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1. WO2011074564 - METHOD OF PRODUCING ADENOVIRUS VECTORS

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明 細 書

発明の名称 アデノウイルスベクターの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033  

実施例

0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044  

産業上の利用可能性

0045  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : アデノウイルスベクターの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、医学、細胞工学、遺伝子工学、発生工学などの分野において標的細胞に遺伝子を導入する際に使用される、感染効率が向上したアデノウイルスベクター、ならびにその製造方法に関する。
 なお、本願は、2009年12月15日出願の日本国特許出願第2009-284475号に対して優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2009-284475号の全内容を本願に組み込むものである。

背景技術

[0002]
 アデノウイルスは、1953年に小児の扁桃腺やアデノイド組織培養液中から分離され、現在までにヒト、トリ、ウシ、サル、イヌ、マウスあるいはブタを宿主とする80以上の血清型の存在が明らかにされている。ヒトを宿主とするアデノウイルスについては、これまで50種類以上の血清型が発見されており、その中でも2型と5型とが遺伝子治療用ベクターとして用いられている。
[0003]
 アデノウイルスは直径約80nmの大きさで正二十面体の形をしたウイルスで、エンベロープはもたない。そのゲノムは直鎖状二本鎖DNAである。コアを包んでいるカプシドは、各頂点に位置する12個のペントン(ペントンベース及びファイバーからなる)ならびに240個のヘキソンから構成されている。
[0004]
 アデノウイルスの感染は、アデノウイルスのファイバーが宿主の細胞表面のcoxackievirus and adenovirus receptor(CAR)に結合して細胞に接着することで開始される。アデノウイルスが細胞に接着すると、ペントンベースと細胞接着因子インテグリンとの結合によってエンドサイトーシスが誘導され、細胞内に取り込まれる。細胞内に取り込まれた後、エンドソームの膜がペントンベースによって破壊され、アデノウイルスが細胞質に放出される。核に達したアデノウイルスは、そのゲノムDNAを核膜孔から核の中に送り込む。核の中でアデノウイルスDNAの転写、複製及びパッケージングが起こる。
[0005]
 アデノウイルスベクター開発当初、アデノウイルスの病原性との関連から気管支等へのベクターの投与が最適と思われていたが、実際にはベクターを尾静脈からマウスに投与すると、ほとんどのベクターが肝臓に集積されている(非特許文献1及び2)。また、血球系の細胞よりも接着系の細胞の方が総じて感染効率が高いという特徴もある。これらは、ウイルスレセプターが多い細胞にベクターが導入されやすいという特徴を反映している。比較的多くの細胞種に導入が可能であるとは言え、実際には遺伝子治療が期待されている多くの癌細胞ではアデノウイルスベクターに対するレセプター量が減少しているとの報告もあり、現在ではウイルスのファイバーに変異を加えたベクター等の開発も進んでいる。しかしながら、ウイルス力価が低いなどの問題が残存している(例えば、非特許文献3及び4)。
[0006]
 すでに、癌細胞をプロテアーゼで前処理することにより、組換えアデノウイルスによる感染効率が上昇することが報告されている(非特許文献5)。しかし、アデノウイルスベクターをプロテアーゼで処理することにより、標的細胞への感染効率が上昇することについては、記載も示唆もされていない。

