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1. (WO2013161754) SHORT POLYGLYCOLIC-ACID-RESIN FIBERS FOR USE IN WELL-TREATMENT FLUID
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明 細 書

発明の名称 坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

先行技術文献

特許文献

0013  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

実施例

0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095  

産業上の利用可能性

0096  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23  

明 細 書

発明の名称 : 坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維

技術分野

[0001]
 本発明は、石油やガス等の採掘に使用する坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維に関する。

背景技術

[0002]
 近年、エネルギー資源の確保及び環境保護等のために、石油、ガス、水、熱水、温泉等を地中から取り出したり、水質調査を行ったりする井戸(以下、総称して「坑井」という。)を掘削する必要性が、高まっている。坑井を掘削するための装置、すなわち坑井掘削装置により、坑井、例えば、油井を掘削するには、通常、地表から所定の深さまで掘削を行い、その中にケーシングと呼ばれる鋼管を埋設し壁の崩壊を防止する。その後、ケーシングの先端から、更に地下を掘削してより深い井戸とし、先に埋設したケーシング内を通して新たなケーシングを埋設し、必要に応じてケーシングの径を調整し、この作業を繰り返して、最終的に油層に到達する油井管が敷設される。なお、掘削の工法によっては、ケーシングを使用しない場合もある。
[0003]
 坑井掘削においては、ドリル先端に取り付けたビットが、回転しながら地層の岩石を砕きつつ坑井を進み、砕かれた岩石を地表に運び出す。坑井掘削に際しては、ドリルと坑壁との摩擦の低減、ビットの冷却、砕かれた岩石等の搬出、掘削作業中の逸水や逸泥の防止、掘進により形成される坑壁の崩壊防止などの目的で、ベントナイト、雲母、消石灰、カルボキシメチルセルロース、シリコーン樹脂等の粒状体を、水または有機溶剤等の液状担体に分散してなるスラリー状の掘削用分散液(掘削流体)が使用される(特許文献1、2)。掘削用分散液は、前記粒状体を、水、または、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチレングリコール等のジオール若しくはトリオール;トリ酢酸グリセリル(トリアセチン)、トリプロピオン酸グリセリル(トリプロピオニン)若しくはトリ酪酸グリセリル(トリブチリン)等のグリセロールエステル;ポリエチレングリコール等のポリグリコール;などの有機溶剤から選ばれる液状担体に、逸泥防止剤、比重剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、増粘剤等の添加剤とともに分散させて、使用される。該掘削用分散液に使用する粒状体としては、掘削作業を妨げないため、流動性、耐熱性、化学的安定性、機械的特性その他の性質を有すると同時に、掘削作業終了時には速やかに泥のケーク層が残置されることなく掘削用分散液を排出でき、安全に廃棄できることが必要であり、これらの要件を満足する粒状体や掘削用分散液が求められている。
[0004]
 一方、近年、生産技術の向上により、従来のピークオイル論を打ち破る非在来型資源の採掘が注目され、水平坑井や水圧破砕等の技術が導入されている。例えば、水圧破砕(フラクチャリング)は、坑井内に高い圧力を加えて採収層に割れ目(フラクチャ、穿孔ということもある。)を作り、その中に砂などの支持材(プロパント)を充填して、割れ目の閉塞を防ぎ、採収層内に浸透性の高いチャンネル(油・ガスの通り道)を形成することにより、生産能力や持続性を向上させる坑井刺激法の一つとして知られている。割れ目は、地上から坑井内を通して高粘性流体を圧入することによって生成される。地中の高温高圧に抗して、フラクチャリングの効果を高めるためには、圧入流体や割れ目を保持する支持材(プロパント)の選定が極めて重要である。支持材としては一般に砂が用いられるが、割れ目の閉塞圧に十分耐える強度を持ち、その部分の浸透率を高く保つため、支持材には、球状かつ粒径がそろっていることが要求される。圧入流体としては、水ベース、油ベース、エマルジョンの各種のタイプが用いられる。圧入流体には、プロパントを運搬し得る粘度を有し、プロパントの分散性や分散安定性が良好であるとともに、後処理の容易性、環境負荷の小ささなどが求められるので、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤など、種々の添加剤が使用される。例えば、フラクチャリングを行う流体組成としては、水90~95質量%、20/40メッシュの砂(プロパント)5~9質量%及び添加剤0.5~1質量%程度のものが使用されている。
[0005]
 完成した坑井においては、油井管から、石油等の産出流体を砂利、砂等と分離しながら地表まで排出する。坑井の製造過程では、先の掘削用分散液が使用されるほか、採掘の開始から仕上げ段階まで、例えば、ケーシングを保護したり、採収層に他の層からの流体が流れ込んで来ないように隔離(フラクチャや穿孔の目止め等)したりするなど、種々の目的で、セメンティングやプラグ(栓)処理を行うことがある。また、経年変化に対して坑井の改修が必要となることもある。さらに、坑井掘削に先立って、試験や検査のために、試掘を行うこともある。これらの処理を行うためには、各種の坑井処理流体が使用され、坑井処理流体の成分回収や再利用の円滑化、環境負荷の軽減等が求められていた。
[0006]
 坑井処理流体の後処理の容易さや環境負荷の軽減の観点から、坑井処理流体に、分解性材料を配合することが知られている。例えば、特許文献3には、フラクチャリング流体に、分解性樹脂粒子を使用することが開示され、該粒子が繊維を含有するものでもよい旨の開示もある。また、特許文献4には、坑井掘削において一時的に使用される一時プラグ(Temporary Plug)として、分解性材料を含有するスラリーを注入することが開示されており、該分解性材料として繊維が記載されている。
[0007]
 しかしながら、これら先行文献においては、分解性材料として、多くの樹脂材料が挙げられ、また、分解性材料から形成される粒子や繊維として、極めて多種類の形状や大きさが開示されている。例えば、特許文献3には、分解性材料からなる固体粒子の形状として、球体、ロッド、板状体、リボン、繊維等が列挙されている。繊維についても、ガラス、セラミック、カーボン、金属及び合金とともに、樹脂繊維が挙げられている。特許文献4には、分解性材料の形状として、粉、粒子、チップ、繊維、ビーズ、リボン、板状体、フィルム、ロッド、ストリップ、回転楕円体、ペレット、錠剤、カプセル等々の形状が列挙されている。繊維についても、フィラメント(長繊維)とともに長さ2~25mmのものが例示されている。要するところ、最適の分解性材料として何を選択すればよいのかは明確でない。
[0008]
 一方、ポリグリコール酸樹脂(以下、「PGA」ということがある。)やポリ乳酸樹脂(以下、「PLA」ということがある。)等の脂肪族ポリエステル樹脂は、土壌や海中などの自然界に存在する微生物または酵素により分解される(PGAやPLAは加水分解により、グリコール酸や乳酸等の酸性物質を形成し、これら酸性物質が微生物または酵素により水と二酸化炭素に分解する。)ため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。これら生分解性の脂肪族ポリエステル樹脂は、生体内分解吸収性を有しているため、手術用縫合糸や人工皮膚などの医療用高分子材料としても利用されている。
[0009]
 生分解性脂肪族ポリエステル樹脂としては、乳酸繰り返し単位からなるポリ乳酸(PLA、特に、L-乳酸を繰り返し単位とするPLLAや、DL-乳酸を繰り返し単位とするPDLLA等が広く知られている。);グリコール酸繰り返し単位からなるPGA;ポリε-カプロラクトン(以下、「PCL」ということがある。)等のラクトン系ポリエステル樹脂;ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」ということがある。)等のポリヒドロキシブチレート系ポリエステル樹脂;及び、これらの共重合体、例えば、グリコール酸繰り返し単位と乳酸繰り返し単位からなる共重合体(以下、「PGLA」ということがある。);などが知られている。
[0010]
 生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、PGAは、生分解性が大きく、また、例えば、アルカリ溶液等を使用する加水分解性も大きいことに加えて、耐熱性、引張強度等の機械的特性、及び、特にフィルムまたはシートとしたときのガスバリア性も優れる。そのため、PGAは、農業資材、各種包装(容器)材料や医療用高分子材料としての利用が期待され、単独で、あるいは他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。先の特許文献3、4においても、分解性材料として、PLAやPGAが例示されている。
[0011]
 エネルギー資源の確保及び環境保護等の要求の高まりのもと、特に、非在来型資源の採掘が広がるなかで、採掘条件がますます過酷なものとなっていることから、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体等の坑井処理流体に含有させる分解性材料として、最適の組成及び形状を有するものが求められるようになっている。
[0012]
 具体的には、例えば、フラクチャリング流体に配合する場合は、プロパント分散性や分散安定性(プロパントとの相互作用等による。)が優秀であり、フラクチャリング流体の圧力を十分確保でき、また、一時プラグ流体に配合する場合は、プラグの強度を十分確保できるなど、坑井処理流体に不可欠の性質を備えているとともに、例えば加水分解性や生分解性に特に優れていることにより、坑井処理流体の回収や廃棄処理等が容易となり、更に好ましくは回収や廃棄処理を行わないで坑井処理流体を適用した場所に残置しても、短期間で消失するなどの特性を備える分解性材料が求められていた。

