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1. (WO2016039367) NOVEL PHARMACEUTICAL COMPOSITION FOR URINARY INCONTINENCE PREVENTION AND/OR TREATMENT
Document

明 細 書

発明の名称 尿失禁予防用及び/又は治療用新規医薬組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014  

先行技術文献

特許文献

0015  

非特許文献

0016  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0017  

課題を解決するための手段

0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040  

実施例

0041   0042   0043  

産業上の利用可能性

0044   0045  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 尿失禁予防用及び/又は治療用新規医薬組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、骨格筋の速筋型トロポニン活性化作用を有する化合物の尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物としての新規な医薬用途に関する。

背景技術

[0002]
 尿失禁とは、尿の不随意の漏れがあって、他覚的に認められ、社会的または衛生的にこれらが問題となる状態である(J. Clin. Pharm. Ther., 25(4), 251-263 (2000))。尿失禁の代表的なものとしては、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、及びそれらが混在している混合型尿失禁が知られている。
[0003]
 尿失禁の最も一般的なタイプは腹圧性尿失禁であり、尿失禁を発症している女性の約50%が腹圧性尿失禁であることが知られている(Int. Urogynecol. J., 11(5), 301-319 (2000))。腹圧性尿失禁とは、咳、くしゃみ、運動などに伴う腹圧上昇時に、膀胱が収縮しないのにもかかわらず、不随意に尿が漏れ出てしまう疾患をいう。腹圧性尿失禁の原因は、主に二つに分けられる。一つは、膀胱頸部・尿道過可動性によるもので、骨盤底筋弛緩に基づく膀胱頸部下垂により腹圧の尿道への伝動が不良となり、腹圧上昇時に尿道内圧の上昇を伴わず、膀胱内圧が上昇し尿が漏れるものである。他の一つは、内因性の尿道括約筋不全による括約筋機能の低下により、腹圧上昇時に尿が漏れるものである。腹圧性尿失禁の発症には、加齢や出産による骨盤底筋の脆弱化や尿道機能の低下が関与している可能性が高い。特に、妊娠や経膣出産による骨盤の外傷は持続的な腹圧性尿失禁発症の危険因子として知られ、初産後5年間での腹圧性尿失禁罹患率は約30%と報告されている(Neurourol Urodyn., 21(1), 2-29 (2002))。
[0004]
 切迫性尿失禁とは、急に起こる、抑えられないような強い尿意で我慢することが困難な愁訴(尿意切迫感)の直後に不随意に尿が漏れるという疾患である。混合型尿失禁とは、複数の尿失禁を併発している状態であり、多くは切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁を発症している。
[0005]
 尿失禁は、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)に大きな影響を与える。その症状を気にする患者の活動範囲を制限し、社会的な孤立や孤独感を感じさせることになる。
[0006]
 腹圧性尿失禁に治療効果のある薬剤として、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害作用を有する薬剤(SNRI)や選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害作用を有する薬剤(NRI)などが報告されている。咳、くしゃみ、運動時などに認められる急激な腹圧及び膀胱内圧の上昇は、脊髄反射を介して外尿道括約筋を収縮させるが、ノルエピネフリン及びセロトニンは、外尿道括約筋を支配する体性運動神経の起始核である脊髄内のオヌフ核の興奮性を高める。すなわち、SNRI及びNRIの薬剤はオヌフ核の興奮性を亢進させることにより、体性運動神経である陰部神経を興奮させ、外尿道括約筋の収縮力を高めることが、報告されている(非特許文献1、2)。
[0007]
 SNRIのデュロキセチンは、臨床試験で腹圧性尿失禁に対する有効性が報告されたが、自殺企図等の好ましくない作用も報告されており、尿失禁治療剤として承認された国は欧州のみに限られている。NRIのニソキセチンは、前臨床試験で尿道内圧を上昇させるとともにくしゃみによって誘発される尿漏れを改善することが報告されているが(非特許文献2)、腹圧性尿失禁に関する臨床試験は行われていない。また、NRIの(S,S)-レボキセチンは、臨床試験において尿道抵抗を高め、腹圧性尿失禁に対する有効性を示したという報告があるが(非特許文献3、4)、尿失禁治療剤としての医薬品販売承認を取得するには至っていない。
[0008]
 α1受容体アゴニスト作用を有する薬剤は、尿道平滑筋に存在するα1受容体を介して尿道を収縮させ、臨床試験において腹圧性尿失禁に有効であることが示されてきたが、血圧上昇等の心血管系副作用を有することから(非特許文献5)、腹圧性尿失禁治療剤としての医薬品販売承認を取得するには至っていない。
[0009]
 以上のように、腹圧性尿失禁に対する薬物治療として、尿禁制を維持するために尿道抵抗を上昇させることが有効と考えられ、いくつかの作用機序に基づく薬剤が検討されてきた。しかし、副作用等のために世界的に適応を取得した尿失禁治療剤は存在せず、新たな作用機序に基づく腹圧性尿失禁治療剤の開発が強く望まれていた。
[0010]
 外尿道括約筋や膀胱や尿道などを支えている骨盤底筋は、一種の骨格筋である。骨格筋の収縮器官である筋原繊維は、細いアクチンフィラメントと太いミオシンフィラメントから成るサルコメアという単位が連なってできている。このアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの反復的相互作用により二つのフィラメントが互いにすれ違うように滑動することで、骨格筋は収縮する。
[0011]
 骨格筋の収縮反応は、各骨格筋を支配する体性運動神経の興奮に応じて細胞内の筋小胞体からカルシウムイオンが放出されることにより引き起こされる。細胞内カルシウムイオンは、アクチンフィラメントの構成タンパクの一つであるトロポニン複合体に結合してトロポニン複合体の構造を変化させ、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの相互作用を可能にする。このように、トロポニン複合体はアクチンフィラメントにおいて、骨格筋のカルシウムイオン濃度依存的な収縮反応を媒介する調節タンパクとして機能している。
[0012]
 骨格筋は、速筋と遅筋に分類され、速筋は遅筋と比較し筋張力が大きく収縮速度が速いという機能的な特性がある。トロポニン複合体は、速筋と遅筋においてそれぞれ異なるアイソフォームのトロポニンの組み合わせにより、速筋型及び遅筋型トロポニン複合体を形成している。
[0013]
 骨格筋の速筋型トロポニン活性化作用を有する薬剤は、速筋型のトロポニン複合体に作用し、トロポニン複合体の細胞内カルシウムイオンに対する感受性を高めることで速筋の収縮力を高めることが知られている(非特許文献6)。
[0014]
 1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド(以下、「化合物A」と言うことがある)は、骨格筋の速筋型トロポニン活性化作用を有する化合物である(特許文献1)。化合物Aは、速筋成分を含むラット長趾伸筋及びラット横隔膜の筋原繊維において、細胞内カルシウムイオン濃度と筋張力の濃度反応曲線を左方シフトさせることが示されている(特許文献2、3)。また化合物Aは、in vitroにおいて経壁電気刺激により誘発されるラット横隔膜の収縮反応を増強すること、及びin vivoにおいてもラットの腓骨神経電気刺激による長趾伸筋収縮反応に対して増強作用を有することが報告されている(特許文献2、3)。
 外尿道括約筋と骨盤底筋は、速筋成分を含む骨格筋であることが報告されている(非特許文献7、8)。

