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1. (WO2012090950) PLANT HAVING IMPROVED RESISTIVITY OR SENSITIVITY TO 4-HPPD INHIBITOR

明 細 書

発明の名称

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

非特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012   0013   0014  

発明の効果

0015  

図面の簡単な説明

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084  

実施例

0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132  

産業上の利用可能性

0133   0134  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22  

明 細 書

発明の名称 : 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物

技術分野

[0001]
 本発明は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を植物に付与するための薬剤、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞、その細胞から再生された植物体、並びにそれらの製造方法に関する。また本発明は、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法、及び該判定を利用した4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物の育種方法に関する。

背景技術

[0002]
 バイオエタノール燃料の需要増に伴い、海外からの飼料用穀物の輸入価格が高騰し、日本国内の畜産経営を圧迫している。そこで、飼料の国内生産及び自給率の向上を目的とし、休耕田等を利用した水稲以外の転作作物の作付けが行われている。しかしながら、排水不良等の問題から、これら転作作物の栽培に適した水田には限りがあるため、飼料としてのイネの利用や、高い生産性を備えた飼料イネ専用品種(多収品種)の開発が進められている。かかる多収品種において、その特性である多収性や安定した栽培性を発揮させつつ、家畜の嗜好性や栄養価を向上させるためには、栽培田の雑草防除が重要な栽培管理技術となる(非特許文献1)。また、多収品種やイネに限らず、安定的で経済的な作物の生産には、低コストで省力的であり、簡便な雑草防除が求められており、それには選択性の高い除草剤の開発・施用が効果的であるため(非特許文献2)、施用除草剤に対する抵抗性作物の開発や栽培が必要とされている。
[0003]
 一方、栽培田の雑草防除においては、低薬量で広範囲の雑草に効き、人体や環境にも影響が少ないことから、スルホニルウレア(SU)系除草剤が広く普及している。しかしながら、SU系除草剤に対して耐性を有するイヌホタルイ等の雑草の発生が確認されており、イネ等の栽培管理における問題となっている。
[0004]
 昨今、かかる問題の解決策として、ベンゾビシクロン(BBC)やメソトリオンやテフリルトリオン等のSU系除草剤耐性植物にも効果を示す除草剤成分が開発され、実用化されている。BBC、メソトリオン、テフリルトリオンはいずれも、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)の機能を阻害する薬剤(4-HPPD阻害剤)であり、この酵素の機能を阻害することにより、カロチノイド合成系を間接的に阻害し、葉緑素の崩壊を引き起こすことにより、植物を白化、枯死に至らせる(図1 参照)。これら阻害剤については、食用米品種に対する安全性は十分に確認されているため、イネの栽培において急速に普及しつつある。
[0005]
 しかしながら、多収品種については、4-HPPD阻害剤に対する感受性が、開発段階等において十分に検討されていなかったこともあり、多収品種である飼料用イネの7品種において、4-HPPD阻害剤に弱く、場合によっては枯死に至る可能性があることが報告されている(非特許文献1及び3)。
[0006]
 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を確実に識別できる方法や、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を高めることができる方法が開発されれば、例えば、図2に示すように、食用米品種、飼料用米品種の輪作体系における、前年作の「こぼれ種」の発芽リスク(漏生籾、苗の問題)の制御に4-HPPD阻害剤を活用でき、ひいては飼料用米品種等の生産拡大が期待できる。また、これらの方法を利用することで、必要に応じてイネ等の作物の栽培の区分管理技術にも活用することができる。さらに、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を識別するマーカーとなる遺伝子が見出されば、イネを含む作物を効率的に育種することが可能となる。
[0007]
 このため、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を植物に付与するための技術や、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定するための技術の開発が強く望まれている。しかしながら、これら目的を効率的に達成し得る技術は、いまだ開発されていない。

先行技術文献

非特許文献

[0008]
非特許文献1 : 関野 景介ら、「飼料用イネ19品種の水稲用除草剤ベンゾビシクロン感受性」、日本作物学会紀事、2009年3月25日、227巻、別号、120~121ページ
非特許文献2 : Terry R.Wrightら、Proc Natl Acad Sci USA.、2010年11月23日、107巻、47号、20240~20245ページ
非特許文献3 : 丸山 清明ら、「飼料用イネなどが一部の除草剤に弱いことが判明」、[online]、2010年3月26日、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター、プレスリリース、[2010年9月29日検索]、インターネット〈URL:http://narc.naro.affrc.go.jp/press/h22/0326/index.htm〉

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を効率的に植物に付与しうる技術を提供すること、および植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を効率的に判定しうる技術を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者らは、上記目的を達成すべく、まず、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性に関与する遺伝子の同定を試みた。具体的には、本発明者らは、まず、4-HPPD阻害剤感受性イネと4-HPPD阻害剤抵抗性イネとを用いた量的遺伝子座(QTL)解析を行った。その結果、4-HPPD阻害剤抵抗性決定遺伝子座がイネの第2染色体短腕に座乗していることが判明した。次いで、本発明者らは、QTL解析で特定された遺伝子座にある鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子に、レトロトランスポゾンTos17が挿入された日本晴系統を用いて表現型(4-HPPD阻害型感受性)を調査したところ、Tos17挿入ホモ個体が4-HPPD阻害剤に感受性を示すことを見出した。見出された鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子を、シロイナズナ(A.thaliana)及びイネに導入したところ、これらの形質転換植物が4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を示したことから、この遺伝子が、植物に4-HPPD阻害剤に対する抵抗性をもたらす原因遺伝子(以下、4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenase inhibitor sensitive gene No.1(HIS1)とも称する)であることが裏付けられた。また、イネのHIS1遺伝子と高い相同性を有する遺伝子は、オオムギ、ソルガム、トウモロコシなどにおいても存在していた。
[0011]
 さらに、本発明者らは、PCR解析により、4-HPPD阻害剤感受性イネと4-HPPD阻害剤抵抗性イネにおけるHIS1遺伝子の構造の比較を行った。その結果、4-HPPD阻害剤に対して感受性を示すイネ品種においては、HIS1遺伝子の第4~5エクソンにかけて挿入や欠失が生じていたことから、HIS1遺伝子の機能の抑制が植物に4-HPPD阻害剤に対する感受性をもたらすものと考えられた。
[0012]
 また、イネにおいて、HIS1遺伝子と最も相同性の高いイネ遺伝子(HSL1遺伝子)が第6染色体に座乗していることを明らかにした。さらに、このHSL1遺伝子をイネに導入したところ、この形質転換イネも、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を示すことも明らかにした。
[0013]
 これら知見に基づき、本発明者らは、HIS1遺伝子またはその相同遺伝子を利用することにより、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物体を作出することが可能であり、また、当該遺伝子を標的として、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0014]
 本発明は、より詳しくは、以下のものである。
(1) 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与するための薬剤
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
(2) 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞であって、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞
 (a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
 (d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
(3) (2)に記載の形質転換植物細胞から再生された、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体。
(4) (3)に記載の植物体の子孫又はクローンである、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体。
(5) (3)又は(4)に記載の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体の繁殖材料。
(6) 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体の製造方法であって、
 (I)4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程と、
 (a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
 (d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA
 (II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程と、
を含む方法。
(7) 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与するための薬剤
(a)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)(1)に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
(8) 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞であって、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞
(a)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)(1)に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
(9) (8)に記載の形質転換植物細胞から再生された、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体。
(10) (9)に記載の植物体の子孫又はクローンである、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体。
(11) (9)又は(10)に記載の4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体の繁殖材料。
(12) 4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体の製造方法であって、
 (I)4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程と、
(a)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)(1)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)(1)に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA
 (II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程と、
を含む方法。
(13) 植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法であって、被験植物における下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA又はその発現制御領域の塩基配列を解析することを特徴とする方法
 (a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
 (d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
(14) 植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法であって、被験植物における下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNAの発現又は増幅産物若しくは発現産物の分子量を検出することを特徴とする方法
 (a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
 (c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
 (d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
(15) 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物を育種する方法であって、
 (a)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性の植物品種と任意の品種とを交配させる工程、
 (b)工程(a)における交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、(13)または(14)に記載の方法により判定する工程、および
 (c)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性を有すると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。
(16) 4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物を育種する方法であって、
(a)4-HPPD阻害剤に対し感受性の植物品種と任意の品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、(13)または(14)に記載の方法により判定する工程、および
(c)4-HPPD阻害剤に対し感受性を有すると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。

発明の効果

[0015]
 本発明において同定された遺伝子を利用することにより、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物を効率的に作出することが可能となった。また、本発明において同定された遺伝子を標的として、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を効率的に判定することが可能となった。