先行技術文献

特許文献

[0013]
特許文献1 : 特開2000-282020号公報
特許文献2 : 特表2005-534746号公報(国際公開第2004/011530号対応)
特許文献3 : 米国特許第7581590号明細書
特許文献4 : 米国特許第7775278号明細書

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0014]
 本発明の課題は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体等の坑井処理流体に含有させる分解性材料として最適の組成及び形状を有する分解性材料を提供すること、すなわち、例えば、フラクチャリング流体に配合する場合は、プロパント分散性が優秀であり、フラクチャリング流体の圧力を十分確保でき、また、一時プラグ流体に配合する場合は、プラグの強度を十分確保できるなど、坑井処理流体に不可欠の性質を備えているとともに、加水分解性や生分解性に特に優れていることにより、坑井処理流体の回収や廃棄処理等が容易または不要となる分解性材料、並びに、該分解性材料を含有する坑井処理流体を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、特定の性状や形状を有するPGA短繊維が、坑井処理流体に含有させる分解性材料として最適であり、これにより課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
[0016]
 すなわち、本発明によれば、以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である
坑井処理流体用PGA短繊維が提供される。
[0017]
 また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)~(6)の坑井処理流体用PGA短繊維が提供される。
[0018]
(1)PGAが、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上有する前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
(2)(i)重量平均分子量(Mw)が10,000~800,000、(ii)溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定)が20~5,000Pa・s、及び(iii)末端カルボキシル基濃度が0.05~300eq/10 gであるPGAから形成された前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
(3)PGA50~100質量%と、PGA以外の樹脂で水崩壊性または生分解性あるいはその両方を有する樹脂0~50質量%とを含有する前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
(4)異形断面短繊維、多孔質短繊維、中空短繊維、及び複合繊維短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
(5)異形断面短繊維の断面が、星形、四つ葉形、三つ葉形、楕円形または多角形である前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
(6)けん縮処理を施してなる前記の坑井処理流体用PGA短繊維。
[0019]
 さらに、本発明によれば、前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有する坑井処理流体が提供され、更に以下(I)及び(II)の坑井処理流体が提供される。
[0020]
(I)坑井処理流体用PGA短繊維を0.05~100g/Lの濃度で含有する前記の坑井処理流体。
(II)掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記の坑井処理流体。
[0021]
 さらにまた、本発明によれば、前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有する坑井処理流体として、以下(i)~(xiii)の坑井処理用の各種流体が提供される。
[0022]
(i)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、逸水逸泥防止機能を有する掘削流体。
(ii)温度150℃未満の坑井内で掘削流体の地層への浸透を少なくとも3時間防止する逸水逸泥防止機能を有する前記の掘削流体。
(iii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自己崩壊性ケーク層を形成する掘削流体。
(iv)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、坑井内で該PGA短繊維が分解し酸性物質を徐放する坑井処理流体。
(v)坑井内で該PGA短繊維が分解し酸性物質を徐放することで、流体のpHを1~5に変化させ、分解前の流体粘度を少なくとも10%低下させる機能を有する前記の坑井処理流体。
(vi)掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記の酸性物質を徐放する坑井処理流体。
(vii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、該PGA短繊維がプロパントとネットワーク構造を形成することで該プロパントの沈降性を抑制する機能を有するフラクチャリング流体。
(viii)坑井処理流体用PGA短繊維とプロパントを混合攪拌し供給タンク内で静置後1時間経過したときのプロパントの少なくとも一部が該供給タンク液面高さの半分以上に存在していることを特徴とするプロパントの沈降性が抑制された前記のフラクチャリング流体。
(ix)坑井処理流体用PGA短繊維が石油またはガスの生産時までに分解しフラクチャ内の流路を低下させない前記のフラクチャリング流体。
(x)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャと自発的に作製した穿孔を一時的に目止めし、石油またはガスの生産時には該PGA短繊維が分解し崩壊することで生産物の回収効率を低下させない一時プラグ流体。
(xi)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャを含む浸透率の高い地層へ流体が優先的に流れることを防止し、流体の流れを均一にするために該浸透率の高い地層を一時的に目止めする一時プラグ流体。
(xii)塩酸、硫酸、硝酸、フッ素酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記の一時プラグ流体。
(xiii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、該PGA短繊維の少なくとも一部が一定期間経過後に分解することでセメントの除去を容易にするセメンティング流体。

発明の効果

[0023]
 本発明によれば、以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である
坑井処理流体用PGA短繊維であることによって、例えば、フラクチャリング流体に配合する場合は、プロパント分散性が優秀であり、フラクチャリング流体の圧力を十分確保でき、また、一時プラグ流体に配合する場合は、プラグの強度を十分確保できるなど、坑井処理流体に不可欠の性質を備えているとともに、例えば加水分解性や生分解性に特に優れていることにより、坑井処理流体の回収や廃棄処理等が容易となったり、更に好ましくは回収や廃棄処理を行わないで坑井処理流体を適用した場所に残置しても短期間で消失する、などの特性を備える分解性材料、並びに、該分解性材料を含有する坑井処理流体を提供するという効果が奏される。

