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1. WO2011001906 - METHOD FOR EVALUATION OF CULTURED CELLS, AND METHOD FOR SCREENING OF BIOMARKER

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明 細 書

発明の名称 培養細胞の評価方法およびバイオマーカーのスクリーニング方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

非特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

実施例

0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 培養細胞の評価方法およびバイオマーカーのスクリーニング方法

技術分野

[0001]
 本発明は、培養細胞から培養液中へ放出されるマイクロRNA(miRNA)などの核酸を指標とした培養細胞の評価方法およびバイオマーカーのスクリーニング方法に関する。

背景技術

[0002]
 培養細胞の評価は、培養した細胞の免疫染色や、細胞内に発現しているタンパク質や遺伝子などを解析する方法で評価されている。例えば、胚性幹細胞は、OCT4、NANOGなどを標的とした免疫染色法で、胚性幹細胞から分化誘導した細胞は、OCT4、NANOGの遺伝子発現量の減少や組織特異的な遺伝子の増加から評価している。
[0003]
 免疫染色法、遺伝子発現量などの細胞を使用した評価方法は、培養した細胞を固定、溶解などしなければならないということから、経時的な変化を評価するためには、同一条件で培養する培養細胞を多量に準備しなければならない。そして、経時的に培養した細胞を消費しなければならないという問題点がある。
[0004]
 新しい治療法として注目されている再生医療(細胞医療)分野では、移植細胞の評価は、同一条件で培養した細胞を細胞染色などで間接的に評価しなければならないという問題点がある。移植に用いる細胞自体を評価することは従来法では不可能である。
[0005]
 近年、miRNAをコードする遺伝子から転写されたヘアピン型に折りたたまれた60から100塩基程度のRNA(前駆体マイクロRNA)がRNA分解酵素で分解され、17から24塩基の一本鎖RNAなったmiRNAが注目されている。このmiRNAは、自身と相補的な塩基配列をもったメッセンジャーRNAの翻訳を阻害する機能を有しており、幹細胞から組織細胞への分化(非特許文献1)や各組織がん細胞の判定(特許文献1)で重要な役割を果たしているという報告がされている。さらに、このmiRNAが血液中に存在している報告(非特許文献2)があり、がん等の疾病に対する診断・予後予測等に利用できる可能性があることも注目されている。
[0006]
 培養細胞の培養には、培養効率を高める観点から、血清を添加した培地が一般的に使用される。添加した血清由来の核酸と培養細胞から放出された核酸との区別が難しいことから、これまでに培養細胞から放出された核酸で細胞を評価する方法やバイオマーカーのスクリーニング方法は報告されていない。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開2009-100687号

非特許文献

[0008]
非特許文献1 : Exp. Hematol. 2008;36:1354-1369
非特許文献2 : Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2008;105:10513-8

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 従って、本発明の目的は、培養細胞を消費することなく培養細胞の評価やバイオマーカーのスクリーニングをすることができる新規な手段を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0010]
 本願発明者は、鋭意研究の結果、培養細胞から培養液中にmiRNA等の核酸が放出されていることを見出し、さらに、幹細胞、分化した組織細胞、薬剤処理、がん細胞の悪性度進展等に応じて、培養液中に放出されるmiRNA等の核酸の量や種類が異なることを見出した。そして該miRNA等の核酸を指標とすれば細胞の状態を評価できることを見出し、本願発明を完成した。また、無血清培地で該miRNA等の核酸を測定すれば、バイオマーカーのスクリーニングを行えることを見出し、本願発明を完成させた。
[0011]
 すなわち、本発明は、無血清培地中で細胞を培養し、該細胞から培養液中に放出される核酸の少なくとも1種を測定することを含む、培養細胞の評価方法を提供する。本法は無血清培地で細胞を培養するので、幹細胞、がん細胞などのバイオマーカー候補となる核酸を容易に見出すことが可能な、スクリーニング方法を提供する。
[0012]
 より具体的には、本発明は以下の発明を提供する。
(1) 無血清培地中で細胞を培養し、該細胞から培養液中に放出される核酸の少なくとも1種を測定することを含む、培養細胞の評価方法。
(2) 前記核酸がマイクロRNAである(1)記載の方法。
(3) 配列表の配列番号1、3~5、7~19、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する(2)記載の方法。
(4) 配列表の配列番号1、3~5、7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する(3)記載の方法。
(5) 前記細胞は哺乳動物由来細胞であり、前記無血清培地は、内皮細胞分化遺伝子(Edg)ファミリーレセプターに対するリガンドと、セロトニンレセプターに対するリガンドとを含む培地である(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6) 内皮細胞分化遺伝子ファミリーレセプターに対する前記リガンドが、リゾホスファチジン酸(LPA)及びその塩、スフィンゴシン1リン酸(S1P)並びに内皮細胞分化遺伝子(Edg)ファミリーレセプターのアゴニストから成る群より選択される少なくとも1種である(5)記載の方法。
(7) セロトニンレセプターに対する前記リガンドが、セロトニン、その塩及びセロトニンレセプターのアゴニストから成る群より選択される少なくとも1種である(5)又は(6)記載の方法。
(8) 幹細胞の分化を評価する方法である(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9) 配列番号1、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標として幹細胞の分化を評価する(8)記載の方法。
(10) 配列番号1又は44に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として骨細胞への分化を評価する(9)記載の方法。
(11) 配列番号1に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として骨細胞への分化を評価する(10)記載の方法。
(12) 配列番号41に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として脂肪細胞への分化を評価する(9)記載の方法。
(13) 配列番号42に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として組織細胞への分化を評価する(9)記載の方法。
(14) 配列番号43に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として幹細胞の分化の有無を評価する(9)記載の方法。
(15) 細胞障害を評価する方法である(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の方法。
(16) 配列番号3~5に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標として培養細胞への障害を評価する(15)記載の方法。
(17) 前記培養細胞が肝細胞である(16)記載の方法。
(18) 培養細胞への化学物質・生物由来物質・環境刺激等による効果・影響・毒性等を評価する方法である(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の方法。
(19) がん細胞の有無を評価する方法である(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の方法。
(20) がん細胞の悪性度を評価する方法である(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の方法。
(21) 配列番号7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標とする(19)又は(20)記載の方法。
(22) 前記がん細胞が大腸がん細胞である(21)記載の方法。
(23) 無血清培地中で細胞を培養し、該細胞から培養液中に放出される核酸を測定することを含む、バイオマーカーのスクリーニング方法。
(24) 配列表の配列番号1、3~5、7~19、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する(23)に記載の方法。
(25) 配列表の配列番号1、3~5、7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する(24)に記載の方法。

