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1. WO2013002284 - PULLEY DEVICE

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明 細 書

発明の名称 プーリ装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

先行技術文献

特許文献

0013  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025  

発明の効果

0026   0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

実施例

0040   0041   0042   0043   0044   0045  

符号の説明

0046  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

明 細 書

発明の名称 : プーリ装置

技術分野

[0001]
 本発明は、無端ベルトにより、自動車用のエアコンディショナに使用するコンプレッサなどの補機を駆動する機構や、タイミングベルトにより、クランクシャフトの端部に固定したクランクプーリとカムシャフトの端部に固定したカムプーリとの間で回転力を伝達する機構などのベルト伝動機構に組み込んで使用される、ガイドプーリやテンションプーリなどのプーリ装置に関する。

背景技術

[0002]
 ベルト伝動機構に組み込まれて使用されるガイドプーリやテンションプーリなどのプーリ装置として、重量軽減およびコスト低減を図るために、軸受鋼などの金属材料からなる転がり軸受の外輪に、合成樹脂製のプーリを固設したプーリ装置が従来から使用されている。図9は、特開平10-122339号公報に開示された合成樹脂製のプーリを組み込んだプーリ装置の構造を示している。プーリ装置1は、外周面にベルトを掛け渡すための合成樹脂製のプーリ2と、このプーリ2を支持軸などに回転自在に支持するための、単列深溝型のラジアル玉軸受である転がり軸受3とにより構成される。このうちの転がり軸受3は、外周面に単列の内輪軌道4を有する内輪5と、内周面に単列の外輪軌道6を有する外輪7と、これら内輪軌道4と外輪軌道6との間に転動自在に設けられた複数個の転動体8とを備える。また、内輪5の両端部外周面と、外輪7の両端部内周面との間に密封板9を設け、転動体8を設置した内部空間に充填したグリースが外部に漏れることを防止するとともに、外部の塵芥などが内部空間内に入り込むことを防止している。このように構成される転がり軸受3の外輪7の外周面に、プーリ2を固設している。
[0003]
 プーリ2は、互いに同心に設けられた内径側円筒部10および外径側円筒部11を有する。内径側円筒部10の中間部外周面と外径側円筒部11の中間部内周面とは、円輪状の連結部12により連結しており、連結部12の両側面にそれぞれ複数本ずつの補強リブ13を、それぞれ放射状に設けている。このようなプーリ2を、内径側円筒部10を転がり軸受3を構成する外輪7の周囲に、射出成形により固設している。すなわち、プーリ装置1は、外輪7の外周寄り部分をその内周側にモールドした状態で、金型内に設けたプーリ2の外形に対応した内形を有するキャビティ内に、溶融した熱可塑性樹脂を注入し、この熱可塑性樹脂が冷却および固化した後に、金型を開いて、プーリ2を転がり軸受3とともに、キャビティ内から取り出すことにより得られる。
[0004]
 このように構成されるプーリ装置1は、自動車の補機などを駆動するベルト伝動機構に組み込まれる、ガイドプーリやテンションプーリとして使用される。すなわち、エンジンのシリンダブロックなどの固定の部分に固設した支持軸に、転がり軸受3を構成する内輪5を外嵌固定する。そして、プーリ2の外周面に、無端ベルトが掛け渡される。この無端ベルトの走行に伴い、プーリ2が回転することにより、無端ベルトの巻き付け角度や張力が確保される。
[0005]
 外輪7の外周面に合成樹脂製のプーリ2が固設されたプーリ装置1の場合、外輪7が軸受鋼などの金属材料製であるため、外輪7とプーリ2との線膨張係数が異なる。したがって、使用時の温度上昇により、外輪7とプーリ2との密着性が低下し、外輪7とプーリ2との間で相対的な滑り(クリープ)が発生する場合がある。このようなクリープを防止するための技術が、特開昭61-38218号公報、実開昭50-20043号公報、実開昭50-23540号公報、特開平11-148550号公報に開示されている。このうちの特開昭61-38218号公報に開示されたプーリ装置では、図10に示すように、外輪7aの外周面にナール(セレーション)14を全周にわたって形成して、外輪7aに合成樹脂製のプーリを外嵌した状態で、ナール14をプーリの内周面に食い込ませることにより、クリープの発生を防止している。
[0006]
