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1. (WO2010074015) POLYMER ALLOY FIBER AND FIBER STRUCTURE
Document

明 細 書

発明の名称 ポリマーアロイ繊維ならびに繊維構造体

技術分野

0001   0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014  

先行技術文献

特許文献

0015  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0016  

課題を解決するための手段

0017  

発明の効果

0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089  

実施例

0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135  

産業上の利用可能性

0136  

符号の説明

0137  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : ポリマーアロイ繊維ならびに繊維構造体

技術分野

[0001]
 本発明は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが均一にブレンドされ、かつポリオレフィン系樹脂が海成分を形成してなるポリマーアロイ繊維に関するものである。

技術背景

[0002]
 最近、地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、自然環境の中で分解する繊維素材の開発が切望されている。例えば、従来の汎用プラスチックは石油資源を主原料としていることから、石油資源が将来枯渇すること、また石油資源の大量消費により生じる地球温暖化が大きな問題として採り上げられている。
[0003]
 このため近年では脂肪族ポリエステル等、様々なプラスチックや繊維の研究・開発が活発化している。その中でも微生物により分解されるプラスチック、即ち生分解性プラスチックを用いた繊維に注目が集まっている。
[0004]
 また、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるとともに、資源枯渇の問題も解決できる可能性がある。そのため、植物資源を出発点とするプラスチック、すなわちバイオマス利用のプラスチックに注目が集まっている。
[0005]
 これまで、バイオマス利用の生分解性プラスチックは、力学特性や耐熱性が低いとともに、製造コストが高いといった課題があり、汎用プラスチックとして使われることはなかった。一方、近年では力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い生分解性のプラスチックとして、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が脚光を浴びている。
[0006]
 ポリ乳酸に代表されるポリ乳酸系樹脂は、例えば手術用縫合糸として医療分野で古くから用いられてきたが、最近は量産技術の向上により価格面においても他の汎用プラスチックと競争できるまでになった。そのため、繊維としての商品開発も活発化してきている。
[0007]
 ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル繊維の開発は、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途、カーテン、カーペット等のインテリア用途、車両内装用途、産業資材用途への応用も期待されている。
[0008]
 また、植物由来ではないものの、最近脚光を浴びつつある樹脂としてポリプロピレンがある。ポリプロピレンは数あるプラスチックの中でも単位生産量当たりのエネルギー使用量が少なく、かつ耐久性に優れるため、消費財としてのライフが長い。更には性能面でも高い機械的特性、耐薬品性、寸法安定性を有し、比重が0.9と極めて低く軽量であることからも、環境に優しい素材として注目されている。繊維としても同様であり、特に不織布を中心とした資材用途では前記特性が強みとなって、高い競争力を有している。
[0009]
 一方で、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルや、ポリプロピレンにはそれぞれ以下に示す課題を有しており、用途が限定されるものである。
[0010]
 ポリ乳酸を衣料用途や産業資材用途に適応する場合には、耐摩耗性の低さが大きな問題となる。例えば、ポリ乳酸繊維を衣料用途に用いた場合には、擦過等により容易に色移りが生じたり、酷い場合には繊維がフィブリル化して白ぼけしたり、皮膚に過度の刺激を与えたりする等、実用上の耐久性に乏しいことがわかってきている。また、自動車内装用、特に強い擦過を受けるカーペット等に用いた場合には、ポリ乳酸の毛倒れが容易に生じるとともに、削れが起こり、酷い場合には穴が開くこともある。また、脂肪族ポリエステル(特にポリ乳酸)は加水分解が生じやすいこともあり、上記の様なフィブリル化や削れは経時的に酷くなる傾向にあり、製品寿命が短いといったことがわかってきている。
[0011]
 ポリ乳酸の耐摩耗性を改善する方法としては、例えば加水分解を抑制する方法が開示されている(特許文献1および特許文献2)。特許文献1に記載の発明は、ポリ乳酸の水分率をできるだけ抑制することで、繊維の製造工程での加水分解を抑制するものであり、また、特許文献2には、モノカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させた繊維が開示されている。しかしながら、いずれの繊維も経時的なポリ乳酸の脆化を抑制するという点では耐摩耗性の低下は抑えられているものの、いずれもポリ乳酸の「フィブリル化しやすい」という特性を変えるものではなく、初期の耐摩耗性は従来品となんら変わらないものであることが判明している。
[0012]
 また、耐摩耗性を大幅に改善する方法として、脂肪酸ビスアミド等の滑剤を添加して繊維表面の摩擦係数を低下せしめることで、摩耗を抑制したポリ乳酸繊維が開示されている(特許文献3~6参照)。しかしながら、これらの繊維は与えられる力が小さい場合には有効であるが、例えば、カーペットの様に強い踏込力がかかる場合には、繊維間凝着を十分に抑制することができないため、ポリ乳酸の破壊が生じてしまい、用途が限定されるものであった。
[0013]
 一方、ポリプロピレンは高い性能を有しつつも、繊維用途ではポリエステルに大きく後塵を拝している。その理由としては、融点が165℃近傍と、ポリエステル(PETの融点:255℃)に対して劣っていること、また、極性基を持たないために染色ができないといった欠点である。
[0014]
 上記のとおり、ポリ乳酸とポリプロピレンはそれぞれに利点、欠点を有しているものの、それぞれの特徴によって欠点を補う設計ができれば非常に高いポテンシャルを有する素材にすることができる。例えば、特許文献7及び特許文献8には、ポリ乳酸とポリオレフィンとの相溶化剤としてアミン変性エラストマーを用いることが記載されている。該方法を用いることで、2成分間の相溶性が飛躍的に向上するために、成形体としての伸度が飛躍的に向上するため、ドアトリムやピラーガーニッシュ等の成形体に使用できることを示唆している。しかし該組成物について繊維化を試みても、口金を出てからの伸長変形時の応力が極めて高く、高ドラフトが要求される溶融紡糸では繊維化できないものであった。

先行技術文献

特許文献

[0015]
特許文献1 : 特開2000-136435号公報(第4頁)
特許文献2 : 特開2001-261797号公報(第3頁)
特許文献3 : 特開2004-91968号公報(第4~5頁)
特許文献4 : 特開2004-204406号公報(第4~5頁)
特許文献5 : 特開2004-204407号公報(第4~5頁)
特許文献6 : 特開2004-277931号公報(第5~6頁)
特許文献7 : 特開2008-056743号公報(第1~2頁)
特許文献8 : 特開2008-111043号公報(第1~2頁)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0016]
 本発明は上記課題を解決し、耐摩耗性に優れるとともに、軽量性や反発性、更には染色後の審美性に優れたポリマーアロイ繊維および該繊維から構成される繊維構造体を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0017]
 上記課題は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)とを配合してなるポリマーアロイからなるポリマーアロイ繊維であって、相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであって、該ポリマーアロイのモルフォロジーが、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造であることを特徴とするポリマーアロイ繊維とこのポリマーアロイ繊維の少なくとも1部を含む繊維で構成された繊維構造体によって達成することができる。

