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1. WO2007094094 - PHOTON PAIR GENERATOR

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明 細書

光子対生成装置

技術分野

[0001] 本発明は、量子相関光子対を生成する光子対生成装置に関するものである。

背景技術

[0002] 近年、情報通信技術の発展は著しいものであり、さらなる情報通信の高速化、高度 化に対する需要は拡大している。これに伴い、従来の電気信号による情報処理とは 異なる技術として、量子情報処理が挙げられる。この量子情報処理に関する研究は、 1984年の Charles Bennet (IBM)らによる量子暗号プロトコルの考案や、 1994年の P eter Shore (AT&T)による量子計算アルゴリズムの考案を契機として、現在精力的に 進められている。

[0003] 量子暗号では、量子力学におけるハイゼンベルグの不確定性原理により、物理現 象によって安全性が保証される。該不確定性原理では、観測によってその状態は変 化するため、通信が盗聴 (観測)されると、必ずそれが明らかになり、それに応じて通 信を遮断するなどの処置が可能なため、盗聴が物理学的に不可能とされる。また、粒 子を複製することも不確定性原理によって不可能である。

[0004] 量子暗号における重要な要素として量子テレポーテーシヨンがあげられる。量子テ レポ一テーシヨンは、粒子の量子的な情報だけを別の場所に移す技術である。該量 子テレポ一テーシヨンは、量子相関のある光子対 (量子相関光子対)を利用して、光 子同士が情報をやり取りすることにより実現される。量子相関光子対は、一方の量子 的状態が決まると、他方の量子状態も決まるという性質があり、この性質は、 2光子間 の距離に依存しない。

[0005] 従来、量子相関光子対の生成は、高出力レーザを非線形光学材料に照射させる ノ メトリック下方変換によって実現されている。しかしながら、この過程力も生成され た量子相関光子対の波長は比較的長ぐ 3光子以上の量子相関多光子状態を実現 することが難しいという欠点がある。これに対して、下記の文献 1, 2には、半導体 Cu Cレ レク結晶の共鳴ハイパーパラメトリック散乱過程を用いることによって、短波長の 相関光子対の生成を行う技術が開示されている。

[0006] 上記した半導体 cuaバルタ結晶を用いた相関光子対の生成は、従来の生成方法 に比べて、短波長の相関光子対を生成することが可能である点に最大の特徴と長所 がある。し力しながら、デバイス化の観点からすると、バルタ結晶を用いるよりも、ナノ 結晶を用いる方が好ましい。ところが、ナノ結晶を用いると、光との相互作用が小さく なるために、相関光子対を高効率に生成することが困難となるという問題がある。

[0007] (文献 1)

K.Edamatsu, G.Oohata, R.Shimizu, and T.Itoh: Nature, 431, 167,(2004). (文献 2)

日本国公開特許公報である特開 2005 - 309012号公報(2005年 11月 4日公開) 発明の開示

[0008] 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイパーパラ メトリック散乱によって相関光子対を生成する光子対生成装置において、より相関光 子対の生成効率を向上させることを可能とする光子対生成装置を提供することにある

[0009] 本発明に係る光子対生成装置は、上記課題を解決するために、光を出射する光源 と、上記光源から出射された光を取り入れ、内部で共振させることによって光の強度 を強める共振器とを備え、上記共振器が、相関光子対生成部材を含んでおり、上記 相関光子対生成部材が、取り入れた 2個の光子を共鳴的に励起させて励起子分子 を生成し、さらに該励起子分子が崩壊することによって、互いに量子相関した 2個の 光子を相関光子対として放出するものである構成である。

[0010] 上記の構成では、相関光子対生成部材が共振器に含まれた構成となっている。相 関光子対生成部材は、上記のように、ハイパーパラメトリック散乱によって相関光子対 を生成する部材である。ここで、共振器は、光源から出射された光を取り入れ、内部 で共振させることによって光の強度を強める機能を有している。このような機能を有す る共振器に相関光子対生成部材が含まれていることによって、相関光子対生成部材 に対して、より強度が強まった光子を作用させることが可能となる。したがって、相関 光子対生成部材を単独で用いる場合と比較して、より相関光子対の生成効率を向上

