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1. WO2013002317 - SOLID OXIDIZED GLUTATHIONE SALT AND METHOD FOR PRODUCING SAME

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明 細 書

発明の名称 固体状酸化型グルタチオン塩及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055  

実施例

0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

産業上の利用可能性

0076  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 固体状酸化型グルタチオン塩及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、酸化型グルタチオンの取扱性の改善技術に関する。なお酸化型グルタチオンは、健康食品、医薬品、化粧品、肥料等として、もしくはこれらを製造する為の中間体として有用である。

背景技術

[0002]
 酸化型グルタチオン(GSSG)は、還元型グルタチオン(GSH)と同様に、健康食品、医薬品、化粧品、肥料等の分野で有用であり、例えば、解毒作用などが知られている(非特許文献1など)。
[0003]
 酸化型グルタチオン(GSSG)は、還元型グルタチオン(GSH)2分子が酸化されてジスルフィド結合を形成することによって得られる分子であり、前記還元型グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンからなるトリペプチド(L-γ-glutamyl-L-cysteinyl-glycine)から構成されている。
[0004]
 酸化型グルタチオンの製造方法としては、例えば、まず還元型グルタチオンの水溶液や酵母液などを発酵法で調製し、この水溶液や酵母液を酸化することによって前記酸化型グルタチオンを水溶液として製造する方法が知られている(特許文献1、特許文献2など)。このようにして得られる酸化型グルタチオンは、例えば、その水溶液に賦形剤等を添加し、凍結乾燥や、噴霧乾燥することによって粉末化されている(酸化型グルタチオン含有酵母エキス粉末)。しかし、用途によっては賦形剤を用いることが許容されない場合があり、その使用に制約を受ける場合がある。
[0005]
 従来、賦形剤を使用せずに固体として取得された酸化型グルタチオンとしては、例えば、前記酸化型グルタチオンの水溶液から酸化型グルタチオンを分離精製した後、凍結乾燥、噴霧乾燥などすることによって得られる酸化型グルタチオン無水和物の粉末が知られている。その他、酸化型グルタチオンの水和物、酸化型グルタチオンの塩などの3つの形態の酸化型グルタチオンも知られている。しかし、これらはいずれも産業上利用するにあたり、様々な問題を抱えている。
[0006]
 例えば、酸化型グルタチオンの無水和物には、吸湿性と潮解性が非常に高いという問題がある。吸湿や潮解を避けるためには、例えば、保存時、輸送時、流通時などにおいて酸化型グルタチオンを冷蔵もしくは冷凍したり、あるいは吸湿を防止するための特別な包装形態とする必要があり、いずれにしても工業レベルでの大量供給には適していない。また、無水和物は高水溶性であることから注射用薬剤のような水溶液製品に使用されるが、水中で水和物に転移しやすい。水和物は水に対する溶解度が低く、水溶液製品からその結晶が析出する危険がある。
[0007]
 酸化型グルタチオンの水和物としては、酸化型グルタチオン・8水和物の結晶(非特許文献2)や酸化型グルタチオン・1水和物(特許文献3)の結晶が知られている。酸化型グルタチオン・8水和物の結晶は、結晶水が離脱し易くて結晶中の水分量が一定になり難く、安定性が低い。また8水和物の製造の再現性にも乏しく、大量合成または工業化に適していない。酸化型グルタチオン・1水和物の結晶は、低潮解性である一方で、水への溶解性が低いために水溶液での取り扱いに難があり、高濃度の水溶液製品を製造できない。また、酸化型グルタチオンの製造では、通常、塩基を使用するため、1水和物を析出させるためには塩基を除去しておく必要がある。そのため、例えば、イオン交換樹脂やキレート樹脂を使用しなければならないが、これら樹脂による処理では大量の廃液が発生し、その処理が必要になるなど環境への負荷が増大し、コスト面に課題がある。
[0008]
 酸化型グルタチオンの塩としては、金属やアミノ酸との塩が知られている。酸化型グルタチオンの金属塩としては、酸化型グルタチオン・2ナトリウム塩が市販されている他、酸化型グルタチオン・2リチウム塩(特許文献4)のようなアルカリ金属塩が知られている。または、酸化型グルタチオン・1オルニチン塩(特許文献5)や酸化型グルタチオン・1リジン塩(特許文献6)のような酸化型グルタチオンのアミノ酸塩が報告されている程度で、単離された例は少ない。酸化型グルタチオン・2ナトリウム塩や酸化型グルタチオン・2リチウム塩などの酸化型グルタチオンのアルカリ金属塩は、そもそも固体として入手することが難しい。さらに潮解性が非常に高く、酸化型グルタチオンの無水和物と同様、産業用には不向きである。また、酸化型グルタチオンのアミノ酸塩である、酸化型グルタチオン・1オルニチン塩や酸化型グルタチオン・1リジン塩については、酸化型グルタチオンと官能基が同等であることから、例えば反応に供する場合に該アミノ酸が競争反応することで目的の反応を阻害することや、アミノ酸が生理活性物質であることから、最終製品への添加において制約が多いといった問題がある。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開平5-146279号公報
特許文献2 : 特開平7-177896号公報
特許文献3 : 国際公開第2003/035674号パンフレット
特許文献4 : 特表2002-538079号公報
特許文献5 : 特公昭42-1393号公報
特許文献6 : 特公昭41-14997号公報