発明の効果

[0018]
 本発明により耐摩耗性が格段に向上し、高品位の繊維構造体を与え得る、一般衣料用途や産業資材用途に最適な合成繊維および繊維構造体を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明のポリマーアロイ繊維の海島構造を説明するためのTEM写真である。
[図2] 本発明のポリマーアロイ繊維の繊維表層のSEM写真である。
[図3] 本発明のポリマーアロイ繊維を製造するために好ましく用いられる直接紡糸・延伸装置の概略図である。
[図4] 本発明の製造方法において、冷却開始点を説明するための概略図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 本発明でいうポリ乳酸系樹脂(A)は結晶性であることが好ましい。上記ポリ乳酸は-(O-CHCH -CO) -を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。ここでnは重合度を示し800~8,000が好ましい。乳酸にはD-乳酸とL-乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D-乳酸)とL体のみからなるポリ(L-乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD-乳酸、あるいはL-乳酸の光学純度は、それらが低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。融点は繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましく、160℃であることがより好ましい。さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
[0021]
 ただし、上記のように2種類の光学異性体のポリマーが単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体のポリマーをブレンドして繊維に成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を220~230℃まで高めることができ、好ましい。この場合、ポリ乳酸系樹脂(A)は、ポリ(L乳酸)とポリ(D乳酸)の混合物の場合は、そのブレンド比は40/60~60/40であるとステレオコンプレックス結晶の比率を高めることができ、最良である。また、前記2種類の光学異性体ポリマーのブレンドとは別に、L乳酸ブロックとD乳酸ブロックの両方からなるL-D―ブロック共重合のポリ乳酸を用いることによっても、ステレオコンプレックス結晶を形成させることができる。この場合、ポリマーが単一成分になるため、紡糸設備が簡略化できるという利点がある。
[0022]
 該ステレオコンプレックス結晶を溶融紡糸で効率的に形成させるために、結晶核剤を添加することが好ましい。結晶核剤としてはタルク、層状粘土鉱物の他、ポリ乳酸との相溶性が高いステアリン酸や12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミドやオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛等が適用できる。
[0023]
 また、ポリ乳酸中には低分子量残留物として残存ラクチドが存在するが、これら低分子量残留物は、延伸や嵩高加工工程での加熱ヒーター汚れや染色加工工程での染め斑等の染色異常を誘発する原因となる場合がある。また、繊維や繊維成型品の加水分解を促進し、耐久性を低下させる場合がある。そのため、繊維中の残存ラクチド量は好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
[0024]
 また、ポリ乳酸系樹脂(A)は、例えばポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合したものであってもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。このような共重合成分の共重合割合は融点降下による耐熱性低下を損なわない範囲で、ポリ乳酸に対して0.1~10モル%であることが好ましい。
[0025]
 ポリ乳酸系樹脂(A)には、さらに改質剤として粒子、艶消し剤、着色顔料、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤や、滑剤等を添加してもよい。着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。同様に、炭酸カルシウムやシリカ、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類などの改質剤も使用することができる。さらに、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種フッ素樹脂類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアミド類、エチレン・アクリレート共重合体、メチルメタクリレート重合体等のポリアクリレート類、各種ゴム類、アイオノマー類、ポリウレタン類およびその他熱可塑性エラストマー類などのポリマーなどを少量含有することができる。
[0026]
 前記ポリ乳酸系樹脂(A)に好ましく用いられる滑剤としては、脂肪酸アミドおよび/または脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、ジメチトール油アミド、ジマチルラウリン酸アミド、ジメチルステアリン酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、p-キシリレンビスステアリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’-ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドおよびヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられ、その他、アルキル置換型の脂肪酸モノアミドとして、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指したものとして、例えば、N-ラウリルラウリン酸アミド、N-パルミチルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ベヘニルベヘニン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N-ステアリル-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も、本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。
[0027]
 脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸セチルエステル、ラウリン酸フェナシルエステル、ミリスチン酸セシルエステル、ミリスチン酸フェナシルエステル、パルミチン酸イソプロピリデンエステル、パルミチン酸ドデシルエステル、パルミチン酸テトラドデシルエステル、パルミチン酸ペンタデシルエステル、パルミチン酸オクタデシルエステル、パルミチン酸セシルエステル、パルミチン酸フェニルエステル、パルミチン酸フェナシルエステル、ステアリン酸、セシルエステル、ベヘニン酸エチルエステル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類;モノラウリン酸グリコール、モノパルミチン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのモノエステル類、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール等のグリコールのジエステル類、;モノラウリン酸グリセリンエステル、モノミスチリン酸グリセリンエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのモノエステル類;ジラウリン酸グリセリンエステル、ジミスチリン酸グリセリンエステル、ジパルミチン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのジエステル類;トリラウリン酸グリセリンエステル、トリミスチリン酸グリセリンエステル、トリパルミチン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル、パルミトジオレイン、パルミトジステアリンおよびオレオジステアリン等のグリセリンのトリエステル類等が挙げられる。
[0028]
 これら化合物の中でも、脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いることが好ましい。脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは、一般の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低いために溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こり難く、さらに高分子量のものが多いために耐熱性が高く、溶融成形で昇華しにくいため滑剤としての機能を損なうことなく、優れた滑り性を発揮する。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いため、より好ましく用いることができ、エチレンビスステアリン酸アミドが、さらに好ましい。
[0029]
 また、2種以上の脂肪酸アミドと脂肪酸エステルを用いてもよく、また脂肪酸アミドと脂肪酸エステルを併用してもよい。
[0030]
 脂肪酸アミドおよび/または脂肪酸エステルの含有量は、上記特性を発揮するために繊維重量に対して0.1重量%以上にすることが好ましい。また、含有量が多すぎると繊維の機械的物性が低下したり、黄味を帯びて染色したときに色調が悪くなったりする場合があるので、含有量は5重量%以下が好ましい。より好ましい該脂肪酸アミドおよび/または脂肪酸エステルの含有量は、0.2~4重量%、さらに好ましくは0.3~3重量%である。
[0031]
 また、ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量は、後述するポリオレフィン系樹脂(B)との粘度比が高い、すなわちポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度が高いほど、耐摩耗性に優れる。そのため、ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量は高い方が好ましいが、分子量が高すぎると、溶融紡糸での成形性や延伸性が低下する傾向にある。重量平均分子量は耐摩耗性を保持するために8万以上であることが好ましく、10万以上がより好ましい。さらに好ましくは12万以上である。また、分子量が35万を越えると、前記したように紡糸性や延伸性が低下するため、結果として分子配向性が悪くなり繊維強度が低下することがある。そのため、重量平均分子量は35万以下が好ましく、30万以下がより好ましい。さらに好ましくは25万以下である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で求めた値である。
[0032]
 本発明のポリ乳酸系樹脂(A)に好ましく用いられる製造方法は、特に限定されないが、具体的には、乳酸を有機溶媒および触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法(特開平6-65360号公報参照。)、少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒の存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法(特開平7-173266号公報参照。)、さらには、乳酸を一旦脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法(米国特許第2,703,316号明細書参照。)が挙げられる。
[0033]
 本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(B)とは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンなどのオレフィン、ビニルアルコールまたはその誘導体等のオレフィンアルコール等のオレフィン類を重合または共重合して得られる未変性のオレフィン樹脂であり、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびカルボン酸ビニルエステルなどの化合物で変性した変性ポリオレフィン樹脂は含まない。具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1-ブテン樹脂、ポリ1-ペンテン樹脂、ポリ4-メチル-1-ペンテン樹脂などの単独重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、または、これらに1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5-ノルボルナジエン、5-エチリデンノルボルネン、5-エチル-2,5-ノルボルナジエン、5-(1′-プロペニル)-2-ノルボルネンなどの非共役ジエンモノマーを一種以上共重合させた共重合体などが挙げられる。
[0034]
 本発明におけるエチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3以上、好ましくは炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも一種以上との共重合体であり、上記の炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα-オレフィンの中でも、炭素数3~12のα-オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α-オレフィン共重合体は、α-オレフィン含量が好ましくは1~20モル%、より好ましくは2~15モル%、さらに好ましくは3~10モル%である。
本発明のポリマーアロイ繊維に用いるポリオレフィン系樹脂(B)は、相構造の制御のし易さより、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ4-メチル-1-ペンテン樹脂が好ましく、耐熱性の点から、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。
[0035]
 本発明のポリオレフィン系樹脂(B)に好ましく用いられる製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂においては、ラジカル重合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合、アニオン重合、メタロセン触媒を用いた配位重合などの方法を用いることができる。また、ポリオレフィン系樹脂(B)がポリプロピレン樹脂である場合には、立体規則性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好ましく、さらに曵糸性や繊維の引張り強度、耐摩耗性、耐熱性に優れる点から高アイソタクチシチーのポリプロピレン樹脂がより好ましい。立体規則性としては、アイソタクチシチーが80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
[0036]
 また、立体規則性の異なるポリプロピレン樹脂を併用してもよい。例えば、アイソタクシチシーを主構造とする二種以上のポリプロピレン樹脂を用いることにより、流動性や耐熱性に優れるポリマーアロイ繊維が得られやすくなるため好ましい。なお、本発明の高アイソタクチシチーのポリプロピレン樹脂は、触媒としてチーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合により得られやすい。
[0037]
 なお、ポリプロピレン樹脂の融点は、ポリマーアロイ繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましく、160℃であることがより好ましい。さらに好ましくは170℃以上である。
[0038]
 また、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度は、間接的にポリマーの分子量を表す情報となる。すなわち、溶融粘度が低すぎると繊維化した後の強度が低くなるため、ある程度の溶融粘度が必要である。ここで、後述するポリ乳酸系樹脂(A)との粘度比を考慮した上で、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度の指標となるメルトフローレート(MFR)は、30~100g/10分であることが好ましく、50~90g/10分であることがより好ましい。
[0039]
 また、ポリオレフィン系樹脂(B)には、粒子、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤や、ポリ乳酸系樹脂(A)に好ましく用いられる上記滑剤等を添加してもよい。
[0040]
 なお、本発明において結晶性の有無は、示差走査熱量計(DSC)測定において融解ピークを観測できれば、そのポリマーが結晶性であると判断できる。また、結晶性は高いほど耐摩耗性に優れるため好ましく、その指標としてDSCでの結晶融解ピーク熱量の大きさで判断することができる。結晶融解ピーク熱量△Hは、好ましくは30J/g、より好ましくは40J/g、さらに好ましくは60J/gである。
[0041]
 結晶核剤としては、例えばタルクが挙げられる。繊維用に向いたタルクとしては、繊維の力学特性を維持しつつ、高い結晶化特性を示すものとして、タルクの平均粒子径が5μm以下で、かつ粒子径10μm以上のタルクがタルク全量に対して0~4.5体積%以下であることが好ましい。タルクの平均粒子径を5μm以下にすることで、比表面積の増大により結晶核剤としての効果が飛躍的に向上する。そのため、タルクの粒子径は4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。最も好ましくは1.5μm以下である。なお、タルクの平均粒子径の下限は特に限定されるものではないが、粒子径が小さくなると凝集性が高くなり、ポリマー中への分散性が悪くなるため0.2μm以上であることが好ましい。また、粒子径10μm以上のタルクは、タルク全量に対して4.5体積%以下であることが好ましい。粗大タルクが含有していると、紡糸性が低下するだけでなく、繊維の力学特性も低下する傾向にある。そのため、粒子径10μmを越えるタルクの含有量はタルク全量に対し、より好ましくは0~3体積%、さらに好ましくは0~2体積%、最も好ましくは0体積%である。
[0042]
 なお、上記(1)及び(2)項に記載のタルクの粒子径は(株)島津製作所製SALD-2000Jを用い、レーザー回折法で測定された粒度分布から求めた値である。
[0043]
 また、結晶核剤に好ましく用いられるソルビトール誘導体としては、ビスベンジリデンソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-ブロムベンジリデン)ソルビトール、さらに前記ソルビトール誘導体を化学修飾したソルビトール誘導体がある。
[0044]
 また、リン酸エステル金属塩や塩基性無機アルミニウム化合物としては、特開2003-192883号公報に記載の化合物が好適に用いられる。
[0045]
