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1. (WO2013115348) ANTI-sAPPβ ANTIBODY
Document

明 細 書

発明の名称 sAPPβに対する抗体

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

実施例 1

0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067  

実施例 2

0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079  

実施例 3

0080   0081  

実施例 4

0082   0083   0084  

実施例 5

0085   0086   0087  

実施例 6

0088   0089  

実施例 7

0090   0091  

実施例 8

0092   0093  

実施例 9

0094   0095   0096   0097  

実施例 10

0098   0099  

実施例 11

0100   0101   0102   0103  

実施例 12

0104   0105   0106   0107  

実施例 13

0108   0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

明 細 書

発明の名称 : sAPPβに対する抗体

技術分野

[0001]
本発明は、sAPPβを測定するための抗体およびこれらを用いた測定方法に関する。

背景技術

[0002]
アルツハイマー病(以下、ADとも称する)は、高齢者を侵す最も典型的な神経変性疾患である。本疾患の主な特徴としては、進行性の記憶障害、言語や空間などの認知機能の低下が挙げられる。これら認知機能低下の主たる原因は、脳実質にアミロイドβペプチド(以下、Aβとも称する)が蓄積した結果、アミロイド斑が形成され神経細胞の変性を引き起こすことが考えられている(非特許文献2、3)。
[0003]
特にAβの中でも、39-43個のアミノ酸の長さのAβの蓄積が、ADの原因であると考えられている(非特許文献1)。Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(以下、APPとも称する)が、β-アミロイドタンパク質切断酵素であるβ-セクレターゼ(以下、BACE1とも称する)及びγ-セクレターゼの2つのプロテアーゼによって切断されて脳内で産生され蓄積する。
[0004]
AD患者の脳内や脳脊髄液でこのBACE1活性が上昇していることが最近報告されている(非特許文献4、5)。これは、BACE1がADの治療薬の標的として有望であることおよびADの診断指標にできる可能性があることを意味する。
[0005]
また可溶性APPβ(soluble Amyloid Precursor Protein β:以下、sAPPβとも称する)の生成は、BACE1の活性と関与していることから、ADの治療薬の探索の指標とされている。さらにsAPPβがアルツハイマー病の指標とする報告もある(非特許文献6)。そのため、sAPPβの量を正確かつ高感度に定量する測定方法が望まれている。

先行技術文献

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : The Journal of Biological Chemistry、2008年、第283巻、29615ページ
非特許文献2 : Preventing Chronic Disease、2006年、第3巻、A34
非特許文献3 : Brain Pathology 1991年、第1巻、213ページ
非特許文献4 : Nature Medicine 2003年、第9巻、3ページ
非特許文献5 : Archives of Neurology 2008年、第65巻、1102ページ
非特許文献6 : Journal of Neuroscience Research、 2012年、第90巻、2247ページ

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
本発明の目的は、sAPPβの量を正確かつ高感度に測定する手段を提供することである。

課題を解決するための手段

[0008]
本発明者らは、血漿や脳脊髄液などの試料中のsAPPβが、全長体だけではなく断片体としても多量に存在している事実を初めて見出した。本発明は、この発見に基づくものであり、本発明を用いることによって上記の目的が達成される。
 すなわち本発明は、
[1]sAPPβ-C末端断片体を認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[2]前記sAPPβ-C末端断片体が配列番号28から配列番号36のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるものである、上記[1]記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[3]アミロイド前駆体タンパク質における配列番号28で示される領域を認識するsAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[4]アミロイド前駆体タンパク質における配列番号37で示される領域を認識するsAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[5](1)配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、あるいは配列番号14のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する重鎖可変領域;および
(2)配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、あるいは配列番号15のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する軽鎖可変領域、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[6](1)配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;および
(2)配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[7](1)下記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
DYWMH(配列番号22)、FINPRSGSTTYNQKFRD(配列番号23)、およびPDFDYFDY(配列番号24)、および
(2)下記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
RSSQSIVQSNGNTYLE(配列番号25)、KVSNRFS(配列番号26)、およびFQASHVPLT(配列番号27)
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いた、sAPPβの測定方法、
[9]さらに、sAPPβのネオエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片を組み合わせて用いることを特徴とする、上記[8]の測定方法、
[10]上記[1]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いて生体試料中のsAPPβを測定する工程を含む、sAPPβが関与する疾患の患者由来の生体試料の選別方法、
[11]さらに、sAPPβのネオエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片を組み合わせて用いることを特徴とする、上記[10]の選別方法、
[12]上記[1]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いて測定したsAPPβの含有量を指標とする、BACE1阻害剤のスクリーニング方法、
[13]さらに、sAPPβのネオエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片を組み合わせて用いることを特徴とする、上記[12]のスクリーニング方法、
[14]上記[1]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含むことを特徴とするキット、
[15]上記[1]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いたsAPPβが関与する疾患の診断方法、
[16](1)配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、あるいは配列番号12のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する重鎖可変領域および
(2)配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、あるいは配列番号13のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する軽鎖可変領域、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[17](1)下記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
NYAMS(配列番号16)、SIGRGGSTFYPDSVKG(配列番号17)、およびIYSQSISFDY(配列番号18)、あるいは、これらの3つのCDRのうちの1つ以上のCDRにおいて1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる3つのCDR、および
(2)下記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
KSRQSLLDSDGKTYLH(配列番号19)、LVSKLDS(配列番号20)、およびWQGTHFPFT(配列番号21)、あるいは、これらの3つのCDRのうちの1つ以上のCDRにおいて1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる3つのCDR、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片、
[18]sAPPβ-C末端断片体、および
[19]配列番号28から配列番号36のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるsAPPβ-C末端断片体、
に関する。

