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1. WO2014157571 - ELECTROSTATIC CHUCK

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明 細 書

発明の名称 静電チャック

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157  

産業上の利用可能性

0158  

符号の説明

0159  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28  

明 細 書

発明の名称 : 静電チャック

技術分野

[0001]
 本発明の態様は、静電チャックに関し、セラミック誘電体基板の絶縁耐圧を向上することができる静電チャックに関する。

背景技術

[0002]
 アルミナ等のセラミック誘電体基板のあいだに電極を挟み込み、焼成することで作製されるセラミック製の静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。このような静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板の表面と、吸着対象物である基板の裏面と、の間にヘリウム(He)等の不活性ガスを流し、吸着対象物である基板の温度をコントロールしている。
[0003]
 例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、スパッタリング装置、イオン注入装置、エッチング装置など、基板に対する処理を行う装置において、処理中に基板の温度上昇を伴うものがある。このような装置に用いられる静電チャックでは、セラミック誘電体基板と吸着対象物である基板との間にHe等の不活性ガスを流し、基板に不活性ガスを接触させることで基板の温度上昇を抑制している。
[0004]
 He等の不活性ガスによる基板温度の制御を行う静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板及びセラミック誘電体基板を支持するベースプレートに、He等の不活性ガスを導入するための穴(ガス導入路)が設けられる。
[0005]
 ここで、装置内で基板を処理する際、ガス導入路内において放電が発生することがある。特許文献1には、ガス導入路内にセラミック焼結多孔体を設け、セラミック焼結多孔体の構造及び膜孔をガス流路にすることで、ガス導入路内での絶縁性を向上させた静電チャックが開示されている。また、特許文献2には、ガス拡散用空隙内に、セラミックス多孔体からなり放電を防止するための処理ガス流路用の放電防止部材を設けた静電チャックが開示されている。また、特許文献3には、アルミナのような多孔質誘電体として誘電体インサートを設け、アーク放電を低減する静電チャックが開示されている。
[0006]
 しかしながら、ガス導入路内にセラミック多孔体を設けただけでは十分な絶縁耐圧を得ることはできない。処理装置における様々な条件に対応した静電チャックを提供するには、更なる絶縁耐圧の向上が必要である。
[0007]
 また、多孔体は気孔率が高いため、セラミック多孔体からセラミック誘電体基板への熱伝達率は、金属製のベースプレートからセラミック誘電体基板への熱伝導率よりも低い。このため、ガス導入路から伝導ガスを流して基板を冷却した場合の基板の温度と、流さない場合の基板の温度との、温度差が大きくなりやすい。つまり、基板の全体において、セラミック多孔体に近い部分にウェーハ面内温度差の大きな領域(いわゆるホットスポットやコールドスポット)が発生し、ウェーハ温度均一性の高い温度制御が行えないという問題が生じる。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2010-123712号公報
特許文献2 : 特開2003-338492号公報
特許文献3 : 特開平10-50813号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、ガス導入路内での放電に対して高い絶縁耐圧を得ることができる、あるいは、ガス導入路内にセラミック多孔体を設けた構造であっても吸着の対象物に対してウェーハ温度均一性の高い温度制御を行うことができる静電チャックを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明の一態様によれば、吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第2主面から前記第1主面にかけて設けられた貫通孔と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持し、前記貫通孔と連通するガス導入路を有する金属製のベースプレートと、前記ガス導入路に設けられたセラミック多孔体と、前記セラミック多孔体と前記ガス導入路との間に設けられ前記セラミック多孔体よりも緻密なセラミック絶縁膜と、を有する絶縁体プラグと、を備え、前記セラミック絶縁膜は、前記セラミック多孔体の表面から前記セラミック多孔体の内部に食い込んだことを特徴とする静電チャックが提供される。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、本実施形態に係る静電チャックの構成を例示する模式的断面図である。
[図2] 図2は、本実施形態に係る静電チャックの他の構成を例示する模式的断面図である。
[図3] 図3は、図1および図2に示すA部の模式的拡大断面図である。
[図4] 図4は、図1および図2に示すA部の変形例を表す模式的拡大断面図である。
[図5] 図5は、セラミック絶縁膜の例を表す図である。
[図6] 図6(a)及び(b)は、絶縁体プラグと貫通孔との関係を例示する模式的斜視図である。
[図7] 図7(a)及び(b)は、本実施形態の絶縁体プラグの近傍を表す模式図である。
[図8] 図8(a)~(f)は、本実施形態の絶縁体プラグの変形例を例示する模式的断面図である。
[図9] 図9は、本実施形態の絶縁体プラグの近傍の他の例を表す模式図である。
[図10] 図10(a)及び(b)は、本実施形態のセラミック絶縁膜の応力緩和を説明する模式的断面図である。
[図11] 図11は、気孔率と耐電圧(耐圧)との関係を例示するグラフ図である。
[図12] 図12は、気孔率と伝達ガスの流量との関係を例示するグラフ図である。
[図13] 図13は、熱伝導率と冷却性能との関係を例示するグラフ図である。
[図14] 図14(a)及び(b)は、気孔率とセラミック多孔体の熱伝導率との関係、および気孔率とセラミック多孔体の密度との関係を例示するグラフ図である。
[図15] 図15は、気孔率とセラミック絶縁膜の熱伝導率との関係、および気孔率とセラミック絶縁膜の密度との関係を例示するグラフ図である。
[図16] 図16は、熱膨張率の差の比率と応力との関係を例示するグラフ図である。
[図17] 図17は、材料の熱膨張率の一例を表す表である。
[図18] 図18は、表面粗さと密着性との関係を例示するグラフ図である。
[図19] 図19は、表面粗さと、耐圧、流量、応力および冷却性能のそれぞれと、関係を例示するグラフ図である。
[図20] 図20は、アスペクト比と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
[図21] 図21は、セラミック多孔体の外径と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
[図22] 図22は、セラミック多孔体の長さと絶縁耐圧との関係を例示する図である。
[図23] 図23は、セラミック多孔体の比率(L/D)と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
[図24] 図24(a)及び(b)は、内径D及び距離Lを例示する模式的平面図である。
[図25] 図25(a)~(d)は、吸着の対象物の温度変化を例示する図である。
[図26] 図26は、ガス流量と温度変化との関係を例示する図である。
[図27] 図27は、ガス流量と温度変化との関係を例示する図である。
[図28] 図28は、貫通孔の内径と温度変化との関係を例示する図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 第1の発明は、吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第2主面から前記第1主面にかけて設けられた貫通孔と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持し、前記貫通孔と連通するガス導入路を有する金属製のベースプレートと、前記ガス導入路に設けられたセラミック多孔体と、前記セラミック多孔体と前記ガス導入路との間に設けられ前記セラミック多孔体よりも緻密なセラミック絶縁膜と、を有する絶縁体プラグと、を備え、前記セラミック絶縁膜は、前記セラミック多孔体の表面から前記セラミック多孔体の内部に食い込んだことを特徴とする静電チャックである。
[0013]
 この静電チャックによれば、ガス導入路に設けられたセラミック多孔体だけでなくセラミック絶縁膜によって貫通孔及びガス導入路での絶縁耐圧を向上させることができる。
 また、セラミック多孔体とセラミック絶縁膜との間の境界面に断熱層が存在しないため、対象物の温度分布が均一化され、貫通孔の上の対象物にいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。また、セラミック絶縁膜がセラミック多孔体から剥離することを抑え、絶縁耐圧の向上を図ることができる。さらに、セラミック多孔体が封止されることを抑え、ガスの流量が低減することを抑えることができる。
[0014]
 第2の発明は、第1の発明において、前記セラミック絶縁膜の熱膨張率は、前記セラミック多孔体の熱膨張率および前記セラミック誘電体基板の熱膨張率のそれぞれと同じであることを特徴とする静電チャックである。
