原)、前立腺特異抗原(PSA)、フコシル化前立腺特異抗原(fPSA)、チログロブリン(TG)、フェツイン(FET)、アシアロフェツイン(aFET)等が挙げられる。糖タンパク質は、糖タンパク質の糖鎖構造の変化と疾患や異常との関係が示唆されるものが好ましい。
[0030]
 糖タンパク質を含む試料の由来は、特に限定されない。例えば、血液、血漿、血清、涙、唾液、体液、乳汁、尿、細胞の培養上清、形質転換動物からの分泌物等が挙げられる。好ましくは血液、血漿又は血清であり、特に好ましくは血清である。プロテアーゼ処理に際し、血清等の糖タンパク質を含む試料を予め希釈しておいてもよい。
[0031]
 本発明の方法では、糖タンパク質を糖結合化合物と反応させる前にプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)で処理する。プロテアーゼは、糖タンパク質に作用して、糖ペプチドを生成させる酵素であれば、特に制限がない。該プロテアーゼを機能的に分類すると、アスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、N-末端スレオニンプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ等が含まれる。
[0032]
 上記プロテアーゼは、その由来を問わない。該プロテアーゼは、動物由来のプロテアーゼとしてペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カテプシンD、カルパイン等;植物由来のプロテアーゼとしてパパイン、キモパパイン、アクチニジン、カリクレイン、フィシン、ブロメライン等;そして微生物由来のプロテアーゼとしてバチルス属、アスペルギルス属、リゾプス属、アオカビ属(ペニシリウム属)、ストレプトマイセス属、スタフィロコッカス属、クロストリジウム属及びリソバクター属由来のものが挙げられる。
[0033]
 上記プロテアーゼは、市販のものを特に制限なく使用可能である。例えばペプシンとして、ブタ胃粘膜由来ペプシン(シグマ・アルドリッチ製)、パパインとして、パパイヤ由来パパイン(フナコシ(株)製)、ストレプトマイセス由来プロテアーゼとしてアクチナーゼE(科研製薬(株)製)等が挙げられる。
[0034]
 プロテアーゼの使用量は、糖タンパク質とプロテアーゼとの反応が進行する量であればよい。反応時の濃度は、通常、0.0001~5mg/mLでよい。特にペプシンは、0.0001~1mg/mLのような少量で効果が得られる点で好ましい。
[0035]
 プロテアーゼ処理のpH、温度、時間等の条件は、使用するタンパク分解酵素の種類に依存する。ペプシンを使用するプロテアーゼ処理は、通常、1.5~5、好ましくは2~4のpH、及び、通常、10~60℃、好ましくは15~45℃、より好ましくは20~40℃の温度の下で、通常、1分間~24時間、好ましくは1分間~180分間、より好ましくは2分間~120分間、さらに好ましくは2分間~60分間行われる。パパインを使用するプロテアーゼ処理は、通常、3~10、好ましくは5~8のpH、及び、通常、20~80℃、好ましくは20~45℃、より好ましくは20~40℃の温度の下で、通常、1分間~24時間、好ましくは1分間~180分間、より好ましくは2分間~120分間、さらに好ましくは2分間~60分間行われる。アクチナーゼEを使用するプロテアーゼ処理は、通常、7~10、好ましくは7~8.5のpH、及び、通常、10~50℃、好ましくは20~45℃、より好ましくは20~40℃の温度の下で、通常、1分間~24時間、好ましくは1分間~180分間、より好ましくは2分間~120分間、さらに好ましくは2分間~60分間行われる。
[0036]
 プロテアーゼ処理後、使用したプロテアーゼに基づいて、pHの変更、加熱処理、酵素反応停止液の添加等の適宜の手段で酵素反応を停止させる。その後、反応液を濾過、透析、遠心分離等の分離手段によって、上清と固体残渣とに分離してもよい。
[0037]
 上記プロテアーゼ処理された糖タンパク質に、前記糖タンパク質の有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を作用させて、該糖タンパク質と該糖結合化合物との反応物を得る。
[0038]
 前記プロテアーゼ処理された糖タンパク質と糖結合化合物との反応時に、糖タンパク質あるいは糖結合化合物を必ずしも固定化する必要はないが、固定化する方が好ましい。糖タンパク質を固定化するための担体は、例えばガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、ラテックス、アガロース、セルロース、デキストラン、デンプン、デキストリン、シリカゲル、多孔性セラミックス等の素材できたビーズ、ディスク、スティック、チューブ、マイクロタイタープレート、マイクロセンサーチップ、マイクロアレイ等が挙げられる。
[0039]
 前記糖タンパク質の担体への固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。
[0040]
 前記糖タンパク質は、その抗体を介して担体に固定化されていてもよい。抗体は、抗体分子自体でよく、また、抗体を酵素処理して得られるFab、Fab’、F(ab’)2等の抗原認識部位を含む活性フラグメントでもよい。
[0041]
 抗体の由来は限定されない。抗体には、ヒト、マウス、ウサギ等の哺乳動物に抗原としての糖タンパク質を免疫することにより得られる抗血清や腹水液、並びにこれらを塩析、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等の汎用の方法で精製したポリクローナル抗体が含まれる。さらに、抗体には、ヒトや動物の血清等から調製したタンパク質で免疫されたマウスの抗体産生リンパ細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって、該糖タンパク質を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得、次いで該ハイブリドーマ又はそれに由来する細胞株を培養し、その培養物から採取されるモノクローナル抗体が含まれる。汎用の糖タンパク質については、その抗体が試薬として販売されており、本発明ではそれらを制限なく使用可能である。
[0042]