発明の効果

[0009]
本発明に係るモノクローナル抗体またはその抗体断片は、全長sAPPβだけでなく、生体内に存在しているその断片体も測定できるので生体試料中のsAPPβの量を正確に測定することができる。したがって、本発明に係るモノクローナル抗体またはその抗体断片は、BACE1阻害剤のスクリーニングやsAPPβが関与する疾患の診断にも有用である。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] アミロイド前駆体タンパク(APP)の異化経路を示す。
[図2] 各種動物のアミロイド前駆体タンパク(APP)の部分配列、および抗体作成に使用した免疫原配列を示す。Immunogen 1は抗ネオエピトープ抗体4G4用の免疫原配列、Immunogen 2は抗内部構造抗体5H10用の免疫原配列を示す。
[図3] 抗ネオエピトープ抗体4G4の、各種sAPP関連基質(免疫原ペプチド、短鎖ペプチド、長鎖ペプチド、sAPPβ、sAPPα)に対する親和性、特異性をELISAにより評価した結果を示す。
[図4] 抗ネオエピトープ抗体4G4のsAPPβに対する親和性を、SPR法により評価した結果を示す。
[図5] 抗内部構造抗体5H10の免疫原ペプチドおよびその部分ペプチド4種に対する親和性をELISAにより評価した結果を示す。
[図6] 抗内部構造抗体5H10のsAPPβに対する親和性をELISAにより評価した結果を示す。
[図7] 抗内部構造抗体5H10のsAPPβに対する親和性をSPR法により評価した結果を示す。
[図8] 4G4/5H10サンドイッチELISAの標準曲線を示す。
[図9] 4G4/5H10のsAPPαに対する交差反応性をサンドイッチELISAにより評価した結果を示す。
[図10] 細胞におけるsAPPβ(a)及びAβ(b)産生抑制作用を、4G4/5H10サンドイッチELISAにより測定した結果を示す。
[図11] BACE1阻害剤投与ラット血漿、脳脊髄液中のsAPPβを、4G4/5H10サンドイッチELISAにより測定した結果を示す。
[図12] BACE1阻害剤投与イヌ血漿、脳脊髄液中のsAPPβを、4G4/5H10サンドイッチELISAにより測定した結果を示す。
[図13] 4G4/5H10サンドイッチELISAとIBL社sAPPβELISAキットの標準曲線を比較した結果を示す。
[図14] 血漿(a)及び脳脊髄液(b)中のsAPPβをゲルろ過により分子量分画した結果を示す。
[図15] 4G4抗体および5H10抗体の可変領域のアミノ酸配列を示す。下線部はCDR領域を示す。
[図16] CSFより4G4抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィにより得られた精製物の逆相クロマトグラフィー(RPC)分画。各フラクションのsAPPβ ELISA測定値を示す。横軸は逆相クロマトの保持時間(RT)、縦軸はELISAによるsAPPβ濃度、反応性画分を溶出順にpeak1-6と呼称する。
[図17] LC-ESI-MS/MS解析により構造決定されたsAPPβ断片体のアミノ酸配列を示す。
[図18] AD患者CSFを用いたsAPPβ ELISA測定値の他社キットとの比較を示す。

