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1. (WO2007013287) VALVELESS MICROPUMP
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明 細書

技術分野

[0001] この発明は,例えば,医療分野や化学分野で使用される流路に流体を流すための バルブレスマイクロポンプに関する。

背景技術

[0002] 現在では,ヒトゲノムが全て解明され,テーラーメイド医療の実用化に向け盛んに研 究されている。この療法の実現には全ての患者に DNA検査を行う必要があるが,現 在の技術ではこの検査に数日という長期間が力かっている。そこで,マイクロ TAS ( μ -トータル 'アナリシス 'システム)又は Lab- on- a- chip (ラブ—オン—アーチイッブ)と 呼ばれる小型の分析装置の開発が急務となっている。マイクロ TASとは,反応部,計 測部,ポンプ部等を小型化し,全てを 1つの基板上に設置することによって,これまで より一層短時間の分析を可能にするものである。該小型分析装置は,チップ上に全 ての分析システムを搭載し,装置自体の小型化を計ることによって反応時間を抑えて 検査時間を短縮するものである。

[0003] 従来,マイクロポンプとしては,一方向流れにのみ開く逆止弁を利用したもの,渦巻 きポンプのようなロータ等の回転部を持つターボ型,幾何的に複雑な形状を持つもの が開発されてきた。マイクロスケールについては,支配力の変化によって慣性力等の 体積力よりも粘性力や摩擦力の面積力が支配的になるために,マイクロポンプに可 動部や回転部の機構を備えていると,その部分の損傷が原因となってマイクロポンプ の短寿命化が問題になる。また,マイクロポンプが機械的な機構や複雑な形状を備 えていると,部品点数が増え,部品や部材の加工やそれらの組立てが困難になると いう問題がある。また,マイクロポンプとしては,各種のディフューザ'ノズル形状を用 いたものが知られているが,これらを検討すると,ディフューザ'ノズル形状カゝら流路と 圧力室の間に急拡大形状,又は急縮小形状に構成されている。流路抵抗差を利用 するマイクロポンプについては,これらの形状の流路の組み合わせ形状は,振動流 の流れ方向の変化にぉ、て互、の効果を打ち消し合うために非効率的であることが

分かっている。

[0004] 従来,マイクロポンプとして,圧力室又は圧力室につながる流路にダイアフラム面に 平行な面内で少なくとも一対の突起ブロックを設けたものが知られてヽる。該マイクロ ポンプは,一部分が振動するダイアフラムを有するシリコンで構成された第 1基板と, 該第 1基板に対向して接合されたシリコンで構成された第 2基板とから成り,第 2基板 のダイアフラムに対向する位置に圧力室を形成し,該圧力室につながるノズルを圧 力室に向力つて流路幅が狭くなる形に形成し,圧力室につながるノズルを圧力室か ら離れるに連れて流路幅が狭くなる形に形成し,両ノズルが最も狭まった位置にダイ ァフラム面に平行な面に投射した形状が両ノズルの内壁面を延長するように,ノズル 中心線に平行に延びる一対の突起部を設けたものである(例えば,特許文献 1参照)

[0005] また,マイクロポンプとして,簡単な構成で微小量の液体を正逆両方向に搬送する ものが知られている。該マイクロポンプは,流路抵抗が差圧に応じて変化する第 1流 路,差圧の変化に対する流路抵抗の変化の割合が第 1流路よりも小さい第 2流路, 第 1流路と第 2流路とに接続された加圧室,及び加圧室の内部の圧力を変化させる ための圧電素子を有し,加圧室の内部の圧力を圧電素子で変化させることにより,第 1流路の流路抵抗と第 2流路の流路抵抗との比を異ならせることができ,差圧の変化 に対する流路抵抗の変化を利用して,正逆両方向に液体を搬送するものである(例 えば,特許文献 2参照)。

