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1. WO2017130375 - METHOD FOR PURIFYING METALLIC SODIUM

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明 細 書

発明の名称 金属ナトリウムの精製方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025  

発明の効果

0026  

図面の簡単な説明

0027  

発明を実施するための形態

0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047  

実施例

0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054  

符号の説明

0055  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 金属ナトリウムの精製方法

技術分野

[0001]
 本発明は、金属ナトリウムの精製方法、特に内燃機関に用いられる中空エンジンバルブへ充填される金属ナトリウムの精製方法に関する。

背景技術

[0002]
 自動車用エンジンなどの内燃機関に用いられるエンジンバルブ、特に排気バルブは、高温に曝されるため、中空としたエンジンバルブの軸部内に金属ナトリウムを封入している。封入される金属ナトリウムは常温では固体であるが、
融点は約98℃であり、100℃以下の比較的低温で液化する。そのためエンジンが始動しバルブが暖まると液状になり、バルブの上下動により軸部内でシェイクされて、燃焼室からバルブの傘部に伝達された熱が軸部を熱伝導して、軸部と接触しているバルブガイドを介してシリンダヘッドのウォータージャケットに放熱される。これによって燃焼室並びにエンジンバルブの過熱を防止している。しかも封入された金属ナトリウムは、比重が0.97と水よりも軽いため、金属ナトリウムをバルブの軸部に充填することにより、バルブ全体の軽量化にも寄与できる。
[0003]
 金属ナトリウムは還元作用が強く、水を還元して水素を発生させ、自身は水酸化ナトリウムになる。従って、このような酸化作用を受けることなく、長期安定化を図るために、金属ナトリウムは石油や流動パラフィン(比較的長鎖の飽和炭化水素の混合物で、数百度の沸点を有する)などの有機溶媒に浸漬し、水や空気との接触を断った状態で保存される。更に石油や流動パラフィンは比重が金属ナトリウムより小さく、金属ナトリウムがこれらの溶媒表面に浮き上がることがなく、確実に水や空気から遮断される。
[0004]
 このような有機溶媒中に保存された金属ナトリウムを前記したエンジンバルブの軸部に充填するためには、有機溶媒に浸漬されたバルク状の金属ナトリウムを取り出し、それを溶融し、溶融した金属ナトリウムをエンジンバルブの軸部に流し込み、その後、冷却するか、あるいはバルク状の金属ナトリウムをエンジンバルブ内に充填可能なサイズに切断して充填すれば良い。
[0005]
 しかしながら、有機溶媒から取り出した金属ナトリウムには、その表面に石油や流動パラフィンが付着している。金属ナトリウムが溶けて前記のエンジンバルブ内の伝熱促進において、石油や流動パラフィンが阻害要因となるので、表面から拭き取った後に使用している。更に、前述の石油と流動パラフィンを比較すると、後者の方が不純物は少ないため、流動パラフィン中に浸漬した金属ナトリウムの方が、多くの用途で使用可能な高純度金属ナトリウムが得られやすい。
[0006]
 しかし、市販の金属ナトリウムの表面にはひび割れが生じていることがある。このひび割れのまま溶融して液体の金属ナトリウムとすると、石油や流動パラフィン等の不純物混入などの不都合が生じるため、確実に金属ナトリウム量だけを得るための体積に基づいた金属ナトリウム量の定量を行い、前記ひび割れの周囲を削り取ってから溶融し使用している。このように従来は、金属ナトリウムの表面状態を個別に検査して、表面状態が良好なものは、流動パラフィン等の拭き取り後に、ひび割れが生じているものは、表面を比較的厚く削り取った後に、それぞれ溶融し、精製している。しかしこの手法では、各金属ナトリウムインゴットごとに検査が必要でかつ不良品表面を削り取るという手間の掛かる作業が必要となるとともに、削り取った金属ナトリウムの屑が歩留りを落としているという欠点がある。
[0007]
