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1. WO2013012033 - NEGATIVE PRESSURE SERVO DEVICE

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明 細 書

発明の名称 負圧式倍力装置

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003   0004   0005  

発明の概要

0006   0007   0008   0009   0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 負圧式倍力装置

技術分野

[0001]
 本発明は、車両用ブレーキ装置に採用される負圧式倍力装置に関し、特に、緊急ブレーキ時のブレーキペダル踏力の不足を補うことができるようにした負圧式倍力装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 この種の負圧式倍力装置の一つとして、例えば下記の特許文献1に記載されたものがある。このものは、その入力-出力特性を、通常ブレーキ用特性と緊急ブレーキ用特性に切り換えることができるように構成し、緊急ブレーキ時には負圧式倍力装置の入力-出力特性を通常ブレーキ用特性から緊急ブレーキ用特性に切り換えることにより、運転者がブレーキペダルを強く踏み込んだ時と同じ結果を得るものである。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2005-138612号公報
[0004]
 上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置は、ハウジング内を定圧室と変圧室とに区画する可動隔壁と、この可動隔壁に結合されたパワーピストンと、このパワーピストン内にて同パワーピストンに対し前後進可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材と、前記パワーピストンの推進力を外部に出力する出力部材と、前記パワーピストンと前記入力部材間にて前記パワーピストンに同軸的かつ前後進可能に組付けられたスライドバルブと、前記入力部材の前記パワーピストンに対する前進量が所定値以下の場合には前記スライドバルブを前方所定位置に保持する保持手段と、前記入力部材の前記パワーピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には前記スライドバルブを後方位置に所定量移動させる可動手段と、前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置に戻った場合には前記スライドバルブを前記前方所定位置に復帰させる復帰手段とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部と前記パワーピストン及び/又は前記スライドバルブに設けた負圧弁座とにより前記変圧室と前記定圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部を有して前記パワーピストン内に組付けられた制御弁を備えていて、前記保持手段が、前記パワーピストンに径方向にて直線的に移動可能に組付けられた係止部材と、この係止部材を径内方に向けて付勢する付勢部材を備えており、前記係止部材には、前記スライドバルブに設けたフックと係合離脱可能で前記付勢部材とにより前記保持手段を構成するフックが設けられている。なお、後方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキペダル側あるいは車両後方側を意味し、前方とは、負圧式倍力装置に対してブレーキマスタシリンダ側あるいは車両前方側を意味する。
[0005]
 また、上記した特許文献1に記載されている負圧式倍力装置では、前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置(ブレーキ動作が終了してブレーキペダルが初期位置に戻されたときの復帰位置)に戻った場合に前記パワーピストンから径外方に突出した両端部にて前記ハウジングに当接し且つ両端部間の中間部にて前記パワーピストンと前記スライドバルブに当接するキー部材が採用されている。このキー部材は、通常の使用では変形しない板厚・材質で形成されているため、前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置に戻ったときには、前記スライドバルブに設けたフックと前記係止部材(これは、パワーピストンに径方向にて直線的に移動可能に組付けられていて、パワーピストンの軸方向にはパワーピストンと一体的に移動する)に設けたフックもそれぞれ所定位置に戻って互いに係合し、初期状態に復帰する(緊急ブレーキ用特性から通常ブレーキ用特性に復帰する)ように設定されている。