 また、実開昭50-20043号公報に開示されたプーリ装置では、図11に示すように、外輪7b(7c)の外周面に、円周方向に関して軸方向の幅が異なる凹溝15a(15b)を形成するとともに、外輪7b(7c)の外周面に合成樹脂製のプーリを射出成形により固設している。この射出成形時に、凹溝15a(15b)内に溶融した熱可塑性樹脂が充填される。凹溝15a(15b)は軸方向の幅が円周方向に関して異なるため、凹溝15a(15b)の内側面と凹溝15a(15b)内で固化した合成樹脂との噛み合いにより、外輪7b(7c)とプーリとの間におけるクリープの発生が防止される。
[0007]
 また、実開昭50-23540号公報に開示されたプーリ装置では、図12に示すように、外輪7dの外周面に、互いに平行とならないように、軸方向に対し傾斜させた1対の凹溝15cを全周にわたって形成するとともに、外輪7dの外周面に合成樹脂製のプーリを射出成形により固設している。1対の凹溝15cが軸方向に傾斜しているため、外輪7dとプーリとの間におけるクリープの発生が防止される。この構造では、1対の凹溝15cの傾斜方向を互いに反対とすることにより、プーリの回転に伴い発生するアキシアル荷重を互いに打ち消し合わせて、プーリ装置に捩れを生じさせるモーメント荷重が外輪7dに発生しないようにしている。
[0008]
 特開昭61-38218号公報、実開昭50-20043号公報、実開昭50-23540号公報に開示された構造では、プーリと外輪7a~7dとの間でクリープが発生することを防止できるが、未だ解決すべき問題がそれぞれある。すなわち、特開昭61-38218号公報に開示された構造の場合、外輪7aの外周面の全体にわたってナール14を形成しているため、ナール14を形成した後、外輪7aに熱処理を施す際に、残留ひずみによって外輪7aが変形する場合がある。また、外輪7aの内周面に外輪軌道6を形成する際に、外輪7aの外周面を精度よく支持することが難しい。このため、外輪軌道6の加工性および加工精度が低下する場合がある。
[0009]
 一方、実開昭50-20043号公報、実開昭50-23540号公報に開示された構造の場合、外輪7b~7dの外周面に円筒面が残っているため、外輪軌道の加工性および加工精度が低下することはない。しかし、近年の自動車の高性能化に伴い、プーリに掛け渡すベルトの張力やプーリの回転速度が増大し、プーリと外輪との間でクリープを発生させようとする力が増大する傾向にある。クリープを発生させようとする力が大きい場合、実開昭50-20043号公報に開示された構造では、凹溝15a(15b)の軸方向の幅寸法の差を大きく、実開昭50-23540号公報に開示された構造では、凹溝15cの傾斜角度を大きく、それぞれ形成する必要がある。このように、凹溝15a~15cの幅寸法の差もしくは傾斜角度を大きくする場合、外輪7b~7dの外周面での加工領域が広がることになる。
[0010]
 また、実開昭50-20043号公報、実開昭50-23540号公報に開示された構造の場合、外輪7b~7dの外周面に残っている円筒面の幅方向に関する形状が、円周方向にわたって変化する。このため、凹溝15a~15cを形成した後、外輪7b~7dに熱処理を施す際に、残留ひずみによって外輪7b~7dが変形する可能性がある。
[0011]
 図13および図14は、特開平11-148550号公報に開示された構造を示している。この構造では、転がり軸受3aを構成する外輪7eの外周面の軸方向の一部に係止溝16を設け、この係止溝16の底面に、ローレット加工による凹部17と凸部18とを全周にわたって交互に配置することにより構成される、平目のローレット目19を設けている。そして、外輪7eの係止溝16の底面に形成した凹部17に、プーリ2aを構成する合成樹脂の一部を進入させて、プーリ2aの内周面に、それぞれが軸方向に長い突条20を形成している。これらの突条20と外輪7eのローレット目19との係合により、プーリ2aと外輪7eとの間でクリープが発生することを防止している。
[0012]
 特開平11-148550号公報に開示された構造の場合、外輪7eの外周面に残っている円筒面の幅方向に関する形状が、円周方向にわたって同じになるため、外輪7eの外周面にローレット目19を形成した後、外輪7eに熱処理を施しても、外輪7eが残留ひずみによって変形することは防止される。しかしながら、この構造では、ローレット目19の凹部17および凸部18の数、形状および寸法は特に規制されていない。このため、凹部17の底面の周方向長さが短すぎたり、凹部17の径方向深さが深すぎたりすると、プーリ2aを構成する合成樹脂の一部が、凹部17内全体に行きわたらず、プーリ2aの内周面と外輪7eの外周面との間に隙間(ボイド)が生じる可能性がある。特に、凹部17の周方向長さが短く(実質的に0)、突条20の断面形状が三角形である場合には、プーリ2aの内周面と外輪7eの外周面との間に隙間を生じ易い。この結果、プーリ2aと外輪7eとがガタついたり、プーリ2aと外輪7eとの結合強度を十分に確保できなくなったりする可能性がある。