 また、有機溶媒から取り出された金属ナトリウムは、不可避的に空気中の酸素と接触して、金属ナトリウム表面が酸化されて、酸化ナトリウムが生成することがあり、高純度金属ナトリウムが要求される用途では使用しにくくなる要因となる。
[0008]
 中空エンジンバルブの軸部に充填された金属ナトリウムは、前述した通り、軸部内を上下動して、燃焼室内の高熱をシリンダヘッド方向に放熱するが、この金属ナトリウム中に流動パラフィンや石油が混入していると、それらが炭化し、溶けた金属ナトリウムの流動が阻害され、冷却効果が低下してエンジンバルブの燃焼室の熱を十分放熱できなくなり、燃費が低下し、かつバルブの構成材料の耐久性に悪影響を及ぼす懸念がある。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2013-112550号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 金属ナトリウムの精製では、融点近くまで冷却した溶融金属ナトリウムを、コールドトラップによって濾過して、溶融金属ナトリウムに溶けていた酸化ナトリウムなどが温度低下に伴って析出し、その析出した固形不純物を金属フィルタで濾過してナトリウムの高純度化を図る方法(特許文献1)があるが、特許文献1をはじめとする従来技術では、精製前の金属ナトリウムが浸漬されている流動パラフィンや石油を除去することには関心が払われていない。流動パラフィンや石油が金属ナトリウムとともに、エンジンバルブ内に充填されると、前述の通り、冷却効率が低下して、エンジンバルブと燃焼室の過熱を生じさせる恐れがある。例えば流動パラフィンなどが付着した溶融金属ナトリウムを特許文献1で開示されているように、融点近くまで冷却し、フィルタによる濾過を試みても、流動パラフィンがフィルタを目詰まりさせて短時間で使用不能になってしまう。
[0011]
 本発明は、このように従来技術では、除去の必要性が認識されていなかったパラフィンや石油などの金属ナトリウム保存用の有機溶媒を、該金属ナトリウムを内燃機関等での使用に先立って十分に除去でき、かつ各金属ナトリウムインゴットごとにそれらの表面状態を検査せずに一括して溶融及び精製を行い得る、金属ナトリウムの精製方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 前記目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る金属ナトリウムの精製方法では、有機溶媒を含有する金属ナトリウムの精製方法において、当該金属ナトリウムを密閉した溶融タンクに収容し、減圧下、当該溶融タンクを加熱することにより、前記金属ナトリウムに付着した前記有機溶媒を気化させ除去する。
[0013]
 (作用)本発明では、精製前の金属ナトリウムの表面状態(特にひび割れの有無)に拘わらずに溶融し、かつ減圧下で加熱することにより、金属ナトリウムの表面の小さな隙間から金属ナトリウムの奥深く入ってしまった前記有機溶媒も浮き上がらせ、金属ナトリウム表面の流動パラフィン等の有機溶媒を気化させて、溶融金属ナトリウムから除去する。その後、この溶融金属ナトリウムを再度固化することにより有機溶媒を実質的に含まない高純度金属ナトリウムを得ることができる。
[0014]
 市販の金属ナトリウムは、通常石油や流動パラフィンなどの有機溶媒に浸漬して保存されて、この有機溶媒は大気圧では数百度の沸点を有し、また金属ナトリウムは約300℃で発火する危険がある。本発明では、減圧加熱を行うため、200℃あるいはそれ未満の、例えば170℃程度の比較的低温で除去できるため、エネルギ的に有利であるとともに、有機溶媒の分解や有機溶媒への引火、及び金属ナトリウムに発火などの危険も最小限に抑制できる。
[0015]
 また前述の通り、従来の金属ナトリウムの精製では、精製対象の市販の金属ナトリウムの表面状態を個別に検査して、ひび割れの有無に応じて異なった精製方法を採用している。しかし、本発明では、対象とする金属ナトリウムを溶融するため、溶融前の表面のひび割れの有無に拘わらず、同じ溶融状態に導くことができる。従って精製前の金属ナトリウムの表面状態を個別に検査する必要がなくなる。しかも、ひび割れが検出された際に行っている金属ナトリウム表面の削り取りが不要になり、工程を省略できるとともに、削り取りに伴う金属ナトリウムの無駄を回避することができる。更に、精製後に体積だけに基づいて金属ナトリウム量の定量を行う際に誤差を生じさせることがなくなる。