 上記の抗体等が糖結合化合物と反応する糖鎖を有する場合は、適宜、抗体から糖鎖を除去する。糖結合化合物と反応する糖鎖を持たない抗体を取得するには、モノクローナル抗体をノイラミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-グリカナーゼ等の糖鎖分解酵素で処理する、抗体のFc部をペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素により限定加水分解する、過ヨウ素酸水溶液で糖鎖構造を酸化分解する、ハイブリドーマ又はハイブリドーマ由来の動物細胞の培地に糖鎖合成阻害剤を添加して培養する方法が挙げられる。
[0043]
 上記抗体の担体への固定化方法は、物理的吸着、共有結合、架橋等の汎用の方法を特に制限なく使用可能である。糖タンパク質に対する抗体(例えば抗トランスフェリン抗体)の溶液を担体に添加することにより、担体に抗体を結合させる。
[0044]
 抗体の結合した担体に糖タンパク質の溶液を添加することにより、糖タンパク質を抗原-抗体反応で結合させる。
[0045]
 本発明で使用する糖結合化合物は、糖タンパク質が有する糖鎖と親和性を有する化合物を意味する。使用する糖結合化合物は、糖タンパク質に結合する糖鎖に依存して、適宜、選択される。
[0046]
 前記糖結合化合物は、例えば糖に結合するタンパク質(ペプチドを含む)、並びに糖に結合するDNA、RNA等の核酸である。
[0047]
 前記糖結合タンパク質には、レクチン、抗糖鎖抗体、マルトース結合タンパク質、グルコース結合タンパク質、ガラクトース結合タンパク質、セルロース結合タンパク質、キチン結合タンパク質、炭水化物結合モジュールが含まれる。前記糖結合化合物は、好ましくは糖結合タンパク質であり、より好ましくはレクチン及び抗糖鎖抗体であり、さらに好ましくはレクチンである。
[0048]
 前記糖結合化合物は、一種単独でもよく、または二種の併用でもよい。
[0049]
 前記レクチンの親和性を、赤血球凝集を阻害する糖の最小阻害濃度で表すと、通常100mM以下、好ましくは10mM以下である。最小阻害濃度とは、糖が凝集反応を阻止するために要する最小濃度を意味する。最小阻害濃度が小さいほど、レクチンに対する親和性が高いことを示す。赤血球凝集反応阻害試験法は、特許文献1(特許4514163)に記載されている方法で行うことができる。特許4514163を参照のためにここに編入する。
[0050]
 前記レクチンは、天然由来レクチン、若しくは化学合成又は遺伝子工学的合成により得られるレクチンのいずれでもよい。天然レクチンの由来は、植物、動物及び菌類のいずれでもよい。以下に、本発明に使用可能な天然レクチンの例を示す。
[0051]
 ガラクトース(Gal)/N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)に親和性を有するレクチンの例には、マッシュルームレクチン(ABA)、ドリコスマメレクチン(DBA)、デイゴマメレクチン(ECA)、インゲンマメレクチン(PHA-E4、PHA-P)、ピーナッツレクチン(PNA)、ダイズレクチン(SBA)、ムラサキモクワンジュレクチン(BPL)、ヒマレクチン(RCA120)が挙げられる。マンノース(Man)/グルコース(Glc)に親和性を有するレクチンの例には、コンカナバリンA(ConA)、レンズマメレクチン(LCA、LCA-A)、及びエンドウマメレクチン(PSA)が挙げられる。フコース(Fuc)に親和性を有するレクチンの例には、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、レンズマメレクチン(LCA、LCA-A)、ロータスレクチン(Lotus)、エンドウマメレクチン(PSA)、ハリエニシダレクチン(UEA-I)、ミヤコグサレクチン(LTA)、ラッパスイセンレクチン(NPA)、ソラマメレクチン(VFA)、麹菌レクチン(AOL)、スギタケレクチン(PhoSL)、ツチスギタケレクチン(PTL)、サケツバタケレクチン(SRL)、クリタケレクチン(NSL)、コムラサキシメジレクチン(LSL)、ベニテングタケレクチン(AML)が挙げられる。このうち、PhoSL、PTL、SRL、NSL、LSL及びAMLは、α1→6フコースに特異的に結合するので、α1→6フコースの付加又は欠如が疾患と関連する糖タンパク質の検出に有利である。N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に親和性を有するレクチンの例には、チョウセンアサガオレクチン(DSA)、アメリカヤマゴボウレクチン(PWM)、小麦胚芽レクチン(WGA)、バンデリアマメレクチン-II(GSL-II)、ムジナタケレクチン(PVL)が挙げられる。シアル酸(Sia)に親和性を有するレクチンの例には、イヌエンジュレクチン(MAM)、ニホンニワトコレクチン(SSA)、小麦胚芽レクチン(WGA)、ヤナギマツタケレクチン(ACG)、キカラスウリレクチン(TJA-I)、ムジナタケレクチン(PVL)、西洋ニワトコレクチン(SNA-I)等が挙げられる。
[0052]
 糖結合化合物は、検出可能とするために、当分野で公知の標識手段で標識されていることが好ましい。また、糖結合化合物は、糖結合化合物と反応するプローブ(例えば抗レクチン抗体のような糖結合化合物と結合する抗体)を介して検出してもよい。その際、プローブは、当分野で公知の標識手段で標識されていることが好ましい。糖結合化合物を検出するプローブは、一種単独、又は二種以上の併用でもよい。
[0053]
 前記糖結合化合物及び/又は前記糖結合化合物を検出するプローブの標識手段の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンBイソチオシアネート(TRITC)、ローダミン、CyDye等の蛍光化合物、 125I、 H、 14C等の放射性物質、金ゾル、銀ゾル、白金ゾル等の金属コロイド、顔料で着色されたポリスチレンラッテクス等の合成ラテックス、ビオチンやジゴキシゲニンを挙げることができる。
[0054]
 標識手段が酵素の場合、酵素活性を測定するために発色基質が用いられる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の基質としては3,3’,5,5’-テトラメチルベンチジン(TMB)、2,2’-アジノジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸] アンモニウム塩、5-アミノサリチル酸、又はo-フェニレンジアミン(OPD)、アルカリホスファターゼの基質としてはp-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)又は4-メチルウンベリフェリルホスフェート、そしてβ-D-ガラクトシダーゼの基質としてはo-ニトロフェノール-β-D-ガラクトピラノシドを挙げることができる。