先行技術文献

特許文献

[0013]
特許文献1 : 特開平10-122339号公報
特許文献2 : 特開昭61-38218号公報
特許文献3 : 実開昭50-20043号公報
特許文献4 : 実開昭50-23540号公報
特許文献5 : 特開平11-148550号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0014]
 本発明は、上述のような事情に鑑みて、合成樹脂製のプーリと金属材料製の外輪との間でクリープが発生することを確実に防止できる、プーリ装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明の第1の態様のプーリ装置は、プーリと転がり軸受とを備える。このうちの転がり軸受は、外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する。また、前記プーリは、ベルトが掛け渡される外周面と、前記外輪の外周面に外嵌される内周面を有する。なお、本発明は、前記内輪軌道および外輪軌道がそれぞれ単列深溝型であり、前記転動体が玉である、プーリ装置に好適に適用される。
[0016]
 特に、本発明の第1の態様のプーリ装置では、前記外輪の外周面の軸方向の一部に、この外輪の幅の1/20~1/2の範囲の幅を有する係止溝が少なくとも1つ設けられており、この係止溝の底面に、ローレット加工による、幅方向に伸長する凹部と凸部とが全周にわたって交互に配置されるローレット目が形成されている。そして、これらの凹部および凸部の数、形状および寸法が、次の(1)~(3)のすべての条件を満たすように規制
している。
[0017]
(1)これらの凹部のうち、底面の周方向両側で、隣接する凸部の先端面と連続する2つの内側面同士の交差角度θを、45度~120度の範囲として、その形状を台形状とする。
(2)前記凸部の先端面の外接円の直径Dと、前記凹部の底面の周方向長さLとが、0.01D≦L≦0.03Dの関係を満たす。
(3)前記直径Dと、前記凹部の径方向深さをhとが、0.004D≦h≦0.015Dの関係を満たす。
[0018]
 そして、前記プーリの内周面の軸方向の一部に、幅方向に伸長し、前記凹部と係合する複数の台形状の突条を全周にわたって形成して、これらの突条を前記凹部と係合させることにより、前記プーリが前記転がり軸受の外周面に保持される。
[0019]
 好ましくは、前記プーリが前記外輪の外周面に対して射出成形により固設され、この射出成形時に、このプーリを構成する溶融樹脂が、前記係止溝に充填固化されることにより、前記突条が形成されることにより、これらの突条が前記凹部に係合する構造とする。
[0020]
 前記ローレット目の凹部と凸部とを、軸方向に対し傾斜した状態で設けることが好ましい。
[0021]
 本発明の第2の態様のプーリ装置も、外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する転がり軸受と、ベルトが掛け渡される外周面と、前記外輪の外周面に外嵌される内周面を有するプーリと、を備える。
[0022]
 そして、前記外輪の外周面の軸方向の一部に、この外輪の幅の1/20~1/2の範囲の幅を有する係止溝を少なくとも1つ設けて、この係止溝の底面に、ローレット加工による、軸方向に対し傾斜した状態で幅方向に伸長する凹部と凸部とが全周にわたって交互に配置されるローレット目を形成し、これらの凹部のそれぞれが、底面とこの底面の周方向両側で、隣接する凸部の先端面と連続する2つの内側面とを備え、かつ、台形状となるように構成する。さらに、前記プーリの内周面の軸方向の一部に、軸方向に対し傾斜した状態で幅方向に伸長し、前記凹部と係合する複数の台形状の突条を全周にわたって形成する。
[0023]
 この態様でも、前記プーリを前記外輪の外周面に対して射出成形により固設させ、この射出成形時に、このプーリを構成する溶融樹脂を、前記係止溝に充填固化させることにより、前記突条を形成することが好ましい。
[0024]
 前記係止溝を、前記外輪の外周面の軸方向の2箇所位置に形成して、これらの係止溝の底面に形成されたローレット目の凹部と凸部とを、軸方向に対し互いに反対方向に同じ角度だけ傾斜した状態で設けることが好ましい。
[0025]
 なお、第1の態様の構成に、第2の態様の構成を適用することは可能である。また、第2の態様の構成に、第1の態様における凹部および凸部の数、形状および寸法に関する条件を適用することも可能である。