[0006] また,マイクロポンプとして,中間層シリコン基盤の液体出口に相当する基板表面に 逆止弁を有するものが知られている。該マイクロポンプは,液体の導出口穴と接合面 に凹部を有するガラス基板,液体の導入出口穴を有する中間層シリコン基板,及びメ サとダイアフラムを有するシリコン基板を積層して完全機密接合した構造カゝら成り,中 間層シリコン基板の液体出口側に相当する基板表面に逆止弁を有し,ダイアフラム を可動させ,逆止弁を開閉させるァクチユエータをダイァフラムの下部に配設したも のである(例えば,特許文献 3参照)。

[0007] また,従来知られているマイクロポンプとして,ハウジング部とロータ部とを備え,口 ータ部がロータ,可動べーン,ロータと可動べ一ンとを連結する板ばねを有し,これら がー体構造に構成されているものである(例えば,特許文献 4参照)。

特許文献 1:特開平 10— 110681号公報

特許文献 2:特開 2005 - 98304号公報

特許文献 3:特開平 11― 257233号公報

特許文献 4:特開 2004 - 11514号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0008] ところで,医療分野やィ匕学分野において,分析時間の短縮のためにマイクロ TAS の開発が進んでいる。マイクロ TASの実現には,マイクロ流体デバイスの開発が必要 になる。その要求の中でも流体送りを行うマイクロポンプの開発は,大きな課題の一 つである。マイクロ TASに用いられるマイクロポンプには,微小流量を液送する性能 が求められている。流路で搬送される流体が,例えば,タンパク質等の粒子を含む二 相流の流体である場合には,流路の内部で流体が詰まらない構造であること,マイク 口化に伴う部品や部材の加工,それらの組立て等が容易に行えることが求められて いる。従来,マイクロポンプとしては,バルブ型やターボ型のものが既に上記のように 開発されているが,小型化に伴って微粒子,不純物等の異物が析出し,異物が析出 することで,スケール作用による摩擦力の増大によって発生するマイクロポンプが短 寿命になったり,複雑な構造のため部品の加工や部品の組立てのコストが大きな問 題になり,マイクロポンプの実用化への障害になっていた。

[0009] そこで,マイクロ TASに適用されるバルブレスマイクロポンプとして, 1チップ上に全 ての分析システムを搭載し,機器の小型化を図り,反応時間や検査時間を短縮化す ることに応えるには如何に機器を形成したら良いかの課題がある。本発明者は,マイ クロポンプについての上記の問題を解決するため,マイクロ TASに用いられるマイク 口ポンプを流体力学,流体機械の技術分野力も開発を行うことを試みた。本発明者 は,上記の現象を考慮して,ヒトの呼吸や高頻度換気法と呼ばれるヒトの肺に対する 負担の少な!/、とされて、る人工呼吸法である高頻度換気法のメカニズムに着目し, 非常にシンプルな流路で流体に振動流を与えることによって,流体をスムーズに送 液できることが分力つた。この手法は,一般に行われる人工呼吸法と異なり,気道容 量の ΐΖΐο以下の極めて少量の空気を 1分間に数 100回の頻度で振動させることに よって肺内部のガス交換を行うものである。これより非対称流路に脈動流を与えれば ,流れが発生すると予測することができる。そこで,非対称流路を簡単な構造のディ フューザとし,流体に脈動流を与えることで流体の流れを発生させるマイクロポンプと することを試みた。ディフューザ形状の流路であれば,小型化することが容易に達成 でき,またバルブ等の要素を持たな、ため摩擦によりマイクロポンプが壊れることもな い。本発明者は,これらの考えを基にしてディフューザ型バルブレスマイクロポンプを 開発して製作し,それの評価を行うこととした。

