Processing

Please wait...

PATENTSCOPE will be unavailable a few hours for maintenance reason on Saturday 31.10.2020 at 7:00 AM CET
Settings

Settings

Goto Application

1. JP2002518370 - チオールエステルおよびその使用

Note: Text based on automatic Optical Character Recognition processes. Please use the PDF version for legal matters

[ JA ]
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス学および抗ウイルス治療剤の分野に関する。詳細には、本発明は、新規ファミリーのチオールエステルおよびその使用の開示に関する。
【0002】
(発明の背景)
ウイルス、特に、HIVのようなレトロウイルスは、その感染を処置するために使用される薬物に対して、急速に耐性となり得る。レトロウイルスの極端な順応性は、そのRNAゲノムの転写を担う逆トランスクリプターゼの高い誤差率に起因する。HIVは、このような高変異性ウイルス(hyper−mutable virus)の例である。HIVは、2つの主な種、HIV−1およびHIV−2、に分岐し、その各々は、多くのクレード、サブタイプ、および薬物耐性変異体を有する。
【0003】
ウイルスの薬物耐性株の出現に対処するための戦略には、薬物併用療法が挙げられる(Lange(1996)AIDS 10 Sppl 1:S27−S30)。異なるウイルスタンパク質に対する薬物および同一タンパク質の複数の部位に対する薬物は、一般に、ウイルスの順応性を克服するための戦略として使用される。レトロウイルスに対して、例えば、プロテアーゼインヒビターおよびヌクレオシドアナログ(例えば、ADT、ddI,ddC、およびd4T)を使用する併用療法は、無効となり得る;ウイルスは、比較的短い期間に完全な抵抗性を発現する(Birch(1998)AIDS 12:680−681;Roberts(1998)AIDS 12:453−460;Yang(1997)Leukemia 11 Suppl 3:89−92;Demeter(1997)J.Acquir.Immune Defic.Syndr.Hum.Retrovirol.14(2):136−144;Kuritzkes(1996)AIDS 10 Suppl 5:S27−S31)。さらに、有効な抗レトロウイルスワクチンは現在、入手不可能である(Bolognesi(1998)Nature 399−639;Bangham(1997)Lancet 350:1617−1621)。
【0004】
HIV−1は、約18年前に始まったAIDSの流行の原因である。その後、新たな症例数は、時間が経つにつれて増加している。1994年の終わりまでに、1,025,073件のAIDSの症例がWHOに報告されている。1993年の12月から、症例数の20%増加である(Galli(1995)Q.J.Nucl.Med.39:147−155)。2000年までに、WHOは、世界で、3000万人〜4000件の累積HIV−1感染が存在すると予想している(Stoneburner(1994)Acta Paediatr.Suppl. 400:1−4)。従って、HIV−1のようなレトロウイルスに対して有効な化合物が非常に必要とされている。本発明は、これらおよび他の必要性を満たす。
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、以下からなる群から選択される化学構造を有するチオールエステルを含有する
新規分類の組成物に関する:
テンプレートIおよびテンプレートIIからなる群から選択される式を有するチオールエステルであって、ここで、テンプレートIおよびテンプレートIIが以下の構造を有する:
【0006】
【化8】
ここで、Xは、アルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリール基からなる群から選択される、メンバーであり;R 1は、−Y−Z−であり、
ここで、Yは、−(CH 2m−(ここで、mは、1〜6の整数である)、
【0007】
【化9】
からなる群から選択され、
ここで、Zは、ジアルキルまたはアリールまたはアルキルアリールスルホニウム(Z1)、トリアルキルまたはアリールまたはアルキルアリールアンモニウム(Z2)、トリアルキルまたはアリールまたはアルキルアリールホスホニウム(Z3)、あるいは以下の構造:
【0008】
【化10】
(ここで、R 12、R 13、R 14、R 15、およびR 16は、H−、−C(=O)NH 2、および置換カルボキサミド基からなる群から独立して選択されるメンバーである)
を有するピリジニオ(Z4)からなる群から選択され、あるいは、
1は、アルキル、置換アルキル、−アリール、置換アリール、−アリールアルキル、−Ph−CH 3、アリールアルコキシ、−PhOCH 3、ニトロアリール、−Ph−NO 2、および−(CH 2n−X基(ここで、Xは、ハロゲンであり、そしてnは1〜6の整数である)であり、
2は、−H、−CH 3、−C(=O)NH 2および−C(=O)OCH 3基からなる群から選択され、
3、R 4、およびR 5は、H、ハロゲン、−NO 2、−C(=O)ONH 2、および−C(=O)OCH 3基からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
6は、−H、アルキル、−CH 3、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびアリールアルキル基からなる群から選択され;
7、R 8、またはR 9のいずれかが(O=S=O)−G’(ここで、G’は、−NH 2、−NH−アルキル、−NH−アリール、−NH−アシル、アリールNH 2、ニトロアリール、アリール−NH−アシル、およびアリール−NH−アルキル基からなる群から選択される)であり得ることを除いて、R 7、R 8、R 9、R 10およびR 11はHである;
テンプレートIIIおよびテンプレートIVからなる群から選択される式を有するチオールエステルであって、ここで、テンプレートIIIおよびテンプレートIVが以下の構造を有する:
【0009】
【化11】
ここで、Gは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびアルキルアリール基からなる群から選択され、
6は、−H、アルキル、−CH 3、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびアリールアルキル基からなる群から選択され;
7、R 8、またはR 9のいずれかが、(O=S=O)−G’(ここで、G’は、−NH 2、−NH−アルキル、−NH−アリール、−NH−アシル、アリール−NH 2、ニトロアリール、アリール−NH−アシル、およびアリール−NH−アルキル基からなる群から選択される)であり得ることを除いて、R 7、R 8、R
9、R 10およびR 11はHである;
テンプレートVおよびテンプレートVIからなる群から選択される式を有するチオールエステルであって、ここで、テンプレートVおよびテンプレートVIが以下の構造を有する:
【0010】
【化12】
ここで、nは任意の整数であり、R 2〜R 5、R 6およびR 12〜R 16は上記であり、Yは、上記で定義され、R 17は、−Hまたは−CH 3であり、R 18は、−H、−CH 3、アルキル、アリール、アリールアルキル、またはアミノ酸側鎖であり、ここで、R 18が結合される炭素原子についての立体化学配置は、RまたはSであり得、R 19は、−OH、−NH 2、N−置換アミド窒素、またはエステル基(−OR)である;
以下の構造を有する、テンプレートVIIの式を有するチオールエステル:
【0011】
【化13】
ここで、R 0は、硫黄原子に直接結合した、任意の置換または非置換アリールもしくはヘテロアリール環系であり、
YおよびR 12〜R 16は、上記のように定義さる;ならびに
以下の式を有するピリジニオアルカノイルチオールエステル:
【0012】
【化14】
ここで、mは1〜6の整数であり、nは0または1から6の整数であり、そしてRは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリール、カルボキサミド(carboxamide)、カルボキサミド(carboxamido)、置換カルボキサミド(carboxamide)、置換カルボキサミド(carboxamido)、−NH 2基、および置換−NH 2基からなる群から選択される。
【0013】
代替の実施態様では、チオールエステルにおいて、Xは、−(CH 2m−(ここで、mは1〜6の整数である)、および−CH 2(C=O)NH−からなる群から選択されるメンバーであり;R 1は、−CH 3、−(CH 2n−CH 3、−CH(CH 32、−C(CH 33、−(CH 2n−Cl、−(CH 2n−Br、および−(CH 2n−I基からなる群から選択され;Gは、−CH(CH 32、−C(CH 33、および2,6−ジメチルフェニル基からなる群から選択され;そして、ピリジニオアルカノイルチオールエステルのR基が、−NHC(=O)CH 3、−C 64NO 2、−C 64NHSO 2CH 264NO 2および、−C 64NHCOCH 3基からなる群から選択される。ピリジンニオアルカノイルチオールエステルは、mが整数4であり、そしてnが0であるか、あるいは1または2の整数である構造を有し得る。
【0014】
1実施態様において、本発明のチオールエステルにより、インビトロにおいてジンクフィンガーから金属イオンを解離させることが可能である。別の実施態様において、本発明のチオールエステルは、抗ウイルス活性を有する。
【0015】
本発明は、ジンクフィンガー含有タンパク質から金属イオンを解離させるための方法を提供し、この方法は、ジンクフィンガーを本発明のチオールエステルと接触させる工程を含む。代替の実施態様において、金属イオンは、亜鉛イオンであり;このジンクフィンガーは、ウイルスタンパク質を含み;このウイルスタンパク質は、ヌクレオカプシドタンパク質、Gagタンパク質、またはGag−Polタンパク質であり;そしてジンクフィンガー含有タンパク質は、インタクトなウイルスに取り込まれる。
【0016】
1実施態様において、ジンクフィンガー含有タンパク質から金属イオンを解離させるための方法において、上記ウイルスと上記化合物との接触工程は、インビトロで実施される。上記ウイルスと上記化合物との接触工程はまた、インビボでも実施され得る。このジンクフィンガーは、鳥類肉腫ウイルスおよび白血症レトロウイルス群、哺乳動物B型レトロウイルス群、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス群、D型レトロウイルス群、マウスの白血病関連群、またはレンチウイルス群に由来するレトロウイルスタンパク質を含み得る。このレトロウイルスタンパク質は、HIV−1、HIV−2、SIV、BIV、EIAV、Visna、CaEV、HTLV−1、BLV、MPMV、MMTV、RSV、MuLV、FeLV、BaEV、またはSSVレトロウイルス由来であり得る。この方法は、さらに、上記ウイルスタンパク質のジンクフィンガーから上記金属イオンの解離を検出する工程を含み得る。このジンクフィンガーからの上記金属イオンの解離の検出は、キャピラリー電気泳動法、免疫ブロット法、核磁気共鳴(NMR)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射性亜鉛−65の放出を検出する工程、蛍光を検出する工程、ゲル移動度シフトを検出する工程からなる群から選択される方法を使用して実施され得る。
【0017】
本発明はまた、ウイルスを不活化するための方法を提供し、上記方法は、上記ウイルスと本発明の化合物とを接触させる工程を含み、ここで、上記ウイルスとこの化合物との接触によりウイルスを不活化する。この方法において、この化合物は、ジンクフィンガーから亜鉛イオンを解離し得る。このウイルスは、鳥類肉腫ウイルスおよび白血症レトロウイルス群、哺乳動物B型レトロウイルス群、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス群、D型レトロウイルス群、マウスの白血病関連群、またはレンチウイルス群に由来するレトロウイルスであり得る。このレトロウイルスは、HIV−1、HIV−2、SIV、BIV、EIAV、Visna、CaEV、HTLV−1、BLV、MPMV、MMTV、RSV、MuLV、FeLV、BaEV、またはSSVレトロウイルス由来であり得る。
【0018】
ウイルスを不活化する方法において、ウイルスと化合物との接触は、インビボで実施され得る。この実施態様において、化合物は、ウイルスの伝播を阻害するために投与され得る。この化合物は、ウイルスの伝播を阻害するために膣内または直腸内に投与され得る。この化合物は、製薬処方物としてヒトに投与され得る。この化合物は、獣医学的製薬処方物として動物に投与され得る。この方法は、さらに、ウイルスと非チオールエステル抗レトロウイルス剤とを接触させる工程を含み得る。この抗レトロウイルス剤は、ヌクレオチドアナログまたはプロテアーゼインヒビターであり得る。このヌクレオチドアナログは、AZT、ddCTPまたはDDIであり得る。
【0019】
ウイルスを不活化するための方法において、このウイルスとこの化合物との接触工程は、インビトロで実施され得る。この方法の実施態様において、このレトロウイルスとこの化合物との接触は、血液製剤、血漿、栄養培地、タンパク質、医薬品、化粧品、精液または卵母細胞の調製物、細胞、細胞培養物、細菌、ウイルス、食品、あるいは飲料において実施され得る。
【0020】
本発明はまた、単離しそして不活化したウイルスを提供し、ここで、ウイルスは、ウイルスと本発明のチオールエステルとを接触させる工程を含む方法により不活化され、ここで、ウイルスとチオールエステルとの接触工程により、ウイルスを不活化する。この単離し、そして不活化したウイルスは、さらに、ワクチン処方物を構成する。この単離し、そして不活化したウイルスは、鳥類肉腫ウイルスおよび白血症レトロウイルス群、哺乳動物B型レトロウイルス群、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス群、D型レトロウイルス群、マウスの白血病関連群、またはレンチウイルス群に由来するレトロウイルスであり得る。このウイルスは、HIV−1、HIV−2、SIV、BIV、EIAV、Visna、CaEV、HTLV−1、BLV、MPMV、MMTV、RSV、MuLV、FeLV、BaEV、またはSSVレトロウイルス由来であり得る。
【0021】
本発明はまた、ウイルスタンパク質のジンクフィンガーでキレート化された金属イオンを解離することが可能な化合物を選択する方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む:ジンクフィンガーをチオールと接触させる工程;および上記ウイルスタンパク質のジンクフィンガーからの上記金属イオンの解離を検出する工程。この方法において、金属イオンは、亜鉛イオンである。この方法において、ジンクフィンガーから上記金属イオンの解離の検出は、キャピラリー電気泳動法、免疫ブロット法、核磁気共鳴(NMR)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射性亜鉛−65の放出を検出する工程、蛍光を検出する工程、またはゲル移動度シフトを検出する工程を使用して実施され得る。
【0022】
本発明はまた、ウイルスタンパク質のジンクフィンガーから金属イオンを解離することを可能にする化合物を選択するためのキットを提供し、このキットは、レトロウイルスタンパク質、およびウイルスタンパク質からの上記金属イオンの解離を検出するための使用説明書、本発明のチオールエステルの選択のための指示を含む使用説明書を含む。このキットにおいて、ウイルスタンパク質はまた、上記ウイルスタンパク質のジンクフィンガーでキレート化された亜鉛イオンと共に供給される。ウイルスタンパク質は、インタクトなレトロウイルスに取り込まれ得る。このジンクフィンガーは、鳥類肉腫ウイルスおよび白血症レトロウイルス群、哺乳動物B型レトロウイルス群、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス群、D型レトロウイルス群、マウスの白血病関連群、またはレンチウイルス群に由来し得る。このジンクフィンガーは、HIV−1、HIV−2、SIV、BIV、EIAV、Visna、CaEV、HTLV−1、BLV、MPMV、MMTV、RSV、MuLV、FeLV、BaEV、またはSSVレトロウイルスに由来し得る。このキットにおいて、使用説明書は、キャピラリー電気泳動法、免疫ブロット法、核磁気共鳴(NMR)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射性亜鉛−65の放出を検出する工程、蛍光を検出する工程、またはゲル移動度シフトを検出する工程を使用して、上記タンパク質から上記金属イオンの解離を検出する工程に関しても良い。
【0023】
本発明はまた、本発明のチオールエステルを含む殺ウイルス組成物を提供する。1実施態様において、この殺ウイルス組成物は、さらに、血漿、栄養培地、タンパク質、医薬品、化粧品、精液または卵母細胞の調製物、細胞、細胞培養物、細菌、ウイルス、食品または飲料を含み得る。
【0024】
本発明はまた、本発明のチオールエステルを含む薬学的処方物を提供する。この薬学的処方物は、さらに、薬学的賦形剤を含み得る。
【0025】
本発明の性質および利益のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照することによって実現化され得る。
【0026】
本明細書に記載される全ての刊行物、電子データベース、特許、および特許明細書は、本明細書よって、全ての目的のために参考として明確に援用される。
