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1. (WO2017033320) POWER SUPPLY REGENERATIVE CONVERTER AND MOTOR CONTROL DEVICE
Document

明 細 書

発明の名称 電源回生コンバータおよびモータ制御装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

先行技術文献

特許文献

0021  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0022   0023   0024   0025   0026  

課題を解決するための手段

0027  

発明の効果

0028  

図面の簡単な説明

0029  

発明を実施するための形態

0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271   0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39   40   41  

明 細 書

発明の名称 : 電源回生コンバータおよびモータ制御装置

技術分野

[0001]
 本発明は、工作機械、製造機械、ロボット等の産業機械に使用される電源回生コンバータおよび当該電源回生コンバータを備えたモータ制御装置に関する。

背景技術

[0002]
 一般的に、モータは加速時に電力を消費し、減速時にはモータ回転中に発生している誘導起電力を低減させる必要があるため発電機として動作する。なお、以降の説明の便宜上、モータの加速動作を「モータ力行」もしくは単に「力行」と称し、モータの減速動作を「モータ回生」もしくは単に「回生」と称する。
[0003]
 工作機械、製造機械、ロボット等の産業機械は、駆動軸にモータが搭載され(以降、この構成を「軸構成」と称する)、駆動軸がモータにより駆動される。このような産業機械に適用されるモータに対し、当該モータを制御するためのモータ制御装置は、入力電源である交流電源から印加される交流電圧を直流電圧に変換する整流装置と、整流装置によって変換された直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を制御対象であるモータに印加してモータの可変速制御を行うモータ駆動装置と、を備えて構成される。
[0004]
 整流装置は、一般的に、ダイオード等の整流素子でブリッジ整流回路を構成して成るパワーモジュールと、パワーモジュールの出力を平滑化する平滑コンデンサと、を備えて構成される。入力電源からの交流電圧がパワーモジュールの交流入力端子に印加され、パワーモジュールで交流-直流変換され、交流-直流変換された直流電圧が平滑コンデンサにて平滑化される。そのため、整流装置には、平滑化された直流電圧をモータ駆動装置に印加するための直流端子が設けられている。
[0005]
 モータ力行時は、整流装置により、入力電圧が交流-直流変換によって直流電圧に変換され、平滑コンデンサを介してモータ駆動装置に印加される。そして、モータ駆動装置により、平滑コンデンサからの直流電圧が直流-交流変換され、変換された交流電圧がモータに印加され、モータが駆動する。
[0006]
 モータ回生時は、モータで発生した誘導起電力(以降、「回生電力」と称する)が、モータ駆動装置によって交流-直流変換され、変換された直流電圧が平滑コンデンサに印加される。そのため、モータの回生電力が大きい場合、平滑コンデンサの端子間電圧が高くなり、平滑コンデンサの許容電圧またはパワーモジュールの許容電圧を超えると、平滑コンデンサまたはパワーモジュールが破損する可能性がある。
[0007]
 前述のようなモータ回生時に発生する回生電力の回収方式としては、抵抗器により熱消費させる抵抗回生方式、コンデンサに充電するコンデンサ回生方式、入力電源に回生電力を戻す電源回生方式等がある。近年、前述のような産業機械においては、省エネルギー化の流れがあり、電源回生方式を適用した整流装置の採用が多くなっている。
[0008]
 電源回生方式を適用した整流装置は、パワーモジュールとして、複数の整流素子と複数のスイッチング素子とによって電力の相互変換、すなわち交流-直流変換と直流-交流変換とを行うことができるパワーモジュールを適用したものである。すなわち電源回生方式を適用した整流装置は、モータ力行時は交流-直流変換装置として動作し、平滑コンデンサを介してモータ駆動に必要な電力をモータ駆動装置に供給し、モータ回生時は直流-交流変換装置として動作し、モータの回生電力を平滑コンデンサを介して入力電源に戻すことができる。
[0009]
 電源回生方式を適用した整流装置の制御方式には、PWM制御を用いるPWM回生コンバータ方式と、120度通電回生方式とがある。PWM回生コンバータ方式は、入力電源からの電流を正弦波にすることができるが、モータ力行時、モータ回生時に関わらずPWM動作を行うため、スイッチング損失によるパワーモジュールの発熱増加、それに伴う冷却機構の大型化によって、筐体そのものが大きくなるという欠点がある。また、PWM動作に伴うスイッチングノイズの増大、当該スイッチングノイズを抑制するために入力フィルタの追加等が必要となり、コストが高くなるのが一般的である。
[0010]
 一方、120度通電回生方式の電源回生方式を適用した整流装置は、入力電源から印加される電圧(以降、適宜「電源電圧」と称する)の位相(以降、適宜「電圧位相」と称する)を検出し、電源電圧の120度の区間のみ入力電源に電力を回生する方式である。120度通電回生方式の場合、スイッチング素子のスイッチング動作は120度区間の開始時と終了時だけでよく、スイッチング損失がPWMコンバータ方式と比較して大幅に低減できる。また、スイッチング動作回数が少ないため、スイッチングノイズも小さくなり、PWMコンバータ方式と比較して低コストで構成できる。また、PWMコンバータ方式の場合は、スイッチング動作が常時必要なのに対し、120度通電回生方式の場合、モータ力行時は、スイッチング動作による電源回生動作を停止させ、パワーモジュールの整流ブリッジ回路にて交流-直流変換を行うことで、スイッチング素子のスイッチング損失低減を図ることができる。そのため、前述のような産業機械においては、120度通電回生方式の電源回生方式を適用した整流装置の適用が多くなっている。なお、以降の説明の便宜上、電源回生方式を適用した整流装置を、「電源回生コンバータ」と称する。
[0011]
 前述のような産業機械において、複数のモータで軸構成される場合、複数のモータ駆動装置が必要になる。これに対し、電源回生コンバータは、モータ制御装置が配置される制御盤の省スペース化および低コスト化を図るために、1台設けられることが通常である。すなわち複数のモータ駆動装置に対し、電源回生コンバータは1台だけ設けられるのが一般的な構成となっている。
[0012]
 電源回生コンバータの出力電力は、接続されるモータ駆動装置がモータに供給する電力、すなわちモータの出力によって決定される。したがって、モータ駆動装置によって駆動されるモータの出力が大きければ、電源回生コンバータが供給する電力が大きくなり、電源回生コンバータの内部に搭載されるパワーモジュールには大きな電流が流れることになる。
[0013]
 電源回生コンバータの許容出力電力には、許容連続定格出力容量と許容最大出力容量とがある。許容連続定格出力容量は、電源回生コンバータが連続的にモータ駆動装置に供給可能な電力を表し、許容最大出力容量は、電源回生コンバータが供給可能な最大電力を表す。
[0014]
 電源回生コンバータを適用したモータ制御装置において、モータが許容出力電力を超えるような動作を行い、電源回生コンバータの許容供給出力電力を超えた状態を継続する場合、電源回生コンバータの寿命劣化が起こり、場合によっては破損のおそれもある。
[0015]
 そのため、産業機械に使用されるモータ制御装置において、電源回生コンバータの選定は、各モータの連続定格出力と各モータの最大出力とに基づいて行われる。具体的には、各モータの連続定格出力の総和と最大出力の総和とを算出し、それぞれが許容連続定格出力容量以内および許容最大出力容量以内となるような電源回生コンバータが選定されることになる。
[0016]
 上述のような電源回生コンバータの選定作業を実施すれば、電源回生コンバータが過負荷状態になるのを防ぐことができ、電源回生コンバータの寿命劣化および破損を防ぐことが可能となる。一方、このような選定手法では、各モータの連続定格出力総和が許容連続定格出力容量以内であっても、各モータの最大出力総和が許容最大出力容量を超えた場合には、容量の大きな電源回生コンバータが選定されることになる。また、各モータの最大出力総和は許容最大出力容量以内であっても、各モータの連続定格出力総和が許容連続定格出力容量を超えた場合には、同様に、容量の大きな電源回生コンバータを選定する必要があり、制御盤が大型化し、モータ制御装置のコストアップにつながるケースがある。
[0017]
 一般的に、ブレーカー等の保護装置、入力電源と電源回生コンバータとを接続するための動力線として使用される電線、および、入力電源側に配置され電源容量を確保するためのトランスといった付属機器類は、選定された電源回生コンバータの容量に基づいて選定され、電源回生コンバータの許容連続定格出力容量によって決定される。容量の大きな電源回生コンバータが選定された場合、容量の大きなブレーカーやトランスを選定し、電線径の大きな動力線を使用することとなり、モータ制御装置のコストアップだけでなく、産業機械全体のコストアップにもつながることになる。
[0018]
 また、前述した電源回生コンバータの選定作業において、モータの連続定格出力、モータの最大出力は、モータ制御装置を提供するメーカーが予め設定した値を使用することが一般的であるため、過剰なマージンを持つ電源回生コンバータが設定される可能性が高くなる。例えば、複数のサーボモータとスピンドルモータとで構成される工作機械の場合、全モータの最大出力動作が重なるようなケースは少ない。また、工作機械においては、サーボモータが連続定格出力で動作するケースも少ないため、電源回生コンバータの容量は、各モータの実動作と比較して大きくなるケースが多くなると予想される。
[0019]
 しかしながら、各モータが想定外の動作を行い、全モータの連続定格出力合計値および各モータの最大出力合計値が、電源回生コンバータの許容出力電力容量を超えた場合(以降、「過負荷状態」と称する)、電源回生コンバータに悪影響を与える可能性がある。そのため、想定外の動作があっても問題が発生しないように、前述した電源回生コンバータの選定手法を採用しており、産業機械のコストダウンの妨げになっている。
[0020]
 このような課題に対し、下記特許文献1には、整流装置の入力側に流れる交流電流を監視し、この交流電流が予め定められた判定値の範囲外にあるとき、モータ動作指令で規定されていたトルク指令よりも制限されたトルク指令でモータが動作するよう、モータ駆動装置により供給される交流電力を制御する技術が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0021]
特許文献1 : 特開2013-153607号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0022]
 上記特許文献1に記載された技術であれば、整流装置の供給する電力は、整流装置の容量を超えることはなくなり、必要以上に大きな容量の整流装置を選定する必要がなくなると記載されている。
[0023]
 しかしながら、特許文献1に記載された技術は、整流装置に入力された交流電流を検出する必要があるため、入力電源が三相交流電源である場合、少なくとも2つの交流電流を検出する必要があり、電流検出器が2つ以上必要となる。
[0024]
 後述する本発明から理解できることではあるが、電源回生機能を備える整流装置において、2つ以上の電流検出器を有することなく、所望する機能を実現することが可能である。すなわち、電源回生機能を有するモータ制御装置において、従来技術では、2つ以上の電流検出器が必要となり、コスト増になるという課題が存在する。
[0025]
 また、電源回生コンバータでは、モータ力行時の電力変換動作である直流-交流変換動作に、モータ回生時の電力変換動作である交流-直流変換動作が加わる。そのため、電源回生コンバータにおいて過負荷保護を行う場合、電流検出器の増加が単なる個数の増加に留まらず、過負荷保護制御の複雑化に直結するという課題も存在する。
[0026]
 本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、過負荷保護を簡易且つ低コストで実現することができる電源回生コンバータおよびモータ制御装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0027]
 上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る電源回生コンバータは、交流電源端子および直流電源端子を有すると共に、複数の整流素子および複数の回生用スイッチング素子を有して構成されるパワーモジュールおよび直流電源端子に接続され、交流直流変換動作時の直流電力を蓄積する平滑コンデンサを備える。また、電源回生コンバータは、パワーモジュールの直流電源端子と平滑コンデンサとの間に流れる母線電流を検出する母線電流検出部および平滑コンデンサの端子間電圧を検出するPN母線電圧検出部を備える。電源回生コンバータは、さらに、入力電源の位相を検出する電源位相検出部、電源位相検出部が検出した電源位相に基づいて回生用スイッチング素子のオンオフ制御を行うベース駆動信号を生成するベース駆動信号生成部、母線電流検出部の検出結果、ベース駆動信号およびPN母線電圧検出部の検出結果に基づいて電源回生動作の開始処理および停止処理を行う回生制御部、ならびに、母線電流検出部の検出結果に基づいて電源回生コンバータの過負荷を検出する過負荷検出部を備える。

発明の効果

[0028]
 本発明によれば、電源回生コンバータの過負荷保護を簡易且つ低コストで実現することができる、という効果を奏する。

図面の簡単な説明

[0029]
[図1] 実施の形態1に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図2] 電源位相検出部およびベース駆動信号生成部の動作を示すタイムチャート
[図3] モータ力行時の動作を説明する回路図
[図4] モータ力行時の波形を示すタイムチャート
[図5] モータ回生時動作を説明する回路図
[図6] モータ回生時の波形を示すタイムチャート
[図7] モータ動作時の挙動を示す波形図
[図8] モータ力行時の電源1周期あたりに流れる整流電流および母線電流を示す波形図
[図9] モータ回生時の電源1周期あたりに流れる回生電流および母線電流を示す波形図
[図10] パワーモジュールを用いた電力変換装置の構成例を示す断面図
[図11] 電力変換装置の熱伝導モデルを示す回路図
[図12] パワーモジュールにおける短時間の温度上昇を示す波形図
[図13] パワーモジュールにおける長時間の温度上昇を示す波形図
[図14] 実施の形態1における過負荷検出部の構成例を示すブロック図
[図15] 実施の形態2に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図16] 実施の形態2に係る過負荷検出部の構成例を示すブロック図
[図17] パワー素子の発生損失とケース温度上昇の関係を示す波形図
[図18] 整流素子に電流が流れたときのケース温度上昇を示す波形図
[図19] 実施の形態3に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図20] 実施の形態3に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャート
[図21] 実施の形態4に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図22] 実施の形態4に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャート
[図23] 実施の形態5に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図24] 実施の形態5に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャート
[図25] 実施の形態6に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図26] 実施の形態6に係る回生制御部の構成例を示すブロック図
[図27] モータが減速動作を行った際の挙動を示す要部波形図
[図28] 実施の形態7に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図
[図29] 電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが(0.2×L)のときの要部波形図
[図30] 図29に示したR相電流Irの拡大波形図
[図31] 電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが(1×L)のときの要部波形図
[図32] 図31に示したR相電流Irの拡大波形図
[図33] 電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが(5×L)のときの要部波形図
[図34] 図33に示したR相電流Irの拡大波形図
[図35] 実施の形態7に係る回生制御部の構成例を示すブロック図
[図36] 実施の形態7で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を示す要部波形図(Lin=0.2×L)
[図37] 実施の形態7で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を示す要部波形図(Lin=1×L)
[図38] 実施の形態7で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を示す要部波形図(Lin=5×L)
[図39] 実施の形態6で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を比較例として示す要部波形図(Lin=0.2×L)
[図40] 実施の形態6で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を比較例として示す要部波形図(Lin=1×L)
[図41] 実施の形態6で適用した回生制御部を用いた場合の回生動作時の挙動を比較例として示す要部波形図(Lin=5×L)