させることが可會となる。

[0011] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白にな るであろう。

図面の簡単な説明

[0012] [図 1]本発明の一実施形態に係る光子対生成装置の概略構成を示すブロック図であ る。

[図 2(a)]励起子および励起子分子の緩和定数の大きさが lmeVの場合の増強率を 示すグラフである。

[図 2(b)]励起子および励起子分子の緩和定数の大きさが 0. lmeVの場合の増強率 を示すグラフである。

[図 2(c)]励起子および励起子分子の緩和定数の大きさが 10 μ eVの場合の増強率を 示すグラフである。

[図 3]—偏光の振動数を、面内波数ベクトル力^の共振器ポラリトンの下枝の振動数 に合わせる場合に、横軸に、励起子と共振器モードの光との相互作用の強さをとり、 縦軸に、 +偏光の差分振動数をとり、相関光子対の生成効率の計算値をグレースケ ールで示した図である。

[図 4(a)]図 3における上側の曲線に沿って計算した状態( φ 1)および状態( φ 4)の成 分の存在確率をそれぞれ示すグラフである。

[図 4(b)]図 3における下側の曲線に沿って計算した状態( φ 1)および状態( φ 4)の成 分の存在確率をそれぞれ示すグラフである。

[図 5]2次元フォトニック結晶を用いた共振器の構成例を示す図である。

[図 6]共振器ピラーと呼ばれる構造による、量子ドットを含んだ共振器の構成例を示 す図である。

発明を実施するための最良の形態

[0013] 本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。

[0014] (光子対生成装置の構成)

図 1は、本実施形態に係る光子対生成装置 1の概略構成を示している。同図に示

すように、光子対生成装置 1は、共振器 2および光源 6を備えた構成となっている。

[0015] 光源 6は、共振器 2に対して、入射光としてのレーザ光を照射するものである。具体 的には、光源 6は、レーザ光を出射するレーザ光源、 1Z4波長板を備えている。レー ザ光源としては、例えば垂直共振器型面発光レーザ (VCSEL :Vertica卜 Cavity Surfa ce-Emitting Laser)が挙げられる。この垂直共振器型面発光レーザは、所定の波長、 パルス幅、繰り返し周波数で、レーザ光を出力する。 1Z4波長板は、レーザ光源から 出射された直線偏光を円偏光に変換する。

[0016] ここで、本実施形態では、互いに振動数の異なるレーザ光を出力する 2つのレーザ 光源を設けるとともに、それぞれのレーザ光源に対応させて 1Z4波長板を設けてい る。また、各 1Z4波長板は、入射光を互いに逆の偏光方向となる円偏光に変換する 。これにより、光源 6から出射される 2つの光は、偏光の回転方向が互いに逆向きにな つている光となる。ここで、偏光の回転方向が互いに逆向きになっている光をそれぞ れ +偏光および偏光と称する。 +偏光および偏光のそれぞれの振動数をどのよ うに設定するかについては後述する。以上の構成により、共振器 2に対して、互いに 異なる振動数の +偏光および偏光を照射することが可能となる。

[0017] なお、上記の構成では、光源 6は +偏光および偏光を出射する構成となっている 力 直線偏光を出射する構成としてもよい。直線偏光には、 +偏光および偏光の 両方が含まれているので、このような直線偏光を共振器 2に対して入射させても相関 光子対を生成することが可能である。また、振動数の異なる直線偏光のレーザ光源 を 2つ設けることによって、共振器 2に対して、互いに異なる振動数の +偏光および 偏光を照射することが可能となる。

[0018] 共振器 2は、入射光を内部で共振させるとともに、共鳴ハイパーパラメトリック散乱過 程により、偏光に関して量子相関した光子対 (相関光子対)を出射する。この共振器 2は、第 1および第 2DBR (Distributed Bragg Reflector)ミラー 3 · 5、量子井戸(相関 光子対生成部材) 4、および共振空間領域 7を備えて、る。