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Yoichiro Sugimura他1名、「Effect of Orally Administered Reduced- and Oxidized-Glutathione against Acetaminophen-Induced Liver Injury in Rats」、J. Nutr. Sci. Vitaminol. 、第44巻、613-624頁(1998年)
非特許文献2 : Christian Jelsch他1名、「The oxydized form of glutathione」、Acta Cryst.、C55巻、9号、1538-1540頁(1999年)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、低潮解性であって取り扱いが容易でありながら、高水溶性であり、かつ使用の制約が少ない固体状酸化型グルタチオンを提供することにある。
[0012]
 詳細に説明すると、上記のように従来の酸化型グルタチオンの固体は、潮解性が高かったり、低水溶性であったりするという問題を抱えている。また酸化型グルタチオンとして、賦形剤と共に固体化された例やアミノ酸塩として固体化された例も知られているがその使用が制約される場合がある。そこで使用の制約が少ない酸化型グルタチオンの無機塩から、低潮解性、高水溶性の固体を得ることが考えられるが、酸化型グルタチオンの無機塩を固体として単離することは容易ではない。例えば、上記特許文献4には還元型グルタチオンから酸化型グルタチオン・2リチウム塩を製造するプロセスの途中で酸化型グルタチオン・2アンモニウム塩が形成されているが、このアンモニウム塩は固体として単離されていない。特許文献4では、前記アンモニウム塩の水溶液をpH5に調整し、凍結乾燥することで、酸化型グルタチオンの無水和物を固体として得ている。酸化型グルタチオンの当電点はpH2.8付近であることから、アンモニウム塩の水溶液をpH5に調整した段階でも酸化型グルタチオンとアンモニアは塩を形成し続けていると推察されるにも関わらず、酸化型グルタチオンのアンモニウム塩は単離されていない。さらに、本発明者らが実験した結果、1モルの酸化型グルタチオンに対し、2モルのアンモニアを添加して得られる水溶液(pHは5付近)を凍結乾燥処理して固形物を得ようとしたが、凍結乾燥品を室温に戻したところ油状化し、従来公知の方法では酸化型グルタチオン・2アンモニウム塩は固形物としては取得できないことがわかった。このような状況の中、これまでにない低潮解性、且つ、高水溶性の特徴を有し、商業的規模での生産・流通の容易な酸化型グルタチオンの塩が望まれていた。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者らは、この技術課題について鋭意検討した結果、特定の加温製法によれば、アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、およびマグネシウムカチオンに限って酸化型グルタチオンと固体状の塩を形成できること、このようにして得られた固体状の酸化型グルタチオン塩はいずれも低潮解性、且つ、高水溶性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0014]
 すなわち本発明の固体状酸化型グルタチオン塩は、アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンを生成し得る物質の存在下、水及び/又は水可溶性媒体から構成される水性媒体と接触させながら酸化型グルタチオンを温度30℃以上に加温して、前記酸化型グルタチオンと前記カチオンとの塩を固体として生成させることによって製造できる。前記温度30℃以上での加温時間は、例えば、0.25時間以上である。前記水可溶性媒体としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが好ましい。
[0015]
 また本発明の固体状酸化型グルタチオン塩は、アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンと、酸化型グルタチオンとから構成される酸化型グルタチオン塩であって、室温で固体である点に特徴がある。このグルタチオン塩は、好ましくは、温度25℃、常圧、相対湿度75%RHの条件で2時間以上保管しても潮解が始まらず、また機械的衝撃を受けた後でも固体状を維持可能である。前記グルタチオン塩には、酸化型グルタチオンの1アンモニウム塩、酸化型グルタチオンの0.5カルシウム塩又は1カルシウム塩、酸化型グルタチオンの0.5マグネシウム塩又は1マグネシウム塩などが含まれる。
[0016]
 本発明には、上記固体状酸化型グルタチオン塩を含有する粉末剤(固体状酸化型グルタチオン含有量:0.01質量%以上)や、上記固体状酸化型グルタチオン塩を水又は含水有機溶媒に溶解又は分散させた液剤も含まれる。前記有機溶媒は、例えば、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、炭化水素類、スルホキシド類、エーテル類などである。

発明の効果

[0017]
 本発明によれば特定のカチオンを用いて特定の加温製法によって酸化型グルタチオンを処理することで、固体状の酸化型グルタチオン塩を容易に得ることができる。
 また本発明によれば、特定のカチオンによって酸化型グルタチオンの塩を形成しているため、低潮解性であって取り扱いが容易でありながら、高水溶性であり、かつ使用の制約が少ない固体状酸化型グルタチオンを提供することができる。