図面の簡単な説明

[0016]
[図1] チロシン代謝経路及びカロチノイド生合成経路と、4-HPPD阻害剤との概要と関連を示す図である。
[図2] 食用米品種、飼料用米品種の輪作体系における、前年作の「こぼれ種」の発芽リスクの制御に関する概要を示す図である。
[図3] アグロバクテリウム法によるシロイヌナズナの形質転換に用いた、nosプロモーター(nos-P)でドライブされるカナマイシン抵抗性遺伝子(NPTII)、CaMV35Sプロモーター(CaMV35S-P)でドライブされるハイグロマイシン抵抗性遺伝子(hygR)、及びCaMV35SプロモーターでドライブされるAK065581(HIS1)の各発現カセット、並びに境界配列(RB:右境界配列、LB:左境界配列)を連結したバイナリーベクター(pIG121-Hm/HIS1)の概要を示す図である。
[図4] アグロバクテリウム法によるシロイヌナズナ及びイネの形質転換に用いた、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるハイグロマイシン抵抗性遺伝子(mHPT)、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるAK065581(HIS1)の各発現カセット、並びに境界配列(RB:右境界配列、LB:左境界配列)を連結したバイナリーベクター(35sHIS1 pZH2B)の概要を示す図である。
[図5] アグロバクテリウム法によるトマトの形質転換に用いた、nosプロモーター(NOSpro)でドライブされるカナマイシン抵抗性遺伝子(NPT2)、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるAK065581(HIS1)の各発現カセット、並びに境界配列(RB:右境界配列、LB:左境界配列)を連結したバイナリーベクター(35sHIS1 pZK3)の概要を示す図である。
[図6] アグロバクテリウム法によるシロイヌナズナ及びイネの形質転換に用いた、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるハイグロマイシン抵抗性遺伝子(mHPT)、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるAK241948(HSL1)の各発現カセット、並びに境界配列(RB:右境界配列、LB:左境界配列)を連結したバイナリーベクター(35sHSL1 pZH2B)の概要を示す図である。
[図7] アグロバクテリウム法によるトマトの形質転換に用いた、nosプロモーター(NOSpro)でドライブされるカナマイシン抵抗性遺伝子(NPT2)、CaMV35Sプロモーター(35S Pro)でドライブされるAK241948(HSL1)の各発現カセット、並びに境界配列(RB:右境界配列、LB:左境界配列)を連結したバイナリーベクター(35sHSL1 pZK3)の概要を示す図である。
[図8] イネ染色体上にあるQTL解析によって特定された4-HPPD阻害剤抵抗性遺伝子(AK065581)とその相同遺伝子とを示す図である。
[図9] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えA.thaliana(エコタイプColumbia)の4-HPPD阻害剤(ベンゾビシクロン(BBC))に対する抵抗性を示す写真である。なお図中、「Col」は、A.thaliana野生型(エコタイプColumbia)の結果であることを示し、「♯1」及び「♯3」は、標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えシロイナズナA.thaliana(エコタイプColumbia)の結果であることを示す。
[図10] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(4-HPPD阻害剤感受性品種:関東239号)の4-HPPD阻害剤(ベンゾビシクロン)に対する抵抗性を示す写真である。なお図中、「関東239号」は、関東239号(野生型)の結果であることを示し、「BBC21-23B」及び「BBC21-23C」は、標的遺伝子(AK065581)を導入した関東239号(組換えイネ)の結果であることを示す。
[図11] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(ベンゾビシクロン)に対する抵抗性を示す写真である。なお図中、「日本晴」及び「関東239号」は、各々日本晴(野生型)(4-HPPD阻害剤抵抗性品種)及び関東239号(野生型)の結果であることを示し、「BBC21-1A、2、3、3D、3F、3-3、9、15」は、標的遺伝子(AK065581)を導入した関東239号(組換えイネ)の結果であることを示す(図12~15においても同様)。また、「Application Date」及び「Evaluation Date」は、各々「4-HPPD阻害剤を添加した固形(寒天)培地に種を播いた日」及び「該種から発育した植物体の生育状況を調べた日」を示す(図12~15及び22においても同様)。
[図12] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(メソトリオン)に対する抵抗性を示す写真である。
[図13] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(テフリルトリオン)に対する抵抗性を示す写真である。
[図14] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(テンボトリオン)に対する抵抗性を示す写真である。
[図15] 標的遺伝子(AK065581)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(NTBC)に対する抵抗性を示す写真である。
[図16] 各イネ品種におけるHIS1遺伝子の各エクソン領域を増幅したPCRパターンを示す電気泳動写真である。なお図中、「1」は日本晴、「2」はコシヒカリ、「3」はカサラス、「4」は北陸193号、「5」はタカナリ、「6」はモミロマンの結果であることを示し、「M」はサイズマーカーを示す。また、「エクソン1」は配列番号:3に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号:4に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン1の領域を示し、「エクソン2」は配列番号:5に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号6に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン2の領域を示し、「エクソン3」は配列番号:7に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号:8に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン3の領域を示し、「エクソン4」は配列番号:9に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号:10に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン4の領域を示し、「エクソン5」は配列番号:11に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号:12に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン5の領域を示す。また、「エクソン4前半」は配列番号:13に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列番号:14に記載の塩基配列からなるプライマーを用いたPCRにより増幅されたHIS1遺伝子のエクソン4内部の前半領域を示す。さらに図中、矢頭はそれぞれ100pb、200bp、500bpの大きさであることを示す。
[図17] 日本晴のHIS1遺伝子と、モミロマン及びタカナリの対応遺伝子との構造を比較した結果を示す概要図である。
[図18] 日本晴のHIS1遺伝子と、カサラスの対応遺伝子との構造を比較した結果を示す概要図である。
[図19] HIS1遺伝子とその相同遺伝子(HSL1遺伝子)、各々がコードするタンパク質のアミノ酸配列を比較し、相同性を示す図である。
[図20] HIS1遺伝子が座乗する遺伝子座(第2染色体)とその相同遺伝子(HSL1遺伝子:Os06g0176700/Os06g0178500)が座乗する遺伝子座(第6染色体)との各組織における発現パターンを示す図である。
[図21] HIS1遺伝子及びその相同遺伝子は、イネ科(単子葉)植物に固有の遺伝子群に属することを示す系統樹である。なお、図中の「HSL」は、「HIS1-LIKE」の略称であり、HIS1の相同遺伝子であることを示す。
[図22] HIS1遺伝子と高い相同性をもつ遺伝子(HSL1;AK241948)を導入した組換えイネ(関東239号)の4-HPPD阻害剤(ベンゾビシクロン)に対する抵抗性を示す写真である。なお図中、「関東239号」は、関東239号(野生型)の結果であることを示し、「23-1」、「23-21」及び「23-25」は、相同遺伝子(AK241948)を導入した関東239号(組換えイネ)の結果であることを示す。