[0016]
 請求項2においては、請求項1に記載の金属ナトリウムの精製方法において、気化させた有機溶媒を、溶融タンク外の有機系溶剤を満たした溶剤トラップに導き、前記有機溶媒を溶解させる。
[0017]
 (作用)この態様では、溶融金属ナトリウムから除去された流動パラフィン等の有機溶媒を、溶剤トラップ内の有機系溶剤に溶解させることにより生活環境に排出されることを防止できる。更に除去される流動パラフィン等の有機溶媒の蒸発流に伴って溶けた僅かな金属ナトリウム飛沫も有機系溶剤でトラップされるので、生活環境への排出が防止できる。特に、有機溶媒と有機系溶剤を同一にすると、回収や再使用の観点から有利である。
[0018]
 請求項3においては、請求項1又は2に記載の金属ナトリウムの精製方法において、金属ナトリウムの酸化により生成し、溶融タンク内の溶融金属ナトリウム表面を覆っている酸化ナトリウムを物理的に除去する。
[0019]
 (作用)金属ナトリウム、特に市販の金属ナトリウムは、極微量でも水分や酸素が存在すると、表面が酸化されて、不可避的に酸化ナトリウム(融点1132℃)が生成する。酸化ナトリウムを含む金属ナトリウムを溶融すると、表面に出来た酸化ナトリウムはポーラスなために嵩比重が溶融した金属ナトリウムより小さいため、溶融金属ナトリウムの表面にポーラスな固体状の酸化ナトリウム層が形成されて、溶融金属ナトリウムと、周囲の雰囲気が酸化ナトリウム層で遮断され、酸化ナトリウム層に邪魔されて、溶融金属ナトリウム中に閉じ込められた有機溶媒が気化できにくくなり、雰囲気中に飛散できなくなり、従って金属ナトリウムの精製ができなくなる。
[0020]
 従来の金属ナトリウムの精製では、未精製の金属ナトリウムに微量含有される、当該金属ナトリウムより融点の高い金属酸化物を、前記金属ナトリウムから除去するために、金属ナトリウムを溶融させ前記金属酸化物を溶融させないように前記未精製金属ナトリウムを常圧下で加熱して、金属ナトリウムの不純物である酸化ナトリウムを主成分とする金属ナトリウム酸化物を濾別するようにしている。この常圧加熱と濾別を組み合わせる方法では、濾別の操作が煩雑でかつ濾過用の濾材や多孔性金属に目詰まりが生じやすいという欠点がある。
[0021]
 これに対し、本態様では、金属ナトリウムを、当該金属ナトリウムを溶融させ、酸化ナトリウムを溶融させない温度で加熱することにより、前記金属ナトリウムより嵩比重の小さい酸化ナトリウムを、溶融金属ナトリウム表面に薄層として形成し、この溶融金属ナトリウムの表面を覆っている酸化ナトリウム層を、人手により掬い取ったり、網を使用して機械的に除去したりする物理的手段で除去する。これにより、溶融金属ナトリウムが直接周囲気化環境に露出されるため、前記有機溶媒の除去が可能になる。
[0022]
 請求項4においては、請求項1又は2に記載の金属ナトリウムの精製方法において、金属ナトリウムの酸化により生成し、溶融タンク内の溶融金属ナトリウム表面を覆っている酸化ナトリウムに、力を加えて当該酸化ナトリウム被膜層の少なくとも一部を破壊する。
[0023]
 (作用)本態様では、金属ナトリウム精製の阻害要因となる酸化ナトリウム層を溶融タンク内に存在させたままで、溶融金属ナトリウムを周囲気化雰囲気と確実に接触させることができる。つまり、外部からモータで回転させられる攪拌子を溶融タンク内に入れ、この攪拌子を回転させることで渦巻き流を発生させ、この渦巻き流により酸化ナトリウム層を破壊したり、外部から溶融タンクの壁面を通してプロペラや攪拌棒を挿入して、これらを人力又は機械的に動かして、酸化ナトリウム層を破壊する。請求項3の態様と同じように、溶融金属ナトリウムの表面を被覆している酸化ナトリウム層を除去して、溶融金属ナトリウムを直接周囲気化環境に露出できるため、有機溶媒の除去が可能になる。
[0024]
 請求項5においては、請求項1から3までのいずれか1項に記載の金属ナトリウムの精製方法において、溶融タンクの下流に、金属酸化物除去用のコールドトラップを設置する。
[0025]
 (作用)本態様は、流動パラフィン等が除去されて溶融タンクから導出される溶融金属ナトリウム中に、僅かであるが主としてナトリウム金属酸化物が溶けて混入している際に、当該金属ナトリウムを融点近くまで冷却して溶けていた酸化物を析出させてコールドトラップを通過させて濾過により除去することを意図している。前記溶融タンクによる有機溶媒の除去と、コールドトラップによる酸化物の濾過により、更に高純度の金属ナトリウムを得ることができる。