【0027】
(詳細な説明)
選択圧力下、ウイルスは、薬物−耐性株に突然変異することが一般的であるので、ほとんどの抗ウイルス剤の有効性が限定される。薬物耐性の発生は、特にレトロウイルスの迅速に突然変異する能力のために、レトロウイルスにおける特に著しい生存戦略である。生存および成長に必要なウイルスの構造が、良好な薬物の標的である。それは、ウイルスの不活化は、突然変異によって容易に克服できないからである。複製および生存のために必要不可欠なウイルスの構造は、薬物開発の良好な標的である。これらの標的の有用性は、ウイルスの構造が突然変異に不耐性である場合、さらに増強され得る。さらに、これらの構造は、ウイルスのファミリー、群、または属の間で保存され、そして/または維持され得る。
【0028】
本発明は、チオールエステルの新規な分類の組成物を提供する。これらのチオールエステルは、種々の機構によって、特に、銀イオン複合体ジンクフィンガーを用いて複合体することによってウイルスを不活化することを可能にする。好ましい実施態様において、本発明のチオールエステル組成物は、レトロウイルスを不活化する。典型的に、この不活化は、チオールエステルがウイルスのヌクレオカプシドまたは他のジンクフィンガー含有タンパク質と接触するときに、実施される。これらの新規な組成物の重要な局面は、生物学的流体が減少した環境によって、これらの組成物が実施されないことである(すなわち、これらの活性が、インビボで大きく減少することはない)。従って、これらは、ウイルス(特に、レトロウイルス)薬物の処理において、重要な治療剤である。本発明の組成物の殺ウイルス活性がまた、インビトロの適用、例えば、薬剤またはワクチンとしておよび滅菌剤として使用するための殺傷ウイルスを作製することにおいても有用である。
【0029】
「ジンクフィンガー」モチーフは、高く保存され、そして多くのウイルス(特に、レトロウイルス)に見出された重要な構造である。Retroviridae(Spumavirusesを除いて)中のGagおよびGag−Polタンパク質は、ポリタンパク質のヌクレオカプシドp7(NCp7)タンパク質部分内で、高く保存されたジンクフィンガーモチーフ(CCHC)を含む(以下の定義を参照のこと)。金属キレート化システイン残基およびヒスチジン残基、ならびにタンパク質の他の残基、そして初期および後期のウイルスの複製間の重要な機能に関与するタンパク質の残基の絶対的な保存により、抗ウイルス標的としての特徴を同定する。ジンクフィンガー中でのキレート化残基の突然変異により、非感染性のウイルスが得られる。ジンクフィンガーは、ほとんどのレトロウイルス中で確認されるので、その機能を阻害し得る薬剤は、幅広いスペクトルの抗ウイルス治療薬である可能性を有する。
【0030】
HIV−1ヌクレオカプシド(NC)タンパク質、NCp7は、たった7個のアミノ酸によって区分される2個のジンクフィンガーを含む(Henderson(1992)J.Virol.66:1856)。両方のフィンガーが、感染性のために重要である(Aldovini(1990)J.Virol.64:1920;Gorelick(1990)J.Virol.64:3207)。従って、HIV−1ヌクレオカプチドは、特に、ジンクフィンガー不活化剤に対して無防備の標的である。全ての証拠は、フィンガー内キレート化された残基およびいくつかの他のキーとなる残基の完全な保存を示す。任意のこれらの残基の突然変異によって、ウイルス感染力を失うか、または過酷な妥協が生じる。フィンガー(CCHC〜CCHHまたはCCCC)の金属イオンキレート化特性を維持するさらなる突然変異により、感染力の減少を生じる。従って、タンパク質活性の復活を導く単一または複数の突然変異の、突然変異経路に関する証拠は、知られていない。
【0031】
種々のC−ニトロソ化合物およびジスルフィド含有化合物(例えば、シスタミン、チアミンジスルフィド、およびジスルフィラム(disulfiram))は、ジンクフィンガーシステインチオレートを酸化し得、分子内および分子間のジスルフィド架橋を誘導し得る。例えば、McDonnel(1997)J.Med.Chem.40:1969−1976;Rice(1997)Nature Medicine3:341−345;Rice(1997)Antimicrob.Agents and Chemotherapy41:419−426;Rice(1996)J.Med.Chem.39:3606−3616;Rice(1996)Science270:1194−1197;Rice(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:9721−9724;Rice(1993)Nature361:473−475を参照のこと。また、Hendersonら、WO96/09406を参照のこと。2個のジンクフィンガーの各々中のシステインチオールは、Cu +2、Fe +3、C−ニトロソ化合物、ジスルフィド、マレイミド、α−ハロゲン化ケトン、およびに一酸化窒素誘導体のような試薬によって、ネイティブなタンパク質構造の同時性の損失を伴って、迅速に攻撃される。例えば、インタクトなHIV−1の、酸化剤での処理(例えば、3−ニトロソベンズアミド、C−ニトロソ化合物)によって、ヌクレオカプシドタンパク質のジスルフィド結合を導き、そしてジンクフィンガーの酸化によるウイルスの感染力を不活化する(Rice(1993)Nature361:473;Rice(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:9721−9724)。C−ニトロソ化合物はまた、真核生物のCCHCジンクフィンガー含有ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼを不活化し得る(Buki(1991)FEBS Letters290:181)。しかし、これらの化合物は、有毒である傾向があり、乏しい溶解性およびバイオアベイラビリティを有し、そして生物学的溶液中で還元され、そして不活化される。
【0032】
本発明の新規なチオールエステルは、ジンクフィンガーと、求電子性のS−S部分というよりむしろチオールエステル部分を介して相互作用する。得られるチオールエステルは、S−S求電子部分を欠く。より低い求核性の基は、ジンクフィンガー部分を標的にするために使用される。結果として、これらは、多くのジスルフィド剤と比較して大きく向上した特性を有する。これらは、細胞毒性を減少させた。これらは、ジンクフィンガー部分(特に、HIV−1のNCp7ヌクレオカプシドタンパク質のジンクフィンガー)との、向上した抗ウイルス性活性およびよりよい反応性を有する。本発明のチオールエステルは、向上した水溶性を有する。これらは、還元剤存在下で、ジンクフィンガーの反応性を維持する。本発明のチオールエステルでの改良した特性(特に生物学的溶液中での還元に対する耐性)の組合せは、、明らかにインビトロ、インビボ、および治療学的適用における使用を向上させる。
【0033】
(定義)
本発明の理解を容易にするために、多数の用語が、以下に定義される。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、1〜30個の炭素、好ましくは4〜20個の炭素、より好ましくは6〜18個の炭素を有する、分枝、もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和の一価の炭化水素基のことを示すために使用される。アルキル基が、1〜6個の炭素原子を有する場合、それは、「低級アルキル」と呼ばれる。適切なアルキル基には、例えば、1個以上のメチレン、メチン(methineおよび/またはmethyne)基を含む構造が挙げられる。分枝した構造は、i−プロピル、t−ブチル、i−ブチル、2−エチルプロピルなどに類似の分枝したモチーフを有する。本明細書中で使用される場合、この用語は、「置換されたアルキル」を強調する。「置換されたアルキル」は、低級アルキル、アリール、アシル、ハロゲン(すなわち、アルキルハロ(例えば、CF 3)、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオアミド、アシルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、メルカプト、チア、アザ、オキソ、飽和および不飽和環式炭化水素、複素環など)のような1個以上の官能基を含むことを示すアルキルのことを呼ぶ。これらの基は、アルキル部分の任意の炭素に結合され得る。さらに、これらの基は、このアルキル鎖から張り出し得るか、またはアルキル鎖と一体化し得る。
【0035】
用語「アルコキシ」は、本明細書中、COR基を示すために使用され、ここで、Rは、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキルまたは置換アリールアルキルであり、ここで、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、および置換アリールアルキル基は、本明細書中、記載される通りである。適切なアルコキシラジカルには、例えば、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0036】
用語「アルキルアミノ」は、第2級アミンおよび第3級アミンを示し、ここで、このアルキル基は、同じであっても、異なっていても良く、本明細書中、「アルキル基」に記載される。
【0037】
用語「アリール」は、本明細書中、芳香族置換基を示すために使用され、これは、単一の芳香族環であっても良いし、多重芳香族環(これは、一緒に融合されるか、共有結合的に結合されるか、またはメチレンもしくはエチレン部分のような共通の基に結合される)であっても良い。共通の結合基はまた、ベンゾフェノンにおけるようなカルボニルであり得る。芳香族環(単数または複数)には、とりわけ、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルメチルおよびベンゾフェノンが挙げられる。用語「アリール」は、「アリールアルキル」を包含する。「置換アリール」は、記載したようなアリールを示し、これは、低級アルキル、アシル、ハロゲン、アルキルハロ(例えば、CF 3)、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、フェノキシ、メルカプト、ならびに飽和環状炭化水素および不飽和環状炭化水素の両方(これらは、芳香族環(単数または複数)に融合されるか、あるいは共有結合的に結合されるか、メチレンまたはエチレン部分のような共通の基に結合される)のような1つ以上の官能基を含む。結合基はまた、シクロへキシルフェニルケトンにおけるようなカルボニルであり得る。用語「置換アリール」は、「置換アリールアルキル」を包含する。
【0038】
用語「アリールアルキル」は、本明細書中、本明細書に規定されるように、アリール基がさらにアルキル基に接続される「アリール」のサブセットを示すために使用される。
【0039】
「接触」は、反応が起こり得るように、反応の成分を適切な近位に持ってくる動作を示す。より詳細には、本明細書中に使用されるように、用語「接触」は、以下の用語と交換可能で使用され得る:合わせる、加える、混ぜる、通す、流すなど。
【0040】
本明細書中で使用されるように、用語「Gag−Polタンパク質」は、例えば、Fehrmann(1977)Virology 235:352359;Jacks(1988)Nature 331:280−283によって記載されるように、HIV−1または他のレトロウイルスのポリタンパク質翻訳産物を示す。「Gagタンパク質」は、ウイルスプロテアーゼによって処理され、成熟したウイルスタンパク質を生成する。例えば、Humphrey(1997)Antimicrob.Agents Chemother.41:1017−1023;Karacostas(1993)Virology 193:661−671を参照のこと。
【0041】
用語「ハロゲン」は、本明細書中、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素原子を示すために使用される。
【0042】
本明細書中に使用されるように、例えば、本発明のチオールエステル、チオールエステル複合ポリペプチドまたはウイルス、あるいはチオールエステル不活化ウイルスのような、分子または組成物を示す場合、「単離」は、分子または組成物が、タンパク質、他の核酸(例えば、RNA)、あるいはインビボまたはその天然状態で付随している他の混入物のような、少なくとも1つの他の化合物から分離されることを意味する。従って、化合物、ポリペプチド、またはビリオンは、例えば、細胞抽出物、血清などにおけるような細胞膜のような天然に付随する任意の他の成分から単離された場合、単離されたと考えられる。しかし、単離された組成物はまた、実質的に純粋であり得る。単離された組成物は、均質な状態であり得、乾燥または水溶液であり得る。純度および均質性は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような分析化学技術を使用して決定され得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「ヌクレオカプシドタンパク質」または「NCタンパク質」は、例えば、Huang(1997)J.Virol.71:4378−4384;Lapadat−Tapolsky(1997)J.Mol.Biol.268:250−260に記載されるように、レトロウイルスのヌクレオカプシドタンパク質を示し、これは、ビリオンヌクレオカプシドの必須部分であり、ここで、このヌクレオカプシドは、二量体RNAゲノムを被膜する。HIV−1のヌクレオカプシドタンパク質は、「NCp7」と呼ばれる。Demene(1994)Biochemistry 33:11707−11716もまた参照のこと。
【0044】
本明細書中で使用されるように、用語「レトロウイルス」は、Retroviridaeファミリーのウイルスを示し、これは、典型的には、逆トランスクリプターゼによって転写されるssRNAを有し、これは、例えば、P.K.Vogt、「Historical introduction to the general properties of retroviruses」、in Retroviruses、J.M.Coffin、S.H.HughesおよびH.E.Varmus、Cold Spring Harbar Laboratory Press、1997、1−26頁;Murphyら編、Archives of Virology/Supplement 10、586頁(1995)Springer Verlag、Wien、NY;およびCommittee on International Taxonomy of Viruses、Virology Division of the International Union of Microbiology Societyのウェブサイトのhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ICTV/for viral classification and taxonomyのように規定される。ジンクフィンガーモチーフ含有ポリペプチドを含み、本発明のチオールエステルによって複製が阻害され得るRetroviridaeファミリーのメンバーには、鳥類肉腫レトロウイルスおよび白血症レトロウイルス(アルファレトロウイルス)、哺乳動物B型レトロウイルス(ベータレトロウイルス)(例えば、マウス乳腺癌ウイルス)、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス(デルタレトロウイルス)(例えば、ヒトT−リンパ指向性(lymphotropic)ウイルス 1)、マウス白血病関連群(ガンマレトロウイル)、D型レトロウイルス(イプシロンレトロウイルス)(例えば、マソン−ファイザーサルウイルス)、ならびにLentivirus(レンチウイルス)が挙げられる。Lentivirusには、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ/ヤギ、および霊長類レンチウイルス群(例えば、ヒト免疫不全ウイルス 1(HIV−1)が挙げられる。本発明のチオールエステルによって複製能力が影響される特定の種類のウイルスの例には、HIV−1、HIV−2、SIV、BIV、EIAV、Visna、CaEV、HTLV−1、BLV、MPMV、MMTV、RSV、MuLV、FeLV、BaEV、およびSSVレトロウイルスが挙げられる。
【0045】
本明細書中で使用されるように、用語「チオールエステル」および「チオエステル」は、交換可能で使用され得、これらは、化学構造、G−S−(C=O)−G’を示し、ここでGおよびG’は、任意の2つの原子の群を示す;−2の酸化状態の硫黄原子に直接結合される酸素ベースのカルボニル基から構成される任意の化学構造。次に、炭素および硫黄原子は、任意の2つの原子の群に結合される;従って、G−S−(C=O)−G’。
【0046】