[0055]
 標識手段は、常法により、前記糖結合化合物又は前記糖結合化合物を検出するプローブへ結合することができる。特に、標識をストレプトアビジン(又はアビジン)-ビオチン系を介して結合することは、感度が高くなる点で好ましい。
[0056]
 適宜、固定化された糖タンパク質と糖結合化合物とを反応させるために、糖結合化合物を含む溶液に糖タンパク質を曝す。
[0057]
 上記糖結合化合物反応後、糖タンパク質と糖結合化合物との反応物を検出する。糖タンパク質と糖結合化合物との反応物の検出方法は、特に限定されず、当業者に周知の方法で使用することができる。検出方法の例としては、レクチンELISA(直接吸着法、サンドイッチ法)、レクチンアフィニティクロマトグラフィー(例えばHPLC-レクチンカラムを使用)、レクチン親和電気泳動、レクチン染色のように酵素等の発色や発光、蛍光を検出する方法、糖鎖アレイ、レクチンアレイのようにエバネッセント波を検出する方法、水晶発振子マイクロバランス法や表面プラズモン共鳴法のように質量変化を検出する方法等を挙げることができる。表面プラズモン共鳴法は、担体に固定化した糖タンパク質量、及び、糖タンパク質に結合した検出糖結合化合物量を多段階法で同時に測定できるので利便である。
[0058]
 標識した糖結合化合物の標識物量(吸光度等)等で表わした糖鎖量は、標準試料のものと対比することによって、その変化を察知することができる。例えば、検体の糖タンパク質濃度を一定値に調整すると、検出糖結合化合物の測定結果は糖タンパク質に付加した特定の糖鎖量の変化を反映することになる。糖タンパク質の糖鎖量を健常者と患者との間で比較することにより、糖鎖変化に関連する疾患を従来よりも高い精度で診断できる。
[0059]
 糖残基量の変化率(糖付加や糖欠損の度合い)を定量化することは、糖鎖変化と関連する疾患の診断、治療及び予防、研究等に大いに役立つ。糖の付加率を求めるには、予め、糖鎖末端の全位置に目的とする糖残基が付加した参照試料(例えば、健常者の糖タンパク質や市販又は合成した試薬)の全糖残基量を本発明の検出方法で測定する。糖残基量を、標識した検出糖結合化合物の標識物量(吸光度等)で表わす。次いで、未知試料の糖残基量を本発明の検出方法で測定する。未知試料で測定された糖残基量を全糖残基量で除した値が糖付加率となる。糖付加率を1から減じたものが糖欠損率となる。
[0060]
 糖鎖量の変化率は、測定試料の糖タンパク質量に対する糖鎖量の比で表してもよい。まず、糖タンパク質の量を吸光度、酵素結合免疫吸着法、ブラッドフォード法、ローリー法等で求めておく。
[0061]
 糖付加率又は糖欠損率の導出に検量線を使用することは、測定作業の効率化の点で有利である。予め、目的糖残基量が既知で、糖残基量の異なる複数の標準試料を、本発明の検出方法で測定し、目的糖残基量と検出糖結合化合物の標識物量(吸光度等)との関係を求め、検量線を作成しておく。目的糖残基量が未知の試料の標識物量(吸光度等)を本発明の検出方法で求め、標識物量を前記検量線に当てはめる。
[0062]
 いくつかの代表的な検出方法を、以下に概説する。ELISA(直接吸着法)では、糖タンパク質を含む血清等の検体をELISAプレートに添加して固定化する(検体反応)。次いで、ビオチン標識したレクチンを添加して、糖鎖とレクチンとを反応させる(レクチン反応、1次反応)。2次標識化合物としてHRP標識ストレプトアビジン溶液を添加して、ビオチンとストレプトアビジンとを反応させる(プローブ反応、2次反応)。次いで、HRP用発色基質を加えて発色させ、発色強度を吸光光度計で測定する。予め、既知の濃度の糖鎖を含む標準試料によって検量線を作成しておけば、糖鎖の定量化も可能である。
[0063]
 ELISA(サンドイッチ法)では、糖タンパク質(抗原)に結合する抗体をELISAプレートに添加し抗体をプレートに固定化する。次いで、糖タンパク質を含む検体(血清等)を添加して、前記抗体と糖タンパク質とを反応させる(検体反応)。次いで、ビオチン標識したレクチンを添加して、糖鎖とレクチンとを反応させる(レクチン反応)。2次プローブとしてHRP標識ストレプトアビジン溶液を添加して、ビオチンとストレプトアビジンとを反応させる(プローブ反応)。次いで、HRP用発色基質を加えて発色させ、発色強度を吸光光度計で測定する。予め、既知の濃度の標準試料によって検量線を作成しておけば、糖鎖の定量化も可能である。
[0064]
 本発明の方法によれば、糖タンパク質の検出感度が向上するので、糖鎖変化と関連する疾患の診断精度の向上に寄与する。ガラクトース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、慢性関節リウマチ、肝癌、骨髄腫等がある。マンノース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、直腸癌等がある。フコース残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、大腸癌、膵臓癌、肝癌等がある。N-アセチルグルコサミン残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、特発性正常圧水頭症、肝癌等がある。シアル酸残基が診断の指標となり得る疾患の例としては、アルツハイマー病、心臓血管疾患、アルコール依存症、IgA腎症、肝癌、前立腺癌、卵巣癌、心筋梗塞、繊維症、膵炎、糖尿病、糖タンパク質糖鎖転移不全症等がある。
実施例
[0065]
 以下に本発明の実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[0066]
 本発明に使用する試薬を、以下の手順で調製又は用意した。
(1)緩衝液
〔リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)〕
 リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業(株)製)5.75g、リン酸二水素カリウム(和光純薬工業(株)製)1.0g、塩化カリウム(和光純薬工業(株)製)1.0g、塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)40.0gを秤量し、水で5Lにメスアップした。これをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)とした。