[0019] 第1ぉょび第2081^ミラー3 ' 5は、屈折率の異なる半導体層を光学波長の 1Z4の 厚さで交互に積層した構造となっている。なお、本実施形態では、共振器のミラーと して DBRミラーを用いた力その他、共振器において用いることが可能なミラーであ

ればどのような材料のミラーを用いてもょ、。

[0020] これらの第 1および第 2DBRミラー 3 · 5に挟まれた領域に共振空間領域 7が設けら れている。そして、共振空間領域 7の内部に、量子井戸 4が設けられている。量子井 戸 4は、厚さにして nmオーダー(10〜100nm)の薄膜によって構成されており、バン ドギャップの大きいバリア層で挟む構造とすることによって、電子は厚さ方向に量子 化され、エネルギーは離散化する。この量子井戸 4として、本実施形態では、膜厚 10 〜20nmの CuCl結晶を用いるが、共鳴ハイパーパラメトリック散乱過程による相関光 子対の生成が可能な材料であればどのような材料であってもよい。なお、量子井戸 4 の膜厚としては、上記した 10〜20nmとすることによって、相関光子対の生成効率が 良好となる。

[0021] (相関光子対の生成)

前記したように、半導体バルタ結晶に特定の波長をもつレーザ光を照射すると、 2 光子吸収によって励起子分子が共鳴的に生成される。なお、光によって価電子帯か ら取り除かれた電子状態は正の荷電粒子 (正孔)と見なすことができる。この正孔と伝 導帯に励起した電子による束縛状態を励起子という。また、励起子分子とは、 2つの 励起子が束縛した状態となって!/、るものを示す。

[0022] そして、この励起子分子が消滅する過程で異なる方向に放出される 2個の光子は、 偏光に関して量子相関した状態となる。すなわち、これにより相関光子対が生成され る。(量子)相関光子対とは、ェンタンダルド光子対ともいい、量子力学的にもつれあ つた状態の光子対を示して、る。

[0023] このような散乱過程 (共鳴ハイパーパラメトリック散乱過程)は、半導体バルタ結晶の 代わりに半導体量子井戸を用いても生じうる。しかしながら、半導体量子井戸を用い た場合、光との相互作用が小さくなるために、相関光子対の生成効率が低くなる。

[0024] そこで、本実施形態の光子対生成装置 1は、上記のように、共振器 2の内部に量子 井戸 4を設けた構成として、る。この量子井戸 4を適切な条件 (詳細は後述する)で共 振器 2中に設けることによって、量子井戸単体を用いる構成と比較して、共鳴ハイパ 一パラメトリック散乱過程による相関光子対の生成を格段に効率良く行うことが可能と なる。

[0025] 共振器 2を用いることによって相関光子対の生成効率が増大する原理は、基本的 に、共振器 2中の平均 1光子あたりの電場強度が非常に強くなることに基づいている 。詳しく説明すると、まず、共振器 2に対して光が入射すると、共振により共振器 2内 における光が特定のモードとなり、光の電場強度が増大することになる。ここで、共振 器 2内における光のモードには様々なものがあり、そのモードに依存して電場強度が 高くなる位置が存在する。この電場強度が高くなる位置に量子井戸 4を設けることに よって、共鳴ハイパーパラメトリック散乱過程による相関光子対の生成効率を高めるこ とが可能となる。

[0026] 例えば、共振器 2内における光のモード(共振器モード)のうち、最も振動数が小さ い共振器モードの場合、共振空間領域 7の中心近傍で電場強度が最も高くなる。す なわち、この共振空間領域 7の中心近傍に量子井戸 4を設けることによって相関光子 対の生成効率を高めることが可能となる。

[0027] (相関光子対生成効率の増強率)

次に、共振器 2の内部に量子井戸 4を設けた構成による相関光子対の生成効率が 、量子井戸単体の構成による相関光子対の生成効率に対してどの程度増強するか を示す増強率にっ、て説明する。

