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1. WO2012057114 - CONDUCTIVE ANILINE POLYMER, METHOD FOR PRODUCING SAME, AND METHOD FOR PRODUCING CONDUCTIVE FILM

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明 細 書

発明の名称 導電性アニリン系ポリマーおよびその製造方法、導電性フィルムの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023  

発明の効果

0024  

図面の簡単な説明

0025  

発明を実施するための形態

0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157  

実施例

0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201  

符号の説明

0202  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 導電性アニリン系ポリマーおよびその製造方法、導電性フィルムの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、導電性アニリン系ポリマーおよびその製造方法、導電性フィルムの製造方法に関する。
 本願は、2010年10月26日に、日本に出願された特願2010-240039号、2011年01月17日に、日本に出願された特願2011-006849号、2011年02月17日に、日本に出願された特願2011-032053号、2011年03月29日に、日本に出願された特願2011-071517号、および2011年04月05日に、日本に出願された特願2011-083579号、に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 多様な用途で用いられる導電性ポリマーとしては、スルホン化ポリアニリン系の導電性ポリマーが知られている。
 スルホン化ポリアニリンの製法として、例えば特許文献1には、アニリン、N-アルキルアニリンおよびフェニレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物とアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸とを共重合するアニリン系共重合体の製造法が開示されている。
 しかし、特許文献1に記載の方法で得られる共重合体は、スルホン化率が低く、水単独には溶解し難いため、加工性に乏しいという問題があった。また、精製が難しく、ポリマー中に含まれる不純物等により、導電性が低くなるという問題点を有していた。
[0003]
 これらの課題を克服するため、全ての芳香環に酸性基が導入されているポリアニリンの製法として、特許文献2、3には、塩基性化合物を含む溶液中にスルホン酸基置換アニリンまたはカルボキシ基置換アニリンなどの酸性基置換アニリンを溶解させ、酸化剤を滴下することで重合することを特徴とする可溶性の導電性アニリン系ポリマーとその製造方法が開示されている。
 本方法は、従来、スルホン酸基またはカルボキシ基を有するアニリン類はそれ単独では重合しにくいと云う定説に反し、高分子量のポリマーの製造が可能であった。しかも、得られた導電性ポリマーは、酸性からアルカリ性の何れの水溶液にも優れた溶解を示した。従って、安価な原料から、加工上の利点を有する導電性ポリマーを、比較的容易に製造することが可能となった。
[0004]
 また、特許文献4には、塩基性化合物と水に可溶な有機溶剤との混合液中でスルホン酸基置換アニリンまたはカルボキシ基置換アニリンなどの酸性基置換アニリンを、酸化剤を用いて重合し、得られたポリマーを酸処理することで導電性および溶解性を向上させる方法が開示されている。
 特許文献5には、塩基性化合物を含む溶液中にスルホン酸基置換アニリンおよび/またはカルボキシ基置換アニリンなどの酸性基置換アニリンを溶解させ、これを酸化剤が等モル以上存在する反応系となるように、酸化剤に滴下して酸化重合する方法が開示されている。
 特許文献6には、不純物のドーパントの共存しているポリアニリン誘導体の溶液を透析または限外濾過により精製する方法が開示されている。
[0005]
 しかし、特許文献2、3の製造方法では、重合初期の系内pHが塩基性となることで、原料モノマーである酸性基置換アニリンのアゾ化等の副反応が十分に抑制されず、ポリマー中に含まれる副生成分が導電性向上の妨げとなっていた。
 特許文献4~6の製造方法では、原料モノマーである酸性基置換アニリンのアゾ化等の副反応が抑制されるものの、重合反応液からポリマーを濾別分離し、有機溶剤で洗浄する場合、不純物を十分に取り除くことができず、他の導電性ポリマーと比較すると必ずしも導電性能を満足するものではなかった。
[0006]
 一般に、導電性ポリマーの導電性(σ)は、キャリアの数(η)、キャリアの電荷(q)ならびにキャリアの分子鎖間および分子鎖内の易動度(μ)に依存する。
 可溶性の導電性アニリン系ポリマーの場合、キャリアの電荷(q)はキャリアの種類によって決まる固有値となるため、導電性を向上させるためには、キャリアの数(η)および易動度(μ)を増大させることが重要である。なお、易動度(μ)を増大させるには、ポリマーの分子量を大きくすることや、未反応モノマー、副生成物であるオリゴマー、および不純物等を除去し、ポリマーの分子量を高くすること等が有効であると考えられている。
[0007]
 例えば特許文献7、8には、可溶性の導電性アニリン系ポリマーから未反応モノマーや低分子量物を除去すると、導電性が向上することが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開平6-293828号公報
特許文献2 : 特開平7-196791号公報
特許文献3 : 特開平7-324132号公報
特許文献4 : 特開平10-110030号公報
特許文献5 : 特開2000-219739号公報
特許文献6 : 特開平10-259249号公報
特許文献7 : 特表2001-513126号公報
特許文献8 : 特開2010-202836号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 しかしながら、特許文献7、8に記載の製造方法では、高分子量で、かつ高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマーを大量に製造することは困難であった。
 また、特許文献8記載の方法では、一般的に収率が低く、また、高分子量ポリマーになるほど粘度が向上し、生産性が低下する等の問題があった。
[0010]
 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマー、高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマーを大量に製造できる方法、および高い導電性を有する導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
  本発明は、以下の態様を有する。
<1> 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ、下記工程(I)~(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上である、導電性アニリン系ポリマー。
 (I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性アニリン系ポリマーを固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
 (II)試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
 (III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
 (IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
 (V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
 (VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程。
[0012]
[化1]


[0013]
 式(1)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
[0014]
<2> <1>に記載の導電性アニリン系ポリマーを製造する方法であって、 下記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)を、塩基性化合物(B)と溶剤(C)と酸化剤(D)とを含む溶液中、液温25℃未満で重合する重合工程(Z1)を有する、導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[0015]
[化2]


[0016]
 式(2)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
[0017]
<3> 前記溶剤(C)は、溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有する、<2>に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[0018]
<4> <1>に記載の導電性アニリン系ポリマーを製造する方法であって、 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に溶解した溶液、または前記導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に分散した分散液中に、下記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加して重合する重合工程(Z2)を有する、導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[0019]
[化3]


[0020]
 式(2)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
[0021]
<5> 前記溶剤(C)は、溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有する、<4>に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[0022]
<6> 前記重合工程(Z1)または重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を膜濾過により精製する膜濾過工程を有する、<2>~<5>のいずれか一項に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
<7> 前記重合工程(Z1)または重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を沈殿精製する沈殿精製工程を有する、<2>~<5>のいずれか一項に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
<8> 前記沈殿精製工程で得られた精製物を含む溶液を膜濾過により精製する膜濾過工程を有する、<7>に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[0023]
<9> 基材上に、<1>に記載の導電性アニリン系ポリマーを含む溶液を塗布する工程と、基材上に塗布された溶液を乾燥させる工程とを有する、導電性フィルムの製造方法。

発明の効果

[0024]
 本発明の導電性アニリン系ポリマーは、高い導電性を有する。
 また、本発明の導電性アニリン系ポリマーの製造方法によれば、高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマーを大量に製造できる。
 また、本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、高い導電性を有する導電性フィルムを製造できる。

図面の簡単な説明

[0025]
[図1] 評価方法の工程(II)において、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムの一例である。

発明を実施するための形態

[0026]
 以下、本発明を詳細に説明する。
 なお、本発明において「導電性」とは、10 Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
 また、本発明において、「分子量(M)」とは、質量平均分子量(Mw)のことである。
[0027]
<導電性アニリン系ポリマー>
 本発明の導電性アニリン系ポリマー(以下、単に「ポリマー」という場合がある。)は、下記一般式(1)で表される単位を有する。
[0028]
[化4]


[0029]
 式(1)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。
 ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。つまり、式(1)中、R ~R のうちの少なくとも一つは、-SO H、-SO 、-COOHまたは-COO である。また、「酸性基の塩」とは、酸性基のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、および置換アンモニウム塩のいずれかである。
[0030]
 導電性アニリン系ポリマーは、当該導電性アニリン系ポリマーを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を20~100モル%含有することが好ましく、より好ましくは50~100モル%であり、pHに関係なく水および有機溶剤への溶解性に優れる点で、100モル%含有することが特に好ましい。
 また、導電性アニリン系ポリマーは、導電性に優れる観点で、上記一般(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
[0031]
 導電性アニリン系ポリマーとしては、下記一般式(3)で表されるフェニレンジアミン構造(還元型)とキノジイミン構造(酸化型)構造を有する化合物が好ましい。
[0032]
[化5]