 また、メラミン化合物としては、メラミン、メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、フェニル基で置換した置換メラミン化合物(特開平9-143238号公報)、メラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキル(オキサアルキル)n基、アミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物(特開平5-202157号公報)、メラム、メレム、メロン、メトンなどのメラミンの脱アンモニア縮合物、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのグアナミン類などが使用できる。また、メラミン化合物塩としては、有機酸塩や無機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、イソシアヌル酸塩、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、クエン酸などのカルボン酸塩、安息香酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸塩などが挙げられる。これらの有機酸塩は、1種又は2種類以上のものを混合して使用することもできる。これらの有機酸塩の中では、メラミンシアヌレートが最も好ましい。メラミンシアヌレートは、シリカ、アルミナ、酸化アンチモンなどの金属酸化物ゾルで表面処理したもの(特開平7-224049号公報)、ポリビニルアルコールやセルロースエーテル類で表面処理したもの(特開平5‐310716号公報)、HLB1~8の非イオン性界面活性剤で表面処理したもの(特開平6-157820号公報)も使用できる。メラミン化合物と有機酸とのモル比は特に制限されないが、塩化合物中には塩を形成していないフリーのメラミン化合物や有機酸を含まないことが好ましい。メラミン化合物の有機酸塩の製造方法は特に制限されないが、一般にはメラミン化合物と有機酸を水中で混合反応させ、その後水を濾過又は留去して、乾燥することにより結晶性粉末として得ることができる。無機酸塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、フェニルホスホン酸塩、アルキルホスホン酸塩、亜リン酸塩、ホウ酸塩、タングステン酸塩などが挙げられる。これらの無機酸塩の中では、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、パラトルエンスルホン酸塩が好ましい。メラミン化合物と無機酸とのモル比は特に制限されないが、塩化合物中には塩を形成していないフリーのメラミン化合物や無機酸を含まないことが好ましい。メラミン化合物の無機酸塩の製造方法は特に制限されないが、一般にはメラミン化合物と無機酸を水中で混合反応させ、その後水を濾過又は留去して、乾燥することにより結晶性粉末として得ることができる。またピロリン酸塩やポリリン酸塩の製造方法は、例えば米国特許第3,920,796号明細書、特開平10-81691号公報、特開平10-306081号公報などに記載されている。
[0046]
 結晶核剤の添加量は繊維の力学特性と逆相関の関係にあることから、繊維全体に対して添加量を0.01~2重量%にすることが好ましい。添加量が0.01重量%以上であれば、繊維製造工程での短時間の熱処理においても速やかに結晶化するため、堅牢度に優れたポリマーアロイ繊維とすることができる。また、添加量を2重量%以下にすることで、力学特性の低下を抑制しつつ、堅牢度に優れたポリマーアロイ繊維にすることができる。結晶核剤の添加量は、より好ましくは0.05~1.5重量%、さらに好ましくは0.2~1重量%である。
[0047]
 本発明の相溶化剤(C)とは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーである。該相溶化剤(C)は、曵糸性および線径安定性、強度、耐摩耗性、耐熱性の点から、酸無水物基、アミノ基、イミノ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであることが好ましく、酸無水物基およびアミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するスチレン系エラストマーであることがより好ましく、アミノ基を含有するスチレン系エラストマーであることが特に好ましい。また、該相溶化剤(C)の重量平均分子量Mwは、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との界面に作用して界面剥離特性に大きな影響を及ぼす。そのため、分子量を1万以上の重合体にすることで良好な耐界面剥離性を呈し、35万以下にすることで、曵糸性に優れたポリマーアロイになるため好ましく、3万~25万の重合体であることがより好ましい。ここで、Mwは溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の値である。
[0048]
 また、本発明の相溶化剤(C)とは、(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位またはスチレン系ビニル単位を含むものであり、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位またはスチレン系ビニル単位を主成分、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含むものであればよく、オレフィン系単量体を除くその他のビニル系単量体成分単位を好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下共重合した共重合体でもよい。また、本発明において、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するスチレン系エラストマーである場合、相構造の制御性に優れ、曵糸性、強度、耐熱性および耐摩耗性(耐界面剥離性)が優れるという点で、スチレン系ビニル単位が含まれていればよく、1~30重量%であることが好ましく、5~15重量%であることがより好ましい。
[0049]
 また、(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、さらに、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
[0050]
 また、スチレン系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン,o-メトキシスチレン、2,4-ジメチルスチレン、1-ビニルナフタレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどが挙げられ、中でもスチレン、α-メチルスチレンが好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
[0051]
 本発明の相溶化剤の構成成分の単位となるエポキシ基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p-スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルあるいはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-4-グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中では、ラジカル重合性の点でアクリル酸グリシジルまたはメタアクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。さらには、該相溶化剤の構成成分単位となる酸無水物基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物またはアコニット酸無水物などが挙げられ、中でも、マレイン酸無水物が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。 また、カルボキシル基含有単位となる不飽和ジカルボン酸系単位を形成する原料モノマーとして、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられ、中でも、マレイン酸、イタコン酸が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。なお、相溶化剤は2種以上を併用配合してもよい。
[0052]
 また、該相溶化剤(C)の溶融粘度は、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の界面に作用してポリマーアロイ全体の溶融粘度に影響を及ぼし相構造に大きな影響を与える。よって、曵糸性、強度、耐熱性、耐摩耗性の点からメルトフローレート(MFR)は使用するポリオレフィン系樹脂(B)よりも高いことが好ましい。一方で、MFRが3未満になるような極めて高い溶融粘度であると、ポリマーの系全体の溶融粘度を高くして曵糸性を悪化させるため好ましくない。より好ましいMFRは5~20g/10分である。
[0053]
 また、相溶化剤(C)がエポキシ基含有アクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーである場合、ポリマーアロイの相構造を制御する上で、エポキシ価が0.1~10meq/gの範囲であることが好ましく、1~7meq/gの範囲であることがより好ましく、2~5meq/gの範囲であることがさらに好ましい。エポキシ価が0.1meq/g以上であれば、海島各成分間の界面接着性が向上し、エポキシ価が10meq/g以下のものを使用することで、ゲル化などを抑制できるので好ましい。ここで、エポキシ価は塩酸-ジオキサン法で測定した値である。なお、グリシジル基含有ビニル系単位を含むポリマーのエポキシ価は、グリシジル基含有ビニル系単位の含有量を調節することにより調節することができる。
[0054]
 また、相溶化剤(C)のガラス転移温度は、取り扱い性の点から30~100℃の範囲であることが好ましく、40~70℃の範囲であることがより好ましい。ここでいうガラス転移温度とは、JIS K7121に記載されている方法に従って示差走査熱量計(DSC)で測定した値であり、10℃/分で昇温した時の中間点ガラス転移温度である。なお、相溶化剤(C)のガラス転移温度は、共重合成分の組成を調節することにより制御可能である。ガラス転移温度は通常、スチレンなどの芳香族系ビニル単位を共重合することにより高くすることができ、アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位を共重合することにより低くすることができる。本発明の相溶化剤(C)は、低分子量体を得るために連鎖移動剤(分子量調整剤)として硫黄化合物を使用することがあるが、その場合には重合体は硫黄を含む。ここで、硫黄は不快な臭いを発するため、硫黄含有量が少ない方が好ましい。具体的には、硫黄原子として1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。特に好ましくは1ppm以下である。
[0055]
 本発明の相溶化剤(C)の製造方法としては、本発明で規定する条件を満たす限り特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合方法を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、重合開始剤、連鎖移動剤および溶媒などを使用することがあるが、これらは最終的に得られる相溶化剤(C)の中に不純物として残存することがある。これら不純物は耐熱性や耐光性を悪化させるため、不純物量は少ない方が好ましい。具体的には、不純物量が最終的に得られるポリマーアロイ繊維に対して3重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。また、相溶化剤(C)の製造時には、上記特性を達成するために150℃以上の高温かつ加圧条件で、5分~30分程度の短時間で連続塊状重合する方法が好ましい。
[0056]
 本発明で用いられる相溶化剤(C)の製品例としては、東亞合成製“ARUFON”、ジョンソンポリマー製“JONCRYL”、クレイトン製“クレイトン”、旭化成ケミカルズ製“タフテック”、JSR製“ダイナロン”などが挙げられる。本発明においては、相溶化剤(C)を配合することにより、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の親和性が向上し、相構造を制御しやすくなる。そのため、以下に説明する各成分の海/島成分の溶融粘度比や、海成分の溶融粘度、口金面温度や口金孔スペックとの組み合わせ技術により、曵糸性や線径斑の抑制、強度、耐熱性、耐摩耗性に優れたポリマーアロイ繊維を得ることができる。
[0057]
 本発明のポリマーアロイ繊維において、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との相構造が安定していること、すなわち海島構造における島成分(ポリ乳酸系樹脂)の大きさの分布において、その広がりが小さいことが繊維化を安定して行うために重要である。さらには、紡糸線上において、溶融体の速やかな伸長変形を促すためには、島成分となるポリ乳酸系樹脂(A)の口金内での変形倍率を最小にするとともに、口金を出てからの島成分の緩和を促進させる必要がある。そのためには、(i)温度230℃、ずり速度6.1(sec -1)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度η と、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η との粘度比(η /η )が1.3~10であり、(ii)海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η が200Pa・s以下であることが好ましい。
[0058]
 上記の第1条件(i)を満たすことで、口金孔内における貯蔵エネルギーをより小さくするとともに、島を形成するポリ乳酸系樹脂の変形倍率をより小さく抑えることが可能になる。ここで、口金孔内での「島ドメインの変形倍率」と紡糸性には非常に密接な関係があり、非相溶系ポリマーの組み合わせによるポリマーアロイ繊維の紡糸工程においては、該「変形倍率」が非常に重要なファクターとなる。
[0059]
 さらに第2の条件(ii)を満たすことで、島成分の紡糸線上での配向緩和をより速やかに行わせることが可能になり、紡糸線上での大変形(高ドラフト化)がより安定して起こりやすくなる。
[0060]
 ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)とのブレンド比率は、ポリ乳酸系樹脂(A)を島成分、ポリオレフィン系樹脂(B)を海成分とする海島構造のポリマーアロイにすることが必要なため、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1~45重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99~55重量部とすることが好ましい。より好ましくはポリ乳酸系樹脂(A)の比率が10~40重量部、さらに好ましくは15~35重量部である。また、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の総量(100重量部)に対し、相溶化剤(C)を1~30重量部とすることで相溶化効果が発揮されると共に、良好な繊維形成性を示すため好ましく、3~15重量部とすることがより好ましく、5~10重量部とすることが最も好ましい。
[0061]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維の繊維表面(繊維側面)には、ポリ乳酸系樹脂がほとんど露出していないことが好ましい。ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とは、相溶性がほとんどないことが知られており、ポリマーアロイ界面の接着強度も低いものである。そのため、繊維表面にポリ乳酸系樹脂が露出していると、その界面を起点として亀裂が入り、繊維がフィブリル化しやすくなる。この繊維表面のポリ乳酸系樹脂の露出状態は、光学顕微鏡等で観察してもオレフィン樹脂の部分とほとんど判別がつかない。そのため、ポリ乳酸系樹脂が繊維表面にどの程度露出しているかを調べるために、アルカリ溶液により繊維表面をエッチングしてポリ乳酸系樹脂のみを溶解し、電子顕微鏡(SEM)観察することで露出程度を捉えることができる。アルカリエッチング後のSEM観察により、ポリ乳酸が脱落した筋状クレーターの面積が10%以下であればフィブリル化抑制に効果があるが、より高い耐久性が要求される産業資材用途の場合には、筋状クレーターの面積は7%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。該筋状クレーターとは、図2のように繊維軸方向にほぼ平行(繊維軸に対して10°以内の角度)で伸びた凹状の溝である。筋状クレーターのSEMでの観測は、通常5,000倍、必要に応じて1,000~10,000倍に拡大した写真で捉えることができる。なお、この筋状溝の面積は、SEM観察像において10μm×10μmの視野角で捉えられる筋状溝の面積を、画像解析ソフト「WinROOF」を用い、視野中の全部の筋状クレーターの面積を測定して求めることができる。
[0062]
 また、従来のポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)の組み合わせにて得られるポリマーアロイ繊維は、ポリマー間の界面張力により、吐出孔直下でバラス効果と呼ばれる吐出孔径の数倍もの直径を有する膨らみが発生する。このため、紡糸での細化変形過程で太細が出やすく、糸切れが生じたり、糸斑等の品質に問題が生じたりした。本発明の繊維は、前記した様にポリマーの組み合わせ設計、すなわちポリマー溶融粘度の最適設計や相溶化剤の種類、粘度、後述する口金面温度や口金背面圧、口金吐出線速度の設計等により、バラス効果を最小限にするとともに、バラスによる膨らみが生じても、伸長流動領域を口金面にできるだけ近く、かつ速やかにすることで、安定的に繊維を形成することに成功した。そのため、繊維長手方向の糸斑も小さいものである。本発明のポリマーアロイ繊維からなるフィラメント、もしくはマルチフィラメントは、工程通過性や染色後の染め斑を抑制するために糸斑(ウスター斑、U%、half Inert値)が4%以下であることが好ましく、3%以下がより好ましい。さらに好ましくは2%以下である。最も好ましくは1.5%以下である。
[0063]
 本発明において、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)が均一にブレンドされていることが重要であるが、ここで、均一にブレンドされているとは以下のモルフォロジーをいうものである。すなわち、該ポリマーアロイ繊維の横断面スライスを透過型電子顕微鏡(TEM)(4万倍)により観察すると、図1に示す様に連続したマトリックス成分(灰色部分)を海成分、略円形状を成して分散した成分(白色部分と黒色部分の2種)を島成分とするいわゆる海島構造を採っている。ここで、白色部分がポリ乳酸系樹脂(A)であり、黒色部分が相溶化剤(C)、黒色と白色の2層構造になっているものがポリ乳酸系樹脂(A)と相溶化剤(C)の2層構造ドメインである。この図1において、島成分を構成するポリ乳酸系樹脂(A)のドメインサイズが直径換算(ドメインを円と仮定し、ドメインの面積から換算される直径)で0.005~2μmまで小さくなっていればブレンド状態が十分均一となり好ましい。島成分のドメインサイズを前記範囲にすることで、繊維の耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。なお、海成分を構成するポリオレフィン系樹脂(B)との接着性は、ドメインサイズが小さいほど界面での応力集中が分散されるため向上するが、一方、ドメインサイズがある一定以下のサイズになると初期摩耗性が低下する傾向にある。そのため、島ドメインのサイズは0.01~1.5μmがより好ましく、0.02~1.0μmがさらに好ましい。また、捲縮糸の光沢感を制御するためには、さらにドメイン径を特定の範囲にすることが好ましい。該ドメイン径が可視光の波長範囲(0.4~0.8μm)およびその波長の1/5波長(0.08~0.16μm)までをカバーすることで、繊維内部で適度な光散乱を生じ、しっとりとした審美性の高い光沢感とすることができる。美しい光沢感を表現するには、ドメイン径は0.08~0.8μmの範囲にすることが好ましい。