[0067]
〔0.05% Tween/PBS〕
 ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(商品名 Tween20、ナカライテスク(株)製)2.5mLを5LのPBSに溶解して、濃度0.05%のTween20のPBS溶液(以下、0.05% Tween/PBSという)を得た。
[0068]
〔1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)〕 
 グリシン(和光純薬工業(株)製) 75.07gを、水900mL程度に溶解し、6N塩酸を添加してpHメーターでpH3.0に合わせ、さらに水で1000mLにメスアップした。
[0069]
〔0.5Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.3)〕
 上記グリシン37.54gを、水900mL程度に溶解し、6N塩酸を添加しpHメーターでpH3.3に合わせ、水で1000mLにメスアップした。
[0070]
〔1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)〕
 トリスヒドロキシメチルアミノメタン(ナカライテスク(株)製) 60.6gを、水400mL程度に溶解し、6N塩酸を添加しpHメーターでpH9.0に合わせ、水で500mLにメスアップした。
[0071]
〔0.33Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)〕 
 上記トリスヒドロキシメチルアミノメタン20.2gを、水400mL程度に溶解し、6 N 塩酸を添加しpHメーターでpH9.0に合わせ、水で500mLにメスアップした。
[0072]
〔10mM塩化カルシウム/100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)〕
 塩化カルシウム(和光純薬工業(株))0.74gを5mLチューブに量り取り、水5mLで溶解して1M塩化カルシウム水溶液を得た。上記トリスヒドロキシメチルアミノメタンを12.11g量り取り、水80mLで溶解後、6N塩酸溶液を加えてpHを7.8に調整し、さらに水で液量100mLまでメスアップして、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)を得た。1M塩化カルシウム水溶液と1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)から10mM塩化カルシウム/100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)を調製した。
[0073]
(2) 糖タンパク質溶液
 以下の糖タンパク質を、それぞれ、濃度2mg/mLになるように水に溶解して糖タンパク質溶液を得た。
トランスフェリン(TF):シグマ・アルドリッチ製
イムノグロブリンG(IgG):シグマ・アルドリッチ製
αフェトプロテイン(AFP):フナコシ(株)製
αフェトプロテイン-L3(AFP-L3):非特許文献1に記載の方法に準じて調製した。
[0074]
(3) プロテアーゼ溶液
 以下に示すプロテアーゼ溶液を調製した。
〔ペプシン〕
 ペプシン(ブタ胃粘膜由来、シグマ・アルドリッチ製、コードNo.P6887)を、1M グリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で0.1mg/mL(0.01質量%)になるように溶解した。
〔パパイン〕
 パパイン(パパイヤ由来、フナコシ(株)製、コードNo.LS003126)を、システイン溶液(1.1mM EDTA、0.067mM システイン塩酸塩を含む0.2M リン酸緩衝液、pH6.5)で濃度2mg/mL(0.2質量%)になるように溶解した。
〔アクチナーゼE〕
 アクチナーゼE(科研製薬製、コードNo.90002-1611)を、10mM塩化カルシウム/100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)で、濃度10mg/mL(1質量%)になるように溶解した。
[0075]
(4) PMSF溶液
 フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF、和光純薬工業(株)製)17.4 mgを、500μLのジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)製)に溶解して、200mM PMSF溶液を調製した。これを使用直前に水で20倍に希釈して、10mM PMSF溶液を調製した。
[0076]
(5) BSA/PBS
 ウシ血清アルブミン(BSA、シグマ・アルドリッチ製)1gを100mLのPBSに溶解して、BSAのPBS溶液(BSA濃度1%)を調製した。
[0077]
(6) レクチン
 表1に示すレクチンを用意した。α1-6フコース特異的レクチンであるPhoSLを、非特許文献1に記載の方法に従ってスギタケから精製した。また、PhoSLの合成ペプチドの一種である合成PhoSLペプチド(配列番号1)を非特許文献1に記載の方法に従って合成した。麹菌レクチン(AOL)は、東京化成工業(株)から入手した。西洋ニワトコレクチン(SNA-I)、ニガウリレクチン(MCL)、及びチューリップレクチン(TxLC-I)は、それぞれ、非特許文献2~4の方法で精製した。上記レクチンを非特許文献1に記載の方法に準じてビオチン標識化した。ビオチン標識化ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)、ビオチン標識化レンズマメレクチン(LCA)、ビオチン標識化エンドウマメレクチン(PSA)、ビオチン標識化タチナタマメレクチン(ConA)、ビオチン標識化日本ニワトコレクチン(SSA)、ビオチン標識化ヒマレクチン(RCA120)、ビオチン標識化デイゴマメレクチン(ECA)、及びビオチン標識化インゲンマメレクチン(PHA-E4)は、J-オイルミルズ製のビオチン標識化レクチンを使用した。すべてのビオチン標識化レクチンは、PBSで濃度1mg/mLに調製し、使用の際、適切な濃度に希釈した。
[0078]
 糖タンパク質のペプシン処理の手順を、以下に示す。
(1)反応溶液の調製
