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1. WO2010073636 - METHOD FOR PRODUCING MOLD AND METHOD FOR PRODUCING ANTI-REFLECTION FILM USING MOLD

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明 細 書

発明の名称 型の製造方法および型を用いた反射防止膜の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

先行技術文献

特許文献

0014  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0015   0016   0017   0018  

課題を解決するための手段

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031  

発明の効果

0032  

図面の簡単な説明

0033  

発明を実施するための形態

0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

産業上の利用可能性

0071  

符号の説明

0072  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 型の製造方法および型を用いた反射防止膜の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、型の製造方法および型を用いた反射防止膜の製造方法に関する。ここでいう「型」は、種々の加工方法(スタンピングやキャスティング)に用いられる型を包含し、スタンパということもある。また、印刷(ナノプリントを含む)にも用いられ得る。

背景技術

[0002]
 テレビや携帯電話などに用いられる表示装置やカメラレンズなどの光学素子には、通常、表面反射を低減して光の透過量を高めるために反射防止技術が施されている。例えば、空気とガラスとの界面を光が入射する場合のように屈折率が異なる媒体の界面を光が通過する場合、フレネル反射などによって光の透過量が低減し、視認性が低下するからである。
[0003]
 近年、反射防止技術として、凹凸の周期が可視光(λ=380nm~780nm)の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを基板表面に形成する方法が注目されている(特許文献1から4を参照)。反射防止機能を発現する凹凸パターンを構成する凸部の2次元的な大きさは10nm以上500nm未満である。
[0004]
 この方法は、いわゆるモスアイ(Motheye、蛾の目)構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を凹凸の深さ方向に沿って入射媒体の屈折率から基板の屈折率まで連続的に変化させることによって反射防止したい波長域の反射を抑えている。
[0005]
 モスアイ構造は、広い波長域にわたって入射角依存性の小さい反射防止作用を発揮できるほか、多くの材料に適用でき、凹凸パターンを基板に直接形成できるなどの利点を有している。その結果、低コストで高性能の反射防止膜(または反射防止表面)を提供できる。
[0006]
 モスアイ構造の製造方法として、アルミニウムを陽極酸化することによって得られる陽極酸化ポーラスアルミナを用いる方法が注目されている(特許文献2から4)。
[0007]
 ここで、アルミニウムを陽極酸化することによって得られる陽極酸化ポーラスアルミナについて簡単に説明する。従来から、陽極酸化を利用した多孔質構造体の製造方法は、規則正しく配列されたナノオーダーの円柱状の細孔(微細な凹部)を形成できる簡易な方法として注目されてきた。硫酸、蓚酸、または燐酸等の酸性電解液またはアルカリ性電解液中にアルミニウム基材を浸漬し、これを陽極として電圧を印加すると、アルミニウム基材の表面で酸化と溶解が同時に進行し、その表面に細孔を有する酸化膜を形成することができる。この円柱状の細孔は、酸化膜に対して垂直に配向し、一定の条件下(電圧、電解液の種類、温度等)では自己組織的な規則性を示すため、各種機能材料への応用が期待されている。
[0008]
 特定の条件下で作製されたポーラスアルミナ層は、膜面に垂直な方向から見たときに、ほぼ正六角形のセルが二次元的に最も高密度で充填された配列をとっている。それぞれのセルはその中央に細孔を有しており、細孔の配列は周期性を有している。セルは局所的な皮膜の溶解および成長の結果形成されるものであり、バリア層と呼ばれる細孔底部で、皮膜の溶解と成長とが同時に進行する。このとき、セルのサイズすなわち、隣接する細孔の間隔(中心間距離)は、バリア層の厚さのほぼ2倍に相当し、陽極酸化時の電圧にほぼ比例することが知られている。また、細孔の直径は、電解液の種類、濃度、温度等に依存するものの、通常、セルのサイズ(膜面に垂直な方向からみたときのセルの最長対角線の長さ)の1/3程度であることが知られている。このようなポーラスアルミナの細孔は、特定の条件下では高い規則性を有する(周期性を有する)配列、また、条件によってはある程度規則性の乱れた配列、あるいは不規則(周期性を有しない)な配列を形成する。
[0009]
 特許文献2は、アルミナ陽極酸化膜を表面に有するスタンパを用いて、転写法で反射防止膜(反射防止表面)を形成する方法を開示している。
[0010]
 また、特許文献3に、アルミニウムの陽極酸化と孔径拡大処理を繰り返すことによって、連続的に細孔径が変化するテーパー形状の凹部を形成する技術が開示されている。
[0011]
 本出願人は、特許文献4に、微細な凹部が階段状の側面を有するアルミナ層を用いて反射防止膜を形成する技術を開示している。
[0012]
 また、特許文献1、2および4に記載されているように、モスアイ構造(ミクロ構造)に加えて、モスアイ構造よりも大きな凹凸構造(マクロ構造)を設けることによって、反射防止膜(反射防止表面)にアンチグレア(防眩)機能を付与することができる。アンチグレア機能を発揮する凹凸を構成する凸部の大きさは1μm以上100μm未満である。特許文献1、2および4の開示内容の全てを参考のために本明細書に援用する。
[0013]
 このようにアルミニウムの陽極酸化膜を利用することによって、モスアイ構造を表面に形成するための型(以下、「モスアイ用型」という。)を容易に製造することができる。特に、特許文献2および4に記載されているように、アルミニウムの陽極酸化膜の表面をそのまま型として利用すると、製造コストを低減する効果が大きい。