発明を実施するための形態

[0018]
 本発明は、酸化型グルタチオンを含有する溶液から、その塩を固体として析出させることを目的とする。
[0019]
 原料として使用可能な酸化型グルタチオンは特に制限されず、例えば、市販されているものでもよく、発酵法等の公知の方法で得られる還元型グルタチオンを、公知の方法によって酸化することで得られるものでもよく、これら以外のものでもよい。
[0020]
 なお前記酸化反応は、適当な溶媒(例えば、水)中、酸化剤によって進行する。この酸化剤としては、酸素のような弱酸化剤;過酸化水素、ヨウ素、フェロシアン化カリウム等のような強酸化剤などが挙げられる。さらに別の酸化剤として、気体状物質(窒素酸化物)、スルホキシド等を用いてもよい。この酸化反応では、例えば、硫酸銅、硫酸鉄、塩化鉄(III)等の酸化触媒を必要に応じて用いてもよい。また前記酸化反応では反応液のpHを調整することが推奨され、pHは、例えば、5~12、好ましくは6~10、さらに好ましくは7~9とすることが望ましい。pHを前記範囲に調整することで、還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンを安定にでき、また反応速度を高めることができる。
[0021]
 上記酸化反応で得られた酸化型グルタチオン溶液から酸化型グルタチオンを単離したり、必要に応じてさらに精製してから、これら単離物又は精製物を前記酸化型グルタチオン原料として用いてもよいが、単離や精製などの後処理を行うことなく、酸化型グルタチオン溶液をそのまま前記酸化型グルタチオン原料として用いてもよい。なお単離操作では、例えば、溶液の濃縮、希釈、ろ過などが行われる。
[0022]
 そして本発明では、前記目的を達成する為に鋭意検討した結果、アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンを生成し得る物質の存在下、酸化型グルタチオンを水性媒体と接触させながら温度30℃以上に加温すれば、その塩が固体として生成することを見出し、前記目的を達成し得た。例えば、カチオンとしてナトリウムカチオンやリチウムカチオンを用いた場合には、温度30℃以上に加温しても、塩が固体して生成することはない。また温度30℃以上に加温しない場合にも、塩が固体として生成することはない。特定のカチオンと特定の処理条件を組み合わせることで、酸化型グルタチオンの無機塩が固体として生成することが見出された。
[0023]
 前記カチオンを生成し得る物質としては、例えば、アンモニア(水酸化アンモニウムなど)、ハロゲン化アンモニウム(塩化アンモニウム、臭化アンモニウムなど)、アンモニウム炭酸塩類(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなど)、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのイオン性アンモニウム含有化合物;水酸化カルシウム、ハロゲン化カルシウム(塩化カルシウムなど)、カルシウム炭酸塩類(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)などのイオン性カルシウム含有化合物;水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム(塩化マグネシウムなど)、マグネシウム炭酸塩類(炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウムなど)、硫酸マグネシウムなどのイオン性マグネシウム含有化合物;などの塩基が挙げられる。好ましい塩基は、アンモニア、カルシウム、マグネシウム以外の成分が気体又は水になることが可能な塩基(例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、アンモニウム炭酸塩、水酸化カルシウム、カルシウム炭酸塩類、水酸化マグネシウム、マグネシウム炭酸塩類など)であり、特に好ましい塩基は水酸化物(水酸化アンモニウム(アンモニア水)、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)である。前記カチオン生成物質(特に塩基)は、単独で又は適宜組み合わせて使用できる。
[0024]
 なお前記アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム以外のカチオンと酸化型グルタチオンと塩を形成しておき、そのカチオン種を交換することで、アンモニウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩を形成してもよい。カチオン種の交換には、特に限定されないが、例えば、溶解度差と平衡関係を利用することができる。
[0025]
 カチオン生成物質の使用量は、生成する固体状の酸化型グルタチオン塩に含ませるカチオンの量に応じて適宜設定できるが、通常、使用時のカチオン-酸化型グルタチオン間のモル比と、前記固体中のモル比とは同じになる。従って、酸化型グルタチオンに対するカチオンの使用量(モル比)は、後述する固体中のモル比と同じ範囲に設定することが多い。
[0026]
 前記水性媒体には、水及び/又は水可溶性媒体(特に水溶性有機媒体)が含まれる。前記水溶性有機媒体としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、エステル類、ニトリル類(アセトニトリルなど)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミドなど)などが挙げられ、好ましくはアルコール類またはケトン類である。また水溶性有機媒体の炭素数は、例えば、5以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは1であってもよい。食品などの分野での利用を考慮すれば、水性媒体は、水、アセトン、エタノールなど(特に水、エタノールなど)が好ましいが、肥料などの食品用途以外では、上記に加えてメタノールなども好ましい水性媒体として選択しうる。なお前記水溶性有機媒体は、例えば、温度25℃で水100質量部に対して、100質量部以上が混和し得る媒体であってもよく、あらゆる割合で水と混和する媒体であってもよい。
[0027]
 前記水性媒体は、単独で用いてもよく2種以上を適宜組み合わせてもよいが、水と水可溶性媒体とを組み合わせて用いることが推奨される。この場合、水が酸化型グルタチオンの富溶媒として機能し、水可溶性媒体が貧溶媒として機能する。水可溶性媒体の容量は、水10容量部に対して、例えば、1~1000容量部程度、好ましくは5~500容量部程度、さらに好ましくは10~100容量部程度、特に12~50容量部程度である。
[0028]
 水性媒体と酸化型グルタチオンの合計質量に対する酸化型グルタチオンの質量(濃度など)は特に限定されず、例えば、0.1質量%以上、60質量%以下の範囲で好適に行うことができる。生産性や操作性の観点からは、その下限は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、特に生産効率の観点からは8質量%以上が好ましい。また液の粘性等を考慮するとその上限は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
[0029]
 なお本発明では、酸化型グルタチオン塩の固体化に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて、上記水性媒体以外の溶媒を上記水性媒体と組み合わせて使用してもよい。
 また本発明では、必要に応じて酸を用いてもよい。例えば、酸化型グルタチオンに対して過剰になるカチオン生成物質を使用した場合には、その後、不要のカチオン生成物質を酸で中和してもよい。使用可能な酸は特に制限されないが、コスト面や、除去の容易性を考慮すると、塩酸や硫酸などの鉱酸が好ましい。
[0030]