本明細書中で使用されるように、「ジンクフィンガー」は、金属イオンに配位するシステインおよび/またはヒスチジンからなるポリペプチドモチーフを示し、これらはタンパク質/核酸および/またはタンパク質/タンパク質相互作用に関与する構造を生じる。本発明のチオエステルは、インビトロでジンクフィンガーから金属イオンを解離し得る。典型的には、金属イオンは、亜鉛またはカドミウムのような2価カチオンである。ジンクフィンガーモチーフ含有タンパク質は、一般に、ウイルスにおいて高度に保存性(conserved)で必須の構造である。ジンクフィンガーモチーフは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、特に、HPVE6およびE7タンパク質(例えば、Ullman(1996)Biochem J.319:229−239を参照のこと)、インフルエンザウイルス(例えば、Nasser(1996)J.Virol.70:8639−8644を参照のこと)に見出される。鳥類肉腫レトロウイルスおよび白血病レトロウイルス、哺乳動物B型レトロウイルス、ヒトT細胞白血病およびウシ白血病レトロウイルス、D型レトロウイルスならびにLentivirusを含む、Retroviridaeの大部分のサブファミリーにおいて、不変のジンクフィンガーモチーフが最も高度に保存性の構造である。レトロウイルスのヌクレオカプシド、GagおよびGag−Polタンパク質は、ジンクフィンガーモチーフを有する。レトロウイルスにおいて、ジンクフィンガーモチーフは、典型的に、14個のアミノ酸からなり、4個の残基が不変である:Cys(X)2Cys(X) 4His(X) 4Cys。従って、「CCHCジンクフィンガー」として呼ばれる(Henderson(1981)J.Biol.Chem.256:8400)。これは、そのヒスチジンイミダゾールおよびシステインチオレートを通して亜鉛にキレートする(Berg(1986)Science232:485;Bess(1992)J.Virol.66:840;Chance(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10041;South(1990)Adv.Inorg.Biochem.8:199;South(1990)Biochem.Pharmacol.40:123−129)。CCHCジンクフィンガーは、パッケージング(packaging)ゲノムRNAのようなレトロウイルス感染における必須の機能を行う。これらはまた、ウイルス感染の初期の事象に必須である。
【0047】
本明細書中で使用されるように、用語「インビトロでジンクフィンガーから金属イオンを解離し得る、または抗ウイルス活性を有する」は、チオールエステルが、インビトロアッセイ(そのうちのいくらかは本明細書中に記載される)を使用して、任意の程度までジンクフィンガーから金属イオンを解離し得る場合、本発明の範囲内であることを意味する。ジンクフィンガーからの金属イオンの解離を検出することは、例えば、キャピラリー電気泳動法、免疫ブロット法、核磁気共鳴(NMR)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射性亜鉛−65の放出の検出、蛍光検出、およびゲル移動度シフトの検出を使用して実行され得る。この用語はまた、チオールエステルが、任意のアッセイ(例えば、本明細書中に記載されるXTT細胞保護作用アッセイ)において任意の抗ウイルス活性を示す場合、本発明の範囲内であることを意味する。例えば、任意の程度の測定可能な抗ウイルス活性を有するチオールエステルは、たとえ金属イオンの解離が検出可能でない場合でさえ、本発明の範囲内である。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「ウイルスの伝播を阻害する」および「抗ウイルス活性」は、ウイルス複製能力を任意の方法でネガティブに影響するチオールエステルの能力を意味する。このような伝播の阻害(例えば、複製能力の損失)は、当該分野で公知の任意の手段を使用して測定され得る。例えば、本発明のチオールエステルは、ウイルスの、子孫を産生する能力、(ビリオンの形態の場合)細胞に融合する能力、細胞に入る能力、細胞から出芽する能力、細胞内または細胞外で生存する能力、そのRNAゲノムを逆転写する能力、ウイルス蛋白質を翻訳する能力、プロテアーゼでポリタンパク質を処理する能力、ウイルス成分の細胞内アセンブリをカプシドにする能力などを減少させる場合、ウイルスの伝播を阻害している(抗ウイルス活性を有している)。ウイルスの伝播を阻害する本発明のチオールエステルの能力は、任意の化学的または生物学的機構または経路によって制限されない。チオールエステルは、例えば、NCp7のようなヌクレオカプシドタンパク質に結合すること;NCp7の、ウイルスRNAまたは別の核酸への結合を妨げること;安定な付加物形成をもたらす特異的な化学的攻撃に関係すること;不安定なNCp7化合物付加物の崩壊の結果として、細胞内ジスルフィド結合を形成すること;NCp7タンパク質内の他の保存性または非保存性残基と相互作用して、機能の損失に至ることなどによって、ウイルスの伝播を阻害し得る(複製能力を減少し得る)。
【0049】
(一般的方法)
本発明は、インビトロでジンクフィンガーから金属イオンを解離し得るチオエステル化合物の新規の種類を提供する。当業者は、本発明のチオールエステルを種々の手順および方法論を使用して合成し得る。これらは、例えば、Organic Syntheses Collective Volumes、Gilmanら編 John Wiley & Sons,Inc.、NY;Venuti(1989)Pharm Res.6:867−873のような科学文献および特許文献に十分に記載されている。本発明は、当該分野で公知の任意の方法またはプロトコルと組み合わせて実施され得、これらは科学文献および特許文献に十分に記載される。従って、本発明の新規なチオールエステルおよび方法に対して、特定の方法論および実施例を議論する前に、ほんのわずかな一般的な技術を記載する。
【0050】
全ての有機試薬および中間体は、Sigma/Aldrich(St Louis,MO)およびLancaster Synthesis,Inc.(Windham,NH)から得られた。溶媒および他の化合物は、試薬品等級であった。すべての化合物の構造および組成は、 1H NMRおよびEI MSによって確認され、シリカ層TLCによって分析され、ピリジニオアルカノイルチオエステル(pyridinioalkanoyl thioester)(PATE)化学種を含むチオールエステルに対してメタノール/酢酸(6:4)で、他の化学種に対してクロロホルム/メタノール(9:1)で溶出した。
【0051】
本発明のチオールエステルは、ジンクフィンガーを攻撃し、そこから亜鉛を排出することによって、HIV−1のようなレトロウイルスを含むジンクフィンガーを、不活化するために使用される。一旦不活化されると、レトロウイルスは、例えば、ワクチンとして、予防薬として、またはレトロウイルス感染の診断のための標準的なElISAアッセイにおける成分として、使用され得ることは当業者に容易に明らかとなる。これらの新規組成物を作製し、そしてこれらの方法を作製しそして使用する工程は、種々の標準的な手順および試薬を組み込む工程を含み得る。HIV−1CCHCジンクフィンガーと反応し得る化合物を同定するためのキットがまた、提供される。本発明の新規組成物に加えて、これらのキットは、種々の標準的な手順および試薬を組み込む。
【0052】
本発明と結び付けて使用され得る一般的な方法の以下の議論は、例示の目的のためのみに意図される。他の代替的な方法および実施態様は、本発明の開示を精査して、当業者に明らかとなる。
【0053】
(ジスルフィドベンズアミド化学種、化合物2Dの合成)
表1に記載されるように化合物2D(「D」は、ダイマー形態、すなわち表1に示されるように「D形態」を示した)または、N,N’−(2,2’−ジチオジベンゾイル)−ビス−スルファセトアミド(sulfacetamide)を合成するための例示的な手段は、以下である。出発物質、2,2’−ジチオジベンゾイルクロライドを、Katz(1953)J.Org.Chem.18:1380−1402;Baggaley(1985)J.Med.Chem.28:1661−1667によって記載されるように合成した。スルファセトアミド(13g、60mmol)のピリジン(300ml)溶液に、2,2’−ジチオジベンゾイルクロライド(85%、8.1g、20mmol)の1,4−ジオキサン(100ml)の溶液を室温(RT)で滴下した。透明な赤褐色の溶液を、RTで一晩攪拌し、次いで、激しく攪拌したエチルエーテル(1L)に注いだ。粘稠な液体性の沈澱物を、エーテル相から分離し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、約50ml)に溶解し、800mlの激しく攪拌した水性3M HClに滴下した。白色沈澱物を濾過し、水で洗浄し、真空で乾燥した。収量11g(78%)。粗生成物(1g)を熱エタノール(20ml)に溶解した。熱濾液を、攪拌した水(200ml)に添加した。白色沈澱物を濾過し、乾燥した。収量は、0.85g(85%)(純粋な2D)であった。
【0054】
【数1】
(ベンゾイソチアゾロン化学種、化合物2B、22、31、34の合成)
表1に記載されるような化合物2B(「B」は、BITA、すなわちベンゾイソチアゾロン形態を示す)またはN−[4−(3−オキソ−3H−ベンズ[d]イソチアゾール−2−イル)フェニルスルホニル]アセトアミドを含むベンゾイソチアゾロン化学種を合成するための例示的な手段は、以下である。2つの方法を使用した。1つの方法では、化合物2D(0.2g、0.28mmol)のピリジン(2ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(0.18g、1mmol)の1,4−ジオキサン(1ml)溶液を加えた。この溶液をRTで3時間攪拌し、水(30ml)に加えた。白色沈澱物を、収集し、熱エタノールおよび水から沈澱物によって精製した。収量0.17g(87%)。
【0055】
【数2】
第2の方法は、化合物2B、化合物22 BITA、化合物31 BITAおよび化合物34 BITA(表1を参照のこと)を合成するために使用された。CCl 4(10ml)中の2,2’−ジチオジベンゾイルクロライド(0.32g、0.93mmol)の混合物に、2.5% w/vCl 2のCCl 4(10ml)溶液を加えた。この混合物を透明になるまで攪拌した(1時間)。濾過後、濾液に1時間N 2をバブリングし、スルファセトアミド(0.2g、0.93mmol)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMA、4ml)溶液を加えた。この混合物を、2時間攪拌し、エチルエーテル(20ml)を加え、沈澱物を収集し、熱エタノールおよび水で精製した。化合物2Bについての収量、0.3g(92%);方法Aと同じ 1H NMRおよびEI MS。分析、計算値(C 151
2242):C,51.71;H,3.47;N,8.04。実測値:C,51.34;H,3.64;N,7.96。
【0056】
(間隔をあけた(Spaced)ジスルフィドベンズアミド/ベンゾイソチアゾロン化学種(Chemotype)、例示的化合物23D、24Dおよび25Dの合成)
化合物23D(表1を参照)(すなわちN,N’−(2,2’−ジチオジベンゾイル)−ビス−4−(アミノメチル)ベンゼン−スルホンアミド)、24D(すなわちN,N’−(2,2’−ジチオジベンゾイル)−ビス−4−(2−アミノエチル)ベンゼン−スルホンアミド)、および25D(すなわちN,N’−(2,2’−ジチオジベンゾイル)−ビス−4−(グリシンアミド)ベンゼン−スルホンアミド)(表1を参照)を合成する例示的な手段は、以下である。これらの化合物を、それぞれ、4−(アミノメチル)ベンゼンスルホンアミド(Aldrich)、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホアミド(Aldrich)、およびN−グリシルスルファニルアミドから調製した。後者の化合物を、まずスルファニルアミドをDMA中の当モル量のブロモアセチルブロミドおよびピリジンで処理し、そしてこの反応混合物を過剰の0.5M HBrに添加後、このブロモアセチル化した誘導体を回収することによって、調製した。乾燥した粗生成物をエタノールから再結晶し、そして標準のGabriel反応(フタルイミド誘導体を調製し、そしてヒドラジン水和物で開裂する)によってN−グリシルスルファニルアミドへ転化した。次いで、化合物2Dについての手順(上記の概略)を続けた。
【0057】
【数3】
(N−末端修飾アミノフェニルスルホン化学種、例示的化合物34Dの合成)
化合物34D(表1を参照)(すなわち、N,N’−(2,2’−ジチオジベンゾイル)−ビス−4−スルファニリル−N−[(2−ニトロベンジル)スルホニル]アニリン)を合成する例示的な手段は、以下である。化合物26を、3−アミノフェニルスルホンおよび2,2’−ジチオジベンゾイルクロリドで出発して、化合物2Dと同様な様式で、作製した。DMA(30ml)中の化合物26(1.5g、1.9mmol)の溶液へ、1,4−ジオキサン(10ml)中の2−ニトロ−トルエンスルホニルクロリド(1.4g、5.9mmol)の溶液を添加した。この溶液を室温で一晩攪拌し、次いで激しく攪拌したエチルエーテル(300ml)へ移した。エーテル相を除去した後、この粘性液体をDMF(15ml)で希釈した。この希釈溶液を、攪拌しながら、水(200ml)へ添加した。この白色析出物を回収し、そして熱エタノールおよびエチルエーテルから2回析出により精製した。化合物34Dの収量:1.92g(84%)。
【0058】
【数4】
(2,3−ハロアルカノアミドベンズアミド化学種、例示的化合物37の合成)
化合物37(表1を参照)(すなわち、N−[2−(3−クロロ−プロピオンアミド)ベンゾイル]スルフアセトアミド)を合成する例示的な手順は、以下である。N−(2−ニトロベンゾイル)スルフアセトアミドを、2−ニトロベンゾイルクロリドで出発して、2Dと同様の様式で、作製した。1グラム(2.7mmol)のこの生成物を45℃のメタノール(100ml)中に溶解した。この溶液を室温まで冷却し、次いで、空気を除去するためにN 2でバブリングした。この溶液へ、窒素下でパラジウム(活性炭上に10重量%)(0.22g)を添加した。この混合物をH 2で1.5時間、次いでN 2で0.5時間バブリングした。濾過後、濾液をエバポレートして乾燥させた。収量0.84g(93%)の白黄色生成物。この2−アミノベンズアミド誘導体を、化合物34Dについて記載した条件と同様な条件下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させ、化合物37を得た。
【0059】
【数5】
(ハロアルカノイルチオエステル化学種、例示的化合物44の合成)
化合物44(表1を参照)(すなわち、N−[2−(5−ブロモバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミド)を合成する例示的な手段は、以下である。N−(2−メルカプトベンゾイル)スルフアセトアミドをまず、90%DMF(20ml)、トリス(2−カルボキシエチルホスフィンヒドロクロリド(1g、3.5mmol)およびトリエチルアミン(0.5ml)中の2D(2.2g、3.1mmol)の溶液へ添加することによって、調製した。この溶液を1時間攪拌し、次いで0.5M HCl(200ml)へ添加した。析出物を回収し、そして乾燥し、2.3g(95%)を得た。DMA(5ml)中のこの生成物(0.5g、1.4mmol)の溶液へ、N 2下で、5−ブロモバレリルクロリド(0.6ml、約4.5mmol)を添加した。この溶液をN 2下で1時間攪拌し、そしてエチルエーテル(50ml)へ添加した。エーテル相をデカンテーションした後、この残余の粘性液体をDMF(10ml)に溶解した。この溶液を、激しく攪拌した水(100ml)に添加した。この白色析出物を濾過し、そして熱エタノールおよび水から精製した。化合物44の収量:0.47g(65%)。
【0060】
【数6】
(ピリジニオアルカノイルチオエステル化学種、例示的化合物45の合成)
化合物45(表1を参照)(すなわち、N−[2−(5−ピリジニオ−バレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドブロミド)を合成するための例示的手段は、以下である。ピリジン(7ml)中の化合物44(0.25g、0.49mmol)の溶液を、N 2下で一晩攪拌した。エチルエーテル(80ml)を添加し、そいてこの白色析出物を回収し、そして熱エタノールおよびエーテルから精製し、この析出物を減圧下で直ちに乾燥させた。化合物45の収量、0.21g(72%)。
【0061】
【数7】
(テンプレートI、IIおよびIIIによって表されるチオールエステルの合成)
テンプレートI、IIおよびIIIによって表されるチオールエステル化合物を合成するための例示的手段は、以下である。上述したように、当業者は、本発明のチオールエステルを生成するために、任意の合成スキームまたは任意の例示的プロトコルの改変を使用し得る。
【0062】
テンプレートIIおよびIIIbにおいて(ここで、Xは、−CH 2−、−CH 2CH 2−および−CH 2C(=O)−NH−である)、チオールエステルは、上述の、化合物23D、24Dおよび25D(表1を参照)を合成するための方法をそれぞれ使用して生成され得る。
【0063】
チオールエステルがN−[2−(α−ピリジニオ−4−トルオイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドである場合、ジメチルアセトアミド(2ml)中のN−(2−メルカプトベンゾイル)スルフアセトアミド(化合物44の合成を参照)(0.4g)および4−(クロロメチル)ベンゾイルクロリド(0.6ml)の溶液を窒素下で1時間攪拌し、次いで、攪拌しながらエチルエーテル(40ml)へ添加した。この粘性液体析出物をジメチルホルムアミド(1ml)で希釈し、次いでエーテル(40ml)およびヘプタン(40ml)の溶液へ添加した。この粘性液体析出物を回収し、そしてピリジン(3ml)へ添加した。この溶液をAr下で3日間室温で攪拌し、次いで、エーテル(50ml)へ添加した。この析出物を回収し、そして乾燥させた。この粗生成物を、MeOH中10%AcOHでのアイソクラチック溶出(isocratic elution)を使用して、シリカゲルカラムで精製した。
【0064】
チオールエステルがN−[2−(2−(ピリジニオアセトアミド)ベンゾイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドである場合、化合物37のアナログを、3−クロロプロピオニルクロリドの代わりにクロロアセチルクロリドを用いること以外は同一の様式で調製した。この生成物をピリジンに溶解し、そして室温で静置し、そしてこの生成物をN−[2−(α−ピリジニオ−4−トルオイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドについて上で記載したように、ワークアップした。