先行技術文献

特許文献

[0014]
特許文献1 : 特表2001-517319号公報
特許文献2 : 特表2003-531962号公報
特許文献3 : 特開2005-156695号公報
特許文献4 : 国際公開第2006/059686号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0015]
 しかしながら、本発明者の検討によると、アルミニウム基材(以下、「Al基材」と表記する。)の表面に形成した陽極酸化膜をそのままモスアイ用型として用いるためには、剛性および/または加工性(例えば切削加工性)が低いという問題がある。例えば、特許文献3に記載されている、99.99%(4Nと表記されることがある。)のアルミニウム板のような高純度アルミニウム板に陽極酸化膜を形成しても、アルミニウム板の剛性が低いため、例えば、数mmから数十cmの厚さの板では、実用的なモスアイ用型を得ることはできない。もちろん、アルミニウム板の厚さを大きくすれば板の剛性は増すが、材料の無駄をはじめ、種々の無駄が発生するので、量産に適用することができない。
[0016]
 なお、本明細書において、Al基材とは、Alの薄膜を含まず、自己支持が可能で、厚さが2mm以上の板状、または円筒状、あるいは円柱状のバルク状のAlを指す。
[0017]
 一方、十分な剛性および加工性を得るために、不純物元素を含むアルミニウム板(例えば、JIS 1050(アルミニウムの純度99.50質量%以上))を用いると、上記の細孔に比べて大きなピット(窪み)が形成され(図5参照)、良好な反射防止特性を有するモスアイ構造の形成に用いることができないことがある。
[0018]
 本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、モスアイ構造を形成するための型としてそのまま用いることができる、陽極酸化膜が形成されたAl基材の型の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0019]
 本発明の型の製造方法は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数の第1凸部を有するモスアイ構造を表面に形成するための型の製造方法であって、(a)Alの含有量が99.99質量%未満のAl基材を用意する工程と、(b)前記Al基材を部分的に陽極酸化することによって、複数の微細な凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程と、(c)前記工程(b)の後に、前記ポーラスアルミナ層を、アノードインヒビターを含むエッチング液に接触させることによって、前記ポーラスアルミナ層の前記複数の微細な凹部を拡大させる工程と、(d)前記工程(c)の後に、さらに陽極酸化することによって、前記複数の微細な凹部を成長させる工程とを包含する。前記モスアイ構造において、互いに隣接する第1凸部間の距離は30nm以上600nm未満であることが好ましい。
[0020]
 本発明の型の製造方法は、アノードインヒビターを含むエッチング液を用いる(対策a)代わりに、標準電極電位がAlよりも高い元素の含有量が10ppm以下で、標準電極電位がAlよりも低い元素の含有量が0.1質量%以上であるAl基材を用いても良い(対策b)。あるいは、前記工程(c)の前に、アルミナの追加バリア層を形成する工程をさらに行っても良い(対策c)。また、上記3つの対策a~cの内の任意の2つ以上を組み合わせて採用してもよい。さらに、アノードインヒビターに代えて、またはアノードインヒビターとともにAl基材の表面に皮膜を形成する化合物を含むエッチング液を用いてもよい。