発明の効果

[0026]
 本発明では、溶融タンクに収容した金属ナトリウムを、減圧及び加熱で処理することにより、金属ナトリウム表面に付着した有機溶媒を、周囲の気化環境に向けて気化させて除去し、前記有機溶媒を実質的に含有しない高純度の金属ナトリウムを得ることができる。更に、原料である市販の金属ナトリウムを精製時に溶融するため、その表面にひび割れ等の欠陥があっても、精製には影響がない。従って従来のように、原料となる金属ナトリウムインゴットの表面状態を個別に検査する必要がなくなって操作性が向上するとともに、ひび割れを削り取ることによる利用できる金属ナトリウムの歩留りの低下を防止できる。

図面の簡単な説明

[0027]
[図1] 本発明の第1実施形態である金属ナトリウムの精製及び充填システムを示す全体構成図である。
[図2] 図1の全体構成図中の溶融タンクの変形例を示す縦断面図である。
[図3] 本発明の第2実施形態を示す全体構成図である。

発明を実施するための形態

[0028]
 次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0029]
 第1及び第2実施形態は、金属ナトリウムの精製に加えて、精製で得られた金属ナトリウムをシリンダに充填する一連のシステムを例示するが、金属ナトリウムの精製用のみとして実施することも可能である。更に後述のコールドトラップは、主として金属ナトリウム酸化物除去用であり、当該酸化物の除去が不要な場合には設置しなくても良い。
[0030]
 第1実施形態の金属ナトリウム精製及び充填システム10は、図1に示すように、主として、溶融タンク12、溶剤トラップ14、貯留タンク16、コールドトラップ18及び充填装置20から構成されている。
[0031]
 前記溶融タンク12は、有底円筒状の容器で、その上部側面に減圧吸引管22が、その下部側面に精製金属ナトリウム取出管24とバルブ70がそれぞれ接続されている。前記減圧吸引管22は、流動パラフィン等の有機溶媒28が満たされた前記溶剤トラップ14に接続されてその先端が有機溶媒28中に達している。この溶剤トラップ14内部は、減圧ポンプ(図示略)により減圧に維持できるようにしている。また前記ナトリウム取出管24は、バルブ70を介して前記貯留タンク16に接続されている。
[0032]
 前記溶融タンク12の、減圧吸引管22より下方の側面全体及び底面にはヒータ30が設置され、かつ当該溶融タンク12の上部開口には、不活性ガス供給管32が接続された蓋体33を固着して、溶融タンク12内を密閉する。  
[0033]
 前記貯留タンク16は、溶融タンク12で精製されかつナトリウム取出管24を通して供給された精製金属ナトリウムを一時的に貯留するための密閉タンクで、当該タンク16には、前記ナトリウム取出管24に加えて、精製ナトリウム循環ライン34の送液パイプ36と戻りパイプ38が接続されている。循環ポンプ40が接続された送液パイプ36の他端側は、二股に分岐し、この二股部の一方は、前記戻りパイプ38の他端側を構成し、第1電磁弁42及びコールドトラップ18を介して、前記貯留タンク16に接続されている。
[0034]
 前記二股部の他方は、充填装置用供給パイプ46を構成し、この供給パイプ46は、第2電磁弁48を介して、定量供給器49に接続されている。この定量供給器49の天板50下面には、長さの異なる、図示の例では5本の液面検知センサS ~S が電気的に接続され、隣接するセンサの上下長の差は全て同じ長さ“d”となっている。前記定量供給器49の底板51には、定量供給弁52を有する供給管53が接続され、この供給管53は前記充填装置20に達し、その先端には、ナトリウム滴下用ノズル54が装着されている。この充填装置20内には、その内周面に接触するようにドーナツ状支持部材55が接続され、前記ノズル54の直下に位置する、前記支持部材55の中央の開口には、下端に円盤状の着脱自在とされたキャップ材56が止着された、フランジ付きの円筒状のシリンダ57のフランジ58が係合されて、当該シリンダ57が充填装置20内に装着されている。
[0035]
 次にこのような構成から成る本実施形態の金属ナトリウムの精製及び充填システムの機能に関して説明する。
[0036]
 図1溶剤トラップ14に適量の流動パラフィンを入れ、溶融タンク12の蓋体33を取り外して、流動パラフィンに浸漬保存されていた、バルク状の未精製金属ナトリウムの前記流動パラフィンを布で拭き取った後、当該金属ナトリウムを、前記溶融タンク12内に入れて、蓋体33を再度固着する。次に前記不活性ガス供給管32からアルゴンや窒素などの不活性ガスを供給して、溶融タンク12内を不活性ガス雰囲気として、水分や酸素を十分に遮断する。
[0037]
 その後、前述の減圧ポンプ(図示略)を作動させると、前記溶剤トラップ14内及び前記溶融タンク12内が減圧状態になり、前記ヒータ30に通電して、溶融タンク12内のバルク状の金属ナトリウムを加熱すると、前記バルク状の金属ナトリウム表面に付着している流動パラフィンが気化して、溶剤トラップ14に導かれ、当該溶剤トラップ14内の流動パラフィン28に吸収されて、金属ナトリウムの精製が完了する。