先行技術文献

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : ネイチャー ジェネティックス(Nature Genetics)、第4巻、第27頁~34頁(1993)
非特許文献2 : ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(J. Clin. Invest.)、第91巻、第225頁~234頁(1993)
非特許文献3 : バイオキミカ エト バイオフィジカ アクタ(Biochim. Biophys. Acta)、第1568巻、第13頁~20頁(2001)
非特許文献4 : ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第9巻、第2503頁~2515頁(1998)
非特許文献5 : ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第11巻、第2219頁~2230頁(2000)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明の目的は、標的細胞に遺伝子を導入する際に使用される、感染効率が向上したアデノウイルスベクター、ならびにその製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、プロテアーゼで処理したアデノウイルスベクターを使用することにより、標的細胞に外来遺伝子が高効率で導入されることを見出し、本発明を完成させた。
[0010]
 すなわち本発明を概説すれば、本発明の第1の態様は、下記工程を包含することを特徴とする、アデノウイルスベクターの製造方法に関する:
(1)アデノウイルスベクター産生細胞を培養し、アデノウイルスベクターを産生させる工程、及び
(2)工程(1)で得られたアデノウイルスベクターをプロテアーゼで処理する工程。
[0011]
 本発明の第1の態様において、アデノウイルスベクターが外来遺伝子を含むものであってもよい。また、アデノウイルスベクターがエンド型プロテアーゼで処理されてもよい。
 本発明により、感染効率が向上したアデノウイルスベクターが提供される。
[0012]
 本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様により得られる、アデノウイルスベクターに関する。
[0013]
 本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様により得られる、外来遺伝子を含むアデノウイルスベクターを細胞に感染させる工程を包含することを特徴とする、細胞への遺伝子導入方法に関する。本発明により、標的細胞に外来遺伝子を高効率で導入することができる。

発明の効果

[0014]
 本発明により、細胞に外来遺伝子を導入するのに適した高力価のアデノウイルスベクター、ならびにその製造方法が提供される。当該製造方法により得られるアデノウイルスベクターは、遺伝子治療の分野だけでなく、種々の外来遺伝子を持つ細胞をインビトロで得るためにも極めて有用である。