 酸化型グルタチオンを固体として生成させる時の水性媒体のpHは、温度や水可溶性媒体の有無若しくは量に応じて適切な値が変化し、一概に規定するのは難しいが、その下限としては、例えば、2.8以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.2以上が望ましく、その上限としては、例えば7.0以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下が望ましい。
[0031]
 加温温度は30℃以上であれば特に限定されないが、好ましくは33℃以上、さらに好ましくは35℃以上、特に好ましくは40℃以上である。加温温度が30℃未満であれば目的とする酸化型グルタチオンの塩は時間がたっても固化せず油状物のままであるなど、固形物として取得することが出来ない。さらに工業的規模(水性媒体の使用量が、例えば、10kg以上、好ましくは100kg以上、さらに好ましくは500kg以上であり、30トン以下、好ましくは10トン以下程度の規模)での作業性も考慮すると、加温温度は45℃より高いのがさらに好ましく、48℃以上が特に好ましい。加温温度が30℃以上であっても、その他の条件によっては、固化物と油状物の混合物が析出して乳化状態となって、工業的規模で生産する時に撹拌が難しくなる事があるが、加温温度を45℃以上にすることによって固形物の析出割合を高めることができ、乳化状態を防止できる。加温温度の上限は特に限定されないが、水性媒体の沸点以下で実施するのが、高圧を必要とせず安全性の面から好ましい。また、加温温度が高くなるほど、酸化型グルタチオンの塩が所定量析出するのに時間を要する傾向がある。そのような観点から、前記加温温度は、例えば、80℃以下、好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。特に工業的規模での生産においては、析出速度と得られる酸化型グルタチオンの塩の性状の両方の観点から、加温温度は53~60℃の範囲が特に好ましい。
 尚、前記加温は、通常、常圧で実施するが、加圧下で実施してもよく、減圧下で実施してもよい。
[0032]
 加温時間は、酸化型グルタチオン塩の固体化に必要な範囲で適宜設定でき、加温温度によっても適切な時間が変化し、一概に規定するのは難しいが、その下限としては、例えば、0.25時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、特に加熱温度が高い場合(例えば、45℃以上の場合)や工業的規模での生産においては、2時間以上、さらには3時間以上が好ましい場合もある。その上限は、例えば、48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。酸化型グルタチオンの塩の固化が始まってから、上記例示した時間の間、30℃以上に保持するのがより好ましい。
[0033]
 加温処理中は、攪拌しながら酸化型グルタチオンと水性媒体とを接触させるのが望ましく、攪拌強度は特に限定されるものではないが、攪拌所要動力として、下限は、通常、0.001kW/m 3以上、好ましくは0.03kW/m 3以上、より好ましくは0.2kW/m 3以上であり、その上限は5kW/m 3以下、好ましくは2kW/m 3以下、より好ましくは1kW/m 3以下である。
[0034]
 本発明では、所定のカチオン生成物質の存在下、酸化型グルタチオンを水性媒体と接触させながら温度30℃以上に加温すればよく、この状態に至るまでの過程は特に制約されない。例えば、カチオン生成物質、酸化型グルタチオン、及び水性媒体の混合手順は特に制約を受けず、任意の手順で混合してもよい。また水性媒体が2種以上から構成される場合でも、その混合手順やタイミングは適宜設定される。
[0035]
 好ましい操作手順では、所定のカチオン生成物質と酸化型グルタチオンを水と混合(第1混合)した後(好ましくは酸化型グルタチオンとカチオン生成物質とを水に溶解した後)、必要に応じてさらにこの第1混合液と水可溶性媒体(貧溶媒)とを混合(第2混合)する。前記第1混合では、カチオン生成物質と酸化型グルタチオンのいずれか一方(好ましくは両方)を予め水に溶解して溶液にしてから混合することが望ましい。また第2混合では、第1混合液に水可溶性媒体を添加してもよく、水可溶性媒体に第1混合液を添加してもよく、別の容器に第1混合液と水可溶性媒体とを同じタイミングで添加してもよい。
 前記好ましい操作手順において、温度30℃以上に加温するタイミングは適宜設定でき、第1混合前、第1混合中、第1混合後であって第2混合前、第2混合中、第2混合後のいずれであってもよいが、遅くとも第2混合を開始する前に温度30℃以上に加温し、以後、この加温温度を維持するのが最も好ましい。
[0036]
 温度30℃以上に加温した後の酸化型グルタチオン塩の固体化のプロセスもまた特に制限されず、種々のプロセスを経ることができる。例えば、例1)酸化型グルタチオンを含む溶液から固体状酸化型グルタチオン塩を析出させることができ、例2)酸化型グルタチオンを含む溶液又はスラリーから酸化型グルタチオンを油状物(オイルアウト)又はゲル状化物として分離させた後、これら油状物又はゲル状物を固化させることもでき、例3)酸化型グルタチオンを含む溶液又はスラリーから溶媒を除去しながら酸化型グルタチオン塩を固化させることもできる。
[0037]
 例1(固体析出)の場合、具体的には、酸化型グルタチオンを溶解する前記第2混合液から、酸化型グルタチオンを固体として析出させることができる。例えば、前記最も好ましい加温タイミング(第2混合前の加温開始)では、通常、酸化型グルタチオンの塩が固体として析出してくる。また第2混合開始後に温度30℃以上に加温する場合でも、その加温開始が遅すぎなければ、酸化型グルタチオンの塩が固体として析出してくることがある。さらに加温温度や第2混合の混合速度などによっては、第2混合中に酸化型グルタチオンの塩が固体として析出し始め、スラリー化しながらの混合になることもある。
 なお例1(固体析出)の場合、必要に応じて種晶を加えて、酸化型グルタチオン塩の固化を促進してもよい。
[0038]
 例2(油状物・ゲル状物の固化)としては、具体的には、第2混合開始後に温度30℃以上に加温する前述した場合が挙げられ、この加温開始が遅れるほど、油状化(オイルアウト)やゲル状化が生じ易くなる。この様な場合でも、引き続き、温度30℃以上に加温すれば、前記油状物やゲル状物が固化する。なお工業的な観点からは、油状物を加温処理する場合には、溶媒の抱き込みやダマ形成などの不具合に注意する必要がある。
[0039]
 前記例1(固体析出)や例2(油状物・ゲル状物の固化)では、加圧濾過、遠心分離、遠心沈降、デカンテーションなどの通常の固液分離操作によって固体状酸化型グルタチオン塩を水性媒体から分離すればよい。分離した固体状酸化型グルタチオン塩は、必要に応じて、さらに減圧乾燥や送風乾燥といった通常の乾燥操作を行うことができる。また、この固体状酸化型グルタチオン塩を再び上記水性媒体に溶解し、上記と同様の加温処理条件下で再度固化(再結晶、再凝集など)することにより、酸化型グルタチオン塩を精製してもよい。
[0040]
 例3(溶媒除去兼固化)としては、噴霧乾燥を利用する方法が挙げられる。すなわち前記第1混合液又は第2混合液を高温の気体中に噴霧し、該混合液を温度30℃以上に加温しながら溶媒を留去することでも、酸化型グルタチオン塩の固体を得ることができる。
[0041]