[0028] 量子井戸 4に 2つの光子が入ると、二光子共鳴励起によって励起子分子が生成さ れる。生成された励起子分子は、緩和を経ないで 2つの励起子に分裂し、これら 2つ の励起子が相関光子対として放出される。ここで、励起子や励起子分子は、相関光 子対を放出する以外にも、緩和により様々な過程を経て消失する。相関光子対を放 出しない過程としては、例えば、励起子や励起子分子が消失して格子振動 (フオノン )が誘起される過程などが挙げられる。このような、励起子や励起子分子が「相関光 子対を放出しな、過程」で別の状態へ遷移する時間の逆数を緩和定数と定義する。

[0029] 相関光子対の生成効率の大きさは、「光と物質系との相互作用(以降、単に相互作 用と称する)」と「緩和定数」との相対的な大きさで決まる。「緩和定数」が「相互作用」 よりも十分大きい場合には、緩和定数が小さくなるにつれて生成効率は大きくなる。し 力しながら、「緩和定数」をさらに小さくして「相互作用」よりも十分小さくなると、生成 効率はほとんど飽和することになる。

[0030] ここで、「緩和定数」が、量子井戸単独である場合の「相互作用」よりも十分大きい場 合を考える。このような場合でも、量子井戸 4を共振器 2の内部に設けた構成にするこ とによって、量子井戸 4における光の電場強度が量子井戸単独である場合よりも高く なり、「相互作用」を「緩和定数」よりも十分に大きくすることができる。すなわち、量子 井戸単独である場合よりも、量子井戸 4を共振器 2の内部に設けた構成とする方が、 相関光子対の生成効率が高くなる。

[0031] 一方、「緩和定数」が、量子井戸単独である場合の「相互作用」よりも小さい場合に は、量子井戸 4単独であっても(量子井戸 4を共振器 2の内部に設けなくても)比較的 大きな生成効率を得ることができ、量子井戸 4を共振器 2の内部に設けたとしても、生 成効率の向上は僅かなものとなる。

[0032] 以上より、相関光子対生成効率の増強率は、量子井戸 4における緩和定数に依存 しており、緩和定数が大きいほど増強率は大きくなる。

[0033] 図 2 (a)〜(c)は、励起子および励起子分子の緩和定数 γ ex · γ bの大きさが lmeV

、 0. lmeV、および 10 μ eVのそれぞれの場合の増強率を示すグラフである。これら のグラフの前提条件は次のとおりである。まず、 +偏光および偏光の光を量子井 戸 4の面に垂直に入射させている。ここで、偏光の振動数は、面内の波数ベクトル 力 Soの共振器ポラリトン (共振器モードと量子井戸中の励起子とが結合したモードを示 す)の振動数と一致させている。また、励起子共鳴エネルギーは 3. 2022eV、励起 子分子の束縛エネルギーは 30meV、励起子と共振器モードの光との相互作用を 22 meV、励起子分子と共振器モードの光との相互作用を lmeV、および、共振器 2の Q値を 1000としている。なお、 Q値とは、 Q = ω Z Γ ( Γ:共振器 2の透過スペクトル のピークにおける半値全幅 (振動数)、 ω :透過スペクトルのピークの振動数)で表さ れる、振動数分布の程度を示す値である。また、各グラフの縦軸は増強率を示してお り、横軸は +偏光の差分振動数 Δ Ω +を示している。差分振動数 Δ Ω +は、 Δ Ω + = ω + - ω 0 ( ω +: +偏光の振動数、 ω 0:共振器モードの振動数)で定義される。

[0034] これらのグラフに示すように、励起子および励起子分子の緩和定数が lmeVの場 合には、増強率は 100万倍にも達する力緩和定数が 10 eVの場合の増強率は 6 00倍程度である。したがって、緩和定数が十分に小さい場合には、共振器 2による量 子相関光子対生成の増強率は比較的小さくなる。し力しながら、このように緩和定数 力 、さい場合でも、増強率としては十分に大きいものであり、特に光子対生成装置 1 を室温で動作させる場合には、量子井戸 4を共振器 2の内部に設けた構成による効 果は絶大である。