発明を実施するための形態

[0011]
(用語の定義)
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、本発明の属する分野の当業者によって通常理解される意味で用いられる。
[0012]
本明細書において、「βセクレターゼ1(BACE1)」とは、アミロイド前駆体タンパク(Amyloid Precursor Protein:APP)をβ部位で切断する酵素をいう。BACE1は、例えばアミロイド前駆体タンパクのβ部位と呼ばれる部位を切断する。そのアミノ酸配列は既に公知となっており公開されている(Genbankアクセッション番号:AAH36084)。
[0013]
アミロイド前駆体タンパク(APP)には複数のバリアントが存在することが知られており、それぞれAPP695、APP751またはAPP770と称されている。本明細書において「アミロイド前駆体タンパク」および「APP」には、これらのバリアントを全て含んでいる。このAPPがBACE1によって切断されて生じる二つの断片のうち、APPのN末側を含む断片はsAPPβと呼ばれている。また、BACE1により切断された際に新たに生じるsAPPβのC末端部分は「ネオエピトープ」と呼ばれている。アミロイド前駆体タンパクがAPP770(Genbankアクセッション番号:P05067)であれば、このsAPPβは、その18位から671位の領域が該当する。また、最近ではアルツハイマー病や軽度認知症(Mild cognitive impairment、MCI)の患者では、このsAPPβの血中濃度が上昇することが報告された(Journal of Neuroscience Research、 2012年、第90巻、2247ページ)。
[0014]
本発明者らは、血漿や脳脊髄液などの試料中のsAPPβが、全長体だけではなく断片体としても多量に存在している事実を初めて見出した。より詳しくは、BACE1切断により生成、遊離された後、さらにsAPPβのN末端側が何等かの作用によって削られてC末端部分が保持された断片体(以下、sAPPβ-C末端断片体ともいう)が存在することを確認した。なお、本明細書中において、「sAPPβ」には全長sAPPβのほか、このsAPPβ-C末端断片体も含んだ意味でも用いられる場合がある。
[0015]
脳脊髄液中に、APPのN末端部分(101残基~108残基)が存在しているという報告(Exp Neurol. 2010 Jun;223(2):351-8)、APPの一部(25残基)とAβの一部(15残基)からなるペプチドが存在しているという報告(Neurodegener Dis. 2009;6(3):87-94)がある。しかし、これらの断片はsAPPβ-C末端断片体とは関係がなく、またBACE1の活性を示すものではない。
[0016]
最近、生体内のAPPのN末端側の断片がメタロプロテアーゼの1種であるメプリンβ(meprin β)の作用によって生成される可能性を示す報告がされた(J Bio Chem. 2011 Aug 5;286(31):27741-50)。しかし、この事実もsAPPβ-C末端断片体の存在を示すものではない。
[0017]
これまでにも、α―セクレターゼの作用により生じるsAPPαを測定するためのモノクローナル抗体が報告されている。米国公開公報2003/0166019や特開平9-178743に使用されているモノクローナル抗体は、Aβの一部を認識する。
[0018]
sAPPβの測定は、BACE1切断により生成する末端構造であるネオエピトープ領域を認識する抗体および全長sAPPβのN末端領域を認識するモノクローナル抗体を組み合わせて行われている(国際公報2008/008643号、Journal of Neuroscience Research、 2012年、第90巻、2247ページ、および同、2011年、第89巻、822ページ)。
[0019]
現在、sAPPβを測定するために用いられるELISAキットが、Covance、IBL、およびMeso Scale Discovery(MSD)から市販されている。CovanceおよびMSDのキットには、全長sAPPβのN末端領域を認識する抗体が含まれている(PLoS One 2011年、第6巻、e23600参照)。また、IBLのキットについても、全長sAPPβのN末端領域を認識している抗体が使用されることが本発明者らによって確認されている(実施例参照)。
[0020]
これらの公知の抗体では、血漿もしくは脳脊髄液に多量に存在しているsAPPβ-C末端断片体の測定は不可能である。したがって、BACE1切断後の2次的なプロテアーゼ消化による影響を受けて、BACE1活性指標としてのsAPPβの含量を誤って見積もっている可能性が高い。
[0021]
本発明のモノクローナル抗体は、sAPPβ-C末端断片体を特異的に認識できることを特徴とするモノクローナル抗体をさす。ここで、「sAPPβ-C末端断片体」とは、BACE1の作用により生成された全長sAPPβが、さらにペプチダーゼなどの作用により生成した断片のうちC末端側の断片体の総称をさす。このような断片体の例としては、例えば、配列番号28から36に示すアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられる。
[0022]
また、本発明のモノクローナル抗体には、アミロイド前駆体タンパク質における配列番号28で示される領域を認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片も含まれる。この領域は、アミロイド前駆体タンパク質がAPP770の場合であれば647位から671位、APP695の場合であれば572位から596位、そしてAPP751の場合であれば628位から652位の領域が該当する。このような抗体は、全長sAPPβおよび、配列番号28から36に示すアミノ酸配列を有するsAPPβ-C末端断片体のいずれも捕捉することができるため、sAPPβの量の正確な測定に有用といえる。
[0023]
本発明のモノクローナル抗体には、アミロイド前駆体タンパク質における配列番号37で示される領域を認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片も含まれる。この領域は、アミロイド前駆体タンパク質がAPP770の場合であれば647位から662位、APP695の場合であれば572位から587位、そしてAPP751の場合であれば628位から643位の領域が該当する。このような抗体は、配列番号1で示されるネオエピトープ領域(APP770の663位から671位に該当)を認識するモノクローナル抗体(例えば、実施例に示す4G4)と組み合わせることによって、ELISAなどのサンドイッチアッセイが可能になる。
[0024]
本発明のモノクローナル抗体の例としては、実施例に示す5H10が挙げられる。このモノクローナル抗体は、配列番号37で示されるアミノ酸配列に含まれる一部の領域(APP770の場合であれば651位から660位;配列番号11)を認識する。
[0025]
この5H10の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を決定した結果(図15)、重鎖の可変領域は配列番号14、軽鎖の可変領域は配列番号15であった。また、CDR(相補性決定領域)を決定したところ、免疫グロブリン重鎖可変領域(V )のCDR1はDYWMH(配列番号22)CDR2はFINPRSGSTTYNQKFRD(配列番号23)CDR3はPDFDYFDY(配列番号24)、免疫グロブリン軽鎖可変領域(V )のCDR1は、RSSQSIVQSNGNTYLE(配列番号25)、CDR2はKVSNRFS(配列番号26)、CDR3はFQASHVPLT(配列番号27)であった。
[0026]
本発明のモノクローナル抗体には、この5H10と実質的に同一の抗体も含まれる。具体的には、本発明の所望する生物学的活性(例えば、アミロイド前駆体タンパク質における配列番号28で示される領域を認識できる)が保持される範囲内で、重鎖および軽鎖の可変領域(配列番号14または15)において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された改変体が挙げられる。同様に、CDR(相補性決定領域)についても本発明の所望する生物学的活性(たとえば、アミロイド前駆体タンパク質における配列番号28で示される領域を認識できる)が保持される範囲内で、1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された改変体が挙げられる。
[0027]
本発明のモノクローナル抗体の作製に用いられる免疫原は、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual(1989年、コールドスプリングハーバーラボラトトリープレス)等に記載されている方法により作製することができる。
[0028]
免疫方法は一般的方法により、例えば免疫原を哺乳動物に静脈内、皮内、皮下、腹腔内注射などにより投与することにより行い得る。より具体的には、例えば免疫原を生理食塩水含有リン酸緩衝液(PBS)、生理食塩水などで適当濃度に希釈し、所望により通常のアジュバントと併用して、供試動物に2~3週間間隔で数回投与する。マウスを用いる場合は、一回の投与量を一匹あたり50~100μg程度とする。ここで前記アジュバントとは抗原と共に投与したとき、非特異的に抗原に対する免疫反応を増強する物質をいう。通常用いられるアジュバントとしては、百日咳ワクチン、フロインドアジュバントなどを例示できる。最終免疫後3~10日目に哺乳動物の採血を行うことによって、抗血清を得ることができる。
[0029]
モノクローナル抗体の製造方法は、免疫原で免疫した哺乳動物の形質細胞(免疫細胞)と哺乳動物の形質細胞腫細胞(ミエローマ細胞)との融合細胞(ハイブリドーマ)を作製し、これより所望の5’-デオキシ-5’-メチルチオアデノシンを認識するモノクロ-ナル抗体を産生するクローンを選択し、該クローンを培養することにより実施できる。このモノクロ-ナル抗体の製造は、基本的には常法に従うことができる。
[0030]
該方法において、免疫原で免疫される哺乳動物は、細胞融合に使用する形質細胞腫細胞との適合性を考慮して選択するのが望ましく、マウス、ラットなどが用いられる。免疫方法についてはポリクローナル抗体の作製の場合と同様とする。但し最終免疫後3~10日目に免疫動物から脾臓細胞を採取する。
[0031]