発明を実施するための形態

[0024]
1.ポリグリコール酸樹脂
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、PGAを主たる樹脂成分として含有する短繊維である。
[0025]
 PGAは、式:(-O-CH -CO-)で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸のホモポリマー(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上含むPGA共重合体をも意味する。PGAは、α-ヒドロキシカルボン酸であるグリコール酸の脱水重縮合により合成することができる。高分子量のPGAを効率よく合成するためには、グリコール酸の二分子間環状エステルであるグリコリドを開環重合することにより合成することが行われている。
[0026]
 上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類などの環状モノマー;乳酸、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、6-ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;または、これらの2種以上を挙げることができる。これらコモノマーは、その重合体を、上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるための出発原料として用いることもできる。好ましいコモノマーは、乳酸であり、グリコール酸と乳酸の共重合体(PGLA)が形成される。
[0027]
 本発明におけるPGA中の上記グリコール酸繰り返し単位は50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。グリコール酸繰り返し単位の割合が小さすぎると、本発明のPGA短繊維に期待される分解性、耐熱性、強度等が乏しくなる。グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位は、50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられ、グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位を含まないものでもよい。
[0028]
 本発明におけるPGAとしては、所望の高分子量ポリマーを効率的に製造するために、グリコリド50~100質量%及び上記した他のコモノマー50~0質量%を重合して得られるPGAが好ましい。他のコモノマーとしては、2分子間の環状モノマーであってもよいし、環状モノマーでなく両者の混合物であってもよいが、本発明が目的とするPGA繊維及び/または短繊維とするためには、環状モノマーが好ましい。以下、グリコリド50~100質量%及び他の環状モノマー50~0質量%を開環重合して得られるPGAについて詳述する。
[0029]
〔グリコリド〕
 開環重合によってPGAを形成するグリコリドは、グリコール酸の2分子間環状エステルである。グリコリドの製造方法は、特に限定されないが、一般的には、グリコール酸オリゴマーを熱解重合することにより得ることができる。グリコール酸オリゴマーの解重合法として、例えば、溶融解重合法、固相解重合法、溶液解重合法などを採用することができ、また、クロロ酢酸塩の環状縮合物として得られるグリコリドも用いることができる。なお、所望により、グリコリドとしては、グリコリド量の20質量%を限度として、グリコール酸を含有するものを使用することができる。
[0030]
 本発明におけるPGAは、グリコリドのみを開環重合させて形成してもよいが、他の環状モノマーを共重合成分として同時に開環重合させて共重合体を形成してもよい。共重合体を形成する場合には、グリコリドの割合は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。
[0031]
〔他の環状モノマー〕
 グリコリドとの共重合成分として使用することができる他の環状モノマーとしては、ラクチドなど他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルの外、ラクトン類(例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3-ジオキサンなどの環状モノマーを使用することができる。好ましい他の環状モノマーは、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L-乳酸、D-乳酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシヘプタン酸、α-ヒドロキシオクタン酸、α-ヒドロキシデカン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。特に好ましい他の環状モノマーは、乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドであり、L体、D体、ラセミ体、これらの混合物のいずれであってもよい。
[0032]
 他の環状モノマーは、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられる。PGAが、グリコリド100質量%から形成される場合は、他の環状モノマーは0質量%であり、このPGAも本発明の範囲に含まれる。グリコリドと他の環状モノマーとを開環共重合することにより、PGA共重合体の融点(結晶融点)を低下させて、繊維及び短繊維を製造するための加工温度を下げたり、結晶化速度を制御したりして押出加工性や延伸加工性を改善することができる。しかし、これらの環状モノマーの使用割合が大きすぎると、形成されるPGA共重合体の結晶性が損なわれ、耐熱性及び機械的特性などが低下する。
[0033]
〔開環重合反応〕
 グリコリドの開環重合または開環共重合(以下、総称して、「開環(共)重合」ということがある。)は、好ましくは、少量の触媒の存在下に行われる。触媒は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫、四塩化錫など)や有機カルボン酸錫(例えば、2-エチルヘキサン酸錫などのオクタン酸錫)などの錫系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などがある。触媒の使用量は、環状エステルに対して、質量比で、好ましくは1~1,000ppm、より好ましくは3~300ppm程度である。
[0034]
 グリコリドの開環(共)重合は、生成するPGAの溶融粘度や分子量等の物性を制御するために、高級アルコールのラウリルアルコールなどのようなアルコール類や水などのプロトン性化合物を分子量調節剤として使用することができる。グリコリドには通常、微量の水分と、グリコール酸及び直鎖状のグリコール酸オリゴマーからなるヒドロキシカルボン酸化合物類が不純物として含まれていることがあり、これらの化合物も重合反応に作用する。そのため、これらの不純物の濃度を、例えばこれらの化合物に存在するカルボン酸の中和滴定などによりモル濃度として定量し、また目的の分子量に応じプロトン性化合物としてアルコール類や水を添加し、全プロトン性化合物のモル濃度をグリコリドに対して制御することにより生成PGAの分子量調整を実施することができる。また、物性改良のために、グリセリンなどの多価アルコールを添加してもよい。
[0035]
 グリコリドの開環(共)重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、多くの場合、塊状重合が採用される。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型、管状型など様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
[0036]
 重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で目的に応じて適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130~270℃、より好ましくは140~260℃、特に好ましくは150~250℃である。重合温度が低すぎると、生成したPGAの分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したPGAが熱分解を受けやすくなる。重合時間は、3分間~50時間、好ましくは5分間~30時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が充分に進行し難く、所定の重量平均分子量を実現することができない。重合時間が長すぎると生成したPGAが着色しやすくなる。
[0037]
 生成したPGAを固体状態とした後、所望により、更に固相重合を行ってもよい。固相重合とは、PGAの融点未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマーなどの低分子量成分が揮発・除去される。固相重合は、好ましくは1~100時間、より好ましくは2~50時間、特に好ましくは3~30時間で行われる。
[0038]
 また、固体状態のPGAを、その融点(Tm)+15℃以上、好ましくは融点(Tm)+15℃から融点(Tm)+100℃までの温度範囲内で溶融混練する工程により熱履歴を与えることによって、結晶性を制御してもよい。
[0039]
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含有されるPGAとしては、PGA50~100質量%と、PGA以外の樹脂で水崩壊性または生分解性あるいはその両方を有する樹脂0~50質量%とを含有するものを使用することができる。好ましくは、PGA60~100質量%と、PGA以外の樹脂で水崩壊性または生分解性あるいはその両方を有する樹脂0~40質量%とを含有するものを使用することができる。PGA以外の樹脂で水崩壊性または生分解性あるいはその両方を有する樹脂としては、ポリ乳酸(PLLA、PDLLA等);ポリε-カプロラクトン(PCL)等のラクトン系ポリエステル樹脂;ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のポリヒドロキシブチレート系ポリエステル樹脂;酢酸セルロース、キトサン等の多糖類;ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、及び、これらの誘導体や共重合体;などを使用することができる。