[0064]
 なお、本発明での上記ドメインサイズとは、実施例のG項にて後述するように延伸糸1試料あたり100個のドメインについて計測し、ドメイン径の最も大きい10個および最も小さい10個の値を除いた80個の分布を指す。
[0065]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維は、1分子鎖中にポリ乳酸ブロックとポリオレフィンブロックが交互に存在するブロック共重合体とは異なり、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)は実質的に独立に存在していることが重要である。この状態の違いは、配合前・後のポリオレフィン系樹脂の融点降下、すなわちポリマーアロイ中のポリオレフィン系樹脂由来の融点が配合前のポリオレフィン系樹脂の融点からどの程度降下したかを観測することにより見積もることができる。ポリオレフィン系樹脂の融点降下が3℃以下であれば、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィンはほとんど共重合されておらず、実質的にポリ乳酸分子鎖とポリオレフィン分子鎖は独立に存在するポリマーアロイの状態である。また、繊維表層は実質的に海成分であるポリオレフィン系樹脂であるため、前記のポリオレフィン系樹脂が本来有する特性が反映され、耐摩耗性が飛躍的に向上する。したがって、本発明では配合されたポリオレフィンの融点降下は2℃以下であることが好ましい。
[0066]
 本発明のポリマーアロイ繊維は、前記したようにポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)を主体とするポリマーアロイで構成されており、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造を形成している。また、島成分のドメインサイズを制御することで、耐摩耗性を飛躍的に向上させるとともに、高級感のある光沢を発現させるものである。
[0067]
 その他、触媒添加による樹脂の耐熱性低下を防止する目的で、ステアリン酸金属塩などの比較的分子量の大きな触媒を単独または併用することもできる。なお、該触媒の添加量は、分散性、反応性を制御する上で、合成繊維に対して5~2000ppm添加することが好ましい。より好ましくは10~1000ppm、さらに好ましくは20~500ppmである。
[0068]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維は工程通過性や製品の力学的強度を高く保つために強度は1cN/dtex以上であることが好ましく、1.5cN/dtex以上がより好ましい。さらに好ましくは2cN/dtex以上、特に好ましくは3cN/dtex以上である。このような強度を有するポリマーアロイ繊維は、後述する溶融紡糸、延伸法により製造することが可能である。また、破断伸度は15~80%であると、繊維製品にする際の工程通過性が良好であり好ましい。より好ましくは20~70%、さらに好ましくは25~60%である。なお、現行の工業的な汎用プロセスの範疇では、ポリマーアロイ繊維の強度を7cN/dtex以上にすることは極めて困難である。
[0069]
 また、ポリマーアロイ繊維の沸騰水収縮率は0~10%であれば繊維および繊維製品の寸法安定性が良好であり好ましい。より好ましくは0~8%、さらに好ましくは0~6%、最も好ましくは0~4%である。
[0070]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維は、マルチフィラメントにして仮撚加工したり、エアジェットスタッファ加工を行い、長繊維捲縮糸とすることが好ましい。本発明のポリマーアロイ繊維からなる捲縮糸は、捲縮発現性や弾性回復性に優れるとともに、軽量で、保温性にも優れるという特徴を有する。例えば、捲縮特性として沸騰水処理後の捲縮伸長率を測定した場合は、捲縮伸長率を3~30%の範囲で調整することが可能である。ここで、沸騰水処理後の捲縮伸長率の測定は次のとおりに行う。
[0071]
 環境温度25±5℃、相対湿度60±10%の雰囲気中に20時間以上放置されたパッケージ(捲縮糸巻取ドラムまたはボビン)から解舒した捲縮糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理する。処理した後、前記環境下にて1昼夜(約24時間)風乾し、これを沸騰水処理後の捲縮糸の試料として使用する。この試料に1.8mg/dtexの初荷重をかけ、30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、初荷重の代わりに90mg/dtexの測定荷重をかけて30秒経過後に、試料長(L2)を測定する。そして下式により、沸騰水処理後の捲縮伸長率(%)を求める。
捲縮伸長率(%)=[(L2-L1)/L1]×100。
[0072]
 かかる捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮伸長率が5%以上であれば、例えばカーペット等にしたときに、しなやかで春夏用に好適な素材に仕上げることができる。一方、沸騰水処理後の捲縮伸長率が30%以下にすることで、染色後の均染性が高められ、高品位の外観を呈するボリューム素材にすることが可能となる。
[0073]
 本発明のポリマーアロイ繊維は、染色や嵩高加工処理等の布帛構造体にするための加工工程、あるいは製品にした後の長期使用において、強度保持率等の耐久性に優れ、製品の外観が長期に渡って保持される。また、本発明のポリマーアロイ繊維の断面形状は、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面等の多葉断面、扁平断面、W断面、X断面その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、該ポリマーアロイ繊維からなるマルチフィラメントのバルキー性を高めてボリューム感のある繊維構造体にするためには、異形度(D1/D2)1.2~7の異形断面にすることが好ましい。異形断面糸の異形度は、高いほどボリューム感のある繊維構造体とすることができるが、一方で、異形度が過度に高いと繊維の曲げ剛性が高くなり、柔軟性の低下、繊維の割れ(フィブリル化)の発生、ギラツキのある光沢が発生する等の問題がある場合がある。そのため、異形度は1.3~5.5の範囲がより好ましく、1.5~3.5の範囲がさらに好ましい。
[0074]
 本発明のポリマーアロイ繊維の形態は、長繊維1本からなるモノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよいし、得られたポリマーアロイ繊維を適度な長さに切断して短繊維として扱ってもよい。
[0075]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維を繊維構造体として用いる場合には、織物、編物、不織布、パイル、綿等に適用でき、他の繊維を含んでいてもよい。例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維との引き揃え、撚糸、混繊であってもよい。他の繊維としては、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアクリロニトルおよびポリ塩化ビニルなどの合成繊維などが適用できる。
[0076]
 また、本発明のポリマーアロイ繊維を用いた繊維構造体の用途としては、耐摩耗性が要求される衣料、例えばアウトドアウェアやゴルフウェア、アスレチックウェア、スキーウェア、スノーボードウェアおよびそれらのパンツ等のスポーツウェア、ブルゾン等のカジュアルウェア、コート、防寒服およびレインウェア等の婦人・紳士用アウターがある。また、長時間使用による耐久性や湿老化特性に優れたものが要求される用途として、ユニフォームや各種カバー等の資材用途があり、これらにも好ましく用いることができる。また、自動車用の内装資材にも好適に用いることができ、その中でも、高い耐摩耗性と湿老化特性が要求される自動車内装用のカーペットに用いることが最適である。なお、これら用途に限定されるものではなく、例えば農業用の防草シートや建築資材用の防水シート等に用いてもよい。
[0077]
 本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば図3に示す直接紡糸・延伸装置を用いて以下の方法を採用することができる。すなわち、前記したポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)の組み合わせにおいて、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)の比率を好ましくは1~45重量部、より好ましくは10~45重量部、さらに好ましくは15~40重量部、最も好ましくは20~35重量部とし、さらに相溶化剤(C)を好ましくは1~30重量部、より好ましくは3~15重量部、さらに好ましくは5~10重量部としてそれぞれ計量し、ブレンドする。この際、吸湿しやすいポリ乳酸系樹脂(A)は予め80~150℃、真空下、若しくは窒素下で乾燥しておき、乾燥後は吸湿防止容器等にストックしておく。ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融紡糸前の吸湿率は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下、最も好ましくは0.008%以下である。
[0078]
 また、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)それぞれの相対的な溶融粘度の関係、及び海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度を特定の範囲にすることが重要である。本発明の目的を達成するためには、均一性が高いアロイ相構造であって、かつ繊維表面にポリ乳酸系樹脂(B)がほとんど露出しない構造とし、さらに島成分のドメインサイズが0.01~2μmであることが好ましい。そのためには、以下の溶融粘度特性であることが好ましい。
[0079]
 測定温度230℃、ずり速度6.1(sec -1)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度η と、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η との粘度比(η /η )が1.3~10であることが好ましく、1.8~9であることがより好ましい。更に好ましくは3~8である。また、海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η は、200Pa・s以下が好ましい。より好ましくは150Pa・s以下である。さらに相溶化剤(C)の溶融粘度η は、海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)よりも高いことが好ましい。η >η の関係を満足させることで、相溶化剤(C)がポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の界面に効果的に作用し、より少量の相溶化剤でアロイ相構造が安定したものとなる。相溶化剤(C)のより好ましい溶融粘度は、η >η >η を満足する溶融粘度にすることである。
[0080]
 次に、上記ポリマー特性およびブレンド比率の組み合わせにて、1軸混練機や2軸混練機等を用いて混練して一旦冷却した後チップ化するか、もしくは溶融状態のまま連続して紡糸装置に送り込み、計量した後、溶融紡糸を行い、ポリマーアロイの繊維化を行う。相溶化剤(C)の添加タイミングは、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の混練時に合わせて添加すればよく、添加方法は、相溶化剤をそのまま混練機に供給してポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)とともに同時混練してもよいし、相溶化剤(C)を高濃度に含有したマスターペレットを予め作成しておき、それをポリ乳酸系樹脂(A)およびポリオレフィン系樹脂(B)のペレットと混合して混練機に供給してもよい。溶融押出における混練時のジャケット温度は、ポリ乳酸系樹脂(A)の融点(以下Tmaと記載)を基準に、Tma+5℃~Tmb+50℃で行い、剪断速度を300~9800sec -1とすることが好ましい。この範囲のジャケット温度および剪断速度とすることで、均一性が高いアロイ相構造とし、かつ島成分のドメインサイズを十分小さくすることが可能になる。また、ジャケット温度は樹脂の着色を抑制するためにも低い方が好ましく、Tma+5~30℃であることがより好ましい。同様に、上記のアロイ相構造を壊さず、かつ着色を防止するために、紡糸温度もできるだけ低温で行うことが好ましく、Tma+30℃~Tma+70℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましい紡糸温度はTma+30℃~Tma+50℃である。
[0081]
 また、紡糸パック内での島ドメインの再凝集を抑制してドメイン径を制御するために、ハイメッシュの濾層(#100~#200)やポーラスメタル、濾過径の小さい不織布フィルター(濾過径5~30μm)、パック内ブレンドミキサー(スタティックミキサーやハイミキサー)を口金上に配置してもよい。この中でも、複数の線径の金属不織布からなる多層フィルターが最もドメイン径の制御に効果的である。また、多層フィルターでのブレンド効果を高めるために、多層フィルターのコア部分である不織布の厚みは0.3~3mmとすることが好ましい。厚みがある方がよりブレンド効果は高まるが、フィルターが厚すぎるとフィルター背面圧によりフィルター破れが発生しやすくなることから、より好ましくは0.4~2mm、さらに好ましくは0.5~1mm厚である。
[0082]
 本発明に用いるポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)は、非相溶系ポリマーであるため、ブレンド界面には高い界面張力が働き、溶融体は極めて弾性項が強い挙動を示してバラス効果による膨らみが発生する。そのためバラス効果による糸条の膨らみを抑制するとともに、安定して伸長・細化させて紡糸調子を向上させるために、次の条件を満たすことが好ましい。第1に、口金面温度を210~230℃にする。第2に、該口金面温度における口金背面圧力を1~5MPaにする。第3に、口金吐出孔内のポリマー平均流速を0.03~0.30m/秒とする。
[0083]
 口金面温度は、ポリマーの分子運動性を高めて吐出直後の島ドメインの緩和を促進させる狙いがある。上記の範囲とすることで、島ドメインが速やかに緩和し、ポリマーの伸長流動を阻害しにくくすることができる。また、口金背面圧力は、口金吐出孔内にてポリマー中に貯蔵される弾性エネルギー量と相関があるパラメーターである。口金背面圧力が低いほど、貯蔵される弾性エネルギーが小さいことからポリマーの伸長流動は安定するが、一方で、口金背面圧力が1MPaを下回ると、吐出孔の計量性が失われ、吐出が不安定になる。そのため、より好ましくは1~4MPa、さらに好ましくは1~3MPaである。また、口金吐出孔内のポリマー平均流速は、0.03~0.3m/秒とすることで、「島ドメインの変形倍率」を小さく抑えることが可能になり、吐出直後の島ドメインの緩和促進と、巻き取りまでの伸長変形を安定させることができ、紡糸線上での大変形(高ドラフト化)が可能になる。口金吐出孔内のポリマー平均流速は、好ましくは0.05~0.25m/秒、より好ましくは0.07~0.20m/秒である。
[0084]
 また、紡出糸条は伸長流動領域を口金面にできるだけ近く、かつ速やかに(吐出されてから、細化変形が完了するまでの距離を短く)することが必要である。そのため、紡出糸条の冷却開始点はより口金面に近い方が好ましく、口金面から実質的に鉛直下方0.01~0.15mの位置から冷却を開始することが好ましい。なお、実質的に鉛直下方の冷却開始点とは、紡出部を拡大した図4に示すように、冷却風吹出面の上端から水平に線aを引き、口金面からは下方に垂線bを引き、線aと線bとの交点cを意味し、垂線b上の口金面dからcまでの距離cdが0.01~0.15mであることが好ましい、ということを意味している。冷却開始点は、より好ましくは口金面から実質的に鉛直下方0.01~0.12m、さらに好ましくは口金面から実質的に鉛直下方0.01~0.08mである。
[0085]
 また、その冷却方法は、一方向から冷却するユニフロータイプのチムニーでも、糸条の内側から外側へ、もしくは糸条の外側から内側へ冷却風を当てる環状チムニーでもよいが、好ましくは糸条の内側から外側へ冷却する環状チムニーが、均一かつ急速冷却できる点で好ましい。この際に、マルチフィラメントに実質的に直交する方向から、マルチフィラメントに気体を当てて冷却することが望ましい。ここにおいて、実質的に直行する方向とは、図4に示すように冷却風の流線が線bに対してほぼ垂直(傾き70~110°)であることを意味する。なお、冷却風に用いられる気体について特に制限は無いが、常温で安定な(反応性が極めて低い)、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスや、窒素、あるいは空気が好ましく用いられ、この中でも安価に供給できる窒素、あるいは空気が特に好ましく用いられる。
[0086]
 また、このときの冷却風の速度は、0.3~1m/秒が好ましく、0.4~0.8m/秒がより好ましい。また、冷却風の温度は、糸条を急冷するために低い方が好ましいが、エアコンディショニングのコストとの兼ね合いから、15~25℃にすることが現実的であり好ましい。上記のように、特定のポリマー組み合わせにより本発明の海島構造が形成され、さらに紡糸温度の制御により海島構造を壊すことなく吐出させることができ、さらに口金吐出孔での吐出線速度の制御や、冷却方法およびその条件を制御することにより、はじめて本発明のポリマーアロイ繊維を安定して紡出・引き取ることができる。また、紡出したマルチフィラメントは公知のポリプロピレン用紡糸仕上げ剤を給油して被覆するが、このときの付着量は、糸に対し、純油分として0.3~3重量%(油剤成分:水または低粘度鉱物油=10:90の場合は、糸に対してエマルジョンを3~30重量%)付着させる。
[0087]
 また、紡糸速度は300~5000m/分で引取り、一旦巻き取るか、連続して延伸を行う。ただし、本発明のポリマーアロイ繊維は未延伸の状態で放置すると配向緩和が生じやすく、未延伸パッケージ間で延伸するまでの時間差があると、容易に繊維の強伸度特性や熱収縮特性のバラツキが生じる。そのため、1工程で紡糸、延伸までを行う直接紡糸延伸法を採用することが好ましい。
[0088]