発明を実施するための形態

[0030]
 以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[0031]
実施の形態1.
 まず、実施の形態1に係るモータ制御装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1に係るモータ制御装置は、図1に示すように、モータ5を可変速制御するモータ駆動装置4と、三相(R相、S相、T相)の交流電圧を発生する三相交流電源である入力電源3とモータ駆動装置4との間に配置され、モータ駆動装置4に直流電力を供給すると共に、モータ減速時に発生する回生電力を入力電源3に返すことができる電源回生コンバータ1とを備えて構成される。モータ駆動装置4は、電源回生コンバータ1から直流電力の供給を受けてモータ5を可変速制御する。
[0032]
 電源回生コンバータ1は、平滑コンデンサ21と、整流素子(D1~D6)と回生用スイッチング素子(S1~S6)とを並列接続した6個のパワー素子をブリッジ接続したパワーモジュール22と、平滑コンデンサ21の端子間電圧を検出するPN母線電圧検出部23、入力電源3の電源位相を検出する電源位相検出部24と、パワーモジュール22のP端子、平滑コンデンサ21、パワーモジュール22のN端子間に流れる母線電流を検出する母線電流検出部25と、電源位相検出部24に基づいてパワーモジュール22の回生用スイッチング素子に対するオン制御信号またはオフ制御信号(以降、「ベース駆動信号」と称する)を生成するベース駆動信号生成部26と、母線電流検出部25の出力信号とPN母線電圧検出部23の出力信号とに基づいてベース駆動信号生成部26から伝達されたベース駆動信号生成部26の出力信号を、回生用スイッチング素子の駆動回路(図示せず)に出力するか否か、換言すればベース駆動信号生成部26の出力信号を遮断するか否かを制御する回生制御部27と、母線電流検出部25の出力信号に基づいて電源回生コンバータの過負荷を検出し、過負荷検出信号を、モータ駆動装置4およびモータ駆動装置4にモータ動作指令を出力する上位制御装置に出力する過負荷検出部28と、を備えて構成される。
[0033]
 パワーモジュール22は、交流電源端子11,12,13ならびに直流電源端子であるP端子およびN端子を備えている。交流電源端子11,12,13は、リアクトル2を介して入力電源3のR電源端子、S電源端子、T電源端子にそれぞれ接続される。パワーモジュール22のP端子は平滑コンデンサ21の高電位側に接続されると共に、モータ駆動装置4の直流電源端子17に接続される。また、パワーモジュール22のN端子は平滑コンデンサ21の低電位側に接続されると共に、モータ駆動装置4の直流電源端子18に接続される。
[0034]
 PN母線電圧検出部23は、平滑コンデンサ21の両端電圧を、P母線70PとN母線70Nとの間の母線電圧として検出する。図1の構成の場合、平滑コンデンサ21の両端電圧は、パワーモジュール22のP端子とN端子との間の電圧(以降、適宜「母線電圧」と称する)VPNに実質的に等しい。すなわち、PN母線電圧検出部23は、平滑コンデンサ21の両端電圧を検出することで、パワーモジュール22とモータ駆動装置4とを電気的に接続するためのPN母線間の電圧を検出する。
[0035]
 母線電流検出部25は、P母線70Pにおける平滑コンデンサ21の電気的接続点80Pとパワーモジュール22のP端子との間に配置され、パワーモジュール22のP端子、平滑コンデンサ21、パワーモジュール22のN端子間に流れる電流(以降、適宜「母線電流」と称する)IPNを検出する。なお、母線電流検出部25を、N母線70Nにおける平滑コンデンサ21の電気的接続点80Nとパワーモジュール22のN端子との間に配置してもよい。
[0036]
 次に、パワーモジュール22の内部の構成について説明する。前述のように、パワーモジュール22を構成するパワー素子は、複数の整流素子(D1~D6)と回生用スイッチング素子(S1~S6)によって構成される。パワーモジュール22のP端子とN端子との間には、直列接続した回生用スイッチング素子S1,S2、回生用スイッチング素子S3,S4、回生用スイッチング素子S5,S6の3組が並列に接続される。P端子には、上アームを構成する回生用スイッチング素子S1,S3,S5のコレクタ端子が接続され、N端子には、下アームを構成する回生用スイッチング素子S2,S4,S6のエミッタ端子が接続される。そして、回生用スイッチング素子S1のエミッタ端子と回生用スイッチング素子S2のコレクタ端子は、交流電源端子11に接続される。同様に、回生用スイッチング素子S3のエミッタ端子と回生用スイッチング素子S4のコレクタ端子とは、交流電源端子12に接続され、回生用スイッチング素子S5のエミッタ端子と回生用スイッチング素子S6のコレクタ端子とは、交流電源端子13に接続される。なお、これらの回生用スイッチング素子S1~S6には、整流素子D1~D6のそれぞれが並列に接続される。整流素子のアノード端子は回生用スイッチング素子のエミッタ端子に接続され、整流素子のカソード端子は回生用スイッチング素子のコレクタ端子に接続される。図1より、パワーモジュール22の交流電源端子11,12,13は、リアクトル2を介して入力電源3のR相電源端子、S相電源端子、T相電源端子に電気的に接続されているため、整流素子D1と回生用スイッチング素子S1はR相P側用のパワー素子、整流素子D2と回生用スイッチング素子S2はR相N側用のパワー素子、整流素子D3と回生用スイッチング素子S3はS相P側用のパワー素子、整流素子D4と回生用スイッチング素子S4はS相N側用のパワー素子、整流素子D5と回生用スイッチング素子S5はT相P側用のパワー素子、整流素子D6と回生用スイッチング素子S6はT相N側用のパワー素子を構成することになる。なお、図1では、入力電源3が3相交流電源である場合を例示しているが、単相電源を用いてもよい。単相電源の場合、パワーモジュール22は4つのパワー素子で構成することができる。
[0037]
 電源位相検出部24は、入力電源3の各電源電圧(以降、適宜「R相電圧VR」、「S相電圧VS」、「T相電圧VT」と表記する)を取り込み、入力電源3の電源位相を検出する。なお、入力電源3の電源電圧に代えて、リアクトル2とパワーモジュール22の交流電源端子11,12,13との間の電圧を取り込んでもよい。
[0038]
 電源位相検出部24は、検出した電源位相を出力信号としてベース駆動信号生成部26に出力する。ベース駆動信号生成部26は、電源位相に基づいて回生用スイッチング素子(S1~S6)を駆動するためのベース駆動信号を生成して回生制御部27への出力信号とする。図1の構成の場合、ベース駆動信号は6種類あり、R相P側用の回生用スイッチング素子S1のベース駆動信号をSRP、R相N側用の回生用スイッチング素子S2のベース駆動信号をSRN、S相P側用の回生用スイッチング素子S3のベース駆動信号をSSP、S相N側用の回生用スイッチング素子S4のベース駆動信号をSSN、T相P側用の回生用スイッチング素子S5のベース駆動信号をSTP、T相N側用の回生用スイッチング素子S6のベース駆動信号をSTNとして、6種類のベース駆動信号を区別する。
[0039]
 回生制御部27には、母線電流検出部25が検出した母線電流IPN、PN母線電圧検出部23が検出した母線電圧VPN、ベース駆動信号生成部26の出力信号であるベース駆動信号(SRP,SRN,SSP,SSN,STP,STN、以下「SRP~STN」とも表記)が入力される。回生制御部27は、母線電流IPNおよび母線電圧VPNに基づいて、ベース駆動信号生成部26から伝達されたベース駆動信号SRP~STNを出力するか、遮断するかの判定を行い、出力すると判定した場合には、図示を省略した駆動回路にベース駆動信号SRP~STNを出力する。なお、回生制御部27の更なる詳細な動作については、実施の形態6に記載の回生制御部27A、実施の形態7に記載の回生制御部27Bに置き換えて後述する。
[0040]
 次に、電源位相検出部24およびベース駆動信号生成部26の動作について、図2を用いて説明する。図2は、電源位相検出部24およびベース駆動信号生成部26の動作を示すタイムチャートである。図2では、上段側から、電源電圧の線間電圧波形(VR-S,VS―T,VT-R,VS-R,VT-S,VR-T)、電源位相検出信号、各回生用スイッチング素子を駆動するためのベース駆動信号(SRP,SRN,SSP,SSN,STP,STN)ならびにR相、T相およびS相に流れる回生電流(Irr,Isr,Itr)の時間変化を示している。なお、回生電流とは、回生動作時に回生用スイッチング素子を介して流れる電流である。
[0041]
 まず、電源位相検出部24の動作について説明する。電源位相検出部24には、前述したR相電圧VR、S相電圧VS、T相電圧VTが入力される。電源位相検出部24は、R相電圧VR、S相電圧VS、T相電圧VTに基づいて、R-S線間電圧VR-S、S-T線間電圧VS-T、T-R線間電圧VT-R、S-R線間電圧VS-R、T-S線間電圧VT-S、R-T線間電圧VR-Tを検出して各線間電圧のゼロクロス点を抽出し、抽出したゼロクロス点を電源位相検出信号として扱う。電源位相検出部24が抽出した電源位相検出信号は、ベース駆動信号生成部26へ出力される。なお、R-S線間電圧VR-Sは、S相を基準としてR相との電圧差を検出したものであるのに対し、S-R線間電圧VS-RはR相を基準としてS相との電圧差を検出したものであり、R-S線間電圧VR-SとS-R線間電圧VS-Rとは電圧位相が180度ずれている。他のものの定義および関係も同様であり、S-T線間電圧VS-Tは、T相を基準としてS相との電圧差を検出したものであるのに対し、T-S線間電圧VT-SはS相を基準としてT相との電圧差を検出したものであり、S-T線間電圧VS-TとT-S線間電圧VT-Sとは電圧位相が180度ずれている。また、T-R線間電圧VT-Rは、R相を基準としてT相との電圧差を検出したものであるのに対し、R-T線間電圧VR-TはT相を基準としてR相との電圧差を検出したものであり、T-R線間電圧VT-RとR-T線間電圧VR-Tとは電圧位相が180度ずれている。
[0042]
 電源位相検出信号の具体例は図2に示す通りである。図2では、電源位相検出信号として、上側から、R-S線間位相検出信号、S-R線間位相検出信号、S-T線間位相検出信号、T-S線間位相検出信号、T-R線間位相検出信号およびR-T線間位相検出信号を示している。例えば、R-S線間位相検出信号は、R-S線間電圧VR-SとS-R線間電圧VS-Rとの差が正の区間(位相区間)ではH、負の区間(位相区間)ではLとなるように、各線間電圧に対応付けた電源位相検出信号を生成する。三相交流電源の線間電圧波形は、ほぼ正弦波であり、最大値から見た左右の波形が対象であるため、位相検出信号のHの位相区間の中央で線間電圧波形の電位は最大となり、位相検出信号のLの位相区間の中央で線間電圧波形の電位は最小となる。よって、各位相検出信号により、最大電位を示す相と最小電位を示す相とを算出することができる。
[0043]
 次に、ベース駆動信号生成部26の動作について説明する。前述のように、ベース駆動信号生成部26は、電源位相検出部24の出力である電源位相検出信号に基づいて、パワーモジュール22の回生用スイッチング素子S1~S6に対するベース駆動信号を生成する機能を備えている。ベース駆動信号生成部26は、入力された位相検出信号に基づいて、以下に示すベース駆動信号を生成する(図2参照)。
[0044]
<R-S線間電圧VR-Sの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号SRP,SSNをHとし、R相P側の回生用スイッチング素子S1とS相N側の回生用スイッチング素子S4とをオン制御
[0045]
<S-T線間電圧VS-Tの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号SSP,STNをHとし、S相P側の回生用スイッチング素子S3とT相N側の回生用スイッチング素子S6とをオン制御
[0046]
<T-R線間電圧VT-Rの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号STP,SRNをHとし、T相P側の回生用スイッチング素子S5とR相N側の回生用スイッチング素子S2とをオン制御
[0047]
<S-R線間電圧VS-Rの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号SSP,SRNをHとし、S相P側の回生用スイッチング素子S3とR相N側の回生用スイッチング素子S2とをオン制御
[0048]
<T-S線間電圧VT-Sの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号STP,SSNをHとし、T相P側の回生用スイッチング素子S5とS相N側の回生用スイッチング素子S4とをオン制御
[0049]
<R-T線間電圧VR-Tの電位が最大の場合>
 ベース駆動信号SRP,STNをHとし、R相P側の回生用スイッチング素子S1とT相N側の回生用スイッチング素子S6とをオン制御
[0050]
 次に、パワーモジュール22を構成する回生用スイッチング素子S1~S6がベース駆動信号に基づいて、オン動作またはオフ動作(以降、「スイッチング動作」と総称する)するときに流れる電流について、図2を用いて説明する。なお、図1には、入力電源3から電源回生コンバータ1に向かう向きの矢印で示したR相電流Ir、S相電流Is、T相電流Itを示しているが、矢印で示す向きに流れる電流をプラス方向の電流として扱い、波形もそれに従って表記する。
[0051]
 前述のように、回生用スイッチング素子S1~S6がスイッチング動作するときには、図2の下段部に示すような、R相回生電流Irr、S相回生電流IsrおよびT相回生電流Itrが流れる。
[0052]
 図2において、時刻t20~t40では、R-S線間電圧VR-Sの電位が最大となるため、前述のように回生用スイッチング素子S1,S4をオン駆動させ、他の回生用スイッチング素子はオフ駆動とする。このようにすれば、平滑コンデンサ21と入力電源3のR-S間は、リアクトル2で電源インピーダンスを介して接続された状態となり、オン駆動された回生用スイッチング素子S1,S4を介する電流がR相とS相とに流れる。同様に時刻t40~t60では、R-T線間電圧VR-Tの電位が最大となるため、回生用スイッチング素子S1,S6をオン駆動させ、他の回生用スイッチング素子はオフ駆動とする。このようにすれば、平滑コンデンサ21と入力電源3のR-T間は、リアクトル2で電源インピーダンスを介して接続された状態となり、オン駆動された回生用スイッチング素子S1,S6を介する回生電流がR相とT相とに流れる。
[0053]
 なお、前述のようなスイッチング動作をしても、平滑コンデンサ21の端子間電圧と入力電源3の電圧との間に、“平滑コンデンサ21の端子間電圧>入力電源3の電圧”という関係がないと、回生電流は流れない。回生電流は、平滑コンデンサ21の電圧と入力電源3の電圧差を利用しつつ、リアクトル2によるインピーダンスにて電流制限をかけながら、回生電流を流している。
[0054]
 次に、力行動作について説明する。図3は、モータ力行時の動作を説明する回路図である。モータ力行時において、モータ駆動装置4は、電源回生コンバータ1の平滑コンデンサ21の直流電源を使用して、モータ5に交流電力を供給し、可変速制御を行う。この際、平滑コンデンサ21の電圧が低下する。“入力電源3の電圧>平滑コンデンサ21の端子間電圧”となった際、入力電源3からリアクトル2、パワーモジュール22を介して平滑コンデンサ21に直流電力が供給される。この際、電源回生コンバータ1のパワーモジュール22を構成している整流素子D1~D6には電流が流れる。
[0055]
 図4は、モータ力行時の波形を示すタイムチャートである。図4では、上段側から、電源電圧の線間電圧波形(VR-S,VS―T,VT-R,VS-R,VT-S,VR-T)、R相、T相およびS相に流れる力行電流(Irp,Isp,Itp)、整流素子D1~D6に流れる整流電流(ID1,ID2,ID3,ID4,ID5,ID6)ならびに母線電流IPNの時間変化を示している。図4より、モータ力行時は、以下の動作となる。
[0056]
<R-S線間電圧VR-Sの電位が最大の場合>
 整流素子D1,D4が導通して整流電流ID1,ID4が流れ、プラス方向のR相力行電流Irpと、マイナス方向のS相力行電流Ispとが流れる。
[0057]
<S-T線間電圧VS-Tの電位が最大の場合>
 整流素子D3と整流素子D6が導通して整流電流ID3,ID6が流れ、プラス方向のS相力行電流Ispと、マイナス方向のT相力行電流Itpとが流れる。
[0058]
<T-R線間電圧VT-Rの電位が最大の場合>
 整流素子D2,D5が導通して整流電流ID2,ID5が流れ、プラス方向のT相力行電流Itpと、マイナス方向のR相力行電流Irpとが流れる。
[0059]
<S-R線間電圧VS-Rの電位が最大の場合>
 整流素子D2,D3が導通して整流電流ID2,ID3が流れ、プラス方向のS相力行電流Ispと、マイナス方向のR相力行電流Irpとが流れる。
[0060]
<T-S線間電圧VT-Sの電位が最大の場合>
 整流素子D4,D5が導通して整流電流ID4,ID5が流れ、プラス方向のT相力行電流Itpと、マイナス方向のS相力行電流Ispとが流れる。
[0061]
<R-T線間電圧VR-Tの電位が最大の場合>
 整流素子D1,D6が導通して整流電流ID1,ID6が流れ、プラス方向のR相力行電流Irpと、マイナス方向のT相力行電流Itpとが流れる。
[0062]
 パワーモジュール22内の整流素子D1~D6は、入力電源3の電源周期に対し、1/3の期間だけ導通して整流電流を流している。また、この半分の期間、すなわち入力電源3の電源周期の1/6の期間で、電位が最大となる線間電圧が切り替わるため、導通する整流素子も切り替わる。例えば、時刻t20~t60を見ると、時刻t20~t40では、整流素子D1,D4が導通して整流電流が流れ、時刻t40~t60においては、整流素子D1,D6が導通して整流電流が流れていることが分かる。これに対し、パワーモジュール22のP端子と平滑コンデンサ21との間に流れる母線電流IPNは、整流素子D1,D4,D6に流れる電流を合計した電流が流れていることが分かる。