発明の効果

[0026]
 本発明のプーリ装置の場合には、外輪の外周面に形成されたローレット目の凹部および凸部の数、形状および寸法を適正に規制することで、合成樹脂製のプーリと金属材料製の外輪との間でクリープが発生することを確実に防止できる。
[0027]
 また、本発明の好ましい態様においては、前記プーリの回転に伴って、このプーリの内周面に形成した突条の周方向側面と前記ローレット目の内側面との当接部に加わる力を小さく抑えることができる。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1] 図1は、本発明の実施の形態の第1例のプーリ装置から転がり軸受を取り出して示す斜視図である。
[図2] 図2は、図1の転がり軸受を径方向から見た正面図である。
[図3] 図3は、図2の部分拡大a-a断面図である。
[図4] 図4は、本発明の実施の形態の第1例のプーリ装置を、外輪の外径側にプーリを固設した状態で示す、図3と同様の図である。
[図5] 図5は、本発明の実施の形態の第2例を示す、プーリ装置の部分切断斜視図である。
[図6] 図6は、本発明の実施の形態の第2例のプーリ装置を構成する転がり軸受を径方向から見た正面図である。
[図7] 図7は、本発明の実施の形態の第3例を示す、プーリ装置の部分切断斜視図である。
[図8] 図8は、本発明の実施の形態の第3例のプーリ装置を構成する転がり軸受を径方向から見た正面図である。
[図9] 図9は、従来のプーリ装置の1例を示す部分切断斜視図である。
[図10] 図10は、従来のプーリ装置における、クリープを防止するための構造の第1例を示す、転がり軸受の半部断面図(A)と、一部が省略された転がり軸受の概略側面図(B)である。
[図11] 図11は、従来のプーリ装置における、クリープを防止するための構造の第2例(A)および第3例(B)を示す、転がり軸受を径方向外方から見た正面図である。
[図12] 図12は、従来のプーリ装置における、クリープを防止するための構造の第4例を示す、転がり軸受を径方向外方から見た正面図である。
[図13] 図13は、従来のプーリ装置における、クリープを防止するための構造の第5例を示す、要部断面図である。
[図14] 図14は、図13のb-b断面図である。