[0035] (相関光子対生成のための最適化条件)

次に、共振器 2の内部に量子井戸 4を設けた構成において、相関光子対の生成効 率を最適化するための最適化条件について説明する。この最適化条件は、大きく分 けると次の 2点である。

(1) +偏光と—偏光とからなる入射光のうち、どちらか一方の振動数を共振器 2にお ける共振器ポラリトンのエネルギー準位の振動数に一致させる。

(2) +偏光と—偏光とからなる入射光のうち、共振器ポラリトンの振動数に一致させた 方ではない方の振動数、および、「物質系と共振器中の光の相互作用」を、 2粒子励 起状態の「励起子分子の成分」と「共振器モードの光の成分」とが同程度になるような 条件にあわせる。

[0036] 以下、上記 2つの条件の詳細について説明する。共鳴ハイパーパラメトリック散乱過 程によって相関光子対を生成させる場合、まず、励起子分子が生成されることが必要 不可欠である。しかしながら、共振器 QED (Quantum Electrodynamics)の枠組みに おいて、薄膜としての量子井戸 4を埋め込んだ共振器 2の系では、励起状態として励 起子分子単独の状態で記述できない場合がある。実際に、 +偏光および偏光の 光子が共振器 2に 2個入ったとき (2粒子励起状態)、共振器系の固有状態は、 φ 1 ( 光子 0個、励起子分子 1個)、 φ 2 (+偏光の光子 1個、偏光の励起子 1個)、 3 ( 偏光の光子 1個、 +偏光の励起子 1個)、および、 Φ 4 (+偏光および偏光の励 起子 1個ずつ、物質系は基底状態)という 4個の状態の重ね合わせで表すことができ る。

[0037] 相関光子対の生成でもう 1つ重要な点は、 2粒子励起状態に共振器中の光子の状 態が含まれている(すなわち、 φ 2、 φ 3、 φ 4の状態)ことである。この要件は、生成さ れた相関光子対が共振器 2の外に出て行くために必要である。

[0038] 以上より、励起子分子が生成されることが必要であることにより、 φ 1の状態が必要 であり、 2粒子励起状態に共振器中の光子の状態が含まれていることが必要であるこ とにより、 φ 2、 φ 3、 φ 4の状態が必要であることになる。したがって、 2粒子励起状態 が励起子分子を含む状態(Φ 1)と共振器モードの光子を含む状態(Φ 2、 φ 3、 φ 4) とを同程度の重みで重ね合わせた状態となっていれば、相関光子対が高効率に生 成されることになる。なお、上記の(2)の条件において、「「励起子分子の成分」と「共 振器モードの光の成分」とが同程度になる」とは、「励起子分子 1個をとる遷移確率」と 、「励起子 1個と、入射光子 1個 (偏光の成分は角運動量保存)、もしくは励起子 2個と 入射光子 0個の状態をとる遷移確率の和」とが同程度になることを示している。

[0039] なお、上記の(2)の条件では、 2粒子励起状態の「励起子分子の成分」と「共振器 モードの光の成分」とが同程度になる、としているが、 2粒子励起状態の「励起子分子 の成分」と「共振器モードの光の成分」との両方が少なくとも存在すれば、相関光子対 の生成効率を向上させることが可能である。さらに言えば、 2粒子励起状態の「励起 子分子の成分」と「共振器モードの光の成分」とのどちらかが 10%以上あれば、相関 光子対の生成効率を十分に向上させることが可能である。

[0040] (最適化条件に基づく設計)

次に、上記した最適化条件に基づいた光子対生成装置 1の設計について説明する 。まず、条件(1)に基づいて、入射光における +偏光および偏光のどちらか一方( 例えば—偏光)の振動数が、面内波数ベクトルが 0の共振器ポラリトンの下枝または 上枝の振動数と一致するように、光源 6が光の出射を制御する。