[0021]
 ある実施形態において、前記工程(d)の後に、前記工程(c)および前記工程(d)をさらに行う。なお、一連の工程は陽極酸化工程(微細な凹部を成長させる工程)で終わることが好ましいが、エッチング工程(微細な凹部を拡大させる工程))で終わってもよい。
[0022]
 ある実施形態において、前記Al基材は、Fe、Si、Cu、Mn、Zn、Ni、Ti、Pb、SnおよびMgからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
[0023]
 ある実施形態において、前記Al基材は、標準電極電位がAlよりも高い元素の含有量が10ppm以下で、標準電極電位がAlよりも低い元素の含有量が0.1質量%以上である。
[0024]
 ある実施形態において、前記Al基材は、0.1質量%以上7.0質量%以下のMgを含む。
[0025]
 ある実施形態において、前記アノードインヒビターは有機系である。
[0026]
 ある実施形態において、前記エッチング液は、前記Al基材の表面に皮膜を生成する化合物を含む。
[0027]
 ある実施形態において、前記エッチング液は有機酸を含む。酸およびアノードインヒビターとして、いずれも有機系とすることが好ましい。
[0028]
 ある実施形態において、前記工程(c)の前に、アルミナの追加バリア層を形成する工程をさらに包含する。
[0029]
 ある実施形態において、前記工程(b)の前に、前記アルミナ基材の表面に、2次元的な大きさが0.1μm以上100μm以下の複数の第2凸部を有する凹凸形状を付与する工程をさらに包含する。前記凹凸構造において、互いに隣接する第2凸部間の距離は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
[0030]
 本発明の反射防止膜の製造方法は、上記のいずれかに記載の製造方法によって製造された型と、被加工物とを用意する工程と、前記型を用いて、前記被加工物の表面に、前記モスアイ構造を形成する工程とを包含する。
[0031]
 ある実施形態において、前記型と前記被加工物の前記表面との間に光硬化性樹脂を付与した状態で、前記光硬化性樹脂を硬化することによって、前記被加工物の前記表面に、前記モスアイ構造が形成された光硬化性樹脂層を形成する工程を包含する。

発明の効果

[0032]
 本発明によると、モスアイ構造を形成するための型としてそのまま用いることができる、陽極酸化膜が形成されたAl基材の型を製造する方法が提供される。

図面の簡単な説明

[0033]
[図1] (a)~(e)は、本発明による実施形態のモスアイ用型の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
[図2] (a)は本発明による実施形態の製造方法によって得られたポーラスアルミナ層の表面のSEM像を示す図であり、(b)は従来の製造方法によって得られたポーラスアルミナ層の表面のSEM像を示す図である。
[図3] (a)および(b)は、Al基材の表面に皮膜を生成する化合物の作用を説明するための模式図である。
[図4] (a)は、アルミナのバリア層に局所的に薄い部分が原因でピットが形成される様子を模式的に示す図であり、(b)は追加バリア層16を形成することによってピットの形成を防止できることを説明するための模式図である。
[図5] (a)および(b)は、不純物元素を含むAl基材を用いると、ピット(窪み)が形成されるという問題の発生原因を説明するための模式図である。