[0063]
 次に、モータ回生時の電源回生動作について説明する。図5は、モータ回生時の動作を説明する回路図であり、詳細には、モータ回生時に電源回生コンバータ1がスイッチング動作により電源回生動作を行っている際の動作を説明する図である。
[0064]
 モータ回生時、モータ駆動装置4は、交流-直流変換動作を行って、モータ回生電力を平滑コンデンサ21に供給する。この動作によって、平滑コンデンサ21の端子間電圧は上昇する。入力電源3の電源電圧よりも平滑コンデンサ21の端子間電圧が大きくなり、平滑コンデンサ21の端子間電圧と入力電源3の電源電圧との間の電圧差が予め定められた値以上となった際に、パワーモジュール22の回生用スイッチング素子S1~S6のスイッチング動作による電源回生動作を開始すると、平滑コンデンサ21の直流電力は直流-交流変換され、変換された回生電力がリアクトル2を介して入力電源3に供給される。この際、回生用スイッチング素子(図5の例では、回生用スイッチング素子S1,S4)に電流が流れる。
[0065]
 図6は、モータ回生時に電源回生動作を行っているときの波形を示すタイムチャートである。図6では、上段側から、電源電圧の線間電圧波形(VR-S,VS―T,VT-R,VS-R,VT-S,VR-T)、R相、T相およびS相に流れる回生電流(Irr,Isr,Itr)、回生用スイッチング素子S1~S6に流れる回生電流(IS1,IS2,IS3,IS4,IS5,IS6)ならびに母線電流IPNの時間変化を示している。図6より、モータ回生時は、以下の動作となる。
[0066]
<R-S線間電圧VR-Sの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S1,S4が導通して回生電流IS1,IS4が流れ、マイナス方向のR相回生電流Irrと、プラス方向のS相回生電流Isrとが流れる。
[0067]
<S-T線間電圧VS-Tの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S3,S6が導通して回生電流IS3,IS6が流れ、マイナス方向のS相回生電流Isrと、プラス方向のT相回生電流Itrとが流れる。
[0068]
<T-R線間電圧VT-Rの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S2,S5が導通して回生電流IS2,IS5が流れ、マイナス方向のT相回生電流Itrと、プラス方向のR相回生電流Irrとが流れる。
[0069]
<S-R線間電圧VS-Rの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S2,S3が導通して回生電流IS2,IS3が流れ、マイナス方向のS相回生電流Isrと、プラス方向のR相回生電流Irrとが流れる。
[0070]
<T-S線間電圧VT-Sの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S4,S5が導通して回生電流IS4,IS5が流れ、マイナス方向のT相回生電流Itrと、プラス方向のS相回生電流Isrとが流れる。
[0071]
<R-T線間電圧VR-Tの電位が最大の場合>
 回生用スイッチング素子S1,S6が導通して回生電流IS1,IS6が流れ、マイナス方向のR相回生電流Irrと、プラス方向のT相回生電流Itrとが流れる。
[0072]
 パワーモジュール22内の回生用スイッチング素子S1~S6は、入力電源3の電源周期に対し、1/3の期間だけ導通して回生電流を流している。また、この半分の期間、すなわち入力電源3の電源周期の1/6の期間で、電位が最大となる線間電圧が切り替わるため、導通する回生用スイッチング素子も切り替わる。例えば、時刻t20~t60を見ると、時刻t20~t40では、回生用スイッチング素子S1,S4が導通して回生電流が流れ、時刻t40~t60においては、回生用スイッチング素子S1,S6が導通して回生電流が流れていることが分かる。これに対し、パワーモジュール22のP端子と平滑コンデンサ21の間に流れる母線電流IPNは、回生用スイッチング素子S1,S4,S6に流れる電流を合計した電流が流れていることが分かる。
[0073]
 次に、モータ力行時またはモータ回生時に電源回生コンバータ1が供給する電力について説明する。図7は、モータ動作時の挙動を示す波形図であり、横軸には時間をとり、上段側から、モータ速度N、モータトルクTout、モータ出力Pout、平滑コンデンサ21の端子間電圧(以降、「コンデンサ電圧」と称する)VDCおよび母線電流IPNを示している。
[0074]
 まず、図7のt00~t01区間について説明する。この区間は、モータ力行区間である。時刻t00はモータが加速し始めた時刻であり、時刻t01はモータ速度Nが目標速度に到達した時刻である。モータトルクToutにより、モータ速度Nおよびモータ出力Poutが大きくなる。モータ出力Poutが大きくなるにつれて、母線電流IPNが大きくなっている。モータトルクToutが低減してくると、モータ出力Poutが一定になり、母線電流IPNのピーク値も一定になる。
[0075]
 図7のt01~t02区間について説明する。この区間は、モータ速度Nが一定速度になっている区間である。時刻t00~t01区間と違いモータ出力Poutが低い値であるため、母線電流IPNは、ほとんど流れていない状態が示されている。
[0076]
 図7のt02~t03区間について説明する。この区間は、モータ回生区間である。時刻t02はモータが減速し始めた時刻であり、時刻t03はモータが停止した時刻である。モータが減速し始めると、モータの回生電力が平滑コンデンサ21に流れ込み、端子間電圧VDCが上昇する。端子間電圧VDCが予め定められた値を超えると、電源回生コンバータ1は電源回生動作を開始する。電源回生コンバータ1の電源回生動作によって、母線電流IPNに回生電流が流れ、コンデンサ電圧VDCは低減する。時刻t02においては、モータ減速時のモータ出力Pout、すなわちモータの回生電力の絶対値が大きく大きな回生電流が流れるが、モータ速度Nが低減するにつれてモータ出力Poutの絶対値小さくなり、回生電流も小さくなる。
[0077]
 図7より、モータ出力Poutにより母線電流IPNが決定されることが分かる。すなわち、モータ出力Poutと母線電流IPNには比例関係が成り立っている。なお、母線電流IPNとR相電流Ir、S相電流IsおよびT相電流Itとの間には図4および図6を基に説明した関係があり、モータ出力Poutと母線電流IPNとの関係は、モータ出力PoutとR相電流Ir、S相電流IsおよびT相電流Itとの関係と同様に扱うことができる。
[0078]
 次に、モータ力行時またはモータ回生時に電源回生コンバータ1が供給する電力を算出する。モータ5の出力をPout[W]、モータトルクをTout[N・m]、モータ速度をN[r/min]、円周率をπとすると、モータ出力Poutは以下の数式で表すことができる。
[0079]
 Pout=Tout×N/60×2×π…(1)
[0080]
 モータ出力Poutに対し、電源回生コンバータ1が供給する必要がある電力を必要供給電力Pin[w]とし、入力電力に対する出力電力の比、すなわち出力電力/入力電力比の値をηとすると、必要供給電力Pinは以下の数式で表すことができる。
[0081]
 Pin=Pout/η…(2)
[0082]
 また、母線電流IPNの平均値を母線平均電流IPNaveで表すと、母線平均電流IPNave[A]は、コンデンサ電圧VDC[V]を用いて以下の数式で表すことができる。
[0083]
 IPNave=Pin/VDC…(3)
[0084]
 式(2)、式(3)から以下の数式を導き出すことができる。
[0085]
 IPNave=Pout/(η×VDC)…(4)
[0086]
 以上のように、モータ出力Poutから、母線平均電流IPNaveを算出することができる。式(4)の母線平均電流は、図7のモータ力行時およびモータ回生時に流れる母線電流IPNの平均値を表している。式(4)は、モータ出力Poutが大きくなると、R相電流Ir、S相電流Is、t相電流Itおよび母線電流IPNが大きくなり、パワーモジュール22を構成する各パワー素子に流れる電流値も大きくなることを示している。
[0087]
 図8に、モータ力行時の電源1周期あたりに流れる整流電流IDおよび母線電流IPNの波形を示す。上段部が整流電流IDであり、下段部が母線電流IPNである。整流電流IDは、図4と同様に、電源1周期Tに対してT/3だけ整流素子に電流が流れる波形となる。ここで、下段部の波形において、電流波形を正弦半波とみなし、母線電流IPNおよび整流電流IDの電流ピーク値をIDpeak1とすると、以下の数式を導き出すことができる。
[0088]
 IDpeak1=IPNave×π/2…(5)
[0089]
 式(4)、式(5)から以下の数式を導き出すことができる。
[0090]
 IDpeak1=π×Pout/(2×η×VDC)…(6)
[0091]
 図9に、モータ回生時の電源1周期あたりに流れる回生電流ISおよび母線電流IPNの波形を示す。上段部が回生電流ISであり、下段部が母線電流IPNである。回生電流ISは、図6と同様に、電源1周期Tに対してT/3だけ回生用スイッチング素子に電流が流れる波形である。ここで、モータ回生時に流れる実際の電流波形は、入力電源の電源インピーダンスの影響で変化するが、図9のように母線平均電流IPNaveを基準とする回生時電流ピーク値ISpeak1の比率をα(αは1以上の実数)とすると、以下の数式で表すことができる。
[0092]
 ISpeak1=α×IPNave…(7)
[0093]
 式(4)および式(7)から以下の数式を導き出すことができる。
[0094]
 ISpeak1=α×Pout/(η×VDC)…(8)
[0095]
 式(6)および式(8)より、モータ力行時またはモータ回生時に、モータ出力Poutが大きくなると、力行時電流ピーク値IDpeak1または回生時電流ピーク値ISpeak1も大きくなる。この際、パワーモジュール22を構成する各素子に流れる電流も大きくなる。図4および図6からも分かるように、母線電流IPNの電流ピーク値と各素子に流れる電流のピーク値が同じ値になり、モータ出力Poutが大きくなると、電流のピーク値も大きくなる。
[0096]
 電源回生コンバータ1の容量は、前述のように許容連続定格出力容量と、許容最大出力容量とによって決定され、許容連続定格出力容量および許容最大出力容量共にパワーモジュール22の特性によって決定される。
[0097]
 図10に、パワーモジュールを用いた電力変換装置の構成例を示す。パワーモジュールは、熱膨張率の異なる様々な材料で構成される。図10に示す例で説明すると、パワーモジュール22は、放熱を行うための金属ベース板204、回路パターンを有する電力用絶縁基板202、ワイヤ203、そしてパワー素子201によって構成されている。金属ベース板204の上に電力用絶縁基板202がハンダ付け、あるいは金属接合され、パワー素子201は電力用絶縁基板202にハンダ付けされている。電力用絶縁基板202の別の回路パターンとパワー素子201とを接続するため、パワー素子201とワイヤ203はハンダにてボンディングされる。電源回生コンバータ、モータ駆動装置といった電力変換装置は、一般的に発熱するパワーモジュールを冷却するため、ヒートシンクを使用する。金属ベース板204を放熱用のサーマルグリスを介して(図示せず)ヒートシンク200に接して接続させて構成する。パワーモジュール22の各部の温度は、パワー素子201とワイヤ203の接合部の温度をジャンクション温度Tj、金属ベース板204における側面または下面の温度をケース温度Tcと定義して扱うのが一般的である。
[0098]
 パワーモジュールの各部の温度は、(パワー素子の発生電力損失)×(各部の熱抵抗)+(周囲温度)で算出することができる。熱抵抗は、温度の伝えにくさを表す値で、単位時間における発熱量あたりの温度上昇量を意味している。熱抵抗が小さいほど放熱性が良いということを示しており、単位は「℃/W」となる。(パワー素子の発生電力損失)を(電流)、(各部の熱抵抗)を(電気抵抗)、(周囲温度)を(バイアス電圧)に置き換えると、上記熱計算は、電気回路のオームの法則に置き換えることができる。
[0099]
 そのため、前述のようなパワー素子で構成されるパワーモジュールを用いた電力変換装置の熱伝導は、電気回路モデルに置き換えることができ、熱伝導モデルとしての電気回路モデルを用いて各部の温度上昇を算出することが一般的である。
[0100]
 図11に、電力変換装置の熱伝導モデルを示す。図11に示す熱伝導モデルでは、熱源であるパワー素子の電力損失を電流源(以降、「パワー素子電力損失源205」と表記)とみなし、パワー素子電力損失源205のプラス端子からケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-c206、ヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-h207、ヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-a208の順に接続され、ヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-a208の一端が、パワー素子電力損失源205のマイナス端子に接続されている。パワー素子電力損失源205のプラス端子とケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-c206との接続点の温度をジャンクション温度Tj、ケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-c206とヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-h207との接続点の温度をケース温度Tc、ヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-h207とヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-a208との接続点の温度をヒートシンク温度Th、ヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-a208とパワー素子電力損失源205のマイナス端子との接続点の温度を周囲温度Taとみなすことができ、電気回路モデルにおけるオームの法則を用いて、パワー素子で発生した電力損失と、各部の熱抵抗値とから各部の温度を算出することができる。
[0101]
 例えば、パワー素子で発生した電力損失がPpであり、周囲温度Ta、パワー素子のケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-c、パワー素子のヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-h、パワー素子のヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-aとしてパワー素子のジャンクション温度Tjを算出する場合、図11から以下の数式を導きだすことができる。
[0102]
 Tj=(Rj-c+Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta…(9)
[0103]
 パワー素子の発生電力損失に起因するケース温度Tcも式(9)と同様に次式で算出することができる。
[0104]
 Tc=(Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta…(10)
[0105]
 ジャンクション温度Tj、ケース温度Tcの周囲温度Taからの温度上昇値をそれぞれジャンクション温度上昇ΔTjとケース温度上昇ΔTcと定義すると、これらΔTj,ΔTcは、以下の数式で表すことができる。
[0106]
 ΔTj=(Rj-c+Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta-Ta
    =(Rj-c+Rc-h+Rh-a)×Pp  …(11)
 ΔTc=(Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta-Ta
    =(Rc-h+Rh-a)×Pp  …(12)
[0107]
 ジャンクション温度Tjとケース温度Tcの温度差をケース-ジャンクション間温度ΔTj-cと定義すると、以下の数式で表すことができる。
[0108]
 ΔTj-c=Tj-Tc
      =(Rj-c+Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta
       -(Rc-h+Rh-a)×Pp+Ta
      =Rj-c×Pp
      =ΔTj-ΔTc       …(13)
[0109]
 よって、ジャンクション温度上昇ΔTjは、ケース-ジャンクション間温度ΔTj-cおよびケース温度上昇ΔTcを用いて以下の数式で表すことができる。
[0110]
 ΔTj=ΔTj-c+ΔTc
    =Rj-c×Pp+ΔTc…(14)
[0111]
 図10に示す、パワーモジュール22のパワー素子201を導通させ電流を流したときの温度上昇について図12および図13を参照して説明する。図12および図13は、パワーモジュールの温度上昇を示す波形図であり、特に図12は、短時間の温度上昇の様子を示し、図13は長時間の温度上昇の様子を示している。図12および図13共に、上段側から、電力損失Pp、ジャンクション温度上昇ΔTj、ケース温度上昇ΔTcおよびケース-ジャンクション間温度ΔTj-cの時間変化を示している。
[0112]