発明の効果

[0013]
 本発明により、培養液中に放出される核酸を指標とした新規な細胞評価法およびバイオマーカーのスクリーニング方法が提供された。本発明の方法によれば、細胞を評価のためだけに消費する必要がないため、評価のために別途培養細胞を用意する必要がなく、手間とコストを大幅に軽減できる。貴重な細胞サンプルを消費しないで済むという点も大きな利点である。さらに、本発明によれば、実際に使用する細胞自体を直接評価することができるため、再生医療等の分野での細胞評価にも極めて有用である。また、バイオマーカーを容易にスクリーニングするために有用である。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 実施例1において、間葉系幹細胞から骨細胞または脂肪細胞を分化誘導した際の培養液中miRNA量のパターンを調べた結果である。
[図2] 実施例2において、ヒト肝臓がん由来の培養細胞を四塩化炭素処理することで細胞障害を与えた際の培養液中miRNA量のパターンを調べた結果である。
[図3] 実施例3において、ヒト大腸がん由来細胞株SW480およびそのリンパ節転移巣細胞株SW620の培養液中miRNA量をhsa-miR-16量で補正した相対発現量でパターンを調べた結果である。
[図4] 実施例4において、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞から骨細胞または脂肪細胞を分化誘導した際の培養液中miRNA量のパターンを調べた結果である。