発明を実施するための形態

[0034]
 以下、図面を参照して、本発明による実施形態のモスアイ用型の製造方法を説明する。
[0035]
 まず、図5(a)および(b)を参照して、本発明によって解決することが可能になった、上述した不純物元素を含むAl基材を用いると、ピット(窪み)が形成されるという問題の発生原因を説明する。
[0036]
 図5(a)は、不純物元素19を含むAl基材18を用いて、ポーラスアルミナ層(陽極酸化膜)10を形成し、細孔12を拡大するためのエッチング工程を行った際に、細孔12に比べて大きなピット(窪み)13が形成されている様子を模式的に示す断面図である。ピット13は、不純物元素19の近傍に形成される。不純物元素19は、Al基材18のアルミニウム結晶粒間の粒界に偏析しており、ピット13は粒界に集中的に形成される(後述の図2(b)参照)。
[0037]
 ピット13は、図5(b)に模式的に示すように、局部電池反応によって形成されると考えられる。例えば、不純物元素19としてFeを含む場合、Feの標準電極電位(-0.44V)はAlの標準電極電位(-1.70V)よりも高いので、Feがカソードとなり、Alがエッチング液中にアノード溶解する。1回のエッチング工程によって、直径が1μm程度のピット13が多数形成されるので、陽極酸化とエッチングとを繰り返し行っている間に、ピット13は更に拡大し、所望のモスアイ用型を得ることはできない。
[0038]
 本発明による実施形態の型の製造方法は、上記のピットの生成を抑制する。図1(a)~(e)は、本発明による実施形態の型の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
[0039]
 まず、図1(a)に示すように、Alの含有量が99.99質量%未満のAl基材18を用意する。不純物元素としては、Fe、Si、Cu、Mn、Zn、Ni、Ti、Pb、SnおよびMgからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、特にMgが好ましい。本発明者の検討によると、エッチング工程におけるピット(窪み)が形成されるメカニズムは、局所的な電池反応であるので、理想的にはAlよりも貴な元素を全く含まず、卑な金属であるMg(標準電極電位が-2.36V)を不純物元素として含むAl基材を用いることが好ましい。Alよりも貴な元素の含有率が10ppm以下であれば、電気化学的な観点からは、当該元素を実質的に含んでいないと言える。Mgの含有率は、全体の0.1質量%以上であることが好ましく、7.0質量%以下の範囲であることが好ましく、約3.0質量%以下であることがさらに好ましい。Mgの含有率が0.1質量%未満では十分な剛性が得られない。一方、含有率が大きくなると、Mgの偏析が起こり易くなる。モスアイ用型を形成する表面付近に偏析が生じても電気化学的には問題とならないが、MgはAlとは異なる形態の陽極酸化膜を形成するので、不良の原因となる。不純物元素の含有率は、Al基材18の形状、厚さおよび大きさに応じて、必要とされる剛性および/または加工性に応じて適宜設定すればよい。例えば圧延加工によって板状のAl基材を作製する場合には、Mgの含有率は約3.0質量%が適当であるし、押出加工によって円筒などの立体構造を有するAl基材を作製する場合には、Mgの含有率は2.0質量%以下であることが好ましい。Mgの含有率が2.0質量%を超えると、一般に押出加工性が低下する。
[0040]
 なお、陽極酸化工程に供する前に、必要に応じて、Al基材18の表面を清浄化する。例えば、Al基材18の表面を陽極酸化することによってAl基材18の表面に形成したポーラスアルミナ層(陽極酸化膜)を除去する。
[0041]
 次に、図1(b)に示すように、Al基材18の表面を陽極酸化し、表面に細孔12を有するポーラスアルミナ層10を形成する。陽極酸化の条件および時間を制御することによって、細孔の大きさ、生成密度、細孔の深さ、配列の規則性などを制御する。例えば、20℃の0.1M蓚酸水溶液で40秒間、80Vの電圧を印加することによって、隣接する細孔間の距離が190nmで、厚さが約100nmのポーラスアルミナ層10が得られる。
[0042]