[0033]
 式(3)中、R 10~R 25は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、かつR 10~R 25のうち少なくとも1つは酸性基である。
 また、nは重合度を示す。
[0034]
 この中でも特に各芳香環の4つの置換基の内少なくとも二つはそれぞれ酸性基又はアルコキシ基を有するものが好ましい。
 このフェニレンジアミン構造(還元型)とキノジイミン構造(酸化型)は、酸化もしくは還元により任意の比率で可逆的に変換させることが可能である。フェニレンジアミン構造とキノジイミン構造の比率(m)は、導電性および溶解性の観点から、0.2<m<0.8の範囲が好ましく、0.3<m<0.7がより好ましい。
[0035]
 また、本発明の導電性アニリン系ポリマーは、下記工程(I)~(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上である。
 (I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性アニリン系ポリマーを固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
 (II)試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
 (III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
 (IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
 (V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
 (VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程。
[0036]
 工程(I)は、導電性アニリン系ポリマーを溶離液に溶解させて、試験溶液を調製する工程である。
 溶離液は、溶媒に溶質が溶解した液である。溶媒としては、水、アセトニトリル、アルコール(メタノール、エタノールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。
 溶質としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリシン、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸などが挙げられる。
[0037]
 工程(I)で用いる溶離液のpHは10以上である。pHが10未満であると、定量値がぶれることがある。pHが10以上の溶離液を用いることで、安定した測定結果が得られる。
 pHが10以上の溶離液は、例えば以下のようにして調製することができる。
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合して、混合溶媒を得る。ついで、得られた混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を得る。
 このようにして得られる溶離液は25℃でのpHが10.8である。
 なお、溶離液のpHは、溶離液の温度を25℃に保持した状態で、pHメータを用いて測定した値である。
[0038]
 pHが10以上の溶離液の調製方法は上述した方法に限定されず、例えば水とメタノールの混合溶媒(水:メタノール=8:2)を用いて、固形分濃度が20mmol/Lの炭酸ナトリウムと、固形分濃度が30mmol/Lの炭酸水素ナトリウムを別々に調製し、これらを混合して溶離液としてもよい。
[0039]
 導電性アニリン系ポリマーは、溶離液に加えたときの固形分濃度が0.1質量%になれば、固体状で溶離液に添加して溶解させてもよいし、予め溶媒に溶解させて導電性アニリン系ポリマー溶液とし、この導電性アニリン系ポリマー溶液を溶離液に添加してもよい。試験溶液中の導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%であれば、溶離液のpH緩衝作用が十分に発揮され、安定した測定結果が得られる。
 なお、導電性アニリン系ポリマー溶液を用いる場合、溶離液に加えたときに導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%になれば、導電性アニリン系ポリマー溶液の固形分濃度については特に制限されないが、1.0質量%以上が好ましい。導電性アニリン系ポリマー溶液の固形分濃度が1.0質量%未満であると、溶離液に加えたときに溶離液のpH緩衝作用が十分に働かず、試験溶液のpHが10未満となり、定量値がぶれて、安定した測定結果が得られにくくなる。
 また、導電性アニリン系ポリマー溶液に用いる溶媒としては、後述する導電性アニリン系ポリマーが可溶な溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
[0040]
 工程(II)は、試験溶液について、高分子材料評価装置を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定する工程である。
 高分子材料評価装置は、ゲル浸透クロマトグラフを備えており、分子量の大きさにより化合物(ポリマー、オリゴマー、モノマー)を分離して分析できる。
 ゲル浸透クロマトグラフには、フォトダイオードアレイ検出器、UV検出器などの検出器が接続されている。
[0041]
 工程(II)では、GPCにより例えば図1に示すようなクロマトグラムが得られる。
 図1に示すクロマトグラムは、縦軸が吸光度、横軸が保持時間であり、高分子量体は比較的短い保持時間で検出され、低分子量体は比較的長い保持時間で検出される。
[0042]
 工程(III)は、工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程である。
 具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料については固形分濃度が25ppmとなるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製する。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成する。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する。
[0043]
 工程(IV)は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、例えば図1に示すように、分子量(M)が15000Da以上の領域(x)の面積(X)を求める工程である。
 また、工程(V)は、分子量(M)が15000Da未満の領域(y)の面積(Y)を求める工程である。
 工程(VI)は、面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程である。
[0044]
 本発明の導電性アニリン系ポリマーは、上述した評価方法により算出した面積比(X/Y)が1.20以上である。面積比(X/Y)が1.20以上であれば、高い導電性を示す。かかる理由は以下のように考えられる。
[0045]
 導電性アニリン系ポリマーには、その製造過程において副生するオリゴマー、未反応モノマー、不純物などの低分子量体が含まれている場合が多い。これら低分子量体は、導電性低下の原因となると考えられる。
 面積(Y)は、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積であり、この領域には主にオリゴマー、モノマー、不純物などの低分子量体が存在する。面積比(X/Y)が1.20以上であれば、導電性アニリン系ポリマーに含まれる低分子量体の割合が少なく、導電性アニリン系ポリマーの分子量が高いので、高い導電性を示す。
 なお、面積比(X/Y)の値が大きいほど、導電性アニリン系ポリマーに含まれる低分子量体の割合が少ない。従って、面積比(X/Y)の値は大きくなるほど好ましく、具体的には1.40以上が好ましく、1.70以上がより好ましく、2.00以上が特に好ましい。
[0046]
 また、本発明の導電性アニリン系ポリマーは、分子量が高いので、導電性に加え、耐熱性にも優れる。
 導電性アニリン系ポリマーは、詳しくは後述するが、コンデンサーなどの様々な用途に用いられる。例えばコンデンサーに用いる場合、通常、金属電極上に導電性アニリン系ポリマーを塗布し、所定の温度に加熱乾燥して導電層を形成する。本発明の導電性アニリン系ポリマーであれば耐熱性にも優れるため、製造過程に加熱乾燥工程を含むコンデンサーなどの用途にも好適である。
[0047]
 上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ面積比(X/Y)が1.20以上の導電性アニリン系ポリマーを得るためには、以下の方法により導電性アニリン系ポリマーを製造すればよい。なお、本発明において「精製」とは、モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の除去をいう。
[0048]
<導電性アニリン系ポリマーの製造方法>
 本発明の導電性アニリン系ポリマーの製造方法は、重合工程(Z)を有する。
[0049]
(第一の実施形態)
 本実施形態では、重合工程(Z)として以下に示す重合工程(Z1)を用いる。
 本実施形態の導電性アニリン系ポリマーの製造方法は、アニリン誘導体(A)を、塩基性化合物(B)と溶剤(C)と酸化剤(D)とを含む溶液中、液温25℃未満で重合する重合工程(Z1)を有する。
 ここで、重合工程(Z1)に用いる各成分について具体的に説明する。
[0050]
アニリン誘導体(A);
 本実施形態の重合工程(Z1)で用いるアニリン誘導体(A)は、下記一般式(2)で表される化合物であり、具体的には酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、および置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
[0051]
[化6]


[0052]
 式(2)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。
[0053]
 前記一般式(2)で表される化合物の代表的なものとしては、スルホン酸基置換アニリンまたはカルボキシ基置換アニリンであり、中でも、得られるポリマーの導電性や溶解性等の観点から、アミノ基に対して酸性基がo-位またはm-位に結合している化合物が好ましい。
 スルホン酸基置換アニリンの代表的なものとしては、アミノベンゼンスルホン酸誘導体が挙げられる。一方、カルボキシ基置換アニリンの代表的なものとしては、アミノ安息香酸誘導体が挙げられる。これらのうち、アミノベンゼンスルホン酸誘導体は、アミノ安息香酸誘導体と比較して導電性が高い傾向を示し、一方、アミノ安息香酸誘導体は、アミノベンゼンスルホン酸誘導体と比較して溶解性が高い傾向を示す。これらの誘導体は、目的に併せて任意の割合で混合して用いることもできる。
[0054]
 アミノベンゼンスルホン酸誘導体としては、o-,m-,p-アミノベンゼンスルホン酸、アニリン-2,6-ジスルホン酸、アニリン-2,5-ジスルホン酸、アニリン-3,5-ジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アニリン-3,4-ジスルホン酸が好ましい。
[0055]
 アミノベンゼンスルホン酸誘導体以外のスルホン酸基置換アニリンとしては、メチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n-プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso-プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n-ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec-ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t-ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。これらの中では、得られるポリマーの導電性や溶解性等の観点から、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類またはハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類が、実用上好ましい。
 これらのスルホン酸基置換アニリンは、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種(異性体を含む)以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
[0056]
 アミノ安息香酸誘導体としては、o-,m-,p-アミノベンゼンカルボン酸、アニリン-2,6-ジカルボン酸、アニリン-2,5-ジカルボン酸、アニリン-3,5-ジカルボン酸、アニリン-2,4-ジカルボン酸、アニリン-3,4-ジカルボン酸が好ましい。
[0057]
 アミノ安息香酸誘導体以外のカルボキシ基置換アニリンとしては、メチルアミノベンゼンカルボン酸、エチルアミノベンゼンカルボン酸、n-プロピルアミノベンゼンカルボン酸、iso-プロピルアミノベンゼンカルボン酸、n-ブチルアミノベンゼンカルボン酸、sec-ブチルアミノベンゼンカルボン酸、t-ブチルアミノベンゼンカルボン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類、メトキシアミノベンゼンカルボン酸、エトキシアミノベンゼンカルボン酸、プロポキシアミノベンゼンカルボン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類、ニトロ基置換アミノベンゼンカルボン酸類、フルオロアミノベンゼンカルボン酸、クロロアミノベンゼンカルボン酸、ブロムアミノベンゼンカルボン酸等のハロゲン基置換アミノベンゼンカルボン酸類などを挙げることができる。これらの中では、得られるポリマーの導電性や溶解性等の観点から、アルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類またはハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類が、実用上好ましい。
 これらのカルボキシ基置換アニリンは、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種(異性体を含む)以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
[0058]
 また、前記一般式(2)で表される化合物は、スルホン酸基置換アルキルアニリン、カルボキシ基置換アルキルアニリン、スルホン酸基置換アルコキシアニリン、カルボキシ基置換アルコキシアニリン、スルホン酸基置換ヒドロキシアニリン、カルボキシ基置換ヒドロキシアニリン、スルホン酸基置換ニトロアニリン、カルボキシ基置換ニトロアニリン、スルホン酸基置換フルオロアニリン、カルボキシ基置換フルオロアニリン、スルホン酸基置換クロロアニリン、カルボキシ基置換クロロアニリン、スルホン酸基置換ブロムアニリン、あるいはカルボキシ基置換ブロムアニリンの何れかとして表現することができる。これらの置換基の位置と組合せの具体例を表1に示す。
[0059]
[表1]


[0060]
 表1中の略号は以下の通りである。
 A:スルホン酸基またはカルボキシ基、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩から選ばれた一つの基を示す。
 B:メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基 、sec-ブチル基、t-ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのアルコキシ基、ヒドロキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロム基などのハロゲン基から選ばれた一つの基を示す。
 H:水素を示す。
[0061]
 これら酸性基置換アニリンと塩を形成できるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。
 アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
[0062]
 置換アンモニウムとしては、脂式アンモニウム類、環式飽和アンモニウム類、環式不飽和アンモニウム類などが挙げられる。
 脂式アンモニウム類としては、下記一般式(4)で表されるアンモニウムが挙げられる。
[0063]
[化7]


[0064]
 式(4)中、R 26~R 29は、各々独立に、-H、または炭素数1~4のアルキル基である。
 このような脂式アンモニウム類としては、例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn-ブチルアンモニウム、テトラsec-ブチルアンモニウム、テトラt-ブチルアンモニウムなどが挙げられる。なかでも、得られるポリマーの導電性、溶解性を考慮すると、R 26~R 29のうち1つが-Hであり、他の3つが炭素数1~4のアルキル基の場合が最も好ましく、次いでR 26~R 29のうち2つが-Hであり、他の2つが炭素数1~4のアルキル基の場合が好ましい。
[0065]
 環式飽和アンモニウム類としては、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウムおよびこれらの骨格を有する誘導体などが例示される。
 環式不飽和アンモニウム類としては、ピリジニウム、α-ピコリニウム、β-ピコリニウム、γ-ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが例示される。
[0066]
 なお、詳しくは後述するが、重合工程(Z1)において酸化剤溶液中にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を滴下する場合、滴下終了時における反応液中のアニリン誘導体(A)の濃度は、反応性の観点から、1~90質量%であることが好ましく、より好ましくは5~70質量%である。
 反応液中のアニリン誘導体(A)の濃度が低いと、反応速度が低下し、反応の完結に長時間を要する。一方、反応液中のアニリン誘導体(A)の濃度が高いと、反応溶液中でアニリン誘導体(A)が析出することがあり、重合反応が十分に進行しにくくなることがある。
 反応液中のアニリン誘導体(A)の濃度が上記範囲内であれば、十分な反応速度を維持し、生産性よく、導電性が高いポリマーを得ることができる。
[0067]
塩基性化合物(B);
 本実施形態の重合工程(Z1)で用いる塩基性化合物(B)としては、無機塩基、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが用いられる。
 無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物の塩などが挙げられる。特に、得られるポリマーの導電性や溶解性等の観点から、水酸化ナトリウムを用いることが実用上好ましい。
[0068]
 脂式アミン類としては、下記一般式(5)で表される化合物、または下記一般式(6)で表されるアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
[0069]
[化8]