先行技術文献

特許文献

[0015]
特許文献1 : 国際公開WO 2011/133888号
特許文献2 : 国際公開WO 2013/155262号
特許文献3 : 国際公開WO 2013/151938号

非特許文献

[0016]
非特許文献1 : Int. Urogynecol. J., 14(6), 367-372 (2003)
非特許文献2 : Am. J. Physiol. Renal. Physiol., 292(2), 639-646 (2007)
非特許文献3 : J. Urol., 181(6), 2628-2633 (2009)
非特許文献4 : American Urological Association. poster 1667 (2008)
非特許文献5 : Urology, 62(4 Suppl 1), 31-38 (2003)
非特許文献6 : Nat. Med., 18(3), 452-455 (2012)
非特許文献7 : Acta Neuropathol., 60(3-4), 278-282 (1983)
非特許文献8 : Neurourol Urodyn., 17(3), 197-205 (1998)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0017]
 従来の薬剤とは異なる、新規な尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物を提供する。

課題を解決するための手段

[0018]
 本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩を有効成分とする医薬組成物が、尿失禁の予防及び/又は治療に有用であることを知見して本発明を完成した。
[0019]
 すなわち、本発明は、1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物に関する。
[0020]
 また、本発明は、1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩を含有する尿失禁予防剤及び/又は治療剤、ある態様として腹圧性尿失禁予防剤及び/又は治療剤、ある態様として混合型尿失禁予防剤及び/又は治療剤に関する。
[0021]
 また、本発明は、1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する尿失禁予防剤及び/又は治療剤、ある態様として腹圧性尿失禁予防剤及び/又は治療剤、ある態様として混合型尿失禁予防剤及び/又は治療剤に関する。
[0022]
 また、本発明は、尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための、ある態様として腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための、ある態様として混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩の使用;尿失禁予防及び/又は治療のための、ある態様として腹圧性尿失禁予防及び/又は治療のための、ある態様として混合型尿失禁予防及び/又は治療のための1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩の使用;尿失禁予防及び/又は治療のための、ある態様として腹圧性尿失禁予防及び/又は治療のための、ある態様として混合型尿失禁予防及び/又は治療のための1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩;及び、1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩の有効量を対象に投与することを含む、あるいは対象に投与することからなる尿失禁予防及び/又は治療方法、ある態様として腹圧性尿失禁予防及び/又は治療方法、ある態様として混合型尿失禁予防及び/又は治療方法に関する。なお、「対象」とは、その予防及び/又は治療を必要とするヒト又はその他の動物であり、ある態様としては、その予防及び/又は治療を必要とするヒトである。

発明の効果

[0023]
 本発明の医薬組成物の有効成分である化合物A又はその塩は、ラット摘出尿道の経壁電気刺激により誘発される外尿道括約筋の収縮反応を増強させ、ラットの陰部神経電気刺激による尿道内圧上昇反応を増強させたことから、尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として期待される。
 本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2014-183434号の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容を包含する。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 図1は、実施例1の結果を示すグラフである。縦軸は、ラット摘出尿道の経壁電気刺激により誘発される外尿道括約筋の収縮反応において、被験物質添加前値に対する被験物質添加後の値の割合(%)を示し、平均値±標準誤差で記す。*はDunnettの多重比較検定法により有意水準5%未満で検定すると、溶媒添加群に対して有意な差が認められたことを示し(p<0.05)、**は上記検定法により有意水準1%未満で検定すると、溶媒添加群に対して有意な差が認められたことを示す(p<0.01)。
[図2] 図2は、実施例2の結果を示すグラフである。縦軸は、ラットの陰部神経電気刺激により誘発される尿道内圧上昇反応において、被験物質投与前値に対する被験物質投与後の値の割合(%)を示し、平均値±標準誤差で記す。*はDunnettの多重比較検定法により有意水準1%未満で検定すると、溶媒投与群に対して有意な差が認められたことを示し(p<0.01)、**は上記検定法により有意水準0.1%未満で検定すると、溶媒投与群に対して有意な差が認められたことを示す(p<0.001)。

発明を実施するための形態

[0025]
 以下、本発明を詳細に説明する。
 上述の通り、化合物Aの化学名は1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミドであり、前述の特許文献1の実施例14に記載されている化合物である。その化学構造は以下に示すとおりである。
[0026]
[化1]