 次に、図1(c)に示すように、細孔12を有するポーラスアルミナ層10をエッチング液に接触させることによって所定の量だけエッチングすることにより細孔12の孔径を拡大する。ここでウェットエッチングを採用することによって、細孔壁およびバリア層をほぼ等方的に拡大することができる。エッチング液の種類・濃度、およびエッチング時間を調整することによって、エッチング量(すなわち、細孔12の大きさおよび深さ)を制御することが出来る。
[0043]
 エッチング液としては、例えば10質量%の燐酸や、蟻酸、酢酸、クエン酸などの有機酸の水溶液を用いることができる。
[0044]
 ここで、エッチング液にアノードインヒビターを混合することが好ましい。アノードインヒビターを混合することによって、ピットの形成を抑制することができる。Al基材18に含まれる不純物元素がMgの場合であっても、他の不純物元素が混入するおそれもあり、量産の安定性の観点から、アノードインヒビターを混合したエッチング液を用いることが好ましい。アノードインヒビターは、アノードとなるAlに吸着し、電極電位を平準化することによって、アルミニウムがアノード溶解することを防止する。
[0045]
 アノードインヒビターの効果を有する無機イオンとしては、CrO 4 2-,NO 2 -,WO 4 3-,MoO 4 3-,SO 3 2-,SiO 2 2-を例示することができる。アノードインヒビターの効果を有する有機化合物としては、チオフェノール、メルカプタン、チオクレゾール、サルファイド、オキシサルファイド、アルデヒド、ケトンを例示することができる。アノードインヒビターの濃度は、酸およびアノードインヒビターの種類に応じて適宜設定される。エッチング液の管理コスト等の観点から、エッチング液に含まる酸およびアノードインヒビターのいずれも有機系とすることが好ましい。
[0046]
 この後、図1(d)に示すように、再び、Al基材18を部分的に陽極酸化することにより、細孔12を深さ方向に成長させると共にポーラスアルミナ層10を厚くする。ここで細孔12の成長は、既に形成されている細孔12の底部から始まるので、細孔12の側面は概ね階段状になる。
[0047]
 さらにこの後、必要に応じて、図1(e)に示すように、ポーラスアルミナ層10をアルミナのエッチング液に接触させることによってさらにエッチングすることにより細孔12の孔径をさらに拡大する。エッチング液としては、ここでも上述したエッチング液を用いることが好ましく、現実的には、同じエッチング浴を用いればよい。
[0048]
 上記の一連のプロセスは、陽極酸化工程で終わることが好ましく、図1(e)のエッチング工程を行った場合には、さらに陽極酸化工程を行うことが好ましい。陽極酸化工程で終わる(その後のエッチング工程を行わない)ことによって、細孔12の底部を小さくすることができる。即ち、得られたモスアイ用型を用いて形成されるモスアイ構造の凸部の先端を小さくすることができるので、反射防止効果を高めることができる。
[0049]
 このように、上述した陽極酸化工程(図(b))およびエッチング工程(図(c))を繰り返すことによって、所望の凹凸形状を有する細孔(微細な凹部)12を備えるポーラスアルミナ層10が得られる。陽極酸化工程およびエッチング工程のそれぞれの工程の条件を適宜設定することによって、細孔12の大きさ、生成密度、細孔の深さと共に、細孔12の側面の階段形状を制御することが出来る。
[0050]
 ここでは、陽極酸化工程とエッチング工程とを交互に行う例を説明したが、陽極酸化工程とエッチング工程との間、あるいはエッチング工程と陽極酸化工程との間に、洗浄工程やその後に乾燥工程を行っても良い。
[0051]
 図2(a)に、本実施形態の製造方法によって得られたポーラスアルミナ層の表面のSEM像を示す。Al基材としては、FeおよびSiを合計で500ppm含むものを用いた。Al基材は、直径200mm、長さ500mm、厚さ7mmの円筒形状のものを用いた。Al基材を、20℃の0.1M蓚酸水溶液で40秒間、80Vの電圧を印加することによって陽極酸化した後、60℃で6.2質量%の燐酸および2.7質量%のクロム酸を含むエッチング液で120分間エッチングした。
[0052]