発明を実施するための形態

[0017]
 <4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与するための薬剤>
 本発明の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与するための薬剤は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA(以下、本発明の抵抗性DNAと称することがある)、または該DNAが挿入されたベクターを含むことを特徴とする。
[0018]
 本発明における「4-HPPD阻害剤」とは、4-HPPD(4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ)の機能を阻害する薬剤(4-HPPD阻害剤)を意味する。4-HPPD阻害剤は、図1に示すように、4-HPPDの機能を阻害することにより、カロチノイド合成系を間接的に阻害し、葉緑素の崩壊を引き起こして植物を白化させ、枯死に至らせる。本発明における「4-HPPD阻害剤」としては、例えば、ベンゾビシクロン(BBC)、メソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン、(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-シクロヘキサン-1,3ジオン(2-(2-nitro-4-trifluoromethylbenzoyl)cyclohexane-1,3-dione;NTBC)といったトリケトン系4-HPPD阻害剤、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラゾキシフェンといったピラゾール系4-HPPD阻害剤が挙げられる。本発明の抵抗性DNAを用いて植物に抵抗性を付与する対象となる4-HPPD阻害剤としては、BBC、メソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン、NTBCといったトリケトン系4-HPPD阻害剤が好ましく、BBCが特に好ましい。
[0019]
 なお、前述の4-HPPD阻害剤といった除草剤は、その成分が化合物としてきわめて多様であるが、作用機序の面から、下記の通り、いくつかのグループに分類できる(「農薬からアグロバイオギュレーター-病害虫雑草制御の現状と将来」、日本、シーエムシー出版、2010年1月 参照)。
(I) アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)阻害型除草剤
脂質合成の最初の段階に関与するACCaseを阻害するこの除草剤グループは、細胞膜合成を阻害し、植物を生育障害に至らしめる。このグループに属する除草剤はさらに(1)4-アリールオキシフェノキシプロピオン酸系、(2)シクロヘキサンジオン・オキシム系、(3)ジオン系に分類される。
(II) アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害型除草剤
ALSを標的とするこの除草剤のグループは、ALS活性を阻害し分岐アミノ酸生成を阻害することで、植物を生育障害に至らしめる。このグループに属する除草剤はさらに(1)スルホニルウレア系、(2)トリアゾリノン系、(3)トリアゾロピリミジン系、(4)ピリミジニルサリチル酸系、(5)イミダゾリノン系に分類される。
(III) 4-HPPD代謝阻害型除草剤
チロシン代謝経路の4-HPPD代謝を阻害するこの除草剤グループは、植物のカロテノイド合成系を間接的に阻害し、植物を白化・枯死に至らしめる。このグループに属する除草剤はさらに(1)シクロヘキサンジオン系、(2)ピラゾール系、(3)ビシクロ系(4)、イソオキサゾール系、(5)トリケトン系に分類される。また、(1)シクロヘキサンジオン系としては、例えばベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン誘導体が挙げられ、(2)ピラゾール系としては、例えば、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラゾキシフェンが挙げられ、(3)ビシクロ系としては、例えば、3-置換ベンゾイル-ビシクロ[4、1、0]ヘプタン-2、4-ジオン誘導体が挙げられ、(4)イソオキサゾール系としては、例えばイソオキサフルトールが挙げられ、(5)トリケトン系としては、例えば、BBC、メソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオンが挙げられる。
(IV) プロトポルフィリノーゲン-IXオキシダーゼ(PPO)阻害剤除草剤
このグループの除草剤は葉緑素合成を阻害し、細胞膜崩壊から枯死に至らしめる。このグループに属する除草剤はさらに(1)ジフェニルエーテル系、(2)ジアリル系、(3)ピラゾール系に分類される。
(V) 超長鎖脂肪酸伸長酵素(VLCFAE)阻害型除草剤
このグループの除草剤は植物脂質生合成系のうちC20以上の超長鎖脂肪酸生合成系酵素を阻害し、植物を枯死に至らしめる。
(VI) フィトエンデサチュラーゼ(PDS)阻害型除草剤
カロテノイド生合成経路のPDS酵素を阻害するこの除草剤グループは、植物の葉緑素崩壊を引き起こし、植物を白化・枯死に至らしめる。
(VII) PS II阻害型除草剤
このグループの阻害剤は、プラストキノン(PQ)に結合し、その結果PQが関わる光化学系 II(PS II)から光化学系 I(PS I)への電子伝達が阻害され、植物体内での炭素固定機能が不能となり植物が枯死する。
(VIII) 合成オーキシン型除草剤
このグループの阻害剤は、植物体内に低濃度で存在し植物の生長を調節する天然オーキシンのように振る舞い、植物の分化・成長が不正常となり結果的に枯死する。
(IX) EPSP合成酵素(EPSPS)阻害型除草剤
このグループの阻害剤は、シキミ酸回路のEPSPSと結合し、EPSPの合成を阻害する。その結果トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンが生合成されず、植物は枯死する。
[0020]
 本発明の抵抗性DNAの例として、日本晴由来の鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子(HIS1遺伝子;Os02g0280700)の塩基配列を配列番号:1に、前記DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
[0021]
 また、本発明の抵抗性DNAの別の例として、日本晴由来の遺伝子(HIS1-LIKE(HSL)1遺伝子;Os06g0176700/Os06g0178500(AK241948)の塩基配列を配列番号:16に、前記DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:17に示す。
[0022]
 本発明の抵抗性DNAの1つの態様は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)である。
[0023]
 また、本発明の抵抗性DNAの別の態様は、配列番号:17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:16に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)である。
[0024]
 現在の技術水準においては、当業者であれば、かかるDNAの塩基配列情報が得られた場合、その塩基配列に対して種々の改変を行い、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする変異遺伝子の製造を行うことが可能である。また、自然界においても、塩基配列が変異することは起こり得ることである。従って、本発明の抵抗性DNAには、前記活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAも含まれる。ここで「複数」とは、HIS1タンパク質又はHSL1タンパク質のアミノ酸配列全体においては、通常、50アミノ酸以内、好ましくは30アミノ酸以内、より好ましくは10アミノ酸以内、特に好ましくは数個のアミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。
[0025]
 さらに、現在の技術水準においては、当業者であれば、特定の抵抗性DNAが得られた場合、そのDNAの塩基配列情報を利用して、同種若しくは他の植物から、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする相同遺伝子を単離することが可能である。このような相同遺伝子を取得するための植物としては、単子葉植物が好ましく、イネ科植物が特に好ましい。イネ科植物としては、例えば、イネ(例えば、4-HPPD阻害剤抵抗性品種である、日本晴、コシヒカリ、きたあおば、アキヒカリ、あきたこまち、ふくひびき、べこあおば、べこごのみ、夢あおば、北陸193号、リーフスター、たちすがた、クサノホシ、ホシアオバ、ニシアオバ、タチアオバ、まきみずほ、モグモグあおば、はまさり、ミナミユタカ)、オオムギ、ソルガム、トウモロコシなどが挙げられる。
[0026]
 相同遺伝子を取得するための方法としては、例えば、ハイブリダイゼーション技術(Southern,E.M.,J.Mol.Biol.,98:503,1975)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki,R.K.,et al.Science,230:1350-1354,1985、Saiki,R.K.et al.Science,239:487-491,1988)が挙げられる。相同遺伝子を単離するためには、通常、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行なう。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件としては、6M 尿素、0.4% SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を例示できる。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いれば、より相同性の高い遺伝子の単離を期待することができる。本発明の抵抗性DNAには、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAが含まれる。
[0027]
 取得された相同遺伝子がコードするタンパク質は、通常、配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上(例えば、85%、90%、95%、97%、99%以上)の配列の相同性である。配列の相同性は、BLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al.J.Mol.Biol.,215:403-410,1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:2264-2268,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5877,1993)に基づいている。BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。本発明の抵抗性DNAには、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNAが含まれる。このようなDNAとしては、例えば、オオムギ由来の遺伝子(HvHCP1(AF527606))、トウモロコシ由来の遺伝子(ZmHSL1(BT062842)、ZmHSL2(NM_001153464))、ソルガム由来の遺伝子(SbHSL1(XM_002436546))が挙げられる(図21 参照)。
[0028]
 特定の遺伝子がコードするタンパク質が4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するか否かは、例えば、後述の実施例に記載するように、当該遺伝子を植物に導入することにより、作出した植物に前記抵抗性が付与されているか否かを検定することにより判定することができる(実施例2 参照)。すなわち、0.03μMのBBCを含む寒天培地で白化するシロイヌナズナ(A.thaliana:エコタイプColumbia)を用いる場合においては、前記遺伝子をシロイヌナズナに導入することにより作出した形質転換体が、前記BBC濃度の存在下において白化せずに生育できれば、前記遺伝子がコードするタンパク質は4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有していると判定できる。また、0.1μMのBBCを含む寒天培地で白化するBBC感受性イネ品種「関東239号」を用いる場合においては、前記遺伝子を関東239号に導入することにより作出した形質転換体が、前記BBC濃度の存在下において白化せずに生育できれば、前記遺伝子がコードするタンパク質は4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有していると判定できる。さらに、BBC以外のトリケトン系4-HPPD阻害剤(メソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン、NTBC等)を用いる場合においては、前記遺伝子を関東239号に導入することにより作出した形質転換体が、1μMのメソトリオン、2.5μMのテフリルトリオン、0.5μMのテンボトリオン又は1μMのNTBCの存在下において白化せずに生育できれば、前記遺伝子がコードするタンパク質は4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有していると判定できる。
[0029]
 本発明の抵抗性DNAとしては、その形態に特に制限はなく、cDNAの他、ゲノムDNA、および化学合成DNAが含まれる。これらDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、植物からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作成し、これを展開して、HIS1遺伝子(例えば、配列番号:1に記載のDNA)又はHSL1遺伝子(例えば、配列番号:16に記載のDNA)の塩基配列を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、HIS1遺伝子又はHSL1遺伝子に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRを行うことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、植物から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。また、市販のDNA合成機を用いれば、目的のDNAを合成により調製することも可能である。
[0030]
 <4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与するための薬剤>
 また、本発明は、4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与するための薬剤を提供する。後述の実施例において示す通り、HIS1遺伝子がコードするタンパク質の機能が抑制されることにより、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が抑制される。従って、本発明の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与するための薬剤は、4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードするDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含むことを特徴とする。
[0031]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードするDNAの一つの態様は、上記した内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物と相補的なdsRNA(二重鎖RNA)をコードするDNAである。標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するdsRNAを細胞内に導入することにより、導入した外来遺伝子および標的内因性遺伝子の発現がいずれも抑制される、RNAi(RNA干渉、RNA interference)と呼ばれる現象を引き起こすことができる。細胞に約40~数百塩基対のdsRNAが導入されると、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼが、ATP存在下で、dsRNAを3’末端から約21~23塩基対ずつ切り出し、siRNA(short interference RNA)が生じる。このsiRNAに、特異的なタンパク質が結合して、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)が形成される。この複合体はsiRNAと同じ配列を認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部で標的遺伝子の転写産物(mRNA)を切断する。また、この経路とは別にsiRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RsRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成される。このdsRNAが再びダイサーの基質となって、新たなsiRNAを生じて作用を増幅する経路も考えられている。
[0032]
 本発明のdsRNAをコードするDNAは、標的遺伝子、すなわち内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物(mRNA)のいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスDNAと、該mRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスDNAを含み、該アンチセンスDNAおよび該センスDNAより、それぞれアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを作成することができる。
[0033]
 本発明のdsRNAの発現システムをベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNAとセンスRNAを発現させる場合がある。同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入する構成である。