[0027]
 本明細書において、「尿失禁」とは、不随意に尿が漏れ出てしまう疾患であり、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合型尿失禁、機能性尿失禁、反射性尿失禁等が挙げられる。
[0028]
 「腹圧性尿失禁」とは、咳、くしゃみ、運動などの腹圧上昇時に、膀胱が収縮しないのにもかかわらず、不随意に尿が漏れ出てしまう疾患であり、「切迫性尿失禁」は、急に起こる抑えられないような強い尿意で我慢することが困難な愁訴(尿意切迫感)の直後に不随意に尿が漏れ出てしまう疾患である。「混合型尿失禁」は、上記腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁を併発している疾患である。
[0029]
 本発明医薬組成物の用途としては、尿失禁であり、ある態様としては、腹圧性尿失禁又は混合型尿失禁であり、ある態様としては、腹圧性尿失禁であり、ある態様としては混合型尿失禁である。また、本発明医薬組成物の用途としては、外尿道括約筋収縮増強により予防又は治療され得る疾患である。
[0030]
 本発明のある態様を以下に示す。
(1)化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物。ある態様として、化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物。ある態様として、化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物。
(2)化合物Aを含有する尿失禁予防剤及び/又は治療剤。ある態様として、化合物Aを含有する腹圧性尿失禁予防剤及び/又は治療剤。ある態様として、化合物Aを含有する混合型尿失禁予防剤及び/又は治療剤。
(3)尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。ある態様として、腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。ある態様として、混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。
(4)尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物Aの使用。ある態様として、腹圧性尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物Aの使用。ある態様として、混合型尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物Aの使用。
(5)尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物A。ある態様として、腹圧性尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物A。ある態様として、混合型尿失禁予防及び/又は治療のための、化合物A。
(6)化合物Aの有効量を対象に投与することを含む、あるいは対象に投与することからなる、尿失禁予防及び/又は治療方法。ある態様として、化合物Aの有効量を対象に投与することを含む、あるいは対象に投与することからなる、腹圧性尿失禁予防及び/又は治療方法。ある態様として、化合物Aの有効量を対象に投与することを含む、あるいは対象に投与することからなる、混合型尿失禁予防及び/又は治療方法。
[0031]
 化合物A又はその塩は、上記特許文献1(国際公開WO 2011/133888号)の実施例14に記載の方法に従って、あるいはその変法によって入手することができる。
[0032]
 また、「化合物Aの塩」とは、化合物Aの製薬学的に許容される酸付加塩を意味し、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ステアリン酸、サリチル酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。なお、「化合物A又はその塩」には、化合物Aの溶媒和物、具体的には、例えば水和物やエタノール和物を含み、さらに、化合物Aの溶媒和物の酸付加塩を含む。
[0033]
 なお、「化合物A又はその塩」のある態様としては、化合物Aが挙げられる。
 化合物A又はその塩を含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
[0034]
 投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、膀胱内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
[0035]
 経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分が、少なくとも1種の不活性な賦形剤と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えば滑沢剤や崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
[0036]
 経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
[0037]
 非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばエタノールのようなアルコール類がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
[0038]