[0041] ここで、面内波数ベクトルが 0の共振器ポラリトンの下枝の振動数は、 ω 0—g ex ( ω 0 は共振器モードの振動数、 g exは励起子と共振器モードの光との相互作用をそれぞ れ示す)で求められる。また、面内波数ベクトルが 0の共振器ポラリトンの上枝の振動 数は、 ω 0 +g exで求められる。よって、例えば偏光の振動数を、面内波数ベクトル 力 S0の共振器ポラリトンの下枝の振動数に合わせる場合、偏光の差分振動数 Δ Ω

— ( = ω—— ω 0 )が一 g exとなるように(Δ Ω =—

― g ex )すればよい。

[0042] このように、入射光の光子の振動数を共振器ポラリトンのエネルギー準位における 分枝の振動数に合わせると、ほぼ完全に光子を共振器 2内に入れることが可能となる 。すなわち、入射光の光子を共振器 2内において共振状態にさせる効率を高めること

が可能となる。

[0043] 図 3は、—偏光の振動数を、面内波数ベクトル力^の共振器ポラリトンの下枝の振動 数に合わせる場合に、横軸に、励起子と共振器モードの光との相互作用の強さ (g ex ) をとり、縦軸に、 +偏光の差分振動数 Δ Ω +をとり、相関光子対の生成効率 G十一の計 算値をグレースケールで示した図である。ここで、励起子と共振器モードの光との相 互作用の強さ (g ex )は、量子井戸 4の厚さを変えることによって変化させることが可能 である。

[0044] この図の前提条件は次のとおりである。まず、 +偏光および偏光の光を量子井戸 4の面に垂直に入射させている。また、励起子共鳴エネルギーは 3. 2022eV、励起 子分子の束縛エネルギーは 30meV、励起子分子と共振器モードの光との相互作用 を lmeV、励起子および励起子分子の緩和定数の大きさを lmeV、および、共振器 2 の Q値を 1000としている。また、生成効率 G H—の値は、共振器 2がある場合に g ex = 1

OmeVに対応する振動子強度をもつ、共振器 2に埋め込まれてヽなヽ量子井戸 (薄 膜)の場合で規格化している。

[0045] 図 3の中で、 2粒子励起状態へ励起するのに必要な Δ Ω +および g exの関係を 2本 の曲線で示している。なお、 2粒子励起状態は、 φ 1、 φ 2、 φ 3、および φ 4の 4個の 状態の重ね合わせで表されるものである。よって、 2粒子励起状態へ励起するのに必 要な条件は 4個存在する。し力しながら、これら 4個の条件のうち、 2個の条件は、図 3 で示すグラフの範囲力外れており、また相関光子対の生成効率は比較的小さいも のである。これにより、図 3では、 2粒子励起状態へ励起するのに必要な条件として 2 本の曲線が示されており、この条件のみを考慮すればょ、ことになる。

[0046] 前記したように、相関光子対を生成するためには、 2粒子励起状態が「励起子分子 の成分」と「共振器モードの光の成分」との両方を含んで、ることが必要である。すな わち、図 3において、 2本の曲線が最も近づくところでは、この 2つの成分が同程度に 含まれていることになるので、相関光子対の生成効率が最適となる。この 2本の曲線 が最も近づく点としての最適点は、図 3から g ex = 22meV, Δ Ω + = 9meVとなる点 であることがわかる。

[0047] 各状態( φ 1、 φ 2、 φ 3、 φ 4)は、図 3の 2本の曲線に沿ってその固有状態を計算 することによって求めることができる。この計算により、上記の最適点における 2粒子 励起状態は、励起子分子を含む状態( φ 1)と共振器モードの光子を含む状態( φ 2 、 Φ 3、 φ 4)とを同程度の重みで重ね合わせた状態になっていることが分かる。図 4 ( a)および図 4 (b)は、上記の計算の一例として、図 3における上側の曲線および下側 の曲線に沿って計算した状態( φ 1)および状態( φ 4)の成分の存在確率をそれぞ れ示している。