[0010] 本発明者は,マイクロポンプについての開発に当たって,これまでの予測では,一 方向の流れの発生が脈動流による流路の吐き出し,吸い込み流れの時間的'空間的 な非対称さが要因であり,渦が流れの誘起に大きく関与していると予測した。しかしな がら,今までのマイクロポンプでは,流量が OmlZminの時に,揚程が 1. 4mm又は 0 mmの時に流量が 1. 9mlZminとなり,実用的な性能に乏し力つた。その原因として ,ディフューザ'ノズルの流路形状は,急拡大形状と急縮小形状とを組み合わせた全 体的にクサビ形状であり,これらの 2つの形状要素が互いに脈動時の流動抵抗を打 ち消しあっていると思料される。また,マイクロポンプは,複数の流体機械要素が組み 合わさっているため,流体の送りの定量的な条件整理の妨げになると考えられる。そ こで,本発明者は,マイクロポンプとして,これらの問題を満たす流路を開発した。

[0011] この発明の目的は,上記の問題を解決するため,ヒトの呼吸や人工呼吸法のメカ二 ズムに着目し,マイクロポンプを流体力学や流体機械の技術を応用して開発すること であり,よりシンプルなディフューザ形状のみの流路に形成し,該流路における流体 に振動流を与えることによって液体と該液体に含まれる微粒子等との流体を広い流 路力 狭い流路へと搬送するものであり,断面矩形状流路に断面積が滑らかに変化 するディフューザ開き角 10° 〜90° のディフューザ形状の流路を設け,該流路に連 通する振動付勢手段を備えた体積変動室を設け,振動付勢手段によって体積変動 室の流体の圧力変動を流路における流体の振動流に変化させ,流体をスムーズに 流路で流動させることを特徴とするバルブレスマイクロポンプを提供することである。 課題を解決するための手段

[0012] この発明は,流体流れの流路にディフューザ形状流路を形成し,前記流路をディフ ユーザ流れの入口側を狭、流路に且つディフューザ流れの出口側を広!、流路に形 成し,前記狭い流路に連通する体積変動室を配設し,前記体積変動室に振動付勢 手段を設け,前記振動付勢手段を付勢して発生した振動によって,前記体積変動室 内の流体に圧力変動を発生させ,前記流体の前記圧力変動を前記流体の振動流に 変換し,前記流路における前記流体の前記振動流によって前記流路に前記流体の 一方向流れを発生させることを特徴とするバルブレスマイクロポンプに関する。

[0013] このバルブレスマイクロポンプにおいて,前記振動付勢手段は,圧電素子である。

また,前記狭い流路には,前記ディフューザ流れの前記入口側として機能し且つノズ ル流れの出口側として機能する流路管が接続され,また,前記広い流路には,前記 ディフューザ流れの前記出口側として機能し且つ前記ノズル流れの入口側として機 能する流路管が接続されているものである。特に,このバルブレスマイクロポンプは, 前記振動付勢手段を付勢して前記流体に前記振動流を与えると,前記流体は,前 記ディフューザ流れよりも流路抵抗が低!ヽ前記ノズル流れで流れ,前記広!ヽ流路か ら前記狭、流路へと搬送されるポンプ機能として作動されるものである。前記振動付 勢手段を付勢することとしては,例えば,電圧や電流を印加することで行われる。

[0014] このバルブレスマイクロポンプでは,前記圧電素子は,前記体積変動室に直接配 設されている。更に,前記体積変動室は,前記流路における前記ディフューザ形状 流路に近接した位置,言い換えれば,前記狭い流路と前記広い流路との境界で前 記狭ヽ流路側に連絡流路によって連通するように配設することが好ま U、ものである

[0015] また,このバルブレスマイクロポンプにおいて,前記ディフューザ形状流路のディフ ユーザ開き角度は, 10° 〜90° の範囲であり,特に,前記ディフューザ形状流路の 前記ディフューザ開き角度は, 50° 前後の領域であることが好ましく,該領域で最高 の流体送り効率を示すことができるものである。