【0065】
チオールエステルがN−[2−(ピリジニオアセトアミドアセチルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドである場合、N−(2−メルカプトベンゾイル)スルフアセトアミドを、化合物44について記載したように調製した。クロロアセチルグリシンは、この生成物のチオール基へ結合され得、続いて、(a)p−ニトロフェニルエステル誘導体か、または(b)オキサリルクロリドを使用して調製された酸クロリド、によってグリシンカルボニル基が活性化される。ワークアップおよび引き続くピリジンとの反応を、上記のN−[2−(α−ピリジニオ−4−トルオイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドについて記載したように実施した。
【0066】
チオールエステルがN−[2−(2−(ピリジニオアセトアミド)イソブチリルチオ)ベンゾリル]スルフアセトアミドクロリドである場合、この化合物を、クロロ−アセチルグリシンの代わりにN−クロロアセチル−2−アミノイソブチル酸(Birnbaum(1952)J.Biol.Chem.194:455およびRonwin(1953)J.Org.Chem.18:127に従って調製した)を用いること以外は、上述のN−[2−(ピリジニオアセトアミドアセチルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドクロリドと同様の様式で調製し得た。
【0067】
チオールエステルがN−[2−(5−ジメチルスルホニオバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドヨージドである場合(ここで、Z=−S +(CH 3
2そしてY=−(CH 24−):アセトン(99%、25ml)中の化合物44(1.10g)およびNaI(5g)の混合物を窒素下、室温で一晩攪拌し、次いで攪拌しながら水(250ml)へ添加した。白色析出物を回収し、そして乾燥した。収量、1.2g。アセトニトリル(3ml)およびメチルフルフィド(4ml)中のこの生成物(0.3g)の透明な溶液を、室温で一晩攪拌した。この透明な溶液を、激しく攪拌しながら、エチルエーテル(250ml)へ添加した。この白色析出物を回収し、エーテルで洗浄し、そして乾燥した。収量、0.15g。
【0068】
チオールエステルがN−[2−(5−トリエチルアンモニオバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドヨージドである場合(ここで、Z=−N +(C 2
53そしてY=−(CH 24−):N−[2−(5−ジメチルスルホニオバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドヨージドのパラレル合成を実施し得、ここで、メチルスルフィドの代わりにトリエチルアミンを用いる。還流が、トリエチルアミンとの反応を終了するために要求され得る。
【0069】
チオールエステルをN−[2−(5−トリ−n−ブチルホスホニオバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドヨージドである場合(ここで、Z=−P
+(C 493そしてY=−(CH 24−):N−[2−(5−ジメチルスルホニオバレロイルチオ)ベンゾイル]スルフアセトアミドヨージドのパラレル合成を実施し得、ここで、メチルスルフィドの代わりにトリ−n−ブチルホスフィンを用いる。
【0070】
テンプレートIIIのチオールエステル種(ここで、Gはt−ブチルであり、Yは−CH 2−であり、Xは−CH 2−である)を合成するために、ピリジン環は、R 8およびR 10で置換カルボキサミド基を有し、R 6はHであり、R 9は=−SO 2−NH 2であり、そしてR 7、R 8、R 10、R 11はHである:4−[1−(t−ブチルチオカルボニルメチル)ニコチンアミドメチル]−ベンゼンスルホンアミドクロリドトリエチルアミン(36mmol)およびニコチノイルクロリドヒドロクロリド(30mmol)を、150mlのアセトニトリル中の4−(アミノメチル)ベンゼンスルホンアミドヒドロクロリド水和物(30mmol)の懸濁液へ添加した。さらなる60mmolのトリエチルアミンを徐々に添加した。4−(ニコチンアミドメチル)ベンゼンスルホンアミドの析出物を、180mlの水中の12mlエタノールの溶液から再結晶した。減圧下/CaCl 2で生成物を乾燥した。次に、S−クロロアセチル−t−ブチルメルカプタンを、Dawson(1947)J.Amer.Chem.Soc.69:1211に従って、クロロアセチルクロリドおよびt−ブチルメルカプタンを反応させることによって調製した。このチオールエステルを、10mmolのこのニコチンアミド誘導体を125mlのアセトニトリル中の20mmolのクロロアセチルチオエステルとともに一晩還流して攪拌することによって、調製する。室温で静置すると、生成物が結晶化する。それは、エタノール−水混合物から再結晶され得る。
【0071】
テンプレートIIおよびIIIbにおいて(ここで、R 1は、アルキル、−CH 3、−(CH 2)n−CH 3、−CH(CH 32、−C(CH 33、−アリール、−アリールアルキル、−Ph−CH 3、アリールアルコキシ、−Ph−OCH 3
、ニトロアリール、−Ph−NO 2、−(CH 2n−X(ここで、Xは、ハロゲン、−(CH 2n−Cl、−(CH 2n−Br、または−(CH 2n−Iである)である);式R 1−C(=O)−を含むアシル基を有する(R 1はこれらの代替R 1構造から選択される)、N−(2−アシルチオベンゾイル)スルフアセトアミドを、5−ブロモバレリルクロリドの代わりにR 1−C(=O)−Clを用いて、化合物44について記載されたように調製し得る。
【0072】
Hでなく−CH 3であるR2を有する、テンプレートIおよびIIに基づくチオールエステルを、前駆体化合物2Dの調製において2,2’−ジチオジ−ベンゾイルクロリドの代わりに2,2’−ジチオビス(3−メチルベンゾイルクロリド)を用いることによって、化合物44および45と同様な様式で調製し得る。3−メチル誘導体を、CollmanおよびGroh(1982)J.Amer.Chem.Soc.104:1391−1400の方法に従って調製し得る。
【0073】
−CH 3であるR6を有する、テンプレートIに基づくチオールエステルを、スルフアセトアミドの代わりにN−メチル−4−(4−ニトロベンゼンスルホニル)アニリン(Saxena(1989)Arzneim.Forsch.39:1081−1084により記載されるように調製される)を使用すること以外に、化合物44および45について記載したように調製し得る。
【0074】
−CH 3であるR 6を有する、テンプレートIIに基づくチオールエステルを、2−メチルアミノ−N−(4−スルファモイルフェニル)アセトアミド(このチオールエステルはHorstman(1977)Eur.J.Med.Chem.Chim.Ther.12:387−391に従って調製される)を使用すること以外は、化合物44および45について記載したように調製し得る。
【0075】
アリールまたはフェニルであるR6を有するテンプレートIIに基づくチオールエステルを、スルフアセトアミドの代わりにN−フェニルグリシル−スルファニル酸アミド(Gaind,SehgalおよびRay;J.(1941)Indian Chem.Soc.18:209によって記載されるように調製される)を使用すること以外は、化合物44および45について記載したように調製し得る。
【0076】
(ジンクフィンガーから金属イオンを解離し得るチオールエステルの設計および合成)
ウイルスジンクフィンガー、特に、HIV−1のNCp7のヌクレオキャプシドタンパク質のジンクフィンガーは、本発明の新規のチオールエステルを設計するためにモデルとして使用される。NCp7は、それらの溶媒受容可能な表面上に領域を有し、ここで、候補リガンドと好ましい相互作用が生じ得る。各ジンクフィンガーは、2個の高い親和性結合部位を有する。一方は、フィンガー1上のPhe17およびフィンガー2上のTrp37の近くに推定mRNA結合部位を構成する。他方の部位は、推定mRNA部位と反対の、各フィンガーの金属配位ヒスチジン付近に存在する。ジンクフィンガーから金属イオンを解離し得る新規のチオールエステルを設計する目的について、推定mRNA結合領域と反対のリガンド結合部位は、2個の結合部位候補のうちより強力な方であると考えられる。これらの結合領域は、可能な疎水性および親水性の原子タイプの範囲で調べた。最も強力な可能な結合相互作用を有する種を選択した。
【0077】
リガンド(薬剤)の、NCp7との相互作用の研究をさらにモデル化することは、ジスルフィドベンズアミド(DIBA)およびベンゾイソチアゾロン誘導体(BITA)の両方が、これらの薬剤の反応性基を各フィンガーの求核性システイン硫黄原子の近位付近へ配向させるような方法で、両方のレトロウイルスZnフィンガーの表面上の疎水性パッチと相互作用し得ることを示した。対照的に、DIBAは、立体排除に起因して、転写因子GATA−1のZnフィンガーのシステイン硫黄原子と相互作用しなかった[(Huang(1998)J.Med.Chem.41:1371−1381)]。ジスルフィドおよびそれらの代表的BITA誘導体を設計し、合成し、そして精製し、そして抗ウイルスおよびインビトロNCp7亜鉛駆出活性を評価した。
【0078】
表1:DIBA−1およびDIBA−2化学種から誘導される新規なジスルフィドおよびベンゾイソチアゾロン型の合成
【0079】
【表1】
a 抗ウイルス活性を、XTT細胞保護アッセイで測定した。
b 初めはDIBA−1として報告された。
c 初めはDIBA−2として報告された。
d NTは、分析するのに十分な量および/または純度で作製され得なかった化合物を表す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
表4:3,3’−ビス(アミノフェニル)スルホン異性体
【0082】
【表4】
a 抗ウイルス活性をXTT細胞保護アッセイによって測定した。
b ジンクフィンガー反応性をTrp37蛍光アッセイによって測定した。結果を、30分にわたる相対蛍光単位の平均減少量として示す。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
表7:作用の抗ウイルス機構
【0085】
【表7】
a 示される活性の50%を阻害する化合物のI50濃度。
b 個々のアッセイの全ての正の制御は、実験項に記載される通りである。
c 100μMの高用量試験において阻害なし(NI)。
d 30分毎の相対蛍光単位の減少量(RFU/30分)として示し、括弧内は蛍光の全減少量パーセントである。
【0086】
表8:選択されたPATEおよび5−ブロモバレロイルチオエステルの抗ウイルス活性に対するグルタチオンの効果
【0087】
【表8】
a ジンクフィンガー反応性を、Trp37蛍光アッセイによって測定した。
【0088】
反応性は、30分毎の蛍光単位の平均変化(RFU/分)、または30分間のインキュベーションの間の全減少量パーセント(減少%)のいずれかとして表す。
b 化合物(2mM)を、4mMの還元型グルタチオンで37℃で2時間処理した。続いてインキュベーション反応物を、最終濃度のμMまで希釈し、そしてTrp37 Zn駆出活性を上記のようにして決定した。
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
化合物1〜36のジスルフィド型、および合成的に可能な場合にBITA型が合成され(表1〜4)、これらの抗ウイルス活性がXTT細胞保護アッセイで評価された(以下に記載)。
【0091】
これらの研究のために生成した本質的にすべての化合物は、ある程度の抗ウイルス活性(XTT細胞保護アッセイ)およびジンクフィンガー反応性を有した。ジンクフィンガー反応性は、Zn特異的蛍光色素(TSQ、N−(6−メトキシ−8−キノリル)−p−トルエンスルホンアミド)アッセイ、またはTrp37ジンクフィンガー蛍光アッセイを使用して測定された。組み換えHIV−1 NCp7タンパク質のC−末端フィンガー中のTrp37残基の蛍光測定は、Rice(1995)Science 270:1194〜1197;Rice(1997)Antimicrob.Agents Chemother.41:419〜426に記載されるように行われた。両方のフィンガーからのZn駆出の測定は、Rice(1996)J.Med.Chem 39:3606〜3616に記載されるように、Zn選択的蛍光色素プローブTSQ(Molecular Probes,Eugene OR)を使用して測定された。NCp7が、HIV−1 RNAパッケージング部位に類似したDNAオリゴマーである、44量体:GGC GAC TGG TGA GTA CGC CAA AAA TTT TGA CTA GCG GAG GCT AG(配列番号1)に結合する能力の測定は、Huang(1998)J.Med.Chem.41:1371〜1381に記載されるように行われた。Rossio(1998)HIV Pathogenesis and Treatment:Keystone Symposium on Molecular and Cellular Biology,Abstract#4082もまた参照のこと。手短に言うと、10%グリセロールおよび50mM Tris−HCl(pH7.5)を含有する10mlの緩衝液中で、50nMのNCp7を試験化合物で、室温で1時間処理した。標識オリゴマー(0.1ピコモル、末端標識[ 32P])を、10%グリセロール、50mM Tris−HCl(pH7.5)、400mM KClおよび40mM MgCl 2を含有する等容量の緩衝液に添加した。この反応を室温で15分間続け、そして0.5×Tris−ホウ酸電気泳動緩衝液中の4.5%ポリアクリルアミドゲルを非変性すると、5ml全て(または全反応容量の1/4)が、分離された。NCp7−オリゴマー複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。
【0092】
新規のジスルフィドベースのアナログの中でも、化合物26、31および34は、316μM(マイクロモル)の高い試験用量において非毒性を示し、そしてそれぞれ4.3、12.2および12.3μMのEC 50(ウイルス複製を50%阻害する濃度)を示した。化合物26を生成するのに使用するアミノフェニル置換により、DIBAのリガンド部分をビス(4−アミノフェニル)スルホンに変換した。化合物26のN−アセチル化により、より低いEC 50(1.5μM)を有するがより強い毒性(160μM)を有する化合物27が得られた。化合物26のビス(アミノフェニル)スルホン架橋からスルホンアミド基への変換、および末端アミンから1級スルホンアミドへの変化(化合物22、表1)によって、より強い細胞毒性(43μM)が生じた。一般に、ジスルフィド/BITA対が合成され得る場合、主に抗ウイルス効力の損失(すなわち、増加したEC 50値)のため、インビトロ治療指数(IC 50/EC 50)の平均4倍(n=15、1.5〜8倍の範囲)の低下があった。細胞毒性の増加はなかった。新規のジスルフィドまたはBITAはいずれも化合物1より優れていなかった。
【0093】
分子モデリングは、薬剤のNCp7 Znフィンガーの原子表面結合ドメインへのより良い適合は、メチレン(化合物23)またはエチレン(化合物24)スペーサーを、化合物1のベンズアミドヘッド基とベンゼンスルホンアミドリガンド基との間の骨格に加えることによって達成され得るということを示した(表2)。抗ウイルス活性およびZnフィンガー反応性は保持されたが、これらの修飾は、親化合物1と比較した場合4〜10倍増加したIC 50(より強い細胞毒性)と関係があった。表2示されるように、対応するBITAは、精製NCp7に対する活性が保持されているにもかかわらず、抗ウイルス活性の顕著な損失を示した(化合物23:42倍減少、化合物24:5倍減少)。化合物23にカルバミル基を加えることによる、ヘッド基スペーサーのさらなる修飾(化合物25を参照のこと)により、ジンクフィンガー反応性が増した(RFU/分 7.9対3.3)が、抗ウイルス効力は減少した。
【0094】
(ビス(アミノフェニル)スルホンベースのジスルフィドベンズアミドの最適化)
4,4’−ビス(アミノフェニル)スルホンをジスルフィドのヘッド基に組み込むことにより、さらなる修飾のための合成位置として末端アミンを有する化合物26が得られる。いくつかのアシル修飾により化合物27、28および29が生成し、これらは増加したジンクフィンガー反応性および改善されたEC 50を生じた。これらの利点はIC 50の減少によって部分的に(化合物27および29)、そして完全に(化合物28)相殺された。今までは、26のリガンド部分の末端伸長は、顕著に改善された抗ウイルス剤を生じなかった。
【0095】
化合物26のBITA誘導体は、これらの特性を研究するのに十分な純度または量で生成し得なかった。しかし、NO 2基を26の末端NH 2に置き換え、化合物31を生成することは、この制約を克服し、そしてジスルフィドおよびその対応するBITAの両方の生成を可能にした(表3)。化合物31のジスルフィド型は、26のように非毒性であり、そしてEC 50が2.6倍増加(効果が小さい)したにもかかわらず、同じNCp7ジンクフィンガー反応性を有した。化合物31のBITA型は抗ウイルス活性を有さなかった。ニトロ芳香族基を用いるリガンド伸長の探究により、化合物31中のようなより単純なニトロ基より少ないジンクフィンガー反応性を一般に示す化合物32〜34が生じた。化合物34のジスルフィド型およびBITA型のみが顕著な抗ウイルス活性を示した。
【0096】
3,3’−ビス(アミノフェニル)スルホンにおいて、スルホニル基の位置を変えることによって、異性体である化合物35および36を作製した(表4)。これらの化合物は、改善された抗ウイルス活性を有する(化合物26対化合物35:EC 50 4.3対1mM;27対36:EC 50 1.5対0.62mM)。しかし、ジンクフィンガー反応性は顕著に減少した(26対35:3.3対0.92RFU/分;27対36:5.9対2RFU/分)。さらに、この変化は、IC 50を少なくとも3倍減少させた(より強い毒性)。従って、3,3’−ジフェニルスルホン異性体は、主要な利点を提供しなかった。