 濃度2mg/mLの糖タンパク質溶液25質量部に、1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を25質量部加えた。
(2)ペプシン反応
 ペプシン溶液(0.1mg/mL 1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0))を、(1)の1質量部添加して、撹拌後、37℃で静置した。
(3)反応停止
 ペプシン反応5~30分間処理した後、25質量部の1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)と混合し反応を停止させた。これらの試料をペプシン処理後の糖タンパク質溶液とした。
[0079]
 糖タンパク質のアクチナーゼE処理の手順を、AFP―L3を例に以下に示す。
(1)酵素反応
 前記1質量%アクチナーゼE溶液を、前記10mM 塩化カルシウム/100mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)で濃度0.00125質量%になるまで希釈した。この希釈液42μLと濃度8mg/mLのAFP-L3水溶液70μLとを混合し、37℃の温度で30分間、保温した。
(2)反応停止
 上記反応液を10mM PMSF 14μLと混合してタンパク質分解反応を停止し、アクチナーゼE処理AFP-L3の溶液を得た。
[0080]
 糖タンパク質のパパイン処理の手順を、AFP―L3を例に以下に示す。
(1)酵素反応
 6mg/mL(水に溶解)のAFP-L3溶液5μLに対して、2mg/mLのパパイン溶液を5μL添加(終濃度1mg/mL)し、37℃で保温した。
(2)反応停止
 パパイン溶液添加から30分後に、濃度10μg/mLのアンチパイン(シグマ・アルドリッチ製)2μLと混合して反応を停止させ、パパイン処理後のAFP溶液とした。
[0081]
 レクチンELISA(サンドイッチ法)の手順を以下に示す。
(1)抗体固定化
 非特許文献1に記載の方法に準じて糖鎖除去した固相化抗体をPBSで5μg/mLに希釈し、96穴マイクロタイタープレート(グライナー社製)のウェルに50μL添加して4℃で16時間放置後、添加した液を廃棄した。
(2)洗浄
 ウェルに0.05% Tween/PBSを250μL添加し、添加した液を廃棄した。
(3)ブロッキング
 ウェルにBSA/PBSを200μL添加して、37℃で1時間放置後、添加した液を廃棄した。
(4)洗浄
 ウェルに0.05% Tween/PBSを250μL添加し、添加した液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(5)抗原抗体反応
 BSA/PBSで希釈した糖タンパク質溶液 50μLをウェルに添加して、室温で1時間放置後、添加した液を廃棄した。
(6)洗浄
 ウェルに0.05% Tween/PBSを250μL添加し、添加した液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(7)レクチン反応
 ビオチン標識化レクチン(1mg/mL PBS)を、適切な濃度になるように、BSA/PBS溶液で希釈した。このレクチン溶液50μLをウェルに添加して、4℃で30分間放置後、添加した液を廃棄した。
(8)洗浄
 ウェルに0.05% Tween/PBSを250μL添加し、添加した液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(9)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン反応
 1mg/mLのHRP標識ストレプトアビジン(フナコシ(株)製)をBSA/PBSで希釈した(1μg/mL)。これをウェルに50μL添加して、室温で30分間放置後、添加した液を廃棄した。
(10)洗浄
 ウェルに0.05% Tween/PBSを250μL添加し、添加した液を廃棄した。この操作を合計3回繰り返した。
(11)発色反応
 HRP用発色基質(TMB Microwell Peroxidase Substrate、フナコシ(株)製)を、ウェルに50μL添加し、室温で5分間放置した。
(12)反応停止
 1Mリン酸を50μL添加し、反応を停止した。
[0082]
 プレートリーダー(製品名:POWERSCAN(登録商標)HT、バイオテック(株)製)を用いて、波長450nm及び630nmの吸光度を測定した。450nmの吸光度値から630nmの吸光度値を引いた値を検出値(シグナル:S)とした。糖タンパク質未添加の検出値(ノイズ:N)を、糖タンパク質添加の検出値(S)から引いた値を反応値(S-N)とした。
[0083]
 式(1)に示すように、プロテアーゼ処理での反応値(S-N)pから、プロテアーゼ未処理での反応値(S-N)npを減じた値を増大量Δとした。
[数1]


[0084]
[実施例1~14] フコース、シアル酸、ガラクトース、マンノース、グルコース等に親和性を有するレクチンによるペプシン処理AFP-L3の検出(I)
 糖タンパク質AFP-L3を30分間、ペプシン処理し、得られたペプシン処理AFP-L3をレクチンELISA(サンドイッチ法)により検出した。検出試験は、以下の点を除き、上記したサンドイッチELISA法と同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒトAFPモノクローナル抗体(マウス)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液として、ペプシン処理AFP-L3(5,000ng/mL)及び未処理AFP-L3(5,000ng/mL)を使用した。
(7)レクチン反応では、表1に記載のビオチン標識化レクチンを使用し、また、レクチンの代わりに1μg/mLの抗AFP抗体(ダコ・ジャパン製)を使用した。
(9)HRP標識ストレプトアビジン反応では、(7)でレクチン反応の代わりに抗AFP抗体を使用した場合には、HRP標識ストレプトアビジンに替えて、HRP標識化抗ウサギIgG抗体溶液(フナコシ(株)製)をBSA/PBSで0.5μg/mLとしたものを使用した。
[0085]
 ペプシン処理AFP-L3及び未処理AFP-L3のレクチン又は抗体に対する反応値(S-N)及び増大量Δを表1に示す。
[0086]
[表1]


[0087]