[0040]
 さらに、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含有されるPGAには、本発明の目的に反しない限度において、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル類;変性ポリビニルアルコール;ポリウレタン;ポリL-リジン等のポリアミド類;などの他の樹脂や、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、末端封止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤、水素イオン濃度調節剤、補強繊維等の充填材などの通常配合される添加剤を必要に応じて配合することができる。これら他の樹脂や添加剤の配合量は、PGA100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下であり、5質量部以下または1質量部以下の配合量でよい場合もある。
[0041]
 特に、PGAに、カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤を配合すると、坑井処理流体用PGA短繊維の分解性、特に加水分解性を制御することができ、また、坑井処理流体用PGA短繊維の保存性を向上させることができるので好ましい。すなわち、カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤を配合することにより、得られる坑井処理流体用PGA短繊維を、坑井処理流体に配合して使用するまでの保存中において、PGA短繊維の耐加水分解性が改善され、分子量低下を抑制することができるとともに、廃棄時の生分解性の速度を調整することができる。末端封止剤としては、カルボキシル基末端封止作用または水酸基末端封止作用を有し、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られている化合物を用いることができる。保存中の耐加水分解性、水系溶媒中での分解性、及び生分解性のバランスの観点から、カルボキシル基末端封止剤が特に好ましい。カルボキシル基末端封止剤としては、例えば、N,N-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-フェニル-2-オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン化合物;2-メトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン等のオキサジン化合物;N-グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物;などが挙げられる。これらのカルボキシル基末端封止剤の中でも、カルボジイミド化合物が好ましく、芳香族、脂環族、及び脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いられるが、とりわけ芳香族カルボジイミド化合物が好ましく、特に純度の高いものが保存中の耐水性改善効果を与える。また、水酸基末端封止剤としては、ジケテン化合物、イソシアネート類などが用いられる。カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤は、PGA100質量部に対して、通常0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部、より好ましくは0.1~1質量部の割合で用いられる。
[0042]
 また、PGAに熱安定剤を配合すると、加工時の熱劣化を抑制することができ、坑井処理流体用PGA短繊維の長期保存性が更に向上するので、より好ましい。熱安定剤としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト等のペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル;モノ-またはジ-ステアリルアシッドホスフェートあるいはこれらの混合物等の、炭素数が好ましくは8~24のアルキル基を有するリン酸アルキルエステルまたは亜リン酸アルキルエステル;炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸金属塩;一般に重合触媒不活性剤として知られる、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン酸、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどの-CONHNH-CO-単位を有するヒドラジン系化合物;3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物;トリアジン系化合物;などが挙げられる。熱安定剤は、PGA100質量部に対して、通常3質量部以下、好ましくは0.001~1質量部、より好ましくは0.005~0.5質量部、特に好ましくは0.01~0.1質量部(100~1,000ppm)の割合で用いられる。
[0043]
〔重量平均分子量(Mw)〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAの重量平均分子量(Mw)は、通常10,000~800,000の範囲内にあるものが好ましく、より好ましくは15,000~500,000、更に好ましくは20,000~300,000、特に好ましくは25,000~250,000の範囲内にあるものを選択する。PGAの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置によって求めたものである。重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、分解が早く進行して目的を果たすことが困難となったり、耐熱性や強度が不十分となることがある。重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、坑井処理流体用PGA短繊維を製造することが困難となったり、分解性が不足したりすることがある。
[0044]
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布(Mw/Mn)を1.5~4.0の範囲内にすることは、早期に分解を受けやすい低分子量領域の重合体成分や分解速度が遅い高分子量領域の重合体成分の量を低減させることで、分解速度を制御することができるので好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が大きすぎると、分解速度がPGAの重量平均分子量(Mw)に依存しなくなり、分解の制御が困難になることがある。分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると、坑井処理流体用PGA短繊維の強度を、所要の期間持続することが困難になることがある。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.6~3.7、より好ましくは1.65~3.5である。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と同様に、GPC分析装置を使用して求めることができる。
[0045]
〔溶融粘度〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAの溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定)は、通常20~5,000Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは25~4,000Pa・s、更に好ましくは30~3,000Pa・sの範囲である。PGAの溶融粘度が大きすぎると、PGAの繊維を得ることが困難となることがあり、所望する特性を有するPGA短繊維を得られないことがある。PGAの溶融粘度が小さすぎると、製造工程によっては曳糸性が確保できなかったり、PGA繊維及びPGA短繊維の強度が不足したりすることがある。
[0046]
〔末端カルボキシル基濃度〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAの末端カルボキシル基濃度は、好ましくは0.05~300eq/10 g、より好ましくは0.1~250eq/10 g、更に好ましくは0.5~200eq/10 g、特に好ましくは1~75eq/10 gとすることによって、PGAの分解性を最適な範囲に調整することができる。すなわち、PGAの分子中には、カルボキシル基及び水酸基が存在しているが、このうち分子末端にあるカルボキシル基の濃度、すなわち、末端カルボキシル基濃度が小さすぎると加水分解性が低すぎるため、PGAの分解速度が低下し、PGAの分解を短時間で行うことができる坑井処理用PGA短繊維を得ることが困難となることがある。他方、末端カルボキシル基濃度が大きすぎると、PGAの加水分解が早く進行するため、所望の期間、坑井処理流体に求められる強度を発揮することができず、また、PGAの初期強度が低いため、強度の低下が速くなることがある。末端カルボキシル基濃度を調整するには、例えば、PGAを重合するときに、触媒または分子量調節剤の種類や添加量を変更するなどの方法によればよい。また、前述した末端封止剤を配合することによっても、末端カルボキシル基濃度を調整することができる。
[0047]