[0015]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体とセラミック絶縁膜との間の境界面に断熱層が存在しないため、対象物の温度分布が均一化され、貫通孔の上の対象物にいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。また、セラミック絶縁膜がセラミック多孔体から剥離することを抑え、絶縁耐圧の向上を図ることができる。さらに、セラミック多孔体が封止されることを抑え、ガスの流量が低減することを抑えることができる。
[0016]
 第3の発明は、第1の発明において、前記セラミック絶縁膜の表面の算術平均粗さは、前記セラミック多孔体の表面の算術平均粗さよりも小さく、前記セラミック誘電体基板の表面の算術平均粗さよりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
[0017]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体とセラミック絶縁膜との間の境界面に断熱層が存在しないため、対象物の温度分布が均一化され、貫通孔の上の対象物にいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。また、セラミック絶縁膜がセラミック多孔体から剥離することを抑え、絶縁耐圧の向上を図ることができる。さらに、セラミック多孔体が封止されることを抑え、ガスの流量が低減することを抑えることができる。
[0018]
 第4の発明は、第1の発明において、前記セラミック絶縁膜の気孔率は、10パーセント以下であり、前記セラミック多孔体の気孔率は、30パーセント以上60パーセント以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0019]
 この静電チャックによれば、セラミック絶縁膜は、応力緩和層となる。
[0020]
 第5の発明は、第1の発明において、前記セラミック絶縁膜の密度は、3.0グラム/立方センチメートル以上4.0グラム/立方センチメートル以下であり、前記セラミック多孔体の密度は、1.5グラム/立方センチメートル以上3.0グラム/立方センチメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0021]
 この静電チャックによれば、セラミック絶縁膜は、応力緩和層となる。
[0022]
 第6の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体の熱膨張率を基準とした場合において、前記セラミック多孔体の熱膨張率と前記セラミック絶縁膜の熱伝導率との差の比率は、100%以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0023]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体およびセラミック絶縁膜が破壊することを抑え、プロセス中において安定した冷却性能を維持することができる。
[0024]
 第7の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体および前記セラミック絶縁膜のそれぞれの熱膨張率は、7.0×10 -6/℃以上10.0×10 -6/℃以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0025]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体およびセラミック絶縁膜が破壊することを抑え、プロセス中において安定した冷却性能を維持することができる。
[0026]
 第8の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体および前記セラミック絶縁膜のそれぞれの熱伝導率は、0.3ワット/メートル・ケルビン以上10ワット/メートル・ケルビン以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0027]
 この静電チャックによれば、対象物の温度分布が均一化され、貫通孔の上の対象物にいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。
[0028]
 第9の発明は、第3の発明において、前記セラミック絶縁膜の表面の前記算術平均粗さは、0.5マイクロメートル以上4マイクロメートル以下であり、前記セラミック多孔体の表面の前記算術平均粗さは、5マイクロメートル以上20マイクロメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0029]
 この静電チャックによれば、適度に空気を含む構造を有するセラミック絶縁膜が、応力緩和層となる。
[0030]
 第10の発明は、第1の発明において、前記セラミック絶縁膜は、前記セラミック多孔体の側面に設けられたセラミックの溶射膜であることを特徴とする静電チャックである。
[0031]
 この静電チャックによれば、セラミックの溶射膜であるセラミック絶縁膜によって、セラミック多孔体及びセラミック絶縁膜を有する絶縁体プラグによって高い絶縁性を得ることができる。
[0032]
 第11の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体の外径に対する長さの比率は、0.6以上であることを特徴とする静電チャックである。
[0033]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体及びセラミック絶縁膜を有する絶縁体プラグにおいて、絶縁体プラグの外径に対する長さの比率を、0.6以上にすることで、高い絶縁性を得ることができる。
[0034]
 第12の発明は、第11の発明において、前記セラミック多孔体の外径は、1ミリメートル以上であることを特徴とする静電チャックである。
[0035]
 この静電チャックによれば、吸着する対象物のコールドスポットを1℃以下にすることができる。
[0036]
 第13の発明は、第11の発明において、前記セラミック多孔体の長さは、3ミリメートル以上であることを特徴とする静電チャックである。
[0037]
 この静電チャックによれば、セラミック多孔体の長さを3ミリメートル以上にすれば、高い絶縁性を得ることができる。
[0038]
 第14の発明は、第1の発明において、前記貫通孔の内径をD、前記貫通孔の中心から前記セラミック多孔体の外周までの距離をLとした場合、L/Dは、5以上であることを特徴とする静電チャックである。
[0039]
 この静電チャックによれば、L/Dを5以上にすることで、貫通孔及びガス導入路での絶縁耐圧を向上させることができる。
[0040]
 第15の発明は、第1の発明において、前記貫通孔の1つ当たりから流出するHeガスの流量は、前記Heガスの圧力差を30Torrとした場合、0.5sccm以上14sccm以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0041]
 この静電チャックによれば、ガス導入路内にセラミック多孔体が設けられ、セラミック多孔体の上にガスが放出される貫通孔が設けられた静電チャックにおいて、貫通孔の直上の吸着対象物に、いわゆるホットスポットやコールドスポットが発生し難くなる。
[0042]
 第16の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体の1つ当たりから流出するHeガスの流量は、前記Heガスの圧力差を30Torrとした場合、3sccm以上24sccm以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0043]
 この静電チャックによれば、ガス導入路内にセラミック多孔体が設けられ、セラミック多孔体の上にガスが放出される貫通孔が設けられた静電チャックにおいて、貫通孔の直上の吸着対象物に、いわゆるホットスポットやコールドスポットが発生し難くなる。
[0044]
 第17の発明は、第1の発明において、前記貫通孔の内径は、0.05ミリメートル以上1ミリメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0045]
 この静電チャックによれば、ガス導入路内にセラミック多孔体が設けられ、セラミック多孔体の上にガスが放出される貫通孔が設けられた静電チャックにおいて、貫通孔の直上の吸着対象物に、いわゆるホットスポットやコールドスポットが発生し難くなる。
[0046]
 第18の発明は、第1の発明において、前記セラミック多孔体の外径は、7ミリメートル以下であることを特徴とする静電チャックである。
[0047]
 この静電チャックによれば、ガス導入路内にセラミック多孔体が設けられ、セラミック多孔体の上にガスが放出される貫通孔が設けられた静電チャックにおいて、貫通孔の直上の吸着対象物に、いわゆるホットスポットやコールドスポットが発生し難くなる。
[0048]
 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
[0049]
 図1は、本実施形態に係る静電チャックの構成を例示する模式的断面図である。
 図2は、本実施形態に係る静電チャックの他の構成を例示する模式的断面図である。
 図3は、図1および図2に示すA部の模式的拡大断面図である。
 図4は、図1および図2に示すA部の変形例を表す模式的拡大断面図である。
[0050]
 図1に表したように、本実施形態に係る静電チャック110は、セラミック誘電体基板11と、ベースプレート50と、絶縁体プラグ70と、を備える。
[0051]
 セラミック誘電体基板11は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材であり、シリコンウェーハなどの半導体基板等の吸着の対象物Wを載置する第1主面11aと、この第1主面11aとは反対側の第2主面11bと、を有する。
[0052]