[0038]
 市販の金属ナトリウムは、流動パラフィン等の有機溶媒に保存しても、若干の水分や酸素と接触して、その表面が酸化されて酸化ナトリウムに変化することは避けられない。更に本実施形態の基づく精製操作も、実質的に水分や酸素を含まない不活性ガス雰囲気中で行われるが、同様に表面が酸化して酸化ナトリウムが生成することは回避できない。表面に出来る酸化ナトリウムはポーラスなために嵩比重が金属ナトリウムより小さく、従って図1に示すように、溶解タンク12内の金属ナトリウムが完全に溶融すると、溶融金属ナトリウム60の表面に浮き上がり、酸化ナトリウム層62を形成する。
[0039]
 この酸化ナトリウム層62が存在すると、溶融ナトリウム60が溶融タンク12内の雰囲気に接触できず、溶融金属ナトリウム60中の流動パラフィンが気化しようとしても、溶融金属ナトリウム60から逃げることができず、金属ナトリウムの精製が進行しないことになる。このような事態を回避するためには、蓋体33を脱着させて、溶融金属ナトリウム60表面の酸化ナトリウム層62を、人力で又は機械的に掬い取るか、例えば図2に示すように、攪拌子を使用して強制的な流れを形成して、酸化ナトリウム層62の少なくとも一部を破壊すれば良い。
[0040]
 図2は、図1の全体構成図中の溶融タンクの変形例を示す縦断面図であり、図1と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。つまり、図2に示すように、溶融タンク12下部のヒータ30に接触するようにモータ64を設置し、かつ前記溶融タンク12内には攪拌子66をセットして、加熱及び減圧時に、モータ64に通電すると、前記攪拌子66が溶融金属ナトリウム60中で回転して、溶融金属ナトリウム60中に渦巻き流68を生成させる。この渦巻き流68により、溶融金属ナトリウム60表面全体を覆っている酸化ナトリウム層62の少なくとも一部が破壊されて、溶融金属ナトリウム60が溶融タンク12内の雰囲気と接触して、酸化ナトリウム層62の存在にもかかわらず、流動パラフィンの気化による除去を達成できる。
[0041]
 図1の溶融タンク12から、バルブ70を開けて精製金属ナトリウム取出管24を通して貯留タンク16に供給された精製金属ナトリウムは、この貯留タンク16に一時的に貯留される。当該貯留タンク16内の精製金属ナトリウムは、循環ポンプ40により、送液パイプ36から循環ライン34へ供給される。通常の状態では第1電磁バルブ42を開、第2電磁バルブ48を閉とする。この状態で循環ライン34へ供給された溶融金属ナトリウムは、第1電磁バルブ42からコールドトラップ18に供給され、このコールドトラップ18で、溶融金属ナトリウムに僅かに含まれる主としてナトリウムの金属酸化物等の不純物を濾過等により分離されて、戻りパイプ38から前記貯留タンク16に戻される。貯留タンク16内の溶融金属ナトリウムは前記循環ライン34を1回又は複数回循環することにより、更に純度が向上する。
[0042]
 この貯留タンク16内の精製金属ナトリウムをシリンダ57内に充填する必要が生じた際には、前記第1電磁弁42を閉に、第2電磁バルブ48を開とする。これにより、精製金属ナトリウムは、送液パイプ36から充填装置用供給パイプ46を経て定量供給器49へ供給される。定量供給器49内に溶融金属ナトリウムが供給されると、当該定量供給器49内の溶融金属ナトリウムの液面が徐々に上昇する。この溶融金属ナトリウムの液面が、上下長の最も短い第1液面検知センサS の下端に接触すると、その検出信号が、前記定量供給弁52に及び第2電磁バルブ48に伝達されて、定量供給弁52を開にするとともに、第2電磁バルブ48を閉にする。これにより、定量供給器49内に溶融金属ナトリウムの供給が停止され、かつ定量供給器49中の溶融金属ナトリウムが、供給管53を通して前記充填装置20内に供給され、ナトリウム滴下用ノズル54から、好ましくは滴下状態でシリンダ57内に供給される。この操作は、通常溶融金属ナトリウムの自重により実施できるが、前記定量供給器49に若干の正圧を掛けるか、前記充填装置20内に若干の負圧を掛けながら行っても良い。
[0043]
 前記定量供給器49内の溶融金属ナトリウムの液面が低下して第2の液面検知センサS の下端に達すると、これをこの第2センサS が検知して、前記定量供給弁52を閉じて、金属ナトリウムの供給を停止し、これにより前記定量供給器49の上下長“d”に相当する所定量の溶融金属ナトリウムが前記シリンダ57内に充填される。この際、滴下速度、ナトリウム滴下用ノズル54内の金属ナトリウムの温度、シリンダ57の内径及びシリンダ57に供給される精製金属ナトリウムの量(シリンダ内に生成する金属ナトリウム円柱状体の直径及び長さ)を適宜設定することにより、シリンダ57の下から上への指向性凝固により、微小空隙のない均一な精製金属ナトリウム成形体を提供できる。
[0044]