発明を実施するための形態

[0015]
 本発明において、細胞の評価とは、細胞の状態を評価することであり、細胞の分化、化学物質・生物由来物質(例えば核酸、タンパク質およびその断片、糖質、脂質、ビタミン類等)・環境刺激(例えば温度の低下または上昇、湿度の低下または上昇、圧力の低下または上昇、酸素濃度の低下または上昇、CO 濃度の低下または上昇、紫外線照射、放射線照射等)等による効果・影響・毒性等、がん細胞の有無、がん細胞の悪性度等の種々の状態の評価が包含される。また、本発明においてバイオマーカーとは、細胞、組織、生体等の状態変化を定性・定量的に把握するための指標となる生体由来の物質(例えば核酸、タンパク質およびその断片、糖質、脂質、ビタミン類等)である。
[0016]
 本発明の方法で測定される核酸は、培養細胞から培養液中に放出されるものであればいかなる種類のものであってもよく、DNAでもRNAでもよいが、好ましくはマイクロRNA(miRNA)である。本発明において、miRNAとは、miRNAをコードする遺伝子から転写されヘアピン型に折りたたまれた60~100塩基程度のRNAがRNA分解酵素で17~24塩基程度に分解された一本鎖のRNAであり、自身と相補的な塩基配列をもったメッセンジャーRNAの翻訳を阻害する機能を有している。miRNAをコードする遺伝子は公知であり、miRNA自体も種々のものが公知である。
[0017]
 測定対象となるmiRNAの具体例としては、配列表の配列番号1、3~5、7~19に示される塩基配列からなるmiRNAを挙げることができる。これらはいずれも、下記実施例において、細胞の分化、細胞障害、がん細胞の有無、がん細胞の悪性度進展等に応じて培地中存在量が変化することが具体的に確認されているものである。もっとも、測定対象となる核酸はこれらのmiRNAに限定されるものではない。
[0018]
 例えば、下記実施例に記載されるように、配列番号1、41~44に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-145、hsa-miR-130a、hsa-miR-143、hsa-miR-214、hsa-miR-365)は、細胞の分化の指標として用いることができる。より具体的には、配列番号1及び44のmiRNA(hsa-miR-145、hsa-miR-365)は幹細胞から骨細胞への分化の指標として、配列番号41のmiRNA(hsa-miR-130a)は脂肪細胞への分化の指標として、それぞれ用いることができる。配列番号42のmiRNA(hsa-miR-143)は、骨細胞および脂肪細胞のいずれに分化した場合でも多く測定されるため、骨細胞および脂肪細胞等の組織細胞への分化の指標として用いることができる。配列番号43のmiRNA(hsa-miR-214)は、分化誘導前の未分化幹細胞の培養液中で多く測定されるため、幹細胞の分化の有無の指標として用いることができる。
[0019]
 配列番号3~5に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-16、hsa-miR-21、hsa-miR-122)は、細胞障害、例えば化学物質による細胞毒性等があり、より具体的には薬剤処理による肝細胞障害の指標として用いることができる。
[0020]
 配列番号7~19に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-20a、hsa-miR-892a、hsa-miR-22*、hsa-miR-19a、hsa-miR-484、hsa-miR-638、hsa-miR-125b、hsa-miR-339-5p、hsa-miR-532-3p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-138、hsa-miR-186、hsa-miR-223)は、がんの悪性度、より具体的には大腸がんの悪性度の指標として用いることができる。配列番号7~19のうち、配列番号7、10~15に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-20a、hsa-miR-19a、hsa-miR-484、hsa-miR-638、hsa-miR-125b、hsa-miR-339-5p、hsa-miR-532-3p)はがんの悪性度にかかわらず共通して培養液中に検出され、がん細胞の有無の指標として用いることができる。配列番号8、9に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-892a、hsa-miR-22*)は原発部由来の細胞株培養液中に特異的に検出され、配列番号16~19に示される塩基配列からなるmiRNA(hsa-miR-142-3p、hsa-miR-138、hsa-miR-186、hsa-miR-223)はより悪性度の高い転移巣由来の細胞株培養液中に特異的に検出される。
[0021]
 上記したmiRNAは、いずれか1種類のみを測定してもよいし、また、複数種類を測定してもよい。評価目的に応じて測定する核酸の種類は適宜選択することができる。例えば、幹細胞の骨細胞への分化を評価したい場合には、骨細胞への分化の指標となるhsa-miR-145及びhsa-miR-365と組み合わせて、未分化細胞の指標となるhsa-miR-214及び組織細胞への分化の指標となるhsa-miR-143を測定してもよい。
[0022]
 本発明において培養される細胞は、試験管内培養(in vitro)条件下で培養できる細胞であれば特に限定されないが、好ましくは哺乳動物由来の細胞である。また、in vitro条件下で培養できるのであれば、哺乳動物より摘出した組織を形成する細胞も含まれる。
[0023]
 in vitroで培養できる哺乳類由来の細胞としては、幹細胞(胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞など)、組織前駆細胞および組織細胞(骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、血液系細胞、繊維芽細胞、肝臓細胞など)、がん細胞およびがん由来細胞株(HepG2、HuH-7、SW480、SW620、Caco-2、CH-4、CH-5、CoLo-205、Hc110、PMP-1など)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
[0024]
 本発明で細胞の培養に用いる培地は、一般に無血清培地と呼ばれる、添加剤としての動物血清を含まない培地であればよい。公知の基本培地にその他添加剤(動物血清を除く)を含有した組成を有するものを用いることができる。基本培地の組成は、培養するべき細胞の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、イーグル培地のような最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地α(MEM-α)、間葉系細胞基礎培地(MSCBM)、Ham’s F-12およびF-10培地、DMEM/F12培地、Williams培地E、RPMI-1640培地、MCDB培地、199培地、Fisher培地、Iscove改変ダルベッコ培地(IMDM)、McCoy改変培地などが挙げられる。これらの培地は、いずれもこの分野において周知の培地である。
[0025]
 基本培地に加えるその他の添加剤としては、アミノ酸類、無機塩類、ビタミン類および炭素源や抗生物質等の他の添加剤を挙げることができる。これらの添加剤の使用濃度は特に限定されず、通常の哺乳動物細胞用培地に用いられる濃度で用いることができる。
[0026]
 アミノ酸類としては、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシンおよびL-バリンを挙げることができる。