発明の効果

[0016] このバルブレスマイクロポンプは,上記のように,ディフューザ形状流路が流れ方向 によって異なる流路抵抗を示す非対称形状等の流路に構成されており,言い換えれ ば,同じ力で流体を押し流したとしてもディフューザ流れとその流れに逆方向のノズ ル流れとでは流体の流量が異なる状態になるが,そこに振動流を与えれば,ディフユ 一ザ流れよりもノズル流れが低ヽ流路抵抗を持っため,流れ易、方向即ちノズル方 向に流体が流れ,流体を搬送するポンプとしての機能を果たすことができる。即ち,ノ ズル方向は断面積が小さく変化する方向であって,体積変動室の流体の圧力変動 が振動流に変化し,流体がノズル方向にスムーズに流動されることになり,圧電素子 等の振動付勢手段を付勢すれば,流体はノズル流れの方向,即ち,広い流路から狭 ぃ流路へと流れる。ここでは,ディフューザ流れは狭い流路から広い流路への流体流 れであるのに対し,ノズル流れは広!、流路から狭!、流路への流体流れである。

図面の簡単な説明

[図 1]この発明によるバルブレスマイクロポンプの一実施例を示し,その動作原理示 す説明図である。

[図 2]図 1のバルブレスマイクロポンプにおける A— A断面を示す断面図である。

[図 3]図 2のバルブレスマイクロポンプにおける符号 B領域の拡大図である。

[図 4]マイクロポンプについてのディフューザ流れを示す説明図である。

[図 5]マイクロポンプについてのノズル流れを示す説明図である。

[図 6]このバルブレスマイクロポンプの動作概要を示す説明図である。

[図 7]このバルブレスマイクロポンプを組み込んだ性能試験装置の一例を示す説明図 である。

[図 8]バルブレスマイクロポンプにおいて,種々のディフューザ開き角度における流量 に対する揚程の関係を示すポンプ性能曲線である。

[図 9]ノレブレスマイクロポンプにおいて,ディフューザ開き角度に対する最大流量の 関係を示す曲線である。

[図 10]ノレブレスマイクロポンプにおいて,駆動周波数と流量との関係を示す周波数 応答線図である。

[図 11]バルブレスマイクロポンプにおいて,流路に体積変動室を連通する連絡流路 の設置位置に対する流量の関係を示す線図である。

符号の説明

2 流路

3 ディフーザ流れの入口( =ノズル流れの出口 )

4 ディフューザ流れの出口( =ノズル流れの入口 )