発明の概要

[0006]
 ところで、ブレーキペダルが戻された位置(初期位置)から後方に強く引っ張られるような場合(これは、通常の使用ではなく、ブレーキペダルが踏み込まれないようにする盗難防止装置にて、ブレーキペダルが戻された位置から後方に強く引っ張られるような異常な使用時に生じ得るものである)には、キー部材の中間部が両端部に対して後方に引っ張られて湾曲変形することがある。この場合には、キー部材における湾曲変形に起因して、パワーピストンとスライドバルブのハウジングに対する所定位置(復帰位置)に所定の前後差が生じて、スライドバルブに設けたフックと係止部材に設けたフックが係合しなくなり、初期状態に復帰しなくなる(この場合には、緊急ブレーキ用特性から通常ブレーキ用特性に復帰しなくて、通常ブレーキ時においてフィーリングが悪化する)おそれがある。なお、上記した課題(キー部材における湾曲変形に起因する不具合)は、キー部材の板厚・材質を湾曲変形し難いものに変更することにより解消することが可能であるが、この場合には、コストがアップする。また、上記した課題は、パワーピストンとスライドバルブのハウジングに対する所定位置に所定の前後差が生じても、スライドバルブに設けたフックと係止部材に設けたフックが係合するように各部の寸法を変更することにより解消することが可能であるが、この場合には、当該負圧式倍力装置全体の軸方向寸法が増加する。
[0007]
 本発明は、上記した課題を新たな課題(コストアップ・軸方向寸法増加等)を生じさせることなく解決するためになされたものであり、上記した形式の負圧式倍力装置において、
 前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置に戻った場合に前記パワーピストンから径外方に突出した両端部にて前記ハウジングに当接し且つ両端部間の中間部にて前記パワーピストンと前記スライドバルブに当接するキー部材が採用されていて、
 前記キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合に、前記スライドバルブの前記パワーピストンに対する戻り量を所要量確保するための逃がし部が前記パワーピストンまたは前記キー部材に設けられており、
 前記キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合にも、前記キー部材の中間部径内方部位に当接して後方への移動を規制される前記スライドバルブに設けた前記フックと、前記キー部材の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制される前記パワーピストンに組付けた前記係止部材の前記フックとが係合するように設定したことに特徴がある。
[0008]
 本発明の実施に際して、前記逃がし部は、前記パワーピストンの径方向に沿って前記パワーピストンまたは前記キー部材に形成された凹部であり、この凹部における径外方部位が径内方部位に比して順次深くなるように形成されていることも可能である。また、前記逃がし部は、前記パワーピストンの径方向に沿って前記パワーピストンまたは前記キー部材に形成された凹部であり、この凹部は径方向全長に亘って同一深さとなるように形成されていることも可能である。
[0009]
 上記した本発明の負圧式倍力装置においては、上記した逃がし部が前記パワーピストンまたは前記キー部材に設けられていて、前記キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合にも、前記キー部材の中間部径内方部位に当接して後方への移動を規制される前記スライドバルブに設けた前記フックと、前記キー部材の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制される前記パワーピストンに組付けた前記係止部材の前記フックとが係合するように設定したものである。このため、キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形することがあっても、パワーピストンとスライドバルブがハウジングに対してそれぞれ所定位置に戻ったときには、スライドバルブに設けたフックと係止部材に設けたフックが係合して、初期状態に復帰する。
[0010]
 また、上記した本発明の負圧式倍力装置においては、上記した逃がし部を前記パワーピストンまたは前記キー部材に設けることにより実施することができるため、キー部材の板厚・材質を変更するほどのコストアップも生じず、また、当該負圧式倍力装置全体の軸方向寸法増加(サイズアップ)も生じない。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、本発明による負圧式倍力装置の一実施形態を示す断面図である。