[0027]
 無機塩類としては、塩化カルシウム、硫酸銅、硝酸鉄(III)、硫酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム等を挙げることができる。
[0028]
 ビタミン類としては、コリン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB4、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB12、ビタミンB13、ビタミンB15、ビタミンB17、ビタミンBh、ビタミンBt、ビタミンBx、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンMおよびビタミンPを挙げることができる。
[0029]
 他の添加剤としては、(1)繊維芽細胞増殖因子(FGF)、内皮細胞増殖因子(EGF)、および血小板由来増殖因子(PDGF)等の増殖因子、(2)ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよびカナマイシン等の抗生物質、(3)グルコース、ガラクトース、フルクトースおよびスクロース等の炭素源、(4)マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、カリウム、ナトリウム、銅、セレン、コバルト、スズ、モリブデン、ニッケルおよびケイ素等の微量金属)、(5)β-グリセロリン酸、デキサメタゾン、ロシグリタゾン、イソブチルメチルキサンチン、および5-アザシチジン等の幹細胞分化誘導剤、(6)2-メルカプトエタノール、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼおよびN-アセチルシステイン等の抗酸化剤、並びにアデノシン 5'-一リン酸、コルチコステロン、エタノールアミン、インスリン、還元型グルタチオン、リポ酸、メラトニン、ヒポキサンチン、フェノールレッド、プロゲステロン、プトレシン、ピルビン酸、チミジン、トリヨードチロニン、トランスフェリンおよびラクトフェリン等の他の添加剤を挙げることができる。
[0030]
 無血清条件で動物細胞を培養できる培地や培養法は種々のものが公知であり、本発明ではそのいずれを用いてもよい。とりわけ、無血清でも哺乳動物細胞を効果的に増殖できる培地として、内皮細胞分化遺伝子(Edg)ファミリーレセプターに対するリガンドと、セロトニンレセプターに対するリガンドとを含む培地(以下、便宜的にこの培地を「高効率無血清培地」と呼ぶ)を好ましく用いることができる。
[0031]
 高効率無血清培地は、上記の通り、必須成分の一つとしてEdgファミリーレセプターに対するリガンドを含む。Edgファミリーレセプターとは、その遺伝子配列の相同性が高いGタンパク質共役型のレセプターの一群であり、現在までにヒト、マウス、ヒツジなどの哺乳類でEdg-1からEdg-8までが同定されている(Science. Vol. 294,pp. 1875-1878,2001、及びJ Biol Chem. Vol. 277, No.29, pp. 25851-25854, 2002)。これらのうち、Edg-2、Edg-4およびEdg-7はLPAレセプターとして機能し、Edg-1、Edg-3、Edg-5、Edg-6およびEdg-8はS1Pレセプターとして機能することが知られている。また、「レセプターに対するリガンド」とは、該レセプターと特異的に結合する物質であり、生体内に存在する天然のリガンドのみならず、アゴニストやアンタゴニストとして知られる天然または合成された他の化合物をも包含する。
[0032]
 Edgファミリーレセプターに対するリガンド(以下、便宜的に「Edgリガンド」と呼ぶことがある)としては、リゾホスファチジン酸(LPA)およびその塩、スフィンゴシン1リン酸(S1P)並びにEdgファミリーレセプターのアゴニストからなる群より選択される1または複数種の化合物が好ましい。
[0033]
 Edgファミリーレセプターのアゴニストとは、Edgファミリーレセプターと結合してLPAおよびS1Pと同様に作用する物質であり、例えばジヒドロスフィンゴシン1リン酸、血小板活性化因子(PAF)、スフィンゴシルホスホリルコリン、アルキルLPAアナログ、FTY720などが挙げられる。
[0034]
 LPAとは、下記の一般式(I):
R-O-CH CH(OH)CH PO           (I)
(式中、Rは、炭素数10~30のアルキル基、炭素数10~30のアルケニル基または炭素数10~30のアシル基である)
で表される化合物である。
[0035]
 上記の式(I)のR基についてのアシル基の炭素数は、カルボニル基の炭素数を含まない。
[0036]
 LPAの塩としては、従来公知の塩を用いることができ、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
[0037]
 LPAまたはLPAの塩としては、例えば1-オレオイルリゾホスファチジン酸ナトリウム塩、LPAカリウム塩などが挙げられる。
[0038]
 Edgリガンドは、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0039]
 また、上記した高効率無血清培地は、さらに、セロトニンレセプターに対するリガンド(以下、便宜的に「セロトニンリガンド」と呼ぶことがある)を含む。セロトニンレセプターは主に中枢神経系にあるGタンパク質結合レセプターの一種である。セロトニンリガンドとしては、セロトニン、その塩およびセロトニンアゴニストから選択される1または複数種の化合物が好ましい。セロトニンは、5-ヒドロキシトリプタミンともよばれ、神経伝達物質として作用することが知られている。セロトニンアゴニストとは、セロトニンレセプターと結合してセロトニンと同様に作用することが知られている物質であり、例えばイプサピロン、ゼロピン、ブスピロン、1-[2-(4-アミノフェニル)エチル]-4-(3-ビフルオロメチルフェニル)ピペラジン(PADD)、N,N-ジプロピル-5-カルボキシアミドトリプタミン(DP-5CT)、α-メチル-5-ヒドロキシトリプタミン(HT)、2-メチル-5-HTなどが挙げられる。セロトニンの塩は、従来公知の塩を用いることができ、例えば塩酸塩などが挙げられる。
[0040]
 セロトニンリガンドは、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0041]
 培地中のEdgリガンドの濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、通常、0.01~100μM程度である。Edgリガンドが、リゾホスファチジン酸(LPA)およびその塩から成る群より選択される少なくとも1種である場合には、その培地中の濃度は、0.25~10μMが好ましい。また、Edgリガンドが、スフィンゴシン1リン酸(S1P)である場合には、その培地中の濃度は、0.01μM~0.2μMが好ましい。また、培地中のセロトニンリガンドの濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、0.1~100μMが好ましく、0.25~20μMがさらに好ましい。
[0042]
 高効率無血清培地は、抗酸化剤をさらに含むことが好ましい。抗酸化剤の好ましい例としては、N-アセチルシステイン(NAC)、L-システイン、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼおよび2-メルカプトエタノールから成る群より選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは、N-アセチルシステインおよびL-システインから成る群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの抗酸化剤は、アポトーシス阻害作用を有することが知られており、従って、培養細胞の維持、増殖に有効である。抗酸化剤は、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0043]