発明を実施するための形態

[0029]
 [実施の形態の第1例]
 図1~図3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。なお、本例の特徴は、プーリと外輪との間でクリープが発生することを確実に防止するプーリ装置を実現するため、このプーリ装置の外輪7fの外周面の一部に設けたローレット目19aの凹部17aおよび凸部18aの形状および寸法を工夫した点にある。その他の部分の構造および作用は、従来のプーリ装置と同様であるから、同等部分に関する図示および説明は省略または簡略化して、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
[0030]
 本例のプーリ装置の転がり軸受3bを構成する外輪7fは、外径が35mm~60mmで、幅寸法が8mm~20mmであり、外周面の軸方向の一部に係止溝16aが設けられている。この係止溝16aの底面に、ローレット加工による凹部17aと凸部18aとを、全周にわたって交互に配置して構成される、ローレット目19aが形成されている。凹部17aに、プーリ2bを構成する合成樹脂の一部を充填および固化させることで、プーリ2bの内周面の軸方向の一部に、それぞれが軸方向に長い突条20aが形成されている。突条20aと外輪7fのローレット目19aとの係合により、プーリ2bと外輪7fとの間のクリープの発生を防止している。なお、ローレット目19aの幅W 19は、外輪7fの幅をW とした場合、0.05W ≦W 19≦0.5W の関係となるように規制される。W 19<0.05W である場合、プーリ2bと外輪7fとの間に加わるクリープトルクを支承できなくなる可能性があり、好ましくない。一方、W 19>0.5W とした場合、ローレット加工によりローレット目19aを形成することが困難となる。
[0031]
 凹部17aの数は、合計で50個~150個としている。凹部17aの数、すなわち、突条20aの数が50個未満の場合、突条20aの数が十分ではなくなり、プーリ2bと外輪7fとの間に加わるクリープトルクを支承できなくなる可能性がある。これに対して、凹部17aの数が150個を超えると、プーリ2bを構成する合成樹脂の一部を進入させようとしても、凹部17a内全体に合成樹脂が行き渡らず、凹部17aの底面21と、突条20aの先端面との間に隙間が生じる可能性がある。また、突条20aの周方向長さが小さくなり、突条20aの強度が低くなるため、プーリ2bと外輪7fとの間に加わるクリープトルクを支承できなくなったり、プーリの耐久性を確保できなくなったりする可能性がある。
[0032]
 また、凹部17aを構成する内面のうち、凸部18aの先端面22と連続する、周方向に関して互いに対向する内側面(段差面)23を設けており、隣り合う内側面23同士の交差角度θを、45度~120度の範囲に規制している。この交差角度θが45度未満の場合には、凹部17aに、プーリ2bを構成する合成樹脂の一部を進入させようとしても、凹部17a内全体に合成樹脂が行き渡らず、凹部17aの底面21と、突条20aの先端面との間に隙間が生じる可能性がある。一方、交差角度θが120度を超えた場合、凹部17aの数を十分に確保することが難しくなるだけでなく、内側面23と突条20aとの当接面の圧力角が小さくなる。このため、外輪7fの外周面に対してプーリ2bの内周面が滑りやすくなり、クリープ防止効果を十分に得ることができない。
[0033]
 また、凹部17aの径方向深さhと、凸部18aの先端面22の外接円の直径(凸部18aの山径)Dとは、0.004D≦h≦0.015Dの関係を満たすようにする。h>0.015Dの場合、プーリ2bを構成する合成樹脂の一部を進入させようとしても、凹部17a内全体に合成樹脂が行き渡りにくくなり、凹部17aの底面21と、突条20aの先端面との間に隙間が生じる可能性がある。一方、h<0.004Dとした場合、凹部17aと突条20aとの結合強度を十分に確保できず、プーリ2bと外輪7fとの間に加わるクリープトルクを支承できなくなる可能性がある。
[0034]
 さらに、凹部17aの底面21の周方向長さLと、凸部18aの先端面22の外接円の直径Dとは、0.01D≦L≦0.03Dの関係を満たしている。L<0.01Dの場合、突条20aの強度を十分に確保することが難しく、プーリ2bと外輪7fとの間に加わるトルクを支承できなくなる可能性がある。一方、L>0.03Dとした場合、凹部17aの数を十分に確保することが困難となる。