[0034]
 また、異なる鎖上に対向するように、アンチセンスDNAとセンスDNAとを逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNAとセンスRNAとを発現し得るようにプロモーターを対向して備える。この場合には、センスRNAとアンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモーターの種類は異なっていることが好ましい。
[0035]
 また、異なるベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットとをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させる構成である。
[0036]
 本発明に用いるdsRNAとしては、siRNAが好ましい。「siRNA」は、細胞内で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味する。標的遺伝子の発現を抑制することができ、かつ、毒性を示さなければ、その鎖長に特に制限はない。dsRNAの鎖長は、例えば、15~49塩基対であり、好適には15~35塩基対であり、さらに好適には21~30塩基対である。
[0037]
 本発明のdsRNAをコードするDNAとしては、標的配列のインバーテッドリピートの間に適当な配列(イントロン配列が望ましい)を挿入し、ヘアピン構造を持つダブルストランドRNA(self-complementary'hairpin' RNA(hpRNA))を作るようなコンストラクト(Smith,N.A.,et al.Nature,407:319,2000、Wesley,S.V.et al.Plant J.27:581,2001、Piccin,A.et al.Nucleic Acids Res.29:E55,2001)を用いることもできる。
[0038]
 本発明のdsRNAをコードするDNAは、標的遺伝子の塩基配列と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。配列の同一性は上述した手法(BLASTプログラム)により決定できる。
[0039]
 dsRNAにおけるRNA同士が対合した二重鎖RNAの部分は、完全に対合しているものに限らず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。本発明においては、dsRNAにおけるRNA同士が対合する二重鎖RNA領域中に、バルジおよびミスマッチの両方が含まれていてもよい。
[0040]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードするDNAの他の態様は、内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA(アンチセンスDNA)である。アンチセンスDNAが標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などが挙げられる。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する(平島および井上「新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現」、日本生化学会編,東京化学同人、pp.319-347、1993)。本発明で用いられるアンチセンスDNAは、上記のいずれの作用で標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、標的遺伝子のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3’側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3’側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。
[0041]
 アンチセンスDNAは、本発明の抵抗性DNA(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNA)の配列情報を基にホスホロチオネート法(Stein,Nucleic Acids Res.,16:3209-3221,1988)などにより調製することが可能である。調製されたDNAは、後述する公知の方法で、植物へ導入できる。アンチセンスDNAの配列は、植物が持つ内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の相補性を有する。効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNAの長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常、用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。
[0042]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードするDNAの他の態様は、内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNAである。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子、蛋白質核酸酵素,35:2191,1990)。
[0043]
 例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15のC15の3’側を切断するが、活性にはU14が9位のAと塩基対を形成することが重要とされ、15位の塩基はCの他にAまたはUでも切断されることが示されている(Koizumi et.al.,FEBS Lett.228:225,1988)。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である(Koizumi et.al.,FEBS Lett.239:285,1988、小泉誠および大塚栄子,蛋白質核酸酵素,35:2191,1990、Koizumi et.al.,Nucleic.Acids.Res.17:7059,1989)。
[0044]
 また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan,Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Kikuchi and Sasaki,Nucleic Acids Res.19:6751,1992、菊池洋,化学と生物 30:112,1992)。標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(Yuyama et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.186:1271,1992)。このようなリボザイムを用いて標的となる内因性の本発明の抵抗性DNAの転写産物を特異的に切断し、該DNAの発現を抑制することができる。
[0045]
 <本発明にかかるDNAが挿入されるベクター>
 上記本発明のDNA(本発明の抵抗性DNA、又は4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードするDNA)が挿入されるベクターとしては、植物細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。本発明にかかるベクターは、本発明のDNAを恒常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含有しうる。恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、イネのアクチンプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどが挙げられる。また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。このようなプロモーターとしては、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターやタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、低温によって誘導されるイネのlip19遺伝子のプロモーター、高温によって誘導されるイネのhsp80遺伝子とhsp72遺伝子のプロモーター、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナのrab16遺伝子のプロモーター、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、rab16は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。
[0046]
 本発明の薬剤は、本発明のDNAや該DNAが挿入されたベクター自体であってもよく、他の成分が混合されているものであってもよい。このような他の成分としては特に制限はなく、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤が挙げられる。また、後述のアグロバクテリウムを介する方法により本発明の形質転換植物細胞を調製する場合においては、前記DNAが導入されたアグロバクテリウムを含有するものであってもよい。
[0047]
 <本発明の形質転換植物細胞>
 本発明の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードし、前記本発明の抵抗性DNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入されることにより形質転換された植物細胞である。
[0048]
 また、本発明の4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞は、4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする前記DNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入されることにより形質転換された植物細胞である。
[0049]
 本発明の植物細胞の由来する植物としては特に制限はなく、例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ソルガム、トウモロコシ、クリーピングベントグラスなどのイネ科植物、シロイヌナズナなどのアブラナ科植物、トマトなどのナス科植物、ダイズ、アルファルファ、ミヤコグサなどのマメ科植物、ワタなどのアオイ科植物、テンサイ等のアカザ科植物が挙げられる。
[0050]
 これら植物において、特に、4-HPPD阻害剤に感受性の品種が、本発明の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を高める適用対象として好ましい。4-HPPD阻害剤に感受性のイネ品種としては、例えば、ハバタキ、タカナリ、モミロマン、ミズホチカラ、ルリアオバ、おどろきもち、兵庫牛若丸、カサラス、関東239号、が挙げられるが、これらに制限されない。
[0051]
 また、これら植物において、特に、4-HPPD阻害剤に抵抗性の品種が、本発明の4-HPPD阻害剤に対する感受性を高める適用対象として好ましい。4-HPPD阻害剤に抵抗性のイネ品種としては、例えば、日本晴、コシヒカリ、きたあおば、アキヒカリ、あきたこまち、ふくひびき、べこあおば、べこごのみ、夢あおば、北陸193号、リーフスター、たちすがた、クサノホシ、ホシアオバ、ニシアオバ、タチアオバ、まきみずほ、モグモグあおば、はまさり、ミナミユタカが挙げられるが、これらに制限されない。
[0052]
 本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。さらに、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス、未熟胚、花粉などが含まれる。
[0053]
 植物細胞へ本発明の抵抗性DNAが挿入されたベクターを導入する方法としては、例えば、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
[0054]
 <本発明の植物体、およびその繁殖材料、並びに前記植物体の製造方法>
 本発明は、前記形質転換植物細胞から再生された植物体(以下、形質転換植物体とも称する)を提供する。形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。
[0055]
 例えば、イネにおいて、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Datta,S.K.In Gene Transfer To Plants(Potrykus I and Spangenberg Eds.)pp66-74,1995)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Toki et al.Plant Physiol.100,1503-1507,1992)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou et al.Bio/technology,9:957-962,1991)およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei et al.Plant J.6:271-282,1994)など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。
[0056]
 また、オオムギに関する形質転換植物体を作出する手法としては、Tingayら(Tingay S.et al.Plant J.11:1369-1376,1997)、Murrayら(Murray F et al.Plant Cell Report 22:397-402,2004)、およびTravallaら(Travalla S et al.Plant Cell Report 23:780-789,2005)に記載された方法を挙げることができる。
[0057]
 ソルガム植物体を再生させる方法としては、例えば、アグロバクテリウム法やパーティクルガン法により、未熟胚やカルスに遺伝子導入して植物体を再生させる方法、超音波によって遺伝子導入した花粉を用いて受粉する方法が好適に用いられる(J.A.Able et al.,In Vitro Cell.Dev.Biol.37:341-348,2001、A.M.Casas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11212-11216,1993、V.Girijashankar et al.,Plant Cell Rep 24:513-522,2005、J.M.JEOUNG et al.,Hereditas 137:20-28,2002、V Girijashankar et al.,Plant Cell Rep 24(9):513-522,2005、Zuo-yu Zhao et al., Plant Molecular Biology 44:789-798,2000、S.Gurel et al.,Plant Cell Rep 28(3):429-444,2009、ZY Zhao,Methods Mol Biol, 343:233-244,2006、AK Shrawat and H Lorz,Plant Biotechnol J,4(6):575-603,2006、D Syamala and P Devi Indian J Exp Biol,41(12):1482-1486,2003、Z Gao et al.,Plant Biotechnol J,3(6):591-599,2005)。
[0058]
 さらに、シロイヌナズナであれば、Akamaら(Akama et al.Plant Cell Reports 12:7-11,1992)の方法が挙げられ、本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
[0059]
 一旦、ゲノム内に本発明のDNAが導入された植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。従って、本発明には、本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。
[0060]
 また、本発明は、(I)前記本発明の抵抗性DNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程、および(II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程を含むことを特徴とする、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体の製造方法をも提供するものである。
[0061]
 さらに、本発明は、(I)4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする前記DNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程、および(II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程、を含むことを特徴とする、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体の製造方法をも提供するものである。
[0062]
 <植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法>
 本発明の、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法は、被験植物における、本発明の抵抗性DNA若しくは対応する感受性DNA(以下、本発明の検出対象DNAと称する)、又はその発現制御領域の塩基配列を解析することを特徴とする。なお、「感受性DNA」とは4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAのことである。
[0063]
 本発明の検出対象DNAは、典型的には、下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNAである。
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA
 なお、(a)から(d)におけるDNAの意味は、原則として、前記の通りであるが、本発明の検出対象DNAにおいては、特に、内因性のDNAを意味し、また、抵抗性DNAおよび感受性DNAの双方が含まれる意味である。
[0064]
 後述の実施例において示すように、4-HPPD阻害剤抵抗性品種である日本晴におけるHIS1遺伝子と比較して、4-HPPD阻害剤感受性品種であるモミロマン、タカナリ、カサラスにおける対応遺伝子の配列においては、塩基の挿入や欠失が認められる。従って、本発明の検出対象DNAの塩基配列を解析することによって、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定することができる。
[0065]
 また、後述の実施例において示すように、4-HPPD阻害剤に対する感受性は劣性遺伝することから、本発明の検出対象DNAの発現量、並びにその発現量を制御する領域(エンハンサー、プロモータ-、サイレンサー、インスレーター)の塩基配列を解析することによって、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定することもできる。
[0066]
 本発明の検出対象DNA又はその発現制御領域の塩基配列の解析に際しては、本発明の検出対象DNAまたはその発現制御領域をPCRにより増幅した増幅産物を用いることができる。前記PCRを実施する場合において、用いられるプライマーは、本発明の検出対象DNAまたはその発現制御領域を特異的に増幅できるものである限り制限はなく、本発明の検出対象DNAまたはその発現制御領域の配列情報(例えば、配列番号:1)に基づいて適宜設計することができる。好適なプライマーとしては、配列番号:13に記載の塩基配列からなるプライマー及び配列番号:14記載の塩基配列からなるプライマーが挙げられる。これらプライマーを適宜組み合わせて、本発明の検出対象DNAまたはその発現制御領域の特定の塩基配列を増幅することができる。
[0067]
 なお、被験植物の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性の判定においては、例えば、「対照の塩基配列」と比較する工程を含むことができる。被験植物における本発明の検出対象DNA又はその発現制御領域の塩基配列と比較する「対照の塩基配列」は、イネであれば、典型的には、4-HPPD阻害剤抵抗性品種(例えば、日本晴、コシヒカリ、きたあおば、アキヒカリ、あきたこまち、ふくひびき、べこあおば、べこごのみ、夢あおば、北陸193号、リーフスター、たちすがた、クサノホシ、ホシアオバ、ニシアオバ、タチアオバ、まきみずほ、モグモグあおば、はまさり、ミナミユタカ)または4-HPPD阻害剤感受性品種(例えば、ハバタキ、タカナリ、モミロマン、ミズホチカラ、ルリアオバ、おどろきもち、兵庫牛若丸、カサラス、関東239号)における本発明の検出対象DNA又はその発現制御領域の塩基配列である。
[0068]
 なお、本発明の感受性DNAの例として、タカナリ又はモミロマン由来の鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子(変異HIS1遺伝子)の塩基配列を配列番号:15に示す。
[0069]
 決定した被験植物における本発明の検出対象DNA又はその発現制御領域の塩基配列と、4-HPPD阻害剤抵抗性品種におけるそれらの塩基配列(例えば、配列番号:1、配列番号:16)または4-HPPD阻害剤感受性品種におけるそれらの塩基配列(例えば、配列番号:15)とを比較することにより、被験植物が4-HPPD阻害剤に対して抵抗性を有するか感受性を有するかを評価することができる。例えば、4-HPPD阻害剤抵抗性品種における塩基配列(例えば、配列番号:1)と比較して、塩基配列において大きな相違がある場合(特に、新たな終止コドンの出現やフレームシフトにより、コードするタンパク質の分子量やアミノ酸配列に大きな変化が生じる場合)、被験植物は4-HPPD阻害剤に対して感受性を有している蓋然性が高いと判定される。
[0070]
 なお、本発明の判定方法における、被験植物からのDNAの調製は、常法、例えば、CTAB法を用いて行うことができる。DNAを調製するための植物としては、成長した植物体のみならず、種子や幼植物体を用いることもできる。また、塩基配列の決定は、常法、例えば、ジデオキシ法やマキサム-ギルバート法などにより行なうことができる。塩基配列の決定においては、市販のシークエンスキットおよびシークエンサーを利用することができる。
[0071]
 被験植物における本発明の検出対象DNAまたはその発現制御領域の塩基配列が、対照の塩基配列と相違するか否かは、上記した直接的な塩基配列の決定以外に、種々の方法により間接的に解析することができる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用したRFLP法やPCR-RFLP法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法が挙げられる。
[0072]
 本発明の、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する別の方法は、被験植物における前記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNAの発現又は増幅産物若しくは発現産物の分子量を検出することを特徴とする。
[0073]
 後述の実施例において示すように、4-HPPD阻害剤抵抗性品種である日本晴、コシヒカリ、北陸193号におけるHIS1遺伝子の第4エクソン前半領域は、4-HPPD阻害剤感受性品種であるモミロマンやタカナリにおけるそれらよりも長い。従って、本発明の検出対象DNAの増幅産物または発現産物の分子量を検出することによって、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定することができる。
[0074]
 また、後述の実施例において示すように、4-HPPD阻害剤に対する感受性は劣性遺伝することから、本発明の検出対象DNAの発現を検出することによって、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定することができる。
[0075]
 ここで「DNAの発現の検出」には、転写レベルにおける検出および翻訳レベルにおける検出の双方を含む意である。また、「発現の検出」には、発現の有無の検出のみならず、発現の程度の検出も含む意である。
[0076]
 本発明の検出対象DNA(例えば、ゲノムDNA)の増幅は、PCR(Polymerase chain reaction)法により実施することができる。
[0077]
 本発明にかかるDNAの転写レベルにおける検出は、常法、例えば、RT-PCR(Reverse transcribed-Polymerase chain reaction)法やノーザンブロッティング法により実施することができる。前記PCRを実施する場合において用いられるプライマーは、本発明の検出対象DNAを特異的に増幅できるものである限り制限はなく、既に決定された本発明の抵抗性DNA若しくは感受性DNAの配列情報(例えば、配列番号:1、配列番号:16、配列番号:15)に基づいて適宜設計することができる。好適なプライマーとしては、配列番号:3~14のいずれかに記載の塩基配列からなるプライマーが挙げられる。また、これらプライマーを適宜組み合わせて、本発明の検出対象DNAの特定の塩基配列を増幅することができる。
[0078]
 一方、翻訳レベルにおける検出は、常法、例えば、ウェスタンブロッティング法により、実施することができる。ウェスタンブロッティングに用いる抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、これら抗体の調製方法は、当業者に周知である。
[0079]
 また、本発明の検出対象DNAの発現は、本発明の検出対象DNAの発現制御領域の下流にレポーター遺伝子を発現可能に連結したベクターを構築し、当該ベクターを植物細胞に導入し、レポーター活性を検出することにより、判定することもできる。
[0080]
 遺伝子発現の検出の結果、被験植物において、本発明の検出対象DNAの発現量が4-HPPD阻害剤抵抗性品種(例えば、イネにおいては、日本晴、コシヒカリ、きたあおば、アキヒカリ、あきたこまち、ふくひびき、べこあおば、べこごのみ、夢あおば、北陸193号、リーフスター、たちすがた、クサノホシ、ホシアオバ、ニシアオバ、タチアオバ、まきみずほ、モグモグあおば、はまさり、ミナミユタカ)の発現量よりも有意に低ければ(例えば、本発明の検出対象DNAが実質的に発現していなければ)、また、本発明の検出対象DNAの増幅産物または発現産物の分子量が4-HPPD阻害剤抵抗性品種(例えば、日本晴、コシヒカリ、きたあおば、アキヒカリ、あきたこまち、ふくひびき、べこあおば、べこごのみ、夢あおば、北陸193号、リーフスター、たちすがた、クサノホシ、ホシアオバ、ニシアオバ、タチアオバ、まきみずほ、モグモグあおば、はまさり、ミナミユタカ)における分子量と有意に異なれば、被験植物は4-HPPD阻害剤に対して感受性を有している蓋然性が高いと判定される。実際、後述の実施例において示すように4-HPPD阻害剤抵抗性品種(日本晴、コシヒカリ、北陸193号)の抵抗性DNAと比較して、4-HPPD阻害剤感受性品種(モミロマン、タカナリ)における感受性DNAの分子量は有意に小さい。
[0081]
 <本発明の植物を育種する方法>
 本発明は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物を育種する方法を提供する。かかる育種方法は、(a)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性の植物品種と任意の植物品種とを交配させる工程、(b)交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、上記本発明の判定方法により判定する工程、および(c)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性を有すると判定された品種を選抜する工程を含む。
[0082]
 また、本発明は、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物を育種する方法を提供する。かかる育種方法は、(a)4-HPPD阻害剤に対し感受性の植物品種と任意の植物品種とを交配させる工程、(b)交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、上記本発明の判定方法により判定する工程、および(c)4-HPPD阻害剤に対し感受性を有すると判定された品種を選抜する工程を含む。
[0083]
 4-HPPD阻害剤に対し抵抗性の植物品種と交配させる「任意の植物品種」としては、例えば、4-HPPD阻害剤感受性品種、4-HPPD阻害剤抵抗性品種と4-HPPD阻害剤感受性品種との交配により得られた個体が挙げられるが、これらに制限されない。また、4-HPPD阻害剤に対し感受性の植物品種と交配させる「任意の植物品種」としては、例えば、4-HPPD阻害剤抵抗性品種、4-HPPD阻害剤抵抗性品種と4-HPPD阻害剤感受性品種との交配により得られた個体が挙げられるが、これらに制限されない。4-HPPD阻害剤に対する感受性は劣性遺伝することから、交配により得られた個体が4-HPPD阻害剤に対し感受性を示すためには、4-HPPD阻害剤に対し感受性型のHIS1遺伝子をホモで保有することが好ましい。
[0084]
 本発明の育種方法を利用すれば、4-HPPD阻害剤抵抗性又は感受性の品種を、種子や幼植物の段階で選抜することが可能となり、当該形質を有する品種の育成を、短期間で行うことが可能となる。
実施例
[0085]
 以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、下記実施例は下記の通りに実験、解析を行った。
[0086]
 <QTL解析>
 コシヒカリ/ハバタキ染色体断片置換系統、および、たちすがた//たちすがた/モミロマンのBC1F4を供試した。すなわち、抵抗性品種コシヒカリを遺伝的背景とし、その染色体断片の一部をインド型感受性品種ハバタキの染色体に置き換えたコシヒカリ/ハバタキ染色体断片置換系統群(KHSL)を解析した。なお、KHSLは32系統で構成され、ハバタキの全12染色体のすべてについて解析が可能となっている(KHSLについては、村田和優ら、「コシヒカリを遺伝的背景としたインド型品種ハバタキの染色体断片置換系統群の作出と評価」、育種学研究、2009年3月27日、第11巻、別1号、66ページ 参照のこと)。また、感受性品種モミロマンに抵抗性品種たちすがたを1回戻し交雑して得られたBC1F4系統群94系統もSSRマーカー80種を用いて解析した(用いたSSRマーカーについては 「Development and mapping of 2240 new SSR markers for rice (Oryza sativa L.)」、DNA Res、2002年、9巻、6号、199~207ページ 、並びにhttp://www.gramene.org/ 参照のこと)。
[0087]
 <Tos17挿入系統を用いた連鎖解析>
 イネにおいて発見されたレトロトランスポゾンであるTos17は、組織培養によって活性化され、ゲノム内に自らのコピーを転移させる。転移先が遺伝子の内部であった場合、その遺伝子は破壊され、突然変異を引き起こすことが知られている(Hirochikaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1996年、93巻、7783~7788ページ 参照)。本実施例においては、この現象を利用して組織培養により作出された変異を蓄積したイネの集団(ミュータントパネル、データベース名:Tos17ミュータントパネルデータベース(http://tos.nias.affrc.go.jp/~miyao/pub/tos17/))を利用した。Tos17ミュータントパネルデータベースから、QTL解析で特定された遺伝子座にあるBBC感受性との関与が強く疑われる、鉄・アスコルビン酸酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子の転写部位にTos17が挿入された2系統を選び出した。そして、これら2系統の各15個体を栽培して得られた自殖種子を用いて、表現型(BBC感受性)と遺伝子型(Tos17の挿入)について調査した。
[0088]
 <遺伝子クローンの取得>
 QTL解析で特定された遺伝子座にある鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子と推定されるmRNA(AK065581)をイネジーンバンクから入手した。
[0089]
 <ベクター構築および形質転換>
 nosプロモーターでドライブされるカナマイシン抵抗性遺伝子(NPT2)又はCaMV35Sプロモーターでドライブされるハイグロマイシン抵抗性遺伝子(mHPT)と、CaMV35SプロモーターでドライブされるAK065581(HIS1遺伝子)又はAK241948(HSL1遺伝子)の各発現カセットとを連結したバイナリーベクターを構築し(図3~7 参照)、アグロ法の形質転換に供試した。
[0090]
 A.thalianaの形質転換は、エコタイプ「Columbia」を用いて、Floral dip法にて行った(Weigel and Glazebrook, Arabidopsis, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002) p131-132 参照)。すなわち先ず、抗生物質を含む液体培地(LBまたはYEB)においてアグロバクテリウムを振とう培養し、およそ16時間後に培養液のうち2mlを抗生物質を含む液体培地(LBまたはYEB)に加え、さらに振とう培養した。そして、そのおよそ16時間後、培養液を4℃、8000rpmにて10分間、遠心処理をし、上澄み液を捨て、得られた沈殿物を5%スクロースを含む液500mlに懸濁した。そして、形質転換の直前に形質転換用試薬 silwet(登録商標:SILWET L-77、製品番号:BMS-SL7755、バイオメディカルサイエンス社製)を最終濃度0.025%になるように加えた。次いで、得られたアグロバクテリウム懸濁液に、既に開花、受粉している花芽を除去したアラビドプシスを30~120秒間浸した。その後、およそ16時間静置した後、植物体を生育させ、種子を得た。
[0091]
 イネの形質転換は、BBC感受性イネ品種関東239号を用いて、「Taniguchiら、Plant Cell Rep.、2010年、29巻、11号、1287~1295ページ」に記載の方法の一部を改変して行った。すなわち先ず、滅菌した完熟種子をN6D培地に置床し30℃で7日間培養し、アグロバクテリウムを感染させ、アセトシリンゴン(AS)を含むN6培地(2N6-AS培地)暗黒条件下で3日間、25℃共培養した。その後、感染した組織は、カルベニシリンを含むN6D培地で4~6週間(18時間日長)、40mg/L ハイグロマイシン(Hyg)存在下で培養し、Hyg耐性カルスを再分化させた。
[0092]
 トマトの形質転換は、品種「マイクロトム」を供試し、図5及び7に示すベクター(35SHIS1 pZK3、35SHSL1 pZK3)を用いて、アグロバクテリウム法で実施した。なお、原品種マイクロトムは、25℃のインキュベータで、0.3μMのベンゾビシクロン(BBC)を含む寒天培地で種子を発芽させると、約2週間後に葉部の白化が明瞭に確認できる。
[0093]
 前記トマトの形質転換の結果、HIS1遺伝子又はHSL1遺伝子が導入された複数の再分化植物体を得られた。また、再分化した植物体はPCRによって導入遺伝子を確認した。
[0094]
 <組換え体のBBC抵抗性検定>
 作出したA.thaliana組換え体(T2世代)およびイネ組換え体(T0世代)のBBC抵抗性検定には、株式会社エス・ディー・エス バイオテック保有のBBC原体を後述の濃度にて用いた。
[0095]
 <組換え体のトリケトン系4-HPPD阻害剤に対する抵抗性の検定>
 作出したイネ組換え体(T1及びT2世代)のトリケトン系4-HPPD阻害剤、すなわちメソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン及びNTBC抵抗性検定には市販の各試薬を後述の濃度にて用いた。
[0096]
 <PCR>
 HIS1(AK065581)の5つの各エクソン領域内を特異的に増幅するプライマーを設計しPCRに供試した。なお、PCRは、表1において示す塩基配列からなるプライマーを用いて、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒の35サイクルにて行った。また、鋳型DNAとしては、BBC感受性イネ品種(モミロマン、タカナリ、カサラス)およびBBC抵抗性イネ品種(日本晴、コシヒカリ、北陸193号)の葉からCTAB法を用いて抽出したゲノムDNAを用いた。
[0097]
[表1]