 培地中の抗酸化剤の濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、0.01mM~10mMが好ましく、さらに好ましくは0.1mM~1mMである。
[0044]
 高効率無血清培地は、動物血清アルブミンをさらに含むことが好ましい。アルブミンは、血清の主要成分であり、血液中では薬物の輸送等の役割を担っていることが知られている。動物血清アルブミンを含むことにより、培養細胞の増殖が一層促進される。動物血清アルブミンの好ましい例として、ヒト血清アルブミン(HSA)および遺伝子組換えヒト血清アルブミン(rHSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)などが挙げられる。これらのアルブミンは、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0045]
 培地中のアルブミンの濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、0.0001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がさらに好ましい。
[0046]
 高効率無血清培地は、成長因子をさらに含むことが好ましい。成長因子を含むことにより、培養細胞の増殖が一層促進される。成長因子の好ましい例としては、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、肝細胞増殖因子(HGF)等を挙げることができ、さらに好ましい例として、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)および上皮成長因子(EGF)を挙げることができる。これらの成長因子自体は、いずれもこの分野において周知である。成長因子は、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。特に、下記実施例に具体的に示されるように、成長因子として血小板由来成長因子(PDGF)と塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)の2種類のみを含むものでも間葉系幹細胞の増殖が十分に達成されるので、間葉系幹細胞の培養に用いられる培地では、培地中に含まれる成長因子は、これら2種類の成長因子だけでも十分である。
[0047]
 高効率無血清培地は、さらに、血小板由来成長因子レセプター(PDGFR)に対するリガンド(PDGF)を含んでいてもよく、特に、間葉系幹細胞を培養する培地では、これを含むことが好ましい。PDGFRは、主に間葉系細胞にあるチロシンキナーゼ関連型受容体の一種であり、これに対するリガンドを含むことにより、間葉系幹細胞を効率良く細胞を増殖させることができる。PDGFRのリガンドとしては、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DDなどが挙げられ、これらはいずれも周知である。PDGFRのリガンドは、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0048]
 高効率無血清培地は、塩基性線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)に対するリガンド(FGF)を含んでいてもよく、特に、間葉系幹細胞を培養する場合には、これを含むことが好ましい。FGFRは、主に間葉系細胞に存在することが知られており、これに対するリガンドを含むことにより、間葉系幹細胞の寿命を改善させる。PDGFRのリガンドとしては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)と酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)など、計20種以上存在することが知られている。例えば、FGF-1、FGF-4などが挙げられる。特に、bFGFは組織の形成に強く関与していることが知られている。これらはいずれも周知である。
[0049]
 成長因子の濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、0.1~100ng/mLが好ましく、1~10ng/mLがさらに好ましい。
[0050]
 高効率無血清培地は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。低濃度の界面活性剤を含むことにより、細胞膜への悪影響を減じる効果等があると考えられる。一方、高濃度の界面活性剤を培地に添加すると、細胞増殖阻害や細胞死の誘導をすることが知られている。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80等)、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(商品名Triton X-100等)、アルキルフェニルポリエチレングリコール(商品名Triton X-114、NP-40等)の非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
[0051]
 界面活性剤の濃度(複数種類のものが含まれる場合にはその合計濃度)は、通常、0.1~100ng/mLであり、好ましくは1~10ng/mLである。
[0052]
 高効率無血清培地は、上記したEdgリガンドおよびセロトニンリガンド、好ましくは、さらに、上記した抗酸化剤、動物血清アルブミン、成長因子および界面活性剤の1種以上を含むことを除き、公知の哺乳動物細胞用培地と同様でよい。従って、基本的に、公知の基本培地に、上記した2種類の必須成分、好ましくはさらに上記した好ましい成分の1種以上を添加することにより、高効率無血清培地を得ることができる。公知の基本培地の例は上記の通りである。任意の添加剤も上記の通りであり、上記した添加剤の1種または複数種を含むことができる。また、公知の基本培地と同様に、分化誘導剤を添加して分化誘導培地として用いることもできる。分化誘導剤の例は上記したが、上記の例示に限定されず、分化誘導により調製すべき細胞の種類に応じて、公知の分化誘導剤から適宜選択して用いることができる。
[0053]
 本発明の培養細胞の培養自体は、従来と同様な方法で行うことができ、通常、30~37℃の温度、および5%CO 環境下、および5~21%O 環境下で行われる。また、分化誘導に必要な培養時間は、用いる分化誘導剤や細胞の種類等により適宜設定され、また、細胞の様子を観察しながら適宜選択することができる。
[0054]
 培養液中の核酸の抽出は、この分野で周知の常法を用いて行うことができる。液体試料からの核酸抽出のための各種試薬キット類が市販されており、それらを用いて容易に行うことができる。
[0055]