[0048] 以上のような条件を満たす量子井戸 4を埋め込んだ共振器 2を設計することにより、 相関光子対を非常に高効率に生成することが可能となる。ここで、設計すべきパラメ ータとしては、共振器 2の内側で光を閉じこめて、る領域の長さ L (図 1に示す構成で は、 DBRミラー 2と共振空間領域 7との界面から、ミラー 5と共振空間領域 7との界面 までの長さ)、量子井戸 4の厚み d、および入射光の振動数 ω

+、 ω

-が挙げられる。

[0049] Lは、励起子のエネルギーと最低共振器モードのエネルギーとが一致するように設 計する。具体的には、次の(1)式で長さ Lが求められる。

[0050] [数 1]

ω0 V c

上記の(1)式において、 ε は光が閉じこめられている領域の背景誘電率を示して いる。

[0051] 量子井戸 4の厚み dは、前記したように、励起子と共振器モードの光との相互作用 の強さ(g ex )を変化させることができるパラメータである力具体的には次の(2)式で 求められる。

[0052] [数 2]


上記の(2)式において、 hはプランク定数、 cは光速、 ε は量子井戸 4の背景誘電 率、 Δ は励起子の縦横分裂のエネルギーを表している。

[0053] 入射光の振動数 ω 、 ω は、前記したように、入射光における +偏光および偏 光のどちらか一方の振動数を、面内波数ベクトルが 0の共振器ポラリトンの下枝また は上枝の振動数と一致させ、もう一方の振動数を、 2粒子励起状態の「励起子分子の 成分」と「共振器モードの光の成分」とが同程度になるような条件に合わせればよい。

[0054] なお、 2粒子励起状態のエネルギーを求めるためには、励起子分子と共振器モード の光との相互作用 g bのエネルギーが必要となる。図 3では、その大きさを lmeVとして 計算しているが、この相互作用 gbを評価することは困難であり、実験で決定すること が実用的である。

[0055] (共振器の他の構成例)

図 1に示した構成では、共振器 2の内部に量子井戸 4を設けているが、この量子井 戸 4の代わりに量子ドット湘関光子対生成部材) 11を設けた構成としても、同様に効 率よく相関光子対を生成することが可能である。量子ドット 11を用いる場合、上記し た「共振器ポラリトンの振動数」を「ラビ分裂した準位の振動数」に置き換えることによ り、上記と同様に光子対生成装置 1の設計を行うことができる。なお、ラビ分裂とは、 共振器モードと量子ドット中の励起子による結合モードの準位分裂を示す。

[0056] 図 5は、量子ドット 11を設けた構成として、 2次元フォトニック結晶 10を用いた共振 器 2の構成例を示している。 2次元フォトニック結晶とは、平板状の基板に規則的に微 少な穴 (数百 nmのオーダー)が形成されて!ヽる構造体を示してヽる。この 2次元フォ トニック結晶 10に線欠陥を設けると、この線欠陥が光導波路として作用し、点欠陥を 設けると、 2次元フォトニック結晶 10が共振器として作用することが知られている。この 点欠陥に量子ドット 11を埋め込むとともに、量子ドット 11から 3方向に光導波路として の線欠陥を設ける構成とする。この構成〖こよれば、 1本の線欠陥から入射光を入射さ せると、残りの 2本の線欠陥から相関光子対が放出されることになる。

[0057] また、図 6に示すような共振器ピラーと呼ばれる構造によって、量子ドット 11を含ん だ共振器 2が構成されてもよい。同図に示すように、共振器ピラーにおいて、第 1DB Rミラー 3、共振空間領域 7、および第 2DBRミラー 5をこの順に設けるとともに、共振 空間領域 7の中心付近に量子ドット 11を設けることによって、相関光子対の生成効率 の良、共振器 2を構成することができる。