 セラミック誘電体基板11には、電極12が設けられる。電極12は、セラミック誘電体基板11の第1主面11aと、第2主面11bと、のあいだに介設されている。すなわち、電極12は、セラミック誘電体基板11の中に挿入されるように形成されている。静電チャック110は、この電極12に吸着保持用電圧80を印加することによって、電極12の第1主面11a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。
[0053]
 ここで、本実施形態の説明においては、第1主面11aと第2主面11bとを結ぶ方向(第1方向)をZ方向、Z方向と直交する方向の1つ(第2方向)をY方向、Z方向及びY方向に直交する方向(第3方向)をX方向ということにする。
[0054]
 電極12は、セラミック誘電体基板11の第1主面11a及び第2主面11bに沿って薄膜状に設けられている。電極12は、対象物Wを吸着保持するための吸着電極である。電極12は、単極型でも双極型でもよい。図1に表した電極12は双極型であり、同一面上に2極の電極12が設けられている。
[0055]
 電極12には、セラミック誘電体基板11の第2主面11b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、電極12と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)、もしくは金属端子をロウ付けなどの適切な方法で接続したものである。
[0056]
 ベースプレート50は、セラミック誘電体基板11を支持する部材である。セラミック誘電体基板11は、図3に表した接着部材60によってベースプレート50の上に固定される。接着部材60としては、例えばシリコーン接着剤が用いられる。
[0057]
 ベースプレート50は、例えば、アルミニウム製の上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとのあいだに連通路55が設けられている。連通路55は、一端側が入力路51に接続され、他端側が出力路52に接続される。
[0058]
 ベースプレート50は、静電チャック110の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック110を冷却する場合には、入力路51から冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられた静電チャック110を冷却することができる。一方、静電チャック110を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。または、静電チャック110やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。このように、ベースプレート50を介して静電チャック110の温度が調整されると、静電チャック110で吸着保持される対象物Wの温度を調整することができる。
[0059]
 また、セラミック誘電体基板11の第1主面11a側には、必要に応じてドット13が設けられており、ドット13の間に溝14が設けられている。この溝14は連通していて、静電チャック110に搭載された対象物Wの裏面と溝14とのあいだに空間が形成される。
[0060]
 溝14には、セラミック誘電体基板11に設けられた貫通孔15が接続される。貫通孔15は、セラミック誘電体基板11の第2主面11bから第1主面11aにかけてセラミック誘電体基板11を貫通して設けられる。
[0061]
 ドット13の高さ(溝14の深さ)、ドット13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
 一方、ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を例えば貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板11側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられていてもよい。
[0062]
 ガス導入路53は、貫通孔15と連通する。対象物Wを吸着保持した状態でガス導入路53からヘリウム(He)等の伝達ガスを導入すると、対象物Wと溝14との間に設けられた空間に伝達ガスが流れ、対象物Wを伝達ガスによって直接冷却することができるようになる。
[0063]
 図2に表したように、例えば、伝達ガスの供給量は、制御部90によって制御される。図2に表した静電チャック110aは、図1に表した静電チャック110と比較して、制御部90をさらに備える。制御部90は、伝達ガスの圧力差や伝達ガスの流量を制御する。
[0064]
 絶縁体プラグ70は、ベースプレート50に設けられたガス導入路53に設けられる。絶縁体プラグ70は、ガス導入路53のセラミック誘電体基板11側に嵌め込まれる。図2に表したように、例えば、ガス導入路53のセラミック誘電体基板11側には、座ぐり部53aが設けられる。座ぐり部53aは、筒状に設けられる。座ぐり部53aの内径を適切に設計することで、絶縁体プラグ70は、座ぐり部53aに嵌合される。
[0065]
 絶縁体プラグ70は、セラミック多孔体71と、セラミック絶縁膜72と、を有する。セラミック多孔体71は、筒状(例えば、円筒形)に設けられ、座ぐり部53aに嵌合される。絶縁体プラグ70の形状は、円筒形が望ましいが、円筒形に限定されるものではない。セラミック多孔体71には、絶縁性を有する材料が用いられる。セラミック多孔体71の材料としては、例えばAl やY 、ZrO 、MgO、SiC、AlN,Si であったりSiO などのガラスでもよい。あるいは、セラミック多孔体71の材料は、Al -TiO やAl -MgO、Al -SiO 、Al 13Si 、YAG、ZrSiO などでもよい。
[0066]
 セラミック多孔体71の気孔率は、例えば30パーセント(%)以上60%以下である。セラミック多孔体71の密度は、例えば1.5グラム/立方センチメートル(g/cm )以上3.0g/cm 以下である。このような気孔率によって、ガス導入路53を流れてきたHe等の伝達ガスは、セラミック多孔体71の多数の気孔を通過してセラミック誘電体基板11に設けられた貫通孔15から溝14へ送られることになる。
[0067]
 セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71とガス導入路53との間に設けられる。セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71よりも緻密である。図5に関して後述するように、セラミック絶縁膜72は、例えば溶射によって形成される。セラミック絶縁膜72の気孔率は、例えば10%以下である。セラミック絶縁膜72の密度は、例えば3.0g/cm 以上4.0g/cm 以下である。セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の側面に設けられる。セラミック絶縁膜72には、例えばAl やY などのセラミックの溶射膜が用いられる。
[0068]
 セラミック誘電体基板11の気孔率は、例えば1%以下である。セラミック誘電体基板11の密度は、例えば4.2g/cm である。
 気孔率は、JIS C 2141に基づいてレーザ顕微鏡により測定される。密度は、JIS C 2141 5.4.3に基づいて測定される。
[0069]
 図3に表したように、絶縁体プラグ70がガス導入路53の座ぐり部53aに嵌合されると、セラミック絶縁膜72とベースプレート50とが接する状態になる。すなわち、He等の伝達ガスを溝14に導く貫通孔15と、金属製のベースプレート50との間に、絶縁性の高いセラミック多孔体71及びセラミック絶縁膜72が介在することになる。このような絶縁体プラグ70を用いることで、セラミック多孔体71のみをガス導入路53に設ける場合に比べて、高い絶縁性を発揮できるようになる。
[0070]
 図4に表したように、セラミック多孔体71の上部には、貫通孔15が設けられていなくともよい。この場合、図3に表した例と比較して、セラミック多孔体71の上に設けられた接着部材60の領域が低減されていることが望ましい。これにより、セラミック多孔体71の上方に設けられた貫通孔15からプラズマ照射されダメージを受け、接着部材60がパーティクル源となることが抑制できる。また、絶縁体プラグ70は、セラミック誘電体基板11の側に設けられた座ぐり部53aに嵌合されてもよい。
[0071]
 図5は、セラミック絶縁膜の例を表す図である。
 図5に表したように、セラミック絶縁膜72の材料としては、例えばAl 、Y 、ZrO 、MgOなどが用いられる。あるいは、Al -TiO やAl -MgO、Al -SiO 、Al 13Si 、YAG、ZrSiO などが用いられてもよい。
[0072]
 セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の側面に溶射によって形成される。溶射とは、コーティング材料を、加熱により溶融または軟化させ、微粒子状にして加速し、セラミック多孔体71の側面に衝突させて、偏平に潰れた粒子を凝固・堆積させることにより皮膜を形成する方法のことをいう。セラミック絶縁膜72は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)やCVD、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法などで作製されても良い。
[0073]
 セラミック絶縁膜72として、セラミックを溶射によって形成する場合、膜厚は例えば0.05mm以上0.5mm以下である。この場合、絶縁耐圧は、例えば5.3kV/mm以上7.7kV/mm以下である。セラミック絶縁膜72の膜厚が0.05mm未満である場合には、セラミック絶縁膜72の膜厚にばらつきが生じることによって局所的に膜厚の薄い箇所ができることがある。この場合には、耐電圧が低下することがある。これにより、セラミック絶縁膜72の膜厚は、0.05mm以上であることが望ましい。一方で、セラミック絶縁膜72の膜厚が0.5mmよりも厚い場合には、製造上、セラミック絶縁膜72に欠けが生ずることがある。この場合には、断熱層が増えるため、対象物Wにいわゆるホットスポットが発生することがある。これにより、セラミック絶縁膜72の膜厚は、0.5mm以下であることが望ましい。