発明を実施するための形態

[0015]
 アデノウイルスは線状2本鎖DNAウイルスであり、そのゲノムDNAの大きさは約36kbで、ゲノムDNAの両端の5’末端にはウイルスがコードする末端タンパク質が共有結合して、DNA-末端蛋白複合体(DNA-terminal protein complex;DNA-TPC)を形成している。
[0016]
 本発明に用いられるアデノウイルスは特に限定はないが、例えば、増殖効率が高く、病原性が軽微なヒトアデノウイルス2型又は5型を用いることができる。通常、ウイルスゲノムを人為的に改変した組換えアデノウイルスがベクターとして使用されるが、好ましくは、ゲノムよりウイルスの複製に関与するE1領域を欠失させた非増殖型アデノウイルスをベクターとして使用する。E1領域を欠失したアデノウイルスは増殖能を欠くため、病的な事態を起こしうる、感染した細胞内でのウイルスの増殖を起こさず、安全性の観点から本発明に好適である。
[0017]
 ウイルスのゲノムの欠失はベクターとしての機能に支障のない範囲であれば特に限定はない。例えば、前記したE1領域に加えて、培養細胞でのウイルス増殖には必須でないE3領域の一部または全部を欠失したものも本発明にて使用できる。
[0018]
 E1領域を欠失させて作製されたアデノウイルスベクター、あるいはE1領域およびE3領域を欠失させて作製されたアデノウイルスベクターは、E1領域の遺伝子を持続的に発現する細胞、例えば、ヒト胎児腎由来細胞293細胞などを宿主として増殖させることが出来る。
[0019]
 また、副作用の原因となりうる免疫原産生軽減の観点から、上記したE1領域及びE3領域の欠失に加え、E2領域を又はE4領域をさらに欠失させたウイルスもベクターとして使用できる。さらに、ウイルスゲノムの複製及びパッケージングに必要な領域(左端約0.4kb、右端約0.2kb)以外の全てを欠失させたgutless adenovirus vector[米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第93巻、第13565~13570頁(1996)]も本発明にて使用できる。
[0020]
 これらのアデノウイルスベクターは、欠失させた領域にコードされるタンパク質を発現する細胞にて、あるいは欠損させた領域を保持するヘルパーウイルスと共感染させることで増殖させることができる。こうして構築された細胞は、ウイルス産生細胞と呼ばれる。
 前記のアデノウイルスベクターの構築、ベクターへの外来遺伝子の挿入及びウイルスベクター粒子の調製は、いずれも当業者に公知の手法により実施することができる。アデノウイルスベクター粒子は、ウイルス産生細胞の培養上清及び産生細胞内に蓄積される。ウイルス産生細胞を含む培養液を超音波破砕あるいは凍結融解の繰り返し等の操作に供して当該培養液に含まれる細胞を破砕することによって、アデノウイルスベクターを得ることができる。得られた破砕液はアデノウイルスベクターとしてそのまま使用することができるが、目的に応じて塩化セシウム密度勾配遠心等の手段により精製アデノウイルスベクター粒子を得ることができる。
[0021]
 本発明に使用されるアデノウイルスベクターは外来遺伝子を含んでいてもよい。外来遺伝子は特に限定はなく、細胞に導入することが望まれる任意の遺伝子を選ぶことができる。このような遺伝子としては、例えば、酵素、構造タンパク質、サイトカイン、レセプター又はその他のタンパク質をコードするもの以外に、アンチセンス核酸、siRNA(small interfering RNA)、リボザイム又はデコイをコードするものを使用することができる。また、遺伝子導入された細胞の選択を可能にする適当なマーカー遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子又は蛍光タンパク質をコードする遺伝子、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどのレポーターとして機能しうる酵素をコードする遺伝子等)を同時に導入してもよい。これらの遺伝子の起源に特に限定はなく、該遺伝子が導入される細胞と同種の生物由来のもの、異種の生物由来のもの、又は遺伝子工学的に作製されたものでもよく、あるいは起源を異にするDNA分子がライゲーション等の公知の手段によって結合されたものであってもよい。更に、その目的に応じて天然の配列に変異が導入された配列を有するものであってもよい。また、これらの遺伝子にその発現を調節するための適当なプロモーター、エンハンサー等の調節要素が付加されていてもよい。
[0022]
 また、標的細胞に導入される外来遺伝子のサイズは、特に限定するものではないが、組換えアデノウイルスベクターのパッケージングの観点から、例えばE1領域およびE3領域を欠失したベクターの場合、約7kb以下であることが望ましい。また、gutless adenovirus vectorでは、標的細胞に導入される外来遺伝子のサイズは37kb以下であることが望ましい。
[0023]
 本発明に使用されるプロモーターは、外来遺伝子を標的細胞内で発現できるものであれば特に限定はなく、例えば、CAGプロモーター、SRαプロモーター、EF1αプロモーター、CMVプロモーター、PGKプロモーター等が挙げられ、目的に応じて選択することができる。組織特異的プロモーターを用いれば、組織特異的に外来遺伝子を発現させることができ、例えば、肝臓特異的プロモーターであるα1ATプロモーターを用いれば肝細胞特異的に、骨格筋特異的α-アクチンプロモーターを用いれば骨格筋細胞特異的に、神経特異的エノラーゼプロモーターを用いれば神経細胞特異的に、血管内皮細胞特異的tieプロモーターを用いれば血管内皮細胞特異的に、胃癌特異的CEAプロモーターを用いれば胃癌細胞特異的に、又は肝癌特異的AFPプロモーターを用いれば肝癌細胞特異的にそれぞれ外来遺伝子を発現させることができる。
[0024]