 すべての実施例において、プロテアーゼ処理したAFP-L3のレクチンとの反応値は、プロテアーゼ未処理のAFP-L3とレクチンとの反応値よりも増大した。一方、抗体を用いた比較例1では、反応値は、プロテアーゼ処理によって増大しなかった。このことから、プロテアーゼ処理された糖タンパク質AFP-L3とレクチンとの反応値の増大(すなわち、糖タンパク質の検出感度の向上)は、糖タンパク質の固相抗体への結合量の増大が原因ではないことが確認された。
[0088]
 [実施例15~21]シアル酸、ガラクトース、マンノース、グルコース等に親和性を有するレクチンによるペプシン処理AFPの検出
 糖タンパク質AFPを30分間、ペプシン処理し、得られたペプシン処理AFPをレクチンELISA(サンドイッチ法)により検出した。検出試験は、実施例7~13及び比較例1において、糖タンパク質をAFP-L3からAFPに代えた以外は前記実施例又は比較例と同様の手順で行った。ペプシン処理AFP及び未処理AFPの各レクチンに対する反応値(S-N)及び増大量Δを表2に示す。
[0089]
[表2]


[0090]
 表2を見ると、すべての実施例において、プロテアーゼ処理したAFPのレクチンとの反応値は、プロテアーゼ未処理のAFPとレクチンとの反応値よりも増大した。一方、抗体を用いた比較例2では、反応値は、プロテアーゼ処理によって増大しなかった。このことから、プロテアーゼ処理による糖タンパク質とレクチンとの反応値の増大、すなわち、糖タンパク質の検出感度の向上は、糖タンパク質の固相抗体へのAFP結合量の増大が原因ではないことが確認された。
[0091]
[実施例22] フコースに親和性を有するレクチンによるアクチナーゼE処理AFP-L3の検出
 実施例1において、糖タンパク質のプロテアーゼ処理をペプシン処理からアクチナーゼE処理に変更した。具体的には、実施例1において、以下の点を除き、同様の操作を行った。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液としてアクチナーゼE処理後のAFP-L3(400ng/mL)、及び未処理のAFP-L3(400ng/mL)を使用した。
(7)レクチン反応では、ビオチン標識化PhoSL(0.5μg/mL)を使用した。
[0092]
 プロテアーゼ処理AFP-L3及び未処理AFP-L3のレクチン反応値(S-N)、及び、プロテアーゼ処理による反応値の増大量Δを、表3に示す。
[表3]


[0093]
 表3から、プロテアーゼ処理にペプシンと異なるタンパク質分解酵素であるアクチナーゼEを用いても、プロテアーゼ処理により、AFP-L3とレクチンの反応値が増大することがわかった。
[0094]
[実施例23] フコースに親和性を有するレクチンによるパパイン処理AFP-L3の検出
 実施例1において、糖タンパク質のプロテアーゼ処理をペプシン処理からパパイン処理に変更した。具体的には、実施例1において、以下の点を除き、同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒトAFPモノクローナル抗体(マウス)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液としてパパイン処理後のAFP-L3(1000ng/mL)及び未処理のAFP-L3(1000ng/mL)を使用した。
(7)レクチン反応では、ビオチン標識化PhoSL(0.5μg/mL)を使用した。
[0095]
 プロテアーゼ処理AFP-L3及び未処理AFP-L3のレクチン反応値(S-N)、及び、プロテアーゼ処理による反応値の増大量Δを、表4に示す。
[表4]


[0096]
 表4から、プロテアーゼ処理にペプシンと異なるタンパク質分解酵素であるパパインを用いても、プロテアーゼ処理により、AFP-L3とレクチンの反応値が増大することがわかった。
[0097]
[実施例24] シアル酸に親和性を有するレクチンによるペプシン処理トランスフェリン(TF)の検出
 糖タンパク質TFを5分間、ペプシン処理し、得られたペプシン処理TFをレクチンELISA(サンドイッチ法)により検出した。検出試験は、以下の点を除き、上記したサンドイッチELISA法と同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒトトランスフェリンポリクローナル抗体(ウサギ)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液としてペプシン処理後のTF溶液(1μg/mL)及び未処理のTF溶液(1μg/mL)を使用した。
(7)レクチン反応では、表1に記載のビオチン標識化SSA(1μg/mL)を使用した。また、レクチンの代わりに0.2μg/mLの抗ヒトトランスフェリンポリクローナル抗体(マウス)(コスモ・バイオ(株)製)を使用した。
(9)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン反応では、(7)でレクチン反応の代わりに抗TF抗体を使用した場合には、HRP標識ストレプトアビジンに替えて、HRP標識化抗マウスIgG抗体溶液(インビトロジェン製)をBSA/PBSで0.5μg/mLとしたものを使用した。
[0098]
 ペプシン処理TF及び未処理TFのレクチン又は抗体に対する反応値(S-N)及び増大量Δを表5に示す。
[表5]


[0099]
 表5から、トランスフェリンをシアル酸特異的レクチンSSAで検出した場合においても、ペプシン処理により反応値を増大させられることがわかった。一方、トランスフェリンを抗TF抗体で検出した場合では、ペプシン処理による反応値の増加はないことから、固相抗体に捕捉されるトランスフェリン量が増えることがレクチン反応値の増大原因ではないことがわかった。
[0100]
[実施例25~26] シアル酸に親和性を有するレクチンによるペプシン処理イムノグロブリンG(IgG)の検出
 糖タンパク質IgGを5分間、ペプシン処理し、得られたペプシン処理IgGをレクチンELISA(サンドイッチ法)により検出した。試験は、上記したサンドイッチELISA法において、以下の点を除き、同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒト免疫グロブリンポリクローナル抗体(ヤギ)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液としてペプシン処理後のIgG溶液(1μg/mL)及び未処理のIgG溶液(1μg/mL)を使用した。