【0097】
(ジスルフィドから新規なチオールエステルへの変換)
NCp7ジンクフィンガー上のジスルフィドの作用は、薬剤とCCHCシステインの硫黄原子との間のチオール−ジスルフィド交換に関与する。NCp7と2分の1の薬物(「モノマー」部分)との間での、得られるジスルフィド共有結合は、NCp7構造体からのZn 2+イオンの受動的な損失を伴って亜鉛キレートの崩壊を生じる(例えば、Rice(1995)前出;Huang(1998)前出を参照のこと)。
【0098】
上記の任意の化合物を使用して可能となる結合より安定な結合を介して、ジンクフィンガーシステインを共有結合的に修飾するために、新規のチオエーテルが設計されそして合成された。チオエーテル結合を作製するために、ベンズアミドヘッド基のオルト位またはメタ位に、適度に活性なSH−選択的アルキル化官能基が設計された。単配位(モノマー)のベンズアミドは、アミド結合またはチオエステル結合を介して潜在的に反応性のハロアルカノイル基に結合される(表5)。化合物37〜39は、ベンズアミドのオルト位またはメタ位のいずれかへのアミド結合を表す。化合物2のリガンド型のオルト位(化合物37)またはメタ位(化合物38)のいずれかにおけるCl−(CH 22−CO−NH−の置換により、適度なジンクフィンガー反応性を有する化合物が生成する。しかし、適切な抗ウイルス活性は有していない。オルトCl−CH 2−CO−NH−を有する化合物39は、完全に不活性である。オルトアミド置換プローブは、リガンド構造体としていくつかの他の骨格を使用して合成され、そして同等の結果を与えた。
【0099】
オルト位の、アルカノイル、アロイル、およびハロアルカノイルチオエステルが、設計および合成された(化合物40〜52、表5および6)。アセチルチオエステル(化合物40)、ベンゾイルチオエステル(化合物41)、4−メトキシベンゾイルチオエステル(化合物42)およびブチロイルチオエステル(化合物43)の合成によって、低いμMのEC 50値を有し、十分なジンクフィンガー反応性に対して適度な4つの化合物が得られた。しかし、50μM範囲のIC 50
値のため、これらの抗ウイルス活性はBITA誘導体の抗ウイルス活性に近かった(表1)。
【0100】
新規のチオエステルは、ω−ハロアルカノイル基を使用して合成した。化合物2のオルト5−ブロモバレロイルチオエステル誘導体(化合物44)は、顕著に減少した細胞毒性および適度のジンクフィンガー活性を生じた。化合物44をピリジニオアルカノイル(pyridinioalkanoyl)チオエステル(PATE)誘導体(化合物45)に変換することによって、治療指数がさらに高められる。得られた薬剤は、有効なジンクフィンガー反応性(3.6RFU/分)、316μMの高い試験用量での非毒性、および10μM未満のEC 50を示す。
【0101】
表6は、PATEが、それらの親化合物より好ましい抗ウイルスプロフィールおよび毒性プロフィールを化学種として示すことを表す。ピリジニオバレロイルチオエステルにより示される毒性の欠如は、それらが化合物2、31、34、27および36のモノベンズアミド骨格に付加して、それぞれ新規の化合物45、47、50、51および52を生成することによって例示され、ここで、親モノベンズアミドの細胞毒性は全ての場合において減少する。化合物23の骨格のPATE化学種への変換により化合物48が得られるが、この化合物48は、他のピリジニオバレロイルチオエステルに見出されるオーダーの選択性指数(TI)を生じず、モノベンズアミド毒性を低下させず(化合物23のBITA 53.7μM対化合物48μM)、ピリジニオバレロイルチオエステルの変換は、ジスルフィド型に関連する毒性を部分的に軽減する(化合物23DのIC 50:19.4μM対化合物48のIC 50:55μM)。従って、チオールエステル、および特にPATEは、ウイルス性ジンクフィンガーを標的にする新規の化学治療剤として使用され得る新規な化学種を示す。
【0102】
(ピリジニオアルカノイルチオエステル(PATE)の抗ウイルス活性)
5−ブロモバレロイルチオエステル(化合物44)、ならびに2つの5−ピリジニオバレロイルチオエステル(化合物45および47)を、機械的アッセイおよび標的ベースのアッセイで分析した。これらの化合物は、UIV−1インテグラーゼ酵素活性、逆トランスクリプターゼ酵素活性またはプロテアーゼ酵素活性を阻害しなかった(表7)。組み換えHIV−1逆トランスクリプターゼを使用する、HIV−1逆トランスクリプターゼrAdT(テンプレート/プライマー)およびrCdG(テンプレート/プライマー)に対する活性についてのアッセイ(S.Hughes,ABL Basic Research NCI−FCRDC,Frederick MD)を、Rice(1997)前出に記載されるように実施した。組み換えHIV−1プロテアーゼの基質開裂は、試験化合物の存在下で、人工基質Ala−Ser−Glu−Asn−Try−Pro−Ile−Val−アミド(Multiple Peptide Systems,San Diego CA)を用いて、HPLCベースの方法を使用して、Rice(1997)前出に記載されるように行った。試験化合物の存在下で3’プロセシングおよび鎖転移活性を行う、組み換えHIV−1インテグラーゼ(S.Hughes,ABL Basic Research NCI−FCRDC,Frederick MD)の能力は、Buckheit(1994)AIDS Res.Hum.Retroviruses 10:1497〜1506、およびTurpin(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:487〜494に記載されるように実施された。
【0103】
5−ブロモバレロイルチオエステル化合物44ならびに2つの5−ピリジニオバレロイルチオエステル化合物45および47はまた、ウイルスの結合(細胞ベースのp24結合アッセイ)および宿主細胞への融合を阻害しなかった。細胞ベースのp24結合アッセイは、Rice(1995)Science270:1194〜1197に記載されるように実施した。ウイルス不活化アッセイは、わずかに改変して、Rice(1995)Science 270:1194〜1197、およびTurpin(1997)前出に記載されるように実施した。手短に言うと、MAGI−CCR−5細胞を、平底2cmウェルプレート中で24時間平板培養した(ウェルあたり4×10 4細胞)。この後、この培地を取り除き、化合物処理したウイルスを加えた。使用されるウイルスは、複製順応性NL4−3ウイルスを生じるHeLa細胞に、pNL4−3を一過性トランスフェクションすることによって得られた。ウイルスを含む上清を37℃で2時間処理し、その後残った化合物を遠心分離法(18,000×g、1時間、4℃)によって除去した。ウイルスペレットを再懸濁し、MAGI−CCR−5単層にのせて48時間培養した。単層をX−gal溶液を用いて固定および染色し、青色の細胞を数えた。
【0104】
ウイルス性融合に対する試験化合物の効果の決定が、以下のように実施される。つまり、HIV−1 Tatおよび細胞表面gp120を安定して発現するHL2/3細胞ならびにそれらの細胞表面でCD4およびCCR5を安定して発現するMAGI−CCR−5細胞(これらは、HIV−1 LTRのコントロール下で、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を含有する)が、試験化合物で、37℃で1時間前処理された。インキュベーション後、これらの細胞を4対1の比率(2×10 5MAGI−CCR−5対8×10 5HL2/3細胞)で混合し、そして18時間37℃で同時培養した。培地を固定し、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性のためのX−gal溶液で染色した。青色細胞は、CD4/CCR5コ−レセプターgp120相互作用によるHL2/3およびMAGI−CCR−5細胞の融合の際のHIV−1 LTRのTatトランス活性化を示した。
【0105】
全ての3つのチオールエステル化合物44、45および47は、上記のように、Trp37アッセイにより評価されるように、NCp7タンパク質からの金属イオン(亜鉛)の放出を促進する。これらの化合物は、TSQ蛍光色素アッセイを妨害する(したがって、試験することができなかった)(表9参照)。
【0106】
ジンクフィンガーインヒビターのNCp7との相互作用により、タンパク質構造、およびHIV−1Ψパッケージング部位を示すオリゴヌクレオチドを特異的に結合するそれらの能力の欠損をもたらし得る(Huang(1998)上出;Tummino(1997)Antimicrob.Agents Chemother.41:394−400;South(1993)Protein Sci.2:3−19;Dannull(1994)EMBO J.13:1525−1533)。タンパク質を本発明のチオールエステルで処理した後のNCp7のこれらのオリゴヌクレオチドと特異的に結合する能力が試験された。例えば、化合物44、45または47は、標的オリゴヌクレオチドと結合するNcp7の能力を阻害することにおいて、非常に有効であった(これは、非変性ポリアシルアミドゲル上の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用して決定される)。1μMにおいて、化合物45は複合体形成を阻害した。化合物44および47は、100μMで複合体形成を阻害した(表9を参照)。
【0107】
化合物44、45または47の結合活性が、CCHCジンクフィンガーについて特異的であったかどうかを決定するために、K562細胞核抽出物をこれらの化合物で処理した後、スーパーゲルシフトEMSAが実施された。これは、Sp1特異的抗体でのスーパーシフトに従う。Sp1は、それが、Sp1のDNA標的へのSp1結合に必要とされる古典的なタイプのCCHHジンクフィンガーモチーフの3つのコピーを含有する細胞転写因子であるゆえに選択された。この3つの化合物44、45または47は、そのDNA標的へ結合するSp1のスーパーシフトのパターンを変更しない。このことは、これらのチオールエステルが、CCHCレトロウイルスZnフィンガーについて特異性をを示すことを表している。ジンクフィンガー反応性化合物の特異性を決定するためのスーパーゲルシフトは、Sp1共通(consensus)オリゴマー(Stratagene,La Jolla,CA)、K562細胞核抽出物、およびSp1(Sp1[PEP2]−G)(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA製の抽出物およびSp1 Abs)についての抗体を使用して実行された。オリゴヌクレオチドのK562核抽出物との結合反応および電気泳動条件は、Gelshift Buffer Kit,Stratagene,La Jolla,CAに記載されるように実行された。
【0108】
ジンクフィンガーインヒビター(例えば、本発明のチオールエステル)と、無細胞ウイルスとの相互作用は、ビリオン内NCp7タンパク質の変性および感染性の減少をもたらし得る。無細胞HIV−1 MN由来のビリオン会合NCp7タンパク質を、チオールエステル化合物44および45で処理した。それらはまた、HIV−1 NCp7−特異的抗体を使用する非還元Westernブロット法により評価された。PATE化合物45は、広範な架橋のNCp7をもたらしたが、そのハロアルカノイルチオエステル前駆体(化合物44)は、非常に劣った架橋剤であった。化合物45によるビリオン内NCp7架橋は、DIBA−1(化合物1)に匹敵した。化合物45による架橋は、2−メルカプトエタノール(β−ME)を用いる還元がゲル遅延を完全に逆にするので、分子内ジスルフィド結合の形成の原因となった。化合物47は、NCp7架橋を有効に開始しなかった。AZT、ヌクレオシド逆トランスクリプターゼインヒビターはまた、NCp7を架橋しなかった(表9参照)。
【0109】
NCp7架橋は、ウイルス性不活化と関連する。Westernブロット法で決定されたように、ヌクレオカプシドタンパク質を架橋する能力が、ウイルスを不活化する能力に相関があるかどうかを殺ウイルス性アッセイで試験した。HIV−1 NL4-3のウイルス株を、種々のチオールエステル化合物とともにインキュベートした。このウイルスは、HeLa細胞への複製コンピテントpNL4−3プラスミドの一過性トランスフェクションにより得られた。残余のチオールエステルを遠心分離で除去した。ウイルスのペレットを培養培地中に再懸濁し、そしてMAGI−CCR−5細胞を感染させるために使用した。感染後48時間で、細胞を洗浄し、X−Galで染色した。化合物44および45は、それぞれ12.3μMおよび13.2μMのI 50(50%ウイルス不活性をもたらす濃度)値を有する殺ウイルス性であった。化合物47は、ビリオン内NCp7の有効な架橋剤ではなかったが、不活化ウイルスでは化合物44および45よりもおよそ6倍(I 50=2.1μM)の有効性があった。これらのデータは、チオールエステル(そして、特に化合物47)が、ジンクフィンガー硫黄原子との安定な付加物を形成し、この硫黄原子は、分子間または分子内ジスルフィド架橋の生成には関与しないということを示す。
【0110】
モノベンズアミド骨格と結合していない5−ピリジニオ吉草酸(化合物53)の分析は、たとえそれが抗ウイルス性活性がなかったとしても、Trp37亜鉛放出アッセイにおいて有意な反応性(4 RFU/分)を示した(表6を参照)。化合物53を、NCp7のビリオン内架橋および殺ウイルス性活性についてさらに評価した。NCp7のビリオン内架橋または殺ウイルス性活性のいずれも検出されなかった。したがって、化合物44、45および47のモノベンズアミド骨格は、無細胞ビリオンに対する活性について必須である。
【0111】
チオールエステル化合物がまた、TNFα−誘起U1およびACH−2細胞におけるHIV−1複製を阻害する能力について試験された。U1細胞は、種々の濃度のチオールエステル44、45または47存在下で、5ng/mlのTNFαで誘導された。48時間後、培養物をウイルスp24抗原産生および細胞生存度について特徴付けた。全ての3つの化合物は、U1細胞由来のHIV−1ビリオン(p24)の放出を阻害した(EC50:化合物44、45および47についてそれぞれ94、42.2および10.7μM)(表9を参照)。100μMの高い試験用量では、細胞毒性がないことが明らかであった。全ての3つのチオールエステルのより高い容量の試験(300μM)は、化合物45および47について毒性を示さなかった。化合物44は、200μMで60%の細胞を殺傷した。電気泳動分離および免疫ブロット法(Westernブロット法)によるTNFα−誘起U1細胞由来のウイルス性タンパク質の可視化により、化合物45および47がウイルス性前駆体ポリタンパク質の架橋を誘導し、そしてそれらの前駆体の処理を妨げるということが示された。β−MEでのU1タンパク質調製物の還元は、化合物45(100μM)および化合物47の両方がPr 55gag前駆体処理を妨げることを示した。化合物44はまた、化合物45と47との間の中間レベルで、HIV−1前駆体タンパク質を含むジンクフィンガーの移動度のβ−ME可逆変換を誘導した。前駆体処理評価を、Turpin(1997)Antiviral Chem.Chemother.8:60〜69で記載されるように実行した。したがって、チオールエステルPATEは、遅延相ウイルスアセンブリの間の前駆体ポリタンパク質の細胞間ジスルフィド架橋を開始し、無細胞ウイルスにおける成熟NCp7レトロウイルスジンクフィンガー上の攻撃による直接的殺ウイルス性効果を媒介する。
【0112】
ビリオン架橋は、Rice(1995)Science 270:1194〜1197およびTurpin(1997)Antiviral Chem.Chemother.8:60〜67で記載されるように実施された。つまり、高純度のHIV− 1MN(11.8μgの全タンパク質)をいくつかの濃度の化合物とともに、2時間インキュベートした。ビリオンを濃縮し、残留化合物を遠心分離で除去した(18,000×g、1時間、4℃)。ウイルスのペレットを0.5M Tris−HCl(pH6.8)、50%グリセロール、8%SDSおよび0.4%ブロモフェノールブルーに溶解し、そしてタンパク質をWesternブロット法で分解した。U1細胞またはビリオン架橋実験についてのウイルスのペレット中のHIV−1タンパク質の発現を検出するためのWesternブロット法が、Turpin(1996)J.Virol.70:6180〜6189で記載されるように実行された。つまり、U1実験に関する50μgの細胞タンパク質総量またはNCp7架橋研究に関するビリオンペレット総量(11.8μgのウイルス性タンパク質総量)を、Tris−グリシン(Novex,San Diego CA)を含有するSDS中の4〜20%ポリアクリルアミドゲルで分解した。減少したゲルについてのサンプルを、充填の前に5%β−MEの存在下で5分間煮沸した。分解したタンパク質をポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンでエレクトロブロットし、そしてHIV−1特異的タンパク質をヤギ抗HIV−1 NCp7およびp24または抗NCp7の混合物を使用して、ビリオンタンパク質単独について検出した(L.E.Hendersonの寄贈、AIDS Vaccine Program NCI−FCRDC,Frederick,MD)。Westernブロットは、Dupont−NEN,Wilmington,DEで記載され、製造されるような標準化学発光方法論を使用して開発された。
【0113】
チオールエステルの一つの有意な特性は、インビボの生物学的流体の還元環境の存在下で、ジンクフィンガー反応性を維持する能力である。この特性は、例えば、生理学的条件下でのグルタチオンによる還元に対する化合物の耐性を試験することにより評価され得る。還元に対するこの耐性は、化合物を含有する全てのジスルフィドにわたる有意な改善である。例えば、DIBAのジスルフィド性は、還元環境中でそれらを固有に不安定にする。これにより、ダイマーのモノマー形態への解離が生じ、そして混合したジスルフィドとなる。