得られた免疫細胞からハイブリドーマを得るには、例えば、「分子細胞生物学基礎実験法」(南江堂 堀江武一ら 1994年発行)等に記載されている方法により、継代培養可能な細胞とすることを目的として、例えば、センダイウイルスやポリエチレングリコール存在下、形質細胞腫細胞と抗体を産生する免疫細胞とを融合させて、ハイブリドーマを得ることができる。ここで用いられる形質細胞腫細胞は、同じ恒温動物でも同種の恒温動物由来の形質細胞腫細胞を用いることが望ましく、例えばマウスを免疫動物として得られた脾臓細胞と融合させる場合、マウスミエローマ細胞を用いることが好ましい。形質細胞腫細胞はp3x63-Ag8.UIなどの公知のものを利用できる。
[0032]
ハイブリドーマは、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン添加培地)により選択し、コロニーが確認された段階で、培養上清に分泌される抗体と抗原との結合を調べる(スクリーニングする)ことにより目的の抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
[0033]
スクリーニングする方法としては、例えば、スポット法、凝集反応法、ウエスタンブロット法、ELISA法などの一般に抗体の検出に用いられている種々の方法が挙げられるが、好ましくは、例えば後記実施例に詳述するように、ハイブリドーマの培養上清について、C末端ネオエピトープ構造の上流部分との反応性を指標とするELISA法に従って実施される。このスクリーニングによって、C末端ネオエピトープ構造の上流部分と特異的に反応する目的抗体産生株をスクリーニングすることができる。このプロセスに基づいて、得られたクローンとして、クローン5H10を例示する。
[0034]
スクリーニングの結果得た目的の抗体を産生できる株のクローニングは、通常の限界希釈法、軟寒天法などにより実施できる。クローニングされたハイブリドーマは、必要に応じて、血清培地または無血清培地で大量培養することができる。この培養によれば、比較的高純度の所望抗体を培養上清として得ることができる。また、ハイブリドーマと適合性のある哺乳動物、例えばマウスなどの腹腔に、ハイブリドーマを接種して、所望抗体をマウス腹水として大量に回収することもできる。
[0035]
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを含有する培養上清およびマウスの腹水は、精製あるいは修飾することなく粗製抗体液として用いることができる。また
モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52等)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィーに供すること等により行うことができる。
[0036]
また本発明のモノクローナル抗体として、抗体遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carlら、THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES、1990年発行)。
[0037]
具体的には、目的とする抗体(例えば、5H10)の可変領域(例えば、5H10であれば配列番号14および15)をコードするcDNAを合成する。cDNAの合成および増幅を行うには5’-Ampli FINDER RACEKit(クローンテック製)およびPCRを用いた5’-RACE法(Frohman、M.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988年、第85巻、 8998ページなど)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
[0038]
目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。本発明で使用される抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー/プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
[0039]
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(WO94/11523参照)。
[0040]
抗体を用いて下記に述べるイムノアッセイ(免疫学的測定法)などを行うにあたって、通常は抗体の挙動を検出可能とするため抗体そのものが種々の物質で標識されうる。本発明のモノクローナル抗体の好ましい態様としては、標識したモノクローナル抗体が挙げられる。抗体を標識するには、例えば「分子細胞生物学基礎実験法」(南江堂 堀江武一ら1994年)等に記載されている常法を用いることにより行うことができる。種々の物質としては化学発光物質、酵素、蛍光物質、着色ビーズ、放射性同位元素、元素、金属類、ビオチンが挙げられる。以下に具体例を示すがこれらに限定されるものではない。化学発光物質とは例えばルミノールやアクリジニウムエステルなどをさす。酵素とは例えばβ-ガラクトシダーゼやアルカリフォスファターゼやペルオキシダーゼなどをさす。蛍光物質とは例えばユウロピウムクリプテートやFITCやRITC(などをさす。着色ビーズとは例えばプロテインAビーズ、wheat germ agglutinin(WGA)ビーズ、ストレプトアビジンビーズなどをさす。放射性同位元素とは例えば 14Cや 125Iや Hなどをさす。元素とは例えばユウロピウムなどのランタニド元素をさす。金属類とは例えばフェリチンや金コロイドなどをさす。
[0041]
本明細書において、「モノクローナル抗体断片」とは、前述する本発明のモノクローナル抗体の一部であって、当該モノクローナル抗体と同様にsAPPβに特異的な結合性を有する領域を意味する。
[0042]
具体的には、前述するsAPPβに対して特異的結合性を有するFab (fragment of antigen binding)、F(ab’) 、Fab’、一本鎖抗体 (single chain Fv; 以下、scFvと表記する)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv; 以下、dsFvと表記する)、2量化体V領域断片 (以下、Diabodyと表記する)、CDRを含むペプチド等を挙げることができる(エキスパート・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ、第6巻、第5号、第441~456頁、1996年)。
[0043]
本発明の別の態様としては、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片(以下、本発明のモノクローナル抗体等、とも記す)を用いたsAPPβの測定方法が挙げられる。本発明のモノクローナル抗体等は、特にイムノアッセイ(免疫学的測定法)に有用である。本発明のモノクローナル抗体を用いたイムノアッセイとしては競合的な測定でも非競合的な測定でも良い。また、ホモジニアスアッセイ法(均一系による測定)でもヘテロジニアスアッセイ法(不均一系による測定)でもよい。具体的には、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、固相酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、時間分解蛍光免疫測定(TR-FIA)、化学発光免疫測定法、イムノブロット法、ウエスタンブロット法、免疫染色法、SPA法、蛍光偏光測定法(FP)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)などが挙げられる。
[0044]
好ましい態様としては、固相酵素免疫測定法(ELISA)が挙げられる。ELISA法とは、酵素で標識された抗体または抗原を用い、抗体または抗原の量を標識酵素の活性度により定量する方法である。酵素で標識された抗原抗体結合物と遊離型の標識抗原、または抗体を分離するのに固相化された抗体や抗原が用いられる。固相はアガロース、マイクロタイタープレートの内面、ラテックス粒子等が利用できる。ELISA法として具体的には競合法イムノアッセイやサンドイッチイムノアッセイなどが挙げられる。また標識酵素としては西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼ(以下HRPともいう)やアルカリフォスファターゼ等が挙げられる。
[0045]
ELISAなどのイムノアッセイ(免疫学的測定法)では通常2つの抗体を組み合わせて用いる。本発明のモノクローナル抗体等と組み合わせて使用する別の抗体としては、sAPPβのC末端ネオエピトープ構造(例えばAPP695であれば588~596位、配列番号1)を特異的に認識する抗体(例えば4G4抗体)が好ましい。
[0046]
本発明者らは、上記の抗体、sAPPβ-C末端断片体を特異的に認識する抗体(例えば5H10抗体)とC末端ネオエピトープ構造を特異的に認識する抗体(例えば4G4抗体)を組合せたELISA法によって従来のELISA法を用いたキットでは検出できなかったsAPPβ-C末端断片体も測定することを可能とした(実施例10参照)。この事実は、本発明の抗体を用いた測定法によれば全長sAPPβだけでなく、その分解物も含めて検出することができるので生体試料液中に含まれているsAPPβの量を正確に反映していることを示す。
[0047]
一方、既存のsAPPβ定量キットは、使用される抗体のエピトープがsAPPβのN末端の近傍であるため、N末端部分が欠失したsAPPβ-C末端断片体を検出できなかった。従ってsAPPβの一部を検出しているに過ぎず、正確なsAPPβ量の測定、およびBACE1活性を評価できているとは言えなかった。
[0048]
本発明の測定方法を用いれば、sAPPβ-C末端断片体を定量することができるので、既存のsAPPβ定量キットや定量用抗体に比べてBACE1活性を正確に評価することができる。よって後述するようなBACE1阻害剤のスクリーニング方法や、アルツハイマーなどBACE1が関連する疾患患者由来の生体試料の選別方法、およびアルツハイマーなどBACE1が関連する疾患の診断に有用である。
[0049]
本発明の測定方法の一態様としては、BACE1阻害剤のスクリーニング方法を挙げることができる。即ち、例えば酵素としてのBACE1、基質でとしてのAPPに被験物質を接触させてから、sAPPβの量を測定し、被験物質が非存在下のsAPPβの量と比べてその値が低い場合、被験物質がBACE1阻害剤であると判定することができる。
[0050]
またBACE1およびAPPを発現する細胞に、被験物質を接触させ、被験物質存在下の細胞抽出液または細胞培養上清中のsAPPβの量が、被験物質非存在下の細胞抽出液または細胞培養上清中のsAPPβの量と比べて低い場合、被験物質がBACE1阻害剤であると判定することができる。