 核酸の測定方法自体は周知である。例えば、プライマーを用いた核酸増幅法による測定法としては、リアルタイムPCRやNASBA法等を挙げることができる。また、プローブを用いた測定法としては、ノーザンブロット、サザンブロットの他、固相化プローブを用いたアレイ解析法等を挙げることができる。本発明の方法では周知のいずれの測定法を用いてもよい。リアルタイムPCRによる測定法の具体的な例としては、下記実施例に記載されるように、培養液から抽出したRNA試料の3’末端にプライマーサイトを導入してcDNAを調製した後、各種miRNAに特異的なプライマーを用いてリアルタイムPCRを行うことにより、miRNAの有無ないしはその量を測定することができる。配列番号1~19に示す塩基配列からなるmiRNAに特異的なプライマーとしては、例えば、配列番号22~40に示す塩基配列からなるものを用いることができる。また、Applied Biosystems社が開発した市販のTaqMan Probe microRNA Assaysを用いることができる。該キットは、公知の各種miRNAに対応しており、所望のmiRNAをリアルタイムPCRにより測定できる。なお、本発明において、「測定」には、検出、定量、半定量が包含される。
[0056]
 細胞の変化によって培養液中への放出が開始される核酸を測定する場合には、経時的に培養液の一部を採取して核酸を測定し、核酸が検出されるかどうかを調べればよい。核酸量の変化を測定する場合には、例えば、培養開始時を基準時とし、基準時の核酸量を1として、基準時以降の培養液中核酸量を相対評価することにより、核酸量の変化を測定することができる。相対評価の基準とする時点または核酸量は適宜設定することができる。内標準物質(例えば、miR-16など)で核酸量を補正することで評価することができる。例えば、幹細胞と該幹細胞由来の組織細胞から放出される核酸量およびパターン等を解析することで、幹細胞および該幹細胞由来の組織細胞の評価が可能となる。薬剤処理量等によって、細胞から放出される核酸量およびパターン等を解析することで、薬剤の効果・毒性の評価が可能となる。悪性度の異なるがん細胞から放出される核酸量およびパターン等を解析することで、がん細胞の悪性度の評価が可能となる。がん細胞と正常な組織細胞から放出されてくる核酸量およびパターン等を解析することで、がん細胞の有無を評価することが可能となる。
実施例
[0057]
 以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[0058]
実施例1:マイクロRNAサンプルの調製および解析1
 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(LONZA社製)を20000細胞/cm の細胞密度となるように12穴培養プレートの培養容器に播種し、血清不含の維持培地、骨細胞分化誘導培地または脂肪細胞分化誘導培地で21日間培養することにより、骨細胞または脂肪細胞への分化誘導を行った。用いた各培地の組成は以下の通りである。
維持培地:
MEM-Alpha(和光純薬社製)に細胞維持用添加剤(最終濃度:5μM LPA(Cayman社製)、10μM セロトニン(SIGMA社製)、1nM PDGF(和光純薬社製)、2.5nM bFGF(和光純薬社製))を含んだ無血清培地。
骨細胞分化誘導培地:
DMEM(和光純薬社製)に骨細胞分化誘導剤(最終濃度:10mM β-グリセロリン酸(SIGMA社製)、100nM デキサメタゾン、1mM ビタミンC(和光純薬社製)、5μM LPA(Cayman社製))を添加した無血清培地。
脂肪細胞分化誘導培地:
DMEM(和光純薬社製)に脂肪細胞分化誘導剤(最終濃度:1μM デキサメタゾン、1μM ロシグリタゾン、500μM イソブチルメチルキサンチン、1μM インスリン、5μM LPA(Cayman社製))を添加した無血清培地。
[0059]
 培養開始後14日目から21日目までの7日間培養した培養液を回収し、0.22μmのフィルターにて浮遊した細胞を除去し、サンプルとした。
[0060]
 サンプル250μLに対して750μLのTriZOL LS試薬(インビトロジェン社製)と混和した後、クロロホルム200μLを添加、激しく攪拌、12000xgにて遠心分離してその上清を回収した。この上清に、イソプロパノール500μLを加え、マイナス30℃にて12時間以上静置後に12000xgにて遠心分離して上清を廃棄した。そして、75%エタノール溶液500μLを添加後、12000xgにて遠心分離、上清を廃棄して核酸サンプルを回収した。
[0061]
 この核酸サンプルを14μLのH Oに溶解後、Poly(A) Tailing Kit(Ambion社製)にてmiRNAにPoly(A) Tailingを修飾した(Poly(A)miRNA)。
[0062]
 このPoly(A)miRNA溶液に100μLのH Oを添加後、375μLのTriZOL LS試薬(インビトロジェン社製)を添加、クロロホルム100μLを添加、激しく攪拌、12000xgにて遠心分離してその上清を回収した。この上清に、イソプロパノール500μLを加え、マイナス30℃にて12時間以上静置後に12000xgにて遠心分離して上清を廃棄した。そして、75%エタノール溶液500μLを添加後、12000xgにて遠心分離、上清を廃棄してPoly(A)miRNAサンプルを回収した。
[0063]
 このPoly(A)miRNAサンプルを10μLのH Oに溶解、RTプライマー(5’-GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGTTTTTTTTTTTTVN-3’、配列番号20)およびSuper Script II逆転写酵素(インビトロジェン社製)にてRNAをDNAに逆転写し、25μLのH Oを添加してcDNAサンプルを得た。
[0064]
 このcDNAサンプル中に含まれるhsa-miR-145、hsa-miR-24およびhsa-miR-16を、Platinum SYBR Green(インビトロジェン社製)を使用したリアルタイムPCR法にて確認した。プライマーは以下のものを使用した。
hsa-miR-145(配列番号1):フォワード(CCGCGTCCAGTTTTCCCAGGAA、配列番号22)
hsa-miR-24(配列番号2):フォワード(CCGCTGGCTCAGTTCAGCAG、配列番号23)
hsa-miR-16(配列番号3):フォワード(CGCGCTAGCAGCACGTAAAT、配列番号24)
リバース共通(GCGAGCACAGAATTAATACGAC、配列番号21)
[0065]
 結果を図1に示す。図1より、培養細胞外へ放出されるmiRNAが存在していることが確認された。そして、培養細胞から放出されるmiRNA量のパターンが、組織細胞種によって変化することが確認された。例えば、間葉系幹細胞が骨細胞に分化と共にhsa-miR-145の放出量が著しく上昇する。この結果は、培養細胞の変化(幹細胞の分化)によって、放出されるmiRNA量のパターンが変化することを示唆するものである。つまり、放出されるmiRNAを解析することで、間葉系幹細胞からの分化誘導の進行度の予測を可能にすることを示唆するものである。骨細胞への分化確認は、アリザインレッドS染色、脂肪細胞への分化確認は、オイルレッドO染色にて確認した。
[0066]
実施例2:マイクロRNAサンプルの調製および解析2
 ヒト肝臓がん由来の細胞株(HuH-7、ATCCより購入)を20000細胞/cm の細胞密度となるように12穴培養プレートの培養容器に播種し、肝組織および肝細胞に障害を与えることで知られている四塩化炭素を、World J Gastroenterol. 2008 Jun 21;14(23):3693-709にて用いられている比較的低濃度である0~1000μMで添加した血清不含の維持培地で7日間培養した。維持培地は実施例1と同様のものを用いた。
[0067]
 7日間培養した培養液を回収し、遠心処理をした上清を0.22μmのフィルターにて細胞を除去し、サンプルとした。
[0068]
 実施例1同様にPoly(A)miRNAサンプルのcDNAサンプルを得た。
[0069]
 このcDNAサンプル中に含まれるhsa-miR-21、hsa-miR-122、hsa-miR-451およびhsa-miR-16を、Platinum SYBR Green(インビトロジェン社製)を使用したリアルタイムPCR法にて確認した。プライマーは以下のものを使用した。