 通常経口投与の場合、1 日の投与量は、体重当たり約0.001~100 mg/kg、好ましくは0.01~30 mg/kg、更に好ましくは0.1~10 mg/kgが適当であり、これを1 回であるいは2 回~4 回に分けて投与する。静脈内投与する場合は、1 日の投与量は、体重当たり約0.0001~10 mg/kgが適当で、1 日1 回~複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001~100 mg/kgを1 日1 回~複数回に分けて投与する。投与量は症状、年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
[0039]
 投与経路、剤形、投与部位、賦形剤や添加剤の種類によって異なるが、本発明の医薬組成物は0.01~99 重量%、ある態様としては0.01~50 重量%の化合物A又はその塩を有効成分として含有する。
[0040]
 本発明の医薬組成物は、尿失禁、とりわけ腹圧性尿失禁や混合型尿失禁に有効性を示すと考えられる種々の治療剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、あるいは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与の場合には、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
実施例
[0041]
 本発明の医薬組成物の薬理効果は、以下の実施例により確認した。
実施例1
 ラット摘出尿道を用いた、経壁電気刺激により誘発される外尿道括約筋収縮反応に対する化合物Aの増強作用を評価する試験
実験方法
 10 週齢のSD系雌性ラット(日本エスエルシー)から尿道を摘出した。摘出尿道を縦切開後、幅約3 mmの短冊状標本とし、クレブスヘンゼライト緩衝液で満たした10 mLの組織バス内に輪走方向に懸垂した。クレブスヘンゼライト緩衝液は95% O 2、5% CO 2で通気し、37 ℃に保温した。静止張力を約0.5 gとし、等尺性収縮を張力トランスデューサー(TB-611T;日本光電)、増幅器(AP-621G;日本光電)及びインターフェイス(PowerLab 8/30;AD Instruments)を用いて記録した。静止張力が安定した後、経壁電気刺激(刺激電圧:20 V,パルス幅:30 μsec,刺激頻度:0.2 Hz,刺激時間:15 sec)によって外尿道括約筋の収縮反応(mg)が認められることを確認した。被験物質非存在下において経壁電気刺激(刺激電圧:20 V,パルス幅:30 μsec,刺激頻度:20 Hz,刺激時間:1 sec)により外尿道括約筋の収縮反応を30 秒間隔で3 回惹起した後、溶媒(ジメチルスルホキシド:DMSO)、或いは最終濃度が10、又は30 μmol/Lとなる量の化合物A のDMSO溶液を組織バスに添加し、15 分後に同条件の経壁電気刺激による収縮反応を30 秒間隔で3 回惹起した。被験物質添加前後の各3 回の電気刺激による収縮反応の平均値をそれぞれ算出し、被験物質添加前の収縮反応に対する被験物質添加後の収縮反応の割合を各群について算出した。各群n=6で実施し、Dunnettの多重比較検定法により溶媒群と化合物A添加群を比較し、p<0.05の場合に有意な差と見なした。
結果
 図1に示すように、化合物Aは、ラット摘出尿道の経壁電気刺激により誘発される外尿道括約筋の収縮反応を増強させた。
[0042]
実施例2
 ラットの陰部神経の電気刺激により誘発される尿道内圧上昇反応に対する化合物Aの増強作用を評価する試験
実験方法
 体重200-350 gのSD系雌性ラット(日本エスエルシー)をウレタン(1.2 g/kg,sc;シグマアルドリッチ)で麻酔し、被験物質投与のために頸静脈内にカテーテル(PE-50;ベクトンディッキンソン)を留置した。開腹し、膀胱内の尿を排出させるため膀胱頂部を切開した。尿道内圧測定のため、マイクロチップ圧トランスデューサーカテーテル(3.5Fr;Millar Instruments社)を外尿道口より膀胱に向かって挿入した。ラットを伏臥位にし、背部を切開し左右いずれかの陰部神経を単離し、刺激電極を留置した。マイクロチップ圧トランスデューサーカテーテルを増幅器(AP-601G;日本光電)及びインターフェイス(PowerLab 8/30;AD Instruments)につないで尿道内圧を測定しながら、尿道内の圧トランスデューサー部分を尿道内圧が最大になる部位付近(外尿道口から約10~15 mm)に位置するように固定した。陰部神経の電気刺激(刺激電圧:最大10 V,パルス幅:50 μsec,刺激頻度:20 Hz,刺激時間:400 msec)を1 分毎に行い、安定した尿道内圧上昇反応(mmHg)が得られることを確認した後に、溶媒(13.3%DMSO,13.3%ポリエチレングリコール400,13.3%Tween20,60%蒸留水)、或いは溶媒に溶解させた化合物Aを1 mL/kgで最終投与量3又は10 mg/kgとなる量で静脈内投与した。被験物質投与前3 回の電気刺激による尿道内圧上昇反応の平均値を被験物質投与前値として算出し、被験物質投与後約3 分における電気刺激による尿道内圧上昇反応の被験物質投与前値に対する割合を各投与量群で算出した。各群n=6で実施し、Dunnettの多重比較検定法により溶媒群と化合物A群を比較し、p<0.05の場合に有意な差と見なした。
結果
 図2に示すように、化合物Aはラットの陰部神経電気刺激による尿道内圧上昇反応を増強させた。
[0043]
 上記のように、化合物Aは外尿道括約筋支配神経の刺激に依存した外尿道括約筋の収縮力を増強させることにより尿道内圧を上昇させることが明らかとなり、尿道抵抗を高めることにより尿禁制を維持する可能性が示された。従って、速筋型トロポニン活性化作用を持つ化合物Aは、尿失禁、特に、腹圧性尿失禁又は混合型尿失禁の治療剤及び/又は予防剤として期待される。