 以上のプロセスは、カチオン生成物質の種類に応じて、適宜、最適化してもよい。例えばイオン性アンモニウム含有化合物を用いて酸化型グルタチオンのアンモニウム塩を固体化させる場合、酸化型グルタチオンのアンモニウム塩を含有する水溶液を温度30℃以上に加温しながら水可溶性媒体(貧溶媒)を加えるのが最も好ましい。水可溶性媒体の添加時間は特に限定されないが、例えば、通常、5分以上、好ましくは10分以上で行うことができ、生産性を考慮すると30時間以下、好ましくは20時間以下、とりわけ10時間以下で行うことができる。一方、イオン性カルシウム含有化合物、イオン性マグネシウム含有化合物などを用いて酸化型グルタチオンのカルシウム塩やマグネシウム塩を固化させる場合、固化のしやすさ等の観点から、酸化型グルタチオンとカチオン生成物質(イオン性カルシウム含有化合物及び/又はイオン性マグネシウム含有化合物)とを溶解した溶液(特に水溶液)を水可溶性媒体(貧溶媒)に加える方が、その逆の添加方向よりも好ましいが、この添加方向は必要に応じて選択できる。
[0042]
 以上の方法によれば、酸化型グルタチオン塩を固体として取得できる。固体としての取得量は、仕込んだ酸化型グルタチオンに対して、例えば、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
 以上の様にして得られる酸化型グルタチオン塩は、アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンと、酸化型グルタチオンとから構成されており、室温(例えば25℃)で固体状を維持可能である。なおカチオンと酸化型グルタチオンの量比は、カチオンの価数に応じて適宜設定される。カチオンのモル量をC 1、カチオンの価数をn 1とし、グルタチオンのモル量をGとすると、n 1×C 1とGの比(前者/後者)は、例えば、0.5~4程度、好ましくは0.7~3程度、さらに好ましくは1~2程度である。なお異なるカチオンが複数存在する場合には、各カチオンのモル量(C 1、C 2、C 3、…)と各カチオンの価数(n 1、n 2、n 3…)の積の和(n 1×C 1+n 2×C 2+n 3×C 3+…)とグルタチオンのモル量Gの比(前者/後者)が前記範囲に入る様にすることが推奨される。
[0043]
 酸化型グルタチオンのアンモニウム塩の場合、アンモニアと酸化型グルタチオンのモル比(前者/後者)は、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましく、1が特に好ましい。酸化型グルタチオンのカルシウム塩又はマグネシウム塩の場合、カルシウム又はマグネシウムと酸化型グルタチオンのモル比(前者/後者)は、0.5~2が好ましく、0.5~1.5がより好ましく、0.5~1がさらに好ましく、0.5又は1が特に好ましい。
[0044]
 以上の固体状酸化型グルタチオン塩は、低潮解性であり、且つ高水溶性である。固体状酸化型グルタチオンの潮解性は、該塩の粉末を温度25℃、常圧(例えば1気圧)、相対湿度75%RHの雰囲気下で放置して潮解が始まるか否かを目視で観察することによって評価できる。本発明の酸化型グルタチオンは、前記条件で、例えば、2時間、好ましくは10時間、さらに好ましくは24時間放置しても潮解が始まらない。
[0045]
 また本発明の固体状酸化型グルタチオン塩の水(温度25℃)に対する溶解度は下記式によって算出され、例えば、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。溶解度の上限は特に制限されないが、例えば、80質量%以下、特に60質量%以下程度であってもよい。
溶解度(%)=溶解酸化型グルタチオンの質量/(水の質量+溶解酸化型グルタチオンの質量)×100 
[0046]
 さらに本発明の固体状酸化型グルタチオン塩は機械的衝撃を受けた後でも固体状を維持可能である点にも特徴がある。
[0047]
 以上の固体状酸化型グルタチオン塩は、結晶であってもよく、非晶質であってもよい。また粉体、粒状物などの種々の形態をとり得る。また必要に応じて、解砕・粉砕したり、ナノ粒子に加工したり、カプセル化することもできる。さらに含量を問わず、水分や溶媒を含んでいてもよく、水和や溶媒和していてもよい(好ましくは無水和物、無溶媒和物であり、特に好ましくは無水物、無溶媒物である)。
[0048]
 本発明の固体状酸化型グルタチオン塩は、低潮解性且つ高水溶性なので、水溶性の粉末剤として好適に利用できる。粉末剤の大きさは1cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である。粉末剤はすべて水に溶けてもよいし、部分的に溶けるように徐放性を持たせてもよい。酸化型グルタチオン塩の粉末剤は、酸化型グルタチオンを0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上含有するものである。該酸化型グルタチオン粉末剤には、他の成分として賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤を含有させることができる。
[0049]
 賦形剤として、粘土等の無機物;糖類、糖アルコール、多糖類などの有機物などが挙げられる。糖類としては、例えば、乳糖、ショ糖、マルトース、トレハロースなどが挙げられる。糖アルコールには、例えば、マンニトール、還元麦芽水飴、還元パラチノース、マルチトール、マルトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどが含まれる。多糖類は、例えば、β-シクロデキストリン、結晶セルロースなどである。前記賦形剤は、任意に1種または2種以上の組み合わせから選択できる。
[0050]
 滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、軽質無水ケイ素などが挙げられる。これら滑沢剤は、任意に1種または2種以上の組み合わせから選択できる。
[0051]
 結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天、アラビアガム、アラビアガム末、キサンタンガム、トランガム、グアーガム、ジュランガム、ローカストビーンガム、部分α化デンプン、マクロゴールなどが挙げられる。これら結合剤は、任意に1種または2種以上の組み合わせから選択できる。
[0052]
 崩壊剤としては、コンスターチ、バレイショデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどが例示できる。これら崩壊剤は、任意に1種または2種以上の組み合わせから選択できる。
[0053]
 本発明の固体状酸化型グルタチオン塩は、水又は含水有機溶媒に溶解又は分散(特に溶解)させ、液剤(特に溶液剤)としても好適に利用できる。この液剤に使用する前記有機溶媒は特に限定されないが、上記固体状酸化型グルタチオン塩の溶解能が高いほど好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ホルマリンなどのアルデヒド類;酢酸エチルなどのエステル類;シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフランなどのエーテル類が好ましく、特にアルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、及び炭化水素類が好ましい。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
[0054]
 液剤中の酸化型グルタチオンの濃度は用途によって適宜設定されるが、例えば、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。輸送や流通を考慮すると10質量%以上がとりわけ好ましい。上限は飽和溶解度であり、用途に応じて濃度を選ぶことができる。
[0055]
 本願は、2011年6月30日に出願された日本国特許出願第2011-146574号に基づく優先権の利益を主張するものである。2011年6月30日に出願された日本国特許出願第2011-146574号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
実施例
[0056]
 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