[0074]
 参考例として、セラミック多孔体71とベースプレート50との間に10mm以下の空間を設けた場合、絶縁耐圧は、例えば1kV/mmである。
[0075]
 図6(a)及び(b)は、絶縁体プラグと貫通孔との関係を例示する模式的斜視図である。
 図6(a)及び(b)では、絶縁体プラグ70と貫通孔15との位置関係を例示している。貫通孔15は二点鎖線で表される。図6(a)に表した例では、1つの絶縁体プラグ70の上に1つの貫通孔15が配置される。貫通孔15は、例えば絶縁体プラグ70の中心付近の上に配置される。
[0076]
 図6(b)に表した例では、1つの絶縁体プラグ70の上に複数の貫通孔15が配置される。図6(b)には、3つの貫通孔15が配置された例が表される。1つの絶縁体プラグ70の上に複数の貫通孔15を配置した場合、複数の貫通孔15のうち最もセラミック多孔体71の外周に近い貫通孔15において絶縁破壊が発生しやすい。
 なお、本実施形態では、図6(a)に表したような1つの絶縁体プラグ70の上に1つの貫通孔15が配置された場合を例として説明することがある。
[0077]
 図7(a)及び(b)は、本実施形態の絶縁体プラグの近傍を表す模式図である。
 図7(a)は、本実施形態の絶縁体プラグを表した模式的断面図である。図7(b)は、図7(a)に表した領域Bを拡大した写真図である。
[0078]
 図7(b)に表したように、本実施形態の絶縁体プラグ70では、セラミック絶縁膜72がセラミック多孔体71の表面から内部に食い込んでいる。「内部に食い込んでいる」とは、セラミック絶縁膜72とセラミック多孔体71との間の境界部が層状になっているのではなく、表面に凹凸があり、断面ではセラミック多孔体71の最外周から一定長さの内部までセラミック絶縁膜72が入り込んでいるように見られ、実際の三次元形状では、セラミック絶縁膜72とセラミック多孔体71との間の境界部が入り組んだ波状となっていることを示す。より具体的には、セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の表面から内部へ向かって100μm以下の部分に存在する。より好ましくは、セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の表面から内部へ向かって50μm以下の部分に存在する。
[0079]
 本願明細書において、「セラミック多孔体の表面」あるいは「セラミック多孔体とセラミック絶縁膜との間の境界面」とは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で絶縁体プラグの断面を観察したときに、異なる組成の界面に存在する5μm以下の境界部、あるいはセラミック多孔体のうちで最も外側(セラミック絶縁膜の側)に存在する点から選択した複数の点(例えば2点)を結ぶ境界線75(図7(b)参照)をいう。
[0080]
 セラミック絶縁膜72がセラミック多孔体71の表面から内部に食い込んだ量は、SEMにより観察した断面写真により計測可能である。SEMによる観察においてセラミック絶縁膜72の材料が延伸する場合には、CP(Cross Section Polisher:クロスセクションポリッシャ(登録商標))研磨などを用いて断面の観察を行うことができる。
[0081]
 樹脂およびガラスは、セラミックと比較して熱を伝えにくい。そのため、絶縁膜として、例えば、樹脂あるいはガラスを用いると、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生するおそれがある。また、絶縁膜として樹脂あるいはゴムをスリーブによって形成すると、セラミック多孔体71と絶縁膜との間の境界部に断熱層(空気層)が形成される。すると、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生するおそれがある。
[0082]
 これに対して、本実施形態の絶縁体プラグ70は、セラミック絶縁膜72がセラミック多孔体71の表面から内部に食い込んだ構造を有する。セラミック絶縁膜72は、空気(緩衝層)を含む一方で、セラミック多孔体71およびベースプレート50と接触する。セラミック絶縁膜72とセラミック多孔体71との接触形態は、例えば接触部が食い込んだ形の点接触である。セラミック絶縁膜72とベースプレート50との接触形態は、例えば点接触である。そのため、セラミック多孔体71とセラミック絶縁膜72との間の境界に層状の断熱層(空気層)が存在しない。これにより、対象物Wの温度分布が均一化され、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。
[0083]
 絶縁膜として例えば熱収縮チューブなどのゴムを用いて形成すると、セラミック絶縁膜72としてセラミックを溶射によって形成する場合と比較して、ゴムがセラミック多孔体71に食い込まずセラミック多孔体71の表面だけに存在する。すると、絶縁膜がセラミック多孔体71から剥離するおそれがある。絶縁膜がセラミック多孔体71から剥離すると、絶縁耐圧が低下するおそれがある。また、層状の断熱層が含まれるため、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができない。
[0084]
 これに対して、本実施形態の絶縁体プラグ70は、セラミック絶縁膜72がセラミック多孔体71の表面から内部に食い込んだ構造を有する。そのため、セラミック絶縁膜72がアンカー効果によりセラミック多孔体71から剥離し難い。これにより、絶縁耐圧の向上を図ることができる。
[0085]
 絶縁膜として、例えばセラミックを接着によって形成すると、セラミック絶縁膜72としてセラミックを溶射によって形成する場合と比較して、接着剤がセラミック多孔体71のより内部まで入り込む。すると、接着剤がセラミック多孔体71や多孔体内部の空隙を封止し、伝達ガスの流量が低減するおそれがある。
[0086]
 これに対して、本実施形態の絶縁体プラグ70は、セラミック絶縁膜72がセラミック多孔体71の表面から内部に食い込んだ構造を有する。そのため、絶縁体プラグ70をガス導入路53に設置する際に、セラミック多孔体71の側面あるいは内部が接着剤などにより封止されることを抑えることができる。これにより、ガス導入路53から貫通孔15へ流れる伝達ガスの流量が低減することを抑えることができる。
[0087]
 本実施形態では、セラミック絶縁膜72の熱膨張率は、セラミック多孔体71の熱膨張率と略同じである。また、セラミック絶縁膜72の熱膨張率は、セラミック誘電体基板11の熱膨張率と略同じである。セラミック絶縁膜72、セラミック多孔体71およびセラミック誘電体基板11のそれぞれの熱膨張率は、25℃以上800℃以下の環境において、例えば7.0×10 -6/℃以上10.0×10 -6/℃以下である。熱膨張率は、熱膨張率がすでに知られた素材と、セラミック絶縁膜72と、を組み合わせて伸びを測定することで算出される。あるいは、熱膨張率は、SEMまたは熱膨張計(TMA(Thermal Mechanical Analysis))により算出される。
[0088]
 セラミック多孔体71の熱膨張率がセラミック絶縁膜72の熱膨張率と略同じであるため、セラミック多孔体71およびセラミック絶縁膜72は、温度変化に対して互いに追従することができる。そのため、セラミック多孔体71およびセラミック絶縁膜72が破壊することを抑えることができる。これにより、プロセス中において安定した冷却性能を維持することができる。
[0089]
 また、セラミック多孔体71の熱伝導率は、セラミック絶縁膜72の熱伝導率と略同じである。セラミック多孔体71およびセラミック絶縁膜72のそれぞれの熱伝導率は、例えば0.3ワット/メートル・ケルビン(W/m・K)以上10W/m・K以下である。
[0090]
 セラミック絶縁膜72を溶射によって形成する場合には、絶縁膜をスリーブによって形成する場合と比較して、絶縁体プラグ70の外径をより小さくすることができる。絶縁膜をスリーブによって形成する場合には、スリーブの厚さとして約1ミリメートル(mm)が必要である。つまり、セラミック絶縁膜72を溶射によって形成する場合には、セラミック絶縁膜72の厚さをより薄くすることができる。これにより、伝達ガスの流れが阻害されることを抑え、または空気の断熱層が形成されることを抑制でき、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生することを抑えることができる。
[0091]
 図8(a)~(f)は、本実施形態の絶縁体プラグの変形例を例示する模式的断面図である。
 図8(a)および図8(b)に表したように、セラミック絶縁膜72は、絶縁体プラグ70の断面において曲面を有していてもよい。図8(a)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における中央部がセラミック多孔体71の内側へ向かって湾曲している。図8(b)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における中央部がセラミック多孔体71の外側へ向かって湾曲している。
[0092]
 図8(c)および図8(d)に表したように、セラミック絶縁膜72は、絶縁体プラグ70の断面においてテーパ形状を有していてもよい。図8(c)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における中央部がセラミック多孔体71の内側へ向かって傾斜している。図8(d)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における中央部がセラミック多孔体71の外側へ向かって傾斜している。
[0093]
 図8(e)および図8(f)に表したように、セラミック絶縁膜72は、絶縁体プラグ70の断面において段形状を有していてもよい。図8(e)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における下部に段差が設けられている。図8(f)に表した例では、セラミック絶縁膜72のZ方向における上部に段差が設けられている。