[0051]
本発明の測定方法の一態様としては、ヒトの臨床試験や診断に用いることができる。
[0052]
例えば、被験物質をアルツハイマーに罹患した患者に投与した後、被験者から生体試料を採取してそのsAPPβ量を測定する。このとき、被験者由来の生体試料中のsAPPβの量が減少している場合、該被験物質がアルツハイマーに対して薬効を示していることの指標にできる。
[0053]
また被験者から生体試料を採取し、そのsAPPβ量を測定することによって、該被験者がアルツハイマーや軽度認知障害(MCI)などBACE1が関与する疾患に罹患の患者かどうか、もしくは将来罹患する可能性を判断することができる。
[0054]
ここで「生体試料」とは、哺乳動物由来の任意の生物学的液体をいう。例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)、尿、唾液、および汗などの体液、並びに細胞および/または組織の抽出物および上清を含む。
[0055]
本発明のさらなる別の態様としては、本発明のモノクローナル抗体等を含むキットが挙げられる。このようなキットには、通常一般的にアッセイを実行するために必要な1つ以上の構成要素を含む。構成要素は、標準品、試薬(希釈液、緩衝液など)、容器および/または装置であり得る。例えば、キット内の1つの容器は、sAPPβ-C末端断片体に特異的な配列に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片を含み得る。このような抗体は、当業者に公知の任意の支持材料(例えば、マイクロタイタープレートにおけるウェルやニトロセルロースなどの適切な膜)に付着されて提供され得る。さらには、アッセイにおいて使用されるべき構成要素(例えば、試薬または緩衝液)を含み得る。このようなキットはまた、あるいは、抗体結合の直接的検出または間接的検出に適切な上記の物質により標識され得る。
[0056]
実施例
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、抗体作製手法として、特に断らない限り、Immunochemistry in Practice (Blackwell Scientific Publiations)に記載されている方法を用いた。また、遺伝子操作的手法として、特に断らない限り、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されている方法を用いた。
実施例 1
[0057]
sAPPβネオエピトープ抗体の調製
[0058]
抗原の選定:
β-セクレターゼによるAPPの分解を検出するために、その切断点であるC末端のネオエピトープ構造を特異的に認識する抗体を作製することにした。
APPのネオエピトープ部分配列を図2に示した。ネオエピトープ部分の9アミノ酸残基、ヒトAPP695-(588-596)(Thr-Glu-Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met:配列1)はヒトからマウスまで動物種間で保存されていることから、免疫原として選択した。
[0059]
抗原の免疫:
配列1に示すネオエピトープペプチドのN末にCys残基を導入したペプチド(Cys-Thr-Glu-Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met:配列2):を合成した(SIGMA社製)。
合成ネオエピトープペプチド1.3mgを0.5mlの蒸留水に溶解したものと、10mgのマレイミド化giant keyhole limpetsヘモシアニン(マレイミド化KLH、Thermo Scientific社製)を1mlの蒸留水に溶解したものと混合し、4℃で一晩反応させた。
上記の混合液を0.9% 生理食塩水に対して透析後、使用時まで-80℃保管した。
このペプチド-KLH複合体0.1mgをフロイント完全アジュバントと共にA/J Jms Slc雌性マウス7匹に腹腔内投与した。その後、3週間隔でペプチド-KLH複合体0.1mgをフロイント不完全アジュバントと共に4回追加免疫した。最終免疫の3週間後にペプチド-KLH複合体0.1mgを生理食塩水0.1mlに懸濁した溶液を腹腔内にブースター投与した。
[0060]
ネオエピトープペプチドのビオチン標識:
合成ネオエピトープペプチド0.4mgを0.4mlの5mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解したものと、0.16mgのPEO-マレイミド活性化ビオチン(Thermo Scientific社製)を0.1mlの蒸留水に溶解したものとを混合し、室温で2時間反応後に逆相HPLCにてビオチン標識ネオエピトープペプチドを精製した。
[0061]
ハイブリドーマの作製:
最終免疫の3日後に脾臓を摘出し、2匹のマウスから脾臓細胞を回収した。脾臓細胞とマウスミエローマ細胞(p3×6363-Ag8、東京腫瘤研究所)を50%のポリエチレングリコール4000を用いて融合させ、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む培地で選択した。
[0062]
ネオエピトープ抗体の選択:
細胞融合10日後に特異抗体産生細胞のスクリーニングを以下に記載したELISAを用いて行なった。
384穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)の各ウェルに0.35μgの抗マウスIgG抗体(Jackson Immuno Research社製)を含むトリス緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5)35μlを加えて4℃で16時間固定した。これらのウェルを90μlの洗浄液(0.01% Tween20を含む生理食塩水)で1回洗浄した後、ブロックエース(大日本製薬社製)を90μl加えて室温で2時間放置して、ブロッキングを行なった。(抗マウスIgG抗体固相化プレート)
[0063]
各ウェルを90μlの洗浄液で1回洗浄した後、15μlのハイブリドーマ培養上清を含む10μlの緩衝液A(0.5% ウシ血清アルブミン、0.01% Tween80、0.05% Proclin150、0.15M NaClを含む50mM トリス緩衝液、pH7.4)および0.04ngのビオチン標識ネオエピトープベプチドと2ngのStreptavidin-HRP(PIERCE社製)を含む10μlの緩衝液Aを混合し、4℃で16時間反応させた。
[0064]
次に各ウェルを90μlの洗浄液で3回洗浄した後に、25μlのTMB-Substrate Chromogen(DAKO社製)を添加して室温で30分間発色させた後に、25μlの0.05M硫酸を添加して反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した。
[0065]
スクリーニングの結果から、ネオエピトープペプチドと強い親和性を示したハイブリドーマクローンを1個選択し、4G4と命名した。4G4についてマウスモノクローナル抗体アイソタイピングELISAキット(BDバイオサイエンス社製)を用いて調べた結果、アイソタイプはIgG2a/κであった。
[0066]
ELISAによる抗体親和性評価
上述した抗マウスIgG抗体固相化プレートに、10μlの4G4抗体を含む緩衝液Aを加え、免疫原ペプチド(配列:2)あるいは、長鎖ペプチド(Thr-Glu-Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp:配列3、SIGAMA社製)、短鎖ペプチド(Thr-Glu-Glu-Ile-Ser-Glu-Val-Lys:配列4、SIGMA社製)、ヒトsAPPβタンパク(MESO SCALE DISCOVERY社製)、ヒトsAPPαタンパク(MESO SCALE DISCOVERY社製)を加えた。そして、0.04ngのビオチン標識ネオエピトープベプチドと2ngのStreptavidin-HRP(PIERCE社製)を含む10μlの緩衝液Aを混合し、4℃で16時間反応させた後に洗浄後、25μlのTMB-Substrate Chromogen(DAKO社製)を添加して室温で30分間発色させた後に、25μlの0.05Mの硫酸を添加し反応を停止し、450nmにおける吸光度を測定した(図3)。以上により算出されるヒトsAPPβタンパクに対するIC50は、8.4nMと示され、sAPPαとの交差性は0.01%未満であった。
[0067]
抗体の親和性
センサーチップGLM(バイオラッド社製)にネオエピトープ抗体4G4を固相化し、ProteOn(バイオラッド社製)を用いて、40、20、10、5nMのsAPPβを反応させ解離定数を解析した結果、4G4の解離定数K は、4.4×10 -10(M)であった(図4)。
実施例 2
[0068]
sAPPβ内部配列抗体の調製
[0069]
抗原の選定:
sAPPβ及びその分解物を検出するために、その切断点であるC末端のネオエピトープ構造の近傍の配列を選択した。また、動物種共通の配列である部分を認識する抗体を作製することにした。
[0070]
APPの内部構造部分配列を図1に示した。sAPPβの34アミノ酸残基、ヒトAPP695-(552-585:配列5)のC末端にCys残基を導入したペプチド(Asp-Ser-Val-Pro-Ala-Asn-Thr-Glu-Asn-Glu-Val-Glu-Pro-Val-Asp-Ala-Arg-Pro-Ala-Ala-Asp-Arg-Gly-Leu-Thr-Thr-Arg-Pro-Gly-Ser-Gly-Leu-Thr-Asn-Cys:配列6、35アミノ酸残基)を免疫原として選択した。
[0071]
抗原の免疫:
配列2に示す内部構造ペプチドのC末にCys残基導入したペプチドを合成した(SIGMA社製)。
合成ネオエピトープペプチド4.0mgを0.5mlの蒸留水に溶解したものと、10mgのマレイミド化KLH(Thermo Scientific社製)を1mlの蒸留水に溶解したものと混合し、4℃で一晩反応させた。
上記の混合液を0.9% 生理食塩水に対して透析後、使用時まで-80℃保管した。
このペプチド-KLH複合体0.1mgをフロイント完全アジュバントと共にA/J Jms Slc雌マウス7匹に腹腔内投与し、初回免疫とした。
その後、3週間隔でペプチド-KLH複合体0.1mgをフロイント不完全アジュバントと共に4回追加免疫した。最終免疫の3週間後にペプチド-KLH複合体0.1mgを生理食塩水0.1mlに懸濁した溶液を腹腔内にブースター投与した。
[0072]
内部構造ペプチドのビオチン標識:
合成内部構造ペプチド(配列5)0.2mgを0.2mlの5mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解したものと、29μgのPEO-マレイミド活性化ビオチン(Thermo Scientific社製)を混合し、4℃で一晩反応後に逆相HPLCにてビオチン標識内部構造ペプチドを精製した。
[0073]
ハイブリドーマの作製:
 実施例1と同様の方法で行った。
[0074]
内部構造抗体の選択:
ビオチン標識内部構造ペプチドを用いて、実施例1と同様の方法でハイブリドーマ上清をスクリーニングした。その結果から、内部構造ペプチド(配列5)およびヒトsAPPβタンパク(MESO SCALE DISCOVERY社製)と強い親和性を示したハイブリドーマクローンを複数個選択した。
[0075]
獲得した内部構造抗体の中でもsAPPβタンパクに対して最も親和性の強かった5H10についてマウスモノクローナル抗体アイソタイピングELISAキット(BDバイオサイエンス社製)を用いて調べた結果、アイソタイプはIgG1/κであった。
[0076]
ELISAによる抗体のエピトープ決定
実施例1と同様にして、競合ELISA法により、免疫原ペプチドを下記に示す4つの断片1~4(配列番号8、9、10、11)に分割したペプチドで競合阻害をかけ、そのペプチドとの反応性を調べた。各抗体のエピトープ断片を表1に示す。また、5H10の競合阻害結果を図5に示した。
[0077]
断片1:Asp-Ser-Val-Pro-Ala-Asn-Thr-Glu-Asn-Glu-Val-Glu(配列番号:8)
断片2:Asn-Glu-Val-Glu-Pro-Val-Asp-Ala-Arg-Pro-Ala-Ala(配列番号:9)
断片3:Arg-Pro-Ala-Ala-Asp-Arg-Gly-Leu-Thr-Thr-Arg-Pro(配列番号:10)
断片4:Thr-Thr-Arg-Pro-Gly-Ser-Gly-Leu-Thr-Asn-Cys(配列番号:11)
[0078]
ELISAによる抗体親和性評価
実施例1と同様にして、競合ELISA法により、ヒトsAPPβタンパク(MESO SCALE DISCOVERY社製)に対するIC50を算出した結果、1.5nMと示された(図6)。
[0079]
抗体の親和性
センサーチップGLM(バイオラッド社製)にネオエピトープ抗体5H10を固相化し、ProteOn(バイオラッド社製)を用いて、1000、250、62.5、15.6、3.91nMのsAPPβを反応させ解離定数を解析した結果、5H10の解離定数K は、6.2×10 -10(M)であった(図7)。
実施例 3
[0080]
抗体配列の決定
[0081]
樹立した4G4及び5H10のハイブリドーマ細胞より、常法に従ってVH及びVL領域のアミノ酸配列を決定した。(配列番号12、13、14、15)
実施例 4
[0082]
4G4/5H10サンドイッチELISA法の構築
[0083]
96穴マキシソーププレート(Nunc、Cat.No.4377591)の各ウェルに、1μgのストレプトアビジン(Thermo Scientific社製)を含むトリス緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5)100μlを加えて4℃で16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(0.01% Tween20を含む生理食塩水)で1回洗浄した後、ブロックエース(大日本製薬社製)を300μl加えて室温で2時間放置して、ブロッキングを行なった。ウェルを300μlの洗浄液で1回洗浄した後、EZ-LinkR Maleimide-PEG2-Biotin(Thermo Scientific社製)を用いて作製したビオチン標識4G4ネオエピトープ抗体を200ngずつ添加した。2-4時間室温で静置後、洗浄液にて3回洗浄した。0.55-400pMの標準品(ヒトsAPPβタンパク、MESO SCALE DISCOVERY社製)あるいは被検試料を含む100μlの緩衝液B(0.1M NaCl、1 mM MgCl 、0.1 mM ZnCl 、0.01% Tween80、1% ウシ血清アルブミン(SIGMA社製)、2% ブロックエース、10μg/ml マウスγ-グロブリン、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM トリス緩衝液、pH7.5)を添加し、4℃で一晩静置した。洗浄液にて4回洗浄後、10ngのアルカリフォスファターゼ(ALP)標識した5H10 Fab’を含む100μlの緩衝液Bを混合し、室温で2-3時間反応させた。4回洗浄液にて洗浄後、100μlのCDP-Star Emerald II (Applied Biosystems社製)を添加し、15-20分間静置し、ARVO(Perkin Elmer life sciences社製)を用い発光強度を測定した。
[0084]
ALP標識5H10 Fab’の作製は、ペプシン(Roche社製)により、内部構造抗体5H10 IgGを消化後、2-メルカプトエチルアミンにて還元してFab’としとした。これに、Sulfo-SMCC(Thermo Scientific社製)を用いてアルカリフォスファターゼ (ALP、 highly active、 Roche)にマレイミド基を導入したものを添加し、ゲルろ過により5H10 Fab’-ALP を調製した。
 本サンドイッチELISAによるsAPPβの最低検出限界は0.8pMであった(図8)。またsAPPαに対する交差性は0.2%であった(図9)。
実施例 5
[0085]
細胞におけるsAPPβ(全長sAPPβおよびsAPPβ-C末端断片体も含む、以下同じ)及びアミロイドβ(Aβ)産生抑制作用の測定
[0086]
 ヒト野生型APPを過剰発現させた神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞(SH/APPwt)を8×10 cells/mlに調整し、1ウェルあたり150μlずつ96ウェル培養プレート(Falcon社製)に蒔き、37℃、5%炭酸ガスインキュベータ内で2時間培養した。その後、化合物A(WO2008/133273に記載された化合物622。DMSO:ジメチルスルホキシド溶液)を2 μl/50 μl培地となるようにあらかじめ添加・懸濁した溶液を細胞液に添加した。すなわち、最終DMSO濃度が1%、細胞培養液は200μlとなった。化合物A添加から24時間インキュベートした後、培養上清を100μlずつ回収し、その中に含まれるsAPPβ量及びAβ量を測定した。
[0087]
 sAPPβ量は、上述の4G4/5H10サンドイッチELISA系により測定した。また、Aβ量の測定方法は、384ウェルハーフエリアプレート(黒色プレート;コースター社製)に、均一系時間分解蛍光(HTRF)測定試薬(Amyloid β1-40ペプチド;IBA Molecular Holding、 S.A.)10 μlと、培養上清10 μlを入れて混ぜ合わせ、遮光して4℃一晩静置した。その後、蛍光強度(励起波長 337nM、測定波長 620nMおよび665nM)をWallac1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer life sciences社製)を用いて測定した。Aβ量は各測定波長のカウント率(10000 x Count 665/Count 620)から求め、化合物Aの各濃度でのAβ産生阻害を算出した。また、その結果、BACE1阻害剤濃度依存的に、sAPPβ及びAβ産生の有意な阻害が観察された(図10a、b)。
実施例 6
[0088]
BACE1阻害剤投与ラット血漿、脳脊髄液中sAPPβ測定
[0089]
 化合物Aを0.5%メチルセルロースに懸濁させ、雄性Crj:SDラット(7~9週齢)に対し、30mg/15mL/kgとなるように経口投与した。基剤対照群は0.5%メチルセルロースのみを投与し、各群5匹で投与試験を実施した。投与6時間後、脳脊髄液は麻酔下において直接採取法 (大槽内) により採取し、速やかに液体窒素で凍結した。さらに血液は腹部大動脈より採取し、速やかに氷冷した。その後10000rpm 10min 4℃遠心し、血漿を採取後、液体窒素で凍結した。本試料中のsAPPβを上述の4G4/5H10サンドイッチELISA系により測定した結果、BACE1阻害剤投与群でsAPPβ産生の有意な阻害が観察された(図11)。
実施例 7
[0090]
BACE1阻害剤を投与したイヌ血漿および脳脊髄液中sAPPβの測定 
[0091]
化合物Aを0.5%メチルセルロースに懸濁させ、雄性TOYOビーグル犬(24ヶ月齢または6ヶ月齢)に対し、30mg/15mL/kgとなるように経口投与した。基剤対照群は0.5%メチルセルロースのみを投与し、各群2匹で投与試験を実施した。投与 12、24時間後に脳脊髄液と血液を採取した。脳脊髄液は麻酔下において直接採取法 (大槽内) により採取し、速やかに液体窒素で凍結した。血液は非麻酔下で橈側皮静脈もしくは伏在静脈より採血し、速やかに氷冷した。その後13000rpm 2min 4℃遠心し、血漿を採取後、液体窒素で凍結した。本試料中のsAPPβを上述の4G4/5H10サンドイッチELISA系により測定した結果、BACE1阻害剤投与群でsAPPβ産生の有意な阻害が観察された(図12)。
実施例 8
[0092]
IBL社キットとの標準曲線比較
[0093]
 4G4/5H10サンドイッチELISAとIBL社のsAPPβ ELISAキット(Cat.No.27732)の標準曲線を比較した。その結果、4G4/5H10サンドイッチELISAの方がIBLのものと比べ、感度が10倍ほど高いことが示された。(図13)
実施例 9
[0094]
ヒト血漿および脳脊髄液の測定
[0095]
 8例の健常人ヒトEDTA血漿(社内ボランティア採血により入手)及びヒト脳脊髄液(Asterand社)中のsAPPβ量を上述のサンドイッチELISA法にて測定した。血漿は緩衝液Bで5倍希釈、脳脊髄液は50-400倍希釈したものを被検試料として使用した。健常人の血漿中には、平均52.0 ± 11.5pMのsAPPβが含まれることが観察された(表1)。また脳脊髄液では、1000-10000pMのsAPPβが観察され(表2)、血漿、脳脊髄液共に試料の前処理を必要とせず、定量範囲内で精度よく測定可能であった。血漿については、IBLのキットでも測定を実施した。血漿の影響が少ない15倍希釈で測定を行った結果、8検体中7検体が測定定量限界以下で測定できなかった。MSDのキットでも2倍希釈で測定を行ったが、全ての検体が測定限界以下で、2つの市販キットでは血漿中のsAPPβを精度高く測定できないことを確認した。
[0096]
[表1]