 比較のために、図2(b)に、従来の製造方法によって得られたポーラスアルミナ層の表面のSEM像を示す。上記と同じAl基材を用いて、同じ条件で陽極酸化した後、60℃で10質量%の燐酸を含むエッチング液(アノードインヒビターを含まない)を用いて30分間エッチングした。
[0053]
 図2(b)から分かるように、従来の製造方法によって得られたポーラスアルミナ層の表面は、多数のピットが形成されている。ピットは、アルミニウムの結晶粒の粒界に集中している。なお、粒界に不純物が偏析していることは、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX分析)によって確認した。
[0054]
 図2(a)を図2(b)と比較すれば明らかなように、エッチング液にアノードインヒビターを混合することによって、ピットの発生が抑制されている。アノードインヒビターの添加効果が確認されたことから、逆に、ピットが発生するメカニズムが上述の局部電池反応によるアノード溶解であるということができる。
[0055]
 エッチング液にアノードインヒビターとともに、またはアノードインヒビターに代えて、Al基材の表面に皮膜を生成する化合物を混合してもよい。
[0056]
 例えば、アノードインヒビターであるクロム酸は、図3(a)および(b)に示すように、皮膜14を形成する作用をも有している。エッチング工程においてアルミナがエッチングされアルミニウムが露出される(エッチング液と接触する)と、水酸化アルミニウムが生成される。従って、アルミニウムが露出された部分の近傍ではエッチング液のpHが上昇するので、下式で表される平衡が右に偏る。その結果、アルミニウムが露出された部分にCrPO 4膜が形成され、ピットの形成が抑制される。
 Al+CrO 3+2H 3PO 4⇔AlPO 4+CrPO 4+3H 2
[0057]
 Al基材の表面に皮膜を形成する性質を有するエッチング液の他の例として、2質量%燐酸に3質量%等量の燐酸亜鉛および1質量%等量の沸酸を混合したエッチング液を挙げることができる。アルミナはこのエッチング液に溶解し、細孔が拡大されるが、第3燐酸亜鉛およびフッ化アルミニウムがアルミニウムの表面に析出して皮膜となり、ピットの形成を抑制する。エッチング液中において、次式で表される反応が生じる。
 3Zn(HPO 42+2Al+3O+6HF→Zn 3(PO 42+2AlF 3+4H 3PO 4+3H 2
[0058]
 このエッチング液中に10分間浸漬すると、ピットが形成されることなく、微細な凹部(細孔)を拡大することができる。
[0059]
 このような性質を有するエッチング液として、上記の他に、フルオロジルコニウム酸/燐酸/沸酸混合液、フッ化チタン酸/燐酸/沸酸混合液、燐酸/n-ブチルアルコール/イソプロピルアルコール混合液などを挙げることができる。
[0060]
 ピットは、上述したように、アルミニウムのアノード溶解によって主に形成される。しかしながら、図4(a)に示すように、アルミナのバリア層(細孔12の底からAl基材の表面までの部分)に局所的に薄い部分(図4(a)中の厚さd 0の部分)が存在すると、エッチング工程において、バリア層が薄い部分が先に除去され、Al基材の表面にエッチング液が到達し、ピットが形成される場合もあると考えられる。
[0061]
 この原因によるピットの形成を防止するためには、図4(b)に示すように、エッチング工程(図1(c)および/または(e))の前に、アルミナの追加バリア層16を形成する工程を追加してもよい。すなわち、図4(b)に示すように、バリア層の厚さdを大きくすればよい。
[0062]
 アルミナに細孔が形成されるのは、酸またはアルカリ性の電解液(陽極酸化を行うための液)中にアルミナが溶解するためである。ここで、隣接する細孔12の平均間隔をpとするとバリア層の厚さは概ねp/2になることが知られている。電解液を中性かやや酸性側にすると、アルミナの溶解が起こらないので、細孔を形成させることなく陽極酸化を行うことができる。このとき、陽極酸化によって形成されるアルミナ層の厚さ(追加バリア層16の厚さ)は、陽極酸化の電圧で決まり、最大で1.4nm/Vである。
[0063]