[0094]
 図9は、本実施形態の絶縁体プラグの近傍の他の例を表す模式図である。
 図9に表したように、例えば溶射によって形成されるセラミック絶縁膜は、セラミック多孔体71の側面だけではなく、ベースプレート50の上部50aの表面に設けられていてもよい。ベースプレート50の上部50aの表面にセラミック絶縁膜73が設けられた場合には、セラミック絶縁膜73の表面粗さが金属のベースプレート50の表面粗さよりも大きいため、ベースプレート50とセラミック誘電体基板11との接着力を向上させることができる。
[0095]
 また、ベースプレート50の上部50aの表面に設けられたセラミック絶縁膜73は、高周波電圧を電極12に印加する際の絶縁耐圧を向上させ、セラミック多孔体71の側面に設けられたセラミック絶縁膜72の端部の絶縁耐圧が低下することを抑えることができる。
[0096]
 さらに、ベースプレート50の上部50aの表面に設けられたセラミック絶縁膜73は、ベースプレート50の熱膨張とセラミック誘電体基板11の熱膨張との間の差を緩和する。そのため、ベースプレート50の上部50aの表面に設けられたセラミック絶縁膜73は、熱が加わることで発生する応力を緩和することができる。応力を緩和することは、セラミック多孔体71の側面に設けられたセラミック絶縁膜72においても同様である。
[0097]
 応力緩和について、図面を参照しつつさらに説明する。
 図10(a)及び(b)は、本実施形態のセラミック絶縁膜の応力緩和を説明する模式的断面図である。
 図10(a)は、熱がベースプレートに加わったときに生ずる応力の一例を例示する模式的断面図である。図10(b)は、プロセス中の気圧変化によって生ずる応力の一例を例示する模式的断面図である。
[0098]
 プラズマプロセスにおいては、例えば高出力化や高温化が進んでいる。また、スループットの高速化が望まれている。ここで、図10(a)に表した矢印A1のように、プロセス中において熱がベースプレート50に加わると、ベースプレート50は伸びる。すると、絶縁体プラグ70の伸び率がベースプレート50の伸び率と異なるので、図10(a)に表した矢印A2~矢印A5のように、絶縁体プラグ70の内側およびガス導入路53の内側へ向かって応力が生ずる。すると、例えば図10(a)に表した矢印A2および矢印A3のように、絶縁体プラグ70には、絶縁体プラグ70の内側へ向かって応力が生ずる。
[0099]
 また、プロセス中においては、例えばチャンバの内部は、大気状態にされたり、あるいは真空状態にされたりする。すると、図10(b)に表した矢印A6および矢印A7のように、絶縁体プラグ70には、Z方向に応力が生ずる。
[0100]
 これに対して、本実施形態の絶縁体プラグ70は、セラミック絶縁膜72を有する。セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71とガス導入路53との間に設けられ、セラミック多孔体71よりも緻密である。そのため、セラミック絶縁膜72は、外部から加わる応力を緩和する応力緩和層として機能する。
[0101]
 これにより、セラミック多孔体71が外部から加わる応力により破壊することを抑えることができる。また、絶縁耐圧が低下することを抑えることができる。また、伝達ガスがベースプレート50に流れ、放電が生ずることを抑えることができる。そのため、セラミック絶縁膜72が樹脂あるいはテープなどによって形成された場合と比較して、信頼性が低下することを抑えることができる。また、セラミック絶縁膜72は、溶射により形成されるため、セラミック絶縁膜72の厚さをより容易に制御することができる。
[0102]
 次に、セラミック多孔体71およびセラミック絶縁膜72の例について、図面を参照しつつ説明する。
 図11は、気孔率と耐電圧(耐圧)との関係を例示するグラフ図である。
 図12は、気孔率と伝達ガスの流量との関係を例示するグラフ図である。
 図11および図12に表したグラフ図の横軸は、気孔率(%)を表す。図11に表したグラフ図の縦軸は、耐圧の基準に対する比率を表す。図12に表したグラフ図の縦軸は、伝達ガスの流量の基準に対する比率を表す。
[0103]
 図11に表したように、セラミック多孔体71の気孔率が60%よりも高くなると、耐圧の基準に対する比率(安全率)が5未満となる。耐圧が基準値以下である場合には、絶縁耐圧は向上しない。そのため、セラミック多孔体71の気孔率は、60%以下であることが望ましい。
[0104]
 図12に表したように、セラミック多孔体71の気孔率が30%よりも低くなると、伝達ガスの流量の基準に対する比率が5未満となる。伝達ガスの流量が基準値以下である場合には、伝達ガスの流量が低減し、貫通孔15の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生するおそれがある。そのため、セラミック多孔体71の気孔率は、30%以上であることが望ましい。
 したがって、セラミック多孔体71の気孔率は、30%以上60%以下であることが望ましい。
[0105]
 図11に表したように、セラミック絶縁膜72の気孔率が10%よりも高くなると、耐圧の基準に対する比率(安全率)が17未満となる。耐圧が基準値以下である場合には、絶縁耐圧は向上しない。そのため、セラミック絶縁膜72の気孔率は、10%以下であることが望ましい。
[0106]
 図13は、熱伝導率と冷却性能との関係を例示するグラフ図である。
 図14(a)及び(b)は、気孔率とセラミック多孔体の熱伝導率との関係、および気孔率とセラミック多孔体の密度との関係を例示するグラフ図である。
 図15は、気孔率とセラミック絶縁膜の熱伝導率との関係、および気孔率とセラミック絶縁膜の密度との関係を例示するグラフ図である。
 図14(a)は、セラミック多孔体71の材料としてAl (アルミナ)が用いられた場合を例示するグラフ図である。図14(b)は、セラミック多孔体71の材料としてY (イットリア)が用いられた場合を例示するグラフ図である。
[0107]
 図13に表したグラフ図の横軸は、熱伝導率(W/m・K)を表す。図13に表したグラフ図の縦軸は、冷却性能の基準に対する比率を表す。
 図14(a)、図14(b)および図15に表したグラフ図の横軸は、気孔率(%)を表す。図14(a)及び(b)に表したグラフ図の縦軸は、セラミック多孔体の熱伝導率(右軸)と、セラミック多孔体の密度(左軸)と、を表す。図15に表したグラフ図の縦軸は、セラミック絶縁膜の熱伝導率(右軸)と、セラミック絶縁膜の密度(左軸)と、を表す。
[0108]
 図13に表したように、熱伝導率が0.3W/m・Kよりも小さくなると、冷却性能の基準に対する性能が10未満となる。冷却性能が基準値以下である場合には、絶縁体プラグ70の上の対象物Wにいわゆるホットスポットが発生するおそれがある。そのため、セラミック多孔体71の熱伝導率は、0.3W/m・K以上であることが望ましい。また、セラミック絶縁膜72の熱伝導率は、0.3W/m・K以上であることが望ましい。
[0109]
 図11および図12に関して前述したように、セラミック多孔体71の気孔率は、30%以上60%以下であることが望ましい。すると、図14(a)に表したように、アルミナが用いられたセラミック多孔体71の熱伝導率は、3W/m・K以上10W/m・K以下であることが望ましい。また、アルミナが用いられたセラミック多孔体71の密度は、1.5g/cm 以上3.0g/cm 以下であることが望ましい。図14(b)に表したように、イットリアが用いられたセラミック多孔体71の熱伝導率は、0.3W/m・K以上1.0W/m・K以下であることが望ましい。また、イットリアが用いられたセラミック多孔体71の密度は、4.5g/cm 以上9.0g/cm 以下であることが望ましい。これにより、セラミック多孔体71の熱伝導率は、0.3W/m・K以上10W/m・K以下であることが望ましい。また、セラミック多孔体71の密度は、1.5g/cm 以上3.0g/cm 以下であることが望ましい。
[0110]
 図11に関して前述したように、セラミック絶縁膜72の気孔率は、10%以下であることが望ましい。すると、図15に表したように、セラミック絶縁膜72の熱伝導率は、3W/m・K以上8W/m・K以下であることが望ましい。また、セラミック絶縁膜72の密度は、3g/cm 以上4g/cm 以下であることが望ましい。
[0111]
 図16は、熱膨張率の差の比率と応力との関係を例示するグラフ図である。
 図16に表したグラフ図の横軸は、セラミック多孔体71の熱膨張率を基準としたときのセラミック多孔体71の熱膨張率とセラミック絶縁膜72の熱伝導率との差の比率を表す。図16に表したグラフ図の縦軸は、応力の基準に対する比率を表す。
[0112]
 図16に表したように、セラミック多孔体71の熱膨張率を基準とした場合において、セラミック多孔体71の熱膨張率とセラミック絶縁膜72の熱伝導率との差の比率が100%よりも高くなると、応力の基準に対する比率が10よりも高くとなる。応力が基準値以上である場合には、セラミック多孔体71が破損するおそれがある。そのため、セラミック多孔体71の熱膨張率を基準とした場合において、セラミック多孔体71の熱膨張率とセラミック絶縁膜72の熱伝導率との差の比率は、100%以下であることが望ましい。セラミック多孔体71の熱膨張率とセラミック絶縁膜72の熱伝導率との差の比率は、50%以下であることがさらに望ましい。
[0113]
 図17は、材料の熱膨張率の一例を表す表である。
 25℃以上800℃以下の環境において、Al (アルミナ)の熱膨張率は、例えば7.0×10 -6/℃である。Y の熱膨張率は、例えば7.2×10 -6/℃である。TiC-TiNの熱膨張率は、例えば7.4×10 -6/℃である。Al (サファイア)の熱伝導率は、例えば7.7×10 -6/℃である。MgO-SiO の熱膨張率は、例えば7.7×10 -6/℃である。2MgO-SiO の熱膨張率は、例えば10.0×10 -6/℃である。
[0114]
 セラミック多孔体71の材料は、図1~図4に関して前述した通りである。セラミック多孔体71の熱膨張率は、7.0×10 -6/℃以上10.0×10 -6/℃以下であることが望ましい。