[0098]
 (実施例1) 4-HPPD阻害剤抵抗性遺伝子座の特定
 ジャポニカ型イネの中で、4-HPPD阻害剤の一種であるBBCに対する感受性を有する品種は知られていない。一方、ジャポニカ型とインディカ型の交雑により育成されたイネ品種にはBBC感受性が出現することがある。
[0099]
 そこで、BBC抵抗性イネ品種「コシヒカリ」と感受性イネ品種「ハバタキ」とを用いた、コシヒカリ/ハバタキ染色体断片置換系統(KHSL)のQTL解析を前記の通り行った。その結果、第2染色体短腕領域がハバタキ型に置換されたKHSL(KHSL04)のみが感受性を示したことから、BBC抵抗性を決定する遺伝子座はコシヒカリの第2染色体短腕上にあることが明らかになった(表2 参照)。なお、表2にはKHSLのQTL解析の結果の一部を示す。また、表2中「A」はマーカーがコシヒカリ由来であることを示し、「B」はマーカーがハバタキ由来であることを示す。
[0100]
[表2]


[0101]
 さらに、BBC抵抗性イネ品種「たちすがた」と感受性イネ品種「モミロマン」とを用いた、たちすがた//たちすがた/モミロマンのBC1F4のQTL解析を前記の通り行った。その結果、前記同様にBBC抵抗性を決定する遺伝子座はたちすがたの第2染色体短腕上にあることが明らかになり、異なるイネ品種を供試したQTL解析で特定された遺伝子座は同一領域であり、イネ品種「日本晴」データベース情報によると、11種の候補遺伝子が存在することが確認された(表3 参照)。
[0102]
[表3]