[0058] 本発明に係る光子対生成装置は、以上のように、上記共振器が、相関光子対生成 部材を含んでおり、上記相関光子対生成部材が、取り入れた 2個の光子を共鳴的に 励起させて励起子分子を生成し、さらに該励起子分子が崩壊することによって、互い に量子相関した 2個の光子を相関光子対として放出するものである。これにより、相 関光子対生成部材を単独で用いる場合と比較して、より相関光子対の生成効率を向 上させることが可會となる。

[0059] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記相関光子対生 成部材が、量子井戸または量子ドットである構成としてもよい。

[0060] 上記の構成によれば、量子井戸または量子ドットといったナノ結晶によって相関光 子対生成部材が構成されるので、ナノオーダの微細な構成によって光子対生成装置 を構成することが可能となる。したがって、例えば相関光子対を利用した量子コンビュ ータなどに適用する場合に、高度な集積ィ匕を実現することができる。

[0061] なお、量子井戸とは、半導体原子、金属原子、および有機分子などからなる 10〜1 OOnm程度の厚みを持つ 2次元構造物であり、量子ドットとは、半導体原子、金属原 子、および有機分子など力もなる 10〜: LOOnm四方程度の塊状の構造物である。

[0062] また、相関光子対生成部材は、半導体原子、金属原子、および有機分子などから なる 10〜: LOOnm程度の厚みを持つ 1次元状の構造をした量子細線によって構成さ れていても構わない。

[0063] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記光源が、互い に偏光の回転方向が反対となる第 1の光子および第 2の光子を、それぞれの振動数 が互いに異なった状態で上記共振器に照射する構成としてもよい。

[0064] 上記の構成によれば、共振器に対して、互いに偏光の回転方向が反対となる第 1 の光子および第 2の光子を、互いに異なる振動数で照射することが可能となる。よつ て、第 1の光子および第 2の光子の振動数を、相関光子対の生成効率が高くなるよう にそれぞれ個別に設定することが可能となる。

[0065] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記光源が、上記 第 1の光子の振動数を、共振器モードと上記相関光子対生成部材中の励起子とが 結合したモードにおけるエネルギー準位の振動数に一致させる構成としてもよい。 [0066] 上記の構成によれば、ほぼ完全に光子を共振器内に入れることが可能となる。すな わち、入射光の光子を共振器内において共振状態にさせる効率を高めることが可能 となる。

[0067] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記光源が、上記 第 2の光子の振動数を、上記相関光子対生成部材において、 2粒子励起状態の励 起子分子の成分が存在し、かつ、共振器モードの光の成分が存在するように設定し ている構成としてもよい。

[0068] 上記の構成によれば、 2粒子励起状態が励起子分子を含む状態と共振器モードの 光子を含む状態とが重ね合わされた状態となる。このような状態とすることにより、相 関光子対の生成効率を高めることが可能となる。

[0069] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記相関光子対生 成部材が、上記相関光子対生成部材において、 2粒子励起状態の励起子分子の成 分が存在し、かつ、共振器モードの光の成分が存在するような大きさとなっている構 成としてもよい。

[0070] 上記の構成によれば、上記と同様に、 2粒子励起状態が励起子分子を含む状態と 共振器モードの光子を含む状態とが重ね合わされた状態となる。このような状態とす ることにより、相関光子対の生成効率を高めることが可能となる。

[0071] また、本発明に係る光子対生成装置は、上記の構成において、上記相関光子対生 成部材力上記共振器内における光のモードに対応して電場強度が高くなる位置に 設けられる構成としてもよい。

[0072] 上記の構成によれば、共振器内における電場強度が高い位置に相関光子対生成 部材が設けられるので、相関光子対生成部材による相関光子対の生成効率をより高 めることが可能となる。

[0073] 本発明は上述した実施形態に限定されるものではなぐ請求項に示した範囲で種 々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段 を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

[0074] 尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様また は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような 具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に記 載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。 産業上の利用の可能性

本発明によれば、偏光に関して量子相関を有する光子対を高効率に生成すること ができる。このような相関光子対を用いることにより、量子テレポーテーシヨンを利用し た量子暗号などの量子情報通信技術に適用することができる。