5 狭い流路

6 広い流路

7 圧電素子

8 体積変動室

9 連絡流路

10 流体

12 ディフューザ形状流路

13 流路形成板

14, 15 流路管

20 マイクロポンプ

a ディフューザ開き角度

発明を実施するための最良の形態

以下,図面を参照して,この発明によるバルブレスマイクロポンプの実施例につい て説明する。この発明によるバルブレスマイクロポンプは,流路 2の形状に特徴を有 するものであって,例えば,非対称形状であるディフューザ ·ノズル形状の流路抵抗 差を用いて流れを発生させ,バルブ等の可動部を流路内部に設けることなく,可動 部を設けないことにより従来のマイクロポンプの問題であった可動部の損傷等の問題 を避け,マイクロポンプの高寿命化を達成したものである。図 1に示すように,このバ ルブレスマイクロポンプは,特に,アクリル板,ステンレス板等の流路形成部材 1によ つて形成された流体流れの流路 2においてその途中をステンレス板で形状が形成さ れた非対称形状のディフューザ形状流路 12に形成し,流路 2はディフューザ形状流 路 12を挟んでディフューザ流れの入口 3 ( =ノズル流れの出口)側を狭、流路 5に且 つディフューザ流れの出口 4 ( =ノズル流れの入口 )側を広ヽ流路 6に形成し,狭!ヽ 流路 5に連絡流路 9を通じて連通した体積変動室 8を設け,体積変動室 8に振動付 勢手段として圧電素子 7を設けたことを特徴とする。ディフューザ形状流路 12の長さ は,図 3において,符号 LDで示されている。流路 2は,図 1では, 2枚のアクリル板と 1 枚のステンレス板から構成され,ディフューザ流れの入口 3を形成するディフューザ 入口管の流路管 14を取り付ける入口孔 22とディフューザ流れの出口 4を形成するデ ィフューザ出口管の流路管 15を取り付ける出口孔 23とを形成した流路部材 1A,ディ フューザ形状流路 12の形状に形成された流路形成板 13,及び連絡流路 9を形成し た流路部材 1Bを重ね合わせて形成されている。ここで,ノズル流れ (流量 Q 1 )の場合 には,ディフューザ流れ (流量 Q 2 )と逆方向であるので,ディフューザ入口管の流路 管 14はノズル出口管として機能し,ディフューザ出口管の流路管 15はノズル入口管 として機能する。また,上記にように,流路 2を 2枚のアクリル板と 1枚のステンレス板と 力 形成するのではなく,例えば,流路 2を流路形成板 13を流路部材 1 A又は流路 部材 1Bのいずれ力と一体構造に形成して 2枚の板力も形成することもできる。

[0020] このバルブレスマイクロポンプは,特に,上記構成において,振動付勢手段を付勢 して,具体的には,圧電素子 7に電圧を印加して発生した振動によって,体積変動室 8内の流体 10に圧力変動を発生させ,流体 10の圧力変動を連絡流路 9を通じて流 路 2における流体 10の振動流に変換し,振動流によって流路 2に流体 10の一方向 流れ等の流れを発生させることを特徴とするものである。このバルブレスマイクロボン プは,特に,振動付勢手段の圧電素子 7に電圧を印力!]して,流体 10に振動流を与え ると,流体 10は,ディフューザ流れよりも流路抵抗が低いノズル流れで流れるようにな り,広ヽ流路 6から狭ヽ流路 5へと搬送されるポンプ機能として作動されるものである 。このバルブレスマイクロポンプは,具体的には,体積変動室 8を所定のディフューザ 開き角度 aを持つディフューザ'ノズル形状流路 12の断面積の小さい一端部 11から 0 mn!〜 10mmの距離 LHの位置で流路 2から分岐した連絡流路 9で連通し,体積変 動室 8に圧電素子 7を直接取り付け,圧電素子 7に電圧を一定の周波数を持つ方形 波で印加することにより体積変動室 8内の流体 10に対して振動を発生させ,その振 動により体積変動室 8の流体 10に発生した圧力変動を流路 2における振動流に変化 させ,流路 2を流れる流体 10にスムーズな流動を発生させるものである。

[0021] また,このバルブレスマイクロポンプは,ディフューザ'ノズル形状のみの非常にシン プルな流路構造であり,従来のものに比較して部品点数を大幅に減らし,これまでよ

り良好な部品の加工や組立ての容易性を実現させることができる。更に,このバルブ レスマイクロポンプは,バルブレス機構であるため,小型分析装置に用いる場合に, 粒子等のサンプルがバルブに詰まってスケール等の異物として析出することがなく, その性能を低下させることがない。このノレブレスマイクロポンプは,流路 2の一部を ディフューザ ·ノズル形状のみのシンプルな形状とした点で従来のマイクロポンプとは 形状が大きく異なっている。従来のディフューザ'ノズル形状のマイクロポンプは,ディ フューザ'ノズル形状と流路の境界に急拡大形状や急縮小形状を有し,体積変動室 がこれらの形状の中心に設置されていた。このバルブレスマイクロポンプは,これらの 複雑な形状を廃し,体積変動室 8をシンプルなディフューザ形状流路 12の外側に設 置することにより,体積変動室 8に圧力変動を発生させることによって高効率の流体 送りを可能にしたものである。