 図12では、周期t2の期間において、1/3周期の間、パワー素子を導通させて電流を流し、残りの2/3周期は、パワー素子を遮断し電流を遮断するという動作を10サイクル繰り返し行った際の挙動であり、図13は、1/3周期導通させ、2/3周期は遮断するという動作を50000サイクル実施し、残りの50000サイクルはパワー素子の導通を完全に遮断させた場合の挙動を示している。なお、図12および図13において、ケース-ジャンクション間温度ΔTj-cの縦軸のレンジは、ジャンクション温度上昇ΔTjおよびケース温度上昇ΔTcの5倍のレンジにして示している。図12および図13から以下のことが分かる。
[0113]
(1)ジャンクション温度上昇ΔTj、ケース温度上昇ΔTcの順で温度が上昇する。
(2)短時間動作においては、ケース-ジャンクション間温度上昇ΔTj-cの温度上昇に伴い、ジャンクション温度上昇ΔTjは温度が上昇しているのに対し、ケース温度上昇ΔTcはほとんど上昇していない(図12参照)。
(3)長時間動作においては、ケース-ジャンクション間温度上昇ΔTj-cは飽和しているのに対し、ケース温度上昇ΔTcの温度上昇にあわせてジャンクション温度上昇ΔTjも温度が上昇している(図13参照)。
[0114]
 式(9)~式(14)は各部の熱抵抗を一定として扱っている。熱抵抗が一定であれば、温度上昇値は、(パワー素子の発生電力損失)×(熱抵抗)であるため、パワー素子の発生電力損失に比例した波形となるはずであるが、図12および図13をみても分かるように、パワー素子の発生電力損失に比例した波形とはなっていない。これは、各部の熱抵抗値が一定ではなく、電力損失の印加時間にともなって熱抵抗値が変化するためである(以降、この特性を「過渡熱抵抗特性」と称する)。
[0115]
 前述のように、ケース-ジャンクション間温度ΔTj-cは短時間で飽和する。これは、ケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-cが、パワー素子の特性、パワーモジュールの構成により決定される過渡熱抵抗特性であり、短時間で熱抵抗値が一定になる特性であるためである。これに対し、ケース温度上昇ΔTcは温度上昇に長時間を要しているが、これは、ヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-hとヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-aとがヒートシンクの冷却性能により決定される過渡熱抵抗特性であり、熱時定数が長く飽和までに長時間を要するためである。
[0116]
 式(9)~(14)からパワーモジュールの各部の温度上昇を算出できるのは、長時間動作により、各部の熱抵抗が一定とみなせるケースであり、短時間動作の場合の各部の温度上昇は、式(9)~(14)で算出した値よりも小さくなる。
[0117]
 ところで、前述のような電力変換装置に用いられるパワーモジュールは、前述のような熱膨張係数の違いによる温度変化により、異種金属接合部に応力歪が生じ、この応力の繰り返しにより、やがては疲労破壊に至る。そのため、パワーモジュールには、温度変化による熱ストレスで発生する疲労寿命、すなわち熱ストレス寿命が存在する。パワーモジュールの熱ストレス寿命の判定には、一般的に、ケース温度上昇ΔTcおよびジャンクション温度上昇ΔTjが用いられる。
[0118]
 パワー素子に電流が流れると、パワー素子は発熱し、ケース温度上昇ΔTcおよびジャンクション温度上昇ΔTjは共に上昇する。図12および図13を見ても分かるように、一般的に、パワーモジュールを用いる電力変換装置は、ケース温度上昇ΔTcに対してジャンクション温度上昇ΔTjは短時間で温度上昇をする。そのため、短時間でパワー素子に過大な電流の導通および遮断が繰り返されると、ケース温度上昇ΔTcの変化は少ないが、ジャンクション温度上昇ΔTjのみ大きく変動する。これはケース-ジャンクション間温度ΔTj-cの温度上昇が大きくなるためである。短時間でジャンクション温度Tjが大きく変動するケースにおける寿命はパワーサイクル寿命と称されるが、このパワーサイクル寿命は、ジャンクション温度の変化であるジャンクション温度上昇ΔTjを用いてサイクル数が規定されることが一般的である。
[0119]
 パワーサイクル寿命の対語として、サーマルサイクル寿命と称される寿命がある。サーマルサイクル寿命とは、長時間の動作で、ケース-ジャンクション間温度Tj-cがほぼ一定で飽和した状態となり、ケース温度Tcとジャンクション温度Tjとの温度差が少なく、ケース温度Tcが上昇するケースでの寿命を示すものである。そのため、サーマルサイクル寿命はケース温度の変化であるΔTcを用いてサイクル数が規定されることが一般的である。また、サーマルサイクル寿命は、パワーモジュールを用いる電力変換装置の冷却性能に大きく依存している。
[0120]
 前述のようにパワーサイクル寿命は、前述のように短時間動作の寿命を示すものであり、電源回生コンバータにおいては、許容最大出力を決定するものである。そのため、パワーサイクル寿命の確保は、パワー素子の許容最大電流値Imaxによって規定することができる。
[0121]
 一方、サーマルサイクル寿命は、前述のように長時間動作の寿命を示すものであり、電源回生コンバータにおいては、許容連続定格出力を決定するものである。そのため、サーマルサイクル寿命の確保は、パワーモジュールの許容最大ケース温度上昇ΔTcmaxによって規定することができる。
[0122]
 前述の考え方を電源回生コンバータ1に当てはめると以下の通りである。電源回生コンバータ1の許容連続定格出力容量はパワーモジュール22の許容最大ケース温度上昇ΔTcmaxにより決定され、電源回生コンバータ1の許容最大出力容量はパワーモジュール22の許容最大電流値Imaxにより決定される。そのため、許容連続定格出力容量は、許容最大ケース温度上昇Tcmax以下となるように、モータの定常的動作を満足させる必要がある。一方、許容最大出力容量は、パワーモジュール22のパワー素子の許容最大電流値Imax以下となるように、モータの最大出力を抑制する必要がある。
[0123]
 次に、パワーモジュール22の温度上昇の原理について説明する。図4および図6に示されるように、電源回生コンバータ1内のパワーモジュール22を構成する各パワー素子は、入力電源3の電源周期に対し、1/3の期間だけ導通して電流を流す。ここで、モータ力行時に、各整流素子に流れる電流をID[A]、各整流素子の順電圧をVF[V]とすると、各整流素子の発生損失PD[W]は以下の数式で表すことができる。なお、120度通電方式の電源回生コンバータの場合、導通損失と比較してスイッチング損失の影響は軽微であるため無視するものとする。
[0124]
 PD=ID×VF…(15)
[0125]
 パワーモジュール22において、各整流素子のケース-ジャンクション間の熱抵抗をRd(j-c)[℃/W]、ケース温度をTdc[℃]とすると、整流素子のジャンクション温度Tdj[℃]は以下の数式で表すことができる。
[0126]
 Tdj=PD×Rd(j-c)+Tdc…(16)
[0127]
 式(15)および式(16)から以下の数式を導き出すことができる。
[0128]
 Tdj=ID×VF×Rd(j-c)+Tdc…(17)
[0129]
 式(17)よりケース温度-ジャンクション間温度ΔTdj-c[K]は、以下の数式で表すことができる。
[0130]
 ΔTdj-c=Tdj-Tdc
       =ID×VF×Rd(j-c)…(18)
[0131]
 次に、モータ回生時の回生用スイッチング素子の温度上昇について説明する。モータ回生時に、スイッチング動作により回生電流が流れる場合、各回生用スイッチング素子に電流が流れる期間は、入力電源3の電源周期に対し、1/3の期間だけである。モータ回生時に、回生用スイッチング素子に流れる電流をIS[A]、回生用スイッチング素子の飽和電圧をVce(sat)[V]とすると、各回生用スイッチング素子の発生損失PS[W]は以下の数式で表すことができる。なお、120度通電方式の電源回生コンバータの場合、導通損失と比較してスイッチング損失の影響は軽微であるため無視するものとする。
[0132]
 PS=IS×Vce(sat)…(19)
[0133]
 パワーモジュール22において、各回生用スイッチング素子のケース-ジャンクション間の熱抵抗をRs(j-c)[℃/W]、ケース温度をTsc[℃]とすると、回生用スイッチング素子のジャンクション温度Tsj[℃]は以下の数式で表すことができる。
[0134]
 Tsj=PS×Rs(j-c)+Tsc…(20)
[0135]
 よって、式(20)に式(19)を代入することで以下の数式を導き出すことができる。
[0136]
 Tsj=IS×Vce(sat)×Rs(j-c)+Tsc…(21)
[0137]
 式(21)よりケース-ジャンクション間温度ΔTsj-c[K]は以下の数式で表すことができる。
[0138]
 ΔTSj-c=Tsj-Tsc
       =IS×Vce(sat)×Rs(j-c)…(22)
[0139]
 前述のようにパワーモジュール22の構成するパワー素子に短時間で過大な電流が流れると、ケース温度上昇ΔTcの上昇に対し、ジャンクション温度上昇ΔTjの上昇が大きくなり、ジャンクション温度上昇ΔTjが過大になる。これは、ケース-ジャンクション間温度ΔTj-cが過大になるということと等価である。このような場合、パワーサイクル寿命に起因する寿命劣化が想定され、パワーモジュール22が想定よりも早く破損する可能性がある。
[0140]
 ところで、整流素子の順電圧VFおよびケース-ジャンクション間熱抵抗Rd(j-c)、回生用スイッチング素子の飽和電圧Vce(sat)およびケース-ジャンクション間熱抵抗Rs(j-c)は、パワーモジュール22の電気的特性および構造により、予め既知のものであるため、式(18)と式(22)とから、力行動作時および回生動作時におけるパワーモジュール22の許容最大電流を算出することができる。
[0141]
 次に、過負荷検出部28について説明する。過負荷検出部28は、母線電流検出部23の出力信号である母線電流IPNに基づいて、電源回生コンバータ1が過負荷であるか否かを検出する。図14に過負荷検出部28の一構成例を示す。
[0142]
 過負荷検出部28は、図14に示すように、比較器29、比較器30および論理和回路31を備えて構成される。比較器29のマイナス入力端子には母線電流上限値IPNmaxが入力され、比較器29のプラス入力端子には母線電流IPNが入力される。また、比較器30のプラス入力端子には母線電流下限値IPNminが入力され、比較器30のマイナス入力端子には母線電流IPNが入力される。比較器29および比較器30の各出力信号は論理和回路31の入力端子に入力され、論理和回路31の出力信号を過負荷検出部28の出力信号として扱う。ここで、過負荷検出部28が“論理1”もしくは“論理H”(以下単に「H」と表記)を出力した場合、電源回生コンバータ1が過負荷状態であると判定し、過負荷検出部28が“論理0”もしくは“論理L”(以下単に「L」と表記)を出力した場合、電源回生コンバータ1は過負荷状態ではないと判定する。
[0143]
 母線電流上限値IPNmaxは、前述の式(18)に基づいて決定され、力行動作時の許容最大電流値と等価である。母線電流下限値IPNminは、前述の式(22)に基づいて決定され、回生動作時の許容最大電流値の符号をマイナスにしたものと等価である。
[0144]
 前述の構成より、母線電流IPNが、母線電流上限値IPNmax以上となった場合、比較器29はHを出力し、論理和回路31にHが入力される。これにより論理和回路31はHを出力し、過負荷検出部28はHを出力する。また、母線電流IPNが、母線電流下限値IPNmin以下となった場合、比較器30はHを出力し、論理和回路31にHが入力される。これにより論理和回路31はHを出力し、過負荷検出部28はHを出力する。
[0145]
 図4および図6をみても分かるように、前述の母線電流IPNを監視することで、モータ力行時またはモータ回生時に関わらず、パワーモジュール22を構成する各素子に流れる電流を監視することができる。前述の過負荷検出部28は母線電流IPNを監視するように構成されており、電源回生コンバータ1が過負荷状態であるか否かを判定することができる。パワーモジュール22の力行時許容電流をIPNmax、回生時許容電流をIPNminとし、IPN≧IPNmaxあるいはIPN≦IPNminとなったら過負荷検出部28がHを出力し、過負荷状態となったものと判定する。
[0146]
 以上のように、実施の形態1に係るモータ制御装置では、母線電流IPNを監視することで、モータ力行時、モータ回生時の電流値を監視し、パワーモジュール22の許容最大電流値以下で電源回生コンバータ1が動作しているか否かを判定する、すなわち電源回生コンバータ1が瞬時過負荷状態であるか否かを判定するようにしている。
[0147]
 実施の形態1の構成であれば、電流検出手段を母線電流検出のみに設ければよいため、前述の従来技術と比較して電流検出手段の個数を削減でき、コスト面で優位になる。一般的に、電源回生コンバータは、入力電源から電源回生コンバータに入力される入力電流を監視し、入力電流-直流電流変換手段を備える必要があるが、本実施の形態では直流電流を検出する構成であるため、入力電流-直流電流変換手段は不要となり、システムを簡易化することができる。なお、電源回生動作の停止処理の詳細については後述する。
[0148]
 また、実施の形態1に係るモータ制御装置は、電源回生コンバータ1に用いられているパワーモジュール22のパワーサイクル寿命に基づいて構成されており、モータ出力Poutが想定を超える過大な出力で動作した場合の検出に適している。なお、IPNmaxおよびIPNminは前述の式(18)および式(22)に基づいて決定しているが、マージンを確保するために1以下の正の実数を乗算して式(18)および式(22)で算出される値よりも小さい値にしてもよい。
[0149]
 以上説明したように、実施の形態1に係るモータ制御装置によれば、システムを複雑化することなく、電源回生コンバータの過負荷を検出することができると共に、電流検出手段の削減と入力電流-交流電流変換手段の削減による省部品化による低コストかつ信頼性の高い電源回生コンバータを実現することができる。
[0150]
実施の形態2.
 図15は、実施の形態2に係る電源回生コンバータを含むモータ制御装置を示すブロック図である。なお、図15では、図1に示した実施の形態1に係る構成要素と同一または同等である構成要素には同一の符号を付している。ここでは、実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。図15において、実施の形態2に係る電源回生コンバータでは、図1に示した構成において、過負荷検出部28に代えて過負荷検出部28Aが設けられている。
[0151]
 過負荷検出部28Aについて説明する。過負荷検出部28Aは、モータ5の連続的動作が、電源回生コンバータ1の許容連続定格出力容量を超えた場合に定常時過負荷状態を判定する機能を備え、この判定機能をパワーモジュール22のサーマルサイクル寿命に基づいて構成している。
[0152]
 図16は過負荷検出部28Aの構成例を示すブロック図である。過負荷検出部28Aは、図16に示すように、絶対値算出部32、フィルタ部33および比較器34を備えて構成される。
[0153]
 過負荷検出部28Aでは、母線電流検出部25によって検出された母線電流IPNが絶対値算出部32に入力される。絶対値算出部32は、母線電流絶対値|IPN|を算出する。算出された母線電流絶対値|IPN|はフィルタ部33に入力される。フィルタ部33は、母線平均電流絶対値|IPNave|を算出する。算出された母線平均電流絶対値|IPNave|は比較器34のプラス端子に入力される。比較器34のマイナス端子には閾平均電流絶対値|Irefave|が入力されており、母線平均電流絶対値|IPNave|と閾平均電流絶対値|Irefave|との大小関係を表す信号が比較器34の出力信号となり、比較器34の出力信号が過負荷検出部28Aの出力信号となる。
[0154]
 フィルタ部33は、前述のように、母線電流絶対値|IPN|から母線平均電流絶対値|IPNave|を算出する機能を備えているが、この機能は移動平均フィルタまたはIIRフィルタによって実現することができる。
[0155]
 次に、過負荷検出部28Aの動作について説明する。過負荷検出部28Aは、母線電流検出部25によって検出された母線電流IPNに基づいて、電源回生コンバータ1が過負荷であるか否かを検出する。前述の構成により、母線平均電流絶対値|IPNave|が閾平均電流絶対値|Irefave|以上となった場合、比較器34はHを出力するため、過負荷検出部28AはHを出力する。
[0156]
 前述の式(3)から分かるように、母線平均電流IPNaveおよびコンデンサ電圧VDCを基に電源回生コンバータ1がモータ駆動装置4に供給する電力Pinを算出することができる。また、式(3)より、電源回生コンバータ1がモータ駆動装置4に供給する電力Pinを変化させないとき、コンデンサ電圧VDCが大きければ、母線平均電流IPNaveを小さくすることができる。一方、電源回生コンバータ1の動作の場合、パワーモジュール22を構成するパワー素子のスイッチング動作回数は少なく、導通時間が長いという特徴がある。よって、電源回生コンバータ1におけるパワーモジュール22の発生損失は、導通損失が支配的であり、導通損失への関与が高い母線平均電流IPNaveが支配的である。そのため、コンデンサ電圧VDCとして想定される最低電圧の場合に基づいて算出される母線平均電流IPNaveを用いる。
[0157]
 次に、フィルタ部33について説明する。フィルタ部33は、前述のように、母線電流絶対値|IPN|から母線平均電流絶対値|IPNave|を算出する機能を備えており、この機能は、移動平均フィルタまたはIIRフィルタによって構成することができる。ここでは、1次遅れのIIRフィルタを想定する。IIRフィルタで構成するフィルタ部33の伝達関数をG1(s)とすると、伝達関数G1(s)は、sをラプラス演算子、時定数ts1として、以下の数式で表すことができる。
[0158]
 G1(s)=1/(ts1×s+1)…(23)
[0159]
 また、電源回生コンバータ1の許容連続定格出力容量をPinave、平滑コンデンサ21の端子間最小電圧をVDCminとすると、許容母線電流平均値Iavemaxは、以下の数式で表すことができる。
[0160]