 尚、実施例中、酸化型グルタチオンの定量及びカチオン種の定量は、HPLCを用いて行い、その条件は下記HPLC条件-1、2の通りとした。また実施例で得られた固体状酸化型グルタチオン塩の結晶解析、融点測定、及び元素分析には、下記の装置を使用した。
[0057]
 1)HPLC
  HPLC条件-1(酸化型グルタチオンの定量)
 カラム:株式会社ワイエムシィ製「YMC-Pack ODS A」(長さ150mm×内径4.6mm)
 カラム温度:40℃
 検出器:UV検出器(波長210nm)
  HPLC条件-2(カチオンの定量)
 カラム:株式会社島津製作所製「SHIMADZU Shim-pack(登録商標)IC-C3」(長さ100mm×内径4.6mm)
 カラム温度:40℃
 検出器:電気伝導度検出器
 2)結晶解析
 粉末X線回析装置(株式会社リガク製「Mini FlexII」)
 3)融点測定
 融点測定器(スタンフォード リサーチ システムズ(SRS)社製 OptiMelt MPA100)
 測定条件 加熱速度 1.0℃/分
 4)元素分析
 元素分析装置(エレメンタール社製「vario MICRO cube」)
 燃焼管温度:1150℃
 還元管温度:850℃
[0058]
 実施例1
 酸化型グルタチオン5g(8.2mmol)を水25gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液30gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.56g(8.2mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)の温度を室温(25℃)に維持しながら、エタノール90ml(対水溶液容量比=3)を30分かけて添加したところ、油状物が混合液から分離した。
 前記エタノール添加液を30℃に加温したところ、油状物が固化した。そのまま温度30℃で15分保持した。室温まで冷却後、固体を濾取し、減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩3.5g(含量:95質量%)を得た。
 融点範囲:170-176℃(融解と共に分解)
 非晶質固体(粉末X線回折にて確認)
[0059]
 実施例2
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.33g(4.9mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)を40℃に加温し、メタノール20ml(対水溶液容量比=2)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩2.9g(含量:99質量%)を得た。
 融点範囲:179-183℃(融解と共に分解)
 結晶性固体
 粉末X線回折[回折角(2θ°)、( )は相対強度を示す]:
 6.02(25), 17.4(46), 17.4(53), 17.6(72), 17.9(62), 18.7(22), 18.8(23), 18.9(21), 20.0(40), 20.2(60), 20.2(62), 21.1(42), 21.4(100), 21.9(76), 22.8(29), 22.8(29), 23(44), 23.4(96), 23.6(76), 24.7(50), 26.2(34), 28.0(27), 28.2(23), 30.8(28), 30.9(24), 35.6(34), 35.7(37), 35.8(34), 35.9(26)
 元素分析
 分子式 :C 20347122
 分子量 :630.7
 理論値 :[N]16%、[C]38%、[S]10%
 分析結果:[N]15%、[C]38%、[S]10%
[0060]
 実施例3
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.33g(4.9mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)を40℃に加温し、イソプロパノール30ml(対水溶液容量比=3)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩2.9g(含量:96質量%)を得た。
 融点、X線回折、元素分析の結果は、実施例2記載の酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩と同じであった。
[0061]
 実施例4
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.66g(9.6mmol:対グルタチオンモル比=2)を添加した。そして、この水溶液(pH=4.8)を40℃に加温し、メタノール20ml(対水溶液容量比=2)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩2.9g(含量95質量%)を得た。
 融点、X線回折、元素分析の結果は、実施例2記載の酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩と同じであった。
[0062]
 実施例5
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに水酸化カルシウム0.36g(4.9mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。温度40℃に加温したメタノール100ml(対水溶液容量比=約10)に、前記水溶液(pH=5.3)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1カルシウム塩2.9g(含量:98質量%)を得た。
 融点範囲:194-205℃(融解と共に分解)
 非晶質固体(粉末X線回折にて確認)
[0063]
 実施例6
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに水酸化カルシウム0.18g(2.5mmol:対グルタチオンモル比=0.5)を添加した。温度40℃に加温したメタノール100ml(対水溶液容量比=約10)に、前記水溶液(pH=3.4)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・0.5カルシウム塩2.9g(含量:97質量%)を得た。
 融点範囲:188-195℃(融解と共に分解)
 非晶質固体(粉末X線回折にて確認)
 元素分析
 分子式 :C 20306122Ca 0.5
 分子量 :631.7
 理論値 :[N]13%、[C]38%、[S]10%
 分析結果:[N]13%、[C]39%、[S]10%
[0064]
 実施例7
 酸化型グルタチオン5g(8.2mmol)を水25gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液30gを調製し、さらに水酸化マグネシウム0.48g(8.2mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。温度25℃のメタノール100ml(対水溶液容量比=3.5)に、前記水溶液(pH=4.7)を30分かけて添加したところ、ゲル状の沈殿物が得られた。デカンテーションによって上清を除去した後、温度50℃に加熱しながら残留物を6時間かけて減圧乾燥すると、酸化型グルタチオン・1マグネシウム塩5.0g(含量:95質量%)が得られた。
 融点範囲:186-197℃(融解と共に分解)
 非晶質固体(粉末X線回折にて確認)
[0065]
 実施例8