 本発明の方法によるアデノウイルスベクターの製造は、ウイルス産生細胞を培養してアデノウイルスベクターを産生させる第1工程、第1工程で得られたアデノウイルスベクターをプロテアーゼで処理する第2工程、により実施される。
[0025]
 第1の工程に使用されるウイルス産生細胞は、公知の方法により作製することができる。一つの態様において、例えば、下記の操作でウイルス産生細胞を作製することができる。複製に関与する遺伝子を欠失させたアデノウイルスのゲノムを含むコスミドベクターを調製し、所望により外来遺伝子を挿入する。このコスミドベクターを制限酵素で切断して調製された消化コスミドDNAで適当な宿主細胞、例えば293細胞を形質転換する。得られる形質転換体は、アデノウイルスを産生する能力を獲得している。当該細胞を適当な条件で培養することにより、細胞内及び/又は培養液からアデノウイルスベクターを産生させることができる。
[0026]
 上記のウイルス産生細胞の作製は、例えば、完全長ウイルスゲノム導入法[ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第9巻、第2577頁~2583頁(1998)]あるいはCOS-TPC法[米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第93巻、第1320~1324頁(1996)]等により、所望の外来遺伝子が挿入された組換えアデノウイルスベクターを作製することによって実施される。当該方法によれば、煩雑な操作を行なうことなく、高い効率で組換えアデノウイルスベクターを調製することができる。両方法とも使用可能な組換えアデノウイルス作製キットとして、例えば、Adenovirus Expression Vector Kit(Dual Version) Ver.2(タカラバイオ社製)などがあり、キットに添付の取扱説明書に従い、組換えアデノウイルスベクターを調製することができる。
[0027]
 第2工程では、前記のウイルス産生細胞の細胞内及び培養液上清より回収又は精製されたアデノウイルスベクター粒子がプロテアーゼで処理される。上記第2工程において、使用されるプロテアーゼとしては特に限定はないが、例えば、エンド型プロテアーゼを使用することができる。当該エンド型プロテアーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、スブチリシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、パパインなどが例示される。好適には、トリプシンあるいはスブチリシンが本発明に使用される。アデノウイルスベクター粒子を含有する溶液にトリプシンを作用させる際の濃度には特に限定はなく、細胞に対する感染力価の上昇等を指標として適宜設定すればよい。例えば、0.0010~0.030重量%、特に0.0025~0.0125重量%のトリプシンが好適である。また、アデノウイルスベクター粒子を含有する溶液にスブチリシンを作用させる際の濃度にも特に限定はなく、細胞に対する感染力価の上昇等を指標として適宜設定すればよい。市販のスブチリシン(16KNPU/G、シグマアルドリッチ社製、Code P3111)を使用する場合、例えば、0.016~80NPU/mL、特に0.25~35NPU/mLが好適である。同様に、反応条件も本発明の効果が発揮される条件を、使用するプロテアーゼに適した範囲で適宜設定すればよい。例えば、30~40℃の温度範囲で、10分間~3時間処理することができる。
[0028]
 本発明を特に限定するものではないが、第1工程で得られたアデノウイルスベクターを再び適当な宿主細胞(例えば、293細胞)に感染させ、感染細胞及び培養液上清からアデノウイルスベクター2次ウイルスを回収し、得られた2次ウイルスを再び宿主細胞に感染させ、感染細胞及び培養液上清からアデノウイルスベクター3次ウイルスを回収し、得られた3次ウイルスを再び宿主細胞に感染させ、感染細胞及び培養液上清からアデノウイルスベクター4次ウイルスを回収するといった作業を繰り返すことによって、アデノウイルスベクターの力価を高めることが可能である。宿主細胞に感染する際の前処理として上記第2工程を施すことによって宿主細胞への感染効率が向上し、ウイルス産生が亢進し、高力価アデノウイルスベクターを獲得することが可能である。なお、上記第2工程の実施回数は特に限定されるものではなく、例えば、前記一連の作業ごとに実施してもよく、また、最終的に回収されたアデノウイルスベクターにのみ実施してもよい。
 回収されたアデノウイルスベクターに上記第2工程を施すことによって、各種標的細胞への遺伝子導入にも有効な、感染効率の上昇したアデノウイルスベクターの提供が可能となる。
[0029]
 上記の方法により得られた本発明のアデノウイルスベクターは本発明に包含される。実施例3、5及び7に記載のとおり、本発明のアデノウイルスベクターは各種標的細胞、特に癌細胞に対する感染性ウイルス粒子数が上昇した高力価のアデノウイルスベクターである。
[0030]
 本発明により、外来遺伝子を標的細胞に導入する方法が提供される。本発明の外来遺伝子を標的細胞に導入する方法は、第1工程として、ウイルス産生細胞を培養して外来遺伝子が挿入されたアデノウイルスベクターを産生させる工程、第2工程として、第1工程で得られたアデノウイルスベクターをプロテアーゼで処理する工程、及び第3工程として、第2工程で得られたアデノウイルスベクターを標的細胞に感染させる工程を包含することを特徴とする。
[0031]
 上記第1及び第2工程については前述したとおりである。上記第3工程において、第2工程で得られたアデノウイルスベクターを標的細胞に接触させ、アデノウイルスベクターを標的細胞に感染させる。感染時間は特に限定はないが、15分~6時間が好適であり、1~3時間がより好適である。感染時の温度は標的細胞に適した温度であればよい。
[0032]