 Iavemax=Pinave/VDCmin…(24)
[0161]
 前述のように、電源回生コンバータ1の許容連続定格出力容量は、パワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcが、許容最大ケース温度上昇ΔTcmax以下となるようなモータの定常的動作でなければならない。
[0162]
 次に、電源回生コンバータ1に用いられるパワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcの温度上昇について説明する。前述のようにパワーモジュールを用いた電力変換装置では、ジャンクション温度Tj、ケース温度Tcの順で上昇し、ヒートシンクの冷却性能でジャンクション温度Tjおよびケース温度Tcの飽和温度が決定される。ヒートシンクの冷却性能が高ければ、熱時定数は長くなり、ケース温度Tcは上昇しにくくなり、ジャンクション温度Tj、ケース温度Tc共に飽和温度は低くなる。
[0163]
 ところで、ヒートシンクの冷却性能は、電力変換装置の設計段階および性能評価段階で把握することが可能である。また、ケース-ジャンクション間熱抵抗R(j-c)についても設計段階で把握することが可能である。そのため、パワーモジュール22の発生損失とヒートシンクの冷却性能から、モータ長時間動作時におけるパワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcを算出することが可能となる。
[0164]
 図17には、パワー素子の発生損失Pとケース温度ΔTcの関係を示している。図17において、上段部には、ステップ的に変化する発生損失Pの波形が示されている。下段部には、パワー素子の発生損失Pがステップ的に変化した場合のケース温度上昇ΔTcを示している。図17からも分かるように、ケース温度上昇ΔTcの変化特性は、数次の遅れフィルタ(例えばIIRフィルタ)に近いものになっている。
[0165]
 図17に示したパワー素子の発生損失Pとケース温度上昇ΔTcの関係を示した図より、パワー素子の発生損失P(s)を入力、ケース温度上昇ΔTc(s)を出力とするときの伝達特性を1次遅れ系の伝達特性を持つ数式で近似する。ラプラス演算子をs、正の実数である換算定数をα、時定数をtc1として、ケース温度上昇ΔTcを以下の数式で表す。
[0166]
 ΔTc(s)=α/(1+s×tc1)×P(s)…(25)
[0167]
 上記式(25)における換算定数αはパワー素子の発生損失Pが一定であった場合に飽和するケース温度上昇値Tcmから算出したもので、以下の数式で表すことができる。
[0168]
 α=Tcm/P…(26)
[0169]
 パワー素子の発生平均損失をPaveとすると、式(26)から、ケース温度上昇値ΔTcは以下の数式で表すことができる。
[0170]
 ΔTc=α×Pave…(27)
[0171]
 前述のように設計段階および製品評価段階において、式(25)に示すような熱時定数および換算定数に基づいた伝達特性を使用し、さらにパワー素子のPaveを検出すればケース温度上昇ΔTcを算出することができる。
[0172]
 パワーモジュール22のパワー素子の発生損失Pは、式(15)および式(19)を見ても分かるように、パワー素子に流れる電流から算出することが可能である。パワーモジュール22のパワー素子である整流素子および回生用スイッチング素子の発生損失を時間tの関数で表すためにPD(t)、PS(t)と表記する。
[0173]
 整流素子に流れる電流をID(t)とすると、整流素子の発生損失PD(t)は、式(15)を用いて以下の数式で表すことができる。
[0174]
 PD(t)=VF×ID(t)…(28)
[0175]
 同様に、回生用スイッチング素子に流れる電流をIS(t)とすると、回生用スイッチング素子の発生損失PS(t)は、式(19)を用いて以下の数式で表すことができる。
[0176]
 PS(t)=Vce(sat)×IS(t)…(29)
[0177]
 式(28)および式(29)をそれぞれラプラス変換すると、以下の数式で表すことができる。
[0178]
 PD(s)=VF×ID(s)…(30)
 PS(s)=Vce(sat)×IS(s)…(31)
[0179]
 式(30)を式(25)に入力することで、以下に示す数式を導き出すことができる。
[0180]
 ΔTdc(s)=α/(1+s×tc1)×VF×ID(s)…(32)
[0181]
 上記(32)式を用いれば、整流素子で発生する損失に起因するケース温度上昇ΔTdcを算出することができる。
[0182]
 また、式(31)を式(25)に入力することで、以下に示す数式を導き出すことができる。
[0183]
 ΔTsc(s)=α/(1+s×tc1)×Vce(sat)×IS(s)…(33)
[0184]
 上記(33)式を用いれば、回生用スイッチング素子で発生する損失に起因するケース温度上昇ΔTscを算出することができる。
[0185]
 ところで、長時間動作時におけるパワーモジュールの温度上昇は、平均発生損失から算出することが一般的であり、また、平均発生損失は、各パワー素子に流れる電流の平均値、すなわち平均電流を用いて算出することが一般的である。整流素子に流れる平均電流をIDave、回生用スイッチング素子に流れる平均電流をISaveとすると、時定数tc1よりも十分に長い、長時間動作におけるケース温度上昇ΔTdc,ΔTscは、それぞれ以下の数式で表すことができる。
[0186]
 ΔTdc=α×VF×IDave…(34)
 ΔTsc=α×Vce(sat)×ISave…(35)
[0187]
 また、式(32)~式(35)により、以下の数式を導き出すことができる。
[0188]
 IDave(s)=ID(s)/(1+s×tc1)…(36)
 ISave(s)=IS(s)/(1+s×tc1)…(37)
[0189]
 式(36)および式(37)は、ヒートシンクの冷却性能に基づいて算出された時定数tc1の1次遅れフィルタによって、整流素子に流れる平均電流IDave(s)および回生用スイッチング素子に流れる平均電流ISave(s)のそれぞれが算出できることを示している。
[0190]
 前述の式(32)および式(33)により、整流素子に流れる整流電流IDや回生用スイッチング素子に流れる回生電流ISから整流素子の発生電力損失に起因するケース温度上昇ΔTdcや、回生用スイッチング素子の発生電力損失に起因するケース温度上昇ΔTscを算出することができる。
[0191]
 しかしながら、本実施の形態では、母線電流IPNのみ検出しているため、式(32)~式(37)をそのまま使用することはできない。そこで、母線電流IPNと、ケース温度上昇ΔTcとの関係について検討する。
[0192]
 図4および図6から、各整流素子および各回生用スイッチング素子の導通期間は、母線電流IPNの1/3となっている。母線平均電流IPNaveは、式(3)より算出されているが、各整流素子の平均電流IDaveおよび各回生用スイッチング素子の平均電流ISaveは、それぞれ以下の数式で表すことができる。
[0193]
 IDave=1/3×IPNave
      =1/3×Pout/(η×VDC)…(38)
 ISave=1/3×IPNave
      =1/3×Pout/(η×VDC)…(39)
[0194]
 式(38)および式(39)から整流素子の平均損失PDaveおよび回生用スイッチング素子の平均損失PSaveは、それぞれ以下の数式で表すことができる。
[0195]
 PDave=1/3×IPNave×VF…(40)
 PSave=1/3×IPNave×Vce(sat)…(41)
[0196]
 前述した式(27)より、パワー素子の発生平均損失Paveが分かれば、ケース温度上昇値ΔTcを算出することができる。
[0197]
 まず、式(27)および式(40)から、整流素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTdcは、以下の数式で推定することができる。
[0198]
 ΔTdc=α×PDave
     =α×1/3×IPNave×VF…(42)
[0199]
 また、式(27)および式(41)から、回生用スイッチング素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTscは、以下の数式で推定することができる。
[0200]
 ΔTsc=α×PSave
     =α×1/3×IPNave×Vce(sat)…(43)
[0201]
 式(42)には母線平均電流IPNaveが含まれており、式(42)を用いて整流素子に起因するケース温度上昇値ΔTdcを推定することができる。また、式(43)にも母線平均電流IPNaveが含まれており、式(43)を用いて回生用スイッチング素子に起因するケース温度上昇値ΔTscを推定することができる。すなわち、前述の入力電流を検出せずとも母線電流IPNを検出することで、整流素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTdcおよび回生用スイッチング素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTscの推定が可能となる。
[0202]
 また、ヒートシンクの冷却性能に基づいて算出された時定数tc1の1次遅れフィルタおよび母線電流IPNを用いて、母線平均電流IPNaveは以下の数式で表される。
[0203]
 IPNave(s)=IPN(s)/(1+s×tc1)…(44)
[0204]
 式(42)および式(43)から、整流素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTdcは、以下の数式で表すことができる。
[0205]
 ΔTdc(s)=α×1/3×IPNave(s)×VF…(45)
[0206]
 また、式(42)および式(44)から、回生用スイッチング素子の損失に起因するケース温度上昇値ΔTscは、以下の数式で表すことができる。
[0207]
 ΔTsc(s)=α×1/3×IPNave(s)×Vce(sat)…(46)
[0208]
 図18は、整流素子に電流が流れたときのケース温度上昇ΔTdcを示す波形図である。図18では、上段部から、母線電流IPN、整流電流ID、ケース温度上昇ΔTdcの順に示している。また、図18の下段部では、ケース温度上昇ΔTdcを実線で示し、式(45)に基づいて算出したケース温度上昇推定値ΔTdceを破線で示している。
[0209]
 図18の下段部において、実際のケース温度上昇ΔTdcとケース温度上昇推定値ΔTdceとは、中心値はほぼ一致している。このことから、母線電流IPNを検出することでもケース温度上昇ΔTdcを精度よく算出することが可能となる。なお、ここでは、整流素子に電流が流れた場合を図示しているが、回生用スイッチング素子の場合でも同様の結果になる。
[0210]
 図16に戻り、過負荷検出部28Aの動作を再度説明する。フィルタ部33の伝達関数は式(23)で示す通り、時定数ts1の1次遅れフィルタで表されるが、この時定数ts1は、電源回生コンバータ1で使用されるヒートシンクの冷却性能に基づいて算出した値を用いればよい。また、図16において、比較器34のマイナス端子に入力される閾平均電流絶対値Irefaveは、予め式(42)および式(43)に基づいて算出した値を用いればよい。
[0211]
 図16に示す過負荷検出部28Aでは、絶対値算出部32により母線電流IPNの絶対値である母線電流絶対値|IPN|を算出し、|IPN|に基づいて定常時過負荷検出を行っている。
[0212]
 前述のように、電源回生コンバータ1は、力行動作時は整流素子D1~D6の何れかに電流を流し、回生動作時は回生用スイッチング素子S1~S6の何れかに電流を流す。力行動作時、母線電流IPNは、パワーモジュール22のP端子から平滑コンデンサ21を介し、パワーモジュール22のN端子に向かう向きの電流が流れる。これに対し、回生動作時では、母線電流IPNは、パワーモジュール22のN端子から平滑コンデンサ21を介し、パワーモジュール22のP端子に向かう向きの電流が流れる。実施の形態1,2のように、母線電流検出部25をパワーモジュール22のP端子と平滑コンデンサ21との間に配置した場合、力行動作と回生動作とで母線電流IPNの流れる方向が変わる。
[0213]
 力行動作時は整流素子D1~D6が発熱し、回生動作時は回生用スイッチング素子S1~S6が発熱するため、検出された母線電流IPNに基づいて、ケース温度上昇ΔTdc,ΔTscをそれぞれ求める方法も考えられる。しかしながら、一般的にパワーモジュールは、回生用スイッチング素子と整流素子とが密接して配置されており、回生用スイッチング素子と整流素子との間には熱干渉が存在する。例えば、力行動作により整流素子だけでなく回生用スイッチング素子の温度も上昇し、回生動作により回生用スイッチング素子だけでなく整流素子の温度も上昇する。そのため、実施の形態2において、過負荷検出部28Aは、母線電流IPNが流れた場合、電流の流れる方向によらず、整流素子と回生用スイッチング素子が共に発熱し温度上昇が発生するものとして母線電流絶対値|IPN|を用いて構成している。
[0214]
 母線電流絶対値|IPN|を用いることで、パワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcを推定すると共に、モータ5の連続的動作を監視することができる。
[0215]
 実施の形態2は、母線電流IPNを監視することで、パワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcが許容ケース温度上昇値以内におさまるように、モータ5が動作しているか否かを判定する、すなわち電源回生コンバータ1が定常時過負荷状態であるか否かを判定するようにしている。
[0216]
 実施の形態2であれば、実施の形態1と同様に、電流検出手段を母線電流検出のみに設ければよいため、前述の従来技術と比較して電流検出手段の個数を削減でき、コスト面で優位になる。入力電流-直流電流変換手段も不要となり、システムを簡易化することができる。
[0217]
 実施の形態2は、電源回生コンバータ1に用いられているパワーモジュール22のサーマルサイクル寿命に基づいて構成されており、モータ5の連続的動作が、想定を超える動作をした場合の検出に適している。閾平均電流絶対値Irefaveは、前述の式(42)および式(43)に基づいて決定しているが、マージンを確保するために式(42)および式(43)で算出される値よりも小さな値にしてもよい。
[0218]
 また、実施の形態1で示した瞬時過負荷検出に適した過負荷検出部28と、実施の形態2で示した定常時過負荷検出に適した過負荷検出部28Aを組み合せて、瞬時過負荷検出および定常時過負荷検出の何れも検出できる過負荷検出部を構成してもよい。
[0219]
実施の形態3.
 図19は、実施の形態3に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図19では図1(実施の形態1)または図15(実施の形態2)に示した構成要素と同一または同等である構成要素には同一の符号を付している。図19は、図1または図15と同様の構成であるが、PN母線電圧検出部23、電源位相検出部24、ベース駆動信号生成部26および回生制御部27の図示は省略する一方で、モータ駆動装置4の内部にモータ制御部4Aを追加している。
[0220]
 モータ制御部4Aは、モータ5に任意の交流電力を供給し、モータ5を可変速制御する機能を備える。電源回生コンバータ1内の過負荷検出部28の出力は、通信経路37を介してモータ制御部4Aに入力される構成である。なお、図19では、実施の形態1で説明した過負荷検出部28、すなわち瞬時過負荷状態を判定する機能を備えた過負荷検出部28を用いているが、実施の形態2で説明した過負荷検出部28A、すなわち定常時過負荷状態を判定する機能を備えた過負荷検出部28Aに置き換えてもよいし、瞬時過負荷状態の判定機能および定常時過負荷状態の判定機能の双方を備えた過負荷検出部を用いて構成してもよい。
[0221]
 母線電流検出部25は、パワーモジュール22のP端子、平滑コンデンサ21、パワーモジュール22のN端子間に流れる母線電流IPNを検出し、検出した母線電流IPNの検出値を過負荷検出部28に入力する。過負荷検出部28は、母線電流IPNに基づいて電源回生コンバータ1の過負荷状態を判定する。電源回生コンバータ1が過負荷状態であると判定され、過負荷検出部28がHを出力した場合、モータ制御部4Aは、モータ5の出力を低下させるように交流電力を制御する。
[0222]
 モータ5の出力を低下させるための手法として、以下の手法が例示される。
(i)予めモータ動作指令で定められたトルク指令よりも制限されたトルク指令でモータ5を動作するように制御する
(ii)予めモータ動作指令で定められた回転指令よりも制限された回転指令でモータ5を動作するように制御する
(iii)モータ5をフリーランさせるように制御する。具体的には、モータ駆動装置4の内部に設けられる図示しないスイッチング素子をオンオフ制御するスイッチング動作を停止させ、モータ5がフリーな状態にする。
[0223]
 次に、実施の形態3に係るモータ制御装置の動作について、図19および図20を参照して説明する。図20は、実施の形態3に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、図20では、符号の表記を省略している。
[0224]
 母線電流検出部25は、前述のように母線電流IPNを検出する(ステップS101)。過負荷検出部28は、母線電流IPNに基づき、電源回生コンバータ1が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS102)。過負荷検出部28は、通信経路37により判定結果をモータ駆動装置4内部のモータ制御部4Aに通知する(ステップS103)。以上のステップS101~S103の処理が電源回生コンバータ1の処理であり、電源回生コンバータ1は、ステップS101~S103の処理を繰り返し実行する。
[0225]