[図2] 図2は、図1の要部拡大図である。
[図3] 図3は、図2に示したパワーピストン単体の断面図である。
[図4] 図4は、図2に示したスライドバルブ単体の正面図である。
[図5] 図5は、図2に示したスライドバルブ単体の側面図である。
[図6] 図6は、図2に示したスライドバルブ単体の平面図である。
[図7] 図7は、図2に示したスライドバルブ単体の背面図である。
[図8] 図8は、キー部材が湾曲変形した場合の復帰状態を概略的に示していて、(a)はパワーピストンに逃がし部が設けられている場合の図であり、(b)はパワーピストンに逃がし部が設けられていない場合の図である。
[図9] 図9は、本発明の一変形実施形態の図2相当の断面図である。
[図10] 図10は、本発明の他の変形実施形態の図3相当の断面図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1~図8は本発明による負圧式倍力装置の一実施形態を示していて、この負圧式倍力装置は、ハウジング10に組付けられた可動隔壁20とパワーピストン30を備えるとともに、パワーピストン30に組付けられた入力部材40と出力部材50とスライドバルブ60と制御弁70等を備えている。
[0013]
 ハウジング10は、図1に示したように、前方シェル11と後方シェル12を備えていて、内部が可動隔壁20によって負圧導入管13を通して負圧源(例えば、図示省略のエンジンの吸気マニホールド)に常時連通する定圧室R1と、この定圧室R1と大気にそれぞれ連通・遮断する変圧室R2とに区画されている。このハウジング10は、ハウジング10と可動隔壁20を気密的に貫通する複数本(図1では1本が示されている)のタイロッド14の後端部に設けられたねじ部にて静止部材、すなわち車体(図示省略)に固定されるように構成されている。なお、タイロッド14の前端部に設けられたねじ部には、ブレーキマスタシリンダ100が組付けられている。
[0014]
 可動隔壁20は、金属製のプレート21とゴム製のダイアフラム22とから成り、ハウジング10に対して前後方向へ移動可能に設置されている。ダイアフラム22は、その外周縁に形成されたビード部にて、後方シェル12の外周縁に設けられた折り返し部と前方シェル11とにより気密的に挟持されている。また、ダイアフラム22は、その内周縁に形成されたビード部にて、パワーピストン30の前方フランジ部外周に設けられた溝に、プレート21とともに気密的に固定されている。
[0015]
 図1に示したブレーキマスタシリンダ100は、そのシリンダ本体101の後端部101aが前方シェル11に形成された中心筒部を貫通して定圧室R1内に気密的に突入し、またシリンダ本体101に形成されたフランジ部101bの後面が前方シェル11の前面に当接している。また、ブレーキマスタシリンダ100のピストン102は、シリンダ本体101から後方に突出して定圧室R1内に突入しており、出力部材50の先端によって前方に押動されるように構成されている。
[0016]
 パワーピストン30は、可動隔壁20に結合された中空状のピストンであって、円筒状に形成された部位にてハウジング10の後方シェル12に気密的かつ前後方向へ移動可能に組付けられており、ハウジング10の前方シェル11との間に介装されたスプリング31によって後方に付勢されている。また、パワーピストン30の軸心には、図2および図3に示したように、前端面から後端面に向けて、反力室孔30a、反力室孔30aより小径の当接部材収納孔30b、プランジャ収納孔30c、プランジャ収納孔30cより大径のプランジャ・バルブ収納孔30d、制御弁収納孔30e、フィルタ収納孔30f等が順次設けられていて、反力室孔30aに対して連続的で当接部材収納孔30bに対して同心的に環状凹溝30gが設けられている。なお、図1、図2および図3では、パワーピストン30の軸中心(図1、図2の一点鎖線)より下半分に、パワーピストン30に組付けたキー部材63の長手方向に沿った断面が記載され、パワーピストン30の軸中心より上半分に、キー部材63の長手方向に対して直交する断面が記載されている。
[0017]
 また、パワーピストン30には、プランジャ収納孔30cに対応して係止部材取付孔30hが半径方向に設けられるとともに、プランジャ・バルブ収納孔30dに対応してキー部材挿通孔30iが径方向に設けられている。また、パワーピストン30には、定圧室R1と制御弁収納孔30eを連通可能な一対の連通孔30j(図2には一方のみが図示されている)が設けられていて、これら各連通孔30jの後端部には制御弁70の負圧弁部70aが着座可能な円弧状負圧弁座30kが形成されている。
[0018]