 例えば、図1を参照して説明した型の製造方法において、最初の陽極酸化工程(図1(b))の後で、次のエッチング工程(図1(c))の前に、20℃で1質量%の硼酸水溶液中で200Vの電圧を10分間印加して陽極酸化する。このときに形成される追加のバリア層16(図4(b))は、体積換算で、既に存在するバリア層の下のAl部分(図4(a)のAl基材18)に6割、Al部分の上に4割合の比率で形成される。Al部分はバリア層の下の全面にあるのに対して、細孔はバリア層の下の一部分にのみ存在するので、陽極酸化が進行するにつれて細孔が埋まるように見える。このため、細孔の埋まる量を見積もっておき、あらかじめ最初の陽極酸化工程の時間を長くしておく。この追加バリア層の形成工程の後、例えば、60℃で10質量%燐酸に30分間浸漬して、細孔の拡大処理を施しても、ピットは発生しない。
[0064]
 なお、追加バリア層16を形成した後のバリア層の厚さd(図4(b)参照)は、隣接する細孔12の平均間隔pの半分(p/2)以下でなければならない。なぜならば、エッチングは等方的に進むので、上記の関係はエッチング後も同じである。従って、次の陽極酸化工程において、細孔を成長させるためには、バリア層の厚さはp/2未満である必要がある。すなわち、隣接する細孔12の平均間隔pが400nmであれば、バリア層の厚さdは200nm未満である。
[0065]
 このようなバリア層の追加が可能な電解液は、中性か中性から若干酸性側のものであり、特にpH5.1付近がよい。硼酸の他に、酒石酸アンモニウム、硼酸アンモニウムなどを用いることができる。
[0066]
 本発明による実施形態の型の製造方法によると、モスアイ構造を形成するための型としてそのまま用いることができる、陽極酸化膜が形成されたAl基材で形成された型を得ることができる。Al基材は不純物元素を含むので、十分な剛性および/または加工性(例えば切削加工性)を有する。従って、例えば、ロール・ツー・ロール法によってモスアイ構造をフィルム(例えばPETフィルム)の表面に形成するための、Al基材(円柱状または円筒状)の型を形成することができる。モスアイ構造としては、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数の凸部を有することが好ましく、互いに隣接する凸部間の距離は30nm以上600nm未満であることが好ましい。
[0067]
 なお、上述したように、モスアイ構造(ミクロ構造)に加えて、モスアイ構造よりも大きな凹凸構造(マクロ構造)を設けることによって、反射防止膜(反射防止表面)にアンチグレア(防眩)機能を付与することができる。上記陽極酸化工程(図1(b))の前に、Al基材18の表面に、アンチグレア機能を発揮する凹凸構造を形成するための形状を付与しておけば、上記の製造方法によって、アンチグレア機能を発揮する凹凸構造にモスアイ構造が重畳された表面を形成するための型を製造することができる。アンチグレア機能を発揮する凹凸構造は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが0.1μm以上100μm以下の複数の凸部を有することが好ましく、互いに隣接する凸部間の距離は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
[0068]
 アンチグレア機能を発揮する凹凸構造を形成するための形状は、サンドブラストのような機械的な方法や、塩酸または沸酸を用いたエッチング方法によってAl基材18の表面に付与することができる。もちろん、上記の2つの方法を組み合わせてもよい。
[0069]
 上述のようにして製造された型を用いて、モスアイ構造を有する反射防止膜を形成することができる。モスアイ用型を用いた反射防止膜の製造方法は、公知の方法を広く採用できる。
[0070]
 例えば、モスアイ用型と被加工物の表面との間に光硬化性樹脂を付与した状態で、光硬化性樹脂を硬化することによって、被加工物の表面に、モスアイ構造が形成された光硬化性樹脂層を形成してもよい。モスアイ用型としてロール状のものを用意すれば、高分子フィルム(例えばPETやTAC)の表面上に、ロール・ツー・ロール法を用いて反射防止膜を高い量産効率で形成することができる。