 延伸は、1段もしくは2、3段で行えばいが、本発明の繊維は高速延伸を行うと歪み硬化による繊維径異常(繊維長手方向の直径斑)が発生しやすいことから、2段以上の多段で延伸することが好ましい。この時の1段目の延伸は、延伸温度60~110℃、延伸倍率1.5~3倍で行い、2段目以降の延伸は、延伸温度80~140℃、延伸倍率1.1~3倍で行うことが好ましい。例えば、2段延伸を行う場合の例として、第1加熱ロールにて紡糸速度600m/分で引き取り、引き続き第1加熱ロール-第2加熱ロール間にて1段目の延伸を行う。このときの第2加熱ロール周速度を1800m/分(3倍延伸)、第1加熱ロール温度50℃、第2加熱ロール温度110℃とする。更に第2加熱ロール-第3加熱ロール間にて2段目の延伸を行う。このときの第3加熱ロール周速度を3240m/分(2-3加熱ロール間倍率1.8倍)とし、第3加熱ロール温度140℃にて熱セットを行い、第4ロール(非加熱ロール、周速度3200m/分)を介してパッケージに巻き取る。ここで、総合倍率は得られる延伸糸の伸度が15~80%になる様に設定すればよい。上記の延伸温度および延伸倍率に設定することで、工程安定性が高く、かつ高強度で糸斑(ウスター斑U%)の小さい延伸糸にすることができる。また、嵩高加工には仮撚加工装置やエアジェットスタッファ装置を用いることができる。
[0089]
 なお、エアジェットスタッファ装置とは、BCFカーペット用捲縮糸の製造に汎用的に用いられている捲縮加工装置であり、エアジェットの乱流効果を用いてフィラメントに不規則なもつれループ状の嵩高性を付与する装置である。
実施例
[0090]
 以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
[0091]
 A.ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量
 試料(ポリ乳酸系樹脂)のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、繊維中のポリ乳酸の重量平均分子量を測定する場合には、試料をクロロホルムに溶かし、ポリオレフィン残渣を濾過して取り除き、該クロロホルム溶液を乾化してポリ乳酸系樹脂を取り出して測定を行った。
[0092]
 B.ポリ乳酸系樹脂の残存ラクチド量
 試料(ポリ乳酸系樹脂)1gをジクロロメタン20mlに溶解し、この溶液にアセトン5mlを添加した。さらにシクロヘキサンで定容して析出させ、島津社製GC17Aを用いて液体クロマトグラフにより分析し、絶対検量線にてラクチド量を求めた。なお、繊維中のポリ乳酸の場合は、予めポリ乳酸とポリオレフィンのブレンド比率を後述するTEM像から求め、上記ラクチド量をブレンド比率により補正して求めた。
[0093]
 C.カルボキシル基末端濃度
 精秤した試料(下記方法で抽出したポリ乳酸系樹脂)をo-クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。この時、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度を求めた。なお、ポリマーアロイ繊維からポリ乳酸系樹脂を抽出する方法は特に限定されないが、本発明においてはクロロホルムを用いてポリ乳酸系樹脂を溶解、濾過してポリオレフィンを取り除き、濾過液を乾化させて抽出した。
[0094]
 D.ポリマーの融点、結晶融解熱量
 パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC-7型を用い、試料20mgを昇温速度10℃/分にて測定して得た融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点(℃)とした。また、該極値を形成するピークとベースラインとで囲まれる面積(結晶融解ピーク面積)から、ポリマーの結晶融解熱量△H(J/g)を求めた。
[0095]
 E.溶融粘度η
 東洋精機(株)社製キャピログラフ1Bを用い、チッソ雰囲気下において測定温度を230℃に設定し、剪断速度6.1(sec -1)でポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)及び相溶化剤(C)の溶融粘度の測定をした。測定は3回行い、平均値を溶融粘度とした。
[0096]
 F.ポリマーアロイ繊維の島成分のドメインサイズおよびブレンド比率
 ポリマーアロイ繊維の繊維軸と垂直の方向(繊維横断面方向)に超薄切片を切り出し、該切片を4万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)にてブレンド状態を観察・撮影した。この撮影画像を三谷商事(株)の画像解析ソフト「WinROOF」を用い、島ドメイン(非染色部)のサイズとしてドメインを円と仮定し、ドメインの面積から換算される直径(直径換算)(2r)をドメインサイズとした。なお、計測するドメイン数は1試料あたり100個とし、ドメイン径の最も大きい10個および最も小さい10個の値を除いた80個のドメイン径について分布を求めた。
[0097]
 なお、繊維におけるポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)のブレンド比率は、上記のTEM像(5.93×4.65μm)から求められる断面積比を、各成分の比重により補正して重量比として求めた。ここで、本実施例での各成分の比重は、ポリ乳酸:1.24、ポリオレフィン:0.91を用いた。
TEM装置:日立社製H-7100FA型、条件:加速電圧 100kV。
[0098]
 G.繊維表面(側面)の形態観察
 ポリマーアロイ繊維を水酸化ナトリウム20重量%溶液に一昼夜、浸漬(アルカリエッチング)した後、ニコンインステック(株)社製の電子顕微鏡ESEM-2700にて倍率5,000倍で繊維表面状態を観察、撮影した。この撮影画像を三谷商事(株)の画像解析ソフト「WinROOF」を用い、繊維表面中の任意の10μm×10μmの視野角で捉えられる筋状クレーターの面積を測定して求めた。なお、1試料あたり3カ所の視野について測定を行い、その平均値を筋状クレーターの面積比率(%)とした。
筋状クレーターの面積比率(%)=(筋状クレーター面積)/(繊維表面積)×100
[0099]
 H.繊度
 検尺機にて100mの糸をかせ状に測長し、糸長100mの糸の重量を測定し、該重量を100倍することにより繊度(dtex)を求めた。測定は3回行い、その平均値を繊度(dtex)とした。
[0100]
 I.強度および破断伸度
 試料糸をオリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に示される定速伸長条件で測定した。掴み間隔(試料長)は200mmとした。なお、破断伸度はS-S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
[0101]
 J.沸騰水収縮率(沸収)
 試料糸を沸騰水に15分間浸積し、浸積前後の寸法変化から次式により求めた。
沸騰水収縮率(%)=[(L -L )/L ]×100
:試料をかせ取りし、初荷重0.088cN/dtex下で測定したかせ長。
:L を測定したかせを無荷重の状態で沸騰水処理し風乾後、初荷重0.088
cN/dtex下で測定されるかせ長。
[0102]
 K.糸斑U%
 試料糸をZellweger uster社製UT4-CX/Mを用い、糸速度:200m/分、測定時間:1分間でU%(half Inert)を測定した。
[0103]
 L.捲縮伸長率
 環境温度25±5℃、相対湿度60±10%の雰囲気中に20時間以上放置されたパッケージ(捲縮糸巻取ドラムまたはボビン)から解舒した捲縮糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理する。処理した後、前記環境下にて1昼夜(約24時間)風乾し、これを沸騰水処理後の捲縮糸の試料として使用する。この試料に1.8mg/dtexの初荷重をかけ、30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、初荷重の代わりに90mg/dtexの測定荷重をかけて30秒経過後に、試料長(L2)を測定する。そして下式により、沸騰水処理後の捲縮伸長率(%)を求める。
捲縮伸長率(%)=[(L2-L1)/L1]×100。
[0104]
 M.耐摩耗性
 安藤鉄工所製のトワイン摩耗試験機を用い、P600番サンドペーパーをローラーに巻き付け、以下の条件にてローラーを回転させて糸切断までのローラー回転数を測定した。
回転体直径:40mm
糸の接触長:110mm
ローラー回転数:200rpm
測定荷重:0.4cN/dtex
[0105]
 N.結晶核剤の平均粒子径D50及び10μm以上の結晶核剤の含有率
 島津製作所製SALD-2000Jを用い、レーザー回折法により結晶核剤の平均粒子径D50(μm)を測定した。また、得られた粒度分布から10μm以上の結晶核剤の体積%を求めた。
[0106]
 O.カーペットの耐摩耗性(摩耗減量率)
 捲縮糸にS撚、Z撚をかけて2本合わせて撚糸した後、該撚糸を表糸としてPPスパンボンド不織布にタフティングした後、基布の裏にバッキング材を塗布して乾燥し、タフティングカーペットを得た(目付1200g/m )。該タフティングカーペットを直径120mmの円形状に切り出し、中央に6mmの穴を空けて試験片とした。該試験片の重量W を測定した後、ASTM D 1175(1994)に規定されるテーバー摩耗試験機(Rotary Abaster)に表面を上にして取り付け、H#18摩耗綸、圧縮荷重1kgf(9.8N)、試料ホルダ回転速度70rpm、摩耗回数5500回の摩耗試験を行い、摩耗試験後の試料重量W を測定した。これらの測定値と下記の式を用いて摩耗減量率を算出した。
摩耗減量率(%)=(W -W )×100/(W ×A /A
:測定前の円形カーペットの重量(g)
:測定後の円形カーペットの重量(g)
:カーペットの目付(g/m
:円形カーペットの全面積(m
:摩耗輪が接触する部分の全面積(m )。
[0107]
 P.カーペットの触感(柔軟性)および外観(光沢感)
 試料カーペットを手のひらで押したときの触感(柔軟性)および太陽光の下で目視して光沢感や光沢斑を確認し、触感、外観それぞれについて4段階評価した。
二重丸・極めて優れている
○・・・優れている
△・・・従来品と同等
×・・・従来品より劣っている
[0108]
 [製造例1](ポリ乳酸の製造)
 光学純度99.8%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で240分間重合を行い、ポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は23.3万であった。また、残留しているラクチド量は0.12重量%であった。
[0109]
 [製造例2](ポリ乳酸の製造)
 光学純度99.8%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で150分間重合を行い、ポリ乳酸P2を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は15万であった。また、残留しているラクチド量は0.10重量%であった。
[0110]
 [ポリオレフィン]
(O1)プライムポリマー製“S119”(MFR:60[温度230℃]、融点166℃、結晶融解熱量110J/g、溶融粘度128Pa・s)
(O2)プライムポリマー製“ZS1337A”(MFR:26[温度230℃]、融点165℃、結晶融解熱量107J/g、溶融粘度195Pa・s)
(O3)プライムポリマー製“S115”(MFR:12[温度230℃]、融点165℃、結晶融解熱量102J/g、溶融粘度295Pa・s)
[0111]
 [相溶化剤]
(C1)アミノ基変性SEBS(JSR製“ダイナロン”8630P、スチレン含有量15重量%、MFR15g/10分(230℃、21.2N))
(C2)イミン基変性SEBS(旭化成ケミカルズ製“タフテック”N503、スチレン含有量30重量%、MFR20g/10分(230℃、21.2N))
(C3)無水マレイン酸変性SEBS(クレイトン製“クレイトン”FG1924、スチレン含有量13重量%、無水マレイン酸含有量1重量%、MFR11g/10分(230℃、21.2N))
[0112]
 (実施例1)
 ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸P1(融点177℃、溶融粘度770Pa・s)、ポリオレフィン系樹脂(B)としてO1、相溶化剤としてC1(溶融粘度555Pa・s)をそれぞれ30重量部、70重量部、5重量部の割合(合計105重量部)でチップブレンドし、図3に示す2軸混練機(同方向2軸、軸径20mm、L/D45)を備えた紡糸装置のホッパー1に仕込んだ。なお、ポリ乳酸系樹脂(A)は110℃、真空下で約5時間乾燥し、水分率を80ppmに調湿した。2軸押出混練機2のジャケット温度を200℃、混練時の軸回転数を300rpmとして混練しながら溶融ポリマーを温度230℃に保温された紡糸ブロック3に導き、さらにギヤポンプにて計量・排出し、内蔵された紡糸パック4に溶融ポリマーを導き、紡糸口金5から紡出した。なお、紡糸パックの口金直上には絶対濾過径10μmのSUS不織布フィルター(不織布厚み:0.6mm)を組み込んだ。口金は直径0.9mm、孔深度6.3mmの丸孔を用いた。また、口金面温度は223℃であった。口金面下5cmの位置に吹出孔上端がくるように環状チムニー6(冷却長30cm)を設置して冷却風温度20℃、冷却風速度0.5m/秒で糸条7を冷却固化し、給油装置8および給油装置9により2段給油した。紡糸油剤にはポリエーテル系油剤15、低粘度鉱物油85の割合で混合したものを糸に対して10%付着させた(純油分として1.5%owf)。
[0113]
 さらに第1加熱ロール11(以下、1FRと記載)の温度を60℃として紡糸速度700m/分にて引き取った後、第2加熱ロール12(以下、1DRと記載)の温度を110℃として1960m/分にて1段目の延伸(延伸倍率:2.8倍)を行い、さらに第3加熱ロール13(以下、2DRと記載)の温度を140℃として3500m/分にて2段目の延伸(延伸倍率:1.79倍)を行い、第4ロール14(以下、3DR)にて周速度3500m/分にて糸条を冷却した後、巻取張力22g(0.1cN/dtex)、巻取速度3448m/分(弛緩率1.5%)で巻き取った。得られたポリマーアロイ繊維から構成されるマルチフィラメントは、225デシテックス、15フィラメントであった。なお、下記条件における口金背面圧力は2.4MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速は0.16m/秒であった。該マルチフィラメントを延べ200万m製糸した結果、紡糸、延伸工程において糸切れ、単糸流れ等は発生せず、極めて安定していた。
[0114]
 得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島ドメインサイズは直径換算で0.03~0.2μmであった。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去して観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。また、繊維表面の筋状クレーターの面積は約3.8%、得られた繊維の強度は3.1cN/dtex、破断伸度:50%、沸騰水収縮率:5.8%、糸斑U%:1.0%と良好な繊維物性を示した。さらに摩耗試験による糸切断回転数は120回であり、良好な耐摩耗性を示した。
[0115]
 (実施例2)
 ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)をそれぞれ10重量部、90重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例2の製糸性は実施例1と同様、極めて安定していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島ドメインサイズは直径換算で0.01~0.15μmと実施例1よりも島成分の分散径が小さかった。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去し観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。また、得られた繊維は繊維物性、耐摩耗性共に良好であった。
[0116]
 (実施例3)
 ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)をそれぞれ40重量部、60重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例3の製糸性は実施例1と同様、極めて安定していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島ドメインサイズは直径換算で0.03~0.6μmと実施例1よりも島成分の分散径が大きかった。また、アルカリエッチング後の筋状クレーター面積も約5.5%であり、該クレーターに起因すると思われる耐摩耗性の低下が見られたが、実用耐久性を有するものであった。
[0117]
 (実施例4)
 ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)をそれぞれ5重量部、95重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例4の製糸性は実施例1と同様、極めて安定していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっており、島ドメインサイズは直径換算で0.01~0.1μmと島成分の分散径が極めて小さく、島の数も少ないものであった。また、該マルチフィラメントの繊維表面には筋状クレーターが観察されなかった。
[0118]
 (実施例5)
 ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)をそれぞれ47重量部、53重量部とした以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例5は延べ20万m紡糸した際に糸切れが8回生じた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、不均一な海島構造をとっており、島ドメインサイズは直径換算で0.1~2.8μmと極めて広い分布の分散径を有していた。また、繊維表面の筋状クレーターの面積は17.3%であり、実施例1対比、かなり大きい筋状クレーターも観察された。また、摩耗試験による糸切断回転数が37回であり、用途は限定されるものの実用レベルであった。
[0119]
 (比較例1)
 相溶化剤(C)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、さらに紡糸線上での伸長変形が不安定で紡糸速度700m/分で紡糸することができなかった。
[0120]
 (比較例2)
 ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)をそれぞれ70重量部、30重量部とし、第1加熱ロールの温度を80℃として紡糸速度850m/分(1段目延伸倍率:2.3倍)にて引き取った以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。比較例2は延べ20万m紡糸した際に糸切れが5回発生した。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、やや不均一ではあるが分散した海島構造をとっていた。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去し観察したところ、海成分が欠落しており、ポリプロピレンが島成分を形成していることが確認された。また、得られた繊維の耐摩耗性は糸切断回転数が18回であり、耐摩耗性が要求される用途では使用できないレベルであった。
[0121]
 (比較例3)
 ポリ乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸P1)のみとした以外は比較例2と同様にしてマルチフィラメントを得た。比較例3の製糸性は実施例1と同様、安定していた。得られたマルチフィラメントは摩耗試験による糸切断回転数が8回と極めて低く、耐摩耗性が要求される用途では使用できないレベルであった。
[0122]
[表1]