[0103]
 また、11種の候補遺伝子の塩基配列及び推定アミノ酸配列はいずれも、BBCで影響を受けるチロシン代謝経路およびカロテノイド生合成経路(図1 参照)の酵素及びその遺伝子と相同性がないことも明らかになった。
[0104]
 なお、イネ品種「日本晴」データベース情報によると、BBCで活性阻害を受けるHPPD酵素をコードする既知遺伝子ともっとも相同性の高いイネ遺伝子は第2染色体短腕上にあるが、QTL解析で特定された遺伝子座とは異なっていた(図8 参照)。
[0105]
 さらに、BBC抵抗性に関与する遺伝子が座乗する領域を絞り込むため、KHSL04とコシヒカリとを交雑したF2集団、およびモミロマンにたちすがたを1回戻し交雑して得られたBC1F4系統群から第2染色体短腕に関する解析集団を作出し、2集団を用いて再度の解析を試みた結果、BBC抵抗性に関与する遺伝子はSSRマーカーRM12980とRM12983との間に存在することが明らかとなった。そして、絞り込んだ領域に存在する遺伝子をRAP-DBより検索した結果、グリオキサラーゼ 類似タンパク質(741bp)を除く、10個の候補遺伝子の存在が確認された。
[0106]
 (実施例2) 4-HPPD阻害剤抵抗性遺伝子の同定
 前述の通り、QTL解析によって4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を決定する遺伝子がイネ第2染色体短腕上にあることが示唆された。そこで当該遺伝子座にある鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子に注目し、Tos17挿入系統を供試して表現型(BBC高感受性)と遺伝子型との連鎖関係を明らかにするとともに、BBC感受性のA.thaliana及びイネに当該遺伝子を導入した組換え体を作出し、BBC抵抗性付与効果を調査した。
[0107]
 すなわち、QTL解析で特定されたBBC抵抗性決定遺伝子座には、BBCで活性阻害されるHPPD酵素と同様、鉄・アスコルビン酸依存性酸化還元酵素と推定される遺伝子(以下、「標的遺伝子」とも称する)がある(表4 参照)。
[0108]
[表4]