〔融点(Tm)〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAの融点(Tm)は、通常190~245℃であり、重量平均分子量(Mw)、分子量分布、共重合成分の種類及び含有割合等によって調整することができる。PGAの融点(Tm)は、好ましくは195~240℃、より好ましくは197~235℃、特に好ましくは200~230℃である。PGAの単独重合体(ホモポリマー)の融点(Tm)は、通常220℃程度である。融点(Tm)が低すぎると、耐熱性や強度が不十分となることがある。融点(Tm)が高すぎると、加工性が不足したり、繊維及び/または短繊維の形成を十分制御することができず、得られるPGA短繊維の特性が所望の範囲のものとならなかったりすることがある。PGAの融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。
[0048]
〔ガラス転移温度(Tg)〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維に含まれるPGAのガラス転移温度(Tg)は、通例25~60℃であり、好ましくは30~55℃、より好ましくは32~52℃、特に好ましくは35~50℃である。PGAのガラス転移温度(Tg)は、重量平均分子量(Mw)、分子量分布、共重合成分の種類及び含有割合等によって調整することができる。PGAのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、耐熱性や強度が不十分となることがある。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、加工性が不足したり、繊維及び/または短繊維の形成を十分制御することができず、得られるPGA短繊維の特性が所望の範囲のものとならなかったりすることがある。
[0049]
2.ポリグリコール酸樹脂短繊維
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である
PGA短繊維である。
[0050]
〔外径〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維の外径は、5~300μmであり、好ましくは10~200μm、より好ましくは15~100μmの範囲である。PGA短繊維の外径は、走査型電子顕微鏡(SEM)測定されるものである。n=10の平均値を短繊維の外径とする。PGA短繊維の外径が小さすぎると、フラクチャリング流体の圧力が不足したり、プラグの強度が不足したりすることがある。PGA短繊維の外径が大きすぎると、フラクチャリング流体においてプロパントの分散性が不足したり、プラグの強度が不足したりするほか、分解性が不足することがある。
[0051]
〔繊維長〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維の繊維長は、1~30mmであり、好ましくは2~20mm、より好ましくは4~15mmの範囲である。PGA短繊維の繊維長は、JIS L1015に準拠して測定されるものである。n=10の平均値を短繊維の繊維長とする。PGA短繊維の繊維長が短すぎると、フラクチャリング流体の圧力が不足したり、プロパントの分散性が不足したり、プラグの強度が不足したりすることがある。PGA短繊維の繊維長が長すぎると、フラクチャリング流体においてプロパントの分散性が不足したり、分解性が不足したり、搬送ポンプの目詰まり等のトラブルが生じたりすることがある。
[0052]
〔繊度〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維の繊度は、0.1~25Dであり、好ましくは0.5~22D、より好ましくは1~20Dの範囲である。PGA短繊維の繊度は、JIS L1015に準拠して測定されるものである。n=5の平均値を短繊維の繊度(D)とする。PGA短繊維の繊度が小さすぎると、フラクチャリング流体の圧力が不足したり、プラグの強度が不足したりすることがある。PGA短繊維の繊度が大きすぎると、フラクチャリング流体においてプロパントの分散性が不足したり、分解性が不足したりすることがある。
[0053]
〔強度〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維の強度は、1~20gf/Dであり、好ましくは1.5~16gf/D、より好ましくは2~13gf/Dの範囲である。PGA短繊維の強度は、JIS L1015に準拠して測定されるものである。n=10の平均値を短繊維の強度とする。短繊維の糸長が短く、測定が困難な場合には、切断前の繊維で測定を行い、その値を短繊維の強度とする。PGA短繊維の強度が小さすぎると、フラクチャリング流体の圧力が不足したり、プロパントの分散性が不足したり、プラグの強度が不足したりすることがある。PGA短繊維の強度が大きすぎると、フラクチャリング流体においてプロパントの分散性が不足したり、分解性が不足したりすることがある。
[0054]
〔繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率(以下、「PGA面積比率」ということがある。)が10~95%であり、好ましくは15~90%、より好ましくは20~85%の範囲である。坑井処理流体用PGA短繊維のPGA面積比率が小さすぎると、フラクチャリング流体においてプロパントの分散性が不足したり、分解性が不足したりすることがある。PGA面積比率が大きすぎると、フラクチャリング流体の圧力が不足したり、プロパントの分散性が不足したり、プラグの強度が不足したりすることがある。
[0055]
 坑井処理流体用PGA短繊維が、異形断面短繊維、多孔質短繊維、中空短繊維、及び複合繊維短繊維(芯鞘繊維等)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。異形断面短繊維の断面が、星形、四つ葉形、三つ葉形、楕円形または多角形(三角形、四角形、五角形等)であってよい。
[0056]
 例えば、短繊維の断面が正五角形の頂点を結んで形成される星形(五芒星)である異形断面短繊維においては、PGA面積比率は、五芒星の面積/外接円の面積から算出され、約30%である。中空短繊維においては、PGA面積比率は、(中空短繊維の断面積-中空部分の断面積)/中空短繊維の断面積から算出される。PGA繊維と他の樹脂の繊維との複合繊維から形成される複合繊維短繊維においては、PGA面積比率は、複合繊維短繊維のうちのPGA繊維の断面積/複合繊維短繊維の断面積から算出される。また、多孔質短繊維においては、空孔率または発泡倍率等からPGA面積比率を算出することができる。
[0057]
 PGA面積比率は、通常、短繊維の断面写真を利用して求めることができる。断面写真を使用して、繊維断面の外接円に対応する図形の面積と、PGAに対応する箇所の図形の面積とを比較することによって求めてもよい。多孔質短繊維の場合は、前記のように発泡倍率からPGA面積比率を算出することができる。複合繊維短繊維の場合は、成分繊維の原料仕込量から算出することもできる。n=30の平均値を短繊維のPGA面積比率とする。
[0058]
〔けん縮処理〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、けん縮処理を施してなるPGA短繊維であってもよい。けん縮処理を施してなるPGA短繊維は、紡糸及び必要により延伸して得られた繊維に対して、通常は、スタッファーボックスなどを用いて機械的にけん縮を付与した繊維を所定長に切断して形成される短繊維である。けん縮は、JIS L1015に準拠して測定されるけん縮数として、通常4~15山/25mm程度、好ましくは6~12山/25mm程度付与する。本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、けん縮処理を施してなるものであることにより、フラクチャリング流体の圧力を十分なものとしたり、プロパントの分散性を向上させたりするなどの効果を奏することができる。
[0059]
3.坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、坑井掘削において使用される各種の液状流体、すなわち坑井処理流体に使用することができ、特に、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体に使用することができる。本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、例えば、フラクチャリング流体に配合する場合は、プロパント分散性が優秀であり、フラクチャリング流体の圧力を十分確保でき、また、一時プラグ流体に配合する場合は、プラグの強度を十分確保できるなど、坑井処理流体に不可欠の性質を備えている。坑井処理流体用PGA短繊維は、坑井の製造中及び/または完成後には、機能上、不要となることがあるが、その際、通常必要とされる回収または廃棄処理が、不要または容易となる。すなわち、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、生分解性及び加水分解性に優れているので、例えば、地中に形成されたフラクチャ等の中に残置しておいても、土壌中に存在する微生物によって、または高温高圧の土壌環境中で、生分解または加水分解されて短時間で消失するので、回収作業が不要となる。条件によっては、坑井処理流体用PGA短繊維が残存する地中に、アルカリ性溶液を注入し、該PGA短繊維と接触させることによって、より短時間で加水分解させることもできる。また、坑井処理流体用PGA短繊維をフラクチャリング流体と一緒に地上に回収した後、容易に生分解または加水分解させることもできる。
[0060]
〔加水分解性〕