[0097]
[表2]


実施例 10
[0098]
血漿及び脳脊髄液中のsAPPβのゲルろ過による分子量分画
[0099]
ヒト血漿もしくはヒト脳脊髄液 250μLをゲルろ過カラムTSK-3000SWXL(東ソー社製)を接続したLC-6Aシステム(島津製作所社製)に供し、溶出液を0.5mLずつ分画した。血漿を分画したものについては、凍結乾燥機DRZ350WB(ADVANTEC社製)を用いて10倍濃縮した。上述の4G4/5H10サンドイッチELISA及びIBL社のsAPPβ測定キットの両法により、各画分に含まれるsAPPβ濃度を測定した。血漿及び脳脊髄液いずれにおいても、IBL社のELISAキットでは全長体(約100kDa)と推定される溶出位置にのみピークが検出されたが、4G4/5H10 サンドイッチELISAでは、15kDa以下の領域にもピークが観察された。この断片化画分をMS解析に供した結果、sAPPβのネオエピトープ近傍の配列が確認できた。従って、ヒト血漿(図14a)及び脳脊髄液(図14b)中には、10kDa程度の分子量を持つsAPPβが断片化したものが多く含まれ、4G4/5H10サンドイッチELISA系では、sAPPβ断片体も測定できることが示された。
実施例 11
[0100]
シオノギELISAとMSD社ELISAを用いたCSF中sAPPβ反応成分の比較
[0101]
購入ヒトCSF検体(AD×4例、MCI×4例、Normal×5例)各50μLをプールした試料計650μLを、4G4抗体固相化カラムを用いてアフィニティー精製を行った。これらプール溶液をカラムに通液し、洗浄後、カラム結合成分を100 mM Glycine-HCl (pH2.3)にて溶出した。続いて、この溶出画分を逆相カラム(YMC-pak ODS-AM、φ6.0×150 mm)を接続したLC-4Aシステム(島津製作所社製)に供し、移動相として0.1% TFA/ACN系を用いて、流速1.0 mL/minにて、溶出液を0.5 mL/tubeにて分画した。(以下、4G4抗体精製/逆相カラムクロマトグラフィーを用いた精製・分画法を4G4/RPC法と呼称する。)上述のシオノギ及びMSD社のsAPPβ ELISA測定キットの両法により、各画分に含まれるsAPPβ濃度を測定した(図15)。このとき、シオノギELISAキットにて測定されるsAPPβ ELISA反応画分を溶出順に、ピーク1~6と命名した。MSD社のELISAキットではsAPPβ全長体(約100kDa)と推定されるピーク6のみ反応性を示した。よって、シオノギELISAキットで検出されるピーク1~5は、sAPPβ全長体ではなく、sAPPβのC末端側エピトープ配列を有する断片体ペプチド成分を含むことが考えられた。
[0102]
続いて、ピーク1-6に関して、Lys-C+Asp-NもしくはLys-C+Trypsin消化酵素を用いて、含有sAPPβ成分のLC-ESI-MS/MS解析を試みた。各ピーク画分の一部を分注し、減圧乾燥させた後、8M Urea/0.1% Rapigest SF/100 mM Triethylammonium bicarbonate (pH8.6)溶液を添加し、再溶解させた。次に、25 mM dithiothreitol (DTT)を添加し、37℃で1時間保温後、50 mM Iodoacetamide (IAA)を添加し、暗所にて37℃、1時間反応させ、還元アルキル化を行った。これを2倍希釈し、1 μg Lys-Cを添加し、37℃で一晩消化した。翌日、反応液を4倍希釈し、1 μg Asp-Nもしくは1 μg Trypsinを添加して、37℃、6時間消化した。その後、Monospin C18 (GL science社製)を用いて脱塩処理を行い、減圧乾燥させた。LC-ESI-MS/MS解析には、nanoLC/Q-exactive orbitrap MS (Thermo Fisher Scientific社製) を用いた。サンプルを0.1% TFA/5% ACN 5 μLに再溶解させ、流速300 nL/min、バッファーA: 0.1% Formic acid、 バッファーB: 0.1% Formic acid/99.9% ACN、グラジエント濃度: 5-35%B (10 min)、測定時間: 20min、イオンモード: positive、測定モード: TOP10-ddMS/MS、質量範囲 (mass range): m/z 300-1、650、イオン価数(charged ion): +2、 +3、 +4、解像度 (Resolution): R=17、500、プレカーサーイオン質量誤差(MS tolerance): 3 ppm、フラグメントイオン質量誤差(MS/MS tolerance): 0.02 Daの測定条件にて、sAPPβ消化ペプチドのMS/MSスペクトルを観測した。得られたデータはPEAKS 6 software (Bioinformatics solutions社製)を用いて、Fixed modification: Carbamidomethylation of Cys (+57.02)、Variable modification: Oxidation of Met (+15.99)、Miss cleavage: 2 (Asp-N)/1(Trypsin)、Non-specific cleavage: one side of the peptideを考慮してDe novo sequencingを行い、sAPPβ配列(accession number: P05067[18-671]、 Amyloid beta A4 protein、 Homo sapiens)に対して検索・同定を行った。
[0103]
その結果、ピーク2-6において、sAPPβのC末端側配列である5H10エピトープおよび4G4ネオエピトープ配列を観測した。特に、ピーク2-4は全長sAPPβ-C末端側から最大で57残基の配列しか検出できなかったため、10kDa以下の断片体を多く含む画分と考えられた。また、ピーク5においては、全長sAPPβ-N末端側の配列を観測したが、MSD社ELISAのような全長sAPPβを測定するキットでは反応性を示さなかったことから、この画分には、全長sAPPβのN末端側が100残基程度欠損したTruncated formを含むことが推測された。
実施例 12
[0104]
ヒトCSF中sAPPβ-C末端断片体の構造決定
[0105]
4G4/RPC法にて分画され、シオノギELISAにて反応性を示す画分ピーク2および3(図15)に関して、LC-ESI-MS/MSを用いたsAPPβ断片体の構造決定を行った。ピーク2に関しては、含まれるペプチドの分子量測定を行うIntact解析を実施し、ピーク3に関しては、酵素消化してN末端側配列を特定するDigestion解析を実施した。
[0106]
Intact解析に関して、ピーク2画分の一部を分注し、減圧乾燥させたものを試料とした。LC-ESI-MS/MS解析には、nanoLC/Q-exactive orbitrap MS  を用いた。サンプルを0.1% TFA/5% ACN 5 μLに再溶解させ、流速300 nL/min、バッファーA: 0.1% Formic acid、 バッファーB: 0.1% Formic acid/99.9% ACN、グラジエント濃度: 5-35%B (10 min)、測定時間: 20min、イオンモード: positive、測定モード: TOP10-ddMS/MS、質量範囲 (mass range): m/z 300-1、650、イオン価数(charged ion): +2、 +3、 +4、 +5、 +6、 +7、 +8、 >+8、解像度 (Resolution): R=17、500、プレカーサーイオン質量誤差(MS tolerance): 3 ppm、フラグメントイオン質量誤差(MS/MS tolerance): 0.02 Daの測定条件にて、sAPPβ-C末断片体のMS/MSスペクトルを観測した。得られたデータはPEAKS 6 software を用いて、Variable modification: Oxidation of Met (+15.99)を考慮してDe novo sequencingを行い、sAPPβ配列(accession number: P05067[18-671]、 Amyloid beta A4 protein、 Homo sapiens)に対して検索・同定を行った。
Digestion解析に関しては、ピーク3画分の一部を用いて、実施例11で述べた方法と同様の条件でN末端配列の同定を試みた。
[0107]
その結果、ピーク2のIntact解析から、8分子(25、26、36、39、45、47、48、49 mer)、ピーク3のDigestion解析から1分子(57 mer)、計9分子のsAPPβ断片体の構造を決定した(図17)。
実施例 13
[0108]
シオノギELISAとMSD社ELISAを用いたCSF中sAPPβ測定値の比較
[0109]
MMSE testにより、AD患者と判定された5例の脳脊髄液(CSF)を用いて、sAPPβ全長体のみ測定可能なMSD社sAPPβ ELISAキットとsAPPβ全長体および断片体を測定可能なシオノギ(4G4/5H10)sAPPβ ELISAキットの測定値の比較を行った。シオノギELISAの測定方法は実施例4に従った。また、MSD社製ELISAは添付プロトコルに従った。いずれのELISAにおいても、sAPPβ濃度を算出するための検量線に用いたsAPPβ標準品は、MSD社ELISAに添付されているsAPPβ全長体を共通して用いた。結果、MSD社ELISAよりもシオノギELISAの方が、7倍程度測定値が高く検出できた(図18)。また、MSD社ELISAとの比較から、CSF中のsAPPβ全長体は14.5%程度と見積もられ、実際はsAPPβ断片体のほうがCSF中に多量に存在していることが判明した。このことは、CSFをゲル濾過分画し、sAPPβ成分をELISA測定した実施例10(図14b)からも示唆できる。