産業上の利用可能性

[0071]
 本発明は、表示装置などの光学素子をはじめ、反射防止が望まれるあらゆる用途に用いることができる。

符号の説明

[0072]
 10  ポーラスアルミナ層
 12  細孔(微細な凹部)
 13  ピット
 14  皮膜
 16  追加バリア層
 18  Al基材

請求の範囲

[請求項1]
 表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数の第1凸部を有するモスアイ構造を表面に形成するための型の製造方法であって、
 (a)Alの含有量が99.99質量%未満のAl基材を用意する工程と、
 (b)前記Al基材を部分的に陽極酸化することによって、複数の微細な凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程と、
 (c)前記工程(b)の後に、前記ポーラスアルミナ層を、アノードインヒビターを含むエッチング液に接触させることによって、前記ポーラスアルミナ層の前記複数の微細な凹部を拡大させる工程と、
 (d)前記工程(c)の後に、さらに陽極酸化することによって、前記複数の微細な凹部を成長させる工程と、
を包含する、型の製造方法。
[請求項2]
 前記工程(d)の後に、前記工程(c)および前記工程(d)をさらに行う、請求項1に記載の型の製造方法。
[請求項3]
 前記Al基材は、Fe、Si、Cu、Mn、Zn、Ni、Ti、Pb、SnおよびMgからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含む、請求項1または2に記載の型の製造方法。
[請求項4]
 前記Al基材は、標準電極電位がAlよりも高い元素の含有量が10ppm以下で、標準電極電位がAlよりも低い元素の含有量が0.1質量%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項5]
 前記Al基材は、0.1質量%以上7.0質量%以下のMgを含む、請求項4に記載の型の製造方法。
[請求項6]
 前記アノードインヒビターは有機系である、請求項1から5のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項7]
 前記エッチング液は、Al基材の表面に皮膜を形成する化合物を含む、請求項1から6のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項8]
 前記エッチング液は有機酸を含む、請求項1から7のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項9]
 前記工程(c)の前に、アルミナの追加バリア層を形成する工程をさらに包含する、請求項1から8のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項10]
 前記工程(b)の前に、前記アルミナ基材の表面に、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが0.1μm以上100μm以下の複数の第2凸部を有する凹凸形状を付与する工程をさらに包含する、請求項1から9のいずれかに記載の型の製造方法。
[請求項11]
 請求項1から10のいずれかに記載の製造方法によって製造された型と、被加工物とを用意する工程と、
 前記型を用いて、前記被加工物の表面に、前記モスアイ構造を形成する工程と
を包含する、反射防止膜の製造方法。
[請求項12]
 前記型と前記被加工物の前記表面との間に光硬化性樹脂を付与した状態で、前記光硬化性樹脂を硬化することによって、前記被加工物の前記表面に、前記モスアイ構造が形成された光硬化性樹脂層を形成する工程を包含する、請求項11に記載の反射防止膜の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]