[0123]
 (実施例6)
 ポリオレフィン系樹脂(B)としてO2を用いた以外は、実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じていた。また、実施例6は延べ20万m紡糸した際に糸切れが4回生じた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、島ドメインサイズは直径換算で0.05~0.6μmと実施例1よりも大きく、糸斑U%も2.1%とやや高いものであったが、実用性のある特性を有していた。
[0124]
 (実施例7)
 ポリオレフィン系樹脂(B)としてO3を用いた以外は、実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、紡糸線上での伸長変形が不安定で太細が生じていた。また、実施例6は延べ20万m紡糸した際に糸切れが15回生じた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、島ドメインサイズは直径換算で0.1~1.1μmと実施例6よりも大きく、糸斑U%も3.7%と極めて高いものであったが、用途は限定されるものの実用レベルであった。
[0125]
 (実施例8)
 ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸P2(融点177℃、溶融粘度240Pa・s)、を用いた以外は実施例1と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例7の製糸性は比較的安定しており、延べ20万m紡糸した際の糸切れは2回であった。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、やや均一性に劣る海島構造であり、島ドメインサイズは直径換算で0.07~0.9μmであった。また、耐摩耗性は糸切断回数82回であり、実施例1よりは劣るものの、実用耐久性を有するレベルであった。
[0126]
 (実施例9)
 ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸P2を、ポリオレフィン系樹脂(B)としてO3を用いた以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、延べ20万m紡糸した際の糸切れは20回であった。また、得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、島ドメインサイズは直径換算で0.1~2.2μmと実施例7よりも大きかった。また、耐摩耗性は糸切断回数48回であり、用途は限定されるものの、実用性を有するものであった。
[0127]
 (実施例10~12)
 相溶化剤(C1)のブレンド比率をそれぞれ0.5重量部、15重量部、30重量部とした以外は実施例1と同様にして紡糸を行った。相溶化剤を0.5重量部添加した実施例10は、紡糸時に口金直下での膨らみが大きく、紡糸線上での伸長変形が不安定で太細が生じており、その影響で糸斑U%も4.1%と極めて高いものであった。また、耐摩耗性は糸切断回数42回であり、用途は限定されるものの実用性を有するものであった。相溶化剤を15重量部とした実施例11は、実施例1よりは若干強度が低下するものの、その他の特性はほぼ実施例1と同等であり、高い実用性を有していた。相溶化剤を30重量%とした実施例12は繊維剛性が低下しており、実施例1よりもしなやかな特性を有していた。また、耐摩耗性は実施例1よりは劣るものの、十分な実用耐久性を有していた。
[0128]
[表2]