 セラミック絶縁膜72の材料は、図5に関して前述した通りである。セラミック絶縁膜72の熱膨張率は、7.0×10 -6/℃以上10.0×10 -6/℃以下であることが望ましい。
[0115]
 図18は、表面粗さと密着性との関係を例示するグラフ図である。
 図19は、表面粗さと、耐圧、流量、応力および冷却性能のそれぞれと、関係を例示するグラフ図である。
[0116]
 図18に表したように、アンカー効果により、表面粗さが増加すると密着性が増加する。つまり、表面粗さと密着性との間には相関がある。密着性と、耐圧、流量、応力および冷却性能のそれぞれと、の相関を表すグラフは、図19に表した通りである。
 本願明細書において、「表面粗さ」とは、算術平均粗さRaをいうものとする。表面粗さは、JIS B 0601に基づいて表面粗さ計により測定される。セラミック多孔体71の表面粗さを測定する位置は、セラミック多孔体71の側面のZ方向における中央部(例えば図3に表した位置P1)である。セラミック絶縁膜72の表面粗さを測定する位置は、セラミック絶縁膜72の側面のZ方向における中央部(例えば図3に表した位置P2)である。
[0117]
 図19に表したように、流量(基準比)は、表面粗さが増加すると増加する。また、冷却性能(基準比)は、表面粗さが増加すると増加する。表面粗さが4μmよりも大きくなると、耐圧(基準比)が2未満となる。耐圧が基準値以下である場合には、絶縁耐圧は向上しない。そのため、セラミック絶縁膜72の表面粗さは、4μm以下であることが望ましい。一方で、セラミック絶縁膜72の粒子には空気が含まれるため、セラミック絶縁膜72の表面粗さが0.5μmよりも小さくなると、表面仕上げ加工に必要以上の手間およびコストがかかる。そのため、セラミック絶縁膜72の表面粗さは、0.5μm以上であることが望ましい。したがって、セラミック絶縁膜72の表面粗さは、0.5μm以上4μm以下であることが望ましい。
[0118]
 表面粗さが5μm以上になると、伝達ガスの流量の増加が大きくなる。そのため、セラミック多孔体71の表面粗さは、5μm以上であることが望ましい。
 表面粗さが20μmよりも大きくなると、応力(圧縮、引張り)の低下が大きくなる。そのため、セラミック多孔体71の表面粗さは、20μm以下であることが望ましい。したがって、セラミック多孔体71の表面粗さは、5μm以上20μm以下であることが望ましい。
 なお、セラミック誘電体基板11の表面粗さは、0.1μm以上1μm以下である。
[0119]
 セラミック誘電体基板11、セラミック多孔体71およびセラミック絶縁膜72に関する他の物性値としては、残留応力、硬度(ビッカース硬さ:HV)およびヤング率が挙げられる。
 セラミック多孔体71の残留応力は、150メガパスカル(MPa)以下である。セラミック多孔体71の硬度(HV)は、2ギガパスカル(GPa)以上10GPa以下である。セラミック多孔体71のヤング率は、50GPa以上200GPa以下である。
 セラミック絶縁膜72の残留応力は、1500MPa以下である。セラミック絶縁膜72の硬度(HV)は、0.1GPa以上5GPa以下である。セラミック絶縁膜72のヤング率は、40GPa以上100GPa以下である。
 セラミック誘電体基板11の残留応力は、700MPa以下である。セラミック誘電体基板11の硬度(HV)は、5GPa以上20GPa以下である。セラミック誘電体基板11のヤング率は、150GPa以上500GPa以下である。
[0120]
 次に、セラミック多孔体71の例について説明する。
 図20は、アスペクト比と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
 図20の横軸はアスペクト比を表し、縦軸は絶縁耐圧(%)を表している。ここで、横軸のアスペクト比は、セラミック多孔体71の外径に対する長さ(Z方向の長さ)の比率である。また、縦軸の絶縁耐圧の100%とは、絶縁体プラグ70を設けない場合の絶縁耐圧である。
[0121]
 図20に表したように、アスペクト比が0.6以上になると、絶縁耐圧が100%を超える。したがって、セラミック多孔体71のアスペクト比は0.6以上であることが望ましい。
[0122]
 図21は、セラミック多孔体の外径と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
 図21の横軸はセラミック多孔体71の外径(mm)を表し、縦軸は絶縁耐圧(%)を表している。ここで、縦軸の絶縁耐圧の100%とは、絶縁体プラグ70を設けない場合の絶縁耐圧である。
[0123]
 図21に表したように、セラミック多孔体71の外径が1mm以上になると、絶縁耐圧が100%を超える。したがって、セラミック多孔体71の外径は1mm以上であることが望ましい。また、セラミック多孔体71の外径を1mm以上にすると、吸着する対象物Wのコールドスポットでの温度差(貫通孔15の直上における対象物Wの位置とその周辺との温度差)を1℃以下にすることができる。
[0124]
 図22は、セラミック多孔体の長さと絶縁耐圧との関係を例示する図である。
 図22の横軸はセラミック多孔体71の長さ(mm)を表し、縦軸は絶縁耐圧(%)を表している。ここで、縦軸の絶縁耐圧の100%とは、絶縁体プラグ70を設けない場合の絶縁耐圧である。
[0125]
 図22に表したように、セラミック多孔体71の長さが3mm以上になると、絶縁耐圧が100%を超える。したがって、セラミック多孔体71の長さは3mm以上であることが望ましい。
[0126]
 図23は、セラミック多孔体の比率(L/D)と絶縁耐圧との関係を例示する図である。
 図23の横軸はセラミック多孔体71の比率(L/D)を表し、縦軸は絶縁耐圧(%)を表している。ここで、横軸の比率(L/D)は、貫通孔15の内径をD、貫通孔15の中心からセラミック多孔体71の外周までの距離をLとした場合の比率(L/D)である。また、縦軸の絶縁耐圧の100%とは、絶縁体プラグ70を設けない場合の絶縁耐圧である。
[0127]
 ここで、比率(L/D)について説明する。
 図24(a)及び(b)は、内径D及び距離Lを例示する模式的平面図である。
 図24(a)及び(b)には、貫通孔15及び絶縁体プラグ70をZ方向にみた模式的な平面図が表される。
[0128]
 図24(a)には、1つの絶縁体プラグ70の上に1つの貫通孔15が配置された例が表される。この例では、貫通孔15の中心は、絶縁体プラグ70の中心と一致している。貫通孔15が1つの場合には、この貫通孔15の内径をD、この貫通孔15の中心からセラミック多孔体71の外周までの距離をLとする。なお、貫通孔15の中心が、絶縁体プラグ70の中心と一致しない場合には、貫通孔15の中心からセラミック多孔体71の外周までの距離のうち最も短い距離をLとする。
[0129]
 図24(b)には、1つの絶縁体プラグ70の上に複数の貫通孔15が配置された例が表される。この場合、複数の貫通孔15のうち、セラミック多孔体71の外周に最も近い貫通孔15の内径をDとする。また、この貫通孔15の中心からセラミック多孔体71の外周までの距離をLとする。
[0130]
 図23に表したように、セラミック多孔体71の比率(L/D)が5以上になると、絶縁耐圧が100%を超える。したがって、セラミック多孔体71の比率(L/D)は5以上であることが望ましい。
[0131]
 図20~図23に表したセラミック多孔体71の望ましい条件は、図20~図23のうち少なくとも1つを満たしていればよく、図20~図23のうち2つ以上満たしていることがより望ましい。また、図20~図23の全てを満たしていることが最も望ましい。
[0132]
 次に、伝達ガスの供給と対象物の温度変化との関係について説明する。
 図25(a)~(d)は、吸着の対象物の温度変化を例示する図である。
 図25(a)~(d)には、伝達ガスとしてHeガスを用いた場合の対象物の温度変化が表されている。
[0133]
 図25(a)及び(b)には、貫通孔15からHeガスを放出していない状態が表される。図25(b)は、セラミック誘電体基板11の上に対象物Wを吸着させた状態を表す模式的断面図である。図25(a)は、対象物Wの温度分布を例示する模式図である。図25(a)の横軸は対象物Wの位置を表し、縦軸は貫通孔15の直上とその周辺との温度差(delta_T)を表している。
[0134]
 図25(a)及び(b)に表したように、貫通孔15からHeガスを放出しない場合、対象物Wにおける貫通孔15の直上の温度が周辺の温度よりも高くなる。セラミック多孔体71の部分は金属製のベースプレート50の部分に比べて熱伝達率が低い。このため、Heガスを放出しない場合には、金属製のベースプレート50の上の部分の温度は低下しやすく、セラミック多孔体71の上、特に貫通孔15の直上の部分の温度は低下し難い。したがって、対象物Wにおいて貫通孔15の直上の部分の温度は、金属製のベースプレート50の上の部分の温度よりも高くなる。
[0135]
 図25(a)及び(b)に表したように、対象物Wにおいて貫通孔15の直上の周辺の温度を基準にして貫通孔15の直上の温度が高い場合の温度差(delta_T)は、正(+)のdelta_Tとなる。
[0136]
 図25(c)及び(d)には、貫通孔15からHeガスを放出している状態が表される。図25(d)は、セラミック誘電体基板11の上に対象物Wを吸着させた状態を表す模式的断面図である。図25(c)は、対象物Wの温度分布を例示する模式図である。図25(c)の横軸は対象物Wの位置を表し、縦軸は貫通孔15の直上とその周辺との温度差(delta_T)を表している。
[0137]
 ここで、図25(d)に表したように、ガス導入路53からHeガスを導入した場合、Heガスはガス導入路53からセラミック多孔体71の気孔内を通過して貫通孔15に送り込まれる。Heガスは、貫通孔15を通過して対象物Wの下方の溝14内に送られる。Heガスが接触することで、対象物Wの温度は低下する。
[0138]
 図25(c)及び(d)に表したように、貫通孔15からHeガスを放出した場合、対象物Wにおける貫通孔15の直上の温度が周辺の温度よりも低くなる。セラミック多孔体71の部分は金属製のベースプレート50の部分に比べて熱伝達率が低い。このため、Heガスを放出して、セラミック多孔体71の上、特に貫通孔15の直上の部分の温度が低下すると、金属製のベースプレート50の上の部分の温度よりも低い状態が維持されやすい。したがって、対象物Wにおいて貫通孔15の直上の部分の温度は、金属製のベースプレート50の上の部分の温度よりも低くなる。