 本発明の外来遺伝子導入方法は、遺伝子治療の分野で有用である。治療目的で本発明の遺伝子導入方法を実施する手段としては、体外に取り出した標的細胞に本発明のアデノウイルスを感染させ、その後に感染細胞を生体に戻すex vivo遺伝子導入法、本発明のアデノウイルスベクターを生体に投与するin vivo遺伝子導入法を利用することができる。該方法による遺伝子治療の対象疾患には特に限定はなく、先天的に遺伝子に異常がみられる遺伝子病、AIDSのようなウイルス感染症、癌等の治療に利用できる。癌を標的とする場合には、制限増殖型のオンコリティックウイルスベクターを使用してもよい。
 本発明の方法により製造された、治療用遺伝子が挿入されたアデノウイルスベクターは、各種の疾患の治療剤として使用することができる。例えば、前記アデノウイルスベクターを公知の非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、安定剤等と混合することにより、点滴、注射、吸入等により投与可能な製剤として調製できる。
[0033]
 また、本発明の外来遺伝子導入方法は、遺伝子治療のみならず、種々の外来遺伝子を持つ細胞をインビトロで得るためにも有用であり、得られた遺伝子導入細胞は有用物質の生産、疾患モデルの開発等に有用である。
実施例
[0034]
 以下に実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
[0035]
実施例1 ZsGreen発現アデノウイルスベクターの作製
 pZsGreen Vector(クロンテック社製)を制限酵素BamHI及びEcoRI(タカラバイオ社製)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、緑色蛍光タンパク質ZsGreenをコードする配列を含む約0.7kbpのフラグメントを回収した。回収したフラグメントをDNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)を用いて末端平滑化後、E1およびE3遺伝子を欠失させたアデノウイルスゲノムの全長を含むコスミドベクターであるpAxCAwtit2(タカラバイオ社製)のSwaIサイトに挿入した。こうして得られたコスミドベクターをGigapack III XL Packaging Extract(アジレントテクノロジー社製)を用いて大腸菌DH5アルファ(タカラバイオ社製)を形質転換した後、得られた形質転換体をアンピシリン添加LB培地で培養し、培養物よりpAxCAwtit2-ZsGreenコスミドDNAを調製した。
 次に、得られたpAxCAwtit2-ZsGreenコスミドDNAを制限酵素BspT104I(タカラバイオ社製)で切断して得られる消化済コスミドDNAと、TransIT-293(ミラス バイオ社製)を用いて293細胞を形質転換した後、培養を行った。培地には10%ウシ胎仔血清(FBS、ナルジェヌンクインターナショナル社製)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、BioWhittaker社製)を使用した。培養後、細胞を含む培養液を超音波処理し、次いで遠心して上清を回収することにより、1次アデノウイルス液(ZsGreen発現アデノウイルスベクター)を得た。1次アデノウイルス液を感染させた293細胞を培養した後、細胞を含む培養液を超音波処理し、遠心して上清を回収することにより2次アデノウイルス液を得た。さらに同様の操作を行って3次アデノウイルス液、及び4次アデノウイルス液を調製した。以下、この4次アデノウイルス液をZsGreen発現アデノウイルスベクターとして以下の実験に使用した。
[0036]
実施例2 アデノウイルスベクターのトリプシン処理―1
 実施例1で調製したZsGreen発現アデノウイルスベクター20μLに細胞剥離用0.25%トリプシン―EDTA水溶液(インビトロジェン社製)4μL及びPBS376μLを添加し、トリプシン終濃度0.0025%の反応液を調製した。また、ZsGreen発現アデノウイルスベクター20μLに細胞剥離用0.25%トリプシン―EDTA水溶液(インビトロジェン社製)20μL及びPBS360μLを添加し、トリプシン終濃度0.0125%の反応液を調製した。比較対照として、ZsGreen発現アデノウイルスベクター20μLにPBS380μLを添加して20倍希釈した反応液を調製した。調製した各反応液を37℃水浴中で1時間インキュベートした後で、氷冷して反応を停止させた。
[0037]
実施例3 細胞への感染実験-1
 12ウェルのプレートの各ウェルに1×10 個のHeLa細胞[ATCC CCL-2]を添加し、24時間培養した。培地として、10%ウシ胎仔血清(FBS、GIBCO社製)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ社製)1mLを使用した。次いで、各ウェルの細胞に実施例2で調製した各アデノウイルス液を10%FBS含有DMEM培地で段階希釈して添加し、37℃で1時間感染した。感染終了後、ウイルス上清を除去し、10%FBS含有DMEM培地を1ウェルあたり1mL添加してさらに2日間培養を行った。2日間の培養後、剥離して回収した細胞を4%ホルムアルデヒド液に懸濁して固定後、フローサイトメーター(FACSCant、ベクトンディッキンソン社製)で解析し、緑色蛍光タンパク質ZsGreenの発現している割合を分析し、遺伝子導入効率を算出した。得られた遺伝子導入効率にウイルス希釈倍率を乗じた値から、感染性ウイルス粒子の数(Infectious virus particle;I.V.P./mL)を算出した。感染性ウイルス粒子数を表1に示す。表1に示すように、アデノウイルスベクターをトリプシン処理した群では、プロテアーゼ処理を行わなかった群と比較して感染性ウイルス粒子数が上昇した。
[0038]
[表1]