[0129]
 (実施例13)
 相溶化剤(C)をC2に変更し、添加量を10重量部にした以外は実施例1と同様にして紡糸を行った。実施例13は紡糸時に口金直下での膨らみがやや大きいものの、紡糸は比較的安定しており、延べ20万m紡糸した際の糸切れは2回であった。また、得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、島ドメインサイズは直径換算で0.03~0.5μmであり、実施例1よりはやや大きかった。また、耐摩耗性は糸切断回数88回であり、実用上問題のないレベルであった。
[0130]
 (実施例14)
 相溶化剤(C)をC3に変更した以外は実施例13と同様にして紡糸を行った。実施例14は実施例13よりもさらに口金直下での膨らみが大きく、延べ20万m紡糸した際の糸切れは9回であった。また、得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、島ドメインサイズは直径換算で0.05~0.8μmであり、実施例13よりさらに大きかった。また、耐摩耗性は糸切断回数72回であり、用途は限定されるものの、実用性のあるレベルであった。
[0131]
 (実施例15)
 口金として直径0.9mm、孔深度13.5mmのものを使用した以外は実施例1と同様にして紡糸を行った。実施例15の紡糸中の口金背面圧力は5.2MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速は0.16m/秒であった。また、紡糸時に口金直下での膨らみが大きく、延べ20万m紡糸した際の糸切れは21回に及んだ。また、耐摩耗性は糸切断回数76回であり、用途は限定されるものの、実用性のあるレベルであった。
[0132]
 (実施例16)
 口金として直径0.7mm、孔深度1.4mmのものを使用した以外は実施例1と同様にして紡糸を行った。実施例16の紡糸中の口金背面圧力は1.0MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速は0.26m/秒であった。実施例16は紡糸時に口金直下での膨らみが実施例1よりも大きいものの、紡糸は比較的安定しており、延べ20万m紡糸した際の糸切れは3回であった。また、耐摩耗性は糸切断回数103回であり、実用上問題のないレベルであった。
[0133]
 (実施例17)
 口金として直径2.0mm、孔深度14mmのものを使用した以外は実施例1と同様にして紡糸を行った。実施例17の紡糸中の口金背面圧力は1.0MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速は0.03m/秒であった。実施例17は紡糸時の膨らみはないものの、延べ20万m紡糸した際の糸切れは5回とやや安定性に欠けた。また、耐摩耗性は糸切断回数95回であり、実用上問題のないレベルであった。
[0134]
[表3]