[0070]
 式(5)中、R 30~R 32は、各々独立に、炭素数1~4のアルキル基である。
[0071]
[化9]


[0072]
 式(6)中、R 33~R 35は、各々独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。
[0073]
 環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン及びこれらの骨格を有する誘導体ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
 環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、キノリン、インキノリン、ピロリンおよびこれらの骨格を有する誘導体ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
[0074]
 塩基性化合物(B)としては、無機塩基が好ましい。また、無機塩基以外の塩基性化合物の中では、メチルアミン、ジメチルアミン、 トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、 トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン等が好ましく用いられる。
 無機塩類やこれらの塩基性化合物を用いれば、高導電性で、かつ高純度なポリマーを得ることができる。
 これらの塩基性化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
[0075]
 塩基性化合物(B)を溶液として用いる場合、その濃度は0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.1~10.0mol/Lであり、さらに好ましくは0.2~8.0mol/Lである。塩基性化合物(B)の濃度が0.1mol/L以上であれば、ポリマーを高収率で得ることができる。一方、塩基性化合物(B)の濃度が10.0mol/L以下であれば、得られるポリマーの導電性が向上する傾向にある。
[0076]
 アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の質量比は、導電性の観点から、アニリン誘導体(A):塩基性化合物(B)=1:100~100:1であることが好ましく、より好ましくは10:90~90:10である。
 塩基性化合物(B)の割合が低いと、後述する溶剤(C)に対する溶解度が低下し、反応性が低下し、得られるポリマーの導電性が低下することがある。一方、塩基性化合物(B)の割合が高いと、得られるポリマー中の酸性基と塩基性化合物(B)が塩を形成する割合が高くなり、ポリマーの導電性が低下することがある。
 つまり、塩基性化合物(B)の割合が好ましい範囲にあれば、溶剤(C)に対する溶解性と反応性が向上し、ポリマーの導電性が向上する。
[0077]
溶剤(C);
 本実施形態の重合工程(Z1)で用いる溶剤(C)としては、水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
 水溶性有機溶媒としては、水と混合するものであれば限定されないが、安価で入手が容易であることから、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピレングリコール、エチレングリコールなどが挙げられる。特に、アニリン誘導体(A)および後述する酸化剤等の溶解性の観点から、アセトン、アセトニトリルがより好ましく用いられる。
[0078]
 溶剤(C)としては水を単独で用いるのが好ましいが、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、溶剤(C)は溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有することが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。溶剤(C)が35体積%以上の水を含有すれば、アニリン誘導体(A)や後述する酸化剤の析出を抑制できるため、アニリン誘導体(A)の重合反応が十分に進行し、高分子量の導電性アニリン系ポリマーが得られやすくなる。
[0079]
酸化剤(D);
 本実施形態の重合工程(Z1)で用いる酸化剤(D)としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、比較的原料が入手しやすい等の工業性の観点から、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類、過酸化水素等を用いることが好ましい。これらの酸化剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
 また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
[0080]
 酸化剤(D)の使用量は、アニリン誘導体(A)1モルに対して1~5モルが好ましく、より好ましくは1~3モルである。酸化剤(D)の使用量が上記範囲内であれば、ポリマーの高分子量化および主鎖の酸化を十分に行うことができる。
 また、反応性の観点から、アニリン誘導体(A)に対して酸化剤(D)がモル比で等モル以上存在している系にて重合を行うことが好ましい。酸化剤(D)がモル比で等量未満の場合は重合反応後に未反応物が多く存在する傾向にあり、酸化剤(D)のモル比が大きい場合は副生成物が多く生成する傾向にある。
[0081]
 なお、詳しくは後述するが、重合工程(Z1)において酸化剤溶液中にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を滴下する場合、滴下開始時における反応液中の酸化剤(D)の濃度は、反応性の観点から、2~90質量%であることが好ましく、より好ましくは5~80質量%である。また、滴下終了時における反応液中の酸化剤(D)の濃度は、反応性の観点から、1~90質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5~40質量%である。
 反応液中の酸化剤(D)の濃度が低いと、反応速度が低下し、反応の完結に長時間を要する。一方、反応液中の酸化剤(D)の濃度が高いと、反応溶液中で酸化剤(D)が析出することがあり、重合反応が十分に進行しにくくなることがある。
 反応液中の酸化剤(D)の濃度が上記範囲内であれば、十分な反応速度を維持し、生産性よく、導電性が高いポリマーを得ることができる。
[0082]
重合工程(Z1);
 本実施形態の重合工程(Z1)は、上述したアニリン誘導体(A)を、塩基性化合物(B)と溶剤(C)と酸化剤(D)とを含む溶液中、液温25℃未満で重合する工程である。
 具体的には、酸化剤(D)が溶剤(C)に溶解した酸化剤溶液中に、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)が溶剤(C)に溶解した混合溶液を滴下する方法、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法、反応器等にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液と、酸化剤溶液を連続的に供給し、押し出し流れで重合させるなどの方法によって、アニリン誘導体(A)を重合する。これらの方法の中でも、副反応抑制の観点から、酸化剤溶液中にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を滴下する方法が好ましい。
[0083]
 液温25℃未満で重合を行えば、副反応の進行によるオリゴマー等の副生成物の生成が抑制され、得られるポリマーの導電性が向上する。加えて、主鎖の酸化還元構造の変化による導電性の低下を抑制できる。
 本発明において、「液温25℃未満で重合を行う」とは、重合工程(Z1)中の反応液の最高到達温度が25℃未満であることを意味する。
[0084]
 重合中の液温(すなわち、反応液の温度)の上限値は、14℃以下が好ましく、より好ましくは10℃未満であり、さらに好ましくは5℃未満である。一方、液温の下限値については特に制限されないが、十分な反応速度を維持でき、反応時間を短縮できる点で、-15℃以上が好ましく、より好ましくは-10℃以上であり、さらに好ましくは-5℃以上である。
 なお、重合中の液温は、例えばアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を滴下する場合はその滴下速度を調節したり、酸化剤(D)溶液を滴下する場合はその滴下速度を調節したり、反応器を冷却する冷媒の流量や温度を調整したりすることで制御できる。
[0085]
 重合工程(Z1)では、重合反応開始時の液温が5℃未満であることが好ましく、より好ましくは3℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下であり、特に好ましくは-3℃以下であり、最も好ましくは-5℃以下である。重合反応開始時の液温が低いほど、副反応の進行や、主鎖の酸化還元構造の変化による導電性の低下を抑制することができる。
 重合反応開始時の液温の下限値については特に制限されないが、十分な反応速度を維持でき、反応時間を短縮できる点で、-50℃以上が好ましく、より好ましくは-40℃以上であり、さらに好ましくは-30℃以上である。
 なお、本発明において重合反応開始時の液温とは、例えば、酸化剤(D)溶液中にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を滴下する方法の場合においては、混合溶液を滴下する直前の酸化剤(D)溶液の温度をいい、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液に酸化剤(D)溶液を滴下する方法の場合においては、酸化剤(D)溶液を滴下する直前の混合溶液の温度をいう。
[0086]
 また、重合中の液温の最高到達温度(25℃未満)と、重合反応開始温度の温度差は、50℃未満であることが好ましく、より好ましくは30℃未満であり、さらに好ましくは15℃未満である。これらの温度差が小さいほど副反応の進行による副生成物の生成を抑制することができる。
[0087]
 重合工程(Z1)では、重合時の反応系内のpHが7以下となるように調整することが好ましく、より好ましくはpHが6以下である。
 ここで、反応系内のpHが7以下であれば、副反応が進行しにくくなり、モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の生成が抑制され、結果として、得られるポリマーの導電性や純度等が向上する。
[0088]
 重合時の反応系内のpHは、プロトン酸の添加により調整できる。
 プロトン酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ化フッ素酸等の鉱酸類、トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸類、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機スルホン酸類、およびポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ-2-メチルプロパン-2-アクリルアミドスルホン酸等の高分子酸類などが挙げられる。これらの中でも、取り扱い性の観点から、塩酸、硝酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸等が好ましい。
[0089]
 プロトン酸の添加量は、酸化剤の析出がない範囲であれば特に限定されない。特に、モル比でプロトン酸:酸化剤=0.01:100~50:100が好ましく、より好ましくは0.01:100~45:100である。プロトン酸の添加量が上記範囲内であれば、モノマーの析出を抑制するとともに、反応進行の妨げとなりにくく、モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の生成が抑制され、結果として、得られるポリマーの導電性や純度等が向上する。
[0090]
 また、重合工程(Z1)では、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液と、酸化剤(D)溶液とを混合した後(一方の溶液を他方の溶液に滴下して重合する場合は、滴下した後)、反応液を25℃未満で保持するのが好ましい。反応液を25℃未満で保持することにより、高分子量のポリマーが得られやすくなる。
 反応液の保持温度は、高分子量のポリマーが得られやすいことと、副反応抑制の観点から、20℃未満が好ましく、より好ましくは15℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下であり、特に好ましくは5℃以下であり、最も好ましくは0℃以下である。
 反応液の保持温度は、均一であればさらに好ましい。
[0091]
 また、反応液の保持時間は、0.5~12時間が好ましく、導電性や工業性の観点から、1~12時間程度がより好ましく、さらに好ましくは4~12時間である。
[0092]
 なお、反応液の保持温度を制御する方法としては特に限定されないが、例えば反応器を冷却する冷媒の流量や温度を調整することで制御できる。反応器によってどの方法がよいかはその都度選択されるが、工業的な観点から、冷媒の温度を調整することが好ましい。
 また、反応液の保持温度を均一に保つのに必要であれば、攪拌操作を併用してもよい。
[0093]
 重合工程(Z1)によって得られた導電性アニリン系ポリマーは、溶剤(C)に溶解したポリマー溶液、または溶剤(C)に分散したポリマー分散液の状態で得られる。
 得られた導電性アニリン系ポリマーは、溶剤(C)を除去した後、そのまま各種用途に用いてもよいが、ポリマー溶液またはポリマー分散液には未反応モノマー、オリゴマー、および不純物などが含まれる場合がある。従って、得られた導電性アニリン系ポリマーを精製してから用いるのが好ましい。ポリマーを精製することでモノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体が取り除かれ、高純度で、より高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマーが得られる。
 ポリマーの精製方法としては、膜濾過法、沈殿精製法、陽イオン交換法などの方法が挙げられる。これらの中でも、精製効率に優れる観点から、膜濾過法および沈殿精製法が好ましい。
 以下、膜濾過工程および沈殿精製工程について、具体的に説明する。なお、精製前の導電性アニリン系ポリマーを「未精製の導電性ポリマー」という場合がある。
[0094]
膜濾過工程;
 膜濾過工程は、重合工程(Z1)で得られた生成物を含む溶液を膜濾過により精製する工程である。
 膜濾過工程では、まず、重合工程(Z1)の反応液から生成物(未精製の導電性ポリマー)を分離する。分離方法としては特に制限されないが、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離、遠心濾過等が挙げられる。特に、遠心分離などの分離装置を用いた場合、高純度のものが得られやすくなる。
 また、反応液から生成物を分離する際に、固体に含まれる未反応モノマー、オリゴマー、および不純物などを洗浄してもよい。洗浄液としては、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
[0095]
 このようにして分離した生成物を溶剤に溶解させて溶液(ポリマー溶液)とし、該ポリマー溶液を膜濾過する。膜濾過する際に用いる溶剤としては、水、塩基性塩を含む水、酸を含む水、アルコールを含む水等の溶剤やそれらの混合物などを用いることができる。
 なお、重合工程(Z1)において得られた未精製の導電性ポリマーが溶剤(C)に溶解している場合は、生成物を分離することなくポリマー溶液をそのまま膜分離に供してもよい。
[0096]
 膜濾過に用いる分離膜としては、未反応モノマー、オリゴマー、および不純物の除去効率を考慮すると、限外濾過膜が好ましい。
 分離膜の材質としてはセルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン等の高分子を用いた有機膜やセラミックスに代表される無機材料を用いた無機膜を用いることができ、通常、限外濾過膜の材質として使用するものであれば、特に制限はない。
[0097]
 また、限外濾過過膜としては、不純物除去の観点から、分画分子量が1000~100000の範囲内に収まる限外濾過膜が好ましく、より好ましくは、5000~50000の範囲内に収まる限外濾過膜であり、さらに好ましくは10000~50000の範囲内に収まる限外濾過膜であり、特に好ましくは10000~30000の範囲内に収まる限外濾過膜である。
 なお、限外濾過膜の分画分子量の値が大きくなるほど、限界透過流束は高くなり、未反応モノマーやオリゴマー等の除去率が高くなるとともに、精製後に得られるポリマーの導電性が高くなる傾向があるが、収率は低下する傾向にある。
[0098]
 膜濾過の方式としては、クロスフロー方式、加圧濾過方式などが挙げられるが、生産性を考慮すると、連続式のクロスフロー方式(溶液を分離膜に沿って流動させ、溶液の一部が分離膜を透過することにより、溶液を精製する方式)が好ましい。
 また、クロスフロー方式は、ポリマー溶液を繰り返し連続的に分離膜と接触させることができ、精製度を高めることができる。なお、ポリマー溶液中の溶剤は、分離膜を透過するため、精製の過程でポリマー溶液は濃縮されて高粘度化し、運転上支障が出ることがある。このような場合には、適宜、溶剤を供給して適度な濃度に希釈することで、精製処理を継続することができる。
[0099]
 クロスフロー方式により膜濾過する場合、濾過圧力は、限外濾過膜や濾過装置にもよるが、生産性を考慮し、およそ0.01~1.0MPaとすることが好ましく、より好ましくは0.01~0.5MPaである。
 一方、加圧濾過方式により膜濾過する場合、濾過圧力は、およそ0.01~0.35MPaとすることが好ましい。
[0100]
 濾過時間については特に制限されないが、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて分子量分布を評価した際に、分画分子量以下の未反応モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体等のピークが見られなくなるまでの時間とすることが好ましい。
[0101]
 また、濾過時間の目安としては、GPCを用いる方法以外にも、例えば、一定時間毎にサンプリングした濃縮液を簡易的な限外濾過キットを使用して濾過し、濾過液(および濃縮液:膜の上に残った濃縮液)の固形分を計測し、これを濾過時間の目安とする方法を用いてもよい。
 さらに、濾過時間の目安として、導電性アニリン系ポリマーより形成される塗膜の表面抵抗値が10 Ω/□以下、より好ましくは10 Ω/□以下、さらに好ましくは10 Ω/□以下となるまで膜濾過を継続することが好ましい。
 なお、その他の条件が同じであれば、時間が長くなるほど精製度は高くなり、精製後に得られる導電性アニリン系ポリマーの導電性が高くなる傾向にある。
[0102]
 ところで、重合工程(Z1)によって得られた未精製の導電性ポリマーは、上述したように、塩基性化合物(B)の存在下でアニリン誘導体(A)を重合することで、ポリマー中の酸性基が塩基性化合物(B)と塩を形成している。
 具体的には、重合工程(Z1)においてアニリン誘導体(A)を水酸化ナトリウム存在下で重合した場合、単離されたポリマー中の酸性基は、そのほとんどがナトリウム塩になっている。同様に、アンモニア存在下で重合した場合、酸性基の大部分はアンモニウム塩であり、トリメチルアミン存在下で重合した場合、酸性基の大部分はトリメチルアンモニウム塩であり、キノリン存在下で重合した場合、酸性基の大部分はキノリニウム塩の形で得られる。
 このように酸性基の一部ないし全部が塩を形成しているポリマーは、塩を形成していないポリマーに比べて導電性が低下することがある。
[0103]
 塩基性化合物(B)は、未精製の導電性ポリマーを精製する際に、未反応モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体等と共に概ね除去されるが、塩基性化合物(B)をさらに除去する目的で、膜濾過工程の前または後で、脱塩処理を行ってもよい(脱塩工程)。
 なお、膜濾過工程の後で脱塩処理を行う際は、精製工程後の試料液をそのまま用いることができる。
[0104]
 脱塩処理の方法としてはイオン交換法が挙げられ、具体的には、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、電気透析法、酸含有溶液で処理する方法などである。これらの中でも陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、電気透析法が好ましく、特に、工程が簡略で、ランニングコストが安い等の理由から、電気透析法が好ましい。
[0105]
 陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、陽イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば5%のポリマー水溶液の場合、陽イオン交換樹脂に対して5倍の容積までが好ましく、10倍の容積までがより好ましい。
 陽イオン交換樹脂としては、例えば三菱化学株式会社製の「ダイヤイオンSK1B」、オルガノ株式会社製の「アンバーライトIR-120H」、ダウ・ケミカル社製の「DOWEX 50W」などが挙げられる。
[0106]
 一方、電気透析法の場合、電気透析法のイオン交換膜は特に限定はされないが、不純物の拡散による浸透を抑制するために、一価イオン選択透過処理が施されたイオン交換膜であって、分画分子量が300以下のものを使用することが好ましい。このようなイオン交換膜としては、例えば株式会社アストム製の「ネオセプタCMK(カチオン交換膜、分画分子量300)」、「ネオセプタAMX(アニオン交換膜、分画分子量300)」などが好適である。
 また、電気透析法に用いるイオン交換膜として、アニオン交換層、カチオン交換層を張り合わせた構造を持ったイオン交換膜であるバイポーラ膜を用いてもよい。このようなバイポーラ膜としては、例えば株式会社アストム製の「PB-1E/CMB」などが好適である。
 電気透析における電流密度は限界電流密度以下であることが好ましい。バイポーラ膜での印加電圧は、10~50Vが好ましく、25~35Vより好ましい。
[0107]
 脱塩処理により、導電性アニリン系ポリマーから塩基性化合物(B)を効果的に除去することができ、導電性アニリン系ポリマーの導電性がより向上する。
 なお、精製工程や脱塩処理を行った後の導電性アニリン系ポリマーは、水などの溶媒に溶解した状態であるので、凍結乾燥法などで溶媒を除去すれば固体状の導電性アニリン系ポリマーが得られるが、溶媒に溶解した状態のものを導電性アニリン系ポリマー溶液としてそのまま用いてもよい。
[0108]
沈殿精製工程;
 沈殿精製工程は、重合工程(Z1)で得られた生成物を含む溶液を沈殿精製する工程である。
 沈殿精製の方法としては、ポリマー溶液に貧溶媒を加えて、生成物を沈殿として、精製されたポリマーを得る方法、貧溶媒中に、良溶媒に溶解したポリマー溶液を少しずつ加えていくことで、生成物を沈殿として、精製されたポリマー得る方法などが挙げられる。
[0109]
 沈殿精製工程では、まず、重合工程(Z1)の反応液から生成物(未精製の導電性ポリマー)を分離する。分離方法としては特に制限されず、膜濾過工程の説明において先に例示した分離方法が挙げられる。
 また、反応液から生成物を分離する際に、固体に含まれる未反応モノマー、オリゴマー、および不純物などを洗浄してもよい。洗浄液としては、膜濾過工程の説明において先に例示した洗浄液が挙げられる。
[0110]
 このようにして分離した生成物を良溶媒に溶解させて溶液(ポリマー溶液)とし、該ポリマー溶液を沈殿精製する。
 沈殿精製する際に用いる良溶媒としては、水、塩基性塩を含む水、酸を含む水、アルコールを含む水等の溶剤やそれらの混合物などを用いることができる。生成物の溶解性の観点から水、塩基性塩を含む水または酸を含む水が好ましい。
[0111]
 また、良溶媒温度と貧溶媒温度の温度差が大きいほど得られる沈殿量は多いことから、溶解性を上げるため、良溶媒が沸騰する以下の温度で生成物を良溶媒に溶解させ、沈殿形成量を増やすため、凍結温度より高い温度の貧溶媒をポリマー溶液に混合させることが好ましい。
[0112]
 ポリマー溶液の濃度は、生成物が良溶媒に溶解する範囲であれば特に限定されないが、不純物除去の観点から、1~50質量%が好ましく、より好ましくは3~30質量%である。
[0113]
 なお、重合工程(Z1)において得られた未精製の導電性ポリマーが溶剤(C)に溶解している場合は、生成物を分離することなくポリマー溶液をそのまま沈殿精製に供してもよい。
[0114]
 一方、貧溶媒としては、SP値(溶解パラメーター:Solubility Parameter)約20~40MPa 1/2を有するものが挙げられ、例えば、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、グリセリン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを用いた場合、高純度のポリマーが得られる。
 有機溶媒のSP値は、例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer handbook)」、第4版、VII-675頁~VII-711頁に記載の方法により求めることができ、具体的には、表1(VII-683頁)、表7~8(VII-688頁~VII-711頁)に記載されている。
[0115]
 良溶媒に溶解したポリマー溶液に対する貧溶媒の添加量は、溶媒のSP値によって変わるが、例えば、SP値が約20~25MPa 1/2の溶媒を貧溶媒として用いた場合、良溶媒に溶解したポリマー溶液:貧溶媒量=1:0.1~1:5(質量比)が好ましく、不純物除去の観点から1:0.7~1:2(質量比)が特に好ましい。
 また、例えば、SP値が約25~40MPa 1/2の溶媒を貧溶媒として用いた場合、良溶媒に溶解したポリマー溶液:貧溶媒量=1:2~1:20(質量比)が好ましく、不純物除去の観点から1:3~1:17(質量比)が特に好ましい。
[0116]
 貧溶媒の添加量が上記範囲内であれば、沈殿に含まれる未反応モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の割合が軽減され、結果として、得られるポリマーの純度が向上する。
 貧溶媒の割合が少ないと沈殿するポリマー量が少なく、貧溶媒の割合が多いと沈殿に含まれる低分子量体の割合が多くなる。
[0117]
 沈殿したポリマーは、濾別して分離されるが、濾液中には未反応モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の一部が溶解している。この際用いる分離装置としては、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離、遠心濾過等が用いられるが、特に遠心分離などの分離装置を用いた場合、高純度のものが得られやすく好ましい。
 また、濾別分離されたポリマーは繰り返し沈殿精製してもかまわない。沈殿精製処理の回数を増やすほど精製度は高くなり、精製後に得られるアニリン系ポリマーの導電性が高くなる傾向にある。
[0118]
 このようにして沈殿精製されたポリマー(精製物)は、膜濾過によりさらに精製するのが好ましい。具体的には、精製物を含む溶液を膜濾過するのが好ましく、膜濾過の方法としては、膜濾過工程の説明において先に例示した方法と同様である。さらに、膜濾過工程の前または後で、脱塩処理を行ってもよい。
[0119]
 このようにして得られた導電性アニリン系ポリマーは、上記工程(I)~(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上であり、導電性に優れる。
 特に、重合工程(Z1)の後、膜濾過工程や沈殿精製工程を行えば、未反応モノマー、オリゴマー、不純物等が十分に除去されるので、高純度かつ高分子量の導電性アニリン系ポリマーが得られるため、導電性がより向上する。
[0120]
 また、このようにして得られた導電性アニリン系ポリマーは、単なる水、塩基および塩基性塩を含む水、酸を含む水、またはメタノール、エタノール、2-プロパノール等の溶剤、またはそれらの混合物に溶解することができ、加工性に優れる。具体的には、これらの溶剤10g(液温25℃)に、0.1g以上、均一に溶解する。
[0121]
 以上説明したように、本発明の導電性アニリン系ポリマーの製造方法によれば、化学酸化重合によって安価な材料から高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマーを大量に製造できる。
 加えて、本発明であればポリマーを高分子量化でき、また、耐熱性に優れる導電性アニリン系ポリマーが得られる。
[0122]
(第二の実施形態)
 本実施形態では、重合工程(Z)として以下に示す重合工程(Z2)を用いる。