 酸化型グルタチオン5g(8.2mmol)を水25gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液30gを調製し、さらに水酸化マグネシウム0.24g(4.1mmol:対グルタチオンモル比=0.5)を添加した。温度40℃に加温したメタノール100ml(対水溶液容量比=3.5)に、前記水溶液(pH=3.4)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度30℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥し酸化型グルタチオン・0.5マグネシウム塩4.8g(含量:98質量%)を得た。
 融点範囲:179-186℃(融解と共に分解)
 非晶質固体(粉末X線回折にて確認)
[0066]
 実施例9
 還元型グルタチオン20g(65mmol)を水180gに溶解して還元型グルタチオン含有水溶液200gを調製した。この液に25%アンモニア水溶液4.4g(65mmol:対グルタチオンモル比=1)添加してpHを7.8にした後、空気雰囲気下で攪拌することで還元型グルタチオンを酸化した。この水溶液に35%塩酸3.4g(33mmol)を添加した後(pH=3.5)、温度40℃に加温し、メタノール400ml(対水溶液容量比=2)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。温度40℃で30分保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥し酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩19.6g(含量:96質量%)を得た。
 融点、X線回折、元素分析の結果は、実施例2記載の酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩と同じであった。
[0067]
 実施例10
 酸化型グルタチオン3.5kg(5.7mol)を水14kgに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液を調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.39kg(5.7mol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)を60℃に加温し、撹拌所要動力1kw/m 3で撹拌しながら、メタノール17.5kg(21L、対水溶液容量比=1.3)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。撹拌を続けながら温度60℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩3.6kg(収率99%)を得た。
 融点、X線回折、元素分析の結果は、実施例2記載の酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩と同じであった。
[0068]
 実施例11
 酸化型グルタチオン3.5kg(5.7mol)を水14kgに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液を調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.39kg(5.7mol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)を50℃に加温し、撹拌所要動力1kw/m 3で撹拌しながら、メタノール17.5kg(21L、対水溶液容量比=1.3)を1時間かけて添加したところ、固体が析出した。撹拌を続けながら温度50℃で2時間保持した後、室温まで冷却し、固体を濾取した。濾取した固体を減圧乾燥して酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩3.6kg(収率99%)を得た。
 融点、X線回折、元素分析の結果は、実施例2記載の酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩と同じであった。
[0069]
 実施例12
 酸化型グルタチオン3.5kg(5.7mol)を水14kgに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液を調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.39kg(5.7mol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液(pH=3.5)を45℃に加温し、撹拌所要動力1kw/m 3で撹拌しながら、メタノール17.5kg(21L、対水溶液容量比=1.3)を1時間かけて添加したところ、固体と油状物の混合物が析出し、乳化状態となった。そのまま、45℃で1時間保持したところ油状物は全て固化した。その後、室温まで冷却し、得られた固体を濾取して融点、X線回折を行った結果、酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩であることが確認された。
[0070]
 比較例1
 酸化型グルタチオン5g(8.2mmol)を水25gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液30gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.56g(8.2mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液を凍結乾燥することで、酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩の固体を取得しようとしたが、得られた酸化型グルタチオン・1アンモニウム塩はすぐに油状化し、固体として取り扱える様なものではなかった。
[0071]
 比較例2
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに25%アンモニア水溶液0.33g(4.9mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液の温度を室温(25℃)に維持しながら、メタノール20ml(対水溶液容量比=2)を2時間かけて添加したところ、油状物が沈降し、固形物は得られなかった。
[0072]
 比較例3
 酸化型グルタチオン3g(4.9mmol)を水7gに溶解して酸化型グルタチオン含有水溶液10gを調製し、さらに水酸化ナトリウム0.39g(9.8mmol:対グルタチオンモル比=1)を添加した。この水溶液を40℃に加温し、メタノール60ml(対水溶液容量比=6)を1時間かけて添加したところ、油状物が沈降し、固形物は得られなかった。
[0073]
 評価1:酸化型グルタチオン塩の水に対する溶解度(25℃、常圧)と潮解性
 (1)溶解度
 上記各実施例で得られた固体状の各酸化型グルタチオン塩の粉末を水に溶解しなくなるまで添加した。各スラリーを30分以上攪拌した後、上清を取得し、HPLCにより、各酸化型グルタチオンおよび塩の濃度を算出した。なお比較として、公知の以下の固体状酸化型グルタチオン類の溶解度も同様にして調べた。
 酸化型グルタチオン無水和物(国際公開第2003/035674号パンフレット(特許文献3)の参考例1の方法で調製)
 酸化型グルタチオン1水和物(国際公開第2003/035674号パンフレット(特許文献3)の実施例1の方法で調製し、粉末X線回折により確認したもの)
 酸化型グルタチオン・2ナトリウム塩(SIGMA-ALDORICH製)
 (2)潮解性
 上記各実施例で得られた固体状の各酸化型グルタチオン塩の粉末を温度25℃、常圧、相対湿度75%RHの雰囲気下で放置した。2時間後又は24時間後に、形状の変化の有無を目視で観察することで、潮解性の有無を調べた。なお比較として、市販されている上記固体状酸化型グルタチオン類の潮解性も同様にして調べた。
 結果を表1に示す。
[0074]
[表1]