[0022] このバルブレスマイクロポンプは,ディフューザ型の構造を有しており,図 6には,こ のバルブレスマイクロポンプの動作原理を示して、る。このバルブレスマイクロポンプ は,流路 2の一部に流れ方向に断面積が変化する部分を設け,体積変動室 8の体積 変動部からの流れをその非対称形状のディフューザ形状流路 12の外部で流出入さ せる。ここでは,図 4に示すように,ディフューザ形状流路 12における流れ方向に従 つて流路断面積が滑らかに広がる流路のことをディフューザ流れと呼び,また,図 5の ような逆方向の場合はノズル流れと称して、る。ディフューザ流れとノズル流れにつ いて,両者の相違は流れ方向であるが,力!]えて,ディフューザ形状流路 12が同じ形 状であっても流れ方向によって異なる流動抵抗を示している。通常,ディフューザ流 れの流動抵抗は,ノズル流れの流動抵抗より大きくなつている。

[0023] 図 4と図 5に示すように,一定の開き角度 aを持ったディフューザ形状流路 12におい て,流体 10の流れに等しい流れエネルギを与えたときのノズル流れの流量を Q 1 (図

5) ,ディフューザ流れ(図 4)の流量を Q 2とする。そして,時間 0〜TZ2までをノズル 流れ, ΤΖ2〜Τまでをディフューザ流れといった脈動流を与えるとき, 1周期 (Τ時間 )の流量 Qは,下記の数 1で示す式に表される。

[0024] [数 1]


ノズル流れよりディフューザ流れの方が大きな流動抵抗を示すため,このときの輸 送方向はノズル方向と予測できる。図 6に示すように左端力もの流れを流路下部の体 積変動部より送り込む。

[0025] 図 1〜図 6を参照して,この発明によるバルブレスマイクロポンプを説明する。図 1に 示すように,このバルブレスマイクロポンプは,流体流れの流路 2において非対称形 状のディフューザ形状流路 12を形成し,流路 2は,ディフューザ形状流路 12を挟ん でディフューザ流れの出口 3 ( =ノズル流れの入口)側を狭い流路 5に,また,ディフ ユーザ流れの入口 4 ( =ノズル流れの出口 )側を広、流路 6に形成し,狭、流路 5に 連絡流路 9を通じて連通した体積変動部を構成する体積変動室 8を設け,体積変動 室 8に振動付勢手段である圧電素子 7を直接配設し,圧電素子 7に電圧を印加して 発生した振動によって,体積変動室 8内の流体 10に圧力変動を発生させ,流体 10 の圧力変動を流体 10に振動流に変換し,その振動流によって流路 2における流体 1 0にスムーズな流れを発生させることを特徴としてヽる。

[0026] 次に,図 1〜図 7を参照して,このバルブレスマイクロポンプの実験について説明す る。まず,上述の構想によってポンプとして機能する力を予備実験にて実証を行う。 流路形成板 13は,厚さ lmmのステンレス板をワイヤ放電カ卩ェにより流路 2の形状に 形成されたものであり,流路形成板 13の上下面に,上蓋であるアクリル板の流路形 成部材 1Aと下蓋であるアクリル板の流路形成部材 1Bとを重ねて流路 2を形成した。 流路形成部材 1 Aにディフーザ流れの出口孔 22 ( =ノズル流れの入口孔)とディフー ザ流れの入口孔 23 ( =ノズル流れの出口孔)を形成し,また,流路形成部材 1Bに連 結通路 9を形成した。流路形成部材 1 Aの出口孔 22にガラス製のディフューザ入口 管 14 ( =ノズル出口管)を取り付け,入口孔 23にガラス製のディフューザ出口管 15 ( =ノズル入口管)を取り付けた。また,アクリル板の流路形成部材 1Bにリング 24を取 り付け,リング 24にピエゾ素子の圧電素子 7を接着し,流路形成部材 1B,リング 24及 び圧電素子 7で囲まれる空所を体積変動部となる体積変動室 8に形成した。これらの アクリル板とステンレス板とを積層して,これらをボルト'ナットで固定した。