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、加水分解性に優れている。具体的には、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、温度60℃の水中で14日間経過後の質量減少率が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上とすることが可能である。また、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、固形分濃度2質量%とした温度60℃の水中で3日間経過後のpHが1~5、好ましくは1.5~4.5、より好ましくは2~4とすることが可能である。本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、優れた加水分解性を有することから、機能上、不要となった場合には、地上に回収しても、また、高温高圧の土壌環境中でも、短期間で加水分解させて消失させることができる。なお、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、固形分濃度2質量%とした温度60℃の水中で3日間経過後のpHが1~5であることから、酸放出性を有する短繊維であるということができ、坑井製造中において採用されることがある酸処理、すなわち、酸を油層等と接触させる処理を行うことにより、岩石の破砕を容易にしたり、岩石を溶解して油層の浸透率を高めたりする坑井刺激法にとって有効に働く効果を奏させることも可能である。
[0061]
4.坑井処理流体
 本発明によれば、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維を含有する、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体を始めとする坑井処理流体を得ることができる。特に、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維を0.05~100g/L、好ましくは0.1~50g/Lの濃度で含有する坑井処理流体であることによって、フラクチャリング流体の圧力を十分なものとしたり、プロパントの分散性を向上させたりするなどの効果を奏することができる。
[0062]
 掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体を始めとする坑井処理流体には、坑井処理流体に通常含有される種々の成分や添加剤を含有させることができる。例えば、水圧破砕(フラクチャリング)において使用されるフラクチャリング流体は、溶剤または分散媒として、水や有機溶剤を主成分として含有し(90~95質量%程度)、支持体(プロパント)として、砂、ガラスビーズ、セラミック粒子及び樹脂被覆した砂などを含有(5~9質量%程度)しており、さらに、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤などの種々の添加剤を含有(0.5~1質量%程度)しているが、さらに加えて、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維を含有(例えば0.05~100g/Lの濃度)することができる。本発明の坑井処理流体用PGA短繊維を含有する坑井処理流体、例えば、本発明の坑井処理流体用PGA短繊維を0.05~100g/Lの濃度で含有する坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体または仕上げ流体等の坑井処理流体として、優れた特性を有するとともに、使用後の回収や廃棄が極めて容易であるという効果を奏する。
[0063]
 特に、本発明によれば、前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有する坑井処理流体として、以下(i)~(xiii)の坑井処理用の各種流体を提供することができる。
[0064]
(i)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、逸水逸泥防止機能を有する掘削流体。
(ii)温度150℃未満の坑井内で掘削流体の地層への浸透を少なくとも3時間防止する逸水逸泥防止機能を有する前記の掘削流体。
[0065]
(iii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自己崩壊性ケーク層を形成する掘削流体。
[0066]
(iv)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、坑井内で該PGA短繊維が分解し酸性物質を徐放する坑井処理流体。
(v)坑井内で該PGA短繊維が分解し酸性物質を徐放することで、流体のpHを1~5に変化させ、分解前の流体粘度を少なくとも10%低下させる機能を有する前記の坑井処理流体。
(vi)掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記の酸性物質を徐放する坑井処理流体。
[0067]
(vii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、該PGA短繊維がプロパントとネットワーク構造を形成することで該プロパントの沈降性を抑制する機能を有するフラクチャリング流体。
(viii)坑井処理流体用PGA短繊維とプロパントを混合攪拌し供給タンク内で静置後1時間経過したときのプロパントの少なくとも一部が該供給タンク液面高さの半分以上に存在していることを特徴とするプロパントの沈降性が抑制された前記のフラクチャリング流体。
(ix)坑井処理流体用PGA短繊維が石油またはガスの生産時までに分解しフラクチャ内の流路を低下させない前記のフラクチャリング流体。
[0068]
(x)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャと自発的に作製した穿孔を一時的に目止めし、石油またはガスの生産時には該PGA短繊維が分解し崩壊することで生産物の回収効率を低下させない一時プラグ流体。
[0069]
(xi)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャを含む浸透率の高い地層へ流体が優先的に流れることを防止し、流体の流れを均一にするために該浸透率の高い地層を一時的に目止めする一時プラグ流体。
(xii)塩酸、硫酸、硝酸、フッ素酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記の一時プラグ流体。
[0070]
(xiii)前記の坑井処理流体用PGA短繊維を含有し、該PGA短繊維の少なくとも一部が一定期間経過後に分解することでセメントの除去を容易にするセメンティング流体。
[0071]
5.坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維の製造方法
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維は、以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である
坑井処理流体用PGA短繊維を得ることができる限り、その製造方法は限定されず、通常のPGA短繊維の製造方法によって製造することができる。すなわち、例えば、PGAを主体とする樹脂を、押出機にて溶融した後、所定の断面形状を有する紡糸ノズルから糸状に押出し急冷した後、PGAのガラス転移温度(Tg)+2℃~Tg+45℃、好ましくはTg+5℃~Tg+40℃、より好ましくはTg+10℃~Tg+35℃の範囲に温度調整した雰囲気下または媒体中で、1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上、より好ましくは1.9倍以上、通常は20倍以下延伸し、必要により、多段延伸や熱処理を行うことによって、更に必要に応じてスタッファーボックスなどを用いて機械的にけん縮を付与した後、所定の繊維長に切断して、坑井処理流体用PGA短繊維を製造することができる。
[0072]
 本発明の坑井処理流体用PGA短繊維が、異形断面短繊維であるときは、紡糸ノズルの形状を異形断面の形状に対応する形状のものとすればよい。多孔質短繊維は、PGAを主体とする樹脂を、押出機にて溶融させるときに化学発泡剤または物理的発泡剤を添加する等、通常の発泡成形による多孔質短繊維の製造方法を利用してもよいし、紡糸後に容易に溶出または除去が可能な材料(例えば、溶剤、無機材料、有機材料、樹脂等)を、PGAを主体とする樹脂と一緒に溶融押出して紡糸した後、所定の繊維長に切断する前または切断後に、前記材料の溶出または除去処理を行う多孔質短繊維の製造方法を利用してもよい。中空短繊維は、紡糸ノズルの形状を中空短繊維の形状に対応する形状のものとする製造方法によってもよいし、先の溶出または除去処理を行う多孔質繊維の製造方法と同様の製造方法によってもよい。また、複合繊維短繊維は、通常の複合繊維の製造方法によって製造した複合繊維を、所定の繊維長に切断して、坑井処理流体用PGA短繊維を製造することができる。
実施例
[0073]
 以下に実施例及び比較例を示して、本発明を更に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における坑井処理流体用PGA短繊維またはPGAの物性または特性の測定方法は、以下のとおりである。
[0074]
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
 PGAの重量平均分子量(Mw)は、GPC分析装置を使用して求めた。具体的には、PGAの試料10mgを、トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させて10mLとした後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液10μLをGPC分析装置に注入して、下記の測定条件で分子量を測定することによって得られた結果から、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
[0075]
<GPC測定条件>
装置:昭和電工株式会社製GPC104