[0039]
実施例4 アデノウイルスベクターのトリプシン処理―2
 実施例1で調製したZsGreen発現アデノウイルスベクター20μLに細胞剥離用0.25%トリプシン―EDTA水溶液20μLとPBS360μLを添加し、トリプシン終濃度0.0125%の反応液を調製した。比較対照として、アデノウイルスベクター20μLにPBS380μLを添加して20倍希釈した反応液を調製した。調製した反応液を37℃水浴中で1時間反応後、氷冷して反応を停止した。
[0040]
実施例5 細胞への感染実験-2
 HeLa細胞および293細胞[ATCC CRL-1573]は10%FBS含有DMEM培地で、MKN1細胞[理研細胞バンク RCB1003]およびMKN45細胞[理研細胞バンク RCB1001]は10%FBS含有RPMI1640培地で培養を行い、アデノウイルス感染の前日に、12ウェルのプレートの各ウェルに1×10 個をそれぞれ播種し、24時間培養した。次いで、各ウェルの細胞に実施例4で反応させたアデノウイルス液、および未反応のアデノウイルス液を10%FBS含有DMEM培地で段階希釈して添加し、37℃で3時間感染した。感染終了後、ウイルス上清を除去し、各培養用培地を1ウェルあたり1mL添加して、さらに2日間培養を行った。培養終了後、剥離して回収した細胞を4%ホルムアルデヒド液で懸濁して固定後、フローサイトメーター(FACSCant)で解析し、緑色蛍光タンパク質ZsGreenの発現している割合を分析し、遺伝子導入効率を算出した。得られた遺伝子導入効率にウイルス希釈倍率を乗じた値から、感染性ウイルス粒子の数(Infectious virus particle;I.V.P./mL)を算出した。感染性ウイルス粒子数を表2に示す。表2に示すように、アデノウイルスベクターをトリプシン処理することにより、各種細胞に対する感染性ウイルス粒子数が上昇した。
[0041]
[表2]