hsa-miR-21(配列番号4):フォワード(GCCCGCTAGCTTATCAGACTGATG、配列番号25)
hsa-miR-122(配列番号5):フォワード(GCGCTGGAGTGTGACAATGGT、配列番号26)
hsa-miR-451(配列番号6):フォワード(GCCGCAAACCGTTACCATTACT、配列番号27)
hsa-miR-16(配列番号3):フォワード(CGCGCTAGCAGCACGTAAAT、配列番号24)
リバース共通(GCGAGCACAGAATTAATACGAC、配列番号21)
[0070]
 結果を図2に示す。図2より、幹細胞以外の培養細胞でも細胞外に放出されるmiRNAが存在していることが確認された。そして、培養細胞の障害依存的に、細胞から放出されるmiRNAの上昇が確認された。この結果は、培養細胞の変化、例えば薬剤処理によって、培養液中へ放出されるmiRNA量のパターンが変化することを示唆するものである。つまり、本法は、培養液中へ放出されるmiRNA量を解析することで、薬剤等の効果または毒性を評価することが可能であることを示唆するものである。
[0071]
実施例3:マイクロRNAサンプルの調製および解析3
 ヒト大腸がん由来の細胞株およびそのリンパ節転移巣細胞株(SW480およびSW620、ATCCより購入)を20000細胞/cm の細胞密度となるように6穴培養プレートの培養容器に播種し、血清不含の維持培地で3日間培養した。維持培地は実施例1と同様のものを用いた。
[0072]
 3日間培養した培養液を回収し、遠心処理をした上清を0.22μmのフィルターにて細胞を除去し、サンプルとした。
[0073]
 実施例1と同様にPoly(A)miRNAサンプルのcDNAサンプルを得た。
[0074]
 このcDNAサンプル中に含まれるhsa-miR-20a、hsa-miR-892a、hsa-miR-22*、hsa-miR-19a、hsa-miR-484、hsa-miR-638、hsa-miR-125b、hsa-miR-339-5p、hsa-miR-532-3p、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-138、hsa-miR-186、hsa-miR-223を、Platinum SYBR Green(インビトロジェン社製)を使用したリアルタイムPCR法にて確認した。プライマーは以下のものを使用した。
hsa-miR-20a(配列番号7):フォワード(CCGCCGCTAAAGTGCTTATAGTG、配列番号28)
hsa-miR-892a(配列番号8):フォワード(CCGCCACTGTGTCCTTTCTGC、配列番号29)
hsa-miR-22*(配列番号9):フォワード(CCGCGAGTTCTTCAGTGGCAA、配列番号30)
hsa-miR-19a(配列番号10):フォワード(CCGCCTGTGCAAATCTATGCA、配列番号31)
hsa-miR-484(配列番号11):フォワード(CCGTCAGGCTCAGTCCCCT、配列番号32)
hsa-miR-638(配列番号12):フォワード(CCGCAGGGATCGCGGGC、配列番号33)
hsa-miR-125b(配列番号13):フォワード(CCGCGTCCCTGAGACCCTAA、配列番号34)
hsa-miR-339-5p(配列番号14):フォワード(CCGTCCCTGTCCTCCAGGA、配列番号35)
hsa-miR-532-3p(配列番号15):フォワード(CCCTCCCACACCCAAGGCT、配列番号36)
hsa-miR-142-3p(配列番号16):フォワード(CCGCCTGTAGTGTTTCCTACTTT、配列番号37)
hsa-miR-138(配列番号17):フォワード(CCGGCAGCTGGTGTTGTGAA、配列番号38)
hsa-miR-186(配列番号18):フォワード(CCGCCGCAAAGAATTCTCCTTTT、配列番号39)
hsa-miR-223(配列番号19):フォワード(CCGCCGTGTCAGTTTGTCAAATA、配列番号40)
リバース共通(GCGAGCACAGAATTAATACGAC、配列番号21)
[0075]
 結果を図3に示す。SW620は、リンパ節転移巣細胞株であるため、もとの大腸がん由来細胞株SW480よりも悪性度が高い。図3より、がん細胞の悪性度進展により細胞から放出されるmiRNAの増減が確認された。この結果は、がん細胞の悪性度進展によって、培地中へ放出されるmiRNA量のパターンが変化することを示唆するものである。また、がんの悪性度進展に関わらず、がん細胞から共通に放出されているmiRNAが存在することが確認された。この結果は、がん細胞が共通に放出しているmiRNAの存在を示唆するものであり、即ち、がん細胞の有無を評価することが可能であることを示唆するものである。
[0076]
実施例4:マイクロRNAサンプルの調製および解析4
 実施例1同様、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(LONZA社製)を20000細胞/cm の細胞密度となるように12穴培養プレートの培養容器に播種し、血清不含の維持培地、骨細胞分化誘導培地または脂肪細胞分化誘導培地で21日間培養することにより、骨細胞または脂肪細胞への分化誘導を行った。
[0077]
 分化誘導開始後14日目から21日目までの7日間培養した培養液を回収し、0.22μmのフィルターにて浮遊した細胞を除去し、サンプルとした。
[0078]
 サンプル250μLに対して750μLのTrizol LS試薬(インビトロジェン社製)と混和した後、クロロホルム200μLを添加、激しく攪拌、12000xgにて遠心分離してその上清を回収した。この上清に、イソプロパノール500μLを加え、マイナス30℃にて12時間以上静置後に12000xgにて遠心分離して上清を廃棄した。そして、75%エタノール溶液500μLを添加後、12000xgにて遠心分離、上清を廃棄して核酸サンプルを回収した。
[0079]
 この核酸サンプルを14μLのH Oに溶解後、TaqMan(登録商標) MicroRNA RTプライマー(Applied Biosystems社製)にてcDNAサンプルを得た。
[0080]
 このcDNAサンプルをTaqMan(登録商標) MicroRNA Realtimeプライマー(Applied Biosystems社製)を使用したリアルタイムPCR法にて定量し、hsa-miR-16にて補正することで確認した。プローブは、以下の各ASSAY IDで入手可能な市販のTaqMan(登録商標) MicroRNA ASSAY Probe(Applied Biosystems社製)を使用した。
hsa-miR-130a(配列番号41):000454 (ASSAY ID)
hsa-miR-143(配列番号42):002249 (ASSAY ID)
hsa-miR-214(配列番号43):002306 (ASSAY ID)
hsa-miR-365(配列番号44):001020 (ASSAY ID)
hsa-miR-16(配列番号3):000391 (ASSAY ID)
[0081]
 結果を図4に示す。図4より、間葉系幹細胞から細胞外へ放出されるmiRNAは、脂肪細胞や骨細胞等の組織細胞へ分化することで変化することが確認された。この結果は、放出されるmiRNAを解析することで間葉系幹細胞、組織細胞の品質評価を可能とすることを示唆するものである。以下が間葉系幹細胞から分化誘導したときの各組織細胞のマーカー候補である。
未分化細胞(非誘導):hsa-miR-214
組織細胞(骨および脂肪細胞):hsa-miR-143
骨細胞:hsa-miR-365
脂肪細胞:hsa-miR-130a