カラム:昭和電工株式会社製HFIP-806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP-LG 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(Polymer laboratories Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用
[0076]
〔融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)〕
 PGAの融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC;メトラー・トレド社製TC-15)を使用して、窒素雰囲気中で、昇温速度20℃/分で求めた。
[0077]
〔溶融粘度〕
 PGAの溶融粘度は、キャピラリー(1mmφ×10mmL)を装着した株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフ1-C」を用いて測定した。温度240℃に調整した装置に、サンプル約20gを導入し、5分間保持した後、せん断速度122sec -1での溶融粘度を測定した。
[0078]
〔末端カルボキシル基濃度〕
 PGAの末端カルボキシル基濃度の測定は、PGA約300mgを、150℃で約3分間加熱してジメチルスルホキシド10cm に完全に溶解させ、室温まで冷却した後、指示薬(0.1質量%のブロモチモールブルー/アルコール溶液)を2滴加えた後、0.02規定の水酸化ナトリウム/ベンジルアルコール溶液を加えていき、目視で溶液の色が黄色から緑色に変わった点を終点とした。その時の滴下量よりPGA1トン(10 g)あたりの当量として末端カルボキシル基濃度を算出した。
[0079]
〔外径〕
 PGA短繊維の外径は、走査型電子顕微鏡(SEM)〔FEI Company社製、STRATA DB235〕を用いて、加速電圧2kVで、白金-パラジウム蒸着(蒸着膜圧:2~5nm)処理を行った後、短繊維外径が全て視野に入る倍率で測定した。n=10の平均値を短繊維の外径とした。
[0080]
〔繊維長〕
 PGA短繊維の繊維長は、JIS L1015に準拠して測定した。n=10の平均値を短繊維の繊維長とした。
[0081]
〔繊度〕
 PGA短繊維の繊度は、JIS L1015に準拠して測定した。n=5の平均値を短繊維の繊度とした。
[0082]
〔強度〕
 PGA短繊維の強度は、JIS L1015に従って測定した。n=10の平均値を短繊維の強度とした。短繊維の糸長が短すぎて、測定が困難な場合には、切断前の繊維で測定を行い、その値を短繊維の強度とした。
[0083]
〔PGA面積比率〕
 PGA面積比率は、PGA短繊維の断面写真(倍率1000倍)を使用して、繊維断面の外接円に対応する図形の面積と、PGAに対応する箇所の図形の面積とを比較することによって求めた。n=30の平均値を短繊維のPGA面積比率とした。
[0084]
〔加水分解性(質量減少率)〕
 PGA短繊維の加水分解性は、温度60℃の水中で14日間経過後の質量減少率によって評価した。具体的には、容積50mlのバイアル瓶中に、PGA短繊維を投入し、脱イオン水を、固形分(PGA短繊維)濃度が2質量%となるように注入して、加水分解性試験液を調製した。温度60℃としたギアオーブン中にバイアル瓶を静置して、14日間経過後に取り出した。バイアル瓶中の加水分解性試験液をろ紙を用いて重力ろ過した後、ろ紙上に残った残留物の乾燥後の質量を測定し、質量減少率(%)を求めた。
[0085]
〔加水分解性(pH)〕
 PGA短繊維の加水分解性(酸放出性)を、温度60℃の水中で3日間経過後のpHによって評価した。具体的には、容積50mlのバイアル瓶中に、PGA短繊維を投入し、脱イオン水を、固形分(PGA短繊維)濃度が2質量%となるように注入して、加水分解性試験液を調製した。温度60℃としたギアオーブン中にバイアル瓶を静置して、3日間経過後に取り出した。バイアル瓶中の加水分解性試験液をろ紙を用いて重力ろ過した後、ろ液のpHを、JIS Z8802に準拠して、ガラス電極法を用いて測定した。
[0086]
〔プロパント分散性〕
 PGA短繊維のプロパント分散性は、以下のプロパント沈降テストによって評価した。すなわち、10質量%NaCl水溶液100mLに、キサンタンガム0.2g(株式会社テルナイト製、XCD-ポリマー)、澱粉2.0g(株式会社テルナイト製、テルポリマーDX)を添加し、1分間攪拌して、ポリマー水溶液を調製した。調製したポリマー水溶液に、PGA短繊維0.2gを添加し、更に1分間攪拌して、短繊維分散ポリマー水溶液を調製した。その後、調製した短繊維分散ポリマー水溶液に、プロパント6g(SINTEX社製ボーキサイト20/40)を添加して、1分間攪拌してプロパント/短繊維分散ポリマー水溶液を調製した。調製したプロパント/短繊維分散ポリマー水溶液を容積100mLのメスシリンダーへ入れて、プロパント/短繊維分散ポリマー水溶液の最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置前の目盛」という。)を読み取り、次いで、1時間静置した後に、プロパントの最上部が位置するメスシリンダーの目盛(以下、「静置後の目盛」という。)を読み取り、静置前の目盛を0mLとし、メスシリンダーの最下部の目盛を100mLとして、プロパント分散性を評価した。測定は3回行い、3回の平均値の目盛に基づき、プロパント分散性を以下の基準で評価した。
 A(極めて優秀): 静置後の目盛が、40mL未満
 B(優秀): 静置後の目盛が、40mL以上、55mL未満
 C(良好): 静置後の目盛が、55mL以上、70mL未満
 D(不良): 静置後の目盛が、70mL以上
[0087]
[実施例1]
 PGA〔株式会社クレハ製、重量平均分子量(Mw):150,000、分子量分布(Mw/Mn):2.0、融点(Tm):218℃、ガラス転移温度(Tg):42℃、溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定):1,200Pa・s、末端カルボキシル基濃度:25eq/10 g〕のペレットを、押出機に供給して、温度250℃で溶融し、外子0.4mmφ、内子0.2mmφの中空のノズルを有する紡糸口金から紡出し、次いで、温度60℃の液浴中で3.0倍に延伸した後、延伸糸を繊維長6.0mmに切断して、外径15μm及び内径5μm〔樹脂(PGA)の合計厚み10μm〕の中空PGA短繊維を得た。この短繊維のPGA面積比率、並びに、外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0088]
[実施例2]
 紡糸口金として、径0.4mmの円を外接円とする正三角形形状のノズルを使用したことを除いて、実施例1と同様にして、外径15μmの円を外接円とする三角形PGA短繊維を得た。この短繊維のPGA面積比率、並びに、外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0089]
[実施例3]
 実施例1で使用したPGAとN-メチルピロリドン(NMP)とを、質量比が30/70になるように調製して、2軸押出機中で溶融混練し、PGAとNMPとの混合物のペレットを得た。このペレットを押出機に供給して、温度240℃で溶融し、ノズル径0.4mmの細孔を有する紡糸口金から紡出したことを除いて、実施例1と同様にして、外径15μmの繊維を作成し巻き取った。次いで、巻き取った糸から、塩化メチレンを用いて、NMPを抽出除去することにより、PGA多孔質繊維を作成し、これを繊維長6mmに切断して、外径15μmの多孔質PGA短繊維を得た。この短繊維のPGA面積比率、並びに、外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0090]
[実施例4]
 2台の押出機に、実施例1で使用したPGA、及び、PDLLA〔NatureWorks社製4060D、重量平均分子量(Mw):250,000、溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定):450Pa・s〕をそれぞれ供給し、それぞれの溶融物を、PGA65質量%及びPDLLA35質量%となるように、PDLLAがPGAを囲むように合流させてから、ノズル径0.4mmの細孔を有する紡糸口金から紡出したことを除いて、実施例1と同様にして、外径15μmのPGA/PDLLA芯鞘短繊維を得た。この短繊維のPGA面積比率、並びに、外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0091]
[比較例1]
 PGAに代えて、PLLA〔NatureWorks製4032D、重量平均分子量(Mw):260,000、融点(Tm):170℃、溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定):500Pa・s〕を使用し、温度240℃で溶融したことを除いて、実施例1と同様にして、外径15μmの中空PLLA短繊維を得た。この中空PLLA短繊維の外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。なお、この中空PLLA短繊維の繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPLLAの面積の比率は、55.6%である。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0092]
[比較例2]
 PGAに代えて、PET〔遠東望製、重量平均分子量(Mw):20,000、融点(Tm):260℃〕を使用し、温度280℃で溶融したことを除いて、実施例1と同様にして、外径15μmの中空PET短繊維を得た。この中空PET短繊維の外径、繊維長、繊度及び強度の測定結果は、表1のとおりである。なお、この中空PET短繊維の繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPETの面積の比率は、55.6%である。また、得られた短繊維の加水分解性(質量減少率及びpH)、及びプロパント分散性を評価した結果を、表1に示した。
[0093]
[表1]