【0114】
チオールエステルPATE化合物44、45および47は、2モル過剰のグルタチオンの存在下で、システインチオールを攻撃する能力を維持する。したがって、ジスルフィドの、低求核性5−ブロモバレロイル(bromovaleroyl)チオエステル(化合物44でのような)または5−ピリジニオバレロイルチオエステル(化合物45および47でのような)への転換は、還元剤に対する有意な耐性を与え、従って、ジンクフィンガー反応性の引き続く損失を妨げる(表8を参照)。
【0115】
表10に関して、PATE化学種(chemotype)の活性プロフィールは、カルボニル部位とピリジニオ部位との間のアルキルスペーサーの長さに依存した(化合物54、45および55を比較する)。n=4の間隔は、有効性および毒性に関して最適であるようである。チオールエステルの硫黄の必須の存在は、硫黄がNH−で置換される不活性化合物56により実証される。ピリニジウム環中の窒素に対してメタ位の水素を塩素に置換することは、抗ウイルス性能力を有意に減少し、これはおそらく、塩素基とNCp7の残基39および49との間の静電的相互作用(反発)による。
【0116】
(ジンクフィンガーモチーフ由来の金属イオンの解離の検出)
本発明は、ジンクフィンガーモチーフで複合体化される二価イオンを解離することができる化合物を選択する方法およびキットを提供する。このモチーフは、単離され得るか、またはウイルス性タンパク質またはビリオンのサブ構造であり得る。この方法は、ジンクフィンガーをチオールエステルと接触させる工程、続いてジンクフィンガータンパク質からの金属イオンの解離を検出する工程、を包含する。カチオンは一般に亜鉛である。当該分野で公知の任意の方法論は、金属イオンの解離を検出するために使用され得る。例示の手段として、以下が挙げられる:例えば、キャピラリー電気泳動、免疫ブロット法、核磁気共鳴(NMR)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射性亜鉛−65の放出の検出法、蛍光の検出法、またはゲル移動度シフトの検出法、および本発明の開示から当業者に明らかな他の方法。これらの手順は、当該分野で公知の任意のプロトコルで実施され得る。これらは、科学文献および特許公報に十分に記載されている。少数の例示的な技術が以下に示される。
【0117】
本発明はさらに、インビボで、ジンクフィンガーから金属イオンを解離することができる新規なチオールエステルの種類を提供するので、金属イオンの解離の検出は、本発明の範囲内のチオールエステル種を同定する。亜鉛放出アッセイは、本発明の範囲内のチオールエステルを同定するために、第1ラインスクリーニングとして使用された。このようなスクリーニングのための一つの戦略は、抗ウイルス活性をモニターするためのXTT細胞保護作用アッセイ、およびNCp7タンパク質またはそのGagもしくはGag−Pol前駆体上の細胞レベルで作用し得るチオールエステルを同定するためのTrp37亜鉛放出アッセイを使用した。
【0118】
チオールエステルが、ジンクフィンガーからの任意のレベルのカチオン放出が可能である場合、それは本発明の範囲内である。実際に、低速(すなわちゆっくりとした反応速度で)で亜鉛放出が可能なチオールエステルは、特に特定のインビボ用途として、いくつかの使用のために好ましい。本発明の例示の「弱カチオン放出」チオールエステルは化合物50であり、これはTrp37ジンクフィンガー蛍光アッセイで測定されたように、0.86RFU/分の亜鉛放出速度を有する。しかし、より低い放出速度(<0.86RFU/分)を有するチオールエステルもまた、本発明の範囲内である。「高」放出速度は、およそ8RFU/分の範囲である。<15μMの抗ウイルス活性EC 50を有するチオールエステルが、好ましい実施態様として選択された。
【0119】
(キャピラリーゾーン電気泳動(CZE))
レトロウイルスジンクフィンガータンパク質は、2個の亜鉛イオンと複合体化し、各亜鉛イオンは、2 +の形式電荷を有する。タンパク質と反応し、亜鉛イオンを除去する試薬は、コンホーメーションの変化およびタンパク質の電荷の変化を引き起こす。したがって、反応したタンパク質の電気泳動移動度は、未反応のタンパク質の移動度とは異なる。タンパク質の電気泳動移動度の変化は、標準的な技術であるキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)により容易に検出され得る。一般的なCZEの詳細に関しては、以下を参照のこと:例えば、Capillary Electrophoresis,Theory and Practice(Academic Press,Inc.GrossmanおよびColburn(編)(1992))。
【0120】
一般に、タンパク質の(キャピラリー電気泳動チューブ中のバッファにより決定されるpHでの)電気泳動移動度が、固定された開始位置から一方の電極の方へレトロウイルスタンパク質を移動させるために使用される。移動速度が、UV吸収(例えば、215nmで)モニターされ得る。高品質のレトロウイルスNCタンパク質を含有する適切な量の溶液を含むサンプルチューブ(これは、CCHCジンクフィンガー不活化について試験されるチオールエステル化合物を含むおよび含んでいない)が、自動サンプルインジェクターに入れられる。プログラムされた間隔で、サンプルはキャピラリーチューブへ流され、UV吸収がモニターされる。非変性(unmodified)レトロウイルスNCタンパク質は、検出器を通るタンパク質の移動のシャープなピークを与える。高品質な試験化合物との反応により引き起こされるこのタンパク質の変性は、反応したタンパク質の電気泳動移動度の変化により示される。
【0121】
キャピラリーゾーン電気泳動は、単純な自動化の利点を有する。なぜならば、多数の異なるサンプルは、連続的ランでロードされ、そして分析され得るからである。各ランは、約10分を必要とし、そして各サンプルチューブは、多数回、分析され得る。CCHCジンクフィンガー反応性について試験されるべき選択された化合物の分析のためのCZEを利用するキットの例は、例えば1.0mlの水中に、亜鉛と複合体化された精製レトロウイルスNCタンパク質を約100マイクログラム(μg)含み、そして約1000の試験化合物の試験のために使用され得る。
【0122】
(亜鉛−65標識化NCp7からの放射性亜鉛の放出)
精製HIV−1 NCp7は、決定された特異的活性を有する放射性亜鉛−65で再構築され得る。試験化合物とレトロウイルスNCタンパク質との反応によって引き起こされる放射性亜鉛−65の放出をモニタリングすることにより、試験化合物の反応性を決定することが可能である。
【0123】
チオールエステル試験化合物は、放射性亜鉛−65と複合体化されたNCタンパク質を含有する溶液に添加され得る。この反応後、タンパク質(反応された、および未反応の)は、例えば、公知の抗体を使用する免疫沈澱または免疫吸着方法によって、あるいはNCタンパク質が核酸マトリックス上の結合部位を飽和するような核酸の校正量の添加により、沈殿され得る。低いイオン強度の条件下で、飽和タンパク質−核酸の複合体は沈殿物を形成し、これは遠心分離により除去され得る。あるいは、標識化ヌクレオカプシドタンパク質は、固体支持体に連結され得、そして試験試薬はこの連結タンパク質に直接添加される。タンパク質から亜鉛を放出する任意の反応は、放射性亜鉛−65の可溶性上清への放出により検出され得る。この一般的手順は、利用可能な機器に依存して自動化され得る。
【0124】
レトロウイルスヌクレオカプシドタンパク質および適切な沈殿剤を供給するキットは、試験化合物がタンパク質から亜鉛を除去する能力を検出するために使用され得る。
【0125】
(亜鉛−65標識化全ウイルスからの放射性亜鉛の放出)
亜鉛は、CCHCジンクフィンガーアレイのほぼ化学量論の量でウイルスに存在する(Bess(1992) J.Virol.66:840)。ほぼすべての亜鉛は、CCHCアレイ中に配位される(Summers(1992) Protein Science 1:563)。従って、ウイルスから放出される亜鉛は、関係のないタンパク質またはビリオンとの他の非特異的会合からよりもむしろ、CCHCアレイにおいて以前に配位された亜鉛から誘導される。
【0126】
精製ウイルスは、添加した亜鉛−65の存在下で培養された細胞から生成され得る。標識化ウイルスは、単離され、そして添加したEDTAの存在下で密度勾配遠心分離によって精製され得、任意の結合していない亜鉛を除去する。精製ウイルスは、目的の任意のレトロウイルスであり得、これにはHIV−1、HIV−2またはSIVが挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
試験されるべき化合物(本発明のチオールエステル)は、選択の試験化合物に関して適切な条件下で、精製放射性ウイルスに添加され得る(Rice(1993)Nature 361:473−475)。試薬の反応、除去および/または不活化後、ウイルスは、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton X−100)の添加により崩壊(disrupt)され、そして核酸に複合体化されたNCタンパク質を含むウイルス核は、遠心分離によって除去される。
【0128】
上清へ放出される放射性亜鉛−65は、試験化合物がインタクトなウイルスに浸透し、そしてNCタンパク質−亜鉛の複合体を崩壊したことを示す。試験化合物がレトロウイルスNC−キレート化亜鉛を除去し得るか否かを決定するためのキットは、例えば、それらのNCタンパク質へ取り込まれる放射性亜鉛−65を有するインタクトなレトロウイルス粒子、適切な反応緩衝液、および非イオン性界面活性剤を含む。
【0129】
(タンパク質からの亜鉛分離の蛍光ベースの検出)
芳香族タンパク質部分の内因性蛍光の変化は、タンパク質コンホメーションの変化に関する反応をモニタリングするために通常使用される。本発明において、蛍光は、本発明のチオールエステルと接触させた後、ジンクフィンガーからの金属イオンの損失(例えば、CCHCレトロウイルスジンクフィンガータンパク質からの亜鉛の損失)をモニタリングするために使用され得る。HIV−1 NCタンパク質の第2ジンクフィンガーにおけるTrp37の内因性蛍光は、ジンクフィンガー複合体のコンホメーションおよび核酸結合をモニタリングするために使用されてきた(Summers(1992)、前出を参照のこと)。
【0130】
亜鉛の駆出は、化合物が、タンパク質の露出部分から内部部分へのトリプトファン37残基の移動のために蛍光の損失を引き起こす精製NCp7タンパク質のサイトカインを化学的に攻撃する能力によって測定される。亜鉛の駆出は、総蛍光の低下%または30分アッセイの間の1分当たりの相対的蛍光単位(RFU/分)の低下%のいずれかとして測定され、そして表される。チオールエステルは、任意の量の亜鉛の駆出が検出される場合、本発明の範囲内であると考えられる。例えば、化合物50は、0.86RFU/分の亜鉛駆出速度を有する。
【0131】
人工蛍光プローブはまた、タンパク質に取り込まれ得、コンホメーションの変化の検出を提供する。ポリエチノ−アデニンは、例えば、チオールエステル−ジンクフィンガー相互作用の程度を測定するための蛍光核酸として使用され得る(Karpel(1987)、J.Biol.Chem 262:4961を参照のこと)。
【0132】
最後に、遊離亜鉛を複合体化し得る種々の公知の蛍光亜鉛キレーターは、亜鉛の損失をモニタリングするために使用され得る。CCHCジンクフィンガーアレイからの亜鉛の放出をモニタリングすることによって、所定の試薬の効果が決定され得る(Rice(1996)J.Med.Chem.39:3606−3616;Rice(1996)Science 270:1194−1197)。
【0133】
(ゲル−移動度シフトアッセイによるジスルフィド架橋NC−タンパク質の検出)
精製濃縮レトロウイルスおよびこのウイルスの精製NCタンパク質に対する抗血清は、特定の化合物が、このウイルスに透過し、そしてこのウイルスの核においてジスルフィド複合体を形成することによってNCタンパク質と反応する能力を試験するために使用され得る。化合物は、この化合物に適切な反応条件下で、全レトロウイルスと混合される。次いで、このウイルスは、遠心分離により試薬から除去され、そして例えば、標準SDS−PAGEサンプル緩衝液中、(低減)2−メルカプトエタノールを用いて、および(非低減)2−メルカプトエタノールを用いずに、崩壊される。次いで、このウイルスタンパク質は、標準SDS−PAGEにより分離され、そしてこのサンプルは、非低減サンプルにおけるモノマージンクフィンガータンパク質の存在または非存在について試験される。試験に使用されるウイルスおよび電気泳動の条件に依存して、ジンクフィンガータンパク質は、タンパク質染色方法によって、または免疫ブロット法によって、視覚化され得る。ジンクフィンガー複合体を攻撃し、そしてジスルフィド架橋生成物を形成することによってジンクフィンガータンパク質と反応する化合物は、ウイルスを不活化する。従って、目的の化合物(すなわち、架橋を引き起こす化合物)(本発明のチオールエステルを含む)は、検出されるモノマージンクフィンガータンパク質の量を低減させる。例えば、チオールエステル化合物45は、ビリオン内NCp7の強い架橋であり、これはウェスタンブロット法によって検出されるようなモノマーNCp7の完全損失を引き起こす。
【0134】
チオールエステル処理されたビリオンはまた、感染性に関して試験され得る。このビリオンは、培地に懸濁され(可溶化ではなく)、そして標的細胞に添加される。次いで、この培養物は、このビリオンがまだ活性であるか否かを決定するために試験される。処理されたウイルス粒子が活性であるか否かを決定するために、この細胞は、細胞内で合成されたウイルスRNAの存在に関して、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、モニタリングされる(Rice(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:9721;Turpin(1996) J.Virol.70:6180)。あるいは、細胞保護作用アッセイが使用され得る(Weislow(1993) J.Natl.Cancer Inst.81:577)。
【0135】
ゲル移動度シフトアッセイにおける制御として使用され得る化合物の例は、アゾジカルボンアミド(ADA)(Aldrich Chemical Campany(Milwaukee、WI)から市販されている化合物)である。ADAはまた、上記PCRアッセイを使用して決定されるように、HIV−1ウイルスを不活化させる。
【0136】
ゲル移動度シフトの概念を組み込むアッセイは、インタクトなウイルスに浸透し得るチオールエステルを同定し、そして研究するために、およびウイルスジンクフィンガータンパク質中、ジスルフィド架橋を誘導するために、使用され得る。このようなキットは、例えば、ジスルフィド架橋のためにゲルを通る移動度の変化をモニタリングするために、精製濃縮レトロウイルスおよび適切なサイズの標準物(standard)を含む。
【0137】
(反応生成物の構造特徴付けのための高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)精製NCタンパク質)
高精製レトロウイルスジンクフィンガータンパク質は、組換えDNA技術によって生成されるベクターからの発現によって生成され得る。これらのタンパク質は、Summer(1992) Protein Science 1:563−567によって記載されるように、亜鉛とともに再構築される場合、本発明のチオールエステル化合物によって攻撃される標的であるジンクフィンガーを含むNCタンパク質の供給源を提供する。ジンクフィンガータンパク質が同定された化合物と反応する場合、この反応は、ジンクフィンガータンパク質の共有結合変化を生成し、そしてこの修飾タンパク質は、例えば逆相HPLCによって未反応タンパク質から分離され得る。
【0138】
精製タンパク質およびこれらの分離方法は、化学的および構造的分析のための、十分な修飾タンパク質(すなわち、反応生成物)を得るために使用される。精製反応生成物は、単離され、そしてそれらの構造は標準N−末端Edman分解によって決定される。しかし、任意の特定の薬剤に関して、この勾配およびHPLC条件は、NCタンパク質および反応生成物に依存する。
【0139】
この手順は、HIV−1ジンクフィンガーと反応するチオールエステルを同定するために使用される。示されるデータに関するこの反応条件およびHPLC条件は、上記の反応条件およびHPLC条件に類似した。
【0140】
これらの技術を標準化するキットは、それらが例えば精製レトロウイルスジンクフィンガータンパク質を含むように再構築され得る。
【0141】
(亜鉛損失の核磁気共鳴ベースの検出)
NMRは、レトロウイルスジンクフィンガータンパク質からの亜鉛の損失をモニタリングするために使用され得る(例えば、Rice(1993)Nature 36:473−475;McDonnell(1997) J.Med.Chem.40:1969;Rice(1997) Nature Medicine 3:341−345を参照のこと)。当業者は、タンパク質−リガンド相互作用をモニタリングするための、NMRの一般的技術およびその多くの適用に精通していることが期待される。簡単に述べると、亜鉛に結合されるレトロウイルスジンクフィンガータンパク質中の原子は、亜鉛を欠いているジンクフィンガータンパク質よりも、異なる局所的環境を共有する。局所的環境における相違は、亜鉛と結合するタンパク質分子、対、亜鉛と結合しないタンパク質分子について、異なったNMRスペクトルの原因となる。例えば、金属イオンキレート化ジンクフィンガータンパク質および本発明の化合物を含有するサンプルのプロトン( 1H)スペクトルを、経時的にモニタリングすることにより、この化合物が、タンパク質にその亜鉛イオンを放たせるか否かを測定することが可能となる。