[0035]
 [実施の形態の第2例]
 図5および図6は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、ローレット目19bの凹部17bおよび凸部18bを、転がり軸受3cの軸方向に対し傾斜した状態で設けている。このようなローレット目19bは、例えば綾目用転造ローレット駒により係止溝16bの底面にローレット加工を施すことで形成できる。そして、実施の形態の第1例の場合と同様に、凹部17bに、プーリ2cを構成する合成樹脂の一部を進入および固化させることで、プーリ2cの内周面に軸方向に対し傾斜した突条20bを形成している。突条20bと外輪7gのローレット目19bとの係合により、プーリ2cと外輪7gとの間のクリープの発生を防止している。
[0036]
 本例の場合、凹部17bおよび凸部18bを、転がり軸受3cの軸方向に対し傾斜した状態で設けているため、プーリ2cの回転に伴い、突条20bの周方向側面からローレット目19bの段差面に加わる力を小さくすることができる。凹部17bおよび凸部18bの形成方向と、転がり軸受3bの軸方向との成す角度(ねじれ角)αは、0度<α≦10度の範囲、好ましくは0度<α≦3度の範囲に規制する。ねじれ角αの範囲の下限値は、突条の周方向側面から凹部17bの内側面(段差面)に加わる力を小さく抑える面から定められる。一方、ねじれ角αの範囲の上限値は、突条の周方向側面と凹部17bの内側面(段差面)との係合部に関する接線方向の力が大きくなり過ぎるのを防止する面から定められる。
[0037]
 プーリ2cの回転に伴い外輪7fに生じるアキシアル荷重は、突条20bの幅方向端面と凹部17bの幅方向内端面との係合により支承される。本例の場合、凹部17bの幅方向内端面を、外輪7fの軸方向に対し垂直方向に設けている。ただし、凹部17bを係止溝16bの幅方向に亙って(凹部17bの幅方向両端部を係止溝16bの幅方向両側面に開口する状態で)形成したり、凹部17bおよび凸部18bの形成方向に対し直角方向の面としたりすることもできる。その他の部分の構造および効果は、実施の形態の第1例と同様である。なお、本例でも、第1例における凹部および凸部の数、形状および寸法に関する条件を適用することが好ましいが、必ずしもこれらすべてを適用する必要はない。
[0038]
 [実施の形態の第3例]
 図7および図8は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合、外輪7hの外周面の2箇所位置にローレット目19b、19cを、外輪7hの軸方向中央部に関し対称に設けている。すなわち、外輪7hの外周面の軸方向に離隔した2箇所位置に、それぞれ係止溝16b、16cを形成し、係止溝16b、16cの底面にローレット目19b、19cの凹部17b、17cと凸部18b、18cを軸方向に関して、互いに逆方向に、同じ角度だけ傾斜した状態で形成している。ただし、凹部17b、17cと凸部18b、18cとの周期(ピッチ)については、必ずしも同じとする必要はなく、たとえば一方のローレット目19bの周期に対し、他方のローレット目19cの周期を、半周期ずらすこともできる。
[0039]
 本例の場合、外輪7hの外周面の2箇所位置にローレット目19b、19cを、外輪7hの軸方向中央部に関し対称に設けている。このため、プーリ2dの回転に伴い外輪7hに生じるアキシアル荷重を互いに打ち消し合わせて、相殺することができる。その他の部分の構造および効果は、実施の形態の第2例と同様である。
実施例
[0040]
 実施の形態の第1例に係る発明の効果を確認するために行った実験について、以下に説明する。この実験では、外周面の一部に、表1に示した、本発明の技術的範囲に属する1種類(実施例)と、この発明の技術的範囲から外れる1種類(比較例)との合計2種類の、互いに異なる凹部および凸部の数、形状および寸法を有するローレット目を形成した、内径17mm、外径40mm、幅12mmで、JISの呼び番号が6203である、単列深溝型玉軸受を用意した。なお、係止溝の幅寸法は何れも2.4mmとし、ローレット目の幅寸法は何れも1.6mmとした。
[0041]
[表1]