[0135]
 (実施例18)
 実施例1で得た225デシテックス、15フィラメントのマルチフィラメントを6本引き揃えて1350デシテックス、90フィラメントとし、エアスタッファ装置を備えた捲縮加工装置にてBCFヤーンを得た。このとき、第1供給ロール(非加熱)の速度を800m/分として第1加熱ロールに糸を送った。このときの第1加熱ロールは周速度808m/分(ストレッチ率1%)、表面温度145℃とした。第1加熱ロールにて熱処理後、連続してエアスタッファ装置にてノズル温度180℃で加熱圧空処理して捲縮加工を行い3次元捲縮を形成し、冷却ドラムに当てて引取った後、巻取張力120g、巻取速度768m/分で巻き取った。得られたポリマーアロイ捲縮糸は1380デシテックス、90フィラメントであり、捲縮伸長率が15.5%と良好な捲縮特性を示した。さらに該捲縮糸を用いてカーペットを作成して評価したところ、摩耗減量率は18.8%であり、カーペットとしても良好な耐摩耗性を示した。また、手触りは適度な腰があり良好なものであった。

産業上の利用可能性

[0136]
 本発明のポリマーアロイ繊維は、耐摩耗性が要求される衣料、例えばアウトドアウェアやゴルフウェア、アスレチックウェア、スキーウェア、スノーボードウェアおよびそれらのパンツ等のスポーツウェア、ブルゾン等のカジュアルウェア、コート、防寒服およびレインウェア等の婦人・紳士用アウター、また、長時間使用による耐久性や湿老化特性に優れたものが要求される用途として、ユニフォームや各種カバー等の資材、また、自動車用の内装資材、特に高い耐摩耗性と湿老化特性が要求される自動車内装用のカーペット等に用いることができる。

符号の説明

[0137]
 1:紡糸ホッパー
 2:2軸押出混練機
 3:紡糸ブロック
 4:紡糸パック
 5:紡糸口金
 6:環状チムニー(糸条冷却装置)
 7:糸条
 8:給油装置1
 9:給油装置2
 10:ストレッチロール
 11:第1加熱ロール(1FR)
 12:第2加熱ロール(1DR)
 13:第3加熱ロール(2DR)
 14:第4ロール(3DR)
 15:巻取機
 16:冷却風吹出面

請求の範囲

[請求項1]
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)とを配合してなるポリマーアロイからなるポリマーアロイ繊維であって、相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであって、該ポリマーアロイのモルフォロジーが、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。
[請求項2]
ポリマーアロイ繊維のアルカリエッチング後の繊維側面に存在する筋状クレーターの面積比率が10%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリマーアロイ繊維。
ここで、
筋状クレーターの面積比率(%)=(筋状クレーター面積/繊維表面積)×100である。
[請求項3]
島成分のドメインサイズが0.005~2μmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーアロイ繊維。
[請求項4]
温度230℃、ずり速度6.1(sec -1)での溶融粘度測定におけるポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度η と、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η との粘度比(η /η )が1.3~10であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載のポリマーアロイ繊維。
[請求項5]
ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)の融点がいずれも150℃以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載のポリマーアロイ繊維。
[請求項6]
ポリマーアロイの組成が、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1~45重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99~55重量部、相溶化剤(C)1~30重量部であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマーアロイ繊維。
[請求項7]
ポリマーアロイ繊維が以下の物性を満足するものである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマーアロイ繊維。
強 度:1~7cN/dtex
沸収率:0~10%
[請求項8]
請求項1~7のいずれか1項記載のポリマーアロイ繊維から構成されるモノフィラメント又はマルチフィラメントであって、該フィラメントの糸斑U%(half Inert)が4%以下であることを特徴とするフィラメント。
[請求項9]
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマーアロイ繊維および/又は請求項8に記載のフィラメントを少なくとも1部に含む繊維構造体。
[請求項10]
繊維構造体が自動車内装用のカーペットである、請求項9に記載の繊維構造体。
[請求項11]
温度230℃、ずり速度6.1(sec -1)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度η と、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η との粘度比(η /η )が1.3~10であり、かつポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度η が200Pa・s以下であって、さらに相溶化剤(C)として酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系エラストマーまたはスチレン系エラストマーを1~30重量部(ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として算出)である条件で、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)を溶融混練して一旦冷却した後チップ化するか、又は溶融状態のまま連続して紡糸装置に送り込み、計量した後、口金上に配置された金属不織布からなる多層フィルターを通し、更に口金面温度210~230℃における口金背面圧力が1~5MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速が0.03~0.30m/秒となる口金にて吐出したモノフィラメント又はマルチフィラメントを、冷却、給油した後、300m/分以上で引き取り、一旦巻き上げるか、又は連続して延伸工程に導き、延伸温度60~140℃にて1段又は2段階で延伸して巻き取る事を特徴とするポリマーアロイ繊維の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]