 モータ制御部4Aは、過負荷検出部28の判定結果を受信する(ステップS104)。モータ制御部4Aは、受信した判定結果に基づき、電源回生コンバータ1が過負荷状態であるか否か判定する(ステップS105)。受信した判定結果が過負荷状態である旨を表す信号(実施の形態3の例では“H”の信号)の場合(ステップS105,Yes)、モータ5の出力が制限されるようにモータ駆動装置4からのモータ出力を制限し(ステップS106)、モータ出力を制限した交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS107)。なお、受信した判定結果が過負荷状態ではない旨を表す信号(実施の形態3の例では“L”の信号)の場合(ステップS105,No)、ステップS106の処理を行わずにステップS107に移行する。すなわち、受信した判定結果が過負荷状態ではない場合、モータ5の出力を制限せずに、通常の制御動作における交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS107)。以上のステップS104~S107の処理がモータ制御部4Aの処理であり、モータ制御部4Aは、ステップS104~S107の処理を繰り返し実行する。
[0226]
 実施の形態3によれば、モータ5の動作が想定を超える動作を行い、電源回生コンバータ1が過負荷状態であった場合でも、モータ駆動装置4がモータ5の出力を低下させるように交流電力を制御するため、電源回生コンバータ1の過負荷状態を解消することができ、電源回生コンバータ1の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。そのため、容量の小さい電源回生コンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
[0227]
実施の形態4.
 図21は、実施の形態4に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図21では、図19に示した実施の形態3の構成において、上位制御装置100、モータ駆動装置400およびモータ5に代えたモータ500が追加されている。上位制御装置100は、通信経路38a,38bを介してモータ駆動装置4,400にモータ動作指令を出力する機能を備え、モータ駆動装置4,400のそれぞれにモータ動作指令を出力している。電源回生コンバータ1内の過負荷検出部28の出力は、通信経路37を介して上位制御装置100に入力される。モータ駆動装置400は、直流電源端子19,20とモータ制御部400Aを備え、直流電源端子19,20はモータ駆動装置4の直流電源端子17,18と接続され、電源回生コンバータ1内の平滑コンデンサ21とも接続される。モータ制御部400Aは、モータ500に任意の交流電力を供給し可変速制御を行う。なお、図21では、瞬時過負荷検出に適した過負荷検出部28としているが、過負荷検出部28を定常時過負荷検出に適した過負荷検出部28A(実施の形態2、図16)に置き換えてもよいし、瞬時過負荷検出および定常時過負荷検出の双方の機能を備えた過負荷検出部を用いて構成してもよい。
[0228]
 母線電流検出部25は、パワーモジュール22のP端子、平滑コンデンサ21、パワーモジュール22のN端子間に流れる母線電流IPNを検出し、検出した母線電流IPNの検出値を過負荷検出部28に入力する。過負荷検出部28は、母線電流IPNに基づいて電源回生コンバータ1の過負荷状態を判定する。電源回生コンバータ1が過負荷状態であると判定されると、過負荷状態である旨の信号Hが、通信経路37を介して上位制御装置100に通知される。上位制御装置100は、モータ駆動装置4のモータ制御部4Aおよびモータ駆動装置400のモータ制御部400Aの少なくとも1つに対し、対応する通信経路38a,38bの双方もしくは何れか一方を使用して、制御対象であるモータの出力を制限したモータ動作指令を生成するように指示する。モータ制御部4Aおよびモータ制御部400Aのうちの少なくとも1つは、受信したモータ動作指令に基づいて、モータ5またはモータ500の出力を低下させるように交流電力を制御する。
[0229]
 以下、具体的な例を挙げて説明する。ここでは、スピンドルモータとサーボモータを備えた工作機械を例にとり、モータ5がスピンドルモータであり、モータ500がサーボモータであるとする。なお、上位制御装置100は、工作機械に設けられていてもよいし、工作機械に設けられていなくてもよい。
[0230]
(i)上位制御装置100は、スピンドルモータであるモータ5の出力を低下させるモータ動作指令をモータ制御部4Aに出力する。
(ii)上位制御装置100は、サイクルタイムを長くしないようにするため、スピンドルモータであるモータ5と比較して、加減速時間が短いサーボモータであるモータ500の出力を制限することを決定する。上位制御装置100は、スピンドルモータであるモータ5の出力は維持し、サーボモータであるモータ500の出力を制限するモータ動作指令をモータ制御部4Aおよびモータ制御部400Aに出力する。
[0231]
 次に、実施の形態4に係るモータ制御装置の動作について、図21および図22を参照して説明する。図22は、実施の形態4に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、図22では、符号の表記を省略している。
[0232]
 母線電流検出部25は、前述のように母線電流IPNを検出する(ステップS201)。過負荷検出部28は、母線電流IPNに基づき、電源回生コンバータ1が過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS202)。過負荷検出部28は、通信経路37により判定結果を上位制御装置100に通知する(ステップS203)。以上のステップS201~S203の処理が電源回生コンバータ1の処理であり、電源回生コンバータ1は、ステップS201~S203の処理を繰り返し実行する。
[0233]
 上位制御装置100は、過負荷検出部28の判定結果を受信する(ステップS204)。上位制御装置100は、受信した判定結果に基づき、電源回生コンバータ1が過負荷状態であるか否か判定する(ステップS205)。受信した判定結果が過負荷状態である旨を表す信号(実施の形態4の例では“H”の信号)の場合(ステップS205,Yes)、モータ5およびモータ500のうちの少なくとも1つの出力を制限することを決定し(ステップS206)、制御対象であるモータを駆動するモータ制御装置に対してモータ出力を制限したモータ動作指令を出力する(ステップS207)。なお、受信した判定結果が過負荷状態ではない旨を表す信号(実施の形態4の例では“L”の信号)の場合(ステップS205,No)、ステップS206の処理を行わずにステップS207に移行する。すなわち、受信した判定結果が過負荷状態ではない場合、モータ5およびモータ500に対する出力制限は行わず、通常のモータ動作指令を出力する(ステップS207)。以上のステップS204~S207の処理が上位制御装置100の処理であり、上位制御装置100は、ステップS204~S207の処理を繰り返し実行する。
[0234]
 モータ駆動装置4のモータ制御部4Aおよびモータ駆動装置400のモータ制御部400Aは、上位制御装置100からのモータ動作指令を受信し(ステップS208)、受信したモータ動作指令に応じた交流電力がモータ5およびモータ500に出力されるように動作する(ステップS209)。以上のステップS208,S209の処理がモータ制御部4A,400Aの処理であり、モータ制御部4A,400Aは、ステップS208,S209の処理を繰り返し実行する。
[0235]
 実施の形態4によれば、モータ5およびモータ500の動作が想定を超える動作を行い、電源回生コンバータ1が過負荷状態であった場合でも、上位制御装置100がモータ5およびモータ500のうちの少なくとも1つの出力を制限するモータ動作指令を該当するモータ制御装置に出力し、当該モータ制御装置が制御対象のモータ出力を低下させるように交流電力を制御するため、電源回生コンバータ1の過負荷状態を解消することができ、電源回生コンバータ1の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。また、工作機械のような複数のモータを使用する産業機械においては、サイクルタイムが長くなるのを防ぐように、モータ動作指令を出力することで、サイクルタイムを維持しながら、電源回生コンバータ1の過負荷状態を解消することができる。そのため、容量の小さい電源回生コンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
[0236]
実施の形態5.
 図23は、実施の形態5に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図23では、図21に示した実施の形態4の構成と同一もしくは同等であるが、電源回生コンバータ1の内部にコンバータ制御部1Aを追加し、コンバータ制御部1Aの内部に過負荷検出部28Bを設けている。過負荷検出部28Bは、前述したように瞬時過負荷検出および定常時過負荷検出の双方の機能を備えた過負荷検出部である。また、上位制御装置100、モータ駆動装置400、モータ駆動装置4および電源回生コンバータ1の通信経路をデイジーチェーン接続している。具体的には、電源回生コンバータ1のコンバータ制御部1Aとモータ駆動装置4のモータ制御部4Aとの間は通信経路37で接続し、モータ駆動装置4のモータ制御部4Aとモータ駆動装置400のモータ制御部400Aとの間は通信経路39aで接続し、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aと上位制御装置100との間は通信経路39bで接続している。このように構成されたモータ制御装置では、例えば、上位制御装置100からモータ駆動装置4に対し出力されるモータ動作指令は、モータ駆動装置400のモータ制御部400Aを介してモータ駆動装置4のモータ制御部4Aに入力されることになる。
[0237]
 前述のような産業機械において、瞬時過負荷状態は、複数のモータが大出力で動作するケースが一般的である。ここで、複数のサーボモータとスピンドルモータによって構成される工作機械を例にとる。スピンドルモータをモータ5、サーボモータをモータ500として考える。工作機械においては、複数のサーボモータとスピンドルモータが同時加速動作や同時減速動作を行う運転があり、サーボモータやスピンドルモータがそれぞれ最大出力で動作すると、上記のような同時加減速動作において各モータの最大出力が重なり、電源回生コンバータが供給する電力が大きくなる。
[0238]
 また、上記のような同時加減速動作が起こると、パワーモジュール22に短時間に過大な電流が流れ続けることになる。パワーモジュール22に短時間に過大な電流が流れ続けると、パワーモジュール22のパワーサイクル寿命によりパワーモジュール22の寿命劣化が急速に進むことになる。
[0239]
 ところで、工作機械では、サーボモータと比較してスピンドルモータの出力が大きいのが一般的である。このため、電源回生コンバータが各モータ駆動装置に供給する電力は、スピンドルモータ駆動装置が占める割合が大きくなる。上記のような同時加減速動作の場合、上位制御装置100を介さずにスピンドルモータであるモータ5の出力を低減させることで、パワーモジュール22に流れる電流を素早く低減させることができる。
[0240]
 一方、定常時過負荷状態は、パワーモジュール22に過大な電流が流れるというよりは、運転サイクルが厳しく、パワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcが厳しいケースである。このようなケースにおいては、運転サイクルの見直しが必須であり、上位制御装置100を介して、スピンドルモータであるモータ5またはサーボモータであるモータ500、あるいは両者に対するモータ動作指令の見直しにより、長時間動作におけるモータ平均出力の総和の低減を図るのが適している。
[0241]
 次に、実施の形態5に係るモータ制御装置の動作について、図23および図24の図面を参照して説明する。図24は、実施の形態5に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
[0242]
 母線電流検出部25は、前述のように母線電流IPNを検出する(ステップS301)。過負荷検出部28Bは、母線電流IPNに基づき、電源回生コンバータ1が瞬時過負荷状態であるか、定常時過負荷状態であるか、あるいは異常なしであるかを判定する(ステップS302)。過負荷検出部28Bは、通信経路37により判定結果をモータ制御部4Aに通知する(ステップS303)。以上のステップS301~S303の処理が電源回生コンバータ1の処理であり、電源回生コンバータ1は、ステップS301~S303の処理を繰り返し実行する。
[0243]
 モータ制御部4Aは、過負荷検出部28Bの判定結果を受信する(ステップS304)。過負荷検出部28Bは、受信した判定結果に基づき、電源回生コンバータ1が瞬時過負荷状態であるか否かを判定する(ステップS305)。受信した判定結果が過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS305,Yes)、モータ5の出力が制限されるようにモータ駆動装置4からのモータ出力を制限し(ステップS306)、モータ出力を制限した交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS307)。なお、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない旨を表す信号の場合(ステップS305,No)、ステップS306の処理を行わずにステップS307に移行する。すなわち、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない場合、モータ5の出力を制限せずに、通常の制御動作における交流電力をモータ5に対し出力する(ステップS307)。なお、モータ制御部4Aは、過負荷検出部28Bの判定結果をモータ制御部400Aに通知する(ステップS308)。以上のステップS304~S308の処理がモータ制御部4Aの処理であり、モータ制御部4Aは、ステップS304~S308の処理を繰り返し実行する。
[0244]
 モータ制御部400Aは、通信経路39aにより過負荷検出部28Bの判定結果をモータ制御部4Aから受信し(ステップS309)、当該判定結果を通信経路39bにより上位制御装置100に通知する(ステップS310)。以上のステップS309,S310の処理がモータ制御部400Aの処理であり、モータ制御部400Aは、ステップS309,S310の処理を繰り返し実行する。
[0245]
 上位制御装置100は、過負荷検出部28Bの判定結果をモータ制御部400Aから受信する(ステップS311)。上位制御装置100は、受信した判定結果に基づき、電源回生コンバータ1が瞬時過負荷状態であるか否か判定する(ステップS312)。受信した判定結果が瞬時過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS312,Yes)、モータ500の出力を制限することを決定し(ステップS313)、モータ500を制御するモータ制御部400Aに対してモータ出力を制限したモータ動作指令を出力する(ステップS316)。一方、受信した判定結果が瞬時過負荷状態ではない旨の信号の場合(ステップS312,No)、さらに電源回生コンバータ1が定常時過負荷状態であるか否か判定する(ステップS314)。受信した判定結果が定常時過負荷状態である旨を表す信号の場合(ステップS314,Yes)、各軸の運転サイクルの変更を決定し(ステップS315)、モータ500を制御するモータ制御部400Aに対して、モータ500の平均出力を抑制するように変更されたモータ動作指令を出力する(ステップS316)。なお、受信した判定結果が定常時過負荷状態ではない旨の信号の場合(ステップS314,No)、ステップS315の処理を行わずにステップS316に移行する。以上のステップS311~S316の処理が上位制御装置100の処理であり、上位制御装置100は、ステップS311~S316の処理を繰り返し実行する。
[0246]
 以上の制御を要約すると以下の通りである。まず、瞬時過負荷状態と判定された場合、上位制御装置100を介さずにモータ制御部4Aにてモータ出力を制限するようにモータ5に対し交流電力を出力する。この制御と並行して、モータ制御部400Aおよび上位制御装置100に対し、瞬時過負荷状態であることを通知する。上位制御装置100は、判定結果に基づき、モータ500のモータ動作の出力を制限するように、モータ500に対するモータ動作指令を生成し、モータ駆動装置400に出力する。モータ駆動装置4では、一旦、モータ5の出力を制限して瞬時過負荷状態を回避し、その後、上位制御装置100にて改めてモータ動作指令の見直しを図る。
[0247]
 一方、定常時過負荷状態と判定された場合、モータ制御部4Aは、上位制御装置100から出力されたモータ動作指令に基づいた動作指令を続け、これと並行して、モータ制御部400Aおよび上位制御装置100に対し、定常時過負荷状態であることを通知する。上位制御装置100は、判定結果に基づき、モータ500のモータ動作における平均出力を制限するようにモータ動作指令を生成し、モータ駆動装置400に出力する。
[0248]
 なお、上記の説明では、瞬時過負荷状態と判定された場合にモータ5に対する出力制限を行い、定常時過負荷状態と判定された場合にモータ500に対する出力制限を行うように説明したが、瞬時過負荷状態と判定された場合にモータ5およびモータ500の双方に対する出力制限を行ってもよい。また、定常時過負荷状態と判定された場合にモータ5およびモータ500の双方に対する出力制限を行ってもよい。
[0249]
 また、過負荷検出部28Bにより、瞬時過負荷状態の検出と、定常時過負荷状態の検出をそれぞれ行うことができるが、過負荷状態の通知方法については、それぞれ過負荷検出専用の通信ラインを設けてもよいし、シリアル通信等で過負荷状態を通知する方式でもよい。
[0250]