[0075]
 表1より明らかな様に、従来の固体状酸化型グルタチオン類(コントロール)は、潮解性が高いか、水溶性が低いかのいずれかであり、高水溶性と低潮解性を両立することができない。上記実施例の固体状酸化型グルタチオン塩は、高水溶性と低潮解性を両立することができる。

産業上の利用可能性

[0076]
 本発明の酸化型グルタチオン塩は、健康食品、医薬品、化粧品、肥料等として、もしくはこれらを製造する為の中間体として有用である。

請求の範囲

[請求項1]
 アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンを生成し得る物質の存在下、水及び/又は水可溶性媒体から構成される水性媒体と接触させながら酸化型グルタチオンを温度30℃以上に加温することによって、前記酸化型グルタチオンと前記カチオンとの塩を固体として生成させることを特徴とする固体状酸化型グルタチオン塩の製造方法。
[請求項2]
 前記温度30℃以上での加温時間が0.25時間以上である請求項1に記載の製造方法。
[請求項3]
 前記水可溶性媒体が、アルコール類及びケトン類から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の製造方法。
[請求項4]
 前記アルコール類がメタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールから選択される少なくとも一種であり、前記ケトン類がアセトン及びメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種である請求項3に記載の製造方法。
[請求項5]
 アンモニウムカチオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも一種のカチオンと、酸化型グルタチオンとから構成される酸化型グルタチオン塩であって、室温で固体であることを特徴とする固体状酸化型グルタチオン塩。
[請求項6]
 温度25℃、常圧、相対湿度75%RHの条件で2時間以上保管しても潮解が始まらず、かつ機械的衝撃を受けた後でも固体状を維持可能である請求項5に記載の固体状酸化型グルタチオン塩。
[請求項7]
 酸化型グルタチオンの1アンモニウム塩である請求項5又は6に記載の固体状酸化型グルタチオン塩。
[請求項8]
 酸化型グルタチオンの0.5カルシウム塩又は1カルシウム塩である請求項5又は6に記載の固体状酸化型グルタチオン塩。
[請求項9]
 酸化型グルタチオンの0.5マグネシウム塩又は1マグネシウム塩である請求項5又は6に記載の固体状酸化型グルタチオン塩。
[請求項10]
 請求項5~9のいずれかに記載の固体状酸化型グルタチオン塩を含有する粉末剤であって、酸化型グルタチオンを0.01質量%以上含有することを特徴とする粉末剤。
[請求項11]
 請求項5~9のいずれかに記載の固体状酸化型グルタチオン塩を、水又は含水有機溶媒に溶解又は分散させたことを特徴とする液剤。
[請求項12]
 前記有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、炭化水素類、スルホキシド類、及びエーテル類から選択される少なくとも一種である請求項11に記載の液剤。