[0109]
 Tos17挿入系統の原品種「日本晴」はBBC抵抗性品種であるが、標的遺伝子の転写部位にTos17が挿入された系統ではBBC感受性個体が出現する。合計30個体を供試した連鎖解析により、表現型(BBC感受性)と遺伝子型(Tos17挿入ホモ型)について調査した結果、Tos17挿入ホモ6個体の後代はすべてBBC感受性を示した。また、Tos17挿入ヘテロ18個体の後代からは、すべてBBC感受性の個体を分離した。この結果から、鉄・アスコルビン酸酸化還元酵素遺伝子と推定される遺伝子がBBC抵抗性に深く関与することが示唆された。
[0110]
 そこで、標的遺伝子がBBC抵抗性遺伝子であることを実証するため、0.03μMのBBCを含む寒天培地で白化するA.thaliana(エコタイプColumbia)に標的遺伝子を導入した組換え体(T2世代)を作製し、前記BBC濃度の存在下におけるこの組換え体の生育状況を調べた。得られた結果を図9に示す。
[0111]
 また、0.1μMのBBCを含む寒天培地で白化するBBC感受性イネ品種「関東239号」に標的遺伝子を導入した組換え体(T0世代)を作製し、300ga.i./haのBBCで処理した培土におけるこの組換え体の生育状況を調べた。得られた結果を図10に示す。
[0112]
 さらに、0.1μMのBBCを含む寒天培地で白化するBBC感受性イネ品種「関東239号」に標的遺伝子を導入した組換え体を作製し、T1種子又はT2種子を得た。これらを2μMのBBCを含む寒天培地に播種し組換え体の生育状況を調べた。得られた結果を図11に示す。また、前記種子を1μMのメソトリオン、2.5μMのテフリルトリオン、0.5μMのテンボトリオン又は1μMのNTBCを含む寒天培地に播種し組換え体の生育状況を調べた。得られた結果を図12~15に示す。
[0113]
 図9に示した結果から明らかなように、標的遺伝子を導入した前記A.thaliana組換え体は、0.03μMのBBCを含む寒天培地で白化せず生育した。また図10に示した結果から明らかなように、標的遺伝子を導入した前記イネ組換え体は、300ga.i./haのBBCで処理した培土で白化せずに生育した。さらに、図11に示した結果から明らかなように、標的遺伝子を導入した前記イネ組換え体は、2μMのBBCで処理した寒天培地で白化せずに生育した。なお、この濃度はBBC抵抗性品種である日本晴を白化させる高濃度である。
[0114]
 また、図12~15に示した結果から明らかなように、標的遺伝子を導入した前記イネ組換え体は、BBC以外のトリケトン系4-HPPD阻害剤(メソトリオン、テフリルトリオン、テンボトリオン又はNTBC)を含む培地においても白化せずに生育した。すなわち、標的遺伝子を導入したイネ組換え体は、1μMのメソトリオン、2.5μMのテフリルトリオン、0.5μMのテンボトリオン又は1μMのNTBCで処理した寒天培地で白化せずに生育した。
[0115]
 これらの結果から、標的遺伝子は4-HPPD阻害剤抵抗性遺伝子(HIS1遺伝子)、すなわち4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAであることが実証された。
[0116]
 (実施例3) HIS1遺伝子の塩基配列解析による4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性の判定
 日本型イネ第2染色体にあるHIS1遺伝子は特定されたが、HIS1遺伝子を増幅するPCRを行うと、BBC感受性イネ品種においても増幅産物は得られる。またBBC感受性イネ品種のなかでカサラスは、BBC処理条件によっては感受性・抵抗性の判定が困難な場合がある。そこで、HIS1遺伝子の特定領域を増幅するPCRにより、HIS1遺伝子の塩基配列とBBC感受性の程度との関連の有無を判定できるかどうかを調べた。
[0117]
 なお、図には示さないが、モミロマン、タカナリ、カサラスはいずれもBBC感受性品種であるが、その程度が異なり、カサラスのBBC感受性と比較して、モミロマン及びタカナリはより強いBBC感受性を示すことは確認している。
[0118]
 そこで先ずは、HIS1遺伝子の5つの各エクソン領域内を特異的に増幅するプライマーを用いたPCRによって、BBC感受性品種(モミロマン、タカナリ、カサラス)とBBC抵抗性品種(日本晴、コシヒカリ、北陸193号)とを解析した。得られた結果は図16に示す。
[0119]
 図16に示した結果から明らかなように、HIS1遺伝子の第4エクソンの前半部分を特異的に増幅するプライマーを用いたPCRにて解析した結果、BBC強感受性品種のモミロマン及びタカナリではBBC抵抗性品種と比較して、PCR産物の分子量が小さいことが分かった。
[0120]
 さらに、BBC感受性品種 モミロマン及びタカナリと、BBC抵抗性品種 日本晴とをゲノムDNAの配列において比較した。得られた結果は図17に示す。
[0121]
 図17に示した結果から明らかなように、前述のPCRの解析結果と合致して、モミロマン及びタカナリにおいては、HIS1遺伝子の第4エクソンの前半部分において28bpが欠失していることが分かった。さらに、HIS1遺伝子の第4エクソンと第5エクソンとの間のイントロンにおいても、19bp及び16bpの欠失部位があることは明らかになった。また、HIS1遺伝子の第5エクソンにおいては、1bp(アデニン)の欠失と5bpの挿入とがあることも確認された。
[0122]
 また、BBC感受性品種 カサラスと、BBC抵抗性品種 日本晴とをゲノムDNAの配列において比較した。得られた結果は図18に示す。
[0123]
 図18に示した結果から明らかなように、前述のPCRの解析結果と合致して、カサラスにおいては、HIS1遺伝子の第4エクソンの前半部分における欠失は認められなかった。しかし、HIS1遺伝子の第4エクソンと第5エクソンとの間のイントロンにおいては、TAの挿入と16b.p.の欠失部位とがあることが明らかになった。また、HIS1遺伝子の第5エクソンにおいては、アデニンの欠失、5bpの挿入、及びシトシンの挿入があることも確認された。
[0124]
 従って、かかる結果から、HIS1遺伝子の第4エクソンから第5エクソンにかけての塩基の欠失及び/又は挿入によって、HIS1遺伝子がコードするタンパク質が有する4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性が抑制されていることが明らかになった。また、モミロマン及びタカナリと、カサラスとの4-HPPD阻害剤に対する感受性の相違は、HIS1遺伝子の第4エクソンの前半部分における欠失の有無等に起因するものだと考えられる。
[0125]
 (実施例4) HIS1遺伝子と相同性を有する遺伝子の解析
 次に、HIS1遺伝子と相同性を有する遺伝子をデータベースにて探索した。すなわち、NCBI Blastを用い、HIS-1遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をクエリーとしてtBLASTN検索(デフォルト設定)を行った。なお、サーチ対象データはnr/nt(non-redundant nucleotide collection)である。
[0126]
 その結果、HIS1遺伝子と最も相同性の高いイネ遺伝子(HSL1遺伝子)は第6染色体に座乗し、推定アミノ酸配列の相同性は約86%と高いことが明らかになった(図19 参照)。また、第6染色体上の相同遺伝子は近傍で多重遺伝子群(クラスター)を形成していることも明らかになった。
[0127]
 しかしながら、これらの第6染色体上の相同遺伝子がコードするタンパク質は、HIS1遺伝子に変異が生じている感受性品種においても発現していると推定される。
[0128]
 この点に関しては、図20に示す通り、HIS1遺伝子は主に葉で発現しているが、第6染色体上の相同遺伝子は主に根や登熟中の種子で発現していることから、第6染色体上の相同遺伝子がコードするタンパク質は、潜在的に4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有しているが、葉での発現量が低いためその効果が現れていないという可能性が考えられる
 なお図20は、RiceXPro(イネ遺伝子発現データベース/http://ricexpro.dna.affrc.go.jp/)を用いて、HIS1(Os02g0280700)と第6染色体上の相同遺伝子(Os06g0176700/Os06g0178500)の組織・生育時期別の発現パターンを解析した結果に基づく(Satoら、Nucleic Acids Res.2010年11月2日[Epub ahead of print] 参照)。
[0129]
 また、HIS1遺伝子の相同遺伝子は単子葉植物のみに散在し、双子葉植物においては確認されないことが明らかになった(図21 参照)。さらに、HIS1遺伝子と相同性がやや低い遺伝子群は、エチレン合成系ACCオキシダーゼ遺伝子群をはじめ植物全般に分布しているが、機能的には異なると考えられる。なお図21は、tBLASTN解析により、HIS1と相同性を持つタンパク質のアミノ酸配列を抽出し、得られた配列をもとに、ClustalWソフトウェアを用いて系統樹解析を行い、TreeViewソフトウェアによって描画したものである。
[0130]
 (実施例5) HSL1遺伝子の解析
 HIS1遺伝子と最も相同性高く、第6染色体に座乗するイネ遺伝子(HSL1遺伝子)についても、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAであるかどうかを調べた。
[0131]
 すなわち、0.1μMのBBCを含む寒天培地で白化するBBC感受性イネ品種「関東239号」に標的遺伝子を導入した組換え体を作製し、T1種子又はT2種子を得た。これらを0.12μMのBBCを含む寒天培地に播種し組換え体の生育状況を調べた。得られた結果を図22に示す。
[0132]
 図22に示した結果から明らかなように、相同遺伝子を導入したイネ組換え体は0.12μMのBBCを含む寒天培地で白化せずに生育した。この濃度はBBC抵抗性品種「日本晴」が白化しない濃度である。この結果から、耐性の程度は低いものの、HSL1遺伝子はHIS1遺伝子と同様に4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAであることが実証された。

産業上の利用可能性

[0133]
 本発明の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物を用いて栽培を行えば、栽培田や栽培畑の雑草防除を効率的に行うことができる。また、本発明の植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法は、例えば、輪作体系における前年作のこぼれ種の発芽リスクの軽減に利用することができる。このように、本発明は、有用植物の収穫量の安定や増大に大きく貢献し得るものである。
[0134]
配列番号3~14
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列

請求の範囲

[請求項1]
 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与するための薬剤
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
[請求項2]
 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞であって、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
[請求項3]
 請求項2に記載の形質転換植物細胞から再生された、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体。
[請求項4]
 請求項3に記載の植物体の子孫又はクローンである、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体。
[請求項5]
 請求項3又は4に記載の4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体の繁殖材料。
[請求項6]
 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物体の製造方法であって、
 (I)4-HPPD阻害剤に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程と、
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA
 (II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程と、
を含む方法。
[請求項7]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与するための薬剤
(a)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)請求項1に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
[請求項8]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞であって、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞
(a)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)請求項1に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
[請求項9]
 請求項8に記載の形質転換植物細胞から再生された、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体。
[請求項10]
 請求項9に記載の植物体の子孫又はクローンである、4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体。
[請求項11]
 請求項9又は10に記載の4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体の繁殖材料。
[請求項12]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物体の製造方法であって、
 (I)4-HPPD阻害剤に対する感受性を植物に付与する活性を有するRNAをコードする下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA、または該DNAが挿入されたベクターを植物細胞に導入する工程と、
(a)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)請求項1に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA
 (II)工程(I)において前記DNAまたは該DNAが挿入されたベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生する工程と、
を含む方法。
[請求項13]
 植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法であって、被験植物における下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNA又はその発現制御領域の塩基配列を解析することを特徴とする方法
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
[請求項14]
 植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法であって、被験植物における下記(a)~(d)からなる群から選択される少なくとも一つのDNAの発現又は増幅産物若しくは発現産物の分子量を検出することを特徴とする方法
(a)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号:1又は16に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(d)配列番号:2又は17に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA。
[請求項15]
 4-HPPD阻害剤に対する抵抗性が高められた植物を育種する方法であって、
(a)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性の植物品種と任意の品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、請求項13または14に記載の方法により判定する工程、および
(c)4-HPPD阻害剤に対し抵抗性を有すると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。
[請求項16]
 4-HPPD阻害剤に対する感受性が高められた植物を育種する方法であって、
(a)4-HPPD阻害剤に対し感受性の植物品種と任意の品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を、請求項13または14に記載の方法により判定する工程、および
(c)4-HPPD阻害剤に対し感受性を有すると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]