 実施の形態5によれば、電源回生コンバータ1が瞬時過負荷状態である場合には、すばやくモータ出力を低減させることができる。また、電源回生コンバータ1が定常時過負荷状態である場合には、上位制御装置100から各モータ駆動装置に出力されるモータ動作指令の見直しにより厳しい運転サイクルを改善し、パワーモジュール22のケース温度上昇ΔTcを低減させることができる。これらの制御により、電源回生コンバータ1の寿命劣化、破損といった悪影響をシステム停止させることなく解消することができる。また、工作機械のような複数のモータを使用する産業機械においては、サイクルタイムが長くなるのを防ぐように、モータ動作指令を出力することで、サイクルタイムを維持しながら、電源回生コンバータ1の過負荷状態を解消することができる。そのため、容量の小さい電源回生コンバータを選定することができ、産業機械の低コスト化に寄与することができる。
[0251]
実施の形態6.
 図25は、実施の形態6に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図25では、図1に示した実施の形態1の構成要素と同一または同等である構成要素には同一の符号を付している。ここでは、実施の形態6に関わる部分を中心に説明する。図25において、実施の形態6に係る電源回生コンバータでは、図1に示した構成において、回生制御部27に代えて回生制御部27Aが設けられている。
[0252]
 回生制御部27Aについて説明する。図26は、回生制御部27Aの構成例を示すブロック図である。回生制御部27Aは、図26に示すように、回生開始判定部60、回生停止判定部61、論理和回路62およびNPNトランジスタ63を備えて構成される。
[0253]
 回生制御部27Aでは、PN母線電圧検出部23によって検出された母線電圧VPNが回生開始判定部60に入力され、母線電流検出部23によって検出された母線電流IPNが回生停止判定部61に入力される。回生開始判定部60および回生停止判定部61の各出力信号は論理和回路62に入力され、論理和回路62の回生オン信号Ronが、NPNトランジスタ63のベース端子に印加される。NPNトランジスタ63のコレクタ端子には、ベース駆動信号生成部26の出力であるベース駆動信号が入力され、NPNトランジスタ63のエミッタ端子は、パワーモジュール22を駆動する駆動回路(図示せず)に入力される。
[0254]
 次に、回生開始判定部60および回生停止判定部61の構成および動作について説明する。
[0255]
 まず、回生開始判定部60は、母線電圧VPNに基づいて回生動作を開始するか否かを判定する機能を備える。回生開始判定部60は、減算器64および比較器65を備えて構成される。減算器64のプラス端子には母線電圧VPNが入力され、減算器64のマイナス端子には入力電源3の電源電圧に基づいた基準電圧Vrefが入力される。減算器64は、母線電圧VPNと基準電圧Vrefの差分である差電圧ΔVを算出する。差電圧ΔVは、比較器65のプラス端子に入力される。比較器65のマイナス端子には閾電圧Voが入力されており、差電圧ΔVと閾電圧Voとの大小関係を表す信号が比較器65の出力信号となり、比較器65の出力信号が回生開始判定部60の出力信号となる。
[0256]
 前述の構成により、差電圧ΔVが閾電圧Vo以上となった場合、比較器65はHを出力するため、回生開始判定部60はHを出力する。回生開始判定部60がHを出力することは、母線電圧VPNが基準電圧Vrefより閾電圧Vo以上となったら、回生動作を開始するということを意味している。なお、本構成の場合、回生動作の開始後において、すぐに差電圧ΔV<閾電圧Voの関係となってしまう。そのため、比較器64にヒステリシス機能を持たせたり、比較器65の出力にワンショットトリガ回路を持たせたり、回生動作開始後、しばらくの期間は、回生動作が続くようにする構成とする。また、基準電圧Vrefについては、入力電源3から入力電源電圧を検出して生成する手法、PN母線電圧検出部23の出力信号である母線電圧VPNに基づいて生成する手法などがあるが、何れの手法も公知であり、ここでの詳細な説明は省略する。
[0257]
 回生停止判定部61は、母線電流IPNに基づいて回生動作を停止するか否かを判定する機能を備える。回生停止判定部61は、比較器66を備えて構成される。比較器66のプラス端子には閾電流Irefが入力され、比較器66のマイナス端子には母線電流IPNが入力される。閾電流Irefと母線電流IPNとの大小関係を表す信号が比較器66の出力信号となり、比較器66の出力信号が回生停止判定部61の出力信号となる。
[0258]
 前述の構成により、母線電流IPNが閾電流Iref以下となった場合、比較器66はHを出力するため、回生停止判定部61はHを出力する。
[0259]
 次に、回生制御部27Aの動作について説明する。前述のように論理和回路62には、回生開始判定部60および回生停止判定部61の各出力信号が入力される。何れかの信号がHの場合、論理和回路62はHを出力する。論理和回路62がHを出力すると、NPNトランジスタ63がオンし、ベース駆動信号がパワーモジュール22の駆動回路に入力され、パワーモジュール22の各スイッチング素子がベース駆動信号に基づいてオンまたはオフ動作を行い、回生動作を行う。一方、論理和回路62がLを出力すると、NPNトランジスタ63がオフし、パワーモジュール22の駆動回路に供給されていたベース駆動信号が遮断され、パワーモジュール22の各スイッチング素子はすべてオフとなり、回生動作を停止する。前述の構成から、回生開始判定部60と回生停止判定部61のどちらかがHを出力している限りにおいて、論理和回路62はHを出力する。すなわち、回生開始判定部60および回生停止判定部61のうちの少なくとも一方がHを出力すれば、回生動作を継続し、回生開始判定部60および回生停止判定部61の双方がLを出力すれば、回生動作が停止する。
[0260]
 ところで、母線電流IPNは、前述のように力行時は正の方向に電流が流れ、回生時は負の方向に電流が流れる。モータ5の回生エネルギーが減少してくると、回生電流が低下、すなわち母線電流IPNも低下していく。そして、コンデンサ電圧VDCが低下し、やがて入力電源3の電源電圧>コンデンサ電圧VDCとなり、母線電流IPNは正の方向に電流が流れ始める。そのため、回生エネルギーの減少を検出するため、図26の構成では、回生停止判定部61の閾電流Irefを正の値に設定する。
[0261]
 図27は、モータ5が減速動作を行った際の挙動を示す要部波形図である。図27では、横軸には時間をとり、上段側から、モータ出力Pout、コンデンサ電圧VDC、母線電流IPNおよび回生オン信号Ronの各波形を示している。
[0262]
 モータ5が減速を開始すると、コンデンサ電圧VDCが上昇する。回生開始判定部60によりVDCが閾値を超えると、回生開始判定部60はHを出力し、回生オン信号RonはHを出力する。これにより、回生制御部27Aからパワーモジュール22の駆動回路にベース駆動信号が出力され、電源回生動作が開始され、母線電流IPNに負の向きの回生電流が流れる。モータ出力Poutが減少、すなわちモータ5の回生エネルギーが減少してくると、回生電流は低下し、やがて入力電源3の電源電圧>VDCとなり、母線電流IPNに正の電流、すなわち力行電流が流れ始める。母線電流IPNに流れる電流がIrefよりも大きくなると、回生停止判定部61はLを出力、すなわち回生オン信号RonはLの出力となり、回生動作を停止する。
[0263]
 実施の形態6によれば、パワーモジュール22と平滑コンデンサ21との間に流れる母線電流を監視し、母線電流の流れる方向(正の電流、負の電流)に基づいて回生動作の停止を判断することで、入力電流を監視せずとも電源回生コンバータ1としての動作を実現することができる。これにより、電流検出手段の個数の削減と共に、入力電流-直流電流変換手段も不要となり、低コストかつ簡易な構成で回生制御を実現することができる。
[0264]
実施の形態7.
 図28は、実施の形態7に係るモータ制御装置を示すブロック図である。図28では、図25に示した実施の形態6の構成要素と同一または同等である構成要素には同一の符号を付している。ここでは、実施の形態7に関わる部分を中心に説明する。図28において、実施の形態7に係る電源回生コンバータでは、図25に示した構成において、回生制御部27Aに代えて回生制御部27Bが設けられている。
[0265]
 実施の形態6では、パワーモジュール22と平滑コンデンサ21との間に流れる母線電流の流れる方向に基づいて回生動作の停止を判断しているが、入力電源3の電源事情または入力電源3の電源インピーダンスによっては、モータ5の回生エネルギーがまだ大きい状態でも回生動作を停止してしまうことが予想される。
[0266]
 図29~図34は、電源インピーダンスの変化による回生動作時の挙動を説明するための要部波形図である。回生動作時の挙動は、電源インピーダンスのインダクタンスの影響を受け易い。そこで、Lをインダクタンス成分の基本成分とし、Linを電源インピーダンスのインダクタンス成分とするとき、電源インピーダンスのインダクタンス成分Linの値を変化させたときの挙動について考察する。
[0267]
 図29~図34のうち、図29は電源インピーダンスのインダクタンス成分Lin=0.2×Lのときの波形図であり、上段部からR-S線間電圧VR-S、回生用スイッチング素子S1を駆動するためのベース駆動信号、すなわちS相上アームベース駆動信号SRP、回生用スイッチング素子S2を駆動するためのベース駆動信号、すなわちS相下アームベース駆動信号SRNおよびR相電流Irを示している。また、図30は、図29に示したR相電流Irを拡大した波形図である。図31~図34も同様であり、図31は電源インピーダンスのインダクタンス成分Lin=1×Lのときの波形図であり、図32は図31に示されるR相電流Irの拡大波形図である。また、図33は電源インピーダンスのインダクタンス成分Lin=5×Lのときの波形図であり、図34は図33に示されるR相電流Irの拡大波形図である。
[0268]
 モータ5を減速させる際に発生する回生電力により、コンデンサ電圧VDCが上昇する。回生制御部27Aの動作により回生動作が開始され、各回生用スイッチング素子を駆動する駆動回路にベース駆動信号が入力される。ベース駆動信号SRP,SSN(SSNは図29,31,33では不図示)により、スイッチング素子S1,S4がオンすると、負のR相電流Irが流れる。前述のように、図29および図30は、電源インピーダンスが低い(Lin=0.2×L)場合の波形であり、電流が流れやすい状態であるため、例えばベース駆動信号SRPがHを出力している間、回生電流が流れたあとに力行電流が流れている(図30の破線円部を参照)。これに対し、図31および図32、ならびに、図33および図34は回生用スイッチング素子S1,S4がオンしている間は、力行電流は流れていない。これらのことから、電源インピーダンスが低い場合、回生動作中にも関わらず力行電流が流れることが分かる。なお、図29~図34では、R相電流Irのみを示しているが、S相電流IsおよびT相電流Itも同様の波形になる。
[0269]
 実施の形態7では、電源インピーダンスに影響されず、モータ5の回生エネルギー減少後に確実に回生動作の停止を行うことができる回生制御を実現するため、回生制御部27Bを適用する。図35は、回生制御部27Bの構成例を示すブロック図である。図26に示す回生制御部27Aのブロック図と比較して、回生停止判定部61を回生停止判定部61Bに置き換えている。
[0270]
 回生停止判定部61Bは、比較器66、フィルタ部67、比較器68および論理和回路69を備えて構成される。比較器66のプラス端子には閾電流Irefが入力され、比較器66のマイナス端子には母線電流IPNが入力される。母線電流IPNはフィルタ部67に入力され、母線平均電流IPNaveを算出する。比較器68のプラス端子には閾電流Iaverefが入力され、比較器68のマイナス端子にはフィルタ部67の出力である母線平均電流IPNaveが入力される。比較器66および比較器68の各出力は論理和回路69に入力され、論理和回路69の出力信号が回生停止判定部61Bの出力信号となる。
[0271]
 フィルタ部67は、移動平均フィルタまたはIIRローパスフィルタ等によって構成され、高周波のリップル成分、ノイズ成分を除去し、母線電流IPNの平均化処理を行う。
[0272]
 回生停止判定部61Bでは、母線電流IPNと、母線平均電流IPNaveに基づいて回生動作を停止するか否かを判定する。回生停止判定部61Bの構成によれば、母線電流IPNが閾電流Irefより大きくなっても、母線平均電流IPNaveが閾電流Iaverefより大きくなければ、論理和回路69はHを出力するので、回生動作を停止しない仕組みとなっている。また、母線平均電流IPNaveが閾電流Iaverefを超えても、母線電流IPNが閾電流Irefを超えていなければ、論理和回路69はHを出力するので回生動作を停止しない。逆に見れば、母線電流IPNが閾電流Irefを超え、且つ、母線平均電流IPNaveが閾電流Iaverefを超えた場合のみ回生動作を停止する。
[0273]
 実施の形態7では、母線平均電流IPNaveを回生停止の判定条件に加えたことで、図29および図30、ならびに、後述する図39に示すような、電源インピーダンスが低く、モータ減速中にも関わらず力行電流が流れやすい場合でも、モータ5の減速中は回生動作を継続し、モータ5の回生エネルギーが0に近づいてからでも回生動作を停止することができる。
[0274]
 図36~図38は、実施の形態7で適用した回生制御部27Bを用いた場合の電源インピーダンスの変化による回生動作時の挙動を示した図である。図36~図38のうち、図36は電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが0.2×Lの場合の要部の波形図であり、図37は電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが1×Lの場合の各部の波形図であり、図38は電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが5×Lの場合の各部の波形図である。何れの図面においても、上段側から、モータ出力Pout、母線電圧VDC、母線電流IPN、母線平均電流IPNaveおよび回生オン信号Ronの各波形を示している。
[0275]
 また、図39~図41は、実施の形態6で適用した回生制御部27Aを用いた場合の電源インピーダンスの変化による回生動作時の挙動を比較例として示した図である。何れの図面も図36~図38と同様であり、電源インピーダンスのインダクタンス成分Linが、0.2×L、1×Lおよび5×Lの順で示している。
[0276]
 回生制御部27Aを用いた場合、図40および図41に示す波形では見られないが、図39に示す波形では、電源インピーダンスが低い影響で、回生動作の動作中において、母線電流IPNに正の電流が流れてしまう区間が存在する。この電流が閾電流Irefよりも大きくなると、回生オン信号RonはLとなり、回生動作が停止する。このとき、モータ5は減速を続けているため、コンデンサ電圧VDCは上昇し、回生オン信号RonはHとなり、回生動作を再開する。すなわち、モータ5が減速している間、回生動作のオンオフを繰り返していることが分かる。
[0277]
 これに対し、回生制御部27Bを用いた場合、図36に示す電源インピーダンスが低い場合においても、図37および図38に示す場合と同様に、モータ出力Poutが0に近づいてから回生オン信号RonがLを出力し、回生動作を停止していることが分かる。また、コンデンサ電圧VDCがばたつくこともなく、安定した回生動作が継続していることが分かる。
[0278]
 以上のことから、電源インピーダンスが比較的大きく、電源インピーダンスの影響を受けにくい場合には、実施の形態6で適用した回生制御部27Aを採用することで、低コストかつ回路規模の小さい電源回生コンバータの実現が可能となる。一方、電源インピーダンスが比較的小さく、電源インピーダンスの影響を無視できない場合には、実施の形態7で適用した回生制御部27Bを採用することで、信頼性の高い電源回生コンバータの実現が可能となる。
[0279]
 以上説明したように、実施の形態7によれば、母線電流IPNだけでなく母線平均電流IPNaveを回生動作の停止判断に使用することで、電源インピーダンスの影響を受けずにモータ減速中は回生動作を継続し、回生エネルギーが大きく減少してから回生動作を確実に停止することができる。これにより、電流検出手段の個数の削減と共に、入力電流-直流電流変換手段も不要で低コストかつ簡易な構成で回生制御を実現することが可能となる。
[0280]
 なお、以上の実施の形態1~7に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
[0281]
1 電源回生コンバータ、1A コンバータ制御部、2 リアクトル、3 入力電源、4,400 モータ駆動装置、4A,400A モータ制御部、5,500 モータ、11,12,13 交流電源端子、17,18,19,20 直流電源端子、21 平滑コンデンサ、22 パワーモジュール、23 PN母線電圧検出部、24 電源位相検出部、25 母線電流検出部、26 ベース駆動信号生成部、27,27A,27B 回生制御部、28,28A,28B 過負荷検出部、29,30,34,65,66,68 比較器、31,62,69 論理和回路、32 絶対値算出部、33,67 フィルタ部、37,38a,38b,39a,39b 通信経路、60 回生開始判定部、61,61B 回生停止判定部、63 NPNトランジスタ、64 減算器、70P P母線、70N N母線、80P,80N 電気的接続点、100 上位制御装置、200 ヒートシンク、201 パワー素子、202 電力用絶縁基板、203 ワイヤ、204 金属ベース板、205 パワー素子電力損失源、206 ケース-ジャンクション間熱抵抗Rj-c、207 ヒートシンク-ケース間熱抵抗Rc-h、208 ヒートシンク-周囲温度間熱抵抗Rh-a、D1~D6 整流素子、S1~S6 回生用スイッチング素子、P パワーモジュール22のP端子(直流電源端子)、N パワーモジュール22のN端子(直流電源端子)。