[0094]
 表1の結果から、以下の(a)~(e):(a)外径が5~300μm;(b)繊維長が1~30mm;(c)繊度が0.1~25D;(d)強度が1~20gf/D;かつ(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である実施例1~4の坑井処理流体用PGA短繊維は、プロパント分散性が、極めて優秀または優秀であり、温度60℃の水中で14日間経過後の質量減少率から、加水分解性も優れることが分かった。
[0095]
 これに対して、比較例1の中空PLLA短繊維は、プロパント分散性が優秀ではあるものの加水分解性に乏しいことから、坑井処理流体用途に使用する場合、回収や廃棄に費用や作業負担を要するものであることが示唆された。また、比較例2の中空PET短繊維は、プロパント分散性が不良であり、加水分解性を有しないので、坑井処理流体用途に使用できないものであることが分かった。

産業上の利用可能性

[0096]
 本発明は、以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するPGAの面積の比率が10~95%;である
坑井処理流体用PGA短繊維であることによって、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体等の坑井処理流体に含有させる分解性材料として最適の組成及び形状を有する分解性材料が供される。例えば、フラクチャリング流体に配合する場合は、プロパント分散性が優秀であり、フラクチャリング流体の圧力を十分確保でき、また、一時プラグ流体に配合する場合は、プラグの強度を十分確保できるなど、坑井処理流体に不可欠の性質を備えているとともに、例えば加水分解性に特に優れていることにより、坑井処理流体の回収や廃棄処理等が容易となる。更に好ましくは回収や廃棄処理を行わず坑井処理流体を適用した場所に残置しても、短期間で消失する、などの特性を備える分解性材料、並びに、該分解性材料を含有する坑井処理流体が提供されるため、坑井掘削等の生産効率や経済性に優れ、また、環境負荷が小さいので、産業上の利用可能性が高い。

請求の範囲

[請求項1]
 以下の(a)~(e):
(a)外径が5~300μm;
(b)繊維長が1~30mm;
(c)繊度が0.1~25D;
(d)強度が1~20gf/D;かつ
(e)繊維断面において、該繊維断面の外接円の面積に対するポリグリコール酸樹脂の面積の比率が10~95%;である
坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項2]
 ポリグリコール酸樹脂が、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上有する請求項1記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項3]
 (i)重量平均分子量(Mw)が10,000~800,000、(ii)溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec -1で測定)が20~5,000Pa・s、及び(iii)末端カルボキシル基濃度が0.05~300eq/10 gであるポリグリコール酸樹脂から形成された請求項1または2記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項4]
 ポリグリコール酸樹脂50~100質量%と、ポリグリコール酸樹脂以外の樹脂で水崩壊性または生分解性あるいはその両方を有する樹脂0~50質量%とを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項5]
 異形断面短繊維、多孔質短繊維、中空短繊維、及び複合繊維短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項6]
 異形断面短繊維の断面が、星形、四つ葉形、三つ葉形、楕円形または多角形である請求項5記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項7]
 けん縮処理を施してなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維。
[請求項8]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有する坑井処理流体。
[請求項9]
 坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を0.05~100g/Lの濃度で含有する請求項8記載の坑井処理流体。
[請求項10]
 掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8または9記載の坑井処理流体。
[請求項11]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、逸水逸泥防止機能を有する掘削流体。
[請求項12]
 請求項11記載の逸水逸泥防止機能を有する坑井処理流体であって、温度150℃未満の坑井内で掘削流体の地層への浸透を少なくとも3時間防止する逸水逸泥防止機能を有する掘削流体。
[請求項13]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、自己崩壊性ケーク層を形成する掘削流体。
[請求項14]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、坑井内で該ポリグリコール酸樹脂短繊維が分解し酸性物質を徐放する坑井処理流体。
[請求項15]
 請求項14記載の坑井処理流体であって、坑井内で該ポリグリコール酸樹脂短繊維が分解し酸性物質を徐放することで、流体のpHを1~5に変化させ、分解前の流体粘度を少なくとも10%低下させる機能を有する坑井処理流体。
[請求項16]
 掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体及び仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項14または15記載の坑井処理流体。
[請求項17]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、該ポリグリコール酸樹脂短繊維がプロパントとネットワーク構造を形成することで該プロパントの沈降性を抑制する機能を有するフラクチャリング流体。
[請求項18]
 請求項17記載のフラクチャリング流体であって、坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維とプロパントを混合攪拌し供給タンク内で静置後1時間経過したときのプロパントの少なくとも一部が該供給タンク液面高さの半分以上に存在していることを特徴とするプロパントの沈降性が抑制されたフラクチャリング流体。
[請求項19]
 請求項17または18記載のフラクチャリング流体であって、坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維が石油またはガスの生産時までに分解しフラクチャ内の流路を低下させないフラクチャリング流体。
[請求項20]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャと自発的に作製した穿孔を一時的に目止めし、石油またはガスの生産時には該ポリグリコール酸樹脂短繊維が分解し崩壊することで生産物の回収効率を低下させない一時プラグ流体。
[請求項21]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸短繊維を含有し、自然に存在するフラクチャを含む浸透率の高い地層へ流体が優先的に流れることを防止し、流体の流れを均一にするために該浸透率の高い地層を一時的に目止めする一時プラグ流体。
[請求項22]
 塩酸、硫酸、硝酸、フッ素酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項21記載の一時プラグ流体。
[請求項23]
 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井処理流体用ポリグリコール酸樹脂短繊維を含有し、該ポリグリコール酸樹脂短繊維の少なくとも一部が一定期間経過後に分解することでセメントの除去を容易にするセメンティング流体。