 入力部材40は、パワーピストン30に対し前後進可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける部材であり、パワーピストン30の当接部材収納孔30bから制御弁収納孔30eに収容されてパワーピストン30に対して軸方向(前後方向)に移動可能なプランジャ41と、このプランジャ41に球状先端部42aにて関節状に連結されて後端部42bにてブレーキペダル110(図1参照)に連結される入力ロッド42を備えている。
[0019]
 プランジャ41は、図2にて示したように、その先端にてパワーピストン30の当接部材収納孔30bに軸方向へ移動可能に組付けられた当接部材81を介してパワーピストン30の反力室孔30aに収容された反力部材82に係合可能であり、その後端には制御弁70の大気弁部70bに離座可能に着座する環状の大気弁座41aが形成されている。反力部材82は、リアクションゴムディスクであり、出力部材50における後方部材51の円筒部51a内に収容された状態にてパワーピストン30の反力受け面に当接するとともに、当接部材81の前面に当接可能となっている。
[0020]
 出力部材50は、反力部材82とともにパワーピストン30の反力室孔30aと環状凹溝30gに軸方向へ移動可能に組付けられた後方部材51と、この後方部材51の先端部に一体的に組付けられた出力ロッド52(図1参照)によって構成されていて、出力ロッド52の先端はブレーキマスタシリンダ100におけるピストン102の係合部に押動可能に当接している。
[0021]
 スライドバルブ60は、図2、図4~図7に示したように、パワーピストン30と入力部材40間にてパワーピストン30に気密用シールリング61を介して同軸的かつ前後進可能(軸方向移動可能)に組付けられていて、パワーピストン30とスライドバルブ60間に介装したスプリング62により後方に付勢されており、その後端には制御弁70の第2の負圧弁部70cに着座可能な第2の負圧弁座60aが形成されている。また、スライドバルブ60は、その軸方向移動位置がパワーピストン30に組付けたキー部材63、係止部材64、ガータースプリング65等によって規定されるように構成されている。
[0022]
 また、スライドバルブ60は、その前端部外周に一対のフック60bと一対の押動斜面60cを有し、その中間部にシール取付溝60dと係止面60e(図5、図6参照)を有している。各フック60bは、係止部材64の後方内端に形成された円弧状のフック64aに係合離脱可能であり、各押動斜面60cは、係止部材64の後方内端に形成された円弧状の受動斜面64bに係合離脱可能である。また、係止面60eは、キー部材63の前面と係合離脱可能である。なお、スライドバルブ60の前端からシール取付溝60dの手前までには、一対のスリット60f(図4、図5参照)が設けられている。
[0023]
 キー部材63は、ハウジング10に対するパワーピストン30、プランジャ41、スライドバルブ60等の初期位置(復帰位置)を規定するとともに、パワーピストン30に対するプランジャ41とスライドバルブ60の軸方向移動を規定するために、パワーピストン30に形成された径方向のキー部材挿通孔30iに挿通されている。キー部材63の前後方向の肉厚寸法は、キー部材挿通孔30iの前後方向寸法よりも小さく、キー部材63は、パワーピストン30に対して所定量だけ前後方向に移動可能である。
[0024]
 このキー部材63は、パワーピストン30から径外方に突出した両端部の後端面にて後方シェル12に当接可能であり、ハウジング10に対するパワーピストン30の後方への移動限界位置は、図2に示すように、キー部材挿通孔30iの前方壁がキー部材63の前端面に当接しかつキー部材63の両端部の後端面が後方シェル12に当接した位置である。また、キー部材63は、その両端部間の中間部にて、プランジャ41の中央部に形成された環状溝の前後両端面41b,41cに当接可能であり、パワーピストン30に対するプランジャ41の後方への移動限界位置は、環状溝の前端面41bがキー部材63の前端面に当接しかつキー部材63の後端面がキー部材挿通孔30iの後方壁に当接した位置である。また、パワーピストン30に対するプランジャ41の前方への移動限界位置は、環状溝の後端面41cがキー部材63の後端面にOリング43を介して当接しかつキー部材63の前端面がキー部材挿通孔30iの前方壁に当接した位置である。
[0025]
 また、キー部材63は、その中間部(プランジャ41と当接する部位より径外方の部位)前面にて、スライドバルブ60の中間部に形成された係止面60e(図5、図6および図8参照)に当接可能であり、スライドバルブ60がパワーピストン30に対して後方位置に移動している状態にて、パワーピストン30とスライドバルブ60がハウジング10に対して図2に示した所定位置に戻る場合には、パワーピストン30の後方への移動を規制する前にスライドバルブ60の後方への移動を規制して、スライドバルブ60をパワーピストン30に対してスプリング62の付勢力に抗して前方所定位置に復帰させる。