産業上の利用可能性

[0044]
 本発明の医薬組成物の有効成分である、化合物A又はその塩は、尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として腹圧性尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物、ある態様として混合型尿失禁予防用及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として期待される。
[0045]
 本明細書中で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。

請求の範囲

[請求項1]
 1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩を含有する尿失禁予防剤及び/又は治療剤。
[請求項2]
 尿失禁が腹圧性尿失禁である、請求項1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
[請求項3]
 尿失禁が混合型尿失禁である、請求項1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
[請求項4]
 尿失禁予防及び/又は治療のための1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩。
[請求項5]
 腹圧性尿失禁予防及び/又は治療のための、請求項4に記載の化合物又はその塩。
[請求項6]
 混合型尿失禁予防及び/又は治療のための、請求項4に記載の化合物又はその塩。
[請求項7]
 1-[2-({[トランス-3-フルオロ-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)シクロブチル]メチル}アミノ)ピリミジン-5-イル]-1H-ピロール-3-カルボキサミド又はその塩の有効量を対象に投与することを含む尿失禁予防及び/又は治療方法。
[請求項8]
 請求項7に記載の化合物又はその塩の有効量を対象に投与することを含む腹圧性尿失禁予防及び/又は治療方法。
[請求項9]
 請求項7に記載の化合物又はその塩の有効量を対象に投与することを含む混合型尿失禁予防及び/又は治療方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]