 本実施形態の導電性アニリン系ポリマー(P)の製造方法は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に溶解した溶液、または前記導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に分散した分散液中に、上記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加して重合する重合工程(Z2)を有する。
 また、重合工程(Z2)では、必要に応じて、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、塩基性化合物(B)をさらに添加して重合を行ってもよい。
[0123]
導電性アニリン系ポリマー(P-1);
 本実施形態の重合工程(Z2)で用いる導電性アニリン系ポリマー(P-1)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する。
 導電性アニリン系ポリマー(P-1)は、上記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)を、塩基性化合物(B)を含む溶液中で、酸化剤(D)により化学酸化重合させて製造されたものであり、例えば特開平7-196791号公報等に示された方法で製造できる。
[0124]
 具体的には、酸化剤(D)が溶剤に溶解した酸化剤溶液中に、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)が溶剤に溶解した混合溶液を滴下する方法、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法、酸化剤溶液とアニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を連続的に供給し、押し出し流れで重合させるなどの方法によって、導電性アニリン系ポリマー(P-1)を得ることができる。
 また、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液と、酸化剤溶液とを混合した後、反応液を保持するのが好ましい。保持温度は20℃以下が好ましく、保持時間は0.5~12時間が好ましい。
 なお、本実施形態において、導電性アニリン系ポリマー(P-1)を得る工程を「重合工程(Z pre)」という場合がある。
[0125]
 導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造に用いるアニリン誘導体(A)、塩基性化合物(B)、および酸化剤(D)としては、第一の実施形態において先に例示したアニリン誘導体(A)、塩基性化合物(B)、および酸化剤(D)が挙げられる。
[0126]
 また、導電性アニリン系ポリマー(P-1)を製造する際には、第一の実施形態において先に例示した溶剤(C)を用いることができる。
 この際、得られる導電性アニリン系ポリマー(P-1)の導電性の観点から、反応液温度は25℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下である。
[0127]
 このようにして得られた導電性アニリン系ポリマー(P-1)は、後述する重合工程(Z2)に供する前に、膜濾過等により精製してもよい。膜濾過の方法としては、第一の実施形態において先に例示した方法が挙げられる。
[0128]
アニリン誘導体(A);
 本実施形態の重合工程(Z2)で用いるアニリン誘導体(A)は上記一般式(2)で表される化合物であり、具体的には、第一の実施形態において先に例示したアニリン誘導体(A)が挙げられる。
 また、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造に用いるアニリン誘導体(A)と、重合工程(Z2)で用いるアニリン誘導体(A)は、同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
[0129]
塩基性化合物(B);
 本実施形態の重合工程(Z2)で用いる塩基性化合物(B)としては、第一の実施形態において先に例示した塩基性化合物(B)が挙げられる。
 また、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造に用いる塩基性化合物(B)と、重合工程(Z2)で用いる塩基性化合物(B)は、同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
[0130]
 例えば、塩基性化合物(B)を溶液として用いる場合、その濃度は0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.1~10.0mol/Lであり、さらに好ましくは0.2~8.0mol/Lである。塩基性化合物(B)の濃度が0.1mol/L以上であれば、ポリマーを高収率で得ることができる。一方、塩基性化合物(B)の濃度が10.0mol/L以下であれば、得られるポリマーの導電性が向上する傾向にある。
[0131]
 また、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の質量比は、導電性の観点から、アニリン誘導体(A):塩基性化合物(B)=1:100~100:1であることが好ましく、より好ましくは10:90~90:10である。
 塩基性化合物(B)の割合が低いと、溶媒に対する溶解度が低下し、反応性が低下し、得られるポリマーの導電性が低下することがある。一方、塩基性化合物(B)の割合が高いと、得られるポリマー中の酸性基と塩基性化合物(B)が塩を形成する割合が高くなり、ポリマーの導電性が低下することがある。
 つまり、塩基性化合物(B)の割合が好ましい範囲にあれば、溶媒に対する溶解性と反応性が向上し、ポリマーの導電性が向上する。
[0132]
溶剤(C);
 本実施形態の重合工程(Z2)で用いる溶剤(C)としては、第一の実施形態において先に例示した溶剤(C)が挙げられる。
 また、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造に用いる溶剤(C)と、重合工程(Z2)で用いる溶剤(C)は、同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
[0133]
 溶剤(C)としては水を単独で用いるのが好ましいが、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、溶剤(C)は溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有することが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。溶剤(C)が35体積%以上の水を含有すれば、アニリン誘導体(A)や後述する酸化剤の析出を抑制できるため、アニリン誘導体(A)の重合反応が十分に進行し、高分子量の導電性アニリン系ポリマー(P)が得られやすくなる。
[0134]
酸化剤(D);
 本実施形態の重合工程(Z2)で用いる酸化剤(D)としては、第一の実施形態において先に例示した酸化剤(D)が挙げられる。
 また、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造に用いる酸化剤(D)と、重合工程(Z2)で用いる酸化剤(D)は、同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
 また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
[0135]
 酸化剤(D)の使用量は、アニリン誘導体(A)1モルに対して1~5モルが好ましく、より好ましくは1~3モルである。酸化剤(D)の使用量が上記範囲内であれば、ポリマーの高分子量化および主鎖の酸化を十分に行うことができる。
 また、反応性の観点から、アニリン誘導体(A)に対して酸化剤(D)がモル比で等モル以上存在している系にて重合を行うことが好ましい。酸化剤(D)がモル比で等量未満の場合は重合反応後に未反応物が多く存在する傾向にあり、酸化剤(D)のモル比が大きい場合は副生成物が多く生成する傾向にある。
[0136]
重合工程(Z2);
 本実施形態の重合工程(Z2)は、導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に溶解した溶液、または導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に分散した分散液中に、上述したアニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加して重合する工程である。
[0137]
 具体的には、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、アニリン誘導体(A)が溶剤に溶解したアニリン誘導体溶液および酸化剤(D)が溶剤に溶解した酸化剤溶液を同時に滴下する方法、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)が溶剤に溶解した混合溶液および酸化剤溶液を同時に滴下する方法、反応器等に導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液と、アニリン誘導体溶液または塩基性化合物(B)との混合溶液と、酸化剤溶液とを連続的に供給し、押し出し流れで重合させるなどの方法によって重合を行う。これらの方法の中でも、副反応抑制の観点から、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、アニリン誘導体溶液または塩基性化合物(B)との混合溶液、および酸化剤溶液を同時に滴下する方法が好ましい。
[0138]
 導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液は、導電性アニリン系ポリマー(P-1)を溶剤(C)に溶解または分散することで得られる。
 なお、導電性アニリン系ポリマー(P-1)を製造する際に溶剤(C)を用いれば、導電性アニリン系ポリマー(P-1)は溶剤(C)に溶解した溶液(ポリマー溶液)、または溶剤(C)に分散した分散液(ポリマー分散液)の状態で得られる。よって、これら溶液または分散液を、そのまま重合工程(Z2)に用いてもよし、これら溶液または分散液にさらに溶剤(C)を添加し、希釈してから重合工程(Z2)に用いてもよい。
[0139]
 また、アニリン誘導体溶液は、アニリン誘導体(A)を溶剤(C)に溶解することで得られる。アニリン誘導体溶液は、溶剤(C)100質量部に対してアニリン誘導体(A)の仕込み量が5~200質量部となる割合で調製するのが好ましい。アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の混合溶液を調製する場合は、アニリン誘導体(A)と塩基性化合物(B)の質量比が上記範囲内となるように調製するのが好ましい。
 酸化剤溶液は、酸化剤(D)を溶剤(C)に溶解することで得られる。酸化剤溶液は、溶剤(C)100質量部に対して酸化剤(D)の仕込み量が5~200質量部となる割合で調製するのが好ましい。
 ただし、使用するアニリン誘導体(A)、酸化剤(D)の種類によって溶剤(C)に対する溶解度が異なるため、アニリン誘導体(A)や酸化剤(D)の仕込み量はその都度調整する必要がある。
 なお、アニリン誘導体溶液、混合溶液、酸化剤溶液に用いる溶剤(C)としては、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液に用いる溶剤と同じ種類であることが好ましい。
[0140]
 アニリン誘導体溶液または塩基性化合物(B)との混合溶液や、酸化剤溶液(以下、これらを総称して「添加液」という。)の添加量は、これらの濃度および反応器の大きさ、反応器の除熱能力に合わせて調整すればよい。
 重合工程(Z2)を開始するタイミングは、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の製造工程終了後、0.5時間以降が好ましい。
 添加液の滴下時間は、添加液の添加量にもよるが、ポリマーの成長反応速度を加味し、適宜最適な時間で実施することが好ましいが、工業的な観点からは、5分~24時間以内で実施することが好ましい。
[0141]
 このように導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、アニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加し、重合反応をさらに進行させることで(すなわち、重合を追加することで)、より高分子量かつ高導電性の導電性アニリン系ポリマー(P)を得ることができる。
[0142]
 重合工程(Z2)では、反応液温度が25℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下である。反応液温度が25℃以下であれば、得られるポリマーの導電性がさらに向上する。
[0143]
 また、重合工程(Z2)では、重合時の反応系内のpHが7以下となるように調整することが好ましく、より好ましくはpHが6以下である。
 ここで、反応系内のpHが7以下であれば、副反応が進行しにくくなり、モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の生成が抑制され、結果として、得られるポリマーの導電性や純度等が向上する。
[0144]
 重合時の反応系内のpHは、プロトン酸の添加により調整できる。
 プロトン酸としては、第一の実施形態の説明において先に例示したプロトン酸が挙げられる。
 プロトン酸の添加量は、酸化剤の析出がない範囲であれば特に限定されない。特に、モル比でプロトン酸:酸化剤=0.01:100~50:100が好ましく、より好ましくは0.01:100~45:100である。プロトン酸の添加量が上記範囲内であれば、モノマーの析出を抑制するとともに、反応進行の妨げとなりにくく、モノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体の生成が抑制され、結果として、得られるポリマーの導電性や純度等が向上する。
[0145]
 また、重合工程(Z2)では、導電性アニリン系ポリマー(P-1)の溶液または分散液中に、アニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加した後、反応液を20℃以下で保持するのが好ましい。反応液を20℃以下で保持することにより、高分子量のポリマーが得られやすくなる。
 反応液の保持温度は、高分子量のポリマーが得られやすいことと、副反応抑制の観点から、15℃以下がより好ましく、さらに好ましくは5℃以下であり、特に好ましくは0℃以下である。
 反応液の保持温度は、均一であればさらに好ましい。
[0146]
 また、反応液の保持時間は、0.5~12時間が好ましく、導電性や工業性の観点から、1~12時間程度がより好ましく、さらに好ましくは4~12時間である。
[0147]
 なお、反応液の保持温度を制御する方法としては特に限定されないが、例えば反応器を冷却する冷媒の流量や温度を調整することで制御できる。反応器によってどの方法がよいかはその都度選択されるが、工業的な観点から、冷媒の温度を調整することが好ましい。
 また、反応液の保持温度を均一に保つのに必要であれば、攪拌操作を併用してもよい。
[0148]
 重合工程(Z2)は1回でもよいが、反応液にアニリン誘導体(A)および酸化剤(D)をさらに添加して、重合工程(Z2)を複数回行ってもよい。重合工程(Z2)の回数は反応器の大きさや除熱能力によって決定されるが、重合工程(Z2)を複数回行えば、より高分子量の導電性アニリン系ポリマー(P)が得られる。
 重合工程(Z2)を複数回行う場合、反応液容量が多くなる等の問題が生じる場合には、反応液の一部を取り出し、取り出した反応液にアニリン誘導体(A)および酸化剤(D)を添加して、重合工程(Z2)をさらに行ってもよい。また、全ての重合工程(Z2)において反応液を20℃以下で保持する必要はないが、反応液温度の調整などの観点から、各重合工程(Z2)において反応液を20℃以下で保持するのが好ましい。
[0149]
 重合工程(Z2)によって得られた導電性アニリン系ポリマー(P)は、溶剤(C)に溶解したポリマー溶液、または溶剤(C)に分散したポリマー分散液の状態で得られる。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P)は、溶剤(C)を除去した後、そのまま各種用途に用いてもよいが、ポリマー溶液またはポリマー分散液には未反応モノマー、オリゴマー、および不純物などが含まれる場合がある。従って、得られた導電性アニリン系ポリマー(P)を精製してから用いるのが好ましい。ポリマーを精製することでモノマー、オリゴマー、不純物等の低分子量体が取り除かれ、高純度で、高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマー(P)が得られる。
[0150]
 ポリマーを精製するには、第一の実施形態と同様に、重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を膜濾過により精製したり(膜濾過工程)、重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を沈殿精製したり(沈殿精製工程)すればよい。
 また、膜濾過工程の前または後で、さらに脱塩処理を行ってもよい(脱塩工程)。脱塩処理により、導電性アニリン系ポリマー(P)から塩基性化合物(B)を効果的に除去することができ、導電性アニリン系ポリマー(P)の導電性がより向上する。
 また、沈殿精製工程の後で、沈殿精製されたポリマー(精製物)を膜濾過によりさらに精製するのが好ましい(膜濾過工程)。
 膜濾過、脱塩処理、沈殿精製の方法としては、第一の実施形態において先に例示した方法が挙げられる。
[0151]
 このようにして得られた導電性アニリン系ポリマー(P)は、上記工程(I)~(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上であり、導電性に優れる。
 特に、重合工程(Z2)の後、膜濾過工程や沈殿精製工程を行えば、未反応モノマー、オリゴマー、不純物等が十分に除去されるので、高純度かつ高分子量の導電性アニリン系ポリマー(P)が得られるため、導電性がより向上する。
[0152]
 また、このようにして得られた導電性アニリン系ポリマー(P)は、単なる水、塩基および塩基性塩を含む水、酸を含む水、またはメタノール、エタノール、2-プロパノール等の溶剤、またはそれらの混合物に溶解することができ、加工性に優れる。具体的には、これらの溶剤10g(液温25℃)に、0.1g以上、均一に溶解する。
[0153]
 以上説明したように、本発明の導電性アニリン系ポリマーの製造方法によれば、化学酸化重合によって安価な材料から高い導電性を有する導電性アニリン系ポリマー(P)を大量に製造できる。
 加えて、本発明であればポリマーを高分子量化でき、また、耐熱性に優れる導電性アニリン系ポリマー(P)が得られる。
[0154]
 また、本発明の更なる実施態様において、上述した重合工程(Z1)と重合工程(Z2)を組合せることにより、更に高分子量なポリマーを製造できる。
[0155]
<用途>
 本発明の導電性アニリン系ポリマーは、スプレーコート法、デイップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の簡便な手法で導電体を形成することができる。
 また、導電性アニリン系ポリマーを主成分とする組成物は、各種帯電防止剤、コンデンサー、電池、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食、接着剤、繊維、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装の下地、電気防食、電池の蓄電能力向上等に適応可能である。
 特に、本発明の導電性アニリン系ポリマーは、導電性に加えて耐熱性にも優れるため、製造過程に加熱処理工程を含むコンデンサーなどの用途に好適である。
[0156]
<導電性フィルムの製造方法>
 本発明の導電性フィルムの製造方法は、本発明の導電性アニリン系ポリマーを含む溶液を塗布する工程と、基材上に塗布された溶液を乾燥させる工程とを有する。
 塗布方法としては、スプレーコート法、デイップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
 また、乾燥方法としては特に制限されず、公知の方法を採用できる。
[0157]
 本発明の電性フィルムの製造方法によれば、本発明の導電性アニリン系ポリマーを用いるので、高い導電性を有する導電性フィルムを、簡便な手法で製造できる。
実施例
[0158]
 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 なお、実施例および比較例における評価および測定方法は以下の通りである。
[0159]
<評価および測定>
(面積比(Y/X)の算出)
 まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
 この溶離液に、導電性アニリン系ポリマー溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
 得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)で、カラム(東ソー株式会社製、「TSK-GEL ALPHA-M」、7.8×300mm)を2本用いて分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(II))。なお、測定は、流速0.6mL/min、カラム温度40℃で行った。
 ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料については固形分濃度が25ppmとなるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
 そして、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)と、15000Da未満の領域の面積(Y)をそれぞれ求めた(工程(IV)、(V))。
 これら面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求めた(工程(VI))。
[0160]
(導電性の評価)
 導電性アニリン系ポリマー溶液をスピンコーター(アクテス株式会社製、「マニュアルスピンナーASC-4000」)を用いてガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で120℃×10分間加熱乾燥して、所定の膜厚の塗膜がガラス基板上に形成された導電性評価用の試験片を得た。塗膜の膜厚は、原子間力顕微鏡(KEYENC社製、「ナノスケール ハイブリッド顕微鏡 VN-8000」)を用いて測定した。
 得られた導電性評価用の試験片の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。
 測定した表面抵抗値および塗膜の膜厚の積から体積抵抗値を算出し、その逆数から導電率を求めた。
[0161]
(耐熱性の評価)
 導電性アニリン系ポリマー溶液をスピンコーター(アクテス株式会社製、「マニュアルスピンナーASC-4000」)を用いてガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で160℃×1時間加熱乾燥して、所定の膜厚の塗膜がガラス基板上に形成された耐熱性評価用の試験片を得た。
 先の導電性の評価と同様にして得られた耐熱性評価用の試験片の表面抵抗値を測定し、導電率を求めた。
[0162]
<実施例1-1>
 撹拌動力0.7kw/m 下、エチレングリコールを用いたバスで、0℃に冷却した、水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液(重合反応開始温度:反応液温度1.5℃)に、2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLに溶解させた溶液を、200mmol/hrで滴下した。滴下終了後、反応液の温度(保持温度)が0℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.75当量時で、8℃であった。
 その後、反応生成物を冷却下で減圧濾過装置にて濾別し、メタノールにて洗浄後乾燥し、粗ポリマーを得た。
 得られた粗ポリマー20gを10Lの水で溶解し、固形分濃度が0.2質量%のポリマー溶液を調製した後、分画分子量10000MWCOのザルトリウス社製の「ビバフロー200」限外濾過ユニットを用い、固形分濃度が3質量%となるまで処理し(膜濾過工程)、導電性アニリン系ポリマー溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー溶液の一部を採取し、導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%となるように、先に調製した溶離液に溶解させて試験溶液を調製した。この試験溶液について分子量(M)および面積比(X/Y)を算出した。これらの結果を表2に示す。
 また、導電性アニリン系ポリマー溶液について、導電率を求めた。結果を表2に示す。
[0163]
<実施例1-2>
 水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液を-10℃に冷却(重合反応開始温度:反応液温度-9℃)し、滴下終了後の保持温度が-10℃になるように冷媒の温度を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.8当量時で、-5℃であった。
[0164]
<実施例1-3>
 水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒75mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolと硫酸0.5gを溶解させた溶液を-5℃に冷却(重合反応開始温度:反応液温度-3℃)し、これに2-アミノアニソール-4-スルホン酸100mmolとトリエチルアミン100mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒75mLに溶解させた溶液を、100mmol/hrで滴下し、滴下終了後の保持温度が-5℃になるように冷媒の温度を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.7当量時で、-1℃であった。
[0165]
<実施例1-4>
 水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液を-5℃に冷却(重合反応開始温度:反応液温度-3℃)し、これに2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLに溶解させた溶液を、200mmol/minで滴下した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下終了時から10分後で、16℃であった。
[0166]
<実施例1-5>
 撹拌動力0.7kw/m 下、エチレングリコールを用いたバスで、-5℃に冷却した、水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLに2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを溶解させた溶液(重合反応開始温度:反応液温度-3℃)に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLに溶解させた溶液を、200mmol/hrで滴下した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液滴下1当量時で、1.3℃であった。
[0167]
<比較例1-1>
 水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液を2℃に冷却(重合反応開始温度:反応液温度3℃)し、滴下終了後の保持温度が25℃になるように冷媒の温度を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下終了時から45分後で、25℃であった。
[0168]
<比較例1-2>
 水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液を-3℃に冷却(重合反応開始温度:反応液温度-2.5℃)し、2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合溶媒150mLに溶解させた溶液を、400mmol/hrで滴下した。滴下終了後、反応液の温度(保持温度)が25℃になるように冷媒の温度を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表2に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下終了時から15分後で、28℃であった。
[0169]
[表2]