(7)レクチン反応では、ビオチン標識化PhoSL及びビオチン標識化AAL(いずれも1μg/mL)を使用した。また、レクチンの代わりに、0.2μg/mLの抗ヒト免疫グロブリンポリクローナル抗体(ヤギ)を使用した。
(9)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン反応では、(7)でレクチン反応の代わりに抗ヒト免疫グロブリンポリクローナル抗体(ヤギ)を使用した場合には、HRP標識ストレプトアビジンに替えて、HRP標識化抗ヤギIgG抗体溶液(コスモ・バイオ(株)製)をBSA/PBSで0.5μg/mLとしたものを使用した。
[0101]
 ペプシン処理IgG及び未処理IgGのレクチン又は抗体に対する反応値(S-N)及び増大量Δを表6に示す。
[表6]


[0102]
 表6から、IgGをフコース特異的レクチンであるPhoSL又はAALで検出した場合においても、ペプシン処理により反応値を増大できることがわかった。一方、IgGを抗IgG抗体で検出した場合では、ペプシン処理による反応値の増加はないことから、固相抗体に捕捉されるIgG量が増えることがレクチン反応値の増大原因ではないことがわかった。
[0103]
[実施例27~34] フコース又はシアル酸に親和性を有するレクチンによるペプシン処理AFP-L3の検出(II)
 AFP-L3を添加した血清を用いて、ペプシン処理を行い、サンドイッチELISA法によりAFP-L3の検出試験を行った。AFP-L3の血清溶液のペプシン処理手順を、以下に示す。
(1)AFP-L3溶液の調製
 ヒトプール血清(100%血清、(株)ケー・エー・シー製)992μL、及びこの100%血清をPBSで10倍希釈した10%血清992μLに、それぞれ、50μg/mLのAFL-L3溶液8μLを添加し、AFP-L3/100%血清、及びAFP-L3/10%血清を調製した(いずれもAFP-L3濃度:400ng/mL)。
(2)ペプシン反応
 AFP-L3/100%血清55μLには、400μg/mLのペプシン/1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を22μL添加して、撹拌後、25℃で静置した。AFP-L3/10%血清55μLには、10μg/mLのペプシン/1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を22μL添加して、撹拌後、25℃で静置した。
(3)反応停止
 ペプシン溶液添加30分後、それぞれ、0.33Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を33μL添加し、反応を停止させ、ペプシン処理後のAFP-L3/100%血清及びペプシン処理後のAFP-L3/10%血清を得た。
[0104]
 レクチンによる検出試験は、上記したサンドイッチELISA法において、以下の点を除き、同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒトAFPモノクローナル抗体(マウス)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液としてペプシン処理後のAFP-L3/100%血清、ペプシン処理後のAFP-L3/10%血清、未処理のAFP-L3/100%血清、及び未処理のAFP-L3/10%血清を使用した(いずれもAFP-L3濃度:0.2μg/mL)。
(7)レクチン反応では、ビオチン標識化PhoSL、ビオチン標識化AAL、ビオチン標識化SNA-I、ビオチン標識化SSA(いずれも0.5μg/mL)を使用した。
[0105]
 ペプシン処理AFP-L3/100%血清及びペプシン処理AFP-L3/10%血清、 未処理AFP-L3/100%血清及び未処理AFP-L3/10%血清のレクチンに対する反応値(S-N)及び増大量Δを表7に示す。
[表7]


[0106]
 表7から、血清存在下、フコース特異的レクチンPhoSL又はAALでAFP-L3を検出した場合であっても、ペプシン処理により反応値を増大できることがわかった。表7から、シアル酸特異的レクチンSNA-I又はSSAで検出した場合も同様に、ペプシン処理により反応値を増大できることが確認された。したがって、ヒト血清中の糖タンパク質においても、反応値を増大できることが確認できた。
[0107]
〔実施例35〕 フコースに親和性を有するレクチンによるペプシン処理AFP-L3の検出(III)
 AFP-L3を添加した血清のペプシン処理を、時間を変えて行い、各処理サンプルについてサンドイッチELISA法によりAFP-L3の検出試験を行った。ペプシン処理手順は、実施例31のAFP-L3/100%血清(AFP-L3:400 ng/mL)をペプシン処理手順において、ペプシン添加後反応を停止するまでの時間を、30分間から5、10、15、30、45又は60分間に変えた以外は、実施例31と同様に行った。
[0108]
 レクチンによる検出試験は、実施例31と同様の操作で行った。
[0109]
  ペプシン処理AFP-L3/100%血清及び未処理AFP-L3/100%血清のレクチンに対する反応値(S-N)及び増大量Δを表8に示す。
[表8]


[0110]
 表8から、ペプシン処理5分後、反応値の増大量が0.241まで増大した。ペプシン処理10~60分間での増大量は、0.331~0.364であり、ほぼ一定であった。増大効果は、反応時間が5分間から少なくとも60分間までで得られることがわかった。
[0111]
[実施例40]ペプシン処理AFP-L3のHPLC-レクチンカラムでの検出
 糖タンパク質にAFP-L3を用いてペプシン処理を30分間行い、HPLC-PhoSLカラムによりペプシン処理AFP-L3の結合試験を行った。その具体的手順を以下に示す。
(1)HPLC-PhoSLカラムの作製
 活性化ハードゲル((株)J-オイルミルズ製)にPhoSLを添付マニュアルに従って固定化後、ステンレスカラム(150mm×4.6mmI.D.)に充填した。
[0112]
(2)ペプシン処理AFP-L3のHPLC-PhoSLカラムによる分析
1.HPLC用緩衝液の調製
緩衝液A (50mM酢酸アンモニウム):1M酢酸アンモニウム(和光純薬(株)製)50mLを水で1000mLにメスアップした。
緩衝液B(0.2Nアンモニア):25%アンモニア水溶液(シグマ・アルドリッチ製)7.55mLを水で500mLにメスアップした。
[0113]
2.HPLC分析