[0042]
実施例6 アデノウイルスベクターのプロテアーゼ処理
 Bacillus sp.由来のプロテアーゼ(Subtilisin、16.9KNPU/G、シグマアルドリッチ社製)を、PBSで50倍希釈、250倍希釈、1250倍希釈又は6250倍希釈した。1.5mL容マイクロチューブに、PBS85μLと、実施例1で調製したZsGreen発現アデノウイルスベクター5μLとを添加し、さらに、先に希釈したプロテアーゼ溶液を10μL添加した(最終プロテアーゼ濃度はそれぞれ、33.8NPU/mL、6.76NPU/mL、1.35NPU/mL又は0.27NPU/mL)。比較対照として、プロテアーゼを含まないPBSを10μL添加した。調製した反応液を37℃水浴中で1時間反応後、氷冷して反応を停止させた。
[0043]
実施例7 細胞への感染実験
 アデノウイルス感染の前日に、HeLa細胞を12ウェルのプレートの各ウェルに1×10 個播種し、10%FBS含有DMEM培地で24時間培養した。次いで、各ウェルの細胞に実施例6で反応したアデノウイルス液、および未反応のアデノウイルス液を10%FBS含有DMEM培地で段階希釈して添加し、37℃で2時間感染した。感染終了後、ウイルス上清を除去し、各培養用培地をウェルあたり1mL添加して、さらに2日間培養を行った。培養終了後、剥離して回収した細胞を4%ホルムアルデヒド液で懸濁して固定後、フローサイトメーター(FACSCant)で解析し、緑色蛍光タンパク質ZsGreenの発現している割合を分析し、遺伝子導入効率を算出した。得られた遺伝子導入効率にウイルス希釈倍率を乗じた値から、感染性ウイルス粒子の数(Infectious virus particle;I.V.P./mL)を算出した。感染性ウイルス粒子数を表3に示す。表3に示すように、アデノウイルスベクターをプロテアーゼ処理した群では、プロテアーゼ処理を行わなかった群と比較して、HeLa細胞に対する感染性ウイルス粒子数が上昇した。
[0044]
[表3]


産業上の利用可能性

[0045]
 本発明により、細胞に外来遺伝子を導入するのに適した高力価のアデノウイルスベクター、ならびにその製造方法が提供される。当該製造方法により得られるアデノウイルスベクターは、遺伝子治療の分野だけでなく、種々の外来遺伝子を持つ細胞をインビトロで得るためにも極めて有用である。

請求の範囲

[請求項1]
 下記工程を包含することを特徴とする、アデノウイルスベクターの製造方法:
(1)アデノウイルスベクター産生細胞を培養し、アデノウイルスベクターを産生させる工程、及び
(2)工程(1)で得られたアデノウイルスベクターをプロテアーゼで処理する工程。
[請求項2]
 アデノウイルスベクターが外来遺伝子を含むものである、請求項1記載の方法。
[請求項3]
 アデノウイルスベクターがエンド型プロテアーゼで処理される、請求項1記載の方法。
[請求項4]
 請求項1~3いずれか1項に記載の方法により製造されるアデノウイルスベクター。
[請求項5]
 請求項2記載の方法により製造されるアデノウイルスベクターを細胞に感染させる工程を包含することを特徴とする、細胞への遺伝子導入方法。