[0027] このバルブレスマイクロポンプは,駆動時には,ファンクションジェネレータから一定 の周波数を持つ方形波を増幅回路によって増幅し,その信号を圧電素子 7即ちピエ ゾ素子に与えた。このバルブレスマイクロポンプは,特に,図 1と図 2に示すとおりであ る。また,このバルブレスマイクロポンプに与える条件として,周波数を 35Hz,ディフ ユーザ開き角度 aを 50° ,用いる液体を水とした。流路 2を流れる流量 Qを測定する 場合は,マイクロポンプ 20を垂直にし,一定時間に流出する水をメスシリンダで受け 止めた。揚程 Hを測る場合はマイクロポンプ 20を水平にし,ディフューザ入口管 14の 流入口とディフューザ出口管 15の流出口の水頭差を測った。結果として,マイクロポ ンプ 20の流量 Qが Oml/minの揚程 Hは 43mmとなり,また,揚程 Ommの流量 Qは 1. 7mlZminとなった。マイクロポンプ 20における流路 2におけるディフューザ形状 のみを持つディフューザ形状流路 12は,マイクロポンプ 20に適していることが確認さ れた。

[0028] このバルブレスマイクロポンプの性能試験は,図 7に示す性能試験装置を用いて行 い,その結果は,次のとおりである。

性能試験装置に使用したマイクロポンプ 20は,予備実験に用いたものと同じ構成 である。マイクロポンプ 20には,ディフューザ入口管 14とディフューザ出口管 15が接 続されている。マイクロポンプ 20の性能試験に当たってはストップウォッチ 21を用い て行った。ディフューザ入口管 14の所定の間隔 Lにおいて, CCD (チャージ 'カップ ルド'ディバイス)カメラ 19が設置され, CCDカメラ 19で得た情報はカメラ増幅器 18 で増幅されて VCR (ビデオ'カセット 'レコーダ) 17に入力される。 VCR17の情報は モニタ 16で表示される。性能試験装置で得られた各値は以下のように計測した。揚 程 Hは,上側のガラス製の流路管 14と下側のガラス製の流路管 15との間の距離 hの 垂直方向の上下間距離とし,性能試験装置の傾き角度 Θを変えることで流路管 14と 流路管 15との高さ即ち揚程 Hを調節した。この時,性能試験装置の傾き角度を θ , 上下の流路管 14, 15の距離を hとした時,揚程は H=h' sin 0となる。流量 Qは,流 出側のガラス管にマーキングされた 100mm区間を液界面が走り抜ける様子をストツ プウォッチ 21と一緒に CCDカメラ 19で記録し,その時間 tと区間の距離 L,ガラス管 断面積 Aから流量 Qを求めた。つまり,流量は, Q=L'AZtとなる。周波数 fはファン クシヨンジェネレータで設定した周波数を用いた。