請求の範囲

[請求項1]
 無血清培地中で細胞を培養し、該細胞から培養液中に放出される核酸の少なくとも1種を測定することを含む、培養細胞の評価方法。
[請求項2]
 前記核酸がマイクロRNAである請求項1記載の方法。
[請求項3]
 配列表の配列番号1、3~5、7~19、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する請求項2記載の方法。
[請求項4]
 配列表の配列番号1、3~5、7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する請求項3記載の方法。
[請求項5]
 前記細胞は哺乳動物由来細胞であり、前記無血清培地は、内皮細胞分化遺伝子(Edg)ファミリーレセプターに対するリガンドと、セロトニンレセプターに対するリガンドとを含む培地である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]
 内皮細胞分化遺伝子ファミリーレセプターに対する前記リガンドが、リゾホスファチジン酸(LPA)及びその塩、スフィンゴシン1リン酸(S1P)並びに内皮細胞分化遺伝子(Edg)ファミリーレセプターのアゴニストから成る群より選択される少なくとも1種である請求項5記載の方法。
[請求項7]
 セロトニンレセプターに対する前記リガンドが、セロトニン、その塩及びセロトニンレセプターのアゴニストから成る群より選択される少なくとも1種である請求項5又は6記載の方法。
[請求項8]
 幹細胞の分化を評価する方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]
 配列番号1、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標として幹細胞の分化を評価する請求項8記載の方法。
[請求項10]
 配列番号1又は44に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として骨細胞への分化を評価する請求項9記載の方法。
[請求項11]
 配列番号1に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として骨細胞への分化を評価する請求項10記載の方法。
[請求項12]
 配列番号41に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として脂肪細胞への分化を評価する請求項9記載の方法。
[請求項13]
 配列番号42に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として組織細胞への分化を評価する請求項9記載の方法。
[請求項14]
 配列番号43に示される塩基配列からなるマイクロRNAを指標として幹細胞の分化の有無を評価する請求項9記載の方法。
[請求項15]
 細胞障害を評価する方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項16]
 配列番号3~5に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標として培養細胞への障害を評価する請求項15記載の方法。
[請求項17]
 前記培養細胞が肝細胞である請求項16記載の方法。
[請求項18]
 培養細胞への化学物質・生物由来物質・環境刺激等による効果・影響・毒性等を評価する方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項19]
 がん細胞の有無を評価する方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項20]
 がん細胞の悪性度を評価する方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項21]
 配列番号7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を指標とする請求項19又は20記載の方法。
[請求項22]
 前記がん細胞が大腸がん細胞である請求項21記載の方法。
[請求項23]
 無血清培地中で細胞を培養し、該細胞から培養液中に放出される核酸を測定することを含む、バイオマーカーのスクリーニング方法。
[請求項24]
 配列表の配列番号1、3~5、7~19、41~44に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する請求項23に記載の方法。
[請求項25]
 配列表の配列番号1、3~5、7~19に示される塩基配列からなるマイクロRNAの少なくとも1種を測定する請求項24に記載の方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]