 その後、所定量の金属ナトリウムが充填された前記シリンダ57を、前記定量供給器49から取り外し、次に金属ナトリウムを充填する第2のシリンダと交換する。そして前記定量供給弁52を再度開いて、定量供給器49内の溶融金属ナトリウムを前記第2のシリンダに充填し、前記金属ナトリウムの液面が第3の液面検知センサS の下端に接触したことを検知して前記定量供給弁52を再度閉じる。これにより、前回と同様に前記定量供給器49の上下長“d”に相当する所定量の溶融金属ナトリウムが前記第2のシリンダ内に充填される。これらの操作を所定回繰り返すことにより、所定数のシリンダに一定量の金属ナトリウムを充填できる。
[0045]
 前記第1の実施形態では、溶融タンクで流動パラフィン等の有機溶媒の除去を、コールドトラップ18で、僅かに金属ナトリウム中に含まれる主として金属ナトリウム酸化物等の除去をそれぞれ意図している。従って、有機溶媒のみの除去を意図し、前記金属ナトリウム酸化物等の除去が不要な場合には、前記コールドトラップ18及びそれに付帯する設備は不要である。その例を、第2実施形態として図3に例示する。
[0046]
 図3の第2実施形態は、第1実施形態の改良であり、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、送液パイプ36が直接定量供給器49に接続されて、第1実施形態における循環ライン34、バルブ42、48、コールドトラップ18及び戻りパイプ38が接続されていない。第1実施形態と同様にして精製され貯留タンク16に貯留されている溶融金属ナトリウムを、シリンダ57に充填するには、循環ポンプ40を作動させて前記定量供給器49に供給する。その後は、第1実施形態と同様にして、精製された溶融金属ナトリウムを一定量ずつ、均一組織を有する固化物として、シリンダ57内に充填できる。
[0047]
 第2実施形態の装置は、第1実施形態の装置と比較して、スペース的及びコスト的に大幅に有利であり、原料である金属ナトリウムの金属酸化物除去が不用な場合には、第2実施形態の装置を使用することが望ましい。
実施例
[0048]
 以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、例えば本実施例では、流動パラフィンの除去状況を目視で確認するために、蓋体の取り外しを行ったが、通常の操業では不要である。
[0049]
 (実施例1)
 直径250mm、高さ375mmのステンレス製の有底円筒状の容器の上部側面に減圧吸引管を、下部側面に精製金属ナトリウム取出管をそれぞれ接続して、金属ナトリウム精製用の溶融タンクを構成した。前記減圧吸引管の他端側には、流動パラフィンを満たした溶剤トラップ(パラフィントラップ)を接続した。金属ナトリウム取出管の他端側は、精製金属ナトリウムの貯留タンクに接続した。更に、前記溶融タンクの底面及び前記不活性ガス供給管より下方の当該溶融タンクの側面にヒータを設置した。
[0050]
 次いで、流動パラフィンに浸漬した未精製金属ナトリウムを購入し、保存容器から取り出した後、この未精製金属ナトリウムを、前記溶融タンクの上部開口から当該溶融タンクに入れ、その後、不活性ガス供給管を接続した、前記溶融タンクの円形の上部開口を閉塞するための蓋体を締着して、前記溶融タンク内を密閉し、前記不活性ガス供給管から容器内にアルゴンガスを供給して、容器内をアルゴンガスで置換した。
[0051]
 前記溶剤トラップに接続した減圧ポンプを作動させて、前記溶融タンク内を約-50kPaGまで減圧し、この減圧を5分間維持した後、前記蓋体を取り外し、溶融タンク内を観察したところ、湯気状の気体が観察された。前記蓋体で、前記上部開口を再度閉塞し、前記溶融タンク内を再度約-50kPaGまで減圧し、この減圧を同じ5分間維持した後、前記蓋体を取り外し、溶融タンク内を観察したが、湯気状の気体は観察されなかった。上記、減圧圧力や加熱時間は、前記有底円筒容器の大きさで変わるので、限定数値ではない。特に減圧圧力を下げれば有機溶媒が除去しやすくなり、減圧維持時間も少なくて済むのは言うまでもない。
[0052]
 次いで、前記減圧度を維持し、前記ヒータを使用して、前記溶融タンクを徐々に加熱し、表面溶融状態を維持したまま、5分間加熱を継続した後、前記蓋体を取り外し、溶融タンク内を観察したところ、前述と同じ湯気状の気体が観察された。前記蓋体で、前記上部開口を再度閉塞し、前記溶融タンク内を再度約-50kPaGまで減圧し、この減圧度及び前記加熱条件を同じ5分間維持した後、前記蓋体を取り外し、溶融タンク内を観察したが、金属ナトリウムは完全に溶融し、湯気状の気体は観察されなかった。
[0053]
 更に、引き続き前記減圧度を維持し、前記ヒータを使用して、前記溶融タンクを徐々に加熱し、表面溶融状態を維持したまま、撹拌子を動かして5分間加熱を継続した後、前記蓋体を取り外し、溶融タンク内を観察したところ、前述と同じ湯気状の気体が観察された。
[0054]
 これらの実験結果から、流動パラフィンを含有する金属ナトリウムを減圧下に維持するだけでは流動パラフィンを十分に除去することはできず、加熱状態に維持しながら減圧に維持し、さらに撹拌子を用いて溶融ナトリウムを撹拌することにより、実質的に全部の流動パラフィンを、金属ナトリウムから流動パラフィンを除去できることが判った。