[0170]
 表2の通り、液温25℃未満で重合を行った実施例1-1~1-5で得られた導電性アニリン系ポリマーは、面積比(X/Y)が1.20以上であり、高い導電性を有していた。これは、重合を25℃未満で行ったことによって、副反応の進行や主鎖の酸化還元構造の変化を抑制でき、かつ、高分子量体を生成できたことによるものと考えられる。
 一方、液温25℃以上で重合を行った比較例1-1、1-2で得られた導電性アニリン系ポリマーは、面積比(X/Y)が1.20未満であり、各実施例に比べて導電性に劣っていた。これは、重合工程(Z1)における反応液の最高到達温度が25℃以上になったことで、副反応の進行や主鎖の酸化還元構造の変化を抑制できず、各実施例に比べて高分子量体が得られにくかったことによるものと考えられる。
 なお、実施例1-4、比較例1-2の場合、2-アミノアニソール-4-スルホン酸とトリエチルアミンが溶解した溶液の滴下速度を他の実施例または比較例よりも速くしたため、反応液の発熱速度が速かった。そのため、実施例1-4では滴下終了後の反応液を液温0℃になるように保持したが、モノマー滴下終了時から10分後に反応液の最高到達温度を迎え、その温度は16℃であった。一方、比較例1-2では滴下終了後の反応液を液温25℃になるように保持したが、モノマー滴下終了時から15分後に反応液の最高到達温度を迎え、その温度は28℃であった。
[0171]
<実施例2-1>
 2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比4/6)の混合溶媒78gに溶解し、酸性基を有するアニリンの溶液とした。別途、過硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを水/アセトニトリル(体積比4/6)の混合溶媒156gに溶解した溶液を、エチレングリコールを用いたバスで冷却した。この時のバス温は、熱伝対による計測で-4℃であった。これに対して酸性基を有するアニリンの溶液を1時間かけて一定滴下した。
 また、反応系内に挿入したpHメーターによる計測では、反応系内のpHは滴下開始時がpH0.6、滴下終了時がpH0.6であり、モノマー滴下当量が0.3当量の時にpH最高値3.3を示した。
 滴下終了後、バス温を-8℃にして、反応液を1時間攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。pHの最低値はモノマー滴下終了後40分で、0.6を示した。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、攪拌速度200rpm、モノマー滴下0.5当量時で、9.2℃であった。
 その後、得られたポリマー溶液を、クロスフロー方式を採用した装置で膜濾過した(膜濾過工程)。濾過部に、ザルトリウス社製の「ビバフロー200」を用いた。また、濾過膜として、分画分子量が10000Daの限外濾過膜(材質:ポリエーテルスルホン(PES))を用いた。膜濾過の終了後、濾過側(濃縮された)の溶液を導電性アニリン系ポリマー溶液として回収した。
 ついで、5%水溶液に調整した導電性ポリマー溶液5gを、直径1cmのカラムに充填したアンバーライトIR-120B(H)(オルガノ株式会社製)5mLに通液することで陽イオン交換を行い(脱塩処理)、導電性アニリン系ポリマー溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー溶液の一部を採取し、導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%となるように、先に調製した溶離液に溶解させて試験溶液を調製した。この試験溶液について分子量(M)および面積比(X/Y)を算出した。これらの結果を表3に示す。
 また、導電性アニリン系ポリマー溶液について、導電率を求めた。結果を表3に示す。
[0172]
<実施例2-2>
 2-アミノアニソール-4-スルホン酸100mmolとトリエチルアミン100mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)の混合溶媒79.7gに溶解し、酸性基を有するアニリンの溶液とした。別途、過硫酸アンモニウム100mmolと硫酸0.5gを水/アセトニトリル(体積比1/1)の混合溶媒39.9gに溶解した溶液を、エチレングリコールを用いたバスで冷却した。この時のバス温は、熱伝対による計測で-4℃であった。これに対して酸性基を有するアニリンの溶液を1時間かけて一定滴下した。
 また、反応系内に挿入したpHメーターによる計測では、反応系内のpHは滴下開始時がpH0.9、滴下終了時がpH1.5であり、モノマー滴下当量が0.3~0.4当量の時にpH最高値3.6を示した。
 滴下終了後、バス温-4℃のまま、反応液を2時間攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。pHの最低値は滴下終了後85分で、0.8を示した。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、攪拌速度200rpm、モノマー滴下0.6当量時で、1.5℃であった。
 その後、得られた反応生成物のスラリーを実施例2-1と同様にして限外濾過器にて濾別し(膜濾過工程)、陽イオン交換を行って(脱塩処理)、導電性アニリン系ポリマー溶液を得た。得られた導電性アニリン系ポリマー溶液について、実施例2-1と同様にして、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[0173]
<実施例2-3>
 2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトン(体積比7/3)の混合溶媒94gに溶解し、酸性基を有するアニリンの溶液とした。別途、過硫酸アンモニウム200mmolと硫酸0.2gを水/アセトン(体積比7/3)の混合溶媒187gに溶解した溶液を、エチレングリコールを用いたバスで冷却した。この時のバス温は、熱伝対による計測で-3.5℃であった。これに対して酸性基を有するアニリンの溶液を1時間かけて一定滴下した。
 また、反応系内に挿入したpHメーターによる計測では、反応系内のpHは滴下開始時がpH1.4、滴下終了時がpH2.6であり、モノマー滴下当量が0.2~0.4当量の時にpH最高値3.8を示した。
 滴下終了後、バス温-3.5℃のまま、反応液を1時間攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。pHの最低値は滴下終了後120分で、1.5を示した。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、攪拌速度200rpm、モノマー滴下1.0当量時で、2.8℃であった。
 その後、得られた反応生成物のスラリーを実施例2-1と同様にして限外濾過器にて濾別し(膜濾過工程)、陽イオン交換を行って(脱塩処理)、導電性アニリン系ポリマー溶液を得た。得られた導電性アニリン系ポリマー溶液について、実施例2-1と同様にして、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。
[0174]
[表3]