【0142】
NMRは、亜鉛に結合されるタンパク質分子のパーセントを提供するために経時的に使用され得るので、この技術を使用して所定の反応の反応速度論を定義することもまた可能である。同様に、NMRは、ジンクフィンガータンパク質が核酸複合体に結合する際の、試験化合物の効果をモニタリングするために使用され得る。例えば精製レトロウイルスジンクフィンガータンパク質およびオリゴヌクレオチドを含有するキットは、この方法の実施を標準化するために使用され得る。
【0143】
(チオールエステル抗ウイルス活性の決定)
チオールエステルは、これが抗ウイルス活性(すなわち、ウイルスの伝達またはウイルスの複製能力を低減あるいは減少させる任意の能力)を示す場合、本発明の範囲内である。この抗ウイルス活性は、臨床観察によって経験的に決定され得るか、または任意のインビボまたはインビトロ試験もしくはアッセイ(例えば、XTT細胞保護作用アッセイ(本明細書中に記載される)の使用、Tat−誘導活性(HeLa−CD4−LTR−β−gal(MAGI細胞)アッセイにおけるような)の測定、ならびにTat−誘導β−ガラクトシダーゼ活性の検出などによって客観的に決定され得る(例えば、Tokunaga(1998) J.Virol.72:6257−6259を参照のこと)。任意の程度の測定可能な抗ウイルス活性を有するチオールエステルは、たとえ金属イオン分解が検出可能でなくても、本発明の範囲内である。
【0144】
抗ウイルス活性を決定するための1つの例示的手段は、CEM−SS細胞およびウイルス(例えば、HIV−1 RF)(MOI=0.01)を用いて、XTT(2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウムヒドロキシド)細胞保護作用アッセイを使用することである(Rice(1993) PNAS 90:9721−9724、およびRice(1997) Antimicrob.Agents Chemother.41:419−426によって記載されるように)。簡単に述べると、細胞は、HIV−1 RF(または試験されるべき他のウイルス)で、試験化合物(チオールエステルおよびコントロール)の種々の希釈物の存在下で、感染される。この培養物は、7日間、インキュベートされる。このときの間、保護化合物(すなわち、抗ウイルス活性を有する化合物)の複製ウイルスなしのコントール培養物は、シンシチウムを誘導し、そして約90%細胞死を引き起こす。この細胞死は、XTT色素の低減によって測定される。XTTは、可溶性のテトラゾリウム色素であり、これはMTTと同様に、ミトコンドリアのエネルギー出力を測定する。デキストランスルフェート(接続インヒビター)または3’−アジド−2’−3’−ジデオキシチミジン、AZT(逆トランスクリプターゼインヒビター)を使用するポジティブコントロールが、各アッセイに添加される。個々のアッセイは、姉妹プレート方法を使用して複製でなされる。
【0145】
50%細胞保護作用を提供する有効抗ウイルス濃度(EC 50)、および50%細胞毒性を引き起こす細胞増殖抑制濃度(IC 50)が、計算される。
【0146】
あるいは、任意のウイルスは、培養で、またはインビボ(動物)モデルで、チオールエステルまたはチオールエステル含有の薬学的処方物の存在または非存在下で増殖され、抗ウイルス、ウイルス伝達阻害活性および効果に関して試験され得る。本開示の総説で当業者に明らかである任意のウイルス、アッセイまたは動物モデルが使用され得る(例えば、Lu(1997) Crit.Rev.Oncog.8:273−291;Neildez(1998) Virology 243:12−20;Geretti(1998)J.Gen.Virol.79:415−421;Mohri(1998)Science 279:1223−1227;Lee(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:939−944;Schwiebert(1998)AIDS Res.Hum.Retroviruses 14:269−274を参照のこと)。
【0147】
インビトロアッセイに関して、チオールエステル試験化合物の存在下で増殖される培養物のウイルス負荷の任意の測定可能な減少(ポジティブまたはネガティブコントロール化合物と比較して)は、抗ウイルス、転写阻害効果を表す。典型的に、ウイルス負荷の少なくとも30%の減少(一般に、10%と99%との間)が観察される。上記定義の節で論議したように、任意の関連判定基準は、チオールエステル組成物またはチオールエステル含有組成物の抗ウイルスの有効性を評価するために使用され得る。
【0148】
(レトロウイルスヌクレオカプシドタンパク質のクローニングおよび発現)
本発明の新規なチオールエステルは、インビトロにおいて、ジンクフィンガーから金属イオンを解離させ得る。ジンクフィンガー含有タンパク質は、金属イオンのジンクフィンガーモチーフからの解離を検出するため、ならびに本発明の方法およびキットにおいて、使用される。ジンクフィンガーモチーフおよびこれらのモチーフを含有するタンパク質のクローニングおよび発現の、一般的な実験室手順は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning A Laboratory Manual(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989の現行の版;CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubel編、Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York(1987)に見出され得る。ジンクフィンガーの配列および供給源は、核酸、タンパク質およびウイルス源を含め、例えば、電子データベース(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/においてThe National Center for Biotechnology Information、またはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/においてThe National Library of Medicineなど)によって、公共的に利用可能である。
【0149】
ジンクフィンガー含有タンパク質の発現に使用され得る核酸組成物は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、または様々な組合せのハイブリッドのいずれであれ、天然の供給源から単離され得るか、またはインビトロで合成され得る。組換えDNA技術が、ポリペプチドを産生するために使用され得る。一般的に、問題のポリペプチドまたはペプチドをコードするDNAが、発現ベクターへのライゲーションに適した形態で、初めにクローニングまたは単離される。ライゲーションの後に、DNAフラグメントまたは挿入物を含むベクターが、組換えポリペプチドの発現に適した宿主細胞に導入される。次いで、これらのポリペプチドが、この宿主細胞から単離される。核酸が、形質転換もしくはトランスフェクトした全細胞内、または形質転換もしくはトランスフェクトした細胞溶解産物に存在し得るか;あるいは部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で、存在し得る。ジンクフィンガー含有タンパク質をコードする遺伝子を核酸操作する技術(例えば、核酸配列の発現ベクターへのサブクローニング、プローブの標識、DNAハイブリダイゼーションなど)は、例えば、SambrookおよびAusubel(前出)に記載されている。
【0150】
一旦、DNAが単離され、クローニングされると、所望のポリペプチドが、組換え操作(recombinantly engineer)した細胞(例えば、細菌、酵母、昆虫、または哺乳動物の細胞)内で、発現され得る。当業者は、組換えにより産生したタンパク質の発現に利用可能な、多数の発現システムに精通していることが、予測される。原核生物または真核生物におけるタンパク質の発現に関して公知の様々な方法を詳細に記載する試みは、なされない。簡単に要約すると、ポリペプチドをコードする天然または合成の核酸の発現は、典型的に、DNAまたはcDNAをプロモーター(これは、構成的または誘導的のいずれかである)に作用的に結合し、次いで発現ベクターに取り込むことによって、達成される。これらのベクターは、原核生物または真核生物のいずれかにおいて、複製および組み込みに適切であり得る。典型的な発現ベクターは、組換えポリペプチドをコードするDNAの発現の調節に有用な、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、ならびにプロモーターを含む。クローニングされた遺伝子の高レベルの発現を得るために、直接転写のプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳ターミネーターを最低限含む、発現プラスミドを構築することが、望ましい。
【0151】
(殺ウイルス剤としてのチオールエステル)
本発明は、生体有機物質または他の物質、および物質を汚染するか、または汚染し得る任意のウイルス(チオールエステルによる不活化を受けやすいもの)を不活化するに効果的な量の本発明のチオールエステルを含有する組成物を、提供する。この物質は、生体有機物(例えば、血漿、栄養培地、タンパク質、医薬品、化粧品、精子調製物または卵母細胞調製物、細胞、細胞培養物、細菌、ウイルス、食品、飲料など)であり得る。これらは、外科用あるいは他の医用物質(例えば、インプラント物質またはインプラント可能デバイス(例えば、プラスチック、人工心臓弁もしくは関節、コラーゲン)など、医用材料(例えば、カテーテル法、挿管法、IV用のチュービング)、および容器(例えば、血液バッグ、貯蔵容器)など)であり得る。あるいは、本発明のチオールエステルは、上記物質の任意のものに、殺ウイルス試剤として適用され、そしてその物質の使用の前に除去される、組成物の形態であり得る。この殺ウイルス性組成物は、本発明の異なるチオールエステルの様々な量での混合物を含有し得る。例えば、チオールエステルは、ウイルス汚染の可能性を減少させ、実験室の研究者のためのさらなる安全性を提供するために、細胞培養物に添加され得る。
【0152】
(薬学的処方物としてのチオールエステル)
本発明はまた、本発明のチオールエステルを含有する薬学的処方物を提供する。これらのチオールエステルは、ウイルス感染(特に、レトロウイルス感染)の処置のために、哺乳動物(特に、ヒト)に投与するに有用な、薬学的組成物において使用される。
【0153】
本発明のチオールエステルは、様々な様式で投与するための薬学的処方物として処方され得る。典型的な投与経路は、腸内および腸管外の両方を含む。これらには、例えば、限定されることなく、皮下、筋内、静脈内、腹腔内、骨髄内、心膜内、嚢内、経口、舌下、眼内、鼻腔内、局所的、経皮的、経粘膜的、または直腸が挙げられる。投与の様式は、例えば、嚥下、吸入、注射、または表面(例えば、眼球、粘膜、皮膚)への局所的適用であり得る。特定の処方物は、典型的には、投与の特定の様式に適切である。考慮される様々な処方物には、例えば、水溶液、固体、エアロゾル、リポソーム、および経皮的処方物が挙げられる。処方および投与に関する技術の詳細は、科学的および特許文献に十分に記載されている。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Maack Publishing Co,Easton PA)の最新版を参照のこと。
【0154】
(腸内、腸管外、または経粘膜的投与のための、水溶液)
腸内、腸管外または経粘膜的薬物送達のための処方物において使用され得る、水溶液の例には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、Hank溶液、Ringer溶液、デキストロース/生理食塩水、グルコース溶液などが挙げられる。これらの処方物は、安定性、送達性または溶解度を増大させるために、薬学的に受容可能な補助的基質(例えば、緩衝剤、張度調節剤、湿潤剤、洗浄剤など)を含有し得る。添加剤はまた、殺菌剤、または安定剤のような、さらなる活性成分を含み得る。例えば、この溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、またはオレイン酸トリエタノールアミンを含有し得る。これらの組成物は、従来の、周知の安定化技術によって安定化され得るか、または滅菌濾過され得る。得られる水溶液は、そのままで使用するため、または凍結乾燥されて、パッケージされ得る(凍結乾燥された調製物は、投与の前に、滅菌水溶液と合わせられる)。
【0155】
水溶液は、注射に適切であり、そして特に、静脈内注射に適切である。静脈内溶液は、洗浄剤、および脂質のような乳化剤を含有し得る。水溶液はまた、等張剤(tonics)としての腸内投与、および例えば、点鼻薬または点眼剤としての、粘膜あるいは他の膜への投与のために、有用である。この組成物は、約1mg/ml〜100mg/ml、より好ましくは、約10mg/ml〜約50mg/mlの量の、チオールエステルを含有し得る。
【0156】
(腸内または経皮的送達のための処方物)
固体処方物は、腸内投与のために使用され得る。これらは、例えば、丸薬、錠剤、散剤またはカプセル剤として、処方され得る。固体組成物については、従来の非毒性固体キャリアが使用され得、これには、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク(talcum)、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。経口投与については、薬学的に受容可能な非毒性組成物は、通常使用される任意の賦形剤(例えば、先に列挙したキャリア)、および一般的には10%〜95%の活性成分を組み込むことによって、形成される。
【0157】
非固体処方物もまた、腸内(経口)投与のために使用され得る。キャリアは、石油、動物性油、植物性油または合成油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)を含む、様々な油から選択され得る。Sanchezら、米国特許第5,494,936号を参照のこと。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギ、白亜、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから合成された、非イオン性ブロックコポリマーもまた、薬学的賦形剤であり得る;この種のコポリマーは、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、安定化剤、および分散剤として作用し得る。例えば、Newman(1998)、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.15:89〜142を参照のこと。
【0158】
錠剤のような、単位用量形態は、約50mg/単位〜約2グラム/単位の間、好ましくは約100mg/単位〜約1グラム/単位の間であり得る。
【0159】
(局所的投与:経皮的/経粘膜的送達)
全身性投与もまた、経粘膜的または経皮的手段により、可能である。経粘膜または経皮的投与については、浸透されるべき障壁に対する適切な浸透剤が、その処方において使用され得る。このような浸透剤は一般に、当該分野において公知であり、例えば、経粘膜的投与については、胆汁酸塩類およびフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、洗浄剤が、浸透を容易にするために使用され得る。経粘膜的投与は、例えば、鼻腔スプレーにより、または坐剤を使用して、なされ得る。
【0160】
局所的投与については、これらの試剤は、軟膏剤(ointment,salve)、クリーム、散剤およびゲルに処方される。1つの実施態様においては、経皮的送達試剤は、DMSOであり得る。経皮的送達システムにはまた、例えば、パッチが挙げられ得る。
【0161】
チオールエステルはまた、持続的な送達または持続的な放出機構(これは、処方物を内部から送達し得る)においても投与され得る。例えば、生分解性のミクロスフェアまたはカプセル、あるいは組成物の持続的な送達が可能な他の生分解性ポリマー構成物が、本発明の処方物に含まれ得る(例えば、Putney(1998)Nat.Biotechnol.16:153〜157を参照のこと)。
【0162】
(処方物の吸入による送達)
吸入については、チオールエステル処方物は、当該分野において公知の任意のシステムを使用して送達され得、このシステムには、乾燥粉体エアロゾル、液体送達システム、エアジェット噴霧器、プロペラントシステムなどが挙げられる。例えば、Patton(1998)Biotechniques 16:141〜143;例えば、Dura Pharmaceuticals(San Diego,CA)、Aradigm(Hayward,CA)、Aerogen(Santa Clara,CA)、Inhale Therapeutic Systems(San Carlos,CA)などによる吸入送達システムを参照のこと。
【0163】