請求の範囲

[請求項1]
 入力電源とモータを可変速制御するモータ駆動装置との間に配置され、前記モータ駆動装置に直流電力を供給すると共に、モータ減速時の回生電力を前記入力電源に戻す機能を備える電源回生コンバータにおいて、
 交流電源端子および直流電源端子を有すると共に、複数の整流素子および複数の回生用スイッチング素子を有して構成されるパワーモジュールと、
 前記直流電源端子に接続され、交流直流変換動作時の直流電力を蓄積する平滑コンデンサと、
 前記パワーモジュールの直流電源端子と前記平滑コンデンサとの間に流れる母線電流を検出する母線電流検出部と、
 前記平滑コンデンサの端子間電圧を検出するPN母線電圧検出部と、
 前記入力電源の位相を検出する電源位相検出部と、
 前記電源位相検出部が検出した電源位相に基づいて前記回生用スイッチング素子のオンオフ制御を行うベース駆動信号を生成するベース駆動信号生成部と、
 前記母線電流検出部の検出結果と、前記ベース駆動信号と、前記PN母線電圧検出部の検出結果に基づいて、電源回生動作の開始処理および停止処理を行う回生制御部と、
 前記母線電流検出部の検出結果に基づいて、前記電源回生コンバータの過負荷を検出する過負荷検出部と、
 を備えたことを特徴とする電源回生コンバータ。
[請求項2]
 前記過負荷検出部は、前記母線電流検出部の検出結果に基づいて前記電源回生コンバータが瞬時過負荷状態であるか否か、定常時過負荷状態であるか否かの少なくとも1つを判定し、当該判定結果を、前記モータ駆動装置または前記モータ駆動装置にモータ動作指令を出力する上位制御装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の電源回生コンバータ。
[請求項3]
 前記過負荷検出部は、前記母線電流検出部の検出結果が、予め定められた許容母線電流下限値より大きく許容母線電流上限値より小さい場合は、前記電源回生コンバータは瞬時過負状態で動作していないと判定し、許容母線電流下限値以下、または許容母線電流上限値以上となった場合は、前記電源回生コンバータは瞬時過負荷状態で動作していると判定することを特徴とする請求項2に記載の電源回生コンバータ。
[請求項4]
 前記過負荷検出部は、
 前記母線電流検出部の検出結果に基づいて、検出結果の絶対値を算出する母線電流絶対値算出部と、
 前記母線電流絶対値算出部を入力し平均化するフィルタ部と、
 を有して構成され、
 前記フィルタ部の出力結果が、予め定められた許容母線電流絶対値以上となった場合は、前記電源回生コンバータは定常時過負荷状態で動作していると判定することを特徴とする請求項2に記載の電源回生コンバータ。
[請求項5]
 前記フィルタ部は、数次のIIRフィルタまたはFIRフィルタで構成されることを特徴とする請求項4に記載の電源回生コンバータ。
[請求項6]
 前記回生制御部は、電源回生動作中において、前記母線電流検出部が検出した母線電流が予め定められた閾値を超えた場合に、電源回生動作を停止するか否かを判定する回生停止判定部を備えたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電源回生コンバータ。
[請求項7]
 前記回生停止判定部は、電源回生動作中において、前記母線電流検出部が検出した母線電流が予め定められた閾値を超え、かつ、前記母線電流の検出値の平均化処理を行った母線平均電流が予め定められた閾値を超えた場合に、電源回生動作を停止することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電源回生コンバータ。
[請求項8]
 前記平均化処理は、数次のIIRフィルタまたはFIRフィルタで実施することを特徴とする請求項7に記載の電源回生コンバータ。
[請求項9]
 請求項1から8の何れか1項に記載の電源回生コンバータと、前記電源回生コンバータから直流電力の供給を受けてモータを可変速制御するモータ駆動装置と、を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
[請求項10]
 前記モータ駆動装置は、前記モータのトルクを制限することによって前記モータの出力を制限することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項11]
 前記モータ駆動装置は、前記モータの回転速度を制限することによって前記モータの出力を制限することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項12]
 前記モータ駆動装置は、前記モータがフリーランするように制御することによって前記モータの出力を制限することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項13]
 前記モータ駆動装置は、前記過負荷検出部の判定結果が過負荷であると判定された場合は、前記上位制御装置から出力された前記モータ動作指令よりも前記モータの出力を制限するモータ動作となるように前記モータの可変速制御を行うことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項14]
 前記過負荷検出部の判定結果が過負荷であると判定された場合は、前記モータの出力を制限するモータ動作となるようにモータ動作指令を変更し、前記上位制御装置を介して前記モータ駆動装置に出力するように制御することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項15]
 前記上位制御装置、前記モータ駆動装置および前記電源回生コンバータの順で通信経路がデイジーチェーン接続され、前記過負荷検出部が瞬時過負荷状態を検出し、前記過負荷検出部から前記モータ駆動装置に判定結果が通知されると、前記モータ駆動装置は、前記上位制御装置から出力された前記モータ動作指令よりも前記モータの出力を制限するモータ動作となるように、前記モータの可変速制御を行うと共に、前記上位制御装置に前記過負荷検出部の判定結果を通知し、前記上位制御装置は当該判定結果を受信し、瞬時過負荷状態であった場合には前記モータの出力を制限するモータ動作となるようにモータ動作指令を変更し、前記モータ駆動装置に出力するように制御することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項16]
 前記上位制御装置、前記モータ駆動装置および前記電源回生コンバータの順で通信経路がデイジーチェーン接続され、前記過負荷検出部が定常時過負荷状態を検出し、前記過負荷検出部から前記モータ駆動装置に判定結果が通知されると、前記モータ駆動装置は、前記上位制御装置から出力された前記モータ動作指令に基づいてモータの可変速制御を行うと共に、前記上位制御装置に前記過負荷検出部の判定結果を通知し、前記上位制御装置は当該判定結果を受信し、定常過負荷状態であった場合、前記モータの平均出力を抑制するように運転サイクルを変更し、前記モータ駆動装置に出力するように制御することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項17]
 前記モータは、工作機械に具備されるサーボモータとスピンドルモータであり、
 前記過負荷検出部の判定結果が過負荷であると判定された場合、前記モータ駆動装置は、前記上位制御装置から出力されるモータ動作指令よりも出力を制限するモータ動作となるように前記スピンドルモータの可変速制御を行うことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。
[請求項18]
 前記モータは、工作機械に具備されるサーボモータとスピンドルモータであり、
 前記過負荷検出部の判定結果が過負荷であると判定された場合、前記上位制御装置は、前記サーボモータの出力を制限するようにモータ動作指令を変更し、前記サーボモータを駆動するモータ駆動装置にモータ動作指令を出力することを特徴とする請求項9に記載のモータ制御装置。

図面

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