[0026]
 係止部材64は、図1および図2に示したように、パワーピストン30の外周からパワーピストン30に形成された径方向の係止部材取付孔30hに半径方向にて直線的に移動可能に組付けられていて、パワーピストン30の外周に向けて突出可能であり、パワーピストン30の外周に装着したガータースプリング65によって半径方向内方に向けて付勢されている。なお、この実施形態においては、図示省略されているが係止部材64が一対2個用いられていて、径方向にて対向配置されている。
[0027]
 この係止部材64においては、図2に示したように、スライドバルブ60におけるフック60bと係合離脱可能なフック64aと、スライドバルブ60における押動斜面60cと係合離脱可能な受動斜面64bと、プランジャ41に形成された環状の押動斜面41dと係合離脱可能な受動斜面64cが内端部に形成され、パワーピストン30の係止部材取付孔30hに形成したストッパ30h1(図3の段部参照)と当接可能な段部(図示省略)が中間部に形成され、ガータースプリング65の取付溝64eが外端部に形成されている。
[0028]
 このため、図2に示した位置にある入力部材40におけるプランジャ41のパワーピストン30に対する前進量が所定値以下の場合には、プランジャ41に形成された押動斜面41dが係止部材64の受動斜面64cに係合しなくて、スライドバルブ60のフック60bと係止部材64のフック64aの係合が可能な状態に保持され、図2に示したように、スライドバルブ60が前方所定位置に保持される。したがって、係止部材64のフック64a、スライドバルブ60のフック60b、ガータースプリング65等がスライドバルブ60を前方所定位置に保持する保持手段として機能する。
[0029]
 また、入力部材40におけるプランジャ41のパワーピストン30に対する前進量が所定値より大きい場合には、プランジャ41に形成された押動斜面41dが係止部材64の受動斜面64cに係合して、係止部材64がガータースプリング65の付勢力に抗して半径方向外方に押動される。このため、スライドバルブ60のフック60bが係止部材64のフック64aとの係合を解かれて離脱する状態となり、スライドバルブ60がスプリング62により後方位置に所定量移動させられ、スライドバルブ60の後端に形成された第2の負圧弁座60aが制御弁70の第2の負圧弁部70cに着座する。したがって、プランジャ41の押動斜面41d、係止部材64の受動斜面64c、スプリング62等がスライドバルブ60を後方位置に所定量移動させる可動手段として機能する。
[0030]
 また、スライドバルブ60がパワーピストン30に対して後方位置に移動している状態にて、パワーピストン30とスライドバルブ60がキー部材63の機能によってハウジング10に対して図2に示した所定位置に戻る場合には、パワーピストン30が所定位置に戻る直前に、スライドバルブ60が所定位置に戻って停止するため、係止部材64の受動斜面64bがスライドバルブ60の押動斜面60cに係合して、係止部材64がガータースプリング65の付勢力に抗して半径方向外方に一時的に押動される。
[0031]
 このため、パワーピストン30が所定位置に戻ったときには、係止部材64がガータースプリング65の付勢力により半径方向内方に押されて係止部材64のフック64aがスライドバルブ60のフック60bに再係合可能な状態となる。したがって、キー部材63、スライドバルブ60の押動斜面60c、係止部材64の受動斜面64b、ガータースプリング65等がスライドバルブ60を前方所定位置に復帰させる復帰手段として機能する。
[0032]
 制御弁70は、上記した負圧弁部70a、大気弁部70bおよび第2の負圧弁部70cを有する環状の可動部70Aと、パワーピストン30の制御弁収容孔30eに形成された段部に気密的に嵌合固定された環状の固定部70Bと、環状の可動部70Aと環状の固定部70Bを連結する円筒状の蛇腹部70Dによって構成されている。環状の可動部70Aは、入力ロッド42間に介装したスプリング71によって前方に向けて付勢されていて、前後方向に移動可能である。環状の固定部70Bは、入力ロッド42間に介装したスプリング72によって前方に向けて付勢されていて、パワーピストン30に固定されている。
[0033]
 負圧弁部70aは、パワーピストン30に形成された一対の円弧状負圧弁座30kに着座・離座可能であり、円弧状負圧弁座30kへの着座によって定圧室R1と変圧室R2の連通を遮断し、円弧状負圧弁座30kからの離座によって定圧室R1と変圧室R2を連通させる。大気弁部70bは、プランジャ41に形成された環状の大気弁座41aに着座・離座可能であり、環状の大気弁座41aへの着座によって変圧室R2と大気の連通を遮断し、環状の大気弁座41aからの離座によって変圧室R2と大気を連通させる。第2の負圧弁部70cは、スライドバルブ60に形成された第2の負圧弁座60aに着座・離座可能であり、第2の負圧弁座60aへの着座によって定圧室R1と変圧室R2の連通を遮断し、第2の負圧弁座60aからの離座によって定圧室R1と変圧室R2を連通させる。