例えば、薬学的処方物は、エアロゾルまたはミストの形態で、投与され得る。エアロゾル投与については、処方物は、細かく分割された形態で、界面活性剤およびプロペラントと共に、供給され得る。界面活性剤は、好ましくは、プロペラントに可溶である。このような試剤の代表的なものは、6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸(例えば、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン(olesteric)酸およびオレイン酸)と、脂肪族多価アルコールまたはその環式無水物(例えば、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、マンニトール、ソルビトール、ソルビトールから誘導したへキシトール無水物)との、エステルまたは部分エステル、ならびにこれらのエステルの、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン誘導体である。混合または天然のグリセリドのような、混合エステルが、使用され得る。界面活性剤は、組成物の0.1重量%〜20重量%、好ましくは、0.25重量%〜5重量%を構成し得る。この処方物の残りは、通常は、プロペラントである。液化プロペラントは、典型的に、周囲環境においては気体であり、加圧下で凝縮している。適切な液化プロペラントのうちで特に適切なものは、ブタンおよびプロパンのような、5個までの炭素を含む低級アルカンであり;そして好ましくは、フッ素化またはフルオロクロロ化(fluorochlorinated)アルカンである。上記のものの混合物がまた、使用され得る。エアロゾルの生成において、適切なバルブを備えた容器が、細かく分割した化合物および界面活性剤を含む、適切なプロペラントで満たされる。これらの成分は、バルブの作動によって放出されるまで、このように加圧下に維持される。例えば、Edwards(1997)Science 276:1868〜1871を参照のこと。
【0164】
本発明のチオールエステルの投与のための、噴霧器またはエアロゾル化デバイスは、典型的に、約1mg/m 3〜約50mg/m 3の吸入用量を、送達する。
【0165】
吸入による送達は、炎症性成分を含む呼吸状態の処置のために呼吸組織へ送達するために、特に効果的である。
【0166】
(他の処方物)
本発明の薬学的物の調製において、様々な処方改変が使用され、操作されて、薬物動態および生体分布を変化させ得る。薬物動態および生体分布を変化させるための多数の方法が、当業者に公知である。薬物動態についての一般的な議論については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(前出)、第37章〜第39章を参照のこと。
【0167】
(投与)
本発明のチオールエステルは、ウイルス感染、特に、レトロウイルス感染の、処置および予防において、使用される。これを達成するために必要なチオールエステルの量は、「薬学的有効用量」として定義される。この使用のための投薬計画および効果的な量、すなわち、「投薬レジメン」は、様々な要因(投薬の頻度、疾患または状態の段階、疾患または状態の重篤度、患者の一般的な健康状態、患者の体質(physical status)、年齢などが挙げられる)に依存する。ある患者についての投薬レジメンの算出においては、投薬の方法もまた考慮される。
【0168】
投薬レジメンはまた、薬物動態、すなわち、チオールエステルの吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなどを考慮しなければならない(例えば、最新のRemington版、前出)。
【0169】
組成物の単回または複数回の投与は、処置する医師により選択される用量レベルおよびパターンで実施され得る。いずれにせよ、薬学的処方物により、患者を有効に処置するのに十分な量のチオールエステルが提供されなければならない。本発明の全有効量のチオールエステルは、ボーラスまたは比較的短時間の注入のいずれかにより、単一用量として被験体に投与され得るか、または分割した処置プロトコール(複数の投薬が、より延長された時間に渡って投与される)を使用して投与され得る。当業者は、被験体において有効な用量を得るために必要とされる本発明のチオールエステルの濃度は、例えば、プロドラッグおよびその加水分解生成物の薬物動態、被験体の年齢および一般的な健康状態、投与経路、施される処置数、ならびに処方する医師の判断を含む、多くの要因に依存することを知っている。これらの要因を考慮して、当業者は、特定の使用のための有効用量が提供されるように用量を調節する。
【0170】
(本発明のチオールエステルを含むワクチン処方物)
本発明はまた、ウイルスが、このウイルスと本発明のチオールエステル化合物とを接触させる工程を含む方法によって不活化される、単離されかつ不活化されたウイルスを提供し、ここで、上記ウイルスと上記化合物とを接触させる工程は、上記ウイルスを不活化する。1つの実施態様において、この単離されかつ不活化されたウイルスはさらに、ワクチン処方物を構成する。本発明のワクチン処方物はまた、単離されたチオールエステル−複合体化ウイルスタンパク質を含み得る。
【0171】
本発明のチオールエステル−複合体化不活化ウイルスは、種々のウイルス性疾患、特にレトロウイルス感染(例えば、HIV−1)の処置およびこれらに対する免疫を生成するため、哺乳動物、特にヒトに投与するのに有用であるワクチン処方物に使用される。このワクチン処方物は、単一の投与、または一連の投与で提供され得る。一連の投与として与えられる場合、最初の投与に続いた接種は、免疫応答をブーストさせるために与えられ、そして典型的にはブースター接種と呼ばれる。
【0172】
本発明のワクチンは、活性成分として免疫学的有効量のチオールエステル−複合体化不活化ウイルスを含有する。有用なキャリアは当該分野において周知であり、例えば、サイログロブリン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、破傷風トキソイド、ポリアミノ酸(例えば、ポリ(D−リジン:D−グルタミン酸)、インフルエンザ、B型肝炎ウイルス核タンパク質、B型肝炎ウイルス組換えワクチンなどが挙げられる。これらのワクチンはまた、生理学的に耐容性(受容可能な)希釈剤(例えば、水、リン酸緩衝化生理食塩水、または生理食塩水)を含有し得、そしてさらに典型的にはアジュバントを含む。アジュバント(例えば、不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはミョウバン)がまた、免疫応答をブーストするために有利に使用される。
【0173】
(チオールエステル不活化ウイルスおよびチオールエステル複合体化タンパク質の使用)
ワクチンとしての用途に加えて、チオールエステル不活化ウイルスおよびチオールエステル複合体化ウイルスタンパク質は、種々の用途を有する。例えば、チオールエステル複合体化ウイルスタンパク質またはチオールエステル不活化ウイルスが、対応する抗ウイルス抗体の検出のための試薬として使用され得る。個体がウイルス(例えば、HIV)で感染されているかどうかを決定するためにごく普通に使用される試験は、抗ウイルス抗体の存在についてスクリーニングすることである。チオールエステル−不活化ビリオンまたはチオールエステル−複合体化ウイルスタンパク質が、捕獲抗原または対照抗原としてこれらの検出試験に使用され得る。例えば、Hashida(1997)J.Clin.Lab.Anal.11:267〜286;Flo(1995)Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.14:504〜511を参照のこと。
【0174】
チオールエステル不活化ビリオンまたはチオールエステル複合体化ウイルスタンパク質は、X線結晶化分析または他の超微細構造的な研究用の結晶化試薬として使用され得る(例えば、Yamashita(1998)J.Mol.Biol.278:609〜615;Wu(1998) Biochemistry 37:4518〜4526を参照のこと)。これらはまた、種々の物理化学的実験および方法論における分子量、pIまたは他の対照として使用され得る。
【0175】
(キットおよび装置)
さらなる局面において、本発明は、本明細書中の方法および装置を具体化するキットを提供する。本発明のキットは必要に応じて以下の1つ以上を含む:(1)本明細書中に記載されるようなチオールエステルまたはチオールエステル成分;(2)本明細書中に記載される方法を実施するための、および/あるいはチオールエステルまたはチオールエステル成分を使用するための説明書;(3)1つ以上のアッセイ成分;(4)チオールエステルを操作するか本明細書中の方法を実施するために有用なチオールエステル、アッセイ成分、または装置構成要素のための容器、ならびに(5)包装物質。
【0176】
さらなる局面では、本発明は、本明細書中の任意の化合物、装置、装置の構成要素またはキットの使用、本明細書中の任意の方法またはアッセイの実施、および/あるいは本明細書中の任意のアッセイまたは方法を実施するための任意の装置またはキットの使用を提供する。
【0177】
(チオールエステルの使用)
さらなる局面において、本発明は、本明細書中の任意のチオールエステル組成物、ウイルス、不活化ウイルスまたはウイルス成分、細胞、細胞培養物、哺乳動物、装置、装置の構成要素またはキットの使用、本明細書中の任意の方法またはアッセイの実施、および/あるいは本明細書中の任意の方法またはアッセイを実施するための任意の装置またはキットの使用、および/あるいは医薬としての本明細書中のウイルス、細胞、細胞培養物、組成物または他の特徴の使用を提供する。本明細書中で記載される処置用の医薬としての全ての成分の製造がまた提供され、これらは、上記の精査により明らかである。
【0178】
本発明は、特定の実施例を例として非常に詳しく説明される。以下の実施例は、例示的目的のため提供され、そしていかなる方法においても本発明を限定するか、規定するかのいずれも意図しない。
【0179】
(実施例)
(実施例1:キャピラリ電気泳動)
本発明のチオールエステルの金属イオン置換能を決定するための1つの例示的手段は、キャピラリ電気泳動である。NCp7タンパク質は、各々+2の形式電荷を有する2つの亜鉛イオンと複合体化する。タンパク質と反応し、亜鉛イオンを除去する試薬は、そのタンパク質のコンフォメーションの変化および電荷の変化を引き起こす。従って、反応タンパク質の電気泳動移動度は、未反応タンパク質の移動度とは異なる。タンパク質の電気泳動移動度の変化は、キャピラリゾーン電気泳動により容易に検出され得る。
【0180】
キャピラリカラム緩衝液は、pH3.0の0.001Mリン酸ナトリウムであり、そしてタンパク質は215nmでのUV吸収により検出される。サンプル管は、約10マイクロリットル以上の、1ml当り0.25マイクログラムのNCp7からなるpH7.0の水溶液を、ジンクフィンガー反応性組成物(例えば、本発明のチオールエステル)を添加してまたはしないで、含み得る。サンプル管は、自動サンプルインジェクターに置かれる。計画された間隔で、10μLの試料がキャピラリカラム中に引き抜かれ、そしてデータが1分あたりのUV吸収として集められる。未修飾のp7NCは、約7.95分で検出器を通過する移動タンパク質の鋭いピークを与える。選択した試験化合物との反応により引き起こされるタンパク質の修飾は、このパターンの変化により明らかとされる。
【0181】
キャピラリ電気泳動は、多くの異なる試料が試料保持ラックに装填され、そして連続運転で分析され得るので、単純な自動化の利点を有する。各々の運転は約10分を要し、そして各々のサンプル管は多数回分析され得る。
【0182】
(実施例2:N−[2−(5−ピリジニオバレロイルチオ)ベンゾイル]−3−アミノプロピオンアミドブロミド(YS1332D)−テンプレートVIおよびVII、ならびにN−[2−(5−ピリジニオバレロイルチオ)グリシンアミドブロミド(YS1333D−テンプレートVおよびVII)の調製)
(YS1332A、ジスルフィドベンズアミド中間体の合成)
2,2’−ジチオベンゾイルクロリド(3.43g、10mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA;30ml)および水(5ml)中のβ−アラニンアミド塩酸塩(NOVA Biochem)(3.1g、25mmol)および4−メチルモルホリン(NMM;5ml、45mmol)の透明な溶液に室温(RT)で加えた。この混合物は、30分で透明な赤褐色溶液に変化した。この溶液を室温で3日間撹拌し、この間に沈殿物が生成した。この混合物を1M HCl(500ml)に加えた。得られた黄橙色の沈殿物を集め、水で洗浄し、そして真空下で乾燥した。収量は2.93g(65%)であった。
【0183】
YS1333Aを、反応時間が3日でなく1日である以外は、YS1332Aと同様に合成した。収量は4g(95%)であった。
【0184】
(YS1332Bの合成、YS1332Aのチオール中間体への還元)
DMF(18ml)および水(2ml)中のYS1332A(2g、4.5mmol)の混合物に、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(1.5g、5.2mmol)およびトリエチルアミン(0.5ml)を室温で加えた。この混合物は、5分で透明なオレンジ色の溶液に変化した。これを1時間撹拌し、次いでエチルエーテルに加えた(200ml)。沈殿を集め、水(3×20ml)で洗浄し、そして真空下で乾燥した。収量は1.56g(77%)の白色生成物であった。
【0185】
YS1333Bを、YS1332Bと同じ方法で作製した。収量は1.5g(76%)であった。
【0186】
(YS1332C、ハロアルカノイルチオエステル中間体の合成)
YS1332B(0.8g、3.6mmol)のDMA(5ml)溶液に、5−ブロモバレリルクロリド(1.4ml、10.8mmol)を室温で窒素下で加えた。この混合物を1時間撹拌し、次いでエチルエーテル(80ml)に加えた。沈殿を集め、そしてDMF(5ml)に溶解した。この溶液を10%重炭酸ナトリウム(40ml;pH=8)に撹拌しながら加えた。白色の沈殿を集め、水で洗浄し、そして乾燥した。収量は0.83g(70%)であった。
【0187】
YS1333CをYS1332Cと同じ方法で作製した。収量は1.27g(74%)であった。
【0188】
(YS1332D、ピリジニオアルカノイルチオエステル(PATE)の合成)
YS1332C(0.2g、0.52mmol)のピリジン(4ml)溶液を室温で窒素下で一晩、撹拌した。この混合物をエチルエーテル(40ml)に加えた。白色の沈殿を集め、エーテルで洗浄し、そして乾燥した。収量は0.23g(95%)であった。
【0189】
YS1333Dを、反応混合物を1日でなく2日間撹拌した以外は、YS1332Dと同様な方法で作製した。収量は0.22g(90%)であった。
【0190】
(実施例3:N−[2−(5−ピリジニオバレロイルチオ)ベンゾイル]−3−アミノプロピオン酸ブロミド(YS1334D)−テンプレートVIおよびVII、ならびにN−[2−(5−ピリジニオバレロイルチオ)ベンゾイル]−L−イソロイシンブロミド(YS1324D)−テンプレートVおよびVIIの調製)
(YS1334A、ジスルフィドベンズアミド中間体の合成)
2,2’−ジチオジベンゾイルクロリド(3.43g、10mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA;10ml)中のβ−アラニンt−ブチルエステル塩酸塩(NOVA Biochem)(4.8g、25mmol)および4−メチルモルホリン(NMM;5ml、45mmol)の透明な溶液に室温(RT)で加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。これにヘプタン(200ml)を加えた。得られた沈殿を少量のDMFに溶解し、次いでこれを1M HCl(500ml)に加えた。粘綢な固体沈殿物を集め、水で洗浄し、そして真空下で乾燥した。収量は5.1g(91%)であった。
【0191】
YS1322Aを、5.0mmolの出発ジクロリドおよび過剰のL−イソロイシンt−ブチルエステル塩酸塩から、同じ方法で合成した。収量は3.10g(65%)のジスルフィドであった。
【0192】
(YS1334Bの合成、YS1334Aのチオール中間体への還元)
DMF(9ml)および水(1ml)中のYS1334A(1.8g、3.2mmol)の溶液に、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(1.3g、4.5mmol)およびトリエチルアミン(0.45ml)を室温で加えた。この混合物を1時間撹拌し、次いで0.5M HCl(200ml)に加えた。粘綢な残渣を集め、水で洗浄し、そして真空下で乾燥した。収量は1.24g(69%)であった。
【0193】
YS1324Aを、YS1334Bと同じ方法で作製した。2.0gのジスルフィドは、1.5gのチオールを生成した(75%)。
【0194】
(YS1334C、ハロアルカノイルチオエステル中間体の合成)
YS1334B(1.24g、4.4mmol)のDMA(5ml)溶液に、5−ブロモバレリルクロリド(1.5ml、11mmol)を室温で窒素下で加えた。この混合物を1時間撹拌し、次いでエチルエーテル(100ml)に加えた。溶媒を5mlまでエバポレートし、そして得られた粘綢な残渣を分離し、10%重炭酸ナトリウム(20ml;pH=8)および水(40ml)で洗浄し、そして乾燥した。収量は1.6g(82%)であった。
【0195】
YS1324Bを、1.0gのチオールから調製し、0.95gの生成物(65%収率)を得た。
【0196】
(YS1334D、ピリジニオアルカノイルチオエステル(PATE)の合成)
YS1334C(1.6g、3.6mmol)のピリジン(10ml)溶液を室温で窒素下で一晩撹拌した。これを次いで、エチルエーテル(200ml)およびヘプタン(100ml)の溶液に加えた。沈殿相をメタノール(5ml)に溶解し、そしてエーテル(80ml)およびヘプタン(200ml)の溶液に加えた。沈殿をトリフルオロ酢酸(10ml)およびギ酸(3g)の溶液に溶解した。この溶液を室温で一晩撹拌し、そして窒素気流下で5mlまで減少させた。残渣にエチルエーテル(40ml)を加えた。沈殿を集め、そして乾燥した。収量は0.9g(53%)であった。
【0197】
YS1324Dを、対応する0.60gのブロモバレロイルチオエステルから調製し、0.58g(58%)のイソロイシン保有PATEを得た。
【0198】
上記のものは、例示の目的のために提供される。当業者には、本明細書中に記載された方法およびキットの物質、手順の工程、および他のパラメータが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、さらに改変されるかまたは置換され得るということが明らかである。