符号の説明

[0055]
10 金属ナトリウム精製及び充填システム
12 溶融タンク
14 溶剤トラップ(パラフィントラップ)
16 貯留タンク
18 コールドトラップ
20 充填装置
22 減圧吸引管
24 精製金属ナトリウム取出管
28 有機溶媒
30 ヒータ
34 精製ナトリウム循環ライン
46 充填装置用供給パイプ
49 定量供給器
54 ナトリウム滴下用ノズル
57 シリンダ
60 溶融金属ナトリウム
62 酸化ナトリウム層
64 モータ
66 攪拌子
~S 5 液面検知センサ

請求の範囲

[請求項1]
 有機溶媒を含有する金属ナトリウムの精製方法において、
 当該金属ナトリウムを密閉した溶融タンクに収容し、減圧下、当該溶融タンクを加熱することにより、前記金属ナトリウムに付着した前記有機溶媒を気化させ除去することを特徴とする金属ナトリウムの精製方法。
[請求項2]
 気化させた有機溶媒を、溶融タンク外の有機系溶剤を満たした溶剤トラップに導き、前記有機溶媒を捕集させるようにした請求項1記載の金属ナトリウムの精製方法。
[請求項3]
 金属ナトリウムの酸化により生成し、溶融タンク内の溶融金属ナトリウム表面を被覆している酸化ナトリウム層を物理的に除去するようにした請求項1又は2に記載の金属ナトリウムの精製方法。
[請求項4]
 溶融タンク内の溶融金属ナトリウムの酸化により同金属ナトリウム表面を覆っている酸化ナトリウム層に、力を加えて当該酸化ナトリウム被膜層の少なくとも一部を破壊するようにした請求項1又は2に記載の金属ナトリウムの精製方法。
[請求項5]
 溶融タンクの下流に、金属酸化物除去用のコールドトラップを設置した請求項1から3までのいずれかに1項に記載の金属ナトリウムの精製方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]