[0139]
 図25(c)及び(d)に表したように、対象物Wにおいて貫通孔15の直上の周辺の温度を基準にして貫通孔15の直上の温度が低い場合の温度差(delta_T)は、負(-)のdelta_Tとなる。
[0140]
 ここで、静電チャック110により対象物Wを吸着する場合の、Heガス等の伝達ガスの導入タイミングについて説明する。
 先ず、対象物Wをセラミック誘電体基板11の第1主面11aに吸着保持する。対象物Wを吸着保持する際には、伝達ガスは導入されない。制御部90は、伝達ガスを導入しないよう制御する。
[0141]
 対象物Wがセラミック誘電体基板11に吸着保持されると、静電チャック110の吸着力により、対象物Wの下面は、セラミック誘電体基板11の周縁に設けられたシールリング部16と接触する。対象物Wの下面と、溝14との間には、ドット13で区切られた空間が形成される。
[0142]
 対象物Wを吸着保持した後、伝達ガスが導入される。制御部90は、伝達ガスの圧力差及び流量を制御する。制御部90の制御によって、伝達ガスは所定の圧力差でガス導入路53に送り込まれる。伝達ガスはガス導入路53からセラミック多孔体71及び貫通孔15を通過して、溝14内に送られる。
[0143]
 溝14内に所定量の伝達ガスが充填された後、対象物Wとセラミック誘電体基板11との間の空間が所定量の伝達ガスで満たされる。対象物Wが吸着保持されている間、伝達ガスは、対象物Wとシールリング部16との隙間から漏れ出る分だけ補充される。溝14内に充填された伝達ガスは、対象物Wと接触することで、対象物Wの温度を低下させることができる。
[0144]
 その後、対象物Wの吸着保持を解除するタイミングで、制御部90は、伝達ガスの供給を停止し、対象物Wとセラミック誘電体基板11との間の空間から伝達ガスを抜く。その後、対象物Wをセラミック誘電体基板11から引き離す。実際のプロセスでは、対象物Wを搬送し、次の対象物Wを処理するまでの時間(スループット)を短縮することができる。
[0145]
 このような伝達ガスの導入タイミングにおいて、対象物Wを吸着保持した直後で伝達ガスが導入される前の段階では、対象物Wの温度分布は図25(a)に表すようになる。一方、対象物Wを吸着保持した後、伝達ガスを導入した後の段階では、対象物Wの温度分布は図25(c)に表すようになる。
[0146]
 図26は、ガス流量と温度変化との関係を例示する図である。
 図26の横軸は、1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量(sccm:standard cubic centimeter per minute)を表し、縦軸は対象物Wの温度差delta_T(℃)を表している。ここで、供給されるHeガスの圧力差は、30Torrである。1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量が増加すると、温度差delta_Tは低下する。
[0147]
 本実施形態に係る静電チャック110において、1つの貫通孔15からHeガスを放出する下限の流量は0.5sccmである。一方、1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量が多すぎると、温度差delta_Tが低下しすぎて温度分布の均一化が難しくなる。対象物Wの温度分布を均一化するため、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下であることが望ましい。したがって、1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量は、14sccm以下が好ましく、望ましくは12sccm以下、さらに望ましくは10sccm以下である。
[0148]
 1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量を14sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下になる。また、1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量を12sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は4℃以下になる。また、1つの貫通孔15から放出されるHeガスの流量を10sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は3℃以下になる。
[0149]
 図27は、ガス流量と温度変化との関係を例示する図である。
 図27の横軸は、1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量(sccm)を表し、縦軸は対象物Wの温度差delta_T(℃)を表している。ここで、供給されるHeガスの圧力差は、30Torrである。1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量が増加すると、温度差delta_Tは低下する。
[0150]
 本実施形態に係る静電チャック110において、1つのセラミック多孔体71からHeガスを放出する下限の流量は3sccmである。これは、Heガスが流れ、対象物Wを冷やす(delta_Tが0℃未満)ための下限の流量である。一方、1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量が多すぎると、温度差delta_Tが低下しすぎて温度分布の均一化が難しくなる。対象物Wの温度分布を均一化するため、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下であることが望ましい。したがって、1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量は、24sccm以下が好ましく、望ましくは22sccm以下、さらに望ましくは17sccm以下である。
[0151]
 1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量を24sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下になる。また、1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量を22sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は4℃以下になる。また、1つのセラミック多孔体71から放出されるHeガスの流量を17sccm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は3℃以下になる。
[0152]
 図28は、貫通孔の内径と温度変化との関係を例示する図である。
 図28の横軸は、1つの貫通孔15の内径(mm)を表し、縦軸は対象物Wの温度差delta_T(℃)を表している。ここで、供給されるHeガスの圧力差は、30Torrである。1つの貫通孔15の内径が大きくなると、温度差delta_Tは低下する。
[0153]
 本実施形態に係る静電チャック110において、1つの貫通孔15を形成できる内径の下限は0.05mmである。一方、1つの貫通孔15の内径が大きすぎると、温度差delta_Tが低下しすぎて温度分布の均一化が難しくなる。対象物Wの温度分布を均一化するため、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下であることが望ましい。したがって、1つの貫通孔15の内径は、1mm以下が好ましく、望ましくは0.9mm以下、さらに望ましくは0.8mm以下である。
[0154]
 1つの貫通孔15の内径を1mm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は5℃以下になる。また、1つの貫通孔15の内径を0.9mm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は4℃以下になる。また、1つの貫通孔15の内径を0.8mm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値は3℃以下になる。
[0155]
 本実施形態に係る静電チャック110において、1つのセラミック多孔体71が円筒形に設けられている場合、セラミック多孔体71の外径は、7mm以下であることが好ましい。セラミック多孔体71の外径を7mm以下にすることで、温度差delta_Tの絶対値が5℃以下になる。また、セラミック多孔体71の外径を6mm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値が4℃以下になる。さらに、セラミック多孔体71の外径を5mm以下にすると、温度差delta_Tの絶対値が3℃以下になる。
[0156]
 以上説明したように、本実施形態によれば、セラミック誘電体基板11に設けられた伝達ガスの導入用の貫通孔15及びベースプレート50に設けられたガス導入路53における絶縁耐圧を向上させることができ、信頼性の高い静電チャック110を提供することができるようになる。
 また、本実施形態によれば、ガス導入路53内にセラミック多孔体71を設けた構造であっても吸着の対象物Wに対して均一性の高い温度制御を行うことができる静電チャック110を提供することができるようになる。
[0157]
 以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。例えば、静電チャック110として、クーロン力を用いる構成を例示したが、ジョンソン・ラーベック力を用いる構成であっても適用可能である。また、前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。