[0175]
 表3の通り、35体積%以上の水を含有する溶剤(C)を用いて重合を行った実施例2-1~2-3で得られた導電性アニリン系ポリマーは、面積比(X/Y)が1.20以上であり、高い導電性を有していた。これは、重合工程(Z1)において35体積%以上の水を含有する溶剤(C)を用いたことによって、アニリン誘導体(A)および酸化剤の析出が抑制され、高分子量体が形成されたことによるものと考えられる。
[0176]
<実施例3-1>
 ペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液103gと、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだ容量250mLのガラス製の丸底攪拌槽(槽径7cm)の反応器内液温度が-5℃になるように冷媒の温度を調整し、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液10.1gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸0.1molを1時間かけて滴下した。攪拌翼はガラス製のアンカー翼(攪拌翼径5cm)で、攪拌回転数は200rpmで行った。滴下終了後の反応液の温度は-5℃であった。なお、前記「水溶液」とは水とアセトニトリルを同体積(1:1)で混合した混合溶媒を示す。
 滴下終了後、反応液の温度(保持温度)が-5℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.8当量時で、1.5℃であった。
 その後、得られたポリマー溶液を、クロスフロー方式を採用した装置で膜濾過した(膜濾過工程)。濾過部に、ザルトリウス社製の「ビバフロー200」を用いた。また、濾過膜として、分画分子量が10000Daの限外濾過膜(材質:ポリエーテルスルホン(PES))を用いた。膜濾過の終了後、濾過側(濃縮された)の溶液を導電性アニリン系ポリマー溶液として回収した。
 得られた導電性アニリン系ポリマー溶液の一部を採取し、導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%となるように、先に調製した溶離液に溶解させて試験溶液を調製した。この試験溶液について分子量(M)および面積比(X/Y)を算出した。これらの結果を表4に示す。
 また、導電性アニリン系ポリマー溶液について、導電率を求めた。結果を表4に示す。
[0177]
<実施例3-2>
 保持時間を4時間に変更した以外は、実施例3-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表4に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.8当量時で、1.5℃であった。
[0178]
<実施例3-3>
 保持時間を6時間に変更した以外は、実施例3-1と同様にして、重合工程(Z1)および膜濾過工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表4に示す。
 なお、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.8当量時で、1.5℃であった。
[0179]
[表4]