 HPLC分析装置(システム: LC-8020、ポンプ:DP-8020、いずれも(株)東ソー社製)を用いて、ペプシン処理AFP-L3又はペプシン未処理AFP-L3を、緩衝液Aで10倍希釈したものを100μLインジェクトした。緩衝液Aを10分間流し、非吸着ピークを得た後、緩衝液Bを10分間流し、吸着溶出ピークを得た。流速は0.5mL/min、検出は、UV280nm(UV-2080、(株)東ソー社製)とした。
[0114]
 未処理、ペプシン処理AFP-L3をHPLC-PhoSLで分析したときの、非吸着ピークエリアの面積及び吸着溶出ピークエリアの面積を測定した。結合率を以下の式に従って計算した。
[数2]


[0115]
 ペプシン処理 AFP-L3のHPLC-PhoSLによる非吸着ピーク面積、吸着溶出ピーク面積及び結合率(%)を、表9に示す。
[表9]


[0116]
 表9から、ペプシン処理AFP-L3のHPLC-PhoSLによる検出値(結合率)は、未処理のものより増大することがわかった。
[0117]
〔実施例41〕 フコースに親和性を有するレクチンによるペプシン処理AFP-L3の検出(IV)
 AFP-L3を添加した血清のペプシン処理を、ペプシン濃度と時間を変えて行い、各処理サンプルについてサンドイッチELISA法によりAFP-L3の検出試験を行った。ペプシン処理は、以下のように行った。
[0118]
(1)AFP-L3溶液の調製
 ヒトプール血清に、AFP-L3溶液を添加し、AFP-L3/100%血清(AFP-L3濃度:200ng/mL)を調製した。
(2)試薬の調製
〔1.2Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.25)〕
 グリシン 90.08gを、水900mL程度に溶解し、6N塩酸を添加してpHメーターでpH3.25に合わせ、さらに水で1000mLにメスアップした。
〔0.1%BSA/1.2Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.25)〕
 ウシ血清アルブミン(BSA、シグマ・アルドリッチ製)0.1gを100mLの1.2Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.25)に溶解して調製した。
(3)ペプシン反応
 上記AFP-L3/100%血清60μLに、ペプシンを0.1%BSA/1.2Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.25)に溶解したもの(0.47~1.1mg/mL)を30μL添加して、撹拌後、25℃で静置した。
(4)反応停止
 5、7、9、11、13又は15分後、0.33Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を30μL添加し、反応を停止させた。
[0119]
 レクチンによる検出試験は、上記したサンドイッチELISA法において、以下の点を除き、同様の操作を行った。
(1)抗体固定化において、固相化抗体に抗ヒトAFPモノクローナル抗体(マウス)(フナコシ(株)製)を使用した。
(5)抗原抗体反応において、糖タンパク質溶液として、上記ペプシン処理後のAFP-L3/100%血清及び未処理のAFP-L3/100%血清を使用した(いずれもAFP-L3濃度:0.1μg/mL)。
(7)レクチン反応では、ビオチン標識化PhoSL(0.5μg/mL)を使用した。
[0120]
 ペプシン処理AFP-L3/100%血清及び未処理AFP-L3/100%血清のレクチンに対する検出値を、表10に示す。
[0121]
[表10]


[0122]
 表10で示したように、ペプシンの濃度を変えることで、短時間でも十分に反応値を高められることがわかった。

請求の範囲

[請求項1]
 糖タンパク質の検出方法であって、
該糖タンパク質を含む試料をプロテアーゼ処理する工程、
前記プロテアーゼ処理された糖タンパク質に、前記糖タンパク質の有する糖鎖と親和性を有する糖結合化合物を作用させて、該糖タンパク質と該糖結合化合物との反応物を得る工程、及び、
前記反応物を検出する工程
を含む、前記糖タンパク質の検出方法。
[請求項2]
 前記プロテアーゼ処理が、ペプシン処理、パパイン処理又はアクチナーゼ処理であることを特徴とする、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項3]
 前記試料が血清であることを特徴とする、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項4]
 前記糖結合化合物が、糖結合タンパク質である、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項5]
 前記糖結合化合物が、フコース、シアル酸、マンノース、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルガラクトサミンからなる群から選ばれる少なくとも一種に親和性を有することを特徴とする、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項6]
 前記糖タンパク質は、担体に固定化されている、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項7]
 前記糖タンパク質は、その抗体を介して前記担体に固定化されている、請求項6に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項8]
 前記糖結合化合物及び/又は前記糖結合化合物を検出するプローブが、標識されている、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項9]
 前記糖鎖が、複合型糖鎖、高マンノース型糖鎖、又はO結合型糖鎖である、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。
[請求項10]
 前記糖タンパク質は、ハプトグロビン、フコシル化ハプトグロビン、トランスフェリン、γ-グルタミルトランスペプチターゼ、イムノグロブリンG、イムノグロブリンA、イムノグロブリンM、α1-酸性糖タンパク質、αフェトプロテイン、フコシル化αフェトプロテイン、フィブリノーゲン、ヒト胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、フコシル化前立腺特異抗原、チログロブリン、フェツイン、及びアシアロフェツインからなる群から選ばれる、請求項1に記載の糖タンパク質の検出方法。