産業上の利用可能性

[0158]
 本発明の態様によれば、ガス導入路内での放電に対して高い絶縁耐圧を得ることができる、あるいは、ガス導入路内にセラミック多孔体を設けた構造であっても吸着の対象物に対してウェーハ温度均一性の高い温度制御を行うことができる静電チャックが提供される。

符号の説明

[0159]
 11 セラミック誘電体基板
 11a 第1主面
 11b 第2主面
 12 電極
 13 ドット
 14 溝
 15 貫通孔
 16 シールリング部
 20 接続部
 50 ベースプレート
 50a 上部
 50b 下部
 51 入力路
 52 出力路
 53 ガス導入路
 53a 座ぐり部
 55 連通路
 60 接着部材
 70 絶縁体プラグ
 71 セラミック多孔体
 72、73 セラミック絶縁膜
 75 境界線
 80 吸着保持用電圧
 90 制御部
 110、110a 静電チャック

請求の範囲

[請求項1]
 吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第2主面から前記第1主面にかけて設けられた貫通孔と、を有するセラミック誘電体基板と、
 前記セラミック誘電体基板を支持し、前記貫通孔と連通するガス導入路を有する金属製のベースプレートと、
 前記ガス導入路に設けられたセラミック多孔体と、前記セラミック多孔体と前記ガス導入路との間に設けられ前記セラミック多孔体よりも緻密なセラミック絶縁膜と、を有する絶縁体プラグと、
 を備え、
 前記セラミック絶縁膜は、前記セラミック多孔体の表面から前記セラミック多孔体の内部に食い込んだことを特徴とする静電チャック。
[請求項2]
 前記セラミック絶縁膜の熱膨張率は、前記セラミック多孔体の熱膨張率および前記セラミック誘電体基板の熱膨張率のそれぞれと同じであることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項3]
 前記セラミック絶縁膜の表面の算術平均粗さは、前記セラミック多孔体の表面の算術平均粗さよりも小さく、前記セラミック誘電体基板の表面の算術平均粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項4]
 前記セラミック絶縁膜の気孔率は、10パーセント以下であり、
 前記セラミック多孔体の気孔率は、30パーセント以上60パーセント以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項5]
 前記セラミック絶縁膜の密度は、3.0グラム/立方センチメートル以上4.0グラム/立方センチメートル以下であり、
 前記セラミック多孔体の密度は、1.5グラム/立方センチメートル以上3.0グラム/立方センチメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項6]
 前記セラミック多孔体の熱膨張率を基準とした場合において、前記セラミック多孔体の熱膨張率と前記セラミック絶縁膜の熱伝導率との差の比率は、100%以下であることを特徴とする請求項1静電チャック。
[請求項7]
 前記セラミック多孔体および前記セラミック絶縁膜のそれぞれの熱膨張率は、7.0×10 -6/℃以上10.0×10 -6/℃以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項8]
 前記セラミック多孔体および前記セラミック絶縁膜のそれぞれの熱伝導率は、0.3ワット/メートル・ケルビン以上10ワット/メートル・ケルビン以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項9]
 前記セラミック絶縁膜の表面の前記算術平均粗さは、0.5マイクロメートル以上4マイクロメートル以下であり、
 前記セラミック多孔体の表面の前記算術平均粗さは、5マイクロメートル以上20マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項3記載の静電チャック。
[請求項10]
 前記セラミック絶縁膜は、前記セラミック多孔体の側面に設けられたセラミックの溶射膜であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項11]
 前記セラミック多孔体の外径に対する長さの比率は、0.6以上であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項12]
 前記セラミック多孔体の外径は、1ミリメートル以上であることを特徴とする請求項11記載の静電チャック。
[請求項13]
 前記セラミック多孔体の長さは、3ミリメートル以上であることを特徴とする請求項11記載の静電チャック。
[請求項14]
 前記貫通孔の内径をD、前記貫通孔の中心から前記セラミック多孔体の外周までの距離をLとした場合、L/Dは、5以上であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項15]
 前記貫通孔の1つ当たりから流出するHeガスの流量は、前記Heガスの圧力差を30Torrとした場合、0.5sccm以上14sccm以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項16]
 前記セラミック多孔体の1つ当たりから流出するHeガスの流量は、前記Heガスの圧力差を30Torrとした場合、3sccm以上24sccm以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項17]
 前記貫通孔の内径は、0.05ミリメートル以上1ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
[請求項18]
 前記セラミック多孔体の外径は、7ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]