[0180]
 表4の通り、液温25℃未満で重合を行った実施例3-1~3-3で得られた導電性アニリン系ポリマーは、面積比(X/Y)が1.20以上であり、高い導電性を有していた。保持時間が長いほど、面積比(X/Y)が大きくなり、導電率が高くなる傾向が見られた。
[0181]
<実施例4-1>
 2-アミノアニソール-4-スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)の混合溶媒150mLに溶解させた溶液を、-5℃の水/アセトニトリル(体積比1/1)の混合溶媒150mLにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolを溶解させた溶液に、撹拌動力0.7kw/m 下、200mmol/hrで滴下した。滴下終了後、反応液の温度(保持温度)が10℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持した(重合工程(Z1))。重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.8当量時で、9℃であった。
 その後、得られた反応生成物を遠心濾過装置にて濾別し、メタノールにて洗浄後乾燥し、粗ポリマー17gを得た。
 得られた粗ポリマー1gを9gの水(良溶媒)に溶解した後、21gのアセトン(貧溶媒)を添加して沈殿精製を行った(沈殿精製工程)。
 減圧濾過装置にて沈殿物を濾別した後、アセトニトリルにて洗浄後乾燥させ、沈殿精製して得られたポリマーを水で溶解し、固形分濃度が3質量%の導電性アニリン系ポリマー溶液を調製した。
 得られた導電性アニリン系ポリマー溶液の一部を採取し、導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%となるように、先に調製した溶離液に溶解させて試験溶液を調製した。この試験溶液について分子量(M)および面積比(X/Y)を算出した。これらの結果を表5に示す。
 また、導電性アニリン系ポリマー溶液について、導電率を求めた。結果を表5に示す。
[0182]
<実施例4-2~4-3>
 良溶媒の量と、貧溶媒の種類および量を表5に示すように変更した以外は、実施例4-1と同様にして重合工程(Z1)および沈殿精製工程を行い、各測定および評価を行った。結果を表5に示す。また、重合工程(Z1)時の反応液の最高到達温度を表5に示す。なお、重合工程(Z1)時の反応液の温度は、モノマー滴下時に最高温度に到達した。
[0183]
[表5]