[0029] 次に,このバルブレスマイクロポンプの流量-場程特性曲線について,図 8を参照し て説明する。

ディフューザ入口管 14とディフューザ出口管 15とが成す傾き角度 Θを変化させて 流量 Qと揚程 Hの関係を計測した。与えた条件は,周波数を 60Hz,電圧を 250V, 用いた流体は水である。ディフューザ開き角度 aは 10° , 30° , 50° , 70° , 90° のそれぞれについて行った。性能試験装置の角度 Θを変化させることによって揚程 を Ommから 2mm刻みで上げてそのときの流量 Qを計測した。計測結果を図 8に示す 。図 8に示すように,流量 Qと揚程 Hはほぼ直線の関係にあることが分力つた。即ち, ディフューザ開き角度 aは 10° 〜90° の範囲で所望の流れが発生することが分かつ た。特に,ディフューザ形成流路 12のディフューザ開き角度 aは, 50° の場合(四角 印しで示す)が流量 Qが最も効率良く流体送りを達成できることが確認できた。また, 傾きの角度 0が大きくなるに従って,流量 Qが小さくなることが確認できた。従って,こ のバルブレスマイクロポンプは,ディフューザ開き角度 aが 50° 近傍で揚程 Hが低い 方が流量 Qが大きくなることが確認できた。また,図 9には,ディフューザ開き角度 aと 最大流量 Qとの関係が示されている。ディフューザ開き角度 aが 50° 〜70°Cの領域 で流量 Qが 2mlZmin以上となって最高値を示した。従って,図 8の流量-場程特性 曲線と図 9のディフューザ開き角度最大流量の関係線図から考慮すると,このバル ブレスマイクロポンプについては,ディフューザ形状流路 12は,ディフューザ開き角 度 aが 50° に形成されている場合が最も効率良く流体送りができることが確認できた

[0030] また,このバルブレスマイクロポンプの流量-周波数特性について図 10を参照して 説明する。

マイクロポンプ 20の周波数特性を調べるために,周波数を変化させたときの流量 Q を計測した。マイクロポンプ 20に与えた条件は,ディフューザの開き角度 aを 50° , 電圧を 250V,揚程 Hを Omm,用いた流体は水である。なお,このときの揚程 Omm は静止状態力も毛細管現象で界面が上昇した高さを差し引いて 0 (mm)となるように した。ファンクションジェネレータで周波数を 2Hz刻みで変化させ,流量 Qを計測した 。計測結果を図 10に示す。図 10に示すように, 40Hzから 60Hzあたりに流量 Qの 1 つの大きな極大値を持つ分布となった。また, 20Hz付近にも流量 Qの小さな極値が 確認できた。このことから,マイクロポンプ 20では,流量 Qを増加させるため周波数を 40Hz〜60Hzに設定することが好ましいことが分かった。

[0031] 更に,図 11には,このバルブレスマイクロポンプについて,体積変動部を構成する 体積変動室 8と流路 10とを連絡する連絡通路 9の形成位置と,流量 Qとの関係が示 されている。

図 11に示すように,体積変動室 8は,流路 10に連通する連絡流路 9を流路 2にお けるディフューザ形状流路 12に可及的に近接した位置に形成することが好ましいこと が分力つた。即ち,連絡流路 9をディフューザ形状流路 12の端部 11に接して設ける こと〖こよって,流量 Qが最高値, 9mlZminを示した。また,連絡流路 9を,ディフュー ザ形状流路 12の途中や広い流路 6に位置させて流路 2と体積変動室 8を連絡した場 合には流量 Qは最低であり,体積変動室 8を設けた効果は無力つた。従って,連絡流 路 9は,狭、流路 5と広、流路 6との境界の狭、流路 5側に設けることが有効であり, 重要であることが分かる。また,体積変動室 8は,ディフューザ形状流路 12に近接し た狭、流路 5に連通させることが好ま、ことが確認できた。

[0032] このバルブレスマイクロポンプは,上記のとおりであり,シンプルなディフューザ形状 を持つバルブレスマイクロポンプの性能試験にっ、て解明した。これまでのディフユ 一ザ型バルブレスマイクロポンプから改良をカ卩え,より高、性能をもつマイクロポンプ を作製することができ,また,マイクロポンプ 20の性能試験を行うことによって,マイク 口ポンプが持つ性能が明らかになった。

産業上の利用可能性

[0033] この発明によるバルブレスマイクロポンプは,小型で微量操作を可能にし,マイクロ TAS,人工脾臓,人工呼吸等の医療機器,生命工学,化学実験,測定装置等に組 み込むことができ,医療分野,バイオ分野において幅広く活用することができ,また, CPU等の冷却用ポンプ,マイクロ燃料電池の燃料供給ポンプとして適用することが できる。