[0034]
 フィルタ91,92は、パワーピストン30のフィルタ収容孔30f内にて入力ロッド42間に装着されていて、これらのフィルタ91,92にはパワーピストン30の摺動部を外周から保護するブーツ93に形成された通気孔93aを通して大気が流入可能である。ブーツ93は、前端部にてハウジング10における後方シェル12の後端筒部に嵌合固定され、後端部にて入力ロッド42の中間部外周に嵌合固定されている。
[0035]
 ところで、この実施形態においては、初期位置(戻り位置)を規定するキー部材63に対応してパワーピストン30に逃がし部30mが設けられている。この逃がし部30mは、パワーピストン30の径方向に沿ってパワーピストン30に形成された凹部(傾斜部)であり、この凹部における径外方部位(図2の下方部位)が径内方部位(図2の上方部位)に比して順次深くなるように形成(径外方に向けて前方に傾斜した形状に形成)されている。このため、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合(図8の(a)参照)に、逃がし部30mによってスライドバルブ60のパワーピストン30に対する戻り量(パワーピストン30のハウジング10に対する後方への移動量)が所要量確保されていて、逃がし部30mが設けられていない場合(図8の(b)参照)に比して、パワーピストン30のハウジング10に対する戻り量(後方への移動量)が増大されている。
[0036]
 したがって、この実施形態では、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合(図8の(a)参照)にも、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形しない場合(図2参照)と同様に、ブレーキペダル110が図1の初期位置(復帰位置)に戻されて、パワーピストン30が所定位置(初期位置)に戻ったとき、キー部材63の中間部径内方部位に当接して後方への移動を規制されるスライドバルブ60のフック60bと、キー部材63の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制されるパワーピストン30に組付けた係止部材64のフック64aとが係合して、これら各フック60b、64a間に軸方向隙間が形成される。なお、図8の(a)に示した場合の各フック60b、64a間に形成される軸方向隙間はS1であり、図2に示した場合の各フック60b、64a間に形成される軸方向隙間S2より小さいが、この軸方向隙間S1が略ゼロとなるように設定して実施することも可能である。
[0037]
 上記のように構成したこの実施形態の負圧式倍力装置においては、図2に示したようにキー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形していない場合での通常ブレーキ時、入力部材40とパワーピストン30との相対移動量(パワーピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値以下であるため、プランジャ41の押動斜面41dが係止部材64の受動斜面64cに係合せず、スライドバルブ60は前方所定位置(図2に示した係止部材64のフック64aにスライドバルブ60のフック60bが係合する位置)に保持される。したがって、このときには、スライドバルブ60がパワーピストン30に対してほとんど移動せず、一般的に知られている通常ブレーキ作動が得られる。
[0038]
 一方、運転者が慌ててブレーキペダル110を踏み込む緊急ブレーキ時には、入力部材40とパワーピストン30との相対移動量(パワーピストン30に対する入力部材40の前進量)が所定値より大きくなる。このときには、プランジャ41の押動斜面41dが係止部材64の受動斜面64cに係合して、係止部材64がガータースプリング65の付勢力に抗して半径方向外方に押動される。このため、スライドバルブ60のフック60bが係止部材64のフック64aとの係合を解かれて離脱し、スライドバルブ60がスプリング62により後方位置に所定量移動させられる。
[0039]
 また、スライドバルブ60が後方に移動すると、スライドバルブ60の後端に形成された第2の負圧弁座60aが制御弁70の第2の負圧弁部70cに着座し、定圧室R1と変圧室R2との連通を遮断する。このとき、プランジャ41は、入力ロッド42と一体で前方へ移動中であり、スライドバルブ60が制御弁70の可動部70Aを後方へ押し戻しているため、プランジャ41の後端に形成された環状の大気弁座41aと制御弁70の大気弁部70bとが急速に離間し、変圧室R2が大気と連通する。その結果、通常ブレーキ動作に比べ、定圧室R1と変圧室R2との連通遮断及び変圧室R2と大気との連通が急速に行われ、ジャンピング状態での出力を通常状態よりも大きくすることが可能となり、通常ブレーキ時より大きな推進力(出力)を得ることが可能となる。