[0042]
 表1に示した各例の外輪に、合成樹脂を射出し、これらの外輪の外周面にプーリを形成し、プーリ装置とした。プーリを構成する合成樹脂材料として、ナイロン66を使用し、プーリの外径寸法は70mm、幅寸法は24mmとした。
[0043]
 このようにして得られた、それぞれのプーリ装置を、プーリを回転不能に固定し、外輪に回転方向の力を加えた。この状態で、プーリと外輪との間でクリープが発生(この外輪が、このプーリに対して相対回転)した時のトルクの大きさを3回測定した。
[0044]
[表2]


[0045]
 表2は、上記の実験の結果を表している。クリープが発生したときのトルクの大きさの標準偏差は、比較例が16.3であるのに対し、実施例では8.7とおよそ半分に抑えられている。これは、ローレット目の数、形状および寸法を適切に規制しなかった場合には、ローレット目の凹部の底面と突条の先端面との間に隙間が生じ、プーリと外輪との間の結合強度を十分に確保できなくなる場合があることを示している。また、クリープが発生したときのトルクの大きさの平均値についても、比較例に対し、実施例の場合にはおよそ10%向上していることが理解される。以上の実験により、本発明によれば、特開平11-148550号公報に開示された構造を有するプーリ装置において、プーリと外輪との間で支承できるクリープトルクの大きさを確実に向上させられることを確認できた。

符号の説明

[0046]
  1  プーリ装置
  2、2a~2d プーリ
  3、3a~3c 転がり軸受
  4  内輪軌道
  5  内輪
  6  外輪軌道
  7、7a~7h 外輪
  8  転動体
  9  密封板
 10  内径側円筒部
 11  外径側円筒部
 12  連結部
 13  補強リブ
 14  ナール
 15a~15c 凹溝
 16、16a~16c 係止溝
 17、17a~17c 凹部
 18、18a~18c 凸部
 19、19a~19c ローレット目
 20、20a、20b 突条
 21  底面
 22  先端面
 23  内側面

請求の範囲

[請求項1]
 外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する転がり軸受と、
 ベルトが掛け渡される外周面と、前記外輪の外周面に外嵌される内周面を有するプーリと、
を備え、
 前記外輪の外周面の軸方向の一部に、この外輪の幅の1/20~1/2の範囲の幅を有する係止溝が少なくとも1つ設けられており、
 この係止溝の底面に、ローレット加工による、幅方向に伸長する凹部と凸部とが全周にわたって交互に配置されるローレット目が形成されており、これらの凹部のそれぞれは、底面とこの底面の周方向両側で、隣接する凸部の先端面と連続する2つの内側面とを備え、この内側面同士の交差角度θが、45度~120度の範囲に規制されることにより、凹部が台形状となっており、さらに、前記凸部の先端面の外接円の直径をDとし、前記凹部の径方向深さをhとし、これらの凹部の底面の周方向長さをLとした場合に、0.004D≦h≦0.015Dで、かつ、0.01D≦L≦0.03Dとなる関係を満たし、
 前記プーリの内周面の軸方向の一部に、幅方向に伸長し、前記凹部と係合する複数の台形状の突条が全周にわたって形成されている、
プーリ装置。
[請求項2]
 前記プーリが前記外輪の外周面に対して射出成形により固設されており、この射出成形時に、このプーリを構成する溶融樹脂が、前記係止溝に充填固化されることにより、前記突条が形成されている、請求項1に記載のプーリ装置。
[請求項3]
 前記ローレット目の凹部と凸部とが、軸方向に対し傾斜した状態で設けられている、請求項1に記載のプーリ装置。
[請求項4]
 外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する転がり軸受と、
 ベルトが掛け渡される外周面と、前記外輪の外周面に外嵌される内周面を有するプーリと、
を備え、
 前記外輪の外周面の軸方向の一部に、この外輪の幅の1/20~1/2の範囲の幅を有する係止溝が少なくとも1つ設けられており、
 この係止溝の底面に、ローレット加工による、軸方向に対し傾斜した状態で幅方向に伸長する凹部と凸部とが全周にわたって交互に配置されるローレット目が形成されており、これらの凹部のそれぞれは、底面とこの底面の周方向両側で、隣接する凸部の先端面と連続する2つの内側面とを備え、かつ、台形状となっており、
 前記プーリの内周面の軸方向の一部に、軸方向に対し傾斜した状態で幅方向に伸長し、前記凹部と係合する複数の台形状の突条が全周にわたって形成されている、
プーリ装置。
[請求項5]
 前記プーリが前記外輪の外周面に対して射出成形により固設されており、この射出成形時に、このプーリを構成する溶融樹脂が、前記係止溝に充填固化されることにより、前記突条が形成されている、請求項4に記載のプーリ装置。
[請求項6]
 前記係止溝が、前記外輪の外周面の軸方向の2箇所位置に形成されており、これらの係止溝の底面に形成されたローレット目の凹部と凸部とが、軸方向に対し互いに反対方向に同じ角度だけ傾斜した状態で設けられている、請求項3または4に記載のプーリ装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]