[0184]
 表5の通り、液温25℃未満で重合を行い、かつ再沈殿精製を行った実施例4-1~4-3で得られた導電性アニリン系ポリマーは、面積比(X/Y)が1.20以上であり、高い導電性を有していた。
 実施例4-1~4-3のように再沈殿精製を行うことで、限外濾過を行わなくても、短時間で面積比(X/Y)が1.20以上の高い導電性を有するポリマーを製造することができた。
[0185]
<実施例5-1>
(導電性アニリン系ポリマー(P1-2)の製造)
導電性アニリン系ポリマー(P1-1)の製造;
 ペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液103gと、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだ容量250mLのガラス製の丸底攪拌槽(槽径7cm)中の液温を-5℃に調整後、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液70.3gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸0.1molを1時間かけて滴下した。攪拌翼としてガラス製のアンカー翼(攪拌翼径5cm)を用い、攪拌回転数は200rpmで行った。また、滴下開始前の攪拌槽内溶液の温度が10℃となるように、冷媒の温度を調節した。なお、前記「水溶液」とは水とアセトニトリルを同体積(1:1)で混合した混合溶媒を示す。
 滴下終了後、反応液の温度(保持温度)が10℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持し(重合工程(Z pre)、導電性アニリン系ポリマー(P1-1)溶液を得た。重合工程時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.6当量時で、24.8℃であった。
導電性アニリン系ポリマー(P1-2)の製造;
 前記導電性アニリン系ポリマー(P1-1)の製造により得られた導電性アニリン系ポリマー(P1-1)溶液(全量)に、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液29.6gと、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液19.0gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸(0.025mol)を、0.5時間かけて、それぞれ同時に滴下し(重合工程(Z2))、導電性アニリン系ポリマー(P1-2)溶液を得た。なお、反応の際は、反応液温度が10℃となるように冷媒の温度を調節した。重合工程(Z2)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.1当量時で、11.5℃であった。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P1-2)溶液の一部を採取し、導電性アニリン系ポリマーの固形分濃度が0.1質量%となるように、先に調製した溶離液に溶解させて試験溶液を調製した。この試験溶液について分子量(M)および面積比(X/Y)を算出した。これらの結果を表6に示す。
 また、導電性アニリン系ポリマー(P1-2)溶液について、導電率を求めた。結果を表6に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表6に示す。
[0186]
<実施例5-2>
(導電性アニリン系ポリマー(P1-2’)の製造)
 導電性アニリン系ポリマー(P1-1)溶液に、アニリン誘導体(A)、塩基性化合物(B)および酸化剤(D)を滴下した後、反応液の温度が10℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持した以外は、実施例5-1と同様にして重合工程(Z2)を行い、導電性アニリン系ポリマー(P1-2’)を得た。得られた導電性アニリン系ポリマー(P1-2’)について各測定および評価を行った。結果を表6に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表6に示す。
[0187]
[表6]


[0188]
 表6の通り、実施例5-1および5-2のように追加重合を行うことで、得られた導電性アニリン系ポリマー(P1-2)、(P1-2’)は、面積比(X/Y)が1.20以上となり、導電性が向上した。特に、重合工程(Z2)において反応液を保持した実施例5-2の場合、導電性がさらに向上した。
[0189]
<実施例5-3>
(導電性アニリン系ポリマー(P2-1)の製造)
 滴下開始前の攪拌槽内溶液の温度が-5℃となるように冷媒の温度を調節し、反応液の保持温度が-5℃になるように冷媒の温度を調節した以外は、実施例5-1の導電性アニリン系ポリマー(P1-1)の製造と同様にして、導電性アニリン系ポリマー(P2-1)溶液を得た。重合工程(Z pre)時の反応液の最高到達温度を表7に示す。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-1)溶液について、実施例5-1と同様にして各測定および評価を行った。結果を表7に示す。
[0190]
<実施例5-4>
(導電性アニリン系ポリマー(P2-2)の製造)
 実施例5-3と同様にして導電性アニリン系ポリマー(P2-1)溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-1)溶液(全量)に、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液29.6gと、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液19.0gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸(0.025mol)を、0.5時間かけて、それぞれ同時に滴下し(重合工程(Z2-1))、導電性アニリン系ポリマー(P2-2)溶液を得た。なお、反応の際は、反応液温度が-5℃となるように冷媒の温度を調節した。重合工程(Z2-1)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.1当量時で、-4.9℃であった。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-2)について、実施例5-1と同様にして各測定および評価を行った。結果を表7に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表7に示す。
[0191]
<実施例5-5>
(導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)の製造)
 導電性アニリン系ポリマー(P2-1)溶液に、アニリン誘導体(A)、塩基性化合物(B)および酸化剤(D)を滴下した後、反応液の温度が-5℃になるように冷媒の温度を調整しながら、2時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持した以外は、実施例5-4と同様にして重合工程(Z2-1)を行い、導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)を得た。得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)について各測定および評価を行った。結果を表7に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表7に示す。
[0192]
<実施例5-6>
(導電性アニリン系ポリマー(P2-3)の製造)
 実施例5-5と同様にして導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)溶液50gに、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液102.9gと、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液70.3gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸(0.025mol)を、2時間かけて、それぞれ同時に滴下した。なお、反応の際は、反応液温度が-5℃となるように冷媒の温度を調節した。
 滴下終了後、反応液の温度が-5℃になるように冷媒の温度を調整しながら、4時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持し(重合工程(Z2-2))、導電性アニリン系ポリマー(P2-3)溶液を得た。重合工程(Z2-2)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.1当量時で、-4.9℃であった。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-3)について、実施例5-1と同様にして各測定および評価を行った。結果を表7に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表7に示す。
[0193]
<実施例5-7>
(導電性アニリン系ポリマー(P2-4)の製造)
 実施例5-6と同様にして導電性アニリン系ポリマー(P2-3)溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-3)溶液50gに、98質量%硫酸(0.005mol)を仕込んだペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液102.9gと、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液70.3gに溶解した2-アミノアニソール-4-スルホン酸(0.025mol)を、2時間かけて、それぞれ同時に滴下した。なお、反応の際は、反応液温度が-5℃となるように冷媒の温度を調節した。
 滴下終了後、反応液の温度が-5℃になるように冷媒の温度を調整しながら、4時間、反応液を攪拌回転数200rpmで攪拌しながら保持し(重合工程(Z2-3))、導電性アニリン系ポリマー(P2-4)溶液を得た。重合工程(Z2-3)時の反応液の最高到達温度は、モノマー滴下0.1当量時で、-4.9℃であった。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-4)について、実施例5-1と同様にして各測定および評価を行った。結果を表7に示す。また、重合工程(Z)時の反応液の最高到達温度を表7に示す。
[0194]
[表7]


[0195]
 表7の通り、実施例5-3~5-7で得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-1)、(P2-2)、(P2-2’)、(P2-3)、(P2-4)は、面積比(X/Y)が1.20以上であり、高い導電性を有していた。特に、追加重合を行った実施例5-4~5-7で得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-2)、(P2-2’)、(P2-3)、(P2-4)は、追加重合を行わなかった実施例5-3で得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-1)に比べて導電率が高く、導電性が向上した。その中でも特に、重合工程(Z2)において反応液を保持した実施例5-5~5-7の場合、導電性がさらに向上した。また、追加重合の回数が増えるに連れて導電率は高くなり、導電性がより向上する傾向にあった。
[0196]
<実施例6-1>
 実施例5-4と同様にして導電性アニリン系ポリマー(P2-2)溶液を得た。
 得られた導電性アニリン系ポリマー(P2-2)溶液を、固形分濃度が5質量%になるように調整した。この溶液5gを、直径1cmのカラムに充填したアンバーライトIR-120B(H)(オルガノ株式会社製)5mLに通液することで陽イオン交換を行った(脱塩処理)。脱塩処理後の前記導電性アニリン系ポリマーを用いて、耐熱性の評価を行った。結果を表8に示す。
[0197]
<実施例6-2>
 実施例5-5で製造した導電性アニリン系ポリマー(P2-2’)溶液を用い、実施例6-1と同様にして脱塩処理を行い、耐熱性の評価を行った。結果を表8に示す。
[0198]
<実施例6-3>
 実施例5-6で製造した導電性アニリン系ポリマー(P2-3)溶液を用い、実施例6-1と同様にして脱塩処理を行い、耐熱性の評価を行った。結果を表8に示す。
[0199]
<実施例6-4>
 実施例5-7で製造した導電性アニリン系ポリマー(P2-4)溶液を用い、実施例6-1と同様にして脱塩処理を行い、耐熱性の評価を行った。結果を表8に示す。
[0200]
[表8]


[0201]
 表8の通り、面積比(X/Y)が1.20以上である実施例6-1~6-4の場合、60℃で1時間加熱乾燥しても導電性を維持でき、耐熱性を有していた。特に、分子量(M)が大きいほど、および/または、面積比(X/Y)が大きいほど導電率が高く、耐熱性に優れていた。

符号の説明

[0202]
 x  領域(x)
 y  領域(y)

請求の範囲

[請求項1]
 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ、下記工程(I)~(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上である、導電性アニリン系ポリマー。
 (I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性アニリン系ポリマーを固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
 (II)試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
 (III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
 (IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
 (V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
 (VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程。
[化1]


                  
(式(1)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。)
[請求項2]
 請求項1に記載の導電性アニリン系ポリマーを製造する方法であって、
 下記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)を、塩基性化合物(B)と溶剤(C)と酸化剤(D)とを含む溶液中、液温25℃未満で重合する重合工程(Z1)を有する、導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[化2]


                  
(式(2)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。)
[請求項3]
 前記溶剤(C)は、溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有する、請求項2に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[請求項4]
 請求項1に記載の導電性アニリン系ポリマーを製造する方法であって、
 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に溶解した溶液、または前記導電性アニリン系ポリマー(P-1)が溶剤(C)に分散した分散液中に、下記一般式(2)で表されるアニリン誘導体(A)と酸化剤(D)とを添加して重合する重合工程(Z2)を有する、導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[化3]


                  
(式(2)中、R ~R は、各々独立に、-H、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基もしくはその塩、水酸基、ニトロ基、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、R ~R のうちの少なくとも一つは酸性基もしくはその塩である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。)
[請求項5]
 前記溶剤(C)は、溶剤(C)の全体積に対して35体積%以上の水を含有する、請求項4に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[請求項6]
 前記重合工程(Z1)または重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を膜濾過により精製する膜濾過工程を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[請求項7]
 前記重合工程(Z1)または重合工程(Z2)で得られた生成物を含む溶液を沈殿精製する沈殿精製工程を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[請求項8]
 前記沈殿精製工程で得られた精製物を含む溶液を膜濾過により精製する膜濾過工程を有する、請求項7に記載の導電性アニリン系ポリマーの製造方法。
[請求項9]
 基材上に、請求項1に記載の導電性アニリン系ポリマーを含む溶液を塗布する工程と、基材上に塗布された溶液を乾燥させる工程とを有する、導電性フィルムの製造方法。

図面

[ 図 1]