[0040]
 また、上記した緊急ブレーキ動作が終了してブレーキペダル110が戻されると、プランジャ41は、その環状溝の前端面41bがキー部材63と当接しつつ後方に移動する。キー部材63が後方シェル12に当接すると、キー部材63がスライドバルブ60の係止面60eに当接し、パワーピストン30とともに後退してきたスライドバルブ60の後方への移動を規制する。この後に、パワーピストン30が更に後退するため、パワーピストン30と一体的に後退する係止部材64の受動斜面64bがスライドバルブ60の押動斜面60cに係合して、係止部材64がガータースプリング65の付勢力に抗して半径方向外方に一時的に押動される。
[0041]
 このため、パワーピストン30が所定位置(図2の初期位置)に戻ったときには、係止部材64がガータースプリング65の付勢力により半径方向内方に押されて係止部材64のフック64aがスライドバルブ60のフック60bに再係合する状態(初期状態)となる。したがって、次の緊急ブレーキ動作に備えることになる。
[0042]
 ところで、上記した実施形態の負圧式倍力装置においては、上記した逃がし部30mがパワーピストン30に設けられていて、図8の(a)にて示したように、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合にも、パワーピストン30が所定位置(初期位置)に戻ったときには、キー部材63の中間部径内方部位に当接して後方への移動を規制されるスライドバルブ60に設けたフック60bと、キー部材63の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制されるパワーピストン30に組付けた係止部材64のフック64aとが係合するように設定したものである。このため、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形することがあっても、パワーピストン30とスライドバルブ60がハウジング10に対してそれぞれ所定位置(復帰位置)に戻ったときには、図8の(a)にて示したように、スライドバルブ60に設けたフック60bと係止部材64に設けたフック64aが係合して、スライドバルブ60がパワーピストン30に対して初期状態に復帰する。
[0043]
 また、上記した実施形態の負圧式倍力装置においては、上記した逃がし部30mをパワーピストン30に設けることにより実施することができるため、キー部材63の板厚・材質を変更するほどのコストアップも生じず、また、当該負圧式倍力装置全体の軸方向寸法増加(サイズアップ)も生じない。なお、上記した実施形態の負圧式倍力装置においては、特開2005-138612号公報に記載されている種々な作用効果も得られる。
[0044]
 なお、上記した実施形態の負圧式倍力装置において、上記した逃がし部30mがパワーピストン30に設けられていない場合には、図8の(b)にて示したように、キー部材63の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合、キー部材63の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制されるパワーピストン30が必要十分に後方へ移動しない(戻らない)。このため、パワーピストン30とスライドバルブ60のハウジング10に対する所定位置(それぞれの復帰位置)に所定の前後差が生じて、スライドバルブ60に設けたフック60bと係止部材64に設けたフック64aが係合しなくなり、スライドバルブ60がパワーピストン30に対して初期状態に復帰しなくなる。この場合には、緊急ブレーキ用特性から通常ブレーキ用特性に復帰しなくて、通常ブレーキ時においてフィーリングが悪化するおそれがある。
[0045]
 上記した実施形態においては、上記した逃がし部30mをパワーピストン30に設けることにより実施したが、図9に示したように、上記した逃がし部30mに相当する逃がし部63aをキー部材63に設けることによっても実施することが可能である。また、上記した実施形態においては、上記した逃がし部30mがパワーピストン30の径方向に沿ってパワーピストン30に形成された凹部(傾斜部)であり、この凹部における径外方部位(図2の下方部位)が径内方部位(図2の上方部位)に比して順次深くなるように形成されているが、図10に示したように、上記した逃がし部30mがパワーピストン30の径方向に沿ってパワーピストン30に形成された凹部であり、この凹部は径方向全長に亘って同一深さとなるように形成されていることも可能である。
[0046]