請求の範囲

[請求項1]
sAPPβ-C末端断片体を認識するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項2]
前記sAPPβ-C末端断片体が配列番号28から配列番号36のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるものである、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項3]
アミロイド前駆体タンパク質における配列番号28で示される領域を認識するsAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項4]
アミロイド前駆体タンパク質における配列番号37で示される領域を認識するsAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項5]
(1)配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、あるいは配列番号14のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する重鎖可変領域;および
(2)配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、あるいは配列番号15のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する軽鎖可変領域、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項6]
(1)下記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
DYWMH(配列番号22)、FINPRSGSTTYNQKFRD(配列番号23)、およびPDFDYFDY(配列番号24)、あるいは、これらの3つのCDRのうちの1つ以上のCDRにおいて1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる3つのCDR、および
(2)下記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
RSSQSIVQSNGNTYLE(配列番号25)、KVSNRFS(配列番号26)、およびFQASHVPLT(配列番号27)、あるいは、これらの3つのCDRのうちの1つ以上のCDRにおいて1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる3つのCDR、
を有する、sAPPβに対するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
[請求項7]
請求項1~6のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いたsAPPβの測定方法。
[請求項8]
請求項1~6のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いたsAPPβが関与する疾患の患者由来の生体試料の選別方法。
[請求項9]
請求項1~6のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いて測定したsAPPβの含有量を指標とする、BACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[請求項10]
請求項1~6のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含むキット。
[請求項11]
請求項1~6のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片を用いたsAPPβが関与する疾患の診断方法。
[請求項12]
配列番号28から配列番号36のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるsAPPβ-C末端断片体。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]