 なお、図9に示した実施形態のように、キー部材63に設けられている逃がし部63aにおいて、径外方部位が径内方部位に比して順次深くなるように、凹部(逃がし部63a)が形成されている場合には、キー部材に設けられている逃がし部において、径方向全長に亘って同一深さとなるように、凹部が形成されている場合に比して、キー部材の剛性を十分に確保することが可能である。また、図10に示した実施形態のように、パワーピストン30に設けられている逃がし部30mにおいて、径方向全長に亘って同一深さとなるように、凹部が形成されている場合には、径外方部位が径内方部位に比して順次深くなるように、凹部が形成されている場合に比して、逃がし部の製作が容易である。
[0047]
 また、上記した実施形態においては、パワーピストン30に負圧弁座30kを設けるとともに、スライドバルブ60に負圧弁座60aを設けて本発明を実施したが、スライドバルブ60が前方位置にあるときの負圧弁座60aの位置が上記した負圧弁座30kの位置となるように設定した場合には、パワーピストン30に負圧弁座30kを設けないで実施することも可能である。
[0048]
 また、上記した実施形態においては、シングル型の負圧式倍力装置に本発明を実施したが、本発明はタンデム型やトリプル型の負圧式倍力装置にも同様に実施可能であることは勿論のこと、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更して実施することが可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 ハウジング内を定圧室と変圧室とに区画する可動隔壁と、この可動隔壁に結合されたパワーピストンと、このパワーピストン内にて同パワーピストンに対し前後進可能に設置されかつ外部からの操作力を受ける入力部材と、前記パワーピストンの推進力を外部に出力する出力部材と、前記パワーピストンと前記入力部材間にて前記パワーピストンに同軸的かつ前後進可能に組付けられたスライドバルブと、前記入力部材の前記パワーピストンに対する前進量が所定値以下の場合には前記スライドバルブを前方所定位置に保持する保持手段と、前記入力部材の前記パワーピストンに対する前進量が所定値より大きい場合には前記スライドバルブを後方位置に所定量移動させる可動手段と、前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置に戻った場合には前記スライドバルブを前記前方所定位置に復帰させる復帰手段とを備えるとともに、前記入力部材に設けた大気弁座とにより前記変圧室と大気との連通・遮断を制御する大気制御弁部と前記パワーピストン及び/又は前記スライドバルブに設けた負圧弁座とにより前記変圧室と前記定圧室との連通・遮断を制御する負圧制御弁部を有して前記パワーピストン内に組付けられた制御弁を備えていて、前記保持手段が、前記パワーピストンに径方向にて直線的に移動可能に組付けられた係止部材と、この係止部材を径内方に向けて付勢する付勢部材を備えており、前記係止部材には、前記スライドバルブに設けたフックと係合離脱可能で前記付勢部材とにより前記保持手段を構成するフックが設けられている負圧式倍力装置において、
 前記パワーピストンと前記スライドバルブが前記ハウジングに対して所定位置に戻った場合に前記パワーピストンから径外方に突出した両端部にて前記ハウジングに当接し且つ両端部間の中間部にて前記パワーピストンと前記スライドバルブに当接するキー部材が採用されていて、
 前記キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合に、前記スライドバルブの前記パワーピストンに対する戻り量を所要量確保するための逃がし部が前記パワーピストンまたは前記キー部材に設けられており、
 前記キー部材の中間部が両端部に対して後方に湾曲変形した場合にも、前記キー部材の中間部径内方部位に当接して後方への移動を規制される前記スライドバルブに設けた前記フックと、前記キー部材の中間部径外方部位に当接して後方への移動を規制される前記パワーピストンに組付けた前記係止部材の前記フックとが係合するように設定したことを特徴とする負圧式倍力装置。
[請求項2]
 請求項1に記載の負圧式倍力装置において、前記逃がし部は、前記パワーピストンの径方向に沿って前記パワーピストンまたは前記キー部材に形成された凹部であり、この凹部における径外方部位が径内方部位に比して順次深くなるように形成されていることを特徴とする負圧式倍力装置。
[請求項3]
 請求項1に記載の負圧式倍力装置において、前記逃がし部は、前記パワーピストンの径方向に沿って前記パワーピストンまたは前記キー部材に形成された凹部であり、この凹部は径方向全長に亘って同一深さとなるように形成されていることを特徴とする負圧式倍力装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]